以下、図面にしたがって、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ10について説明する。
図1には、空気入りタイヤ10のトレッド12が示されている。なお、トレッド12の接地端12Eは、空気入りタイヤ10をJATMA YEAR BOOK(日本自動車タイヤ協会規格、2011年度版)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときのものである。使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
また、本実施形態の空気入りタイヤ10は、タイヤ赤道面CLを挟んで左右非対称のパターン形状とされており、図面右側が車両装着時の内側(矢印INで表示)、図面左側が車両装着時の外側(矢印OUTで表示)となるように車両に装着される。なお、この空気入りタイヤ10は、回転方向の指定は無いが、左右の装着の向きは指定される。そのため、空気入りタイヤ10のサイド部には、例えば、INSIDE(内側)、OUTSIDE(外側)等のマークが付与されている。
本実施形態の空気入りタイヤ10のトレッド12には、タイヤ周方向に沿って延びる複数(本実施形態では3本)の周方向溝である、第1周方向溝14、第2周方向溝16、及び、第3周方向溝18が、形成されている。
第1周方向溝14は、タイヤ赤道面CLの一方側(車両装着時の外側:OUT側)に配置され、第2周方向溝16及び第3周方向溝18は、タイヤ赤道面CLの他方側(車両装着時の内側:IN側)に配置されている。また、第2周方向溝16は第3周方向溝18よりもタイヤ赤道面CL側に配置されている。第1周方向溝14は、OUT側の最外側の周方向溝であり、第3周方向溝18は、IN側の最外側の周方向溝である。なお、第2周方向溝16は、第1周方向溝14よりもタイヤ赤道面CLに近い位置に形成されている。
第1周方向溝14と第2周方向溝16との間には、陸部20が形成されている。陸部20には、第1周方向溝14と第2周方向溝16とを横断するように、傾斜溝30が周方向に複数形成されている。傾斜溝30は、第1周方向溝14から第2周方向溝16へ向けて右上がりに傾斜して延出されており、第1周方向溝14と第2周方向溝16とを連通している。
なお、第2周方向溝16が第1周方向溝14よりもタイヤ赤道面CLに近い位置に形成されているため、陸部20のタイヤ幅方向中心は、タイヤ赤道面CLよりも車両装着時の外側(矢印OUT方向側)に位置することになる。
図2、及び図3に示すように、傾斜溝30は、タイヤ赤道面CLに近い第2周方向溝16側が、溝長手方向中央部分よりも溝底の浅い浅溝30Aとされており、第1周方向溝14側が、溝長手方向中央部分よりも溝底の浅い浅溝30Bとされている。
本実施形態の浅溝30Aは、タイヤ赤道面CLよりも第1周方向溝14側へ延びていると共に、後述する第2の副溝36の浅溝36Aと繋がっている。
図2に示すように、傾斜溝30は、第2周方向溝16側からタイヤ赤道面CLよりも車両装着時の外側(矢印OUT方向側)に位置する第1周方向溝14側に向けて溝幅が徐々に広くなるように形成されており、第1周方向溝14側へ排水し易い構成となっている。また、傾斜溝30は、図の右下側へわずかに膨出する湾曲形状とされている。
なお、傾斜溝30のタイヤ赤道面CLに対する角度は、20°〜60°の範囲内とすることが好ましい。角度が20°未満になると、後述する傾斜陸部22がタイヤ周方向に長くなり過ぎるため、運動性能の悪化が懸念される。一方、傾斜溝30のタイヤ周方向に対する角度が60°を超えると、排水性能に対するメリットが無くなる。そこで、傾斜溝30のタイヤ赤道面CLに対する角度は、20°〜60°の範囲内とすることが好ましい。
隣り合う傾斜溝30の間には、傾斜陸部22が形成されている。傾斜陸部22の角部24は、角部26よりも鋭角となっている。角部24には、鋭角先端部に向けて傾斜する面取り24Aが形成されて剛性の低い部分が除去されている。
傾斜陸部22の矢印A方向側には、浅溝30Aと浅溝30Bとの間に、傾斜溝30に面して段部40が形成されている。段部40は、傾斜陸部22の浅溝30Aから浅溝30Bにかけて隅部を埋める様に形成されている。
