JP5816007B2 - 吸音材 - Google Patents

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Description

本発明は、動吸振機構を利用した吸音材に関し、特に、200Hzより低い周波数域の騒音を効果的に吸収する低周波数域用の吸音材に関する。
近年、工場の機械類などの設備等から発生する様々な騒音に対する低減要求が厳しくなっている。騒音を吸収する吸音材としては、一般に多孔質材料が使用されている。多孔質材料には、グラスウールやロックウール等の無機繊維系のもの、ポリエステル等の高分子繊維系のもの、発泡軟質ウレタン等の樹脂発泡系のもの等がある。
多孔質材料で構成した吸音材は、500Hz超の中・高周波数域用としては優れているが、500Hz以下の低周波数域用としては必ずしも適していない。つまり、吸音材の厚さを厚くしたり、吸音材と設置面との間に十分な空気層を介在させたりすることで低周波数域に対応させることはできるが、十分な設置スペースを確保できない場合には適用できない。また、吸音材の厚さが厚くなることで、吸音材の重量が重くなるという問題もある。
そこで、低周波数域用の吸音材として、1自由度のばね−マス振動系の動吸振機構を利用する技術が提案されている(例えば特許文献1〜3)。動吸振機構を利用した吸音材においては、音波(振動)の入射に伴い共振現象が生じ、ばね部で振動エネルギーを熱エネルギーに変換することにより、吸音が行われる。
具体的には、特許文献1には、高密度の繊維集合体で質量部を構成し、低密度の繊維集合体でばね部を構成した吸音材が開示されている。
特許文献2には、粘弾性体で質量部を構成し、繊維状集合体でばね部を構成した吸音材が開示されている。
特許文献3には、ゴム膜で質量部を構成し、グラスウール等の多孔質体でばね部を構成した吸音材が開示されている。
特許文献1〜3に記載の吸音材によれば、200〜300Hzの周波数域において、高い吸音率が得られる。
特開平8−152890号公報 特開2003−150170号公報 国際公開第2006/098064号
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術を適用しても、200Hz以下、特に設備等で問題となる63〜125Hzの周波数域の音波に対して、0.8以上の高い吸音率を実現することはできない。また、200Hzより低い低周波数域と、200〜5000Hzの中・高周波数域の両方において、高い吸音特性が得られる吸音材は現状では実現されていない。
本発明は、200Hzより低い周波数域、特に設備等で問題となる63〜125Hzの騒音及び200〜5000Hzの周波数域の騒音に対して高い吸音特性を有する吸音材を提供することを目的とする。
本発明に係る吸音材の一態様は、質量部とばね部とを有し、前記ばね部を設置面に向けて設置される吸音材であって、
前記質量部が、前記ばね部側に配置される通気性のない第1質量部と、音源側に配置される多孔質材料からなる第2質量部とを一体的に形成した構成を有し、
前記質量部の面密度が、2.0〜10.0kg/mであり、
前記第1質量部が、ゴム、樹脂、金属材料又はそれらの積層体で構成され、
前記ばね部が、多孔質材料で構成されることを特徴とする。
本発明に係る吸音材の他の態様は、質量部とばね部とを有し、前記ばね部を設置面に向けて設置される吸音材であって、
前記質量部が、前記ばね部側に配置される通気性のない第1質量部と、音源側に配置される多孔質材料からなる第2質量部とを一体的に形成した構成を有し、
前記質量部の面密度が、2.0〜10.0kg/m であり、
前記第1質量部が、ゴム、樹脂、金属材料又はそれらの積層体で構成され、
前記ばね部が、空気層で構成されることを特徴とする。
本発明によれば、音源側に通気性のある多孔質材料の第2質量部が配置されているので、この第2質量部が一般に用いられている多孔質吸音材と同様に中・高周波数域用の吸音材として機能する。したがって、本発明によれば、200Hzより低い周波数域(特に設備等で問題となる63〜125Hz)の騒音だけでなく、200〜5000Hzの周波数域の騒音に対しても高い吸音特性を有する吸音材が提供される。
