この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、木造軸組建築物に水平力がかかったときの力の流れを示す軸組11の正面図である。この図における矢印の長さはおおよその力の大きさを示しており、力が大きいほど矢印を長くあらわしている。
図2は、前記軸組11の斜視図であり、これらの図に示すように軸組11は、基礎12としてのベタ基礎と、基礎12と垂直材13を直結するとともに水平材14を結合する結合金物15と、土台としての前記水平材14及び梁材等としての上部水平材16と、通し柱や管柱などの前記垂直材13及び管柱等の上部垂直材17と、垂直材13または上部垂直材17と水平材14または上部水平材16を接合する仕口や接合金物(図示せず)と、垂直材13または上部垂直材17と水平材14または上部水平材16の間の空間に嵌め込まれる耐力壁構成パネル18と、垂直材13または上部垂直材17と水平材14または上部水平材16を接合する接合部分を補強する補強金物19で構成されている。
構築は、図3に示したように、アンカー埋設工程S1、結合金物固定工程S2、水平材垂直材結合工程S3、上部水平材接合工程S4、上部垂直材接合工程S5、耐力壁構成工程S6、補強金物固定工程S7を経て行われる。
前記アンカー埋設工程S1では、図1に示したように、ベースコンクリート上に隙間をあけて固定されたアンカーボルト支持具21から立設して上端部が基礎天の上に露出するアンカーボルト22を基礎12に埋設する。
前記結合金物固定工程S2では、前記アンカー埋設工程S1で埋設され、前記基礎天から露出する前記アンカーボルト22に対して前記結合金物15を固定する。
前記水平材垂直材結合工程S3では、前記結合金物固定工程S2で固定された結合金物15の側面に面接触状態で前記水平材14を結合し、結合金物15の上面に面接触状態で前記垂直材13を結合する。
前記上部水平材接合工程S4では、前記水平材垂直材接合工程S3で結合されて前記結合金物15上に立設する垂直材13に対して前記上部水平材16を接合する。
前記上部垂直材接合工程S5では、前記水平材垂直材接合工程S3の後、前記上部水平材16上に上部垂直材17を立設する。
これら水平材垂直材結合工程S3、上部水平材接合工程S4、上部垂直材接合工程S5で、水平材14と上部水平材16と垂直材13と上部垂直材17が前記図示しない接合金物等によって縦横に組まれて、方形状の枠構造が多数形成される。
前記耐力壁構成工程S6では、前記水平材垂直材結合工程S3、上部水平材接合工程S4、上部垂直材接合工程S5で接合された水平材14、上部水平材16、垂直材13および上部垂直材17のうち、前記水平材14または上部水平材16と前記垂直材13の間と、前記垂直材13または上部垂直材17と上部水平材16の間に、外周の端面が面接触した状態で前記耐力壁構成パネル18を嵌め込んで軸組の剛性を得る耐力壁11aを構成する。
前記補強金具固定工程S7では、前記垂直材13または上部垂直材17と水平材14または上部水平材16の接合部分に補強金物を固定して荷重を受ける関節部11bを形成する(図1参照)。
前記各工程S1〜S7のうちアンカー埋設工程S1以外の工程は、一つの軸組11において必要に応じて適宜平行して行われる場合も、前後して行われる場合もある。
つづいて、前記の各工程S1〜S7に従って、各部の構成について説明する。
まず、基礎12部分について説明する。
図4は、基礎12と柱脚部分の斜視図であり、基礎12には前記アンカーボルト22が上端部を露出した状態で埋設されている。アンカーボルト22は、図5に示したようなアンカーボルト支持具21でベースコンクリートまたは捨てコンリート上に隙間をあけて固定される。
アンカーボルト支持具21は、アンカーボルト22を正確な位置に簡易迅速に設置できるようにするもので、図6に示したようにアンカーボルト22の下端部22aを螺合により固定する取り付け穴23aが設けられた本体金具23を有する。そして、この本体金具23には、前記取り付け穴23aを有する天板部24と、この取り付け穴23aの中心点を中心とする平面視十字方向の4箇所に設けられた脚部25が形成される。この脚部25の下端の先端には位置合わせのための目印25aが先鋭形状に形成され、下端部分には固定用の打ち込み部材26を挿通する挿通穴25bが形成されている。
