(第1の実施の形態)
図1には、本発明の第1の実施形態に係る車両用シートとしてのリヤシート10が斜視図にて示されている。また、図2には、リヤシート10のシートバック14が前倒れ位置に回動された状態が斜視図にて示されており、図3には、リヤシート10のシートクッション16が格納位置に回動された状態が斜視図にて示されている。なお、図中に適宜示される矢印FRは、リヤシート10の前方向を示しており、矢印Wは、リヤシート10の幅方向を示している。また、矢印UPは、上方向を示している。
これらの図に示されるように、リヤシート10は、シートクッション12を備えている。シートクッション12は、後述するヒンジユニット20を介して車両の側壁部90に回動可能に支持されており、これにより、シートクッション12が使用位置(図1に示される位置)と格納位置(図3に示される位置)との間で回動可能に構成されている。ここで、使用位置とは、シートクッション12が車両のフロア部92と略平行に配置された位置であり、格納位置とは、シートクッション12が車両の側壁部90側に跳ね上げられて車両の側壁部90と略平行に配置された(シート後方から見て上下方向に延設された)位置である。
シートクッション12の上方には、後方の端部において、シートバック14が設けられている。シートバック14の下端には、周知のリクライニング機構16が連結されており、リクライニング機構16はシートクッション12のシート後方の端部に連結されている。また、リクライニング機構16によって、図1に示される起立位置にシートバック14が傾倒不能にロックされており、リクライニング機構16のシートバック14に対するロックが解除されることで、リクライニング機構16に設けられた渦巻バネのばね力によって、図2に示される前倒れ位置へシートバック14が傾倒されるように構成されている。なお、リクライニング機構16において、渦巻バネを設けない構成にしてもよい。ここで、起立位置とは、シートバック14がシートクッション12に対して略上下方向に起立した位置であり、前倒れ位置とは、シートバック14が、起立位置からシート前方に傾倒されて、シートクッション12に対して略平行に重なり合った位置である。これにより、シートバック14が前倒れ位置に配置された際に、シートクッション12がシートバック14と共に格納位置へ回動可能にされる。
図6にも示すように、シートクッション12と車両の側壁部90との間には、ヒンジユニット20(広義には、「回動機構」として把握される要素である)が設けられている。ヒンジユニット20は、フレーム22を備えている。フレーム22は、車両の側壁部90に固定される略板状の背板24と背板24の両端部からシートクッション12側へ延設された側板26,28とで構成されており、上方から見て凹形状に形成されている。側板26と側板28との間には、長尺略丸棒状の支持軸30が掛け渡されており、支持軸30は側板26と側板28との対向方向(シート前後方向)に沿って配置されている。
また、フレーム22の側板26と側板28との間には、一対のヒンジブラケット32、34(広義には、「連結部」として把握される要素である)が設けられている。ヒンジブラケット32、34は略L字形板状に形成されており、ヒンジブラケット32は側板26に隣接して配置されると共に、ヒンジブラケット34は側板28に隣接して配置されている。これらヒンジブラケット32、34の基端部には、断面円形状の挿通孔32A、34Aがそれぞれ設けられており、挿通孔32A、34A内に支持軸30の長手方向両端部が挿通されて、ヒンジブラケット32、34が支持軸30の軸線回りに回動可能に支持されている。また、ヒンジブラケット32の先端部は、シートクッション12のシート後側の面に固定されると共に、ヒンジブラケット34の先端部は、シートクッション12のシート前方の部分に固定されており、これにより、シートクッション12が車両の側壁部90に回動可能に支持されている。
ヒンジブラケット32には、被当接部としての円柱状の突出ピン36が一体に設けられており、突出ピン36はヒンジブラケット32からシート前方へ突出されている。
ヒンジブラケット32、34の間には、ヒンジユニット20を構成する駆動機構40が設けられている。駆動機構40は、前述したヒンジブラケット32の突出ピン36に回動力を付与すると共にヒンジブラケット32の回動速度を制限するためのものである。駆動機構40は、略板状のベースプレート42を備えており、ベースプレート42は、支持軸30の軸線方向に対して直交する方向に沿って配置されると共に、フレーム22に固定されている。
