以下、本発明の一実施形態について図1ないし図15を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、図2の後方斜視図ではレバーカバーやリアカバー等を外した状態のものを示している。同様に、図4の底面図では底面カバーを外した状態のものを示しており、図9の分解斜視図ではレバーカバーやリアカバー等を外したものを示している。
この実施形態は、本発明を用紙穿孔処理装置の一つである綴じ機Tに適用した場合のものである。
この綴じ機Tは、図1、図3又は図5に示すように、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を前記カット孔P2に挿通させることにより、それら複数枚の用紙Pを相互に綴じて冊子S、すなわち用紙束を作ることができるようにしたものである。また、この綴じ機Tに用いられる刃である抜き刃32は、打ち抜き孔P1を形成し得るものであり、この綴じ機Tに用いられる刃である切込刃33は、スリット状のカット孔P2を形成し得るものである。以下、詳述する。
この冊子Sは、複数枚の用紙Pを束ねてなるもので、それらの用紙Pは縁部に設定した一ヵ所の接合部分P3において相互に接合されている。この接合部分P3は、用紙Pの一面Pa側から貫入させた抜き刃32により各用紙Pに形成された打ち抜き孔P1と、この打ち抜き孔P1に隣接させて前記各用紙Pに形成されたスリット状のカット孔P2と、打ち抜き孔P1から用紙Pの他面Pb側に切り起こされた切起片P5とから構成されている。そして、切起片P5の先端P51部分を、カット孔P2に貫通させて用紙Pの一面Pa側に導出させることによって、複数枚の用紙Pが相互に接合されている。また、冊子Sである用紙束は、用紙Pに切り起こされた切起片P5を用紙Pに形成されたカット孔P2に挿通させ、切起片P5とカット孔P2との係わり合いによって複数枚の用紙Pが相互に綴じられてなるものであるが、用紙Pにおける切起片P5の基端P52近傍には、切起片P5の基端の両側から延びる破れ抑制用のスリット状の逃げ部P6を備えている。また、カット孔P2は、切起片P5を主として係わり合わせるための第一のスリットL1と、この第一のスリットL1の途中から打ち抜き孔P1方向に屈曲して伸び略平行に対をなす第二のスリットL2とを備えている。
この綴じ機Tは、穿孔すべき用紙Pが添接するパンチ台1と、このパンチ台1に添接している用紙Pに貫通する刃である抜き刃32及び切込刃33と、刃が用紙Pに貫通する際に用紙Pの刃貫通位置付近を押圧してパンチ台1側に押しつけるための樹脂製の固定用押圧子361と、この固定用押圧子361を用紙P方向に弾性付勢する押圧用弾性体362と、用紙Pに貫通した刃を用紙Pから抜き取って元の位置に復帰させる刃復帰用弾性体4とを具備してなる。換言すれば、この綴じ機Tは、上向き面S1に用紙Pが載置されるパンチ台1と、下向き面S2を有し、上向き面S1を有したパンチ台1との間に用紙挿入用隙間SKを形成すべく設けられ抜き刃32及び切込刃33を保持する刃ユニット3を内蔵した本体2と、抜き刃32及び切込刃33を備えた刃ユニット3を穿孔操作前の位置である退避位置(F)に復帰させるための刃復帰用弾性体たる刃復帰用コイルスプリング4と、この本体2に装着され前記刃ユニット3を作動させるための操作レバー5とを備えている。
パンチ台1は、ベースフレーム11と、このベースフレーム11に設けられ用紙挿入用隙間SKに臨むパンチプレート12と、このパンチプレート12に密着している綴じ作業後の用紙Pをパンチプレート12から離れる方向に逃がすための紙逃がし13と、この紙逃がし13を含め前記ベースフレーム11の下面側を隠蔽する底面カバー14とを具備してなる。
ベースフレーム11は、後部分に本体2を取り付けるための本体取付部111を有すると共に前部分にパンチプレート12を用紙挿入用隙間SK側に表出させるためのプレート表出窓112を備えており、後部分と前部分との境界に用紙挿入用隙間SKに挿入される用紙Pの端部を係止するための係止壁113を有している。ベースフレーム11は、合成樹脂により一体に成型されたものである。本体取付部111は、本体2の下端を嵌合させるための凹陥部分111aを有しており、この凹陥部分111aの平坦な底面111bに複数のボルト挿通孔111cが貫設されたものである。
