JP5803609B2 - 電磁弁 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1に記載の電磁弁は、車両の燃料タンクから流出した蒸発燃料が大気中に放出されるのを防止する蒸発燃料処理装置において、キャニスタの大気開放通路の途中に設けられる。この電磁弁は、ノーマリーオープン式であり、蒸発燃料のリークチェック時に電磁駆動部に通電すると、可動コアが固定コアに吸引され、可動コアに連結された弁体がハウジングの弁座に当接し、キャニスタ側の通路と大気側の通路とを遮断する。
また、ある限界圧(負圧の場合は絶対値)を超える流体圧力が弁体を弁座に対して当接(正圧の場合)または離間(負圧の場合)させるように作用した場合、弁体に作用する受圧力が許容範囲を超え、弁体の開閉作動が不能となる事態が発生し得る。
ところが、例えばこの電磁弁を、吸気管からの吸気負圧が弁体に作用するような環境で適用すると仮定する。具体的には、電磁弁をキャニスタと燃料タンクとの間に設け、蒸発燃料処理装置のパージ弁を開いたとき、吸気負圧がキャニスタを経由して燃料タンクまで到達しないように、電磁弁によって通路を遮断するという用途を想定する。
一方、弁体に正の流体圧力が作用する場合には、電磁駆動部への通電を停止したときの開弁作動が制限される。そこで、開弁機能を確保するために付勢部材の付勢力を大きくすることとなり、それに応じて、やはり電磁駆動部を大型化し電磁吸引力を大きくせざるを得ないという問題がある。
電磁駆動部は、固定コア、及び、通電時に電磁吸引力によって固定コアに吸引され軸方向に移動可能な可動コアを有する。ここで、固定コアと可動コアとの間に形成される作動室の容積は、可動コアの移動に伴って変化する。
付勢部材は、可動コアを電磁吸引力による吸引方向と反対方向に付勢する。
シャフトは、可動コアの固定コアと反対側に接続される。
ここで、流体とは、空気等の気体でもよく、水等の液体でもよい。また、圧力室に作用する流体圧力は、大気圧に対し負圧である場合、正圧である場合、又は大気圧と同等である場合を含む。
ダイヤフラムは、可動コアと一体に移動可能な中央部、ハウジングに対する相対位置が固定された外縁部、及び、中央部と外縁部との径方向の間に設けられる弾性変形可能な撓み部を有し、前記作動室と前記区画室との間をシールする。
ここで「シールする」とは、流体が気体の場合には「気密を確保する」ことをいい、流体が液体の場合には「液密を確保する」ことをいう。
これにより、圧力室および作動室が貫通孔を経由して連通し、圧力室と作動室との流体圧力が同等となる。これを「圧力キャンセル効果」という。
その結果、圧力室の流体圧力によって弁体が受ける受圧力と、作動室の流体圧力によってダイヤフラムが受ける受圧力とが互いに反対方向に作用する。したがって、従来技術のように、シャフトに貫通孔を有しない構成に比べ、弁体に作用する受圧力が相対的に減少する。
よって、電磁駆動部等の体格を小型に維持しつつ、言い換えれば大型化することなく、電磁弁が適用可能な流体圧力限界を向上させることができる。
ノーマリーオープン式の場合、弁体は、シャフトが弁孔を挿通することにより区画壁の圧力室側に設けられ弁孔を開閉する。電磁駆動部の非通電時には、弁体は弁孔を開放し、電磁駆動部の通電時には、弁体は弁孔を閉塞する。
ノーマリークローズ式の場合、弁体は、区画壁の区画室側に設けられ弁孔を開閉する。弁体の反電磁駆動部側の面は、弁孔を通して圧力室に露出する。電磁駆動部の非通電時には、弁体は弁孔を閉塞し、電磁駆動部の通電時には、弁体は弁孔を開放する。
例えばノーマリーオープン式の電磁弁では、パージ時以外は、電磁駆動部に通電せず付勢部材によって開弁状態を維持し、パージ時に電磁駆動部に通電して閉弁させればよい。
これにより、閉弁および開弁時の可動部の移動速度を適度に減速し、ストッパ部となる部位での衝突音を低減することができる。
ところで、貫通孔を通過する流体の流量を絞り部によって制限し過ぎると、せっかく貫通孔を設け圧力室と作動室の流体圧力を同じにすることによって圧力キャンセル効果を得ることができる構造であっても、圧力室内と作動室内との流体圧力が同じになるまでに時間がかかる。そのため、圧力室の圧力変化への追従が遅くなり応答性が極端に悪くなる又は圧力変化の激しい環境で作動できなくなるおそれがある。したがって、絞り部の開口面積や流路長等の仕様は、貫通孔による圧力キャンセル効果と絞り部の流路抵抗による衝突音低減効果とを両立するように設定されることが望ましい。
流体に異物が混入しうる状況で電磁弁が使用される場合、圧力室から作動室に至る流体経路の途中にフィルタが備えられることが望ましい。そこで、このフィルタに、本来の異物除去機能に加え、「絞り部」として衝突音低減機能を持たせることで、「絞り部」を簡便かつ効率的に構成することができる。
なお、フィルタは、メッシュフィルタ、不織布、濾紙等のいずれでもよい。
