JP5808010B2 - 分散性ニッケル微粒子組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、金属ニッケル微粒子を含有する組成物に関し、より詳しくは、例えば積層セラミックスコンデンサの内部電極形成用などの導電ペーストに好適に利用できる分散性ニッケル微粒子組成物に関する。
金属微粒子は、バルク金属とは異なる物理的・化学的特性を有することから、例えば、導電性ペーストや透明導電膜などの電極材料、高密度記録材料、触媒材料、インクジェット用インク材料等の様々な工業材料に利用されている。近年では、電子機器の小型化や薄型化に伴い、金属微粒子の粒子径も、数十〜数百nm程度まで微粒子化が進んでいる。例えば、電子機器の小型化に伴い、積層セラミックコンデンサーの電極は薄膜多層化が進んでおり、これに伴い電極層の材料には、ニッケル微粒子などの金属微粒子が使用されている。
上記のように、工業材料に使用される金属微粒子は、その粒子径が例えば150nmを下回る程度に小さく、粒子径が均一で、かつ分散性に優れることが求められる。しかしながら、微粒子化が進むことで、表面エネルギーの増加により、金属微粒子が凝集し易くなる、という問題が生じている。
金属微粒子を分散させるために用いる分散剤として、例えば多価カルボン酸を含む脂肪酸や不飽和脂肪酸などを含むアニオン系分散剤(例えば、特許文献1)、高分子系イオン性分散剤(例えば、特許文献2)、燐酸エステル系化合物(例えば、特許文献3)などが知られている。これらの分散剤は、ある程度の分散効果が得られるものの、微粒子化の進行に伴い、数十〜数百nm程度の粒子径の金属微粒子に対しては、凝集を抑えることが十分にできていないのが現状である。従って、金属微粒子の微粒子化に対応した高い分散性を示す分散剤が求められている。
金属微粒子は、固相反応や液相反応によって得られることが知られている。ニッケル微粒子を例に挙げると、固相反応としては、塩化ニッケルの化学気相蒸着やギ酸ニッケル塩の熱分解等が挙げられる。液相反応としては、塩化ニッケル等のニッケル塩を水素化ホウ素ナトリウム等の強力な還元剤で直接還元する方法、NaOH存在下ヒドラジン等の還元剤を添加して前駆体[Ni(H2NNH22]SO4・2H2Oを形成した後に熱分解する方法、塩化ニッケル等のニッケル塩や有機配位子を含有するニッケル錯体を溶媒とともに圧力容器に入れて水熱合成する方法、ギ酸ニッケル塩や酢酸ニッケル塩を1級アミン等の還元剤を添加して、マイクロ波を照射する方法等が挙げられる。
従来、固相反応で得られたニッケル粒子から積層セラミックコンデンサーなどの内部電極用のペーストを製造する際は、ビヒクル中にニッケル粒子を混練して、所定のタイミングでカチオン系分散剤、ノニオン系分散剤、両性イオン系などの分散剤を添加し、分散させてニッケルペーストを作製していた。しかしながら、この製造方法では凝集したニッケル粒子を含むため、凝集した状態で分散剤による被覆が行われ、十分な分散効果が得られない。また、ジェットミルや高圧ホモジナイザーを用いて、ニッケル粉末の解砕処理を行い、有機溶媒と飽和脂肪酸を加えて有機溶媒中で分散処理する方法も提案されている(例えば、特許文献4)。しかし、この方法でも、微粒子化によって生じる凝集を抑えることができていないのが現状である。
液相反応の技術に関して、ニッケル前駆物質、有機アミンおよび還元剤を混合した後、加熱することでニッケル微粒子を得る技術が提案されている(例えば、特許文献5)。この技術によれば、ニッケル微粒子の大きさおよび形状の制御が容易であるとされている。その理由は定かではないが、ニッケル微粒子が有機アミンにコーティングされることで有機溶剤中での分散性が向上することが挙げられている。しかしながら、この製造方法で、強力な還元剤を用いると、反応を制御することが難しく、分散性が高度に優れたニッケル微粒子は必ずしも好適には得られない。一方、還元力の弱い還元剤を用いると、酸化還元電位が負電位であるニッケル金属を還元するには高温に加熱する必要があり、それに伴った反応制御が必要になる。
また、ポリオール溶液に、還元剤、分散剤、およびニッケル塩を添加して混合溶液を製造する工程と、混合溶液を撹拌および加熱する工程と、混合溶液を反応させてニッケル微粒子を生成する工程と、を含むニッケル微粒子の製造方法が提案されている(例えば、特許文献6)。この場合、還元剤は前記のような強力な還元剤を使用するものではあるが、粒度が均一で、凝集することなく分散性に優れたニッケル微粒子を得ることができるとされている。分散剤としては、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、セルロース誘導体等が記載されている。
特開2001−067951号公報 特開2010−135180号公報 特開1998−092226号公報 特開2006−183066号公報 特開2010−037647号公報 特開2009−024254号公報
本発明の目的は、金属ニッケル微粒子が効果的に分散された分散性ニッケル微粒子組成物を提供することである。
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、金属ニッケル微粒子の表面に、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素が被覆した複合ニッケル微粒子と、
下記の一般式(1)又は(2)で表される官能基のいずれかを2つ有するエステル化合物と、を含有する。
Figure 0005808010


[式(1)又は(2)中、基Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基又はベンジル基を示す。]
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、前記エステル化合物が、酒石酸から誘導されるエステル化合物、マロン酸から誘導されるエステル化合物、クエン酸から誘導されるエステル化合物、又はトリメチルペンタンジオールから誘導されるエステル化合物であってもよい。
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、前記酒石酸から誘導されるエステル化合物が、下記の一般式(I)で表される酒石酸誘導体であってもよい。
Figure 0005808010
[式(I)中、基R11、基R12は、それぞれ独立して、置換されていてもよいフェニル基を意味する。]
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、前記酒石酸から誘導されるエステル化合物が、下記の一般式(II)で表される酒石酸誘導体であってもよい。
Figure 0005808010
[式(II)中、基R21、基R22は、それぞれ独立して、炭素数3〜6のアルキル基を示す。]
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、前記マロン酸から誘導されるエステル化合物が、下記の一般式(III)で表されるマロン酸誘導体であってもよい。
Figure 0005808010
[式(III)中、基Xは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基を示し、基R31、基R32は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基を示す。]
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、前記クエン酸から誘導されるエステル化合物が、下記の一般式(IV)で表されるクエン酸誘導体であってもよい。
Figure 0005808010
[式(IV)中、基Xは水素原子又はアセチル基を示し、基R41,基R42,基R43はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を示す。]
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、前記トリメチルペンタンジオールから誘導されるエステル化合物が、下記の一般式(V)で表されるトリメチルペンタンジオール誘導体であってもよい。
Figure 0005808010
[式(V)中、基R51、基R52は、それぞれ独立して、炭素数4〜6のアシル基を示す。]
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、前記金属ニッケル微粒子の粒子径が1〜150nmの範囲内にあってもよい。
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、硫黄元素を0.1〜0.5質量%の範囲内、炭素元素を0.5〜2.0質量%の範囲内、酸素元素を0.5〜5.0質量%の範囲内で含有するものであってもよい。
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、前記金属ニッケル微粒子が、液相でのマイクロ波照射により得られたものであってもよい。
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素に被覆された複合ニッケル微粒子と、特定のエステル化合物と、を含有するため、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素による凝集抑制作用と、上記エステル化合物による凝集抑制作用が組み合わされて奏される。従って、例えば粒子径が150nm以下の微細な金属ニッケル微粒子についても、金属ニッケル微粒子の凝集が抑制され、単一粒子が分散した粒子径分布のシャープな金属ニッケル微粒子の集合体となる。また、本発明に係る分散性ニッケル微粒子組成物は、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素に被覆された複合ニッケル微粒子を含有するため、例えば導電ペーストとして使用する場合に急激な加熱乾燥を行っても、金属ニッケル微粒子の酸化を抑制できる。このように、凝集粒子が少なく、シャープな粒子径分布を持つ金属ニッケル微粒子の集合体である分散性ニッケル微粒子組成物は、例えば積層セラミックコンデンサーの内部電極材料等の工業材料として好適に用いることができる。
ニッケル錯体の構造を示す図であり、(a)は二座配位を、(b)は単座配位を、(c)は外圏にカルボン酸イオンが配位した状態をそれぞれ示す。
[分散性ニッケル微粒子組成物]
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物は、金属ニッケル微粒子の表面に、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素が被覆した複合ニッケル微粒子と、上記一般式(1)又は(2)で表される官能基のいずれかを2つ有するエステル化合物(以下、単に「エステル化合物」と記すことがある)と、を含有する。
分散性ニッケル微粒子組成物において、複合ニッケル微粒子と、前記エステル化合物とは、複合体を形成していてもよい。ここで複合体とは、前記エステル化合物中の官能基と、複合ニッケル微粒子の表面又は該表面に存在する官能基(例えば水酸基)との相互作用により、複合ニッケル微粒子の周囲に前記エステル化合物が吸着又は付着した状態、あるいは化学的に結合した状態を意味する。このような複合体の形態をとることによって、前記エステル化合物が、複合ニッケル微粒子に近接した状態をとるため、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素による分散効果に加え、前記エステル化合物による分散効果が効果的に奏されるものと推測される。
[金属ニッケル微粒子]
本実施の形態で用いる金属ニッケル微粒子は、ニッケル元素を含有し、その含有量は、その使用目的に応じて適宜選択すればよいが、ニッケル元素の量を、金属ニッケル微粒子100質量部に対し、好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは75質量部以上とすることがよい。ニッケル以外の金属としては、例えば、チタン、コバルト、銅、クロム、マンガン、鉄、ジルコニウム、スズ、タングステン、モリブデン、バナジウム等の卑金属、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム等の貴金属を挙げることができる。これらの中でも、例えば、チタン、コバルト、銅、金、銀、白金等を含有する金属ニッケル微粒子が好ましい。また、これらの中でも特に、後述する液相でのマイクロ波照射により製造することができる金属ニッケル微粒子が特に好ましく、その場合の金属種としては、例えば、コバルト、銅、金、銀、白金等が挙げられる。なお、金属ニッケル微粒子は上記の金属元素を、単独で又は2種以上含有していてもよく、また水素、炭素、窒素、硫黄等の金属元素以外の元素を含有していてもよいし、これらの合金であってもよい。さらに、金属微粒子は、単一の金属微粒子で構成されていてもよく、2種以上の金属微粒子を混合したものであってもよい。
本実施の形態で用いる金属ニッケル微粒子の粒子径は、1〜150nmの範囲内から選択されることが好ましい。本実施の形態では、特に100nm以下の粒子径の金属ニッケル微粒子に対しても、優れた分散効果が得られる。換言すれば、例えば粒子径が100nm以下の金属ニッケル微粒子がより好ましい。別の観点から、金属ニッケル微粒子の平均粒子径は、好ましくは10〜120nmの範囲内、より好ましくは20〜100nmの範囲内がよい。