パンチプレート12は、抜き刃32と協働して用紙Pに打ち抜き孔P1及び逃げ部P6を穿設するための穿孔部121と、切込刃33と協働して用紙Pにカット孔P2を穿設するための通過孔122と、後述する紙逃がし13の解放用押圧子131が通過するための押圧子通過孔123とを備えた金属性のものである。パンチプレート12はベースフレーム11に取り付けられている。詳述すれば、パンチプレート12はアンビルとしての機能を備えたもので、貫通孔である穿孔部121、通過孔122、及び押圧子通過孔123を有し、プレート表出窓112を介して用紙挿入用隙間SKに臨むもので、その周縁部にベースフレーム11の下面側に取り付けられる取付鍔124を備えている。具体的には、取付鍔124は、前端に係止片124aを有しその係止片124aをベースフレーム11の係合部114に係わり合わせることにより、パンチプレート12の前端部分が前記ベースフレーム11に取り付けられている。一方で、取付鍔124の後端部分には複数のボルト挿通孔124bが形成されており、それらボルト挿通孔124bを本体2のボルト挿通孔211e、221cと合致させた状態で、その後端部分をベースフレーム11の下面に添接させている。そして、これらボルト挿通孔124b、211e、221cに下側から挿通させたボルトvを本体2側に設けたナットnに螺合させて緊締することにより、パンチプレート12と本体2とをベースフレーム11に固定することができるようにしてある。
紙逃がし13は、綴じ作業後にパンチプレート12に密着している用紙Pをパンチプレート11から離れる方向に逃がすためもの、より具体的には、綴じられた状態の用紙Pの切起片P5であって、用紙Pの他面Pb側に位置している部分P53が、用紙Pを用紙挿入用隙間SKから抜き取る際に、パンチプレート12の開口部分すなわち穿孔部121や通過孔122に引っかからないようにするためのものである。すなわち、この紙逃がし13は、パンチプレート12を貫通して用紙挿入用隙間SKに突出する解放用押圧子131と、この解放用押圧子131を用紙挿入用隙間SKに突出する方向に弾性付勢する解放用弾性体132とを具備してなる。詳述すれば、紙逃がし13は、用紙Pに添接する解放用押圧子である複数の突起131とこれら複数の突起131を弾性付勢するための解放用弾性体である板バネ132とを具備してなる。この紙逃がし13は、平面視略M字形状をなす板バネ132の上下方向に変位し得る中央部付近に二つの突起131を離間させて設けると共に、板バネ132の左右両端側をパンチプレート12の左右両縁部から起立させてなる起立壁125に支持させてなるものである。各突起131は、側面視において先端が山形状をなすものであり、パンチプレート12に設けられた押圧子通過孔123から用紙挿通用隙間SKにそれぞれ臨んでいる。この突起131と板バネ132とは合成樹脂により一体に形成されている。
本体2は、刃ユニット3を昇降可能に保持するハウジング21と、このハウジング21の前面、底面及び両側面を覆うメタルフレーム22と、このメタルフレーム22の後側に装着されるリアカバー23とを備えてなる。
ハウジング21は、底壁211と、前壁212と、左右の側壁213と、後壁214とを備えたものである。底壁211は、後壁214よりも後方に延出させてある。これら底壁211、前壁212、左右の側壁213及び後壁214によって囲まれた空間Kに刃ユニット3が収容されるようになっている。ハウジング21は、合成樹脂により一体に形成されている。底壁211は、抜き刃32及び切込刃33が通過するための開口211aを有している。この底壁211の上面側には後述するインナーカム34のアーム341を係止するための係止部211bを設けている。また、この底壁211の上面における開口211aの左右の両側に位置する部位には、中心に貫通孔211dを有する筒状をなすボス211cが設けられている。前壁212と後壁214の内面には刃ユニット3を昇降可能に案内するための案内部212a、214aが設けられている。左右の側壁213には、後述するドライブシャフト53を挿通させるための長孔213aが形成されている。
