JP5724255B2 - コイル焼鈍装置及びコイル焼鈍方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄板状のものを巻き取りコイル形状としたコイルの焼鈍を行うコイル焼鈍装置及び方法に関する。
近年、環境対策のため、鋼材の更なる高特性化を行うことで、種々の機器の軽量化および小型化を図ることが成されている。例えば自動車分野においては、衝突に対する強度を高くして安全性を確保すると同時に軽量化を施して燃費を上げて排出ガスを低減することにより環境への対応も図る必要がある。加えてコストも下げなければならないというそれぞれ相反する要求が高まりつつある。それらに対する回答の一つして、鋼板のハイテン化を含めた特性改善方法が重要な課題となっている。また、機能性材料としての電磁鋼板にしても同様に種々の機器に使用しようとした場合、軽量化ひいては小型化の問題が切り離せなくなっている。このような課題に対して、電磁特性の改善が必須となってくる。
電磁特性の改善方法のひとつとして、バッチ焼鈍による特性改善がある。例えば、自動車および家電に多く使用されている冷延鋼板を成形する際に発生することもあるストレッチャーストレインの不具合や、缶を成形する際に発生することのあるフルーティング現象等を改善するために、焼鈍と調質圧延を行うことによりその現象を回避することができる(ぶりきとティンフリースチール:(株)アグネ 東洋鋼鈑社編)。
ただし、焼鈍をどのようにして行うかによって調質圧延およびその後の歪み時効が変化してくる。すなわち、バッチ焼鈍か連続焼鈍かで目的とすることが異なってくる。バッチ焼鈍は加熱・均熱時間を長く採る事ができるため、固溶してある炭素Cや窒素N等を析出させやすく、そのため軟質化が得やすく、また時効効果が小さい特性を有する鋼板を得ることができる。連続焼鈍においてはその逆となる。
また、電磁鋼板においてバッチ焼鈍は非常に重要な役割を果たす。電磁鋼板においてバッチ炉に置ける焼鈍では単なる固溶元素の析出のみならず、再結晶化を行わせ、本来の目的である電磁鋼板の特性を得る欠くべからざる製造工程である。
このように、バッチ焼鈍炉における焼鈍はいずれにおいても省略もしくは他の手段に替えることのできない製造工程である。
しかしながら、焼鈍によって得られたコイルには、若干の欠陥(耳伸び(コイル上部)・耳歪み(コイル下部)・腹伸び・縦じわ等、さらに特定の相変態を伴う特性向上が図られない等の特性低下の欠陥)が含まれていた。そのため、その欠陥コイルを鋼材として使用するためには、形状欠陥に対してはリコイリングラインにおける欠陥検知システムおよびテンションレベラーを通すことにより、欠陥摘出および欠陥カット、さらに形状を補正して製品として使用できるようにしている。
このため、製品化するために歩留まりの低下と生産効率の低下、さらに検査および形状補正に伴う大きなコストが問題となっていた。
また、特性向上に対して、設定以上の特性が得られない場合には、劣化部分を切り捨てて使用している。そのため、検査ラインを通し、マーキングとオンライン切捨てを実施して、コイルの再度巻き取りを実施しなければならない。そのため、製品合格率、生産率、また再度ラインを通して特性測定をしながらコイルを巻き取るため、それを実施するコストが上乗せされるため非常に大きなコスト増加となる。
このようなバッチ式の焼鈍炉における種々のトラブルに対しては、以下のような対策が提案されている。
例えば、特開昭59-35635号公報においては、コイル内部に発生する欠陥を観察して、それらの欠陥にたいする対策を実施している。コイルの外周側下部に発生する欠陥を低減するため、板厚の異なるコイルを溶接し、外側に厚い板厚、内側に薄い板厚がくるようにリコイリングし、ひとつのコイルとしてから焼鈍を実施するようにしている。
また、特開平5-287390号公報に開示されている内容によれば、コイルの鋼板の密着と巻き緩みについて解決を図ろうと開発を実施した経緯と対策が記されている。これによれば、冷却時の温度差をうまくとることで密着および巻き緩みを防止しようとしている。
また、特開平5-295453号公報にはバッチ炉の構造をインナーカバー付の二重構造として冷却速度の温度条件を5.0〜15.0℃/Hrとすることで、焼きつき疵の問題を解決している。
これらに対して特開2006-274343号公報、特開2006-257486号公報においては焼鈍炉において焼鈍中に発生するコイル欠陥およびその対策が述べられている。
特開2006-274343号公報では、コイルのバックリングについてコイルの内側にカバーを行い、防止する方法が述べられている。
また、特開2006-257486号公報ではコイルに発生する欠陥に対して炉内を均一温度分布とすることで解決することが述べられている。その際に、炉のインナーカバーを断熱材にて覆うもしくは内張りすることで均一な温度分布を与えるように加熱を実施している。
これらの対策により、コイルに発生する欠陥が低減している。
特開昭59-35635 特開平5-287390 特開平5-295453 特開2006-274343 特開2006-257486
特許文献1(特開昭59-35635号公報)の方法では、コイルを焼鈍する際には必ず厚い板厚と薄い板厚を有するコイルを準備する必要があり、非常に効率が悪くなる。さらにリコイリングも実施しなければならず、工程が煩雑になるだけでなく、コストにもかかわってくる。
また、特許文献2(特開平5-287390号公報)の方法は、冷却時の温度差をうまくとることで密着および巻き緩みを防止しようとしているが、実際には欠陥は加熱・均熱時にも発生しており、冷却時のみではなく根本的な解決にはならない。
