JP5801707B2 - 凝固阻害剤の測定法 - Google Patents

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Description

本発明は、凝固診断の分野の発明であり、試料中のタンパク質分解活性凝固因子の阻害剤(抗凝固剤)、特にトロンビン及び第Xa因子に対する直接的阻害剤、を均質に測定するための方法、並びに、このような方法において使用される試験キットに関する。
一般的な抗凝固療法は、主として凝固促進因子トロンビン(第IIa因子、FIIa)及び第Xa因子(F Xa)を阻害することを目的とする。例えば、凝固因子合成の阻害をもたらすクマディン等のビタミンKアンタゴニストによる経口的抗凝固と、血流中の活性凝固因子の阻害による抗凝固とは、区別される。血流中の活性凝固因子を阻害又は不活性化する抗凝固剤のうちでは、直接的作用を有する抗凝固剤と、間接的作用を有する抗凝固剤とは、区別される。例えばリバロキサバン、ダビガトラン又はメラガトランといった、直接的作用を有する抗凝固剤は、トロンビン又は第Xa因子に結合し、それ故、高度に特異的である。例えばヘパリン類等の、間接的作用を有する抗凝固剤は、例えばアンチトロンビン等の内因性凝固因子阻害剤に結合し、その抗凝固作用を何倍にも増幅する。
血流中で活性凝固因子を阻害する全ての抗凝固剤は、特定の不活性化パターンによって区別される。ある種類の物質、例えば、未分画の高分子ヘパリン、は、トロンビン及び第Xa因子の双方を阻害する。別の物質は、非常に特異的に作用し、それ故、トロンビン(例えば、ヒルジン、ダビガトラン、メラガトラン)又は第Xa因子(例えば、フォンダパリナックス、リバロキサバン等の五糖類)のいずれかを阻害する。
血液凝固系の中心的な凝固促進因子である第Xa因子及びトロンビンの直接的又は間接的阻害剤は、心臓血管疾患及び血栓塞栓障害の治療及び予防においてますます大きな役割を果たしている。これらの阻害剤は、現在の確立されたアッセイ法では、非常に複雑な方法でのみ検出可能である。前記物質のための簡単で感度のよいアッセイが、治療のモニタリングにも、未知の患者試料中の前記物質の検出にとっても、重要となるであろう。これらのアッセイは、比較的多数の構造的に関連のないトロンビン又はF Xa阻害剤を、非常に感度のよい方法で、検出し得る必要がある。
抗凝固剤の測定に現在使用されている発色アッセイは、通常、血漿からなる分析すべき患者試料を、凝固因子の基質と混合することを含む。殆どの血液凝固因子は、セリンエンドペプチダーゼ、即ち、ペプチド結合を切断し得る加水分解酵素、であることから、検出すべき血液凝固因子によって可能な限り特異的に切断され且つ検出可能なシグナル基を有するペプチド基質が、主として利用される。市販もされている確立された発色アッセイは、特に、405nmに吸収ピークを有する発色団、パラ−ニトロアニリン(pNA)及び5−アミノ−2−ニトロ安息香酸(ANBA)、を用いる。生じた黄色を、通常、測光的に測定する。抗凝固剤の測定では、アッセイ混合物中の色濃度は、試料中の抗凝固剤濃度に反比例する。
血液凝固因子の活性を阻害する抗凝固剤を測定するために現在適用されている発色アッセイの第1のグループでは、検査すべき患者試料を、通常、規定量の活性化された凝固因子及びこの凝固因子の基質と混合する。試料中に抗凝固剤がより多く存在するほど、活性化された凝固因子は、より多く阻害され、基質の分解は、より少なくなる。このアッセイ原理に基づく市販のアッセイの例は、添加された第Xa因子の阻害に基づくヘパリン測定のためのシーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス(Siemens Healthcare Diagnostics)によるベリクロム(Berichrom(登録商標))ヘパリンアッセイ、又は添加されたトロンビンの阻害に基づくヒルジン測定のためのシーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクスによるヒルジン活性アッセイである。
抗凝固剤を測定するために現在適用されている発色アッセイの第2のグループでは、検査すべき患者試料を、不活性凝固因子、凝固活性化剤及び凝固因子用の発色性基質と、混合する。凝固活性化剤の添加により、最初に、添加された不活性凝固因子が活性化される。試料中に、より多くの抗凝固剤が存在するほど、活性化された凝固因子が、より多く阻害され、基質は、より分解されなくなる。このアッセイ原理に基づく市販のアッセイの例は、合成直接的トロンビン阻害剤のための、イエナフィン(JenAffin)からのヘモシス(Haemosys(登録商標))−ECA Tアッセイ、又は、凝固活性剤としてのプロトロンビン及びエカリンの添加により試料中で生成されるトロンビン/メイゾトロンビンの阻害に基づきヒルジンを測定するための、イエナフィンからのヘモシス(Haemosys(登録商標))−ECA Hアッセイである。
特許文献1は、抗凝固剤を測定するための別のアッセイ原理を記載している。このアッセイ原理は、同様に、凝固因子特異的基質の切断を測定することを含むが、発色性基質を利用するよりも、むしろ、別の種類のシグナル生成系を利用する。前記系は2つの成分を含んでなり、これらの成分は、インタクトな基質に同時に結合するとき、空間的に密に近接するが故に相互作用して、検出可能なシグナル、例えば蛍光又は化学発光、を生じる。基質のペプチド結合の切断の結果、これら2つの成分は互いに離れ、それ故、何らシグナルは生成されない。試料中により多くの抗凝固剤が存在するほど、活性化された凝固因子は、より多く阻害され、基質は、より分解しなくなり、より多くのシグナルが生成される。蛍光又は化学発光に基づくアッセイの、発色アッセイを凌ぐ、利点は、基本的には、それらの感度がより良好で、また、全血中での測定を可能にすることである。
切断可能な基質が、前記シグナル系の2成分の間に、ある程度「マウント」されている上述の方法は、基質リガンドがシグナル系成分との会合のための領域を切断部位の両側に有する必要があるという点で、不利である。基質リガンドは、通常、合成された低分子ペプチド基質であり、シグナル系成分との結合のための2つの人工的な残基、例えばアミノ末端Flagタグ及びカルボキシ末端ビオチン残基、を有する。しかしながら、かかる残基の低分子量基質へのカップリングは、ペプチドの構造を、検出すべき酵素によってそれがもはや結合され又は切断されないように、変えてしまうリスクを常に有しており、それ故、適切な基質リガンドを提供することは技術的に複雑である。
欧州特許出願公開EP−A1−2177625
従って、空間的に密に近接するが故に相互作用し且つ検出可能なシグナルを生成する2つの成分を用いる、抗凝固剤を測定するための既知の方法を修正して、任意のシグナル系成分との会合のための2以上の人工的な残基を有する必要がない低分子リガンドを使用し得るようにすることが望ましい。
この目的は、抗凝固剤を含有すると思われる試料の一部標本を、規定量のタンパク質分解活性凝固因子及びこのタンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが該因子によりペプチド結合において切断されないリガンドと、混合すること、並びに、前記活性化された凝固因子への前記リガンドの結合の結果として、シグナル生成系により発生されるシグナルを測定することにより、達成される。試料中に存在する活性化された凝固因子の阻害剤、即ち抗凝固剤、は、濃度に依存して、タンパク質分解活性凝固因子の活性部位への結合に関して、リガンドと競合し、その結果、シグナル生成を阻害する。試料中に抗凝固剤がより多く存在するほど、生成されるシグナルは少なくなる。
それ故、本発明は、以下の工程を備える、試料中のタンパク質分解活性凝固因子の阻害剤、即ち抗凝固剤、を測定する方法に関する。
a)以下の成分
i. 試料の一部標本、
ii. 規定量のタンパク質分解活性凝固因子、
iii. タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが、該因子によりペプチド結合において切断されない、少なくとも1つのリガンド、並びに
iv. シグナル生成系の第1及び第2の成分であって、
前記シグナル生成系の前記第1及び第2の成分が互いに密に近接させられたときに、検出可能なシグナルが生成され、ここで、前記タンパク質分解活性凝固因子は、インキュベーション中に前記シグナル生成系の前記第1の成分と会合しているか又は会合し得るものであり、且つ、前記リガンドは、インキュベーション中にシグナル生成系の前記第2の成分と会合しているか又は会合し得るものである、第1及び第2の成分;
を含んでなる反応混合物を準備しインキュベートする工程;並びに
b)前記シグナル生成系の前記シグナル−ここで、前記シグナルの振幅は試料中の抗凝固剤濃度に反比例するものである−を測定する工程。
