本発明の第1実施形態を図1〜図3を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態のイオン生成装置1は、コロナ放電によって正及び負の空気イオンを生成するための構成として、放電電極2と、この放電電極2に印加する正及び負の高電圧を発生する高電圧発生回路3とを備える。
さらにイオン生成装置1は、正及び負の空気イオンの生成量を検出するための構成として、放電電極2に対向して配置された検出用電極4と、該検出用電極4及び接地部5の間に接続されたインピーダンス回路6と、このインピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpが入力されるイオン量検出判定回路7とを備える。
高電圧発生回路3は、パルス状の正の高電圧及び負の高電圧を、出力端子3aから一定の周期で交互に出力する回路である。なお、高電圧発生回路3から出力される高電圧の周波数は、本実施形態では、例えば、260kHzの周波数である。
かかる高電圧発生回路3としては、例えば特開2009−4177号公報等にて本願出願人が提案した回路が採用される。ただし、高電圧発生回路3は、他の公知の回路構成のものであってもよい。また、高電圧発生回路3は、正弦波状の交流高電圧を出力する回路であってもよい。
放電電極2は、先鋭な先端部を有するように針状の導体により構成されている。本実施形態では、放電電極2は、絶縁体からなる容量性部材8と、高圧ケーブル9とを介して高電圧発生回路3の出力端子3aに接続されている。容量性部材8は、所定の容量値を有するコンデンサとして機能する部材である。従って、本実施形態では、放電電極2は、高電圧発生回路3の出力端子3aに容量結合の形態で接続されている。
なお、放電電極2と高電圧発生回路3の出力端子3aとの間に、容量性部材8と直列に抵抗素子が介装されていてもよい。あるいは、容量性部材8の代わりに、抵抗素子を介して放電電極2を高電圧発生回路3に接続する(すなわち、放電電極2を、高電圧発生回路3の出力端子3aに抵抗結合の形態で接続する)ようにしてもよい。
検出用電極4は、導体により構成されており、放電電極2に近接して対向するように配置されている。より具体的には、本実施形態では、検出用電極4は、図2(a),(b)に示すように、例えば環状に形成されている。そして、検出用電極4は、放電電極2の先端部の周囲を囲むようにして(換言すれば、放電電極2の軸心方向と直交する方向で、放電電極2の外周面と間隔を存するようにして)、該放電電極2と同軸心に配置されている。
ただし、検出用電極4は、例えば図2(a)に2点鎖線で示すように、放電電極2の軸心方向で該放電電極2の先端から若干の間隔を存するように該放電電極2の前方側に配置されていてもよい。また、検出用電極4の形状は、環状に限らず、線状、あるいは、板状等であってもよい。また、検出用電極4は、絶縁体で覆われていてもよい。
補足すると、本実施形態のイオン生成装置1は、図示しない除電対象物の除電を行うための除電装置として利用されるものである。このため、本実施形態のイオン生成装置1では、除電対象物の除電を行う場合には、放電電極2の近辺でコロナ放電により生成される正及び負の空気イオンを、該放電電極2の前方に配置される除電対象物に向って移送するために、図示しない送風ファン等のエア供給機構(送風手段)によって、図2(a)に破線矢印で示す如く、放電電極2の前方側に向ってエア供給(送風)が行われるようになっている。
そして、検出用電極4は、放電電極2側から除電対象物への空気イオンの移送が極力妨げられないようにするために、上記のごとく放電電極2の軸心方向と直交する方向で、放電電極2と間隔を存するように配置されている。
また、本実施形態では、検出用電極4は、放電電極2との間でコロナ放電を発生させる対向電極としての機能を兼ねるものである。そして、検出用電極4と、放電電極2の先端部との間の間隔(あるいは検出用電極4の半径)は、放電電極2と検出用電極4との間のコロナ放電が適切に発生し得るように設定されている。
