JP5803223B2 - 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍用インナーケースと仕上焼鈍方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の仕上焼鈍用インナーケースと仕上焼鈍方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5803223B2
JP5803223B2 JP2011084261A JP2011084261A JP5803223B2 JP 5803223 B2 JP5803223 B2 JP 5803223B2 JP 2011084261 A JP2011084261 A JP 2011084261A JP 2011084261 A JP2011084261 A JP 2011084261A JP 5803223 B2 JP5803223 B2 JP 5803223B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coil
inner case
finish annealing
cylindrical recess
peripheral surface
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011084261A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012219295A (ja
Inventor
啓之 福田
啓之 福田
直樹 中田
直樹 中田
英太郎 設楽
英太郎 設楽
岡田 典久
典久 岡田
正功 奈良
正功 奈良
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2011084261A priority Critical patent/JP5803223B2/ja
Publication of JP2012219295A publication Critical patent/JP2012219295A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5803223B2 publication Critical patent/JP5803223B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)

Description

本発明は、方向性電磁鋼板の仕上焼鈍技術に関するものであり、具体的には方向性電磁鋼板の仕上焼鈍に用いるインナーケースと、そのインナーケースを用いた仕上焼鈍方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、一般に、以下のようにして製造される。まず、製鋼工程で、Siを3mass%程度含有する鋼を溶製し、連続鋳造法等で鋳片(鋼スラブ)とした後、そのスラブを再加熱した後、熱間圧延して熱延板とし、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とし、その後、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してコイルに巻取る。その後、そのコイルを、図2に示したように、コイルの巻取軸が垂直となる、いわゆる「アップエンド」の状態にしてバッチ式の箱型焼鈍炉のコイル置台上に載置し、その上にインナーケース(「インナーカバー」とも称される。)を被せ、さらにその上に加熱炉を被せて、インナーケース外部から内部のコイルを加熱し、仕上焼鈍する。その後、仕上焼鈍後のコイルを巻き戻し、鋼板表面に残された焼鈍分離剤を除去した後、絶縁被膜の塗布・焼付等の各種表面処理や平坦化処理を施して製品(方向性電磁鋼板)とする。
ここで、方向性電磁鋼板の仕上焼鈍に用いる上記インナーケースは、アップエンドに載置した電磁鋼板の素材コイルの所定位置(例えば、コイルの外面側や内面側の所定の位置)を温度管理ポイントとし、その管理ポイントを所定温度まで加熱する加熱過程と、その温度に所定の時間保持する均熱過程および上記均熱温度から所定の温度まで冷却する冷却過程の全ての過程において、電磁鋼板と接触するガスを所定の成分組成の雰囲気ガスとし、加熱炉内の雰囲気から遮蔽することによって、良好な二次再結晶を起こさせると共に、その後の純化を適切に行わせる役目を担うものである。