また、前記天板部24には複数の貫通穴24aが設けられ、これら貫通穴24aには前記脚部25の下端より下方に突出して貫通穴24a内で上下方向に相対移動し、天板部24の高さを調整するとともに水平を出す支持脚27が保持されている。
そして、前記アンカーボルト22には、異形鉄筋の上下両端部に雄ねじを形成したものを使用する。図5中、28は基礎天のレベルを示すための基礎天プレートであり、螺合により上下動自在に保持されている。
このような構成のアンカーボルト22とこれを支持するアンカーボルト支持金具21は、次のように設置して基礎に埋設する。
まず、アンカーボルト支持具21を捨てコンクリートまたはベースコンクリートからなる下地面に固定する。下地面には通常通り墨出しがなされ、アンカーボルト22を設置する所定位置に芯墨29と円29a,29bがつけられる(図7参照)。この芯墨29の上のアンカーボルト支持具21の取り付け位置における前記脚部25の挿通穴25bに対応する位置(前記円29a,29bとの交点)に、打ち込み部材を打ち込む。打ち込みは打ち込み部材26の長手方向の中間位置まで行う。
この状態でアンカーボルト支持具21を、その脚部25の挿通穴25bが打ち込み部材26を挿嵌するように降下させて設置させる。そして、打ち込み部材26における脚部25の下面より上に突出している部分にナット26aを螺合する(図6参照)。
つづいて支持脚27を回転して、天板部24を水平にする。このようにして水平になった天板部24の取り付け穴23aに対して、図6に示したようにアンカーボルト22の下端部22aを螺合し、アンカーボルト22の上端の高さを調節する。
アンカーボルト22を取り付けたら、アンカーボルト22の鉛直性等を確認し、アンカーボルト22を図8に示したような所望の姿勢にしたままコンクリートの打設を行えば、基礎12を構成できる。図8では、アンカーボルト支持具21をベースコンクリート上に固定した例を示している。
つぎに、柱脚部に使用する前記結合金物15について説明する。
結合金物15は、垂直材13や水平材14の結合が高い強度をもって行えるようにするとともに、垂直材13や水平材14の取替えを可能にするもので、図9に示したように中空の外郭部51と、この外郭部51内で上下方向に延びる支柱部52を有する。そして、外郭部51における土台としての水平材14の端面を接合する部位と、柱材としての垂直材13の下端面を接合する部位に接合面53が形成されている。
上端面の接合面53には、垂直材13を結合するためのボルト54が保持され、その他の接合面53には、ボルトを保持する保持部としての保持穴53aが形成される。
前記外郭部51は、図10に示したような複数の屈曲板55と、これらの上端部を結合する上板56と、屈曲板55の下端部を結合する下板57で構成できる。
前記支柱部52は、前記上板56と下板57の間を突っ張るように上下方向に延びる筒状に形成でき、相対回転する上側部分52aと下側部分52bで構成される。上側部分52aの上端には、垂直材13を結合するための前記ボルト54が設けられている。また、下側部分52bの下端には、前記アンカーボルト22の上端部の雄ねじに螺合するナット58が保持されている。支柱部52の上側部分52aと下側部分52bのそれぞれに設けられた穴52cは、棒状の治具(図示せず)を入れて回転させるための係止穴である。
図9、図10中、59は前記下板57の四隅部分に螺合されるアジャスタで、必要に応じて使用される。
このような構成の結合金物15は、図11に示すように基礎天の上に基礎パッキン12aを載せた後、基礎パッキン12aの上に突出するアンカーボルト22の上端部の雄ねじに対して、前記支柱部52の下側部分52bに内蔵したナット58を螺合する。つづいて、土台としての水平材14を基礎の上に載せて、水平材14の端面を前記外郭部51の接合面53に当接した状態にして結合する。結合には、接合面53にボルト(図示せず)で固定したコアピン101とドリフトピン102を用いるとよい。コアピン101は金属からなる円柱状で、前記ボルトを螺合する端面に雌ねじ101aが形成され、前記ドリフトピン102を挿入する部位に貫通穴101bが形成されている。コアピン101は、水平材14の端面の中心に形成された穴に前記ドリフトピン102で固定される。
結合金物15で水平材14を3方向に結合すると、図11に示したように、3本の水平材14の端面は相互に接触することなく、稜線部分が接触するだけの状態となる。