ここで、検出用電極4の配置に関する本願発明者の実験、検討によれば、空気イオン量の生成量を適切に検出し得るようにする上では、検出用電極4と放電電極2の先端との間の、該放電電極2の軸心方向での距離が、−10〜50mmの範囲内の距離(好適には、−10〜0mmの範囲内の距離)となり、かつ、検出用電極4と放電電極2との間の、該放電電極2の軸心方向と直交する方向での距離が、40mm以下の距離(好適には、10〜20mmの範囲内の距離)となるように、放電電極2に対する検出用電極4の配置位置を設定しておくことが望ましい。
なお、放電電極2の軸心方向での上記距離は、詳しくは、放電電極2の先端から該放電電極2の基端側に近づく距離を負の距離(−50mm等)、放電電極2の先端から該放電電極2の基端側と反対側に離れる距離を正の距離(50mm等)としている。例えば図2(a)に実線で示す検出用電極4と放電電極2の先端との間の、該放電電極2の軸心方向の距離が負の距離であり、図2(a)に二点鎖線で示す検出用電極4と放電電極2の先端との間の、該放電電極2の軸心方向の距離が正の距離である。
補足すると、放電電極2と検出用電極4との間の空間は、電気的には、図3において参照符号Aを付して示す如き等価回路で表現される。この等価回路Aは、放電電極2と検出用電極4との間の静電容量に相当する容量素子Caに、放電電極2と検出用電極4との間のコロナ放電によって流れる放電電流の抵抗に相当する抵抗素子RdisをスイッチSWdisを介して並列接続した回路である。
この場合、上記スイッチSWdisは、コロナ放電の発生状態でONとなり、コロナ放電が発生していない状態ではOFFとなるスイッチである。従って、等価回路Aは、コロナ放電の発生状態では、容量素子Caと抵抗素子Rdisとの並列回路により構成され、コロナ放電が発生してない状態では、容量素子Caにより構成される回路である。
インピーダンス回路6は、インピーダンスを有する回路素子により構成された回路である。このインピーダンス回路6は、本実施形態では、図3に示すように、2つの抵抗素子10a、10bが直列に接続され、該2つの抵抗素子10a、10bと容量素子としてのコンデンサ11とを、検出用電極4と接地部5との間に並列に接続して構成された並列回路である。
ここで、インピーダンス回路6は、種々の形態を採用することが可能である。インピーダンス回路6の構成例の詳細は後述するが、例えば、インピーダンス回路6を単一の抵抗素子のみで構成することも可能である。
そして、インピーダンス回路6は、検出用電極4と接地部5との間でインピーダンス回路6を介して流れる電流に応じた電圧信号Vpとして、抵抗素子10bの発生電圧(コンデンサ11の電圧を抵抗素子10a、10bにより分圧した電圧)を出力する。
イオン量検出判定回路7は、本発明におけるイオン量検出手段に相当するものである。本実施形態では、イオン量検出判定回路7は、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpを基に、放電電極2に正及び負の高電圧のうちの一方、例えば正の高電圧を印加したときのコロナ放電により生成される正の空気イオンの生成量に応じたイオン量信号を生成し、そのイオン量信号に基づいて正の空気イオンの生成が適切になされているか否かを示す信号を生成する機能を有するように構成されている。
ここで、イオン量検出判定回路7を具体的に説明する前に、放電電極2に正及び負の高電圧の一方、例えば正の高電圧を印加したときにインピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpの波形と、このときに生成される正の空気イオンの生成量との間の関係について図4(a),(b)を参照して説明しておく。
図4(a)は、図3に示した等価回路A(放電電極2と検出用電極4との間の等価回路)を前提として、シミュレーション計算によって得られた電圧信号Vpの波形の例を、参照符号Vp−off,Vp−onを付したグラフで示している。また、参照符号Vnを付した波形は、シミュレーション計算で放電電極2に印加する正の高電圧の波形を示している。ここでは、その正の高電圧は、半波の正弦波である。
電圧信号Vpの波形Vp−off,Vp−onのうちの波形Vp−offは、放電電極2からのコロナ放電が発生しないと仮定した場合、すなわち、図3の等価回路AにおけるスイッチSWdisをOFF状態に維持した場合に得られる波形である。この波形Vp−offの電圧信号Vpは、放電電極2と検出用電極4との間の変位電流によって、インピーダンス回路6に流れる電流に応じて発生する電圧信号に相当するものである。
