JP5809673B2 - 点火プラグ - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関等に使用される点火プラグに関する。
内燃機関等に使用される点火プラグは、例えば、軸孔を有する筒状の絶縁体と、軸孔の先端側に挿設される中心電極と、軸孔の後端側に挿設される端子電極と、絶縁体の外周に設けられる筒状の主体金具とを備えている。また、端子電極は、その後端部が絶縁体の後端から露出した状態で軸孔に挿通されており、その先端部が導電性材料及びガラスを含むガラスシール層により絶縁体に固定されている。加えて、軸孔内であって、中心電極及び端子電極の間には、内燃機関等の動作に伴い発生する電波雑音を抑制するための抵抗体が設けられることがある(例えば、特許文献1等参照)。
さらに、ガラスシール層や抵抗体は、一般に次のようにして形成される。すなわち、前記ガラスシール層の構成材料として、ガラス粉末や導電性材料を含んでなるガラス粉末混合物を予め作製しておくとともに、前記抵抗体の構成材料として、ガラス粉末や導電性物質(カーボンブラック等)、セラミックス粒子などを含んでなる抵抗体組成物を予め作製しておく。そして、軸孔の先端側に中心電極を挿通した上で、軸孔に対してガラス粉末混合物及び抵抗体組成物を充填する。このとき、抵抗体組成物上にガラス粉末混合物が充填される。次いで、端子電極の先端部を軸孔に挿通するとともに、熱間にて中心電極側に向けて端子電極を押圧する。これにより、ガラス粉末混合物は、端子電極により直接圧縮された状態で加熱され、抵抗体組成物は、ガラス粉末混合物を介して圧縮された状態で加熱される。その後、ガラス粉末混合物や抵抗体組成物を冷却し、固化させることで、ガラスシール層及び抵抗体が形成される。
ところで、ガラス粉末混合物の圧縮が不十分であると、前記ガラスシール層に多数の気孔が形成されてしまうおそれがある。このような場合には、ガラスシール層の密度が低下し、単位面積当たりにおける端子電極とガラスシール層との接触面積が小さなものとなってしまうおそれがある。接触面積が小さいと、ガラスシール層を介した絶縁体に対する端子電極の固着力が低下してしまい、端子電極や絶縁体に衝撃が加わった場合に、絶縁体から端子電極が容易に抜けてしまうおそれがある。また、衝撃が加わった際に、端子電極とガラスシール層との間に隙間が容易に形成されてしまい、端子電極及び中心電極間における抵抗値が急激に増大してしまうおそれがある。
さらに、ガラス粉末混合物の圧縮が不十分であると、ガラス粉末混合物を介して圧縮される抵抗体組成物の圧縮が不十分となってしまうおそれがある。このような場合には、抵抗体に多数の気孔が形成され、抵抗体の密度が小さくなってしまうおそれがある。密度の小さい抵抗体は、その後端側(端子電極側)からその先端側(中心電極側)までの間において、導電性物質により形成される導電経路の本数が少なくなってしまう。そのため、使用に伴う導電経路の一部の酸化により抵抗値が急激に増大してしまうおそれがあり、負荷寿命特性に劣る。
そこで、上述した不都合の解消を図るべく、端子電極の先端部に窪み部を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献2等参照)。当該技術によれば、ガラス粉末混合物の圧縮時において、窪み部の存在により、ガラス粉末混合物が端子電極の外周側へと回り込みにくくなるため、端子電極からガラス粉末混合物へとより大きな圧力を加えることができる。その結果、ガラス粉末混合物及び抵抗体組成物を十分に圧縮することができ、ガラスシール層や抵抗体の密度を高めることができる。
特開2006−66086号公報 特開平9−63745号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載の技術では、端子電極の外周側に対するガラス粉末混合物の回り込み量が過度に少なくなってしまうことがある。この場合には、絶縁体に対する端子電極の固着力が不十分となってしまい、耐衝撃性の低下を招いてしまうおそれがある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷寿命特性及び耐衝撃性の双方において良好な性能を確保することができる点火プラグを提供することにある。
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
構成1.本構成の点火プラグは、軸線方向に貫通する軸孔を有する絶縁体と、
前記軸孔の後端側に挿通される端子電極と、
前記軸孔の先端側に挿通される中心電極と、
前記軸孔内において前記端子電極及び前記中心電極間に配置されるとともに、導電性物質及びガラスを含有する抵抗体と、
前記軸孔内において前記抵抗体よりも後端側に配置されるとともに、前記端子電極の先端部に接触し、導電性材料及びガラスを含有するガラスシール層とを備える点火プラグであって、
前記端子電極は、その先端部に、
先端側に開口し、前記端子電極の中心軸方向に0.3mm以上の深さを有する凹部と、
前記凹部とその外周側において隣接する平坦部とを有し、
前記端子電極の先端から前記中心軸に沿って0.1mm後端側における前記中心軸と直交する断面において、前記端子電極の外周面を形成する外形線で囲まれた領域の面積をA(mm2)とし、前記端子電極のうち前記凹部を形成する内側面の外形線で囲まれた領域の面積をB(mm2)としたとき、
0.52≦B/A≦0.91
を満たすことを特徴とする。
尚、面積Aは、端子電極の先端面の外形線で囲まれた領域の面積とほぼ等しく、面積Bは、端子電極の先端における凹部の開口面積とほぼ等しい。上記構成1において、両面積A,Bを、端子電極の先端から0.1mm後端側における面積としたのは、端子電極の外表面に形成されるローレット等の溝やガラス粉末混合物を押圧した際の端子電極の変形等を考慮して、より正確な面積測定を可能とするためである。
上記構成1によれば、端子電極の先端部に凹部が設けられるとともに、0.52≦B/Aを満たすように構成されている。従って、端子電極によるガラス粉末混合物の圧縮時において、端子電極の外周側に対するガラス粉末混合物の回り込み量が過度に多くなってしまうことをより確実に防止できる。これにより、ガラス粉末混合物ひいては抵抗体組成物に対して大きな圧力を加えることができ、ガラスシール層及び抵抗体の双方において密度を十分に増大させることができる。そのため、ガラスシール層を介した絶縁体に対する端子電極の固着力を向上させることができ、良好な耐衝撃性を実現することができる。また、振動が加えられた際に端子電極とガラスシール層との間に隙間が形成されにくくなるとともに、抵抗体中に多数の導電経路をより確実に形成することができる。その結果、良好な負荷寿命特性を実現することができる。