ところで、従来から、上記のようなインナーケースを用いて方向性電磁鋼板の仕上焼鈍を行うと、加熱過程と冷却過程において、コイル内各位置の温度に大きな不均一が生じることが知られている。そして、この温度不均一に起因して、例えば、加熱、均熱過程では他の部分より高速昇温されて高温となる一方、冷却過程では他の部分よりも急速冷却されるコイル外周部分では、「腹伸び」や「縦じわ」などの形状不良が発生し、一方、他の部分より加熱され難いコイル中巻き部(コイル径方向中央部)では、焼鈍不足となって磁気特性が低下する等の不具合が発生していた。
そこで、コイル内各位置間の温度不均一を改善するインナーケースが幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、インナーカバー側壁の内壁側に断熱材を張り付けることで、コイル端面側の過加熱を防止し、コイルの最外巻き寄りの鋼帯層に発生する「縦じわ」を防止する技術が開示されている。
また、特許文献2には、移動炉床式連続熱処理において、冷却過程の所定温度区間において、被熱処理品に断熱カバーを被せることで、被熱処理品内の冷却むらを抑制し、耳歪(耳伸び)を防止する技術が開示されている。
また、特許文献3には、インナーケースの上部に円筒状の凹部を設けることによって、加熱過程および冷却過程で発生するコイル内温度の不均一を改善し、形状不良や磁気特性の劣化を抑制する技術が開示されている。
特開2006−257486号公報 特開平05−271790号公報 時間2008−195998号公報
しかしながら、特許文献1や2に記載されたコイル外周部の過加熱や過冷却を防止する技術には、以下のような問題がある。例えば、特許文献1に記載のインナーケースを用いる技術では、コイル上部の過加熱を防止することができたとしても、インナーケースの側壁とそれと向かい合うコイル外周面との間の熱の授受が断熱材によって阻害されるため、仕上焼鈍の加熱時間および冷却時間が大幅に延長され、生産性の著しい低下を招く。また、特許文献2に記載の断熱カバーを被せる技術では、冷却帯の所定箇所に断熱カバーを被熱処理品に被せるための装置と、これとは別に、断熱カバーを回収するための装置とを備えることが必要となるため、設備コストの上昇を招く。
一方、特許文献3に記載されたインナーケースでは、上記問題点はないものの、図3に示すように、冷却過程において冷却ノズル6から噴出した冷却ガス7が円筒状凹部8の下部まで到達しないため、円筒状凹部の上部しか冷却されない。そのため、コイル上部側しか温度の不均一分布が改善されず、コイル下部側は、依然として冷却過程で発生する温度の不均一分布によって、形状不良が発生したり、磁気特性の劣化が起こったりする。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、方向性電磁鋼板コイルをバッチ式箱型焼鈍炉を用いて仕上焼鈍する際に発生するコイル内の温度不均一分布を改善し、形状不良および鉄損劣化を効果的に抑制することができる仕上焼鈍用インナーケースと、そのインナーケースを用いた方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法を提案することにある。
発明者らは、大きな設備改善や投資を伴わず、しかも生産性を害することなく、上記課題を解決するべく、加熱過程および冷却過程で生じるコイル内温度の不均一分布を改善する方法について鋭意検討した。その結果、引用文献3に記載されたインナーケースに設けられた円筒状凹部を改善し、従来の円筒状凹部を構成する外管とその内部に設けた内管とからなる2重管構造として、冷却ガスの流れを制御してやることによって、加熱過程および冷却過程におけるコイル内温度の不均一分布を大幅に軽減し得ることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、加熱炉の上方に設けられた冷却ノズルからインナーカバーの上面に冷却ガスを噴出してコイルを所定の温度まで冷却するバッチ式箱型焼鈍炉で方向性電磁鋼板の素材コイルを仕上焼鈍する際、アップエンドに載置したコイルに被せるインナーケースにおいて、インナーケース上面中心部にコイルの内周面と対向する外管と、その内側に内管を配設した2重管構造の円筒状凹部を有し、上記円筒状凹部の内管の上端に、円筒状凹部の内径以上の遮蔽板を設けてなることを特徴とする仕上焼鈍用インナーケースである。
本発明の仕上焼鈍用インナーケースは、上記円筒状凹部の外管の外径がコイル内径の0.3倍以上、かつ上記外管とコイル内周面との間の距離が50mm以上であることを特徴とする。
また、本発明の仕上焼鈍用インナーケースは、上記円筒状凹部の内管の内側断面積が、円筒状凹部の内側断面積の0.3〜0.7倍であることを特徴とする。
また、本発明は、上記のいずれかに記載のインナーケースを用いて仕上焼鈍することを特徴とする方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法である。