また、電圧信号Vpの波形Vp−onは、放電電極2からのコロナ放電が発生すると仮定した場合、すなわち、図3の等価回路AにおけるスイッチSWdisをON状態に維持した場合に得られる波形である。この波形Vp−onの電圧信号Vpは、上記変位電流に応じてインピーダンス回路6に流れる電流と、生成された正の空気イオンが検出用電極4に流入することによってインピーダンス回路6に流れる電流(イオン電流)との合成電流に応じて発生する電圧信号に相当するものである。
なお、図4(a)に示す波形Vp−off,Vp−onを得るためのシミュレーション計算では、便宜上、インピーダンス回路6は、単一の抵抗素子のみにより構成される回路とし、その抵抗素子の発生電圧の波形を、電圧信号Vpの波形として計算した。
図4(a)に示すように、電圧信号Vpの波形Vp−off,Vp−onは、基本的には、放電電極2への正の高電圧の印加に応じて、電圧値が、あるピーク値まで立ち上がり、続いて、該ピーク値から立ち下がる(ゼロに近づく)ように変化する。
そして、特に、電圧信号Vpの立下り状態で、波形Vp−off,Vp−onの電圧値が同じ値(例えば0V若しくはそれよりも若干大きい電圧値等)に達するタイミング(クロスタイミング)に着目すると、波形Vp−offに関する当該クロスタイミングと、波形Vp−onに関する当該クロスタイミングとのずれ(位相差)が発生する。
より詳しくは、コロナ放電が発生する状態(正の空気イオンが生成される状態)での電圧信号Vpの波形Vp−onに関する当該クロスタイミングが、コロナ放電が発生しない状態(正の空気イオンが生成されない状態)での電圧信号Vpの波形Vp−offに関する当該クロスタイミングに対して相対的に遅くなる。
なお、このような現象は、放電電極2に負の高電圧を印加した場合にも同様に生じるものである。すなわち、放電電極2に負の高電圧(例えば負の半波の正弦波)を印加した場合には、コロナ放電が発生する状態(負の空気イオンが生成される状態)での電圧信号Vpの波形に関するクロスタイミング(電圧信号の立下り状態で、0V等のある所定値に達するタイミング)が、コロナ放電が発生しない状態(負の空気イオンが生成されない状態)での電圧信号Vpの波形に関するクロスタイミングに対して相対的に遅くなる。
図4(b)は、本実施形態の実際のイオン生成装置1において、放電電極2に高電圧発生回路3から正の高電圧を印加した場合に、実測された電圧信号Vp(インピーダンス回路6の出力信号)の波形の例を参照符号Vp−off,Vp−onを付したグラフで示している。なお、この場合に、放電電極2に印加した正の高電圧は、参照符号Vnのグラフで示すような波形のパルス状の高電圧である。
そして、図4(b)の電圧信号Vpの波形Vp−off,Vp−onのうちの波形Vp−offは、放電電極2からのコロナ放電を意図的に発生させないようにした場合に実測された波形である。また、電圧信号Vpの波形Vp−onは、放電電極2からのコロナ放電を正常に発生させた場合に実測された波形である。
図4(b)に示すように、実際の電圧信号Vpにおいても、シミュレーション計算の場合と同様の位相差(クロスタイミングのずれ)がコロナ放電が発生しない状態での電圧信号Vpの波形Vp−offと、コロナ放電が発生した状態での電圧信号Vpの波形Vp−onとの間で発生する。
このことは、放電電極2に負の高電圧を印加した場合に実測される電圧信号Vpについても同様である。
また、本願発明者の実験、検討によれば、上記位相差は、基本的には、インピーダンス回路6に流れるイオン電流が大きいほど(すなわち、検出用電極4に流入する正又は負の空気イオンの量が多いほど)、大きくなる傾向がある。
換言すれば、正の高電圧又は負の高電圧を印加したときに得られる電圧信号Vpの波形の立下り状態において、該電圧信号Vpの電圧値(瞬時値)が、0V等の所定値に到達するクロスタイミングは、正又は負の空気イオン(放電電極2に印加した高電圧と同じ極性の空気イオン)の生成量が多くなるに伴い遅くなる傾向がある。
