JP5799483B2 - 浸炭方法および浸炭装置 - Google Patents
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このような浸炭処理を行うために、例えば、図11に示すような浸炭装置100が用いられる。浸炭装置100は、図11に示すように、熱処理炉150を具備する。熱処理炉150には、加熱コイル110が収容される。ワークWは、加熱コイル110の内側に配置される。熱処理炉150には、熱処理炉150内に浸炭ガス130を供給するガス供給管151および熱処理炉150内から浸炭ガス130を排出するガス排出管152が連結される。浸炭ガス130としては、例えば、プロパンが用いられる。
このような熱処理炉150は、ワークWに浸炭処理を行うに際して、所定の混合ガス雰囲気、あるいは真空雰囲気に調整される。
浸炭装置100は、熱処理炉150内に所定の間浸炭ガス130を保持した後で、ガス排出管152を通じて浸炭ガス130を外部へ排出する(図11に示す矢印G2参照)。
そして、浸炭装置100は、ワークWを窒素ガス等で冷却する。
ここで、熱処理炉150は高価な設備である。従って、浸炭装置100が高価な設備となり、ひいてはワークWに浸炭処理を行うために要するコストが上昇してしまう。
また、ワークWは、熱処理炉150に収容する必要がある。
このため、ワークWは、熱処理炉150に収容可能な形状である必要があった。従って、比較的大きな形状を有するワークWに浸炭処理を行う場合には、ワークWの形状に制約を受ける、あるいはかかるワークWを収容可能な大きな熱処理炉150を用いる必要があった。このため、熱処理炉150を用いることなく浸炭処理を行う技術が求められている。
特許文献1に開示された浸炭方法では、ワーク(鋼板)の片面に塗布型浸炭組成物を塗布した後で浸炭処理を行う。塗布型浸炭組成物としては、オレフィン系重合体(例えばポリエチレンおよびポリプロピレン等)と浸炭剤(例えば木炭粉等)とを配合したもの等が用いられる。
ワークは、塗布型浸炭組成物を塗布した後で焼き付けられる。これにより、ワークの表面に塗布型浸炭組成物が皮膜化する。かかるワークは、複数枚積層された状態で、カバー用鋼板がさらに積層される。そして、積層されるワークおよびカバー用鋼板は、大気雰囲気下でマッフル炉等の所定の加熱機構によって加熱される。
しかし、特許文献1に開示された浸炭方法では、塗布型浸炭組成物を塗布する工程および複数のワークを積層させる工程等、ワークの周辺に浸炭ガスを保持するための工程を別途行う必要があった。
大気雰囲気下に配置されるワークを加熱する加熱機構と、浸炭ガスを噴射するガス噴射口が形成されるガス供給機構とを具備する構成により、ワークに浸炭処理を行う浸炭方法であって、
前記加熱機構によって加熱される前記ワークに、爆発限界未満の濃度の浸炭ガスを、大気雰囲気中にて前記ガス噴射口より直接吹き付ける浸炭工程を行い、
前記浸炭工程では、前記加熱機構およびガス供給機構は、前記ワークの軸心方向または板面に沿って、前記ワークの所定の範囲内で移動するものである。
前記ガス噴射口と前記ワークとの距離をL(mm)とし、
前記ワークに直接吹き付けられる前記浸炭ガスの流量(L/min)と前記ガス噴射口の断面積(mm2)との商をVとしたとき、
前記浸炭工程は、次式を満たす条件にて行われるものである。
L<V×3.44+1.63
前記浸炭工程では、
前記浸炭ガスを予熱した後で、前記ガス噴射口より前記ワークに前記浸炭ガスを直接吹き付けるものである。
前記浸炭工程では、
前記ガス供給機構により供給される前記浸炭ガスを、前記加熱機構を通過させた後で、前記ガス噴射口より前記ワークに直接吹き付けるものである。
大気雰囲気下に配置されるワークを加熱する加熱手段と、浸炭ガスを噴射するガス噴射口が形成されるガス供給手段とを具備する構成により、ワークに浸炭処理を行う浸炭装置であって、
前記ガス供給手段は、