用語「抗凝固剤」は、本発明の文脈においては、天然又は合成起源であってヒト又は動物におけるインビボの凝固系の阻害を意図して用いられるタンパク質分解活性凝固因子の阻害剤に対して、用いられる。これは、また、多数の結合部位において酵素と結合するヒルジン又はヘパリン等の高分子量の基質のみならず、酵素の活性部位に結合するのみであって結合反応性を阻害するにすぎない、リバロキサバン、ダビガトラン又はメラガトラン等の低分子量化合物をも、包含する。用語「抗凝固剤」及び「タンパク質分解活性凝固因子の阻害剤」は、本発明では同義的に使用される。
用語「リガンド」は、本発明の文脈においては、タンパク質分解活性凝固因子の活性部位中に結合し、それ故に、結合部位に関し阻害剤と競合する物質を、意味する。しかしながら、好適なリガンドは、タンパク質分解活性凝固因子によってペプチド結合において切断されない。その理由は、これらのリガンドが前記タンパク質分解活性凝固因子により切断可能なペプチド結合を欠くこと、即ち、それらがタンパク質分解活性凝固因子により加水分解され得る何らのペプチジル結合(R−CONH−R、R=アミノ酸残基)を持たないからである。可逆的及び不可逆的結合性のいずれのリガンドも好適である。
リガンドは、合成により、組換えにより若しくはバイオテクノロジーにより、生成された分子でもよく、又は天然に産出する分子でもよい。
リガンドは、酵素の天然の基質の配列に由来する配列を有するペプチド誘導体であってもよい。本発明のためのペプチド誘導体リガンドは、それがタンパク質分解活性凝固因子により加水分解的に切断されない点で、ペプチド基質とは異なるが、一方、ペプチド基質の切断によりフラグメントが生じ、これらのフラグメントは酵素の活性部位から遊離され、且つ、酵素は変化せずに反応から再出現する。
好適なペプチド誘導体は、好ましくは、3ないし約150アミノ酸残基を含んでなる。タンパク質分解活性凝固因子によって本発明のペプチド誘導体がペプチド結合において切断されるのを妨げ得るためには、後者のカルボキシ末端カルボキシル基は、アルデヒド(−CHO)、ケトン(−COR;R=アルキル又はアリール)、トリフルオロメチルケトン(−COCF3)、α−ケトカルボン酸(−COCOOH)、α−ケトアミド(−COCONHR;R=アルキル又はアリール)、及びα−ケトエステル(−COCOOR;R=アルキル又はアリール)、エステル(−COOR;R=アルキル又はアリール)、ボロン酸(−B(OR)2)、クロロメチルケトン(−COCH2Cl)、及びフッ化スルホニル(−SO2F)からなる群から選ばれる官能基で置換されるのが好ましい。更に、ペプチド誘導体は、構造的に修飾されていても、例えば、天然産出L−アミノ酸の代わりに部分的にD−アミノ酸を使用しても、よい。
表1は、可逆的及び不可逆的結合性ペプチド誘導体リガンドのための、代表的な官能基の例を含む。
Figure 0005801707
トロンビンの活性部位中に結合するが、該化合物によりペプチド結合において切断されることはない、ペプチド誘導体リガンドの例は:
・ H−D−Phe−Pro−Arg−H
・ Me−D−Phe−Pro−Arg−H
・ H−D−Phe−Pro−Agm
・ H−D−Phe−Pro−Arg−CH2−Cl
・ H−D−Phe−Pro−Arg−CH2
・ Boc−DL−Dpa−Pro−Arg−H
・ Ac−D−Phe−Pro−ボロArgピナンジオールエステル
・ D−Phe−Pro−NH−CH(メトキシプロピル)−P(O)(OPh)2
である。
第Xa因子の活性部位中に結合するが、該因子によってペプチド結合において切断されることはない、ペプチド誘導体リガンドの例は:
・ D−Arg−Gly−Arg−H
・ ダンシル−Glu−Gly−Arg−CH2Cl
である。
上述のペプチド誘導体リガンドについては、クレソン(Claeson,G)、「Blood Coagulation and Fibrinolysis」、1994年、第5巻、p.411−436も参照。
リガンドは、また、例えば、アルギニンエステル、アミジノフェニルアラニンエステル、p−グアニジノフェニルアラニンエステル、3−アミジノフェニルアラニンエステル、二塩基性(アミジノアリール)プロパン酸誘導体又はオキサゾリジノン誘導体といった、ペプチド化合物のグループに属さない化合物であってもよい。
トロンビンの活性部位中に結合するが、該化合物によってペプチド結合において切断されないアルギニン誘導体リガンドは、例えば、N−α−アリールスルホニルアルギニンアミド(R1−SO2−Arg−N−R2/R3;R1=疎水性脂肪族又は芳香族基)(クレソン(Claeson,G)、「Blood Coagulation and Fibrinolysis」、1994年、第5巻、p.411−436)である。
トロンビンの活性部位中に結合するが、該化合物によってペプチド結合において切断されないアミジノフェニルアラニン誘導体は、例えば、N−α−(β−ナフチルスルホニル−4−アミジノフェニルアラニンピペリジド又はN−α−(β−ナフチルスルホニル−グリシル)−4−アミジノフェニルアラニンピペリジド(クレソン(Claeson,G)、「Blood Coagulation and Fibrinolysis」、1994年、第5巻、p.411−436)である。
トロンビンの活性部位中に結合するが、該化合物によってペプチド結合において切断されないp−グアニジノフェニルアラニン誘導体リガンドは、例えば、Tos−Gpa−ピペリジド(クレソン(Claeson,G)、「Blood Coagulation and Fibrinolysis」、1994年、第5巻、p.411−436)である。
第Xa因子の活性部位中に結合するが該因子によってペプチド結合において切断されない3−アミジノフェニルアラニンエステル誘導体リガンドは、例えば、N−α−(β−ナフチルスルホニル−グリシル)−3−アミジノフェニルアラニン(クレソン(Claeson,G)、「Blood Coagulation and Fibrinolysis」、1994年、第5巻、p.411−436)である。
第Xa因子の活性部位中に結合するが該因子によってペプチド結合において切断されない二塩基性(アミジノアリール)プロパン酸誘導体リガンドは、例えば、(2S)−2−[4−[[(3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル]オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロパン酸(ナガハラ(Nagahara,T.)ら、「J.Med.Chem.」、1994年、第37巻、p.1200−1207)である。
第Xa因子の活性部位中に結合するが該因子によってペプチド結合において切断されないオキサゾリジノン誘導体リガンドは、例えば、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド(ローリグ(Roehrig,S.)ら、「J.Med.Chem.」、2005年、第48巻、第19号、p.5900−5908)である。
可逆的結合性リガンドとは、少なくとも1つの天然又は合成阻害剤により、濃度に依存して、タンパク質分解活性凝固因子の活性部位から、除去し得るリガンドを、意味する。
トロンビンに可逆的に結合する好適なリガンドの例は、例えば、H−D−Phe−Pro−Arg−H、Me−D−Phe−Pro−Arg−H又はH−D−Phe−Pro−Agmといった、ペプチド誘導体である。アグマチン(Agm)のカルボキシル基は、水素で置換されている。可逆的にトロンビンに結合する他のリガンドは、N−α−アリールスルホニルアルギニンアミド(R1−SO2−Arg−N−R2/R3)、又はアミジノピペリジン誘導体、例えばN−α−(β−ナフチルスルホニル)−4−アミジノフェニルアラニンピペリジン、又はp−グアニジノフェニルアラニン(Gpa)、アミジノフェニルアラニン(Apa)の誘導体、例えばTos−Gpa−ピペリジド及びTos−Apa−ピペリジド、又は他のペプチドアミノボロン酸又はペプチドアミノホスホン酸、例えばAc−D−Phe−Pro−NH−CH(CH2−フェニル)−B−OPin及びD−Ala−Pro−NH−CH(メトキシプロピル)−P(O)(OPh)2である。
第Xa因子へ可逆的に結合する好適なリガンドの例は、例えば、D−Arg−Gly−Arg−H又はベンズアミジン誘導体といったペプチド誘導体、及び、例えば、N−α−(β−ナフチルスルホニル−グリコリル)−3−アミジノフェニルアラニンといった3−アミジノフェニルアラニンエステルである。
不可逆的結合性リガンドとは、タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に、濃度に依存せずに、結合し、それが酵素と例えば共有結合を形成しその活性部位が不可逆的に不活性化されるように酵素を変性するが故に、もはや除去することができないリガンドを意味する。典型的な不可逆的結合性リガンドは、酵素の活性部位内へそれらを導入するための部分及び酵素、即ち、タンパク質分解活性凝固因子の場合には活性部位中のセリンのヒドロキシル官能基、との間で共有結合を形成し得る化学的反応性基から構成される。酵素と共有結合を形成するためには、官能基の一部がリガンドから除去され、それが次に同一の反応工程で、酵素に共有結合する。
