以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、ハイブリッド自動車(以下「HEV」と記述する)の制御ブロックを示す図である。なお、本実施の形態の電力変換装置は、HEVに限らず、PHEVあるいはEV等の車両に搭載される電力変換装置にも適用でき、さらには、建設機械等の車両に用いられる電力変換装置にも適用することができる。
エンジンEGNおよびモータジェネレータMG1は車両の走行用トルクを発生する。また、モータジェネレータMG1は回転トルクを発生するだけでなく、モータジェネレータMG1に外部から加えられる機械エネルギーを電力に変換する機能を有する。モータジェネレータMG1は、例えば同期機あるいは誘導機であり、上述のごとく、運転方法によりモータとしても発電機としても動作する。モータジェネレータMG1を自動車に搭載する場合には、小型で高出力を得ることが望ましく、ネオジウムなどの磁石を使用した永久磁石型の同期電動機が適している。また、永久磁石型の同期電動機は誘導電動機に比べて回転子の発熱が少なく、この観点でも自動車用として優れている。
エンジンEGNの出力側の出力トルクは動力分配機構TSMを介してモータジェネレータMG1に伝達され、動力分配機構TSMからの回転トルクあるいはモータジェネレータMG1が発生する回転トルクは、トランスミッションTMおよびデファレンシャルギアDEFを介して車輪に伝達される。一方、回生制動の運転時には、車輪から回転トルクがモータジェネレータMG1に伝達され、供給されてきた回転トルクに基づいて交流電力を発生する。発生した交流電力は後述する電力変換装置200により直流電力に変換され、高電圧用のバッテリ136を充電し、充電された電力は再び走行エネルギーとして使用される。
次に電力変換装置200について説明する。電力変換装置200に設けられたインバータ回路140は、バッテリ136と直流コネクタ138を介して電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ回路140との相互において電力の授受が行われる。モータジェネレータMG1をモータとして動作させる場合には、インバータ回路140は直流コネクタ138を介してバッテリ136から供給された直流電力に基づき交流電力を発生し、交流端子188を介してモータジェネレータMG1に供給する。モータジェネレータMG1とインバータ回路140からなる構成は電動発電ユニットとして動作する。
なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータMG1の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジンEGNの動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
また、図1では省略したが、バッテリ136はさらに補機用のモータを駆動するための電源としても使用される。補機用のモータとしては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータである。バッテリ136から直流電力が補機用パワーモジュールに供給され、補機用パワーモジュールは交流電力を発生して補機用のモータに供給する。補機用パワーモジュールはインバータ回路140と基本的には同様の回路構成および機能を持ち、補機用のモータに供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。なお、電力変換装置200は、インバータ回路140に供給される直流電力を平滑化するためのコンデンサ500を備えている。
電力変換装置200は、上位の制御装置から指令を受けたりあるいは上位の制御装置に状態を表すデータを送信したりするための通信用のコネクタ21を備えている。電力変換装置200は、コネクタ21から入力される指令に基づいて制御回路172でモータジェネレータMG1の制御量を演算し、さらに、モータジェネレータMG1をモータとして運転するか発電機として運転するか演算する。電力変換装置200は、その演算結果に基づいて制御パルスを発生し、発生した制御パルスをドライバ回路174へ供給する。ドライバ回路174は、供給された制御パルスに基づいて、インバータ回路140を制御するための駆動パルスを発生する。
図2は、車両における電力変換装置200の配置場所を模式的に示したものである。車両前方方向からエンジンEGN、トランスミッションTMの順に配置され、電力変換装置200はトランスミッションTMの下方に配置されている。トランスミッションTMのケース内前方(電力変換装置200の上方)には、モータジェネレータMG1が配置されている。省スペースの観点から、電力変換装置200の配置スペースは小さいほど良い。
また、電力変換装置200からモータジェネレータMG1へ電力を供給する配線は短いほど良く、電力変換装置200はモータジェネレータMG1の近傍に配置するのが好ましい。そのため、電力変換装置200は、図2に示すようなトランスミッションTMの下部のように狭いスペースに配置される場合が多く、電力変換装置200の小型化・薄型化が望まれている。なお、図2の配置は一例を示したものであり、トランスミッションTMのケース内エンジン側に設けたり、ベルハウジングに内蔵したりする。
次に、図3を用いてインバータ回路140の電気回路の構成を説明する。なお、以下で半導体素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを使用しており、以下略してIGBTと記す。上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166とで、上下アームの直列回路150が構成される。インバータ回路140は、この直列回路150を、出力しようとする交流電力のU相、V相、W相の3相に対応して備えている。
これらの3相は、この実施の形態ではモータジェネレータMG1の電機子巻線の3相の各相巻線に対応している。3相のそれぞれの上下アームの直列回路150においては、直列回路の中点部分である中間電極169は、交流端子159、交流バスバー802、交流端子188を介してモータジェネレータMG1に接続されている。直列回路150から出力される交流電流は、中間電極169から上記経路によりモータジェネレータMG1へ出力される。
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は、直流正極端子157を介してコンデンサ500の正極側のコンデンサ端子506に電気的に接続されている。また、下アームのIGBT330のエミッタ電極は、直流負極端子158を介してコンデンサ500の負極側のコンデンサ端子504に電気的に接続されている。
上述のように、制御回路172は上位の制御装置からコネクタ21を介して制御指令を受け、これに基づいてインバータ回路140の各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための制御信号である制御パルスを発生し、ドライバ回路174に供給する。
