JP5804674B2 - インキ、印刷方法及び印刷物 - Google Patents

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本発明は、インキ、印刷方法及び印刷物に関する。
印刷方式には大別してオフセット印刷(平板印刷)、グラビア印刷(凹版印刷)、フレキソ印刷(凸版印刷)及びスクリーン印刷(孔版印刷)がある。例えばスクリーン印刷法は、スクリーンに形成された孔を通してインキを被印刷体に押し出し、印刷する方法であり、紙、布、プラスチックス、ガラス及び金属等、さまざまな材料の被印刷材に印刷することができ、また、被印刷体が平面ばかりでなく、曲面であっても印刷することができることから、広く用いられるようになっている。
スクリーン印刷等の各種印刷法に用いられる印刷インキは、顔料と、樹脂と、補助剤とを含むものであり、それぞれ印刷の用途及び被印刷体に応じて適切なものが選択され印刷インキ原料とされる。このうち、顔料は、色相、彩度、着色力、隠蔽力等、種々の要求特性を満たすために、有機顔料が主流となっている。
近年では、輝度、色調等が変化する多色性の顔料を含有する印刷インキとして、キラル相を有する液晶構造を有する、配向された三次元架橋物質からなる顔料を含有する印刷インキがある(特許文献1)。また、天然素材由来の有機顔料を含む印刷インキ、特にインクジェットプリンタ用のインキとして、羽毛微細粉末を顔料に用いた印刷インキがある(特許文献2)。
特開2004−143245号公報 特開平6−169576号公報
最近は、従来とは異なる特徴的な輝度や色調等を有する、意匠性の高い印刷物についてのニーズが高まりつつあり、これに応ずることのできる印刷方法や印刷インキに対する要求が高まっている。
また、地球環境の保護の観点から、印刷インキについて、植物油インキのような環境対応型インキへの注目が高まっており、地球環境に優しい印刷インキに対する要求が高まっている。
そこで本発明は、特徴的な輝度や色調等を有する印刷物を得ることができ、また、地球環境にも優しいインキ及びそのインキを用いた印刷方法、その印刷方法を用いた印刷物を提供することにある。
本発明のインキは、紫外線硬化型インキである透明なインキと、顔料としてタルク、マイカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化鉄(赤)、酸化鉄(黄)、酸化鉄(黒)、PMMA粉末、シリコーン樹脂及びナイロン粉末から選ばれる少なくとも1種を含む化粧料(但し、薄片状基質に半透明性金属薄膜を被覆した顔料を含まない)の粉末とを含有し、水及び水性発泡体を含まないことを特徴とする。
本発明のインキは、インキに対する前記粉末の配合割合が、透明なインキ1kgに対して粉末0.2kg〜0.5kgの範囲とすることができる。また、紫外線硬化型インキであることが好ましい。更に、マット剤を含むことができる。また、顔料は、特に加工工場から排出された廃棄物を用いることが好ましい。
また、本発明の印刷方法は、上記インキ用いて、印刷をすることを特徴とする。
更に、本発明の印刷物は、上記インキが、印刷された被印刷体に形成されていることを特徴とする。被印刷体は、紙とすることができる。
本発明によれば、顔料として化粧料又は化粧料原料、食料又は食料加工品、ガラス及びスラグから選ばれる少なくとも一種粉末を含むことから、これらの化粧料又は化粧料原料、食料又は食料加工品、ガラス及びスラグから選ばれる少なくとも一種に由来した特徴的な輝度や色調をする印刷物を得ることができる。また、化粧料又は化粧料原料、食料又は食料加工品、ガラス及びスラグの加工工程で廃棄される原料を顔料として用いることができるので、廃棄物量を減少させることができ、地球環境に優しい印刷物を得ることができる。
印刷物に形成されたインキ薄膜の状態を示す写真である。 印刷物に形成されたインキ薄膜の状態を示す写真である。 印刷物に形成されたインキ薄膜の状態を示す写真である。 印刷物に形成されたインキ薄膜の状態を示す写真である。 印刷物に形成されたインキ薄膜の状態を示す写真である。 印刷物に形成されたインキ薄膜の状態を示す写真である。
以下、本発明のインキ、印刷方法及び印刷物の実施形態を、より具体的に説明する。
発明者らは、特徴的な輝度や色調等を有する、意匠性の高い印刷物についての研究を進めた結果、化粧料又は化粧料原料、食料又は食料加工品、ガラス及びスラグから選ばれる少なくとも一種の粉末が、印刷インキの顔料として好適であることを見出し、本発明のインキ、印刷方法及び印刷物を開発するに至った。