前記加熱手段によって加熱される前記ワークに、爆発限界未満の濃度の浸炭ガスを、大気雰囲気中にて前記ガス噴射口より直接吹き付け、
前記加熱手段およびガス供給手段は、
前記浸炭ガスを前記ワークに吹き付けている間、前記ワークの軸心方向または板面に沿って、前記ワークの所定の範囲内で移動可能であるものである。
前記ガス噴射口と前記ワークとの距離をL(mm)とし、
前記ワークに直接吹き付けられる前記浸炭ガスの流量(L/min)と前記ガス噴射口の断面積(mm2)との商をVとしたとき、
前記ガス供給手段は、次式を満たす条件にて、前記ガス噴射口より前記ワークに前記浸炭ガスを直接吹き付けるものである。
L<V×3.44+1.63
前記ガス噴射口より前記ワークに前記浸炭ガスを直接吹き付ける前に、前記浸炭ガスを予熱するガス予熱手段を具備するものである。
前記ガス予熱手段は、
前記加熱手段に前記ガス供給手段と連通する内部通路を形成し、
前記加熱手段に前記内部通路と連通するとともに前記ガス噴射口に対応する連通孔を形成することにより構成されるものである。
このようなワークWは、所定の支持装置等によって支持される。このとき、ワークWは、その軸心を中心として回転可能に支持される。また、ワークWは、大気雰囲気下に配置される。
また、加熱コイル10は、配管等を介して冷却水を貯溜するタンクに連結される。加熱コイル10の内部通路11には、前記タンクから冷却水が供給可能に構成される。
このとき、ガスノズル20の一端部、すなわち本実施形態では右端部が、加熱コイル10の内側に配置される。このようなガスノズル20は、その軸心方向がワークWの軸心方向と交差するように配置される。言い換えれば、ガスノズル20は、その一端部がワークWに向けられた状態で配置される。
従って、ガスノズル20は、ガス噴射口21がワークWに向けられた状態で配置される。
本実施形態の浸炭ガス30には、イソブタン(C4H10)が用いられる。また、本実施形態の希釈ガスには、窒素ガス(N2)が用いられる。従って、本実施形態の浸炭ガス30は、窒素ガスによって爆発限界未満の濃度、すなわち、イソブタンの爆発限界の濃度である1.8%未満となるように希釈される。
また、昇温工程の間、加熱コイル10およびガスノズル20は、ワークWの軸心方向に沿って所定の範囲内(例えばワークWの軸心方向における長さの範囲内)で往復移動する。これにより、ワークWの温度はta℃まで上昇する。このような昇温工程は、時間t1の間行われる。
また、浸炭工程の間、加熱コイル10およびガスノズル20は、ワークWの軸心方向に沿って所定の範囲内(例えばワークWの軸心方向における長さの範囲内)で往復移動する。これにともなって、浸炭必要部位W1もワークWの軸心方向に沿って往復移動することとなる。また、ワークWは、その軸心を中心に回転する。これにより、ワークWは、その温度がta℃で維持されるとともに、ワークW全体に浸炭ガス30が直接吹き付けられることとなる。
これによれば、ワークWに浸炭処理を行うために要するコストを低減できる。
また、浸炭ガス30、すなわちアセチレンは、大気(空気)と混合して爆発性ガスを生成する。従って、浸炭工程において浸炭装置1が爆発する可能性がある。
ガスノズル20は、図4に示すように、ワークWの板面に沿って配置される。また、加熱コイル10は、ワークWより所定の間隔を空けた状態で配置される。浸炭装置1は、ワークWの板面に沿って往復移動可能に構成される。
従って、従来技術にあるような熱処理炉を用いることなく板状のワークWに浸炭処理を行うことができる(図11参照)。
ここで、板状のワークWは、比較的大きな形状を有する場合がある。つまり、浸炭装置1は、熱処理炉に収容できないような大きさのワークWに浸炭処理を行うことができる。
一方、本実施形態の浸炭装置1では、大気雰囲気下で浸炭処理を行うことができる。このため、ワークWの一部だけに浸炭処理を行う場合には、開かれた空間でワークW、および浸炭装置1の位置を調整できる。
このため、本実施形態の浸炭装置1は、従来技術にあるような熱処理炉を具備する浸炭装置を用いた場合と比較して、簡単にワークWの一部だけを浸炭できる。