ドライバ回路174は、上記制御パルスに基づき、各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330へ駆動パルスを供給する。IGBT328やIGBT330は、ドライバ回路174からの駆動パルスに基づき、導通あるいは遮断動作を行い、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力はモータジェネレータMG1に供給される。
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154とを備えている。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164とを備えている。ダイオード156は、コレクタ電極153とエミッタ電極155との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166は、コレクタ電極163とエミッタ電極165との間に電気的に接続されている。
スイッチング用パワー半導体素子としては金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(以下略してMOSFETと記す)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。スイッチング用パワー半導体素子として、IGBTは直流電圧が比較的高い場合に適していて、MOSFETは直流電圧が比較的低い場合に適している。
コンデンサ500に関して、正極側のコンデンサ端子506と負極側のコンデンサ端子504と正極側の電源端子509と負極側の電源端子508とが設けられている。バッテリ136からの高電圧の直流電力は、直流コネクタ138を介して正極側の電源端子509や負極側の電源端子508に供給され、コンデンサ500の正極側のコンデンサ端子506および負極側のコンデンサ端子504から、インバータ回路140へ供給される。
一方、インバータ回路140によって交流電力から変換された直流電力は、正極側のコンデンサ端子506や負極側のコンデンサ端子504からコンデンサ500に供給される。また、直流電力は、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508から直流コネクタ138を介してバッテリ136に供給され、バッテリ136に蓄積される。
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンへの入力情報としては、モータジェネレータMG1に対して要求される目標トルク値、直列回路150からモータジェネレータMG1に供給される電流値、及びモータジェネレータMG1の回転子の磁極位置がある。
目標トルク値は、不図示の上位制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、後述する電流センサモジュール180による検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータMG1に設けられたレゾルバなどの回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では、電流センサモジュール180は3相の電流値を検出する場合を例に挙げているが、2相分の電流値を検出するようにし、演算により3相分の電流を求めても良い。
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータMG1のd軸,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電流指令値と、検出されたd軸,q軸の電流値との差分に基づいてd軸,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
また、制御回路172内のマイコンは、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、直列回路150を保護している。このため、制御回路172にはセンシング情報が入力されている。例えば、各アームの信号用のエミッタ電極155及び信号用のエミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT330を過電流から保護する。
直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは、直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには直列回路150の直流正極側の電圧情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
図4は電力変換装置200の外観斜視図である。本実施の形態の電力変換装置200は、図2に示すような配置に対応するために、後述する構成を採用し電力変換装置200全体の高さ寸法を低く抑えている。ケース10は平面視形状が略矩形状の金属製ケースであり、側面には冷却媒体(例えば、冷却水などが用いられ、以下では冷媒と記す)をケース内に流入させるための配管13と、冷媒を流出するための配管14が配設されている。508,509は直流入力用の電源端子である。コネクタ21は、外部(例えば、上位制御装置)との接続のために設けられた信号用のコネクタである。
図5は、電力変換装置200の分解斜視図である。なお、図5では上カバー3の記載を省略した。ケース10内の図示左側には、コンデンサ500を収納するコンデンサユニット4がケース10の長手方向に沿うように配置されている。一方、ケース10内の図示右側には、図2に示したインバータ回路140が設けられているパワーモジュールユニット5が、コンデンサユニット4に対して平行に配置されている。コンデンサユニット4およびパワーモジュールユニット5の上方には、コネクタ21が取り付けられた回路基板20が配置されている。回路基板20には、図3に示した制御回路172およびドライバ回路174が実装されている。上カバー3は、ケース10の開口部を覆うようにボルト固定されている。
(パワーモジュールユニット5の説明)
図6、7はパワーモジュールユニット5を示す図であり、図6は斜視図、図7は分解斜視図である。パワーモジュールユニット5は、冷媒流路が形成されたケースである流路形成体12Aと、バスバーホルダ800と、交流バスバー802U,802V,802Wと、遮蔽板50と、電流センサモジュール180と、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wとを備えている。流路形成体12Aは、後述するように冷媒が流れる冷媒流路を備え、流路形成体12Aに設けられた部品を冷却する冷却器として機能するものである。
流路形成体12Aは金属製(例えば、アルミ)の直方体形状ケースであって、長手方向の一端には冷媒流入用の配管13が設けられ、反対側の端面には冷媒排出用の配管15aが設けられている。流路形成体12Aには冷媒が流れる冷媒流路120が形成されている。流路形成体12Aの側面には、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wを冷媒流路120内に挿入するための開口120U,120V,120Wが形成されている。パワー半導体モジュール300U,300V,300Wを対応する開口120U,120V,120Wに挿入し、それらを流路形成体12Aに固定すると、各開口120U,120V,120Wは封止される。各開口120U〜120Wの周囲には、封止のためのシール材123がそれぞれ設けられている。