このあと、通し柱または管柱としての垂直材13を、結合金物15の上端の接合面53から突出しているボルト54に対して前述と同様にコアピン101とドリフトピン102を用いて結合する。コアピン101は垂直材13の芯に固定される。
なお、前記土台としての水平材14は、別のアンカーボルト(図示せず)によって基礎12に固定される。また結合金物15の接合面53のうち水平材14が接合されていない接合面53には、図示しない板状の化粧材を固定して隠蔽する。
このような水平材14と垂直材13の結合により、水平材14は別のアンカーボルトによって固定されるとともに、前記結合金物15によっても固定され、基礎12上での位置を強固に保持できる。また垂直材13は、基礎12に埋設されたアンカーボルト22に対して、結合金物15を介して芯で結合される。
前記結合金物15を用いることによって、垂直材13は土台に対してではなく結合金物15に結合されることになる。このため、垂直材13の柱脚部は腐食から守られ、万が一腐食した場合でも、交換が可能である。
つぎに、垂直材13または上部垂直材17と上部水平材16との結合構造について説明する。
垂直材13には1階梁や2階梁、3階梁などの上部水平材16を接合するとともに、2階管柱や3階管柱等の上部垂直材17を所望に応じて接合金物や仕口(図示せず)によって適宜接合する。このとき、図2に示したように、一部(図2なにおけるX,Y部分)に、垂直材13または上部垂直材17の上端面13a,17aを露出させる接合を行う。
すなわち、図2のX部分とY部分に示したように、垂直材13または上部垂直材17の上端部の側面に上部水平材16の端面を接合して、垂直材13または上部垂直材17同士の間に、上部水平材16が掛け渡された状態に接合する。
この結合により、軸組11にかかる荷重は垂直材13または上部垂直材17の上端面13a,17aに上部水平材16をのせるように接合した場合に比して荷重を分散でき、小さくなった荷重を垂直材13または上部垂直材17で堅固に支持する構造とすることができる。
つぎに、垂直材13、上部垂直材17、水平材14、上部水平材16で囲まれた空間のうち耐力壁11aを構成する部分に嵌め込む耐力壁構成パネル18について説明する。
耐力壁構成パネル18は、垂直材13または上部垂直材17と水平材14または上部水平材16の対向面に面接触する端面81aを有する芯パネル81と、該芯パネル81を挟持するように芯パネル81の表裏両面における外周縁に固定されて外側面が垂直材13または上部垂直材17と水平材14または上部水平材16に面接触する挟持枠82を備えている。具体的には、図12に示したように、前記芯パネル81は長手方向(上下方向)に3分割された芯パネル担体81bを有し、これら芯パネル単体81bの間には、図13に示したように、垂直材13や水平材14等と同寸の太さを有する角材からなる介装材83を保持し、この介装材83の芯パネル担体81bに対向する部分には、芯パネル担体83の端部を嵌め込む嵌め込み溝83aが形成されている。さらに、前記挟持枠82と介装材83との間における幅方向の中間位置には、芯パネル担体81aの表裏両面を挟むように間柱部材84が保持されている。
このような構成の耐力壁構成パネル18は、軸組11のバランスを考慮して、軸組11における例えば図2に示したような四隅部分などの必要な位置に嵌め込んで、釘の打ち付けで固定する。すると、芯パネル81の端面81aが垂直材13等の内側面に当接するとともに、この端面81aを芯パネル81の厚さ方向で挟持する挟持枠82が垂直材13等の間ですべりのないように垂直材13等に固定する。芯パネル81が力を吸収して芯パネル81にせん断変形が生じたときにでも、挟持枠82が芯パネル81を押さえ込んで芯パネル81に力を吸収させる。芯パネル81を介装材83で分割しているので、荷重も分散できる。このため、きわめて高い倍率を得られる。
最後に、垂直材13または上部垂直材17と水平材14または上部水平材16との接合部分に固定する前記補強金物19について説明する。
補強金物19は、図1、図2に示したように、固定位置によって適宜の態様に構成されるが、前記垂直材13または上部垂直材17、あるいは水平材14または上部水平材16の長手方向の側面に固定される複数の固定金具91,92と、これらの固定金具91,92同士を連結する耐力部材93を有し、該耐力部材93には少なくとも引張耐力を有するものが使用されている。
