次に、図面を参照しながら実施形態1に係る冷暖房装置の構成を説明する。
〔実施形態1〕
(冷暖房装置の構成)
図1は、実施形態1に係る冷暖房装置の構成図である。実施形態1に係る冷暖房装置100は、熱生成ユニット110、低温側熱交換部120、高温側熱交換部130、熱伝導ユニット140、電圧印加部150、熱スイッチ駆動部160及び駆動制御部170を有する。
熱生成ユニット110は、間隔を設けて配置された複数の熱生成部材110A−110Fを有する。熱生成部材110A−110Fは、それぞれ電気熱量材料と2つの電極とから構成される。たとえば、熱生成部材110Aは、電気熱量材料114Aとその対向する両側の面に取り付けた2つの電極112A、112Aとから構成される。熱生成部材110Bは、電気熱量材料114Bとその対向する両側の面に取り付けた2つの電極112B、112Bとから構成される。その他の熱生成部材110C、110D、110E、110Fの構成も熱生成部材110A、110Bの構成と同一である。
電気熱量材料114A−114Fは、2つの電極に電圧が印加されると電極間に形成された電界の影響を受けて発熱する性質を有する。つまり、電気熱量材料114A−114Fは電気熱量効果を有する。実施形態1の電気熱量材料114A−114Fは、電極に電圧が印加されると発熱し、電圧が印加されなくなると吸熱する性質を有する。なお、電気熱量材料114A−114Fは、電極に電圧が印加されると吸熱し、電圧が印加されなくなると発熱する性質を有するものを用いても良い。実施形態1では、電圧が印加されると5℃温度が上昇し、電圧が印加されなくなると5℃温度が下降する特性を持っている電気熱量材料を用いる。
実施形態1では、電気熱量材料として、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3(PMN)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PMN−PT)、Pb(Sc1/2Nb1/2)O3(PSN)、PbSc1/2Ta1/2O3(PST)のいずれかの材料を用いる。
また、実施形態1では、電極として、Al、Cu等の導電体を用いる。
低温側熱交換部120は、熱生成ユニット110の一端に位置する熱生成部材110Aと間隔を設けて隣り合っている。また、高温側熱交換部130は、熱生成ユニット110の一端に位置する熱生成部材110Fと間隔を設けて隣り合っている。
熱伝導ユニット140は、熱生成ユニット110内で隣り合う熱生成部材110A−110F同士の間、熱生成ユニット110の一端に位置する熱生成部材110Aと低温側熱交換部120との間及び熱生成ユニット110の他端に位置する熱生成部材110Fと高温側熱交換部130との間に配置した熱スイッチ140A−140Gを有する。
熱スイッチ140A−140Gは、たとえば、電界、磁場を印加することで熱伝導率が大きく変化する材料やデバイス、また、電気濡れ効果で液体金属の出し入れによる熱伝導率を変化させるものなどを用いることができる。実施形態1で用いる熱スイッチ140A−140Gは、電圧を印加すると、熱抵抗が極端に低下して、熱生成部材110A−110F同士の間で熱を移動させることができ、また、熱生成部材110Aと低温側熱交換部120との間及び熱生成部材110Fと高温側熱交換部130との間で熱を移動させることができるものである。なお、本発明の冷暖房装置で用いることができる熱スイッチの具体的な構成については後述する。
電圧印加部150は、熱生成ユニット110の電気熱量材料114A−114Fに取り付けられている電極112A−112Fに選択的に電圧を印加して電気熱量材料114A−114Fを活性化させる。実施形態1では、電気熱量材料114A−114Fが活性化されると活性化された電気熱量材料114A−114Fが発熱する。
熱スイッチ駆動部160は、熱伝導ユニット140の熱スイッチ140A−140Gに選択的に電圧を印加して熱スイッチ140A−140Gを活性化させる。熱スイッチ140A−140Gが活性化されると活性化された熱スイッチ140A−140Gの熱抵抗が低下する。なお、磁場を印加することで熱伝導率が大きく変化する材料やデバイスを熱スイッチとして用いるときには、熱スイッチ駆動部160は、磁場を印加して熱スイッチを活性化させる。また、電気濡れ効果で液体金属の出し入れによる熱伝導率を変化させるタイプの熱スイッチを用いるときには、熱スイッチ駆動部160は、電圧を印加して熱スイッチを活性化させる。
駆動制御部170は、電圧印加部150による各電極112A−112Fへの電圧の印加タイミング及び熱スイッチ駆動部160による各熱スイッチ140A−140Gの作動タイミングをそれぞれ制御することにより低温側熱交換部120と高温側熱交換部130との間で熱を伝導させる。
(冷暖房装置の動作)
図2から図6は、図1に示す冷暖房装置100の動作説明に供する図である。まず、電圧印加部150、熱スイッチ駆動部160及び駆動制御部170の基本的な動作を説明する。
電圧印加部150は、電気熱量材料114A、114C、114Eの電極112A、112C、112Eに同時に電圧を印加する。このときには、電圧印加部150は、電気熱量材料114B、114D、114Fの電極112B、112D、112Fには電圧を印加しない。また、電圧印加部150は、電気熱量材料114B、114D、114Fの電極112B、112D、112Fに同時に電圧を印加する。このときには、電圧印加部150は、電気熱量材料114A、114C、114Eの電極112A、112C、112Eには電圧を印加しない。つまり、電圧印加部150は、電極112A、112C、112Eのグループと電極112B、112D、112Fのグループの2つのグループに交互に電圧を印加する。
熱スイッチ駆動部160は、熱スイッチ140A、140C、140E、140Gに同時に電圧を印加する。このときには、熱スイッチ駆動部160は、熱スイッチ140B、140D、140Fには電圧を印加しない。また、熱スイッチ駆動部160は、熱スイッチ140B、140D、140Fに同時に電圧を印加する。このときには、熱スイッチ駆動部160は、熱スイッチ140A、140C、140E、140Gには電圧を印加しない。つまり、熱スイッチ駆動部160は、熱スイッチ140A、140C、140E、140Gのグループと熱スイッチ140B、140D、140Fのグループの2つのグループに交互に電圧を印加する。
駆動制御部170は、電圧印加部150が電極112A、112C、112Eのグループに電圧を印加するタイミングと、熱スイッチ駆動部160が熱スイッチ140B、140D、140Fのグループに電圧を印加するタイミングとを同期させる。また、駆動制御部170は、電圧印加部150が電極112B、112D、112Fのグループに電圧を印加するタイミングと、熱スイッチ駆動部160が熱スイッチ140A、140C、140E、140Gのグループに電圧を印加するタイミングとを同期させる。
次に、冷暖房装置100の全体的な動作を説明する。まず、図2に示すように、初期の状態では全ての熱生成部材110A−110F、低温側熱交換部120及び高温側熱交換部130の温度が、たとえば室温の20℃になっている。
次に、図3に示すように、電圧印加部150が電極112B、112D、112Fのグループに電圧を印加(電極を実線で表示)し、熱スイッチ駆動部160が熱スイッチ140A、140C、140E、140Gのグループに電圧を印加(熱スイッチを実線で表示)する。
