JP2020089203A - モータ駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】モータを駆動するモータ駆動装置において、三相電圧指令値に重畳させる三次高調波の大きさを適切に設定する。【解決手段】コントローラ50は、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwに、三相電圧指令値の三次高調波Vhを加算して得られる変調三相電圧指令値Vuh,Vvh,Vwhに基づいて、インバータ30を制御する。コントローラ50は、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅と直流電圧VBとの差に基づいて重畳係数kを生成する。そして、コントローラ50は、dq軸電圧指令値Vd,Vqに重畳係数kを乗算して得られる補正電圧指令値Vd#,Vq#を電気角3θで二相/三相変換することによって、三次高調波Vhを生成する。【選択図】図2
Description
本発明は、モータ駆動装置に関し、特に、モータを駆動するインバータの制御技術に関する。
モータを駆動するインバータにおいて、インバータに供給される直流電圧を最大振幅とする正弦波の電圧指令値では、電圧利用率が制限されるため、電圧利用率を高めるために様々な変調方式が提案されている。たとえば、矩形波の電圧指令値を用いる矩形波電圧方式は、正弦波の電圧指令値を用いる正弦波PWM(Pulse Width Modulation)制御方式に比べて電圧利用率を高めることができる。しかしながら、矩形波電圧方式は、高調波(三次高調波以外)の影響が大きく、振動や騒音等が大きくなる可能性がある。
高調波の影響を抑えつつ電圧利用率を高めることができる一手法として、たとえば、特開平10−210756号公報(特許文献1)には、正弦波の三相電圧指令値に三次高調波を重畳させ、その三次高調波を重畳させた変調三相電圧指令値に基づいてPWM制御を行なう手法が記載されている。この手法によれば、矩形波電圧方式のような高調波の影響を抑えつつ電圧利用率を高めることができる(特許文献1参照)。
上記の特開平10−210756号公報に記載の手法では、三次高調波となる正弦波を発生させるテーブルを予めメモリに書き込んでおき、基本波(三相電圧指令値)に同期して三次高調波を発生させている。しかしながら、上記公報では、三次高調波の大きさ(振幅)をどのように設定するかについて、具体的な検討はされていない。たとえば、三次高調波を重畳させている状態から重畳させない状態への切替時に、三次高調波の大きさが不連続に変化すると、大きな電圧変動が発生する可能性がある。
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、モータを駆動するモータ駆動装置において、三相電圧指令値に重畳させる三次高調波の大きさを適切に設定することである。
本発明に従うモータ駆動装置は、インバータと、制御装置とを備える。インバータは、直流電圧を三相交流電圧に変換してモータへ供給するように構成される。制御装置は、dq軸電圧指令値(Vd,Vq)を二相/三相変換して得られる三相電圧指令値(Vu,Vv,Vw)に、三相電圧指令値の三次高調波(Vh)を加算して得られる変調電圧指令値(Vuh,Vvh,Vwh)に基づいて、インバータを制御する。制御装置は、三相電圧指令値の振幅と直流電圧(VB)との差に基づいて、三次高調波の大きさを規定する重畳係数(k)を生成する。そして、制御装置は、dq軸電圧指令値に重畳係数を乗算して得られる補正電圧指令値(Vd#,Vq#)を、モータの回転に対して三倍の電気角(3θ)で二相/三相変換することによって三次高調波を生成する。
このモータ駆動装置においては、三相電圧指令値に三次高調波を加算して得られる変調電圧指令値に基づいてインバータが制御されるので、矩形波電圧方式のような高調波の影響を抑えつつ電圧利用率を高めることができる。そして、このモータ駆動装置では、上記の重畳係数を用いることにより、三次高調波は、三相電圧指令値の振幅と直流電圧との差に応じた大きさを有する。これにより、三相電圧指令値の振幅が直流電圧を超える場合に、三相電圧指令値の振幅が直流電圧を超える分に応じて三次高調波を連続的に大きくすることができる。
したがって、このモータ駆動装置によれば、三相電圧指令値に重畳させる三次高調波の大きさを適切に設定することができる。たとえば、三相電圧指令値の振幅が大きい場合には、三次高調波も大きくなり、三相電圧指令値の大きさに応じて電圧利用率を適切に高めることができる。或いは、三相電圧指令値が小さくなるに従って三次高調波も小さくなるので、たとえば、三次高調波の入/切に伴なう電圧変動を抑制することができる。
