以下、本発明に係る車両用シート装置10の第1の実施形態について図1乃至図6に基づいて説明する。本実施の形態の車両用シート装置10は、図1に示すように、シートクッション1とシートバック2とを有する。シートバック2はその下端部が、シートクッション1の後端部に前後方向に傾動自在に支持されている。シートバック2は、下部シートバック21と上部シートバック22とヘッドレスト23とを有する。下部シートバック21は、下端部にてシートクッション1の後端部に前後方向に傾動自在に支持されており、シートバック2全体をシートクッション1に接続している。上部シートバック22は、下端部にて下部シートバック21の上端部に前後方向に傾動自在に支持されている。ヘッドレスト23は、上部シートバック22の上端部にて上下方向の間隔を伸縮自在に支持されている。なお、以下の説明において使用する「前後、左右(幅)、上下」の方向は車両のそれを基準として記述する。
下部シートバック21と上部シートバック22との間には、自動車の主に前席シートに搭載されるシート調整装置100が配設されている。シート調整装置100は、左右一対の中折れ機構5および各中折れ機構5の略中間部に配置される中折れ機構駆動装置6(図1、2参照)を有している。中折れ機構5は上部シートバック22を下部シートバック21に対して前後方向に傾動させる機構であり、中折れ機構駆動装置6は中折れ機構5を駆動する装置である。
さらに各部の構成を詳述すると、シートバック2における下部シートバック21内にはサイドフレームアッセンブリ3が配設され、上部シートバック22内にはアッパークロスメンバ4が配設されている。
サイドフレームアッセンブリ3は、下部シートバック21の幅方向の両端部に互いに面が対向するように1つずつ設けられた板状体であるサイドフレーム本体部31a、31b(本発明のサイドフレームに該当する)から構成されている。サイドフレーム本体部31a、31bは、各上端部間がサイドフレーム連結部材32で連結され、各下端部間がサイドフレーム連結部材39で連結されている(図2参照)。またサイドフレーム本体部31a、31bの各下端部がシートクッション1内に配設されるシートクッションフレーム7の後端部に傾動自在に支持されるリクライニング機構8に固定されている(図1参照)。
アッパークロスメンバ4は、上部シートバック22の幅方向の両端部に互いに面が対向するように1つずつ設けられた板状体であるアッパークロスメンバ本体部41a、41b(本発明のアッパークロスメンバの連結部材に該当する)と、それらアッパークロスメンバ本体部41a、41bの上端部の間に跨設され両者の間を連結するパイプフレーム42とから構成されている(図2参照)。パイプフレーム42の上方にはヘッドレスト23を上下方向の間隔を伸縮自在に保持可能なヘッドレスト保持機構(図略)の保持部42a、42aが配設されている。
アッパークロスメンバ本体部41a、41bは、回転ヒンジ44a、44bによりサイドフレーム本体部31a、31bに回動自在に連結されている。サイドフレーム本体部31a、31bとアッパークロスメンバ本体部41a、41bとの間には、アッパークロスメンバ本体部41a、41bをサイドフレーム本体部31a、31bに対して傾動させる機構である前述した同一構造の中折れ機構5が夫々配設されている。サイドフレーム連結部材32には、前述した中折れ機構駆動装置6が配設されている。中折れ機構5は、中折れ機構駆動装置6に駆動されてアッパークロスメンバ本体部41a、41bをサイドフレーム本体部31a、31bに対し傾動させる。
まず中折れ機構5について説明する。中折れ機構5は、図3に示すように、サイドフレーム本体部31a、31bとアッパークロスメンバ本体部41a、41bとの間を連結する、左右一対の梃子形リンク51(本発明の第1リンク部材に該当する)と、左右一対の支点リンク52(本発明の第2リンク部材に該当する)と、梃子形リンク51の他端部と回動自在に連結される伸縮一端部89と、支点リンク52の一端部と回動自在に連結される伸縮他端部90とを備えた左右一対のネジ・ギヤ機構53(本発明の伸縮機構に該当する)と、を有する。
