JP5817230B2 - 刃先交換式切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、工具本体に円形のインサートを着脱自在に取付けるフライス加工用の刃先交換式切削工具において、インサートの内接円直径のばらつきに対してこのインサートをインサート着座面に安定、かつ高精度な取付けを可能とするとともに、切削加工時におけるインサートの回動防止を可能とした刃先交換式切削工具に関する。
円形(又は丸駒形)のインサート(以下、「円形インサート」という)を、ねじ部材を用いて工具本体のインサート着座面に着脱自在に取付ける(又は「装着する」)刃先交換式工具は、切削加工中に円形インサートの切れ刃に作用する切削加工負荷により、円形インサートが回動するという課題がある。この円形インサートが回動するという課題を解決するための手段、すなわち、工具本体に装着して固定した円形インサートについて、切削加工中に回動することを防止するための手段については、従来から種々の技術が提案されている。例えば、下記の特許文献1〜4に記載の発明が提案されている。
特許文献1(特表平11−508192号公報)に記載の発明には、円形の形状を有する切削インサートを取付けたフライス加工用の切削工具において、この切削インサートの回動を阻止する手段として、円形インサートの外周面である円錐形状面を工具本体の受け面に接触させて固定する手段と、円形インサートの底面側を多角形状に形成し、この多角形状とした底面を工具本体と当接させて円形インサートの回動を阻止する手段とを併用することが提案されている。また、円形インサートの底面を多角形状にすることにより、円形インサートを着座面(ポケット)に装着するときの位置決め手段としている。
特許文献2(特表2006−523541号公報)に記載の発明には、円形インサート(円形の切削用チップ)を使用した回転防止工具ホルダー及び切削用チップ工具において、工具ホルダー内に少なくとも1つのチップ用ポケットと、このチップ用ポケットに対応する少なくとも1つの回転防止ストッパであって実質的に平らな面を含む回転防止ストッパを備えた回動防止手段が提案されている。また、特許文献2に記載の円形の切削用チップは、その側壁の周囲に多数の凹部を底面に達するように設け(Fig2参照)、工具ホルダーに設けた回転防止ストッパをこの凹部に当接させて円形の切削用チップの回転を防止する構成としている。また、回転防止ストッパの両側には円弧形状をなす側壁を設けていることも開示されている(Fig2参照)。
特許文献3(特開2007−210090号公報)に記載の発明には、周面にニック溝を形成した円形インサートを誤装着することなく所定の角度ずつ回転させて取付座に取り付け直すことを可能とした丸駒インサート着脱式切削工具が提案されている。この切削工具は、円形インサートの周面に複数の切欠面とニック溝を等間隔に形成し、切欠面のうち周方向に一定数おきの一部の切欠面同士は、その周方向の互いに等しい位置に一部のニック溝が延びて、工具本体のインサート取付座への拘束面とし、さらに、このインサート取付座には、拘束面が当接させられる取付座壁面と、これら取付座壁面から突出して拘束面の一部のニック溝に収容される突起を形成した構成としたものである。
そして、この切削工具においては、円形インサートの拘束面が工具本体の取付座壁面に当接するように取り付けられるため、円形インサートの拘束面と工具本体の取付座壁面との面同士の当接で円形インサートを保持してそのズレ動きや脱落、誤装着を防止し、安定した加工を促すことが可能になっている。また、特許文献3の図5等には、ニック溝は円形インサートの上面まで達する構成としたことも示されている。
特許文献4(特開2010−247322号公報)に記載の発明には、円形インサートの回動を防止すると共にインサートの刃先強度を落とすことなく、この円形インサートを工具本体に精度良く取付けることができる刃先交換式切削工具が提案されている。この刃先交換式切削工具は、円錐状をなす外周面に回動防止面となる凹部を設けた円形インサートを、工具本体に固定するためのインサート固定部の構成が開示されており、このインサート固定部の構成は、円形インサートの底面を受ける着座面と、インサートの外周面を受ける2つの受け面と、2つの受け面の中央部に回動防止部材を組み込む手段と、からなる構成とされている。そして、インサートの回動防止面(凹部)とこの回動防止部材とを接触させることにより、円形インサートの回動を防止するための手段としている。
さらに、特許文献4に記載の刃先交換式切削工具においては、刃先強度を含むインサートの強度を低下させないために、円形インサートの厚さをhとしたときに、回動防止面の上端がインサートの底面から(2/3)hの位置より下方にあり、回動防止面の下端がインサートの底面から(1/10)hの位置より上方になるようにすることが開示されている。
一方、円形インサートを着脱自在に装着する刃先交換式切削工具において、この円形インサートは超硬合金製のインサートが使用される。超硬合金製の円形インサートの製造は、一般に次の手段が採用されている。すなわち、微粉末状の超硬合金を、例えば、金型成形等により所定の寸法を備えたインサート成形体(グリーン成形体)を成形し、続いて、このインサート成形体を所定の温度に加熱して焼成して、高硬度となった焼成されたインサート成形体を製造する。次に、この焼成されたインサート成形体に、耐磨耗性を向上させるための硬質皮膜を被覆すことにより円形インサートが製造される。
上記した円形インサートの製造においては、インサートのグリーン成形体は焼成時の収縮を考慮して所定の寸法を備えた成形体として成形される。焼成した後の焼成された個々のインサート成形体は、焼成時の収縮により各部位には微小な寸法差が生じる。このため、例えば、内接円の直径の仕様を12.0mmとした円形インサートの場合、各部位の寸法の公差は「±0.05」等とし、この公差を外れたインサートは規格外として使用されないようになされている。
しかし、上記のように、円形インサートの各部位の寸法に厳格な公差を設けても、工具本体のインサートの着座面に装着する個々の円形インサートには微小な寸法差がある。従って、円形インサートにこのような公差範囲内の微小な寸法差があっても、各円形インサートを工具本体の着座面を含むインサート固定部に、安定、かつ高精度に取付けことは、被削材の加工面の精度向上にとって極めて重要になる。特に、一つの円形インサートを、その取付け角度を変えて再装着して、数回使用する刃先交換式切削工具にとっては、円形インサートの高精度な装着が要求されている。
この円形インサートを工具本体のインサート固定部に、安定して、かつ高精度に取付ける手段に関する技術については、例えば、下記の特許文献5(特開2006−62007号公報)、特許文献6(特開2006−68897号公報)に記載の発明が提案されている。
特許文献5には、チップ取付座へのチップの装着時や装着後においてチップが周方向での位置ズレが生じないようにしたスローアウェイ式切削工具に関する発明が提案されている。このスローアウェイ式切削工具は、チップ本体の周面を受けるために設けたチップ取付座の側壁面を、チップ本体の周面よりも小さい曲率半径で形成された面を備えるようにしたものである。同文献にはその効果として、チップをチップ取付座に装着するときには、チップ本体の周面とチップ取付座の側壁面との当接部分が、主として側壁面における両端部分に集中することになる。これにより、チップ本体の周面がチップ取付座の側壁面における両端部分によって局所的に大きな荷重で押圧されるため、チップ本体の周方向でのチップの位置ズレを確実に抑制することができる、ことが記載されている。
特許文献6には、インサート座に装着する円形インサートの回動防止と位置決めを改善したインサート座に関する発明が提案されている。この特許文献6に記載の発明は、インサート座の後端部に間隔をおいて円弧形状をなす2つの支持面を設け、この円弧形状をなす支持面の内周面にインサート座の平面と平行をなす複数の稜線と溝を設けることにより、装着する円形インサートの回動防止と位置決めを行うものである。
特表平11−508192号公報 特表2006−523541号公報 特開2007−210090号公報 特開2010−247322号公報 特開2006−62007号公報 特開2006−68897号公報
上記した特許文献1、2及び3に記載の刃先交換式工具において、工具本体に固定する円形インサートの底面の形状を多角形状にすると、底面を円形にした円形インサートと比較して底面の面積が減少するので、着座面との接触面積が少なくなるので切削加工時にインサートが回動する可能性が生じる。また、装着する円形インサートの微小な寸法のばらつきが存在していても、着座面に高精度で装着するための手段については開示されていない。