そこで、本実施形態では、放電電極2に正及び負の高電圧のうちの一方、例えば正の高電圧を印加したときに、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpの電圧値(瞬時値)が、その波形の立ち下がり状態において、あらかじめ定めた所定の基準値に到達するクロスタイミングを、正の空気イオンの生成量と相関性を有する指標パラメータとして利用する。
この場合、本実施形態では、上記指標パラメータとして利用するクロスタイミングを規定する上記基準値は、0V(もしくはほぼ0Vの値)である。従って、本実施形態におけるクロスタイミングは、ゼロクロスタイミングである。
そして、本実施形態では、後述するように、クロスタイミングの基準タイミング(ゼロ時刻とみなすタイミング)として、コロナ放電を発生させることなく放電電極2に正の高電圧を印加した場合に、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpの電圧値のゼロクロスタイミングを用いる。この基準タイミングは、あらかじめ実験的に特定されるタイミングである。
なお、この基準タイミングは、コロナ放電が発生していない状態でインピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpのピーク値のばらつき等の影響を受け難く、安定性が高い。従って、該基準タイミングを事前に容易に精度よく特定しておくことができる。
以上の説明を基礎として、以下に、イオン量検出判定回路7の詳細を説明する。
図3に示すように、イオン量検出判定回路7は、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpから、高周波のノイズ成分及び直流成分を除去した信号である整形電圧信号Vibpを生成して出力する波形整形回路12と、放電電極2に正及び負の高電圧のうちの正の高電圧が高電圧発生回路3から印加される期間において波形整形回路12から出力される整形電圧信号Vibpの電圧値(瞬時電圧値)のクロスタイミング(ゼロクロスタイミング)に応じた信号Vdisを、正の空気イオンの生成量に応じたイオン量信号Vdisとして生成して出力するイオン量検出回路13と、正の空気イオンの生成量(以下、単に正イオン生成量という)が適切であるか否かを示す高圧2値信号HLSを該イオン量信号に応じて生成して出力するイオン生成適否判定回路14とを備える。
波形整形回路12は、例えば、入力側にバッファを有するバンドパスフィルタにより構成される。そして、波形整形回路12は、該バンドパスフィルタの低域側遮断周波数以下の低周波成分と、高域側遮断周波数以上の高周波成分とを前記電圧信号Vpから除去することで、前記整形電圧信号Vibsを生成して出力する。
本実施形態では、この整形電圧信号Vibsの電圧値が0Vとなるタイミングが、本発明におけるクロスタイミングに相当するものである。
イオン量検出回路13は、あらかじめ設定された基準タイミングと実際のクロスタイミングとの位相差と同じパルス幅を有する矩形波信号をイオン量信号Vdisとして生成する回路である。
ここで、基準タイミングは、正の高電圧の印加の開始から既定の時間(コロナ放電が発生しない状況で、正の高電圧の印加の開始から、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpが0Vになるまでの時間)が経過するタイミングとして設定されている。
図5に示すように、このようなイオン量検出回路13は、放電電極2に正の高電圧を印加している期間でのタイミングが基準タイミングTrに達したことをトリガーとして立ち上がり、電圧信号Vpの波形が実際のクロスタイミングTxに達したことをトリガーとして立ち下がるように矩形波状のパルスを生成する。このようにパルスを生成することで、基準タイミングTrと実際のクロスタイミングTxと同じパルス幅を有する矩形波信号(イオン量信号)Vdisが出力される。このようなイオン量検出回路13は、例えば、比較回路を用いて構成できる。
なお、本実施形態では、イオン量検出回路13は、放電電極2に負の高電圧が印加されている間、イオン量信号Vdisが常にゼロレベルに維持されるように構成されている。