トロンビンに不可逆的に結合する好適なリガンドの例は、H−D−Phe−Pro−Arg−CH2−Cl及びH−D−Phe−Pro−Arg−CH2Fである。
第Xa因子に不可逆的に結合する好適なリガンドの例は、ダンシル−Glu−Gly−Arg−CH2Clである。
可逆的及び不可逆的結合性リガンドは、その反応速度論によって識別し得る。一定の基質濃度(S)において、vを反応速度として、1/vをリガンド濃度(i)の関数としてプロットすることによって、直線が得られる。2つ以上の異なる基質濃度(S1、S2、、、SN)を使用するとき、直線は単一の点で交差する。この点のx軸の値は、−Kiに相当し、Kiは、結合定数に相当する(図3、詳細参照)(ディクソン(Dixon,M.)、「Biochem J」、1953年、第55巻、p.170−177)。不可逆的阻害については、曲線はx軸上の単一の点で交わり、これも、また、−Kiに相当する。
好適なリガンドは、タンパク質分解活性凝固因子に対して、測定すべき抗凝固剤の親和性に相当するか又はそれより低い、結合親和性を有する。抗凝固剤として用いるトロンビン阻害剤は、トロンビンに対して、2.7×10-14モル(ヒルジン)ないし1.9×10-8モル(アルガトロバン)の範囲の結合定数を示す(プラサ(Prasa,D.)ら、「Thromb Haemost」、1997年、第77巻、p.498−503)。トロンビン阻害剤は、トロンビンの他に、また、F Xaにも、但し実質的に低い親和性で、即ち、例えばアルガトロバンについては、2.1×10-4モルという、より大きい結合定数で結合する(プラサ(Prasa,D.)ら、「Tharomb Haemost」、1997年、第78巻、p.1215−1220)。F Xa阻害剤は、8x10-11モル(アピキサバン)ないし6.6×10-9モル(LY517717ジフマル酸エステル)の範囲内の結合定数を有し、前記F Xa阻害剤は、また、トロンビンに対しある程度結合するが例えばリバロキサバンについては10,000倍まで弱く結合する(ペルズボーン(Perzborn,E.)、「Hamostaseologie」、2009年、第3巻、p.260−267)。可逆的リガンドは、それ故、測定すべき阻害剤によって、タンパク質分解活性凝固因子の活性部位から除去され得る。従って、適切に選択された親和性を有する不可逆的リガンドは、測定すべき薬物を、タンパク質分解活性凝固因子の活性部位から、該当する時間内に除去することができない。一方、親和性は、低すぎてはならない。というのは、そうでなければ何らシグナルは生成され得ないからである。
好適なリガンドの結合定数は、それ故、好ましくは0.0001ないし100,000nM(10-13ないし10-4M)の範囲内、特に好ましくは0.1ないし10,000nM(10-10ないし10-5M)の範囲内、極めて特に好ましくは、1ないし1,000nM(10-9ないし10-6M)の範囲内である。
用語「試料」は、本発明の目的に関して、検出すべき抗凝固剤を含有すると思われる物質を意味する。用語「試料」は、血液、血漿、血清並びに他の体液、排泄物又は抽出物といった、特に、ヒト及び動物の生物学的液体又は組織を含んでなる。
本発明の方法は、試料の一部標本、規定量のタンパク質分解活性凝固因子、タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが該因子によってペプチド結合において切断されない少なくとも1つのリガンド、並びに、シグナル生成系の第1及び第2の成分であって、互いに密に近接させられたときに、検出可能なシグナリングが生成されるような方法で相互作用する成分を含んでなる反応混合物を、準備しインキュベートすることを含んでなる。タンパク質分解活性凝固因子は、シグナル生成系の第1の成分と会合しているか又はインキュベーション中に会合するようになる。リガンドは、シグナル生成系の第2の成分と会合しているか又はインキュベーション中に会合するようになる。タンパク質分解活性凝固因子の活性部位へのリガンドの結合の結果として、シグナル生成系の成分が互いに密に近接させられ、それにより、反応混合物中のタンパク質分解活性凝固因子の活性と相関する検出可能なシグナルが生成される。試料中に存在する抗凝固剤は、濃度に依存して、タンパク質分解活性凝固因子の活性部位への結合に関して、ペプチド結合において切断され得ないリガンドと競合し、結果として、シグナル生成を阻害する。試料中に抗凝固剤がより多く存在するほど、シグナル生成はより少なくなる。シグナル生成は、試料中の抗凝固剤の濃度に反比例するシグナルの振幅で測定される。
本発明の方法は、タンパク質分解活性凝固因子、トロンビン(第IIa因子)、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子又は第XIIa因子の阻害剤を測定するのに、好適である。
どの活性化凝固因子及びどのリガンドを反応混合物に添加するかは、測定すべき抗凝固剤の特異性に依存する。
トロンビンの添加又は第Xa因子の添加、及び、トロンビン特異性又は第Xa因子特異性を有するリガンドの添加は、ヘパリン、即ち高分子量未分画ヘパリン(HMMヘパリン)若しくは低分子量ヘパリン(LMWヘパリン)又はヘパリノイド、の測定に特に好適である。第IIa因子(トロンビン)の添加及びトロンビン特異性を有するリガンドの添加は、直接的トロンビン阻害剤、例えば、アルガトロバン、メラガトラン、キシメラガトラン、ビバリルジン、ダビガトラン、ヒルジン、レピルジン、MCC−977、SSR−182289、TGN−255、TGN−167、ARC−183及びオジパルシルを測定するのに、特に好適である。第Xa因子の添加及び第Xa因子特異的リガンドの添加は、直接的第Xa因子阻害剤、例えばリバロキサバン;アピキサバン;オタミキサバン(これらはキサバンの新規な活性基質クラスにまとめられる);フォンダパリナックス;LY 517717;YM 153;DU−176b;DX−9065a及びKFA−1982、を測定するのに、特に好適である。
反応混合物に添加されたタンパク質分解活性凝固因子は、動物若しくはヒトの組織若しくは体液、例えば血液若しくは血漿、から単離された凝固因子であるか、或いは、動物若しくはヒトの細胞培養物又は真核細胞若しくは、例えば組換え凝固因子を発現する細菌若しくは真菌等の、微生物の培養物の上清若しくは溶解物から単離された凝固因子であってよい。種々の凝固因子の当初は不活性な酵素前駆体を活性化する方法は、当業者に周知である。どの活性化された凝固因子を反応混合物に添加するかは、測定すべき抗凝固剤に依存する。
本発明の方法の1実施態様においては、タンパク質分解活性凝固因子が結合ペアX/Yの第1の結合パートナーXを有し、シグナル生成系の第1の成分が前記結合ペアX/Yの第2の結合パートナーYと会合し、それにより、反応混合物のインキュベーション中に、タンパク質分解活性凝固因子は、結合パートナーX及びYの結合に起因して、シグナル生成系の第1の成分に結合するか又はシグナル生成系の第1の成分に結合するようになる。
結合パートナーX及びYは、互いに特異的に認識し結合する2つの異なる分子である。特異的認識及び結合の例は、抗体−抗原相互作用、ポリヌクレオチド相互作用等である。
好適な結合ペアX/Yは、特に抗原/抗体の組合せであり、結合パートナーXは、タンパク質分解活性凝固因子の抗原エピトープである。抗原エピトープは、天然タンパク質の天然の配列エピトープ又は構造エピトープであってよい。抗原エピトープは、また、修飾された活性凝固因子の異種の配列エピトープ又は構造エピトープであってもよい。異種の配列又は構造エピトープの例は、FLAG、又はHIS又はフルオレセインタグであり、これらは特にペプチド又はタンパク質を標識するのに使用される。他の適切な結合ペアX/Yは、相補的なポリヌクレオチドX及びYである。シグナル生成系の第1の成分と会合する結合パートナーYは、タンパク質分解活性凝固因子が特異的に結合され得るよう選択されるべきである。結合パートナーYは、好ましくは抗体又はその抗原結合フラグメントからなる。特に好適な結合ペアX/Yは、FLAGタグ/抗FLAGタグ抗体、HISタグ/抗HISタグ抗体、フルオレセイン/抗フルオレセイン抗体、ビオチン/アビジン、及びビオチン/ストレプトアビジンである。
本発明方法の別の実施態様においては、タンパク質分解活性凝固因子は、共有結合を介してシグナル生成系の第1の成分に連結される。