メタルフレーム22は、ハウジング21の底壁211の下面に添接する底板221と、ハウジング21の前壁212の外面に添接する前板222と、ハウジング21の左右側壁213の外面に添接する左右の側板223とを具備してなる板金製のものである。底板221は、ハウジング21の底壁211の略全域に対応するもので、開口211aとボス211cの貫通孔211dを用紙挿入用隙間SKに表出させるための窓221aと、ハウジング21とパンチプレート12とを位置決めする位置決めピンipを挿通させるためのピン挿通孔221bと、パンチプレート12とベースフレーム11とハウジング21の底壁211とを共締めするボルトvを挿通させるためのボルト挿通孔221cが設けられている。すなわち、パンチプレート12のボルト挿通孔124bと、ベースフレーム11のボルト挿通孔111cと、メタルフレーム22のボルト挿通孔221cと、ハウジング21の底壁211に設けられたボルト挿通孔211eとに挿通させたボルトvにより、本体2をパンチ台1に取り付けている。メタルフレーム22の側板223には、刃ユニット3を駆動するドライブシャフト53を昇降可能に案内するための上下案内部223aと、操作レバー5の支軸54を、回転且つスライド可能に支持するための前後案内部223bとが設けられている。
刃ユニット3は、ハウジング21の案内部212a、214aに案内されて一定の姿勢を維持しつつ昇降可能なスライド部材31と、このスライド部材31に取り付けられた抜き刃32と、この抜き刃32に隣接させて配されると共にスライド部材31に取り付けられた切込刃33と、抜き刃32の内側に配され抜き刃32内に収まる初期姿勢Rから、一部が抜き刃32外に突出する回動姿勢Gとの間でスライド部材31に軸jを介して回転可能に枢支されたインナーカム34と、初期姿勢Rに自己復帰する方向にインナーカム34を回動付勢するコイルスプリング35と、用紙Pをパンチ台1に押さえるための複数の紙押さえ36とを具備してなる。
スライド部材31は、抜き刃32と切込刃33を支持する下方に向けて開口する中空ブロック状のもので合成樹脂により作られている。スライド部材31の上面にはドライブシャフト53を回動可能に保持するシャフト保持部311を備えており、操作レバー5に加えられる操作力が、ドライブシャフト53を介してスライド部材31に伝達されるようになっている。スライド部材31の下面には、押圧用弾性体である押圧用コイルスプリング362の一端を保持するための内側保持部312と、この内側保持部312の外側に設けられ刃復帰用弾性体である刃復帰用コイルスプリング4の一端を保持するための外側保持部313とを備えている。
抜き刃32は、用紙Pに矢尻状の切起片P5を形成するものであって、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られており、用紙Pに打ち抜き孔P1を打ち抜くための刃本体321と、用紙Pにスリット状の逃げ部P6を形成するための補助刃部322とを備えている。
切込刃33は、ゲタ状をなすスリットからなるカット孔P2を形成するものであって、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られており、第1のスリットL1を形成するための第1のブレード331と、第1のブレード331の途中から打ち抜き孔P1の方向に延びる第2のスリットL2を形成するための第2のブレード332とを備えている。第1のブレード331は、用紙Pから打ち抜かれた切起片P5を通過させ切起片P5を係わり合わせるための窓331aを備えている。
インナーカム34は、基端に軸jを有すると共に先端に切起片P5を切込刃33に設けられた窓331aに挿入させるための押し出し部342を備えたもので、その軸jが抜き刃32及びスライド部材31に支持されている。インナーカム34の基端には、該インナーカム34を回動させるためのアーム341が突出させてある。