1自由度のばね−マス振動系の動吸振機構を利用した吸音材の構成を示す図である。 吸音材の等価モデルを示す図である。 通気性のないゴム膜で質量部を構成し、多孔質材料(例えばグラスウール)でばね部を構成した吸音材の吸音率を示す図である。 多数の孔(開口)を形成した通気性のあるゴム膜で質量部を構成し、多孔質材料でばね部を構成した吸音材の吸音率を示す図である。 ばね部の厚さtを変化させたときの周波数fに対する吸音率αをシミュレーションした図(質量部の面密度:0.6kg/m2)である。 ばね部の厚さtを変化させたときの周波数fに対する吸音率αをシミュレーションした図(質量部の面密度:2.4kg/m2)である。 ばね部の厚さtを変化させたときの周波数fに対する吸音率αをシミュレーションした図(質量部の面密度:3.6kg/m2)である。 ばね部のヤング率Eを変化させたときの周波数fに対する吸音率αをシミュレーションした図(質量部の面密度Da:0.6kg/m2)である。 ばね部のヤング率Eを変化させたときの周波数fに対する吸音率αをシミュレーションした図(質量部の面密度Da:3.6kg/m2)である。 質量部の面密度Daを変化させたときの周波数fに対する吸音率αをシミュレーションした図である。 ばね部の減衰比ζを変化させたときの質量部の面密度Daと理論上の吸音率が最大となる周波数(吸音率ピーク周波数)f0の関係をシミュレーションした図である。 本実施の形態に係る吸音材の構成を示す図である。 比較例に係る吸音材の構成を示す図である。 実施例1及び比較例1の吸音材について残響室法吸音率を測定した結果を示す図である。 実施例2及び比較例2の吸音材について残響室法吸音率を測定した結果を示す図である。 実施の形態に係る吸音材の一変形例(ばね部が空気層)を示す図である。 実施の形態に係る吸音材の他の変形例(第2質量部の表面に凹凸構造)を示す図である。 実施の形態に係る吸音材の他の変形例(ばね部の設置面との接触面に凹凸構造)を示す図である。 実施の形態に係る吸音材の他の変形例(ばね部の第1質量部との接触面に凹凸構造)を示す図である。
まず、本発明に想到した経緯について説明する。本発明者等は、低周波数域(特に63〜125Hz)用の吸音材として、1自由度のばね−マス振動系の動吸振機構を利用した吸音材を候補に挙げて、吸音率0.8以上の高い吸音特性を得るべく、吸音材の寸法(厚さ)及び構成材料を検討した。
図1は1自由度のばね−マス振動系の動吸振機構を利用した吸音材の構成を示す図であり、図2は吸音材の等価モデルを示す図である。
図1、2に示すように、吸音材3は、質量部10とばね部20とを積層した構成を有する。質量部10は通気性のない材料(例えばゴム)で構成され、ばね部20は弾性効果を有する材料(例えば多孔質材料)で構成される。吸音材3は、質量部10が音源側(入射音波側)に向くように、設置面Wに設置される。
図3は、通気性のないゴム膜で質量部10を構成し、多孔質材料(例えばグラスウール)でばね部20を構成した吸音材3の吸音率を示す図である。図1に示すように、通気性のないゴム膜で質量部10を構成した場合、220Hz付近に吸音率ピーク(ピーク値0.86)が出現した。
図4は、多数の孔(開口)を形成した通気性のあるゴム膜で質量部10を構成し、多孔質材料でばね部20を構成した吸音材3の吸音率を示す図である。なお、ゴム膜に形成される孔の有無以外の構成は、上記の吸音材3と同じとした。図4に示すように、通気性のあるゴム膜で質量部10を構成した場合、220Hz付近の吸音率ピークが消滅した。
これより、通気性のない材料で質量部10を構成することが、低周波数域における吸音特性を向上させるのに有効であることがわかった。
この吸音材3の共振周波数f0(Hz)は、質量部10の質量をm(kg)、ばね部20のばね定数をs(N/m)とすると、次式(1)で表される。共振周波数f0が、吸音材3の吸音率ピークが出現する周波数(吸音率ピーク周波数)に他ならない。
Figure 0005816007
また、吸音材3の吸音率αは、理論的には次式(2)、(3)で表される。式(3)において、ζはばね部20の減衰比、ρは空気の密度(kg/m3)、cは空気中の音速(m/s)である。
Figure 0005816007
Figure 0005816007
これらの式(1)〜(3)を用いてシミュレーションを行った。具体的には、質量部10の面密度Da、ばね部20のヤング率E、厚さt、減衰比ζを任意に設定したときの周波数fに対する吸音率αをシミュレーションした。