好ましい実施態様においては、反応混合物に添加されるリガンドは、シグナル生成系の第2の成分に結合するための、第1の結合ペアA/Bの第1の結合パートナーAを有し、この第2の成分は、対応して、前記結合ペアA/Bの第2の結合パートナーBを有する。特に好ましくは、リガンドは結合パートナーAとして、少なくとも1つのビオチン残基を有する。
結合パートナーA及びBは、互いに特異的に認識及び結合する2つの異なる分子である。特異的認識及び結合の例は、抗体−抗原相互作用、ポリヌクレオチド相互作用等である。
適切な結合ペアA/Bは、特に抗原/抗体の組合せであり、結合パートナーAは、リガンドの抗原エピトープである。抗原エピトープは、天然タンパク質又はタンパク質フラグメントの、天然の配列エピトープ又は構造エピトープであってよい。抗原エピトープは、また、修飾されたペプチドの異種の配列エピトープ又は構造エピトープであってもよい。異種の配列又は構造エピトープの例は、FLAG、又はHIS又はフルオレセインタグであり、これらは特に、低分子量基質、ペプチド又はタンパク質を標識するのに使用される。更なる適切な結合ペアA/Bは、相補的なポリヌクレオチドA及びBである。シグナル生成系の第2の成分と会合する結合パートナーBは、リガンドが特異的に結合し得るよう選択されるべきである。好ましくは、結合パートナーBは、抗体又はその抗原結合フラグメントからなる。特に好適な結合ペアA/Bは、FLAGタグ/抗FLAGタグ抗体、HISタグ/抗HISタグ抗体、フルオレセイン/抗フルオレセイン抗体、ビオチン/アビジン、及びビオチン/ストレプトアビジンである。
リガンドを第2のシグナリング成分と会合させるための可能な結合ペアA/Bは、原則的に、それがそれらの相互結合により、前記タンパク質分解活性凝固因子を第1のシグナリング成分と会合させるための可能な結合ペアX/Yを、妨げないように選択されるべきである。
本発明の1つの利点は、使用されるリガンドが、必須ではないが、結合ペアの第2の人工的な結合パートナーを有し得ることである。
用語「シグナル生成系」は、本発明の目的に関して、互いに密に近接させられたときに、検出可能なシグナルが生成されるように相互作用する、少なくとも第1及び第2の成分を含んでなる系を意味する。
1つの実施態様においては、シグナル生成系の成分は、微粒子状固相、例えばラテックス粒子、であり、その凝集は、比濁分析法又はネフェロメトリ法により測定される。この目的のために、シグナル生成系の第1の成分は、タンパク質分解活性凝固因子と会合しているか又は会合可能であるような性質を有する第1の微粒子状固相からなる。第1の微粒子状固相は、共有結合を介して若しくは結合ペアX/Yを介して、タンパク質分解活性凝固因子に連結されるか、又は、反応混合物中で、結合ペアX/Yを介して、それに連結し得るものとなる。更に、シグナル生成系の第2の成分は、リガンドと会合しているか又は会合可能であるような性質を有する第2の微粒子状固相からなる。第2の微粒子状固相は、共有結合を介して若しくは結合ペアA/Bを介して、リガンドに連結されるか、又は反応混合物中で、結合ペアA/Bを介して、それに連結し得るものとなる。微粒子増強光散乱の原理に基づくイムノアッセイは、1920年頃から知られている(概要については、ニューマン(Newman,D.J.)ら、「Particle enhanced light scattering immunoassay(微粒子増強光散乱イムノアッセイ),Ann Clin Biochem」、1992年、第29巻、p.22−42参照)。好ましくは直径0.1ないし0.5μmの、特に好ましくは0.15ないし0.35μmの、ポリスチレン粒子を使用する。カルボキシル又はアルデヒド官能基を有するポリスチレン粒子を使用することが好ましい。更に、シェル/コア粒子を使用することが好ましい。前記粒子の合成及びリガンドの共有結合性カップリングは、例えば、ポイラ(Peula,J.M.)ら、「Covalent coupling of antibodies to aldehyde groups on polymer carries.(ポリマー担体上のアルデヒド基への抗体の共有結合性カップリング)、Jounal of Materials Science:Materials in Medicine」、1995年、第6巻、p.779−785に記載されている。
本発明方法の別の実施態様においては、シグナル生成系は、互いに密に近接させられ、それ故、互いに相互作用し得るときに、検出可能なシグナルが生成されるように相互作用する、少なくとも第1及び第2の成分を含んでなる。前記成分間の相互作用は、特に、エネルギー転移−即ち、例えば、光又は電子線放射による、そして、例えば、短寿命の一重項酸素等の反応性化学的分子を介する、成分間のエネルギーの直接的転移−を、意味する。エネルギーは、1つの成分から別の成分へ転移されてもよいが、種々の物質のカスケードがエネルギー転移を行なうことも可能である。例えば、前記成分は、例えば、光増感剤及び化学発光物質(EP−A2−0515194、LOCI(登録商標)Technologie)、又は光増感剤と蛍光体(WO 95/06877)、又は放射性ヨウ素<125>と蛍光体(ユーデンフレンド(Udenfriend)ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.」、1985年、第82巻、p.8672−8676)、又は蛍光体と蛍光クエンチャー(US 3,996,345)といった、エネルギー供与体とエネルギー受容体とからなるペアでよい。
互いに相互作用し得る、シグナル生成系の第1の成分及び第2の成分のいずれか一方又は両方は、微粒子固相との共有結合により又は特異的相互作用により、微粒子固相と会合していてもよく、又は微粒子固相に埋め込まれていてもよい。用語「微粒子固相」は、例えば、金属ゾル、シリカ粒子、磁性粒子又は特に好適にはラテックス粒子、等の、懸濁可能な粒子を意味する。直径0.01〜10μmの粒子が好ましく、直径0.1〜1μmの粒子が特に好ましい。
互いに密に近接させられ、その結果、互いに相互作用し得るときに、検出可能なシグナルが生成されるように相互作用する複数の成分を有するシグナル生成系の第1の成分は、タンパク質分解活性凝固因子と会合しているか、又は会合し得るような性質を有するものである。シグナル生成系の第1の成分は、タンパク質分解活性凝固因子と直接的に会合しているか又は会合し得るものであってもよい。タンパク質分解活性凝固因子と間接的に会合しているか又は会合し得る、シグナル生成系の第1の成分が好ましい。この目的のためには、シグナル生成系の第1の成分は、微粒子固相と会合し、これが更に、共有結合的に又は結合ペアX/Yを介して、タンパク質分解活性凝固因子と会合しているか又は結合ペアX/Yを介してタンパク質分解活性凝固因子と会合し得る。
互いに密に近接させられ、その結果、互いに相互作用し得るときに、検出可能なシグナルが生成されるように相互作用する複数の成分を有するシグナル生成系の第2の成分は、リガンドと会合しているか又は会合し得る性質を有するものである。シグナル生成系の第2の成分は、リガンドと直接的に会合しているか又は会合し得るものであってもよい。リガンドと間接的に会合しているか又は会合し得る、シグナル生成系の第2の成分が好ましい。この目的のためには、シグナル生成系の第2の成分は、微粒子固相と会合し、これが更に、共有結合的に又は結合ペアA/Bを介して、リガンドと会合しているか又は結合ペアA/Bを介しリガンドと会合し得る。
タンパク質分解活性凝固因子の阻害剤を測定するための本発明方法の好ましい実施態様においては、試料は、更にフィブリン凝集阻害剤と混合される。フィブリン凝集阻害剤は、トロンビンによって誘起されたフィブリンモノマーの凝集を妨げる物質である。この物質は、フィブリン含有試料においてフィブリン塊の形成を妨げるが、そうでなければ、例えば拡散及びクエンチングを制限することにより測定に対し負のインパクトを与えることになる。好ましいフィブリン凝集阻害剤は、合成ペプチド、例えば、グリシン、プロリン、アルギニン、プロリン配列のペプチド(ペファブロック(Pefabloc(登録商標)FGとして市販、ペンタファーム(Pentaparm)、スイス)、である。フィブリン凝集阻害剤として使用してもよい更に好ましいペプチド、特にグリシン、プロリン、アルギン、プロリン、アラニン配列の好ましいペプチド、は、欧州特許出願公開EP−A2−456 152に記載されている。
タンパク質分解活性凝固因子の直接阻害剤を測定するための本発明方法の好ましい実施態様においては、更に、ポリブレン(Polybrene(登録商標))(臭化ヘキサジメトリン)等のポリアミン、スペルミン、又はポリリジンが反応混合物に添加される。ポリアミンは、ヘパリンによる凝固因子の間接的阻害を阻害する。この方法で、本発明の方法を用いて、ヘパリン誘起性の阻害と直接的阻害とを区別し得る。