イオン生成適否判定回路14は、イオン量検出回路13が出力したイオン量信号Vdisを入力信号として、該信号の立ち上がり時からのパルス幅を検出し、その検出したパルス幅が、空気イオンの生成量が十分か否かを判定するためにあらかじめ定めた所定値以下であるか否かに応じて、高低2値信号HLSを生成する回路である。例えば、イオン生成適否判定回路14は、検出したパルス幅が所定値以下である場合(イオン量信号Vdisがゼロレベルに維持されている場合を含む)にはローレベル信号を生成し、検出したパルス幅が所定値を超えている場合にはハイレベル信号を生成する。
なお、検出したイオン量信号Vdisのパルス幅が所定値以下の場合は、空気イオンが生成されていないか、生成されていたとしてもその生成量が十分に微小な場合であり、一方、検出したイオン量信号Vdisのパルス幅が所定値より大きい場合は、空気イオンの生成量が十分である場合であることを意味する。
このようなイオン生成適否判定回路14は、例えば、矩形波信号(イオン量信号)Vdisを所定の時定数で積分する回路と、その積分値をある所定値と比較するコンパレーターとにより構成することができる。
あるいは、イオン量信号Vdisの立ち上がり時からの時間を計時するタイマ回路と、そのタイマ回路からの出力を所定値と比較するコンパレータとによりイオン生成適否判定回路14を構成することもできる。
なお、イオン量検出回路13でのイオン量信号生成に代えて、波形整形回路12の出力信号をA/D変換したデジタル信号に基づいて、デジタル処理若しくはソフトウェア処理によりイオン量信号を生成してもよい。また、イオン生成適否判定回路14での高低2値信号生成に代えて、A/D変換等によりデジタル化されたイオン量信号を入力信号として、該入力信号に基づきデジタル処理若しくはソフトウェア処理により高低2値信号HLSを生成してもよい。
また、本実施形態では、イオン量検出判定回路7の出力(イオン生成適否判定回路14から出力される高低2値信号HLS)は、前記高電圧発生回路3の動作制御に利用される。より具体的には、所定期間(例えば、放電電極2に正の高電圧を印加している期間)、該高低2値信号HLSが空気イオンの生成量不足を示すローレベルに維持されている場合に、それに応じて、高電圧発生回路3の作動(高電圧の出力)が停止される。
なお、イオン生成装置1は、放電電極2への高電圧印加の1回周期で該高低2値信号HLSがローレベルに維持されている場合に高電圧発生回路3の作動を停止するように構成されてもよいし、高電圧印加の複数回周期連続で該高低2値信号HLSがローレベルに維持されている場合に高電圧発生回路3の作動を停止させるように構成されてもよい。
この場合、高電圧発生回路3の作動を停止させることに加えて又は代えて、表示器、ランプ、ブザー等の報知器(図示省略)によって、空気イオンの生成量が不足している旨を作業者等に報知するようにしてもよい。
次に、本実施形態のイオン生成装置1の空気イオンの生成量の検出に関する全体的な作動を説明する。
除電対象物(帯電物体)の除電を行う場合に、高電圧発生回路3を起動することで、該高電圧発生回路3の出力端子3aから放電電極2に、正及び負の高電圧が一定周期で交互に印加される。なお、この場合、エア供給機構による送風も行われる。ただし、送風を行うことは必須ではない。
このとき、放電電極2に正又は負の高電圧が印加されている期間において、放電電極2と対向電極としての検出用電極4との間で該放電電極2の先端部に集中するように発生する電界によって、放電電極2の先端部からコロナ放電が発生する。そして、このコロナ放電によって空気がイオン化することで、空気イオンが生成される。
この場合、放電電極2に正の高電圧が印加された状態でのコロナ放電によって、正の空気イオンが生成され、放電電極2に負の高電圧が印加された状態でのコロナ放電によって、負の空気イオンが生成される。
そして、このように生成される正及び負の空気イオンによって、除電対象物の帯電電荷が中和され、該除電対象物の除電がなされる。
このような作動中において、放電電極2に、例えば正又は負の高電圧が印加された期間で、その高電圧に応じてインピーダンス回路6に電流が流れる。電流が流れることにより抵抗素子10bに電圧が生じ、この電圧が電圧信号Vpとしてイオン量検出判定回路7に入力される。