バスバーホルダ800は絶縁性材料(例えば、絶縁性樹脂)で形成されており、図示上側(ケース10の開口側)には交流バスバー802を装着するための装着溝が形成されている。なお、図7、8では、U相、V相、W相に対応した交流バスバーを符号802U,802V,802Wで示しており、以下も同様である。交流バスバー802U〜802Wを、バスバーホルダ800の対応する装着溝に嵌め込んで所定位置に位置決めし、ビス止めすることにより、交流バスバー802U〜802Wをバスバーホルダ800に固定する。交流バスバー802U,802V,802Wのパワー半導体モジュール300U,300V,300Wとの接続部8021,8022,8023は、図示下側(ケース10の底面側)に折れ曲がっている。
バスバーホルダ800には電流センサモジュール180が固定されている。電流センサモジュール180には、交流バスバー802U,802V,802Wに対応して貫通孔180U,180V,180Wが形成されている。なお、図7では、貫通孔180Uは見えていない。各交流バスバー802U〜802Wは、それらの出力端側が対応する貫通孔180U〜180Wを貫通するように固定されている。電流センサモジュール180には、各貫通孔180U,180V,180Wに対応して電流センサ(例えば、ホールセンサを用いた電流センサ)が各々設けられており、それらの電流センサにより各交流バスバー802U,802V,802Wを流れる電流が各々検出される。
交流バスバー802U〜802Wおよび電流センサモジュール180が装着されたバスバーホルダ800は、流路形成体12Aの上面に載置され、その面にネジ止めされる。その後、遮蔽板50が、流路形成体12Aの上面に形成された背の低い支柱121およびバスバーホルダ800上に、ネジ止めされる。遮蔽板50は、交流バスバー802U〜802Wの上部を覆うように設けられ(図6参照)、支柱121、流路形成体12Aおよびケース10を介して車両側の接地部位と電気的に接続されている。流路形成体12Aの上面には支柱121とは別に、図5に示した回路基板20をビス固定するための背の高い支柱122が複数形成されている。この支柱122は、図6に示すように遮蔽板50よりも上方に突出している。
(パワー半導体モジュール300U〜300Wの説明)
パワー半導体モジュール300U〜300Wの詳細を、図8〜13を用いて説明する。図2に示したように、インバータ回路140には、U,VおよびW相のそれぞれに関する直列回路150が設けられている。パワー半導体モジュール300UにはU相の直列回路150が設けられ、パワー半導体モジュール300VにはV相の直列回路150が設けられ、パワー半導体モジュール300WにはW相の直列回路150が設けられている。パワー半導体モジュール300U〜300Wはいずれも同一構造を有しており、ここではパワー半導体モジュール300Uを例に説明する。
図8はパワー半導体モジュール300Uの斜視図であり、図9は図8のA−A断面図である。図8に示すように、パワー半導体モジュール300Uは直列回路150を構成する半導体素子(IGBT328,330、ダイオード156,166)を、CAN型冷却器である金属製のモジュールケース304内に封入したものである。ここで、CAN型冷却器とは、一面(図8の上端面)に設けられた挿入口を有する筒形状をした冷却用ケースである。
モジュールケース304は有底筒状のケースであって、例えばアルミ合金材料(Al,AlSi,AlSiC,Al−C等)で構成され、かつ、つなぎ目の無い状態で一体に成形される。モジュールケース304は、端子類の引出部である挿入口以外に開口を設けない構造であり、挿入口の部分、すなわちモジュールケース304の上端にはフランジ304Bが設けられている。モジュールケース304は扁平なケースであり、モジュールケース304の表裏両面には冷却フィン305が形成された放熱壁307が設けられている。図9の断面図から分かるように、モジュールケース304の一方の面(図9に示す左側の面)に形成された放熱壁307の周囲には、薄肉部304Aが形成されており、放熱壁307を反対側の放熱壁方向へ押圧することにより、一対の放熱壁307の間にモジュール構成体を挟み込むようにしている。
図9の断面図に示すように、モジュールケース304内には半導体素子および電極等から成るモジュール構成体が挿入され、モジュールケース304内の隙間には封止樹脂351が充填されている。モジュールケース304の挿入口部分からは、モジュール構成体に設けられた中継端子600が突出している。中継端子600は、直流正極端子157、直流負極端子158、交流端子159および信号端子325U,325L,336U,336Lを一体成型したものである。
図10は、パワーモジュールの内蔵回路構成を示す回路図である。上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極は、導体板315を介して接続される。導体板315には直流正極端子157が接続されている。IGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極は、導体板318を介して接続される。IGBT328のゲート電極154には、3つの信号端子325Uが並列に接続されている。IGBT328の信号用エミッタ電極155には、信号端子336Uが接続されている。
一方、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極は、導体板320を介して接続される。導体板320は中間電極169によって導体板318に接続されるとともに、交流端子159が接続されている。IGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極は、導体板319を介して接続される。導体板319には、直流負極端子158が接続されている。IGBT330のゲート電極164には、3つの信号端子325Lが並列に接続されている。IGBT330の信号用エミッタ電極165には、信号端子336Lが接続されている。
図11〜13はモジュール構成体を説明する図である。図11はモジュール構成体の斜視図であり、図12は図11のB―B断面図である。なお、B−B断面は、図8に示すA−A断面と同一部分の断面である。また、図13は、図11に示すモジュール構成体からモールド樹脂348および配線絶縁部608を除去した状態を示したものである。
半導体素子(IGBT328,330、ダイオード156,166)の各電極はチップの表裏面に形成されており、図13に示すように、上アームのIGBT328およびダイオード156は導体板315と導体板318とによって挟持されている。半導体素子の表裏面と導体板315,318との間にはシート状の金属接合材(たとえが、半田シート)が配置され、その金属接合材を溶融・固化させることによって、各半導体素子と導体板315,318とが固着される。同様に、下アームのIGBT330およびダイオード166は導体板319と導体板320とによって挟持されている。導体板318と導体板320とは中間電極169によって接続されている。