[複合ニッケル微粒子]
本実施の形態で用いる複合ニッケル微粒子は、上記の金属ニッケル微粒子の表面に、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素が被覆したものである。ここで、被覆とは、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素が、金属ニッケル微粒子の表面に物理的に吸着又は付着した状態、あるいは金属ニッケル微粒子の表面に化学的に結合した状態を含む。好ましい被覆形態は、金属ニッケル微粒子の表面に、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素が化学的に結合した状態がよい。被覆の状態は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)などにより確認することができる。また、被覆層の厚みは特に制限されないが、例えば2〜20nm程度とすることが好ましい。
別の観点から、複合ニッケル微粒子の硫黄元素の量(硫黄含有有機化合物の状態で含有されるものも含む)を、複合ニッケル微粒子100質量部に対し、好ましくは0.05〜1.0質量%の範囲内、より好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲内とすることがよく、また、炭素元素の量を、複合ニッケル微粒子100質量部に対し、好ましくは0.05〜1.0質量%の範囲内、より好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲内とすることがよい。
硫黄含有有機化合物は、硫黄原子を分子内に含有する有機化合物であるが、このような有機化合物として、例えばチオール系化合物、スルフィド系化合物、チオフェン系化合物、スルホキシド系化合物、スルホン系化合物、チオケトン系化合物、スルフラン系化合物などが挙げられる。このなかでもチオール系化合物(メルカプト基を含有)、スルフィド系化合物(スルフィド基、又はジスルフィド基を含有)は、金属ニッケル微粒子の表面をNi−Sの化学結合で被覆することができ、例えば金属ニッケル微粒子の急激な加熱によっても、金属ニッケル微粒子の表面酸化を抑えることができるので好ましい。また、金属ニッケル微粒子の分散性を向上させるために、脂肪族系の硫黄含有有機化合物が好ましい。
メルカプト基を含有する硫黄含有有機化合物としては、金属ニッケル微粒子の分散性の向上のために、炭化水素基を有する脂肪族チオール化合物が好ましく、より好ましくは炭素数1〜18の範囲内にある脂肪族チオール化合物がよい。
スルフィド基を含有する硫黄含有有機化合物としては、金属ニッケル微粒子の分散性の向上のために、炭化水素基を有する脂肪族メチルスルフィド化合物が好ましく、より好ましくは炭素数2〜18の範囲内にある脂肪族メチルスルフィド化合物がよい。このような脂肪族メチルスルフィド化合物は、R61−S−CHで表される。ここで、R61は炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基から選ばれる1価の置換基である。
ジスルフィド基を含有する硫黄含有有機化合物としては、金属ニッケル微粒子の分散性の向上のために、炭化水素基を有する脂肪族ジスルフィド化合物が好ましく、より好ましくは炭素数2〜40の範囲内にある脂肪族ジスルフィド化合物がよい。このような脂肪族ジスルフィド化合物は、R61−S−S―R61’で表される。ここで、R61、R61’は独立に炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基から選ばれる1価の置換基である。
脂肪族系の硫黄含有有機化合物の好ましい具体例としては、例えばメチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、ブチルチオール、ヘプチルチオール、ヘキシルチオール、オクチルチオール、ノニルチオール、デシルチオール(デカンチオール)、ウンデシルチオール、ドデシルチオール(ドデカンチオール)、テトラデシルチオール(テトラデカンチオール)、ヘキサデカンチオール、オクタデシルチオール、tert−ドデシルメルカプタン、シクロヘキシルチオール、ベンジルチオール、エチルフェニルチオール、2−メルカプトメチル−1,3−ジチオラン、2−メルカプトメチル−1,4−ジチアン、1−メルカプト−2,3−エピチオプロパン、1−メルカプトメチルチオ−2,3−エピチオプロパン、1−メルカプトエチルチオ−2,3−エピチオプロパン、3−メルカプトチエタン、2−メルカプトチエタン、3−メルカプトメチルチオチエタン、2−メルカプトメチルチオチエタン、3−メルカプトエチルチオチエタン、2−メルカプトエチルチオチエタン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等の1価の脂肪族チオール化合物、1,1−メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1,1,1−テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、ビス(1,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等の脂肪族ポリチオール化合物、ドデシルメチルスルフィド、n−デシルスルフィドなどの脂肪族スルフィド、デカンジスルフィドなどの脂肪族ジスルフィドが挙げられる。なお、これらは特に限定されるものではなく、単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
[エステル化合物]
本実施の形態で用いるエステル化合物は、上記一般式(1)又は(2)で表される官能基のいずれかを2つ含有するエステル化合物である。これらの官能基が、複合ニッケル微粒子の分散性向上に寄与する。また、式中の基Rは、それぞれ独立して、炭素数が1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基又はベンジル基を示す。ここで、炭素数が1〜6、好ましくは2〜6のアルキル基としては、例えば直鎖又は枝分かれしたアルキル基がよい。また、置換されていてもよいフェニル基としては、例えばフェニル基、トリル基又はアニソイル基のいずれかが好ましい。エステル化合物の分子量は、好ましくは100〜500の範囲内、より好ましくは150〜450の範囲内がよい。
本実施の形態で用いるエステル化合物は、酒石酸から誘導されるエステル化合物、マロン酸から誘導されるエステル化合物、クエン酸から誘導されるエステル化合物、又はトリメチルペンタンジオールから誘導されるエステル化合物が好ましい。
このようなエステル化合物の具体例としては、例えばジベンゾイル−D−酒石酸、ジベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、ジ−o−4−トルオイル−L−酒石酸、ジ−o−4−トルオイル−D−酒石酸、ジ−m−4−トルオイル−L−酒石酸、ジ−m−4−トルオイル−D−酒石酸、ジ−p−アニソイル−L−酒石酸、ジ−p−アニソイル−D−酒石酸、ジ−o−アニソイル−L−酒石酸、ジ−o−アニソイル−D−酒石酸、ジ−m−アニソイル−L−酒石酸、ジ−m−アニソイル−D−酒石酸、ジアセチル−L−酒石酸、ジアセチル−D−酒石酸、ジピバロイル−L−酒石酸、ジピバロイル−D−酒石酸、L−酒石酸ジイソプロピル、D−酒石酸ジイソプロピル、L−酒石酸ジ−n−ブチル、D−酒石酸ジ−n−ブチル、L−酒石酸ジメチル、D−酒石酸ジメチル、L−酒石酸ジエチル、D−酒石酸ジエチル、L−酒石酸ジベンジル、D−酒石酸ジベンジル、2,3−O−イソプロピリデン−L−酒石酸ジメチル、2,3−O−イソプロピリデン−D−酒石酸ジメチルなどの酒石酸から誘導されるエステル化合物、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジヘキシル、イソブチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチルなどのマロン酸から誘導されるエステル化合物、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリブチル、O−アセチルクエン酸トリメチル、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリプロピル、O−アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸から誘導されるエステル化合物、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラートなどのトリメチルペンタンジオールから誘導されるエステル化合物が挙げられる。
酒石酸から誘導されるエステル化合物は、上記一般式(I)で表される酒石酸誘導体が好ましい。一般式(I)中、基R11及び基R12で表される置換されていてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、アルキル基で置換されていてもよいフェニル基、アルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基等を挙げることができる。ここで、アルキル基としては、例えば炭素数1〜4の低級アルキル基が優れた分散効果を有するので好ましく、メチル基がより好ましい。また、アルコキシ基としては、炭素数1〜4の低級アルコキシ基が優れた分散効果を有するので好ましく、メトキシ基がより好ましい。従って、置換されていてもよいフェニル基の具体例としては、フェニル基、o−、m−もしくはp−トリル基、又は、o−、m−もしくはp−アニソイル基が好ましく、これらの中でもo−、m−もしくはp−トリル基が最も好ましい。
上記一般式(I)で表される酒石酸誘導体の好ましい具体例としては、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、ジ−o−4−トルオイル−L−酒石酸、ジ−o−4−トルオイル−D−酒石酸、ジ−m−4−トルオイル−L−酒石酸、ジ−m−4−トルオイル−D−酒石酸、ジ−p−アニソイル−L−酒石酸、ジ−p−アニソイル−D−酒石酸、ジ−o−アニソイル−L−酒石酸、ジ−o−アニソイル−D−酒石酸、ジ−m−アニソイル−L−酒石酸、ジ−m−アニソイル−D−酒石酸などを挙げることができる。これらの中でも、優れた分散効果を有するジ−p−トルオイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、ジ−o−4−トルオイル−L−酒石酸、ジ−o−4−トルオイル−D−酒石酸、ジ−m−4−トルオイル−L−酒石酸、ジ−m−4−トルオイル−D−酒石酸が最も好ましい。
一般式(I)で表される酒石酸誘導体が、複合ニッケル微粒子に対して優れた分散作用を有する理由は未だ明らかではないが、複合ニッケル微粒子と一般式(I)で表される酒石酸誘導体との間に、何らかの相互作用が生じているものと推測される。例えば、一般式(I)で表される酒石酸誘導体は、分子内にカルボン酸から誘導された2つのエステル構造と、これらのエステル構造の形成にそれぞれ関与する2つの嵩高い又は疎水性の芳香環を有している。これらのエステル構造−芳香環が分散作用に関与している可能性がある。すなわち、2つのエステル構造−芳香環によって複合ニッケル微粒子との間に相互作用が生じ、複合ニッケル微粒子の周囲に前記酒石酸誘導体が近接した状態で存在することによって、複合ニッケル微粒子の表面の電気的性質を変化させ、あるいは立体的な障害によって、複合ニッケル微粒子同士の凝集を抑制し、更には溶媒との親和性によって分散性を付与しているものと考えられる。ここで、相互作用としては、例えばイオン性結合、共有結合、静電結合、配位結合、水素結合等が考えられる。
また、酒石酸から誘導されるエステル化合物は、上記一般式(II)で表される酒石酸誘導体が好ましい。一般式(II)中、基R21及び基R22で表される炭素数3〜6のアルキル基としては、例えばプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基などを挙げることができる。これらの中でも、炭素数3〜6の分岐したアルキル基が優れた分散効果を有するので好ましく、その中でもイソプロピル基がより好ましい。
上記一般式(II)で表される酒石酸誘導体の好ましい具体例としては、L−酒石酸ジイソプロピル、D−酒石酸ジイソプロピル、L−酒石酸ジ−n−ブチル、D−酒石酸ジ−n−ブチルなどを挙げることができる。これらの中でも、優れた分散効果を有するL−酒石酸ジイソプロピル、D−酒石酸ジイソプロピルが最も好ましい。