なお、吸音材3の断面積Aは設置スペースに応じて変動するため、便宜上、単位面積当たりの吸音材でシミュレーションした。すなわち、質量部10の質量mは、質量部10の面密度Daで表され、ばね定数sは、ばね部20のヤング率E(N/m2)/厚さt(m)で表される。
図5〜7は、ばね部20の厚さtを25mm、50mm、75mm、100mmとしたときの周波数fに対する吸音率αを、式(1)〜(3)によりシミュレーションした図である。図5には質量部10の面密度Daを0.6kg/m2とした場合、図6には質量部10の面密度Daを2.4kg/m2とした場合、図7には質量部10の面密度Daを3.6kg/m2とした場合について示している。また、ばね部20のヤング率Eを1.0×105N/m2、減衰比ζを0.1とした。
図5〜7に示すように、ばね部20の厚さtが厚くなる(すなわち、ばね定数sが小さくなる)に従って、吸音率ピークは低周波数側にシフトする。
また、質量部10の面密度Daを0.6kg/m2とした場合は、低周波数側にシフトするに伴い、吸音率のピーク値が低下する(図5参照)。一方、質量部10の面密度Daを2.4kg/m2とした場合、及び3.6kg/m2とした場合は、吸音率のピーク値は低下しない(図6、7参照)。
図8、9は、ばね部20のヤング率Eを1.0×105N/m2、0.5×105N/m2、0.2×105N/m2、0.1×105N/m2としたときの周波数fに対する吸音率αを、式(1)〜(3)によりシミュレーションした図である。図8には質量部10の面密度Daを0.6kg/m2とした場合、図9には質量部10の面密度Daを3.6kg/m2とした場合について示している。また、ばね部20の減衰比ζを0.1、厚さtを25mmとした。
図8、9に示すように、ばね部20のヤング率Eが小さくなる(すなわち、ばね定数sが小さくなる)に従って、吸音率ピークは低周波数側にシフトする。
また、質量部10の面密度Daを0.6kg/m2とした場合は、低周波数側にシフトするに伴い、吸音率のピーク値が低下する(図8参照)。一方、質量部10の面密度Daを3.6kg/m2とした場合は、吸音率のピーク値はほとんど変わらない(図9参照)。
図10は、質量部10の面密度Daを、0.6kg/m2、1.2kg/m2、2.4kg/m2、3.6kg/m2としたときの周波数fに対する吸音率αを、式(1)〜(3)によりシミュレーションした図である。また、ばね部20のヤング率Eを1.0×105N/m2、減衰比ζを0.1、厚さtを50mmとした。
図10に示すように、質量部10の面密度Daが高くなるに従って、吸音率ピークは低周波数側にシフトする。
このように、質量部10の面密度Daを大きくして質量mを大きくすることにより、吸音率ピークを低周波数側にシフトさせることができる。また、ばね部20の厚さtを厚くする、又はヤング率Eを小さくしてばね定数sを小さくすることにより、吸音率ピークを低周波数側にシフトさせることができる。
また、吸音率ピークを低周波数側にシフトさせる際、吸音率のピーク値を低下させないためには、面密度を所定値(例えば2.4kg/m2)以上とする必要がある。
また、式(1)〜(3)より、吸音率αが1.0となる条件は、式(3)において、R=1、X=0である。したがって、次式(4)が満たされるときに、吸音率αが1.0となる。式(4)より、質量部10の面密度Daと共振周波数f0との関係式が求まる。
Figure 0005816007
図11は、ばね部20の減衰比ζを、0.05、0.10、0.15、0.25としたときの質量部10の面密度Daと理論上の吸音率が最大となる周波数(吸音率ピーク周波数)f0の関係を、式(1)〜(3)によりシミュレーションした図である。
図11より、ばね部20の減衰比ζを0.25とした場合に、例えば63Hz近傍における理論上の吸音率αを最大(α=1.0)とするためには、質量部10の面密度Daを2.0kg/m2とすればよいことになる。
また、ばね部20の減衰比ζを0.05とした場合に、質量部10の面密度Daが10.0kg/m2であれば、吸音率ピーク周波数f0を63Hz近傍とすることが可能となる。
また、質量部10の面密度Daが同一であっても、減衰比ζを大きくすることで、吸音率ピーク周波数f0を、より低周波数側にシフトさせることが可能である。