図6〜図8に示すように、ベースプレート42の上部には、ヒンジブラケット32側において、第1リミットスイッチ44(広義には、「使用位置検出スイッチ」として把握される要素である)が取付けられている。また、ベースプレート42には、第1リミットスイッチ44のシートクッション12側の位置において、第2リミットスイッチ46(広義には、「格納位置検出スイッチ」として把握される要素である)が取付けられている。第1リミットスイッチ44は、後述するセクタギヤ64の第1押圧部68に対応しており、第2リミットスイッチ46は後述するセクタギヤ64の第2押圧部70に対応している。
ベースプレート42のシート前方には、駆動機構40を構成するモータユニット48が配置されている。モータユニット48は、モータ50とギヤボックス52とを備えており、ギヤボックス52が図示しないボルトによってベースプレート42に固定されている。モータユニット48の出力軸54は、ギヤボックス52からヒンジブラケット32側(シート後方)へ突出されて、ベースプレート42を貫通している。また、出力軸54の先端部には、略円筒形状のモータギヤ56が固定されている。モータギヤ56は、ベースプレート42とヒンジブラケット32との間に配置されており、モータギヤ56の外周全体には、外歯が形成されている。
ベースプレート42とヒンジブラケット32との間には、略円盤形状の伝達ギヤ58が設けられており、伝達ギヤ58は、ベースプレート42に回転自在に支持されている。伝達ギヤ58の外周部には、外歯が形成されており、この外歯がモータギヤ56の外歯と噛合されている。また、伝達ギヤ58の側方には、略円盤形状の減速ギヤ60が設けられており、減速ギヤ60は、ベースプレート42に回転自在に支持されている。減速ギヤ60の外周全体には、外歯が形成されており、減速ギヤ60の外歯が伝達ギヤ58の外歯と噛合されている。さらに、減速ギヤ60には、シート前方において、略円盤形状の小径ギヤ62が同軸的かつ一体に設けられている。小径ギヤ62の外周全体には、外歯が形成されている(図6では、小径ギヤ62が図示省略されている)。
ベースプレート42とヒンジブラケット32との間には、回動体としての略半円形状のセクタギヤ64が設けられている。セクタギヤ64は、前述した支持軸30に回動自在に支持されており、これにより、セクタギヤ64の回動中心とヒンジブラケット32,34の回動中心とが同軸上に構成されている。セクタギヤ64の円弧状の外周部には、外歯が形成されており、この外歯が小径ギヤ62の外歯と噛合されている。これにより、セクタギヤ64が、小径ギヤ62、減速ギヤ60、伝達ギヤ58、及びモータギヤ56を介してモータ50に連結されている。
セクタギヤ64には、外周部において、当接部66が設けられている。当接部66は、セクタギヤ64の径方向に沿って配置されて、ヒンジブラケット32の突出ピン36の外周部に当接可能に構成されている。
また、セクタギヤ64には、回動中心に対して当接部66とは反対側の位置において、第1押圧部68が設けられている。第1押圧部68は円弧状に形成されており、第1押圧部68の径がセクタギヤ64の外歯が形成されている外周部の径に対して小径に設定されている。セクタギヤ64が図7に示される位置(以下、この位置を「初期位置」という)に配置された状態では、シートクッション12が使用位置に配置されると共に、第1押圧部68が第1リミットスイッチ44を押圧するように設定されている。これにより、この状態では、第1リミットスイッチ44がON状態にされている。また、この状態からセクタギヤ64が回動方向一側(図7に示される矢印A方向側)へ回動されると、第1押圧部68が第1リミットスイッチ44から離間されて、第1リミットスイッチ44がOFF状態にされると共に、当接部66が突出ピン36に当接しつつ、ヒンジブラケット32が回動方向一側へ回動される。