さらに、抵抗体を介して端子電極及び中心電極間を通電する際には、特に抵抗体のうち絶縁体の内周面側に位置する部位(抵抗体の外周側部位)を通って電流が流れやすい。従って、抵抗体の外周側部位は、通電に伴う抵抗値の増大がより生じやすい。
この点、上記構成1によれば、B/A≦0.91を満たすように構成されており、平坦部の面積が十分に確保されている。従って、端子電極の平坦部により、抵抗体組成物のうち外周側に位置する部位をより確実に圧縮することができ、ひいては抵抗体の外周側部位における密度を著しく増大させることができる。その結果、一層優れた負荷寿命特性を実現することができる。
また、B/A≦0.91を満たすため、端子電極によりガラス粉末混合物を圧縮する際に、ある程度の量のガラス粉末混合物が端子電極の外周側へと回り込むこととなる。そのため、端子電極の外周面と絶縁体の内周面との間における比較的広範囲に亘ってガラスシール層が存在することとなり、絶縁体に対する端子電極の固着力を一層高めることができる。その結果、負荷寿命特性及び耐衝撃性をより効果的に向上させることができる。
構成2.本構成の点火プラグは、上記構成1において、前記端子電極は、
前記絶縁体の後端から露出する頭部と、
前記頭部の先端から先端側に延びる根元部と、
前記根元部よりも先端側に位置するとともに、自身の外径が前記根元部の外径よりも小さい小径部とを備え、
前記根元部の硬度をビッカース硬度でC(Hv)とし、前記小径部の硬度をビッカース硬度でD(Hv)としたとき、
0.80≦C/D≦1.20
を満たすことを特徴とする。
尚、「根元部の硬度」や「小径部の硬度」とあるのは、小径部等の表面のうち凹部などを形成する際の加工等により硬度変化が生じ得る部位以外の部位において測定される硬度をいう。
上記構成2によれば、根元部と小径部との硬度差が非常に小さなものとされている。従って、衝撃の印加等により、ガラスシール層により保持された端子電極の先端部を支点として端子電極が振動した際に、端子電極の振幅を小さくすることができる。これにより、端子電極の振動に伴い、絶縁体の内周面に対して端子電極が接触してしまうことをより確実に防止できる。その結果、端子電極の接触による絶縁体の破損をより確実に防止することができ、耐衝撃性を一層向上させることができる。
構成3.本構成の点火プラグは、上記構成1又は2において、前記端子電極は、前記絶縁体の後端から露出する頭部を備え、
前記頭部の先端から前記端子電極の先端までの前記中心軸方向に沿った長さが50mm以上であることを特徴とする。
頭部の先端から端子電極の先端までの長さ(つまり、端子電極のうち軸孔に挿通される部位の長さ)が長いほど、ガラス粉末混合物の圧縮時において、ガラス粉末混合物に対して圧力が加わりにくくなり、ガラスシール層や抵抗体の密度が小さなものとなりやすい。また、端子電極が振動した際に、端子電極の振幅が大きなものとなりやすい。すなわち、頭部の先端から端子電極の先端までの長さが長い点火プラグは、負荷寿命特性や耐衝撃性を良好なものとすることが難しい。
この点、上記構成3によれば、頭部の先端から端子電極の先端までの長さが50mm以上とされているため、負荷寿命特性や耐衝撃性の低下が特に懸念されるが、上記構成1等を採用することで、このような懸念を払拭することができる。換言すれば、上記構成1等は、頭部の先端から端子電極の先端までの長さが50mm以上とされた点火プラグにおいて特に有効である。
構成4.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至3のいずれかにおいて、前記端子電極の先端を通り前記軸線と直交する断面において、前記絶縁体の厚さが3.0mm以上であることを特徴とする。
絶縁体のうちガラスシール層の外周側に位置する部位が過度に厚肉である場合、加熱・圧縮後において、ガラス粉末混合物を固化させるために比較的長い冷却時間が必要となる。しかしながら、冷却時間が長いと、ガラスシール層に気孔が生じやすくなり、負荷寿命特性や耐衝撃性の低下を招いてしまいやすい。すなわち、絶縁体のうちガラスシール層の外周に位置する部位の肉厚が大きい点火プラグにおいては、負荷寿命特性や耐衝撃性の低下がより懸念される。
この点、上記構成4によれば、端子電極の先端を通り軸線と直交する断面において、絶縁体の厚さが3.0mm以上とされており、負荷寿命特性や耐衝撃性の低下がより懸念されるが、上記構成1等を採用することで、このような懸念を払拭することができる。換言すれば、上記構成1等は、絶縁体のうちガラスシール層の外周に位置する部位の厚さが3.0mm以上とされた点火プラグに対して、特に有効である。
構成5.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、前記導電性材料は金属であり、前記ガラスシール層における前記金属の含有量が50質量%以上60質量%以下であることを特徴とする。
ガラス粉末混合物(ガラスシール層)において、導電性材料としての金属の含有量を過度に多くした場合には、ガラス粉末混合物におけるガラスの含有量が相対的に少なくなり、端子電極からガラス粉末混合物へと圧力が加えられた際に、ガラス粉末が潰れにくくなる。そのため、ガラスシール層に気孔が形成されやすくなるとともに、抵抗体組成物に加わる圧力が減少し、ガラスシール層や抵抗体の密度が低下しやすくなる。
一方で、ガラス粉末混合物(ガラスシール層)において、導電性金属の含有量を過度に少なくした場合には、ガラスシール層におけるガラスの含有量が大きくなり、加熱時においてガラス粉末混合物の粘度がより低下する。そのため、端子電極から圧力が加えられた際に、端子電極の外周側へとガラス粉末混合物が若干回り込みやすくなり、ひいてはガラスシール層や抵抗体の密度が低下してしまうおそれがある。
この点、上記構成5によれば、ガラスシール層における金属の含有量が50質量%以上60質量%以下とされている。従って、端子電極による圧縮時において、ガラス粉末混合物においてガラス粉末が潰れやすくなるとともに、端子電極の外周側に対するガラス粉末混合物の回り込み量をより適切な量とすることができる。これにより、ガラス粉末混合物及び抵抗体組成物をより一層確実に圧縮することができ、ガラスシール層及び抵抗体の密度を一層増大させることができる。その結果、負荷寿命特性及び耐衝撃性の双方をさらに向上させることができる。
構成6.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至5のいずれかにおいて、前記軸線を含む断面において、前記端子電極の先端を通り前記軸線と直交する第1仮想線と、前記第1仮想線よりも前記軸線に沿って1.0mm先端側に位置し前記軸線と直交する第2仮想線と、前記軸孔の外形線と前記第1仮想線との2つの交点の中点から前記軸線と直交する方向に沿って一方側に0.5mmの点を通り前記軸線方向に延びる第3仮想線と、前記中点から前記軸線と直交する方向に沿って他方側に0.5mmの点を通り前記軸線方向に延びる第4仮想線とで囲まれた領域における、前記ガラスシール層の気孔率が0.92%以下であることを特徴とする。