また、特許文献3(特開平5-295453号公報)は、バッチ式の焼鈍炉の構造をインナーカバー付の二重構造として冷却速度の温度条件を5.0〜15.0℃/Hrとすることで、焼きつき疵の問題を解決しているが、冷却の際の温度降下がかなり遅く、効率の面を考慮すると工業化は難しいという問題がある。
また、特許文献4(特開2006-274343号公報)では、コイルの内側にカバーを行い、コイルのバックリングを防止する方法が述べられているが、コイルのカバーによる座屈についても温度分布についての影響が不明であり、完全にコイル欠陥が低減するかどうかは不明である。
また、特許文献5(特開2006-257486号公報)では、炉のインナーカバーを断熱材にて覆うもしくは内張りすることで炉内を均一温度分布するようにしているが、断熱材が張られているインナーカバーの加熱に際して、最適なコイル温度分布が得られているかどうかは不明である。そのため、この対策により完全にコイル欠陥が低減するかどうかは不明である。
従来のバッチ焼鈍において、焼鈍時にコイルに種々の欠陥(耳伸び・耳歪み・縦じわ等)が発生しており、それらについて、上記特許文献1〜4により解決が図られている。
しかしながら、抜本的な解決策はなく、また解決策はあっても実施するにはさらなる生産効率の低下およびコスト高を招く結果となっている。そのため、欠陥発生による非効率およびコスト高をとるか、開示された公開特許文献に示されている対策により欠陥の低減を図るが同時に非効率およびコスト高を取るかの二者択一の状態となっているのが現状である。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、コイルの焼鈍時に発生するコイル欠陥を低減すると共に生産性を確保しつつさらにコスト面からも問題ない技術を提供することを目的としている。
従来例においてはコイルに生ずる欠陥低減の基本的な考え方は、欠陥発生の原因が炉内温度不均一にあると考え、炉内温度を測定し、炉内温度分布を得て、その分布を低減するように加熱法を工夫したり、あるいは炉の外壁構成を変更したりしていた(例えば、特許文献3、4参照)。
しかしながら、炉内温度分布の低減を図ったとしても欠陥が発生する場合があり、そのため欠陥除去のための製造工程を完全にはなくすことができず、結局生産ラインおよびコストを下げることができなかった。
そこで、発明者は、欠陥発生の原因について詳細に調査を実施し、原因を特定することを試みた。詳細調査のため、炉内温度の他、コイル内部およびコイルを保持しているサポート台等まで熱電対により温度測定を実施した。また、同時に伝熱計算を実施し、熱電対によって測定できない部分についても温度分布を求め、それらのコイルへの影響を測定した。
図16、図17は従来の焼鈍炉41の説明図であり、図16はインナーカバーの一部を切断面にして示し、図17は全断面を示している。また、図18は図17の一部を拡大して示す拡大図である。さらに、図19は、コイル支持台の説明図であり、一部を切断面で示している。
従来の焼鈍炉41は、コイル支持台7の上に断熱材からなるスペーサ20を介してクッション材21が設置され、その上にコイル9が横向きの状態で載置されている。そして、コイル9及びコイル支持台7を覆うようにインナーカバー5が設置されており、インナーカバー5の外周部には断熱材11が設置されている。また、コイル9の上端部には蓋13が設置されている(図17参照)。
コイル支持台7は、図18、図19に示すように、円筒状の脚部17と該脚部17の上部に設けられたコイル9を支持するドーナツ状の載置部15とを有している。つまり、支持台の全体形状は、中心部に貫通孔19を有し、径方向断面が略T字状をしている。
上記のように構成された焼鈍炉41においては、炉内をバーナ等(図示なし)で加熱することで、放射熱によってインナーカバー5が加熱され、その輻射熱でコイル9が加熱される。
発明者は上記の焼鈍炉41において、前述したように熱電対を用いて温度分布を詳細に調査した。それと共に解析モデルを用いて伝熱計算を実施した。
図20が解析モデルの説明図であり、中心線の片側のみを図示している。解析モデルは、図16、図17に示した従来型の焼鈍炉41と同形状とし、インナーカバー5の周面に断熱材11を設置し、またコイル支持台7上にクッション材21を設置し、さらにコイル9の上面にコイル9の孔を覆うように断熱材からなる蓋13を設置している。
コイル形状は、20tonコイルで、内径1000mmφ×コイル幅1150mmHである。支持台の下部には炉床ヒータを設置した。
解析結果を図21〜図24に基づいて説明する。図21は、径方向(r方向)の圧縮応力を示すグラフであり、縦軸が応力(MPa)、横軸が加熱時間t(Hr)を示している。図21に示すように、加熱開始から約25時間経過した時点でr方向の圧縮応力のピークが発生している。
図22は周方向(θ方向)の圧縮応力を示すグラフであり、縦軸が応力(MPa)、横軸が加熱時間t(Hr)を示している。図22に示すように、加熱開始から約25時間経過した時点でθ方向の圧縮応力のピークが発生している。
図23は、応力ピーク時の温度分布を示す図である。図23から分かるように、応力ピーク時には、コイル下部におけるコイル9の中心部から外周側に少し入った部位の温度が最も低くなっていることが分かる。
また、図24は応力ピーク時における応力分布を示す図であり、図24から分かるように、応力ピーク時には、r方向、θ方向共にコイル9の中心部と外周部との間に大きな応力分布が生じていることが分かる。
以上の伝熱計算の結果及び熱電対での温度分布測定の結果から、従来は単純な温度分布に起因する熱変形により耳伸び(コイル上部)・耳歪み(コイル下部)・腹伸び・縦じわ等が発生していると考えられたが、それらは単純な温度分布にみに起因して発生しているのではないことが明らかとなった。
発明者はコイル9の加熱過程に発生する欠陥の原因を以下のように考察した。