また、切削加工に使用する切れ刃のコーナー数をより多くするために、円形インサートの外周面(側面)に形成する凹部(回動防止面やニック溝)の数を多くし、かつ、これら凹部をインサートの底面に達するように形成すると、インサートの底面の面積が減少するので、上記したように切削加工時にインサートが回動する可能性が生じる。また、凹部をインサートの上に達するように形成すると、切れ刃の強度が低下するので切削加工負荷により切れ刃あるいは切れ刃近傍に欠損が発生する可能性が生じる。
特許文献4に記載の刃先交換式切削工具においても、装着する円形インサートの微小な寸法のばらつきが存在していても、着座面に高精度で装着するための手段については開示されていない。
特許文献5に記載のスローアウェイ式切削工具においては、取り付け座の変形を前提とした拘束方法であるため、繰り返しの取り付け精度は良くない。また、工具本体自体の硬度を上げてしまうと、取り付け座の変形量が小さくなりインサートを拘束する効果が得難くなる。
特許文献6に記載にインサート座は、インサート座の後端部に設けた円弧形状をなす2つの支持面にインサート座の平面と平行となる複数の稜線と溝を設けることにより、円形インサートの回動防止と位置決めを行う構成とされているが、円形インサートの微小な寸法のばらつきが存在していても、着座面に高精度で装着するための手段については開示されていない。
本発明の目的は、円形インサートを工具本体の着座面に着脱可能に固定する方式の刃先交換式切削工具において、着座面に固定した円形インサートが切削加工時に作用する切削加工負荷により回動することを防止すると共に、円形インサートの刃先強度や底面の強度を落とすことなく、かつ、工具本体の着座面等に変形などが生じることなく、着座面に円形インサートを精度良く取付けることができる刃先交換式切削工具を提供することにある。
請求項1に記載発明は、工具本体に形成したインサート着座面に、円形で平板状をなし、すくい面となる上面と、前記上面と対向して配置されて該上面より小径の底面と、前記上面と前記底面をつなぐ円錐形状をなして逃げ面となる外周面と、前記すくい面と前記逃げ面によって形成された稜線部に切れ刃を備えた円形インサートが着脱自在に装着される刃先交換式切削工具において、
前記インサート着座面前記インサート着座面に装着する前記円形インサートの前記外周面を拘束するために円弧形状をなす側壁面を備えた2つの座受け面部を備え、
前記2つの座受け面部のそれぞれ間隔を設けて形成されているとともに、前記円弧形状なす側壁面、円弧形状の直径が異なる少なくとも2つの側壁面から構成されていることを特徴としている。
請求項1に記載の発明は更に、前記座受け面部における前記円弧形状の直径が異なる2つの側壁面のうち、前記座受け面部の一方が、前記間隔の一方の側から第1側壁面と、前記第1側壁面と一体に形成された第2側壁面から構成され、
前記座受け面部の他方は、前記間隔の他方の側から第3側壁面と、前記第3側壁面と一体に形成された第4側壁面から構成され、
前記第1側壁面と前記第3側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d1に設定されているとともに、前記直径d1は前記円形インサートの内接円の直径d0に設定され、
前記第2側壁面と前記第4側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d2に設定されているとともに、前記直径d2は前記直径d1より大きく設定されていることを特徴としている。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記第1〜第4側壁面、前記インサート取付座と直交する線分に対して工具軸方向に傾斜角度β1をもって傾斜して立設され、
前記インサートの外周面の傾斜角度をθ1としたときに、下記の式(1)を満足していることを特徴としている。
0≦θ1−β1≦1.0 ・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
請求項に記載の発明は、請求項又は請求項に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記第1〜第4側壁面、縦方向に複数の加工筋を有していることを特徴としている。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート着座面に装着される前記円形インサート、その前記外周面に少なくとも一つの回動防止面を備え、前記2つの座受け面部の間の前記間隔に、切削加工中において前記円形インサートの前記回動防止面に当接する回動防止部が設けられていることを特徴としている。
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート着座面と、前記第1〜第4側壁面と、前記回動防止部の少なくとも一つには、周期律表4a、5a、6a族金属、Al、Si、Bの元素から選択される1種以上の元素を含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物のいずれかからなる硬質皮膜が被覆されていることを特徴としている。
請求項に記載の発明は、請求項又は請求項に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサートの厚さをh1、前記底面から前記回動防止面の上端までの高さをh2、前記底面から前記回動防止面の下端までの高さをh3としたとき、前記h2下記の式(2)を、前記h3下記の式(3)を満足していることを特徴としている。
(1/2)h1≦h2≦(2/3)h1 ・・・・・・・式(2)
(1/10)h1≦h3≦(1/3)h1 ・・・・・・式(3)
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記円弧形状をなす側壁面は、前記円弧形状の直径が異なる3つの側壁面から構成されていることを特徴としている。
本発明の刃先交換式切削工具によれば、インサート着座面に装着する円形インサートの内接円の直径等に微小な寸法のばらつきがあっても、インサート着座面に、この着座面に装着する円形インサートの外周面を拘束するために円弧形状をなす側壁面を備えた2つの座受け面部を設けるとともに、この2つの座受け面部のそれぞれは間隔を設けて形成され、この円弧形状なす側壁面は、円弧形状の直径が異なる少なくとも2つの側壁面から構成されるようにしているために、円形インサートをインサート着座面に高い位置精度で、かつ、安定した状態で装着することが可能になる。
また、2つの座受け面部の間に、拘束部を有する回動防止部を設けることにより、切削加工中に、この回動防止部の拘束部が円形インサートの外周面に設けた回動防止面に当接するようにしているので、インサート着座面に装着した円形インサートの回動を防止することができる。
本発明の刃先交換式切削工具の一例を示す斜視図であって、着座面にインサートを装着していない状態を示す図である。 図1に示す刃先交換式切削工具の着座面に、インサートを装着したときの状態を示す斜視図である。 図1に示す刃先交換式切削工具について、着座面を含むインサート固定部を拡大して示した図である。 (a)は図2に示す刃先交換式切削工具の着座面にインサートを装着したとき、インサートと座受け面部と回動固定部との位置関係を模式的に示す図、(b)は(a)に示す座受け面部を拡大して示す図である。 図1に示すインサート固定部を、上面から見た平面図である。 図5に示すA−A線における断面図である。 図1に示すインサートの側面図である。 図7に示すインサートを、底面方向から見たときの状態を示す図である。 図7に示す矢印B方向におけるインサートの断面の構成を示す断面図である。 図1に示すインサート固定部にインサートを装着ときに、上面から見た平面図である。 図10に示すC−C線における断面図である。 図10に示すD−D線における断面図である。 図2に示す刃先交換式切削工具の着座面にインサートを装着したとき、インサートと座受け面部と回動固定部との位置関係を模式的に示す図であって、(a)は装着した円形インサートの内接円の公差が下限値の場合、(b)は中央値の場合、(c)は上限値の場合を示す。 切れ刃の軸方向すくい角を説明するための図である。
まず、本発明に係る刃先交換式切削工具が備えている基本構成を、図1、図2を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態となる刃先交換式切削工具1について、工具本体2の先端部に円形インサート4を取付ける(装着する)前の状態を示す斜視図である。円形インサート4は、工具本体2の先端部の外周面に沿って等間隔で形成されたインサート着座面3に取付けられる。図2は、工具本体2に円形インサート4を装着したときの状態を示す斜視図である。図1(図2)に示す刃先交換式切削工具1は、3個のインサート着座面3(以下、単に「着座面3」という)を備えており、それぞれの着座面3に円形インサート4を装着した3枚刃の刃先交換式切削工具の例を示している。