本発明によれば、方向性電磁鋼板の仕上焼鈍時に発生するコイル内温度の不均一分布を軽減することができるので、温度の不均一分布に起因して生じる形状不良や磁気特性の劣化を抑制することが可能となるので、方向性電磁鋼板の品質向上、歩留まり向上に大きく寄与する。
本発明に係るインナーケースを説明する縦断面図である。 従来のインナーケースを説明する縦断面図である。 特許文献4に記載のインナーケースの問題点を説明する図である。 従来のインナーケースを用いたときの加熱過程におけるコイル半径方向の温度分布を説明する模式図である。 従来のインナーケースを用いたときの冷却過程におけるコイル半径方向の温度分布を説明する模式図である。 従来のインナーケースを使用したときの加熱過程で、コイル内面のA点の加熱に寄与する輻射熱を説明する模式図である。 本発明のインナーケースを使用したときの加熱過程で、コイル内面のA点の加熱に寄与する輻射熱を説明する模式図である。 本発明のインナーケースを使用したときの冷却過程における冷却ガスの流れを説明する模式図である。 本発明のインナーケースの円筒状凹部の外径寸法が、冷却過程におけるコイル半径方向の温度分布に及ぼす影響を説明する横断面図である。 加熱過程におけるコイル半径方向の温度分布を、従来のインナーケースと本発明のインナーケースとで比較して説明する図である。 冷却過程におけるコイル半径方向の温度分布を、従来のインナーケースと本発明のインナーケースとで比較して説明する図である。
まず、本発明の基本的技術思想について説明する。
方向性電磁鋼板の仕上焼鈍に用いるバッチ式の箱型焼鈍炉には、一般に、燃焼ガスを噴き出すバーナー式の加熱炉が採用されている。そして、このバーナーによって、炉床上に載置したインナーケース内に載置されたコイルが、所定の均熱温度まで加熱され(加熱過程)、その均熱温度に所定の時間保持され(均熱過程)る。上記加熱、均熱過程終了後のコイルは、その後、上記加熱炉の上方に設けられた冷却ノズルからインナーカバーの上面に噴出される冷却ガスによって、所定の温度に到達するまで冷却(冷却過程)される。
そこで、上記箱型焼鈍炉を用いて方向性電磁鋼板の素材鋼板コイルを仕上焼鈍する際、図2に示したように、従来のインナーケースを用いたときに、コイル半径方向に発生するコイル内の温度分布について説明する。
上記仕上焼鈍においては、一般に、インナーケース内のコイル半径方向の所定位置を温度管理ポイントと設定し、そのポイントの測温値と、予定の焼鈍サイクルと対比することで、バーナーから噴き出す燃焼ガスの燃焼制御が行われている。この燃焼ガスは、焼鈍炉(加熱炉)の炉内雰囲気となっている。
一方、インナーケース内の雰囲気は、鋼板の酸化を抑制すると共に、好ましい二次再結晶等を起こさせるため、上記炉内雰囲気とは別の還元性雰囲気に制御・保持されている。
そのため、図2に示した従来のインナーケースを用いて仕上焼鈍する際におけるコイルへの熱の授受は、主にインナーケースの側面および上面からの輻射熱によって行われる。したがって、加熱過程および均熱過程の前半では、コイル外周面側、コイル上側面側、次いでコイル内周面側の順に昇温され、その後、熱伝導によってコイル内部に熱が供給されて、コイル半径方向中央部(以降、「中巻部」とも称する。)およびコイル下側面側の昇温が進むことになる。その結果、コイル半径方向における温度分布は、図4に示すように、コイル外周面側が最も高く、次いで内周面側となり、中巻部が最も低い温度となる。このようなコイル半径方向の温度分布となると、コイル中巻部の熱膨張量より、コイル内周面側の熱膨張量の方が大きくなるため、コイル内周面側の鋼板にはコイル半径方向に大きな圧縮応力が発生する。
一方、従来のインナーケースを用いたときの、冷却過程においてコイル半径方向に発生するコイル内温度分布を説明する。
先述したように、均熱過程後の冷却過程では、加熱バーナーを消火後、加熱炉上部の冷却ノズルからインナーケース上部に冷却用ガスを吹き付けてコイルを冷却している。そのため、この冷却過程では、まず、インナーケースの温度が低下し、次いで、コイル外周面側、コイル上側面側、コイル内周面側の順に温度が降下し、その後、熱伝導によってコイル中巻部およびコイル下方側(下側面)の降温が進む。その結果、コイル半径方向における温度分布は、図5に示すように、コイル中巻部が最も高く、次いでコイル内周面側で、コイル外周面側が最も低いという温度分布となる。このようなコイル半径方向の温度分布となると、コイル中巻部の熱収縮量より、コイル外周面側の熱収縮量の方が大きくなるため、コイル中巻部の鋼板にはコイル半径方向に大きな圧縮応力が発生する。