導体板315に接続された直流正極端子157は、図8のモジュールケース304のフランジ304Bが設けられている部分からから立ち上がるように立設され、先端部分(接続部)が導体板318とは反対側に向くように途中から図の右方向にほぼ直角に折れ曲がっている。導体板319に接続された直流負極端子158も、直流正極端子157の場合と同様に途中から右方向にほぼ直角に折れ曲がっている。一方、導体板320に接続された交流端子159は、途中で折れ曲がることなくまっすぐ立設されている。
また、信号端子325U,325L,336U,336Lについては、直流正極端子157および直流負極端子158とは逆に、途中から導体板318方向に折れ曲がっている。すなわち、信号端子325U,325L,336U,336Lの先端部分(接続部)は、直流正極端子157および直流負極端子158の先端部分とは逆方向を向いている(図12参照)。
図13に示すモジュール構成体に対してトランスファーモールドを行うことにより、図11に示すように、導体板315,318,318,320で挟まれた半導体素子をモールド樹脂348で覆う。このとき、半導体素子を挟持した導体板315,318,318,320の外側の面は放熱面として機能するため、図11に示すようにモールド樹脂348から露出させておく。また、直流正極端子157、直流負極端子158、交流端子159および信号端子325U,325L,336U,336Lは、配線絶縁部608によって一体化される。配線絶縁部608には、配線絶縁部608をモジュールケース304のフランジ304Bに固定するための固定部608bが形成されている。固定部608bには、ビス固定用の貫通孔が形成されている。
図11,12に示した状態のモジュール構成体をモジュールケース304内に挿入し、放熱壁307の内周面が導体板315,318,318,320の露出面と密着するように、放熱壁307をケース内側方向へ押圧する。なお、導体板315,318,318,320と放熱壁307との間には、熱伝導性能に優れた絶縁シートが配置される。その後、モジュールケース304内の隙間空間に封止樹脂351を充填して固化させることにより、パワー半導体モジュール300Uが完成する。
各パワー半導体モジュール300U〜300Wは、図7に示すように信号端子325U,325L,336U,336Lが流路形成体12Aのバスバーホルダ固定側、すなわち、ケース10の開口側を向くように流路形成体12Aの開口120U〜120Wに固定される。その後、パワー半導体モジュール300U〜300Wを流路形成体12Aに固定した後、交流バスバー802U〜802Wおよび電流センサモジュール180が装着されたバスバーホルダ800を、流路形成体12Aの上面側に固定する。
図14は、パワー半導体モジュール300U〜300Wおよびバスバーホルダ800が装着された流路形成体12Aを示す図である。図14(a)は流路形成体12Aの開口120U〜120Wが形成されている側、すなわちコンデンサユニット4に対向する側の側面図である。図14(b)は流路形成体12Aの底面側を示す図である。図14において、図示下方がケース10の底面側であり、図示上方がケース10の開口側である。図14(a)に示すように、パワーモジュールユニット5において、直流正極端子157、直流負極端子158、交流端子159、信号端子335U,325L,336U,336Lは、全てコンデンサユニット4に対抗する面に配置されている。直流正極端子157、直流負極端子158はケース10の底部側に伸延しており、逆に、信号端子335U,325L,336U,336Lはケース開口側に伸延している。
交流バスバー802U〜802Wのパワー半導体モジュール300U〜300Wとの接続部8021,8022,8023は、図14(a)に示すようにケース底部側に折れ曲がっている。バスバーホルダ800を流路形成体12Aの上面に固定すると、接続部8021〜8023の先端部は、パワー半導体モジュール300U〜300Wの各交流端子159に接触する。そして、この接触部分を溶接することにより、交流バスバー802U〜802Wがパワー半導体モジュール300U〜300Wに接続される。溶接後、バスバーホルダ800に遮蔽板50を固定する。その結果、図6に示すパワーモジュールユニット5が完成する。
(コンデンサユニット4の説明)
図15、16はコンデンサユニット4を示す図であり、図15は斜視図、図16は分解斜視図である。図16に示すように、コンデンサユニット4は、冷媒流路が形成されたケースである流路形成体12B、複数のコンデンサ素子500a、コンデンサバスバー501、Yコンデンサ40、放電抵抗41およびコンデンサ封止樹脂42を備えている。複数のコンデンサ素子500aは、図2に示したコンデンサ500を構成するものであり、後述するようにコンデンサバスバー501に並列接続されている。なお、コンデンサ500は1以上のコンデンサ素子500aで構成されている。
Yコンデンサ40はノイズ対策として設けられているものであり、DC入力側であるコンデンサバスバー501の電源端子508,509に接続されている。放電抵抗41は、電力変換装置停止時にコンデンサ素子500aに溜まっている電荷を放電するために設けられたものであり、コンデンサバスバー501に接続される。コンデンサ封止樹脂42は、流路形成体12Bの収納部1201に収納されたコンデンサ素子500aおよびコンデンサバスバー501の全体をモールドする絶縁性の樹脂であり、図16に示す立方体形状は固化後の形状を示している。
図17,18は流路形成体12Bを説明する図である。図17,18の矢印は、ケース10の底面側(ケース底部側)および開口側(ケース開口側)を示す。図17に示すように、流路形成体12Bのケース開口側には冷媒流路1202が形成されている。冷媒流路1202の入口には冷媒を取り入れるための配管15cが設けられ、冷媒流路1202の出口には冷媒排出用の配管14が設けられている。金属製の流路形成体12Bの底面には、冷媒流路1202を覆うように金属製のカバー1023が溶接される。カバー1203を取り付けることで冷媒流路1202のケース底部側が密封され、配管15cから流入した冷媒は、冷媒流路1202を通って配管14から排出される。
なお、流路形成体12Bの底面はケース10の開口側を向いており、底面には回路基板20を固定するための支柱124が複数形成されている。流路形成体12Bの長手方向の端面部分には、Yコンデンサ40を取り付けるための固定部1204が設けられている。Yコンデンサ40は固定部1204にビス止めされる。
図18は、流路形成体12Bのケース底部側の形状を示す図である。流路形成体12Bのケース底部側には収納部1201を構成する凹部が形成されている。収納部1201の底部のケース開口側に、図17に示した冷媒流路1202が形成されている。流路形成体12Bの配管15cが設けられている側の端面部分には、放電抵抗41を取り付けるための固定部1205が形成されている。放電抵抗41は固定部1205にビス止めされる。冷媒流路1202が形成された流路形成体12Bは、それに固定される部品(コンデンサ素子500a、コンデンサバスバー501、Yコンデンサ40、放電抵抗41)を冷却するための冷却器として機能している。