また、中折れ機構5は、梃子形リンク51をアッパークロスメンバ本体部41a、41bに回動自在に連結するために梃子形リンク51の一端部に挿入される左右一対の鍔付きブッシュ33(本発明のアッパークロスメンバ側鍔付きブッシュに該当する)と、左右一対の支点リンク52および左右一対のネジ・ギヤ機構53をサイドフレーム本体部31a、31bに回動自在に連結するために支点リンク52の小径取付穴52bおよびネジ・ギヤ機構53の伸縮他端部90に挿入される左右一対の鍔付きブッシュ34(本発明のサイドフレーム側鍔付きブッシュに該当する)とを有する。
また、中折れ機構5は、鍔付きブッシュ33および鍔付きブッシュ34をアッパークロスメンバ本体部41a、41bおよびサイドフレーム本体部31a、31bに押圧して固定するため各鍔付きブッシュ33、34の内径穴に挿通される左右一対の2個のボルト35、36を有する。
さらに中折れ機構5は、サイドフレーム本体部31a、31bおよびアッパークロスメンバ本体部41a、41bの外側面にボルト35、36が螺合するための左右一対の2個のナット(本発明のめねじ部に該当する)37、38をそれぞれ有する。ナット37、38は、めねじの軸線が各鍔付きブッシュ33、34の各内径穴の軸線と同軸になるように配置後、サイドフレーム本体部31a、31bおよびアッパークロスメンバ本体部41a、41bの外側面に溶接され固定されている。
次に、中折れ機構5、および中折れ機構駆動装置6の構成を図3乃至図5、およびリンク機構の連結状態を模式的に説明した図6を参照して詳述する。まず中折れ機構5について説明する。なお、本実施形態においては構成および作用が同様である左右一対の中折れ機構5、5を有しているが以後、必要のある場合を除いて一方の中折れ機構5についてのみ説明を行なうものとする。
本発明の第1リンク部材に該当する中折れ機構5の梃子形リンク51は、通常の腕状のリンクではなく略円盤状のリンクに形成されている。梃子形リンク51の中心から夫々逆向きの径方向に偏心した2箇所の穴部が、形成されている。2箇所の穴部はそれぞれアッパークロスメンバ本体部41a、41bおよびネジ・ギヤ機構53の送りネジ87が有する伸縮一端部89と回動自在に連結されるように形成されている。
梃子形リンク51は、カシメにより一体化される偏心リング71とアーム部材72とを有している。偏心リング71は、正心部71a、及びつば部71bを有する円盤状に形成されている。正心部71aは、外径が後述する支点リンク52の大径取付穴52aに嵌入されたブッシュ73の内径と略同径に形成されている。この正心部71aには、正心部71aの回転中心点(連結点P)から径方向に偏心した位置に偏心穴71c(連結点Q)が穿設されている(図6参照)。また偏心穴71cの近傍にはカシメピン78を貫通させるカシメ用穴71dが穿設されている。つば部71bは、正心部71aのアッパークロスメンバ本体部41b(41a)側の外周に拡径されて突設されている。
アーム部材72は、本体部72a、および突出部72bを有する略円盤状に形成されている。本体部72aは、偏心リング71の正心部71aの外径より若干大径に形成されている。この本体部72aには、本体部72aが正心部71aと一体化されたときに偏心穴71cに貫通する位置に偏心穴71cと略同径の軸穴72c(連結点Q)が穿設され、この軸穴72cの近傍には偏心リング71のカシメ用穴71dと位置が一致するようカシメ用穴72dが穿設されている。そしてカシメピン78がアーム部材72側からカシメ用穴72d、71dを貫通し、先端部が偏心リング71側でカシメられ、偏心リング71とアーム部材72とが固定されている。
