JP5807723B2 - 磁気冷暖房装置 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気冷暖房装置に係り、特に、複数の磁性体に個別に磁気を印加して磁気熱量効果を発現させ、複数の磁性体の熱を固体物質の熱伝導を利用して輸送する磁気冷暖房装置に関する。
従来用いられている室温域の冷凍装置、たとえば、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンなどの冷凍装置の大半は、フロンガスや代替フロンガスなどの気体冷媒の熱伝導を利用している。最近では、フロンガスの排出に伴うオゾン層破壊の問題が露呈し、さらに、代替フロンガスの排出に伴う地球温暖化への影響も懸念されている。このため、フロンガスや代替フロンガスなどの気体冷媒を用いた冷凍装置に代わる、クリーンでかつ熱輸送能力の高い、革新的な冷凍装置の開発が強く望まれている。
このような背景から、最近になって注目されるようになった冷凍技術が磁気冷凍技術である。磁性体の中には、その磁性体に印加する磁界の大きさが変化すると、その変化に応じて自身の温度が変化する、いわゆる磁気熱量効果(MCE:Magnetocaloric Effect)を発現するものがある。このような磁気熱量効果により温度変化する磁性体は磁気熱量材料(MCM:Magnetocaloric Effect Materials)と称されている(磁気熱量効果材料と称されることもある)。そして、この磁気熱量効果を発現する磁性体を利用して熱を輸送する冷凍技術が磁気冷凍技術である。
磁気冷凍技術を応用したものとしては、たとえば、下記特許文献1に記載されているような、固体物質の熱伝導を利用して熱を輸送する磁気冷凍装置がある。この磁気冷凍装置は以下のような構成によって熱を伝導させる。
磁気を印加すると温度が上昇し、磁気を除去すると温度が下降する正の磁性体と、磁気を印加すると温度が下降し、磁気を除去すると温度が上昇する負の磁性体とを、所定の間隔で交互に配置する。正負一対の磁性体で1つの磁性体ブロックを形成する。この磁性体ブロックを環状に複数個配置して磁性体ユニットを形成する。磁性体ユニットに配置された正負の磁性体の間で挿脱される熱伝導部を正負の磁性体の間に配置する。この磁性体ユニットと同心で内径と外径が略等しいハブ状の回転体に永久磁石を配置して磁気回路を形成する。そして、永久磁石が配置されている回転体を磁性体ユニットと対向するように配置して磁性体ユニットに対し相対的に回転させる。この回転体の回転によって正負の磁性体に同時に磁気が印加されまた除去される。この回転体の回転に伴って熱伝導部を一定のタイミングで正負の磁性体の間に挿脱させる。磁気熱量効果により磁性体が発生する熱を、熱伝導部を介して磁性体が配置される一方向に輸送する。
このような磁気冷凍装置において、引用文献1の技術では、高温側熱交換手段から低温側熱交換手段に向かう方向に順に作動温度が低くなる磁性体を用いている。
また、たとえば引用文献2の技術では、それぞれ作動温度範囲の異なる複数の磁性体を用いて、隣接する磁性体同士の作動温度範囲を重複するようにしている。
特開2007−147209号公報(段落0072) 米国特許第6588215号(第11欄第30行〜第12欄第37行、FIG.11および12)
このような作動温度範囲の異なる磁気熱量材料を用いた磁性体を配置すると、すべての磁性体がそれぞれの作動温度範囲となったのち、すなわち定常状態となったのちは効率よく磁気熱量効果を発現させて熱を移動できる。しかし、起動時においては、各磁性体は起動時におけるその環境の温度となっている。このため、起動時から定常状態となるまでは、各磁性体がそれぞれの作動温度になるまで磁気熱量効果が十分に発揮されない。このため従来の装置では、起動時の状態から定常状態に至るまでの過渡特性が悪く、定常状態になるまで時間がかかるという問題があった。
そこで本発明の目的は、使用開始の起動時から定常状態となるまでの過渡特性を向上させた磁気冷暖房装置を提供することである。
上記目的を達成するための本発明に係る磁気冷暖房装置は、間隔を設けて列状に配置され、磁気の印加および除去により温度変化する複数の磁性体と、これら複数の磁性体のそれぞれに磁気を印加および除去する磁気印加部を有する。複数の磁性体の列の一端部には磁性体から間隔をあけて配置された低温側熱交換部を有し、複数の磁性体の列の他端部には磁性体から間隔をあけて配置された高温側熱交換部を有する。さらに磁性体同士の間、磁性体と低温側熱交換部の間、および磁性体と高温側熱交換部の間のそれぞれに配置されて、これらの間の熱の伝達および断熱を行う熱伝導部を有する。そして、複数の磁性体は、それぞれが作動温度範囲の異なる磁気熱量材料を有するものであり、これら複数の磁性体のうち少なくとも一つの磁性体は、一つの磁性体としてその中に作動温度範囲の異なる少なくとも2つの磁気熱量材料を有していてこのうち一つの磁気熱量材料は作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料であることを特徴とする。
以上のように構成された本発明に係る磁気冷暖房装置によれば、列状に並んだ複数の磁性体のうち少なくとも一つの磁性体に、作動温度範囲の異なる少なくとも2つの磁気熱量材料を有するようにして、このうち一つの磁気熱量材料が作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料とした。これにより少なくとも2つの磁気熱量材料を持つ磁性体は、自身の磁気熱量材料の作動温度範囲から外れている起動時の温度状態の時点から、磁気の印加、除去によって温度変化を起こすことができる。したがって、起動時から磁性体の温度が変わって行くので、起動時から定常状態になるまでの過渡特性が向上して、従来よりも短い時間で定常状態にすることができる。
磁気冷暖房装置の動作原理を説明するための説明図である。 磁気冷暖房装置の温度変化を示すグラフである。 磁性体に使用される磁気熱量材料の作動温度範囲を説明するためのグラフである。 比較例1の磁気冷暖房装置として、図1に示した各磁性体10A−10Fにおける磁気熱量材料の割合(質量%)を説明するためのグラフである。 比較例1の磁気冷暖房装置における熱の移動を説明するための説明図である。 比較例1の磁気冷暖房装置における熱の移動を説明するための説明図である。 実施形態1の磁気冷暖房装置において、各磁性体10A−10Fをそれぞれ構成する磁気熱量材料の組み合わせ割合(質量%)を説明するためのグラフである。 実施形態1の磁気冷暖房装置における熱の移動を説明するための説明図である。 実施形態1の磁気冷暖房装置における熱の移動を説明するための説明図である。 3つの磁気熱量材料を組み合わせたときの各磁気熱量材料の配置を説明するための説明図である。 複数の磁気熱量材料を組み合わせた磁性体を用いた場合の温度変化を論理計算した結果をまとめたグラフである。 図11における論理計算に用いた磁性体中の磁気熱量材料の組み合わせ割合を説明するための説明図である 実施形態1の変形例における磁気冷暖房装置において、各磁性体をそれぞれ構成する磁気熱量材料の組み合わせ割合(質量%)を説明するためのグラフである。 実施形態2の磁気冷暖房装置の概略構成を示す上面図である。 図14に示した磁気冷暖房装置を構成する、磁性体・熱伝達部配置板の上面図である。 図14に示した磁気冷暖房装置を構成する、磁石配置板の上面図である。 図14に示した磁気冷暖房装置の分解断面図である。 磁気冷暖房装置の磁石/熱伝達部配置板を回転させたときに熱が移動して行く様子を説明するための模式図である。 本実施形態2に係る磁気冷暖房装置の動作を説明するための説明図である。 熱スイッチ部の形態1を説明するための説明図である。 熱スイッチ部の形態2を説明するための説明図である。 熱スイッチ部の形態3を説明するための説明図である。 熱スイッチ部の形態4を説明するための説明図である。 熱スイッチ部の形態5を説明するための説明図である。 熱スイッチ部の形態6を説明するための説明図である。 熱スイッチ部の形態7を説明するための説明図である。 熱スイッチ部の形態8における熱スイッチ部の構成を説明するための熱スイッチ部部分の断面図である。 熱スイッチ部の形態8における熱スイッチ部の構成を説明するための熱スイッチ部部分の平面図(図26の矢視Aの図)である。 エレクトロウェッティングの原理を説明するための説明図である。 隙間における液体金属の移動を説明するための説明図で、隙間における液体金属部分の拡大図である。 図26と同じ部分の断面図であり、液体金属が隙間を上がってきた熱伝達状態を示している。 熱スイッチ部の形態9における熱スイッチ部の構成を説明するための平面図であって、図26中の矢視Aに相当する方向から見た図である。
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[磁気冷凍装置の動作原理]
まず、磁気冷暖房装置の動作原理を説明する。図1は、磁気冷暖房装置の動作原理を説明するための説明図である。
図示する磁気冷暖房装置は磁気冷暖房装置の基本的な形態を示している。磁気冷暖房装置は磁気熱量効果を発現する複数の磁性体10A−10Fを有する。複数の磁性体10A−10Fは間隔を設けて列状に並べられている。磁性体10A−10Fには、発現される磁気熱量効果の種類が同じ磁性体として、正の磁性体を用いている。ただし本実施形態では、それぞれの磁性体が磁気の印加、除去によって温度変化する範囲(作動温度範囲)が異なる磁気熱量材料を有している(詳細後述)。
このような磁性体10A、10Bで磁性体ブロック100Aを形成し、磁性体10C、10Dで磁性体ブロック100Bを形成し、磁性体10E、10Fで磁性体ブロック100Cを形成する。また、磁性体ブロック100A−100Cで磁性体ユニット200を形成する。
磁気回路20A、20B、磁気回路20C、20D、磁気回路20E、20Fは、磁性体10A−10Fとの間で往復移動する。つまり、図1Aの状態から、磁気回路20A、20Bが磁性体10Aから10Bに、磁気回路20C、20Dが磁性体10Cから10Dに、磁気回路20E、20Fが磁性体10Eから10Fに、一斉に移動して、図1Bの状態になる。次に、図1Bの状態から、磁気回路20A、20Bが磁性体10Bから10Aに、磁気回路20C、20Dが磁性体10Dから10Cに、磁気回路20E、20Fが磁性体10Fから10Eに、一斉に移動して、磁気回路と磁性体の位置関係が図1の状態に戻る。したがって、磁気回路が往復移動すると、図1Aと図1Bの状態が交互に繰り返される。
ここで、複数の磁性体10A−10Fには、磁気回路20A、20B−磁気回路20E、20Fで磁気を印加すると発熱し、この磁気を除去すると吸熱する正の磁性体を用いるか、磁気回路20A−20Fで磁気を印加すると吸熱し除去すると発熱する負の磁性体のいずれか一方のみを用いる。正の磁性体と負の磁性体とでは、発現される磁気熱量効果が正反対であり、磁気熱量効果の種類が異なる。本実施形態1では(図1の場合)、負の磁性体に比較して安価な正の磁性体を用いている。これは、負の磁性体は希少な磁気熱量材料から製造しなければならないのでコスト高になるし、負の磁性体の磁気熱量効果の大きさが正の磁性体の磁気熱量効果の大きさよりも小さいからである(なお磁性体に用いる具体的な磁気熱量材料については後述する)。
磁気回路20A、20B−20E、20Fには永久磁石(図示せず)が備えられている。磁気回路20A、20B、磁気回路20C、20D、磁気回路20E、20Fそれぞれが一体となって、図示左右方向に往復移動することで、磁性体10A−10Fに個別に磁気を印加する。
熱伝導部30A−30Gは、磁性体10A−10Fが磁気熱量効果により発生した熱を低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに向けて伝導する。熱伝導部30Aは、低温側熱交換部40Aとこれと隣り合う磁性体10Aとの間で挿脱されて両者を機械的に接続する。熱伝導部30Bは、磁性体10Aと10Bとの間で挿脱されて両者を機械的に接続する。同様に、熱伝導部30C、30D、30E、30Fは、磁性体10Bと10Cとの間、磁性体10Cと10Dとの間、磁性体10Dと10Eとの間、磁性体10Eと10Fとの間で挿脱されて両者を機械的に接続する。熱伝導部30Gは、磁性体10Fと高温側熱交換部40Bとの間で挿脱されて両者を機械的に接続する。熱伝導部30B、30D、30Fは、同じタイミングで、磁性体10Aと10Bとの間、磁性体10Cと10Dとの間、磁性体10Eと10Fとの間で挿脱されて両者を機械的に接続する。また、熱伝導部30A、30C、30E、30Gも、同じタイミングで、低温側熱交換部40Aと磁性体10Aとの間、磁性体10Bと10Cとの間、磁性体10Dと10Eとの間、磁性体10Fと高温側熱交換部40Bとの間で挿脱されて両者を機械的に接続する。熱伝導部30B、30D、30Fと熱伝導部30A、30C、30E、30Gは交互に挿脱が繰り返される。
図1Aに示すように、磁気回路20A、20Bが磁性体ブロック100Aの磁性体10Aに、磁気回路20C、20Dが磁性体ブロック100Bの磁性体10Cに、磁気回路20E、20Fが磁性体ブロック100Cの磁性体10Eに、それぞれ位置する。このときには、磁性体10A、10C、10Eに対して磁気が印加され、磁性体10B、10D、10Fには磁気が印加されておらず磁気が除去されている。このとき、磁性体10A、10C、10Eは発熱し、磁性体10B、10D、10Fは吸熱する。そして同時に、熱伝導部30Bが磁性体10Aと10Bとの間に、熱伝導部30Dが磁性体10Cと10Dとの間に、熱伝導部30Fが磁性体10Eと10Fとの間に、それぞれ挿入される。このため、各磁性体ブロック内の隣り合う磁性体との間の熱伝導が行われる。すなわち、磁性体10A、10C、10Eが磁気熱量効果により発生した熱を磁性体10B、10D、10Fにそれぞれ移動する。また、このときには、熱伝導部30Aと30Gは低温側熱交換部40Aと磁性体10Aとの間および高温側熱交換部40Bと磁性体10Fとの間には挿入されない。また、磁性体ブロック間の熱伝導を行う熱伝導部30C、30Eも磁性体10B、10Cとの間および磁性体10D、10Eとの間には挿入されない。
次に、図1Bに示すように、磁気回路20A、20Bが磁性体ブロック100Aの磁性体10Bに、磁気回路20C、20Dが磁性体ブロック100Bの磁性体10Dに、磁気回路20E、20Fが磁性体ブロック100Cの磁性体10Fに、それぞれ位置する。このときには、磁性体10B、10D、10Fに対して磁気が印加され、磁性体10A、10C、10Eには磁気が印加されておらず磁気が除去されている。このとき、磁性体10B、10D、10Fは発熱し、磁性体10A、10C、10Eは吸熱する。また、熱伝導部30Aが低温側熱交換部40Aと磁性体10Aとの間に、熱伝導部30Cが磁性体10Bと10Cとの間に、熱伝導部30Eが磁性体10Dと10Eとの間に、熱伝導部30Gが磁性体10Fと高温側熱交換部40Bとの間に、それぞれ挿入される。これにより、低温側熱交換部40A、高温側熱交換部40Bと磁性体ユニット200の両端に位置する磁性体10A、10Fとの間、および、隣り合う磁性体ブロックの隣り合う磁性体との間の熱伝導が行われる。すなわち、磁性体10A、10C、10Eが磁気熱量効果により吸熱され、磁性体10B、10D、10Fが磁気熱量効果により発熱する。このため、低温側熱交換部40Aから磁性体10Aに、磁性体10Bから磁性体10Cに、磁性体10Dから磁性体10Eに、磁性体10Fから高温側熱交換部40Bに熱が移動する。また、このときには、磁性体ブロック内の熱伝導を行う熱伝導部30B、30D、30Fは磁性体10A、10Bとの間、磁性体10C、10Dとの間、磁性体10E、10Fとの間には挿入されない。
以上のように、各磁性体ブロック100A−100Cに対応させて設けた磁気回路を図示左右方向に連動して往復移動させることによって、各磁性体ブロック100A−100Cの両端に位置する磁性体は交互に磁気の印加と除去を繰り返す。さらに、磁気回路の移動に連動させて、熱伝導部30A−30Gの低温側熱交換部40A、磁性体10A−10F、高温側熱交換部40Bそれぞれの間への挿脱を繰り返す。このことによって、磁気熱量効果により得られた熱が低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに移動する。
図2は、磁気冷暖房装置の温度変化を示すグラフである。このグラフに示すように、磁気冷暖房装置が起動した直後(初期状態)では、各磁性体の位置に対して温度の傾きがほとんどなく、低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bまで室温(ここでは20℃)と同じである。
そして、少し時間が経過した状態(温度変化途中)において、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の温度差は小さいものの、温度差が現れてくる。さらに時間が経過するに従って低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の温度差が次第に大きくなって行く。最終的には、定常状態の直線で示すように、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の温度差が最大になる。