図3に示すように、段部40は、傾斜溝30の溝底から立ち上がり、傾斜陸部22の踏面よりも低い段差面42を有している。
傾斜陸部22には、隣り合う傾斜溝30を連結するように、第2周方向溝16側から第1周方向溝14側に向けてサイプ38A−1、サイプ38A−2、第2の副溝36、サイプ38B、第1の副溝34、及びサイプ38Cが順に形成されている。なお、サイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、及びサイプ38Cは、傾斜陸部22が路面に接地した際に閉じる程度の溝幅を有しており、第1の副溝34及び第2の副溝36は、接地時に閉じることの無い溝幅に設定されている。
なお、第2の副溝36は、タイヤ赤道面CL側の一部分が、タイヤ赤道面CLとは反対側よりも溝底の浅い浅溝36Aとなっており、浅溝36Aは、傾斜溝30の浅溝30Aと同じ溝深さとなっている。
傾斜陸部22の高さ寸法(第1周方向溝14、第2周方向溝16の溝底から計測。本実施形態では9.8mm)に対して、傾斜陸部22に形成する各サイプの深さ寸法は、40〜80%の範囲内が好ましく、本実施形態では7.1mmとしている。
また、傾斜陸部22に形成する各サイプは、傾斜陸部22が路面に接地した際に閉じる狭い溝幅であり、一例として0.3〜1.0mmの範囲内が好ましく、本実施形態では0.7mmに設定されている。
トレッド平面視で、これらサイプ38A−1、サイプ38A−2、第2の副溝36、サイプ38B、第1の副溝34、及びサイプ38Cは、タイヤ周方向の一方側、本実施形態では図面矢印A方向側に凸となる円弧形状とされている。
ここで、本実施形態の空気入りタイヤ10では、第1の副溝34の溝断面積(単位長さ当たりの溝体積)と第2の副溝36の溝断面積(単位長さ当たりの溝体積)とを同じにするため、タイヤ赤道面CLに近い位置に形成される第2の副溝36は、タイヤ赤道面CLから遠い位置に形成される第1の副溝34よりも相対的に溝幅が狭く、かつ溝深さが深くなるように形成されている。
但し、第1の副溝34、及び第2の副溝36の何れも雪上走行時に溝内に雪を入り込ませる必要がある。
また、本実施形態の第1の副溝34、及び第2の副溝36は、タイヤ赤道面CL側の溝幅が最も広く、タイヤ赤道面CLとは反対側へむけて溝幅が漸減している。
第1の副溝34は、溝深さ寸法を傾斜陸部22の高さ寸法の10〜40%の範囲内、溝幅を1.0〜5.0mmに範囲内とすることが好ましい。一方、第2の副溝36は、溝深さ寸法を傾斜陸部22の高さ寸法の40〜80%の範囲内、溝幅を1.0〜5.0mmに範囲内とすることが好ましい。
本実施形態の第1の副溝34は、最小溝幅が2mm、最大溝幅が5mmである。また、本実施形態の第2の副溝36は、最小溝幅が2mm、最大溝幅が6mmである。
図2に示すように、本実施形態では、第1の副溝34の長手方向両端部に、溝底より突出し、かつ溝両側の陸部分を連結する底上げ部34Aが形成されている。
ここで、本実施形態の傾斜陸部22に形成されるサイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、サイプ38Cは、トレッド平面視で円弧形状であるが、図2に示すように、その曲率半径Rは、50mm以下とすることが好ましい。また、これらサイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、サイプ38Cは、全体的に略タイヤ幅方向に形成することが好ましく、サイプ長手方向一端と他端とを直線状に結ぶ仮想線FLとタイヤ幅方向との成す角度θを30°以下とすることが好ましく、サイプ全体を通して45°以下とすることが好ましい。
なお、第1の副溝34、及び第2の副溝36の向き、形状及び曲率半径についても、サイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、及びサイプ38Cと同様の規定とすることが好ましい。
図2に示すように、傾斜陸部22の角部24側には、第1周方向溝14に突出する第1突部46が形成されている。
