JP5808210B2 - モータ制御装置およびモータ制御方法 - Google Patents
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Description
かかる問題に対し、特許文献2では、モータの回転の1周期を等間隔に複数に分割したタイミングで駆動電流値(インバータからモータに供給される電流の値)を1周期分サンプリングし、これらサンプリングした駆動電流値の平均値としてオフセット値を算出して、得られたオフセット値に基づいて駆動信号のデューティ比を補正することで、駆動電流のオフセットを補正することが記載されている。
また、特許文献1では、ローパスフィルタを用いて、相電流(インバータからモータに供給される電流)の直流成分をオフセットとして検出することが記載されている。
さらに、特許文献2に記載には、駆動電流値のサンプリングを行うタイミングの検出方法が示されていない。モータ速度が変化する場合、モータの回転の1周期や、当該1周期に基づくサンプリングのタイミングをリアルタイムで検出することは困難と思われる。駆動電流値のサンプリングを行うタイミングにずれが生じると、得られるオフセットに誤差が生じ、オフセット補正を正確に行えなくなってしまう。
図1は、本発明の一実施形態におけるモータ制御装置の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、モータ制御装置100は、角度検出部111と、速度計算部112と、電流検出器121と、3相/2相変換部122と、モード切替部131と、ゲイン設定部140と、低周波成分抽出部151と、乗算部152と、PWM制御電圧生成部161と、ワンパルス制御電圧生成部162と、信号選択部163と、2相/3相変換部164と、オフセット補正部165と、デューティ計算部166と、電源部167と、インバータ168とを具備する。ゲイン設定部140は、記憶部141と、ゲイン切替部142と、急変防止部143とを具備する。また、モータ制御装置100は、モータMを制御する。
角度検出部111は、例えばレゾルバであり、モータMのロータ回転角度θを検出し、得られたロータ回転角度θを速度計算部112と3相/2相変換部122と2相/3相変換部164とに出力する。
速度計算部112は、角度検出部111から出力される回転角度θから、モータMの回転子の角速度ωを算出し、得られた角速度ωをワンパルス制御電圧生成部162とPWM制御電圧生成部161とに出力する。
3相/2相変換部122は、電流検出器121から出力される3相の電流値Iu、IvおよびIwを、2相のd軸成分の電流値Idおよびq軸成分の電流値Iq(以下、「検出電流値」と称する)に変換する。3相/2相変換部122は、得られた検出電流値IdおよびIqを、PWM制御電圧生成部161と、ワンパルス制御電圧生成部162とに出力する。ここで、d軸およびq軸はモータ軸に対して設定される座標軸である。d軸は、磁極が発生させる磁束の方向に設定され、q軸はd軸と電気的および磁気的に直交して設定される。d軸成分の電流(d軸電流)は、モータMに磁束を発生させるのに用いられる成分(励磁電流成分)である。また、q軸成分の電流(q軸電流)は、負荷のトルクに対応した成分である。
なお、以下では、指令値や指令信号を、右上に「*」を付した変数にて表す。
ここで、モータ制御装置100は、制御モードとして、正弦波PWM制御モード(第3制御モード)と、過変調PWM制御モード(第4制御モード)と、ワンパルス制御モード(第2制御モード)とを有する。また、以下では、正弦波PWM制御モードおよび過変調PWM制御モードを、「PWM制御モード」(第1制御モード)と総称する。
正弦波パルス幅変調制御方式は、インバータ168に対する駆動信号として、その基本波成分が正弦波となるデューティ比を有するPWM電圧波形の駆動信号を用いる方式である。この正弦波パルス幅変調制御方式は、騒音・振動の少なさやトルクの安定性の点で、矩形波制御方式や正弦波パルス幅変調制御方式よりも優れているが、モータに供給(印加)可能な電圧は、矩形波制御方式や過変調パルス幅変調制御方式よりも低い。