この定常状態において、低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bへ熱を移動させて、低温側熱交換部40A側に接触させた物体や低温側熱交換部40Aがある空間などを冷やすことができる。これにより磁気冷凍装置となる。逆に高温側熱交換部40Bから低温側熱交換部40Aからへ熱を移動させて、高温側熱交換部40Bに接触させた物体や高温側熱交換部40Bがある空間などを温めることができる。これにより磁気暖房装置となる。また、低温側から高温側へ、逆に高温側から低温側へ熱を移動させることで、冷凍(冷房)と暖房を一つの装置で行うこともできる。この場合、一つの装置で磁気冷暖房装置となる。
このような磁気の移動(印加、除去)により温度変化する磁性体は、磁気を移動させた時に温度変化する温度範囲(これを作動温度範囲という)が決まっている。
図3は、磁性体(磁気熱量材料)の作動温度範囲を説明するためのグラフである。このグラフにおいて、横軸は作動温度であり、縦軸は温度変化範囲(ΔT)である。ΔTは、磁場の強さにも依存して変化するものである。
図示するように、各磁気熱量材料a−fには、変化する温度範囲(縦軸のΔT)にピークがあり、このピークの時の温度(横軸)がもっとも温度変化しやすい作動温度となる。このピークを示す部分の作動温度は磁気熱量材料のキュリー点に対応した温度である。そして、グラフからわかるように、各磁気熱量材料は、キュリー点の温度を中心にして作動温度範囲が決まっている。つまりΔTのピーク位置の温度から離れると、ほとんど温度変化しないのである。
ここで、これら磁気熱量材料a−fを図示するようにa−fの順に並べた場合、その温度変化範囲(磁気熱量材料a−fのそれぞれの山形のグラフ)は、それぞれ隣接する磁気熱量材料に対して若干重なりがある。しかし、重なりのある部分はΔTのピーク(頂点)の温度から離れた裾野の部分のみである。この裾野の部分ではΔTが低い(縦軸)が低いことがわかる。したがって、この裾野の部分、すなわち磁気熱量材料a−fのそれぞれが重なり合っている部分での温度変化は少ない。
実際に使用できる温度範囲は、ΔTの半分程度以上の温度変化量を示す温度範囲である。このため、たとえばΔTが5℃で、キュリー点が22.5℃の正の磁気熱量材料(磁気印加で温度上昇する)で温度変化量(ΔT)が5℃を有する材料ならば、その作動温度範囲は約20〜25℃となる。ただし、20℃以下、25℃以上の裾野の部分でも、磁場の印加、除去により温度変化は小さいながらも起る。ほかの磁気熱量材料も同様に、キュリー点温度、材料種によってその作動温度範囲および温度変化量(ΔT)が決まってくる。
(比較例1)
ここで本実施形態を理解しやすくするために、磁気冷暖房装置の基本形を比較例1として説明する。比較例1は、図1と同様に構成された磁気冷暖房装置において、複数の磁性体がそれぞれの作動温度範囲で作動する一つの磁気熱量材料のみを用いている。すなわち、特許文献1および2に記載されているように、一つひとつの磁性体は、高温側熱交換手段から低温側熱交換手段に向かう方向に順に作動温度が低くなる一つの磁気熱量材料のみを用いているのである。
図4は、比較例1の磁気冷暖房装置として、図1に示した各磁性体10A−10Fにおける磁気熱量材料の割合(質量%)を説明するためのグラフである。
この比較例1では一つの磁性体が一つの磁気熱量材料からなる。そして一つの磁気熱量材料の作動温度範囲は、磁気を印加されると5℃温度が上昇し、磁気が除去されると上昇した分の温度5℃分が下降する特性を持っていると想定する(つまりΔTが5℃である)。このため比較例においては、一つ磁性体の作動温度範囲はそのまま一つの磁気熱量材料の作動温度範囲と同じということになる。また、上記の裾野の部分も無視することができず、以下に述べるように、磁性体の作動温度範囲の前後に1℃の裾野をもつと仮定する。この裾野の部分では、磁場印加、除去を行っても磁性体の温度は、裾野の温度域を超えることはできない。
図示するように、比較例において各磁性体は、それぞれ約5℃の温度範囲で温度変化する一つの磁気熱量材料によって構成されている。そして、各磁性体の作動温度範囲は独立している。また、隣接する磁性体とはその作動温度範囲に1℃の重なりがある。
したがって、磁性体10Aは作動温度範囲5℃から10℃(裾野の部分を考慮すると4℃から11℃の範囲を変化しうる)の磁気熱量材料aが100質量%である。磁性体10Bは作動温度範囲10℃から15℃(裾野の部分を考慮すると9℃から16℃の範囲を変化しうる)の磁気熱量材料bが100質量%、磁性体10Cは作動温度範囲15℃から20℃(裾野の部分を考慮すると14℃から21℃の範囲を変化しうる)の磁気熱量材料cが100質量%、磁性体10Dは作動温度範囲20℃から25℃(裾野の部分を考慮すると19℃から26℃の範囲を変化しうる)の磁気熱量材料dが100質量%、磁性体10Eは作動温度範囲25℃から30℃(裾野の部分を考慮すると24℃から31℃の範囲を変化しうる)の磁気熱量材料eが100質量%、磁性体10Fは作動温度範囲30℃から35℃(裾野の部分を考慮すると29℃から36℃の範囲を変化しうる)の磁気熱量材料fが100質量%である。
図5および6は、比較例の磁気冷暖房装置における熱の移動を説明するための説明図である。図5(1)において各磁性体の符号下に記したかっこ内の数字は各磁性体の作動温度範囲を示している。
なお、ここでも各磁性体(正確には磁性体を構成する磁気熱量材料)は磁気を印加すると発熱し除去すると吸熱する正の磁性体である。
まず、図5の(1)に示すように、起動直後の初期状態ではすべての磁性体が室温の20℃になっている。
次に、図5の(1)の状態から図5の(2)に示すように、各磁性体ブロック100A−100Cのそれぞれの左側に位置する磁性体から磁気を除去し、右側に位置する磁性体に磁気を印加する。これと同時に、隣り合う磁性体ブロック100A−100Cの隣り合う磁性体との間、磁性体ユニット200の一端に位置する磁性体と低温側熱交換部40Aとの間および磁性体ユニット200の他端に位置する磁性体と高温側熱交換部40Bとの間の熱伝導が可能となるように熱伝導部を挿入する。
図5の(2)の状態では、作動温度に常温(20℃)を含む磁性体10Cおよび10Dにおいては、磁気が除去された磁性体10Cの温度が15℃に低下し、磁気が印加された磁性体10Dの温度が25℃に上昇する。しかし、常温を作動温度範囲に含まない磁性体10A、10B、10E、10Fは、磁気の印加、除去が行われても、ほとんど温度変化しない。
その後、熱伝導部が挿入されることで、図5の(2)’に示すように、磁性体10Cに隣接する磁性体10Bは温度が低下し17.5℃になり、磁性体10Dに隣接する磁性体10Eは温度が上昇し22.5℃になる。しかし、この状態では未だ、低温側熱交換部40Aおよび高温側熱交換部40Bにまで熱は移動していない。
続いて、図5の(3)に示すように、磁気回路を各ブロック100A−100C内で左側の磁性体の方に移動させる。これと同時に、各磁性体ブロック100A−100C内の隣り合う磁性体との間の熱伝導が可能となるように熱伝導部を挿入する。
この図5の(3)の状態では、磁性体10Cは磁気が印加されることで発熱するとともに、熱伝導部が挿入されて磁性体Dとの熱伝導があるため温度が21℃に上昇する。磁気が除去された磁性体10Dは吸熱するとともに、磁性体Cとの熱伝導があるため温度が19℃に低下する。磁性体10Bは17.5℃のままである。また磁性体10Eも22.5℃のままである。さらにこの状態でも磁性体10A、10Fは、それらの温度が室温に近く、作動温度範囲外であるため磁気回路の移動ではほとんど温度変化しない。
この状態で時間が経過すると、図5の(3)’に示すように、各磁性体ブロック100A−100C内で熱伝導部を介して温度の高い方から温度の低い方に熱が移動する。このため、磁性体10A、10Bはともに18.75℃、磁性体10C、10Dはともに20℃、磁性体10E、10Fはともに21.25℃となる。
そして、再び、磁気回路を各磁性体ブロック100A−100C内の右側から左側へ移動させて、以後これを繰り返す。そして、磁性体自体の温度が作動温度範囲に至った磁性体は磁気回路の移動に伴い温度変化するようになる。最終的には、図6に示すように、低温側熱交換部40Aが5℃、高温側熱交換部40Bが35度の温度差がついて一定になる。そして、各磁性体も、それぞれの温度が作動温度範囲となるので、磁気回路の移動に伴い図6(1)−(2)に示した温度変化を繰り返すようになる。これが定常状態である。
このように比較例1の構成では、常温(ここでは20℃)の初期状態から定常状態に至るまでの間、各磁性体の温度がそれぞれの磁性体の作動温度範囲になるまで、磁気の印加除去による温度変化が起きない状態が存在するのである。このため定常状態に至るまで多くの時間を要する結果となる。
[実施形態1]
本発明を適用した実施形態1は、各磁性体を、自身の作動温度範囲の磁気熱量材料のほかに、他の作動温度範囲の磁気熱量材料を組み合わせたものである。特に、初期状態である起動時の温度から定常状態に至ることを考慮して、起動時温度を含む作動温度の磁気熱量材料を、すべての磁性体に入れている。なお、各磁性体に用いる磁気熱量材料は、作動温度範囲において磁気を印加されると5℃温度が上昇し、磁気が除去されると5℃温度が下降する特性を持っていると想定する(ΔTが5℃)。
図7は、実施形態1の磁気冷暖房装置において、各磁性体10A−10Fをそれぞれ構成する磁気熱量材料の組み合わせ割合(質量%)を説明するためのグラフである。
磁性体10Aは、この磁性体10Aの作動温度範囲5−10℃を担う磁気熱量材料aを50質量%、隣接する磁性体10Bの作動温度範囲10−15℃を担う磁気熱量材料bを30質量%、起動時温度の作動温度範囲15−20℃を担う磁気熱量材料cを20質量%となるように組み合わせている。
ここで起動時温度は常温の20℃を想定している。このため、起動時温度を含む作動温度範囲の磁性体は、磁性体10Cのほかに磁性体10Dも該当する。しかし、磁性体10Aは、起動時温度20℃に対して低温側に位置するため、起動時温度を含む作動温度範囲の磁性体のうち、低温側に位置する磁性体10C(作動温度範囲15−20℃)の磁気熱量材料cを組み合わせて、一つの磁性体としているのである。
このように自身の作動温度範囲5−10℃である磁性体10Aに起動時温度を含む作動温度範囲15−20℃を担う磁気熱量材料cを入れておくことで、起動直後から磁気の印加、除去により磁気熱量材料cが機能して温度変化が起こるようになる。
また、磁性体10Aには、隣接する磁性体10Bの作動温度範囲10−15℃を担う磁気熱量材料bも入れている。初期状態から温度が下がって温度変化途中の状態においては、起動時温度から外れ、かつ自身の作動温度範囲5−10℃には至らない状態がある。このような途中の温度となったときに、磁気の印加、除去により温度変化させるために作動温度範囲10−15℃を担う磁気熱量材料bを入れているのである。
磁気熱量材料を組み合わせる割合は、たとえば、磁性体10A自身の作動温度範囲の磁気熱量材料aをもっとも多くする。これは、やはり定常状態に至ったときに効率よく動作させるためである。したがって、磁性体10A自身の作動温度範囲の磁気熱量材料aは、少なくとも全量(100質量%)に対して50質量%以上とすることが好ましい。
また、すべての磁性体の質量は同じになるよう調整することが好ましい。これにより各磁性体間で熱容量の違いをなくして(また少なくして)熱伝達のばらつきをなくする(少なくする)ことができる。
磁気熱量材料を組み合わせる割合は、冷暖房装置の使用状況を考慮して適宜設定すれば良い。たとえば起動、停止が少なく、いったん起動した後は、定常状態で長く稼働する装置の場合は、磁気熱量材料aをより多く、たとえば70−95質量%程度とすることが好ましい。70質量%以上の磁気熱量材料aを入れておけば、定常状態においてもっとも効率よく磁気冷暖房装置として使用することができる。ただし、磁気熱量材料aが95質量%を超えてしてしまうと、初期状態から定常状態に至るまでの時間を短くするという作用が得られないため好ましくない。
このような起動、停止が少なく、いったん起動した後は、定常状態で長く稼働する装置としては、たとえば、常に発熱する物体を冷やすために用いるものが想定される。より具体的には、たとえば電気自動車の二次電池や燃料電池の冷却などに用いる場合である(特に、二次電池においては充放電時、燃料電池においては発電時)。それらは起動直後から発熱し始めて、稼働中は常に発熱している。このため、このような電池類を冷やすためには、起動初期からの一速い冷却機能とともに、稼働中における長い間の安定した冷却機能が求められる。
一方、起動停止を繰り返すような装置の場合には、初期状態(起動時の温度状態)から一速く定常状態へ移ることが求められる。そのような装置では、磁気熱量材料aの割合を比較的少なくして、他の作動範囲の磁気熱量材料を多くする(ただし上記のように50質量%未満とならないこと)。これにより、起動初期から定常状態に至るまでの時間をいっそう早くすることができる。起動停止を繰り返すような装置としては、たとえば冷蔵庫や冷凍庫がある。冷蔵庫や冷凍庫は断熱材によって囲まれた内部を冷やすものであるため、庫内がいったん冷えて安定温度になると、その後しばらくの間、冷却する必要がない。したがって磁気冷凍装置は停止する。そして、庫内温度が上昇するとまた冷却する必要があるため冷凍装置を起動する。このため、冷蔵庫や冷凍庫に用いる冷凍装置は、起動、停止が繰り返されることになるので、長期の安定的な冷却機能よりも、起動から定常状態に至るまでの時間をより早くすることが求められるのである。
また、この磁性体10Aでは、他の作動温度範囲の磁気熱量材料bおよびcの2つを入れている(自身の磁気熱量材料と合わせて3つ)。そこで、これら2つの磁気熱量材料bおよびcの割合は、どの作動温度範囲をより速く冷やすかに応じて決定すると良い。
たとえば、起動のもっとも初期段階をより速く冷やして効果を上げるためには、磁気熱量材料cをより多くする。または磁気熱量材料bを入れないこととしても良い。
逆に、温度変化途中を速く抜けて定常状態としたければ磁気熱量材料bをcよりも多くする。ただし、この場合は磁気熱量材料cも必ず入れる必要がある。これは、すでに説明したとおり、起動初期においてはその時の温度から磁気の移動では温度変化しないため、これをいち早く起こすために、起動時温度の作動温度範囲の磁気熱量材料cを入れているものである。したがって、この温度の磁気熱量材料cを入れないと、そもそも起動初期における磁気の移動による温度変化が生じないことになるので、必ず入れる必要があるのである。一方、前者のように、途中の温度範囲の磁気熱量材料を入れなくても、すでに初期状態からの温度変化が起きているので、それ以後定常状態となるまでの途中での温度変化が少し遅くなっても、全体としては初期状態から定常状態に至るまでの時間は短縮することができる。
次に、磁性体10Bについても、磁性体10A同様に、自身の温度範囲を担う磁気熱量材料に加えて、起動時温度を担う磁性体の磁気熱量材料および起動時温度側に隣接する磁性体の温度範囲の磁気熱量材料を組み合わせる。ここでは、磁性体10Bは自身の温度範囲を担う磁気熱量材料bを70質量%、起動時温度の磁気熱量材料cを30質量%組み合わせて一つの磁性体としている。なお、この例では磁性体10Bに対して起動時温度側に隣接する磁性体は、起動時温度を担う磁性体しかないので、磁気熱量材料cのみを組み合わせることになる。
次に、磁性体10Cは、定常状態において起動時温度(つまり室温)を担う磁性体であるので、そのための磁気熱量材料cが100質量%である。磁性体10Dも同様に、定常状態において起動時温度(つまり室温)を担う磁性体であるので、そのための磁気熱量材料dが100質量%である。
次に、磁性体10Eは、磁性体10Bと同様であるが起動時温度を担う磁性体の高温側に位置するので、自身の温度範囲を担う磁気熱量材料eを70質量%、起動時温度の磁気熱量材料dを30質量%組み合わせている。
そして、もっとも高温側に位置する磁性体Fは、自身の温度範囲を担う磁気熱量材料fを50質量%、低温側に隣接する磁性体の磁気熱量材料eを30質量%、起動時温度の磁気熱量材料dを20質量%組み合わせている。その理由は磁性体10Aと同様であるが、高温側であるので、起動時温度として高温側に位置する磁性体Dの磁気熱量材料dを組み合わせているものである。
このように構成された各磁性体が、磁気の移動により温度変化する作動温度範囲は、磁性体10Aは5℃から20℃、磁性体10Bは10℃から20℃、磁性体10Cは15℃から20℃、磁性体10Dは20℃から25℃、磁性体10Eは20℃から30℃、磁性体10Fは20℃から35℃となる。
図8および9は、本実施形態1の磁気冷暖房装置における熱の移動を説明するための説明図である。図8(1)において各磁性体の符号下に記したかっこ内の数字は各磁性体の作動温度範囲を示している(ただし、図8および9中、図8(1)以外については図示省略しているが同じである)。ここでも、各磁性体を構成する磁気熱量材料は磁気を印加すると発熱し除去すると吸熱する正の磁性体である。