化粧料は、例えばファンデーション、チーク、アイカラー等、種々のものがあり、それぞれの目的、用途に応じた色相、色調、彩度を具備している。そのため、このような有色の化粧料又はその化粧料の原料を印刷インキの顔料として用いて、印刷をすることにより、この化粧料由来の特徴的な輝度や色調等を有する意匠性の高い印刷物が得られるのである。
また、化粧料の製造過程において廃棄される化粧料又は化粧料原料を顔料として再利用することにより、化粧料工場から廃棄される化粧料又は化粧料原料の量を減少できるという、地球環境に優しい印刷物とすることができる。
また化粧料又は化粧料原料以外にも、食料又は食料加工品、ガラス及びスラグを用いることによっても、これらの原料由来の特徴的な輝度や色調等を有する意匠性の高い印刷物が得られ、しかも、それらの加工工場から廃棄される、これらの原料の量を減少できるという、地球環境に優しい印刷物とすることができるのである。
本発明の印刷方法、印刷物及び印刷インキに適用される化粧料又は化粧料原料以外にも、食料又は食料加工品、ガラス及びスラグから選ばれる少なくとも一種の原料は、有機、無機またはこれらを組み合わせた顔料を具備している。このような化粧料又は化粧料原料の顔料としては、以下のものを例示することができる。
顔料:タルク、マイカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化鉄(赤)、酸化鉄(黄)、酸化鉄(黒)、PMMA粉末、シリコーン樹脂、ナイロン粉末。
また、化粧料又は化粧料原料には、上記顔料の他、油分としてナイロン粉末、流動パラフィン、ジメチルポリシロキサン、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルメトキシシンナメート等を含み、更に、防腐剤や酸化防止剤、香料を含むことができる。
上記の化粧料又は化粧料原料は、化粧料工場から廃棄物として入手することができる。
顔料が食料又は食料加工品、すなわち食品由来のものである場合には、例えば、ウコン、ムラサキイモ、小麦粉、キナコ、バブリカ、ローレルの粉末の1種又は2種以上を用いることができる。これらは食料加工工場から廃棄物として入手することができる。
顔料にはガラス粉末を用いることもできる。ガラス粉末としては、例えばガラス加工工場、ガラス瓶を容器に用いる化粧料工場その他の瓶詰め工場から廃棄物として入手し、所定の粒径、例えば50μm以下に粉砕した粉末を用いることができる。原料ガラスは、色の付いたガラスでもよいし、無色なガラスでもよい。
顔料にはスラグを用いることができる。スラグは、高炉メーカ、電炉メーカから排出されるスラグを廃棄物として入手することができる。なお、スラグは酸化物を主成分とし、種々の金属成分を含んでいるので、余分な金属成分については必要に応じて除去することが好ましい。
化粧料又は化粧料原料は、粒径が1μm〜300μmの範囲の粉末であることが好ましい。粉末の粒径が1μm程度に満たないと色調(粉末自体の色)が淡くなり、再現性に欠ける。その場合は、インキとの配合割合を増やせば色調問題はクリアできるが、コストの観点から好ましくなく、一方300μm程度を超えると、乾燥不良などの印刷適正(紙への密着)が悪くなるが、デザイン上で印刷物の荒々しさを出すのであれば粒径は大きいほうがよい。その場合はスクリーン版のメッシュを荒くしたり、照射時間を長くするまたはインキとの配合割合を少なくすることにより問題は解決される。スクリーン印刷は版のメッシュを変えることにより、様々なり粒径の粉末を印刷することができる。
食料又は食料加工品、ガラス及びスラグ由来の粉末の粒径も、上記化粧料又は化粧料原料と同様の理由で、粒径が1μm〜300μmの範囲の粉末であることが好ましい。
本発明における有色インキの原料は、透明なインキに混合される。この透明なインキに対する、当該有色インキ原料の粉末の配合割合は、インキ1kgに対して粉末0.2kg〜0.5kgの範囲とすることが好ましい。配合割合が、インキ1kgに対して粉末0.2kgに満たないと、粒径が1μmに満たない場合と同じく、再現性に欠ける。一方、インキ1kgに対して粉末0.5kgを超えると、インキと粉末とが混ざらなく、印刷用のインキにならない。
本発明における透明なインキは、半透明なインキを含むものであり、いわゆる着色用の顔料を含まない印刷インキ(クリアインキ)のことを指す。
また、本発明のインキは、上記顔料に加えて、シリカ粉末等よりなるマット剤を含有させることができる。