平面状をなす着座面3のそれぞれの中央部にはねじ孔3aが穿孔されており、円形の超硬合金製からなる円形インサート4が、ねじ部材である止めねじ5によって着座面3に取付けられる。なお、工具本体2は、その着座面3に円形インサート4を装着したときに、円形インサート4の切れ刃の軸方向すくい角が所定の正角(正)又は負角(負)になるような構成として予め製造される。
図1に示すように、工具本体2の着座面3の後方端部、すなわち、工具軸線O側には、2つの座受け面部6と7が所定の間隔をおいて立設されている。また、図1では、2つの座受け面部6、7の間には、同じく着座面3の後方端部、すなわち、工具軸線O側から、回動防止部8を立設させている例を示している。なお、回動防止部8は、所定の幅と高さを備えた拘束面8aを備えており、拘束面8aは、切削加工中において、着座面3に装着された円形インサート4の外周面13に形成された回動防止面15に当接して、円形インサート4の回動を防止する作用を行う。本実施形態を示す刃先交換式切削工具1において、工具本体2に形成した上記した着座面3と、2つの座受け面部6及び7と、回動防止部8とは、インサート固定部9を構成する。
インサート固定部9を構成する着座面3は、円形インサート4を着座面3に止めねじ5によって強固に固定する機能を備えている。同じく、座受け面部6及び7は、円形インサート4を着座面3に装着するときに、この円形インサート4を着座面3に安定した状態で、かつ取付け位置が高精度になるように円形インサート4の外周面13を拘束するための側壁としての機能を備えている。また、回動防止部8は、切削加工中において、円形インサート4の回動を防止するための機能を備えている。
座受け面部6及び7が備えている上記機能、すなわち、円形インサート4を着座面3に装着するときに、この円形インサート4を着座面3に安定した状態で、かつ円形インサート4の取付け(装着)位置を高精度に拘束するための機能(以下、「高精度取付け機能」という)は、本発明の刃先交換式切削工具において特徴となる機能である。
本発明の刃先交換式切削工具においてこの高精度取付け機能を設けた理由は、前記したように、超硬合金からなる円形インサート4は、その各部位の寸法に厳格な寸法公差を設けても、工具本体2の着座面3に装着する個々のインサート4には微小な寸法差が不可避的に生じてしまう。この理由は、円形インサートは粉末冶金法によって形成された超硬合金からなる焼結体であり、これを焼結肌の状態のままで使用するために、焼結時の収縮程度によって微小な寸法差が生じるからである。従って、このような微小な寸法差があっても円形インサート4を着座面3に、安定、かつ高精度となる位置に拘束して取付け、かつ、切削加工中における円形インサート4の回動を防止することができる手段を備えることが、加工精度向上にとって極めて重要になるからである。
本発明の発明者は、この円形インサートについて高精度取付け機能を実現するための手段について種々検討、実験を行った結果、円形インサートに微小な寸法上の公差があっても、着座面に装着する円形インサートの外周面を上記座受け面部6及び7の円弧形状をなす側壁面の構成を改善して拘束すれば、高精度取付け機能を実現することができることを見出した。
続いて、本発明の特徴となる座受け面部6及び7の詳細な構成について説明する。
図1に示すように、着座面3の後方端部には、所定の間隔K(図4参照)をおいて、座受け面部6と座受け面部7を立設させている。この2つの座受け面部6、7は、着座面3に取付けた円形インサート4の外周面13を拘束するための側壁となる。そして、2つの座受け面部6と座受け面部7は、その着座面3側を向く面は円弧形状をなす側壁面としている。この側壁面の円弧形状は、着座面3に装着する円形インサート4の円錐形状をなす外周面13に略沿った形状(図4参照)を備えている。また、これら2つの座受け面部6と座受け面部7との間となる間隔部(間隔K内)には着座面3の後方端部から回動防止部8を立設させている。
図1に示す「M」は、円形インサート4を着座面3に装着するときに、円形インサート4を着座面3に載置する位置を目視で確認するための突起あるいは凹状をなす溝形状(以下、「突起M」という)である。工具本体2に形成したこの突起Mに対応して、円形インサート4のすくい面となる上面には、その周面に沿って、4〜8つの位置合せ用のマークが等角度の間隔で形成されている。この位置合せ用のマークは、円形インサートのプレス成形時に凹状をなす溝形状あるいは凸状をなす突起形状に形成されている。例えば、位置合せ用マークが4つの場合にはこの円形インサート4は、着座面3への装着位置を90度変えることにより、4回使用可能であることを示している。
図3は、図1に示すインサート固定部9の部分を拡大して示した図である。図3に示すように、2つの座受け面部6と座受け面部7のうち、座受け面部6は、回動防止部8側(間隔K側)又は他の座受け面部7側に位置する第1側壁面6aと、この第1側壁面6aに段差6cを介して一体に隣接(接続)されている第2側壁面6bとから構成されている。
また、他方の座受け面部7は、回動防止部8側(又は座受け面部6側)に位置する第3側壁面7aと、第3側壁面7aに段差部7cを介して一体に隣接(接続)されている第4側壁面7bとから構成されている。そして、これら第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bの着座面3側を向く面は円弧形状をなす側壁面として形成されており、この円弧形状をなす側壁面は、着座面3に装着する円形インサート4の円錐形状をなす外周面13(図1参照)に概略沿うように円弧形状をなしている。
図3においては、2つの座受け面部6と座受け面部7は、着座面3の後端部から立設させて形成している例を示しているが、着座面3の後端部周辺に溝(間隙溝)を形成し、この隙間溝の後方に座受け面部6と7、及び回動防止部8を立設させた構成としてもよい。
次に、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bが備えている構成の特徴を、図4に基づいて説明する。図4(a)は、着座面3に円形インサート4を装着したときに、着座面3の端部後方から立設している座受け面部6と座受け面部7及び回動防止部8と、円形インサート4の外周面13との拘束関係を模式的に示した図であり、図4(b)は、図4(a)から座受け面部6と座受け面部7のみを取り出して、これら座受け面部6と座受け面部7を拡大して示した図である。図4に示すように、2つの座受け面部6と座受け面部7は、所定の間隔Kをおいて、着座面3の後端部に形成されており、この間隔K内であって着座面3の後端部に回動防止部8が形成されている。
なお、間隔Kの幅は、装着する円形インサート4の内接円の直径、すなわち、着座面3の大きさに基づくが、間隔Kの両端部と着座面3に設けたねじ孔3aの中心を結んだ線がなす角度が40°〜70°程度になるに設定する。
図4(a)に示すように、座受け面部6は、円弧形状をなす第1側壁面6aと、同じく円弧形状をなす第2側壁面6bとが着座面3側において段差部6c(○印)を介して一体化された構成になっている。図4(a)には、円弧形状をなす第1側壁面6aの直径はd1、円弧形状をなす第2側壁面6bの直径はd2として示している。また、円弧形状をなす第3側壁面7aの直径はd1、円弧形状をなす第4側壁面7bの直径はd2として示している。段差部6cは、座受け面部6の中間位置当たり、すなわち、第1側壁面6aと第2側壁面6bの中間位置に設けるようにする。
座受け面部7についても、座受け面部6と同様に、円弧形状をなす第3側壁面7aと、同じく円弧形状をなす第4側壁面7bが段差部7c(○印)を介して一体化された構成になっている。段差部7cは、座受け面部7の中間位置当たり、すなわち、第3側壁面7aと第4側壁面7bの中間位置に設けるようにする。
このように、座受け面部6と座受け面部7の着座面3側は、それぞれ2つの直径が異なる円弧形状をなす側壁が段差部6c、7cを介して一体化された円弧形状をなす内壁面を構成している。
なお、2つの座受け面部6と7を拡大して示した図4(b)においては、段差部6c及び7cの形状は、円形インサート4の中心方向に直線的に形成した例を示しているが、緩やかなR形状からなる段差部としてもよい。
また、段差部6c及び7cの形状を段差ではなく、凹形状、例えば、微小なU字状、円弧状の形状をなす溝としてもよい。すなわち、この場合は、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bが独立して存在するような構成としてもよい。
本発明においては、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bの円弧形状の直径は、次の(1)及び(2)に記載したように設定していることに特徴がある。