第1突部46のトレッド平面視形状は、上底が溝側、下底が鋭角部側に配置される等脚台形であるが、他の形状であっても良い。第1突部46のタイヤ幅方向の寸法は、ウエット路面走行時の水の流れを考慮すると、第1周方向溝14の溝幅よりも小さいことが好ましい。
図4(A)に示すように、第1突部46は、タイヤ周方向からみて三角形状とされているが、矩形等、他の形状であっても良い。雪上を走行する際、第1周方向溝14に入り込んだ雪が、溝内に突出した第1突部46に引っ掛かることによって溝長手方向にずれることが抑えられ、雪上でのブレーキング性能、及びトラクション性能を向上させることができる。また、第1突部46により、傾斜陸部22の鋭角の角部24を補強して剛性を向上させることができる。第1突部46は、鋭角の角部24のタイヤ車両装着時の車両幅方向外側に配置されているので、鋭角の角部24の第1周方向溝14側への変形を抑えるのに特に効果的である。
なお、傾斜陸部22の鋭角の角部24を更に補強するために、傾斜溝30は、第1周方向溝14側の一部分が、溝長手方向中間部分よりも溝底が浅い浅溝30Bとなっている。
図5にも示すように、第2周方向溝16と第3周方向溝18との間には、第2陸部50が形成されている。第2陸部50のタイヤ幅方向の中央には、タイヤ周方向に沿って延びる凹溝状の周溝部52が形成されている。周溝部52のタイヤ周方向両端部(一端部52A、他端部52B)は、タイヤ幅方向の片側が先端から徐々に幅広となるようにタイヤ周方向に対して傾斜され略三角形状とされている。周溝部52の後述する第1細溝部54が連結される側の一端部52Aは、第2周方向溝16側が前述のように傾斜され、他端部52Bは第3周方向溝18側が前述のように傾斜されている。周溝部52は、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。周溝部52の溝長さL1は10mm≦L1≦40mm、溝幅W1は2mm≦W1≦5mm、溝深さD1は3mm≦D1≦8mmの範囲に設定することが好ましい。本実施形態では、溝長さL1=28mm、溝幅3mm、溝深さ5.6mmに設定されている。
周溝部52のタイヤ周方向の一端部52Aには、直線状の第1細溝部54が連結されている。第1細溝部54を構成する内壁面は一端部52Aの内壁面と面一になっている。第1細溝部54は、周溝部52よりも狭幅で、周溝部52と鋭角αをなすように第2周方向溝16へ向かって延出されている。第1細溝部54の溝長さL2は5mm≦L2≦30mm、溝幅W2は0.5mm≦W2≦1.2mm、溝深さD2は2mm≦D2≦5mmの範囲に設定することが好ましい。溝深さが浅すぎたり、溝幅が狭すぎると、接地時に第1細溝54が閉じてしまったりして、共鳴器としての機能が発揮されない場合や、早期に摩耗して効果がなくなってしまうことが考えられ、好ましくない。第1細溝部54は、第2周方向溝16に開口されている。周溝部52と第1細溝部54により、共鳴器80が構成されている。共鳴器80は、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。第1細溝部54、周溝部52の容積と、第1細溝部54の断面積及び長さは、ヘルムホルツ共鳴理論式に基づいて、走行時に発生する第2周方向溝16の騒音を軽減するように、共鳴周波数が設定されている。
周溝部52と第1細溝部54との間には、鋭角部55が形成されている。図6に示されるように、鋭角部55には、鋭角先端へ向けて高さが低くなるように傾斜する第1面取り55Aが形成されている。第1面取り55Aにより、剛性の低い部分が除去されている。また、図7に示されるように、周溝部52の第2周方向溝16側には、周溝部52に沿って第2面取り55Bが形成されている。第2面取り55Bにより、剛性の低い部分が除去されている。