一般式(II)で表される酒石酸誘導体が、複合ニッケル微粒子に対して優れた分散作用を有する理由は未だ明らかではないが、複合ニッケル微粒子と一般式(II)で表される酒石酸誘導体との間に、何らかの相互作用が生じているものと推測される。例えば、一般式(II)で表される酒石酸誘導体は、分子内にカルボン酸から誘導された2つのエステル構造と、これらのエステル構造の形成にそれぞれ関与する2つのアルキル基(好ましくは分岐したアルキル基)を有している。これらのエステル構造−アルキル基が分散作用に関与している可能性がある。すなわち、2つのエステル構造−アルキル基によって複合ニッケル微粒子との間に相互作用が生じ、複合ニッケル微粒子の周囲に前記酒石酸誘導体が近接した状態で存在することによって、複合ニッケル微粒子の表面の電気的性質を変化させ、複合ニッケル微粒子同士の凝集を抑制し、更には溶媒との親和性によって分散性を付与しているものと考えられる。ここで、相互作用としては、例えばイオン性結合、共有結合、静電結合、配位結合、水素結合等が考えられる。
また、マロン酸から誘導されるエステル化合物は、上記一般式(III)で表されるマロン酸誘導体が好ましい。一般式(III)中、基Xは水素原子であることが好ましく、基R31及び基R32は、それぞれ独立して、炭素数3〜6のアルキル基又はベンジル基であることが好ましい。ここで、炭素数3〜6のアルキル基としては、例えばプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基などを挙げることができる。これらの中でも、炭素数3〜6の分岐したアルキル基が優れた分散効果を有するので好ましく、その中でも分岐したプロピル基又は分岐したブチル基がより好ましく、イソプロピル基、t−ブチル基が最も好ましい。
上記一般式(III)で表されるマロン酸誘導体の好ましい具体例としては、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジヘキシルなどを挙げることができる。これらの中でも、優れた分散効果を有するマロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジベンジルが最も好ましい。
一般式(III)で表されるマロン酸誘導体が、複合ニッケル微粒子に対して優れた分散作用を有する理由は未だ明らかではないが、複合ニッケル微粒子と一般式(III)で表されるマロン酸誘導体との間に、何らかの相互作用が生じているものと推測される。例えば、一般式(III)で表されるマロン酸誘導体は、分子内にカルボン酸から誘導された2つのエステル構造と、これらのエステル構造の形成に関与する嵩高い又は疎水性の芳香環又はアルキル基(好ましくは分岐したアルキル基)を有している。このような構造が分散作用に関与している可能性がある。すなわち、2つのエステル構造と、嵩高い又は疎水性の芳香環又はアルキル基(好ましくは分岐したアルキル基)によって複合ニッケル微粒子との間に相互作用が生じ、複合ニッケル微粒子の周囲に前記マロン酸誘導体が近接した状態で存在することによって、複合ニッケル微粒子の表面の電気的性質を変化させ、あるいは立体的な障害によって、複合ニッケル微粒子同士の凝集を抑制し、更には溶媒との親和性によって分散性を付与しているものと考えられる。ここで、相互作用としては、例えばイオン性結合、共有結合、静電結合、配位結合、水素結合等が考えられる。
また、クエン酸から誘導されるエステル化合物は、上記一般式(IV)で表されるクエン酸誘導体が好ましい。一般式(IV)中、基R41,基R42,基R43で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基を挙げることができる。また、クエン酸誘導体は、一般式(IV)中、基Xが水素原子であり、基R41,基R42,基R43が炭素数3〜6のアルキル基であるものが優れた分散効果を有するので好ましく、これらの中でも、炭素数3〜6の直鎖のアルキル基がより好ましく、その中でもブチル基が最も好ましい。
上記一般式(IV)で表されるクエン酸誘導体の好ましい具体例としては、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリブチル、O−アセチルクエン酸トリメチル、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリプロピル、O−アセチルクエン酸トリブチルなどを挙げることができる。これらの中でも、クエン酸トリブチル、O−アセチルクエン酸トリブチルが優れた分散効果を有するので最も好ましい。
一般式(IV)で表されるクエン酸誘導体が、複合ニッケル微粒子に対して優れた分散作用を有する理由は未だ明らかではないが、複合ニッケル微粒子と一般式(IV)で表されるクエン酸誘導体との間に、何らかの相互作用が生じているものと推測される。例えば、一般式(IV)で表されるクエン酸誘導体は、分子内にカルボン酸から誘導された3つのエステル構造と、これらのエステル構造の形成にそれぞれ関与する3つのアルキル基を有している。これらのエステル構造−アルキル基が分散作用に関与している可能性がある。すなわち、3つのエステル構造−アルキル基によって複合ニッケル微粒子との間に相互作用が生じ、複合ニッケル微粒子の周囲に前記クエン酸誘導体が近接した状態で存在することによって、複合ニッケル微粒子の表面の電気的性質を変化させ、複合ニッケル微粒子同士の凝集を抑制し、更には溶媒との親和性によって分散性を付与しているものと考えられる。ここで、相互作用としては、例えばイオン性結合、共有結合、静電結合、配位結合、水素結合等が考えられる。
また、トリメチルペンタンジオールから誘導されるエステル化合物は、上記一般式(V)で表されるトリメチルペンタンジオール誘導体が好ましい。一般式(V)中、前記基R51及び基R52が、いずれも、分岐した炭素数4〜6のアシル基であることが優れた分散効果を有するので好ましく、基R51及び基R52が、ともにイソブタノイル基であることがより好ましい。
上記一般式(V)で表されるトリメチルペンタンジオール誘導体としては、優れた分散効果を有する2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラートが最も好ましい。
一般式(V)で表されるトリメチルペンタンジオール誘導体が、複合ニッケル微粒子に対して優れた分散作用を有する理由は未だ明らかではないが、複合ニッケル微粒子と一般式(V)で表されるトリメチルペンタンジオール誘導体との間に、何らかの相互作用が生じているものと推測される。例えば、一般式(V)で表されるトリメチルペンタンジオール誘導体は、分子内に2つのエステル構造と、該エステル構造の形成に関与する嵩高い又は疎水性のアシル基(好ましくは分岐したアシル基)を有している。このような構造が分散作用に関与している可能性がある。すなわち、2つのエステル構造と、嵩高い又は疎水性のアシル基(好ましくは分岐したアシル基)によって複合ニッケル微粒子との間に相互作用が生じ、複合ニッケル微粒子の周囲に前記トリメチルペンタンジオール誘導体が近接した状態で存在することによって、複合ニッケル微粒子の表面の電気的性質を変化させ、あるいは立体的な障害によって、複合ニッケル微粒子同士の凝集を抑制し、更には溶媒との親和性によって分散性を付与しているものと考えられる。ここで、相互作用としては、例えばイオン性結合、共有結合、静電結合、配位結合、水素結合等が考えられる。
上記一般式(I)〜(V)で表されるエステル化合物の中でも、特に上記一般式(I)で表されるエステル化合物が好ましく、例えば脂肪族チオール化合物で被覆した金属ニッケル微粒子に対する分散性向上の効果が高いので、脂肪族チオールで被覆した金属ニッケル微粒子と、上記一般式(I)で表されるエステル化合物との組み合わせが特に好ましい。
上記のエステル化合物は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、発明の効果を損なわない範囲で、他の化合物からなる分散剤と組み合わせて使用することもできる。
[複合ニッケル微粒子へのエステル化合物の適用方法]
本実施の形態において、エステル化合物の適用方法は、特に制限はなく、例えば、a)複合ニッケル微粒子に対して所定量のエステル化合物を添加し、混練分散させる方法、b)複合ニッケル微粒子を液相法で合成した後で液相中に所定量のエステル化合物を添加する方法、c)高圧ホモジナイザーなどの分散機を用いて複合ニッケル微粒子を機械的に解砕し、その解砕の前又は後に、所定量のエステル化合物を添加し分散させる方法など、様々な方法が挙げられる。なお、本実施の形態においてエステル化合物の添加方法は、特に制限はなく、そのまま複合ニッケル微粒子に添加してもよいし、任意の溶媒に溶解した状態で複合ニッケル微粒子に添加してもよい。
本実施の形態に用いるエステル化合物は、強い凝集抑制作用を有することから、少量でも優れた分散効果が期待できる。本実施の形態におけるエステル化合物の使用量は、複合ニッケル微粒子100質量部に対して0.1質量部以上40質量部以下の範囲内とすることが好ましく、1質量部以上30質量部以下の範囲内がより好ましい。複合ニッケル微粒子100質量部に対するエステル化合物の使用量が0.1質量部未満では分散効果が十分に得られない傾向があり、40質量部を超えると、エステル化合物の残渣による凝集体が発生する傾向がある。また、上記の上限を超えてエステル化合物を過剰に使用すると、複合ニッケル微粒子中に残留したエステル化合物によって製品に影響を与える場合がある。例えば、上記エステル化合物を用いて分散させた複合ニッケル微粒子を、積層セラミックコンデンサーの製造に使用する場合、エステル化合物の使用量が過剰であると、製造工程おける焼成時の体積変化が大きくなり、剥離や膜切れの原因となる場合がある。
複合ニッケル微粒子に、上記エステル化合物を適用した後、余剰のエステル化合物を洗浄して除去することが好ましい。洗浄は、例えばイソプロパノールなどのアルコール系溶媒を用いて行うことができる。
本実施の形態では、エステル化合物を用いることによって、粒子径が150nm以下の微細な金属ニッケル微粒子についても、凝集を抑制し、単一粒子が分散した粒子径分布のシャープな金属ニッケル微粒子の集合体を得ることができる。また、本実施の形態で用いるエステル化合物は、強い凝集抑制作用を有することから、少量でも優れた分散効果が期待できる。さらに、余剰のエステル化合物を除去することで、焼成工程などで発生する揮発分を低減できる効果も得られる。
[任意成分]
本実施の形態の分散性ニッケル微粒子組成物は、任意成分として、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、例えば炭素数4〜30のエーテル系有機溶媒、炭素数7〜30の飽和又は不飽和の炭化水素系有機溶媒、炭素数3〜18のアルコール系溶媒等を使用することができる。好ましい溶媒の具体例としては、イソプロパノール、テトラエチレングリコール、n−オクチルエーテル等が挙げられ、これらの溶媒は、本実施の形態で用いるエステル化合物の分散機能を向上させることができる。また、後述するように、金属ニッケル微粒子の液相合成に使用した1級アミンをそのまま溶媒として用いることもできる。
上記以外の溶媒としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピニルアセテート及びジヒドロターピニルアセテートなどが好ましく挙げられる。このような溶媒は、エチルセルロースなどの有機バインダに対する溶解性も比較的良好であるので、例えば、導電性ペーストなどの用途に有利である。また、その沸点が200〜300℃の範囲内にあり、適度な粘性を有するので、例えば、本発明の分散性ニッケル微粒子組成物をペースト状にして金属ニッケル微粒子(又は複合ニッケル微粒子)を焼結させる電極材料などの用途に有利に使用される。
以上述べたように、本実施の形態に係る分散性ニッケル微粒子組成物は、上記複合ニッケル微粒子と、上記エステル化合物と、を含有することによって、後記実施例に示すように、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素による凝集抑制作用と、上記エステル化合物による凝集抑制作用が組み合わされて奏される。従って、例えば粒子径が150nm以下の微細な金属ニッケル微粒子についても金属ニッケル微粒子の凝集が抑制され、単一粒子が分散した粒子径分布のシャープな金属ニッケル微粒子の集合体となる。また、本実施の形態に係る分散性ニッケル微粒子組成物は、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素に被覆された複合ニッケル微粒子を含有するため、例えば導電ペーストとして使用する場合に急激な加熱乾燥を行っても、金属ニッケル微粒子の酸化を抑制できる。このように、凝集粒子が少なく、シャープな粒子径分布を持つ金属ニッケル微粒子の集合体である分散性ニッケル微粒子組成物は、例えば積層セラミックコンデンサーの内部電極材料等の工業材料として好適に用いることができる。
[分散性ニッケル微粒子組成物の製造方法]
本実施の形態において、分散性ニッケル微粒子組成物の調製は、特に制限はなく、複合ニッケル微粒子と、エステル化合物とを混合し、必要により、溶媒を加えたり、混練、攪拌等を行ったりすればよい。この場合、複合ニッケル微粒子へのエステル化合物の適用は、例えば上記a)〜c)に準じて実施できる。
本実施の形態の分散性ニッケル微粒子組成物におけるエステル化合物の含有量は、複合ニッケル微粒子100質量部に対して0.1質量部以上40質量部以下の範囲内とすることが好ましく、1質量部以上30質量部以下の範囲内がより好ましい。複合ニッケル微粒子100質量部に対するエステル化合物の含有量が0.1質量部未満では分散性が低下する傾向があり、40質量部を超えると、凝集が生じ易くなる傾向がある。