図13、図14、図15はその一例を示している。図13に示した補助金物19は、上部垂直材17としての管柱17aの柱脚部と、管柱17aを支持する上部水平材16としての梁材16aとの接合部分の直角をなす部分(図2におけるA部分)を斜めに連結するように構成したもので、垂直材13と上部垂直材17と上部水平材16で囲まれた方形状の空間に嵌め込まれた耐力壁構成パネル18の上から固定するのに用いられる。
上部垂直材17に固定される固定金具91も、上部水平材16に固定される固定金具92も、断面コ字状に形成されており、相対向する2つの対向片94の間に相対回転可能な回転軸91a,92aが備えられている。
そして、上部垂直材17に固定される固定金具91においては、前記2つの対向片94を連結する連結片95を固定箇所に面接触する固定面とし、連結片95には複数の固定穴95aが形成されている。固定穴95aは、固定のための締結具96を挿通する部分である。締結具96には、周知のボルトナットを用いるとよいが、図15に示したように異形鉄筋の両端部に雄ねじを形成した締結軸材96aとナット96bを用いるとよい。異形鉄筋は剛性が高いうえに、他部材と接触抵抗が高いからである。締結具96の長さは、上部垂直材17の反対側の面においてナット96bで固定できる長さに設定される(図14参照)。
一方、上部水平材16に固定される固定金具92においては、前記連結片95に、締結具96を通す固定穴95aが設けられるとともに、上部水平材16に対する固定金具92の角度を変更可能にする自在座金手段97が設けられている。
この自在座金手段97は、連結片95の内側面と外側面に設けられた半球状の球面を有する球面座金97aと、この球面座金97aの球面上を摺動する環状の摺動環97bで構成される。球面座金97aは金属板を一方に棒出するようにプレス成形して構成される。球面座金97aの頂部には貫通穴(図示せず)が形成されている。この貫通穴は前記締結具96を通す大きさよりも大きいルーズホールで構成する。このようにルーズホールとすることは、この球面座金97aを保持する連結片95の固定穴95aも同様である。
前記摺動環97bのうち連結片95の内側に備えられるものの上には、締結具96の一端が保持され、連結片95の外側に備えられるものの下には、周知の座金97cが保持される。これによって連結片95は上部水平材16に対して直接面接触することはないが、前記座金97cを介して間接的に面接触することになる。
前記締結具96には、前述と同様に、周知のボルトナットを用いることができるが、前記締結軸96aとナット96bを用いてもよい。この場合、締結具96の一端を保持するためには、図15に破線で示しているようにロックナットを用いて、強度を確保するとよい。また締結具96の長さは、上部水平材16の反対側の面においてナット96bで固定できる長さに設定される(図14参照)。
このような自在座金手段97を有すると、締結具96によって連結片95に一体化された状態で、固定金具92と締結具96のなす角度を変えることができる。
前記耐力部材93は、少なくとも引張耐力を有するように鋼材からなる棒状体で構成され、両端部が前記回転軸91a,92aに保持される。保持は、回転軸91a,92aを貫通した端部の雄ねじにナット93aを螺合して行うとよい。この耐力部材93には既存の適宜の部材を用いることができるが、図15に示したように、異形鉄筋の両端に雄ねじを形成したものを用いてもよい。
前記耐力部材93と、この耐力部材93の端部を保持する回転軸91a,92aが、固定金具91,92に対する耐力部材93の角度を変更可能にする角度変更手段である。
この角度変更手段と前記自在座金手段97を備えるので、耐力部材93を上部垂直材17や上部水平材16に対して斜めにして図14のごとく補強金物21を装着した場合、上記水平材16に対して固定される固定金具92は2箇所で角度が変わることになる。
図13に示した補強金物19は、前記耐力壁構成パネル18の上から固定するので、前記補強金物19における固定金具91,92の連結片95の幅は、前記挟持枠材82の幅と同等に設定されている。
以上のように構成された補強金物19は、軸組11にかかる荷重を考慮して軸組11における適宜位置に取り付ける。新築の場合はもちろんのこと、リフォームする場合や、補強工事をする場合にも使用できる金物である。
取り付けは、前記軸組11における例えば耐力壁15に連続している垂直材13若しくは上部垂直材17、または水平材14若しくは上部水平材16に、一方の固定金具91,92を固定するようにして行うとよい。固定位置は耐力壁11aに近いほうが好ましいが、それに限定されることはなく、荷重を支え、分散できる適宜の部位に固定される。
