JP5814095B2 - ダクト装置及びトンネル内の集塵システム - Google Patents

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Description

本発明は、トンネル工事において切羽直下の粉塵を吸引する吸引ダクト等として使用可能なダクト装置、及びこのダクト装置を使用したトンネル内の集塵システムに関するものである。
トンネル等の坑内において発生する粉塵の集塵方法としては、例えば、希釈封じ込め方式である送気集塵方式や排気集塵方式と、吸引捕集方式とに大別することがきる。前者の希釈封じ込め方式は切羽に向けてエアを送気(排気)し、粉塵を希釈する方式であり、希釈効果を高めるために、エアの送気口を切羽からトンネル等価直径(図1の符号Dがトンネル等価直径を示す。)の5倍程度離す必要がある。他方、後者の吸引捕集方式はそのような制約がなく、逆に、吸引口を切羽に近付けて集塵効果を高める必要がある。
この点、トンネル工事においては、粉塵が切羽直下において主に発生するため、後者の吸引捕集方式が効率的であるとされている。もっとも、切羽直下においては、地盤の削孔や、装薬、発破、ズリ出し、コンクリート吹付け等の各種作業が行われる。したがって、これらの作業の妨げとならないよう、吸引口を切羽に近付けたり、遠ざけたりすることができる伸縮ダクトを使用した集塵システムを利用するのが好適である(例えば、特許文献1,2参照。)。
この集塵システムにおいては、例えば、図8に示すように、集塵機105がトラックやソリ台車等の移動手段、図示例ではトラック106に積載されてトンネルT内に搬入される。集塵機105は、トラック106に積載された状態においてその吸引口にダクト(風管)101が接続され、このダクト101の先端開口101Aが吸引口となる。このダクト101は、前後方向に伸縮可能な伸縮部102を有している。したがって、この伸縮部102が伸縮することによってダクト101の先端開口(吸引口)101Aが前後に移動し、切羽面Tyに近付いたり、切羽面Tyから遠ざかったりする。また、ダクト101はガイドレール7に懸架されており、このガイドレール7は、例えば、トンネルTの側壁や天井Tx等に敷設されている。
この集塵システムにおいて、伸縮部102を伸縮して先端開口101Aを前後に移動する移動機構としては、例えば、ガイドレール7をラックとして当該ラック上を歯車たるピニオンが転がるラック・アンド・ピニオン方式やガイドレール7をガータとして当該ガータ上を車輪が転がるクレーン用トロリ方式等が存在する。この点、上記したように吸引捕集方式においては、切羽直下において発生した粉塵が拡散希釈する前に吸引することが重要であり、先端開口(吸引口)101Aを切羽面Tyに近付けて吸引すると集塵効率が高まる。したがって、発破作業時においては岩石の飛散等によってダクト101が損壊するのを避けるために、ダクト101の先端開口101Aを切羽面Tyより、例えば、50m以上離し、その後、吸引作業を行うに際しては、上記移動機構を使用して先端開口101Aを切羽面Tyに向かって移動させている。
しかるに、ガイドレール7も岩石の飛散等によって損壊するおそれがある。また、切羽直下においては、ガイドレール7が前記各種作業を行うための装置、例えば、掘削機、吹付け機、エレクター等と接触するのを避ける必要がある。したがって、ガイドレール7の先端部7Aは、切羽面Tyから20m程度離す必要がある。また、発破を使用せず、自由断面掘削機等を使用して地盤を削孔する場合等もあるが、当該掘削機との接触防止等の観点から、ガイドレール7の先端部7Aは、切羽面Tyから15m程度離す必要がある。
このようにトンネル工事においては、ガイドレール7の先端部7Aを切羽面Tyに対して十分に近付けることができないとの制約が存在し、結果、ダクト101の先端開口101Aも切羽面Tyから同程度離れることになる。したがって、集塵効率を高めるという点では、更なる改良の余地がある。また、ガイドレール7の先端部7Aを切羽面Tyから15〜20m程度離したとしても、当該ガイドレール7の上に小石が乗り上げ、前述したピニオンや車輪の噛み込みトラブル等が発生するおそれもある。このような噛み込みトラブル等が発生すると、ピニオンや車輪等に十分なトルクがかからなくなるため、先端開口101Aの移動速度が遅くなり、場合によっては移動不能となるおそれがある。なお、移動速度が遅くなると、先端開口101Aが切羽面Tyに近付くまでの時間が長くなり、その間に粉塵が拡散希釈して集塵効率が低下する。したがって、移動速度の低下も大きな問題である。