好ましくは、制御装置は、三相電圧指令値の振幅と直流電圧との差が大きいほど重畳係数が大きくなるように、重畳係数を生成する。
好ましくは、制御装置は、三相電圧指令値の振幅が直流電圧よりも小さいときは重畳係数が0となるように、重畳係数を生成する。
好ましくは、制御装置は、dq軸電圧指令値の二乗和平方根に、三相電圧指令値の振幅が直流電圧に等しくなるときのdq軸電圧指令値の二乗和平方根と直流電圧との比を示す係数を乗算した値から、直流電圧を減算して得られる値に基づいて、重畳係数を生成する。
本発明によれば、モータを駆動するモータ駆動装置において、三相電圧指令値に重畳させる三次高調波の大きさを適切に設定することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本発明の実施の形態に従うモータ駆動装置の全体構成図である。図1を参照して、モータ駆動装置1は、直流電源10と、キャパシタ20と、インバータ30と、コントローラ50と、電圧センサ60と、電流センサ62,64と、回転角センサ66とを備える。
直流電源10は、インバータ30へ直流電力を供給する。直流電源10は、たとえば、電力を蓄える電力貯蔵要素であり、二次電池や電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を含んで構成される。キャパシタ20は、インバータ30の直流側の電力線対間に接続され、インバータ30の直流側(入力側)のノイズを低減する。電圧センサ60は、キャパシタ20の両端の電圧、すなわちインバータ30に供給される直流電圧VBを検出し、その検出値をコントローラ50へ出力する。
インバータ30は、スイッチング素子Sw1〜Sw6を含む。スイッチング素子Sw1〜Sw6の各々には、ダイオードが逆並列に接続されている。スイッチング素子Sw1,Sw2は、それぞれU相上アーム及びU相下アームを構成する。スイッチング素子Sw3,Sw4は、それぞれV相上アーム及びV相下アームを構成する。また、スイッチング素子Sw5,Sw6は、それぞれW相上アーム及びW相下アームを構成する。
スイッチング素子Sw1,Sw2の接続ノードは、モータ40のU相コイルに接続される。また、スイッチング素子Sw3,Sw4の接続ノードは、モータ40のV相コイルに接続され、スイッチング素子Sw5,Sw6の接続ノードは、モータ40のW相コイルに接続される(各相コイルについては図示せず)。
インバータ30は、直流電源10から直流電力を受け、コントローラ50から受けるゲート信号G1〜G6に基づいてモータ40を駆動する。より詳しくは、ゲート信号G1〜G6に従ってそれぞれスイッチング素子Sw1〜Sw6がオン/オフ駆動され、インバータ30からモータ40の各相コイルに電圧が印加されることによりモータ40が駆動される。
モータ40は、モータ駆動装置1によって駆動され、代表的にはブラシレスDCモータである。モータ40のロータには、永久磁石が設けられており、ステータには、U相,V相,W相の三相コイルが設けられている(図示せず)。インバータ30により各相コイルの通電が制御され、ロータが回転する。なお、永久磁石のロータへの装着は、埋込型であってもよいし、表面型であってもよい。
電流センサ62,64は、モータ40に流れる電流を検出し、その検出値をコントローラ50へ出力する。モータ40に流れる各相電流Iu,Iv,Iwの瞬時値の和は0であると仮定して、二相分の電流を検出すれば、それらの検出値から残りの相の電流を算出することができる。この例では、電流センサ62,64によって、それぞれV相電流及びW相電流が検出され、U相電流は、V相電流及びW相電流の検出値から算出される。なお、以下では、各相電流Iu,Iv,Iwを纏めて「モータ電流I」と称する場合がある。
回転角センサ66は、モータ40のロータの回転角θ(電気角)を検出し、その検出値をコントローラ50へ出力する。コントローラ50は、回転角センサ66により検出される回転角θに基づいて、モータ40の回転数(回転速度)や角速度(rad/s)等を算出することができる。回転角センサ66は、代表的にはレゾルバや光学式エンコーダであるが、ホールセンサ等も採用可能である。
コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、各種信号を入出力するための入出力ポートとを含んで構成される(いずれも図示せず)。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMに格納されるプログラムは、コントローラ50の処理方法が記されたプログラムである。なお、コントローラ50が実行する各種処理については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