図13、図14、図15の補強金物19では、耐力壁11aを構成する部分に耐力壁構成パネル18を固定したのち、上部垂直材17と上部水平材16と耐力壁構成パネル18に形成された貫通穴11c(図14参照)に補強金物19における固定金具91,92の締結具96を挿通して緊結する。この結合は、双方の固定金具91,92共に、上部垂直材17と上部水平材16の接合部分からそれぞれの材の長手方向に沿って離れた位置で行われる。
このとき、上部水平材16に固定する固定金具92には前記自在座金手段97と前記角度変更手段を備えているので、固定金具92を耐力部材93の長手方向に向けた状態で固定できる。しかも、自在座金手段97がナット96bの締め付けによって上部水平材16に対して緊結されるので、固定状態を強力に維持できる。
このため、耐力部材93が引き抜き防止のほか、筋かいの作用もすることになり、水平力が作用したときにかかる引張荷重に対して、強く対抗できる。
しかも、2個の固定金具91,92はそれぞれ上部垂直材17又は上部水平材16に固定されており、これによって耐力部材93の両端の位置が強く規制され、上部垂直材17と上部水平材16の位置関係も保持される。このため耐力部材93に引張荷重がかかっても、上部垂直材17と上部水平材16が開くのを積極的に阻止できる。
また、固定金具91,92の固定は上部垂直材17と上部水平材16の接合箇所から離れた位置に行われるので、上部垂直材17と上部水平材16の接合が仕口で行われている場合でも脆弱性の招来を防いで、接合力を維持できる。上部垂直材17と上部水平材16の接合が接合金物で行われている場合には接合金物との干渉を防いで、接合金物による強固な接合と補強金物による確かな補強の両立を図ることができる。
補強金物19は耐力壁11aを構成している垂直材13や上部垂直材17、水平材14、上部水平材16に対して固定されるので、荷重を分散するとともに、耐力壁11aの有する剛性を他の部位に付与する。
なお、補強金物19を前述のような耐力壁11aの上から固定しない場合には、垂直材13や上部垂直材17、水平材14、上部水平材16の幅方向の中心に結合するとよく、その場合には固定金具91,92の連結片95の幅を大きくすることができる。
また、引張荷重のみではなく、圧縮荷重にも抵抗するようにするためには、前記耐力部材93の端部に対して回転軸91aを挟むようにナット93aを固定するとよい。
補強金物19は、前記のような構成を具備すればその他の形態に構成することもできるので、補強金物19の他の例について若干の説明をする。この説明において、先の構成と同一または同等の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
図16に示した補強金物19は、4個の固定金具91,92を備えた例であり、垂直材13または上部垂直材17の下部と上部を一緒に上部水平材16に固定するときに好適に使用できるものである(図2におけるB部分参照)。
すなわち、垂直材13または上部垂直材17に対して固定する2個の固定金具91と、これらの回転軸91aに一端部がそれぞれ保持される2本の耐力部材93と、これら耐力部材93の他端部を回転軸92aに固定する2個の固定金具92と、これら固定金具92の自在座金手段97同士を連結する締結具96を備える。
このように構成された補強金物19では、垂直材13または上部垂直材17の脚部のほかに頭部も同時に補強でき、図2のB部分のように耐力壁11aの剛性をその上方に位置する上部垂直材17にも作用させるのに好適である。
図17に示した補強金物19は、前記自在座金手段97を省略した例である。自在座金手段97を有しないものの、前記角度変更手段を有するので、垂直材13または上部垂直材17や上部水平材16に形成した貫通穴11c(図14参照)16の位置にずれがあっても対応できる。また上部水平材14に固定される固定金具92の固定位置が垂直材13または上部垂直材17に近くなるものの、例えば垂直材13または上部垂直材17と上部水平材16の接合に接合金物を用いていない場合に、図2のC部分に示したように好適に使用して、少なくとも引張に対して対抗できる耐力が得られる。