まず、図8の(1)に示すように、初期の状態ではすべての磁性体が室温の20℃になっている。
次に、図8の(1)の状態から図8の(2)に示すように、各磁性体ブロック100A−100Cのそれぞれの左側に位置する磁性体から磁気を除去し、右側に位置する磁性体に磁気を印加する。これと同時に、隣り合う磁性体ブロック100A−100Cの隣り合う磁性体との間、磁性体ユニット200の一端に位置する磁性体と低温側熱交換部40Aとの間および磁性体ユニット200の他端に位置する磁性体と高温側熱交換部40Bとの間の熱伝導が可能となるように熱伝導部を挿入する。
図8の(2)の状態では、作動温度に常温(20℃)を含む磁性体10Cは、磁気が除去されて温度が15℃に低下し、磁気が印加された磁性体10Dは温度が25℃に上昇する。
そして、磁性体10Aは磁気が除去されたことで温度が18℃になる。磁性体10Bは正の磁性体であり、その温度変化範囲が10−20℃であるので、ここで磁気が印加されても温度の上昇はほとんどなく20℃のままである。磁性体10Eも正の磁性体であり、その温度変化範囲が20−30℃であるため磁気が除去されても温度は低下せず、20℃のままである。そして磁性体10Fは、磁気の印加により温度が上昇して22℃となる。
このように本実施形態1では、磁性体10A、10Fは比較例と異なり、最初の段階から温度変化している。これは、すでに説明したように、磁性体10A、10Fのいずれにも、常温を作動温度範囲とする磁気熱量材料cまたはdが含まれているからである。ただし、磁気熱量材料cのみの磁性体10Cや磁気熱量材料dのみの磁性体10Dよりも温度変化は少ない。これは、常温を作動温度範囲とする磁気熱量材料cまたはdは混合量が磁性体10C、10Dよりも少ないため、各磁性体全体として温度変化が少なくなるためである。ここでは、磁性体10A、10Fは現在温度が常温であっても約2℃程度の変化はあると想定している。
なお、この段階で温度変化範囲から外れるために温度変化しないと説明した磁性体10B、10Eであっても、実際には磁気の移動によりわずかな温度変化が生じるが、ここでは原理説明であるため、そのようなわずかな変化は省略した。
その後、熱伝導部が挿入されることで、図8の(2)’に示すように、磁性体10Aに隣接する低温側熱交換部40Aは温度が低下し、それに伴い磁性体10Aは熱が奪われて、両方とも19℃になる。同様に、磁性体10Bと隣接する磁性体10Cは17.5℃、磁性体10Dと隣接する磁性体10Eは22.5℃になる。そして、磁性体10Fと高温側熱交換部40Bは21℃なる。つまり、最初の熱サイクルの段階から、低温側熱交換部40Aも高温側熱交換部40Bも温度変化が起こるのである。
続いて、図8の(3)に示すように、磁気回路を各ブロック100A−100C内で左側の磁性体の方に移動させる。これと同時に、各磁性体ブロック100A−100C内の隣り合う磁性体との間の熱伝導が可能となるように熱伝導部を挿入する。この磁気の移動により、磁性体10Aは磁気が印加されることになって、温度が20.2℃まで上昇する。磁性体10Bは磁気が除去されるので14℃まで低下する。磁性体10Cは磁気が印加されて温度が上がり21℃になる。磁性体10Dは磁気が除去されて温度が下がり19℃になる。磁性体10Eは磁気が印加されて温度が上がり26℃になる。磁性体10Fは磁気が除去されて温度が下がり19.8℃になる。
ここでも磁性体10B、10Eは現在温度が常温であっても、常温を作動温度範囲とする磁気熱量材料c、dを含んでいるため、温度変化が生じる。これら磁性体10B、10Eにおける磁気熱量材料c、dの混合割合は磁性体10C、10Dより少ないため、約3.5℃程度の変化になると想定している。
そしてこの状態で時間が経過すると、図8の(3)’に示すように、温度の高い方から温度の低い方に熱が移動する。このため、磁性体10A、10Bはともに17.1℃、磁性体10E、10Fはともに22.9℃となる。したがって、この段階でも、比較例と比べて磁性体10A,10Bはより低い温度となり、磁性体10E,10Fはより高い温度となる。
そして、再び、磁気回路を各磁性体ブロック100A−100C内の右側から左側へ移動させて、以後これを繰り返す。そして、磁性体自体の温度が作動温度範囲に至った磁性体は磁気回路の移動に伴い温度変化するようになる。最終的には、図9に示すように、低温側熱交換部40Aが5℃、高温側熱交換部40Bが35度の温度差がついて一定になる。そして、各磁性体も、それぞれの温度が作動温度範囲となるので、磁気回路の移動に伴い図9(1)−(2)に示した温度変化を繰り返すようになる。これが定常状態である。
このように本実施形態1では、起動直後の段階から、すべての磁性体が磁気の移動(磁気の印加、除去)によって温度変化が始まる。したがって、常温(ここでは20℃)の初期状態から定常状態に至るまでの時間が比較例よりも速くなるのである。
次に、各作動温度範囲に対応した磁気熱量材料について説明する。
各作動温度範囲に対応した磁気熱量材料としては、たとえば、公知のLaFeSiHを用いることができる。LaFeSiHは、その組成中の水素の量の変化で、キュリー点が変化する(たとえば参考文献1“Large magnetocaloric effects and thermal transport properties of La(FeSi)13 and their hydrides” K. Fukamichiら Journal of Alloys and Compounds 408−412 (2006) p.307−312)。また、同様に、一般式:La(Fe1-xx13z(Mは、Si、Alからなるグループ中から選択された1種または2種以上の元素であり、xおよびzの値は、それぞれ、0.05≦x≦0.2;0.3≦z≦3;で規定される)であらわされる磁気熱量材料(特開2003−96547号公報)でも、前述したΔTのピーク温度を様々に変えた磁気熱量材料とすることができる。
本実施形態1では、そのほかにも所望の作動温度範囲となる磁気熱量材料であれば特に限定することなく用いることができる。
次に、一つの磁性体において複数の磁気熱量材料を組み合わせる際の各磁気熱量材料の配置を説明する。
本実施形態1では、複数の磁気熱量材料を様々な形に切り出してから接合している。図10は、3つの磁気熱量材料を組み合わせたときの各磁気熱量材料の配置を説明するための説明図である。図10に示した各面は一つの磁性体の断面であり、この断面は磁性体を列状に並べた方向に沿う断面である。
ここで説明する磁性体は、図7に示した磁性体10Aに相当する。すなわち作動温度範囲5−10℃を担う磁気熱量材料a、作動温度範囲10−15℃を担う磁気熱量材料b、および起動時温度の作動温度範囲15−20℃を担う磁気熱量材料cを有する場合である。
図10(a)に示す磁性体は、起動時温度の作動温度範囲15−20℃を担う磁気熱量材料cを中央に配置し、この磁性体自身の作動温度範囲5−10℃を担う磁気熱量材料aをもっとも外側に配置し、これらの間に作動温度範囲10−15℃を担う磁気熱量材料bを配置している。磁気熱量材料a、b、cはそれぞれをストライプ状に切り出して、結合したものである。
また、図10(b)に示す磁性体は、(a)同様にストライプ状の配置を基本配置として、この基本配置を4つ組み合わせて配置したものである。したがってこの場合は磁性体を列状に並べた方向に沿う断面を4つに分割して、各分割された部分ごとに図10(a)と同じ配置になっている。
また、図10(c)に示す磁性体は、磁気熱量材料a、b、cを矩形状と枠体形状に切り出して組み合わせたものである。ここでは磁気熱量材料cが矩形状として中央に配置し、磁気熱量材料aを枠体形状にして、もっとも外側に配置し、磁気熱量材料bを枠体形状にしてこれら磁気熱量材料aとcの間に配置している。磁気熱量材料a、b、cはそれぞれの形状に形成後、嵌め合わせて結合したものである。
また、図10(d)に示すように、(c)同様に矩形状と枠体形状の組み合わせたものを基本配置として、これを4つ組み合わせたものである。したがってこの場合は磁性体を列状に並べた方向に沿う断面を4つに分割して、各分割された部分ごとに図10(c)と同じに配置なっている。
これらの配置は、いずれの場合、内側に起動時温度(室温)の作動温度範囲となる磁気熱量材料、そしてもっとも外側に磁性体自身の作動温度範囲となる磁気熱量材料が来るようになる。このように起動時温度(室温)の作動温度範囲となる磁気熱量材料を内側に配置することで、起動時に発生する熱が一つの磁性体内全体に万便に行き渡り、過渡特性がよくなる。また、列状に並べている磁性体においては、もっとも外側の磁気熱量材料は隣接する磁性体からの温度が伝達される。このため起動時においては、隣接する磁性体からの熱(熱伝達部材を介した熱)と中央に配置した起動時温度を含む作動温度範囲の磁気熱量材料の熱の両方の熱が伝わるようになって、いっそう定常状態温度になりやすくなる。
そして、定常状態となったのちは、もっとも外側にその磁性体自身の作動温度範囲を担う磁気熱量材料があるため、その磁気熱量材料の温度変化がすぐに隣接する磁気熱量材料に伝達されるようになり、定常状態における効率も良いものとなる。
また、このような配置にすること(パターン形状の組み合わせ)で、一つの磁性体内において作動温度範囲の異なる磁気熱量材料同士の接触面積を大きくとることができる。
なお、図10では図7に示した磁性体10Aを例に説明したが、他の磁性体についても同様である。3つ磁気熱量材料を持つ磁性体10Fでは、起動時温度(室温)の作動温度範囲となる磁気熱量材料dを内側に、もっとも外側に磁性体10F自身の作動温度範囲となる磁気熱量材料f、これらの間に磁気熱量材料eを配置することになる。
また、2つの磁気熱量材料を組み合わせた磁性体10Bでは、起動時温度(室温)の作動温度範囲となる磁気熱量材料cを内側に、外側に磁性体10B自身の作動温度範囲となる磁気熱量材料bを配置することになる。同様に2つの磁気熱量材料を組み合わせた磁性体10Eでは、起動時温度(室温)の作動温度範囲となる磁気熱量材料dを内側に、外側に磁性体10E自身の作動温度範囲となる磁気熱量材料eを配置することになる。
なお、磁気熱量材料の配置は、このようなパターンによる組み合わせのほか、複数の磁気熱量材料をそれぞれ粉砕して、一つの磁性体の形状となるように形成しても良い。ただし、この場合、粉砕して細かくなった磁気熱量材料の大きさは、あくまでもそれら磁気熱量材料そのものの特性を示す程度の大きさとする。
次に、複数の磁気熱量材料を混合した磁性体を用いた場合の温度変化を論理計算した結果を説明する。
この温度変化の論理計算は、図1に示した磁気冷暖房装置のモデルを用い、磁気熱量材料を組み合わせる割合を変えて、起動時温度(20℃)から何回の熱サイクルで定常状態の温度に達するかを算出した。磁気熱量材料の組み合わせは、もっとも低温側の磁性体10Aともっとも高温側の磁性体10Fについて、それら自身の作動温度範囲の磁気熱量材料に起動温度(ここでは20℃)を作動温度範囲とする磁気熱量材料を下記の割合で組み合わせた。他の磁性体10B、10C、10D、10Eは、それら自身の作動温度範囲の磁気熱量材料のみにより構成されているものとした。その他の条件は次のように仮定した。熱伝導部が入った状態で熱伝達率が無限大(即座に熱が伝わる)。熱伝導部が抜かれた状態で熱伝達率ゼロ。磁性体および熱伝導部の熱容量ゼロ。磁気の印加、除去により各磁性体を構成するそれぞれの磁気熱量材料が最大温度変化(ここでは5℃)する。
図11は、複数の磁気熱量材料を組み合わせた磁性体を用いた場合の温度変化を論理計算した結果をまとめたグラフであり、縦軸が温度(中央値20℃)、横軸が熱サイクル回数である。熱サイクルは磁気回路を右から左、左から右に往復させたものを1回とした。つまり図8において磁気回路の位置が(1)の状態をスタートとした場合、磁気回路を(2)、(2’)、(3)、(3’)と移動させて、これを1回の熱サイクルとしている(次のサイクルは(2)へ戻って繰り返すことになる)。
図12は、この論理計算に用いた磁性体中の磁気熱量材料の組み合わせ割合を説明するための説明図である(図中「%」は質量%である)。すなわち組み合わせ割合は次のとおりである。四角印は磁気熱量材料aおよびfが100質量%(これを比較例とする)。ひし形印は磁気熱量材料aおよびfが95質量%、作動温度範囲に20℃を含む磁気熱量材料cおよびdを5質量%。三角印は磁気熱量材料aおよびfが90質量%、作動温度範囲に20℃を含む磁気熱量材料cおよびdを10質量%。丸印は磁気熱量材料aおよびfが80質量%、作動温度範囲に20℃を含む磁気熱量材料cおよびdを20質量%。
この論理計算として、定常状態の温度範囲に達した時点として磁気冷暖房装置モデルの低温側熱交換部40Aの温度が10℃、高温側熱交換部40Bの温度が30℃に達するまでの定格運転に至る過渡特性を求めた。
図11を参照して、論理計算の結果、丸印の作動温度範囲に起動温度20℃を含む磁気熱量材料cおよびdが20質量%組み合わされている場合が、熱サイクル回数がもっとも少なく68回で定常状態の温度範囲に達している。三角印の磁気熱量材料cおよびdが10質量%組み合わされている場合が78回、ひし形印の磁気熱量材料cおよびdが5質量%組み合わされている場合が86回である。そして、四角印の自身の磁気熱量材料のみの場合(比較例)が99回である(以下の説明において、作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料を起動時温度の磁気熱量材料という)。
この計算結果から、起動時温度の磁気熱量材料を、低温側熱交換部40Aに隣接する磁性体10Aと、高温側熱交換部40Bに隣接する磁性体10Fに組み合わせることで、比較例よりも少ない磁気の移動(印加、除去)の回数で定常状態に達することがわかる。これはすなわち起動時から定常状態までの過渡特性が向上したことを示している。したがって、磁気の移動(印加、除去)の回数が少ない分速く定常状態に達するのである。
特に、20質量%起動時温度の磁気熱量材料を組み合わせることで約31%速く定常状態に達することがわかる。また、5質量%起動時温度の磁気熱量材料を組み合わせるだけでも、自身の磁気熱量材料だけ(四角印の比較例)の場合より速く定常状態に達することがわかる。したがって、この計算結果から起動時温度の磁気熱量材料の組み合わせ割合は、5質量%以上50質量%未満であることが好ましいことがわかる。また、より速く定常状態にしようとする場合は20質量%以上50質量%未満とすることが好ましいものである。
(実施形態1の変形例)
上記実施形態1では、各磁性体の磁気熱量材料の組み合わせ比率は、それぞれの磁性体の質量が全部で100質量%となるように調整したものである。本発明はこのような実施形態に限らず、たとえば各磁性体自身の作動温度範囲の磁気熱量材料をすべて同じ量とし、これを100質量%としたときに、さらに起動時温度範囲を作動温度範囲とする磁気熱量材料を加えるようにしても良い。
図13は、本実施形態1の変形例における磁気冷暖房装置において、各磁性体をそれぞれ構成する磁気熱量材料の組み合わせ割合(質量%)を説明するためのグラフである。
磁性体10Aは、この磁性体10Aの作動温度範囲5−10℃を担う磁気熱量材料aを100質量%としている。すなわち、磁性体10A自身の作動温度範囲の磁気熱量材料は他の磁性体の作動温度範囲の磁気熱量材料と同じ量である。そして磁性体10Bの作動温度範囲10−15℃を担う磁気熱量材料bを30質量%、起動時温度の作動温度範囲15−20℃を担う磁気熱量材料cを20質量%それぞれ加えて組み合わせている。
磁性体10Bについても同様に、自身の温度範囲を担う磁気熱量材料bが100質量%、起動時温度の磁気熱量材料cを30質量%加えて組み合わせている。
磁性体10C、10Dはそれぞれ、自身の作動温度範囲の磁気熱量材料c、dがそれぞれ100%である。
磁性体10Eは、自身の温度範囲を担う磁気熱量材料eが100質量%、起動時温度の磁気熱量材料dを30質量%加算するように組み合わせている。磁性体Fは、自身の温度範囲を担う磁気熱量材料fを100質量%、磁気熱量材料eを30質量%、磁気熱量材料dを20質量%加算するように組み合わせている。
なお、ここでは、自身の作動温度範囲を担う磁気熱量材料をまず同じにして、起動温度を担う磁気熱量材料を加算しているため、各磁性体間でその質量が異なる。しかし、すべての磁性体の体積は同じになるように調整することが好ましい。これにより各磁性体間で熱容量の違いによる熱伝達の違いをなくすことができる。
このようにこの変形例では、各磁性体自身の作動温度範囲の磁気熱量材料は、すべて同じ量とし、さらに起動時温度範囲よりも低温側および高温側となる磁性体には、起動時温度の作動温度範囲を担う磁気熱量材料を加算している。このようにすることで上述した実施形態1と同様の効果が得られ、初期段階から一速く定常状態にすることができる。
以上が、本発明を適用した基本的な形態からなる磁気冷暖房装置とその動作の原理である。上記では、2つの磁性体で磁性体ブロックを形成し、この磁性体ブロックをさらに3つ配列して磁性体ユニットを形成する形態について述べた。しかし、本発明は、これらの形態には限られず、さらに多くの磁性体を配列して磁性体ブロックを形成し、さらに多くの磁性体ブロックを配列して磁性体ユニットを形成するものにも適用することができる。