<コントローラ50の構成>
コントローラ50は、トルク指令値、並びにモータ電流I、直流電圧VB、及びロータ回転角θの各検出値に基づいて、トルク指令値に従ったトルクをモータ40が出力するようにインバータ30を制御する。コントローラ50は、インバータ30を制御するためのゲート信号G1〜G6を生成してインバータ30へ出力する。
コントローラ50は、トルク指令値、並びにモータ電流I、直流電圧VB、及びロータ回転角θの各検出値に基づいて、トルク指令値に従ったトルクをモータ40が出力するようにインバータ30を制御する。コントローラ50は、インバータ30を制御するためのゲート信号G1〜G6を生成してインバータ30へ出力する。
モータの制御方式としては、インバータの電圧利用率を高めるために様々な変調方式が提案されている。矩形波の電圧指令値を用いる矩形波電圧方式により、正弦波の電圧指令値を用いる正弦波PWM制御方式に比べて電圧利用率を高めることができる。しかしながら、矩形波電圧方式は、高調波(三次高調波以外)の影響が大きく、振動や騒音等が大きくなる可能性がある。
そこで、この実施の形態に従うモータ駆動装置1では、高調波の影響を抑えつつ電圧利用率を高めるために、コントローラ50は、正弦波の三相電圧指令値に三次高調波を重畳させ、その三次高調波を重畳させた変調三相電圧指令値に基づいてPWM制御を実行する。詳細は後述するが、概略的には、コントローラ50は、ベクトル制御に従って正弦波の三相電圧指令値を生成するとともに三相電圧指令値の三次高調波を生成し、正弦波の三相電圧指令値の各々に三次高調波を重畳させた変調三相電圧指令値に基づいてPWM制御を実行する。これにより、矩形波電圧方式を用いた場合のような高調波の影響を抑えつつ、電圧利用率を高めることができる。
三次高調波の生成について、コントローラ50は、正弦波の三相電圧指令値(Vu,Vv,Vw)の振幅と直流電圧VBとの差に基づいて、三次高調波の大きさを規定する重畳係数(k)を生成する。そして、コントローラ50は、dq軸電圧指令値(Vd,Vq)に重畳係数を乗算して得られる補正電圧指令値(Vd#,Vq#)を、モータ40の回転に対して三倍の電気角(3θ)で二相/三相変換することによって三次高調波(Vh)を生成する。なお、コントローラ50は、正弦波の三相電圧指令値の振幅が直流電圧VBよりも低い場合には、重畳係数を0とする(これにより、三次高調波は0となる。)。
このようにして生成される三次高調波は、重畳係数に応じた大きさを有するものとなる。そして、正弦波の三相電圧指令値の振幅が直流電圧VBを超える場合に、三相電圧指令値の振幅が直流電圧VBを超える分に応じて、三次高調波を連続的に大きくすることができる。
このように、このモータ駆動装置1によれば、三次高調波の大きさを適切に設定することができる。たとえば、正弦波の三相電圧指令値の振幅が大きい場合には、重畳される三次高調波も大きくなり、三相電圧指令値の大きさに応じて電圧利用率を適切に高めることができる。
また、三次高調波の重畳/非重畳の切替時に、三次高調波の大きさが不連続に変化すると、大きな電圧変動が発生する可能性があるところ、このモータ駆動装置1によれば、三相電圧指令値の振幅の減少に従って三次高調波も小さくなり、三相電圧指令値の振幅が直流電圧VB以下になると三次高調波も0となる。これにより、三次高調波の入/切に伴なう電圧変動を抑制することができる。以下、これらの機能を実現するコントローラ50の構成について詳しく説明する。
図2は、図1に示したコントローラ50の構成を示すブロック図である。図2を参照して、コントローラ50は、電流指令生成部110と、三相/二相変換部120と、電圧指令生成部130と、二相/三相変換部140と、重畳係数演算部150と、3θ生成部160と、三次高調波生成部170と、加算部180と、PWM変調部190とを含む。
電流指令生成部110は、予め作成されたマップ等を用いて、モータ40のトルク指令値Trqcomからd軸電流指令値Idcom及びq軸電流指令値Iqcomを生成する。三相/二相変換部120は、モータ40の回転角θ(電気角)を用いた三相/二相座標変換(uvw→dq)により、電流センサ62,64を用いて検出されるV相,W相電流Iv,Iw及びそれらから算出されるU相電流Iuから成るモータ電流Iをd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。