(1)第1側壁面6aの円弧形状の直径と、第3側壁面7aの円弧形状の直径は同一となる直径d1に設定し、この直径d1は円形インサート4の直径d0、すなわち、上面10の直径(内接円の直径であって公差の中央値)と同一になるように設定している。
(2)第2側壁面6bの円弧形状の直径と、第4側壁面7bの円弧形状の直径は同一となる直径d2に設定しているとともに、この直径d2は、直径d1(d0)より大きな値になるように設定している。なお、(d2−d1)値は装着する円形インサートの内接円の直径の((公差の上限値)−(公差の中央値))と同一またはこの値に近い値にする。
上記(1)、(2)に記載したように、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bの円弧形状の直径d1、d2を設定することにより、円形インサート4ごとに必然的に生じる内接円の直径や外周面13の周方向の直径等に微小な寸法差があっても、各インサート4を工具本体の着座面3を含むインサート固定部9に、安定した状態で、かつ高精度に取付けることが可能になる。本発明において、この円形インサート4を着座面3に安定、かつ高精度に取付けことができる作用については後述する。
続いて、座受け面部6、7の断面形状について説明する。座受け面部6、7の断面形状、すなわち、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bの断面形状は基本的には同一であるので、第3側壁面7aの断面形状を図5、図6に基づいて説明する。
図5は着座面3に円形インサート4を装着していないときに、着座面3を上方から見たときの平面図を示している。図5に示す回動防止部8の拘束部8aは幅Wを有し、その先端部は平坦な面(平坦面)とした例を示しているが、拘束部8aは凸状に突出する凸円弧面としてもよい。図6は図5に示すA−A線における断面、すなわち、第3側壁面7aを通る断面図を示している。
図6に示すように、第3側壁面7aは、着座面3に垂直な線分に対して傾斜角度β1をもって着座面3から遠ざかる方向に傾斜するように立設させて形成され、その立設している高さはT1とされている。この立設高さT1は、着座面3に装着する円形インサート4の厚さh1より若干小さくする。また、座受け面部7を構成する他の第4側壁面7b、及び座受け面部6を構成する第1側壁面6a及び第2側壁面6bも、図6に示す第3側壁面7aと同様に、立設の高さT1を有し、傾斜角度β1をもって傾斜している。
なお、円弧形状をなす第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bが、着座面3に装着されたインサート4を正確な位置に位置決めするために外周面13に当接する部分は、少なくとも、外周面13であって、回動防止面15の上面部15bの上部から、切れ刃14の稜線部から所定の距離をおいた下方部分の範囲が含まれる。
この傾斜角度β1と、着座面3に装着する円形インサート4の外周面13の傾斜角度θ1との関係も、着座面3に円形インサート4を正確に位置決めして装着するために重要になる。傾斜角度β1と傾斜角度θ1は、下記の式(1)を満足するように設定することが望ましい。
0≦θ1−β1≦1.0 ・・・・・・・・・・・・・・・ 式(1)
第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bの傾斜角度β1と、円形インサート4の外周面13の傾斜角度θ1とを、上記式(1)を満足するように設定する理由は、次の通りである。外周面13の傾斜角度θ1と第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bの傾斜角度β1との差が「0」か「1°」以下と、両者の傾斜角度を極めて近い値に設定することにより、第1〜第4側壁面6aと6b、または7aと7bのいずれかが円形インサート4の外周面13に当接する長さを大きくすることが可能になる。これにより、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bは、円形インサート4を着座面3に精度高く位置決めし、かつ、安定した状態で装着することが可能になるからである。さらに、これにより、切削加工中において、円形インサート4の位置ズレや回動を防止することも可能になるからである。なお、外周面13の傾斜角度θ1、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bの傾斜角度β1は、15°程度に設定すればよい。
なお、上記式(1)を満足する条件で傾斜角度β1値を傾斜角度θ1値より小さな値とすることにより、着座面3の後端に設けた第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bは、インサート4の外周面13の切れ刃14の稜線に近い上部で当接することになり、円形インサート4の位置ズレや回動を防止することに有効である。しかし、β1値がθ1値より大きな値となると、着座面3に設けた第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bは、インサート4の外周面13の下部で当接することになり、位置ズレの原因となって不都合である。
本発明の実施形態となる刃先交換式切削工具1において、工具本体2の着座面3と、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bと、回動防止部8(拘束面8a)のうちの少なくとも一つには、硬質皮膜が被覆されていることが好ましい。硬質皮膜は周期律表4a、5a、6a族金属、Al、Si、Bの元素から選択される1種以上の元素を含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物のいずれかであることが好ましい。硬質皮膜を被覆する理由は、円形インサート4が工具本体2に繰り返し着脱することで生じる接触部の摩耗、摩滅を抑制することができ、工具本体2の受け面となる着座面3、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7b、回動防止部8(拘束面8a)の精度劣化を回避し、円形インサート4を確実に精度良く取付けることができるからである。
続いて、本発明の刃先交換式切削工具に装着する円形インサート4の構成を、図7〜図9に基づいて説明する。図7は円形インサート4の一実施形態を示す側面図、図8は図7に示す円形インサート4を底面方向から見たときの円形インサート4の外形を示す図、図9は図7に示す円形インサート4について、矢印B方向における断面の形状を1/2程度に縮小して示した図である。
円形インサート4は、平板状の円形をなしている。平面視で円形をなすインサート4の上面10の中央部には、この円形インサート4を工具本体2の着座面3にねじ締結により固定するための止めねじ5を挿入するためのねじ挿通孔11(図8参照)が設けられている。このねじ挿通孔11は、すくい面となる上面10から底面12まで貫通して形成されている。また、上面10と対向する底面12は、上面10よりも小径の円形をなしている。これにより、円形インサート4の上面10と底面12を繋ぐ外周面は、円錐形状をなす外周面13とされている。
すくい面となる上面10と外周面13とが交わる稜線部には、この稜線部の全周にわたって切れ刃14が形成されている。また、円錐形状をなす外周面13には、回動防止面15が形成されている。回動防止面15は、外周面13に少なくとも一つ設ければよいが、円錐形状をなす外周面13に沿って等間隔で複数個(複数面)設けることが望ましい。回動防止面15は、図7に示すように、その上面部15b近傍は円弧状をなしているが、この円弧状部の下端部から底面12方向に向かう面は図9に示すように平面状(平坦面)に形成されている。なお、回動防止面15の形状はその水平断面(図7に示す矢印B方向)が緩やかな凹状をなす形状としてもよい。
円形インサート4の外周面13に形成されている回動防止面15は、図7の側面部又は図9に示すように、外周面13に対して窪んだ平面状になっており、超硬合金粉末による円形インサート4の成形時にこの回動防止面15が形成されるようにする。
図8においては、円形インサート4の外周面13の周方向に、幅が所定の長さL1となる外周面13(13a)の部分を介して6個の回動防止面15が等間隔で形成されている例を示している。このように、円形インサート4の外周面13の周方向に、複数の回動防止面15を設ける場合には、回動防止面15が互いに交わることなく、かつ円錐形状をなす外周面13の一部となる外周面13aを介して、等間隔で回動防止面15が配置されるように形成する。