周溝部52のタイヤ周方向の他端部側には、第2細溝部56が形成されている。第2細溝部56は、周溝部52とは非連通で、間に第2陸部50のゴム部をおいて周溝部52の他端部52B付近から、第3周方向溝18に向かって直線的に延出されている。周溝部52は、第1細溝部54と略平行になるように配置され、他端部は第3周方向溝18と連通されている。第2細溝部56の溝長さL3は5mm≦L3≦20mm、溝幅W3は0.5mm≦W3≦1.2mm、溝深さD3は3mm≦D3≦8mmの範囲に設定することが好ましく、この範囲内で、第2細溝部56は、第1細溝部54よりも長さが短く、深さが深くなるように設定することが好ましい。これは、周溝部52を一列に設置する際、第2陸部50の中心近くに配置し、周溝部52を挟んだタイヤ幅方向両側の剛性を均一化することが考えるが、このような場合、周溝部52から切り離されかつ周溝部52を挟んだ剛性のバランスをとるためである。第2細溝部56と第3周方向溝18との間には鋭角部57が形成されている。鋭角部57には、鋭角先端部に向けて傾斜する第3の面取り57Aが形成されて剛性の低い部分が除去されている。
第1細溝部54と第2周方向溝16とが交差する部分には、鋭角な角部51が形成されている。角部51には、鋭角先端に向けて高さが低くなるように傾斜する第4の面取り51Aが形成されて剛性の低い部分が除去されている。
図5に示すように、第2陸部50の側壁には、鋭角な角部51の側方に、第2周方向溝16へ突出する第2突部58が形成されている。第2突部58のトレッド平面視形状は、上底が溝側、下底が鋭角部側に配置される等脚台形とされている。なお当該形状に限定されるものではなく、他の形状であっても良い。第2突部58のタイヤ幅方向の寸法は、ウエット路面走行時の水の流れを考慮すると、第2周方向溝16の溝幅よりも小さいことが好ましい。また、第2突部58は、図4(B)に示すように、タイヤ周方向からみて三角形状とされている。なお当該形状に限定されるものではなく、矩形等、他の形状であっても良い。第2突部58は、鋭角な角部51を補強して剛性の低下を抑制することができる。また、雪上を走行する際、第2周方向溝16に入り込んだ雪が、溝内に突出した第5突部58に引っ掛かることによって溝長手方向にずれることが抑えられ、雪上でのブレーキング性能、及びトラクション性能を向上させることができる。
また、第2突部58は、鋭角な角部51のタイヤ車両装着時の車両幅方向外側に配置されているので、角部51が第2周方向溝16側へ変形することを抑えるために特に効果的である。
図1及び図5に示すように、第2陸部50の、互いに隣接する共鳴器80同士の間には、オープンサイプ53が形成されている。オープンサイプ53は、共鳴器80と干渉し合わないように、共鳴器80と非連結で形成されている。オープンサイプ53は、第2陸部50を横断して第2周方向溝16及び第3周方向溝18に開口している。オープンサイプ53によって、独立して区画される領域内に各々の共鳴器80は設けられることになる。換言すれば、オープンサイプ53は、各共鳴器80の周方向の両側に配置されている。オープンサイプ53は、タイヤ幅方向に対して第1細溝部54と同方向に若干傾斜している。オープンサイプ53が、第2周方向溝16及び第3周方向溝18となす角度β、γは、周溝部52と第1細溝部54との間の鋭角αよりも大きくなっている。オープンサイプ53の溝長さL4は10mm≦L4≦40mm、溝幅W4は0.5mm≦W4≦1.2mm、溝深さD4は1mm≦D4≦5mmの範囲に設定することが好ましい。本実施形態では、溝長さ24mm、溝幅0.7mm、溝深さ3mmとされている。ここで、溝深さが深すぎると、陸部50全体のタイヤ幅方向の剛性が下がりすぎるため、操縦安定性が低下することが懸念される。また、溝深さが浅すぎると、早期に摩耗してしまい、効果がなくなることが懸念される。
本実施形態では、第1細溝部54の深さD2は第2細溝部57の深さD3よりも浅く、第1細溝部54の長さL2は前記第2細溝部57の長さL3よりも長く設定されている。また、本実施形態では、第1細溝部54及び第2細溝部57の深さD2、D3は、オープンサイプ53の深さD4よりも深くなるように設定されている。
第3周方向溝18のショルダー側には、タイヤ周方向に延びるリブ状のイン側ショルダー陸部60が形成されている。イン側ショルダー陸部60のタイヤ幅方向中間部には、タイヤ周方向に延びるサイプ62が形成されている。サイプ62と第3周方向溝18との間には、タイヤ幅方向に対して傾斜したハイアングルサイプ64と、ハイアングルサイプ64よりもタイヤ幅方向に対する傾斜角度が小さいローアングルサイプ59とがタイヤ周方向に交互に形成されている。ハイアングルサイプ64、及びローアングルサイプ59は、サイプ62及び第3周方向溝18に連通され開口している。