上記構成6によれば、ガラスシール層のうち前記4本の仮想線で囲まれた部位、つまり、ガラスシール層のうち端子電極の先端面中央の直近に位置する部位における気孔率が0.92%以下とされている。従って、ガラスシール層及び抵抗体のうち、平坦部に押圧される外周側部位に加えて、ガラスシール層及び抵抗体の中央側部位における密度も十分に高めることができる。その結果、負荷寿命特性及び耐衝撃性を一層効果的に向上させることができる。
点火プラグの構成を示す一部破断正面図である。 (a)は、端子電極の構成を示す一部破断正面図であり、(b)は、端子電極の先端部の構成を示す拡大斜視図である。 図2(a)のJ−J線断面図である。 小径部や根元部の硬度を測定する際の測定位置を説明するための拡大断面図である。 絶縁碍子の厚さTを説明するための拡大断面図である。 凹部対応部等を示す拡大断面図である。 (a)〜(c)は、ホットプレス工程の一過程を示す断面図である。 (a),(b)は、別の実施形態における凹部を示す拡大断面図である。 別の実施形態における端子電極を示す拡大断面図である。
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、点火プラグ1を示す一部破断正面図である。尚、図1では、点火プラグ1の軸線CL1方向を図面における上下方向とし、下側を点火プラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
点火プラグ1は、筒状をなす絶縁体としての絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。
絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、後端側に形成された後端側胴部10と、当該後端側胴部10よりも先端側において径方向外向きに突出形成された大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれよりも細径に形成された脚長部13とを備えている。絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、及び、大部分の脚長部13は、主体金具3の内部に収容されている。そして、中胴部12と脚長部13との連接部には、先端側に向けて先細る段部14が形成されており、当該段部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
さらに、絶縁碍子2には、軸線CL1に沿って軸孔4が貫通形成されている。そして、軸孔4の先端側には中心電極5が挿入、固定されている。中心電極5は、熱伝導性に優れる金属〔例えば、銅や銅合金、純ニッケル(Ni)〕からなる内層5Aと、Niを主成分とする合金からなる外層5Bとにより構成されている。また、中心電極5は、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端部が絶縁碍子2の先端から突出している。尚、中心電極5の先端部に、耐消耗性に優れる金属(例えば、IrやPt等を含む金属)からなるチップを設けることとしてもよい。
さらに、軸孔4の後端側には、所定の金属(例えば、低炭素鋼など)からなる棒状の端子電極6が挿入、固定されている。端子電極6は、絶縁碍子2の後端から露出する頭部6Aと、当該頭部6Aの先端から先端側に延びる棒状の根元部6Bと、当該根元部6Bよりも先端側に位置するとともに、自身の外径が根元部6Bの外径よりも小さい小径部6Cとを備えている。尚、小径部6Cの外周面のうち少なくとも後述する後端側ガラスシール層8に接触する部位には、ローレットが設けられており、後端側ガラスシール層8からの端子電極6(小径部6C)の抜け防止が図られている(図2参照)。また、本実施形態において、端子電極6の先端面の外径は、軸孔4のうち小径部6Cが挿設される部位の内径の84%以上97%以下とされている。
さらに、軸孔4の中心電極5と端子電極6との間には、円柱状をなす導電性の抵抗体7が配設されている。当該抵抗体7は、電波雑音を抑制するためのものであり、その抵抗値は、点火プラグの仕様によって異なるが、例えば、100Ω以上とされている。また、抵抗体7は、導電性物質(例えば、カーボンブラック等)や二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化ボロン(B25)を含有するガラス粉末、セラミック粒子〔例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)粒子や酸化チタン(TiO2)粒子等〕等からなる抵抗体組成物が加熱封着されることで形成されている。
加えて、抵抗体7の後端部と端子電極6との間には、端子電極6の先端部(小径部6C)が接触する後端側ガラスシール層8(本発明の「ガラスシール層」に相当する)が設けられている。また、抵抗体7の先端部と中心電極5との間には、先端側ガラスシール層9が設けられている。両ガラスシール層8,9は、それぞれ導電性材料(例えば、グラファイトや銅等)と、フィラーとしてのガラスとを含有しており、導電性(例えば、抵抗値が数百mΩ程度)を有している。そして、端子電極6及び中心電極5は、両ガラスシール層8,9及び抵抗体7を介して電気的に接続されるとともに、両ガラスシール層8,9により絶縁碍子2に固定されている。尚、両ガラスシール層8,9は、導電性材料とホウ珪酸ガラス粉末とが混合されて調製されたガラス粉末混合物が加熱されることで形成されている。
加えて、主体金具3は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、その外周面には点火プラグ1を燃焼装置(例えば、内燃機関や燃料電池改質器等)の取付孔に取付けるためのねじ部(雄ねじ部)15が形成されている。また、ねじ部15よりも後端側には外周側に突出する鍔状の座部16が形成され、ねじ部15後端のねじ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている。さらに、主体金具3の後端側には、主体金具3を燃焼装置に取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられるとともに、後端部において絶縁碍子2を保持するための加締め部20が設けられている。