また、円形インサート4の外周面13に形成する回動防止面15の位置は、図7に示すように、回動防止面15の下端部15aは円形インサート4の底面12から高さh3の距離をおいた位置に、さらに、回動防止面15の上端部15bは円形インサート4の上面10から高さh4の距離をおいた位置に配置されるように形成している。すなわち、全ての回動防止面15は、その下端部15aは円形インサート4の底面12まで達していなく、同様に、全ての回動防止面15の上端部15bも円形インサート4の上面10、すなわち、切れ刃14に達しないように、外周面13に形成している。これにより、円形インサート4の上面10と底面12の形状は、円形の形状が確保され、かつ、外周面13の上面10と底面12の近傍の強度も確保されることになる。
ここで、図7に示すように、円形インサート4について、その厚さをh1(mm)、底面12から回動防止面15の上端部15bまでの高さをh2(mm)、底面12から回動防止面15の下端部15aまでの高さを前記したh3(mm)としたときに、着座面3に取付ける円形インサート4は上記したh1とh2については、次の式(2)を満足するように、回動防止面15を外周面13に形成することが望ましい。
(1/2)h1≦h2≦(2/3)h1・・・・・・・・式(2)
上記した式(2)において、高さh2を「h2≦(2/3)h1」を満たすように規定することにより、円形インサート4の上面10から回動防止面15の上端部15bに至るまでの高さh4を(1/3)h1以上確保できるので、切れ刃14の刃先強度を十分に維持することができる。
また、高さh2を「(1/2)h1≦h2」を満たすように規定することにより、回動防止面15の高さ、すなわち、円形インサート4の厚さh1方向の長さを十分に確保できるので、工具本体2に設けた回動防止部8の拘束面8aを、円形インサート4の回動防止面15に当接させる長さを十分確保して、切削加工中における円形インサート4の回動防止効果を得ることができるようになる。
さらに、円形インサート4において、底面12から回動防止面15の下端部15aまでの高さh3は、次の式(3)を満足するように、回動防止面15の下端部15aの位置を外周面13に形成することが望ましい。
(1/10)h1≦h3≦(1/3)h1 ・・・・・・・・・ 式(3)
を満足するように、回動防止面15の下端部15aの位置を外周面13に形成することが望ましい。
上記した式(3)において、高さh3を「(1/10)h1≦h3」を満足するように規定することにより、h3値は、円形インサート4の底面12から(1/10)h1以上の高さを確保することができるので、円形インサート4を着座面3に取付けるための固定面となる円形をなす底面12、及び底面12近傍の外周面13の強度を十分確保することができる。
さらに、底面12を着座面3に着座させたときにその接触面積(固定面積)を十分に確保することができるので、円形インサート4の回動防止に有効になる。また、高さh3を「h3≦(1/3)h1」を満たすように規定することにより、底面12から回動防止面15の下端部15aまでの高さを制限し、回動防止面15の高さ、すなわち、円形インサート4の厚さh1方向の長さの減少を抑制して、前記した回動防止部8の拘束面8aを回動防止面15に当接させる長さを十分確保することができるようになる。
また、本発明の刃先交換式切削工具において、図7に示すように、外周面13の傾斜角度をθ1、すなわち、円形インサート4の上面10と垂直な線分と外周面13とがなす角度をθ1とし、回動防止面15の傾斜角度をθ2、すなわち、インサート4の上面10と垂直な線分と回動防止面15とがなす角度をθ2としたときに、h3値を(1/10)h1≦h3として、底面12から回転防止面15の下端部15aまでの厚さを十分に確保するためには、0<θ2<θ1とすることが好ましい。
このように、本発明の刃先交換式切削工具1に用いる円形インサート4は、前記したように、円形インサート4の外周面13に設けた回転防止面15を、その下端部15aの位置は底面12から(1/10)h1以上とし、上端部12bの位置は底面12から(2/3)h1以下の範囲内になるように設けるとともに、さらに、回動防止面15の下端部15bの位置は底面12から(1/3)h1以下とし、上端部12bの位置は底面12から(2/3)h1以下の範囲内になるように設けている。
また、円形インサート4の外周面13に設けた回動防止面15が、外周面13の円周方向になす幅L2(図8参照)は、着座面3に円形インサート4を装着して切削加工を行うときに、工具本体2に設けた回動防止部8の拘束面8aを当接させて、円形インサート4の有効な回動防止効果が得られるように、円形インサート4の大きさ(内接円の寸法)、その厚さh1、回動防止面15を設ける数(回動防止面数)、回動防止部8の強度等を考慮して、適切に設定するようにする。
なお、円形インサート4の外周面13に回動防止面15を設ける数は、円形インサート4の大きさに応じて4〜8個程度設けることが望ましい。このように、複数個の回動防止面15を円形インサート4に設けることにより、例えば、切削加工の累計時間が所定の時間値に達すると、止めねじ5を緩めてこの円形インサート4を着座面3に対して所定の角度ほど回転させて、再度、止めねじ5により円形インサート4を着座面3に再固定し、未使用の切れ刃14部分を切削加工に使用することができる。このとき、工具本体2の回動防止部8の拘束面8aは、切削加工中に今回使用する切れ刃14部分に対応する回動防止面15に当接して、円形インサート4の回動を防止する効果を発揮することになる。
続いて、着座面3に円形インサート4を装着したときに、円形インサート4の外周面13と工具本体2に形成した回動防止部8との当接関係、及び外周面13と工具本体2に形成した座受け面部6、7との拘束関係を図10〜図13に基づいて説明する。
なお、図10は着座面3に円形インサート4を装着したときに、この円形インサート4を上方から見たときの平面図を示し、図11は図10におけるC−C線における断面を示す図、図12は図10におけるD−D線における断面を示す図である。また、図13は、円形インサート4の外周面13と工具本体2に形成した座受け面部6、7との係合関係を詳細に説明するための模式図である。
図10において、着座面3に円形インサート4を装着したときのC−C線における断面、すなわち、回動防止部8を通る断面を示す図11においては、円形インサート4の外周面13に形成した回動防止面15と回動防止部8の拘束面8aとの間には、所定の範囲値内の間隔(クリアランス)CLが生じるように、回動防止部8の拘束部8aの形成位置を設定している。着座面3に円形インサート4を装着したとき、この所定の値以内の間隔CLを生じるようにさせる理由は、次の通りである。
着座面3に装着する円形インサート4には、前記したように、微小な寸法差が生じる。例えば、内接円の直径を12.000mmとした円形インサートにおいて、許容できる公差を「±0.050」(12.000±0.050)と設定し、回動防止部8の拘束面8aの位置を、この公差の中央値(12.000mm)を基準に形成した場合に、CL値が0.100mmとなるように設計している。このとき、インサートの外周面の径の寸法公差も、内接円の直径公差と同じ「±0.050」である。
この場合の円形インサートは、例えば、装着時の止めねじが右ねじである場合の締め付けによって、約+3.4度程度、締め付け方向への回動が発生する可能性があるが、装着による取り付け精度に影響は小さい。
従って、着座面3に回動防止部8の拘束面8aを設ける位置は、装着する円形インサート4の公差を考慮して、前記した間隔CLの値が公差の(上限値)−(下限値)の値以内になる位置とすればよい。例えば、上記した内接円が「12.000±0.050」に設定されている場合、間隔CLの値を最大で0.130mmになるように拘束面8aを設けておくことで、締め付け方向への円形インサートの回動を最大4度以下に抑えることができる。
例えば、間隔CLの値が0.150mmになると、締め付け方向への回動は5度程度になってしまい、この状態で円形インサートを着座面3に装着して切削加工を行うと、切削加工の精度が得られなくなるからである。
上記した円形インサートの内接円の直径と間隔CLの値を一例として説明すると次のようになる。
内接円が公差の下限値である11.950mmの円形インサート4が着座面3に装着されたときには間隔CLが0.091mm、内接円が公差の中央値である12.000mmの円形インサート4が装着されたときには間隔CLが0.100mm、内接円が公差の上限値である12.050mmの円形インサート4が装着されたときには間隔CLが0.123mm、生じることになる。
加工を行う前からこの上記0.123mm程度の間隔CLが生じていても、本発明においては、円形インサート4は前記した座受け面部6と7により着座面3に安定した状態で、かつ高い位置精度を持って装着されるとともに、外周面13が座受け面部6と7の円弧形状をなす側壁面6a、6b、7a、7bにより拘束されるので、切削加工中において円形インサート4の回動を防止することができるようになる。