別の観点から、例えば元素分析により得られる値として、本実施の形態の分散性ニッケル微粒子組成物中に含有される硫黄元素(硫黄含有有機化合物の状態で含有されるものも含む)の量は、好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲内がよく、炭素元素の量は、好ましくは0.5〜2.0質量%の範囲内、より好ましくは0.5〜1.5質量%の範囲内がよく、酸素元素の量は、好ましくは0.5〜5.0質量%の範囲内、より好ましくは0.5〜3.0質量%の範囲内がよい。
次に、本実施の形態の分散性ニッケル微粒子組成物に使用される金属ニッケル微粒子及びこれを元に製造される複合ニッケル微粒子について、好ましい態様を挙げて説明する。
[金属ニッケル微粒子の製造方法]
本発明の分散性ニッケル微粒子組成物に使用される金属ニッケル微粒子は、分散性の効果を十分に発揮させるために、粒子径が150nm以下で粒子径分布が狭い(例えば、Cv値が0.2以下の)金属ニッケル微粒子であることが好ましい。このような粒子径分布の金属ニッケル微粒子を製造することは一般に困難を伴うが、液相でのマイクロ波照射により製造することができる。そこで、液相でのマイクロ波照射による製造方法を説明する。
金属ニッケル微粒子は、次の工程A及びB;
A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
及び、
B)該錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、金属ニッケル微粒子のスラリーを得る金属ニッケル微粒子スラリー生成工程、
を含むマイクロ波照射による液相法により調製することができる。
<工程A;錯化反応液生成工程>
工程Aでは、まず、カルボン酸ニッケルおよび1級アミンの混合物を調製する。
(カルボン酸ニッケル)
カルボン酸ニッケル(カルボン酸のニッケル塩)は、カルボン酸の種類を限定するものではなく、例えば、カルボキシル基が1つのモノカルボン酸であってもよく、また、カルボキシル基が2つ以上のカルボン酸であってもよい。また、非環式カルボン酸であってもよく、環式カルボン酸であってもよい。このようなカルボン酸ニッケルとして、非環式モノカルボン酸ニッケルを好適に用いることができ、非環式モノカルボン酸ニッケルのなかでも、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、プロピオン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、安息香酸ニッケル等を用いることがより好ましい。これらの非環式モノカルボン酸ニッケルを用いることによって、得られる金属ニッケル微粒子は、その形状のばらつきが抑制され、均一な形状として形成されやすくなる。カルボン酸ニッケルは、無水物であってもよく、また水和物であってもよい。
なお、カルボン酸ニッケルに代えて、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等の無機塩を用いることも考えられるが、無機塩の場合、解離(分解)が高温であるため、解離後のニッケルイオン(又はニッケル錯体)を還元する過程で更なる高い温度での加熱が必要となるため好ましくない。また、Ni(acac)(β-ジケトナト錯体)、ステアリン酸ニッケル等の有機配位子により構成されるニッケル塩を用いることも考えられるが、これらのニッケル塩を用いると、原料コストが高くなり好ましくない。
(1級アミン)
1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成することができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)に対する還元能を効果的に発揮する。一方、2級アミンは立体障害が大きいため、ニッケル錯体の良好な形成を阻害するおそれがあり、3級アミンはニッケルイオンの還元能を有しないため、いずれも単独では使用できないが、1級アミンを使用する上で、生成する金属ニッケル微粒子の形状に支障を与えない範囲でこれらを併用することは差し支えない。1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成できるものであれば、特に限定するものではなく、常温で固体又は液体のものが使用できる。ここで、常温とは、20℃±15℃をいう。常温で液体の1級アミンは、ニッケル錯体を形成する際の有機溶媒としても機能する。なお、常温で固体の1級アミンであっても、100℃以上の加熱によって液体であるか、又は有機溶媒を用いて溶解するものであれば、特に問題はない。
1級アミンは、芳香族1級アミンであってもよいが、反応液におけるニッケル錯体形成の容易性の観点からは脂肪族1級アミンが好適である。脂肪族1級アミンは、例えばその炭素鎖の長さを調整することによって生成する金属ニッケル微粒子の粒子径を制御することができ、特に平均粒子径が20nm〜100nmの範囲内にあるナノ粒子を製造する場合において有利である。ナノ粒子の粒子径を制御する観点から、脂肪族1級アミンは、その炭素数が6〜20程度のものから選択して用いることが好適である。炭素数が多いほど得られるナノ粒子の粒子径が小さくなる。このようなアミンとして、例えばオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン等を挙げることができる。例えばオレイルアミンは、金属ニッケル微粒子生成過程に於ける温度条件下において液体状態として存在するため均一溶液で反応を効率的に進行できる。
1級アミンは、金属ニッケル微粒子の生成時に表面修飾剤として機能するため、1級アミンの除去後においても二次凝集を抑制できる。また、1級アミンは、還元反応後に、生成した金属ニッケル微粒子の固体成分と溶剤または未反応の1級アミン等を分離する洗浄工程における処理操作の容易性の観点からは室温で液体のものが好ましい。更に、1級アミンは、ニッケル錯体を還元して金属ニッケル微粒子を得るときの反応制御の容易性の観点からは還元温度より沸点が高いものが好ましい。すなわち、脂肪族1級アミンにおいては沸点が180℃以上のものが好ましく、200℃以上のものがより好ましく、また、炭素数が9以上のものが好ましい。ここで、例えば炭素数が9である脂肪族アミン[C21N(ノニルアミン)]の沸点は201℃である。1級アミンの量は、ニッケル1molに対して2mol以上用いることが好ましく、2.2mol以上用いることがより好ましく、4mol以上用いることが望ましい。1級アミンの量が2mol未満では、得られる金属ニッケル微粒子の粒子径の制御が困難となり、粒子径がばらつきやすくなる。また、1級アミンの量の上限は特にはないが、例えば生産性の観点からは20mol以下とすることが好ましい。
(有機溶媒)
工程Aでは、均一溶液での反応をより効率的に進行させるために、1級アミンとは別の有機溶媒を新たに添加してもよい。有機溶媒を用いる場合、有機溶媒をカルボン酸ニッケル及び1級アミンと同時に混合してもよいが、カルボン酸ニッケル及び1級アミンを先ず混合し錯形成した後に有機溶媒を加えると、1級アミンが効率的にニッケル原子に配位するので、より好ましい。使用できる有機溶媒としては、1級アミンとニッケルイオンとの錯形成を阻害しないものであれば、特に限定するものではなく、例えば炭素数4〜30のエーテル系有機溶媒、炭素数7〜30の飽和又は不飽和の炭化水素系有機溶媒、炭素数8〜18のアルコール系有機溶媒等を使用することができる。また、マイクロ波照射による加熱条件下でも使用を可能とする観点から、使用する有機溶媒は、沸点が170℃以上のものを選択することが好ましく、より好ましくは200〜300℃の範囲内にあるものを選択することがよい。このような有機溶媒の具体例としては、例えばテトラエチレングリコール、n−オクチルエーテル等が挙げられる。
(錯形成)
2価のニッケルイオンは配位子置換活性種として知られており、形成する錯体の配位子は温度、濃度によって容易に配位子交換により錯形成が変化する可能性がある。例えばカルボン酸ニッケルおよび1級アミンの混合物を熱処理して反応液を得る工程において、用いるアミンの炭素鎖長等の立体障害を考慮すると、例えば、図1に示すように、カルボン酸イオン(RCOO、RCOO)が二座配位(a)または単座配位(b)いずれかで配位する可能性があり、さらにアミンの濃度が大過剰の場合は外圏にカルボン酸イオンが存在する(c)の少なくとも3種の可能性がある。目的とする反応温度(還元温度)に於いて均一溶液とするには、図1(a)〜(c)において、少なくともA、B、C、D、E、Fの配位子のうち少なくとも一箇所は1級アミンが配位している必要がある。その状態をとるには、1級アミンが過剰に反応溶液内に存在している必要があり、少なくともニッケルイオン1molに対し2mol以上存在していることが好ましく、2.2mol以上存在していることがより好ましく、4mol以上存在していることが望ましい。
この錯形成反応は室温に於いても進行することができるが、十分且つ、より効率の良い錯形成反応を行うために、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して反応を行う。この加熱は、カルボン酸ニッケルとして、例えばギ酸ニッケル2水和物や酢酸ニッケル4水和物のようなカルボン酸ニッケルの水和物を用いた場合に特に有利である。加熱温度は、好ましくは100℃を超える温度とし、より好ましくは105℃以上の温度とすることで、カルボン酸ニッケルに配位した配位水と1級アミンとの配位子置換反応が効率よく行われ、錯体配位子としての水分子を解離させることができ、さらにその水を系外に出すことができるので効率よくアミンとの錯体を形成させることができる。例えば、ギ酸ニッケル2水和物は、室温では2個の配位水と2座配位子である2個のギ酸イオンが存在した錯体構造をとっているため、この2つの配位水と1級アミンの配位子置換により効率よく錯形成させるには、100℃より高い温度で加熱することでこの錯体配位子としての水分子を解離させることが好ましい。また、カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成反応における熱処理は、後に続くニッケル錯体(又はニッケルイオン)のマイクロ波照射による加熱還元の過程と確実に分離し、前記の錯形成反応を完結させるという観点から、上記の上限温度以下とし、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下とすることがよい。
加熱時間は、加熱温度や、各原料の含有量に応じて適宜決定することができるが、錯形成反応を完結させるという観点から、10分以上とすることが好ましい。加熱時間の上限は特にないが、長時間熱処理することはエネルギー消費及び工程時間を節約する観点から無駄である。なお、この加熱の方法は、特に制限されず、例えばオイルバスなどの熱媒体による加熱であっても、マイクロ波照射による加熱であってもよい。
カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成反応は、カルボン酸ニッケルと1級アミンとを有機溶媒中で混合して得られる溶液を加熱したときに、溶液の色の変化によって確認することができる。また、この錯形成反応は、例えば紫外・可視吸収スペクトル測定装置を用いて、300nm〜750nmの波長領域において観測される吸収スペクトルの吸収極大の波長を測定し、原料の極大吸収波長(例えばギ酸ニッケル2水和物ではその極大吸収波長は710nmであり、酢酸ニッケル4水和物ではその極大吸収波長は710nmである。)に対する錯化反応液のシフト(極大吸収波長が600nmにシフト)を観測することによって確認することができる。
カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成が行われた後、得られる反応液を、次に説明するように、マイクロ波照射によって加熱することにより、ニッケル錯体のニッケルイオンが還元され、ニッケルイオンに配位しているカルボン酸イオンが同時に分解し、最終的に酸化数が0価のニッケルを含有する金属ニッケル微粒子が生成する。一般にカルボン酸ニッケルは水を溶媒とする以外の条件では難溶性であり、マイクロ波照射による加熱還元反応の前段階として、カルボン酸ニッケルを含む溶液は均一反応溶液とする必要がある。これに対して、本実施の形態で使用される1級アミンは、使用温度条件で液体であり、かつそれがニッケルイオンに配位することで液化し、均一反応溶液を形成すると考えられる。
<工程B;金属ニッケル微粒子スラリー生成工程>
本工程では、カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成反応によって得られた錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱し、錯化反応液中のニッケルイオンを還元して金属ニッケル微粒子スラリーを得る。マイクロ波照射によって加熱する温度は、得られる金属ニッケル微粒子の形状のばらつきを抑制するという観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上とすることがよい。加熱温度の上限は特にないが、処理を能率的に行う観点からは例えば270℃以下とすることが好適である。なお、マイクロ波の使用波長は、特に限定するものではなく、例えば2.45GHzである。なお、加熱温度は、例えばカルボン酸ニッケルの種類や金属ニッケル微粒子の核発生を促進させる添加剤の使用などによって、適宜調整することができる。