これにより、付勢部材収容凹部に収容された付勢部材が、同時に、付勢部材収容凹部の底面との間にフィルタを狭持する機能を兼ねる。したがって、フィルタを固定するための専用の構成が不要となる。
(一実施形態)
本発明の一実施形態による電磁弁を用いた蒸発燃料処理装置を図2に示す。蒸発燃料処理装置は、車両等の燃料タンク内から流出した蒸発燃料が大気中へ放出されることを防止する装置である。
以下の電磁弁1の説明では、便宜上、図1の上側を「上」、図1の下側を「下」として説明する。ただし、電磁弁1の現実の搭載姿勢はこれに限らない。
カバー22は、ハウジング21の圧力室12と反対側の端部(上端部)を覆う。カバー22には、ソレノイドコイル34と車載電源(バッテリー)とを電気的に接続するためのターミナル39をインサート成形したコネクタ部29が一体に形成されている。
ヨーク31は、鉄等の磁性材料で筒状に形成され、ソレノイドコイル34の径外側にハウジング21の内壁に沿って設けられる。ヨーク32は、鉄等の磁性材料で形成され、ソレノイドコイル34のカバー22側の端部に設けられる。
可動コア40は、中心軸O上の固定コア35の下方に設けられ、外壁が磁性プレート36の筒部361の内壁362に摺動可能に支持される。可動コア40の上端部は、固定コア35の凹テーパ状の吸引部に対向した凸テーパ状となっており、可動コア40が固定コア35に吸引されるとき、同軸度を確保しつつ吸引される。
「付勢部材」としてのリターンスプリング37は、固定コア35と可動コア40との間に設けられ、固定コア35と可動コア40とを互いに離間させるように付勢する。これにより、ソレノイドコイル34への非通電時、可動コア40は、リターンスプリング37の付勢力によって下方に付勢される。
シャフト50は、弁孔24を通り、区画室11と圧力室12とに跨って設けられる。シャフト50の可動コア40側の端部は、可動コア40の嵌合孔44に圧入、又は挿入後にかしめ等で係止することにより固着されている。これにより、シャフト50は、可動コア40と一体に往復移動する。一方、シャフト50の圧力室12側の端部の外壁には、ワッシャ68を係止するための鍔部51が形成されている。
また、シャフト50は、中心軸O上に可動コア40側の端部から圧力室12側の端部に貫通する貫通孔52が形成されている。シャフト50が可動コア40の嵌合孔44に接続されることにより、貫通孔52は、作動室13と圧力室12とを連通する。
また、ダイヤフラム70の厚肉に形成された外縁部73は、磁性プレート36とハウジング21の段部211との間に挟み込まれ、固定されている。
筒状のダイヤフラムガイド72は、外縁の鍔部がダイヤフラム70の外縁部73とハウジング21の段部212との間に挟み込まれ、固定されている。ダイヤフラムガイド72の内壁は、ダイヤフラム70の撓み部72が径外方向へ広がることを規制する。これにより、ダイヤフラム70の受圧径φD2(図4参照)を安定させることができる。
リテーナ62は、弁体60側から順に、第1突起部63、中央突起部64、第2突起部65の3つの突起部が一体に形成されている。円錐台筒状の第1突起部63は、ワッシャ68の肉厚部69との間に弁体60の中央部を挟み込む。周方向に不連続な円錐台筒状の中央突起部64は、電磁駆動部3の非通電時に、リターンスプリング37の付勢力によって区画壁23の区画室11側に形成されるストッパ部25に当接する。鍔状の第2突起部65は、可動コア40の前端面との間にダイヤフラム70の中央部71を挟み込む。
まず、電磁弁1の開弁状態(図3(a))から閉弁状態(図3(b))への作動について説明する。電磁駆動部3のソレノイドコイル34に通電すると、リターンスプリング37の付勢力に抗して可動コア40が固定コア35に吸引され、可動部が図3の上方へ移動する。そして、弁体60がバルブシート部26に当接して弁孔24が閉塞される。これにより、圧力室12と区画室11との連通が遮断される。よって、キャニスタ92と燃料タンク91との連通が遮断される。
このとき、フィルタ45が「絞り部」として機能し、可動部の移動速度を適度に減速するため、弁体60がバルブシート部26に当接するときの衝突音が抑えられる。また、ダイヤフラム70は、外縁部73に対する中央部71の軸方向の相対位置が近づき、作動室13と区画室11との圧力バランスによって、撓み部72が弾性変形する。
このとき、フィルタ45が「絞り部」として機能し、可動部の移動速度を適度に減速するため、リテーナ62の中央突起部64がストッパ部25に当接するときの衝突音が抑えられる。また、ダイヤフラム70は、外縁部73に対する中央部71の軸方向の相対位置が遠ざかり、作動室13と区画室11との圧力バランスによって、撓み部72が弾性変形する。
比較例の電磁弁の非通電時および通電時の要部断面図を図5(a)、(b)に示す。比較例の電磁弁9は、特許文献1に記載された従来技術の電磁弁に相当する。図5において、本実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。また、比較例の電磁弁の弁体、圧力室等の構成は、本実施形態の電磁弁1と同様であり、これらの図示を省略した。
