JP5817221B2 - 竪型ミルの負荷監視方法及び装置 - Google Patents

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本発明は、竪型ミルの寿命を算出する竪型ミルの負荷監視方法及び装置に関するものである。
竪型ミルは、回転する粉砕テーブルに塊状の石炭を供給し、粉砕テーブルに粉砕ローラを押圧して、塊状の石炭を粉砕して微粉炭を生成するものである。石炭の粉砕時には激しい振動が発生し、竪型ミルで振動による応力が集中する部位には疲労破壊によるクラックが発生する。従って、クラックを発生する時期を診断すること、或はクラックを発生する箇所の応力を軽減して延命処置をする等が要求される。
従来、既設の竪型ミル(実機)での計測データから、歪みの変動履歴と変動振幅の頻度分布を求め、これを用いて新機種、或は改良型の竪型ミルについて寿命計算を行っていた。更に、実機の計測データがない(計測できない)場合には、大きさの近い複数の機種の計測データから、内挿・外挿により歪みの変動履歴と変動振幅の頻度分布を予測し、寿命計算を行っていた。
或は、稼働中の竪型ミルでクラックが発生した場合、現行形状(クラックの生じた形状)の該当位置の歪みを固有振動解析(FEM解析)によって求めて寿命計算を行い、その位置の寿命が現行より長くなる様な改良型形状を考案して同様に寿命計算を行い、改良効果を評価し、更に確認していた。
更に、新機種を設計する場合には、実機にて得られた情報に基づき疲労設計がなされていた。
ところが、実機での計測データから、歪みの変動履歴と変動振幅の頻度分布を求め寿命計算を行う方法では、計測データは過去にクラックが発生した実績のある箇所か、その近傍でのものしかない為、クラックが発生した位置から離れた箇所の歪みは正確に予測できない。
又、大幅な形状変更を施した新機種について寿命計算を行いたい場合、過去の計測箇所に相当する位置が特定できず、寿命の予測が困難になる。更に、歪みの計測データは、竪型ミル本体の振動特性(応答特性)を含んだデータになっているので、データを計測した既設実機と設計中の新機種で本体の振動特性が異なる場合には、既設実機の計測データをそのまま用いることができない、等の問題があった。
尚、特許文献1には、新品粉砕ローラと旧品粉砕ローラとで振動の発生状態が異なることを考慮して寿命を判断する方法であり、応力集中部の歪みを測定し、測定した歪みに基づいて等価振動応力を求め、等価振動応力から新品粉砕ローラと旧品粉砕ローラの1サイクルでの損傷度を求め、1サイクルでの損傷度から任意の運用時間での応力−頻度ヒストグラムを作成し、これを基に任意の運用時間迄の損傷度を累積した累積損傷度により寿命を予測することが開示されている。
特開2010−19577号公報
本発明は斯かる実情に鑑み、監視対象の竪型ミルについて歪み測定を行うことなく、容易に監視部位の寿命の計算が実施できる竪型ミルの負荷監視方法及び装置を提供する。
本発明は、運転条件に応じた粉砕ローラの粉砕荷重を予め求め、又竪型ミルの監視対象部位の振動伝達関数を予め求め、運転条件を設定した場合に、該運転条件に対応する前記粉砕ローラの粉砕荷重及び前記振動伝達関数に基づき前記竪型ミルの任意の部位の歪み、振動応力の少なくとも一方を演算する竪型ミルの負荷監視方法に係るものである。
又本発明は、既設の竪型ミルのFEMモデルを求め、該既設の竪型ミルの任意の部位に歪み測定センサを設け、種々の運転条件で粉砕を実行した場合に測定した前記任意の部位の歪みと、前記FEMモデルから求めた前記任意の部位の振動伝達関数とに基づき前記種々の運転条件それぞれに対応する前記粉砕荷重を求める竪型ミルの負荷監視方法に係るものである。
又本発明は、竪型ミルの運転条件と運転条件に対応する粉砕ローラの粉砕荷重との関係を示すデータテーブルと監視対象の竪型ミルのFEMモデルとを格納した記憶部と、運転条件を設定する入力部と、該入力部から入力された運転条件と、該運転条件に対応する粉砕荷重と、前記FEMモデルに基づき求めた振動伝達関数とに基づき任意の部位の歪み、振動応力の少なくとも一方を演算する演算処理部とを具備する竪型ミルの負荷監視装置に係るものである。