また、以上説明したように、本実施形態1では、複数列状に配置された磁性体のうち、少なくとももっとも低温側および高温側の磁性体に、起動時温度を作動温度範囲に含む磁気熱量材料を組み合わせて一つの磁性体としている。これにより、各磁性体の温度を起動後、一速く定常状態の温度にすることができる。また冷凍能力の大きな磁気冷暖房装置の場合は、ここで説明したような6つの磁性体を配置した場合よりもさらに多くの磁性体を配列されといい。その場合は、もっとも低温側および高温側の磁性体だけでなく、もっとも低温側および高温側の磁性体と起動時温度の磁性体との間に配置される磁性体においても、起動時温度の磁性体を組み合わせることが好ましい。
(比較例2)
ここで比較例2として、一つの磁性体に、作動温度範囲の広い磁気熱量材料を一つ用いた場合を想定する。
たとえば上記の磁性体10Aの作動温度範囲は、3つの磁気熱量材料を組み合わせることで5−20℃にしている。比較例2では、これに代えて一つの磁気熱量材料として作動温度範囲が5−20℃と広い磁気熱量材料を用いることを想定する。
このような広い磁気熱量材料を用いた場合でも、磁性体10Aは、作動温度範囲として起動時温度(室温の場合は室温)を含むようになり、起動時から温度変化するようになる。しかし、このように広い作動温度範囲の磁気熱量材料はその磁気エントロピー変化(ΔSm)が小さく、磁気エントロピー変化が半分程度、またはそれ以下になることが知られている(たとえば参考文献2:“Giant enhancement of magnetocaloric effect in metallic glass matrix composite” WANG YongTianら、Science in China Series G: Physics Mechanics and Astronomy Volume51, Number4 (2008), p.337−348。特にこの参考文献2中のFigure4内の左下グラフとTable1参照)。
そもそも磁気熱量材料は、磁場の変化に伴うエントロピーの変化によって発熱または吸熱するものである。したがって、この磁気エントロピー変化(ΔSm(J・kg-1・K-1))は、磁気の印加、除去によって変化する温度変化量(ΔT)を決めるものとなっている。このため、この磁気エントロピー変化(ΔSm(J・kg-1・K-1))が小さくなると、温度変化範囲(ΔT)も小さくなってしまうのである。
磁気冷暖房装置は、磁気熱量材料を熱源(低温源または高温源)に接触させて、それらの熱を移動させるものである。そうすると作動温度範囲の広い一つの磁気熱量材料を熱源に接触させて熱移動すること想定した場合、作動温度範囲は広くできても温度の変化量(ΔT)が小さいものとなる。このため、熱の移動量が小さく、磁気冷暖房装置が定常状態に至る時間がかかってしまう。
この点、本実施形態では、一つの磁性体を作動温度範囲の異なる複数の磁気熱量材料によって構成することで、一つひとつの磁気熱量材料自体の磁気エントロピー変化(ΔSm)は大きくとることができ、各磁気熱量材料の変化する温度(ΔT)も大きくすることができる。このため本実施形態では、比較例2と比べて、十分に熱を移動させることができ、速やかに定常状態の温度にできる。
(比較例3)
ここでさらに、比較例3として従来技術である特許文献2のように、一つひとつの磁性体を温度変化範囲(ΔT)の大きな磁気熱量材料一つにより構成し、なおかつ隣接する磁性体の作動温度範囲と重複する温度幅を大きくとる場合を想定する。
このようにした場合、冷暖房装置全体としての温度変化、すなわち、熱を輸送できる温度範囲が狭いものであれば、すべての磁性体に起動時温度を含ませることができる。たとえば特許文献2の例では、個々の磁性体の温度変化は10℃で、全体としては3個の磁性体で287K(14℃)から305K(32℃)まで熱を輸送することができるようになっている。そして、室温を20℃(約293K)とすれば、各磁性体の温度変化範囲に室温が含まれることになり定常状態に至る時間がかかる。
しかし、これを本実施形態のように冷暖房装置全体として5℃(約278K)〜35℃(約308K)の温度変化範囲にしようとするとより多くの磁性体が必要になる。このため、磁気冷暖房装置全体として広い温度変化範囲を得ようとすると多くの磁性体が必要となって、装置全体が大型化してしまう。また、多くの磁性体を用いると、低温側や高温側では、作動温度範囲に起動時温度を含まない磁性体を用いなければならなくなってしまうことになる。
この点、本実施形態では、一つひとつの磁性体に作動温度範囲の異なる磁気熱量材料を組み合わせているため、冷暖房装置全体としてどれだけ広い温度変化になろうとも、すべての磁性体を起動時の温度から作動させることができ、速やかに定常状態の温度にできる。
[実施形態2]
次に、上記のような原理を利用して、さらに複数の磁性体を用いた他の形態の磁気冷暖房装置を実施形態2として説明する。
図14は、実施形態2の磁気冷暖房装置の概略構成を示す上面図であり、磁性体、磁気回路を形成する永久磁石および熱伝達部の位置関係が理解できるように上面から透視した状態を示した図である。図15A−図15Bは、図14に示した磁気冷暖房装置を構成する、磁性体・熱伝達部配置板、磁石配置板の上面図である。図16は、図14に示した磁気冷暖房装置の分解断面図である(Aは磁石配置板800部分の断面図、Bは磁性体・熱伝達部配置板700部分の断面図)。図17は、この磁気冷暖房装置の磁石/熱伝達部配置板を回転させたときに熱が移動して行く様子を説明するための模式図である。図18は、本実施形態2に係る磁気冷暖房装置の動作を説明するための説明図である。なお、図18においては発明の理解を容易にするために図16に示した駆動部の記載を省略した。
この磁気冷暖房装置は、図1に示した磁気冷凍と同一の原理を用いる。この原理を用いて磁気冷凍が行えるように、次のように構成してある。
図14から図18に示すように、本実施形態2に係る磁気冷暖房装置500は、中心部が開口した中空円板状の磁性体・熱伝達部配置板700(特に図15A参照)、中心部が開口した中空円板状の磁石配置板800(特に図15B参照)を有する。磁性体・熱伝達部配置板700は、その中心部に低温側熱交換部40Aが配置され、その外周部に高温側熱交換部40Bが配置されている。磁石配置板800は、隙間を設けて配置した、上側の円板800Aと下側の円板800Bの2つの円板を有する(特に図16参照)。
磁気冷暖房装置500は、磁性体・熱伝達部配置板700、磁石配置板800を同心状に配置している(特に図14、図16、図17参照)。磁性体・熱伝達部配置板700は、磁石配置板800の上側の円板800Aと下側の円板800Bとの間に挿入される(特に図16、図17参照)。低温側熱交換部40Aは、磁性体・熱伝達部配置板700と磁石配置板800の中心部に配置される。高温側熱交換部40Bは、磁性体・熱伝達部配置板700と磁石配置板800の外周部に配置される(特に図14、図16、図17参照)。
なお、本実施形態2では、磁性体・熱伝達部配置板700に正の磁性体を配置することを想定しているので、その中心部に低温側熱交換部40Aを配置し、その外周部に高温側熱交換部40Bを配置している。磁性体・熱伝達部配置板700に負の磁性体を配置した場合には、中心部に高温側熱交換部40Bを配置し、その外周部に低温側熱交換部40Aを配置する。低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bの配置は、磁性体・熱伝達部配置板700に正負いずれの磁性体を用いるかによって異なる。
図15Aに示すように、磁性体・熱伝達部配置板700は、その中心部が開口した中空円板であり、その中心部の開口径は円柱状の低温側熱交換部40Aの直径よりも若干大きくしてある。また、磁性体・熱伝達部配置板700の直径は円筒状の高温側熱交換部40Bの内周の寸法と同一にしてある。
また、図16および図17に示すように、磁性体・熱伝達部配置板700は高温側熱交換部40Bに固定してある。磁性体・熱伝達部配置板700と高温側熱交換部40Bとの間には、磁性体・熱伝達部配置板700と高温側熱交換部40B相互間で熱が移動しないように、図示しない断熱材を介在させることが好ましい。
磁性体・熱伝達部配置板700の片面(円板800Aの対向面)には、図15A、図16Bに示すように、環状かつ放射状に複数の磁性体を互いに間隔を設けて形成してある。本実施形態2では、中心角を30°として分割した磁性体・熱伝達部配置板700上の領域に、周方向に隣り合わせて、12個の磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lを形成している。そして、すべての磁性体同士の間、磁性体と低温側熱交換部の間、磁性体と高温側熱交換部の間に、熱伝達部を配置している(後述)。
それぞれの磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lは、磁性体・熱伝達部配置板700の中心部から外周部に向けて6つの磁性体を配置している。つまり、6つの磁性体が中心部から外周部に向けて列状に配置されていることになる。たとえば、磁性体ユニット200Aは、磁性体10Aa、10Ab、10Ac、10Ad、10Ae、10Afを、磁性体ユニット200Bは、磁性体10Ba、10Bb、10Bc、10Bd、10Be、10Bfをそれぞれ配置する。
そして、各磁性体ユニットを構成するこれら6つの磁性体は、すべて磁気を印加すると温度が上昇する正の磁性体を用いている。それぞれの作動温度範囲に適した磁気熱量材料により構成してある。
各磁性体ユニットでは、2つの磁性体が1組になって磁性体ブロックを形成する。たとえば、磁性体ユニット200Aでは、磁性体10Aa、10Abで磁性体ブロック100Aaを、磁性体10Ac、10Adで磁性体ブロック100Abを、磁性体10Ae、10Afで磁性体ブロック100Acを形成する。また、磁性体ユニット200Bでは、磁性体10Ba、10Bbで磁性体ブロック100Baを、磁性体10Bc、10Bdで磁性体ブロック100Bbを、磁性体10Be、10Bfで磁性体ブロック100Bcを形成する。
したがって、本実施形態2の磁性体・熱伝達部配置板700は、磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lのそれぞれが3つの磁性体ブロック100Aa−100Ab−100Ac、100Ba−100Bb−100Bc、…で形成される。また、磁性体ブロック100Aa、100Ab、100Ac、100Ba、100Bb、100Bc、…のそれぞれは2つの磁性体、10Aa−10Ab、10Ac−10Ad、10Ae−10Af、10Ba−10Bb、10Bc−10Bd、10Be−10Bf、…で形成される。
本実施形態2の磁性体・熱伝達部配置板700の1つの磁性体ユニット200Aに注目すると、磁性体ユニット200Aは、6つの磁性体10Aa、10Ab、10Ac、10Ad、10Ae、10Afから形成される。これらの磁性体は3つの磁性体ブロック100Aa、100Ab、100Acを有する。これらの磁性体ブロックは2つの磁性体10Aa−10Ab、10Ac−10Ad、10Ae−10Afの組から形成される。磁性体ユニット200Bから200Lも磁性体ユニット200Aと同じように形成される。このため、本実施形態2の磁性体・熱伝達部配置板700は、図1Aに示した磁性体ユニット200を12列並列に並べたものと等価な構成となる。
本実施形態2で用いる磁性体10Aa、…は、磁性体・熱伝達部配置板700上に直接形成しても良いが、磁気熱量効果を有効に利用できるようにするためには、磁性体・熱伝達部配置板700は熱抵抗の大きな材料で構成することが望ましい。熱抵抗が小さいと、磁性体10Aa、…で発生した熱が磁性体・熱伝達部配置板700を伝って放熱されてしまうからである。また、熱抵抗を大きくするために、磁性体10Aa、…は、磁性体・熱伝達部配置板700上に直接形成するのではなく、磁性体10Aa、…と磁性体・熱伝達部配置板700との間に熱絶縁性フィルムや熱絶縁層を設けても良い。
また、磁性体10Aa、…は、熱絶縁性フィルムや熱絶縁層を介して磁性体ユニット200A、…として磁性体・熱伝達部配置板700上で一体的に形成しても良い。また、熱絶縁性フィルムや熱絶縁層を介して磁性体ブロック100Aa、…ごとに分割して形成し、これを磁性体・熱伝達部配置板700上で配列するようにしても良い。
磁性体10Aa、…は、本実施形態2ではすでに説明したように、実施形態1と同様である。その材料組成なども同様にLaxCa1-xMnO3、La(Fe1-xSix13yなどを用いることができる。
本実施形態2では、磁性体10Aa、…の形状を、図14、図15A、図18に示したような、扇を径方向に一定の幅で切り取ったような形状としたが、これ以外の形状、たとえば、球状、楕円体状、立方体状、円柱状、楕円柱状などの形状を採用しても良い。
以上のように、磁性体・熱伝達部配置板700は、同一材料の磁性体10Aa…を複数列状に間隔を設けて径方向に配置した磁性体ユニット200Aを有する。磁性体・熱伝達部配置板700は、磁性体ユニット200Aをさらに磁性体10Aa、…の配置方向と交差する円周方向に間隔を設けて複数隣り合わせて環状に配置している。
磁性体ユニット200Aは、同一材料の磁性体10Aa…を複数列状に間隔を設けて径方向に配置した磁性体ブロック100Aa、…を有し、磁性体ブロック100Aa…を磁性体10Aa、…の配置方向に間隔を設けて複数列状に配置して形成する。
そして、磁性体・熱伝達部配置板700の磁性体ユニット200Aでは、すべての磁性体10Aa…同士の間、および磁性体10Aaと低温側熱交換部40Aの間、磁性体10Afと高温側熱交換部40Bの間に、熱伝達部が配置されている。この熱交換部は、実施形態1または2で説明したものと同様の構成となっている。すなわち、低温側熱交換部40A側から高温側熱交換部40B方向に、熱伝達部30Ba、30Ab、30Bc、30Ad、30Be、30Af、30Bgと配置されている。磁性体ユニット200Bにおいても同様であり、すべての磁性体10Aa…同士の間、および磁性体10Aaと低温側熱交換部40Aの間、磁性体10Afと高温側熱交換部40Bの間に、熱伝達部30Aa、30Bb、30Ac、30Bd、30Ae、30Bf、30Agと配置されている(図15A参照)。
ここで、磁性体ユニット200Aでは、熱伝達部30Ab、30Ad、30Afが同時に熱伝達状態(オン)になり、そのとき熱伝達部30Ba、30Bc、30Be、30Bgは断熱状態(オフ)となる。逆に熱伝達部30Ab、30Ad、30Afが同時に断熱状態(オフ)になり、そのとき熱伝達部30Ba、30Bc、30Be、30Bgは熱伝達状態(オン)となる。磁性体ユニット200Bにおいても同様であり、熱伝達部30Bb、30Bd、30Bfが同時に熱伝達状態(オン)になり、そのとき熱伝達部30Aa、30Ac、30Ae、30Agは断熱状態(オフ)となる。逆に熱伝達部30Bb、30Bd、30Bfが同時に断熱状態(オフ)になり、そのとき熱伝達部30Aa、30Bc、30Ae、30Agは熱伝達状態(オン)となる。つまり、図において30の添え字Aの熱伝達部が同時にオンのとき、添え字Bの熱伝達部が同時にオフ、またはその逆になる。
なお、図14においては、動作説明にも供するため、図示した動作状態のとき熱伝達状態(オン)となった熱伝達部を符号で示したが、すでに説明したとおり、熱伝達部はすべて同じ構造で、すべての磁性体間、熱交換部と磁性体間にある。
磁性体・熱伝達部配置板700は以上のように構成してあるので、低温側熱交換部40Aは、磁性体・熱伝達部配置板700に形成されている磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lの一端に位置する磁性体10Aa、10Ba、…と間隔を設けて隣り合う。また、高温側熱交換部40Bは、磁性体・熱伝達部配置板700に形成されている磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lの他端に位置する磁性体10Af、10Bf、…と間隔を設けて隣り合う。また、すべての磁気ユニットにおいても、熱伝達部30Ba、30Ab…または30Aa、30Bb、…が設けられている。
磁石配置板800は、図15Bに示すように、その中心部が開口した中空円板であり、その中心部の開口径は、円柱状の低温側熱交換部40Aの直径よりも若干大きくしてある。また、磁石配置板800の直径は、円筒状の高温側熱交換部40Bの内周の寸法よりも若干小さくしてある。磁石配置板800が低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間で回転できるようにするためである。磁石配置板800は、図16および図17に示すように、隙間を設けて磁性体・熱伝達部配置板700を挟む磁気的に接続された、上側および下側の2枚の円板800A、800Bで構成される。