ここで、ばね部20を、グラスウール、ロックウール、これらの混合物、又は発泡性ウレタン樹脂で構成することを想定した場合、ばね部20の減衰比ζは0.05〜0.25となる。
図11より、所望の周波数(例えば63Hz)が吸音率ピーク周波数となるようにする場合、ばね部20の減衰比が小さいほど、質量部10の面密度Daを高くする必要がある。
また、図11より、質量部10の面密度Daが10.0kg/m2であれば、ばね部20の減衰比が0.05であっても、吸音率ピーク周波数を63Hz近傍とすることができる。言い換えると、質量部10の面密度Daが10.0kg/m2を超えると、63Hz〜125Hzの周波数域で吸音率ピークが出現するように制御することが困難となる。
また、質量部10の面密度Daが2.0kg/m2である場合は、ばね部20の減衰比として0.15〜0.25を適宜設定することで、吸音率ピーク周波数を63Hz〜125Hzとすることができる。質量部10の面密度Daが2.0kg/m2を下回ると、ばね部20の減衰比を0.25としても吸音率ピーク周波数を63Hz近傍とすることは困難となる。
したがって、減衰比ζが0.05〜0.25の材料でばね部20を構成する場合は、質量部10の面密度Daを2.0kg/m2〜10.0kg/m2とするのが望ましい。
これにより、吸音材3の吸音率ピーク周波数を63〜125Hzとすることができる。また、質量部10の面密度Daが2.0kg/m2以上であれば、ばね部20のばね定数sを小さくして吸音率ピークを低周波数側にシフトさせても、吸音率のピーク値は低下しないので、高い吸音特性(吸音率で0.8以上)が実現される。
上述したように、質量部10の面密度Daを2.0〜10.0kg/m2の範囲で設定すれば、63〜125Hzの周波数域において、理論上、吸音率αを最大とすることができる。
しかし、質量部10の質量m(面密度Da)を大きくするために厚さtを大きくすると、質量部10に剛性が生じてしまい、逆に質量部10の振動が減少するため、所望の吸音特性が得られない。また、質量部10の質量m(面密度Da)を大きくするために、金属材料のように密度の高い材料を選定した場合、材料自体の剛性により質量部10の振動が抑制される懸念がある。したがって、質量部10を単層構造にする場合は、厚さ及び構成材料の選定に制約が生じる。
そこで、本発明者等は、質量部10の振動機能を維持しつつ、質量部10の面密度Daを上述した範囲で設定すべく、検討を重ねた。そして、質量部10を、通気性のない第1質量部(例えばゴム)と、多孔質材料からなる第2質量部の二層構造として一体的に形成することを発案した。この場合、第1質量部の質量を質量部10の質量mとみなすのではなく、第1質量部と第2質量部の合計質量を質量部10の質量mとすることで、式(1)〜(3)によるシミュレーション結果と実測値が良好に一致する。
なお、通気性のない第1質量部が音源側(入射音波側)となるように配置し、第1質量部の背面側(ばね部側)に第2質量部を配置した構成については、先に出願している(特願2010−274686)。この先願技術によれば、63〜125Hzの周波数域の騒音を効果的に吸音することができる。
さらに検討を重ねた結果、二層構造の質量部10の構成を改良することで、63〜125Hzの低周波数域だけでなく、200〜5000Hzの周波数域においても、高い吸音特性が得られることを見出し、本発明に想到した。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図12は本実施の形態に係る吸音材の構成を示す図である。
図12に示すように、本実施の形態に係る吸音材1は、質量部10とばね部20とを積層した構成を有し、ばね部20を設置面Wに向けて設置される。なお、設置面Wは音源(入射音波)と対向している。
質量部10は、ばね部20側に配置される通気性のない第1質量部11と、音源側に配置される多孔質材料からなる、すなわち通気性のある第2質量部12とを有する。質量部10の面密度、すなわち第1質量部11と第2質量部12の面密度の合計は、2.0〜10.0kg/m2である。
ここで、「通気性のない」とは、全く通気しない場合(例えばゴム等)はもちろん、吸音材1に音波が入射することにより質量部10が振動する程度に通気性が低い場合(例えば高密度の繊維集合体)も含まれる。また、「通気性のある」とは、吸音材1に音波が入射したときに、この音波が内部の空気を振動させることにより減衰される程度の通気性を有していることを意味する。