図3の状態では、電圧を印加しない電気熱量材料114A、114C、114Eの温度が20℃から5℃下がって15℃に低下し、電圧を印加した電気熱量材料114B、114D、114Fの温度が20℃から5℃上がって25℃に上昇する。図3の状態では、熱スイッチ140A、140C、140E、140Gが活性化されているので、熱スイッチ140A、140C、140E、140Gを介して温度の高い方から温度の低い方に熱が移動する。つまり、低温熱交換部120から電気熱量材料114Aに、電気熱量材料114Bから114Cに、電気熱量材料114Dから114Eに、電気熱量材料114Fから高温側熱交換部130にそれぞれ熱が移動する。
図3の矢印のように熱が移動すると、図4に示すように、熱生成ユニット110の一端に位置する電気熱量材料114Aと低温側熱交換部120の温度が18℃になり、熱生成ユニット110の他端に位置する電気熱量材料114Fと高温側熱交換部130の温度が22℃になる。電気熱量材料114B−114Eの温度は熱の移動により20℃になる。
次に、図5に示すように、電圧印加部150が電極112A、112C、112Eのグループに電圧を印加(電極を実線で表示)し、熱スイッチ駆動部160が熱スイッチ140B、140D、140Fのグループに電圧を印加(熱スイッチを実線で表示)する。
図5の状態では、電圧を印加しない電気熱量材料114B、114Dの温度が5℃下がって15℃に、114Fの温度が5℃下がって17℃に、電圧を印加した電気熱量材料114Aの温度が5℃上がって23℃に、114C、114Eの温度が5℃上がって25℃になる。図5の状態では、熱スイッチ140B、140D、140Fが活性化されているので、熱スイッチ140B、140D、140Fを介して温度の高い方から温度の低い方に熱が移動する。つまり、電気熱量材料114Aから114Bに、電気熱量材料114Cから114Dに、電気熱量材料114Eから114Fにそれぞれ熱が移動する。
図5の矢印のように熱が移動すると、図6に示すように、熱生成ユニット110の電気熱量材料114Aと114Bの温度が19℃になり、低温側熱交換部120の温度が18℃になる。また、熱生成ユニット110の電気熱量材料114Eと114Fの温度が21℃になり、高温側熱交換部130の温度が22℃になる。電気熱量材料114C、114Dの温度は20℃になる。
以上のように、駆動制御部170が電圧印加部150及び熱スイッチ駆動部160の電圧の印加タイミングを一定の周期で繰り返し制御することによって、電気熱量効果により得られた熱が低温側熱交換部120から高温側熱交換部130に移動する。
図7は、実施形態1に係る冷暖房装置の効果を示すグラフである。図7のグラフに示すように、冷暖房装置100が動作を開始した後の比較的初期時には、低温側熱交換部120と高温側熱交換部130との間の温度差は小さい。しかし、時間が経過するにしたがって低温側熱交換部120と高温側熱交換部130との間の温度差が次第に大きくなっていく。最終的には、長時間経過後の直線で示すように、低温側熱交換部120と高温側熱交換部130との間の温度差が最大になる。この状態で、低温側熱交換部120の熱を利用して、たとえば室内の温度を下げることができ、高温側熱交換部130の熱を利用して、たとえば室内の温度を上げることができる。
以上が、実施形態1に係る冷暖房装置100の構成と動作である。実施形態1に係る熱生成部材110A−110Fは、電気熱量材料114A−114Fによる電気熱量効果を最大限に発揮させるために、電極112A−112Fの配置に工夫を凝らしている。また、電気熱量材料114A−114Fから効率的に熱が移動するように、熱生成部材110A−110Fと熱スイッチ140A−140Gの接続構造に工夫を凝らしている。以下に、実施形態1に係る冷暖房装置100が用いる熱生成部材110A−110Fの構成について詳細に説明する。
(熱生成部材の構成)
実施形態1に係る熱生成部材の構成を詳細に説明する。図8は、実施形態1に係る熱生成部材の断面図である。
実施形態1に係る熱生成部材110Aは、3つの電極112Aによって2つの電気熱量材料114Aを挟み込んでいる。換言すれば、実施形態1に係る熱生成部材110Aは、電極112Aと電気熱量材料114Aとをそれらの厚み方向に交互に積層した構造を有する。なお、熱生成部材110B−110Fの構成も熱生成部材110Aの構成と同一である。
この場合、電気熱量材料114Aに電気熱量効果を生じさせるためには、図8に示すように、3つの電極112Aにその積層方向に交互に+(−)、−(+)の極性の電圧を印加する。たとえば、図7の積層方向最上部に位置する電極112Aに+の電圧を印加したら、中間に位置する電極112Aに−の電圧を印加し、積層方向最下部に位置する電極112Aに+の電圧を印加する。電圧は3つの電極112Aに同期して印加する。この電圧の印加により、2つの電気熱量材料114Aが発熱する。
なお、図8に示す熱生成部材110Aは、3つの電極112Aと2つの電気熱量材料114Aで5層構造としてあるが、これに限られず、4つの電極112Aと3つの電気熱量材料114Aで7層構造としても良いし、さらに多くの層構造としても良い。
このように、複数の電極で複数の電気熱量材料を挟む構造を採用すると、電気熱量材料に印加される電界を大きくできることから、電気熱量材料の電気熱量効果を最大限に引き出すことが可能となる。したがって、冷暖房装置の小型化及び軽量化に寄与する。
(熱生成部材の構成の変形例1)
図9は、実施形態1の変形例1に係る熱生成部材の断面図である。
実施形態1の変形例1に係る熱生成部材110Aは、2つのくし型電極112によって電気熱量材料114Aを挟み込んでいる。具体的には、電気熱量材料114A内にくし状の内側電極112Aaを埋設し内側電極112Aaを外側電極112Abで電気熱量材料114Aの外側から束ねた構造を有する。なお、熱生成部材110B−110Fの構成も熱生成部材110Aの構成と同一である。
この場合、電気熱量材料114Aに電気熱量効果を生じさせるためには、図9に示すように、2つのくし形電極112に+(−)、−(+)の極性の電圧を印加する。図9のようなくし型電極112を用いると、外側電極112Ab間、及び、内側電極112Aa間でそれぞれ電気熱量材料114Aに万遍なく電気熱量効果を生じさせることができる。このため、電気熱量材料114Aの電気熱量効果をより多く生じさせることができる。
図9では、熱生成部材110Aの構造の理解を容易にするために、2つのくし型電極112の厚みを厚く描いている。実際には、2つの電極112Aの厚みはかなり薄い。2つの電極112Aの厚みを薄くすればするほど、その分電気熱量材料114Aの厚みを増すことができるので、電気熱量材料114Aの電気熱量効果をより多く生じさせることができる。
また、くし型電極112の内側電極112Aaの形状は図9に示すような矩形状には限定されない。たとえば、三角形状であっても良い。さらに、外側電極112Abの内表面側(電気熱量材料114A側)、内側電極112Aaの外表面側(電気熱量材料114A側)に様々な形状の突起を形成しても良い。
図10は、変形例1に係る熱生成部材と熱スイッチとの接続構造を示す斜視図である。
熱生成部材と熱スイッチとの接続構造を、熱生成部材110B、熱スイッチ140B、140Cを例示して説明する。