上側および下側の2枚の円板800A、800Bは、低温側熱交換部40Aを中心に別々に回転できるように、低温側熱交換部40Aに備える軸受けと、上側および下側の2枚の円板800A、800Bの外周端に備える軸受けで支持してある。図16に示すように、上側の円板800Aは軸受け520Aa、520Abによって回転自在に支持され、下側の円板800Bは軸受け520Ba、520Bbによって回転自在に支持される。したがって、上側の円板800Aは下側の円板800Bと別々に回転できる。
磁石配置板800を取り囲むように支持盤530が配置される。支持盤530は、上側および下側の2枚の円板800A、800Bを別々に回転させるためのサーボモータ540A、540Bを固定する。支持盤530の上側の円板800Aに対向する部分にサーボモータ540Aを、支持盤530の下側の円板800Bに対向する部分にサーボモータ540Bをそれぞれ固定する。サーボモータ540A、540Bのそれぞれの回転軸にはギア550A、550Bが取り付けてある。上側の円板800Aの外周部には、ギア550Aと噛み合うリングギア560Aが取り付けてある。また、下側の円板800Bの外周部には、ギア550Bと噛み合うリングギア560Bが取り付けてある。なお、サーボモータ540A、540B、ギア550A、550Bおよびリングギア560A、560Bによって駆動部を構成する。
サーボモータ540Aが回転すると、ギア550Aと噛み合うリングギア560Aが自転して上側の円板800Aが回転する。また、サーボモータ540Bが回転すると、ギア550Bと噛み合うリングギア560Bが自転して下側の円板800Bが回転する。サーボモータ540A、540Bを同期して回転させると、上側および下側の2枚の円板800A、800Bが一体となって回転する。
本実施形態2では、サーボモータ540A、540Bを同期して回転させる。したがって、磁石配置板800は低温側熱交換部40Aを中心に、上側および下側の2枚の円板800A、800Bで磁性体・熱伝達部配置板700挟むようにして、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間で回転する。
磁石配置板800を形成する上側の円板800Aの片面(図16および図17に示す円板800Aの図示下側)には図15Bに示すように、環状かつ放射状に複数の永久磁石を配置してある。永久磁石は、図15Aに示した磁性体・熱伝達部配置板700の磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lのそれぞれの磁性体ブロック100Aa、100Ab、100Ac、100Ba、100Bb、100Bc、…に対して永久磁石が1つずつ対峙されるように配置している。永久磁石は、磁石配置板800が30°回転して、隣の磁性体ユニットに移行する度に、隣り合う磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lの磁性体ブロック100Aa、100Ab、100Ac、100Ba、100Bb、100Bc、…において径方向に往復移動する。したがって、永久磁石は、磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lの磁性体に対し個別に磁気を印加する。
たとえば、図14、図15A、図15B、図17に示すように、図面上、磁石配置板800の上側の円板800Aにおいて、磁性体ユニット200Aの対応位置にある永久磁石20Aa、20Ac、20Aeは、磁性体・熱伝達部配置板700の磁性体ユニット200Aの磁性体10Aa、10Ac、10Aeとそれぞれ対峙する位置にある。また、磁性体ユニット200Bの対応位置にある永久磁石20Ba、20Bc、20Beは、磁性体ユニット200Bの磁性体10Bb、10Bd、10Bfとそれぞれ対峙する位置にある。この状態で、磁石配置板800が30°時計方向に回転すると、磁性体ユニット200Aの対応位置にある永久磁石20Aa、20Ac、20Aeは、磁性体ユニット200Bの磁性体10Ba、10Bc、10Beとそれぞれ対峙する位置となる。また、磁性体ユニット200Lの対応位置にある永久磁石は、磁性体ユニット200Aの磁性体10Ab、10Ad、10Afとそれぞれ対峙する位置となる。つまり、磁石配置板800が30°時計方向に回転する度に、各磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lにおいて、磁性体ブロックごとに永久磁石が往復移動する。この永久磁石と磁性体との位置関係は、磁石配置板800が30°回転する度に図1Aの位置関係と図1Bの位置関係を繰り返すのと同一の位置関係である。
したがって、磁石配置板800を磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lの並び方向に移動させると、永久磁石と磁性体との位置関係は次のように移行する。
まず、図15B、図17Aに示すように、永久磁石20Aa、20Ac、20Aeは、隣り合う一方の磁性体ユニット200Aの各磁性体ブロック100Aa、100Ab、100Acの一端に位置する磁性体10Aa、10Ac、10Aeに同時に磁気を印加する。このとき磁性体ユニット200Aの熱伝達部30Ab、30Ad、30Afは熱伝達状態、熱伝達部30Ba、30Bc、30Be、30Bgは断熱状態となる。
また、図15B、図17Bに示すように、永久磁石20Ba、20Bc、20Beは、隣り合う他方の磁性体ユニット200Bの各磁性体ブロック100Ba、100Bb、100Bcの他端に位置する磁性体10Bb、10Bd、10Bfに同時に磁気を印加する。このとき磁性体ユニット200Bの熱伝達部30Ba、30Bc、30Be、30Bgは熱伝達状態、熱伝達部30Ab、30Ad、30Afは断熱状態となる。
他の磁性体ユニット200C−200Lにおいても、隣り合う2つの磁性体ユニット間の永久磁石と磁性体との位置関係は磁性体ユニット200A、200Bの場合と同一である。隣り合う2つの磁性体ユニット間の以上のような永久磁石と磁性体との位置関係を状態1という。
次に、磁石配置板800を30°時計方向に回転させると、永久磁石20Aa、20Ac、20Aeは、隣り合う他方の磁性体ユニット200Bの各磁性体ブロック100Ba、100Bb、100Bcの一端に位置する磁性体10Ba、10Bc、10Beに同時に磁気を印加する。この状態は、図17Bに示す永久磁石20Ba、20Bc、20Beが、左側の磁性体10Ba、10Bc、10Beに移動することに等しい。一方、磁性体ユニット200Lの対応位置に存在する永久磁石は、隣り合う一方の磁性体ユニット200Aの各磁性体ブロック100Aa、100Ab、100Acの他端に位置する磁性体10Ab、10Ad、10Afに同時に磁気を印加する。この状態は、図17Aに示す永久磁石20Aa、20Ac、20Aeが、右側の磁性体10Ab、10Ad、10Afに移動することに等しい。他の磁性体ユニット200C−200Lにおいても、隣り合う2つの磁性体ユニット間の永久磁石と磁性体との位置関係は磁性体ユニット200A、200Bの場合と同じように遷移する。隣り合う2つの磁性体ユニット間の以上のような永久磁石と磁性体との位置関係を状態2という。
このように、磁石配置板800が30°回転する度に、すべての磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lにおいて、上記の状態1と状態2が繰り返される。つまり、それぞれの磁性体ユニット200A、200B、200C、…、200G、…、200Lにおいて、図1Aと図1Bの状態が繰り返されることになる。
磁石配置板800を形成する下側の円板800Bの片面(図16および図17に示す円板800Bの図示上側)には磁気突起が形成される。磁気突起は上側の円板800Aの片面に配置している永久磁石の配置と対応させて配置する。たとえば、図16および図17に示すように、永久磁石20Aaに対応させて磁気突起20Abが、永久磁石20Acに対応させて磁気突起20Adが、永久磁石20Aeに対応させて磁気突起20Afがそれぞれ配置されている。また、永久磁石20Baに対応させて磁気突起20Bbが、永久磁石20Bcに対応させて磁気突起20Bdが、永久磁石20Beに対応させて磁気突起20Bfがそれぞれ配置されている。それぞれの永久磁石からの磁力線を対峙する磁気突起で受け止めて、永久磁石と磁気突起との間の磁気抵抗を極力小さくするためと、永久磁石からの磁力線が磁性体を漏れなく通過できるようにするためである。
磁石配置板800は隙間を設けて磁性体・熱伝達部配置板700を挟む磁気的に接続された2枚の平板で構成される。上側の円板800Aに配置されている永久磁石と下側の円板800Bに配置されている磁気突起は、上側の円板800Aと下側の円板800Bとの間で磁気回路を形成する。この磁気回路は磁気印加部を構成する。
本実施形態2では、磁気印加部に磁気を発生させる手段として永久磁石を用いた。しかし、永久磁石の使用に代えて、超伝導磁石や電磁石を使用することもできる。磁気回路を電磁石によって構成すると、磁性体に印加する磁気の大きさをある範囲で変更することができるので、磁気印加部に汎用性を持たせることができる。しかし、省エネルギーや実用性の観点からは、永久磁石の使用が望ましい。
なお、本実施形態2では、上側の円板800Aに永久磁石を配置し、下側の円板800Bに磁気突起を配置しているが、これとは逆に、上側の円板800Aに磁気突起を配置し、下側の円板800Bに永久磁石を配置させることも可能である。また、本実施形態2では、両円板を一体として回転させているが、両円板は磁気的に接続されていれば別々に設けても良い。上側の円板800Aと下側の円板800Bが磁気的に接続され、永久磁石と磁気突起が対峙して設けてあるので、永久磁石からの磁束を有効に活用でき、永久磁石の小型化、軽量化が可能である。
なお、磁石配置板800は、磁性体10Aa、…で発生した熱および熱伝達部30Aa、…で伝達する熱を逃がさないようにするために、熱抵抗の大きな低熱伝達材料を用いることが好ましい。
以上のような構成を有する磁石配置板800が磁性体・熱伝達部配置板700に対して回転すると、熱伝達部30Ab、…は次のようにして熱を伝達させる。
まず、永久磁石と磁性体との位置関係が、図14および図18に示す状態1にあるとき、磁性体ユニット200Aの対応位置では、熱伝達部30と磁性体との位置関係は図18Aに示すようになっている。
すなわち、状態1の場合、磁性体ユニット200Aの対応位置では、永久磁石20Aaが磁性体10Aaに、永久磁石20Acが磁性体10Acに、永久磁石20Aeが磁性体10Aeに、それぞれ位置する(図17A、図18A参照)。このときには、磁性体10Aa、10Ac、10Aeに対して磁気が印加され、磁性体10Ab、10Ad、10Afには磁気が印加されておらず磁気が除去されている。このとき、磁性体10Aa、10Ac、10Aeは発熱し、磁性体10Ab、10Ad、10Afは吸熱する。そして同時に、熱伝達部30Abが磁性体10Aaと10Abとの間、熱伝達部30Adが磁性体10Acと10Adとの間、熱伝達部30Afが磁性体10Aeと10Afとの間で熱伝達状態となる。このため、各磁性体ブロック内の隣り合う磁性体との間の熱伝達が行われる。すなわち、磁性体10Aa、10Ac、10Aeが磁気熱量効果により発生した熱を磁性体10Ab、10Ad、10Afにそれぞれ移動する。また、このときには、低温側熱交換部40Aと磁性体10Aaとの間および高温側熱交換部40Bと磁性体10Afとの間の熱の伝達は行わない。また、磁性体ブロック間の熱の伝達も行わない。
また、磁性体ユニット200Bの対応位置では、熱伝達部30と磁性体との位置関係は図17Bに示すようになっている。
すなわち、磁性体ユニット200Bの対応位置は、永久磁石20Baが磁性体10Bbに、永久磁石20Bcが磁性体10Bdに、永久磁石20Beが磁性体10Afに、それぞれ位置する(図17B、図18A参照)。このときには、磁性体10Bb、10Bd、10Bfに対して磁気が印加され、磁性体10Ba、10Bc、10Beには磁気が印加されておらず磁気が除去されている。このとき、磁性体10Bb、10Bd、10Bfは発熱し、磁性体10Ba、10Bc、10Beは吸熱する。そして同時に、熱伝達部30Baが低温側熱交換部40Aと磁性体10Baとの間に、熱伝達部30Bcが磁性体10Bbと10Bcとの間、熱伝達部30Beが磁性体10Bdと10Beとの間、熱伝達部30Bgが磁性体10Bfと高温側熱交換部40Bとの間で、それぞれ熱伝達状態になる。このため、隣り合う磁性体ブロック100Ba、100Bb、100Bcの隣り合う磁性体10Bb−10Bc、10Bd−10Be間の熱伝達が行われる。また、磁性体ユニット200Bの一端に位置する磁性体10Baと低温側熱交換部40Aとの間および磁性体ユニット200Bの他端に位置する磁性体10Bfと高温側熱交換部40Bとの間で熱伝達が行われる。すなわち、10Ba、10Bc、10Beが磁気熱量効果により吸熱され、磁性体10Bb、10Bd、10Bfは磁気熱量効果により発熱する。このため、低温側熱交換部40Aから磁性体10Baに、磁性体10Bbから磁性体10Bcに、磁性体10Bdから磁性体10Beに、磁性体10Bfから高温側熱交換部40Bに熱が移動する。
以上のように、磁石配置板800に配置されている複数の磁気印加部は、磁石配置板800と磁性体・熱伝達部配置板700との相対移動によって、磁性体・熱伝達部配置板700に配置されている複数の磁性体に近接離反して磁気熱量効果を発現させる。また、磁性体・熱伝達部配置板700に配置されている複数の熱伝達部は、磁石配置板800の「移動に合わせて熱伝達状態と断熱状態を切り替えている。
上記の状態1は図18Aに示すとおりである。磁性体ユニット200Aの対応位置では、各磁性体ブロック内の隣り合う磁性体との間で熱を伝達させ、磁性体ユニット200Bの対応位置では、隣り合う磁性体ブロックの隣り合う磁性体との間ならびに磁性体ユニット200Bの一端に位置する磁性体と低温側熱交換部40Aとの間および磁性体ユニット200Bの他端に位置する磁性体と高温側熱交換部40Bとの間で熱を伝達させる。
永久磁石と磁性体との位置関係が、図18に示す状態1にあるとき、磁性体ユニット200Aの対応位置では、熱伝達部の熱伝達状態と磁性体との関係は図17Aに示すものと等価になっている。同時に、磁性体ユニット200Bの対応位置では、熱伝達部の熱伝達状態と磁性体との関係は図17Bに示すものと等価になっている。
次に、磁石配置板800を30°時計方向に回転し、永久磁石と磁性体との位置関係が、図18Bに示す状態2にあるとき、磁性体ユニット200Aの対応位置では、熱伝達部30と磁性体との位置関係は図17Bに示すものと等価になっている。同時に、磁性体ユニット200Bの対応位置では、熱伝達部30と磁性体との位置関係は図17Aに示すものと等価になっている。状態2における永久磁石と磁性体との位置関係は、状態1における永久磁石と磁性体との位置関係を、隣り合う磁気ユニット間で逆にしたものである。
上記の状態2は図18Bに示すとおりである。磁性体ユニット200Aの対応位置では、隣り合う磁性体ブロックの隣り合う磁性体との間ならびに磁性体ユニット200Aの一端に位置する磁性体と低温側熱交換部40Aとの間および磁性体ユニット200Aの他端に位置する磁性体と高温側熱交換部40Bとの間で熱を伝達させ、磁性体ユニット200Bの対応位置では、各磁性体ブロック内の隣り合う磁性体との間で熱を伝達させる。
以上のように、磁石配置板800の熱伝達部は、状態1のときには、隣り合う一方の磁性体ユニットの各磁性体ブロック内の隣り合う磁性体との間で熱を伝達させ、他方の磁性体ユニットの隣り合う磁性体ブロックの隣り合う磁性体との間ならびに前記他方の磁性体ユニットの一端に位置する磁性体と前記低温側熱交換部との間および前記他方の磁性体ユニットの他端に位置する磁性体と前記高温側熱交換部との間で熱を伝達させる。また、状態2のときには、前記隣り合う他方の磁性体ユニットの各磁性体ブロック内の隣り合う磁性体との間で熱を伝達させ、一方の磁性体ユニットの隣り合う磁性体ブロックの隣り合う磁性体との間並びに前記一方の磁性体ユニットの一端に位置する磁性体と前記低温側熱交換部との間および前記一方の磁性体ユニットの他端に位置する磁性体と前記高温側熱交換部との間で熱を伝達させる。
図16および図17に示す駆動部は、磁性体・熱伝達部配置板700と磁石配置板800を磁性体ユニットの配置方向に相対的に移動させるために、磁性体・熱伝達部配置板700または磁石配置板800のいずれか一方を回転させるものである。駆動部は、磁性体・熱伝達部配置板700、磁石配置板800を回転させることができるものであれば、あらゆる種類の電気モータを用いることができる。本実施形態では、磁石配置板800をその中心部を回転軸として回転させている。
低温側熱交換部40Aおよび高温側熱交換部40Bは、たとえば室内の空気などの外部環境との熱交換ができる機構を備えている。たとえば、外部から冷媒を供給し、その冷媒を介して外部環境との熱交換ができるようにした機構を採用しても良い。
以上のように構成されている本実施形態に係る磁気冷暖房装置500は次のようにして磁気冷凍を行う。