(コンデンサバスバー501の説明)
図19〜22はコンデンサバスバー501を説明する図である。コンデンサバスバー501には複数のコンデンサ素子500aが接続されている。複数のコンデンサ素子500aは、コンデンサバスバー501上に載置されるように接続されている。図19は複数のコンデンサ素子500aが接続されたコンデンサバスバー501を示す斜視図である。図20は、図19に示すコンデンサバスバー501の裏面側を示す図である。図21はコンデンサバスバー501の分解斜視図である。図22はコンデンサバスバー501とコンデンサ素子500aとの接続を説明する図である。
図21に示すように、コンデンサバスバー501は、正極バスバー501Pと負極バスバー501Nと絶縁シート501INとから成る。絶縁シート501INは、正極バスバー501Pと負極バスバー501Nとの間の絶縁のために設けられたものである。絶縁シート501INを間に挟むようにバスバー501P,501Nを積層することにより、コンデンサバスバー501が構成される。そして、正極バスバー501Pの上に複数のコンデンサ素子500aが載置される。
正極バスバー501Pには、正極側の電源端子509および正極側のコンデンサ端子506が設けられている。コンデンサ端子506は、パワーモジュールユニット5に設けられた各パワー半導体モジュール300U,300V,300Wの直流正極端子157と正極バスバー501Pとを接続するための端子であって、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wの直流正極端子157と対応する位置に3つ形成されている。
一方、負極バスバー501Nには、負極側の電源端子508および負極側のコンデンサ端子504が設けられている。コンデンサ端子504は、パワーモジュールユニット5に設けられた各パワー半導体モジュール300U,300V,300Wの直流負極端子158と負極バスバー501Nとを接続するための端子であって、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wの直流負極端子158と対応する位置に3つ形成されている。
また、正極バスバー501Pおよび負極バスバー501Nのそれぞれには、積層状態のバスバー501P,501Nを固定するためのL字部505,507が形成されている。L字部505,507には貫通穴がそれぞれ形成されており、L字部505,507は別部品であるターミナル部材510にそれぞれボルト固定される。その結果、図20に示すように、ターミナル部材510を介して、正極バスバー501P、絶縁シート501INおよび負極バスバー501Nが一体化される。ターミナル部材510は放電抵抗41の配線(図16参照)が接続され、放電抵抗41が正極バスバー501Pおよび負極バスバー501Nに接続される。
図21に示すように、コンデンサ素子500aにはフィルムコンデンサが用いられ、正極側の端子5001および負極側の端子5002がコンデンサ素子500aの両端面に設けられている。軸方向に並んだ2つのコンデンサ素子500aは、端子5001が設けられた端面同士が対抗するように配置されている。正極側の端子5001および負極側の端子5002は、正極バスバー501P、絶縁シート501INおよび負極バスバー501Nを貫通してコンデンサバスバー501の裏面側に突出している(図20および図22参照)。
図21に示すように、負極側の端子5002に対する正極バスバー501Pの貫通穴P1は、端子5002が接触しないように大きく形成されている。一方、正極側の端子5001に対する負極バスバー501Nの貫通穴P2および切り欠きP3は、端子5001が接触しないように大きく形成されている。
図22は、端子5001および端子5002と正極バスバー501Pおよび負極バスバー501Nとの接続を説明する図である。図22(a)はコンデンサバスバー501の底面側を示す図であり、図22(b)は側面図である。正極バスバー501Pには、貫通する正極側の端子5001と近接した位置に突起5011がそれぞれ形成されている。そして、突起5011と端子5001とを溶接することにより、コンデンサ素子500aの正極側と正極バスバー501Pとが接続される。同様に負極バスバー501Nには、貫通する負極側の端子5002と近接した位置に突起5012がそれぞれ形成されている。突起5012と端子5002とを溶接することにより、コンデンサ素子500aの負極側と負極バスバー501Nとが接続される。
端子5001,5002の溶接によって一体化されたコンデンサ素子500aおよびコンデンサバスバー501は、図16に示すようにコンデンサバスバー501が収納部1201の底部側となるように、流路形成体12Bの収納部1201に収納される。なお、収納部1201の四隅には、コンデンサバスバー501の位置決め、および、コンデンサバスバー501と流路形成体12Bとの間の絶縁距離確保のために、樹脂ホルダー1207が配置される。その後、収納部1201にコンデンサ封止樹脂42を充填し、コンデンサ素子500aおよびコンデンサバスバー501を樹脂封止することで、図15に示したようなコンデンサユニット4が完成する。図23はコンデンサユニット4をケース底面側から見た図であり、図示上側がパワーモジュールユニット5側である。コンデンサユニット4は、パワーモジュールユニット5と対向する側面に正極側のコンデンサ端子506、負極側のコンデンサ端子504が突出するように配置されている。
コンデンサユニット4およびパワーモジュールユニット5が完成したならば、まず、図24に示すようにコンデンサユニット4をケース10内にボルト固定する。その際、流路形成体12Bの配管14が設けられている端面とケース10との間に、ガスケット(例えば、Oリングシール)16bが配置される。ケース10の底面10aには、コンデンサユニット4のコンデンサ端子506,504が対向する位置に、開口100A,100B,100Cが大きく形成されている。
その後、図25に示すように、パワーモジュールユニット5をケース10にボルト固定する。その際、流路形成体12Aの配管14が設けられている端面とケース10との間に、ガスケット16bと同様のガスケット16aが配置される。流路形成体12Aの配管15aと流路形成体12Bの配管15cとは、配管15bによって連結される。
図5に示したように、コンデンサユニット4はケース10の一方の長辺側に配置され、パワーモジュールユニット5はケース10の他方の長辺側に配置されている。コンデンサユニット4およびパワーモジュールユニット5は、流路形成体12Bと流路形成体12Aとの間に所定空間Sが設けられるように配置されている。信号端子325U,325L,336U,336Lは、モジュールケース304からこの所定空間S側に引き出され、ケース10の開口側(上カバー3側)に伸延するように折れ曲がっている。この所定空間Sの下部にはケース10の底面10aに形成された開口100A,100B,100C(図24参照)が配置されている。