特開2004−116793号公報 特開2010−32168号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、ダクトの先端開口を切羽面等に十分近付けることができるダクト装置、及び集塵効率に優れるトンネル内の集塵システムを提供することにある。
この課題を解決した本発明は、次の通りである。
〔請求項1記載の発明〕
ガイドレールに懸架されるダクトと、このダクトの先端開口を前後に移動する移動機構と、を有するダクト装置であって、
前記ダクトは、前記移動機構が備わる前後方向に伸縮することのない固定長の懸架部と、この懸架部から前方に延出する延出部と、を有し、
前記移動機構は、前記懸架部に取り付けられ、かつ前記ガイドレールに懸架された前記懸架部を前記ガイドレールに懸架する支点部材と、この支点部材の後方において前記懸架部に取り付けられた駆動輪と、を有し、
前記延出部の重量によって前記支点部材を支点として前記駆動輪が前記ガイドレールに下方から押し付けられる構成とされた、
ことを特徴とするダクト装置。
(主な作用効果)
ガイドレールの先端部を切羽面等に対して近付けることができないとしても、ダクトをガイドレール先端部の先方まで延出(オーバーハング)させれば、ダクトの先端開口を切羽面等に近付けることができる。しかるに、例えば、図7に示すように、ダクト101の先端部を延出すると、この延出部(オーバーハング部)103の重量によってガイドレール7の上を転がるピニオンや車輪等の駆動輪104が浮き上がってしまい、駆動力を十分に確保できなくなる。しかも、ガイドレール7の上に小石等が乗り上げ、駆動輪104の噛み込みトラブル等が発生するおそれは解消されない。
一方、例えば、図6に示すように、ダクト10が、移動機構20が備わる前後方向に伸縮することのない固定長の懸架部12と、この懸架部12から前方に延出する延出部(オーバーハング部)11とを有し、移動機構20は、懸架部12に取り付けられ、かつガイドレール7に懸架された懸架部12をガイドレール7に懸架するベアリング等からなる支点部材21と、この支点部材21の後方において懸架部12に取り付けられたタイヤ等からなる駆動輪22とを有し、延出部11の重量によって支点部材21を支点として駆動輪22がガイドレール7に下方から押し付けられる構成とされていると、駆動輪22に十分なトルクがかかるため、駆動力を十分に確保でき、ダクト11の先端開口を確実に、かつ迅速に前後移動することができる。もちろん、ダクト10の延出部11はガイドレール先端部7Aの先方に延出するため、ダクト10の先端開口を切羽面等に十分近付けることができる。しかも、駆動輪22はガイドレール7に対して下方から押し付けられるため、ガイドレール7の上に小石等が乗り上げていたとしても噛み込みトラブル等が発生するおそれはない。なお、支点部材21は、駆動力を確保するための部材ではなく、小石等の噛み込みによって駆動力が失われるおそれがない。
〔請求項2記載の発明〕
前記駆動輪の後方において前記懸架部に取り付けられ、かつ前記ガイドレールの上方に位置する上側拘束部材と、
前記駆動輪の後方において前記懸架部に取り付けられ、かつ前記ガイドレールの下方に位置する下側拘束部材と、を有する、
請求項1記載のダクト装置。
(主な作用効果)
例えば、図6に示すように、駆動輪22の後方において懸架部12に取り付けられ、かつガイドレール7の上方に位置する上側拘束部材23Aと、駆動輪22の後方において懸架部12に取り付けられ、かつガイドレール7の下方に位置する下側拘束部材23Bとを有すると、ダクト10の前後移動時における上下ぶれが抑えられ、駆動輪22にトルクが確実にかかる。また、ダクト10を前方に移動している状態において、仮に延出部11に損壊等が生じて当該延出部11の重量が軽くなったとしても、上側拘束部材23Aの存在によって駆動輪22が下方に落ち込むのが防止されるため、駆動輪22にかかるトルクが完全に失われるおそれはなく、ダクト10を後方に戻すことができる。
〔請求項3記載の発明〕
前記延出部は、ポリカーボネートシート及びプラ段シートの少なくともいずれか一方からなる断面円弧状の壁材が、周方向に連結されて円筒状とされている、
請求項1又は請求項2記載のダクト装置。
(主な作用効果)