本発明によれば、運転条件に応じた粉砕ローラの粉砕荷重を予め求め、又竪型ミルの監視対象部位の振動伝達関数を予め求め、運転条件を設定した場合に、該運転条件に対応する前記粉砕ローラの粉砕荷重及び前記振動伝達関数に基づき前記竪型ミルの任意の部位の歪み、振動応力の少なくとも一方を演算するので、監視対象の竪型ミルについては、歪み測定等の作業を必要とせず、任意の部位の寿命の計算を行え、更に稼働中の竪型ミルに対しても竪型ミルを停止させることなく、寿命の計算、損傷度の計算を行うことができ、更に形状が異なり竪型ミルの振動特性が異なる場合でも同様に寿命の計算、損傷度の計算を行うことができる。
又本発明によれば、竪型ミルの運転条件と運転条件に対応する粉砕ローラの粉砕荷重との関係を示すデータテーブルと監視対象の竪型ミルのFEMモデルとを格納した記憶部と、運転条件を設定する入力部と、該入力部から入力された運転条件と、該運転条件に対応する粉砕荷重と、前記FEMモデルに基づき求めた振動伝達関数とに基づき任意の部位の歪み、振動応力の少なくとも一方を演算する演算処理部とを具備するので、監視対象の竪型ミルについては、歪み測定等の作業を必要とせず、任意の部位の寿命の計算を行え、更に稼働中の竪型ミルに対しても竪型ミルを停止させることなく、寿命の計算、損傷度の計算を行うことができる等の優れた効果を発揮する。
竪型ミルの概略図である。 本実施例に係る竪型ミルの負荷監視方法を示すフローチャートである。 本実施例に係る竪型ミルの負荷監視装置を示すブロック図である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
本発明に係る竪型ミルの負荷監視装置では、竪型ミルに於ける種々の運転状態での粉砕ローラの粉砕荷重と竪型ミルの振動伝達関数とを予め求めておき、運転状態を特定した場合の、特定した運転状態に対応する粉砕荷重と振動伝達関数を用いて、竪型ミルの任意の部位の歪み、振動応力を求め、求めた振動応力に基づき疲労状態の監視を行うものである。
又、本発明は、竪型ミルの規模、形式に拘らず、運転状態即ち石炭の粉砕状態、例えば単位時間当りに粉砕する石炭の量、或は起動停止の頻度が定れば、運転状態に対応して石炭を粉砕する際にローラに発生する粉砕荷重(以下、単に粉砕荷重と称す)は変りがないことに着目し、粉砕荷重を竪型ミルに共通する普遍的なファクタとして疲労状態の監視を行うものである。
先ず、図1を参照し、既設の竪型ミル1の一例について略述する。
ケーシング2の下部に粉砕テーブル3が設けられ、該粉砕テーブル3には粉砕ローラ4が転動し、該粉砕ローラ4はローラ加圧ユニット5によって前記粉砕テーブル3に押圧される。
前記ケーシング2の上側には石炭給排部6が設けられ、前記粉砕テーブル3の回転軸心上にパイプ状のシュート7が設けられ、該シュート7から塊状の石炭が前記粉砕テーブル3の中心部に供給される様になっている。又、ケーシング2の上部には前記シュート7を中心に回転する分級機8が設けられている。
前記シュート7より前記粉砕テーブル3上に供給された石炭は、遠心力で外周方向に移動し、前記粉砕ローラ4で粉砕され粉状となり、前記粉砕テーブル3の外周から吹上がる搬送用空気に乗って粉砕炭流9として上昇する。
該粉砕炭流9は、前記分級機8で分級され、所定粒子以下の微粉炭は、前記石炭給排部6の微粉炭送給管11を介して微粉炭バーナ(図示せず)に供給される。又、所定粒子以上の粗粉炭は前記粉砕テーブル3上に落下し、前記粉砕ローラ4により再度粉砕される。
種々の運転状態に対応した粉砕荷重を求める一例として、上記した既設の竪型ミル1を利用する場合を説明する。
前記ケーシング2の任意の部位に歪みセンサ13を取付ける。該歪みセンサ13が設けられる部位は、前記ケーシング2の外面の作業し易い場所でよい。尚、好ましくは前記粉砕ローラ4の振動が減衰することなく伝達される場所が好ましく、例えば前記粉砕ローラ4の支持部の近傍等である。又、精度を向上する為、歪みセンサ13は複数の部位に設けてもよい。
次に、図2を参照し、本発明の実施例に係る竪型ミル1の負荷監視方法について説明する。
竪型ミル1を種々の運転条件、例えば給炭量1t/h、2t/h、3t/h等で運転し、各運転条件で発生する歪みを前記歪みセンサ13により測定し、この歪みデータより歪み振動曲線を取得し(STEP:01)、更に歪み振動曲線からフーリエ変換(FFT)により各運転条件毎の歪みスペクトル(周波数成分の分布)を求める(STEP:02)。