矩形波制御方式は、インバータ168に対する、モータの回転の1周期分の駆動信号として、ハイレベル期間とローレベル期間との比が1:1の矩形波1パルス分を用いる方式である。矩形波制御方式では、正弦波パルス幅変調制御方式や過変調パルス幅変調制御方式の場合よりも高い電圧をモータに供給可能である。
過変調パルス幅変調制御方式では、インバータ168に対する駆動信号として、その基本波成分が正弦波から歪むデューティ比を有するPWM電圧波形の駆動信号を用いる。これによって、正弦波パルス幅変調制御方式の場合よりも高い電圧をモータに供給可能である。
具体的には、PWM制御電圧生成部161は、まず、トルク指令の値と角速度ωとに対応する電流の指令値として、d軸成分およびq軸成分を持つ2相の電流値である指令電流値を生成する。次に、PWM制御電圧生成部161は、検出電流値IdおよびIqを制御変数として、この検出電流値IdおよびIqが、指令電流値に応じた値になるように、PI制御によるd軸電圧Vda*およびq軸電圧Vqa*を算出し、信号選択部163に出力する。
具体的には、ワンパルス制御電圧生成部162は、まず、トルク指令の値と、検出電流値IdおよびIqとに基づいて、モータMの出力トルクを推定する。次に、ワンパルス制御電圧生成部162は、推定した出力トルクが、トルク指令に応じた値になるように、PI制御によるd軸電圧Vdb*およびq軸電圧Vqb*を算出し、信号選択部163に出力する。
特に、モータ制御装置100の制御モードがワンパルスモードの場合、2相/3相変換部164は、指令電圧Vuo*、Vvo*、Vwo*として、インバータ168に対する駆動指令を出力する。ここで、角度検出部111の検出誤差により、2相/3相変換部164が出力する駆動指令において、ハイレベル期間とローレベル期間との比が1:1からずれている場合がある。
モータ制御装置100の制御モードが正弦波PWM制御モードまたは過変調PWM制御モードの場合、オフセット補正部165は、2相/3相変換部164から出力される指令電圧Vuo*から、乗算部152から出力されるオフセット補正指令値Vum*を減算して補正後指令電圧Vu*を算出する。同様に、オフセット補正部165は、指令電圧Vvo*からオフセット補正指令値Vvm*を減算して補正後指令電圧Vu*を算出し、また、指令電圧Vwo*からオフセット補正指令値Vwm*を減算して、補正後指令電圧Vw*を算出する。そして、オフセット補正部165は、得られた補正後指令電圧Vu*、Vv*、Vw*をデューティ計算部166に出力する。
ここで、後述するように、モータ制御装置100の制御モードがワンパルス制御モードの場合、オフセット補正指令値Vum*、Vvm*、Vwm*は、インバータ168がモータMに供給する電圧のオフセット示す。そこで、オフセット補正部165は、フィードバック制御(例えば積分制御)により、オフセット補正指令値Vum*、Vvm*、Vwm*の示すオフセットが0となるよう補正を行う。オフセットが正の値の場合、オフセット補正部165は、指令電圧のハイレベル期間が短くなるように、あるいは、ローレベル期間が長くなるようにデューティ比を変更して補正後指令電圧とする。一方、オフセットが負の値の場合、オフセット補正部165は、指令電圧のハイレベル期間が長くなるように、あるいは、ローレベル期間が短くなるようにデューティ比を変更して補正後指令電圧とする。
インバータ168は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子などの電力制御素子(パワー素子)を具備して、電源部167から供給される電力を、デューティ計算部166から出力される駆動信号に応じた3相のモータ駆動電力に変換して、モータMに供給する。
記憶部141の記憶するゲイン基定数は、ワンパルス制御モードのゲイン基定数が最も大きく、次に、過変調PWM制御モードのゲイン基定数が大きく、正弦波PWM制御モードのゲイン基定数が最も小さい。
ここで、ワンパルス制御モードでは、矩形波のデューティ比が1:1から僅かでもずれるとオフセットが発生してしまうため、充分な補正が必要となる。これに対して、過変調PWM制御モードでは、オフセットは発生し難く、補正量は少なくてよい。正弦波PWM制御モードでは、補正量はさらに少なくてよい。