さらに、セクタギヤ64の円弧状の外周部には、セクタギヤ64の外歯に隣接した位置において、第2押圧部70が設けられている(図7及び図8参照)。セクタギヤ64が、初期位置から回動方向一側へ回動されて、図8に示される位置(以下、この位置を「格納完了位置」という)に配置された際には、第2押圧部70が第2リミットスイッチ46を押圧するように設定されている。これにより、この状態では、第2リミットスイッチ46がON状態にされる。また、この状態からセクタギヤ64が回動方向他側(図8に示される矢印B方向側)に回動されると、第2押圧部70が第2リミットスイッチ46から離間されて、第2リミットスイッチ46がOFF状態にされる。
一方、図1〜図5に示されるように、シートクッション12のヒンジユニット20とは反対側の端部には、下部において、一対の支持ブラケット72が設けられている。一対の支持ブラケット72は、シートクッション12から下方に突出されると共に、シート前後方向に対向して配置されている。また、一対の支持ブラケット72の間には、図示しない長尺棒状のシャフトが掛け渡されており、シャフトはシート前後方向に沿って配置されている。
シートクッション12の下方には、略直方体状の脚部74が設けられている。脚部74の上端部には、上述したシャフトが挿通されており、脚部74がシャフトの軸線回りに回動可能に支持されている。これにより、脚部74は、支持位置(図4に示される位置)と収納位置(図5に示される位置)とに回動可能に構成されている。
脚部74内には、下端部の位置において、ロック機構(図示省略)が内蔵されている。脚部74が支持位置に配置された際には、脚部74の下端部が車両のフロア部92に設けられた凹状の固定部94内に配置されて、ロック機構が固定部94内のロックバー95にロックされるように構成されている。これにより、シートクッション12が使用位置に配置された際に、シートクッション12が、脚部74によってフロア部92に連結されて、脚部74に支持される。また、脚部74内にはソレノイド(図示省略)が内蔵されており、ソレノイドが作動されることでロック機構のロックバー95へのロックが解除されるように構成されている。さらに、脚部74内にはロック解除スイッチ(図示省略)が内蔵されており、ソレノイドが作動されることでロック解除スイッチがON状態にされるように構成されている。
また、フレーム22と脚部74との間には、連動部としての略長尺板状のリンク部76が設けられている。リンク部76の長手方向一端部は、脚部74のシート後側の面に回動可能に連結されており、リンク部76の長手方向他端部は、フレーム22の側板26に回動可能に連結されている。また、シートクッション12が回動される際には、脚部74はシートクッション12の移動に伴って移動すると共に、脚部74の移動位置がリンク部76によって設定されるように構成されている。具体的には、シートクッション12が格納位置に回動された際には、脚部74が、リンク部76によってシートクッション12の回動に連動して、シートクッション12のシート幅方向に沿った収納位置に配置されるように構成されている。一方、シートクッション12が使用位置に回動された際には、脚部74が、リンク部76によってシートクッション12の回動に連動して、支持位置に配置されるように構成されている。
一方、シートクッション12には、略長尺帯状のストラップ78が設けられている。ストラップ78の長手方向一端部はシートクッション12の下面に固定されており、ストラップ78の長手方向他端には係止具80が固定されている。シートクッション12が格納位置に配置された際に、係止具80を側壁部90に設けられたキャッチャー部96に引掛ける(係止する)ことで、シートクッション12が格納位置において固定される。また、車両の側壁部90には、弾性体としてのパッド部98が設けられている。パッド部98は、ウレタン等の発泡材により形成されて、側壁部90からリヤシート10側へ突出されている。シートクッション12が格納位置に配置された際に、パッド部98はシートバック14を押圧するように設定されており、これにより、格納位置においてシートクッション12が使用位置側へ付勢されている。
また、シートクッション12には、ヒンジユニット20とは反対側の側面において、操作スイッチ82が設けられている。操作スイッチ82はアップ側スイッチ84とダウン側スイッチ86とで構成されている。アップ側スイッチ84が操作されると、セクタギヤ64が回動方向一側へ回動されるようにモータ50が駆動(作動)され、ダウン側スイッチ86が操作されると、セクタギヤ64が回動方向他側へ回動されるようにモータ50が駆動(作動)される。