ポリカーボネートは素材的に、また、プラ段シートは構造的に、軽量でありながら十分な強度を有する材料である。したがって、これらのシートによって延出部の壁材が形成されていると、当該延出部全体が軽くなり、延出長を長く確保することができる。
また、当該シートからなる壁材が断面円弧状とされ、周方向に連結されて円筒状の延出部が構成されると、複数の壁材を、方向を揃えて上下に重ね合わせ、トラック等に積み込むことができるため、トンネル内への搬入等が極めて容易となる。
〔請求項4記載の発明〕
トンネルの内壁面に敷設されるガイドレールと、このガイドレールに懸架されるダクトと、このダクトの先端開口を前後に移動する移動機構と、を有し、
前記トンネルの切羽直下の粉塵を前記ダクトの先端開口から吸引するトンネル内の集塵システムであって、
前記ダクトは、前記移動機構が備わる前後方向に伸縮することのない固定長の懸架部と、この懸架部から前方に延出する延出部と、を有し、
前記移動機構は、前記懸架部に取り付けられ、かつ前記ガイドレールに懸架された前記懸架部を前記ガイドレールに懸架する支点部材と、この支点部材の後方において前記懸架部に取り付けられた駆動輪と、を有し、
前記延出部の重量によって前記支点部材を支点として前記駆動輪が前記ガイドレールに下方から押し付けられる構成とされた、
ことを特徴とするトンネル内の集塵システム。
(主な作用効果)
請求項1記載の発明の作用効果から明らかなように、本発明によると、ダクトの先端開口を切羽面に十分近付けることができるため、粉塵が拡散希釈する前に吸引することができ、集塵効率に優れるトンネル内の集塵システムとなる。
本発明によると、ダクトの先端開口を切羽面等に十分近付けることができるダクト装置、及び集塵効率に優れるトンネル内の集塵システムとなる。
本形態の集塵システムの側面概念図である。 本形態の集塵システムの正面概念図である。 本形態の移動機構の側面構成図である。 本形態の移動機構の断面概念図である。 本形態のダクト延出部の形態例である。 本形態の移動機構の概念説明図である。 本形態によらない移動機構の概念説明図である。 従来の集塵システムの側面概念図である。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
図1及び図2に、本形態の集塵システムを示した。本形態の集塵システムは、吸引捕集方式であり、トンネルT内の切羽(切羽面Ty)直下において発生した粉塵の集塵(捕集)を得意とする。
本形態の集塵システムにおいては、トンネルTの天井Txにガイドレール7が敷設されている。このガイドレール7は、トンネルTの軸方向に沿って設けられている。ガイドレール7は、適宜の間隔をおいて天井Txに固定された複数の吊具(アンカー)8によって吊り下げられている。ガイドレール7は、例えば、図4(1)〜(3)に示すように、ウェブ7A並びにこのウェブ7Aの両端部に接続された上部フランジ7B及び下部フランジ7Cを有するH形鋼によって形成されている。ガイドレール7がH形鋼によって形成されることで、当該ガイドレール7が損壊した際の修理、交換等を容易に行うことができ、また、安価に行うことができる。
トンネルT内には、集塵機105がトラック106に積載(マウント)されて、搬入される。搬入された集塵機105は、トラック106に積載されたままの状態で使用される。集塵機105は、吸引口がトンネルTの切羽面Ty側を向き、排気口105AがトンネルTの図示しない坑口を向くように配置される。
集塵機105の吸引口には、ダクト(風管)10が接続される。このダクト10は、例えば、円筒状等とされる。ダクト10は、集塵機105側から順に、接続部15、固定長部14、伸縮部13、懸架部12及び延出部(オーバーハング部)11で構成されている。
接続部15は、トンネルTの底部(底面Tz側)に位置する集塵機105の吸引口とトンネルTの天部(天井Tx側)に位置する固定長部14等とを接続するためのダクトである。接続部15は軸方向に伸縮しても伸縮しなくてもよい。一方、固定長部14は、前後方向に伸縮することのない固定長のダクトである。固定長部14は、必要によりガイドレール7に懸架される。ただし、固定長部14を省略して接続部15と伸縮部13とを直接接続することもできる。伸縮部13は、蛇腹構造等を利用して前後方向(軸方向)に伸縮可能とされたダクトである。伸縮部13は、必要によりガイドレール7に懸架される。また、懸架部12は、前後方向に伸縮することのない固定長のダクトである。懸架部12は、移動機構20(図3参照)を利用してガイドレール7に懸架されている。この懸架部12から前方に延出する延出部11も、前後方向に伸縮することのない固定長のダクトである。ただし、延出部11は、ガイドレール7に懸架されず、当該ガイドレール7の先端部7Aの先方まで延出するように構成されている。したがって、延出部11の先端開口によって構成されるダクト10の先端開口(吸引口)11Aを前方に移動し、切羽面Tyに近付けることができる。