イオン量検出判定回路7では、波形整形回路12において、電圧信号Vpからノイズ成分及び直流成分が除去されて整形された後、イオン量検出回路13によって、予め定められた基準タイミングから、該電圧信号Vpの整形後の整形電圧信号Vibpが0Vとなるタイミング(ゼロクロスタイミング)との差の大きさと一致するパルス幅を有する矩形波信号がイオン量信号Vdisとして生成される。
イオン生成適否判定回路14は、該イオン量信号Vdisのパルス幅と所定値とを比較し、該イオン量信号Vdisのパルス幅が所定値以下である場合、又は該イオン量信号Vdisがゼロレベルに維持されている場合には、ローレベル信号を出力する。一方、放電電極2に正の高電圧を印加する期間において該イオン量信号Vdisが矩形波信号となり、そのパルス幅が所定値を超えた場合には、イオン生成適否判定回路14は、ハイレベル信号を出力する。
空気イオンが十分に生成されている場合には、前記基準タイミングと前記ゼロクロスタイミングとの差、すなわち、イオン量信号Vdisのパルス幅は、前記所定値よりも大きくなる。このような場合には、イオン生成適否判定回路14は、ハイレベル信号を出力する。
一方で、空気イオンが生成されていないか、空気イオンが生成されたとしてもその生成量が不十分である場合には、前記基準タイミングと前記ゼロクロスタイミングとの差、即ち、イオン量信号Vdisのパルス幅は、前記所定値以下(ゼロを含む)となる。この場合、イオン生成適否判定回路14の出力は、ローレベル信号に維持される。
従って、イオン生成適否判定回路14の信号を監視することで、空気イオンの生成量が適切であるか否かを把握することができる。
また、イオン生成装置1は、イオン生成適否判定回路14の出力を監視し、所定期間(例えば、放電電極2に正の高電圧を印加する1周期又は複数周期の期間)に、ハイレベル信号の出力がなかった場合、高電圧発生回路3の作動が停止され、放電電極2への正及び負の高電圧の印加が遮断される。
以上の如く、本実施形態によれば、放電電極2における空気イオンの生成量を高い信頼性で検出することができる。そして、その検出に応じて、放電電極2への正及び負の高電圧の印加を遮断することで、空気イオンの生成量が不十分な状態での運転を防止することができる。
また、本実施形態は、従来手法に比べ、放電電極2に接地物体等が近づくなどの外乱がある場合にも空気イオンの生成量の検出を行える点が有利である。図6を参照して、放電電極2に接地物体(接地部5に導通する物体)を近づけた場合の電圧信号Vpの電圧の変化について説明する。
参照符号Vp−normal,Vp−noiseを付した波形のうち、波形Vp−normalは、放電電極2に接地物体の接近がない場合の電圧信号Vpの電圧波形を示す。また、波形Vp−noiseは、放電電極2に接地物体の接近がある場合の電圧信号Vpの電圧波形を示す。
図6からわかるように、波形Vp−noiseの電圧のピーク値は、波形Vp−normalよりも低い値となっている。一方で、ゼロクロスタイミングは、波形Vp−noiseと波形Vp−normalとで差がほとんどない。
すなわち、接地物体の近接等の外乱がある場合、接地物体の近接等の外乱がない場合に対して、電圧信号Vpのピーク値は低下するが、ゼロクロスタイミングはほとんど変化しない。従って、ゼロクロスタイミングにより空気イオンの生成量を検出する本実施形態は、外乱がある場合であっても比較的正確に空気イオンの生成量を測定することができるので、電圧のピーク値により空気イオンの生成量を測定する従来手法と比べて、外乱に強いといえる。
また、本願発明は、従来の電圧の値を測定する手段と異なり、空気イオンの生成量が少ないイオン生成装置への適応が可能である点にも優位性がある。高周波AC印加方式又は両極性パルス印加方式においては、高効率化及び空気イオンの生成量の低減のため、印加電圧が最大となるタイミング付近で放電が発生するように印加電圧を調整することが一般的である。そのため、空気イオンの生成量が少なく、図5に示すように、入力電圧が最大となる時刻では電圧の値にほぼ差がない。そのため、電圧の値による空気イオンの生成量の検出は困難となる。