ローアングルサイプ59は偏摩耗防止を主な目的としており、コーナリング力とのバランスを考えるとハイアングルサイプ64より浅く設定されていることが好ましい。
第3周方向溝18には、イン側ショルダー陸部60のハイアングルサイプ64と第3周方向溝18とで形成される鋭角な角部61の側方に、第3周方向溝18に突出する第3突部66が形成されている。第3突部66は、第2突部58、及び第1突部46と略同様の形状であり、雪上でのブレーキング性能、及びトラクション性能を向上させることが出来、鋭角な角部61を補強して剛性を向上させることができる。
なお、角部61には、鋭角先端部に向けて傾斜する面取り61Aが形成されて、剛性の低い部分が除去されている。
この第3突部66は、鋭角な角部61のタイヤ車両装着時の車両幅方向外側に配置されているので、鋭角な角部61の第3周方向溝18側への変形を抑えるのに特に効果的である。
また、イン側ショルダー陸部60には、サイプ62よりもショルダー側に、接地端12E側へ延びる端部浅溝63がタイヤ周方向に複数形成されている。端部浅溝63は、タイヤ幅方向に沿って延びるように配置されている。イン側ショルダー陸部60には、隣り合う端部浅溝63の間に、端部浅溝63と平行に2本のサイプ65、67が形成されている。
さらに、イン側ショルダー陸部60には、サイプ62よりもショルダー側に、サイプ65、67と交差すると共に、端部浅溝63と端部浅溝63とを連結するタイヤ周方向に延びるサイプ69が形成されている。
図1に示すように、第1周方向溝14のショルダー側には、タイヤ周方向に延びるリブ状のアウト側ショルダー陸部70が形成されている。アウト側ショルダー陸部70には、第1周方向溝14の近傍からタイヤ幅方向に沿って延びる端部浅溝73がタイヤ周方向に複数形成されている。
アウト側ショルダー陸部70には、隣り合う端部浅溝73の間に、端部浅溝73と平行に2本のサイプ75が形成されている。
アウト側ショルダー陸部70のタイヤ幅方向中間部には、サイプ75と交差すると共に、端部浅溝73と端部浅溝73とを連結するタイヤ周方向に延びるサイプ72,74が形成されている。
アウト側ショルダー陸部70には、第1周方向溝14側に、傾斜溝30の端部近傍に切欠部79が形成されている。アウト側ショルダー陸部70には、端部浅溝73と切欠部79とを連結するタイヤ幅方向に延びるサイプ76が形成されている。
(作用)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用を説明する。
本実施形態では、第2陸部50に、共鳴器80が設けられているので、第2周方向溝16において発生する気柱共鳴音をコントロールして、タイヤ騒音を低減することができる。また、第1細溝部54は周溝部52と鋭角をなすように形成されているので、鈍角で形成されている場合と比較して、第2陸部の剛性低下を抑制することができる。また、第1細溝部54の長さを容易に確保できると共に、共鳴器80のタイヤ周方向のサイズをコンパクトにすることができる。
また、本実施形態では、第2陸部50の、タイヤ周方向に間隔をあけて形成される共鳴器80同士の間に、陸部を横断して周方向溝に開口するオープンサイプ53を形成しているので、タイヤ接地時に共鳴器80の形成された領域のゴムの蹴り出し側への移動が可能となり、共鳴器80へ作用するせん断力を軽減することができる。これにより第2陸部50の偏摩耗を抑制することができる。
また、本実施形態では、オープンサイプ53は、共鳴器80と非連続で形成されているので、接地時にスリップアングルとの関係でオープンサイプ53が開いた場合でも、共鳴器80の騒音低減機能への影響を抑制することができる。
なお、本実施形態では、オープンサイプ53が、第2周方向溝16及び第3周方向溝18となす角度を、周溝部52と第1細溝部54との間の鋭角よりも大きくなるように設定したが、必ずしも、このような関係に設定する必要はない。本実施形態のような関係に設定することにより、共鳴器80において第1細溝部54が周溝部52に対して鋭角をなしていることのメリットを維持しつつ、オープンサイプ53によるタイヤ幅方向のエッジ成分を確保することができる。