電圧指令生成部130は、d軸電流偏差ΔId(ΔId=Idcom−Id)及びq軸電流偏差ΔIq(ΔIq=Iqcom−Iq)の各々について、PI(比例積分)演算を行なうことにより制御偏差を算出し、その制御偏差に応じたd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqを生成する。
二相/三相変換部140は、モータ40の回転角θ(電気角)を用いた二相/三相座標変換(dq→uvw)により、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値VqをU相,V相,W相の各相電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換する。
重畳係数演算部150は、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqと、インバータ30に供給される直流電圧VBとから、三次高調波Vhの大きさを規定する重畳係数kを算出する。重畳係数演算部150は、d軸電圧指令値Vd、q軸電圧指令値Vq、及び直流電圧VBを用いて、次式により重畳係数kを算出する。
k=B×(A×√(Vd2+Vq2)−VB),k≧0のとき
k=0,k<0のとき …(1)
ここで、Aは、変換係数であり、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBと等しくなるときのdq軸電圧指令値Vd,Vqの二乗和平均値√(Vd2+Vq2)と直流電圧VBとの比である。すなわち、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBと等しいとき、A×√(Vd2+Vq2)=VBとなり、重畳係数kの演算値は0となる。
k=0,k<0のとき …(1)
ここで、Aは、変換係数であり、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBと等しくなるときのdq軸電圧指令値Vd,Vqの二乗和平均値√(Vd2+Vq2)と直流電圧VBとの比である。すなわち、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBと等しいとき、A×√(Vd2+Vq2)=VBとなり、重畳係数kの演算値は0となる。
三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBよりも大きい場合は、A×√(Vd2+Vq2)>VBとなり、重畳係数kは正値となる。三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が大きいほど、√(Vd2+Vq2)の値も大きいので、重畳係数kは、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅と直流電圧VBとの差に応じた正値となる。
一方、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBよりも小さい場合は、A×√(Vd2+Vq2)<VBとなり、重畳係数kの演算値は負値となる。したがって、式(1)に示されるように、重畳係数kは0とされる。
なお、係数Aは、定数として予め算出することができる。Bは、0よりも大きく1以下の任意の調整係数である。係数A,Bは、図示しないROMに予め記憶されている。
そして、重畳係数演算部150は、上記の式(1)によって算出された重畳係数kをd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqに乗算し、その演算結果を補正電圧指令値Vd#,Vq#として出力する。
3θ生成部160は、回転角センサ66から回転角θ(電気角)の検出値を受け、回転角θの三倍の電気角3θを生成する。なお、電気角3θは、回転角θを3倍し、360°で割った余りから算出することができる。
三次高調波生成部170は、電気角3θを用いた二相/三相座標変換(dq→uvw)により、補正電圧指令値Vd#,Vq#を三次高調波Vhに変換する。三次高調波生成部170は、補正電圧指令値Vd#,Vq#から三相分の電圧指令値を生成し得るが、ここでは、三相分の電圧指令値のU相分のみを生成し、その生成された電圧指令値を三次高調波Vhとして出力する。
このようにして生成される三次高調波Vhについて、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VB以下の場合は、重畳係数kは0であるので、三次高調波Vhは0となる。三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBを超える場合は、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が大きいほど重畳係数kが大きくなり、三次高調波Vhは、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が大きくなるに従って連続的に大きくなる。