次に、前記粉砕ローラ4に既知の粉砕荷重を負荷して同様に歪みスペクトル(以下、較正用歪みスペクトルと称す)を求める(STEP:03)。ここで、既知の粉砕荷重を与える方法としては、前記ローラ加圧ユニット5による加圧力を所定の値に制御し、前記粉砕ローラ4の押圧力を基準粉砕荷重に設定する等である。尚、粉砕荷重とは、図1中でP点で発生する荷重を示す。
各運転条件で得られる前記歪み振動曲線から歪みスペクトルを作成する。更に前記較正用歪みスペクトルと前記基準粉砕荷重との関係に基づき、作成した歪みスペクトルから粉砕荷重のスペクトルを求める(同定する)(STEP:04)。従って、歪みを実測することで、粉砕荷重スペクトルを算出することができる。
粉砕荷重を算出する他の方法としては、竪型ミル1に於ける前記歪みセンサ13が設けられた部位についての振動伝達関数AをFEM(有限要素法)により求め(STEP:05)、前記歪みセンサ13で得られた歪み振動曲線より、歪みスペクトルを作成し、該歪みスペクトルと前記振動伝達関数Aから粉砕ローラ4に作用する粉砕荷重Fのスペクトルを求めてもよい。
尚、粉砕ローラ4に作用する粉砕荷重Fと、監視する部位に発生する歪みε、任意の部位の振動伝達関数Aとすると、
ε=F×A…(1式)で表される。
ここで振動伝達関数Aは、竪型ミルの構造から求められる関数であり、又質量密度、剛性、形状、構造等に関する要素を用いてFEMモデルを作成できる。更にFEMモデルで監視部位を特定することで振動伝達関数Aが得られる(STEP:05)。又、監視部位の振動伝達関数Aは、FEMモデルの荷重入力点(竪型ミル1の場合は粉砕ローラ4)に、単位振幅の振動荷重を入力したときの、その部位での歪みとして求められる。
従って、前記歪みセンサ13の位置で得られた歪みスペクトルと前記歪みセンサ13の部位についての振動伝達関数Aに基づき、前記粉砕ローラ4の粉砕荷重Fのスペクトルが算出される(STEP:06)。
又、この粉砕荷重のスペクトルは、運転条件によって決定されるものであり、前記竪型ミル1の構造の相違に左右されない。
種々の運転条件に対応して、運転条件毎の粉砕荷重スペクトルを取得し、以後、形式の異なる竪型ミル1、或は改良した竪型ミル1に対して疲労診断をする場合の粉砕荷重スペクトルデータとして保存する。
次に、監視対象となる竪型ミル1について、FEM(FEM:固有振動解析)モデルを作成する。例えば、新規に設計する竪型ミル1に対して疲労診断(疲労設計)する場合、設計上で得られる構造上のデータ、例えば、質量密度、剛性、形状、構造のデータを基にFEMモデルを作成する(STEP:07)。
監視部位を設定し、前記FEMモデルから監視部位に対する振動伝達関数Aを求める(STEP:08)。
運転条件を決定し、決定した運転条件に対応する粉砕荷重のスペクトルを前記粉砕荷重スペクトルから取得する。この振動伝達関数Aと前記粉砕荷重スペクトルとに基づき前記(1式)より、歪みスペクトルを求める(STEP:09)。
得られた歪みスペクトルに基づきフーリエ逆変換(IFFT)により、時系列の歪み振動曲線に変換し、時系列の歪みデータをレインフロー法、レンジペア法等の適宜な計数方法を用いて歪みの変動振幅の大きさの頻度分布に換算して等価応力振幅を求める。
求められた等価応力振幅と疲労曲線より寿命計算、損傷度の計算、及び予寿命予測を行う(STEP:10)。
尚、時系列の歪みデータから等価応力振幅を求め、求められた等価応力振幅と疲労曲線より寿命計算、及び予寿命予測を行うことについては、特許文献1にも記載されている。
上述した様に、既設の竪型ミル1により、粉砕荷重スペクトルデータを取得しておけば、他の監視対象の竪型ミル1について歪み測定をすることなく、監視対象の竪型ミル1の構造上のデータからFEMモデルを作成し、そのFEMモデルを使って振動伝達関数を求めるだけで、任意の部位の疲労診断、疲労設計を実行できる。又、既設の竪型ミル1から歪みデータを取得する際も、歪みセンサ13は作業し易い部位に設置すればよいので、竪型ミル1を長時間停止する必要がなく、又歪みセンサ13の破損防止の為の養生等する必要がない。更に、運転中でも計測準備と計測が可能である。
又、新設計の竪型ミル1についての疲労診断を実行する場合、試運転の時期等に、歪みセンサ13を設置し、歪みスペクトルを求め、更に粉砕荷重スペクトルを求める様にしてもよい。