また、本実施形態では、空気入りタイヤ10は、車両へ装着する際の向きが指定されており、ネガティブキャンバーの車両に取り付けられると、空気入りタイヤ10が傾く(例えば、車両前方から見て、タイヤ上部が下部よりも車両内側となるように傾く)。これにより、トレッド12は、タイヤ赤道面CLよりも車両幅方向内側の領域の方が車両幅方向外側の領域よりも接地圧が高くなり、また、タイヤ赤道面CLよりも車両幅方向内側の接地長が車両幅方向外側の接地長よりも長くなる。本実施形態では、共鳴器80は、タイヤ赤道面CLよりも車両幅方向内側の第2陸部50に形成されているので、より効果的にタイヤ騒音を低減させることができ、偏摩耗も抑制することができる。また、陸部50の内側の領域で接地圧が高いことにより励起されやすい偏摩耗を抑制することができる。
また、本実施形態では、第1細溝部54の深さは第2細溝部56の深さよりも浅く、第1細溝部54の長さは前記第2細溝部56の長さよりも長く設定されているが、必ずしもこのような関係である必要はない。本実施形態のように第1細溝部54及び第2細溝部56の深さと長さの関係を設定することにより、第2陸部50における剛性の均一化を図ることができ、偏摩耗をより抑制することができる。
また、本実施形態では、第1細溝部54及び第2細溝部56の深さは、オープンサイプ53の深さよりも深くなるように設定されているが、必ずしもこのような関係である必要はない。本実施形態のように第1細溝部54及び第2細溝部56の深さとオープンサイプ53の深さの関係を前述のように設定することにより、陸部の剛性を確保しつつ、偏摩耗を抑制することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ10が、ネガティブキャンバーの車両に取り付けられると、前述のように、トレッド12では、アウト側ショルダー陸部70対比で、イン側ショルダー陸部60の接地圧は高く、かつ接地長が長くなり、特にイン側ショルダー陸部60において第3周方向溝18側の接地圧が高くなる傾向となる。このように、接地長が長くなり、接地圧も高いが、イン側ショルダー陸部60には第3周方向溝18側にハイアングルサイプ64とローアングルサイプ59とがタイヤ周方向に交互に形成されて第3周方向溝18側の陸部剛性が低下しているので、イン側ショルダー陸部60の第3周方向溝18側の接地圧の上昇が抑えられ、イン側ショルダー陸部60の第3周方向溝18側の摩耗(高い接地圧に起因する)の促進が抑えられる。
また、タイヤ幅方向のエッジ成分を有するローアングルサイプ59とハイアングルサイプ64が交互に形成されているイン側ショルダー陸部60が、接地長の長くなる車両幅方向最内側に設けられていると共に、イン側ショルダー陸部60に隣接する第2陸部50にオープンサイプ53が形成されているので、接地面内においてタイヤ幅方向のエッジ成分を効率的に確保することができ、摩擦係数が特に低い滑りやすいウエット路面において、高いウエット性能を得ることができる。
さらに、ハイアングルサイプ64は、横力に対して効くタイヤ周方向のエッジ成分を多く有しているので(タイヤ幅方向のエッジ成分対比)、空気入りタイヤ10は、摩擦係数が特に低い滑りやすいウエット路面において、コーナリングに際して高いグリップ力が得られ、横滑りを効果的に抑制することができる。
なお、上記エッジ成分は、氷上走行においても効果を発揮できることは勿論である。