図3、図6に示すように、突出部72bは、軸穴72c(連結点Q)の中心点C1から本体部72aの回転中心点C2(=連結点P)を通って本体部72aの外周から外側に抜ける直線L3の方向に突出するように本体部72aの外周に一体形成されており、直線L3上に中心点C3がある貫通穴72e(連結点S)が穿設されている。貫通穴72eの軸線と軸穴72cの軸線とは平行に形成されている。
鍔付きブッシュ33は、アッパークロスメンバ側円筒部33a(以降、円筒部33aと称す)、および円筒部33aのアッパークロスメンバ本体部41a(41b)側端部に拡径されたアッパークロスメンバ側鍔部33b(以降、鍔部33bと称す)を有している。円筒部33aは、図5のB−B線断面図に示すように梃子形リンク51の左右方向(厚さ方向)の幅L4を越える長さL5で形成され、梃子形リンク51の一端部である偏心穴71cおよび軸穴72cに、後述するブッシュ75(本発明の摺動プレートに該当する)の円筒部75aを介在して挿入される。なお、このとき、梃子形リンク51の左右方向(厚さ方向)の幅L4とは後に詳述する鍔部33bと梃子形リンク51のアッパークロスメンバ本体部41a(41b)側の側面との間に介在するブッシュ75の鍔部75bの厚さを含んだ厚さのことをいうものとする。
前述した鍔付きブッシュ33の鍔部33bは、アッパークロスメンバ本体部41a(41b)の内方の面と梃子形リンク51のアッパークロスメンバ本体部41a(41b)側の側面との間に前述したようにブッシュ75の鍔部75bを介在させた状態で挟持されている(図3、図5参照)。そして、このような状態において、ボルト35を左右一対のアッパークロスメンバ本体部41a(41b)の間の中央側から鍔付きブッシュ33の円筒部33a内に挿通し、アッパークロスメンバ本体部41a(41b)の外側面に溶接固定した、ナット37(めねじ部)に螺着する。これによりアッパークロスメンバ本体部41a(41b)に鍔付きブッシュ33を押圧して固定している。つまり、左右一対の鍔付きブッシュ33は左右一対のボルト35、35の各6角の頭部の裏面35a、35aとアッパークロスメンバ本体部41a(41b)の内側面との間に挟持され固定される。このとき、円筒部33aの長さは、図5のB−B線断面図に示すように梃子形リンク51の左右方向(厚さ方向)の幅L4を越える長さL5で形成されているので梃子形リンク51は円筒部33a上で回動可能となっている。
前述したブッシュ75は、鉄系等の金属材料に対して馴染みのよい例えばフッ素樹脂やモリブデン等の低摩擦材でコーティングされた薄板で円筒部75aが偏心穴71cの径より若干大径の円管状に形成され、円周の1箇所が軸方向に切断されている。ブッシュ75の円筒部75aは、円周方向のばね力に抗して縮径されて偏心穴71cに嵌入され、ばね力により拡径して偏心穴71cに嵌着される。これにより梃子形リンク51と鍔付きブッシュ33の円筒部33aおよび鍔部33bとの間の摺動抵抗を低減させている。
また、このとき、本実施形態においては、ブッシュ75の円筒部75aの長さを梃子形リンク51の幅(厚さ)L4より短く形成している。これによって鍔付きブッシュ33の円筒部33aの外周面と梃子形リンク51の偏心穴71cおよび軸穴72cとの間では軸線方向第1隙間部54が形成されている(図5参照)。
このため梃子形リンク51は、鍔付きブッシュ33の円筒部33a外周面上においてブッシュ75の円筒部75aの先端を支点として軸線方向第1隙間部54に向かい軸線方向第1隙間部54の大きさに応じた分だけ傾動可能となっている。これにより、梃子形リンク51を左右のアッパークロスメンバ本体部41b(41a)に組み付けたときに発生する左右間の軸ずれを該傾動によって良好に吸収することができる。