そして、発明者らの研究によれば、上記加熱過程および冷却過程において、コイル内周面部やコイル中巻部に発生する圧縮応力は、「耳延び」や「縦じわ」等の形状不良を引き起こすのみならず、磁気特性(鉄損)の劣化をも引き起こす原因となっていることが明らかとなった。圧縮応力によって鉄損特性が劣化する原因は、圧縮応力が大きくなると、コイル層間距離が縮まって、インナーケース内の雰囲気ガスが鋼板間に十分に流れなくなるため、二次再結晶や純化に悪影響を及ぼすためと考えている。したがって、仕上焼鈍時に発生する圧縮応力はいずれの過程においても極力低減する必要がある。
そこで、発明者らは、上記仕上焼鈍時に発生する圧縮応力を軽減する方法について検討を重ねた結果、特許文献3に開示された仕上焼鈍用インナーケースを改造し、図1に示すように、インナーケース上面中心部に設けた円筒状凹部を、コイル内周面と対向する外管と、その内側に内管を配設した2重管構造とし、コイル内周面側の加熱速度を低減し、冷却速度を高めることで、圧縮応力を解消または低減することに成功した。
以下、具体的に説明する。
従来のインナーケースを用いた仕上焼鈍の加熱過程では、図6示すように、コイル内周面側は、インナーケース上面からの輻射熱によって加熱される。すなわち、従来のインナーケースでは、コイル内周面のA点は、図6に示したインナーケース上部のB〜B´の部分からの輻射熱によって加熱される。そして、このB〜B´の部分は、加熱炉内壁のC〜C´の部分から輻射熱で加熱される。
これに対して、特許文献3のインナーケースを用いた仕上焼鈍における加熱過程では、図7示すように、コイル内周面はインナーケースの円筒状凹部からの輻射熱によって、加熱される。すなわち、特許文献3のインナーケースでは、コイル内周面のA点は、図7に示すインナーケースの円筒状凹部(外管)のD〜D´の部分からの輻射熱によって加熱される。そして、このD〜D´の部分の加熱は、焼鈍炉内壁のE〜E´の部分からF〜F´の部分を介して行われるため、実質F〜F´の部分の輻射熱によって加熱されることになる。このF〜F´の部分は、図6に示したB〜B´部分より狭い。そのため、加熱炉の内壁温度が同じである場合には、図6に示す従来のインナーケースよりも、図7に示す特許文献3のインナーケースの方がコイル内周面の温度は上昇し難くなる。さらに、本発明のインナーケースでは、円筒状凹部が外管と内管からなる2重管構造であるので、加熱炉内壁の輻射熱は、円筒状凹部内管、外管、コイル内周面の順に伝わるため、コイル内周面の加熱はさらに緩やかになる。その結果、加熱過程においては、コイル内周面側と中巻部との温度差が低減され、熱膨張量の差も小さくなるため、コイル内周面側に生じるコイル半径方向の圧縮応力が低減される。
一方、従来のインナーケースを用いた仕上焼鈍の冷却過程では、図2に示すように、冷却ガスによってインナーケース上面を冷却することよって、コイル内周面側からの輻射熱を吸収している。これに対して、本発明のインナーケースを用いた仕上焼鈍の冷却過程では、図8に示すように、冷却ガスは、円筒状凹部の外管の内側に設置された内管を通って下降し、円筒状凹部の底部で反転し、内管と外管との間を通って上昇し、内管に設置された遮蔽板とインナーケース上面との間を通ってコイル外周面側にスムーズに流れるため、冷却ガスは円筒状凹部の外管を効率よく冷却することができる。また、流出した冷却ガスは、円筒状凹部の外管を冷却した分だけ温度が上昇した後、インナーケースの側壁部分を冷却するため、コイル外周面側の冷却が穏やかになる。したがって、本発明のインナーケースを用いた場合には、円筒状凹部の外管が最初に冷却されてコイル内周面側の輻射熱を吸収するので、コイル内周面側が最も冷却され、次いで、コイル外周面、その後、熱伝導によりコイル中巻部が冷却されることになる。そして、このような冷却では、コイル内周面側の熱収縮量が最も大きくなるため、コイル中巻部によるコイル内周面への圧縮応力は発生しなくなる。さらに、コイル外周面側の冷却も、従来よりも緩冷却となるため、やはり、冷却過程でコイル中巻部に発生する圧縮応力も緩和されることになる。
上記のように、本発明に係るインナーケースは、加熱過程においてコイル内周面側に発生する圧縮応力だけでなく、冷却過程においてコイル内周面側およびコイル中巻部に発生する圧縮応力を解消あるいは軽減することができるので、圧縮応力に起因して発生する形状不良や磁気特性の劣化を大幅に改善することができる。
なお、本発明に係るインナーケースは、その効果をより効果的に発現させるためには、鋼板コイルの内径Dに対する円筒状凹部の外管の外径Dと比(D/D)が0.3以上であるとともに、コイル内周面と上記外管との間の距離が50mm以上であることが好ましい。