まず、駆動部を作動させて磁石配置板800を時計または反時計方向に回転させると、30°回転するごとに、それぞれの磁性体ユニットにおいて、図1Aと図1Bの状態、すなわち図18Aと図18Bの状態を繰り返すことになる。つまり、状態1と状態2を繰り返す。この繰り返しによって、それぞれの磁気ユニットにおいて、低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに熱が移動する。
このとき、本実施形態2においても、起動時温度を作動温度範囲とする磁気熱量材料を、少なくとももっとも低温側および高温側の磁性体に組み合わせているので、起動時から一速く定常状態に達することができる。すなわち従来の磁性体を用いて同じ構成の磁気冷暖房装置と比較して磁石配置板800の回転回数が少ないうちに定常状態に達するのである。
そして、最終的定常状態に達すれば、低温側熱交換部40Aの温度を下げ、高温側熱交換部40Bの温度を上げることができ、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間に温度差を生じさせることができる。
なお、冷凍能力の大きな磁気冷暖房装置を構成する場合には、直列に配列する磁性体ブロックの数を増やして、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bに接続する。直列に配列する磁性体ブロックの数を増やすことによって、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の温度差をより大きくすることができる。そのような場合も起動時温度を作動温度範囲とする磁気熱量材料を、少なくとももっとも低温側および高温側の磁性体に組み合わせる。また冷凍能力の大きな磁気冷暖房装置の場合は、もっとも低温側および高温側の磁性体だけでなく、もっとも低温側および高温側の磁性体と起動時温度の磁性体との間に配置される磁性体においても、起動時温度の磁性体を組み合わせることが好ましい。
本実施形態2の磁気冷暖房装置は、車両の冷凍装置(特に燃料電池や二次電池の冷却装置)のほか、室内の空調を行うエアコン、冷蔵庫、また車室内の空調を行うエアコンなどに適用させることができる。
本実施形態2では、磁石配置板800に永久磁石および磁気突起を配置した形態を例示した。このように永久磁石および磁気突起を一体的に形成すると、磁石配置板800を小型化、軽量化できる。
さらに、本実施形態2では、磁性体・熱伝達部配置板700と磁石配置板800を円盤状にして両板を相対的に回転させるものを例示したが、磁性体・熱伝達部配置板700と磁石配置板800を平板状にして両板を相対的に直線的に往復移動させるものであっても良い。
以上のように磁気冷暖房装置を構成すると、磁性体・熱伝達部配置板700と磁石配置板800を磁性体ユニットの配置方向に相対的に移動させだけで、磁気冷凍を行うことができるので、磁気冷暖房装置の構成を単純化でき、小型化、軽量化、低コスト化が実現できる。
次に、実施形態2に使用した熱伝導部の例を説明する。ここでは、熱伝導部として、それ自身は移動せずに、熱の伝導と遮断を切り替えることのできるものを使用している。以下では、このような移動を伴わずに熱の伝導と遮断を切り替える熱伝導部を熱スイッチ部と称する。
熱スイッチ部は、たとえば、電気、磁場を印加することで熱伝導率が大きく変化する材料やデバイス、また、電気濡れ効果で液体金属の出し入れによる熱伝導率を変化させるものなどがある。
また、以下の各形態において磁性体は実施形態1として説明した磁性体を使用する。
<熱スイッチ部の形態1>
図19は熱スイッチ部の形態1を説明するための説明図である。
図示した磁気冷暖房装置においては、低温側熱交換部40Aと磁性体10Aとの間に熱スイッチ部30Aを、磁性体10Aと磁性体10Bの間に熱スイッチ部30Bを配置している。ここで熱スイッチ部30Aと30Bは、実施形態1および2における熱伝導部と同様に、熱の伝達、遮断を切り替えるものである(ここでは熱スイッチ部についても上述した熱伝導部と同じ符号を付した)。また、図示しないが、他の磁性体同士の間、および磁性体と高温側熱交換部との間にも、ここで説明する熱スイッチ部30Aおよび30Bが配置されることになる。
図19に示すように、磁性体10Aの対向する両面に熱スイッチ部30Aと30Bが配置されている。熱スイッチ部30A、30Bは、磁性体10Aの対向する両面に接合または接着によって一体化する。磁性体10Aの両隣には低温側熱交換部40Aと磁性体10Bが存在する。熱伝導部30Aは低温側熱交換部40Aと磁性体10Aに接合または接着され、熱スイッチ部30Bは磁性体10Aと磁性体10Bに接合または接着される。したがって、低温側熱交換部40A、熱スイッチ部30A、磁性体10A、熱スイッチ部30B、磁性体10Bは一体化する。
(熱スイッチ部の動作)
熱スイッチ部30Aと30Bは、9テスラ程度の磁気が印加されると、印加される前よりも熱伝導率が大きくなる。熱伝導率の大きさの変化は、100倍から3000倍の範囲である。したがって、熱スイッチ部30Aと30Bは、磁気が印加されなければ熱伝導率は極めて小さくなり、接続されている低温側熱交換部40A、磁性体10A、磁性体10Bの間では熱を伝導しない。一方、熱スイッチ部30Aと30Bは、磁気が印加されると熱伝導率は極めて大きくなり、接続されている低温側熱交換部40A、磁性体10A、磁性体10Bの間で熱が伝導する。
図19に示すように、熱スイッチ部30Aと30Bは、磁気の印加、除去によって絶縁体、金属に相転移する転移体を含む。転移体は、少なくとも1種類以上の電荷整列絶縁体を含む。したがって、転移体に磁気を印加すると金属に相転移して熱伝導率が相対的に大きくなる。また、転移体から磁気を除去すると絶縁体に相転移して熱伝導率が相対的に小さくなる。
図19の場合、熱スイッチ部30Aには磁気が印加されていないので、熱スイッチ部30Aは絶縁体としての性質を持ち、伝導電子が流れ難くなって、低温側熱交換部40Aと磁性体10Aとの間では熱が伝導しない。一方、熱スイッチ部30Bには、永久磁石21BH、26BHによって磁気が印加されているので、熱スイッチ部30Bは金属としての性質を持ち、伝導電子が流れやすくなって、磁性体10Aと磁性体10Bとの間で熱が伝導する。一般的に固体の熱伝導は、フォノンおよび伝導電子が担っていることが知られている。すなわち、ここでは伝導電子の流れを磁気によって制御しているのである。
磁気を印加することで絶縁体から金属に相転移するメカニズムを解明する研究の結果によれば、次のような報告がなされた。
遷移金属の酸化物の中には、大量の電子が存在し電子間の相関が強い物質であるために、電子同士が反発し合い局在化した、電荷整列絶縁体という絶縁体が多く存在している。電荷整列絶縁体では、電子のスピンや軌道など、電荷以外の電子の持つ性質(自由度)に直接作用する外場が、電荷整列絶縁体という絶縁体を金属に相変化させる。特に、磁気が電子のスピンに作用すると、局在している大量の電子を雪崩のように動かし、絶縁体を金属に相変化させる。報告によると、ネオジウムストロンチウムマンガン酸化物を用いた場合、温度10K(−236℃)2.4テスラの磁気では電気抵抗率が500Ωmと高い絶縁体状態であったが、9テスラの磁気では電気抵抗率が0.2Ωmと4桁ほど減少したことが示された。本実施形態の熱スイッチ部はこの現象を積極的に利用して、磁気冷暖房装置を構成している。なお、本実施形態では、磁気を印加すると金属化する電荷整列絶縁体として、Gd0.55Sr0.45MnO、Pr0.5Ca0.5MnO3を用いる。
このように、熱スイッチ部を、電荷整列絶縁体を含む転移体で形成すると、磁気の印加、除去によって、熱伝導率の大きさを大きく変えることができ、熱スイッチとして機能させることができる。磁気の印加、除去によって熱伝導率が変化する熱スイッチ部30A、30Bを用いると、隣接する磁性体との熱伝導を、磁気の印加、除去だけで断続させることができる。したがって、熱スイッチ部(熱伝導部)自身を移動させて、熱交換器と磁性体の間、磁性体同士の間を挿脱させる必要がなくなるため、熱スイッチ部の耐久性が向上し、同時に信頼性も向上する。
<熱スイッチ部の形態2>
図20は熱スイッチ部の形態2を説明するための説明図である。
熱スイッチ部の形態2に係る熱スイッチ部130は、磁性体10Aと10Bに取り付ける電極31A、31Bと、電極31A、31Bの間に取り付ける金属/絶縁相転移体32とによって構成される。電極31Aの一方の面は磁性体10Aの一方の面に接合または接着によって取り付ける。電極31Bの一方の面は磁性体10Bの一方の面に接合または接着によって取り付ける。同様に、金属/絶縁相転移体32の両面は電極31Aと電極31Bの他方の面に接合または接着によって取り付ける。したがって、磁性体10A、熱スイッチ部130、磁性体10Bは一体化される。図示はしていないが、冷暖房装置を構成する他の磁性体と熱スイッチ部も上記のように接合または接着によって一体化される。また、磁性体と熱交換器の間に配置される熱スイッチ部も上記のように接合または接着によって一体化される(以下、他の形態についても同様である)。
電極31A、31Bは導電性の良好なアルミニウムや銅などの金属(金属単体または合金でも良い)を用いる。磁性体10A、10Bの間では電極31Aと31Bを介して熱が伝導するので、電極31Aと31Bは熱伝導率のより大きい金属を用いることが好ましい。
電極31A、31Bを磁性体10A、10Bおよび金属/絶縁相転移体32に接着する接着剤は、熱伝導率の大きいものを用いる。たとえば、接着剤に金属粉を接着性が妨げられない程度に混ぜ込んだ熱伝導性を改善した接着剤を用いる。
金属/絶縁相転移体32は、電圧を印加すると絶縁体から金属に相転移し、熱伝導率が大きくなり、逆に、電圧を遮断すると金属から絶縁体に相転移し、熱伝導率が小さくなる性質を持つものである。金属と絶縁体の相互間の相転移を示す絶縁体は、無機酸化物モット絶縁体または有機モット絶縁体がある。無機酸化物モット絶縁体は少なくとも遷移金属元素を含む。モット絶縁体としては、LaTiO3、SrRuO4、BEDT−TTF(TCNQ)が知られている。金属と絶縁体の相互間の相転移が可能なデバイスとして現在知られているものは、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子がある。熱は、熱電子および格子結晶によって移送することができる。ZnO単結晶薄膜電気二重層FETおよびTMTSF/TCNQ積層型FET素子は、電圧を印加すると熱電子が活発に移動するようになる性質を利用する。ここでは、金属/絶縁相転移体32に、少なくとも遷移金属元素を含む無機酸化物モット絶縁体、有機モット絶縁体、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子など、電圧の印加除去によって熱伝導率が大きく変化するものを用いる。
図20に示すように、電極31Aと31Bとの間に直流電圧Vを印加すると、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率が相対的に大きくなって、磁性体10Aと10Bとの間で熱の移動が起こる。一方、電極31Aと31Bとの間の直流電圧Vを除去すると、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率が相対的に小さくなって、磁性体10Aと10Bとの間の熱の移動が阻止される。したがって、熱スイッチ部130は、電圧の印加、除去によって熱の移動を制御する熱スイッチとなる。
熱スイッチ部30A−30Gの熱伝導の断続は、電圧の印加、除去によって制御できるので、磁性体間に熱スイッチ部を摺動させずに熱を輸送させることができる。このため、熱スイッチ部に摺動の耐久性を持たせる必要がなく、熱スイッチ部の信頼性が向上する。また、摩擦による機械的な損失をなくすことができ、熱スイッチ部を駆動させるための損失を低減できる。さらに、熱スイッチ部は磁性体との並び方向にのみ熱を輸送でき、熱スイッチ部の熱伝導率は摺動型のものに比較して大きくできるので、熱の輸送に際して熱的な損失が小さくできる。加えて、熱スイッチ部は、電圧の印加、除去に応じて、磁性体間をすべての接触面を使って接続できるので、熱輸送能力および熱輸送効率を向上させることができる。
熱スイッチ部130の熱伝導の断続は、電極31Aと31Bに電圧を印加、除去することによってできる。電極31Aと31Bを設けることで、金属/絶縁相転移体32に容易に電圧を印加することができる。また、金属/絶縁相転移体32に、少なくとも遷移金属元素を含む無機酸化物モット絶縁体、有機モット絶縁体、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子を用いると、熱伝導率の変化の応答性が良好になる。
<熱スイッチ部の形態3>
図21は熱スイッチ部の形態3を説明するための説明図である。
熱スイッチ部の形態3に係る熱スイッチ部130は、熱スイッチ部の形態2で説明した熱スイッチ部130(図20)に、さらに補助電極33A、33Bを追加している。その他の構成および動作は熱スイッチ部の形態2と同様である。
補助電極33Aと33Bは、金属/絶縁相転移体32に接合または接着によって取り付ける。補助電極33Aと33Bは熱伝導性を考慮しなくても良い。また補助電極33Aと33Bを金属/絶縁相転移体32に接着する接着剤も熱伝導性を考慮しなくても良い。補助電極33Aと33Bと接着剤には、熱電子が通過しないからである。
補助電極33Aと33Bは、電極31Aと31Bに対して、直交方向に電圧を印加する。補助電極33Aと33Bとの間に直流電圧を印加すると、金属/絶縁相転移体32内の電子の分布が補助電極33Aと33Bの方向に偏る。このため、磁性体10Aと10Bとの間を移動する熱電子の抵抗が減少し、熱電子が移動しやすくなる。つまり、補助電極33Aと33Bを設けることで、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率をより大きくすることができる。
<熱スイッチ部の形態4>
図22は熱スイッチ部の形態4を説明するための説明図である。
熱スイッチ部の形態4に係る熱スイッチ部130は、電極31Aと31Bを、金属/絶縁相転移体32と磁性体10A、10Bとの間には設けずに、金属/絶縁相転移体32内を移動する熱電子の移動方向に対して直交する方向から電圧が印加できるように設ける。その他の構成および動作は熱スイッチ部の形態2と同様である。
したがって、金属/絶縁相転移体32は、磁性体10Aと10Bに直接取り付ける。金属/絶縁相転移体32と磁性体10A、10Bとは、接合または接着剤で取り付ける。このときに用いる接着剤は、熱伝導性の大きいものを用いる。
電極31Aと31Bは、金属/絶縁相転移体32に接合または接着によって取り付ける。電極31Aと31Bは熱伝導性を考慮しなくても良い。また電極31Aと31Bを金属/絶縁相転移体32に接着する接着剤も熱伝導性を考慮しなくても良い。電極31Aと31Bと接着剤には、熱電子が通過しないからである。
電極31Aと31Bは、金属/絶縁相転移体32内を移動する熱電子の移動方向に対して、直交方向に電圧を印加する。電極31Aと31Bとの間に直流電圧を印加すると、金属/絶縁相転移体32内の電子の分布が電極31Aと31Bの方向に偏って相転移する。このため、磁性体10Aと10Bとの間を移動する熱電子の抵抗が減少し、熱電子が移動しやすくなる。
熱スイッチ部の形態2、3の場合には、熱電子の通過方向に電極31A、31Bが存在するので、熱電子にとっては電極31A、31Bが障害物となる。このため、電極31A、31Bの存在は熱伝導率を小さくする方向に働く。熱スイッチ部の形態4の場合には、金属/絶縁相転移体32を磁性体10Aと10Bに直接取り付けるので、電極31A、31Bの存在は熱伝導率を下げる方向には働かない。したがって、本実施形態に係る熱スイッチ部30の熱伝導率は、熱スイッチ部の形態2、3の場合と比較して、大きくなる。
<熱スイッチ部の形態5>
図23は熱スイッチ部の形態5を説明するための説明図である。
熱スイッチ部の形態5に係る熱スイッチ部130は、金属/絶縁相転移体(32)を磁性体10Aと10Bに直接取り付け、磁性体10Aと10Bに直流電圧を印加できるようにしたものである。金属/絶縁相転移体と磁性体10A、10Bとは接合または接着剤で取り付ける。接着剤は熱伝導率の大きいものを用いる。その他の構成および動作は熱スイッチ部の形態2と同様である。
磁性体10Aと10Bを電極の代わりに用いると、構造が単純化され、また、部品点数の減少と製造工程の簡略化が図れる。また、熱スイッチ部の形態4の場合と同様に、熱スイッチ部30の熱伝導率は、熱スイッチ部の形態2、3の場合と比較して、大きくなる。
<熱スイッチ部の形態6>
図24は熱スイッチ部の形態6を説明するための説明図である。
熱スイッチ部の形態6は、熱スイッチ部130に絶縁体34を追加している。具体的には、図24に示すように、熱電子の移動を妨げる絶縁体34を電極31Aと金属/絶縁相転移体32との間に設けている。図24では、図20の構成に絶縁体34を追加しているが、図21〜23の構成に対して絶縁体34を追加しても良い。その他の構成および動作は熱スイッチ部の形態2と同様である。