また、主体金具3の先端側内周面には、絶縁碍子2を係止するためのテーパ状の段部21が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3に対してその後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部21に係止された状態で、主体金具3の後端側開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって主体金具3に固定されている。尚、両段部14,21間には、円環状の板パッキン22が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性を保持し、燃焼室内に晒される絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料ガスが外部に漏れないようになっている。
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材23,24が介在され、リング部材23,24間にはタルク(滑石)25の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン22、リング部材23,24及びタルク25を介して絶縁碍子2を保持している。
また、主体金具3の先端部26には、自身の中間部分にて曲げ返されて、先端部側面が中心電極5の先端部と対向する棒状の接地電極27が接合されている。そして、中心電極5の先端部と接地電極27の先端部との間には、火花放電間隙29が形成されており、当該火花放電間隙29にて軸線CL1にほぼ沿った方向で火花放電が行われるようになっている。尚、接地電極27のうち中心電極5の先端部と対向する部位に、耐消耗性に優れる金属からなるチップを設けることとしてもよい。
さらに、図2(a),(b)に示すように、端子電極6は、その先端部に、先端側に開口し、端子電極6の中心軸CL2(尚、本実施形態において、中心軸CL2は軸線CL1と一致している)方向を深さ方向とする凹部6Dと、当該凹部6Dの外周側において凹部6Dと隣接し中心軸CL2方向と直交する方向に延びる平坦部6Eとを有している。尚、「中心軸CL2と直交する方向に延びる」とあるのは、厳密に中心軸CL2と直交する方向に延びる場合のみならず、中心軸CL2と直交する方向に対して若干傾斜する場合も含む。
凹部6Dは、前記中心軸CL2方向に0.3mm以上の深さを有しており、中心軸CL2と直交する断面において円形状をなすように構成されている。また、本実施形態において、凹部6Dは、その内径が前記中心軸CL2方向後端側に向けて徐々に小さくなるテーパ状とされている。尚、本実施形態において、凹部6Dの深さは所定値以下(例えば、1.0mm以下)とされている。
平坦部6Eは、環状をなしており、中心軸CL2と直交する方向に沿った幅が所定値以上(例えば、0.1mm以上)とされている。
さらに、図3〔図3は、図2(a)のJ−J線断面図である〕に示すように、端子電極6の先端から中心軸CL2に沿って0.1mm後端側における中心軸CL2と直交する断面を取る。このとき、端子電極6の外周面を形成する外形線で囲まれた領域R1(次述する領域R2及び図3中ハッチングを付した領域からなる領域)の面積をA(mm2)とし、端子電極6のうち前記凹部6Dを形成する内側面の外形線で囲まれた領域R2の面積をB(mm2)としたとき、0.52≦B/A≦0.91を満たすように構成されている。すなわち、端子電極6の先端部において、凹部6Dの開口面積がある程度の大きさ確保される一方で、平坦部6Eの幅が過度に小さくならないように構成されている。
さらに、本実施形態では、根元部6Bの硬度をビッカース硬度でC(Hv)とし、小径部6Cの硬度をビッカース硬度でD(Hv)としたとき、0.80≦C/D≦1.20を満たすように構成されている。尚、「根元部6Bの硬度」や「小径部6Cの硬度」とあるのは、根元部6Bや小径部6Cの表面のうち、凹部6Dやローレットなどを形成する際の加工等により硬度変化が生じ得る部位以外の部位において測定される硬度をいう。また、硬度は、JIS Z2244の規定に基づき測定することができる。具体的には、正四角推状のダイヤモンド圧子により、根元部6Bや小径部6C対して所定(例えば、1.961N)の荷重を加える。そして、荷重の印加に伴い端子電極6に形成される圧痕の対角線長さに基づき、根元部6Bや小径部6Cの硬度を測定することができる。
加えて、根元部6Bの硬度(ビッカース硬度C)は、例えば、図4に示すように、中心軸CL2を含む断面において、根元部6Bのうち、頭部6Aの先端から中心軸CL2方向先端側に3mm離間する、幅2mm、長さ3mmの領域R3内における10点の硬度の平均値とすることができる。また、小径部6Cの硬度(ビッカース硬度D)は、例えば、中心軸CL2を含む断面において、小径部6Cのうち、根元部6Bの先端から中心軸CL2方向先端側に3mm離間する、幅2mm、長さ3mmの領域R4内における10点の硬度の平均値とすることができる。
加えて、本実施形態では、頭部6Aの先端から端子電極6の先端までの前記中心軸CL2に沿った長さLが50mm以上とされている(図1参照)。
さらに、図5に示すように、端子電極6の先端を通り軸線CL1と直交する断面において、絶縁碍子2の厚さTが3.0mm以上とされている。尚、通常、絶縁碍子2の厚さTは、2.5mm以下とされる。
加えて、本実施形態では、後端側ガラスシール層8に含有される導電性材料は金属とされており、後端側ガラスシール層8における導電性金属の含有量が50質量%以上60質量%以下とされている。
また、図6に示すように、後端側ガラスシール層8のうち、端子電極6の先端面中央部分の先端側に位置する部位である凹部対応部8A(すなわち、端子電極6のうち凹部6Dを形成する面で押圧される部位であり、図6中、散点模様を付した部位)の気孔率が0.92%以下とされている。尚、凹部対応部8Aとあるのは、後端側ガラスシール層8のうち、それぞれ後述する第1仮想線VL1,第2仮想線VL2,第3仮想線VL3、及び、第4仮想線VL4で囲まれた領域内に位置する部位をいう。第1仮想線VL1は、端子電極6の先端を通り軸線CL1と直交する直線であり、第2仮想線VL2は、第1仮想線VL1よりも軸線CL1に沿って1.0mm先端側に位置し軸線CL1と直交する直線である。また、第3仮想線VL3は、軸孔4の外形線と第1仮想線VL1との2つの交点XP1,XP2の中点CPから軸線CL1と直交する方向に沿って一方側に0.5mmの点を通り軸線CL1方向に延びる直線であり、第4仮想線VL4は、前記中点CPから軸線CL1と直交する方向に沿って他方側に0.5mmの点を通り軸線CL1方向に延びる直線である。