紙押さえ36は、用紙Pの刃貫通位置付近を押圧してパンチ台1側に押し付けるための固定用押圧子361と、この固定用押圧子361を用紙P方向に弾性付勢する押圧用弾性体362とを備えている。この実施形態においては、前記固定用押圧子361は、一端が釣鐘状に丸みを有した円柱状のもので他端に押圧用弾性体である押圧用コイルスプリング362を取り付けるための小径なバネ取付部361aを備えている。固定用押圧子361は樹脂により一体成型されたものである。この固定用押圧子361の最大径は、ハウジング21に設けたボス211cの貫通孔211dにスライド可能に貫入し得る値に設定されている。そして、固定用押圧子361の最大径は、押圧用コイルスプリング362の最大径とを略一致させてあり、この固定用押圧子362と押圧用コイルスプリング362の一部とを前記ボス211cの貫通孔211dにスライド可能に嵌入させてある。換言すれば、ハウジング21は筒状をなすボス211cを有し、そのボス211cの内周に固定用押圧子361及び押圧用コイルスプリング362をスライド可能に貫挿させている。なお、この実施形態においては、用紙Pに接触していない状態において、固定用押圧子361の先端と、刃である抜き刃32及び切込刃33の先端とを略同じ高さ位置に設定している。また、紙押さえ36は、重ね合わされた用紙Pの枚数が多いものであっても少ないものであっても対応可能なもの、すなわち、紙押さえ36は、用紙Pの多少にかかわらず、用紙Pをパンチ台1に対して好適に押さえつけることができるようになっている。換言すれば、紙押さえ36の固定用押圧子361の先端は、用紙Pの紙厚の相違に柔軟に対応するべく、用紙挿入用隙間SKを形成する本体2の下向き面S2とパンチ台1の上向き面S1との間を移動することができるようになっている。
なお、押圧用弾性体362は、種々の弾性体を用いることができ、コイルスプリングに限定されるものではない。
以上のようにしてなる刃ユニット3と本体2のハウジング21の底壁211との間に、刃復帰用弾性体である複数の刃復帰用コイルスプリング4を配している。
刃復帰用コイルスプリング4は、押圧用コイルスプリング362よりも大きな径を有したもので、一端側を刃ユニット3のスライド部材31に設けられた外側保持部313に保持させると共に、他端側を前記ボス211cの外周に嵌合させて位置決めした状態でハウジング21の底壁211に当接させている。刃復帰用コイルスプリング4の内部には、押圧用コイルスプリング262が軸心を一致させて配置されており、このように二重に配置された刃復帰用コイルスプリング4と押圧用コイルスプリング362とによってコイルスプリング重合体JGが構成されている。換言すれば、刃ユニット3のスライド部材31には、刃復帰用コイルスプリング4の軸心と押圧用コイルスプリング362の軸心とが略一致するように配されており、両コイルスプリング4、362によってコイルスプリング重合体JGが構成されている。本実施形態では、コイルスプリング重合体JGが二組設けられており、具体的には、刃の両側を挟むように配されている。つまり、2つの紙押さえ36が、刃の両側に配されている。換言すれば、本実施形態においては、刃の両側に固定用押圧子361をそれぞれ配し、これら各固定用押圧子361に関連させて押圧用コイルスプリング362及び刃復帰用コイルスプリング4をそれぞれ設けている。
詳述すれば、図3及び図11に示すように、一方の固定用押圧子361(A)は、抜き刃32の近傍であって、抜き刃32に対する切込刃33の位置と反対の位置に配されており、他方の固定用押圧子361(B)は、切込刃33の近傍であって、切込刃33に対する抜き刃32の位置と反対の位置に配されている。そして、この実施形態においては、切込刃32及び抜き刃33の中心線と固定用押圧子361の中心線とが共通の仮想平面に含まれるように配されている。なお、固定用押圧子361の中心線とコイルスプリング重合体JGの中心線とが一致するように設定してある。そのため、コイルスプリング重合体JGの中心線も前記仮想平面に含まれるように配されている。さらに、この仮想平面には、ドライブシャフト53の軸線jsも含まれるようにドライブシャフト53と刃ユニット3との位置関係が設定されている。つまり、ドライブシャフト53は、紙押さえ36、刃32、33、及び刃復帰用コイルスプリング4の真上に配されている。さらに言い換えれば、コイルスプリング362、4の中心線とドライブシャフト53の軸線jsとが交差するように構成されている。