当該先端開口11Aの移動は、懸架部12に取り付けられた移動機構20によって行われる。この移動機構20は、図3に示すように、支持部材たる縦ベアリング41と、駆動輪たるノーパンクタイヤ42と、上側拘束部材たる上側縦ベアリング43A及び下側拘束部材たる下側縦ベアリング43Bと、で構成されている。
縦ベアリング41は、懸架部12に取り付けられ、かつガイドレール7に懸架されている。より詳細には、まず、縦ベアリング41は、図4の(1)に示すように、トンネルTの幅方向を回転軸方向としてガイドレール7を構成する下部フランジ7Cの上側平面7Ca上を転がるように構成されている。また、縦ベアリング41の回転軸は、図3に要旨を示すように、支持材51によって軸支されている。そして、支持材51は、懸架部12の天部にボルト51vによって固定されている。このようにして、縦ベアリング41は、懸架部12に取り付けられ、かつガイドレール7に懸架された状態とされている。
本形態の縦ベアリング41は、ガイドレール7を構成するウェブ7Aの両側方にそれぞれ1つずつの計2つ備えられている。ただし、縦ベアリング41は、1つのみ備えられていても、3つ以上の複数備えられていてもよい。また、縦ベアリング41とともに、図中に2点鎖線で示すように、上下方向を回転軸方向とし、かつ下部フランジ7Cの両端部に沿って転がる横ベアリング41X等を備えることもできる。
一方、ノーパンクタイヤ42は、縦ベアリング41の後方において懸架部12に取り付けられ、かつ回転駆動可能とされている。より詳細には、まず、ノーバンクタイヤ42は、図4の(2)に示すように、トンネルTの幅方向を回転軸方向として下部フランジ7Cの下側平面7Cb上を転がる、つまり摩擦走行するように構成されている。また、ノーパンクタイヤ42の回転軸は、図3に要旨を示すように、モーター52M等が備わる駆動機構の駆動軸に接続されて回転可能とされている。そして、当該駆動機構は、懸架部12内において当該懸架部12の天部に固定されている。このようにして、ノーパンクタイヤ42は、懸架部12に取り付けられ、かつ回転駆動可能とされている。なお、懸架部12の天部には開口52が形成されており、ノーパンクタイヤ42が当該開口52から上方に突出することで、当該ノーパンクタイヤ42の上端部が下部フランジ7Cの下側平面7Cbに当接するように構成されている。また、ノーバンクタイヤ42以外の通常のタイヤ等を使用することもできる。
上側縦ベアリング43Aは、ノーパンクタイヤ42の後方において懸架部12に取り付けられ、かつガイドレール7を構成する下部フランジ7Cの上方に位置する。なお、この上方の意味に関して、上側縦ベアリング43Aはガイドレール7を構成するウェブ7Aや上部フランジ7Bの上方に位置するものではないが、その構造から、ここでいうガイドレール7の上方とは当該ガイドレール7を構成する下部フランジ7Cの上方であることが明らかであろう。一方、下側縦ベアリング43Bは、ノーパンクタイヤ42の後方において懸架部12に取り付けられ、かつガイドレール7を構成する下部フランジ7Cの下方に位置する。
以上をより詳細に説明すると、まず、上側縦ベアリング43Aは、図4の(3)に示すように、トンネルTの幅方向を回転軸方向としてガイドレール7を構成する下部フランジ7Cの上側平面7Ca上を転がるように構成されている。また、上側縦ベアリング43Aの回転軸は、図3に要旨を示すように、支持材53によって軸支されている。そして、支持材53は、懸架部12の天部にボルト53vによって固定されている。このようにして、上側縦ベアリング43Aは、懸架部12に取り付けられ、かつ下部フランジ7Cの上方に位置する状態とされている。同様に、下側縦ベアリング43Bは、図4の(3)に示すように、トンネルTの幅方向を回転軸方向としてガイドレール7を構成する下部フランジ7Cの下側平面7Cb上を転がるように構成されている。また、下側縦ベアリング43Bの回転軸は、図3に要旨を示すように、支持材53によって軸支されている。そして、支持材53は、懸架部12の天部にボルト53vによって固定されている。このようにして、下側縦ベアリング43Bは、懸架部12に取り付けられ、かつ下部フランジ7Cの下方に位置する状態とされている。