また、気孔率は、次に手法により得ることができる。すなわち、凹部対応部8Aを通る位置において、軸線CL1に沿って後端側ガラスシール層8を切断するとともに、切断面に鏡面研磨を施す。その後、研磨面をSEM観察(例えば、加速電圧20kV、スポットサイズ50、COMPO像、組成像)して研磨面全体が写された画像を取得する。そして、取得された画像から気孔部分の面積割合を測定することにより、気孔率を得ることができる。
尚、凹部対応部8Aの気孔率は、後述するホットプレス工程におけるプレス長さを調節することで変更することができる。例えば、プレス長さが大きいと、凹部対応部8Aの気孔率が減少し、プラス長さが小さいと、凹部対応部8Aの気孔率が増大する。
次いで、上述した点火プラグ1の製造方法について説明する。
まず、主体金具3を予め加工しておく。すなわち、円柱状の金属素材(例えば、鉄系素材やステンレス素材)に対して冷間鍛造加工等により概形を形成するとともに、貫通孔を形成する。その後、切削加工を施すことで外形を整え、主体金具中間体を得る。
次いで、主体金具中間体の先端面に、Ni合金からなる直棒状(針状)の接地電極27を抵抗溶接する。当該溶接に際してはいわゆる「ダレ」が生じるので、その「ダレ」を除去した後、主体金具中間体の所定部位にねじ部15が転造によって形成される。これにより、接地電極27の溶接された主体金具3が得られる。
次いで、接地電極27の溶接された主体金具3に対して、亜鉛メッキ或いはNiメッキが施される。尚、耐食性向上を図るべく、その表面に、さらにクロメート処理が施されることとしてもよい。
一方、前記主体金具3とは別に、絶縁碍子2を成形加工しておく。例えば、アルミナを主体としバインダ等を含む原料粉末を用いて、成形用素地造粒物を調製するとともに、当該成形用素地造粒物を用いてラバープレス成形を行うことで、筒状の成形体が得られる。そして、得られた成形体に対し、研削加工が施され整形されるとともに、整形されたものが焼成炉で焼成されることにより、絶縁碍子2が得られる。
また、前記主体金具3、絶縁碍子2とは別に、中心電極5を製造しておく。すなわち、中央部に放熱性向上を図るための銅合金等を配置したNi合金に鍛造加工を施すことで中心電極5を作製する。
また、端子電極6を予め作製しておく。すなわち、低炭素鋼からなる棒状部材に鍛造加工や切削加工を施すことで、先端部に凹部6D及び平坦部6Eを有する端子電極6を作製する。尚、端子電極6を作製する際には、根元部6Bの硬度をビッカース硬度でC(Hv)とし、小径部6Cの硬度をビッカース硬度でD(Hv)としたとき、0.80≦C/D≦1.20を満たすものとされる。
さらに、抵抗体7を形成するための粉末状の抵抗体組成物を調製しておく。より詳しくは、まず、導電性材料(例えば、カーボンブラック)と、ガラス粉末と、セラミックス粒子と、所定のバインダとをそれぞれ配合し、水を媒体として混合する。そして、混合して得られたスラリーを乾燥させ、これにガラス粉末を混合攪拌することで、抵抗体組成物が得られる。
次に、ホットプレス工程において、軸孔4内に抵抗体7が設けられるとともに、ガラスシール層8,9により、絶縁碍子2に中心電極5及び端子電極6が封着固定される。
より詳しくは、まず、図7(a)に示すように、軸孔4の先端側に中心電極5を挿入する。次いで、ホウ珪酸ガラスと導電性の金属粉末とが混合されて調製されたガラス粉末混合物41を軸孔4内に充填し、充填したガラス粉末混合物41を予備圧縮する。次に、前記抵抗体組成物42を軸孔4に充填して同様に予備圧縮をし、さらに、ガラス粉末混合物43を軸孔4に充填し、同じく予備圧縮を行う。次いで、端子電極6の小径部6C及び根元部6Bを軸孔4に挿入し、端子電極6をガラス粉末混合物43上に載置する。このとき、抵抗体7の負荷寿命特性を向上させるべく、抵抗体組成物42等のプレス長さX(頭部6Aと絶縁碍子2の後端との間に形成される隙間の大きさ)が十分に大きなものとされる。尚、プレス長さXは、厳密に一定とはされず、所定の範囲内においてある程度のバラツキが許容されるが、凹部対応部8Aの気孔率を0.92%以下とすることが可能な程度の大きさとされる。
この状態で、図7(b)に示すように、端子電極6を軸線CL1方向先端側へと押圧した状態で、焼成炉内において、ガラス粉末混合物41,43や抵抗体組成物42を、ガラス軟化点以上の所定の目標温度(例えば、900℃)で加熱する。このとき、端子電極6の先端部に凹部6Dが存在するとともに、B/A≦0.91を満たすため、端子電極6による押圧時に、ガラス粉末混合物43は、端子電極6の外周側にある程度の量だけ回り込むこととなる。その一方で、0.52≦B/Aを満たすため、ガラス粉末混合物43の回り込み量は過大なものとならず、端子電極6からガラス粉末混合物43へと大きな圧力が加わり、ひいては抵抗体組成物42に対しても大きな圧力が加わる。また、端子電極6の先端部に設けられた平坦部6Eにより、ガラス粉末混合物43のうち外周側に位置する部位に対しては、特に大きな圧力が加わる。その結果、抵抗体組成物42のうち外周側に位置する部位はより確実に圧縮されることとなる。
積層状態にある抵抗体組成物42及びガラス粉末混合物41,43を加熱・圧縮した後、所定時間に亘って抵抗体組成物42及びガラス粉末混合物41,43を冷却することで、図7(c)に示すように、抵抗体7及びガラスシール層8,9が形成される。
尚、ホットプレス工程において、端子電極6の外周側へとガラス粉末混合物43がある程度回り込むことから、端子電極6の外周面と絶縁碍子2の内周面との間における軸線CL1方向に沿った比較的広範囲に亘って、後端側ガラスシール層8が存在することとなる。また、ガラス粉末混合物43ひいては抵抗体組成物42に大きな圧力が加わるため、抵抗体7や後端側ガラスシール層8に気孔が形成されにくく、抵抗体7や後端側ガラスシール層8の密度がより大きなものとなる。特に、抵抗体組成物42のうち外周側に位置する部位にはより大きな圧力が加わるため、抵抗体7のうち外周側に位置する部位は、より高密度となる。尚、端子電極6及び中心電極5間における通電時には、絶縁碍子2の内周面を這うようにして電流が流れやすく、抵抗体7のうち外周側に位置する部位が通電経路となりやすい。すなわち、本実施形態では、通電経路となりやすく、酸化が生じやすい(抵抗値が増大しやすい)抵抗体7の外周側部位において、密度の向上がより顕著に図られ、通電に伴う抵抗値の増大がより生じにくくなるように構成されている。尚、ホットプレス工程に際して、絶縁碍子2の後端側胴部10の表面に釉薬層を同時に焼成することとしてもよいし、事前に釉薬層を形成することとしてもよい。
その後、上記のようにそれぞれ作製された中心電極5や抵抗体7等を備える絶縁碍子2と、接地電極27を備える主体金具3とが固定される。より詳しくは、主体金具3に絶縁碍子2を挿通した上で、比較的薄肉に形成された主体金具3の後端側開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって絶縁碍子2と主体金具3とが固定される。