試料、規定量のタンパク質分解活性凝固因子、タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが該因子によってペプチド結合において切断されない少なくとも1つのリガンド、並びにシグナル生成系の第1及び第2の成分を含有する反応混合物が準備された後、反応混合物を一定時間インキュベートして、タンパク質分解活性凝固因子、抗凝固剤及びリガンド、並びに、必要に応じて、第1のシグナリング成分とタンパク質分解活性凝固因子との充分な会合及び第2のシグナリング成分とリガンドとの充分な会合のいずれか一方又はその両方を確実にする。用語「充分な」は、方法が、全体として、タンパク質分解活性凝固因子の阻害剤の定量的な方法による測定を可能にすることを意味していると理解されるべきである。特定のアッセイデザインの最適なインキュベーション時間は、実験的に決定し得る。反応混合物は、いくつかの個別の工程において、異なる順序で、かつ異なるインキュベーション時間を用いて準備してもよい。
反応混合物中で生成される、時間の関数としての、シグナル又はシグナル変化は、タンパク質分解活性凝固因子の阻害剤の活性又は量と相関する。タンパク質分解活性凝固因子の阻害剤の活性又は量は、前記相関により、前記シグナル及び時間経過によるシグナル変化を利用して確証し得る。この目的には、標準を用いてキャリブレーションを行なうことが好ましい。前記標準は、タンパク質分解活性凝固因子阻害剤の一定の活性又は量を有する。
本発明は、更に、本発明の方法の様々な実施態様を実行するための試験キットに関する。
第1の試験キットは、以下の個々の成分を含んでなる。
i. 規定量のタンパク質分解活性凝固因子を含んでなる第1の試薬;
ii. タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが該因子によりペプチド結合において切断されない少なくとも1つのリガンドを含んでなる第2の試薬;
iii. シグナル生成系の第1の成分であって、前記第1の試薬からのタンパク質分解活性凝固因子と会合可能な成分、を含んでなる第3の試薬;及び
iv. シグナル生成系の第2の成分であって、第2の試薬からのリガンドと会合可能な成分、を含んでなる第4の試薬。
かかる試験キットを使用する場合、各成分は、個別に試料又は反応混合物に添加され、タンパク質分解活性凝固因子とシグナル生成系の第1の成分との会合、及びリガンドとシグナル生成系の第1の成分との会合は、反応混合物のインキュベーション中に起こる。このことの利点は、タンパク質分解活性凝固因子及びリガンドが、それぞれ、通常の結合ペア、A/B、及びX/Yを介して、例えばストレプトアビジン/ビオチン、アビジン/ビオチン、FLAGタグ/抗FLAGタグ抗体等を介して、各々会合する場合に、第3及び第4の試薬が、それぞれの場合に、普遍的に使用可能な検出試薬でよいことである。
別の試験キットは、以下の個々の成分を含んでなる。
i. シグナル生成系の第1の成分と会合している規定量のタンパク質分解活性凝固因子を含んでなる第1の試薬;
ii. 前記タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが該因子によりペプチド結合において切断されない少なくとも1つのリガンドを含んでなる第2の試薬;及び
iii. シグナル生成系の第2の成分であって第2の試薬からのリガンドと会合し得る成分、を含んでなる第3の試薬。
かかる試験キットを使用する場合、リガンドとシグナル生成系の第2の成分との会合のみが、反応混合物中でのインキュベーション中に起こる。タンパク質分解活性凝固因子は、既に、シグナル生成系の第1の成分と会合している。
別の試験キットは、以下の個々の成分を含んでなる:
i. 規定量のタンパク質分解活性凝固因子を含んでなる第1の試薬;
ii. シグナル生成系の第1の成分であって第1の試薬からのタンパク質分解活性凝固因子と会合可能である成分、を含んでなる第2の試薬;及び
iii. 前記タンパク質分解活性凝固因子の前記活性部位に結合するが該因子によりペプチド結合において切断されない少なくとも1つのリガンドであってシグナル生成系の第2の成分と会合しているリガンドを含んでなる第3の試薬。
かかる試験キットを使用する場合、タンパク質分解活性凝固因子とシグナル生成系の第1の成分との会合のみが、反応混合物中でのインキュベーション中に起こる。リガンドは、既にシグナル生成系の第1の成分と会合している。
更に別の試験キットは、以下の個々の成分を含んでなる:
i. タンパク質分解活性凝固因子であってシグナル生成系の第1の成分と会合している規定量のタンパク質分解活性凝固因子を含んでなる第1の試薬;
ii. タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが該因子によりペプチド結合において切断されない少なくとも1つのリガンドであってシグナル生成系の第2の成分と会合している、リガンドを含んでなる第2の試薬。
かかる試験キットを使用する場合、タンパク質分解活性凝固因子及びリガンドの双方が、既にシグナル生成系の特定の成分と会合している。
中でも、タンパク質分解活性凝固因子及びリガンドのいずれか一方又は両方が既にシグナル生成系の特定の成分と会合している試験キットの利点は、用いるべき試薬の数が最小化され、それによりピペッティングの工程が回避され、ピペッティングエラーのリスクが低減されることである。
略語のリスト
AC アシル−
Agm アグマチン
Ala アラニン
ANBA 5−アミノ−2−ニトロ−安息香酸
Arg アルギニン
B−f−P−R−H ビオチニル−Ttds−D−Phe−Pro−Arg−H
Boc tert−ブチルカーボネート
B−r−P−R−H ビオチニル−Ttds−D−Arg−Pro−Arg−H
Dpa β,β−ジフェニルアラニン
f D−フェニルアラニン
Gly グリシン
Gpa グアニジノフェニルアラニン
His ヒスチジン
IPA イソプロピルアミド
Ki 結合定数
Me メチル−
Ph フェニル−
Phe フェニルアラニン
pNA パラ−ニトロアニリン
Pro プロリン
r D−アルギニン
R 相関係数
Tos トシル−
Ttds 4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミノコハク酸
Z−D−Leu カーボベンゾキシ−D−ロイシン
LOCIテクノロジーによりトロンビン阻害剤を測定するための、本発明の方法の代表的なアッセイデザインの模式図である。タンパク質分解的活性トロンビンは、化学発光剤(ケミビーズ(Chemibead)、CB)で被覆されている微粒子固相に結合されている。シグナル生成系の第2の成分は、光増感剤及びストレプトアビジン(センシビーズ(Sensibead)、SB)で被覆されている微粒子固相からなる。トロンビンの活性部位に結合するが該化合物により切断されず、センシビーズストレプトアビジンに結合するビオチン標識を有するリガンドは、シグナル生成系の2つの成分を密に近接させる。光による光増感剤の励起は、化学発光剤を活性化し得る短寿命の一重項酸素の生成をもたらし、これにより発光シグナルが放出される。トロンビンへの結合に関して、切断されないビオチニル化されたリガンドと、競合するトロンビン阻害剤(坑凝固剤)が試料中に多いほど、発光シグナルの発生は少なくなる。 トロンビン特異的リガンドであるビオチニル−Ttds−D−Phe−Pro−Arg−H及び第Xa因子特異的リガンドであるビオチニル−Ttds−D−Arg−Gly−Arg−Hの、アミノ末端、ビオチニル−4,7,10−トリオキサ−13−トリデカンアミンアミンコハク酸(ビオチニル−Ttds)リンカーの構造式を示す図である。 ビオチニル−Ttds−D−Phe−Pro−Arg−H(B−f−P−R−H)のトロンビン結合定数の測定を示す図である。実施例2によるトロンビンアッセイにおいて、発色性基質濃度4、2及び0.5mMでの反応速度の逆数をリガンド濃度の関数として表示したものである。 ビオチニル−Ttds−D−Phe−Pro−Arg−H(B−f−P−R−H)のトロンビン結合定数の測定を示す図である。図3の拡大詳細図である。 ビオチニル−Ttds−D−Arg−Gly−Arg−H(B−r−G−R−H)のトロンビン結合定数の測定を示す図である。実施例2によるトロンビンアッセイにおいて、発色性基質濃度4、2及び0.5mMでの反応速度の逆数をリガンド濃度の関数として表示したものである。 ビオチニル−Ttds−D−Phe−Pro−Arg−H(B−f−P−R−H)のF Xa結合定数の測定を示す図である。実施例3によるF Xaアッセイにおいて、発色性基質濃度4、2、及び0.5mMでの反応速度の逆数をリガンド濃度の関数として表示したものである。 ビオチニル−Ttds−D−Arg−Gly−Arg−H(B−r−G−R−H)のF Xa結合定数の測定を示す図である。実施例3によるF Xaアッセイにおいて、発色性基質濃度4、2及び0.5mMでの反応速度の逆数をリガンド濃度の関数として表示したものである。 様々な濃度のトロンビン阻害剤;フラグミン、リケミン(liquemin)、アルガトロバン、メラガトラン及びレフルダン(ヒルジン)と、トロンビン被覆ケミビーズ及びストレプトアビジン被覆センシビーズと共に用いられるリガンド;ビオチニル−Ttds−D−Phe−Pro−Arg−H(B−f−P−R−H)とを、用いた標準ヒト血漿中の化学発光シグナル生成を示す図である。 様々な濃度のF Xa阻害剤;フラグミン、リケミン及びリバロキサバン並びに様々な濃度のトロンビン阻害剤;レフルダン(ヒルジン)及びアルガトロバンと、抗F Xa抗体被覆ケミビーズ、F Xa、及びストレプトアビジン被覆センシビーズと共に用いられるリガンド;ビオチニル−Ttds−D−Arg−Gly−Arg−H(B−r−G−R−H)とを、用いた標準ヒト血漿中の化学発光シグナル生成を示す図である。
