JP2012041605A - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造工程を増やしたり特別な手段を講じたりすることなく、簡便な方法で、高温仕上焼鈍時におけるコイル下側面端部の形状不良を防止することができる方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
【解決手段】方向性電磁鋼板用鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延し、一次再結晶焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布した後、コイルに巻取り、アップエンド状態で仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を製造する方法において、上記コイル巻き取りの際に、仕上焼鈍時のコイル下側面の形状不良が発生し難い位置に凸部を形成するとともに、上記凸部形成により仕上焼鈍時のコイル上側面に生ずる凸部の一部に平坦部を設けることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【選択図】図6
【解決手段】方向性電磁鋼板用鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延し、一次再結晶焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布した後、コイルに巻取り、アップエンド状態で仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を製造する方法において、上記コイル巻き取りの際に、仕上焼鈍時のコイル下側面の形状不良が発生し難い位置に凸部を形成するとともに、上記凸部形成により仕上焼鈍時のコイル上側面に生ずる凸部の一部に平坦部を設けることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【選択図】図6
Description
本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、具体的には、仕上焼鈍時のおけるコイル変形の少ない方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
冷延鋼板の一種である方向性電磁鋼板は、製鋼工程で所定の成分組成に調整した方向性電磁鋼板用鋼スラブを再加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍し、酸洗し、冷間圧延して所定の最終板厚にした後、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布・乾燥し、コイル状態に巻き取った後、仕上焼鈍を施し、その後、平坦化と絶縁被膜の形成を目的とした平坦化焼鈍を施すことにより製造されるのが一般的である。
上記仕上焼鈍は、二次再結晶や皮膜形成、純化を兼ねて行われるため、高温かつ長時間の熱処理が必要とされる。そのため、冷間圧延後の鋼板の仕上焼鈍は、鋼板をコイル形状に巻き取った後、図1に示すように、箱型焼鈍炉内に、コイルの軸芯を鉛直方向にして載置して(いわゆる「アップエンド」の状態)行われている。しかし、アップエンド状態に載置されときに下側となるコイル側面端部の鋼板は、高温焼鈍により軟化し、コイルの自重でクリープ変形(座屈変形)を起こして形状不良を発生することが知られている。そして、この形状不良部分は、製品とはならないため、スリットして除去せざるを得ず、歩留まり低下の原因ともなっていた。
このような形状不良を防止する方法については、従来から多くの提案がなされている。例えば、特許文献1には、仕上焼鈍前に鋼板に塗布する焼鈍分離剤の量をコイル幅中央部より端部の方を多くすることによって、コイル端部の変形を小さくする技術が開示されている。しかし、この方法は、コイル端部の過剰な焼鈍分離剤による磁気特性の劣化や、被膜欠陥を引き起こしやすいという問題がある。また、特許文献2には、コイルに巻き取る前の鋼帯の一側端部の任意幅を残りの幅と異なる熱処理を行って相対的塑性変形を生じさせ、鋼帯の長さを幅方向で相違せしめた後、これをコイルに巻取り、次いで幅方向での鋼帯の長さの相違により相対的に強い張力で巻き取られたコイルの一側端部をコイル受台に接するようにして箱焼鈍することで、コイル端部における歪の発生を軽減する技術が開示されている。しかし、この方法は、コイルの幅方向の巻き取り張力が変化し巻き取ることが難しくなるため、却ってコイルの形状を悪化させてしまう。