加算部180は、二相/三相変換部140から出力される正弦波の各相電圧指令値Vu,Vv,Vwに、三次高調波生成部170から出力される三次高調波Vhを加算し、その演算結果を変調三相電圧指令値Vuh,Vvh,Vwhとして出力する。
PWM変調部190は、変調三相電圧指令値Vuh,Vvh,Vwhと搬送波との比較に基づいて、インバータ30を駆動するためのゲート信号G1〜G6(PWM信号)を生成する。なお、搬送波には、所定周波数の三角波やのこぎり波が用いられる。
図3は、各相電圧指令値及び三次高調波の波形の一例を示す図である。なお、この図3では、U相及びV相の電圧指令値が示されており、W相の電圧指令値については図示されていない。
図3を参照して、点線で示されるVu,Vvは、それぞれ三次高調波Vhが重畳される前の正弦波のU相,V相電圧指令値である。なお、U相電圧指令値VuとV相電圧指令値Vvとは、位相が120度ずれている。
実線で示されるVhは、三次高調波生成部170により生成される三次高調波Vhであり、その周波数は、U相,V相電圧指令値(基本波)の周波数の三倍である。実線で示されるVuh,Vvhは、それぞれ正弦波のU相,V相電圧指令値Vu,Vvに三次高調波Vhが重畳された後のU相,V相変調電圧指令値である。
図から分かるように、三次高調波Vhが重畳された変調電圧指令値Vuh,Vvhの最大値は、三次高調波Vhが重畳される前の正弦波の電圧指令値Vu,Vvの最大値(振幅)よりも小さい。したがって、正弦波の電圧指令値Vu,Vvに三次高調波Vhを重畳することによって、電圧指令値を高める余地ができ、その結果、電圧指令値を高めることで電圧利用率を高めることができる。
図4は、コントローラ50により実行される処理の手順の一例を示すフローチャートである。図4を参照して、コントローラ50は、モータ電流I、ロータの回転角θ、直流電圧VBの各検出値を取得する(ステップS10)。なお、モータ電流Iは、電流センサ62,64を用いて検出され、回転角θは、回転角センサ66によって検出され、直流電圧VBは、電圧センサ60によって検出される。
次いで、コントローラ50は、トルク指令値Trqcom、並びにモータ電流I及び回転角θから、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwを生成する(ステップS20)。具体的には、図2に示した電流指令生成部110、三相/二相変換部120、電圧指令生成部130、及び二相/三相変換部140によって、正弦波の三相電圧指令値Vu,Vv,Vwが生成される。
続いて、コントローラ50は、上記の式(1)を用いて、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vq、並びにステップS10において取得された直流電圧VBから、重畳係数kを算出する(ステップS30)。d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqは、ステップS20において三相電圧指令値Vu,Vv,Vwが生成される際に、電圧指令生成部130(図2)において生成される。
そして、コントローラ50は、ステップS30において算出された重畳係数k、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vq、並びに3θ生成部160(図2)において生成される電気角3θから、三次高調波Vhを生成する(ステップS40)。具体的には、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqに重畳係数kを乗算することによって補正電圧指令値Vd#,Vq#が生成され、三次高調波生成部170(図2)において、電気角3θを用いて三次高調波Vhが生成される。
次いで、コントローラ50は、ステップS20において生成された三相電圧指令値Vu,Vv,Vwに、ステップS40において生成された三次高調波Vhを加算することによって、変調三相電圧指令値Vuh,Vvh,Vwhを生成する(ステップS50)。そして、コントローラ50は、変調三相電圧指令Vuh,Vvh,Vwhを搬送波と比較し、その比較結果に基づいて、インバータ30を駆動するためのPWM信号(ゲート信号G1〜G6)を生成する(ステップS60)。
図5は、図4のステップS30において実行される処理を詳細に説明するフローチャートである。図5を参照して、コントローラ50は、d軸電圧指令値Vd、q軸電圧指令値Vq、及び直流電圧VBの検出値を取得する(ステップS110)。