リヤシート10は、図示しない制御回路を備えている。制御回路には、第1リミットスイッチ44、第2リミットスイッチ46、及びロック解除スイッチがそれぞれ電気的に接続されると共に、モータユニット48のモータ50及び脚部74のソレノイドがそれぞれ電気的に接続されている。また、制御回路には、操作スイッチ82が電気的に接続されている。制御回路は、操作スイッチ82(アップ側スイッチ84及びダウン側スイッチ86)の操作状態、及び第1リミットスイッチ44、第2リミットスイッチ46、ロック解除スイッチのON・OFF状態に基づいて、モータ50及びソレノイドの駆動(作動)を制御するように構成されている。
ここで、リヤシート10では、シートクッション12を格納位置から使用位置へ復帰させる際には、シートクッション12及びシートバック14の自重によってシートクッション12がシートバック14と共に回動されるように構成されている。また、セクタギヤ64の回動方向他側への回動速度が、シートクッション12及びシートバック14が自重によって回動する回動速度に比して遅い速度になるように、制御回路がモータ50の回転速度を制御しており、このため、ヒンジブラケット32の突出ピン36がセクタギヤ64の当接部66に当接されつつ、セクタギヤ64及びヒンジブラケット32,34が回動方向他側へ回動されるように構成されている。
次に、第1の実施の形態の作用について説明する。
初めに、シートクッション12及びシートバック14を使用位置から格納位置に格納する際の操作について説明する。
シートクッション12が使用位置に配置されている状態では、セクタギヤ64が初期位置に配置されて、セクタギヤ64の第1押圧部68が第1リミットスイッチ44を押圧しており、第1リミットスイッチ44がON状態にされている。また、セクタギヤ64の第2押圧部70は第2リミットスイッチ46から離間されており、第2リミットスイッチ46がOFF状態にされている。さらに、脚部74のソレノイドは作動されていないため、ロック解除スイッチはOFF状態にされており、ロック機構が車両のフロア部92のロックバー95にロックされている。
まず、リクライニング機構16のシートバック14に対するロックを解除して、シートバック14を起立位置から前倒れ位置へ傾倒させる。これにより、シートバック14がシートクッション12に重なり合った状態にされて、シートクッション12が使用位置から格納位置へ回動可能にされる。この状態で、乗員がシートクッション12のアップ側スイッチ84を操作する。
アップ側スイッチ84が操作されると、制御回路が脚部74内のソレノイドを駆動(作動)させて、ロック機構のロックバー95に対するロックが解除されると共に、ロック解除スイッチがOFF状態からON状態にされる。ロック解除スイッチがON状態されると、セクタギヤ64を回動方向一側(図7に示される矢印A方向側)へ回動させるように、制御回路がモータユニット48のモータ50を駆動させる。
これにより、モータ50の回動力が、モータギヤ56、伝達ギヤ58、減速ギヤ60、小径ギヤ62を介してセクタギヤ64に伝達されて、セクタギヤ64が、セクタギヤ64の当接部66をヒンジブラケット32の突出ピン36に当接させつつ回動方向一側へ回動される。このため、ヒンジブラケット32がセクタギヤ64と共に回動方向一側へ回動されて、シートクッション12がシートバック14と共に回動方向一側へ回動される。
セクタギヤ64が回動方向一側へ回動されると、セクタギヤ64の第1押圧部68が第1リミットスイッチ44から離間されて、第1リミットスイッチ44がON状態からOFF状態にされる。そして、セクタギヤ64が格納完了位置まで回動されると、セクタギヤ64の第2押圧部70が第2リミットスイッチ46を押圧して第2リミットスイッチ46がOFF状態から0N状態にされることで、制御回路がモータ50の駆動を停止させる。これにより、リヤシート10が格納位置に配置される。
また、脚部74はシートクッション12に回動可能に連結されているため、シートクッション12が使用位置から格納位置へ回動する際に、脚部74はシートクッション12と共に移動される。さらに、脚部74の移動位置は、リンク部76によって設定されるため、シートクッション12の回動と連動して、脚部74が収納位置に配置される。