また、特許文献3には、バッチ式焼鈍炉のコイル受台上にセラミック繊維の下敷板を置き、その下敷板上にコイルと同一材質の上敷板を置き、その上敷板上に薄板コイルを載置することで、コイル端部に発生する歪を防止する技術が開示されている。しかし、この方法は、被処理材が珪素鋼の場合、上敷板も同じ珪素鋼を用いる必要があるが、この鋼は熱間強度が低く、高温焼鈍では、コイル端面が敷板に食い込みやすいことから、コイル端部が敷板に拘束され、焼鈍後、コイルを敷板から剥離する際、コイル端部に歪を発生させてしまうという問題がある。また、特許文献4には、バッチ式焼鈍炉のコイル受台とコイルとの間に、コイルより堅く巻いたフープコイルを載置することで、コイル受台と接するコイル端部における歪を軽減する技術が開示されている。しかし、この方法は、フープコイルの座屈変形が大きいため、製品コイルにも歪を発生させたり、フープコイルの頻繁な取替えが必要となったりするため焼鈍コストが上昇するという問題がある。
また、仕上焼鈍時の形状不良(クリープ変形)は、結晶粒界が多いほど起こり易いとの知見に基づき、仕上焼鈍前の結晶粒を大きくしたり、予めコイル下端面側を二次再結晶させておく方法が提案されている。例えば、特許文献5には、仕上焼鈍前のストリップのコイル受台と接する片側縁部の少なくとも2mm幅の平均結晶粒径を15μm以上として仕上焼鈍することで、コイル受台と接するコイル側端部における熱歪の発生を防止する技術が開示されている。しかし、上記側端部の結晶粒は、その後の仕上焼鈍における良好な二次再結晶粒の成長を阻害し、磁気特性の劣化を招くという問題がある。また、特許文献6には、仕上焼鈍に先立って、仕上焼鈍炉のコイル受け台と接する側のコイル端部に局所的な歪を付与し、そのコイル端部をコイル幅方向中央部と同時期またはより早い時期に仕上焼鈍で二次再結晶させることで、コイル受け台と接する側のコイル端部における歪の発生を軽減する技術が開示されている。しかし、この技術は、早期に二次再結晶させた部分のゴス方位への集積度が低く、磁気特性が劣化するという問題がある。
また、特許文献7には、焼鈍分離剤塗布後かつ最終の仕上焼鈍前に、コイルの上部のみを二次再結晶させる予備焼鈍を行い、コイルの外巻から内巻へ10〜20層目における二次再結晶領域と二次再結晶していない領域との境界のコイル上端からの距離を、コイル軸長の1/24以上1/3以下の範囲に調整し、その後、コイルの上下を反転し、上記二次再結晶領域を下にして最終仕上焼鈍を行うことによりコイルの変形を防止する技術が開示されている。
また、特許文献8には、仕上焼鈍におけるコイル外周部下端面に、コイル受け台の上面より高さ7〜13mmの勾配を設けるとともに、コイル全体を定張力で巻き取り、さらに、コイル外周部の落下処理を施して仕上焼鈍し、二次再結晶後、勾配部を上記コイル受け台上に落地させることで、側歪を防止する技術が開示されている。
また、特許文献8には、仕上焼鈍におけるコイル外周部下端面に、コイル受け台の上面より高さ7〜13mmの勾配を設けるとともに、コイル全体を定張力で巻き取り、さらに、コイル外周部の落下処理を施して仕上焼鈍し、二次再結晶後、勾配部を上記コイル受け台上に落地させることで、側歪を防止する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献7の方法は、最終仕上焼鈍前に部分的に二次再結晶させる焼鈍を行う必要があることから、製造工程が複雑化し、製造に要する時間が長くなる等の問題がある。また、特許文献8の技術は、コイル外周部という特定位置に発生する形状不良にしか対応できない他、仕上焼鈍前にコイル外周部に向かって傾斜状の凸部を持つように巻き取る必要があるため、コイルを巻き取ったときのダウンエンド状態(コイル軸芯が水平方向の状態)からアップエンド状態にしたコイルをリフティングマグネットで搬送することができないため、特別な手段が必要となるという問題がある。
上記のように、従来提案された仕上焼鈍におけるコイル端部の歪防止技術は、いずれも実現する上では多くの問題を抱えるものであった。
上記のように、従来提案された仕上焼鈍におけるコイル端部の歪防止技術は、いずれも実現する上では多くの問題を抱えるものであった。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点を解決するために為されたものであって、その目的は、製造工程を増やしたり特別な手段を講じたりすることなく、簡便な方法で、高温仕上焼鈍時におけるコイル下側面端部の形状不良を防止することができる方向性電磁鋼板の製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、方向性電磁鋼板コイルをアップエンド状態で仕上焼鈍するに際して、下側となるコイル側面(以降、「コイル下側面」ともいう)の形状不良が発生し難い部分に凸部を形成してこの凸部でコイル自重を受けるようにするとともに、上記凸部形成により上側となるコイル側面(以降、「コイル上側面」ともいう)に生ずる凸部の一部にリフティングマグネットでの吊り上げを可能とする平坦部を設けてやればよいことに想到し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、方向