この場合も、図16に示した補強金物19のように4個の固定金具91,92を用いて構成すると、図2のD部分に示したように、上部水平材16の上下に位置する垂直材13と上部垂直材17を上部水平材16に一体にしつつ垂直材13と上部垂直材17、または上部垂直材17同士の一体性を高めることができ、引張荷重や圧縮荷重に対する耐力を高めることが可能となる。
図18(a)に示した補強金物19は、前記耐力部材93を棒状体ではなく、細長い板材で構成した例である。板材からなる耐力部材93は、図18(b)に示したように、前記回転軸91a上にスペーサ91bを介して2枚平行に備えられる。図示を省略するが、他方の固定金具92についても同じである。
この補強金物19では、前記異形鉄筋からなる耐力部材93を備えた補強金物19と同様の作用効果を発揮する。特に、耐力部材93が板材で構成され、両端部が回転軸91a,92aに回転可能に保持されているので、別途にナットを固定せずとも、引張荷重と圧縮荷重に対する耐力を有することになる。
この補強金物19でも、自在座金手段97を省略することができる。
図19(a)に示した補強金物19は、前記耐力部材93を棒状体や板状体ではなく、鋼線からなるループ状のワイヤで構成した例である。すなわち、各固定金具91,92の回転軸91a,92aにワイヤからなる耐力部材93が掛けられている。耐力部材93の太さが回転軸91a,92aの幅に比して細い場合には、図19(b)に示したように耐力部材93の両側にスペーサ91bを保持しておく。
この補強金物19では、耐力部材93が引張荷重に対して強力に対向し、前記異形鉄筋からなる耐力部材93を備えた補強金物19と同様の作用効果を発揮する。また耐力部材93はワイヤであるので垂直材13や上部垂直材17、上部水平材16の貫通穴11c(図14参照)の位置ずれにも柔軟に対応できる。
この補強金物19でも、自在座金手段97を省略することができる。
図20に示した補強金物19は、固定金具91,92が正面視正三角形状に形成された例である。すなわち、垂直材13、上部垂直材17または上部水平材16に接触する固定片91e,92eと、耐力部材93の一端部を結合する結合片91f,92fと、これら固定片91e,92eと結合片91f,92fを連結する連結片91g,92gを有する。各片91e,92e,91f,92f,91g,92gの幅や長さは、取り付ける場所の大きさ等に合わせて適宜設定される。
各片91e,92e,91f,92f,91g,92g同士の結合部分には、補強のために補強片91h,92hが備えられている。図21(a)は、各片91e,92e,91f,92f,91g,92gの幅方向の両面を塞ぐように補強片91h,92hを装着した例で、図21(b)は、各片91e,92e,91f,92f,91g,92gを橋渡しするように補強片91h,92hを装着した例である。
前記固定片91e,92eには、締結具96を挿通する固定穴91i,92iが形成され、前記結合片91f,92fには、耐力部材93を通す貫通穴91j,92jが形成されている。この貫通穴91j,92jは、耐力部材93の太さに比して大きめに設定される。これは前記角度変更手段備えるためである。
この例における角度変更手段は、結合片91f,92fの内側面に設けられた半球状の球面を有する球面座金98aと、この球面座金98aの球面上を摺動する環状の摺動環98bで構成される。これら球面座金98aと摺動環98bは、前記自在座金手段97のそれらと同一の構造であり、球面座金98aの頂部には貫通穴(図示せず)が形成されている。前記摺動環98bの上には、耐力部材93の一端が保持される。耐力部材93には、前述と同様に、周知のボルトを用いることができるが、異形鉄筋かならなる棒状体を用いてもよい。
圧縮荷重にも対応できるようにするためには、結合片91f,92fの外側面にも球面座金98aと摺動環98bを備えるとよい。
このような構成の補強金物19では、前述の補強金物19と同様の作用効果を達成する上に、垂直材13または上部垂直材17に固定する固定金具91も、上部水平材16に固定する固定金具92も同一のものを使用できるので、使用が簡便であるとともに、製造コストを抑えることもできる。
図示例では、固定金具91,92の固定位置が垂直材13または上部垂直材17や上部水平材16から等距離にあるので、耐力部材93は45度の角度をなしているが、前記角度変更手段を備えているので、固定金具91,92の位置が変化すればそれに追従して耐力部材24の角度も変化可能であり、固定態様に応じて柔軟に対応できる。
また、固定金具91,92は正面視三角形状であるゆえに、強度が高く、使用する材料の量を抑えることもできる。