尚、上記説明では、歪みスペクトルを求めて粉砕荷重スペクトルを求めたが、加速度を求め、加速度スペクトルに基づき粉砕荷重スペクトルを求めてもよい。
次に、図3を参照し、上記竪型ミル1の負荷監視方法を実施する場合の竪型ミルの負荷監視装置15について説明する。
竪型ミルの負荷監視装置15は、主にキーボード、タッチパネル等の入力部16、CPUで代表される演算制御部17、半導体メモリ、HDD等の記憶部18、ディスプレイ、プリンタ等の出力部19から構成される。前記演算制御部17は、更に歪みスペクトル演算部21、IFFT(逆フーリエ変換)部22、等価振動応力演算部23、寿命演算部24を有する。又、前記記憶部18には種々の運転条件と、該運転条件毎に対応した粉砕荷重のスペクトルとが記録されたデータテーブル、監視対象の竪型ミルのFEMモデル等寿命演算に必要なデータ及びプログラムが格納されている。
監視対象の竪型ミル、例えば新設計の竪型ミルについて寿命設計、寿命計算を行う場合、設計データより監視対象の竪型ミルについてのFEMモデルを作成し、前記入力部16よりFEMモデルを入力し、入力されたFEMモデルは前記記憶部18に格納される。
又、前記入力部16より運転条件及び監視部位を設定する。運転条件を設定することで、前記演算制御部17は前記記憶部18より運転条件に対応した粉砕荷重スペクトルを選択し、更に前記FEMモデルから監視部位に対する振動伝達関数を求める。又、前記演算制御部17は、粉砕荷重スペクトルと振動伝達関数を前記歪みスペクトル演算部21に入力する。該歪みスペクトル演算部21は粉砕荷重スペクトルと振動伝達関数に基づき監視部位の歪みスペクトルを演算する。
前記IFFT部22は、歪みスペクトルをフーリエ逆変換で時系列の歪み信号、即ち歪み振動曲線に変換する。
前記等価振動応力演算部23は、歪み振動曲線からレインフロー法等所要の計算方法により、歪みの変動振幅の大きさの頻度分布(ヒストグラム)を作成し、更にこの頻度分布から等価振動応力を演算する。
前記寿命演算部24は、等価振動応力と監視部位についての疲労曲線により、寿命計算及び寿命予測を行う。
尚、監視対象が既に稼働中のものについては、過去の運転条件を積算して、運転条件に対応した荷重スペクトルに基づき、積算した等価振動応力を求めることが可能であり、得られた結果から、現状の損傷度或は残存寿命を演算することができる。
1 竪型ミル
2 ケーシング
3 粉砕テーブル
4 粉砕ローラ
5 ローラ加圧ユニット
6 石炭給排部
7 シュート
8 分級機
9 粉砕炭流
11 微粉炭送給管
13 歪みセンサ
15 竪型ミルの負荷監視装置
16 入力部
17 演算制御部
18 記憶部
19 出力部
21 歪みスペクトル演算部
22 IFFT部
23 等価振動応力演算部
24 寿命演算部

Claims (3)

  1. 既設の竪型ミルにより運転条件に応じた粉砕ローラの粉砕荷重を予め求め、又監視対象の竪型ミルの監視対象部位の振動伝達関数を予め求め、運転条件を設定した場合に、該運転条件に対応する前記粉砕ローラの粉砕荷重及び前記振動伝達関数に基づき前記監視対象の竪型ミルの任意の部位の歪みを演算し、該歪みに基づき振動応力を演算し、該振動応力と疲労曲線に基づき寿命計算、損傷度の計算を行うことを特徴とする竪型ミルの負荷監視方法。
  2. 前記既設の竪型ミルのFEMモデルを求め、該既設の竪型ミルの任意の部位に歪み測定センサを設け、種々の運転条件で粉砕を実行した場合に測定した前記任意の部位の歪みと、前記FEMモデルから求めた前記任意の部位の振動伝達関数とに基づき前記種々の運転条件それぞれに対応する前記粉砕荷重を求める請求項1の竪型ミルの負荷監視方法。
  3. 既設の竪型ミルの運転条件と運転条件に対応する粉砕ローラの粉砕荷重との関係を示すデータテーブルと監視対象の竪型ミルのFEMモデルとを格納した記憶部と、運転条件を設定する入力部と、該入力部から入力された運転条件と、該運転条件に対応する粉砕荷重と、前記FEMモデルに基づき求めた振動伝達関数とに基づき前記監視対象の竪型ミルの任意の部位の歪みを演算し、該歪みに基づき振動応力を演算し、該振動応力と疲労曲線に基づき寿命計算、損傷度の計算を行う演算処理部とを具備することを特徴とする竪型ミルの負荷監視装置。
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