また、イン側ショルダー陸部60の中で鋭角な角部61は、鈍角な角部よりも剛性が低いため変形し易い傾向にあるが、イン側ショルダー陸部60の角部61が第3突部66で補強され、かつ面取り61Aが形成されているため、横力の入力時に角部61の変形が抑えられ、イン側ショルダー陸部60の接地面積が確保される、即ち、踏面の路面に対する密着性が確保される。したがって、コーナリング時に、イン側ショルダー陸部60のハイアングルサイプ64のタイヤ周方向のエッジ効果を最大限に発揮させることができる。さらに、深さの浅いローアングルサイプ59をハイアングルサイプ64の間に設定することで、エッジを増やしても、ブロック剛性を落とし過ぎず、摩擦係数の高い路面にも対応でいるようにすることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ10では、トレッド12に、タイヤ周方向に沿って延びる第1周方向溝14、第2周方向溝16、及び第3周方向溝18の3本の周方向溝を配置していると共に、第1周方向溝14と第2周方向溝16とを連結するように、タイヤ幅方向に対して傾斜した傾斜溝30が形成されているため、基本的な排水性が確保されている。
この傾斜溝30は、第1周方向溝14に向けて溝幅が広くなるように形成されているので、第1周方向溝14へ向かっての排水性を高めることができる。
本実施形態の傾斜溝30は、第1周方向溝14側に向かってタイヤ赤道面に対する傾斜角度が漸増する方向に湾曲されているので、傾斜溝30を直線状とした場合と比較して、傾斜溝30から第1周方向溝14へ向かっての距離を短縮でき、排水性を高めることができる。
本実施形態の空気入りタイヤ10で雪上を走行した際には、主には、タイヤ幅方向に延びる溝成分、即ち、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びる傾斜溝30、端部浅溝63、端部浅溝73、さらには、傾斜陸部22に形成した第1の副溝34、及び第2の副溝36に雪が入り込んでタイヤ周方向の雪柱剪断力を発生するため、直進時のトラクション性能、及びブレーキ性能を得ることができる。
本実施形態の空気入りタイヤ10では、トレッド中央付近、即ちタイヤ赤道面CLを横断するように傾斜陸部22を形成しているため、傾斜陸部22を区画している傾斜溝30、及びタイヤ赤道面CLに近い位置に形成された第2の副溝36、及び第1の副溝34に雪が入り込み易く、雪上性能を向上させることができる。
なお、雪上でのコーナリング時では、主には、タイヤ周方向に延びる溝成分、即ち、第1周方向溝14、第2周方向溝16、第3周方向溝18、傾斜溝30に雪が入り込んでタイヤ幅方向の雪柱剪断力を発生するため、雪上でのコーナリング性能を得ることができる。
さらに、傾斜陸部22に形成した第1の副溝34、及び第2の副溝36は、全体的にタイヤ幅方向に延びてはいるが、タイヤ周方向に凸なるように湾曲して、タイヤ周方向に延びる溝成分を有しているため、タイヤ幅方向に直線状に延びるラグ溝対比で、タイヤ幅方向の雪柱剪断力を発生させることができ、これによっても雪上でのコーナリング性能を向上させることができる。
また、傾斜陸部22の中央側では、接地時に閉じるサイプと接地時に閉じない溝とを交互に配置しているので(サイプ38A−2、第2の副溝36、サイプ38B、第1の副溝34)、サイプと副溝との間の小陸部分がサイプ側に倒れる結果として、副溝に隣接するサイプが閉じる際にサイプが閉じる分だけ副溝が開くこととなり、開いた副溝が雪上で雪を掴み易くなっており、これによって、雪上性能を更に向上することが出来る。
本実施形態の傾斜陸部22には、複数のサイプ(サイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、サイプ38C、サイプ38D)が形成されているが、各サイプはタイヤ周方向に凸となるように湾曲しており、小陸部の湾曲した凸部分が、隣接する小陸部の湾曲した凹部分に嵌合した形態となっているため、横力が入力した際、凸部分と凹部分とが互いに引っ掛かり合い、傾斜陸部22の変形が抑えられ、各サイプを直線状とした場合に比較して陸部剛性が向上する。
傾斜陸部22の長手方向両端側には、サイプ38A−1及びサイプ38Cが形成されており、これらのサイプは、傾斜陸部22が路面に接地した時に閉じてサイプ壁面同士が密着するので、接地時に閉じない副溝を形成するよりも傾斜陸部22の長手方向両端側の変形を抑えることができる。
さらに、傾斜陸部22に形成された各サイプは、タイヤ周方向に凸となるように湾曲しているので、例えば、タイヤ幅方向のエッジ成分が効くウエット路面や雪上でのブレーキ性能だけでなく、タイヤ周方向のエッジ成分も備えているので、コーナリング時にタイヤ周方向のエッジ成分を効かすことができ、ウエット路面や雪上でのコーナリング性能を向上することができる。