なお、記憶部141が、半導体メモリを具備してゲイン基定数を記憶するようにしてもよいし、あるいは、各ゲイン基定数に応じた抵抗値の電気抵抗を具備するなど、半導体メモリ以外の手段でゲイン基定数を記憶するようしてもよい。
急変防止部143は、例えば1次のローパスフィルタであり、ゲイン切替部142から出力されるゲイン基定数が切り替わる際の高調波成分を除去して、ゲインとして乗算部152に出力する。これにより、急変防止部143は、モータ制御装置100の制御モードが切り替わる際の、ゲインの急変を防止する。
ここで、モータMの回転速度が速い場合(例えば、ワンパルス制御モードの場合)、インバータ168がモータMに供給する電流の周波数が高い。従って、低周波成分抽出部151は直流成分、すなわちオフセットを抽出し得る。
ただし、乗算部152がゲインを作用させる方法は、ゲインを乗算する方法に限らない。例えば、ゲインの対数を乗算するなど、単純にゲインを乗算する以外の方法で、乗算部152がゲインを作用させるようにしてもよい。
ここで、モータ制御装置100の制御モードがワンパルス制御モードの場合、モータMの回転速度が速いことが考えられる。この場合、上記のように、低周波成分抽出部151が、電流Iu、Iv、Iwのオフセットを抽出する。従って、乗算部152の出力するオフセット補正指令値Vum*、Vvm*、Vwm*は、インバータ168がモータMに供給する電圧のオフセット示す。
図2は、モータ制御装置100がオフセット補正を行う処理手順を示すフローチャートである。同図の処理において、まず、モータ制御装置100の制御モードに応じて、ゲイン切替部142が、記憶部141からゲイン基定数を取得し、急変防止部143に出力する(ステップS101)。次に、急変防止部143は、ゲイン切替部142から出力される値をローパスフィルタに通して、モータ制御装置100の制御モードが切り替わる際の値の急変を防止したゲインを取得する(ステップS102)。急変防止部143は、得られたゲインを乗算部152に出力させる。
そして、乗算部152は、低周波成分抽出部151から出力された低周波成分(の電流値)に急変防止部143から出力されたゲインを乗算してオフセット補正指令を算出し、オフセット補正部165に出力する(ステップS121)。そして、オフセット補正部165は、モータ制御装置100の制御モードに応じて、オフセット補正指令に基づいてオフセット補正を行う(ステップS122)。
その後、同図の処理を終了する。
これにより、モータ制御装置100は、パルス幅変調制御方式と矩形波制御方式とを通じて適切にオフセットを検出し得る。
本願発明者が、ゲイン設定部140がローパスフィルタを具備しないモデルを用いてモータ制御装置の動作のシミュレーションを行ったところ、制御モードが切り替わる際に、モータ制御装置100の動作が不安定になった。
そこで、本願発明者は、ゲイン設定部140がローパスフィルタを具備するモデルを用いてモータ制御装置の動作のシミュレーションを行った。かかるモデルでは、制御モードが切り替わる際にもモータ制御装置100の動作が安定し、良好な結果を得られた。
これにより、モータMの回転速度がより遅く、従って、インバータ168がモータMに供給する電流の周波数がより低いと考えられる正弦波PWM制御モードにおいて、インバータ168がモータMに出力する電流が弱められてモータ制御を適切に行えない事態を、より確実に回避し得る。
これにより、モータ制御装置100は、モータの回転速度が速い場合には、インバータ168がモータMに供給する電流のオフセットを抽出して適切にオフセット補正を行い、また、モータの回転速度が遅い場合には、インバータ168がモータMに出力する電流自身に基づいてオフセット補正部165がオフセット補正を行う影響を抑制し得る。