図示を省略するが、固定金具91,92の固定は、浅く座彫りした部分に行ってもよい。
図22は、図20の補強金物19の他の例を示している。これは、固定金具91,92を4個備え、2個の固定金具91,92を1本の耐力部材93で連結したものを2組備えて、上部水平材16に固定される固定金具92同士を締結具96で連結して構成する例である。
このように構成された補強金物19では、上部垂直材17の脚部のほか、垂直材13または上部垂直材17の頭部も同時に補強できるので、図1のB部分のように耐力壁11aの剛性をその上方に位置する上部垂直材17にも作用させるのに好適である。
さらに、図23に示したように、垂直材13または上部垂直材17と上部水平材16の接合部分を取り囲むように固定できる補強金物19とすることもできる。
図24は、正三角形状の固定金具91,92を用いた補強金物19の他の例を示し、締結具96として、円柱状をなして両端に雌ねじ101cを有したコアピン101を用いた例である。コアピン101の雌ねじ101aにはボルト103が螺合され、これによって、固定金具91,92や垂直材13、上部垂直材17、上部水平材16への固定状態が保持される。
この構成によっても、図20に示した補強金物19と同様の作用効果が得られるが、前記のようなコアピン101を用いるため、コアピン101の長手方向の中間部に設けた穴101bを他の部材の固定等に利用できて、躯体を構成する態様を広げることができる。
図25に示した固定金具91,92は、1枚の金属板を折曲して形成した例を示している。図25(a)は斜視図で、図25(b)は断面図である。すなわち、適宜幅の金属板を長手方向の中間部が正面視正三角形状を形成するように折り曲げるとともに、両端部が重合するようにプレス加工する。そして、固定片91e,92eと面一に延びる延設部91k,92kを備え、この延設部91k,92kと固定片91e,92eに締結具96を挿通する固定穴91i,92i,91m,92mが形成されている。そのほか、結合片91f,92fには前述の場合と同様に貫通穴91j,92jが形成されている。
図26に示した固定金具91,92は、図20の補強金物19の角度変更手段を省略した例であり、また図25のように固定片91e,92eと結合片91f,92fと連結片91g,92gの間の角度を60度にした正三角形状ではなく、正面視直角三角形状にした例である。この場合には、直角を挟む2つの片が取り付け向きによって共に結合片91f,92fとして機能することになる。
すなわち、固定片91e,92eとこれに連続する延設片91k,92kには、締結具96を挿通する固定穴91i,92i,91m,92mを備えるとともに、直角をなす2個の片(結合片91f,92fまたは連結片91g,92g)には、耐力部材93の端部を挿通する貫通穴91j,92j,91n,92nを備える。そして、結合片91f,92fまたは連結片91g,92gのうち、垂直材13、上部垂直材17または上部水平材16に固定されたときに垂直材13または上部垂直材17の固定金具91と上部水平材16の固定金具92との間で互いに対向する片が結合片91f,92fとなり、他の片が連結片91g,92gとなる。固定金具91,92の向きを変えたときはこれらが逆転する。
このように構成された補強金物19では、対向する結合片91f,92fが平行になるように対向させて固定して用いられ、耐力部材93が30度、あるいは60度の角度で傾斜するように固定される。図26固定態様において耐力部材93は30度の角度で斜材の機能を果たす。
この構成によると、図20の補強金物19と同様の作用効果を達する上に、角度変更手段が不要であるので、コストの低減を図れる。
図27は、図26に示した固定金具91,92と同様に正面視直角三角形状に構成した補強金物19を示すが、2個の固定片91e,92eを長手方向の両端に突出させて開放された三角形状に構成した例である。
前述のいずれの補強金物19においても、強度を確保できるように、図示しないが、適宜の補強片を備えたり、リブを形成したりするとよい。