またブッシュ75の鍔部75bも鉄系等の金属材料に対して馴染みのよい例えばフッ素樹脂やモリブデン等の低摩擦材でコーティングされている。これにより鍔部75bは鍔付きブッシュ33の鍔部33bと梃子形リンク51のアッパークロスメンバ本体部41b(41a)側端面との間に挟持され梃子形リンク51と鍔付きブッシュ33との間の摺動抵抗を低減可能としている。また鍔部75bは鍔部33bと梃子形リンク51との間のガタを吸収する機能を有し、これによって梃子形リンク51の作動を一層スムーズにさせることができる。
図3、図4、図5に示すように支点リンク52(本発明の第2リンク部材に該当する)は、他端部に大径取付穴52aが形成され、一端部に小径取付穴52bが形成されている。大径取付穴52a、及び小径取付穴52bには、両端鍔付きの環状のブッシュ73、74が嵌挿される。ブッシュ73の両端の鍔のうちアッパークロスメンバ本体部41b(41a)側の鍔をアッパークロスメンバ側鍔73bとし梃子形リンク51のアーム部材72側の鍔をアーム側鍔73cとする。そして各鍔73b、73cを連結する円筒部を円筒部73aとする。
またブッシュ74の両端の鍔のうちサイドフレーム本体部31a(31b)側の鍔をサイドフレーム側鍔74bとし、ネジ・ギヤ機構53側の鍔をネジ・ギヤ機構側鍔74cとする。そして各鍔74b、74cを連結する円筒部を円筒部74aとする。なお、支点リンク52の一端部に嵌挿されるブッシュ74は本発明の摺動プレートに該当する。
ブッシュ73、74は、例えばフッ素樹脂やモリブデン等の低摩擦材でコーティングされた薄板である。ブッシュ73、74は、大径取付穴52a及び小径取付穴52bの径より若干大径の円管状に形成され、円周の1箇所が軸方向に切断されている。ブッシュ73、74は、円周方向のばね力に抗して縮径されて大径取付穴52a内及び小径取付穴52b内に嵌入され、ばね力により拡径して大径取付穴52a及び小径取付穴52bに嵌着される。
ブッシュ73のアッパークロスメンバ側鍔73bは偏心リング71(つまり梃子形リンク51)と支点リンク52との間の摺動抵抗を低減させる。また、ブッシュ73のアーム側鍔73cは、アーム部材72(つまり梃子形リンク51)と支点リンク52との間の摺動抵抗を低減させる。また、円筒部73aによって偏心リング71の正心部71a外周面と、支点リンク52の他端部である大径取付穴52aの内周面との間の摺動抵抗を低減させる。
ブッシュ74のサイドフレーム側鍔74bは、支点リンク52と鍔付きブッシュ34との間の摺動抵抗を低減させる。また、ネジ・ギヤ機構側鍔74cは支点リンク52とネジ・ギヤ機構53との間の摺動抵抗を低減させる。さらにブッシュ74のサイドフレーム側鍔74bおよびネジ・ギヤ機構側鍔74cは、支点リンク52と鍔付きブッシュ34のサイドフレーム側鍔部34bとの間、および支点リンク52とネジ・ギヤ機構53との間の軸線方向(左右方向)の隙間を埋めガタを吸収し、これによって支点リンク52およびネジ・ギヤ機構53の回動を一層スムーズにさせることができる。
鍔付きブッシュ34は、サイドフレーム側円筒部34a(以降、円筒部34aと称す)、および円筒部34aのサイドフレーム本体部31a(31b)側の端部に拡径されて形成されたサイドフレーム側鍔部34b(以降、鍔部34bと称す)を有している。円筒部34aは、支点リンク52の一端部である小径取付穴52bおよびネジ・ギヤ機構53(伸縮機構)の他端部である伸縮他端部90を左右方向(軸線方向)に並べた幅L6を越える長さL7で形成される(図4参照)。なお、このとき本実施形態においては、支点リンク52の小径取付穴52b部の厚さとは前述したブッシュ74のサイドフレーム側鍔74bおよびネジ・ギヤ機構側鍔74cの厚さを加算した厚さのことをいうものとする。
そして鍔付きブッシュ34の円筒部34aがブッシュ74の円筒部74aを内径部に介在させた支点リンク52の小径取付穴52b、およびネジ・ギヤ機構53の他端部である伸縮他端部90に挿入され支点リンク52、およびネジ・ギヤ機構53を回動自在に連結している。