図10において、着座面3に円形インサート4を装着したときのD−D線における断面、すなわち、第3側壁面7aを通る断面を示す図12においては、円形インサート4の外周面13が第3側壁面7aに当接している状態を示している。この図12に示す例では、円形インサート4の内接円の公差が中央値である円形インサート4を装着した場合を示している。
続いて、本発明において、前記した座受け面部6と7により、この円形インサート4を着座面3に安定、かつ高精度に取付けことができる作用とその理由を、図13を参照して説明する。なお、この説明においては、円形インサート4の内接円(上面10)の直径の仕様を12.000mmとし、この内接円の寸法の公差は「±0.050mm」に設定した場合を例にして説明する。
(1)内接円の公差が下限値の円形インサート(内接円の直径は11.950mm)を着座面3に装着したときには、円弧形状をなす第2側壁面6bと第4側壁面7bの直径d2はこの装着した円形インサート4の直径より大きいので、この円形インサート4の外周面13は、図13(a)に示すように、第1側壁面6aと第3側壁面7aのP1点近傍において当接した状態で、精度良く着座面3に位置決めされ、この状態で円形インサート4は止めねじ5により固定されることになる。このP1での当接を、「内当たり状態」と呼ぶことにする。この内当たり状態では、円形インサート4が着座面3に位置決めされ際に位置ズレが懸念されるものの、円形インサート4の止めねじ5による締め付けの固定時に、回動防止部8方向への押圧により、インサート4の外周面13が第1側壁面6aと第3側壁面7aを変形させることはない。
(2)内接円の公差が中央値の円形インサート(内接円の直径は12.000mm)を着座面3に装着したときには、円弧形状をなす第2側壁面6bと第4側壁面7bの直径d2はこの装着した円形インサート4の直径より大きいので、この円形インサート4の外周面13は、図13(b)に示すように、この円形インサート4の内接円と等しい直径を有する第1側壁面6aと第3側壁面7aのそれぞれのP2の範囲において当接した状態で、精度良く着座面3に位置決めされ、この状態で円形インサート4は止めねじ5により固定されることになる。この状態が最も好ましい装着状態である。
(3)内接円の公差が上限値の円形インサート(内接円の直径は12.050mm)を着座面3に装着したときには、円弧形状をなす第1側壁面6aと第3側壁面7aの直径d1はこの装着した円形インサート4の直径より大きいので、この円形インサート4の外周面13は、図13(c)に示すように、第2側壁面6bと第4側壁面7bのそれぞれのP3、P4点の2点において当接した状態で、精度良く着座面3に位置決めされ、この状態で円形インサート4は止めねじ5により固定されることになる。
なお、P3点は、第1側壁面6a(第3側壁面7a)と第2側壁面6b(第4側壁面7b)の段差部6c(7c)よりも第1側壁面6a(第3側壁面7a)側にあり、第1側壁面6a(第3側壁面7a)の端部又は端部近傍になる。P4点は、第2側壁面6bと第4側壁面7bの端部又は端部近傍になる。このP4での当接を、「外当たり状態」と呼ぶことにする。この外当たり状態では、円形インサート4が着座面3に位置決めされた際に回動防止効果が有効に作用する。ただし、円形インサート4のねじ固定による締め付け時に、回動防止部8の方向への押圧により、インサート4の外周面13が第2側壁面6bと第4側壁面7bが僅かに変形する可能性がある。
このように、第1側壁面6aと第3側壁面7aの直径d1を装着する円形インサートの内接円の仕様、すなわち、公差の中央値d0に設定し、第2側壁面6bと第4側壁面7bの直径d2を装着する円形インサートの内接円の公差の中央値(d0)より大きく、かつ、公差の上限値以内であってこの上限値に近い値、例えば上記例では、公差の中央値(d0)より「0.050mm程度大きい値」に設定することにより、円形インサートを着座面3に精度良く装着して固定することができるようになる。
上記した本発明に係る刃先交換式切削工具において、工具本体2の材質は硬度がHRC44〜50の合金工具鋼(SKD61相当材)を使用することが望ましい。また、工具本体2への着座面3、座受け面部6及び7、回動防止部8、切屑排出溝等の加工は、合金工具鋼の素材を3軸NC加工機の制御により、ボールエンドミルなどの切削工具を用いて行うことができる。なお、座受け面部6及び7となる第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bの加工は、着座面3に対して縦方向に切削工具、例えば、小径のボールエンドミルを移動制御して、工具の回転軸線Oと平行方向である、加工面の縦方向に微小な加工筋(微小な凹凸状の加工跡)が生じるようにするとよい。
この縦方向の微細な加工筋が第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bの円弧形状をなす側面部に残っていると、円形インサート4の側面部13が第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bに当接して円形インサート4を拘束したときに、この拘束力が増加することになるので、切削加工中において、円形インサート4の回動防止に効果を発揮することになる。
上記した実施形態においては、着座面3に円弧形状をなす側壁面を備えた2つの座受け面部6、7を設け、この座受け面部6、7のそれぞれは間隔を設けて形成されているとともに、円弧形状なす側壁面は、円弧形状の直径が異なる少なくとも2つの第1側壁面6aと第2側壁面6b、及び第3側壁面7aと第4側壁面7bから構成されている例について説明したが、本発明においては、座受け面部6、7のそれぞれは、円弧形状の直径が異なる3つの円弧形状をなす側壁面を、前記した段差部を介して一体に連結した構成としてもよい。
座受け面部6、7のそれぞれを3つの円弧形状をなす側壁面から構成する場合には、座受け面部6と7の間に設けた間隙Kから着座面3の外周辺に沿って遠くなるにつれて円弧形状の直径を大きくするとともに、間隙Kに最も近い円弧形状の直径は着座面3に装着する円形インサートの直径(公差の中央値)とし、間隙Kから最も遠い円弧形状の直径は着座面3に装着する円形インサートの公差の上限値にする。
座受け面部6、7のそれぞれを、上記した直径が異なる3つの円弧形状をなす側壁面を一体に連結した構成にすると、円弧形状をなす側壁面のNC制御による加工制御が複雑になるが、円形インサートの微小な寸法精度のばらつきに対して、この間隔をおいて設けた2対の3つの円弧形状をなす側壁面により、円形インサートの外周面をインサート固定部9により精度高く位置決めして拘束することが可能になる。
なお、本発明の刃先交換式切削工具は、工具径(外径)が30〜125mm程度の工具に適用できるが、内接円の直径が小径の10mm〜15mmの小径の円形インサートを装着する小径の刃先交換式切削工具においては、1つの座受け面部に設ける円弧形状をなす側壁面の数は、製作時の加工性を考慮すると2つ設けることが適しているが、例えば、工具径が100mm以上の刃先交換式切削工具においては、1つの座受け面部に円弧形状をなす側壁面を3つ設けるようにしてもよい。
続いて、本発明に係る刃先交換式切削工具を試作して、インサート固定部へ円形インサートをねじ止めにより装着したときに、円形インサートの装着精度を確認する実験を行った。以下、この確認実験の方法とその結果について説明する。
確認実験を行うために試作した工具本体の基本仕様は、最外径が50mm、インロー部の穴径が22.225mm、長さが50mm、3枚刃を有するボア形状、すなわち、着座面を3つ備え、切れ刃の軸方向すくい角は「+4度」とした。
そして、本発明例となる刃先交換式切削工具の工具本体2としては、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7bの傾斜角度β1が14.5度、その高さT1が2.80mm、回転防止部8の幅Wが3.0mm、着座面3から回動防止部8の上端までの高さT2が0.50mm、回動防止部8の拘束面8aは平坦面とした工具本体(工具本体A)を試作した。また、回動防止部8を設けていない比較例となる工具本体(工具本体B)も試作した。
試作した工具本体の基材は、SKD61相当の合金工具鋼を用いて旋盤加工により外観形状を整えて表面硬度HRC44〜46に調質した後、アーバとの取付け面およびインロー部を研磨加工により仕上げた。また、工具本体の円形インサート固定部である着座面、第1〜第4側壁面6a、6b、7a、7b、及び回動防止部は、マシニングセンターにてフライス加工により本発明例となる刃先交換式切削工具の工具本体Aと、従来例となる刃先交換式切削工具の工具本体Bを作製した。なお、工具本体A、Bともに、着座面3と回動防止部8(拘束面8a)には硬質皮膜を被覆しなかった。