性電磁鋼板用鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延し、一次再結晶焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布した後、コイルに巻取り、アップエンド状態で仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を製造する方法において、上記コイルに巻き取る際に、仕上焼鈍時のコイル下側面の形状不良が発生し難い位置に凸部を形成するとともに、上記凸部形成により仕上焼鈍時のコイル上側面に生ずる凸部の一部に平坦部を設けることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記コイル上側面の平坦部の面積率をコイル側面積の40〜60%とすることを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記コイル下側面に形成する凸部の面積率を、コイル側面積の40〜60%とすることを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記凹凸の高さを2〜10mmとすることを特徴とする。
本発明によれば、複雑な工程や特別な手段を必要とせず、簡便な方法で仕上焼鈍時のコイル下側面端部における形状不良を防止することができるので、品質向上や歩留向上に大きく寄与する。
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。
方向性電磁鋼板の仕上焼鈍は、一般に、図1に示したような箱型焼鈍炉を用いて行われる。この際、鋼板を巻き取ったコイルは、軸芯が鉛直方向(アップエンド)になるようコイル受台上に載置される。仕上焼鈍は、高温かつ長時間の熱処理であるため、仕上焼鈍中に鋼板が軟化し、アップエンド状態に載置されたコイルの下端部は、コイルの自重でクリープ変形により座屈する。そのため、コイル下側面の端部は形状不良となり、切り捨てざるをえず、歩留低下の大きな要因となっている。特に、鉄損特性向上のため、鋼板板厚の低減が進められている近年では、この形状不良は大きな問題となっている。
方向性電磁鋼板の仕上焼鈍は、一般に、図1に示したような箱型焼鈍炉を用いて行われる。この際、鋼板を巻き取ったコイルは、軸芯が鉛直方向(アップエンド)になるようコイル受台上に載置される。仕上焼鈍は、高温かつ長時間の熱処理であるため、仕上焼鈍中に鋼板が軟化し、アップエンド状態に載置されたコイルの下端部は、コイルの自重でクリープ変形により座屈する。そのため、コイル下側面の端部は形状不良となり、切り捨てざるをえず、歩留低下の大きな要因となっている。特に、鉄損特性向上のため、鋼板板厚の低減が進められている近年では、この形状不良は大きな問題となっている。
コイルの下側面端部の形状不良を防止するには、仕上焼鈍温度を下げることが有効である。しかし、仕上焼鈍条件(温度、時間)は、所定の二次再結晶や被膜形成、純化を正常に行わせて目的とする磁気特性を得るために決定されているものであり、変更することは難しい。
そこで、発明者らは、仕上焼鈍後のコイル下側面端部に発生する形状不良の発生パターンを詳細に調査した。その結果、形状不良の発生パターンは、図2に示したように、コイルの長手方向の発生位置によって、大きく3つに区分できることが明らかとなった。ここで、図2(a)は、コイルの外周側(外巻部)に、(b)は、コイルの内周側(内巻部)に、(c)は、コイルの中央部(中巻部)に形状不良が発生するパターンを示しているが、これらが複合して発生することもある。なお、形状不良が発生する範囲は、鋼種や板厚等によって異なる。
形状不良の発生パターンは、従来、図2(a)のパターンが主であったが、近年における素材成分(鋼成分)の変更や製造条件の改良に伴い、図2(b)や(c)のパターンも増加してきている。そこで、鋼種や鋼板の製造履歴との関係を調査した結果、それぞれの条件に特有の発生パターンがあることがわかってきた。なお、鋼種等によって形状不良の発生パターンが異なる理由は、現在のところ明確にはなっていないが、鋼板の成分組成や、使用するインヒビター成分、製造履歴等によって、鋼板の高温強度や二次再結晶温度、結晶粒の大きさが変化するためと考えられる。
上記のような形状不良パターンが存在するということは、コイルの半径方向の位置によって、コイル自重による形状不良が発生し易い部分と、形状不良が発生し難い部分とが存在することを意味している。また、上記のように、鋼種等によって特有の形状不良パターンが存在することは、それぞれの鋼種等に応じて形状不良対策を講じる必要があることを意味している。そこで、発明者らは、仕上焼鈍前に鋼板をコイルに巻き取る際、鋼種等に特有の形状不良パターンに応じてコイル形状を変化させてやることに想到した。