第1質量部11は、例えばゴム、アクリル樹脂やPVC(ポリ塩化ビニル)樹脂等の樹脂、アルミニウム等の金属、又はこれらの組み合わせ(ゴム、樹脂、又は金属膜の積層体)で構成される。
第1質量部11の柔軟性が低い(剛性が大きい)と、吸音材1の受音面に対して垂直方向から入射する音波に対しては質量部10が振動するが、斜方向から入射する音波に対しては質量部10の振動が著しく抑制されるので、吸音効果が低下する。
そのため、第1質量部11は、質量部10の振動が損なわれない程度の柔軟性を有することが望ましい。これにより、受音面に対して音波が斜方向から入射した場合でも、これに追従して質量部10は振動する。具体的には、第1質量部11の構成材料(ヤング率)、及び厚さを適宜に選定することにより、第1質量部11の柔軟性を制御することができる。
第1質量部11をゴム又は樹脂で構成する場合には、第1質量部11を厚さ:0.1〜3mmの膜状に形成するのが望ましい。また、第1質量部11を金属で構成する場合には、第1質量部11を厚さ:0.01〜0.2mmの膜状に形成するのが望ましい。ゴム膜又は樹脂膜の厚さが3mmを超えると、又は金属膜の厚さが0.2mmを超えると、第1質量部11に剛性を生じ、第1質量部11の振動が抑制され、所望の吸音効果が得られなくなるためである。また、膜厚が薄いほど第1質量部11の柔軟性は高まるが、膜厚が薄すぎると正確な膜厚制御が困難となるため、上述のように下限値を設定している。
第1質量部11を構成するゴム又は樹脂としては、室温下でのヤング率Eが0.2×106〜5.0×106N/m2のものが好適である。ゴム材としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴム、ポリオレフィンが挙げられる。
これにより、ゴム又は樹脂を0.1〜3mmの膜厚で形成した場合に、高い柔軟性を確保することができる。なお、第1質量部11をゴムで構成する場合は、ゴムの硬度にも留意する必要がある。
第1質量部11を構成する金属として、例えば、室温下でのヤング率Eが7×1010N/mであるアルミニウムが挙げられる。このように、金属のヤング率Eは、上述したゴム又は樹脂のヤング率Eに比べて非常に大きいが、0.01〜0.2mmの膜厚で金属膜を形成することで、第1質量部11の高い柔軟性を確保することができる。アルミニウムの密度を2700kg/m3とすると、膜厚0.01〜0.2mmのアルミ箔の面密度は0.027〜0.54kg/m2となる。
また、ゴム、樹脂、又は金属を組み合わせて第1質量部11を構成する場合は、質量部10の振動が損なわれない程度の柔軟性を有するように、各材料を所定のヤング率E及び厚さの範囲にて形成し、積層すればよい。
特に金属を使用した場合、高い柔軟性を確保するため、厚さ0.01〜0.2mmの膜状に形成することになるが、面密度は、例えばアルミ箔の場合0.027〜0.54kg/m2と小さくなってしまう。したがって、第2質量部12での面密度調整負担を低減するため、金属膜と、ゴム膜又は樹脂膜とを積層した構成で第1質量部11を形成し、第1質量部11の面密度を大きくすることが好ましい。
第1質量部11と同様に、第2質量部12の柔軟性が低い(剛性が大きい)と、やはり吸音材1の吸音効果が低下する。そのため、第2質量部11は、質量部10の振動が損なわれない程度の柔軟性を有することが望ましい。これにより、受音面に対して音波が斜方向から入射した場合でも、これに追従して質量部10は振動する。
多孔質材料としては、室温下でのヤング率Eが1×104〜1×106N/m2のグラスウール、ロックウール、これらの混合物、又は発泡性ウレタン樹脂が好適である。質量部10の振動が損なわれない程度の柔軟性を有し、第1質量部11との面密度の合計が2.0〜10.0kg/m2の範囲となるように、第2質量部12の厚さが適宜に選定される。
第1質量部11と第2質量部12は、例えば接着により一体化されている。第1質量部11と第2質量部12が一体化されているので、第1質量部11と第2質量部12の両方が、ばね−マス振動系の質量となる。
ばね部20は、例えば多孔質材料で構成される。多孔質材料としては、グラスウール、ロックウール、これらの混合物、又は発泡性ウレタン樹脂が好適である。この場合、ばね部20の減衰比は0.05〜0.25程度となる。