印刷インキには、インキの乾燥方法により大別すると酸化重合型インキ、蒸発乾燥型インキ、浸透乾燥型インキ、赤外線乾燥インキ及び紫外線乾燥インキ(紫外線硬化型インキ)がある。本発明の印刷方法、印刷物及び印刷インキには、これらのインキの種別を問わず適用することができるが、なかでも紫外線硬化型インキを適用し、これに有色インキ原料を混合したものを用いることが好ましい。これは、紫外線硬化型インキが本発明の有色顔料の粉末を包み込み、瞬時に硬化(乾燥)させるという理由からである。また、紫外線硬化型インキは、揮発性有機化合物(VOC)が少ないことから、この点でも環境対応型の印刷インキとすることができるので有利である。
本発明で用いる紫外線硬化型インキとしては例えば、感光性樹脂、感光性モノマー、光重合開始剤、シリカを含むインキを用いることができる。
より具体的には、十条ケミカル株式会社の商品名レイキュアーGA 4100−2シリーズ、レイキュアーVX 4700−2シリーズ、レイキュアーCPO 6300−2シリーズ(以上、十条ケミカル株式会社)、FDSS900 キンメジュウム、FDSS710Sメジュウム1K(以上、東洋インキ製造株式会社)などを用いることができる。そのなかでも、レイキュアーGA 4100−2シリーズ(十条ケミカル株式会社)は、硬化性及び接着性、インキ被膜は強光沢で透明性、機上安定性、印刷再現性、被膜硬度が強く耐薬品性、耐摩擦性にそれぞれ優れている。また、低臭性で被膜刺激性が低い。
紫外線硬化型インキと有色インキ原料との混合は、ポニーミキサーを使用し、印刷直前に混合させる。これは、混合後使用せず保管しておくと、インキと粉末とが分離するおそれがあるためである。混合時間は、温度や湿度により一定ではない。冬季の場合は寒さによりインキが硬くなるので、保温機で(50℃)で30分ほど暖めてから混合させる。
透明なインキと、有色インキ原料とを混合した着色インキを用いて、被印刷体に対して印刷をして印刷物が得られる。一般に、印刷方法にはオフセット印刷(平板印刷)、グラビア印刷(凹版印刷)、フレキソ印刷(凸版印刷)及びスクリーン印刷(孔版印刷)に大別できる。本発明の印刷方法では、印刷方法は特に限定されないが、これらのうち、スクリーン印刷を用いることが好ましい。これは、スクリーン印刷は、印刷インキの選択の幅が広く、本発明のような化粧料又は化粧料原料、食料又は食料加工品、着色ガラス及びスラグから選ばれる少なくとも一種の原料の顔料を含むインキであっても、印刷時に問題を生じるおそれが少ないからである。また、印刷機械の特性や作業性を考慮しても、本発明ではスクリーン印刷によって印刷を行うことが好ましい。
スクリーン印刷を行う場合の印刷条件は、本発明の有色インキ原料を含まない紫外線硬化型インキの場合の条件と比べると、インキの配合割合が多かったり、粒径が大きいと乾燥不良(十分に硬化していない)により、耐摩擦性が弱くなる。デザイン上、ロゴ等で一部隆起した印刷物にする場合は、スクリーン版のメッシュを荒くしたり、膜圧をあげれば可能となる。また、スキージ圧やスキージ角度の調整により多種多様に印刷が可能となる。
スクリーン印刷を行った場合の印刷後の乾燥は、紫外線(UV)照射によって行う。これは通常の紫外線硬化型インキを用いた印刷方法と同じであり、インキの成分として、紫外線に反応し硬化する光重合開始剤が入っている。インキとの配合割合が多かったり、(インキ1kgに対して粉末0.5kg以上)、粒径が大きいと、光重合開始剤に紫外線が届かず乾燥不良(十分に硬化していない)により、耐摩擦が弱くなる。したがって、照射時間を長めにする必要があり、印刷中は定期的に印刷物の乾燥状態を確認する必要がある点に留意することが好ましい。
以下、本発明の印刷方法、印刷物及び印刷インキの実施例を説明する。
顔料として、以下の粉末を用意した。
(1) チーク:粒径5μm〜20μm
(2) ファンデーション:粒径5μm〜20μm
(3) アイカラー:粒径5μm〜20μm
(参考例) 小麦粉:粒径5μm〜40μm
(参考例) キナコ:平均粒径27μm
(参考例) ローレル:粒径125μm〜300μm
(参考例) パブリカ:粒径150μm〜355μm
(参考例) ウコン(ターメリック):粒径75μm〜180μm
(参考例) ムラサキイモ:粒径300μm
(参考例) 竹炭:粒径50μm
(参考例) スラグ:平均粒径3μm
これらの顔料をそれぞれ、紫外線硬化型インキである十条ケミカル株式会社、商品名レイキュアーGA 4100−2)と混合した。混合割合は、インキ1kgに対して各顔料0.2〜0.5kgであった。
混合して得られた各有色インキを用いて、スクリーン印刷機のストップシリンダー式により、N300Bメッシュのスクリーン版の印刷用紙に印刷した後、紫外線を照射して印刷物を得た。照射条件はメタルハライドランプ(120 W/cm)を4灯用いて、照射距離14cmとした。また、被印刷体のコンベアー速度は2000m/minとした。