本工程では、マイクロ波が反応液内に浸透するため、均一加熱が行われ、かつ、エネルギーを媒体に直接与えることができるため、急速加熱を行うことができる。これにより、反応液全体を所望の温度に均一にすることができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)の還元、核生成、核成長各々の過程を溶液全体において同時に生じさせ、結果として粒子径分布の狭い単分散な粒子を短時間で容易に製造することができる。
均一な粒子径を有する金属ニッケル微粒子を生成させるには、工程Aの錯化反応液生成工程(ニッケル錯体の生成が行われる工程)でニッケル錯体を均一にかつ十分に生成させることと、本工程Bのマイクロ波照射によって加熱する工程で、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)の還元により生成するニッケル(0価)の核の同時発生・成長を行う必要がある。すなわち、錯化反応液生成工程の加熱温度を上記の特定の範囲内で調整し、金属ニッケル微粒子スラリー生成工程におけるマイクロ波による加熱温度よりも確実に低くしておくことで、粒子径・形状の整った粒子が生成し易い。例えば、錯化反応液生成工程で加熱温度が高すぎるとニッケル錯体の生成とニッケル(0価)への還元反応が同時に進行し異種の金属種が発生することで、金属ニッケル微粒子スラリー生成工程での粒子形状の整った粒子の生成が困難となるおそれがある。また、金属ニッケル微粒子スラリー生成工程の加熱温度が低すぎるとニッケル(0価)への還元反応速度が遅くなり核の発生が少なくなるため粒子が大きくなるだけでなく、金属ニッケル微粒子の収率の点からも好ましくはない。
マイクロ波照射によって加熱して得られる金属ニッケル微粒子スラリーを、例えば、静置分離し、上澄み液を取り除いた後、適当な溶媒を用いて洗浄し、乾燥することで、金属ニッケル微粒子が得られる。金属ニッケル微粒子スラリー生成工程においては、必要に応じ、前述した有機溶媒を加えてもよい。なお、前記したように、錯形成反応に使用する1級アミンを有機溶媒としてそのまま用いることが好ましい。
(表面修飾剤)
本実施の形態では、金属ニッケル微粒子の製造において、金属ニッケル微粒子の粒径を制御するための表面修飾剤として、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド等の高分子樹脂、ミリスチン酸、オレイン酸等の長鎖カルボン酸またはカルボン酸塩等を添加することができる。ただし、金属ニッケル微粒子の表面修飾量が多いと、最終的に得られる分散性ニッケル微粒子組成物をニッケル電極用の導電性ペーストに用いる場合、該組成物をペーストして高温で焼成すると充填密度の減少を招き、層間剥離やクラックを生じる可能性がある。このため、金属ニッケル微粒子の段階では、洗浄した後の表面修飾量は可能な限り少ない方が好ましい。表面修飾剤は、工程Aのカルボン酸ニッケル及び1級アミンの混合物の段階で添加してもよく、工程Aで得られる錯化反応液に添加してもよい。
以上のようにして、表面に水酸基を有する平均粒子径150nm以下の金属ニッケル微粒子を調製することができる。なお、他の金属との合金とする場合も、上記方法に準じて行うことができる。
[複合ニッケル微粒子の製造方法]
上記のようにして得られた金属ニッケル微粒子に硫黄含有有機化合物を添加することによって、金属ニッケル微粒子の表面が、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素によって被覆された複合ニッケル微粒子を得ることができ、好ましい形態となる。硫黄含有有機化合物の添加は、反応液のマイクロ波照射による還元反応に続く、金属ニッケル微粒子のスラリーの状態で添加してもよく、又は還元反応によって得られる金属ニッケル微粒子のスラリーから、一旦、金属ニッケル微粒子を単離した後に、金属ニッケル微粒子を液中に分散させてスラリーの状態としてから、添加してもよい。工程の簡略化の観点から、硫黄含有有機化合物の添加は、反応液のマイクロ波照射による還元反応に続く、金属ニッケル微粒子のスラリーの状態で添加することが好ましい。
本実施の形態で用いる複合ニッケル微粒子は、金属ニッケル微粒子の表面に硫黄含有有機化合物又は硫黄元素を存在させることによって、金属ニッケル微粒子の表面活性を低下させることができ、例えばアミド生成により副生する水が原因となって生じる水酸化物が、金属ニッケル微粒子の表面に吸着又は付着するのを阻害し、金属ニッケル微粒子の凝集を抑制できると考えられる。また、金属ニッケル微粒子の表面活性を低下させることは、例えば導電ペーストとして使用する場合に急激な加熱乾燥を行う際に、金属ニッケル微粒子の酸化を抑制できるので、急激なガス発生による膨れ、剥離などを抑えることができる。
また、錯化反応液にマイクロ波を照射してニッケルイオンを加熱還元させることによって得られた金属ニッケル微粒子スラリーは、錯形成反応によって使用された1級アミンによって被覆されていると考えられる。硫黄含有有機化合物のなかでも、チオール系化合物(前述)やスルフィド系化合物(前述)は、金属ニッケル微粒子を被覆した1級アミンとの置換反応を可能とする。すなわち、これらの硫黄含有有機化合物は、金属ニッケル微粒子の表面に化学結合により固定化された1級アミンとの置換反応(配位子交換反応)を可能とする官能基を有する化合物である。
チオール系化合物は、1級アミンとの置換反応を制御しやすいという観点から、炭化水素基を有する脂肪族チオール化合物が好ましく、より好ましくは炭素数1〜18の範囲内にある脂肪族チオール化合物がよい。また、金属ニッケル微粒子の表面に固定化された1級アミンとの置換反応により、金属ニッケル微粒子の表面に存在する有機物(特に炭素元素)の量を制御することも可能となる。例えば、金属ニッケル微粒子の表面修飾に係る1級アミンの炭素数よりも少ない硫黄含有有機化合物を使用することによって、金属ニッケル微粒子の表面に存在する炭素元素を低減させることができる。このようなことから、最も好ましい実施の形態は、硫黄含有有機化合物が、炭素数1〜18の範囲内にある炭化水素基を有する脂肪族チオール化合物であり、1級アミンが、炭化水素基を有する脂肪族1級アミンであること、及び脂肪族チオール化合物の炭化水素基の炭素数が、脂肪族1級アミンの炭化水素基の炭素数以下、好ましくは脂肪族1級アミンの炭化水素基の炭素数未満であることがよい。
スルフィド基を含有する硫黄含有有機化合物は、1級アミンとの置換反応を制御しやすいという観点から、炭化水素基を有する脂肪族メチルスルフィド化合物が好ましく、より好ましくは炭素数2〜18の範囲内にある脂肪族メチルスルフィド化合物がよい。
ジスルフィド基を含有する硫黄含有有機化合物は、1級アミンとの置換反応を制御しやすいという観点から、炭化水素基を有する脂肪族ジスルフィド化合物が好ましく、より好ましくは炭素数2〜40の範囲内にある脂肪族ジスルフィド化合物がよい。
硫黄含有有機化合物の添加量は、金属ニッケル微粒子の表面積を考慮して決定されるものであり、仕込み時のカルボン酸ニッケルのニッケル元素100質量部に対して硫黄元素として、例えば0.01〜3質量部の範囲内、好ましくは0.05〜1質量部の範囲内となるようにすればよい。
硫黄含有有機化合物の添加によって、室温においても、硫黄含有有機化合物で被覆された複合ニッケル微粒子を得ることができるが、確実かつより効率的に行うため、好ましくは100℃〜300℃の範囲内で、1分〜1時間の範囲内で加熱処理する。このような加熱処理により、硫黄含有有機化合物は一部の1級アミンとの置換反応により金属ニッケル微粒子の表面を被覆し、又は硫黄含有有機化合物は一部の1級アミンとの置換反応後に熱分解して(硫黄元素として)金属ニッケル微粒子の表面を被覆するものと考えられる。なお、この加熱の方法は、特に制限されず、例えばオイルバスなどの熱媒体による加熱であっても、マイクロ波照射による加熱であってもよく、特に限定されない。
以上述べたように、本実施の形態で用いる複合ニッケル微粒子は、湿式還元法によって製造された金属ニッケル微粒子を含有することが好ましく、例えば元素分析により得られる値が、好ましくはN(窒素元素)が0.001質量%〜0.05質量%の範囲内、S(硫黄元素)が0.05質量%〜1.0質量%の範囲内がよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[平均粒子径の測定]
SEM(走査電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出してそれぞれの粒子径を求め、平均粒子径を算出した。また、Cv値(変動係数)は、(標準偏差)÷(平均粒子径)によって算出した。なお、Cv値が小さいほど、粒子径がより均一であることを示す。
[分散性の評価]
分散性の評価は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名;LA−950V2)を用いて行った。サンプルをイソプロパノールに分散させたスラリー溶液(固形分濃度10wt%)を所定の濃度に希釈して、前記粒子径分布測定装置内にて超音波で5分間分散させ、体積分布の測定を行い、粒度分布の結果にて分散性の比較評価を行った。
(実施例1−1)
<金属ニッケル微粒子1aの調製>
125.9gのラウリルアミンに18.5gのギ酸ニッケル二水和物を加え、窒素フロー下、120℃で10分間加熱することによって、ギ酸ニッケルを溶解させて錯化反応液を得た。次いで、その錯化反応液に、さらに83.9gのラウリルアミンを加え、マイクロ波を用いて180℃で10分間加熱することによって、金属ニッケル微粒子スラリー1a’を得た。
得られた金属ニッケル微粒子スラリー1a’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンを用いて洗浄した。更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の金属ニッケル微粒子1aを得た。この元素分析の結果、C;0.7、O;1.8、S;<0.1(単位は質量%)であった。
<複合ニッケル微粒子1bの調製>
得られた金属ニッケル微粒子スラリー1a’(固形分濃度2.5wt%に調整したもの)の100gに、0.070gのドデカンチオ−ルを添加し、再度、マイクロ波を照射して250℃で5分間加熱することによって、複合ニッケル微粒子スラリー1b’を得た。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー1b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた後、メタノールとトルエンの体積比率が1:4の混合溶媒を用いて3回洗浄した。その後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケル微粒子1bを得た。この元素分析の結果、C;0.6、O;1.4、S;0.4(単位は質量%)であった。
<分散性ニッケル微粒子組成物1cの調製>
得られた複合ニッケル微粒子スラリー1b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。次に、上澄み液を取り除いた後、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した。その後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物1cを得た。元素分析の結果、C;0.7、O;1.9、S;0.4(単位は質量%)であった。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー1b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液1c(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液1cの粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.11μm、D99;0.55μmであった。結果を表1に示す。
比較例1−1
実施例1−1で得られた金属ニッケル微粒子スラリー1a’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンを用いて洗浄した。更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、金属ニッケル微粒子1aを分散させたスラリー溶液1a(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液1aの粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.80μm、D99;3.80μmであった。結果を表1に示す。
比較例1−2
実施例1−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー1b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンを用いて洗浄した。更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、複合ニッケル微粒子を分散させたスラリー溶液1b(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液1bの粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.22μm、D99;1.10μmであった。結果を表1に示す。