操作レバー5は、基端部に支軸54を有すると共に、先端側に操作部55を備え、支軸54を有する基端部と操作部55との間にドライブシャフト53を装着したものである。そして、支軸54を本体2のメタルフレーム22における前後案内部223bに回動可能且つ前後移動可能に支持させると共に、ドライブシャフト53を本体2のメタルフレーム22における上下案内部223aに上下移動可能に支持させている。
この操作レバー5は、金属製のレバーフレーム51と、このレバーフレーム51の外側に装着されるレバーカバー52とを備えている。レバーフレーム51は板金素材を折り曲げ加工したもので天壁511とこの天壁511の両側縁から垂下する側壁512とを有しており、その側壁512間に前記支軸54及びドライブシャフト53が取り付けられている。天壁511には、後述するロック機構の係合部RC1を保持するためのフック部511aが配されている。
操作レバー5と本体2との間には、操作レバー5を所定の位置でロックするためのロック機構RCが設けられている。ロック機構RCは、操作レバー5に設けられた一方の係合部RC1を本体2に設けた他方の係合部RC2に係合させるようにしたものである。一方の係合部RC1は、例えば、基端を解放したループ状のもので、その基端を操作レバー5の下面側、具体的には前記天壁511に回動可能に懸吊支持されており、フック部511aと係合していない時には自重によって垂下できるようになっている。すなわち、一方の係合部RC1は、通常使用時においては、天壁511に設けられたフック部511aに引っ掛けて保持されてぶら下がらないようしてある。他方の係合部RC2は、例えば、本体2のハウジング21に設けた鉤状をなすもので、その上面には前記一方の係合部RC1を案内して係合を促すための案内傾斜面RC21を備えている。しかして、操作レバー5を本体2に対して所定位置でロックするに際は、一方の係合部RC1をフック部511aから外してぶら下がった状態にした後、他方の係合部RC2に近づけるように操作レバー5を動かせば、案内傾斜面RC21によって所定の位置にスムーズに案内されることになる。
次いでこの綴じ機Tの作用について、主に部分拡大断面図である図12〜図15を参照して説明する。
操作レバー5を操作しない状態では、スライド部材31が上限位置Uに位置し、抜き刃32及び切込刃33が元の位置である退避位置Fに保持されている。インナーカム34は前記退避位置Fに保持された抜き刃32内に収容された初期姿勢Rを保っている。この状態で重ね合わせた複数枚の用紙Pをパンチ台1の前部分における上向き面S1と本体2の前部分における下向き面S2との間に形成されている用紙挿入用隙間SKの奥まで挿入する。そして、操作レバー5を下方に操作すると、この操作レバー5に加えられた力が、ドライブシャフト53に伝達され、本体2とスライド部材31との間に配された刃復帰用コイルスプリング4の付勢力に抗してスライド部材31が下方に移動させられる。それに伴って、スライド部材31に保持された抜き刃32、切込刃33及び紙押さえ36が下方に移動する。そして、この実施形態では、紙押さえ36の固定用押圧子361の先端が用紙Pに接し、この固定用押圧子361が用紙Pを押圧支持し、抜き刃32及び切込刃33を貫通し易くするべく用紙Pの張りを保持させた後に、抜き刃32及び切込刃33の先端が用紙Pに接する(図13を参照)。すなわち、紙押さえ36は用紙Pのずれや撓みを抑え、用紙Pを張る作用を営む。さらに、刃ユニット3が下方に移動すると、抜き刃32及び切込刃33が用紙Pを貫通し、用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2が形成される。その際には、押圧用コイルスプリング362がスライド部材31の下降に伴って圧縮されることになり、固定用押圧子361が用紙Pに強く押し付けられて用紙Pをパンチプレート12に圧接させることになる。そのため、抜き刃32及び切込刃33が貫入する付近の用紙Pが、紙押さえ36によってしっかりと固定された状態、すなわち、用紙Pが紙押さえ36によって張りのある状態のまま穿孔される。換言すれば、紙押さえ36により用紙Pに張りを与え、用紙Pのばらつきや撓みの発生を抑制するとともに抜き刃32及び切込刃33の用紙Pへの刺さり易さを確保して、所期の形状の打ち抜き孔P1及び切起片P5、並びにカット孔P2を形成し得るようにしている。なお、パンチプレート12に突出している紙逃がし13の突起131は、用紙Pがパンチプレート12に押し付けられる力によって弾性的に没入する。