以下の実施例は、本発明を例証するためのものであり、相互結合により、限定するものとして理解されるべきではない。
実施例1:トロンビン及び第Xa因子ビオチニル−Ttds−ペプチドアルデヒドリガンドの合成
ペプチドアルデヒドである−D−Phe−Pro−Arg−H(クレソン(Claeson,G)、「Blood Coagulation and Fibrinolysis」、1994年、第5巻、p.417参照)、及び−D−Arg−Gly−Arg−H(クレソン(Claeson,G)、「Blood Coagulation and Fibrinolysis」、1994年、第5巻、p.426参照)を、固相上で合成し、Ttdsスペーサー(Ttds=4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミノ−コハク酸(バルトス(Bartos,A.)ら、「Biopolymers」、2009年、第92巻、第2号、p.110−115))で延長し、ビオチンを供給した。化合物、ビオチニル−Ttds−D−Phe−Pro−Arg−H、は、930.15g/モルの分子量を有し、以後、B−f−P−R−Hと略記する。ビオチニル−Ttds−D−Arg−Gly−Arg−Hは、899.10g/モルの分子量を有し、以後、B−r−G−R−Hと略記する。ペプチドアルデヒドは、トリフルオロ酢酸を用いて固相から除去した。化合物は、凍結乾燥された形状で−20℃に保存した。ビオチンリンカーの構造を、図2に示す。
実施例2:ペプチドアルデヒドリガンドのトロンビン結合定数の測定
ペプチドアルデヒドリガンドの速度論的データは、発色アッセイにおいて、様々な基質濃度及びペプチドアルデヒドリガンド濃度で、特定の酵素の活性部位への結合に関してペプチドアルデヒドリガンドと競合する発色性ペプチド基質の加水分解速度を測定することにより、測定した。結合定数(Ki)は、既知の方法(ディクソン(Dixon,M.)、「Biochem J」、1953年、第55巻、p.170−171)により測定した。
トロンビン結合定数は、シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス(Siemens Healthcare Diagnostics)からの、ヒルジン活性アッセイの試薬を使用して測定した。ヒルジン活性アッセイは、ウシトロンビンからなる凍結乾燥されたトロンビン試薬、ヘパリンインヒビター及びアプロチニン、再構成後の濃度が4ミリモル/Lの、tos−Gly−Pro−Arg−ANBA−IPA(トシルグリシル−L−プロピル−アルギニル−5−アミノ−2−ニトロベンゾイルイソプロピルアミド)を含んでなる。トロンビン試薬は、緩衝溶液(トリスヒドロキシメチルアミノメタン、NaCl、pH8.2)中で再構成された。基質試薬の希釈は、脱イオン水を用いて調製した。実施例1により調製されたペプチドアルデヒドリガンドを、水中に溶解し、試料として使用した。B−r−G−R−Hリガンドは、26.1ないし0.815μMの濃度範囲で使用した。B−f−P−R−Hリガンドは、26.1ないし0μMの濃度範囲で使用した。アッセイは、BCS(登録商標)XP凝固分析機(シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス、ドイツ、マールブルグ(Marburg))で自動的に行なった。
反応混合物は、以下のとおりに一緒に混合した:
30μLの試料(ペプチドアルデヒドリガンドであるB−r−G−R−H又はB−f−P−R−H)、
150μLのトロンビン試薬、
50μLの発色性基質試薬(tos−Gly−Pro−Arg−ABNA−IPA)。
mE/分で表した反応速度は、波長405nmにおける反応混合物の光学密度の増加に基づき測定した。このために、反応混合物の光学密度は、B−f−P−R−Hペプチドアルデヒドリガンドについては、15ないし40秒、B−r−G−R−Hペプチドアルデヒドリガンドについては、5ないし16秒の時間間隔で測定した。
可逆的及び不可逆的に結合するリガンドは、それらの反応速度論により識別し得る。切断可能な基質の一定濃度(S)において、1/v(ここで、vは反応速度である)をリガンド濃度(i)の関数としてプロットすることにより、直線が得られる。2つ以上の異なる基質濃度(S1、S2、、、SN)を使用するとき、前記直線は単一の点で交差する。この点のx軸の値は、−Kiに相当し、Kiは、結合定数に相当する(例えば、クレーベ(Klebe,G.)著、「Wirkstoffdesign」、第2版、Spektrum Academischer Verlag,Hydelberg,Germany、2009年、p.52−62、及びディクソン(Dixon,M.)、「Biochem J」、1953年、第55巻、p.170−177)。不可逆的阻害では、曲線は、x軸上の単一の点で交わり、これも、また、−Kiに相当する。
表2は、反応混合物中に用いたペプチドアルデヒドリガンドであるB−f−P−R−Hの濃度と様々な濃度の発色性基質を用いて得られた反応速度の逆数とを、示す。
Figure 0005801707
回帰曲線を、様々な基質濃度におけるリガンド濃度(CB-f-P-R-H)の関数としての1/反応速度のグラフの直線領域においてプロットした(図3及び4)。C基質=0.5mMのとき、濃度0ないし0.04076μMは、直線領域に入らず、それ故、除外された。3つのKi値が回帰曲線の交点から計算され、これらから、Ki値の平均値及びグラフの交点が次に計算された。この方法で得られたKi値から、Ki値の平均値が計算された(表3)。回帰曲線の交点がx軸上にないことから、ペプチドアルデヒドとトロンビンとの結合は、可逆的である。ペプチドアルデヒドリガンドであるB−f−P−R−Hの平均のトロンビン結合定数KiMは、0.131マイクロモル(1.31×10-7モル)である。関連する医薬(治療上有効で適切なトロンビン阻害剤)の結合定数が大きいことから、化合物は、トロンビンを活性凝固酵素として使用する上述の方法によって、高親和性のトロンビン阻害剤を検出するのに適している。
Figure 0005801707
表4は、反応混合物中に用いたペプチドアルデヒドリガンドであるB−r−G−R−Hの濃度と、様々な濃度の発色性基質を用いて得られた反応速度の逆数とを、示す。
Figure 0005801707
回帰曲線を、様々な基質濃度におけるリガンド濃度(CB-r-G-R-H)の関数としての1/反応速度のグラフの直線領域においてプロットした(図5)。3つのKi値が回帰曲線の交点から計算され、これらから、次に、平均のKi値及びグラフの交点が計算された。この方法で得られたKi値から、平均Ki値が計算された(表5)。回帰曲線の交点がx軸上にないことから、ペプチドアルデヒドとトロンビンとの結合は、可逆的である。ペプチドアルデヒドリガンドであるB−r−G−R−Hの平均のトロンビン結合定数KiMは、20.9マイクロモル(2.09×10-5モル)である。該リガンドは、それ故、トロンビンを活性凝固酵素として使用する上述の方法によって、低親和性のトロンビン阻害剤を検出するのに適している。
Figure 0005801707
実施例3:ペプチドアルデヒドリガンドのF Xa結合定数の測定
F Xa結合定数は、シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクスからのベリクロム(Berichrom(登録商標))ヘパリンアッセイの試薬を使用して測定した。ベリクロム(Berichrom(登録商標))ヘパリンアッセイは、
・ 第Xa因子を含有する凍結乾燥された血漿画分と、トリス、NaCl、EDTA及び保存剤等の添加剤とから、なるF Xa試薬、
・ 発色性基質試薬(Z−D−Leu−Gly−Arg−ANBA−メチル−アミド)、
・ 再構成用の希釈試薬、並びに
・ 凍結乾燥されたデキストラン硫酸からなるデキストラン硫酸試薬、
から構成される。