本形態の上側縦ベアリング43Aは、ガイドレール7を構成するウェブ7Aの両側方にそれぞれ1つずつの計2つ備えられている。ただし、上側縦ベアリング43Aは、1つのみ備えられていても、3つ以上の複数備えられていてもよい。同様に、下側縦ベアリング43Bは、ガイドレール7を構成する下部フランジ7Cを挟んで一対の上側縦ベアリング43Aと対向するように計2つ備えられている。ただし、下側縦ベアリング43Bも、1つのみ備えられていても、3つ以上の複数備えられていてもよい。また、上側縦ベアリング43A及び下側縦ベアリング43Bは下部フランジ7Cと当接していても、当接していなくてもよいが、後述するように当接している方が好ましい。
以上の本形態の集塵システムによると、延出部11の重量によって支点部材たる縦ベアリング41を支点としてノーパンクタイヤ42がガイドレール7を構成する下部フランジ7Cに下方から押し付けられる。したがって、ノーパンクタイヤ42に十分なトルクがかかり、下部フランジ7Cとの間で十分な摩擦力が得られるため、ダクト11の先端開口11Aを確実に、かつ迅速に前後移動することができる。しかも、ノーパンクタイヤ42は下部フランジ7Cに対して下方から押し付けられるため、下部フランジ7Cの上に小石等が乗り上げていたとしても噛み込みトラブル等が発生するおそれはなく、駆動力が低下するおそれがない。なお、縦ベアリング41,43A,43B等は、駆動力を確保するための部材ではなく、小石等の噛み込みによって駆動力が低下し、あるいは失われるおそれがない。
また、本形態の集塵システムによると、縦ベアリング43A,43Bによってダクト10の前後移動時における上下ぶれが抑えられ、ノーパンクタイヤ42にトルクが確実にかかる。この点、上記したようにベアリング43A,43Bは下部フランジ7Cと当接していても、当接していなくてもよいが、当接していることでより確実にノーパンクタイヤ42等の上下ぶれを抑えることができる。また、特に当接している場合は、上側拘束部材や下側拘束部材として本形態のようにベアリングを採用することで、移動抵抗を減少させることができ、例えば、移動速度等を向上することができる。なお、支点部材たる縦ベアリング41についても同様であり、当該縦ベアリング41は下部フランジ7Cと当接しているため、ベアリングを採用することで移動抵抗を減少させている。
また、本形態の集塵システムにおいては、延出部11が前方に延出している状態において、仮に当該延出部11が損壊して軽くなったとしても、上側縦ベアリング43Aの存在によってノーパンクタイヤ42が下方に落ち込むのが防止される。したがって、ノーパンクタイヤ42のトルクは失われず、ダクト10を後方に戻すことができる。
以上のように本形態の集塵システムは極めて優れるものであるが、延出部11の壁材がポリカーボネート(Polycarbonate)シートやプラダンシートによって形成されていると、より好ましいものとなる。ポリカーボネートシートは素材的に、また、プラダンシートは構造的に、軽量でありながら、十分な強度を有する材料である。したがって、これらの材料によって延出部11の壁材を形成することで、延出長をより長くすることができる。
本発明者の試作品では、延出部(直径1.5m、長さ11m)の重量を150kgfにまで軽減することができた。この試作品においては、縦ベアリング41からノーパンクタイヤ42までの距離が90cmであり、ノーパンクタイヤ42のガイドレール7に対する押付力(押上力)が917kgfとなった。
なお、ポリカーボネートは強化ガラスの150倍以上という透明プラスチックの中でも最高の強度を有する材料である。また、プラダンシートは、プラスチックを素材として作られた段ボールシートであり、中空構造という構造的な特性から、軽量性及び高強度性を兼ね備えている。プラダンシートの素材としては、ポリプロピレン等のほか、ポリカーボネートを選択使用することもできる。