図10に示す熱生成部材110Bの構成は、図9に示す熱生成部材110Aの構成と同一である。熱生成部材110Bを熱スイッチ140B及び140Cと接続するとき、熱生成部材110Bの外側電極112Bbは図示のように上下方向に位置させる。熱生成部材110Bの外側電極112Bbをこのように位置させて、熱生成部材110Bを熱スイッチ140B及び140Cで両側から挟み込む。つまり、熱スイッチ140B、140Cは、熱生成部材110Bの、外側電極112Bbが配置されていない面の内、内側電極112Baが配置されている面に対向するように配置される。
熱生成部材110Bと熱スイッチ140B及び140Cとの接続構造を上記のようにすることによって、電気熱量材料114Bで生成された熱が、くし型電極112に邪魔されることなく熱スイッチ140B及び140Cに効率的に伝達される。
なお、熱生成部材110Aと熱スイッチ140A、140Bとの接続構造、熱生成部材110C−110Eと熱スイッチ140C−140Fとの接続構造、熱生成部材110Fと熱スイッチ140F、140Gとの接続構造も熱生成部材110Bと熱スイッチ140B及び140Cとの接続構造と同一である。
以上のように、くし型電極112を用いて熱生成部材を構成し、熱生成部材を図10に示すように隣り合う熱スイッチと接続することによって、電気熱量材料の電気熱量効果をより多く生じさせることができ、電気熱量効果で生じた熱を効果的に伝達できる。したがって、冷暖房装置の小型化及び軽量化に寄与する。
(熱生成部材の構成の変形例2)
図11は、実施形態1の変形例2に係る熱生成部材の断面図である。変形例2に係る熱生成部材110Aは、図9に示す実施形態1の変形例1に係る熱生成部材110Aを断熱する機能を備える。すなわち、外側電極112Abの外表面に断熱絶縁材料116Aを配置している。
断熱絶縁材料116Aは、たとえば、グラスウールで構成する。しかし、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム等の断熱性材料を使用しても良い。断熱絶縁材料116Aが形成する断熱層は、1つの材料で単層構造としても良く、複数の材料を用いて複層構造としても良い。
外側電極112Abの外表面に断熱絶縁材料116Aを配置すると、電気熱量材料114Aで生成された熱が外側電極112Abから外側に伝達されるのを防止することができ、熱生成部材110Aからの熱を無駄なく伝達させることができる。
(熱生成部材の構成の変形例3)
図12は、実施形態1の変形例3に係る熱生成部材の断面図である。変形例3に係る熱生成部材110Aは、図9に示す実施形態1の変形例1に係る電気熱量材料114Aを内部で断熱する機能を有する。すなわち、外側電極112Abの内表面及び内側電極112Aaの外表面に断熱絶縁材料116Aを配置している。
外側電極112Abの内表面及び内側電極112Aaの外表面に断熱絶縁材料116Aを配置すると、電気熱量材料114Aで生成された熱が外側電極112Ab及び内側電極112Aaを介して外部に伝達するのを防止することができ、熱生成部材110Aからの熱を無駄なく伝達させることができる。
この場合の断熱絶縁材料116Aの厚みはできるだけ薄くすることが望ましい。電気熱量材料114Aの体積が減少すると電気熱量効果で得られる熱が少なくなるからである。断熱性を確保しつつ所望の電気熱量効果を得るためには、変形例2と変形例3を組み合わせることが好ましい。
(熱生成部材の構成の変形例4)
図13は、実施形態1の変形例4に係る熱生成部材の断面図である。変形例4に係る熱生成部材110Aは、図9に示す実施形態1の変形例1に係る熱生成部材110Aにおいて、図10のように接続する熱スイッチ140B及び140Cへの熱伝導性を改善する。
実施形態1の変形例4に係る熱生成部材110Aは、電気熱量材料114Aに埋設された内側電極112Aa同士の間に、内側電極112Aaに沿わせるようにして、熱伝導部材118Aを配置する。
なお、熱伝導部材118Aの材料としては、アルミニウム、銅、カーボンナノチューブ、グラフェンなどを用いる。
この場合の熱伝導部材118Aの厚みはできるだけ薄くすることが望ましい。電気熱量材料114Aの体積が減少すると電気熱量効果で得られる熱が少なくなるからである。
熱伝導部材118Aを電気熱量材料114A内に埋設させると、電気熱量材料114Aが生成した熱を熱伝導部材118Aが効率的に吸収し、速やかに取り出すことができる。したがって、電気熱量材料114Aが生成した熱及び熱伝導部材118Aが吸収した熱を外部に逃がすことなく、図10のように接続する熱スイッチ140B及び140Cに効率的に伝達できる。
以上のように、実施形態1に係る冷暖房装置100は、熱生成部材110A−110Fが以上のような構成を有しているので、電気熱量材料114A−114Fが生成した熱を熱スイッチ140A−140Gに無駄なく効率的に伝達させることができる。その結果、電気熱量材料114A−114Fの電気熱量効果を最大限に引き出すことが可能となる。したがって、冷暖房装置の小型化及び軽量化に寄与する。
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係る冷暖房装置について説明する。実施形態2に係る冷暖房装置の構成及び動作は、実施形態1に係る冷暖房装置100の構成及び動作と同一である。
しかし、実施形態2に係る熱生成部材の構成は実施形態1に係る熱生成部材の構成とは異なる。次に、実施形態2に係る冷暖房装置が用いる熱生成部材の構成について詳細に説明する。
(熱生成部材の構成)
実施形態2に係る熱生成部材の構成を詳細に説明する。図14は、実施形態2に係る熱生成部材の断面図である。
実施形態2に係る熱生成部材110Aは、2つの電極112Aによって電気熱量材料114Aを挟み込んでいる。換言すれば、熱生成部材110Aは、電気熱量材料114Aを対向する両側の面から電極112Aが挟んでいる構造を有する。なお、熱生成部材110B−110Fの構成も熱生成部材110Aの構成と同一である。
この場合、電気熱量材料114Aに電気熱量効果を生じさせるためには、図14に示すように、2つの電極112Aの積層方向に+(−)、−(+)の極性の電圧を印加する。この電圧の印加により、電気熱量材料114Aが発熱する。
図14に示すような構造とすることにより、電気熱量材料114Aの構造が単純になり、製造がしやすくなる。
図15は、実施形態2に係る熱生成部材と熱スイッチとの接続構造を示す斜視図である。
熱生成部材と熱スイッチとの接続構造を、熱生成部材110B、熱スイッチ140B、140Cを例示して説明する。
図15に示す熱生成部材110Bの構成は、図14に示す熱生成部材110Aの構成と同一である。熱生成部材110Bを熱スイッチ140B及び140Cと接続するとき、熱生成部材110Bの電極112Bは図示のように上下方向に位置させる。熱生成部材110Bの電極112Bをこのように位置させて、熱生成部材110Bを熱スイッチ140B及び140Cで両側から挟み込む。つまり、熱スイッチ140B、140Cは、電極112Bが配置されていない熱生成部材110Bの対向する面に配置される。
熱生成部材110Bと熱スイッチ140B及び140Cとの接続構造を上記のようにすることによって、電気熱量材料114Bで生成された熱が熱スイッチ140B及び140Cに効率的に伝達される。
なお、熱生成部材110Aと熱スイッチ140A、140Bとの接続構造、熱生成部材110C−110Eと熱スイッチ140B−140Fとの接続構造、熱生成部材110Fと熱スイッチ140F、140Gとの接続構造も熱生成部材110Bと熱スイッチ140B及び140Cとの接続構造と同一である。