穿孔後さらに抜き刃32及び切込刃33が下降すると、前記アーム341と係止部211bとの当接によりインナーカム34が回動して切起片P5が押圧され、その切起片P5の先端P51側が切込刃33の窓331aに挿入される。この際、本実施形態では、紙押さえ36により用紙Pを押さえているため、抜き刃32及び切込刃33の下降に伴って用紙Pがパンチプレート12の穿孔部121や通過孔122に引き込まれることを好適に抑制している。このため、用紙Pのばらつきや撓みの発生が抑えられ、切起片P5が適切にインナーカム34により所期の方向に適切に押圧され、切込刃33の窓331aに確実に挿入されることになる。
次いで、操作レバー5への操作を解除すると、主として刃復帰用コイルスプリング4の付勢力により刃ユニット3が上動して抜き刃32及び切込刃33が用紙Pから抜き取られ、元の状態である退避位置Fに戻る。その際、切込刃33の窓331aに挿入された切起片P5の先端は、用紙Pの一面Pa側に引き出されることになる。この実施形態では、紙押さえ36が用紙Pの張りを保持するとともに用紙Pのばらつきやばたつきを抑制しており、切込刃33によって切起片P5の先端が用紙Pの一面Pa側に引き出され、複数枚の用紙Pが綴じられるという状態に安定的に導くことができるようになっている。すなわち、本実施形態に示すような紙押さえ36を備えた構成によれば、紙押さえ36によって用紙Pのばらつきやばたつきを無くすとともに撓みを抑制して綴じる作業を安定化させているので、用紙Pを確実に綴じることができるようになっている。また、この際、抜き刃32が用紙Pから抜き取られて用紙Pから離間し、しかる後に、紙押さえ36の固定用押圧子361が用紙Pから離間して、紙押さえ36の用紙Pに対する押し付け力は消滅する。その結果、紙逃がし13の突起131が板バネ132の弾性力によって上方に突出し、用紙Pをパンチプレート12から浮き上がらせる。そのため、パンチプレート12の穿孔部121及び通過孔122を含む開口縁に、切起片P5が干渉することを好適に抑制することができ、用紙挿入用隙間SKから用紙Pを円滑に引き出すことが可能になる。なお、前述したように、紙押さえ36は、抜き刃32が用紙Pから抜き取られた後に、用紙Pから離間するようになっており、抜き刃32及び切込刃33の抜き取りに伴って生じる用紙Pの浮き上がりを抑制する機能を発揮している。
以上に述べたように、本実施形態に係る綴じ機Tにおいては、刃復帰用コイルスプリング4の内部に押圧用コイルスプリング362を配置しているものであるため、限られたスペースを効率よく利用することができる。しかも、このようなものであれば、綴じ機Tの小型化、コンパクト化の要望に柔軟に対応することができるものとなる。本実施形態のように、特にコンパクト化が要求される一箇所綴じタイプ(1孔綴じタイプ)の綴じ機T、すなわち一つの切起片を一つのカット孔に挿通させて用紙Pを綴じることができるようにした綴じ機Tにおいては、紙押さえ36を備えたものであっても全体のコンパクト化を実現しやすいものとなる。また、紙押さえ36を備えているので、多枚数の用紙Pを綴じる際にも用紙Pがずれるのを好適に抑制し、確実に綴じ作業を行うことができる。
本体2に筒状をなすボス211cを有し、そのボス211cの外周に前記刃復帰用コイルスプリング4の一端側を嵌め合わせて位置決めするとともにボス211cの内周に紙押さえ36である固定用押圧子361及び押圧用コイルスプリング362をスライド可能に貫挿させているので、刃復帰用コイルスプリング4と紙押さえ36とが干渉せずにそれぞれの機能を確実に発揮するものとなる。
刃である抜き刃32及び切込刃33の両側に固定用押圧子361を配し、これら各固定用押圧子361に関連させて押圧用コイルスプリング362及び刃復帰用コイルスプリングをそれぞれ設けているので、綴じ作業時に用紙Pを刃の周囲で確実に押さえることができる。
固定用押圧子361を付勢する押圧用コイルスプリング362の最大径と固定用押圧子361の最大径とを略一致させているので、ボスに引っかかることなくスムーズな進退動作を行うことができる。