また、ばね部20の厚さt及びヤング率Eは、設置スペースや吸音率ピーク周波数等に応じて適宜に選定される。
吸音材1によれば、音源側に通気性のある多孔質材料の第2質量部12が配置されているので、この第2質量部12が一般に用いられている多孔質吸音材と同様に中・高周波数域用の吸音材として機能する。すなわち、音源からの音波が第2質量部12を伝播して第1質量部11を振動させる際に、第2質量部12内でも吸音される。したがって、吸音材1は、63〜125Hzの低周波数域の騒音に対する高い吸音特性(吸音率ピーク値が0.8以上)に加え、200〜5000Hzの周波数域の騒音に対しても高い吸音特性を有する。
また、第2質量部12により第1質量部11の表面が保護されるので、第1質量部11が傷つくことにより振動による吸音機構が損なわれるのを防止できる。さらには、中・高周波数域の吸音に対応させるために、吸音材1の厚さが厚くなることもない。
[実施例1]
実施例1では、質量部10の面密度が2.9kg/m2となるように、また振動が損なわれない柔軟性を有するように、ヤング率:1.0×106N/m2、厚さ:0.2mmの樹脂膜で第1質量部11を構成し、ヤング率:1.5×105N/m2、厚さ:25mm、密度:96kg/m3のグラスウールで第2質量部12を構成した。また、ヤング率:1.0×105N/m2、厚さ:200mm、密度:32kg/m3のグラスウールでばね部20を構成した。
ばね部20のばね定数を小さくし、質量部10の質量を大きくすることにより、吸音率ピークを低周波数側に容易にシフトさせることができる。特に、第2質量部12とばね部20を同じグラスウールで構成するような場合は、第2質量部12の密度をばね部20の密度より大きくするのがよい。
[比較例1]
比較例1では、実施例1の吸音材1において、第1質量部11と第2質量部12の配置を逆にした(図13参照、吸音材2)。すなわち、第1質量部11を音源側、第2質量部12をばね部20側に配置した。各構成材料については実施例1と同様とした。
実施例1及び比較例1について残響室法吸音率を測定した結果を図14に示す。
図14に示すように、実施例1では、63Hzに吸音率ピークが出現し、そのピーク値は1.06であった。また、200〜5000Hzの周波数域では、高周波数域になるほど吸音率が増加した。
これに対して、比較例1では、80Hzに吸音率ピークが出現し、そのピーク値は0.99であった。また、200〜5000Hzの周波数域では、一部吸音率ピークがみられたものの、全体として高周波数域になるほど吸音率が低下する傾向にあった。
このように、実施例1では、低周波数域において比較例1と同等の吸音特性が得られる上、さらに200〜5000Hzの周波数域における吸音特性が格段に向上した。
[実施例2]
実施例2では、質量部10の面密度が3.2kg/m2となるように、また振動が損なわれない柔軟性を有するように、ヤング率:7.0×1010N/m2、厚さ:0.1mmの金属膜と、ヤング率:0.5×106N/m2、厚さ:1.4mmのゴム膜との積層体で第1質量部11を構成し、ヤング率:0.2×106N/m2、厚さ:25mm、密度:22kg/m3の発泡性ウレタン樹脂で第2質量部12を構成した。また、ヤング率:1.0×105N/m2、厚さ:200mm、密度:32kg/m3のグラスウールでばね部20を構成した。
[比較例2]
比較例2では、実施例2の吸音材1において、第1質量部11と第2質量部12の配置を逆にした(図13参照、吸音材2)。すなわち、第1質量部11を音源側、第2質量部12をばね部20側に配置した。各構成材料については実施例2と同様とした。
実施例2及び比較例2について残響室法吸音率を測定した結果を図15に示す。
図15に示すように、実施例2では、80Hzに吸音率ピークが出現し、そのピーク値は1.08であった。また、200〜1000Hzの周波数域では、吸音率が0.6前後で推移し、1000Hz以上の周波数域では高周波数域になるほど増加した。
これに対して、比較例2では、80Hzに吸音率ピークが出現し、そのピーク値は1.14であった。また、200〜5000Hzの周波数域では、高周波数域になるほど吸音率が低下する傾向にあった。
このように、実施例2では、低周波数域において比較例2と同等の吸音特性が得られる上、さらに500〜2000Hzの周波数域における吸音特性が格段に向上した。