なお、上記と同様の考えに基づく技術としては、特許文献8に記載の技術がある。この技術は、仕上焼鈍におけるコイル外周部下端面にコイル外周部に向かって傾斜を設けることにより、コイル受台との間に隙間を設けてコイル受台による拘束をなくして形状不良を防止する技術である。しかし、この技術では、図2(a)の形状不良パターンには対応できたとしても、図2(b)あるいは(c)の形状不良発生パターンには対応できない。また、アップエンド状態での上側コイル側面には、リフティングマグネット等で吊り上げる際に必要な、マグネットが接することができる平坦部が存在しないため、コイルのハンドリングができないという問題点がある。
そこで、本発明は、仕上焼鈍前のコイルを巻き取る際に、仕上焼鈍時に下側となるコイル側面(コイル下側面)の形状不良が発生し難い部分に凸部を形成して、この部分でコイル自重を受けるようにする一方、形状不良が発生し易い部分を凹部として、この部分はコイル受台と直接接しないようにするとともに、仕上焼鈍時の上側となるコイル側面(コイル上側面)の凸部(下側となるコイル側面の凹部に対応)の少なくも一部にリフティングマグネットが直接接することができる平坦部を設けてやることで、リフティングマグネットによるハンドリング性を確保しつつ、仕上焼鈍時のコイル自重による形状不良を防止する技術を確立した。
図3は、図2(a)および図2(b)の形状不良パターン、即ち、コイル外周部および内周部に形状不良が発生するパターンに対応したコイル巻取形状を示したものであり、図3(a)は、コイル下側面の径方向中央部に凸部を設けた例のコイル側断面図を、また、図3(b)は、図3(a)の平面図である。なお、図3(b)中のハッチング部は、コイル上側面の凸部(コイル下側面の凹部に対応)であり、その上面は平坦となっているため、リフティングマグネットで吊り上げることが可能である。
なお、図2(a)あるいは図2(b)の形状不良パターンの場合、即ち、コイル外周部あるいはコイル内周部にのみ形状不良が発生するパターンの場合には、上記図3のようにコイル下側面の径方向中央部だけに凸部を形成する必要はなく、例えば、図2(a)のパターンのときには、コイル下側面の径方向中央部〜内周部にかけて、図2(b)のパターンのときには、コイル下側面の径方向外周部〜中央部にかけて、凸部を設けてやればよいことは勿論である。
図4は、図3の変形例であり、仕上焼鈍時に下側となるコイル側面の径方向中央部に設けた凸部を幾つかの凸部に分割して設けた例のコイル側断面図であり、図4(a)は2つの凸部に分割したときのコイル側断面図、図4(b)は、その平面図である。
また、図5は、図2(c)の形状不良パターン、即ち、コイル中央部に形状不良が発生するパターンに対応したコイル巻取形状を示したものであり、図5(a)は、仕上焼鈍時に下側となるコイル側面の外周部および内周部に凸部を設けた例のコイル側断面図を、また、図5(b)は、図5(a)の平面図である。なお、図5(b)中のハッチング部は、コイル上側面の凸部(コイル下側面の凹部に対応)であり、その上面は平坦となっているため、リフティングマグネットで吊り上げることが可能である。
ここで、仕上焼鈍時に上側となるコイル側面の凸部には、リフティングマグネットでの吊り上げを可能とするため、マグネットと接触する十分な面積の平坦部を確保することが必要である。仕上焼鈍時に上側となるコイル側面に設ける平坦部の面積率αは、コイル側面積の40〜60%の範囲とすることが好ましい。面積率αが40%未満では、リフティングマグネットでコイルを安全に吊り上げることができず、一方、60%を超えると下側となるコイル側面の凸部における概ね平坦な部分の面積が40%未満となってしまうからである。したがって、例えば、波形状のスタッガー巻きで凹凸を形成することは平坦部が確保できないため好ましくない。
また、上記図3〜5において示した仕上焼鈍時に下側となるコイル側面に形成する凸部における概ね平坦な部分の面積率βは、コイル側面の面積の40%以上とするのが好ましい。面積率βが40%未満では、凸部に集中するコイルの自重を支えきれないため、却って凸部で形状不良が発生するようになるからである。一方、面積比率βの上限については、形状不良が発生し易い部分を除かれていれば特に制限はないが、リフティングマグネットでの吊り上げに必要な面積率αを確保する観点から60%以下であることが好ましい。
また、図3〜5では、コイル側面の凹凸をステップ状に形成した例を示したが、仕上焼鈍時のコイル上側面におけるマグネットと接触する平坦面の面積率αおよびコイル下側面におけるコイル受台と接する凸部の面積率βを上述した範囲に確保することができる範囲内であれば、ステップ状でなく滑らかに変化させてもよい。
また、コイル側面に設ける凹凸の高さは、2〜10mmの範囲とするのが好ましい。2mm未満では、仕上焼鈍時のクリープ変形等によりコイル側面とコイル受台との接触を回避することが難しく、一方、10mmを超えると、巻き取り時の通板位置調整が著しく困難となるからである。また、コイル下側面の設ける凸部は、面積率αおよびβを上記範囲とすることができる範囲内であれば、図4に示したように、幾つかの凸部に分割してもよい。