しかしながら、空気イオンの生成量が少ない装置であっても、クロスタイミングにはずれが生じる。従って、クロスタイミングにより空気イオンの生成量を検出する本願発明は、空気イオンの生成量が少ないイオン生成装置への適応が可能である。
また、本実施形態のイオン生成装置1は、イオン生成適否判定回路14から出力された信号が低であった場合(空気イオンの生成量が不十分な場合)に、放電電極2への電源供給を遮断するから、空気イオンの生成量が不十分な状態での運転を防止することができる。
(変形態様)
前記実施形態では、イオン量検出判定回路7は、放電電極2に正の高電圧が印加された状態でコロナ放電が発生していないと仮定した場合に所定値(例えば0V)となるタイミングである基準タイミングと、放電電極2に正の高電圧が印加された状態でのインピーダンス回路6の電圧信号Vpが所定値(例えば0V)となるタイミングとの差の大きさが所定値以下となるか否かを検出するようにしたが、放電電極2に負の高電圧が印加された状態でコロナ放電が発生していないと仮定した場合に所定値(例えば0V)となるタイミングを基準タイミングとし、放電電極2に負の高電圧が印加された状態でのインピーダンス回路6の電圧信号Vpが所定値(例えば0V)となるクロスタイミングと、該基準タイミングとの差が所定値以下となるか否かを検出するようにしてもよい。
あるいは、放電電極2に、正の高電圧が印加された状態と、負の高電圧が印加された状態との両方で、インピーダンス回路6の電圧信号Vpが0Vとなるタイミングと、基準タイミングとの差が所定値以下となるか否かを検出するようにしてもよい。
なお、前記実施形態では、イオン生成装置1は、空気イオンの生成量が適切か否かを示す2値信号を出力するように構成されているが、例えば、イオン量信号Vdisが矩形波信号となる際のパルス幅と生成される空気イオンの量との関係を示す参照データ(マップ、演算式など)をあらかじめ作成しておき、そのパルス幅からその参照データを用いて空気イオンの生成量そのものを示す信号を出力するようにイオン生成装置1を構成してもよい。
前記実施形態では、検出用電極4は、放電電極2との間でコロナ放電を発生させる対向電極としての機能を兼ねるように構成されたが、検出用電極4と対向電極を別個に設けてもよい。
図7(a)に示すように、前記実施形態に係るインピーダンス回路6は、2つの抵抗素子10a、10bが直列に接続され、該2つの抵抗素子10a、10bと容量素子(コンデンサ)11とが並列に接続して構成されている。インピーダンス回路6は、抵抗素子10bの発生電圧を電圧信号Vpとして出力する。
インピーダンス回路6は、上記の形態に限られず、変位電流及びイオン電流が流れる形であればどのように構成されてもよい。以下、インピーダンス回路6の構成例を図7(b)〜(h)を参照して説明する。
図7(b)に示すように、インピーダンス回路6は、容量素子を含まず、抵抗素子21及び抵抗素子22を直列に接続し、抵抗素子22に発生する電圧を電圧信号Vpとして出力するように構成されてもよい。
また、図7(c)に示すように、インピーダンス回路6を単一の抵抗素子21から構成し、抵抗素子21に発生する電圧を電圧信号Vpとして出力するようにしてもよい。
また、図7(d)に示すように、インピーダンス回路6は、抵抗素子を含まず、容量素子23及び容量素子24を直列に接続し、容量素子24に発生する電圧を電圧信号Vpとして出力するように構成されてもよい。
また、図7(e)に示すように、抵抗素子21と容量素子23とが並列に接続され、抵抗素子21に発生する電圧を電圧信号Vpとして出力するように、インピーダンス回路6を構成してもよい。
さらに、図7(f)に示すように、抵抗素子21と容量素子24とが並列に接続され、それらの並列回路と容量素子23とを直列に接続し、抵抗素子21に発生する電圧を電圧信号Vpとして出力するようにインピーダンス回路6を構成してもよい。
他に、図7(g)に示すように、抵抗素子21と容量素子23とが並列に接続され、それらの並列回路と抵抗素子22とを直列に接続し、抵抗素子22に発生する電圧を電圧信号Vpとするようにインピーダンス回路6を構成してもよい。
また、図7(h)に示すように、並列に接続される抵抗素子21と容量素子23との組と、同じく並列に接続される抵抗素子22と容量素子24との組とが直列に接続され、抵抗素子22に発生する電圧を電圧信号Vpとして出力するようにインピーダンス回路6を構成してもよい。