次いで、コントローラ50は、重畳係数kの算出に用いる係数A,BをROMから読込む(ステップS120)。そして、コントローラ50は、上記の式(1)を用いて、d軸電圧指令値Vd、q軸電圧指令値Vq、及び直流電圧VBから重畳係数kを算出する(ステップS130)。
続いて、コントローラ50は、ステップS130において算出された重畳係数kが負値であるか否かを判定する(ステップS140)。そして、算出された重畳係数kが負値であるときは(ステップS150)、コントローラ50は、重畳係数kを0とする(ステップS150)。なお、ステップS130において算出された重畳係数kが0以上であるときは(ステップS140においてNO)、ステップS150の処理は実行されず、リターンへと処理が移行される。
図6は、三次高調波Vh及び変調電圧指令値の波形の一例を示す図である。なお、変調電圧指令値については、U相の変調電圧指令値Vuhが代表的に示されており、V相及びW相の変調電圧指令値Vvh,Vwhについては図示されていない。
図6を参照して、横軸は時間であり、上段が三次高調波Vhを示し、下段がU相変調電圧指令値Vuhを示す。時刻t1以前は、U相電圧指令値Vuの振幅が直流電圧VBよりも小さいために重畳係数kが0であり、三次高調波Vhは0である。したがって、U相変調電圧指令値Vuhは、正弦波のU相電圧指令値Vuと同じである。
この例では、時間の経過とともにU相電圧指令値Vuが増大し、時刻t1において、U相電圧指令値Vuの振幅が直流電圧VBに達するものとする。時刻t1以降は、U相電圧指令値Vuの振幅が直流電圧VBを超える分に応じた大きさを有する三次高調波Vhが生成され、正弦波のU相電圧指令値Vuに三次高調波Vhが加算されたU相変調電圧指令値Vuhが生成される。
このように、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBを超える場合に、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwに加算される三次高調波Vhは、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwが直流電圧VBを超える分に応じて連続的に大きくなるので、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの大きさに応じて電圧利用率を適切に高めることができる。
また、三次高調波Vhを重畳させる場合(時刻t1以降)と、三次高調波Vhを重畳させない場合(時刻t1以前のVh=0)との切替時に、三次高調波Vhの大きさ(Vhの包絡線の大きさ)が連続的に変化するので、三次高調波Vhの重畳/非重畳の切替に伴ない電圧変動が生じるのを抑制することができる。
以上のように、この実施の形態によれば、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwに三次高調波Vhを加算して得られる変調三相電圧指令値Vuh,Vvh,Vwhに基づいてインバータ30が制御されるので、矩形波電圧方式のような高調波の影響を抑えつつ電圧利用率を高めることができる。
また、この実施の形態では、三次高調波Vhは、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅と直流電圧VBとの差に応じた大きさを有する。具体的には、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBを超える場合に、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅と直流電圧VBとの差が大きいほど、重畳係数kが大きくなり、三次高調波Vhは大きくなる。これにより、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBを超える分に応じて三次高調波Vhを連続的に大きくすることができる。なお、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が直流電圧VBよりも小さいときは、重畳係数kは0とされ、三次高調波Vhも0となる。