図26は、コンデンサユニット4およびパワーモジュールユニット5が固定されたケース10の底面側を示す斜視図である。また、図27は、図26の開口100A〜100Cの部分を拡大して示したものである。ケース10内にコンデンサユニット4およびパワーモジュールユニット5を固定したならば、コンデンサユニット4のコンデンサバスバー501に設けられているコンデンサ端子504,506と、パワーモジュールユニット5の各パワー半導体モジュール300U〜300Wの直流正極端子157および直流負極端子158とを溶接により接続する。なお、ケース10には車両側の接地部位と接続される接地部が設けられる。本実施の形態では、金属製のケース10が接地部を兼ねていて、例えば、ケース10の底面が車両側の接地部位と接触するように搭載される。接地部は、車両側の接地部位の位置や形状に応じて設けられるものであり、例えば、ケース10の外周面にリブとして形成される場合もある。
コンデンサ端子504,506、直流正極端子157および直流負極端子158は、各流路形成体12A,12Bから所定空間S方向に引き出され、途中からケース底部側に折り曲げられている。コンデンサユニット4およびパワーモジュールユニット5をケース10に固定すると、図27に示すように、負極側のコンデンサ端子504の接続部と直流負極端子158の接続部、および、正極側のコンデンサ端子506と直流正極端子157は、それぞれ近接して配置される。そして、開口100A〜100Cから溶接治具を各端子に近づけて、負極側のコンデンサ端子504と直流負極端子158、および、正極側のコンデンサ端子506と直流正極端子157とをそれぞれ溶接接続する。このように、ケース10の底面10aに形成された開口100A〜100Cの近傍にコンデンサ端子504,506、直流正極端子157および直流負極端子158が配置されるように構成されているので、ケース底面側からの溶接作業を容易に行うことができ、溶接作業の効率向上を図ることができる。
溶接後、図26に示すように、溶接部に絶縁キャップ112を装着する。そして、開口100A〜100Cを覆うアンダーカバー11を、ケース10の底面10aにボルト固定する。アンダーカバー11とケース底部との間には、封止用のシール材111が配置される。
一方、ケース10のケース開口側には、流路形成体12A,12Bに形成された支柱122,124の上に回路基板20がビス固定される。図28は、流路形成体12A,12B上に回路基板20が固定された状態を示す斜視図である。流路形成体12A,12B間に設けられた所定空間S(図5参照)においては、信号端子325U,325L,336U,336Lがケース開口方向に伸延している。回路基板20を支柱122,124上に載置する際には、各信号端子325U,325L,336U,336Lの先端部が回路基板20に形成されたスルーホールを貫通するように載置する。そして、各信号端子325U,325L,336U,336Lを回路基板20に半田付けする。
図29は図28のD−D断面図である。ケース10の図示左側にコンデンサユニット4が収納され、ケース10の図示右側にパワーモジュールユニット5が収納されている。コンデンサユニット4とパワーモジュールユニット5との間には所定空間Sが形成されている。その所定空間Sにおいて、信号端子325Lはケース開口側(図示上側)に伸延し、回路基板20に接続されている。一方、コンデンサバスバー501のコンデンサ端子504,506と、パワー半導体モジュール300Vの直流正極端子157および直流負極端子158とはケース底面側に伸延し、底面10aに形成された開口100Bを介して溶接される。パワー半導体モジュール300U,300Wに関しても同様である。
回路基板20には制御回路172およびドライバ回路174の電子部品が実装されている。図28,29に示す例では、ドライバ回路174は、回路基板20において交流バスバー802U〜802Wと対向する第1領域G1に実装され、制御回路172は、回路基板20において流路形成体12Bと対向する第2領域G2に実装されている。
図29に示すように、第1領域G1よりも第2領域G2の方が冷却源(冷媒)により近く、冷却条件の観点からは第1領域G1よりも第2領域G2の方が優れている。ドライバ回路174には発熱量の大きな部品(例えば、トランスなど)が配置されているので、制御回路172の部品に対する熱的影響を考えて、制御回路172を第2領域G2に配置し、ドライバ回路174を第1領域G1に配置すると良い。そのような配置とすることで、回路部品の信頼性向上を図ることができる。
もちろん、ドライバ回路174の電子部品であっても耐熱性能の低い電子部品については、冷却性能の高い第2領域G2に配置しても良いし、また、制御回路172の電子部品であっても耐熱性能に十分余裕のある電子部品を第1領域G1に配置するようにしても良い。
なお、図28では、回路基板20は、交流バスバー802の出力部分の上部に位置する部分が切り欠かれていて、遮蔽板50もこの部分には配置されていない。これは、図6に示すように、この出力部分に電流センサモジュール180が配置されるためである。交流バスバー802はノイズ源となるが、交流バスバー802で生じたノイズが回路基板20の切り欠き部分から漏れて、通信用コネクタ21を流れる信号に影響を与えるおそれがある。そこで、本実施の形態では、通信用コネクタ21を流れる信号にノイズの影響が出ないように、コネクタ21を切り欠き部分から最も遠い対角位置に配置した。
(第1の変形例)
図30,31は第1の変形例を説明する図である。図30は電力変換装置200の斜視図、図31は図30のE−E断面図である。なお、図30,31では構造が分かりやすいように上カバー3やバスバーホルダ800を省略して示した。上述した実施の形態では、回路基板20をコンデンサユニット4およびパワーモジュールユニット5の両方に跨るように配置したが、第1の変形例では、パワーモジュールユニット5の上方に回路基板20Aを配置するようにした。上述したように回路基板20には制御回路172およびドライバ回路174が実装されていたが、回路基板20Aにはドライバ回路174が実装されている。
回路基板20Aは、流路形成体12Aの上面(ケース開口側の面)に形成された支柱122上に固定されている。そのため、回路基板20Aは、冷媒が流れる流路形成体12Aによって冷却されることになる。ケース開口方向に伸延している信号端子325U,325L,336U,336Lは、先端部が回路基板20Aに形成されたスルーホールを貫通している。なお、制御回路172を実装した基板に関しては、ケース10内(例えば、流路形成体12Bの上方)に別置しても良いし、ケース10とは別のケース内(車両コントロール側)に配置しても良い。もちろん、回路基板20Aに制御回路172およびドライバ回路174の両方を実装するようにしても構わない。
(第2の変形例)
図32,33は第2の変形例を説明する図である。図32は電力変換装置200の斜視図、図33は図32のF−F断面図である。なお、図32,33では構造が分かりやすいように上カバー3やバスバーホルダ800を省略して示した。第2の変形例では、回路基板20Bをコンデンサユニット4の上方に配置するようにした。回路基板20Bは、流路形成体12Bの上面に形成された支柱124上にビス止めされている。回路基板20Bには制御回路172およびドライバ回路174が実装され、上位の制御装置との間で信号の送信および受信を行うための通信用コネクタ21が設けられている。