図28は、略三角錐形状に形成した固定金具の例を示し、図28(a)は平面図、図28(b)は底面図、図28(c)は正面図、図28(d)はA−A断面図、図29はその使用状態の一部断面正面図である。すなわち、正三角錐の4つの角部分を切除した形状であり、4つの面のいずれもが垂直材13、上部垂直材17または上部水平材16に面接触する固定片91e,92eにも、耐力部材93の一端部を結合する結合片91f,92fにも、これらを連結する連結片91g,92gにもなる構造である。各片には貫通穴91p,92pが形成され、前記と同様の締結具96や耐力部材93が接続される。各貫通穴91p,92pには、必要に応じてナット96bなどを予め保持しておく。図29の例では前記角度変更手段を備えたものを示したが、これを省略することもできる。
このような構成の固定金具91,92を用いた補助金物19では、前述と同様の作用効果を図ることができる上に、耐力部材93の一端部を連結する面が3面あるので、前記のような角度変更手段を備えることで、耐力部材93の向きを360度いずれの方向にも向けることができて、適用範囲を拡大できる。また、三角錐形状であるため、固定金具91,92自体の強度も高く、例えば前記の補強片91h,92h(図21参照)を省略できる。
また、図30に示すように、固定金具91,92の複数の角部分を閉塞して、この閉塞片99にボルト等を挿通する貫通穴99aを形成すれば、さらに適用範囲や用途を拡大することができる。なお、図30(a)は底面図、図30(b)は断面図である。
以上のような補強金物19を軸組11に固定することによって、前記基礎12と、アンカーボルト22と、結合金物15と、垂直材13、上部垂直材17、水平材14、上部水平材16と、耐力壁11aが、実質的に有機的に結合される。この結合は、水平力がかかったときの荷重を分散させて前記結合金物15に立設した垂直材13および該垂直材13の上方の上部垂直材17にかかる荷重を低減しつつその荷重を前記アンカーボルト22で支持させる間接部11bを形成する結合である。
このように構成された木造軸組では、基礎12に埋設されたアンカーボルト22は、基礎12のうちでも下部に埋設されたアンカーボルト支持具21に固定されており、アンカーボルト支持具21が定着板の役割を果たすので、引き抜き耐力が高い。しかもアンカーボルト22は異形鉄筋からなるので、基礎12を構成するコンクリートとの定着性がきわめて高く、強度の高い保持力が得られる。
このようなアンカーボルト22に対して結合金具15が固定され、この結合金具15が、土台としての水平材14を結合し、柱としての垂直材13を直接立設する。このため、垂直材13にかかる荷重は、結合金物15を介して基礎12とアンカーボルト22で支持される状態となる。
この状態において、垂直材13や水平材14等が結合され、要所に耐力壁構成パネル18がはめ込まれて耐力壁11aが構成され、耐力壁11aは軸組11にかかる水平力に対して協働して抵抗し、軸組11自体の形状を維持しようとする。
そして、水平力がかかったときには、垂直材13等に固定された補強金物19が、垂直材13と水平材14等のみの接合の場合よりも、広い部分で位置関係が保持されるように結合するので、その部分が一つの間接部11bとしての機能を果たす。つまり、垂直材13と上部垂直材17の上端面13a,17aを露出した一部の接合(図2のX部分、Y部分参照)によって荷重を分散するうえ更に、図1に矢印で示したように、補強金物19が固定された複数の関節部11bで、垂直材13等の接合部分にかかる荷重を分散し、上から下に行くほど軽減するとともに、耐力壁11aの剛性に対応し得る強度能力を垂直材13等の接合部分に与える。
これによって、耐力壁11aの剛性で接合部分が破壊されたりすることを防ぐとともに、その剛性を他の部位にも伝達して、基礎12とアンカーボルト22が支持すべき荷重を小さくする。換言すれば、耐力壁11aの剛性を高めても、その剛性を生かすことができる。
この結果、各構成部材が発揮する効果をより効果的に引き出して、全体として強度が高く、耐久性を有する軸組11を得られる。
このように、軸組11全体を一つの系として荷重の流れを考慮し、荷重を分散しながら軽減できる軸組11aを構成しようとするものは過去になく、局所で耐震の構造を採用した軸組とは異なり、全体での剛性を高めるため、脆弱性をもつ部分をなくせる。この結果として、軸組11全体での剛性を増し、耐震性の向上を図ることができることになる。
この発明の構成と、前記一形態の構成との対応において、
この発明の軸部は、前記コアピン101に対応するも、
この発明は前記の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
例えば、補強金物19の固定金具91,92を土台としての水平材14に固定してもよい。