(熱生成部材の構成の変形例1)
図16は、実施形態2の変形例1に係る熱生成部材の断面図である。変形例1に係る熱生成部材110Aは、図14に示す実施形態2に係る熱生成部材110Aを断熱する機能を備える。すなわち、電極112Aの外表面に断熱絶縁材料116Aを配置している。
断熱絶縁材料116Aは、たとえば、グラスウールで構成する。しかし、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム等の断熱性材料を使用しても良い。
電極112Aの外表面に断熱絶縁材料116Aを配置すると、電気熱量材料114Aで生成された熱が電極112Aから外側に伝達されるのを防止することができ、熱生成部材110Aからの熱を無駄なく伝達させることができる。
(熱生成部材の構成の変形例2)
図17は、実施形態2の変形例2に係る熱生成部材の断面図である。変形例2に係る熱生成部材110Aは、図16に示す実施形態2の変形例1に係る電気熱量材料114Aを内側で断熱する機能を有する。すなわち、電極112Aの内表面に断熱絶縁材料116Aを配置している。
電極112Aの内表面に断熱絶縁材料116Aを配置すると、電気熱量材料114Aで生成された熱が電極112Aを介して外部に伝達するのを防止することができ、熱生成部材110Aからの熱を無駄なく伝達させることができる。
(熱生成部材の構成の変形例3)
図18は、実施形態2の変形例3に係る熱生成部材の断面図である。変形例3に係る熱生成部材110Aは、図14に示す実施形態2に係る熱生成部材110Aにおいて、図15のように接続する熱スイッチ140B及び140Cへの熱伝導性を改善する。
実施形態2の変形例3に係る熱生成部材110Aは、電気熱量材料114Aに埋設された熱伝導部材118Aを配置する。熱伝導部材118Aを電気熱量材料114A内に埋設させると、電気熱量材料114Aが生成した熱を熱伝導部材118Aが効率的に吸収し、速やかに取り出すことができる。
なお、熱伝導部材118Aの材料としては、アルミニウム、銅、カーボンナノチューブ、グラフェンなどを用いる。
電気熱量材料114Aが生成した熱及び熱伝導部材118Aが吸収した熱は、図14のように接続する熱スイッチ140B及び140Cに効率的に伝達される。
以上のように、実施形態2に係る冷暖房装置は、熱生成部材110A−110Fが以上のような構成を有しているので、電気熱量材料114A−114Fが生成した熱を熱スイッチ140A−140Gに無駄なく効率的に伝達させることができる。
実施形態1及び2に係る冷暖房装置に用いる熱スイッチ140A−140Gは、アルミニウム、銅、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの材料を用いて形成され、電圧が印加されると活性化して熱抵抗が低下し、電圧が印加されていないときには不活性化して熱抵抗が大きくなる。
実施形態1及び2では、電圧を印加すると熱抵抗が低下するタイプの熱スイッチを例示したが、熱スイッチとしては、下記に示すような様々なタイプのものを使用することができる。
図19から図31は、本発明に係る冷暖房装置に用いることができる様々な熱スイッチの形態を示す。熱スイッチは、たとえば、電気、磁場を印加することで熱伝導率が大きく変化する材料やデバイス、また、電気濡れ効果で液体金属の出し入れによる熱伝導率を変化させるものなどがある。
<熱スイッチの形態1>
図19は熱スイッチの形態1を説明するための説明図である。図19に示す熱スイッチは、磁場を印加することで熱伝導率が大きく変化する材料を用いている。
図19に示すように、熱生成部材110Aの対向する両面に熱スイッチ140Aと140Bが配置されている。熱スイッチ140A、140Bは、熱生成部材110Aの対向する両面に接合または接着によって一体化する。熱生成部材110Aの両隣には低温側熱交換部120と熱生成部材110Bが存在する。熱スイッチ140Aは低温側熱交換部120と熱生成部材110Aに接合または接着され、熱スイッチ140Bは熱生成部材110Aと熱生成部材110Bに接合または接着される。したがって、低温側熱交換部120、熱スイッチ140A、熱生成部材110A、熱スイッチ140B、熱生成部材110Bは一体化する。
熱スイッチ140Aと140Bは、9テスラ程度の磁気が印加されると、印加される前よりも熱伝導率が大きくなる。熱伝導率の大きさの変化は、100倍から3000倍の範囲である。したがって、熱スイッチ140Aと140Bは、磁気が印加されなければ熱伝導率は極めて小さくなり、接続されている低温側熱交換部120、熱生成部材110A、熱生成部材110Bの間では熱を伝導しない。一方、熱スイッチ140Aと140Bは、磁気が印加されると熱伝導率は極めて大きくなり、接続されている低温側熱交換部120、熱生成部材110A、熱生成部材110Bの間で熱が伝導する。
図19に示すように、熱スイッチ140Aと140Bは、磁気の印加、除去によって絶縁体、金属に相転移する転移体を含む。転移体は、少なくとも1種類以上の電荷整列絶縁体を含む。したがって、転移体に磁気を印加すると金属に相転移して熱伝導率が相対的に大きくなる。また、転移体から磁気を除去すると絶縁体に相転移して熱伝導率が相対的に小さくなる。
図19の場合、熱スイッチ140Aには永久磁石2による磁気が印加されていないので、熱スイッチ140Aは絶縁体としての性質を持ち、伝導電子が流れ難くなって、低温側熱交換部120と熱生成部材110Aとの間では熱が伝導しない。一方、熱スイッチ140Bには、永久磁石2によって磁気が印加されているので、熱スイッチ140Bは金属としての性質を持ち、伝導電子が流れやすくなって、熱生成部材110Aと熱生成部材110Bとの間で熱が伝導する。一般的に固体の熱伝導は、フォノンおよび伝導電子が担っていることが知られている。すなわち、ここでは伝導電子の流れを磁気によって制御している。
<熱スイッチの形態2>
図20は熱スイッチの形態2を説明するための説明図である。
熱スイッチの形態2に係る熱スイッチ140Bは、熱生成部材110Aと110Bに取り付ける電極31A、31Bと、電極31A、31Bの間に取り付ける金属/絶縁相転移体32とによって構成される。電極31Aの一方の面は熱生成部材110Aの一方の面に接合または接着によって取り付ける。電極31Bの一方の面は熱生成部材110Bの一方の面に接合または接着によって取り付ける。同様に、金属/絶縁相転移体32の両面は電極31Aと電極31Bの他方の面に接合または接着によって取り付ける。したがって、熱生成部材110A、熱スイッチ140B、熱生成部材110Bは一体化される。
電極31A、31Bは導電性の良好なアルミニウムや銅などの金属(金属単体または合金でも良い)を用いる。熱生成部材110A、110Bの間では電極31Aと31Bを介して熱が伝導するので、電極31Aと31Bは熱伝導率のより大きい金属を用いることが好ましい。
電極31A、31Bを熱生成部材110A、110Bおよび金属/絶縁相転移体32に接着する接着剤は、熱伝導率の大きいものを用いる。たとえば、接着剤に金属粉を接着性が妨げられない程度に混ぜ込んだ熱伝導性を改善した接着剤を用いる。
金属/絶縁相転移体32は、電圧を印加すると絶縁体から金属に相転移し、熱伝導率が大きくなり、逆に、電圧を遮断すると金属から絶縁体に相転移し、熱伝導率が小さくなる性質を持つものである。金属と絶縁体の相互間の相転移を示す絶縁体は、無機酸化物モット絶縁体または有機モット絶縁体がある。