リヤシート10が格納位置に配置された際には、セクタギヤ64は、小径ギヤ62、減速ギヤ60、伝達ギヤ58、及びモータギヤ56を介してモータ50に連結されているため、セクタギヤ64の回動が制限されて、セクタギヤ64は格納完了位置に保持される。このため、セクタギヤ64の当接部66がヒンジブラケット32の突出ピン36に当接された状態が維持されるため、ヒンジブラケット32の回動方向他側への移動が制限されて、ひいては、シートクッション12及びシートバック14の回動方向他側(使用位置側)への移動が制限される。そして、ストラップ78の係止具80を車両のキャッチャー部96に引掛けることで、リヤシート10が格納位置に確実に固定される。また、この際には、車両の側壁部90に設けられたパッド部98によってリヤシート10は使用位置側へ付勢されるため、ヒンジブラケット32が回動方向他側へ付勢される。これにより、リヤシート10がガタなく格納位置に固定される。
次に、シートクッション12及びシートバック14を格納位置から使用位置へ復帰させる操作について説明する。
まず、乗員が、ストラップ78の係止具80を車両のキャッチャー部96から外して、ダウン側スイッチ86を操作する。ダウン側スイッチ86が操作されると、セクタギヤ64を回動方向他側へ回動させるように、制御回路がモータユニット48のモータ50を駆動させる。セクタギヤ64が回動方向他側へ回動されると、セクタギヤ64の第2押圧部70が第2リミットスイッチ46から離間されて、第2リミットスイッチ46がON状態からOFF状態にされる。
ところで、セクタギヤ64が格納完了位置から回動方向他側へ回動されると、セクタギヤ64の当接部66がヒンジブラケット32の突出ピン36から離間されようとする。しかし、シートクッション12はパッド部98によって回動方向他側(使用位置側)へ付勢されているため、セクタギヤ64の回動方向他側への回動と同時に、この付勢力によってシートクッション12がシートバック14と共に格納位置から使用位置側へ回動される。このため、リヤシート10が自重によって使用位置側へ回動される。
この際には、制御回路が、セクタギヤ64の回動方向他側への回動速度を、シートクッション12及びシートバック14が自重によって回動する回動速度に比して遅い速度に制御しているため、ヒンジブラケット32の突出ピン36がセクタギヤ64の当接部66に当接されつつ、セクタギヤ64及びヒンジブラケット32が回動方向他側へ回動される。
そして、セクタギヤ64が初期位置まで回動されて、セクタギヤ64の第1押圧部68が第1リミットスイッチ44を押圧して第1リミットスイッチ44がOFF状態からON状態にされることで、制御回路がモータ50の駆動を停止させる。これにより、リヤシート10が格納位置から使用位置に配置される。また、この際には、上述と同様に、脚部74の移動位置はリンク部76によって設定されるため、リンク部76によって脚部74が収納位置から支持位置へ配置されて、脚部74の下端部がフロア部92の固定部94内に配置される。さらに、制御回路は、第1リミットスイッチ44がOFF状態からON状態にされることを認識することで、脚部74のソレノイドの作動を停止させて、ロック機構がフロア部92のロックバー95にロックされる。これにより、シートクッション12がフロア部92に連結される。この後に、シートバック14を前倒れ位置から起立位置へ傾倒させることで、リヤシート10に乗員が着座できる。
ここで、上述したように、セクタギヤ64が初期位置から回動方向一側へ回動することで、セクタギヤ64の当接部66がヒンジブラケット32の突出ピン36に当接されて、シートクッション12が使用位置から格納位置へ回動される。このため、乗員がアップ側スイッチ84を操作することで、シートクッション12が使用位置から格納位置へ回動されるため、乗員の操作負担を軽減できる。さらに、シートクッション12を格納位置に回動させた後では、セクタギヤ64が格納完了位置に保持されており、当接部66と突出ピン36との当接が維持されているため、シートクッション12が使用位置側(回動方向他側)へ回動することが制限される。これにより、シートクッション12が格納位置に保持される。このため、シートクッション12を格納位置に固定するためにストラップ78の係止具80をキャッチャー部96に引掛ける際、及び係止具80をキャッチャー部96から外す際にも、乗員がシートクッション12を支える必要がなくなり、乗員の操作負担を軽減できる。