刃ユニット3のスライド部材31には、刃復帰用コイルスプリング4の軸心と押圧用コイルスプリング362の軸心とが略一致するように配されているため、刃復帰用コイルスプリング4と紙押さえ36との干渉を好適に抑制し、所期の目的を達成することができる。
刃復帰用コイルスプリング4と、押圧用コイルスプリング362及び固定用押圧子361を構成要素とする紙押さえ36とがスライド部材31に保持されてユニット化しているので、綴じ機Tの組み立て、分解等の際に取り扱いが便宜なものとなる。更に、本実施形態では、スライド部材31に、刃32、33やインナーカム34が保持されているので、取り扱いに優れたものとなっている。
本実施形態においては、用紙Pに接触していない状態において、紙押さえ36の固定用押圧子361の先端と、刃である抜き刃32及び切込刃33の先端とを略同じ高さ位置に設定している。このため、用紙Pに刃が貫通し始める時点から貫通した刃が用紙Pから抜き取られる時点までの間において、紙押さえ36が用紙Pを押さえることとなり、用紙Pのズレを好適に抑制して綴じ作業をより確実に行うことができる。
本実施形態では、パンチ台1に紙逃がし13を備えているので、綴じ作業後にパンチプレート12に密着している用紙Pをパンチプレート11から離れる方向に逃がすことができる。すなわち、パンチ台1に紙逃がし13を備えているため、綴じられた状態の用紙Pの切起片P5であって、用紙Pの他面Pb側に位置している部分P53が、用紙Pを用紙挿入用隙間SKから抜き取る際に、パンチプレート12の開口部分すなわち穿孔部121や通過孔122に引っかってしまうことを好適に抑制することができ、円滑な複数枚の用紙Pの綴じ作業に寄与するものとなる。
紙押さえ36を構成する一方の固定用押圧子361(A)が、抜き刃32の近傍であって、抜き刃32に対する切込刃33の位置と反対の位置に配されており、他方の固定用押圧子361(B)が、切込刃33の近傍であって、切込刃33に対する抜き刃32の位置と反対の位置に配されているため、穿孔操作時において紙押さえ32が用紙Pのずれを適切に抑制するものとなる。すなわち、用紙Pが抜き刃32によって穿孔される際、より具体的には、用紙Pが抜き刃32と穿孔部121との係り合いによって用紙Pを切断する際は、抜き刃32における刃本体321の刃先形状からして、用紙Pは切込刃33の位置する側に引っ張られることとなる。これに対して、一方の固定用押圧子361(A)が、前述した箇所に配されているため、当該引っ張りに抗して用紙Pを押さえることができ用紙Pのずれを好適に抑制するものとなる。
切込刃32及び抜き刃33の中心線と固定用押圧子361の中心線とが共通の仮想平面に含まれるように配されているとともに、この仮想平面にドライブシャフト53の軸線jsも含まれるようにドライブシャフト53と刃ユニット3との位置関係が設定されているので、ドライブシャフト53が、紙押さえ36、刃32、33、及び刃復帰用コイルスプリング4の真上に配されることとなり、操作レバー5から伝達される操作力が効率よく伝達されるものとなる。
操作レバー5と本体2との間に、操作レバー5を所定の位置でロックするためのロック機構RCが設けられているので、綴じ機Tの梱包や持ち運び時におけるコンパクト化に寄与するものとなる。
ロック機構RCが、操作レバー5に懸吊支持されたリング状の一方の係合部RC1と、本体2のハウジング21に設けたフック状の他方の係合部2により構成されており、他方の係合部RC2の上面に案内傾斜面RC21を備えているので簡単な操作で一方の係合部RC1と他方の係合部RC2とを係わり合わせることができる。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限定されるものではない。
上述した実施形態では、刃復帰用弾性体がコイルスプリング(刃復帰用コイルスプリング)であり、固定用押圧子を弾性付勢する押圧用弾性体が刃復帰用コイルスプリングの内部すなわち内側に配設されたものを示していたが、このようなものには限られず、例えば、押圧用弾性体がコイルスプリング(押圧用コイルスプリング)であり、刃復帰用弾性体が押圧用コイルスプリングの内部に配設されたものであってもよい。