なお、試作した工具本体Aは、第1、第3側壁面6a、7aの円弧形状の直径d1値を12.000mm、第2、第4側壁面6b、7bの円弧形状の直径d2値を12.050mmとした。一方、工具本体Bは、座受け面部の側壁面は2つの円弧形状からなる側壁面を備えておらず、1つの円弧形状からなる側壁面から構成された座受け面部とし、その円弧形状の直径は12.000mmとした。試作した工具本体A、Bの仕様を表1に示す。
表1には、試作した工具本体A、Bについて、((円形インサートの外周面の傾斜角度θ1)−(第1〜第4側壁面の傾斜角度β1))、円形インサートの回動防止面の傾斜角度θ2、((円形インサートの回動防止面の傾斜角度θ2)−(回動防止部の拘束面の傾斜角度β2))、円形インサートを着座面に止めねじにより締付けて固定するときの「ねじ取付け時のトルク」の値(3.0Nm)、等も示している。
Figure 0005817230


























試作した工具本体A、Bに装着する円形インサートは、外周面に回動防止面を4つ備え、内接円寸法の公差中央値が12.000mm、寸法公差が±0.050mmの超硬合金製とし、それぞれ3種の円形インサート、すなわち、内接円寸法の公差が上限値となる12、050mmとなる円形インサート(試料番号1)、同じく公差が中央値である12.000mmとなる円形インサート(試料番号2)、下限値となる11.950mmとなる円形インサート(試料番号3)を試作した。試作した円形インサート(試料番号1〜3)の仕様を表2に示す。
Figure 0005817230



























続いて、試作したそれぞれの工具本体A、Bに、試作した円形インサートを、締付けトルク3.0(Nm)の条件でねじ止めにより着座面に装着して取付けた4種の刃先交換式切削工具(試料番号11〜14)を作製した。そして、この試作した4種の刃先交換式切削工具について、装着した円形インサートのインサート固定部に対する装着精度を測定し、その測定結果を評価した。
なお、この測定結果の評価において、測定結果の良否を判定する許容範囲の基準は、次のように設定した。
すなわち、切れ刃にかかる加工の切削負荷を均一化して、突発的な損傷を回避することを考慮して、装着した円形インサートの「回転軸線方向の基準点からの差」の最大値が0.120mm以下、「半径方向の基準点からの差」の最大値が0.240mm以下、と設定した。
また、円形インサートの「回動角度」の許容範囲は±5度以内とした。ここで、回動角度は、インサートの回動防止面と工具本体の回動防止部の拘束面との位置関係が平行となっている状態を回動角度ゼロ度とした。回動角度の値がプラスの場合は右回転を、マイナスの場合は左回転を示す。なお、回動角度の測定は、円形インサートの上面に形成した位置合せ用マークを画像処理により測定した。
なお、上記「回転軸方向の基準点からの差」とは、着座面を3つ形成したそれぞれの工具本体A、Bにおいて、着座面に番号(着座面の位置番号)1〜3を付与し、着座面の位置番号「2」に該当する着座面に装着した円形インサートを測定の基準点(基準座標点)とし、他の着座面の位置番号について測定した座標値に基づいて算出した回転軸線O方向への変位量を示す。この円形インサートのインサート固定部に対する装着精度の測定は、対話式の画像処理を応用した測定装置を用いて、次のようにして測定した。
(1)まず、工具本体A(B)を、測定装置の回転ステージ上に回転軸線Oを合わせ、クランプで固定した後、着座面の位置番号2に装着した円形インサートの回転軸線O方向で最も高い点(刃先交換式切削工具では切れ刃の最下点となる)を、対話式の画像処理により測定の基準点となる座標値として求めた。
(2)続いて、測定装置の回転ステージを120(度)回転させ、着座面の位置番号3に装着したインサートについて、回転軸線O方向で最も高い点の座標値を求め、上記基準点となる座標値との変位量を求めた。
(3)続いて、測定装置の回転ステージを、さらに120(度)回転させ、着座面の位置番号1に装着したインサートについて、回転軸線O方向で最も高い点の座標値を求め、上記基準点となる座標値との変位量を求めた。
(4)そして、上記(1)〜(3)で求めた回転軸方向に対する変位量の大きい値を「回転軸方向の基準点からの差」の最大値(3点差の最大値)とした。
また、上記した「半径方向の基準点からの差」とは、上記と同様に、測定装置の回転ステージ上に工具本体A(B)の回転軸線Oを合わせ、この回転軸線Oと平行な方向であって回転軸線Oから最も離れた円形インサート上の点の座標(刃先交換式切削工具では切れ刃の最外周点となる)を対話式の画像処理により基準点(着座面の位置番号「2」)となる座標値と、他の二つの着座面における最外周点位置の座標値を測定した。そして、これら測定した座標値から「半径方向の基準点からの差」を求めた。
表3は、本発明例となる試料番号11〜12に係る刃先交換式切削工具について、3つの着座面(着座面の位置番号)別に装着した円形インサートの仕様、CL値、上記した円形インサートの装着精度を測定した結果を示している。また、表4は、比較例となる試料番号13〜14に係る刃先交換式切削工具について、3つの着座面(着座面の位置番号)別に装着した円形インサートの仕様、上記した円形インサートの装着精度を測定した結果を示している。
Figure 0005817230



























Figure 0005817230



























なお、表3に示す試料番号11の刃先交換式切削工具は、上記工具本体Aを用い、3つの着座面すべてに表2に示す試料番号2の仕様を備えた円形インサートを装着した。この試料番号2の円形インサートは、その内接円の寸法は公差の中央値である12.000mmである。
同じく表3に示す試料番号12の刃先交換式切削工具は、上記工具本体Aを用い、3つの着座面に、表2に示す異なる内接円寸法(直径)をもつ試料番号1、2、3の円形インサートを装着した。試料番号1の円形インサートの内接円寸法は、寸法公差の上限値である12.050mm、試料番号3の円形インサートは、内接円寸法は、寸法公差の下限値である11.950mmである。これら試料番号11と12の刃先交換式切削工具は、本発明例となる刃先交換式切削工具となる。
表4に示す試料番号13の刃先交換式切削工具は、工具本体Bを用い、3つの着座面すべてに表2に示す試料番号2の仕様を備えた円形インサートを装着した。同じく表4に示す試料番号14の刃先交換式切削工具は、工具本体Bを用い、3つの着座面に表2に示す異なる内接円寸法(直径)をもつ試料番号1、2、3の円形インサートを装着した。これら試料番号13と14の刃先交換式切削工具は、前記したように比較例となる仕様を備えた工具本体Bを用いているので、比較例の刃先交換式切削工具になる。
この円形インサートの装着精度に関する測定試験を行った結果を、表3及び表4の評価結果欄に示している。この測定試験の結果から次のことが判明した。
(1)本発明例となる試料番号11の刃先交換式切削工具においては、3つのインサート切れ刃における、回転軸方向の基準点からの差の最大値(3点差の最大値)は0.010mm、半径方向の基準点からの差の最大値(3点差の最大値)は0.015mmと、極めて少なく、円形インサートが精度高くインサート固定部に装着されていることが確認された。また、このことは、工具本体Aの3つの着座面3は高精度に加工され、すべて同一形状に形成されていることが確認できたことを示し、これを本発明における基準の工具本体2とすることができる。また、表3に示すようにCL値は設計値通り、すべて0.100mmとなっていた。
(2)本発明例となる試料番号12の刃先交換式切削工具においては、着座面3に装着した円形インサ−トの内接円の寸法のばらつきの影響により、各円形インサートによって回転軸方向の基準点からの差、半径方向の基準点からの差にばらつきが大きくなっていた。このため、回転軸方向の基準点からの差の最大値(3点差の最大値)は0.101mm、半径方向の基準点からの差の最大値(3点差の最大値)は0.190mmになり、試料番号11より差が大きくなったが、円形インサートの取り付け精度において、許容できる範囲内であった。
また、CL値は、各インサートによって異なり、インサート番号1が0.123mmと最大値となり、インサート番号3が0.091mmと最小値となった。これらのCL値のとき、インサートの回動角度は、インサート番号1が±4.2度、インサート番号3が±3.1度になり、許容範囲内であった。
(3)表4に示す比較例となる試料番号13の刃先交換式切削工具においては、3つのインサート切れ刃における、回転軸方向の基準点からの差の最大値(3点差の最大値)は0.012mm、半径方向の基準点からの差の最大値(3点差の最大値)は0.016mmとなり、精度良く取り付けられていることが確認できた。このため、回動防止対策の無い従来技術における基準の工具本体とすることが可能である。しかしながら、実際に装着する円形インサートの内接円直径にはばらつきが存在するため、側壁面が1つの円弧径よりなる従来技術では、精度良く取り付けることができない。