コイル9の径方向の中心部から外周側に少し寄った位置に温度の最も低い点(冷点)が存在する(図23参照)。そのため、コイル9の径方向の温度勾配は、中心部から外周側に向かって順次高くなるのではなく、中心部近くに極小値を持つことが分かる。温度勾配に極小値が存在するため、コイル9は加熱時の膨張の過程において、コイル9の冷点近くで巻き締まりの現象が生じ、これによって応力が発生していると考えられる。
そして、このような巻き締まりの現象が生ずることで、以下のような状況が生ずると考えられる。
バッチ炉の炉壁およびインナーカバー5等の外側から加熱されて、熱放射によってコイル9が加熱されるため、最初にコイル外周部分の温度が上昇することとなる。そのため、加熱時には、コイル外周部が内周部に比較して熱膨張が大きくなる。そして、コイル9に巻き締まりが生ずると、隣接する板同士が自由に動けないので、図25に示されるように、熱膨張の大きいコイル外周部の下端部でコイル全体を持ち上げて保持しているような状態となる。
また、コイル外周下端部が外側に膨らむことにより、単に膨張による耳歪みとなるだけでなく、コイル9の重量をこの箇所で支えるため、それによる変形も発生し、さらにコイル9が膨張する際にコイル下のスペーサ20との摩擦による変形も生ずることとなる。
さらに、図25のような状態になっていると、図26に示すように、コイル9における径方向の途中にずりが発生することも考えられる。
また、コイルの冷却時には、放射冷却によりコイル9が冷却されるので、コイル9の外周部から冷却されることになる。そのため、加熱時とは逆に、図27に示すように、コイル9の外周部が先に収縮しコイル9の内周部によってコイル9を支えるような状態が発生する。コイル冷却時にこのような状態になっていると、コイル加熱時と同様に、図28に示すように、コイル9における径方向の途中にずりが発生することも考えられる。
以上の考察から、発明者はコイルの加熱時及び冷却時においてコイルの径方向の部位において、巻き締まりが生じない状況をつくることで、上記のような現象が防止できると考えた。
つまり、従来の温度分布(温度勾配)を作らない緩やかな加熱及びコイル昇温という考えとは全く違い、コイルが巻き締まらないような温度勾配であればそれを許容する、さらに言えば積極的に温度勾配をつくることでコイル欠陥を抑制するという課題を解決できるとの知見を得た。これにより高品質の確保と同時に生産性を確保できる。そして、温度勾配をつくるための手段として、本発明においては、コイルの中心部を積極的に冷却させるという手段を採用したものである。
(1)本発明に係るコイル焼鈍装置は、円筒状に巻かれたコイルを外側から加熱して焼鈍を行うコイル焼鈍装置であって、前記コイルの端面が載置されて前記コイルを横に倒した状態で支持するコイル支持台と、該コイル支持台側から該コイル支持台に載置された前記コイルの内面側に延出して前記コイルの内面側を冷却する冷却塔とを備え、前記コイルの両端の開口を塞ぐ断熱部材を設置したことを特徴とするものである。
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記冷却塔は、その内部に冷却媒体を流動させる冷却媒体流路を有するものであることを特徴とするものである。
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記冷却媒体流路は、内管と外管とからなる二重管によって形成され、冷却媒体を前記内管内と外管内を逆方向に流動させるものであることを特徴とするものである。
(4)また、上記(2)又は(3)に記載のものにおいて、前記冷却媒体は、不活性ガス、もしくは酸化性ガスを低減したガスと前記不活性ガスとの混合ガス、または還元ガスと前記不活性ガスの混合ガスであることを特徴とするものである。
(5)また、上記(2)又は(3)に記載のものにおいて、前記冷却媒体は、水を含む流体又は純水であることを特徴とするものである。
(6)また、上記(2)又は(3)に記載のものにおいて、前記冷却媒体は、油、油を含む水、又はエマルジョンであることを特徴とするものである。
(7)本発明に係るコイル焼鈍方法は、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のコイル焼鈍装置を用いたコイル焼鈍方法であって、コイルの加熱時及び冷却時に前記冷却塔によってコイル内面側を冷却することを特徴とするものである。
(8)また、上記(7)に記載のものにおいて、コイルの加熱時、均熱時及び冷却時に冷却塔に通流する冷却媒体の種類を異ならせることを特徴とするものである。
本発明に係るコイル焼鈍装置においては、コイルの内面側を冷却する冷却塔を設けたことにより、コイル加熱時及び冷却時にコイル内面側を冷却することでコイル径方向の温度勾配における極小点発生を抑制することができ、これによりコイル加熱過程においてコイルに強い巻き締まりが生じず、巻き締まりに起因するコイル欠陥発生を抑制することができる。
本発明の一実施の形態に係る焼鈍装置の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る焼鈍装置の要部の説明図であり、一部を断面で示している。 図1に示した焼鈍装置の冷却塔の説明図である。 図1に示した焼鈍装置の冷却塔の他の態様の説明図である。 本発明の他の実施の形態に係る焼鈍装置の説明図である。 図5に示した焼鈍装置の冷却塔の説明図である。 本発明の効果を確認するためのモデル実験に用いたモデルの説明図である。 本発明の効果を確認するためのモデル実験に用いたモデルの説明図である。 本発明の効果を確認するためのモデル実験の実験結果を示す図であり、応力ピーク時の温度分布を示している。 本発明の効果を確認するためのモデル実験の実験結果を示すグラフ図であり、Mises応力最大時のコイル半径方向の温度分布を示している。 