本実施形態の空気入りタイヤ10では、傾斜陸部22を区画している傾斜溝30のタイヤ幅方向中心を、タイヤ赤道面CLよりも車両装着時の車両幅方向外側に位置させているので、コーナリング時に接地面がタイヤ赤道面CLの車両幅方向外側へ変位した時に、接地面における傾斜溝30の割合が多くなるため、コーナリング時のウエット性能を向上することができる。
傾斜溝30は、ショルダー部側よりも接地圧の高いタイヤ赤道面CL側を浅くしているので、傾斜陸部22のタイヤ赤道面CL側の接地圧の高い部分における陸部剛性を向上させることができ、傾斜陸部22のタイヤ赤道面CL側の変形を抑えることができる。これにより、操縦安定性を向上させることができる。また、傾斜溝30は、第1周方向溝14側で溝幅を広くすると共に、溝深さを深くしているので、傾斜溝30の水を第1周方向溝14へ効率的に排水することができる。
また、傾斜陸部22には、角部24の形成されている側(矢印A方向側)に傾斜溝30に面して段部40が形成されているので、傾斜溝30での排水性を確保しつつ、傾斜陸部22の剛性を向上させて倒れを抑制することができる。本実施形態では、傾斜陸部22の矢印A方向側のみに段部40を形成したが、矢印A方向とは反対方向側にも段部40と同様の構成の段部を形成してもよい。
なお、本実施形態の段部40は断面形状が矩形であるが、段部40の断面形状は、三角形等、他の形状であっても良い。
また、本実施形態では、タイヤ周方向に沿って延びる第1周方向溝14、第2周方向溝16、及び第3周方向溝18の各々に、第1突部46、第2突部58、及び第3突部66を設けているので、これらの溝に入り込んで形成された雪柱がタイヤ周方向にずれることが抑えられ、これらの突起がない場合と比較して、雪上でのトラクション性能、ブレーキ性能を向上させることができる。
なお、本実施形態では、第1の副溝34、及び第2の副溝36の溝幅について、タイヤ赤道面CL側を広く、タイヤ赤道面CLとは反対側(ショルダー側)を徐々に狭くしている。これは、ローアングルサイプ59とハイアングルサイプ64のタイヤ周方向ピッチは、偏摩耗を抑えるために必要な陸部剛性(接地圧)の低下程度、必要とされるエッジ効果とのバランスを考慮して決定されるものである。
上記実施形態では、傾斜陸部22に接地時に閉じない溝として、第1の副溝34及び第2の副溝36の2本の溝を形成したが、接地時に閉じない溝は3本以上形成しても良い。傾斜陸部22に形成するサイプ、及び副溝の数は、雪上性能、操縦安定性(陸部剛性)のバランスを考慮して決定すれば良く、各々の本数は上記実施形態のものに限定されない。
傾斜陸部22に形成したサイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、サイプ38C、第1の副溝34、及び第2の副溝36は、トレッド12を平面視したとき、曲率半径が単一のRの円弧形状であったが、周方向に凸形状となっていれば良く、複数の曲率半径を有する形状であっても良く、円弧以外の曲線形状であっても良い。
本実施形態の傾斜溝30は、ショルダー部側よりも接地圧の高いタイヤ赤道面CL側を浅くしているが、傾斜溝30はショルダー部側からタイヤ赤道面CL側に向けて溝深さを徐々に浅くしても良い。
上記実施形態では、傾斜陸部22に形成したサイプ、及び副溝の凸の向きが矢印A方向であったが、場合によっては凸の向きは矢印A方向と反対方向としても良い。
また、上記実施形態では共鳴器80とオープンサイプ53とを交互に形成したが、これに限らず、共鳴器802つを縦に並べてオープンサイプ53を設置したり、共鳴器80を2つ横に並べてオープンサイプ53を設置したり、というように偏摩耗の起こりやすさにより、オープンサイプ53の配置も調整してもよい。
また、本発明に係る空気入りタイヤにおいては、共鳴器80によるロードノイズの低減に加え、上記の構成により低摩擦係数の路面での優れたグリップ力を得られ、またその際の耐偏摩耗性の低下を防止するという優れた効果が得られるため、オールシーズン用タイヤ、または冬用タイヤとして好適に使用することができる。