参考例1
実施例1−1で得られた金属ニッケル微粒子スラリー1a’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、金属ニッケル微粒子を分散させたスラリー溶液1d(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液1dの粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.32μm、D99;1.30μmであった。結果を表1に示す。
なお、金属ニッケル微粒子1a’の元素分析の結果は、C;0.7、O;1.8、S<0.1(単位は質量%)であった。
以上の結果を表1に示す。
Figure 0005808010
(実施例2−1)
<金属ニッケル微粒子2aの調製>
実施例1−1と同様にして、金属ニッケル微粒子スラリー2a’を得、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の金属ニッケル微粒子2aを得た。
<複合ニッケル微粒子2bの調製>
得られた金属ニッケル微粒子スラリー2a’(固形分濃度2.5wt%に調整したもの)の100gに、0.050gのジ−n−デカンジスルフィドを添加し、再度、マイクロ波を照射して250℃で5分間加熱することによって、複合ニッケル微粒子スラリー2b’を得た。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー2b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた。その後、メタノールとトルエンの体積比率が1:4の混合溶媒を用いて3回洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケル微粒子2bを得た。この元素分析の結果、C;0.6、O;1.8、S;0.3(単位は質量%)であった。
<分散性ニッケル微粒子組成物2c−1の調製>
得られた複合ニッケル微粒子スラリー2b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。その後、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物2c−1を得た。この元素分析の結果、C;0.7、O;1.9、S;0.3(単位は質量%)であった。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー2b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液2c―1(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液2c−1の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.14μm、D99;0.67μmであった。結果を表2に示す。
(実施例2−2)
<分散性ニッケル微粒子組成物2c−2の調製>
実施例2−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー2b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにクエン酸トリブチルの0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物2c−2を得た。この元素分析の結果、C;0.7、O;1.8、S;0.3(単位は質量%)であった。
実施例2−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー2b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにクエン酸トリブチルの0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて分散処理して、圧力200MPaの条件にて分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液2c−2(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液2c−2の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.28μm、D99;1.32μmであった。結果を表2に示す。
比較例2
実施例2−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー2b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた。その後、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、複合ニッケル微粒子を分散させたスラリー溶液2b(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液2bの粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.49μm、D99;2.27μmであった。結果を表2に示す。
以上の結果を表2に示す。
Figure 0005808010
(実施例3−1)
<金属ニッケル微粒子3aの調製>
実施例1−1と同様にして、金属ニッケル微粒子スラリー3a’を得、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の金属ニッケル微粒子3aを得た。
<複合ニッケル微粒子3bの調製>
得られた金属ニッケル微粒子スラリー3a’(固形分濃度2.5wt%に調整したもの)の100gに、0.030gの1,10−デカンジチオールを添加し、再度、マイクロ波を照射して250℃で5分間加熱することによって、複合ニッケル微粒子スラリー3b’を得た。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた。その後、メタノールとトルエンの体積比率が1:4の混合溶媒を用いて3回洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケル微粒子3bを得た。この元素分析の結果、C;0.4、O;1.7、S;0.3(単位は質量%)であった。
<分散性ニッケル微粒子組成物3c―1の調製>
得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物3c−1を得た。この元素分析の結果、C;0.6、O;1.8、S;0.3(単位は質量%)であった。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液3c―1(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液3c−1の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.11μm、D99;0.48μmであった。結果を表3に示す。
(実施例3−2)
<分散性ニッケル微粒子組成物3c―2の調製>
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジベンゾイル−D−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物3c−2を得た。この元素分析の結果、C;0.7、O;1.9、S;0.3(単位は質量%)であった。
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジベンゾイル−D−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液3c−2(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液3c−2の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.15μm、D99;0.58μmであった。結果を表3に示す。
(実施例3−3)
<分散性ニッケル微粒子組成物3c―3の調製>
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−アニソイル−D−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物3c−3を得た。この元素分析の結果、C;0.6、O;1.9、S;0.3(単位は質量%)であった。
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−アニソイル−D−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。次に、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液3c−3(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液3c−3の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.20μm、D99;0.67μmであった。結果を表3に示す。
(実施例3−4)
<分散性ニッケル微粒子組成物3c―4の調製>
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにD−酒石酸ジイソプロピルの0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物3c−4を得た。この元素分析の結果、C;0.8、O;1.8、S;0.3(単位は質量%)であった。
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにD−酒石酸ジイソプロピルの0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液3c−4(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液3c−4の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.11μm、D99;0.51μmであった。結果を表3に示す。
(実施例3−5)
<分散性ニッケル微粒子組成物3c―5の調製>
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにO−アセチルクエン酸トリブチルの0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物3c−5を得た。この元素分析の結果、C;0.7、O;1.8、S;0.3(単位は質量%)であった。
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにO−アセチルクエン酸トリブチルの0.2gを加え、15分間撹拌した。次に、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液3c−5(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液3c−5の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.20μm、D99;0.88μmであった。結果を表3に示す。
(実施例3−6)
<分散性ニッケル微粒子組成物3c―6の調製>
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにマロン酸ジ−t−ブチルの0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物3c−6を得た。この元素分析の結果、C;0.8、O;1.7、S;0.3(単位は質量%)であった。
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%)の10gを分取し、これにマロン酸ジ−t−ブチルの0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液3c−6(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液3c−6の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.14μm、D99;0.51μmであった。結果を表3に示す。
(実施例3−7)
<分散性ニッケル微粒子組成物3c―7の調製>
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これに2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート(224−TMPD)の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物3c−7を得た。この元素分析の結果、C;0.5、O;1.8、S;0.3(単位は質量%)であった。