絶縁体34は、熱電子以外の電子の移動を阻止するために設ける。電極31Aと31Bとの間に直流電圧を印加すると、電極31Aと31Bとの間に電流が流れるが、本来移動してほしい熱電子に加え、熱輸送に関与しない電子を過剰に移動させてしまう可能性がある。この熱輸送に関与しない電子の過剰の移動を防ぐために、絶縁体34を金属/絶縁相転移体32に取り付けることによって、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率の低下を防止できる。
<熱スイッチ部の形態7>
図25は熱スイッチ部の形態7を説明するための説明図である。
熱スイッチ部の形態7は、熱スイッチ部の形態4に係る図22の熱スイッチ部130に分極体35を追加している。具体的には、電極31Aと金属/絶縁相転移体32との間に熱電子の移動を促す分極体35を配置する。分極体35は、誘電体およびイオン性液体のうちの少なくとも1種類以上から形成する。その他の構成および動作は熱スイッチ部の形態4と同様である。
分極体35は、金属/絶縁相転移体32内を移動する電子を取り出したり、金属/絶縁相転移体32内に電子を注入したりする。このため、金属/絶縁相転移体32内の電子の分布状態が変化して、熱電子が流れやすくなる。分極体35を配置することで、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率をより大きくすることができる。
熱スイッチ部の形態2〜7のように、電圧の印加、除去によって熱伝導率が変化する熱スイッチ部130を用いると、隣接する磁性体との熱伝導を、電圧の印加、除去だけで断続させることができる。したがって、熱スイッチ部自身を移動させて、熱交換器と磁性体の間、磁性体同士の間を挿脱させる必要がなくなるため、熱スイッチ部の耐久性が向上し、同時に信頼性も向上する。
<熱スイッチ部の形態8>
図26は熱スイッチ部の形態8における熱スイッチ部の構成を説明するための熱スイッチ部部分の断面図である。図27は熱スイッチ部の形態8における熱スイッチ部の構成を説明するための熱スイッチ部部分の平面図(図26の矢視Aの図)である。
本形態の熱スイッチ部は、電気濡れ(エレクトロウェッティング)効果を利用したものである。
ここでは、磁性体10とそれに隣接する磁性体10’の間に設けられた熱スイッチ部230を例に説明する。ここで説明する磁性体10とそれに隣接する磁性体10’は、図1における磁性体10Aを10B、10Cと10D、10Eと10Fに対応する。また、低温側熱交換部40Aと磁性体10A、磁性体10Fと高温側熱交換部40Bにも同様に対応する。ただしその場合は、磁性体10または10’のうち一方が低温側熱交換部40Aまたは高温側熱交換部40Bとなる。
熱スイッチ部230は、磁性体10に接する第1電極構造体11と、磁性体10’に接する第2電極構造体21と、第1電極構造体11および第2電極構造体21の間の隙間20と、この隙間20に出し入れされる液体金属18とを有する。また、隙間20の一端には、液体金属18を収容する液溜まり17を有する。なお、隙間20において、液溜まり17を設けた一端の反対側の端部は開放端となっている。
第1電極構造体11と第2電極構造体21は、同じ構造を有していて、隙間20を中心線とする対称構造である。第1電極構造体11は、磁性体10側から順に、第1電極12、誘電体13、第2電極14、撥液コート層15を有する。第2電極構造体21も同様に、磁性体10’側から順に、第1電極12、誘電体13、第2電極14、および撥液コート層15を有する。つまり、隙間20を中心としてみれば、第1電極構造体11も第2電極構造体21も、隙間20側から順に撥液コート層15、第2電極14、誘電体13、第1電極12となるように配置されているのである。
磁性体全体の下部には、下部基板16を有する。この下部基板16内に、隙間20に連通した液溜まり17を有している。
第2電極14は、液溜まり17内部にまで入っていて、液体金属18と電気的に導通することができるようになっている。一方、第1電極12は液溜まり17からは絶縁されている。すなわち、第1電極12は液体金属18と絶縁されているのである。
これにより、第1電極12と第2電極14は、その間にある誘電体13を介したキャパシター構造となっていて、これがそのまま液体金属18と第1電極12のキャパシターとして作用することになる(詳細後述)。
第1電極構造体11と第2電極構造体21の上部には、それぞれ第1および第2電極12、14から導かれた配線が形成される上部基板100を有する。上部基板100は、第1電極構造体11側と第2電極構造体21側とで、隙間20の延長によって分離、絶縁され、第1電極構造体11および第2電極構造体21と同様に隙間20によって対称な同じ構造である。上部基板100は、それぞれ第1電極12からの第1配線111と、第2電極14からの第2配線112が絶縁層113によって絶縁されている。第1および第2配線111および112は、この熱スイッチ部230を制御するために、磁気冷暖房装置の制御装置(不図示)に接続されている。そして制御装置が、磁気の移動に同期して、この熱スイッチ部230による熱伝達状態と断熱状態を切り替えている。
以下さらに熱スイッチ部各部を詳細に説明する。
第1電極12および第2電極14は、たとえば、銅、アルミニウムなど、導電性のものであれば、特に限定されない。第1電極12および第2電極14の形状はともに同じであり、隙間20の大きさ(隙間の間隔を除く)と一致する電極板となっている。
誘電体13は、第1電極12と第2電極14の間にあって、たとえば、シリコン酸化膜やシリコ窒化膜など、誘電体13であれば特に限定されない。誘電体13の形状は第1電極12と第2電極14と同じ大きさであり、第1電極12と第2電極14が短絡しない形状となっている。
撥液コート層15は、液体金属18に対して撥液性を有する。また、撥液コート層15は、導電性であることが好ましい。このような撥液コート層15に用いる材料とは、たとえば、導電性酸化膜、導電性ガラス材、導電性セラミックス材、グラフェンなどが好ましい。
このように、撥液コート層15が液体金属18に対して撥液性となっていることで、電気を印加していない状態では、液体金属18が容易に液溜まり17内に収納されるようになる。また、導電性を有することで、第2電極14に流した電気を液体金属18に直接流すことができて効率が良い。また、第2電極14に電気を流して液体金属18を第1電極構造体11と第2電極構造体21の間の隙間20に充填する際に、液溜まり17内を空にできるので、液体金属18使用量を少なくすることができる。
なお、液溜まり17内に常に液体金属18の一部が残留して、第2電極14から液体金属18に電気を流すことができれば、撥液コート層15は撥液性を有するだけで、導電性のないものであっても良い。また、第2電極14の隙間20側の表面に極薄いシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの絶縁性の撥液性部材を形成しても良い。極薄いシリコン酸化膜やシリコン窒化膜であれば、これらが介在していても第2電極14に電気を流したときにトンネル効果によって、液体金属18に電気を流すことができる。
このような部材によって構成される撥液コート層15の形状は第2電極14を覆う大きさである。
さらに、第2電極14自体を導電性で、かつ、その表面が撥液性となる部材を用いても良い。つまり第2電極14自体を導電性酸化膜、導電性ガラス材、導電性セラミックス材、グラフェンなどによって形成するのである。この場合、第2電極14の隙間側表面に、撥液コート層を設ける必要がなくなる。
下部基板16は、少なくとも第1および第2電極12、14との間で絶縁されているものであれば良い。たとえば、全体が絶縁性を有する材料として、エポキシ基板、フェノール基板、ABS樹脂基板などが用いられる。そして、これら基板に液溜まり17を設ける。この場合、液体金属18を液溜まり17内に収納しやすいように、液溜まり内壁面を親液性にする。親液性を持たせるためには、液溜まり壁面に金属膜19(たとえば銅、ニッケル、アルミニウムなどの金属膜)を形成することが好ましい。
また、下部基板16としては、たとえばシリコン基板を用いることもできる。シリコン基板を用いた場合、まず液溜まり17の形成後、液溜まり17内部の壁面表面を含めて、すべての表面をシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などにより絶縁層(不図示)を形成する。そして、液溜まり17内に親液性を持たせるために金属膜19(たとえば銅、ニッケル、アルミニウムなどの金属膜、さらにシリコン基板とした場合は導電性を付与したポリシリコンなどでも良い)を形成することが好ましい。
液溜まり17内に形成した金属膜19は第2電極14と導通するようにしても良い。
なお、液溜まり17内の金属膜19はなくても良い。上述したとおり、液溜まり17内の金属膜19は、液溜まり17内壁面を親液性にすることで液体金属18が下がったときに、液体金属18が液溜まり17内に収納されやすくするためのものである。このため、液溜まり17の大きさが十分に大きく、液溜まり17内壁面が親液性でなくても液体金属18の収納がスムーズにゆく場合には金属膜19はなくても良い。
さらに、下部基板16の液溜まり17には、液体金属18が漏れ出ない程度の空気穴25が設けられている(空気穴25の機能については後述)。
上部基板100は、第1電極構造体11側と第2電極構造体21側で同じ構成であり、第1電極12と電気的に接続された第1配線111と、第2電極14と電気的に接続された第2配線112と、これらを絶縁分離する絶縁層113を有する。また、すでに説明したように、第1電極構造体11側と第2電極構造体21側は隙間20によって絶縁、分離されているため、当然に上部基板100も第1電極構造体11側と第2電極構造体21側でそれぞれ分離して同じ構成となるように設けられている。また、各第2配線112の隙間20に面した部分は、撥液コート層15が形成されている。また、隙間20部分は、上から見ると、図27に示すように、撥液コート層15が隙間20を取り囲むように形成されており、隙間20の側面部分15aから液体金属が漏れないようになっている。なお、隙間20の側面部分15aには、図示しないが、撥液コート層15の外側に、隙間の側面部分(または磁性体の側面を含めた側面全体)を覆う構造体(不図示)があっても良い。このような構造体は、たとえば樹脂やセラミックなど非磁性、非導電性の部材が好ましい。
上部基板100で配線が対向した部分(図26中のまるで囲った部分)は、開放端となっていて、液体金属18の移動によって隙間20内の圧力が上ったり下がったりしないようになっている。このため液体金属18は、スムーズに隙間20内を移動できる。
上部基板100に用いられる配線111、112は、第1および第2電極12、14と同じく、銅、アルミニウムなどである。一方、絶縁層113は、少なくとも誘電体13よりも誘電率の低い絶縁体(絶縁材)が好ましい。
配線111、112は、第1および第2電極12、14に対して電圧を印加するための配線である。このため配線が対向した部分(図26中のまるで囲った開放端近傍部分)でも、第1および第2電極12、14と同じ電圧がかかる。そうすると、上部基板100の絶縁層113として誘電率の高い材料が用いられていると、この部分でも液体金属18と配線112との間がキャパシター構造となってしまう。そうすると液体金属18が上昇してきたときに、その勢いで、まるで囲んだ部分からさらに上にまで液体金属18が来て、吐出してしまう虞がある。これを防ぐために、この配線112同士が隙間20を介して向き合う部分では、誘電率が低い絶縁材を用いることで、液体金属18がこの配線112同士が対向する部分の隙間20に入ってくるのを防止している。具体的には、たとえば、半導体装置において使用されている、いわゆるLow−k材料を使用することができる。たとえばシリコン酸化物にフッ素や炭素を添加したもの、有機ポリマーなどがある。そのほか、第1および第2電極12、14の間に用いた誘電体13よりも誘電率が低い材料であれば良い。これらLow−k材料であっても良い。これらのLow−k材料は、SiO2の比誘電率4.2〜4.0に対して、比誘電率3.0以下であることが知られている。
なお、絶縁体である絶縁層113を配置する開放端近傍部分は、配線112および113が絶縁される厚みであるが、たとえば隙間上端から誘電体13の厚み程度の厚さ分もあれば、液体金属18が上がってきたときに上端から吐出することはない。
そして、液体金属18(導電性流体と称されることもある)は、少なくともこの磁気冷暖房装置が使用される温度範囲において液体の金属である。たとえば、ガリウム、インジウム、スズの共晶合金であるガリンスタンを用いることができる。ガリンスタンは、常温で液体の金属であり、ガリウム、インジウム、スズの組成よって融点が異なる。たとえば、ガリウム68.5%、インジウム21.5%、スズ10%のガリンスタンは、融点:−19℃、沸点:1300℃以上、比重:6.44g/cm3、粘度:0.0024Pa・s(at20℃)、熱伝導率:16.5W/(m・K)である。そのほかにも、周知の様々な液体金属18を用いてもよく、熱伝達率が高いものが好ましい。
次に、このように構成された熱スイッチ部230の作用を説明する。
熱スイッチ部230の機能は、すでに説明したとおり、磁性体等間における熱の伝達と遮断(断熱)である。このような機能を持つことから、これを熱スイッチと称することがある。
本形態においては、この熱スイッチ機能を隙間20と液溜まり17の間を行き来する液体金属18により行っている。そして、液体金属18を隙間20と液溜まり17の間を行き来させるためには、エレクトロウェッティングを用いている。エレクトロウェッティングによる液体金属18の移動自体には、公知であり、たとえば、特開2007−103363号公報などに開示されるので、ここでは本形態の理解のために必要な原理について説明する。
図28はエレクトロウェッティングの原理を説明するための説明図である。
エレクトロウェッティングは、電極板300上に設けられた誘電体301の表面に液体金属18(ここでは液滴として示した)を乗せ、電極板300と液体金属18の間に電圧を印加することで、誘電体表面における液体金属18との濡れ性を制御する技術である。
電極板300と液体金属18との間は誘電体301を介してキャパシターが形成されている。図28Aに示すように、電極板300と液体金属18との間に電圧を印加すると、このキャパシターの静電エネルギーが変化(増加)して、それに相当する液体金属18の表面エネルギーが減少し、液体金属18の表面張力が低下する。これにより液体金属18の表面に対する接触角度θが変化する。ここで接触角度θとは、液体金属18が乗っている誘電体301の表面における液体金属表面とのなす角をいう。この接触角度θは、液体金属18の表面張力に応じて0°〜180°の範囲で変化する。
ここで図28Aに示すように(電圧印加時)、接触角度θが、0°から90°までは、液体金属18に対する表面の濡れ性が良い状態、すなわち親液性のある状態である。一方、図28Bに示すように(電圧印加無しの時)、接触角度θは、90°を超えて180°であり、これが濡れ性の悪い状態、すなわち撥液性の状態である。このように誘電体表面に置いた液体金属18の接触角度θを、電圧の印加によって変更できるのがエレクトロウェッティングである。
図29は隙間における液体金属の移動を説明するための説明図で、隙間における液体金属部分の拡大図である。
本形態では、液体金属18が移動する表面は、磁性体10と10’の間の隙間20に対向するように設けられた撥液コート層15である。この撥液コート層15は、すでに説明したとおり、液体金属18に対する撥液性を有する。このため、第1および第2電極12、14の間に電圧を印加しなければ、図29Aに示すように、液体金属18は、撥液コート層15の表面においてその接触角度は90°以上となって撥液性(疎液性ともいう)となっている。
このように液体の接触面(撥液コート層15の表面)と接触角度が90°以上となることで、図29Aに示したように、液体金属18の液面は、中央部分が凸となって、液体金属18の撥液コート層15表面との接触部分が下がった状態になる。このため液体金属18が撥液コート層15表面を伝って行く力が働かなくなり、液体金属18が毛細管現象によって上昇してしまうことはない。
この状態は、熱伝達部30全体としては図26に示した状態であり、液体金属18は、液溜まり17内にあって、隙間20は空気により満たされている。したがって、この空気で満たされた隙間20によって磁性体10と10’の間は断熱状態となる。
一方、磁性体10と10’のそれぞれにある第1電極12と第2電極14の間に電圧を印加すると、第1電極12と第2電極14の間にある誘電体13が分極して静電エネルギーが変化(増加)する。このとき第2電極14と液体金属18とは電気的導通がとられているため、結果的に、液体金属18と第1電極12とが誘電体13を介してキャパシター構造となっている。この構造はエレクトロウェッティングの原理を説明した図28の電極板300と誘電体301を介した液体金属18とによるキャパシター構造と同様の構造ということである。