一方、乗員がダウン側スイッチ86を操作することで、セクタギヤ64が回動方向他側へ回動されて、シートクッション12の使用位置側への回動制限が解除されるため、シートクッション12が自重によって格納位置から使用位置へ回動できる。これにより、シートクッション12を格納位置から使用位置へ復帰させる際に、従来の車両用シートのように、アシストバネの付勢力に抗して、シートクッション12を使用位置側へ回動させる必要がないため、乗員の操作負担を軽減できる。
しかも、シートクッション12が格納位置から使用位置へ回動する際には、突出ピン36の回動速度に比してセクタギヤ64の回動速度が遅く設定されているため、セクタギヤ64が当接部66を突出ピン36に当接させつつ回動方向他側へ回転する。これにより、シートクッション12の回動方向他側への回動速度が、セクタギヤ64の回動速度に制限されるため、シートクッション12の回動速度が速くなることを抑制できる。
以上により、シートクッション12を使用位置及び格納位置に配置させる際の乗員に対する操作負担を軽減できる。
また、上述したように、シートクッション12の回動方向他側への回動速度が、セクタギヤ64の回動速度に制限されるため、シートクッション12が格納位置から使用位置へ一定速度で回動される。このため、リヤシート10の高級感を向上できる。さらに、仮に、シートクッション12が使用位置から格納位置へ回動される際に、シートクッション12が乗員に当たっても、シートクッション12が一定速度で回動されるため、乗員に衝撃荷重が付与されない。このため、乗員に対する安全性を向上できる。
さらに、セクタギヤ64に対してヒンジブラケット32は回動方向一側へ相対回動可能に構成されているため、上述と同様に、シートクッション12が格納位置から使用位置へ回動される際に、仮に、シートクッション12が乗員に当たった場合には、シートクッション12がセクタギヤ64の回動に追従しない。このため、セクタギヤ64の回動力が継続して乗員に付与することを防止できる。
また、シートクッション12が格納位置から使用位置へ回動する際には、脚部74が、リンク部76によってシートクッション12の回動に連動して支持位置に配置されて、車室のフロア部92に連結されると共に、シートクッション12が脚部74に支持される。一方、シートクッション12が使用位置から格納位置へ回動する際には、脚部74が、リンク部76によってシートクッション12の回動に連動して収納位置に配置される。これにより、シートクッション12の回動に連動して、脚部74が支持位置又は収納位置に配置されるため、乗員に対する操作負担を一層軽減できる。
さらに、車室の側壁部90とシートクッション12との間にはパッド部98が設けられており、格納位置においてパッド部98はシートクッション12に弾性力を付与している。このため、シートクッション12が格納位置に配置された際に、パッド部98によってシートクッション12が使用位置側へ付勢されるため、格納位置におけるシートクッション12のガタを抑制できる。さらに、シートクッション12を使用位置へ復帰させるために乗員がダウン側スイッチ86を操作すると、パッド部98からシートクッション12へ作用する弾性力によってシートクッション12が使用位置側へ押し出されるため、シートクッション12を格納位置から使用位置側へ確実に回動させることができる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と略同様の構成であるが、以下の点で異なる。
図9及び図10に示すように、リヤシート100のセクタギヤ64には、一対の略C字形状の爪部102が一体に設けられている。爪部102は、セクタギヤ64の回動方向一側へ開口されており、爪部102の内周部が当接部66とされている。また、爪部102は弾性変形可能に構成されており、爪部102の開口部からヒンジブラケット32の突出ピン36が挿入されて、爪部102が互いに離間する方向へ弾性変形することで、突出ピン36が爪部102内に係合されるように構成されている。また、突出ピン36が爪部102に係合されている状態で、突出ピン36に爪部102の開口部側への外力が作用する際には、爪部102が弾性変形することで、突出ピン36が爪部102から脱出(係合解除)できるように構成されている。