F1=(π/4)φD12×P1 ・・・(式1)
F2=(π/4)φD22×P2 ・・・(式2)
式1、2より、φD1≒φD2、かつ、P1≒P2であれば、F1≒F2となる。
さらに、フィルタ45の開口面積は、異物の侵入を防止するとともに、貫通孔52を通過する空気の流量を制限し可動部の移動速度を適度に減速する「絞り部」としての機能を果たすように、言い換えれば、「エアダンパ機能」を発揮するように調整されている。
これにより、閉弁時には弁体60がバルブシート部26に衝突するとき、また開弁時にはリテーナ9の中央突起部64がストッパ部25に衝突するときの衝突音を低減することができる。
加えて、フィルタ45は、固定のための専用の構成を要することなく、スプリング収容凹部41の底面とリターンスプリング37との間に挟持されているため、部品点数を低減することができる。
(ア)上記実施形態の電磁弁1は、電磁駆動部3の非通電時に弁孔24を開放し、電磁駆動部3の通電時に弁孔24を閉塞するノーマリーオープン式の弁である。これに対し、電磁駆動部3の非通電時に弁孔24を閉塞し、電磁駆動部3の通電時に弁孔24を開放するノーマリークローズ式の弁としてもよい。その場合、シャフト50の先端部に接続される弁体60を区画壁23の区画室11側に配置し、弁孔24の周囲の区画室11側にバルブシート部を形成する構成とすればよい。
(イ)上記実施形態の電磁弁1は、フィルタ45がスプリング収容穴41の底部でリターンスプリング37に挟持される。その他、フィルタをシャフト50の中間部または圧力室12側の先端部等に設置してもよい。
(エ)さらに、衝突音が問題とならない用途で電磁弁を使用する場合は、絞り部が形成されなくてもよい。これにより、孔加工が容易となり、また、貫通孔による圧力キャンセルの効果がより発揮されやすくなる。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
11 ・・・区画室、
12 ・・・圧力室、
13 ・・・作動室、
21 ・・・ハウジング、
23 ・・・区画壁、
24 ・・・弁孔、
26 ・・・バルブシート部
3 ・・・電磁駆動部、
34 ・・・ソレノイドコイル、
35 ・・・固定コア、
37 ・・・リターンスプリング(付勢部材)、
40 ・・・可動コア、
41 ・・・スプリング収容凹部(付勢部材収容凹部)、
45 ・・・フィルタ(絞り部)、
50 ・・・シャフト、
52 ・・・貫通孔、
60 ・・・弁体、
70 ・・・ダイヤフラム、
71 ・・・中央部、
72 ・・・撓み部、
73 ・・・外縁部、
φD1・・・弁体60の受圧径、
φD2・・・ダイヤフラム70の受圧径。
Claims (4)
- 固定コア、及び、通電時に電磁吸引力によって前記固定コアに吸引され軸方向に移動可能な可動コアを有し、前記固定コアと前記可動コアとの間に形成される作動室の容積が前記可動コアの移動に伴って変化する電磁駆動部と、
前記可動コアを前記電磁吸引力による吸引方向と反対方向に付勢する付勢部材と、
前記可動コアの前記固定コアと反対側に接続されるシャフトと、
前記シャフトの前記可動コアと反対側の端部が位置し流体の圧力が作用する圧力室と前記圧力室の前記電磁駆動部側に形成される区画室とを区画し且つ前記圧力室と前記区画室とを連通する弁孔を有する区画壁が形成されるハウジングと、
前記シャフトの前記可動コアと反対側の端部の径外方向に固定され、前記シャフトの往復移動に伴って前記弁孔を開放または閉塞する弁体と、
前記可動コアと一体に移動可能な中央部、前記ハウジングに対する相対位置が固定された外縁部、及び、前記中央部と前記外縁部との径方向の間に設けられる弾性変形可能な撓み部を有し、前記作動室と前記区画室との間をシールするダイヤフラムと、
を備え、
前記シャフトは、軸方向の一方の端部から他方の端部に貫通し前記作動室と前記圧力室とを連通する貫通孔を有しており、
前記圧力室の圧力を受ける前記弁体の受圧面積と、前記作動室の圧力を受ける前記ダイヤフラムの受圧面積とは同等に設定されていることを特徴とする電磁弁。 - 前記シャフトの前記貫通孔を経由し前記圧力室と前記作動室とを連通する経路中に、前記貫通孔を通過する流体の流量を制限する絞り部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
- 前記貫通孔から侵入する異物を捕捉しつつ前記絞り部として機能するフィルタを備えることを特徴とする請求項2に記載の電磁弁。
- 前記可動コアは、前記付勢部材を収容し且つ前記貫通孔に連通する付勢部材収容凹部が形成されており、
前記フィルタは、前記付勢部材収容凹部の底面と前記付勢部材との間に狭持されることを特徴とする請求項3に記載の電磁弁。
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