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これに2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート(224−TMPD)の0.2gを加え、15分間撹拌した。次に、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液3c−7(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液3c−7の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.24μm、D99;0.77μmであった。結果を表3に示す。
比較例3
実施例3−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー3b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンを用いて洗浄した。更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、複合ニッケル微粒子を分散させたスラリー溶液3b(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液3bの粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.30μm、D99;1.01μmであった。結果を表3に示す。
以上の結果を表3に示す。
Figure 0005808010
(実施例4−1)
<金属ニッケル微粒子4aの調製>
実施例1−1と同様にして、金属ニッケル微粒子スラリー4a’を得、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の金属ニッケル微粒子4aを得た。
<複合ニッケル微粒子4bの調製>
得られた金属ニッケル微粒子スラリー4a’(固形分濃度2.5wt%に調整したもの)の100gに、0.058gのtert−ドデシルメルカプタンを添加し、再度、マイクロ波を照射して250℃で5分間加熱することによって、複合ニッケル微粒子スラリー4b’を得た。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー4b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた。その後、メタノールとトルエンの体積比率が1:4の混合溶媒を用いて3回洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケル微粒子4bを得た。この元素分析の結果、C;0.4、O;1.6、S;0.3(単位は質量%)であった。
<分散性ニッケル微粒子組成物4c―1の調製>
得られた複合ニッケル微粒子スラリー4b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物4c−1を得た。この元素分析の結果、C;0.7、O;1.6、S;0.3(単位は質量%)であった。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー4b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液4c―1(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液4c−1の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.16μm、D99;0.58μmであった。結果を表4に示す。
(実施例4−2)
<分散性ニッケル微粒子組成物4c―2の調製>
実施例4−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー4b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−D−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物4c−2を得た。この元素分析の結果、C;0.8、O;1.6、S;0.3(単位は質量%)であった。
実施例4−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー4b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−D−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液4c−2(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液4c−2の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.12μm、D99;0.58μmであった。結果を表4に示す。
(実施例4−3)
<分散性ニッケル微粒子組成物4c―3の調製>
実施例4−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー4b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにシベンゾイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物4c−3を得た。この元素分析の結果、C;0.7、O;1.5、S;0.3(単位は質量%)であった。
実施例4−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー4b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにシベンゾイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液4c−3(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液4c−3の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.18μm、D99;0.67μmであった。結果を表4に示す。
(実施例4−4)
<分散性ニッケル微粒子組成物4c―4の調製>
実施例4−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー4b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−アニソイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物4c−4を得た。この元素分析の結果、C;0.7、O;1.6、S;0.3(単位は質量%)であった。
実施例4−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー4b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−アニソイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液4c−4(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液4c−4の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.17μm、D99;0.77μmであった。結果を表4に示す。
比較例4
実施例4−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー4b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンを用いて洗浄した。更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、複合ニッケル微粒子を分散させたスラリー溶液4b(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液4bの粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.59μm、D99;3.41μmであった。結果を表4に示す。
以上の結果を表4に示す。
Figure 0005808010
(実施例5−1)
<金属ニッケル微粒子5aの調製>
実施例1−1と同様にして、金属ニッケル微粒子スラリー5a’を得、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の金属ニッケル微粒子5aを得た。
<複合ニッケル微粒子5bの調製>
得られた金属ニッケル微粒子スラリー5a’(固形分濃度2.5wt%に調整したもの)の100gに、0.062gのドデシルメチルスルフィドを添加し、再度、マイクロ波を照射して250℃で5分間加熱することによって、複合ニッケル微粒子スラリー5b’を得た。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー5b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた後、メタノールとトルエンの体積比率が1:4の混合溶媒を用いて3回洗浄した。その後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケル微粒子5bを得た。この元素分析の結果、C;0.5、O;1.8、S;0.5(単位は質量%)であった。
<分散性ニッケル微粒子組成物5c―1の調製>
得られた複合ニッケル微粒子スラリー5b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物5c−1を得た。この元素分析の結果、C;0.8、O;1.6、S;0.5(単位は質量%)であった。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー5b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液5c―1(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液5c−1の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.13μm、D99;0.67μmであった。結果を表5に示す。
(実施例5−2)
<分散性ニッケル微粒子組成物5c―2の調製>
実施例5−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー5b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−D−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物5c−2を得た。この元素分析の結果、C;0.9、O;1.8、S;0.5(単位は質量%)であった。
実施例5−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー5b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−p−トルオイル−D−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液5c−2(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液5c−2の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.12μm、D99;0.58μmであった。結果を表5に示す。
(実施例5−3)
<分散性ニッケル微粒子組成物5c―3の調製>
実施例5−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー5b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−o−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物5c−3を得た。この元素分析の結果、C;0.8、O;1.7、S;0.5(単位は質量%)であった。
実施例5−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー5b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにジ−o−トルオイル−L−酒石酸の0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理し、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液5c−3(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液5c−3の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.13μm、D99;0.58μmであった。結果を表5に示す。