そして最後に、接地電極27の中間部分を中心電極5側に屈曲させるとともに、中心電極5及び接地電極27間に形成された火花放電間隙29の大きさを調整することで、上述した点火プラグ1が得られる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、端子電極6の先端部に凹部6Dが設けられるとともに、0.52≦B/Aを満たすように構成されている。従って、端子電極6によるガラス粉末混合物43の圧縮時において、端子電極6の外周側に対するガラス粉末混合物43の回り込み量が過度に多くなってしまうことをより確実に防止できる。これにより、ガラス粉末混合物43ひいては抵抗体組成物42に対して大きな圧力を加えることができ、後端側ガラスシール層8及び抵抗体7の双方において密度を十分に増大させることができる。そのため、後端側ガラスシール層8を介した絶縁碍子2に対する端子電極6の固着力を向上させることができ、良好な耐衝撃性を実現することができる。また、振動が加えられた際に端子電極6と後端側ガラスシール層8との間に隙間が形成されにくくなるとともに、抵抗体7中に多数の導電経路をより確実に形成することができる。その結果、良好な負荷寿命特性を実現することができる。
さらに、B/A≦0.91を満たすように構成されており、平坦部6Eの面積が十分に確保されている。従って、平坦部6Eにより、抵抗体組成物42のうち外周側に位置する部位をより確実に圧縮することができ、ひいては通電に伴う抵抗値の増大がより生じやすい抵抗体7の外周側部位の密度を著しく増大させることができる。その結果、一層優れた負荷寿命特性を実現することができる。
また、B/A≦0.91を満たすため、端子電極6によりガラス粉末混合物43を圧縮する際に、ある程度の量のガラス粉末混合物43が端子電極6の外周側へと回り込むこととなる。そのため、端子電極6の外周面と絶縁碍子2の内周面との間における比較的広範囲に亘って後端側ガラスシール層8が存在することとなり、絶縁碍子2に対する端子電極6の固着力を一層高めることができる。その結果、負荷寿命特性及び耐衝撃性をより効果的に向上させることができる。
特に本実施形態では、長さLが50mm以上とされるとともに、絶縁碍子2の厚さTが3.0mm以上とされているため、負荷寿命特性や耐衝撃性を良好なものとすることが非常に難しいが、端子電極6に凹部6Dを設けるとともに、0.52≦B/A≦0.92を満たすことで、負荷寿命特性や耐衝撃性を十分に高めることができる。
加えて、本実施形態では、0.80≦C/D≦1.20を満たすように構成されており、根元部6Bと小径部6Cとの硬度差が非常に小さなものとされている。従って、衝撃の印加等により端子電極6が振動した際に、端子電極6の振幅を小さくすることができる。これにより、端子電極6の振動に伴い、絶縁碍子2の内周面に対して端子電極6が接触してしまうことをより確実に防止できる。その結果、端子電極6の接触による絶縁碍子2の破損をより確実に防止することができ、耐衝撃性を一層向上させることができる。
さらに、後端側ガラスシール層8における金属の含有量が50質量%以上60質量%以下とされている。従って、端子電極6による圧縮時に、ガラス粉末混合物43においてガラス粉末が潰れやすくなるとともに、端子電極6の外周側に対するガラス粉末混合物43の回り込み量をより適切な量とすることができる。これにより、ガラス粉末混合物43及び抵抗体組成物42をより一層確実に圧縮することができ、後端側ガラスシール層8及び抵抗体7の密度を一層増大させることができる。その結果、負荷寿命特性及び耐衝撃性の双方をさらに向上させることができる。
併せて、後端側ガラスシール層8の凹部対応部8Aにおける気孔率が0.92%以下とされている。従って、後端側ガラスシール層8及び抵抗体7のうち、平坦部6Eに押圧される外周側部位に加えて、後端側ガラスシール層8及び抵抗体7の中央側部位における密度も十分に高めることができる。その結果、負荷寿命特性及び耐衝撃性を一層効果的に向上させることができる。
次いで、上記実施形態によって奏される作用効果を確認すべく、B/A、C/D、長さL(mm)、絶縁碍子の厚さT(mm)、後端側ガラスシール層における金属の含有量(質量%)、及び、前記凹部対応部における気孔率(%)を種々異なるものとした点火プラグのサンプルを作製し、各サンプルについて、負荷寿命特性評価試験、及び、耐衝撃性評価試験を行った。
負荷寿命特性評価試験の概要は次の通りである。すなわち、各サンプルを自動車用トランジスタ点火装置に取り付け、350℃の温度条件下において、20kVの放電電圧で、毎分3600回放電させ、常温における抵抗値が100kΩ以上となった時間(寿命時間)を測定した。そして、寿命時間に応じて各サンプルを10段階に点数分けして、各サンプルの負荷寿命特性を評価した。ここで、前記点数は、150時間未満であったサンプルについては「1」とし、寿命時間が150時間以上200時間未満であったサンプルについては「2」とした。以降、寿命時間が50時間延びるごとに点数を1点ずつ増加させ(例えば、寿命時間が300時間以上350時間未満であったサンプルの点数は、「5」となる)、寿命時間が550時間を超えたサンプルの点数を「10」とした。尚、点数が高いほど、通電に伴う抵抗値の上昇が生じにくく、良好な負荷寿命特性を有するということができる。また、点数が「6」以上であれば、良好な負荷寿命特性を有するということができる。
加えて、耐衝撃性評価試験の概要は次の通りである。すなわち、B/AやC/D等を同一としたサンプルを10本ずつ用意するとともに、各サンプルをL字ブッシュに取付けた上で、JIS B8031の7.4に規定される衝撃試験機により、衝呈22mmとして毎分400回の割合でサンプルに衝撃を与えた。そして、10分間経過後に、絶縁碍子に対して端子電極が正常に固定されているか否か、端子電極の接触による絶縁碍子の破損が生じているか否か等を確認し、異常の有無を判断した。さらに、10本中において異常が発生しなかったサンプルの本数を点数として評価した。例えば、10本中、5本のサンプルにおいて異常が発生しなかった場合、点数を「5」とし、10本のサンプル全てにおいて異常が発生しなかった場合、点数を「10」とした。尚、点数が高いほど、衝撃による異常が生じにくいということができ、点数が「2」以上であれば、耐衝撃性が良好であるということができる。
表1に、両試験の結果を示す。尚、根元部の硬度Cは、根元部の表面において選択された10点における硬度の平均値であり、小径部の硬度Dは、小径部の表面において選択された10点における硬度の平均値である。また、各サンプルともに、軸孔のうち抵抗体が配置される部位の内径を3.9mmとした。