なお、鋼板をコイルに巻き取る際、コイル側面に凹凸を形成させる方法については特に制限はないが、例えば、コイルに巻き取る際、CPC(Center Position Control)やEPC(Edge Position Control)を用いて、巻き取りリールのマンドレルを軸芯方向に移動したり、あるいは、巻取リール前の鋼板の幅方向位置を変更したりする方法が好ましく用いることができる。
C:0.07mass%、Si:3.4mass%、Mn:0.07mass%、Al:0.023mass%、N:0.009mass%およびS:0.022mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、板厚が0.23mm、板幅が1100mm、重量が8トン(全長約4000m)の方向性電磁鋼板用冷延鋼板を、一次再結晶と脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍し、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布・乾燥した後、内径508mmφ、外径が約1200mmφのコイルに巻き取った。
なお、上記方向性電磁鋼板は、事前の解析により、コイル外巻部に形状不良が発生し易い、すなわち、図2(a)の形状不良パターンが発生し易い鋼種であることが判っていたため、上記コイルに巻き取るに際しては、発明例のコイルは、コイラーに設置されたCPCを操作して、仕上焼鈍時に下側となるコイル側面の外周側78mmおよび内周側78mmを除く中央部に、図3(a)に示したような、高さが3mmで幅が190mmの凸部を形成し、コイル上側面の凸部平坦面の面積率αを45%、コイル下側面の凸部の面積率βを55%となるように巻き取った。また、比較例のコイルは、コイル側面に凹凸を設けないフラット巻きで巻き取った。
上記形状に巻き取ったコイルは、その後、図2に示した箱型焼鈍炉を用いて、コイル受台上にアップエンドに載置し、水素雰囲気下で900℃×75時間焼鈍する熱処理を施した。なお、上記焼鈍温度は、図2のインナーカバー上部の温度で管理した。
その後、上記焼鈍後のコイルを精整ラインにおいて巻き戻しながら、200m間隔で長さ1200mmの鋼板サンプルを全長にわたって採取し、これらの鋼板サンプルの幅端部(エッジから10mm内側)の実長さを触針式の形状測定器を用いて測定し、鋼板が完全に平坦であったときの鋼板長さ(測定距離)に対する上記測定した実長さの増分を測定距離で除した値を形状不良指数として求めた。この場合、形状不良指数が大きい程、形状不良の程度が大きいことを意味する。
図6は、仕上焼鈍時のコイル外巻から内巻方向に向かって測定された形状不良指数の変化を、発明例のコイルと比較例のコイルとで比較して示したものである。この結果から、従来のフラット巻きでコイルを巻き取った場合には外周部〜コイル全長の1/3程度まで発生していた形状不良が、本発明の方法でコイルを巻き取った場合には1/10程度まで軽減されており、コイル下端部の形状不良を大幅に低減できていることがわかる。
本発明の技術は、方向性電磁鋼板の仕上焼鈍だけでなく、アップエンド状態でコイルを箱型焼鈍(バッチ焼鈍)する全ての焼鈍にも適用することができる。
1:コイル
2:焼鈍炉のコイル受台
3:焼鈍炉のインナーカバー
2:焼鈍炉のコイル受台
3:焼鈍炉のインナーカバー
Claims (4)
- 方向性電磁鋼板用鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延し、一次再結晶焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布した後、コイルに巻取り、アップエンド状態で仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を製造する方法において、上記コイルに巻き取る際に、仕上焼鈍時のコイル下側面の形状不良が発生し難い部分に凸部を形成するとともに、上記凸部形成により仕上焼鈍時のコイル上側面に生ずる凸部の一部に平坦部を設けることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
- 上記コイル上側面の平坦部の面積率をコイル側面積の40〜60%とすることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 上記コイル下側面に形成する凸部の面積率を、コイル側面積の40〜60%とすることを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 上記凹凸の高さを2〜10mmとすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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