本発明の効果を確認するためのモデル実験の実験結果を示すグラフ図であり、Mises応力最大時のコイル半径方向の応力分布を示している。 本発明の効果を確認するためのモデル実験の実験結果を示すグラフであり、三種類の冷媒を用いた場合について半径方向圧縮応力ピーク時のコイル半径方向の温度分布を示している。 本発明の効果を確認するためのモデル実験の実験結果を示すグラフであり、三種類の冷媒を用いた場合について半径方向圧縮応力ピーク時のコイル半径方向の半径方向応力分布を示している。 本発明の効果を確認するためのモデル実験の実験結果を示すグラフであり、三種類の冷媒を用いた場合について周方向応力ピーク時のコイル半径方向の温度分布を示している。 本発明の効果を確認するためのモデル実験の実験結果を示すグラフであり、三種類の冷媒を用いた場合について周方向応力ピーク時のコイル半径方向の周方向圧縮応力分布を示している。 従来の焼鈍装置の説明図である。 従来の焼鈍装置の説明図であり、断面で示したものである。 図17の破線で囲んだ部分を拡大して示す拡大図である。 従来の焼鈍装置に用いられているコイル支持台の説明図である。 従来例の課題を説明するためのモデル実験におけるモデルの説明図である。 従来例の課題を説明するためのモデル実験の実験結果を示すグラフであり、半径方向(r方向)の圧縮応力の時間推移を示している。 従来例の課題を説明するためのモデル実験の実験結果を示すグラフであり、周方向(θ方向)の圧縮応力の時間推移を示している。 従来例の課題を説明するためのモデル実験の実験結果を示す図であり、応力ピーク時の応力分布を示している。 従来例の課題を説明するためのモデル実験の実験結果を示す図であり、応力ピーク時の応力分布を示している。 従来例の課題を説明するための説明図である。 従来例の課題を説明するための説明図である。 従来例の他の課題を説明するための説明図である。 従来例の他の課題を説明するための説明図である。
[実施の形態1]
本発明の一実施の形態に係るコイル焼鈍装置1は、図1に示すように、炉の外壁3、外壁3内に設置されたインナーカバー5、インナーカバー5内に設置されたコイル支持台7、コイル支持台7側からコイル支持台7に載置されたコイル9の内面側に延出してコイル9の内面側を冷却する冷却塔10とを備えている。
円筒状のコイル9はコイル支持台7上に端面を当接させてコイル9が横向きになるように載置される。
インナーカバー5の外周部には断熱材11が巻かれ、コイル9上部の開口部には断熱用の蓋13が設置されている。
インナーカバー5の外側にはバーナー(図示なし)が設置され、バーナーによる熱放射によってコイル9が加熱される。
以下、コイル焼鈍装置1の主要な構成を詳細に説明する。
<コイル支持台>
コイル支持台7は、載置部15と、脚部17を備えている。脚部17から載置部15に貫通する貫通孔19が設けられており、貫通孔19に冷却塔10が立設されている。
載置部15には、断熱材からなるスペーサ20が設置され、その上にクッション材21が設置され、さらにその上にコイル9が載置されるようになっている。
断熱材からなるスペーサ20を設置することで、コイル支持台7側からの熱の伝達を少なくしている。
<冷却塔>
本実施の形態の冷却塔10は、内部に冷媒を通流させてコイル9内面側を冷却するものである。冷却塔10は、図3に示すように、外管23の内側にスペーサ片25を介して内管27が設置された二重管構造となっている。図3(b)に示すように、内管27によって形成される流路(以下、「内側流路29」という。)の下方から冷媒が流入し、上端部で外管23側に流入して、外管23と内管27の間に形成された流路(以下、「外側流路31」という。)を下方に向って流れる。内側流路29と外側流路31で冷媒の流れは逆方向になっている。外側流路31を流れる冷媒が外管23を介してコイル9内面側の雰囲気と熱交換をすることで、コイル9内面側が冷却される。外側流路31と内側流路29を冷媒が逆方向に流れることにより、外側流路31を流れる冷媒は、内側流路29を流れる冷媒によって冷却されるので、効果的な熱交換ができる。
冷却塔10の数は、図4に示すように、管径の大きなものを1本用いる方式(図4(a)参照)でもよいし、図4(b)〜図4(d)に示すように管径の細いものを複数本用いる方式であってもよい。複数本にする場合には、図4(b)に示すように冷却塔10の数を多くして高密度に配置してもよいし、図4(c)に示すように中密度に配置してもよいし、あるいは図4(d)に示すように低密度に配置してもよい。
なお、焼鈍を欠陥なく早期に行うには高密度に配置するのが好ましい。冷却塔10を高密度化することで、従来の冷却塔10より冷却能が増すのは、表面積が増すために輻射を吸収する面積が増えて最終的に冷却能力が増強されるためである。
上記の例では、冷却塔10の形状についてはすべて円筒としているが、構造上単純であり製作のしやすさからそうしているだけであり、製作が可能であればどのような形でも問題ない。
冷却塔10は、図1に示すように、コイル支持台7の貫通孔19に立設されており、冷却塔10における貫通孔19に配置される部位には断熱材32が巻かれ、コイル支持台7側から冷媒への入熱を小さくしている。
冷却塔10に通流する冷媒としては、空気、純窒素、純アルゴンおよびヘリウム等の不活性ガス、もしくは酸素、フッ素等の酸化性ガスを低減したガスと前記不活性ガスとの混合ガス、または水素、一酸化炭素等の還元ガスと前記不活性ガスの混合ガスを用いることができる。
また、冷媒として、水を含む流体又は純水を用いることができる。
また、冷媒として、油、油を含む水、又はエマルジョンを用いることができる。
上記のように構成されたコイル焼鈍装置1においては、バーナーによって炉内を加熱し、バーナーによる放射熱でインナーカバー5内のコイル9が加熱される。