(実施例5−4)
<分散性ニッケル微粒子組成物5c―4の調製>
実施例5−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー5b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにマロン酸ジベンジルの0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物5c−4を得た。この元素分析の結果、C;0.7、O;1.8、S;0.5(単位は質量%)であった。
実施例5−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー5b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにマロン酸ジベンジルの0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液5c−4(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液5c−4の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.20μm、D99;1.01μmであった。結果を表5に示す。
比較例5
実施例5−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー5b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、複合ニッケル微粒子を分散させたスラリー溶液5b(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液5bの粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.44μm、D99;1.73μmであった。結果を表5に示す。
以上の結果を表5に示す。
Figure 0005808010
(実施例6−1)
<金属ニッケル微粒子6aの調製>
実施例1−1と同様にして、金属ニッケル微粒子スラリー6a’を得、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の金属ニッケル微粒子6aを得た。
<複合ニッケル微粒子6bの調製>
得られた金属ニッケル微粒子スラリー6a’(固形分濃度2.5wt%に調整したもの)の100gに、0.087gのドデカンチオールを添加し、再度、マイクロ波を照射して250℃で5分間加熱することによって、複合ニッケル微粒子スラリー6b’を得た。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた後、メタノールとトルエンの体積比率が1:4の混合溶媒を用いて3回洗浄した。その後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケル微粒子6bを得た。この元素分析の結果、C;0.6、O;1.7、S;0.5(単位は質量%)であった。
<分散性ニッケル微粒子組成物6c―1の調製>
得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにL−酒石酸ジイソプロピルの0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物6c−1を得た。この元素分析の結果、C;0.9、O;1.7、S;0.5(単位は質量%)であった。
得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにL−酒石酸ジイソプロピルの0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液6c−1(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液6c−1の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.17μm、D99;0.67μmであった。結果を表6に示す。
(実施例6−2)
<分散性ニッケル微粒子組成物6c―2の調製>
実施例6−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにD−酒石酸ジイソプロピルの0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物6c−2を得た。この元素分析の結果、C;0.8、O;1.6、S;0.5(単位は質量%)であった。
実施例6−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにD−酒石酸ジイソプロピルの0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液6c−2(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液6c−2の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.16μm、D99;0.88μmであった。結果を表6に示す。
(実施例6−3)
<分散性ニッケル微粒子組成物6c―3の調製>
実施例6−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにO−アセチルクエン酸トリブチルの0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物6c−3を得た。この元素分析の結果、C;0.8、O;1.6、S;0.5(単位は質量%)であった。
実施例6−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにO−アセチルクエン酸トリブチルの0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液6c−3(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液6c−3の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.23μm、D99;1.01μmであった。結果を表6に示す。
(実施例6−4)
<分散性ニッケル微粒子組成物6c―4の調製>
実施例6−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにクエン酸トリエチルの0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物6c−4を得た。この元素分析の結果、C;0.8、O;1.5、S;0.5(単位は質量%)であった。
実施例6−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにクエン酸トリエチルの0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液6c−4(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液6c−4の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.23μm、D99;1.01μmであった。結果を表6に示す。
(実施例6−5)
<分散性ニッケル微粒子組成物6c―5の調製>
実施例6−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにクエン酸トリブチルの0.2gを加え、15分間撹拌した後、上澄み液を取り除いた。次に、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、分散性ニッケル微粒子組成物6c−5を得た。この元素分析の結果、C;0.8、O;1.6、S;0.5(単位は質量%)であった。
実施例6−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’(固形分濃度10wt%に調整したもの)の10gを分取し、これにクエン酸トリブチルの0.2gを加え、15分間撹拌した。その後、イソプロパノールで洗浄し、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、分散性ニッケル微粒子組成物としてのスラリー溶液6c−5(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液6c−5の粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.15μm、D99;0.77μmであった。結果を表6に示す。
比較例6
実施例6−1で得られた複合ニッケル微粒子スラリー6b’を分取して静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した。その後、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にて分散処理して、複合ニッケル微粒子を分散させたスラリー溶液6b(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液6bの粒度分布の測定を行ったところ、体積分布は、D50;0.55μm、D99;2.27μmであった。結果を表6に示す。
以上の結果を表6に示す。
Figure 0005808010
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。

Claims (9)

  1. 金属ニッケル微粒子の表面に、硫黄含有有機化合物又は硫黄元素が被覆した複合ニッケル微粒子と、
    下記の一般式(1)又は(2)で表される官能基のいずれかを2つ有するエステル化合物と、
    を含有する分散性ニッケル微粒子組成物。
    Figure 0005808010
    [式(1)又は(2)中、基Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基又はベンジル基を示す。]
  2. 前記エステル化合物が、酒石酸から誘導されるエステル化合物、マロン酸から誘導されるエステル化合物、クエン酸から誘導されるエステル化合物、又はトリメチルペンタンジオールから誘導されるエステル化合物である請求項1に記載の分散性ニッケル微粒子組成物。
  3. 前記酒石酸から誘導されるエステル化合物が、下記の一般式(I)で表される酒石酸誘導体である請求項2に記載の分散性ニッケル微粒子組成物。
    Figure 0005808010
    [式(I)中、基R11、基R12は、それぞれ独立して、置換されていてもよいフェニル基を意味する。]
  4. 前記酒石酸から誘導されるエステル化合物が、下記の一般式(II)で表される酒石酸誘導体である請求項2に記載の分散性ニッケル微粒子組成物。
    Figure 0005808010
    [式(II)中、基R21、基R22は、それぞれ独立して、炭素数3〜6のアルキル基を示す。]
  5. 前記マロン酸から誘導されるエステル化合物が、下記の一般式(III)で表されるマロン酸誘導体である請求項2に記載の分散性ニッケル微粒子組成物。
    Figure 0005808010
    [式(III)中、基Xは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基を示し、基R31、基R32は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基を示す。]
  6. 前記クエン酸から誘導されるエステル化合物が、下記の一般式(IV)で表されるクエン酸誘導体である請求項2に記載の分散性ニッケル微粒子組成物。
    Figure 0005808010
    [式(IV)中、基Xは水素原子又はアセチル基を示し、基R41,基R42,基R43はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を示す。]
  7. 前記トリメチルペンタンジオールから誘導されるエステル化合物が、下記の一般式(V)で表されるトリメチルペンタンジオール誘導体である請求項2に記載の分散性ニッケル微粒子組成物。
    Figure 0005808010
    [式(V)中、基R51、基R52は、それぞれ独立して、炭素数4〜6のアシル基を示す。]
  8. 前記金属ニッケル微粒子の粒子径が1〜150nmの範囲内にある請求項1〜7のいずれか1項に記載の分散性ニッケル微粒子組成物。
  9. 硫黄元素を0.1〜0.5質量%の範囲内、炭素元素を0.5〜2.0質量%の範囲内、酸素元素を0.5〜5.0質量%の範囲内で含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の分散性ニッケル微粒子組成物。
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