従って、ワークWに求められる浸炭深さが深いときおよびワークWの形状が大きいとき等には、昇温工程、浸炭工程、および冷却工程に要する時間を長く設定すればよい。一方、ワークWに求められる浸炭深さが浅いときおよびワークWの形状が小さいとき等には、昇温工程、浸炭工程、および冷却工程に要する時間を短く設定すればよい。
拡散工程は、昇温工程の後で行われる。拡散工程では、ワークWの温度が加熱コイル10によって加熱された状態で保持される。一方、浸炭ガス30の吹付は行われない。これによれば、ワークWの表面に固溶された炭素をワークWの内部に拡散させることができる。
図5(a)に示すように、実験に用いたワーク(試料)Wとしては、Φ18×40の形状に形成されたクロム鋼(SCR420)を用いた。
図5(b)に示すように、ガスノズル20は、チューブ状部材の軸心位置を中心に等間隔を空けて軸心方向に沿って貫通する二箇所の流通経路を有している。また、貫通した流通経路は、それぞれΦ1の形状に形成した。ガス噴射口21は、かかる貫通した二箇所の流通経路がチューブ状部材の外部に開口した部分であり、浸炭ガス30を噴射するための開口部である。
そして、図3に示す浸炭方法における浸炭工程の時間t2は5秒に設定した。
また、実験は大気雰囲気下で行った。
また、ワークWに直接吹き付けられる浸炭ガス30の流量を「流量Q(L/min)」とする。
そして、ガス噴射口21の断面積を「断面積A(mm2)」とする。
従って、ワークWに浸炭ガス30を直接吹き付けて浸炭させる場合には、ガス噴射口21とワークWとの距離Lおよび浸炭ガス30の流量Qに相関性があることがわかった。
例えば、ガス噴射口21の断面積Aを狭くして浸炭ガス30を噴射した場合、ガス噴射口21から噴射される浸炭ガス30の勢いは増加する。具体的には、ガス噴射口21の断面積Aを半分にすると、浸炭ガス30の勢いは二倍となる。
また、ガス噴射口21の断面積Aを広くして浸炭ガス30を噴射した場合、ガス噴射口21から噴射される浸炭ガス30の勢いは減少する。具体的には、ガス噴射口21の断面積Aを二倍にすると、浸炭ガス30の勢いは半分となる。
なお、以下において、浸炭ガス30の流量Qをガス噴射口21の断面積Aにて除して得られた商を「商V」と称する。
L<V×3.44+1.63・・・(1)
また、ガスノズル20は、上記式(1)を満たす条件の範囲内で、ガス噴射口21よりワークWに浸炭ガス30を直接吹き付ける。
これによれば、ワークWの周辺に浸炭ガス30を保持することなくワークWに浸炭処理を行うことができる。
ヒーター40は、ガスノズル20のガス噴射口21が形成される側の端部に取り付けられる。
また、浸炭工程では、ヒーター40によって浸炭ガス30を予熱した後で、ガス噴射口21よりワークWに浸炭ガス30を直接吹き付ける。
ヒーター40は、浸炭ガス30が熱分解し易くなるという観点より、浸炭ガス30をより高い温度、例えば、ワークWの温度に近い温度まで予熱することが好ましい。
具体的には、本例における浸炭装置1は、図9および図10に示すように、ガスノズル20・20・・・を加熱コイル10の外周面に連結する。ガスノズル20・20・・・は、内部通路11と連通される。
加熱コイル10には、接続部13・13の間および加熱コイル10の円環状に形成される部分の一部に形成される絶縁部14を有する。絶縁部14は、電流が流れない(遮断する)所定の絶縁体によって構成される。
これにより接続部13・13のいずれか一方より交流電流が流されたとき、かかる交流電流は、加熱コイルの円環状に形成された部分に流された後で、接続部13・13のいずれか他方に流される。
つまり、浸炭工程では、加熱コイル10の温度の上昇によって、加熱コイル10に、より詳細には、加熱コイル10の接合部位(例えば加熱コイル10と接続部13・13との連結部分等)に負荷がかかる。