本実施の形態のコイル支持台7は載置部15に断熱材からなるスペーサ20を設置すると共にコイル上端面に断熱材からなる蓋13が設置されているので、コイル内面側への入熱が小さくなるようになっている。
加熱中、冷却塔10に冷媒を流すことでコイル内面側を冷却する。コイル内面側を冷却することによって、コイル9の径方向の温度勾配が、外側が高く、中央部が低くなる。これによって、従来例ではコイル中心部からコイル外周部に亘る温度勾配に極小値が発生していたが、これがほとんどない状態となる。
温度勾配に極小値が発生しないため、コイル9は加熱される過程で、外側の熱膨張が大きく、中央部に向かって熱膨張が小さくなるという単純な膨張形態を呈する。これをコイル9全体としてみると、コイル9が巻き緩む状態となる。したがって、加熱の過程で、外側のコイル9が熱膨張しても、コイル9全体として巻き緩むために、コイル板同士の摩擦が少なく、内側のコイル9がコイル支持台7の台部15から浮上ることはなく、コイル9の下端面全体が台部15に当接した状態になる。
よって、従来例のように加熱の過程でコイル9の外周端部でコイル9全体を支えるような状態にならず、そのような状態になることに起因する数々のコイル欠陥(耳歪み(コイル下部)・鋼板密着等)の発生が抑制される。
冷却過程において、インナーカバー5の外及び内側に大気を流すことで冷却が行われる。
また、冷却過程においても、加熱過程と同様に、冷却塔10に冷媒を流すことでコイル内面側を冷却する。内面側を冷却することで、コイル9の径方向の温度勾配が、加熱過程の場合と同様に、外側が高く、中央部が低くなる状態になる。これにより、コイル中心部からコイル外周部に亘る温度勾配に極小値が発生しない状態となる。
そのため、上記の加熱過程と同様に、極小値の発生に起因したコイル欠陥の発生が抑制される。
以上のように、本発明によれば、加熱過程及び冷却過程におけるコイル欠陥の発生を抑制することができると共に、従来では不可能であった1個のコイル内に発生する特性のばらつきの抑制を達成することが可能となった。これによりさらに高い特性を焼鈍工程において狙うことが可能となり、製品の高品質化も期待できる。
コイル内部は空洞になっており、インナーカバー5からの輻射および底部にある床ヒーターからの輻射に対して、そのまま加熱されるため、コイル温度を所望の温度まで上げようとすると、コイル内側の温度も上昇せざるを得ない。コイル内側の温度を低く抑えるため、断熱材13をコイル9の上部に配置して輻射熱が入るのを防止しても、断熱材を通して輻射が行われたり、さらには炉底の床ヒーターからの輻射もあったりしており、温度上昇は免れない。
そのため、コイル内部をコイル外側より低温に保持する方法として加熱を実施するにあたり、昇温速度を遅くして加熱を実施することも考えられるが、加熱に長時間を要しコスト増になるし、必ずしも完全に温度勾配の極小点を抑制することはできない。
また、炉内で冷却する場合、どうしても内側の温度が高くなるため、温度分布をコイル品質に影響のない程度まで落として冷却を実施する必要があり、そのような実施ではさらなるコスト増となる。
しかし、本実施の形態で示したコイル焼鈍装置1によればこのようなコスト増になることなく、効率よくコイル欠陥のないコイルの焼鈍ができる。
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2を、図5、図6に基づいて説明するが、実施の形態と同一部分には統一の符号を付して説明は省略する。
本実施の形態のコイル焼鈍装置33は、図5に示すように、冷却塔35がコイル支持台7側からコイル内を貫通して冷媒を一方方向に流すようにしたものである(図6参照)。冷却塔35を構成するパイプは、コイル内以外の部分は断熱材32で周囲を覆うようにしている。
このような構造であれば、冷却塔35をパイプで構成できるので、構造が簡単になり、装置自体が低コストで製作可能であり、および製作も非常に容易となる。また、単純な構造であるため、機器の取り扱いも簡単であり、加えて修理・メンテナンスもしやすくなっている。
実施の形態2のものにおいても、実施の形態1と同様に、コイル欠陥発生抑制効果が得られることは言うまでもない。
上記のような本実施の形態の効果をモデル実験による比較を行って確認した。
図7はモデル実験に用いたモデルの説明図であり、<モデル1>が従来例でありコイル内部を冷却しないもの(図7(a))、<モデル2>がコイル内面側を冷却塔10で冷却するもの(図7(b))である。
コイル9のモデルとしては、図8のモデル仕様の説明図に示すように、コイル内径が508mm、コイル幅1150mmで6.7mm厚の板を60層巻いたコイルを用い、コイル上端面にはコイル中央からコイル9の1/4までを覆うサイズの断熱材からなる蓋13を設置した。
図9はコイル半径方向の温度分布をMises応力が最大となる時刻で測定した測定結果を色分けして示したものである。従来例は、加熱から21.1時間経過後のものであり、図9(a)に示すように、コイル半径方向の中心よりも少し外径側の位置に冷点が存在することが分かる。
本発明例は、加熱から24.3時間経過後のものであり、図9(b)に示すように、コイル内周側の温度が最も低く外側に向うに従って温度が高くなっているのが分かる。
図9をグラフ表示したものが図10であり、図10に示されるように、破線で示す従来例では、コイル中心側から100mmの位置に冷点が存在し、温度分布は下に凸の曲線となっている。
他方、本発明例では、図10の実線で示すように、殆ど極小点を持たず、コイル内周側から外周側にかけて温度が徐々に高くなっている。
図11は、Mises応力が最大となる時刻におけるコイル半径方向の応力分布を示したグラフであり、縦軸が応力[MPa]、横軸がコイル半径方向の距離[mm]を示している。また、図11において、図11(a)は半径方向の応力、図11(b)は垂直方向の応力、図11(c)は周方向の応力を示している。
