JP5810495B2 - コイル焼鈍装置及びコイル焼鈍方法 - Google Patents
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Description
ただし、焼鈍をどのようにして行うかによって調質圧延およびその後の歪み時効が変化してくる。すなわち、バッチ焼鈍か連続焼鈍かで目的とすることが異なってくる。バッチ焼鈍は加熱・均熱時間を長く採る事ができるため、固溶してある炭素Cや窒素N等を析出させやすく、そのため軟質化が得やすく、また時効効果が小さい特性を有する鋼板を得ることができる。連続焼鈍においてはその逆となる。
このように、バッチ焼鈍炉における焼鈍はいずれにおいても省略もしくは他の手段に替えることのできない製造工程である。
このため、製品化するために歩留まりの低下と生産効率の低下、さらに検査および形状補正に伴う大きなコストが問題となっていた。
また、特性向上に対して、設定以上の特性が得られない場合には、劣化部分を切り捨てて使用している。そのため、検査ラインを通し、マーキングとオンライン切捨てを実施して、コイルの再度巻き取りを実施しなければならない。そのため、製品合格率、生産率、また再度ラインを通して特性測定をしながらコイルを巻き取るため、それを実施するコストが上乗せされるため非常に大きなコスト増加となる。
このようなバッチ式の焼鈍炉における種々のトラブルに対しては、以下のような対策が提案されている。
特開2006-274343号公報では、コイルのバックリングについてコイルの内側にカバーを行い、防止する方法が述べられている。
また、特開2006-257486号公報ではコイルに発生する欠陥に対して炉内を均一温度分布とすることで解決することが述べられている。その際に、炉のインナーカバーを断熱材にて覆うもしくは内張りすることで均一な温度分布を与えるように加熱を実施している。
これらの対策により、コイルに発生する欠陥が低減している。
また、特許文献2(特開平5-287390号公報)の方法は、冷却時の温度差をうまくとることで密着および巻き緩みを防止しようとしているが、実際には欠陥は加熱・均熱時にも発生しており、冷却時のみではなく根本的な解決にはならない。
また、特許文献3(特開平5-295453号公報)は、バッチ式の焼鈍炉の構造をインナーカバー付の二重構造として冷却速度の温度条件を5.0〜15.0℃/Hrとすることで、焼きつき疵の問題を解決しているが、冷却の際の温度降下がかなり遅く、効率の面を考慮すると工業化は難しいという問題がある。
また、特許文献5(特開2006-257486号公報)では、炉のインナーカバーを断熱材にて覆うもしくは内張りすることで炉内を均一温度分布するようにしているが、断熱材が張られているインナーカバーの加熱に際して、最適なコイル温度分布が得られているかどうかは不明である。そのため、この対策により完全にコイル欠陥が低減するかどうかは不明である。
しかしながら、抜本的な解決策はなく、また解決策はあっても実施するにはさらなる生産効率の低下およびコスト高を招く結果となっている。そのため、欠陥発生による非効率およびコスト高をとるか、開示された公開特許文献に示されている対策により欠陥の低減を図るが同時に非効率およびコスト高を取るかの二者択一の状態となっているのが現状である。
しかしながら、炉内温度分布の低減を図ったとしても欠陥が発生する場合があり、そのため欠陥除去のための製造工程を完全にはなくすことができず、結局生産ラインおよびコストを下げることができなかった。
従来の焼鈍炉31は、コイル支持台33の上にスペーサ35を介して断熱材・クッション材37が設置され、その上にコイル9が横を向けた状態で載置されている。そして、コイル9及びコイル支持台33を覆うようにインナーカバー5が設置されており、インナーカバー5の外周部には断熱材11が設置されている。また、コイル9の上端部には蓋13が設置されている(図13参照)。
従来のコイル支持台33は、図15に示すように、円筒状の脚部39と該脚部39の上部に設けられたコイル9を支持するドーナツ状の台部41とを有している。つまり、支持台の全体形状は、中心部に貫通孔を有し、径方向断面が略T字状をしている。
図16が解析モデルの説明図であり、中心線の片側のみを図示している。解析モデルは、図12、図13に示した従来型のコイル支持台33と同形状とし、インナーカバー5の周面に断熱材11を設置し、またコイル支持台33上に断熱材・クッション材37を設置し、さらにコイル9の上面にコイル9の孔を覆うように断熱材からなる蓋13を設置している。
コイル形状は、20tonコイルで、内径1000mmφ×コイル幅1150mmHである。支持台の下部には炉床ヒータを設置した。
図18は周方向(θ方向)の圧縮応力を示すグラフであり、縦軸が応力(MPa)、横軸が加熱時間t(Hr)を示している。図18に示すように、加熱開始から約25時間経過した時点で応力のピークが発生している。
図19は、応力ピーク時の温度分布を示す図である。図19から分かるように、応力ピーク時には、コイル下部におけるコイル9の中心部から外周側に少し入った部位の温度が最も低くなっていることが分かる。
また、図20は応力ピーク時における応力分布を示す図であり、図20から分かるように、応力ピーク時には、r方向、θ方向共にコイル9の中心部と外周部との間に大きな応力分布が生じていることが分かる。
コイル9の径方向の中心部から外周側に少し寄った位置に温度の最も低い点(冷点)が存在する(図19参照)。そのため、コイル9は中心部から外周側に向かって順次温度が高くなるのではなく、中心部近くに極小値を持つことが分かる。温度勾配に極小値が存在するため、コイル9は加熱時の膨張の過程において、コイル9の冷点近くで巻き締まりの現象が生じ、これによって応力が発生していると考えられる。