というのは、コイル内周面を冷却する能力は、円筒状凹部の温度が同じ場合、コイル内周面の面積と、外管の面積の比、したがって、コイルの内径Dに対する円筒状凹部外管の外径Dと比(D/D)で決定されるからである。すなわち、図9に示すように、(D/D)が大きいほど、コイル内周面のP点からの輻射熱が、円筒状凹部外管に流れる範囲が広くなるので、コイル内周面からの輻射熱を効率よく吸収できる。しかし、(D/D)が0.3未満では、コイル内周面から放散される輻射熱のうち、円筒状凹部の外管表面が受ける輻射熱の割合は19%未満となり、コイル内周面の冷却効率が著しく低下する。よって、(D/D)は0.3以上が好ましい。
また、円筒状凹部外管とコイル内周面との間の距離が50mm未満では、インナーケースをコイルに被せる際、円筒状凹部がコイルと接触を起こして破損するおそれがある。
また、本発明の仕上焼鈍用インナーケースは、上記円筒状凹部の内管の内側断面積が、円筒状凹部の内側断面積の0.3〜0.7倍であることが好ましい。
というのは、円筒状凹部内管の内側断面積が、円筒状凹部の内側断面積の0.3倍未満では、内管を通る冷却ガスの流量が少なくなり、円筒状凹部の外管を十分に冷却できないため、冷却効率が低下してしまう。一方、円筒状凹部の内管の内側断面積が、円筒状凹部の内側断面積の0.7倍より大きくなると、内管と外管との間の流路面積が小さくなり、やはり冷却ガスの流量が減少して、円筒状凹部の外管を十分に冷却できなくなるからである。
また、本発明の仕上焼鈍用インナーケースは、上記円筒状凹部の内管上端に、水平方向に遮蔽板(邪魔板)を設け、円筒状凹部に流入する冷却ガスと凹部から流出する冷却ガスとが交錯しないよう、流れを制御するのが好ましい。また、この遮蔽板の設置により、冷却ノズルから噴射した冷却ガスが、円筒状凹部の内管にスムーズに流れ込むので、冷却能力がより高くなるという効果も得られる。なお、遮蔽板の直径は、円筒状凹部の内径以上とするのが好ましい。
Siを3mass%含有し、板厚:0.3mm×板幅:1160mm×長さ:3000m(約8.2トン)に冷間圧延した電磁鋼板素材コイルを一次再結晶焼鈍した後、焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、コイルに巻き取り、その後、そのコイルをバッチ式箱型焼鈍炉にアップエンドに載置し、下記表1に示した条件で仕上焼鈍を施した。その際、コイル高さ方向(板幅方向)中央位置でコイル半径方向における、仕上焼鈍時の温度分布を測定した。
また、上記仕上焼鈍では、図1に示した2重管構造の円筒状凹部を有するインナーケース(発明例)と、図2に示した従来のインナーケース(比較例)の2種類のインナーケースを用いた。
Figure 0005803223
上記仕上焼鈍を施したコイルは、その後、巻き戻して、絶縁被膜の塗布・焼付と形状矯正を行う平坦化焼鈍を施した後、切断して切り板(シート)とした。この際、コイル巻き戻し時に、コイル長さ方向の鋼板形状(耳伸び、中伸び)を非接触のレーザー変位計にて測定し、板幅方向の鋼板高さの変動量が5mm以上ある部分を形状不良部と判定し、その長さを求めた。
また、コイル外周部、中巻部および内周部の切り板からサンプルを採取し、エプスタイン試験で鉄損W17/50を測定してコイル長さ方向の鉄損分布を求め、鉄損の最良部と最劣部の鉄損差を求めた。
図10は、加熱過程で、コイル外周面の温度管理ポイントが900℃に達した時点におけるコイル半径方向の温度分布を、図11は、冷却過程で、コイル外周面の温度管理ポイントが800℃まで冷却した時点におけるコイル半径方向の温度分布を、発明例と比較例とで比較して示したものである。また、表2には、発明例と比較例のコイル内の鉄損差、および、形状不良部の長さの測定結果を示した。
Figure 0005803223
これらの結果から、従来のインナーケースを用いた比較例では、加熱過程におけるコイル内温度分布および冷却過程におけるコイル内温度分布に起因して、形状不良部の長さが200m発生し、コイル内の長さ方向の鉄損にも0.02W/kgの変化が認められている。
これに対して、本発明に係るインナーケースを用いた発明例では、加熱過程におけるコイル内周面側の温度上昇が抑制され、一方、冷却過程におけるコイル内周面側が急速に冷却される結果、コイル内に発生する圧縮応力が解消あるいは軽減され、その結果、コイル内の温度分布に起因する形状不良部の長さが15mとなり、鉄損のコイル内変動もほぼ無くすことができた。
本発明の技術は、方向性電磁鋼板の仕上焼鈍に用いるインナーケースに限定されるものではなく、例えば、一般的な冷延鋼板や熱延鋼板の焼鈍に用いるインナーケースにも適用することができる。
1:鋼板コイル
2:コイル置台
3:インナーケース(インナーカバー)
4:焼鈍炉の加熱炉
5:バーナー
6:冷却ノズル
7:冷却ガス
8:円筒状凹部(外管)
9:円筒状凹部内管)
10:遮蔽板
D1:コイル内径
D2:円筒状凹部の外管径