無機酸化物モット絶縁体は少なくとも遷移金属元素を含む。モット絶縁体としては、LaTiO3、SrRuO4、BEDT−TTF(TCNQ)が知られている。金属と絶縁体の相互間の相転移が可能なデバイスとして現在知られているものは、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子がある。熱は、熱電子および格子結晶によって移送することができる。ZnO単結晶薄膜電気二重層FETおよびTMTSF/TCNQ積層型FET素子は、電圧を印加すると熱電子が活発に移動するようになる性質を利用する。ここでは、金属/絶縁相転移体32に、少なくとも遷移金属元素を含む無機酸化物モット絶縁体、有機モット絶縁体、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子など、電圧の印加除去によって熱伝導率が大きく変化するものを用いる。
図20に示すように、電極31Aと31Bとの間に直流電圧Vを印加すると、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率が相対的に大きくなって、熱生成部材110Aと110Bとの間で熱の移動が起こる。一方、電極31Aと31Bとの間の直流電圧Vを除去すると、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率が相対的に小さくなって、熱生成部材110Aと110Bとの間の熱の移動が阻止される。したがって、熱スイッチ130は、電圧の印加、除去によって熱の移動を制御する熱スイッチとなる。
<熱スイッチの形態3>
図21は熱スイッチの形態3を説明するための説明図である。
熱スイッチの形態3に係る熱スイッチ140Bは、熱スイッチの形態2で説明した熱スイッチ140B(図20)に、さらに補助電極33A、33Bを追加している。その他の構成および動作は熱スイッチの形態2と同様である。
補助電極33Aと33Bは、金属/絶縁相転移体32に接合または接着によって取り付ける。補助電極33Aと33Bは熱伝導性を考慮しなくても良い。また補助電極33Aと33Bを金属/絶縁相転移体32に接着する接着剤も熱伝導性を考慮しなくても良い。補助電極33Aと33Bと接着剤には、熱電子が通過しないからである。
補助電極33Aと33Bは、電極31Aと31Bに対して、直交方向に電圧を印加する。補助電極33Aと33Bとの間に直流電圧を印加すると、金属/絶縁相転移体32内の電子の分布が補助電極33Aと33Bの方向に偏る。このため、熱生成部材110Aと110Bとの間を移動する熱電子の抵抗が減少し、熱電子が移動しやすくなる。つまり、補助電極33Aと33Bを設けることで、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率をより大きくすることができる。
<熱スイッチの形態4>
図22は熱スイッチの形態4を説明するための説明図である。
熱スイッチの形態4に係る熱スイッチ140Bは、電極31Aと31Bを、金属/絶縁相転移体32と熱生成部材110A、110Bとの間には設けずに、金属/絶縁相転移体32内を移動する熱電子の移動方向に対して直交する方向から電圧が印加できるように設ける。その他の構成および動作は熱スイッチの形態2と同様である。
したがって、金属/絶縁相転移体32は、熱生成部材110Aと110Bに直接取り付ける。金属/絶縁相転移体32と熱生成部材110A、110Bとは、接合または接着剤で取り付ける。このときに用いる接着剤は、熱伝導性の大きいものを用いる。
電極31Aと31Bは、金属/絶縁相転移体32に接合または接着によって取り付ける。電極31Aと31Bは熱伝導性を考慮しなくても良い。また電極31Aと31Bを金属/絶縁相転移体32に接着する接着剤も熱伝導性を考慮しなくても良い。電極31Aと31Bと接着剤には、熱電子が通過しないからである。
電極31Aと31Bは、金属/絶縁相転移体32内を移動する熱電子の移動方向に対して、直交方向に電圧を印加する。電極31Aと31Bとの間に直流電圧を印加すると、金属/絶縁相転移体32内の電子の分布が電極31Aと31Bの方向に偏って相転移する。このため、熱生成部材110Aと110Bとの間を移動する熱電子の抵抗が減少し、熱電子が移動しやすくなる。
熱スイッチの形態2、3の場合には、熱電子の通過方向に電極31A、31Bが存在するので、熱電子にとっては電極31A、31Bが障害物となる。このため、電極31A、31Bの存在は熱伝導率を小さくする方向に働く。熱スイッチの形態4の場合には、金属/絶縁相転移体32を熱生成部材110Aと110Bに直接取り付けるので、電極31A、31Bの存在は熱伝導率を下げる方向には働かない。したがって、本実施形態に係る熱スイッチ30の熱伝導率は、熱スイッチの形態2、3の場合と比較して、大きくなる。
<熱スイッチの形態5>
図23は熱スイッチの形態5を説明するための説明図である。
熱スイッチの形態5に係る熱スイッチ140Bは、金属/絶縁相転移体(32)を熱生成部材110Aと110Bに直接取り付け、熱生成部材110Aと110Bに直流電圧を印加できるようにしたものである。金属/絶縁相転移体と熱生成部材110A、110Bとは接合または接着剤で取り付ける。接着剤は熱伝導率の大きいものを用いる。その他の構成および動作は熱スイッチの形態2と同様である。
熱生成部材110Aと110Bを電極の代わりに用いると、構造が単純化され、また、部品点数の減少と製造工程の簡略化が図れる。また、熱スイッチの形態4の場合と同様に、熱スイッチ140A、140Bの熱伝導率は、熱スイッチの形態2、3の場合と比較して、大きくなる。
<熱スイッチの形態6>
図24は熱スイッチの形態6を説明するための説明図である。
熱スイッチの形態6は、熱スイッチ140Bに絶縁体34を追加している。具体的には、図24に示すように、熱電子の移動を妨げる絶縁体34を電極31Aと金属/絶縁相転移体32との間に設けている。図24では、図20の構成に絶縁体34を追加しているが、図21〜23の構成に対して絶縁体34を追加しても良い。その他の構成および動作は熱スイッチの形態2と同様である。
絶縁体34は、熱電子以外の電子の移動を阻止するために設ける。電極31Aと31Bとの間に直流電圧を印加すると、電極31Aと31Bとの間に電流が流れるが、本来移動してほしい熱電子に加え、熱輸送に関与しない電子を過剰に移動させてしまう可能性がある。この熱輸送に関与しない電子の過剰の移動を防ぐために、絶縁体34を金属/絶縁相転移体32に取り付けることによって、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率の低下を防止できる。
<熱スイッチの形態7>
図25は熱スイッチの形態7を説明するための説明図である。
熱スイッチの形態7は、熱スイッチの形態4に係る図22の熱スイッチ140Bに分極体35を追加している。具体的には、電極31Aと金属/絶縁相転移体32との間に熱電子の移動を促す分極体35を配置する。分極体35は、誘電体およびイオン性液体のうちの少なくとも1種類以上から形成する。その他の構成および動作は熱スイッチの形態4と同様である。
分極体35は、金属/絶縁相転移体32内を移動する電子を取り出したり、金属/絶縁相転移体32内に電子を注入したりする。このため、金属/絶縁相転移体32内の電子の分布状態が変化して、熱電子が流れやすくなる。分極体35を配置することで、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率をより大きくすることができる。