前述したように、インピーダンス回路6は、容量素子を含まなくてもよい。ただし、インピーダンス回路6が容量素子を含むことにより、空気イオンの生成量の変化に対するクロスタイミングのずれをより顕著にさせることができる。
図8(a),(b)を参照して、容量素子の有無による電圧信号Vpの波形の変化を説明する。
図8(a)は、インピーダンス回路6を例えば図7(b)に示すように容量素子を含まずに構成した場合の電圧信号Vpの波形を示す図である。
図8(b)は、前図7(a)に示すように、抵抗素子と並列に容量素子を含むように構成した場合の電圧信号Vpの波形を示す図である。
いずれの図においても、参照符号Vp−onで示す波形がコロナ放電が発生した状態での電圧信号Vpの波形であり、参照符号Vp−offで示す波形がロナ放電が発生しない状態での電圧信号Vpの波形である。
図8(a)(b)を比較すると、基準タイミングTrとゼロクロスタイミングTxとの差は、容量素子を含むように構成した場合(図8(b))の方が大きいことが分かる。このように、容量素子を含むようにインピーダンス回路6を構成することにより、基準タイミングTrと実際のゼロクロスタイミングTxとのずれがより顕著となり、空気イオンの生成量を検出しやすくなる。
なお、インピーダンス回路6に含まれる容量素子の静電容量が大きくなると、クロスタイミングのずれは顕著になるが、電圧信号Vpのピーク値が低下する。電圧信号Vpのピーク値が低下しすぎると、外乱の影響を受けやすくなる。そのため、Vpのピーク値が小さくなりすぎないように容量素子の静電容量を設定しておくことが好ましい。このような容量素子の静電容量は、実験により求めることができる。
前記各実施形態では、放電電極2が単一である場合のイオン生成装置1を例にとって説明したが、本発明を適用するイオン生成装置は、複数の放電電極2を備えるものであってもよい。
その場合、各放電電極2毎に、検出用電極4、インピーダンス回路6及びイオン量検出判定回路7の組を備えるようにしてもよいが、イオン生成装置に備える全ての放電電極2を、例えばN個(N:2以上の整数)ずつのグループに分類しておき、各グループのN個の放電電極2に対して、単一のインピーダンス回路6及びイオン量検出判定回路7を共用してもよい。
例えば、図9に示すように、1つのグループに属するN個(図示例では5個)の放電電極2のそれぞれに対向して配置された検出用電極4を、単一のインピーダンス回路6に並列に接続し、このインピーダンス回路6の出力(電圧信号Vp)を、前記各実施形態と同様のイオン量検出判定回路7に入力するようにしてもよい。なお、この場合、上記N個の放電電極2には、同じ高電圧が高電圧発生回路3から同時に印加される。
このようにしても、後述するように、イオン量検出回路13から出力される矩形波信号Vdisのパルス幅は、上記N個の放電電極2の近辺でコロナ放電により生成される正及び負の空気イオンの生成量に応じて変化するものとなる。従って、該矩形波信号Vdisのパルス幅に基づいて空気イオンの生成量を検出できる。
なお、図9に示す例では、N個の放電電極2のそれぞれ毎に、検出用電極4を備えるようにしているが、それらの検出用電極4を一体に構成して、N個の放電電極2に対して共通の検出用電極4を備えるようにしてもよい。この場合には、当該共通の検出用電極4は、例えば、各放電電極2にそれぞれ臨む複数の貫通穴を穿設した板状の導体部材、あるいは、N個の放電電極2の側方に配置した棒状の導体部材により構成することができる。
表1は、単一のインピーダンス回路6及びイオン量検出判定回路7に接続される放電電極2の個数Nを1から5まで変化させた場合に、コロナ放電が発生している電極数(Nd)と、イオン量検出回路13から出力される矩形波信号Vdisのパルス幅との関係を示した表である。
表1からわかるように、放電電極2の個数Nによらず、コロナ放電が発生している電極数(Nd)が少なくなると、矩形波信号Vdisのパルス幅も短くなる。
このことから、放電電極が複数(Nが2以上)であっても、放電電極のコロナ放電の発生状況を監視することができることが分かる。