ここで、上述のように、突出ピン36は爪部102に係合されているため、ヒンジブラケット32とセクタギヤ64とが連結されており、ヒンジブラケット32とセクタギヤ64とは基本的には一体回動可能に構成されている。これにより、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏する。
また、第2の実施の形態では、ヒンジブラケット32とセクタギヤ64とは基本的には一体回動可能に構成されているため、シートクッション12を格納位置から使用位置へ復帰させる際に、シートクッション12(ヒンジブラケット32)をセクタギヤ64に確実に追従させることができる。これにより、リヤシート100の車両への組付けばらつきによって、格納位置において、仮にシートクッション12が上下方向に対して回動方向一側(側壁部90)へ傾倒して配置されても、シートクッション12を格納位置から使用位置側へ回動させることができる。
さらに、第2の実施の形態では、爪部102が突出ピン36と係脱可能に構成されているため、例えば、シートクッション12を格納位置から使用位置へ復帰させる際に、仮に乗員にシートクッション12が当たっても、爪部102が弾性変形して、突出ピン36が爪部102の開口部から脱出することで、爪部102と突出ピン36との係合が解除される。これにより、シートクッション12がセクタギヤ64に対して回動方向一側に相対回動されて、セクタギヤ64の回動力が乗員に継続して付与することを防止できる。
なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、格納位置におけるシートクッション12は、上下方向に延設されるように配置されている。これに替えて、シートクッション12が格納位置に配置された際に、シートクッション12が上下方向に対して回動方向他側へ傾倒されてもよい。換言すると、シートクッション12が上方に向かうに従い使用位置側へ傾斜して配置されてもよい。これにより、格納位置において、シートクッション12の自重による回動方向他側(使用位置側)への回動力がシートクッション12に作用するため、シートクッション12を格納位置から使用位置側へ確実に回動させることができる。また、この場合には、格納位置において自重による回動力がシートクッション12に作用しているため、パッド部98を設けない構成にしてもよい。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、側壁部90にパッド部98が設けられている。これに替えて、ヒンジユニット20にヒンジブラケット32を回動方向他側方向へ常に付勢するトーションバネを設けてもよい。また、側壁部90に圧縮コイルバネを設けてシートクッション12を回動方向一側(使用位置側)へ付勢してもよい。
さらに、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、操作スイッチ82(アップ側スイッチ84及びダウン側スイッチ86)がシートクッション12に設けられているが、操作スイッチ82を車両のフロントシートに隣接した位置に更に追加して設けてもよい。これにより、シートバック14が前倒れ位置に配置された状態において、フロントシートに着座した乗員が追加した操作スイッチ82を操作することで、シートクッション12を使用位置又は格納位置に配置できる。したがって、フロントシートに着座した乗員が、リヤシート10を遠隔操作することができるため、乗員に対する利便性を向上できる。
また、この場合において、リクライニング機構16におけるシートバック14に対するロックを、電動アクチュエータによって解除できる構成にすると共に、シートバック14の前倒れ位置への傾倒を検出できるスイッチを追加して設けてもよい。これにより、フロントシートに着座した乗員が追加した操作スイッチ82を操作して、電動アクチュエータを駆動させることで、リクライニング機構16のばね力によって、シートバック14を前倒れ位置へ傾倒できる。そして、制御回路が、追加したスイッチによるシートバック14の前倒れ位置への傾倒を検出することで、ロック機構のロックバー95へのロックを解除させて、セクタギヤ64を回動方向一側へ回動させるように、モータユニット48のモータ50を駆動させる。これにより、シートクッション12がシートバック14と共に使用位置から格納位置へ回動される。したがって、フロントシートに着座した乗員の遠隔操作によって、シートバック14を起立位置から前倒れ位置へ傾倒させて、かつリヤシート10を使用位置から格納位置へ格納できる。