Claims (4)

  1. 加熱炉の上方に設けられた冷却ノズルからインナーカバーの上面に冷却ガスを噴出してコイルを所定の温度まで冷却するバッチ式箱型焼鈍炉で方向性電磁鋼板の素材コイルを仕上焼鈍する際、アップエンドに載置したコイルに被せるインナーケースにおいて、インナーケース上面中心部にコイルの内周面と対向する外管と、その内側に内管を配設した2重管構造の円筒状凹部を有し、上記円筒状凹部の内管の上端に、円筒状凹部の内径以上の遮蔽板を設けてなることを特徴とする仕上焼鈍用インナーケース。
  2. 上記円筒状凹部の外管の外径がコイル内径の0.3倍以上、かつ上記外管とコイル内周面との間の距離が50mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の仕上焼鈍用インナーケース。
  3. 上記円筒状凹部の内管の内側断面積が、円筒状凹部の内側断面積の0.3〜0.7倍であることを特徴とする請求項1または2に記載の仕上焼鈍用インナーケース。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のインナーケースを用いて仕上焼鈍することを特徴とする方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法。
JP2011084261A 2011-04-06 2011-04-06 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍用インナーケースと仕上焼鈍方法 Active JP5803223B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011084261A JP5803223B2 (ja) 2011-04-06 2011-04-06 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍用インナーケースと仕上焼鈍方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011084261A JP5803223B2 (ja) 2011-04-06 2011-04-06 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍用インナーケースと仕上焼鈍方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012219295A JP2012219295A (ja) 2012-11-12
JP5803223B2 true JP5803223B2 (ja) 2015-11-04