ケース開口方向に伸延している信号端子325U,325L,336U,336Lは、先端部が回路基板20Bに形成されたスルーホールを貫通している。図33に示すように、回路基板20Bは、冷媒流路1202を覆うカバー1203の上方に近接して設けられているので、ケース10に配置された他の発熱部品(例えば、パワー半導体モジュール300U〜300Wやコンデンサ素子500a)からの熱影響を受け難い。また、流路形成体12Bはアルミ等の金属で形成され、かつ、車両側の接地部位に接続されている金属製のケース10と接触している。そのため、流路形成体12Bはグラウンド電位となり、コンデンサバスバー501で発生する電界・磁界等によるノイズの、回路基板20Bへの影響を遮断することができる。
さらに、図34に示すように、回路基板20Bと流路形成体12Bのカバー1203との間に、放熱シート(例えば、シリコーン系樹脂シート)1206を挟持するようにしても良い。なお、図29の構成の場合には、放熱シート1206は回路基板20の第2領域G2とカバー1203との間に配置すれば良い。放熱シート1206を設けない場合には、回路基板20Bとカバー1203との間は空気が介在しているため、断熱性が比較的に高い。そのため、回路基板20Bから冷媒への放熱は、主に支柱124およに流路形成体12Bを介した経路によるものである。一方、図34のように放熱シート1206を配置することで、放熱シート1206を介しても流路形成体12Bへと熱を逃がすことができ、回路基板20Bに対する冷却性能向上を図ることができる。
なお、図31の回路基板20Aや、図29における回路基板20の第1領域G1の場合においても、回路基板20A,20と対向する遮蔽板50との間に放熱シート1206を配置するようにしても良い。この場合は、回路基板側の熱は、支柱122、流路形成体12Aの経路に加えて、放熱シート1206、遮蔽板50、支柱121、流路形成体12Aの経路で冷媒へと放熱され、回路基板20Aや第1領域G1における冷却性能向上を図ることができる。
上述した実施の形態は以下のような作用効果を奏する。
(1)電力変換装置200は、直流電流を平滑化するコンデンサ500と、直流電流を交流電流に変換するパワー半導体素子(IGBT328,330、ダイオード156,166)が有底筒状のモジュールケース304に収納され、モジュールケース304の引出部から直流正極端子157,直流負極端子158、交流端子159および信号端子325U,325L,336U,336Lが引き出されているパワー半導体モジュール300U〜300Wと、コンデンサ500と直流正極端子157,直流負極端子158とを接続するコンデンサバスバー501と、パワー半導体モジュール300U〜300Wが挿入される冷媒流路120が形成された流路形成体12Aと、コンデンサ500およびコンデンサバスバー501を冷却するための冷媒流路1202とが形成された流路形成体12Bと、底面10a上に流路形成体12A,12Bが所定空間Sを隔てて並列配置され、所定空間Sと対向する底面領域に開口100A〜100Cが形成されたケース10と、を備える。
そして、パワー半導体モジュール300U〜300Wは、モジュールケース304の引出部が流路形成体12Aの所定空間に対向する面、すなわち開口120U〜120Wが形成された面に配置されるように、冷媒流路120に挿入され、コンデンサバスバー501は流路形成体12Bから所定空間Sに引き出される。直流正極端子157,直流負極端子158およびコンデンサバスバー501は、開口100A〜100Cと対向する位置で接続されている。
パワー半導体モジュール300U〜300Wを冷却するための流路形成体12Aと、コンデンサ500およびコンデンサバスバー501を冷却するための流路形成体12Bとを個別に設けたので、冷却性能の向上を図ることができる。
また、流路形成体12Aと流路形成体12Bとをケース10の底面10aに並置したことにより、ケース10の高さ寸法、すなわち電力変換装置200の高さ寸法を抑えることができる。なお、パワー半導体モジュール300U〜300Wは扁平状であるため、図7に示すように、パワー半導体モジュール300U〜300Wを流路形成体12Aの側面(所定空間Sに対向する側面)から冷媒流路120内に挿入するような構成としている。そのため、流路形成体12Aの高さ寸法を極力小さくすることができる。
さらに、流路形成体12A,12Bを開口100A〜100Cの両側に所定空間Sを隔てて並列配置し、開口100A〜100Cと対向する位置で直流正極端子157,直流負極端子158とコンデンサバスバー501とを接続するようにしているので、ケース底面側から接続作業を行うことができる。そのため、底面と反対側に上記接続作業用の作業空間を必要とせず、流路形成体12A,12Bの直上に他の構成部品を配置することが可能となり、装置高さ寸法を低減できる。このように、上述した実施の形態では、電力変換装置200の高さ寸法(厚さ寸法)を小さくすることができ、図2に示すような狭いスペースへ配置に適した電力変換装置を提供することが可能となる。
さらに、流路形成体12A,12Bの間に所定空間Sを設け、その所定空間Sに流路形成体12A,12Bから直流正極端子157,直流負極端子158およびコンデンサバスバー501(コンデンサ端子504,506)をそれぞれ引き出して接続しているので、導体長さを極力短くすることができ、導体抵抗の低下による発熱の抑制を図ることができる。
また、パワー半導体モジュール300U〜300Wを流路形成体12Aの冷媒流路120に配置するようにしているので、パワー半導体素子で発生した熱を効率良く冷媒へ逃がすことができる。一方、冷媒流路1202が形成された流路形成体12Bに凹部(収納部1201)を形成し、その収納部1201にコンデンサ500およびコンデンサバスバー501を収納するようにしたので、コンデンサ500やコンデンサバスバー501で発生した熱を流路形成体12Bへ逃がすことができ、コンデンサ500およびコンデンサバスバー501に関する冷却性能を向上させることができる。
電力変換装置200の構成部品は、図5,7,16に示すように、機能要素毎にユニット化されている。すなわち、直流側の構成部品であるコンデンサ500、コンデンサバスバー501、Yコンデンサ40、放電抵抗41等は流路形成体12Bに組み付けられ、一体化されたコンデンサユニット4を構成している。一方、インバータ回路140に関係する部品であるパワー半導体モジュール300U〜300W、交流バスバー802U〜802W、電流センサモジュール180等は流路形成体12Aに組み付けられ、一体化されたパワーモジュールユニット5を構成している。そのため、各々の組み立て作業や信頼性確認作業(例えば水密検査)を並列で行うことができ、全体の作業効率の向上が図れる。また、交換作業もし易い。
なお、上述した実施の形態では、コンデンサユニット4の配管15cとパワーモジュールユニット5の配管15aとを配管15bで連結し、冷媒が装置内をUターンするような構成としているが、配管15bによる連結を省略し、冷媒を流路形成体12Aと流路形成体12Bとで冷媒が並列に流れるような構成としても良い。すなわち、配管13,14から冷媒を流入させ、配管15a,15cから冷媒を流出させるようにする。