さらに、この場合において、リクライニング機構16に本願のヒンジユニット20を適用してもよい。これにより、シートバック14が起立位置から前倒れ位置へ傾倒される際にも、シートバック14の傾倒速度が制限されるため、リヤシート10の高級感を向上でき、乗員に対する安全性を向上できる。さらに、フロントシートに着座した乗員の遠隔操作によって、シートバック14を前倒れ位置から起立位置へ復帰できる。これにより、シートバック14が起立位置に起立された状態からリヤシート10を格納位置に格納させるリヤシート10の一連の動作、及びリヤシート10が格納位置に格納された状態からシートバック14を起立位置まで復帰させるリヤシート10の一連の動作を、フロントシートに着座した乗員が遠隔操作できる。したがって、乗員に対する利便性を一層向上できる。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、セクタギヤ64が格納完了位置に保持されることで、ヒンジブラケット32及びシートクッション14が格納位置に保持される。これに替えて、セクタギヤ64が格納完了位置に回動された際に、シートクッション14を格納位置に保持させるロック部を別途設けてもよい。これにより、セクタギヤ64が格納完了位置に配置された際に、モータギヤ56、伝達ギヤ58、減速ギヤ60、小径ギヤ62、及びセクタギヤ64によって、ヒンジブラケット32の回動方向他側への回動を制限させる必要がないため、これらモータギヤ56、伝達ギヤ58、減速ギヤ60、小径ギヤ62、及びセクタギヤ64の機械的強度を低く設定できる。したがって、これらモータギヤ56、伝達ギヤ58、減速ギヤ60、小径ギヤ62、及びセクタギヤ64を各々の機械的強度に対応した適正な材料で成形できる。
さらに、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、脚部74内にソレノイドが内蔵されており、ソレノイドが作動されることで、ロック機構のロックバー95へのロックが解除されるように構成されているが、ロック機構のロックバー95へのロックを解除する構成はこれに限らない。例えば、脚部74内にモータを内蔵する共に、当該モータとロック機構とをワイヤで連結させて、当該モータの駆動によってロック機構のロックバー95へのロックが解除される構成にしてもよい。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、シートクッション12が格納位置に回動された際に、リンク部76によって、脚部74が、シートクッション12の回動に連動して、収納位置に配置されるように構成されている。これに替えて、例えば、脚部74を収納位置側へ付勢する付勢バネをシートクッション12内に設けると共に、付勢バネと脚部74とをワイヤによって連結する構成にしてもよい。また、シートクッション12と脚部74との連結部分にトーションバネを設けて、トーションバネの一端をシートクッション12に係止させると共に、トーションバネの他端を脚部74に係止させて、トーションバネが脚部74を収納位置側へ付勢する構成にしてもよい。これにより、ロック機構のロックバー95へのロックが解除された際には、付勢バネやトーションバネのばね力によって、脚部74を収納位置に配置できる。
さらに、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、シートクッション12に、ストラップ78が設けられており、リヤシート10の格納位置において、ストラップ78の係止具80をキャッチャー部96に引掛けるように構成されている。これに替えて、シートクッション12にストラップ78を設けない構成にしてもよい。この場合においても、リヤシート10が格納位置に配置された際には、セクタギヤ64の回動が制限されて、セクタギヤ64は格納完了位置に保持されるため、セクタギヤ64の当接部66がヒンジブラケット32の突出ピン36に当接された状態が維持されて、リヤシート10の回動方向他側(使用位置側)への移動を制限できる。