Figure 0005809673
表1に示すように、B/Aを0.52未満としたサンプル(サンプル1〜6)は、少なくとも負荷寿命特性が劣ることが分かった。これは、端子電極の外周側に対するガラス粉末混合物の回り込み量が過度に多くなり、ガラス粉末混合物や抵抗体組成物に加わる圧力が小さくなってしまったため、後端側ガラスシール層や抵抗体の密度が小さくなったためであると考えられる。
また、負荷寿命特性等が不十分となったサンプルのうち、長さLのみを異なるものとしたサンプル(サンプル1〜3)を比較したところ、長さLを50mm以上としたサンプル(サンプル2,3)は、負荷寿命特性が特に不十分となりやすいことが確認された。これは、長さLを50mm以上としたサンプルは、端子電極からガラス粉末混合物に対して圧力が加わりにくくなり、その結果、後端側ガラスシール層や抵抗体に多数の気孔が形成されたためであると考えられる。
加えて、負荷寿命特性等が不十分となったサンプルのうち、絶縁碍子の厚さTのみを異なるものとしたサンプル(サンプル4〜6)を比較したところ、厚さTを3.0mm以上としたサンプル(サンプル5,6)は、負荷寿命特性及び耐衝撃性がより低下しやすいことが確認された。これは、ガラス粉末混合物を冷却・固化させるために長時間が必要となり、後端側ガラスシール層に気孔が形成されやすくなったためであると考えられる。
さらに、B/Aを0.91よりも大きくしたサンプル(サンプル7)は、負荷寿命特性及び耐衝撃性に劣ることが分かった。これは、平坦部の幅が非常に小さかったため、通電に伴う抵抗値の増大が特に生じやすい抵抗体の外周側部位の密度がさほど大きなものとならなかった点、及び、端子電極の外周側に対してガラス粉末混合物がほとんど回り込まなくなったため、端子電極の外周面と後端側ガラスシール層との接触面積が小さくなり、後端側ガラスシール層により端子電極を保持する力が不十分となったためであると考えられる。
これに対して、0.52≦B/A≦0.91を満たすサンプル(サンプル8〜30)は、負荷寿命特性及び耐衝撃性の双方が良好となることが明らかとなった。負荷寿命特性が良好となった理由は、次の(1)及び(2)であると考えられ、耐衝撃性が良好となった理由は、次の(3)及び(4)であると考えられる。
(1)端子電極の先端部に凹部が存在するとともに、0.52≦B/Aを満たすことで、ホットプレス工程において、ガラス粉末混合物の回り込み量が過大なものとならず、ひいてはガラス粉末混合物及び抵抗体組成物に対して大きな圧力が加わり、抵抗体の密度が十分に増大したこと。
(2)B/A≦0.91を満たすことで、端子電極の平坦部により、抵抗体組成物のうち外周側に位置する部位がより確実に圧縮され、ひいては通電に伴う抵抗値の増大が特に生じやすい抵抗体の外周側部位の密度が著しく増大したこと。
(3)0.52≦B/Aを満たすことで、ホットプレス工程において、ガラス粉末混合物の回り込み量が過大なものとならず、ガラス粉末混合物に大きな圧力が加わったことで、後端側ガラスシール層の密度が十分に増大し、単位面積当たりにおいて端子電極と後端側ガラスシール層との接触面積が十分に大きなものとなったこと。
(4)B/A≦0.91を満たすことで、ホットプレス工程において、ある程度の量のガラス粉末混合物が端子電極の外周側に回り込むこととなったため、端子電極の外周面と絶縁碍子の内周面との間における比較的広範囲に亘って後端側ガラスシール層が存在することとなり、後端側ガラスシール層による端子電極の保持力が増大したこと。
さらに、0.52≦B/A≦0.91を満たすサンプルのうち、長さLのみを異なるものとしたサンプル(サンプル10〜12)を比較したところ、長さLが50mm以上とされ、負荷寿命特性の低下が特に懸念されるサンプル(サンプル11,12)においても、長さLを50mm未満としたサンプル(サンプル10)と同様の優れた負荷寿命特性を実現できることが確認された。
加えて、0.52≦B/A≦0.91を満たすサンプルのうち、絶縁碍子の厚さTのみを異なるものとしたサンプル(サンプル13〜15)を比較したところ、厚さTが3.0mm以上とされ、負荷寿命特性や耐衝撃性の低下が特に懸念されるサンプル(サンプル14,15)においても、厚さTを3.0mm未満としたサンプル(サンプル13)と同様の優れた負荷寿命特性及び耐衝撃性を実現できることが分かった。
さらに、C/Dのみを種々異なるものとしたサンプル(サンプル16〜19)のうち、0.80≦C/D≦1.20を満たすサンプル(サンプル17,18)は、極めて優れた耐衝撃性を有することが明らかとなった。これは、根元部と小径部との硬度差を小さくしたことで、端子電極の先端部を支点として端子電極が振動した際に、端子電極の振幅が小さくなり、絶縁碍子の内周面に対する端子電極の接触が抑制されたためであると考えられる。
加えて、後端側ガラスシール層における金属の含有量のみを種々異なるものとしたサンプル(サンプル20〜25)のうち、導電性金属の含有量を50質量%以上60質量%以下としたサンプル(サンプル21〜24)は、負荷寿命特性及び耐衝撃性の双方が一層向上することが確認された。これは、金属の含有量を50質量%以上としたことで、加熱された際にガラス粉末混合物の粘度が過度に低下してしまうことを防止でき、端子電極の外周側に対するガラス粉末混合物の回り込み量がより適切な量となった点と、金属の含有量を60質量%以下としたことで、端子電極による圧縮時にガラス粉末混合物におけるガラス粉末が潰れやすくなった点とが相乗的に作用したことにより、抵抗体及び後端側ガラスシール層の密度が一層増大したためであると考えられる。
さらに、凹部対応部における気孔率のみを種々異なるものとしたサンプル(サンプル26〜30)のうち、気孔率を0.92%以下としたサンプル(サンプル26〜28)は、負荷寿命特性及び耐衝撃性がさらに高まることが分かった。これは、ホットプレス工程において、抵抗体組成物に対してより圧力が加わることとなり、抵抗体の密度がより増大したこと、及び、単位面積当たりにおける端子電極の先端面と後端側ガラスシール層との接触面積が一層増大し、後端側ガラスシール層を介した絶縁碍子に対する端子電極の固着力がより向上したことに起因すると考えられる。
上記試験の結果より、負荷寿命特性及び耐衝撃性の双方において良好な性能を実現すべく、端子電極の先端部に凹部及び平坦部を設けるとともに、0.52≦B/A≦0.91を満たすように構成することが好ましいといえる。
加えて、耐衝撃性の更なる向上を図るべく、0.80≦C/D≦1.20を満たすことがより好ましいといえる。
さらに、負荷寿命特性及び耐衝撃性の双方を一層向上させるという観点から、後端側ガラスシール層における金属の含有量を50質量%以上60質量%以下とすることがより好ましいといえる。