ここでポリカーボネートシートやプラダンシートからなる壁材は、断面円弧状とされ、かつ周方向に連結されることで円筒状の延出部11が形成されるように構成するのが好ましい。この形態によると、図5の(1)に示すように、壁材41Aを、向きを揃えて重ねることで、容量を減らすことができる。したがって、延出部11をトンネルT内に搬入するのが極めて容易となる。この点、トンネルT内に搬入した壁材41Aは、図5の(2)に示すように、各壁材41Aが外方へ膨らむように向きを変え、図5の(3)に示すように、相互に隣接する壁材41A同士を連結して円筒状にすることができる。また、特に図示はしないが、延出部11は軸方向に関しても複数の壁材を連結して構成することができる。なお、図中において斜線部分(ハッチング部分)はポリカーボネートシートやプラダンシートが用いられる部分を示し、その回りの部分は連結のためのフレームを示す。
(その他)
本形態の集塵システムは吸引捕集方式であるが、適宜送気を組み合わせた送気・吸引捕集方式とすることもできる。また、本形態のダクト11は、吸引風量等に応じて適宜強度を変えることができる。なお、当該吸引風量は切羽直下における粉塵の発生量によって決定されるものではなく、トンネル内(坑内)をフレッシュエアで封じ込めるために必要な捕集制御風速(坑内風速)に基づいて決定される。
本発明のダクト装置は吸引ダクトとしてのみ利用可能なものではなく、必要が存在すれば、排気ダクトとしても利用することができる。また、ダクトをオーバーハングさせる必要があれば、トンネル工事現場以外のそのような必要が存在する場所においても適用することができる。
本発明は、トンネル工事において切羽直下の粉塵を吸引する吸引ダクト等として使用可能なダクト装置、及びこのダクト装置を使用したトンネル内の集塵システムとして適用可能である。
7…ガイドレール、7A…ウェブ、7B…上部フランジ、7C…下部フランジ、8…吊具(アンカー)、10,101…ダクト、11,103…延出部(オーバーハング部)、12…懸架部、13,102…伸縮部、14…固定長部、15…接続部、20…移動機構、21…支点部材、22,104…駆動輪、23A…上側拘束部材、23B…下側拘束部材、41,43A,43B…縦ベアリング、41X…横ベアリング、105…集塵機、106…トラック、T…トンネル、Tx…天井、Ty…切羽面,Tz…底面。

Claims (4)

  1. ガイドレールに懸架されるダクトと、このダクトの先端開口を前後に移動する移動機構と、を有するダクト装置であって、
    前記ダクトは、前記移動機構が備わる前後方向に伸縮することのない固定長の懸架部と、この懸架部から前方に延出する延出部と、を有し、
    前記移動機構は、前記懸架部に取り付けられ、かつ前記ガイドレールに懸架された前記懸架部を前記ガイドレールに懸架する支点部材と、この支点部材の後方において前記懸架部に取り付けられた駆動輪と、を有し、
    前記延出部の重量によって前記支点部材を支点として前記駆動輪が前記ガイドレールに下方から押し付けられる構成とされた、
    ことを特徴とするダクト装置。
  2. 前記駆動輪の後方において前記懸架部に取り付けられ、かつ前記ガイドレールの上方に位置する上側拘束部材と、
    前記駆動輪の後方において前記懸架部に取り付けられ、かつ前記ガイドレールの下方に位置する下側拘束部材と、を有する、
    請求項1記載のダクト装置。
  3. 前記延出部は、ポリカーボネートシート及びプラ段シートの少なくともいずれか一方からなる断面円弧状の壁材が、周方向に連結されて円筒状とされている、
    請求項1又は請求項2記載のダクト装置。
  4. トンネルの内壁面に敷設されるガイドレールと、このガイドレールに懸架されるダクトと、このダクトの先端開口を前後に移動する移動機構と、を有し、
    前記トンネルの切羽直下の粉塵を前記ダクトの先端開口から吸引するトンネル内の集塵システムであって、
    前記ダクトは、前記移動機構が備わる前後方向に伸縮することのない固定長の懸架部と、この懸架部から前方に延出する延出部と、を有し、
    前記移動機構は、前記懸架部に取り付けられ、かつ前記ガイドレールに懸架された前記懸架部を前記ガイドレールに懸架する支点部材と、この支点部材の後方において前記懸架部に取り付けられた駆動輪と、を有し、
    前記延出部の重量によって前記支点部材を支点として前記駆動輪が前記ガイドレールに下方から押し付けられる構成とされた、
    ことを特徴とするトンネル内の集塵システム。
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