これにより、モータ制御装置100は、モータMの回転速度が比較的速いと考えられるワンパルス制御モードでは、インバータ168がモータMに供給する電流の変化に応答して適切にオフセット補正を行い、また、モータの回転速度が比較的遅いと考えられるPWM制御モードでは、インバータ168がモータMに出力する電流自身に基づいてオフセット補正部165がオフセット補正を行う影響を抑制し得る。
これにより、モータ制御装置100は、モータMの回転速度が速いが場合には、インバータ168がモータMに供給する電流の変化に応答して適切にオフセット補正を行い、また、モータの回転速度が遅い場合には、インバータ168がモータMに出力する電流自身に基づいてオフセット補正部165がオフセット補正を行う影響を抑制し得る。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
111 角度検出部
112 速度計算部
121 電流検出器
122 3相/2相変換部
131 モード切替部
140 ゲイン設定部
141 記憶部
142 ゲイン切替部
143 急変防止部
151 低周波成分抽出部
152 乗算部
161 PWM制御電圧生成部
162 ワンパルス制御電圧生成部
163 信号選択部
164 2相/3相変換部
165 オフセット補正部
166 デューティ計算部
167 電源部
168 インバータ
Claims (4)
- 交流電力をモータに供給するインバータを具備し、前記インバータが前記モータに供給する電力をパルス幅変調制御方式にて制御する第1制御モードと、前記インバータが前記モータに供給する電力を矩形波制御方式にて制御する第2制御モードとを有するモータ制御装置であって、
前記インバータが前記モータに供給する電流を測定する電流測定部と、
前記電流測定部が測定した電流のうち低周波成分を抽出するローパスフィルタと、
前記電流測定部が測定した電流の低周波成分に作用させるゲインを、前記第1制御モードにおける前記ゲインが前記第2制御モードにおける前記ゲインより小さくなるように設定するゲイン設定部と、
前記電流測定部が測定した電流の低周波成分に前記ゲインを作用させて得られるオフセット補正指令値に基づいて、前記インバータが前記モータに供給する電流のオフセットを低減させるオフセット補正を行うオフセット補正部と、
を具備することを特徴とするモータ制御装置。 - 前記ゲイン設定部は、制御モードの切り替わりの際の前記ゲインの急変を防止するローパスフィルタを具備することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記モータ制御装置は、前記インバータが前記モータに供給する電力を正弦波パルス幅変調制御方式にて制御する第3制御モードと、前記インバータが前記モータに供給する電力を過変調パルス幅変調制御方式にて制御する第4制御モードとを、前記第1制御モードに含んで有し、
前記ゲイン設定部は、前記第3制御モードにおける前記ゲインが前記第4制御モードにおける前記ゲインより小さくなるように設定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置。 - 交流電力をモータに供給するインバータを具備し、前記インバータが前記モータに供給する電力をパルス幅変調制御方式にて制御する第1制御モードと、前記インバータが前記モータに供給する電力を矩形波制御方式にて制御する第2制御モードとを有するモータ制御装置のモータ制御方法であって、
前記インバータが前記モータに供給する電流を測定する電流測定ステップと、
前記電流測定ステップにて測定した電流のうち低周波成分を抽出する低周波成分抽出ステップと、
前記電流測定ステップにて測定した電流の低周波成分に作用させるゲインを、前記第1制御モードにおける前記ゲインが前記第2制御モードにおける前記ゲインより小さくなるように設定するゲイン設定ステップと、
前記電流測定ステップにて測定した電流の低周波成分に前記ゲインを作用させて得られるオフセット補正指令値に基づいて、前記インバータが前記モータに供給する電流のオフセットを低減させるオフセット補正を行うオフセット補正ステップと、
を具備することを特徴とするモータ制御方法。
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