図11のグラフを見ると理解されるように、従来例であるMODEL1ではコイル半径方向の距離が150mm以内の部位において大きな応力が発生しているが、本発明例であるMODEL2では応力発生が抑制されている。
以上のように、冷却塔10を用いることで、コイル半径方向で温度勾配が極小値を持つことが緩和され、それによってコイル径方向での応力発生が緩和されたことが実証された。
次に、冷却塔10の内部に通流させる冷媒による効果の違いを確認するためのモデル実験を実施したので、その結果について説明する。
図12は、エア、ミスト、冷却水の3種類の冷媒について、半径方向の圧縮応力が最大となる時刻における温度とコイル半径方向の距離との関係をグラフで示したものであり、縦軸が温度[℃]、横軸がコイル半径方向の距離[mm]を示している。なお、時刻は、エアの場合が24.26[Hr]、ミストの場合が52.27[Hr]、冷却水の場合が52.36[Hr]であった。
図12のグラフから分かるように、冷却水とミストはほぼ同様の曲線となり、極小点を有しているが殆どフラットであることが分かる。これに対して、エアの場合には、従来例(図10の破線グラフ参照)に比較すると極小になるのが緩和されているが、冷却水とミストに比べると若干だけ極小点が現われている。このことから、冷却水やミストのようにエアよりも冷却能力の高い冷媒を通流させることにより温度分布の極小点緩和に対して大きな効果が得られることが分かる。
図13は、図12と同一の時刻におけるコイル半径方向応力分布を示すグラフであり、縦軸が応力[MPa]、横軸がコイル半径方向の距離[mm]を示している。
図13のグラフから分かるように、冷却水とミストはほぼ同様の曲線となり、応力発生が緩和されていることが分かる。他方、エアの場合には、従来例(図11参照)に比較すると応力は大きく緩和されているが、冷却水とミストに比較すると緩和の度合いが少ないことが分かる。
このことから、冷却水やミストのようにエアよりも冷却能力の高い冷媒を通流させることにより、半径方向応力緩和に大きな効果が得られることが分かる。
図14は、エア、ミスト、冷却水の3種類の冷媒について、周方向の圧縮応力が最大となる時刻における温度とコイル半径方向の距離との関係をグラフで示したものであり、縦軸が温度[℃]、横軸がコイル半径方向の距離[mm]を示している。
なお、時刻は、エアの場合が24.26[Hr]、ミストの場合が51.38[Hr]、冷却水の場合が51.81[Hr]であった。
図14のグラフから分かるように、図12と同様に、冷却水とミストはほぼ同様の曲線となり、極小点を有しているが殆どフラットであることが分かる。これに対して、エアの場合には、従来例(図10の破線グラフ参照)に比較すると極小になるのが緩和されているが、冷却水とミストに比べると若干だけ極小点が現われている。このことから、冷却水やミストのようにエアよりも冷却能力の高い冷媒を通流させることにより温度分布の極小点緩和に対して大きな効果が得られることが分かる。
図15は、エア、ミスト、冷却水の3種類の冷媒について、図14と同一時刻におけるコイル周方向の応力分布を示すグラフであり、縦軸が応力[MPa]、横軸がコイル半径方向の距離[mm]を示している。
図15のグラフから分かるように、冷却水とミストはほぼ同様の曲線となり、応力発生が緩和されていることが分かる。他方、エアの場合には、従来例(図11(c)参照)に比較すると応力は大きく緩和されているが、冷却水とミストに比較すると緩和の度合いが少ないことが分かる。
このことから、冷却水やミストのようにエアよりも冷却能力の高い冷媒を通流させることにより、周方向応力緩和に大きな効果が得られることが分かる。
以上のように、モデル実験結果からも、本発明の冷却塔10を用いることにより、加熱時における応力発生が抑えられ、それ故に従来で問題となった種々のコイル9に発生する変形を抑えることができる。
なお、実施の形態2で示した冷却塔35でも同様の結果が得られている。
以下の実施例では、従来法と本発明の焼鈍装置でコイルの焼鈍を実施した場合各種の比較を行い、優位性の有無を検討した。
なお、コイル板厚の厚いものと薄いものでは薄いものの方が欠陥が発生しやすいため、巻数Nが少なくても結果が明確となる。そのため実際にコイルの板厚とはしては、300μm程度から10mm程度まであるが、300μ程度のもので検討を実施した。
(1)実施の形態1(図1参照)を用いた場合の焼鈍と従来の焼鈍における欠陥率比較
以下の示す方法で実験を実施した。
実施の形態1の炉にして、焼鈍実験を行った場合の欠陥発生率と従来の焼鈍における欠陥発生率との比較を行った。なお、欠陥については、耳伸び(コイル上部)・耳歪み(コイル下部)・腹伸び・縦じわ・鋼板密着等の形状欠陥に加えて、特定の相変態を伴う特性向上が図られない等の特性低下の欠陥も含んでいる。
実施条件は以下の通りである。なお、コイルの欠陥が1個でもあれば、欠陥コイルとした。ただし、検査ラインで見つけたとしても実際には廃棄はしないで発見箇所を切り出して、使用可能な箇所のみを使用するために欠陥があってもコイル自体は使用可能である。また特性に関わる相変態の不良については、特性をオンライン調査し、不良部はすべて切り捨てるようにした。そのためコイルの歩留まりのほかに、コイルの長さに対する歩留まりも比較した。
加熱・冷却パターンは以下の通りとした。
<(a)従来例1>
通常の焼鈍炉(バーナーおよび床ヒーター使用:従来加熱・冷却)均熱温度800℃目標で、昇温に48時間、均熱で60時間、冷却を炉冷にして74時間とした。その際のコイルは、板厚0.33mm、幅1050mm、コイル重量8tonのものを用いた。さらに炉内ガスとして、窒素ガスを使用し、流量は15l/minで実施した。
<(b)従来例2>