このため、第1電極12と第2電極14の間に電圧を印加したことで、液体金属18の表面エネルギーが増加して、それに伴い撥液コート層15(誘電膜)表面における液体金属18の表面張力が減少し、濡れ性がよくなる。そうすると、図29Bに示すように、撥液コート層15表面に接している液体金属18表面の接触角度θが90°以下になる。これにより、液体金属18自体の表面張力は失われるものの、隙間20を毛細管現象により登ってゆく張力が働くことになる。図29Bにおけるhがもとの液面に位置(図29A)からの上昇量である。なお、図29においてdは隙間の間隔である。
図30は、図26と同じ部分の断面図であり、液体金属18が隙間20を上がってきた状態、すなわち熱伝達状態を示している。
図示するように、液体金属18は隙間20の頂上である上部基板100の位置まで到達する。上部基板100の隙間部分ではすでに説明したように、上部基板100の第1配線111と第2配線112の間には誘電体が存在しない(または誘電率が低い)。このため、この部分での静電エネルギーはほとんど変化しないため、上昇した液体金属18の濡れ性はよくならないので、これ以上液体金属18が上昇することはない。
そして、液体金属18が上昇したことにより、隙間20は液体金属18で満たされて磁性体10と10’間の熱の伝達が起きて熱伝達状態になる。
このようにして本形態の熱スイッチ部230では、エレクトロウェッティングにより熱スイッチ部230に設けた隙間20に液体金属18が充填された熱伝達状態と、隙間20から液体金属18を排除した断熱状態を、電気的に制御することができるのである。
熱スイッチ部230を構成する各部の好ましいサイズは、ガリンスタンを液体金属18として用いた場合、隙間20の間隔が10μm〜50μmが好ましいものとなる。下限値を10としたのは、この程度の隙間20をあけることで、液体金属18が下がって隙間20内に空気が入ったときに十分な断熱性を有するようにするためである。一方、上限の50μmは、液体金属18が上がって隙間20を満たした場合の熱伝達性能を保つためである。
なお、図30に示したように、液体金属18が隙間20を上昇すると液溜まり17内から液体金属18が出てゆくことになる。このとき、仮に液溜まり17が密閉状態だと、液溜まり17内部が負圧(真空)になるため液体金属18が液溜まり17から隙間20に出て行きづらくなる。そこで、本形態では、液溜まり17の下部端に空気穴25を設けたのである。空気穴25の大きさは液体金属18が漏れ出ない程度でかつ空気の流入、流出が起こる程度の大きさとする。なお、空気穴25の位置は、液溜まり17の下部端以外であってもよく、液体金属18が液溜まり17から隙間20に出て行きやすくなるように配置されていれば良い。
ここで、本形態においては、隙間20を介して対向する第1および第2電極構造体11および21は、それぞれ第1電極12と第2電極14を、誘電体13を介して平行に設けている。このうち、エレクトロウェッティングの作用しているのは、第1電極12、液体金属18、およびその間の誘電体13によって構成されるキャパシターである。このため、エレクトロウェッティングの原理としては、液体金属18に電圧を印加することができれば、第2電極14はなくても良い。たとえば、下部基板を通して、液体金属と電気的に接続される電極を設けるなどである。この場合、第2電極は隙間内に存在しないので、隙間の対向する面は誘電体となり、液体金属に対して撥液性があるので、撥液コート層もなくて良い。
ただし、このようにした場合(第2電極を省略した場合)、キャパシター構造としては、第1電極12の対向電極となる液体金属18が移動するため、電極面積が増減することになる。このため、エレクトロウェッティング作用を起こさせる誘電体での静電エネルギーも増減してしまうことになる。したがって、同じ電圧を印加していても液体金属の上昇量によってエレクトロウェッティング作用により液体金属を移動させる力が変わって、液体金属の上昇速度が変化するおそれがある(なお、第2電極を省略した場合でも、液体金属の移動速度が若干不安定になるおそれはあるものの、第2電極を設けた場合と同様に、摩擦を発生させることなく熱伝達と断熱の切り替えは可能である)。
本形態では、第1電極12と第2電極14を、誘電体13を介して平行に設けているので、第1電極12と第2電極14によるキャパシターの大きさは、液体金属18の移動によって変化しない。したがって、同じ電圧の印加でも、液体金属の移動によって液体金属の移動速度が変化したりせず安定的に熱伝達と断熱を切り替えることができる。
<熱スイッチ部の形態9>
図31は熱スイッチ部の形態9における熱スイッチ部の構成を説明するための平面図であって、図26中の矢視Aに相当する方向から見た図である。
本形態の熱スイッチもまた、電気濡れ(エレクトロウェッティング)効果を利用したものである。したがって、熱スイッチ部の形態8の変形例となる。
熱スイッチ部の形態9は、熱スイッチ部230の隙間20に第1電極構造体11側と第2電極構造体21側のそれぞれの壁面、すなわち撥液コート層15の表面にブレード31を配置したものである。このブレード31は、下部基板16の液溜まり17から上部基板100方向に垂直に延びており、第1電極構造体11側のブレード31と第2電極構造体21側のブレード31は互い接触しない幅となっている。ブレード31自体は、たとえば撥液コート層15の材料をそのままブレード31の構造となるように形成すると良い。
そのほかの構成は、熱スイッチ部の形態8と同じであるので説明を省略する。
このようにすることで、液体金属18と第1電極構造体11の壁面および第2電極構造体21の壁面との接触表面積が大きくなって熱伝達効率が良くなる。また、第1電極構造体11側のブレード31と第2電極構造体21側のブレード31との間で隙間dBが形成されるため、このブレード31間の隙間dBでもブレード壁面に液体金属18の表面張力が働き、いっそう液体金属18が上昇しやすくなる(電圧印加時)。ブレード31間の隙間dBもすでに説明したとおり、10μm〜50μm程度が好ましい。
以上説明した本実施形態2のように、熱伝導部として、それ自身の移動を伴わずに熱の伝達、遮断を行うことのできる熱スイッチを用いたことで磁気冷暖房装置を小型化することができる。たとえば磁気冷暖房装置を車載するためには小型化が要求され、小型化するためには磁気冷暖房装置の高周波化が必要である。高周波化するためには、磁性体間の熱伝導を高速(例えば0.1秒程度)で行う必要がある。本実施形態2の熱スイッチ部によって、電圧をON、OFFする周期を短くすることで高周波化できるようになる。
なお、熱スイッチ部は、実施形態1においても熱伝達部材として使用可能である。
以上説明した本実施形態よれば以下の効果を奏する。
(1)列状に並んだ複数の磁性体のうち、少なくとも一つの磁性体として、一つの磁性体の中に作動温度範囲の異なる少なくとも2つの磁気熱量材料を有するようにし、このうち一つは作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料とした。このためこの磁性体には起動時温度を作動温度範囲とする磁気熱量材料が含まれるため、起動時から温度変化するようになって起動時から定常状態までの過渡特性が向上し、従来よりも短い時間で定常状態にすることができる。
(2)複数の磁気熱量材料を組み合わせる際の各磁気熱量材料の配置は、磁性体が列状に並んだ方向に沿う断面において、作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料を中央に配置し、その外側に磁性体自身の作動温度範囲を担う磁気熱量材料を配置した。これにより、磁性体同士の熱伝達を効率よくすることができる。
(3)複数の磁気熱量材料を組み合わせる際の各磁気熱量材料の配置は、磁性体が列状に並んだ方向に沿う断面において、作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料を中央に配置し、その外側に磁性体自身の作動温度範囲を担う磁気熱量材料を配置した構成を基本配置として、この基本配置を複数組み合わせている。これにより、磁性体同士の熱伝達を効率よくすることができる。
(4)一つの磁性体の中に作動温度範囲の異なる少なくとも2つの磁気熱量材料を有するようにした磁性体を、低温側熱交換部および/または高温側熱交換部に隣接する磁性体とした。これにより起動時温度からもっとも離れた作動温度範囲となる低温側または高温側の熱交換部に隣接する磁性体であっても、起動時から温度変化するようになる。
(5)低温側熱交換部または高温側熱交換部に隣接する磁性体には、さらに自身以外の磁性体の作動温度範囲の磁気熱量材料を組み合わせている。これにより、起動時温度から外れ、さらに自身の作動温度範囲まで至らない途中の段階においても、組み合わせた磁気熱量材料によって温度変化がもたらされる。このため起動から定常状態に至る途中の段階を速く抜けて定常状態にすることができる。
(6)複数の磁性体を同じ質量にすることで、ぞれぞれの熱容量の違いをなくし(または少なくし)熱伝達のばらつきを抑えることができる。そして、同じ質量とする場合には、作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料の組み合わせ割合を5質量%以上50質量%未満とすることで、一速くて定常状態にすることができるとともに、定常状態となった後も安定した冷却動作を行うことができる。
(7)複数の磁性体は同じ体積にすることで、ぞれぞれの熱容量の違いをなくし(または少なくし)熱伝達のばらつきを抑えることができる。そして、同じ体積とする場合には、各磁性体自身の作動温度範囲を担う磁気熱量材料を100質量%としたときに、この100質量%に対して作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料の組み合わせ割合を5質量%以上50質量%未満にする。これにより一速くて定常状態にすることができるとともに、定常状態となった後も安定した冷却動作を行うことができる。
以上本発明を適用した実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限らず、様々な変形が可能である。たとえば、作動時温度範囲として起動時温度を含む磁性体を、複数の磁性体を並べた列の中央部分ではなく、偏った位置に配置しても良い。たとえば図1の例では、磁性体10Fとして、作動時温度範囲として起動時温度を含む磁性体を配置する(またはこの逆に磁性体10Aを起動時温度としても良い)。このような場合には低温側熱交換部に隣接する磁性体10Aに、起動時温度の磁気熱量材料すなわちこの場合は磁性体10Fの磁気熱量材料を組み合わせる(逆の場合は磁性体10Aの磁気熱量材料を磁性体10Fに組み合わせる)。もちろんこの場合も、隣接する磁性体の作動温度範囲の磁気熱量材料をさらに組み合わせても良い。また途中にある磁性体にも起動時温度の磁気熱量材料を組み合わせても良い。このような場合でも、上述した実施形態と同様に一速く定常状態の温度に達することができる。
また、起動時温度の磁気熱量材料を組み合わせる磁性体としては、低温側熱交換部または高温側熱交換部に隣接する磁性体に限られない。たとえば、低温側熱交換部または高温側熱交換部に隣接する磁性体と中央にある磁性体の途中にある磁性体にだけ、起動時温度の磁気熱量材料を組み合わせても良い。このようにすることでも、起動時温度から作動温度範囲が外れている磁性体のうち、少なくとも一つは、起動時から温度変化を起こすようになるので、その分だけでも、定常状態に速く達するようになる。
また、上述した実施形態では、起動時の温度として常温(20℃)を想定したが、起動時温度が必ずしも常温ではない場合であって適用可能である。
そのほか、本発明は、特許請求の範囲により規定した事項によって定められる様々な変形形態が可能であることは有までもない。
さらに、本出願は、2012年9月3日に出願された日本特許出願番号2012−193449号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
10、10A−10F、10Aa−10Af、10Ba−10Bf 磁性体、
20A−20F、20Aa−20Ae、20Ba−20Be 永久磁石、
20Ab−20Af 磁気突起、
30、30A−30G、30Ab−30Af、30Ba−30Bg、230 熱伝導部(熱スイッチ部)、
40A 低温側熱交換部、
40B 高温側熱交換部、
500 磁気冷暖房装置、
700 磁性体・熱伝達部配置板、
800 磁石配置板。

Claims (7)

  1. 間隔を設けて列状に配置された複数の磁性体と、
    前記複数の磁性体のそれぞれに磁気を印加および除去する磁気印加部と、
    前記複数の磁性体の前記列の一端部に磁性体から間隔をあけて配置された低温側熱交換部と、
    前記複数の磁性体の前記列の他端部に磁性体から間隔をあけて配置された高温側熱交換部と、
    前記磁性体同士の間、前記磁性体と前記低温側熱交換部の間、および前記磁性体と前記高温側熱交換部の間のそれぞれに配置され、これらの間の熱の伝達および断熱を行う熱伝導部と、
    を有し、
    前記複数の磁性体は、前記磁気の印加および除去により、それぞれ異なる作動温度範囲で温度変化する少なくとも一つの磁気熱量材料を有し、
    前記複数の磁性体のうち少なくとも一つの磁性体は、一つの磁性体の中に作動温度範囲の異なる少なくとも2つの磁気熱量材料を有していてこのうち一つは作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料であり、
    前記作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料を有する前記磁性体は、前記複数の磁性体が列状に並んだ方向に沿う断面において、前記磁性体自身の作動温度範囲を担う磁気熱量材料を前記熱伝導部と隣接する位置に配置して、その内側に前記作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料を配置していることを特徴とする磁気冷暖房装置。
  2. 前記少なくとも2つの磁気熱量材料を有していてこのうち一つは作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料を有する前記磁性体は、前記複数の磁性体が列状に並んだ方向に沿う断面において、前記作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料を中央に配置し、その外側を取り囲むように前記磁性体自身の作動温度範囲を担う磁気熱量材料を配置していることを特徴とする請求項1に記載の磁気冷暖房装置。
  3. 前記少なくとも2つの磁気熱量材料を有していてこのうち一つは作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料を有する前記磁性体は、前記複数の磁性体が列状に並んだ方向に沿う断面において、前記作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料を中央に配置し、その外側に前記磁性体自身の作動温度範囲を担う磁気熱量材料を配置した構成を基本配置として、前記熱伝導部と隣接する位置に前記磁性体自身の作動温度範囲を担う磁気熱量材料が来るように前記基本配置を複数組み合わせていることを特徴とする請求項1に記載の磁気冷暖房装置。
  4. 前記少なくとも2つの磁気熱量材料を有していてこのうち一つは作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料を有する前記磁性体は、前記低温側熱交換部および/または前記高温側熱交換部に隣接する磁性体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の磁気冷暖房装置。
  5. 前記低温側熱交換部および/または高温側熱交換部に隣接する前記磁性体は、
    それ自身の作動温度範囲の磁気熱量材料、動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料、これらの磁気熱量材料の作動温度範囲以外の作動温度範囲の磁気熱量材料を有することを特徴とする請求項4に記載の磁気冷暖房装置。
  6. 前記複数の磁性体は同じ質量であり、一つの磁性体に含まれる作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料の割合は5質量%以上50質量%未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気冷暖房装置。
  7. 前記複数の磁性体は同じ体積であり、各磁性体自身の作動温度範囲を担う磁気熱量材料を100質量%としたとき、当該100質量%に対して作動温度範囲として起動時温度を含む磁気熱量材料の割合は5質量%以上50質量%未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気冷暖房装置。
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