希釈試薬 10mL中に再構成した後の、デキストラン硫酸濃度は0.02g/Lである。F Xa試薬は、再構成されたデキストラン硫酸試薬で再構成する。基質試薬は、脱イオン水 2mLで構成した後、4ミリモル/LのZ−D−Leu−Gly−Arg−ANBA−メチル−アミドを含有する。基質試薬の希釈は、脱イオン水で調製した。実施例1により調製されたペプチドアルデヒドリガンドを、水中に溶解し、試料として用いた。アッセイは、BCS(登録商標)XP凝固分析機(シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス、ドイツ、マールブルグ)で自動的に行なった。
反応混合物は、以下のとおり、混合した:
20μLの水、
15μLの試料(ペプチドアルデヒドリガンドであるB−r−G−R−H又はB−f−P−R−H)、
15μLの水、
150μLのF Xa試薬、
30μLの発色性基質試薬(Z−D−Leu−Gly−Arg−ANBA−メチル−アミド)。
mE/分で表した反応速度は、波長405nmにおける反応混合物の光学密度の増加に基づき測定した。このために、反応混合物の光学密度は、10ないし70秒間の時間間隔で測定した。
表6は、反応混合物中に用いたペプチドアルデヒドリガンドであるB−f−P−R−Hの濃度と、様々な濃度の発色性基質を用いて得られた反応速度の逆数とを、示す。
Figure 0005801707
回帰曲線を、様々な基質濃度におけるリガンド濃度(CB-f-P-R-H)の関数としての1/反応速度のグラフの直線領域においてプロットした(図6)。3つのKi値が回帰曲線の交点から計算され、これらから、次に、平均のKi値及びグラフの交点が計算された。この方法で得られたKi値から、平均Ki値が計算された(表7)。回帰曲線の交点がx軸上にないことから、ペプチドアルデヒドとF Xaとの結合は、可逆的である。ペプチドアルデヒドリガンドであるB−f−P−R−Hの平均のF Xa結合定数KiMは、16.9マイクロモル(1.69×10-5モル)である。それ故、該リガンドは、F Xaを活性凝固酵素として使用する上述の方法によって、低親和性のF Xa阻害剤を検出するのに適している。
Figure 0005801707
表8は、反応混合物中に用いたペプチドアルデヒドリガンドであるB−r−G−R−Hの濃度と、様々な濃度の発色性基質を用いて得られた反応速度の逆数とを、示す。
Figure 0005801707
回帰曲線を、様々な基質濃度におけるリガンド濃度(CB-r-G-R-H)の関数としての1/反応速度のグラフの直線領域においてプロットした(図7)。3つのKi値が回帰曲線の交点から計算され、これらから、次に、平均のKi値及びグラフの交点が計算された。この方法で得られたKi値から、平均Ki値が計算された(表9)。回帰曲線の交点がx軸上にないことから、ペプチドアルデヒドとF Xaとの結合は、可逆的である。ペプチドアルデヒドリガンドであるB−r−G−R−Hの平均のF Xa結合定数KiMは、0.332マイクロモル(3.32×10-7モル)である。関連する医薬(治療上有効で適切なF Xa阻害剤)の結合定数が大きいことから、該化合物は、F Xaを活性凝固酵素として使用する上述の方法によって、高親和性のF Xa阻害剤を検出するのに適している。
Figure 0005801707
実施例4:LOCI試薬により、トロンビン阻害剤を測定するための、本発明の方法
用いた試料は、標準ヒト血漿、及び、濃度を増していく直接的トロンビン阻害剤(ヒルジン、メラガトラン、アルガトロバン)又は間接的(リケミン、フラグミン)トロンビン阻害剤が添加された、標準ヒト血漿であった。
用いたシグナル生成系は、化学発光化合物(2−(4−N,N−ジ−テトラデシル)−アニリノ−3−フェニルチオキセン)及び光増感剤(ビス−(トリヘキシル)−シリコン−t−ブチル−フタロシアニン)からなる、LOCI(登録商標)系であった。化学発光化合物及び光増感剤のいずれも、ラテックス粒子に結合されている。化学発光化合物で被覆された粒子についての用語「ケミビーズ」及び光増感剤で被覆された粒子についての「センシビーズ」もまた、以下の本明細書において使用される。本明細書において用いたLOCIテクノロジーは、分析物への結合により、互いに空間的に密に近接させられる、ラテックス粒子結合化学発光化合物(ケミビーズ)及びラテックス粒子結合光増感剤(センシビーズ)に基づくものであり、結果として光増感剤により生成された一重項酸素が、化学発光化合物を励起し得る。
本明細書で用いたケミビーズは、ウシトロンビンで更に被覆された。このために、ウシトロンビンを、共有結合的にラテックス粒子に連結した。本明細書で用いたセンシビーズは、ストレプトアビジンで更に被覆された。
用いたリガンドは、ビオチニル化ペプチドアルデヒド、ビオチニル−Ttds−D−Phe−Pro−Arg−H(B−f−P−R−H)であった。
トロンビン阻害剤の不在下では、リガンドは、そのビオチン残基によりストレプトアビジン被覆センシビーズに、また、そのペプチド成分によりトロンビン被覆センシビーズに、結合し、化学発光シグナルが発生される(図1をも参照)。トロンビン被覆ケミビーズへの結合に関してリガンドと競合するがセンシビーズには結合し得ないトロンビン阻害剤の存在下では、化学発光シグナルは、トロンビン阻害剤濃度に反比例する。
各場合において、2μLの試料、10μLのフィブリン重合阻害剤ペプチドであるグリシン−プロリン−アルギニン−プロリン(10mg/mL)、20μLのケミビーズ(400μg/mL)及び10μLのリガンド(1.25μM)を合一し、6分間インキュベートした。20μLのセンシビーズ(600μg/mL)の添加及び10分間のインキュベーションの後、混合物に水を満たして250μLとし、化学発光シグナルを測定した。図8に示すとおり、化学発光シグナルは、量り入れた直接的トロンビン阻害剤のタイプ及び濃度の関数として、低減される。量り入れた、トロンビンを間接的に阻害するヘパリン(リケミン、フラグミン)も、また、化学発光シグナルの明確な減少をもたらす。
実施例5:LOCI試薬により、第Xa因子阻害剤を測定するための、本発明の方法
用いた試料は、標準ヒト血漿、及び、濃度を増していく直接的トロンビン阻害剤若しくは間接的トロンビン阻害剤(ヒルジン、アルガトロバン、リケミン)又は第Xa因子阻害剤(リバロキサバン、リケミン、フラグミン)が添加された、標準ヒト血漿であった。
用いたシグナル生成系は、実施例4によるLOCI系であった。
本明細書で用いたケミビーズは、F Xaに対する市販のポリクローナル抗体で更に被覆された。このために、該抗体を、50ngの粒子に対し10mgの抗体のカップリング比で、共有結合的にラテックス粒子に連結した。本明細書で用いたセンシビーズは、ストレプトアビジンで更に被覆された。
用いたリガンドは、ビオチニル化ペプチドアルデヒドであるビオチニル−Ttds−D−Aeg−Gly−Arg−H(B−r−G−R−H)であった。
F Xa阻害剤の不在下では、リガンドは、そのビオチン残基によりストレプトアビジン被覆センシビーズに、また、そのペプチド部分により、それ自体が抗体被覆ケミビーズに結合するF Xaに、結合し、化学発光シグナルが発生される(図1をも参照)。F Xa被覆ケミビーズへの結合に関してリガンドと競合するが、センシビーズには結合し得ないF Xa阻害剤の存在下では、化学発光シグナルは、F Xa阻害剤濃度(例えば、リバロキサバン)に反比例する。しかしながら、トロンビン阻害剤(例えば、アルガトロバン又はヒルジン)の存在下では、トロンビン阻害剤がリガンドに置換し得ないことから、シグナルは低減されない。
ヒトF Xa含有試薬(約1,000 IU/L)10μL及びフィブリン重合阻害剤ペプチドであるグリシン−プロリン−アルギニン−プロリン(10mg/mL)を含有する試薬を、2μLの試料、20μLのケミビーズ(400μg/mL)及び10μLのリガンド(6μM)と混合し、5分間インキュベートした。60μLのセンシビーズ(200μg/mL)の添加及び10分間のインキュベーションの後、混合物に水を満たして260μLとし、化学発光シグナルを測定した。図9に示すとおり、化学発光シグナルは、量り入れた直接F Xa阻害剤及びトロンビン阻害剤のタイプ及び濃度の関数として低減される。量り入れた、F Xaを間接的に阻害するヘパリン(リケミン、フラグミン)も、また、化学発光シグナルの明確な減少をもたらす。

Claims (20)

  1. 以下の工程a)及びb)を備える、試料中のタンパク質分解活性凝固因子の阻害剤を測定する方法。
    a)以下の成分;
    i. 試料の一部標本
    ii. 規定量のタンパク質分解活性凝固因子、
    iii. タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが該因子によりペプチド結合において切断されない、少なくとも1つのリガンド、
    iv. シグナル生成系の第1及び第2の成分であって、
    前記シグナル生成系の前記第1及び第2の成分が互いに密に近接させられたときに、検出可能なシグナルが生成され、ここで、前記タンパク質分解活性凝固因子は、インキュベーション中に前記シグナル生成系の前記第1の成分と会合しているか又は会合し得るものであり、且つ、前記リガンドは、インキュベーション中に前記シグナル生成系の前記第2の成分と会合しているか又は会合し得るものである、第1及び第2の成分;