そして、このような巻き締まりの現象が生ずることで、以下のような状況が生ずると考えられる。
また、コイル外周下端部が外側に膨らむことにより、単に膨張による耳歪みとなるだけでなく、コイル9の重量をこの箇所で支えるため、それによる変形も発生し、さらにコイル9が膨張する際にコイル下のスペーサ35との摩擦による変形も生ずることとなる。
さらに、図21のような状態になっていると、図22に示すように、コイル9における径方向の途中にずりが発生することも考えられる。
つまり、従来の温度分布(温度勾配)を作らないという考えとは全く違い、コイルが巻き締まらないような温度勾配であればそれを許容する、さらに言えば積極的に温度勾配をつくることでコイル欠陥を抑制するという課題を解決できるとの知見を得た。そして、温度勾配をつくるための手段として、本発明においては、コイル支持台の形状を以下のように設定したものである。
(2)また、本発明に係るコイル焼鈍方法は、台部と該台部を支持する脚部を有するコイル支持台上に、円筒状に巻かれたコイルを横に倒した状態で載置し、前記コイルを外側から加熱するコイル焼鈍方法であって、前記脚部を、前記台部の下面側の外周部を囲むように全周に亘って設けられた外側脚部と、該外側脚部の内側に前記外側脚部と所定の空間を介して設けられた壁状の内側脚部を備えて構成すると共に、前記台部に載置された前記コイルの上部の開口部に断熱用の蓋を設置し、前記コイルを外側から加熱する加熱過程において、前記外側脚部と前記内側脚部によって前記コイルの中心部への加熱を遮断することを特徴とするものである。
インナーカバー5の外周部には断熱材11が巻かれ、コイル上部の開口部には断熱用の蓋13が設置されている。
インナーカバー5の外側にはバーナー(図示なし)が設置され、バーナーによる熱放射によってコイル9が加熱される。
本実施の形態のコイル支持台7は、図1に示すように、中央に円形の開口部15aを有する円盤状の台部15と、該台部15の下面側外周部を囲むように全周に亘って設けられた壁状の外側脚部17と、外側脚部17の内側に外側脚部17と所定の空間を介して設けられた壁状の内側脚部19とを備えてなるものである。
本実施の形態のコイル支持台7は外側脚部17と内側脚部19を有しており、加熱の際に放射熱が外側脚部17及び内側脚部19によってある程度遮断される。そのため、コイル9の中心部への熱の伝達が小さくなり、コイル9の径方向の温度勾配が、外側が高く、中央部が低くなる。そのため、従来例ではコイル中心部からコイル外周部に亘る温度勾配に極小値が発生しているが、これがほとんどない状態となる。
したがって、従来例のように加熱の過程でコイル9の外周端部でコイル9全体を支えるような状態にならず、そのような状態になることに起因する数々のコイル欠陥(耳歪み(コイル下部)・鋼板密着等)の発生が抑制される。
さらに、本発明を適用することにより、従来では不可能であった1個のコイル内に発生する特性のばらつきの抑制を達成することが可能となった。これによりさらに高い特性を焼鈍工程において狙うことが可能となり、製品の高品質化も期待できる。
図4はモデル実験に用いたモデルの説明図であり、<モデル1>が従来のコイル支持台33を用いたもの(図4(a))、<モデル2>が外側のみに脚部を設けたコイル支持台21を用いたもの(図4(b))、<モデル3>が本発明のコイル支持台7を用いたもの(図4(c))である。
図5は、冷点温度の推移を示したグラフであり、縦軸が冷点の温度、横軸が加熱時間である。図5のグラフからいずれのモデルも冷点温度の推移には大きな差異はない。もっとも、従来例の方が本発明例よりも放射熱がコイル中央部に入り込みやすいことから冷点温度が若干高めである。
3 外壁
5 インナーカバー
7 コイル支持台
9 コイル
11 断熱材
13 蓋
15 台部
15a 開口部
17 外側脚部
19 内側脚部
21 コイル支持台(比較例)
22 コイル支持台
23 台部
24 コイル焼鈍装置
31 焼鈍炉
33 コイル支持台(従来例)
35 スペーサ
37 断熱材・クッション
39 脚部(従来例)
41 台部(従来例)
Claims (2)
- コイルを横に倒してコイルの端面を載置する台部と該台部を支持する脚部とを有するコイル支持台を備え、前記コイルを外側から加熱するコイル焼鈍装置であって、
前記台部に載置された前記コイルの上部の開口部に設置される断熱用の蓋を有し、
前記脚部が、前記台部の下面側の外周部を囲むように全周に亘って設けられた外側脚部と、
該外側脚部の内側に前記外側脚部と所定の空間を介して設けられた壁状の内側脚部とを備え、
前記空間の上部が前記台部によって覆われていることを特徴とするコイル焼鈍装置。 - 台部と該台部を支持する脚部を有するコイル支持台上に、円筒状に巻かれたコイルを横に倒した状態で載置し、前記コイルを外側から加熱するコイル焼鈍方法であって、
前記脚部を、前記台部の下面側の外周部を囲むように全周に亘って設けられた外側脚部と、該外側脚部の内側に前記外側脚部と所定の空間を介して設けられた壁状の内側脚部を備えて構成すると共に、前記台部に載置された前記コイルの上部の開口部に断熱用の蓋を設置し、
前記コイルを外側から加熱する加熱過程において、前記外側脚部と前記内側脚部によって前記コイルの中心部への加熱を遮断することを特徴とするコイル焼鈍方法。
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JP2010205279A JP5810495B2 (ja) | 2010-09-14 | 2010-09-14 | コイル焼鈍装置及びコイル焼鈍方法 |
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