熱スイッチの形態2〜7のように、電圧の印加、除去によって熱伝導率が変化する熱スイッチ140Bを用いると、隣接する磁性体との熱伝導を、電圧の印加、除去だけで断続させることができる。したがって、熱スイッチ自身を移動させて、熱交換器と磁性体の間、磁性体同士の間を挿脱させる必要がなくなるため、熱スイッチの耐久性が向上し、同時に信頼性も向上する。
<熱スイッチの形態8>
図26は熱スイッチの形態8における熱スイッチの構成を説明するための熱スイッチ部分の断面図である。図27は熱スイッチの形態8における熱スイッチの構成を説明するための熱スイッチ部分の平面図(図26の矢視Aの図)である。
本形態の熱スイッチは、電気濡れ(エレクトロウェッティング)効果を利用したものである。ここでは、熱生成部材110Aと110Bとの間に設けられた熱スイッチ140Bを例に説明する。
熱スイッチ140Bは、熱生成部材110Aに接する第1電極構造体71と、熱生成部材110Bに接する第2電極構造体81と、第1電極構造体71および第2電極構造体81の間の隙間90と、この隙間90に出し入れされる液体金属95とを有する。また、隙間90の一端には、液体金属95を収容する液溜まり77を有する。なお、隙間90において、液溜まり77を設けた一端の反対側の端部は開放端92となっている。
第1電極構造体71と第2電極構造体81は、同じ構造を有していて、隙間90を中心線とする対称構造である。第1電極構造体71は、熱生成部材110A側から順に、第1電極72、誘電体73、第2電極74、撥液コート層75を有する。第2電極構造体81も同様に、熱生成部材110B側から順に、第1電極72、誘電体73、第2電極74、および撥液コート層75を有する。つまり、隙間90を中心としてみれば、第1電極構造体71も第2電極構造体81も、隙間90側から順に撥液コート層75、第2電極74、誘電体73、第1電極72となるように配置されている。
熱生成部材全体の下部には、下部基板76を有する。この下部基板76内に、隙間90に連通した液溜まり77を有している。
第2電極74は、液溜まり77内部にまで入っていて、液体金属95と電気的に導通することができるようになっている。一方、第1電極72は液溜まり77からは絶縁されている。すなわち、第1電極72は液体金属95と絶縁されているのである。
これにより、第1電極72と第2電極74は、その間にある誘電体73を介したキャパシター構造となっていて、これがそのまま液体金属95と第1電極72のキャパシターとして作用することになる(詳細後述)。
第1電極構造体71と第2電極構造体81の上部には、それぞれ第1および第2電極72、74から導かれた配線が形成される上部基板40を有する。上部基板40は、第1電極構造体71側と第2電極構造体81側とで、隙間90の延長によって分離、絶縁され、第1電極構造体71および第2電極構造体81と同様に隙間90によって対称な同じ構造である。上部基板40は、それぞれ第1電極72からの第1配線41と、第2電極74からの第2配線42が絶縁層43によって絶縁されている。第1および第2配線41および42は、この熱スイッチ140Bを制御するための制御装置(不図示)に接続されている。そして制御装置が、磁気の移動に同期して、この熱スイッチ140Bによる熱伝達状態と断熱状態を切り替えている。
以下さらにこの熱スイッチ140B各部を詳細に説明する。
第1電極72および第2電極74は、たとえば、銅、アルミニウムなど、導電性のものであれば、特に限定されない。第1電極72および第2電極74の形状はともに同じであり、隙間90の大きさ(隙間の間隔を除く)と一致する電極板となっている。
誘電体73は、第1電極72と第2電極74の間にあって、たとえば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜など、誘電体73であれば特に限定されない。誘電体73の形状は第1電極72および第2電極74と同じ大きさであり、第1電極72と第2電極74が短絡しない形状となっている。
撥液コート層75は、液体金属95に対して撥液性を有する。また、撥液コート層75は、導電性であることが好ましい。このような撥液コート層75に用いる材料とは、たとえば、導電性酸化膜、導電性ガラス材、導電性セラミックス材、グラフェンなどが好ましい。
このように、撥液コート層75が液体金属95に対して撥液性となっていることで、電気を印加していない状態では、液体金属95が容易に液溜まり77内に収納されるようになる。また、導電性を有することで、第2電極74に流した電気を液体金属95に直接流すことができて効率がよい。また、第2電極74に電気を流して液体金属95を第1電極構造体71と第2電極構造体81の間の隙間90に充填する際に、液溜まり77内を空にできるので、液体金属95使用量を少なくすることができる。
なお、液溜まり77内に常に液体金属95の一部が残留して、第2電極74から液体金属95に電気を流すことができれば、撥液コート層75は撥液性を有するだけで、導電性のないものであってもよい。また、第2電極74の隙間90側の表面に極薄いシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの絶縁性の撥液性部材を形成してもよい。極薄いシリコン酸化膜やシリコン窒化膜であれば、これらが介在していても第2電極74に電気を流したときにトンネル効果によって、液体金属95に電気を流すことができる。
このような部材によって構成される撥液コート層75の形状は第2電極74を覆う大きさである。
さらに、第2電極74自体を導電性で、かつ、その表面が撥液性となる部材を用いてもよい。つまり第2電極74自体を導電性酸化膜、導電性ガラス材、導電性セラミックス材、グラフェンなどによって形成するのである。この場合、第2電極74の隙間側表面に、撥液コート層を設ける必要がなくなる。
下部基板76は、少なくとも第1および第2電極72、74との間で絶縁されているものであればよい。たとえば、全体が絶縁性を有する材料として、エポキシ基板、フェノール基板、ABS樹脂基板などが用いられる。そして、これら基板に液溜まり77を設ける。この場合、液体金属95を液溜まり77内に収納しやすいように、液溜まり内壁面を親液性にする。親液性を持たせるためには、液溜まり壁面に金属膜79(たとえば銅、ニッケル、アルミニウムなどの金属膜)を形成することが好ましい。
また、下部基板76としては、たとえばシリコン基板を用いることもできる。シリコン基板を用いた場合、まず液溜まり77の形成後、液溜まり77内部の壁面表面を含めて、すべての表面をシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などにより絶縁層(不図示)を形成する。そして、液溜まり77内に親液性を持たせるために金属膜79(たとえば銅、ニッケル、アルミニウムなどの金属膜、さらにシリコン基板とした場合は導電性を付与したポリシリコンなどでもよい)を形成することが好ましい。
液溜まり77内に形成した金属膜79は第2電極74と導通するようにしてもよい。
なお、液溜まり77内の金属膜79はなくてもよい。上述したとおり、液溜まり77内の金属膜79は、液溜まり77内壁面を親液性にすることで液体金属95が下がったときに、液体金属95が液溜まり77内に収納されやすくするためのものである。このため、液溜まり77の大きさが十分に大きく、液溜まり77内壁面が親液性でなくても液体金属95の収納がスムーズにゆく場合には金属膜79はなくてもよい。