(4)比較例となる試料番号14の刃先交換式切削工具においては、装着した円形インサートの内接円直径のばらつきの影響により、各円形インサートによって回転軸方向の基準点からの差、半径方向の基準点からの差に大きな差異がみられた。このため、回転軸方向の基準点からの差の最大値(3点差の最大値)は0.140mm、半径方向の基準点からの差の最大値(3点差の最大値)は0.269mmであった。これにより、工具本体Bを用いた試料番号14は、円形インサートの取り付け精度において、許容範囲外となってしまった。また、回動防止部を設けていない、すなわち、回動防止対策が施されていないため、夫々の円形インサートの回動角度は、止めねじの締め付け操作によって、±5度以上の回転を示した。
このように、試料番号14の工具本体Bを用い、装着した円形インサートの内接円寸法が公差内(12.000±0.050)でばらつきを持ったインサートを装着したときには、円形インサートの内接円寸法のばらつきに対して、このばらつきを補完して着座面に高精度な位置に装着することができなかった。このため、上記した本発明のように、座受け面部6、7の側壁面に直径が異なる複数の円弧形状をなす側壁面を形成すると、装着する円形インサートの内接円寸法に微小なばらつきが存在していても、この円形インサートを着座面に精度良く装着することが可能になる。
図14は、工具本体2の着座面3に装着した円形インサート4の切れ刃の軸方向すくい角αを示しており、この軸方向すくい角αは「正角」である例を示している。図13に示す直線Oは、工具本体2の回転軸線を示している。
本発明の刃先交換式切削工具においては、円形インサート4の切れ刃14の軸方向すくい角αを負とした場合には、この円形インサート4を着座面3に固定するために使用する止めねじ5は、「右ねじ」を選択して切削加工中におけるねじの緩みを回避することが望ましい。また、円形インサート4の切れ刃の軸方向すくい角αを正とした場合には、この円形インサート4を着座面3に固定するために使用する止めねじ5は、「左ねじ」を選択してねじの緩みを回避することが望ましい。この理由は次の通りである。
着座面に、切れ刃の軸方向すくい角が正の角度に装着されている円形インサートにおいては、切削加工時時の切削負荷はこのインサートを反時計方向(左回転方向)へ回転させようとする力として作用する。この力は、被削材と円形インサートの切れ刃との相対運動において、円形インサートの円周方向に作用する成分による。従って、このとき、円形インサートを着座面に左ねじを用いた締付けにより装着することによって、円形インサートを回転させようと作用する力の方向と、左ねじの締まる方向が一致しているため、締り勝手となり、止めねじ5の緩みの発生を回避することができる。
一方、切れ刃の軸方向すくい角が負の角度に装着されている円形インサートにおいては、円形インサートに作用する力は上記と逆方向になるので、止めねじ5は右ねじを選択することが望ましい。
以上に説明した本発明に係る刃先交換式切削工具の実施形態においては、着座面に装着する円形インサートの外周面に回動防止面を設け、工具本体2の着座面の後端部には回動防止部を設けた例について説明したが、本発明は、工具本体2は回動防止部を設けない構成とし、外周面に回動防止面を設けていない円形インサートを着座面に装着する構成とした場合でも、2つの座受け面部により円形インサートを着座面に高い精度で装着することが可能になる。
1: 刃先交換式切削工具
2: 工具本体
3: 着座面
4: 円形インサート
5: 止めねじ
6: 座受け面部、6a:第1側壁面、6b:第2側壁面、6c:段差部
7: 座受け面部、7a:第3側壁面、7b:第4側壁面、7c:段差部
8: 回動防止部、 8a:拘束面
9: インサート固定部
10: 上面(すくい面)
11: ねじ挿通孔
12: 底面
13: 外周面
14: 切れ刃
15: 回動防止面
h1: 円形インサートの厚さ
h2: 円形インサートの回動防止面の上端から円形インサートの底面までの高さ
h3: 円形インサートの回動防止面の下端から円形インサートの底面までの高さ
h4: 円形インサートの回動防止面の上端から円形インサート上面までの高さ
L1: 円形インサートの外周面に設けた隣接する回動防止面間の幅
L2: 回動防止面の円周方向の幅
T1: 第1〜第4側壁面の高さ
T2: 回動防止部の高さ
O : 回転軸線
θ1: 円形インサートの外周面の傾斜角度
θ2: 円形インサートの回動防止面の傾斜角度
β1: 第1〜第4側壁面の傾斜角度
β2: 回動防止部の拘束面の傾斜角度

Claims (7)

  1. 工具本体に形成したインサート着座面に、円形で平板状をなし、すくい面となる上面と、前記上面と対向して配置されて該上面より小径の底面と、前記上面と前記底面をつなぐ円錐形状をなして逃げ面となる外周面と、前記すくい面と前記逃げ面によって形成された稜線部に切れ刃を備えた円形インサートが着脱自在に装着される刃先交換式切削工具において、
    前記インサート着座面は、前記インサート着座面に装着する前記円形インサートの前記外周面を拘束するために円弧形状をなす側壁面を備えた2つの座受け面部を備え、
    前記2つの座受け面部のそれぞれは間隔を設けて形成されているとともに、前記円弧形状なす側壁面は、円弧形状の直径が異なる少なくとも2つの側壁面から構成され、
    前記座受け面部における前記円弧形状の直径が異なる2つの側壁面のうち、前記座受け面部の一方が、前記間隔の一方の側から第1側壁面と、前記第1側壁面と一体に形成された第2側壁面から構成され、
    前記座受け面部の他方は、前記間隔の他方の側から第3側壁面と、前記第3側壁面と一体に形成された第4側壁面から構成され、
    前記第1側壁面と前記第3側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d1に設定されているとともに、前記直径d1は前記円形インサートの内接円の直径d0に設定され、
    前記第2側壁面と前記第4側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d2に設定されているとともに、前記直径d2は前記直径d1より大きく設定されていることを特徴とする刃先交換式切削工具。
  2. 前記第1〜第4側壁面は、前記インサート着座面と直交する線分に対して工具軸方向に傾斜角度β1をもって傾斜して立設され、
    前記円形インサートの外周面の傾斜角度をθ1としたときに、下記の式(1)を満足していることを特徴とする請求項に記載の刃先交換式切削工具。
    0≦θ1−β1≦1.0 ・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
  3. 前記第1〜第4側壁面は、縦方向に複数の加工筋を有していることを特徴とする請求項又は請求項に記載の刃先交換式切削工具。
  4. 前記インサート着座面に装着される前記円形インサートは、その前記外周面に少なくとも一つの回動防止面を備え、前記2つの座受け面部の間の前記間隔に、切削加工中において前記円形インサートの前記回動防止面に当接する回動防止部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式切削工具。
  5. 前記インサート着座面と、前記第1〜第4側壁面と、前記回動防止部の少なくとも一つには、周期律表4a、5a、6a族金属、Al、Si、Bの元素から選択される1種以上の元素を含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物のいずれかからなる硬質皮膜が被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
  6. 前記円形インサートの厚さをh1、前記底面から前記回動防止面の上端までの高さをh2、前記底面から前記回動防止面の下端までの高さをh3としたとき、前記h2は下記の式(2)を、前記h3は下記の式(3)を満足していることを特徴とする請求項又は請求項5に記載の刃先交換式切削工具。
    (1/2)h1≦h2≦(2/3)h1 ・・・・・・・式(2)
    (1/10)h1≦h3≦(1/3)h1 ・・・・・・式(3)
  7. 前記円弧形状をなす側壁面は、前記円弧形状の直径が異なる3つの側壁面から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式切削工具。
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