本発明では、第1質量部11と第2質量部12が一体化され、両方でばね−マス振動系の質量を構成するため、第1質量部11と第2質量部12の配置を逆にしても、低周波数域における吸音特性は同等となる。さらに、音源側に多孔質材料の第2質量部12が配置されているので、この第2質量部12が一般に用いられている多孔質吸音材と同様に中・高周波数域用の吸音材として機能する。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、図16に示すように、吸音材1において、多孔質材料の代わりに空気層20Aをばね部20として適用してもよい。この場合、例えば設置面Wに立設した断面「コ」字状の支持部材21により、設置面Wから離間した位置で質量部10を支持する。質量部10と設置面Wの間に空間が形成されるので、質量部10の背面側(設置面W側)の空気層20Aがばねとして作用して吸音する。
また、図17に示すように、第2質量部12の表面(音源側)12aを凹凸状に形成してもよい。これにより、受音面の表面積が増加するので、吸音特性がさらに向上する。
また、図18、19に示すように、ばね部20の設置面Wとの接触面20a又は第1質量部11との接触面20bを凹凸状に形成してもよい。これにより、ばね部20は対向する面(設置面W又は第1質量部11)に点支持又は線支持されることとなり、ばね部20のばね定数が低減される。したがって、吸音率ピークを低周波数域側へシフトさせるのに有効である。
また、図16〜19に示した例を組み合わせて、第2質量部12とばね部20の双方に凹凸構造を設けてもよい。また、図16〜19に示した例の凹凸構造は波形であるが、点支持あるいは線支持ができる形状であればよい。
また、吸音材1において、第2質量部12の音源側にさらに多孔質材料からなる層を積層してもよい。これにより、50〜5000Hzの広帯域において、所望の吸音率(吸音率0.8以上)を得ることができる。但し、多孔質材料からなる層を追加するため、吸音材1の厚さとしては厚くなるため、設置スペースの確保が必要となる。
また、本発明は、63〜125Hzの周波数域において吸音率ピークを有し、また所望のピーク値(吸音率0.8以上)を達成できる低周波数域用の吸音材として有用であるが、200Hz近傍の騒音を効果的に吸収することもできる。
また、第1質量部11をアルミニウム等の金属で構成した場合、吸音材1は吸音効果を有するだけでなく、電磁波のシールド効果も有することとなる。したがって、騒音とともに電磁波を発する機器(例えば変圧器)用の騒音対策として極めて有用である。この場合、金属からなる第1質量部11を接地することにより、シールド効果をさらに高めることもできる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 吸音材
10 質量部
11 第1質量部
12 第2質量部
20 ばね部
W 設置面

Claims (4)

  1. 質量部とばね部とを有し、前記ばね部を設置面に向けて設置される吸音材であって、
    前記質量部が、前記ばね部側に配置される通気性のない第1質量部と、音源側に配置される多孔質材料からなる第2質量部とを一体的に形成した構成を有し、
    前記質量部の面密度が、2.0〜10.0kg/mであり、
    前記第1質量部が、ゴム、樹脂、金属材料又はそれらの積層体で構成され、
    前記ばね部が、多孔質材料で構成されることを特徴とする吸音材。
  2. 前記ばね部の表面が、凹凸構造を有していることを特徴とする請求項に記載の吸音材。
  3. 質量部とばね部とを有し、前記ばね部を設置面に向けて設置される吸音材であって、
    前記質量部が、前記ばね部側に配置される通気性のない第1質量部と、音源側に配置される多孔質材料からなる第2質量部とを一体的に形成した構成を有し、
    前記質量部の面密度が、2.0〜10.0kg/mであり、
    前記第1質量部が、ゴム、樹脂、金属材料又はそれらの積層体で構成され、
    前記ばね部が、空気層で構成されることを特徴とする吸音材。
  4. 前記第2質量部の表面が、凹凸構造を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の吸音材。
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