さらに、下部基板76の液溜まり77には、液体金属95が漏れ出ない程度の空気穴93が設けられている(空気穴93の機能については後述)。
上部基板40は、第1電極構造体71側と第2電極構造体81側で同じ構成であり、第1電極72と電気的に接続された第1配線41と、第2電極74と電気的に接続された第2配線42と、これらを絶縁分離する絶縁層43を有する。また、すでに説明したように、第1電極構造体71側と第2電極構造体81側は隙間90によって絶縁、分離されているため、当然に上部基板40も第1電極構造体71側と第2電極構造体81側でそれぞれ分離して同じ構成となるように設けられている。また、各第2配線42の隙間90に面した部分は、撥液コート層75が形成されている。また、隙間90部分は、上から見ると、図27に示すように、撥液コート層75が隙間90を取り囲むように形成されており、隙間90の側面部分75aから液体金属95が漏れないようになっている。なお、隙間90の側面部分75aには、図示しないが、撥液コート層75の外側に、隙間の側面部分(または熱生成部材110Aの側面を含めた側面全体)を覆う構造体(不図示)があってもよい。このような構造体は、たとえば樹脂やセラミックなど非磁性、非導電性の部材が好ましい。
上部基板40で配線が対向した部分(図26中の丸で囲った部分)は、開放端92となっていて、液体金属95の移動によって隙間90内の圧力が上ったり下がったりしないようになっている。このため液体金属95は、スムーズに隙間90内を移動できる。
上部基板40に用いられる配線41、42は、第1および第2電極72および74と同じく、銅、アルミニウムなどである。一方、絶縁層43は、少なくとも誘電体73よりも誘電率の低い絶縁体(絶縁材)が好ましい。
配線41、42は、第1および第2電極72および74に対して電圧を印加するための配線である。このため配線が対向した部分(図26中の丸で囲った開放端92近傍部分)でも、第1および第2電極72および74と同じ電圧がかかる。そうすると、上部基板40の絶縁層113として誘電率の高い材料が用いられていると、この部分でも液体金属95と配線42との間がキャパシター構造となってしまう。そうすると液体金属95が上昇してきたときに、その勢いで、丸で囲んだ部分からさらに上にまで液体金属95が来て、吐出してしまう虞がある。これを防ぐために、この配線42同士が隙間90を介して向き合う部分では、誘電率が低い絶縁材を用いることで、液体金属95がこの配線42同士が対向する部分の隙間90に入ってくるのを防止している。
具体的には、たとえば、半導体装置において使用されている、いわゆるLow−k材料を使用することができる。たとえばシリコン酸化物にフッ素や炭素を添加したもの、有機ポリマーなどがある。そのほか、第1および第2電極72、74の間に用いた誘電体73よりも誘電率が低い材料であればよい。これらLow−k材料であってもよい。これらのLow−k材料は、SiO2の比誘電率4.2〜4.0に対して、比誘電率3.0以下であることが知られている。
なお、絶縁体である絶縁層43を配置する開放端92近傍部分は、配線42および43が絶縁される厚みであるが、たとえば隙間上端から誘電体73の厚み程度の厚さ分もあれば、液体金属95が上がってきたときに上端から吐出することはない。
そして、液体金属95(導電性流体と称されることもある)は、少なくともこの冷暖房装置が使用される温度範囲において液体の金属である。たとえば、ガリウム、インジウム、スズの共晶合金であるガリンスタンを用いることができる。ガリンスタンは、常温で液体の金属であり、ガリウム、インジウム、スズの組成よって融点が異なる。たとえば、ガリウム68.5%、インジウム21.5%、スズ10%のガリンスタンは、融点:−19℃、沸点:1300℃以上、比重:6.44g/cm3、粘度:0.0024Pa・s(at20℃)、熱伝導率:16.5W/(m・K)である。そのほかにも、周知の様々な液体金属95を用いてもよく、熱伝達率が高いものが好ましい。
次に、このように構成された熱スイッチ140Bの作用を説明する。
本形態の熱スイッチ140Bにおいては、熱スイッチ部としての機能を隙間90と液溜まり77の間を行き来する液体金属95により行っている。そして、液体金属95を隙間90と液溜まり77の間を行き来させるためには、エレクトロウェッティングを用いている。エレクトロウェッティングによる液体金属95の移動自体には、公知であり、たとえば、特開2007−103363号公報などに開示されるので、ここでは本形態の理解のために必要な原理について説明する。
図28はエレクトロウェッティングの原理を説明するための説明図である。
エレクトロウェッティングは、電極板300上に設けられた誘電体301の表面に液体金属95(ここでは液滴として示した)を乗せ、電極板300と液体金属95の間に電圧を印加することで、誘電体表面における液体金属95との濡れ性を制御する技術である。
電極板300と液体金属95との間は誘電体301を介してキャパシターが形成されている。図28Aに示すように、電極板300と液体金属95との間に電圧を印加すると、このキャパシターの静電エネルギーが変化(増加)して、それに相当する液体金属95の表面エネルギーが減少し、液体金属95の表面張力が低下する。これにより液体金属95の表面に対する接触角度θが変化する。ここで接触角度θとは、液体金属95が乗っている誘電体301の表面における液体金属表面とのなす角をいう。この接触角度θは、液体金属95の表面張力に応じて0°〜180°の範囲で変化する。
ここで図28Aに示すように(電圧印加時)、接触角度θが、0°から90°までは、液体金属95に対する表面の濡れ性がよい状態、すなわち親液性のある状態である。一方、図28Bに示すように(電圧印加無しのとき)、接触角度θは、90°を超えて180°であり、これが濡れ性の悪い状態、すなわち撥液性の状態である。このように誘電体表面に置いた液体金属95の接触角度θを、電圧の印加によって変更できるのがエレクトロウェッティングである。
図29は隙間における液体金属の移動を説明するための説明図で、隙間における液体金属部分の拡大図である。
本形態では、液体金属95が移動する表面は、熱生成部材110Aと110Bの間の隙間90に対向するように設けられた撥液コート層75である。この撥液コート層75は、すでに説明したとおり、液体金属95に対する撥液性を有する。このため、第1および第2電極72、74の間に電圧を印加しなければ、図29Aに示すように、液体金属95は、撥液コート層75の表面においてその接触角度は90°以上となって撥液性(疎液性ともいう)となっている。
このように液体の接触面(撥液コート層75の表面)と接触角度が90°以上となることで、図29Aに示したように、液体金属95の液面は、中央部分が凸となって、液体金属95の撥液コート層75表面との接触部分が下がった状態になる。このため液体金属95が撥液コート層75表面を伝って行く力が働かなくなり、液体金属95が毛細管現象によって上昇してしまうことはない。
この状態は、熱スイッチ全体としては図26に示した状態であり、液体金属95は、液溜まり77内にあって、隙間90は空気により満たされている。したがって、この空気で満たされた隙間90によって熱生成部材110Aと110Bの間は断熱状態となる。