したがって、この実施の形態によれば、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwに重畳させる三次高調波Vhの大きさを適切に設定することができる。たとえば、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの振幅が大きい場合には、三次高調波Vhも大きくなり、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの大きさに応じて電圧利用率を適切に高めることができる。或いは、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwが小さくなるに従って三次高調波Vhも小さくなるので、三次高調波Vhの入/切に伴なう電圧変動を抑制することができる。
また、この実施の形態によれば、三次高調波Vhは、dq軸電圧指令値Vd,Vqに重畳係数kを乗算した補正電圧指令値Vd#,Vq#を電気角3θで二相/三相変換することで生成されるので、三相電圧指令値に対して三次高調波Vhの位相ずれは生じない。
なお、上記の実施の形態では、回転角センサ66を用いてモータ40のロータの回転角θ(電気角)が検知されるものとしたが、回転角センサ66を用いずに回転角θを推定してもよい(センサレス)。たとえば、公知のセンサレス通電制御のように、モータ40の各相コイルに生じる誘起電圧を検出することによってロータの回転角θ(電気角)を推定してもよい。
本発明に従うモータ駆動装置は、たとえば、ブラシレスDCモータを使用する機器において、高回転、高トルク制御時に高調波による振動や騒音を軽減したい機器への適用に好適である。たとえば、車両に搭載される電動パワーステアリングや、アイドルストップ制御用の電動オイルポンプ等、振動や静音性能が重視されるアクチュエータに使用することができる。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 モータ駆動装置、10 直流電源、20 キャパシタ、30 インバータ、40 モータ、50 コントローラ、60 電圧センサ、62,64 電流センサ、66 回転角センサ、110 電流指令生成部、120 三相/二相変換部、130 電圧指令生成部、140 二相/三相変換部、150 重畳係数演算部、160 3θ生成部、170 三次高調波生成部、180 加算部、190 PWM変調部。
Claims (4)
- モータを駆動するモータ駆動装置であって、
直流電圧を三相交流電圧に変換して前記モータへ供給するように構成されたインバータと、
dq軸電圧指令値を二相/三相変換して得られる三相電圧指令値に、前記三相電圧指令値の三次高調波を加算して得られる変調電圧指令値に基づいて、前記インバータを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記三相電圧指令値の振幅と前記直流電圧との差に基づいて、前記三次高調波の大きさを規定する重畳係数を生成し、
前記dq軸電圧指令値に前記重畳係数を乗算して得られる補正電圧指令値を、前記モータの回転に対して三倍の電気角で二相/三相変換することによって前記三次高調波を生成する、モータ駆動装置。 - 前記制御装置は、前記三相電圧指令値の振幅と前記直流電圧との差が大きいほど前記重畳係数が大きくなるように、前記重畳係数を生成する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
- 前記制御装置は、前記三相電圧指令値の振幅が前記直流電圧よりも小さいときは前記重畳係数が零となるように、前記重畳係数を生成する、請求項1又は請求項2に記載のモータ駆動装置。
- 前記制御装置は、前記dq軸電圧指令値の二乗和平方根に、前記三相電圧指令値の振幅が前記直流電圧に等しくなるときの前記dq軸電圧指令値の二乗和平方根と前記直流電圧との比を示す係数を乗算した値から、前記直流電圧を減算して得られる値に基づいて、前記重畳係数を生成する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
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JP2018224383A JP2020089203A (ja) | 2018-11-30 | 2018-11-30 | モータ駆動装置 |
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WO2022018841A1 (ja) * | 2020-07-22 | 2022-01-27 | 三菱電機株式会社 | 電力変換装置および電動パワーステアリング装置 |
-
2018
- 2018-11-30 JP JP2018224383A patent/JP2020089203A/ja active Pending
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