併せて、より優れた負荷寿命特性及び耐衝撃性を実現すべく、後端側ガラスシール層の凹部対応部における気孔率を0.92%以下とすることがより好ましいといえる。
また、長さLが50mm以上とされる場合や、絶縁碍子の厚さTが3.0mm以上とされる場合には、良好な負荷寿命特性及び耐衝撃性を確保することが難しいが、上記構成を採用する(端子電極の先端部に凹部及び平坦部を設けるとともに、0.52≦B/A≦0.91を満たす)ことで、良好な負荷寿命特性及び耐衝撃性をより確実に実現することができる。換言すれば、上記構成は、長さLが50mm以上の点火プラグや、絶縁碍子の厚さTが3.0mm以上の点火プラグに対して、特に有効であるといえる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態において、凹部6Dはテーパ状とされているが、凹部の形状はこれに限定されるものではない。従って、例えば、図8(a)に示すように、中心軸CL2を含む断面において、端子電極36のうち凹部36Dを形成する内側面の外形線が湾曲線状をなすように凹部36Dを構成してもよい。また、図8(b)に示すように、凹部37Dが中心軸CL2方向に沿って一定の内径を有するように端子電極37を構成してもよい。
(b)端子電極の形状は、上記実施形態における形状に限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、中心軸CL2に沿った頭部38A(端子電極38のうち、その後端から径方向外側に突出する鍔状部38Fの先端までの間に位置する部位)の長さが比較的小さくなるように端子電極38を構成してもよい。尚、この場合において、根元部38Bの硬度(ビッカース硬度C)は、例えば、中心軸CL2を含む断面において、根元部6Bのうち、鍔状部38Fの先端から中心軸CL2方向先端側に3mm離間する、幅2mm、長さ3mmの領域R5内における10点の硬度の平均値とすることができる。また、小径部38Cの硬度(ビッカース硬度D)は、例えば、中心軸CL2を含む断面において、小径部38Cのうち、根元部38Bの先端から中心軸CL2方向先端側に3mm離間する、幅2mm、長さ3mmの領域R6内における10点の硬度の平均値とすることができる。
(c)上記実施形態では、軸線CL1と中心軸CL2とが一致するように構成されているが、軸線CL1と中心軸CL2とが必ずしも一致している必要はない。例えば、ホットプレス工程において端子電極6が若干屈曲した場合には、軸線CL1に対して中心軸CL2がずれることとなる。
(d)上記実施形態では、主体金具3の先端部26に、接地電極27が接合される場合について具体化しているが、主体金具の一部(又は、主体金具に予め溶接してある先端金具の一部)を削り出すようにして接地電極を形成する場合についても適用可能である(例えば、特開2006−236906号公報等)。
(e)上記実施形態では、工具係合部19は断面六角形状とされているが、工具係合部19の形状に関しては、このような形状に限定されるものではない。例えば、Bi−HEX(変形12角)形状〔ISO22977:2005(E)〕等とされていてもよい。
1…点火プラグ
2…絶縁碍子(絶縁体)
4…軸孔
5…中心電極
6…端子電極
6A…頭部
6B…根元部
6C…小径部
6D…凹部
6E…平坦部
7…抵抗体
8…後端側ガラスシール層(ガラスシール層)
CL1…軸線
CL2…(端子電極の)中心軸

Claims (6)

  1. 軸線方向に貫通する軸孔を有する絶縁体と、
    前記軸孔の後端側に挿通される端子電極と、
    前記軸孔の先端側に挿通される中心電極と、
    前記軸孔内において前記端子電極及び前記中心電極間に配置されるとともに、導電性物質及びガラスを含有する抵抗体と、
    前記軸孔内において前記抵抗体よりも後端側に配置されるとともに、前記端子電極の先端部に接触し、導電性材料及びガラスを含有するガラスシール層とを備える点火プラグであって、
    前記端子電極は、その先端部に、
    先端側に開口し、前記端子電極の中心軸方向に0.3mm以上の深さを有する凹部と、
    前記凹部とその外周側において隣接する平坦部とを有し、
    前記端子電極の先端から前記中心軸に沿って0.1mm後端側における前記中心軸と直交する断面において、前記端子電極の外周面を形成する外形線で囲まれた領域の面積をA(mm2)とし、前記端子電極のうち前記凹部を形成する内側面の外形線で囲まれた領域の面積をB(mm2)としたとき、
    0.52≦B/A≦0.91
    を満たすことを特徴とする点火プラグ。
  2. 前記端子電極は、
    前記絶縁体の後端から露出する頭部と、
    前記頭部の先端から先端側に延びる根元部と、
    前記根元部よりも先端側に位置するとともに、自身の外径が前記根元部の外径よりも小さい小径部とを備え、
    前記根元部の硬度をビッカース硬度でC(Hv)とし、前記小径部の硬度をビッカース硬度でD(Hv)としたとき、
    0.80≦C/D≦1.20
    を満たすことを特徴とする請求項1に記載の点火プラグ。
  3. 前記端子電極は、前記絶縁体の後端から露出する頭部を備え、
    前記頭部の先端から前記端子電極の先端までの前記中心軸方向に沿った長さが50mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の点火プラグ。
  4. 前記端子電極の先端を通り前記軸線と直交する断面において、前記絶縁体の厚さが3.0mm以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の点火プラグ。
  5. 前記導電性材料は金属であり、前記ガラスシール層における前記金属の含有量が50質量%以上60質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の点火プラグ。
  6. 前記軸線を含む断面において、前記端子電極の先端を通り前記軸線と直交する第1仮想線と、前記第1仮想線よりも前記軸線に沿って1.0mm先端側に位置し前記軸線と直交する第2仮想線と、前記軸孔の外形線と前記第1仮想線との2つの交点の中点から前記軸線と直交する方向に沿って一方側に0.5mmの点を通り前記軸線方向に延びる第3仮想線と、前記中点から前記軸線と直交する方向に沿って他方側に0.5mmの点を通り前記軸線方向に延びる第4仮想線とで囲まれた領域における、前記ガラスシール層の気孔率が0.92%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の点火プラグ。
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