通常の焼鈍炉(バーナーおよび床ヒーター使用:緩やかな加熱・冷却)均熱温度800℃目標で、昇温に60時間、均熱で60時間、冷却を炉冷にして100時間とした。その際のコイルは、板厚0.33mm、幅1050mm、コイル重量8tonのものを用いた。炉内ガスは同様に、窒素ガスを使用し、流量は15l/minで実施した。
<(c)実施の形態1>
実施の形態1の装置を用いた焼鈍炉(バーナー・冷却塔使用:最適な加熱・冷却)均熱温度800℃目標で、昇温に54時間、均熱で60時間、冷却を炉冷にして60時間とした。その際のコイルは、板厚0.33mm、幅1050mm、コイル重量8tonのものを用いた。炉内ガスは同様に、窒素ガスを使用し、流量は15l/minで実施した。冷媒として純水を用いた。
実験は各30コイル実施し、その発生率を表1に示す。
表1から分かるように、実施の形態1の装置では、従来例に比較して欠陥発生率が改善し、さらに歩留まりを完全に改善することが可能となっている。
(2)冷却塔形状による比較
冷却塔について、図4に示すような各種の冷却塔を用いて、その冷却能力と冷却時間について実験した。その結果を表2に示す。
コイル内側の温度分布はどの冷却塔においても変化はなかったが、コイルを冷却する際の冷却能力に大きな違いがあった。
なお、欠陥の発生率および歩留まり率に関しては、いずれの冷却塔を用いたものでも欠陥の発生は見られず、差異はなかった。
もっとも、焼鈍時間の短縮を図ろうとすれば、複数本を用いた高密度冷却を行える冷却塔がよいと考えられる。ただし、単に焼鈍時間のみで検討するのではなく、高温中の保持およびメンテナンスなどを考慮して、最適なものを選択する必要がある。
なお、冷却塔を複数本化し、高密度で配置することで、従来の冷却塔より冷却能が変化するのは、表面積が異なるために輻射を吸収する面積が変化して最終的に冷却能力の差となるためである。
(3)実施の形態2の焼鈍炉を用いた場合と従来例の欠陥発生率比較
実施の形態2の焼鈍炉(図5参照)について、実施の形態1の焼鈍炉と同様に欠陥発生率の比較実験を行った。
欠陥の判定方法、及び実験条件は実施の形態1の場合と同様である。
実験結果を表3に示す。
表3から分かるように、実施の形態1の装置では、従来例に比較して欠陥発生率が改善し、さらに歩留まりを完全に改善することが可能となっている。
また、焼鈍時間も短縮されており、効率的な処理が可能となっている。
(4)冷媒の違いによる欠陥発生率比較(A)
冷却塔に通流する冷媒の各種冷媒を使用した場合の比較実験を行った。
従来例の焼鈍炉を含めて6種類の比較を行った。各炉は同じバーナーを使用したので加熱能力は同じである。
他方、冷却に関しては冷却装置の有無により異なるため、それぞれの炉における冷却能力の比較も示した。さらに、冷却媒体によりさらに冷却能力が異なるため、本発明の冷却塔に使用した通流流体を表記した。
<(a)従来例>
従来例の加熱・冷却パターンは以下の通りとした。
通常の焼鈍炉(バーナーおよび床ヒーター使用:従来加熱・冷却)均熱温度800℃目標で、昇温に48時間、均熱で60時間、冷却をバーナーおよび床ヒーターを切った状態で炉冷にして実施し、冷却時間は74時間となった。
コイルは、板厚0.33mm、幅1050mm、コイル重量8tonのものを用いた。さらに炉内ガスとして、窒素ガスを使用し、流量は15l/minで実施した。
<(b)本発明例(純水使用)>
本発明の冷却塔を有する焼鈍炉で、均熱温度800℃目標で、昇温に54時間、均熱で60時間実施後、冷却を実施した。
加熱時においても、通流流体として純水を使用した冷却塔を用いて内部に緩やかに冷却した。
純水を使用した冷却塔を用いることで、冷却時間が従来より格段に短縮され45時間で終了した。
コイルは、板厚0.33mm、幅1050mm、コイル重量8tonのものを用いた。炉内ガスは従来例と同様に、窒素ガスを使用し、流量は15l/minで実施した。
<(c)本発明例(純水+防錆剤+防腐剤)>
本発明の冷却塔を有する焼鈍炉で、均熱温度800℃目標で、昇温に54時間、均熱で60時間、冷却を炉冷にして45時間とした。
加熱時においても、冷却塔を用いて緩やかに冷却した。
冷却塔に通流する流体として、純水に不凍液および防錆剤・防腐剤を添加した液を使用した。特性はほぼ水と同じであり、純水を用いたものとほぼ同様の結果となった。
コイルは、板厚0.33mm、幅1050mm、コイル重量8tonのものを用いた。炉内ガスは従来例と同様に、窒素ガスを使用し、流量は15l/minで実施した。
<(d)本発明例(焼き入れ用油)>
本発明の冷却塔を焼鈍炉で、均熱温度800℃目標で、昇温に52時間、均熱で60時間、冷却を炉冷にして45時間とした。
加熱時においても、冷却塔を用いて内部を緩やかに冷却した。冷却塔に通流する流体として焼き入れ用の油を使用した。焼き入れ用の油の特性は水よりもより高温で冷却を実施する以外は同じである。
コイルは、板厚0.33mm、幅1050mm、コイル重量8tonのものを用いた。炉内ガスは従来例と同様に、窒素ガスを使用し、流量は15l/minで実施した。
<(e)本発明例(ミスト)>
本発明の冷却塔を用いた焼鈍炉で、均熱温度800℃目標、昇温に52時間、均熱で60時間、冷却を炉冷にして50時間とした。
加熱時においても、冷却塔を用いて内部に緩やかに冷却した。冷却塔に通流する流体として気体(この場合、空気もしくは窒素およびアルゴン等の不活性気体)に水を霧状にして含ませたミストを使用した。冷却能は、水および水に添加剤を加えたもの、油よりも若干低下するが、コイル中心側よりの冷却機能は同じであり、そのため、本発明の冷却塔を使用し内部より冷却を実施することで冷却時間が従来より格段に短縮され、50時間にて終了した。
コイルは、板厚0.33mm、幅1050mm、コイル重量8tonのものを用いた。炉内ガスは従来例同様に、窒素ガスを使用し、流量は15l/minで実施した。