図16は、刃復帰用弾性体が押圧用コイルスプリングの内部に配設されたものの一例を、部分概略的に示している。なお、当該他の実施形態において、前述した実施形態に対応する構成要素には、頭に「A」をつけた上で前述した実施形態で使用した符号と同様の符号を付して示すものとし、具体的な説明を省略する。
当該他の実施形態では、刃復帰用コイルスプリングA4が、紙押さえA36を構成する押圧用コイルスプリングA362の内側に配設されている。刃復帰用コイルスプリングA4の下端部分は、本体A2に形成された有底筒状をなす保持部A211cに保持されており、上端部分はスライド部材A31の内側保持部A312に保持されている。一方で、押圧用コイルスプリングA362の下端部分は、固定用押圧子A361に取り付けられており、上端部分はスライド部材A31の外側保持部A313に保持されている。固定用押圧子A316は、紙押さえA36を構成するものであり、外周に係止鍔を有したバネ取付部A361aを有し、このバネ取付部A361aに押圧用コイルスプリングA362の下端部分を取り付けている。バネ取付部A361aの下端からは、下方に向けて突出する棒状の押圧体A361bが間欠的に突出しており、これら複数の押圧体A361bは、本体A2に複数穿設された貫通孔A221dを通過できるようになっている。このようなものであっても、限られたスペースに効率よく押圧用弾性体及び刃復帰用弾性体を配置することができるため、所期の目的を達成することができる。
上述した実施形態では、用紙穿孔処理装置の一例として、いわゆる針なしステープラと称される綴じ機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、用紙穿孔処理装置には、用紙に綴じ孔を穿孔するためのパンチ等が挙げられる。
上述した実施形態では、紙押さえを構成する固定用押圧子及び押圧用弾性体とがそれぞれ別体のものであったが、これらが単一の部材として一体になったものであってもよい。例えば、紙押さえをコイルスプリングのみで実現した場合には、用紙に接触する部分が固定用押圧子に該当する。
紙押さえが、抜き刃及び切込刃の位置に対して配置される箇所は、種々の態様があり、本実施形態に示されるものに限定されるものではない。すなわち、本実施形態では、2つの紙押さえが、抜き刃及び切込刃と同じ並びに位置するように配されているが、このようなものに限られず、例えば、用紙の綴じ操作に支障が生じない場所であれば、紙押さえが、抜き刃の近傍における周囲や、切込刃の近傍における周囲に適宜配されてよいのはもちろんのことである。換言すれば、紙押さえが、抜き刃の中心部分と切込刃の中心部分とを結んだ仮想線(図示せず)に対して直交する方向に配されてなるものであってもよい。
刃の用紙に対して貫通する方向は、本実施形態のような上から下に向かう方向のものには限定されず、その逆でもよいし、左から右に向かうものや、右から左に向かうものであってもよい。
本実施形態における綴じ機は、一般に天板上に載置した状態で用いられるいわゆる卓上据え置きタイプのものとして説明していたが、かかる態様のものに限定されるものではなく、手で把持した状態で綴じ操作をすることが可能ないわゆるハンディタイプのものであってもよいし、その他種々のタイプの綴じ機が考えられる。
綴じ機は、手動により操作するものに限定されるものではなく、電動のものや、他の動力を利用してもよい。
内部側に位置する弾性体は、コイルスプリング(コイルばね)には限定されず、板ばね、渦巻きばね、重ね板ばね、竹の子ばね等、種々の弾性体を適用することができる。
上述した各実施形態では、外部に位置する刃復帰用弾性体又は外部に位置する押圧用弾性体がコイルスプリングであるものについて説明をしたが、外部に位置する弾性体がコイルスプリング以外のものであってもよい。このようなものとしては、例えば、中央部分に開口部を設けることにより他方の弾性体を通過可能に形成した板バネなどが考えられる。その他の弾性体として、渦巻きばね、重ね板ばね、竹の子ばね等、種々の弾性体を適用することができるのはもちろんのことである。
上述した実施形態では、コイルスプリング重合体を2箇所に配していたが、1箇所にのみ配したものであってもよいし、3箇所以上配したものであっても良い。
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。