一方、加熱コイル10は、その熱が浸炭ガス30に伝導される。従って、加熱コイル10の温度は低下する、換言すれば、加熱コイル10は、浸炭ガス30によって冷却される。
つまり、浸炭装置1は、図8に示すようなヒーター40等を具備することなく浸炭ガス30を予熱できる。また、浸炭装置1は、前述したような冷却水を貯溜するタンクを具備することなく加熱コイル10を冷却できる。
このように、ガス予熱手段は、加熱コイル10にガスノズル20・20・・・と連通する内部通路11を形成し、加熱コイル10に内部通路11と連通するとともに外部に開口する複数の連通孔12・12・・・を形成することにより構成される。
また、浸炭装置1は、浸炭ばらつきを抑制できるとともに温度の上昇によって受ける加熱コイル10の負荷を低減できる。
このように構成される浸炭装置1でワークWに浸炭処理を行うとき、ワークWに直接吹き付けられる浸炭ガス30は、ワークWおよび前記囲いの間に挟まれる範囲に存在する。従って、浸炭ガス30は、ワークWより離れにくくなる。つまり、ワークWの放射熱を受けやすくなる。このため、浸炭ガス30の温度が安定する。
10 加熱コイル(加熱機構、加熱手段)
11 内部通路
20 ガスノズル(ガス供給機構、ガス供給手段)
21 ガス噴射口
30 浸炭ガス
L ガス噴射口とワークとの距離
W ワーク
Claims (8)
- 大気雰囲気下に配置されるワークを加熱する加熱機構と、浸炭ガスを噴射するガス噴射口が形成されるガス供給機構とを具備する構成により、ワークに浸炭処理を行う浸炭方法であって、
前記加熱機構によって加熱される前記ワークに、爆発限界未満の濃度の浸炭ガスを、大気雰囲気中にて前記ガス噴射口より直接吹き付ける浸炭工程を行い、
前記浸炭工程では、前記加熱機構およびガス供給機構は、前記ワークの軸心方向または板面に沿って、前記ワークの所定の範囲内で移動する、浸炭方法。 - 前記ガス噴射口と前記ワークとの距離をL(mm)とし、
前記ワークに直接吹き付けられる前記浸炭ガスの流量(L/min)と前記ガス噴射口の断面積(mm2)との商をVとしたとき、
前記浸炭工程は、次式を満たす条件にて行われる請求項1に記載の浸炭方法。
L<V×3.44+1.63 - 前記浸炭工程では、
前記浸炭ガスを予熱した後で、前記ガス噴射口より前記ワークに前記浸炭ガスを直接吹き付ける請求項1または請求項2に記載の浸炭方法。 - 前記浸炭工程では、
前記ガス供給機構により供給される前記浸炭ガスを、前記加熱機構を通過させた後で、前記ガス噴射口より前記ワークに直接吹き付ける請求項3に記載の浸炭方法。 - 大気雰囲気下に配置されるワークを加熱する加熱手段と、浸炭ガスを噴射するガス噴射口が形成されるガス供給手段とを具備する構成により、ワークに浸炭処理を行う浸炭装置であって、
前記ガス供給手段は、
前記加熱手段によって加熱される前記ワークに、爆発限界未満の濃度の浸炭ガスを、大気雰囲気中にて前記ガス噴射口より直接吹き付け、
前記加熱手段およびガス供給手段は、
前記浸炭ガスを前記ワークに吹き付けている間、前記ワークの軸心方向または板面に沿って、前記ワークの所定の範囲内で移動可能である、浸炭装置。 - 前記ガス噴射口と前記ワークとの距離をL(mm)とし、
前記ワークに直接吹き付けられる前記浸炭ガスの流量(L/min)と前記ガス噴射口の断面積(mm2)との商をVとしたとき、
前記ガス供給手段は、次式を満たす条件にて、前記ガス噴射口より前記ワークに前記浸炭ガスを直接吹き付ける請求項5に記載の浸炭装置。
L<V×3.44+1.63 - 前記ガス噴射口より前記ワークに前記浸炭ガスを直接吹き付ける前に、前記浸炭ガスを予熱するガス予熱手段を具備する請求項5または請求項6に記載の浸炭装置。
- 前記ガス予熱手段は、
前記加熱手段に前記ガス供給手段と連通する内部通路を形成し、
前記加熱手段に前記内部通路と連通するとともに前記ガス噴射口に対応する連通孔を形成することにより構成される請求項7に記載の浸炭装置。
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