<(f)本発明例(気体)>
本発明の冷却塔を用いた焼鈍炉で、均熱温度800℃目標、昇温に52時間、均熱で60時間、冷却を炉冷にして55時間とした。
加熱時においても、冷却塔を用いて内部に緩やかに冷却した。冷却塔に通流する流体として気体(この場合、空気もしくは窒素およびアルゴン等の不活性気体)を使用した。気体を使用した場合、その冷却能は水および水に添加剤を加えたもの、油およびミストよりも若干低下するが、コイル中心側よりの冷却機能は同じであり、冷却時間が従来例より短縮され、55時間にて終了した。
コイルは、板厚0.33mm、幅1050mm、コイル重量8tonのものを用いた。炉内ガスは従来例と同様に、窒素ガスを使用し、流量は15l/minで実施した。
実験結果を表4に示す。
表4の結果より、冷却塔に通流する冷媒の種類によって冷却能力に差が生じ、そのため焼鈍時間に違いが出てくるが、本発明例はすべて歩留まりが100%であり、特性に問題のないことがわかった。表4に示す結果から、従来法に比較して本発明が有効であることが明らかとなった。
また、焼鈍時間の短縮を図ろうとすれば、水あるいは油等の冷媒を用いるのがよいと考えられる。ただし、単に焼鈍時間のみで検討するのではなく、高温中の保持およびメンテナンスなどを考慮して、最適なものを選択する必要がある。
(5)冷媒の違いによる半径方向最大圧力比較
冷却塔に通流する流体として、純水のみを冷媒として使用する場合と、代表的な流体を種々組み合わせて通流させた場合とで比較する実験を行った。
比較する項目として、コイルの内部に発生する半径方向の圧力の最大値を用いた。半径方向に発生する圧力は、コイルの密着の原因となったり、コイル特性の劣化の原因となったりするため、低いほうが良い。閾値となる圧力があり、それ以下であれば問題はないが、コイルのばらつきにより圧力感受性の強いコイルは特性の劣化が発生する場合がある。そのため、加熱から冷却までの工程で最大となる半径方向の圧力について検討を実施した。
通流する流体の種類は以下の通りであり、また通流のパターンは以下の通りである。
<(a)純水(冷却時のみ)>
作動流体として純水のみを使用し、加熱・均熱および冷却において流量を以下のようにコントロールした
加熱時(純水):0m3/Hr → 均熱時(純水):0m3/Hr → 冷却時(純水):12m3/Hr
<(b)純水+空気>
作動流体として純水および空気を使用し、加熱・均熱及び冷却において使用する流体と流量を以下のようにコントロールした
加熱時(空気):90m3/Hr → 均熱時(空気):50m3/Hr → 冷却時(純水):12m3/Hr
<(c)ミスト・空気・純水>
作動流体として純水および空気を使用し、加熱・均熱及び冷却で使用する流体を決定して流量をコントロールし、また流動させる際に形態を変化させて流動を実施した。
具体的には以下の通りである。
加熱時(ミスト):90m3/Hr → 均熱時(空気):50m3/Hr → 冷却時(純水):12m3/Hr
なお、ミストは、純水を空気中に噴霧させて作成した。
<従来例>
比較例として、冷却塔のない従来例を実施した。
実験結果を表4に示す。
表5に示されるように、発生する半径方向圧力は冷却塔を用いることで、従来の焼鈍で発生する圧力より格段に小さくなっていることがわかる。
また、純水のみの焼鈍よりも、空気、もしくはミストを組み合わせて、それぞれの工程に適するように冷却を実施することで、さらに圧力の発生を低減することが可能であることがわかる。
1 コイル焼鈍装置
3 外壁
5 インナーカバー
7 コイル支持台
9 コイル
10 冷却塔
11 断熱材
13 蓋
15 載置部
17 脚部
19 貫通孔
20 スペーサ
21 クッション材
23 外管
25 スペーサ片
27 内管
29 内側流路
31 外側流路
32 断熱材
33 コイル焼鈍装置
35 冷却塔
41 焼鈍炉(従来例)

Claims (8)

  1. 円筒状に巻かれたコイルを外側から加熱して焼鈍を行うコイル焼鈍装置であって、
    前記コイルの端面が載置されて前記コイルを横に倒した状態で支持するコイル支持台と、
    該コイル支持台側から該コイル支持台に載置された前記コイルの内面側に延出して前記コイルの内面側を冷却する冷却塔とを備え、前記コイルの両端の開口を塞ぐ断熱部材を設置したことを特徴とするコイル焼鈍装置。
  2. 前記冷却塔は、その内部に冷却媒体を流動させる冷却媒体流路を有するものであることを特徴とする請求項1記載のコイル焼鈍装置。
  3. 前記冷却媒体流路は、内管と外管とからなる二重管によって形成され、冷却媒体を前記内管内と外管内を逆方向に流動させるものであることを特徴とする請求項2記載のコイル焼鈍装置。
  4. 前記冷却媒体は、不活性ガス、もしくは酸化性ガスを低減したガスと前記不活性ガスとの混合ガス、または還元ガスと前記不活性ガスの混合ガスであることを特徴とする請求項2又は3記載のコイル焼鈍装置。
  5. 前記冷却媒体は、水を含む流体又は純水であることを特徴とする請求項2又は3記載のコイル焼鈍装置。
  6. 前記冷却媒体は、油、油を含む水、又はエマルジョンであることを特徴とする請求項2又は3記載のコイル焼鈍装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載のコイル焼鈍装置を用いたコイル焼鈍方法であって、コイルの加熱時、均熱時及び冷却時に前記冷却塔によってコイル内面側を冷却することを特徴とするコイル焼鈍方法。
  8. コイルの加熱時、均熱時及び冷却時に冷却塔に通流する冷却媒体の種類を異ならせることを特徴とする請求項7記載のコイル焼鈍方法。
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