かくして得られた印刷物は、それぞれの原料の特徴的な輝度や色調等を有する、意匠性の高い印刷物であった。
図1〜図6に、これらの印刷物に形成されたインキ薄膜の状態を示す写真を示す。図1はチーク粉末を含む有色インキを背景色として、アイカラー粉末を含む有色インキにより文字を表わした例である。図2はファンデーション粉末を含む有色インキにより文字を表わした例である。図3は、キナコ粉末を含む有色インキにより図形を表わした例である。図4はムラサキイモ粉末を含む有色インキを背景色として、アイカラー粉末を含む有色インキにより文字を表わした例である。図5はウコン粉末を含む有色インキを背景色として、アイカラー粉末を含む有色インキにより文字を表わした例である。図6は木炭粉末を含む有色インキを背景色として、白色インキ(顔料:酸化チタン)により文字を表わした例である。図1〜図6から、本発明に従い、実際に印刷物が作製されていることが明らかとなった。
(耐久性)
印刷物の耐久性を調べるために、ファンデーションを含む有色インキ、チークを含む有色インキ、ローレルを含む有色インキ、ウコンを含む有色インキ及びムラサキイモを含む有色インキを用いた印刷物について、印刷後の耐久性試験を行った。これらの有色インキの混合割合はインキ1kgに対して各顔料0.2〜0.5kgであり、マット剤は含まれていない。
この耐久性試験は、耐光性、耐硫化水素性、耐摩擦性及び耐ブロッキング性について調べた。耐光性は、紫外線カーボンアーク燈に20時間曝して変色の有無を調べた。耐硫化水素性は、HS飽和水溶液に5分間浸漬させて変色の有無を調べた。耐摩擦性は、実験試験機(東洋炉紙NO2)を用いて、40ポンドの荷重で40回の条件で行った。耐ブロッキング性は、ブロッキングテスト法により印刷物表面同士を対象として行った。その結果、各有色インキは、耐硫化水素性、耐摩擦性及び耐ブロッキング性に優れていて、変色がなくや摩擦等に耐えうるものであった。耐光性については、ファンデーションを含む有色インクは変色がなく、またチークを含む有色インキは若干の変色が見られ、ローレルを含む有色インキ、ウコンを含む有色インキ及びムラサキイモを含む有色インキは変色が見られた。なお、これらの変色が見られた有色インキは、紫外線に対する長期間の耐久性が求められない印刷物には十分に使用可能であり、また、マット剤を加えることにより耐光性が改善され得るものである。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の印刷方法、印刷物及び印刷インキは、上述した実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を満たす範囲で幾多の変形が可能であることは言うまでもない。

Claims (8)

  1. 紫外線硬化型インキである透明なインキと、
    顔料としてタルク、マイカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化鉄(赤)、酸化鉄(黄)、酸化鉄(黒)、PMMA粉末、シリコーン樹脂及びナイロン粉末から選ばれる少なくとも1種を含む化粧料但し、薄片状基質に半透明性金属薄膜を被覆した顔料を含まない)の粉末とを含有し、水及び水性発泡体を含まないインキ。
  2. 透明なインキに対する前記粉末の配合割合が、透明なインキ1kgに対して粉末0.2kg〜0.5kgの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のインキ。
  3. 更にマット剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ。
  4. 前記顔料が、加工工場より排出されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインキ。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のインキを用いて、印刷することを特徴とする印刷方法。
  6. 前記印刷が、スクリーン印刷であることを特徴とする請求項5に記載の印刷方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のインキが、被印刷体の表面に印刷形成されている印刷物。
  8. 前記被印刷体が紙である請求項7記載の印刷物。
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