一方、熱生成部材110Aと110Bのそれぞれにある第1電極72と第2電極74の間に電圧を印加すると、第1電極72と第2電極74の間にある誘電体73が分極して静電エネルギーが変化(増加)する。このとき第2電極74と液体金属95とは電気的導通がとられているため、結果的に、液体金属95と第1電極72とが誘電体73を介してキャパシター構造となっている。この構造はエレクトロウェッティングの原理を説明した図22の電極板300と誘電体301を介した液体金属95とによるキャパシター構造と同様の構造ということである。
このため、第1電極72と第2電極74の間に電圧を印加したことで、液体金属95の表面エネルギーが増加して、それに伴い撥液コート層75(誘電膜)表面における液体金属95の表面張力が減少し、濡れ性がよくなる。そうすると、図29Bに示すように、撥液コート層75表面に接している液体金属95表面の接触角度θが90°以下になる。これにより、液体金属95自体の表面張力は失われるものの、隙間90を登ってゆく張力が働くことになる。図29Bにおけるhがもとの液面に位置(図29A)からの上昇量である。なお、図29においてdは隙間の間隔である。
図30は、図26と同じ部分の断面図であり、液体金属95が隙間90を上がってきた状態、すなわち熱伝達状態を示している。
図示するように、液体金属95は隙間90の頂上である上部基板40の位置まで到達する。上部基板40の隙間部分ではすでに説明したように、上部基板40の第1配線111と第2配線42の間には誘電体が存在しない(または誘電率が低い)。このため、この部分での静電エネルギーはほとんど変化しないため、上昇した液体金属95の濡れ性はよくならないので、これ以上液体金属95が上昇することはない。
そして、液体金属95が上昇したことにより、隙間90は液体金属95で満たされて熱生成部材110Aと110B間の熱の伝達が起きて熱伝達状態になる。
このようにして本形態の熱スイッチ140Bでは、エレクトロウェッティングにより熱スイッチ140Bに設けた隙間90に液体金属95が充填された熱伝達状態と、隙間90から液体金属95を排除した断熱状態を、電気的に制御することができるのである。
熱スイッチ140Bを構成する各部の好ましいサイズは、ガリンスタンを液体金属95として用いた場合、隙間90の間隔が10μm〜50μmが好ましいものとなる。下限値を10としたのは、この程度の隙間90をあけることで、液体金属95が下がって隙間90内に空気が入ったときに十分な断熱性を有するようにするためである。一方、上限の50μmは、液体金属95が上がって隙間90を満たした場合の熱伝達性能を保つためである。
なお、図30に示したように、液体金属95が隙間90を上昇すると液溜まり77内から液体金属95が出てゆくことになる。このとき、仮に液溜まり77が密閉状態だと、液溜まり77内部が負圧(真空)になるため液体金属95が液溜まり77から隙間90に出て行きづらくなる。そこで、本形態では、液溜まり77の下部端に空気穴93を設けたのである。空気穴93の大きさは液体金属95が漏れ出ない程度でかつ空気の流入、流出が起こる程度の大きさとする。なお、空気穴93の位置は、液溜まり77の下部端以外であってもよく、液体金属95が液溜まり77から隙間90に出て行きやすくなるように配置されていればよい。
ここで、本形態においては、隙間90を介して対向する第1および第2電極構造体71および81は、それぞれ第1電極72と第2電極74を、誘電体73を介して平行に設けている。このうち、エレクトロウェッティングの作用しているのは、第1電極72、液体金属95、およびその間の誘電体73によって構成されるキャパシターである。このため、エレクトロウェッティングの原理としては、液体金属95に電圧を印加することができれば、第2電極74はなくてもよい。たとえば、下部基板を通して、液体金属と電気的に接続される電極を設けるなどである。この場合、第2電極は隙間内に存在しないので、隙間の対向する面は誘電体となり、液体金属に対して撥液性があるので、撥液コート層もなくてよい。
ただし、このようにした場合(第2電極を省略した場合)、キャパシター構造としては、第1電極72の対向電極となる液体金属95が移動するため、電極面積が増減することになる。このため、エレクトロウェッティング作用を起こさせる誘電体での静電エネルギーも増減してしまうことになる。したがって、同じ電圧を印加していても液体金属の上昇量によってエレクトロウェッティング作用により液体金属を移動させる力が変わって、液体金属の上昇速度が変化するおそれがある。
本形態では、第1電極72と第2電極74を、誘電体73を介して平行に設けているので、第1電極72と第2電極74によるキャパシターの大きさは、液体金属95の移動によって変化しない。したがって、同じ電圧の印加でも、液体金属の移動によって液体金属の移動速度が変化したりせず安定的に熱伝達と断熱を切り替えることができる。なお、第2電極を省略した場合でも、液体金属の移動速度が若干不安定になるおそれはあるものの、第2電極を設けた場合と同様に、熱伝達と断熱の切り替えは可能である。
<熱スイッチ部の形態9>
図31は熱スイッチの形態9における熱スイッチ140Bの構成を説明するための平面図であって、図26中の矢視Aに相当する方向から見た図である。
本形態の熱スイッチ140Bもまた、電気濡れ(エレクトロウェッティング)効果を利用したものである。したがって、熱スイッチ部の形態8の変形例となる。
熱スイッチ部の形態9は、熱スイッチ140Bの隙間90に第1電極構造体71側と第2電極構造体81側のそれぞれの壁面、すなわち撥液コート層75の表面にブレード82を配置したものである。このブレード82は、下部基板76の液溜まり77から上部基板100方向に垂直に延びており、第1電極構造体71側のブレード82と第2電極構造体81側のブレード82は互い接触しない幅となっている。ブレード82自体は、たとえば撥液コート層75の材料をそのままブレード82の構造となるように形成するとよい。そのほかの構成は、熱スイッチ部の形態8と同じである。
このようにすることで、液体金属95と第1電極構造体71の壁面および第2電極構造体81の壁面との接触表面積が大きくなって熱伝達効率が良くなる。また、第1電極構造体71側のブレード82と第2電極構造体81側のブレード82との間で隙間dBが形成されるため、このブレード82間の隙間dBでもブレード壁面に液体金属95の表面張力が働き、いっそう液体金属95が上昇しやすくなる(電圧印加時)。ブレード82間の隙間dBもすでに説明したとおり、10μm〜50μm程度が好ましい。
本実施形態で好ましく適用し得る熱スイッチ部の形態を説明したが、本発明はこれらの熱スイッチの形態に限定されない。
以上のように、本発明に係る冷暖房装置は、電気熱材料を用いているので、磁気熱量材料を用いている冷暖房装置と比較すると、冷暖房装置の体積は半減し、単位体積当たりの冷暖房能力は2倍に向上する。
磁気熱量材料を用いると、大きな磁気を発生させるための磁気回路が必要であり、その磁気回路が冷暖房装置の体積の2/3程度を占めるからである。
以上のように、本発明に係る冷暖房装置は、低温側熱交換部と高温側熱交換部との間に複数の熱生成部材を有する熱生成ユニットを配置し、熱伝導ユニットによって熱生成ユニットの熱を低温側熱交換部と高温側熱交換部との間で伝導させるようにしたので、熱生成部材の電気熱量材料に印加する電界を大きくすることで、冷暖房能力を向上させることができ、磁気熱量材料を用いた冷暖房装置に比較して、小型で軽量の冷暖房装置を提供できる。