(2)電力変換装置200は、駆動信号を出力するドライバ回路174が実装され、流路形成体12Aに関して底面10aと反対側に、流路形成体12Aと対向するように配置された回路基板20、20Aを備えている。そして、パワー半導体モジュール300U〜300Wは、パワー半導体素子(IGBT328,330)を駆動するための駆動信号が入力される信号端子325L,325Uを有する。さらに、信号端子325L,325Uは、パワー半導体モジュール300U〜300Wから所定空間Sに引き出され、所定空間Sにおいて回路基板20方向に伸延されて回路基板20と接続されている。
このように、回路基板20、20Aは、流路形成体12Aに関して、直流正極端子157,直流負極端子158の接続が行われる開口100A〜100Cと反対側に配置され、信号端子325L,325Uと接続されているので、接続作業(信号端子325L,325Uの接続作業および直流正極端子157,直流負極端子158の接続作業)の際に、信号端子325L,325U側と直流正極端子157,直流負極端子158側とが干渉するのを防止できる。
また、所定空間Sを設けて、流路形成体12A,12Bから直流正極端子157,直流負極端子158、端子325L,325U、コンデンサバスバー501(コンデンサ端子504,506)をそれぞれ所定空間Sに引き出し、直流正極端子157,直流負極端子158およびコンデンサ端子504,506を開口100A〜100Cが設けられた底面側に伸延させ、信号端子325L,325Uを底面側とは反対方向の回路基板20,20A側に伸延させている。そのため、直流正極端子157,直流負極端子158、信号端子325L,325U、およびコンデンサ端子504,506は、流路形成体12A,12Bの高さ方向幅から大きく突出することがなく、電力変換装置200の高さ方向寸法を小さく抑えることができる。
なお、図29や図31に示すように、パワー半導体モジュール300U〜300Wから所定空間Sに引き出された信号端子325L,325Uは、途中でほぼ直角に折り曲げられ、回路基板20,20Aのスルーホールに対してほぼ垂直に接続される。そのため、回路基板20,20Aを支柱122に取り付ける際に、信号端子325L,325Uのスルーホールへの挿入作業を容易に行うことができる。
(3)電力変換装置200は、パワー半導体素子(IGBT328,330)の駆動を制御するための制御信号を出力する制御回路172、およびその制御信号に基づいてパワー半導体素子を駆動する駆動信号を出力するドライバ回路174の少なくとも一方が実装され、流路形成体12Bに関して底面10aと反対側に、流路形成体12Bと対向するように配置された回路基板20,20Bを備える。そして、流路形成体12Bにはコンデンサ500およびコンデンサバスバー501が収納される凹部(収納部1201)が形成され、その凹部の開口側がケース10の底面10aと対向するように形成されている。
このように、コンデンサ500およびコンデンサバスバー501と回路基板20,20Aとの間に、冷媒流路1202が形成された流路形成体12Bが介在するため、コンデンサ500やコンデンサバスバー501で発生した熱が回路基板20,20Aに流入するのを防止することができる。
なお、流路形成体12A,12Bはアルミ等の金属で形成されている。また、流路形成体12A,12Bが配置されるケース10は、金属製であって車両側のグランドと接続されグランド電位と成っている。そのため、流路形成体12A,12Bもグランド電位となっており、コンデンサバスバー501で発生する電界・磁界等によるノイズの回路基板20,20Aへの影響を流路形成体12Bによって遮断することができる。
(4)さらに、図34に示すように、放熱シート1206を回路基板20Bと流路形成体12Bとの間に密着して配設するようにしても良い。このように放熱シート1206を配設することにより、放熱シート1206を設けない場合に比べて、回路基板20Bで発生する熱を効率良く流路形成体12Bへと逃がすことができる。
(5)電力変換装置200において、ケース10は金属で形成されるとともに接地部(ケース底面)を有し、流路形成体12Aは金属で形成されるとともに、底面10aと反対側の周面に突出するように形成された支持部(支柱121)を有する。そして、電力変換装置200は、流路形成体12Aの、底面10aと反対側の周面に固定され、パワー半導体モジュール300U〜300Wに接続されて交流電流を装置外へ出力するための交流バスバー802U〜802Wと、パワー半導体素子(IGBT328,330)の駆動を制御するための制御信号を出力する制御回路172、および制御信号に基づいて前記パワー半導体素子を駆動する駆動信号を出力するドライバ回路174の少なくとも一方が実装され、交流バスバー802U〜802Wと対向する位置に配置される回路基板20,20Aと、支柱121に固定され、交流バスバー802U〜802Wと回路基板20,20Aとの間に配置される遮蔽板50と、を備えている。
ケース10に設置されている流路形成体12Aは金属で形成されているので、ケース10と同様にグランド電位となっている。そして、その流路形成体12Aに固定された金属製の遮蔽板50は、交流バスバー802U〜802Wと回路基板20,20Aとの間に配置されているので、交流バスバー802U〜802Wで発生する電界・磁界等によるノイズの回路基板20,20Aへの影響を、遮蔽板50によって遮蔽することができる。遮蔽板50においては、ノイズにより発生した電流は流路形成体12Aを介してグランドに流れる。
(6)電力変換装置200は、流路形成体12Aの、底面10aと反対側の周面に固定され、パワー半導体モジュール300U〜300Wに接続されて交流電流を装置外へ出力するための交流バスバー802U〜802Wと、パワー半導体素子(IGBT328,330)の駆動を制御するための制御信号を出力する制御回路172、および制御信号に基づいてパワー半導体素子を駆動する駆動信号を出力するドライバ回路174が実装され、流路形成体12A,12Bに関して底面10aと反対側に、交流バスバー802U〜802Wおよび流路形成体12Bと対向するように配置された回路基板20と、を備える。
そして、図28,29に示すように、ドライバ回路174は、回路基板20において交流バスバー802U〜802Wと対向する第1領域G1に実装され、制御回路172は、回路基板20において流路形成体12Bと対向する第2領域G2に実装されている。冷却条件の観点からは第1領域G1よりも第2領域G2の方が優れており、上述したように、制御回路172を第2領域G2に配置し、ドライバ回路174を第1領域G1に配置することで、回路部品の信頼性向上を図ることができる。
(7)コンデンサバスバー501は、凹部である収納部1201内に収納されたコンデンサ500と凹部壁面との間に配置されている。収納部1201に収納されるコンデンサ500およびコンデンサバスバー501の発熱量を比較すると、コンデンサバスバー501の方が大きい。そこで、コンデンサバスバー501を凹部壁面側に配置することで、コンデンサバスバー501を優先的に冷やすことができる。
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。