Family

ID=47271146

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011084261A Active JP5803223B2 (ja) 2011-04-06 2011-04-06 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍用インナーケースと仕上焼鈍方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5803223B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013100191A1 (ja) * 2011-12-28 2013-07-04 Jfeスチール株式会社 コイル用バッチ焼鈍炉
WO2016139818A1 (ja) * 2015-03-05 2016-09-09 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板およびその製造方法
CN109402343A (zh) * 2019-01-02 2019-03-01 张家港逸臣钢管有限公司 一种用于钢管生产的热处理设备
CN117025921A (zh) * 2023-08-15 2023-11-10 杭州金山仪表阀业有限公司 一种用于阀体热时效处理的内外双层退火装置

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4512812Y1 (ja) * 1967-12-30 1970-06-03
JPS4431204Y1 (ja) * 1967-12-14 1969-12-23
JPS4520727Y1 (ja) * 1968-01-20 1970-08-19
JP2008195998A (ja) * 2007-02-13 2008-08-28 Jfe Steel Kk 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法およびそれに用いるインナーケース

Also Published As

Publication number Publication date
JP2012219295A (ja) 2012-11-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10072318B2 (en) Rapid heating apparatus of continuous annealing line
KR101667188B1 (ko) 방향성 전기 강판의 제조 방법
JP5130733B2 (ja) 連続焼鈍設備
JP5803223B2 (ja) 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍用インナーケースと仕上焼鈍方法
JP2006257486A (ja) 方向性電磁鋼板の焼鈍方法及び方向性電磁鋼板のバッチ焼鈍用インナーカバー
JP2008195998A (ja) 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法およびそれに用いるインナーケース
JP5839177B2 (ja) 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍設備と仕上焼鈍方法
JP6210035B2 (ja) 鋼板コイルのバッチ焼鈍方法
JP6024922B2 (ja) 仕上焼鈍後コイルの冷却方法
JP2013204113A (ja) 鋼板コイルの熱処理設備
KR101490600B1 (ko) 선재 제조방법
JP5825486B2 (ja) 鋼板コイルの焼鈍方法および焼鈍設備
KR101417590B1 (ko) 재질편차가 적은 용접봉용 선재의 제조방법 및 이에 의해 제조된 용접봉용 선재
JP2693690B2 (ja) 一方向性電磁鋼板コイルの搬送方法およびその装置
KR101239460B1 (ko) 마르텐사이트계 스테인리스강의 제조방법
JP2003166018A (ja) 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法
JP2020534440A (ja) 熱間圧延インライン移動保温熱処理プロセス及び熱処理ライン
JP5906816B2 (ja) 金属帯コイルの焼鈍方法および焼鈍炉
JPS60221521A (ja) 一方向性珪素鋼板の仕上焼鈍方法
JP2703695B2 (ja) 薄物方向性電磁鋼板の製造方法
KR100328070B1 (ko) 특수용접봉선재의제조방법
RU2280701C1 (ru) Способ отжига холоднокатаных полос
JP5724255B2 (ja) コイル焼鈍装置及びコイル焼鈍方法
JP2012041605A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5741014B2 (ja) コイル焼鈍装置及びコイル焼鈍方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140220

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150303

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150430

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150804

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150817

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5803223

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250