    を含んでなる反応混合物を準備しインキュベートする工程;並びに
    b)前記シグナル生成系の前記シグナル−ここで、前記シグナルの振幅は試料中の抗凝固剤濃度に反比例するものである−を測定する工程。
  2. 前記タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合する前記リガンドが、前記タンパク質分解活性凝固因子に対しKi=10-13ないし10-4Mの結合定数を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記シグナル生成系の前記第1及び第2の成分が、各々、微粒子固相を有しており、反応混合物中の前記微粒子固相の凝集が測定される、請求項1及び2のいずれか1項に記載の方法。
  4. 前記シグナル生成系の前記第1の成分が化学発光剤であり前記シグナル生成系の前記第2の成分が光増感剤であるか、又は、前記第1の成分が光増感剤であり前記シグナル生成系の前記第2の成分が化学発光剤であって、前記反応混合物中の化学発光が測定される、請求項1及び2のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記化学発光剤が第1の微粒子固相と会合しているか若しくは前記光増感剤が第2の微粒子固相と会合しているか又はその両方である請求項4に記載の方法。
  6. 前記リガンドが第1の結合ペアA/Bの第1の結合パートナーAを有しており、前記シグナル生成系の前記第2の成分が前記第1の結合ペアA/Bの第2の結合パートナーBを有しており、前記リガンドが、前記結合パートナーA及びBの結合に起因して、前記シグナル生成系の前記第2の成分と、会合しているか又はインキュベーション中に会合するようになる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記リガンドがペプチド誘導体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記リガンドが、アルデヒド、ケトン、トリフルオロメチルケトン、α−ケトカルボン酸、α−ケトアミド、α−ケトエステル、エステル、ボロン酸、クロロメチルケトン、及びフッ化スルホニルからなる群から選ばれるカルボキシ末端基を有するペプチド誘導体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記結合パートナーA及びBが、それらが、FLAGタグ/抗FLAGタグ抗体、HISタグ/抗HISタグ抗体、フルオレセイン/抗フルオレセイン抗体、ビオチン/アビジン、及びビオチン/ストレプトアビジンからなる群から選ばれる結合ペアA/Bを形成するように選択される、請求項6に記載の方法。
  10. 前記タンパク質分解活性凝固因子が、第2の結合ペアX/Yの第1の結合パートナーXを有しており、前記第2の結合ペアX/Yの第2の結合パートナーYが前記シグナル生成系の前記第1の成分と会合しており、前記タンパク質分解活性凝固因子が、前記結合パートナーX及びYの結合に起因して、前記シグナル生成系の前記第1の成分と会合しているか又はインキュベーション中にそれと会合するようになる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. トロンビン阻害剤を測定するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、規定量のタンパク質分解活性凝固因子であるトロンビンを含んでなる反応混合物を準備しインキュベートする方法。
  12. トロンビンの活性部位に可逆的に結合するが該化合物により切断されないペプチドであるビオチニル−Ttds−D−Phe−Pro−Arg−Hを含んでなる反応混合物を準備しインキュベートする、請求項11に記載の方法。
  13. ヘパリン、ヘパリン誘導体、ビバリルジン、ヒルジン、ダビガトラン、アルガトロバン、メラガトラン、キシメラガトラン、レピルジン、MCC−977、SSR−182289、TGN−255、TGN−167、ARC−183及びオジパルシルからなる群から選ばれるトロンビン阻害剤を測定するための、請求項11及び12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 規定量のタンパク質分解活性凝固因子である第Xa因子を含んでなる反応混合物を準備しインキュベートする、第Xa因子阻害剤を測定するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  15. ヘパリン並びにフォンダパリナックス、リバロキサバン、アピキサバン、オタミキサバン、LY 517717、YM 153、DU−176b、DX−9065a、及びKFA−1982からなる群から選ばれるヘパリン誘導体第Xa因子阻害剤を測定するための、請求項14に記載の方法。
  16. 第Xa因子の活性部位に可逆的に結合するが該因子により切断されないペプチドであるビオチニル−Ttds−D−Arg−Gly−Arg−Hを含んでなる反応混合物を準備しインキュベートする、請求項14及び15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項による方法を実施するための試験キットであって、以下の個々の成分:
    i. 規定量のタンパク質分解活性凝固因子を含んでなる第1の試薬;
    ii. 前記タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが該因子によりペプチド結合において切断されない少なくとも1つのリガンドを含んでなる第2の試薬;
    iii. シグナル生成系の第1の成分であって、前記第1の試薬からのタンパク質分解活性凝固因子と会合可能な成分、を含んでなる第3の試薬;及び
    iv. シグナル生成系の第2の成分を含んでなる第4の試薬であって、前記成分は、第2の試薬からの前記リガンドに会合可能である;
    を、含んでなり、
    前記シグナル生成系の前記第1及び第2の成分は、前記第1及び第2の成分が互いに密に近接させられたとき、検出可能なシグナルが発生されるように、互いに作用する、キット。
  18. 請求項1〜16のいずれか1項による方法を実施するための試験キットであって、以下の個々の成分:
    i. シグナル生成系の第1の成分と会合している規定量のタンパク質分解活性凝固因子を含んでなる第1の試薬;
    ii. 前記タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが該因子によりペプチド結合において切断されない少なくとも1つのリガンドを含んでなる第2の試薬;及び
    iii. シグナル生成系の第2の成分であって第2の試薬からのリガンドと会合し得る成分;
    を含んでなり、
    ここで、前記シグナル生成系の前記第1及び第2の成分が、前記第1及び第2の成分が互いに密に近接させられたとき、検出可能なシグナルが発生されるように互いに作用する、キット。
  19. 請求項1〜16のいずれかによる方法を実施するための試験キットであって、
    以下の個々の成分:
    i. 規定量のタンパク質分解活性凝固因子を含んでなる第1の試薬;
    ii. シグナル生成系の第1の成分であって第1の試薬からの前記タンパク質分解活性凝固因子と会合可能である成分;及び
    iii. 前記タンパク質分解活性凝固因子の前記活性部位に結合するが該因子によりペプチド結合において切断されない少なくとも1つのリガンドであって前記シグナル生成系の第2の成分と会合しているリガンド;
    を含んでなり、
    ここで、前記シグナル生成系の前記第1及び第2の成分が、前記第1及び第2の成分が互いに密に近接させられたとき、検出可能なシグナルが発生されるように互いに作用する、キット。
  20. 請求項1〜16のいずれかによる方法を実施するための試験キットであって、前記キットが、以下の個々の成分:
    i. シグナル生成系の第1の成分と会合している規定量のタンパク質分解活性凝固因子を含んでなる第1の試薬;
    ii. 前記タンパク質分解活性凝固因子の活性部位に結合するが該因子によりペプチド結合において切断されない少なくとも1つのリガンドであって前記シグナル生成系の第2の成分と会合している第2の試薬;
    を、含んでなり、
    ここで、前記シグナル生成系の前記第1及び第2の成分が、前記第1及び第2の成分が互いに密に近接させられたとき、検出可能なシグナルが発生されるように互いに作用する、キット。
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