鍔付きブッシュ34の鍔部34bは、サイドフレーム本体部31a(31b)とブッシュ74のサイドフレーム側鍔74bを介在させた支点リンク52との間に配置されている。そしてこのような状態において、ボルト36、36を左右一対のサイドフレーム本体部31a(31b)の間の中央側から鍔付きブッシュ34の円筒部34a内に挿通し、サイドフレーム本体部31a(31b)の外側面に溶接固定した、ナット38、38(めねじ部)に螺着する。これによりサイドフレーム本体部31a(31b)に鍔付きブッシュ34を押圧して固定している。つまり鍔付きブッシュ33はボルト36、36の各6角の頭部の裏面36a、36aとサイドフレーム本体部31a(31b)の内側面との間に挟持され固定される。
図6に示すように梃子形リンク51の回転中心点が支点リンク52との連結点Pとなり、回転中心点から偏心した一方の偏心点(図1においてシート後方側)がアッパークロスメンバ本体部41b(41a)との連結点Q、他方の偏心点(図1においてシート前方側)がネジ・ギヤ機構53との連結点Sとなる。そして、支点リンク52の一端部がサイドフレーム本体部31b(31a)との連結点Rとなる。なお、連結点Rはネジ・ギヤ機構53との連結点Tでもあり、このようにしてリンク機構を形成している。
以上により、図5のB−B線断面図に示すように、梃子形リンク51は、ボルト35によって固定された鍔付きブッシュ33の軸線を回動中心として回動自在に連結され、支点リンク52は、梃子形リンク51の回動に従ってボルト36によって固定された鍔付きブッシュ34の軸線を回動中心として回動自在に連結される(図4のA−A線断面図参照)。
ネジ・ギヤ機構53(伸縮機構)は、中折れ機構駆動装置6の駆動により送りネジ87を往復直線伸縮運動させてサイドフレームアッセンブリ3とアッパークロスメンバ4とのなす傾動角度を調整する機構である。ネジ・ギヤ機構53は、ギヤケース81とギヤケースカバー82とにより形成される空間に、ウォーム84及びウォーム84と捩れ位置にあるウォームホイール85等が収納されている。ギヤケース81には、上述したように鍔付きブッシュ34の円筒部34aが挿入可能な伸縮他端部90である軸穴81a(連結点T)が穿設されている。ギヤケースカバー82には、フレキシブルケーブル62の一端が挿入可能なケーブル穴82aが設けられている。ギヤケース81とギヤケースカバー82とは、ビス83により締結固定される。
伸縮他端部90である軸穴81aにはボルト36が挿入される挿入側端面入口からテーパ面81bを設けることによって軸方向第2隙間部55を形成している(図4参照)。これにより支点リンク52の一端部である小径取付穴52bおよびネジ・ギヤ機構53の伸縮他端部90である軸穴81aに鍔付きブッシュ34の円筒部34aを挿入後、ボルト36によって螺着し鍔付きブッシュ34を左右のアッパークロスメンバ本体部41b(41a)に押圧し固定したときに、支点リンク52およびネジ・ギヤ機構53は伸縮他端部90の入口のテーパ面81bの大きさ、つまり軸方向第2隙間部55の大きさに応じた分だけ軸方向第2隙間部55に向かって傾動可能となっている。そして、支点リンク52およびネジ・ギヤ機構53を左右のアッパークロスメンバ本体部41b(41a)に組み付けたときに発生する左右の軸ずれを該傾動によって良好に吸収することができる。
ウォーム84には、一端側にフレキシブルケーブル62の一端が嵌入されるベアリング84aが組み付けられている。このウォーム84は、フレキシブルケーブル62側に配置されるベアリング84aがギヤケースカバー82のケーブル穴82aに圧入され、フレキシブルケーブル62と反対側端部がギヤケース81に圧入されている筒状のブッシュ86に挿入されている。これにより、ウォーム84は、ギヤケース81およびギヤケースカバー82により形成される空間内で回転自在に支持される。ウォームホイール85には、外周にウォーム84と噛み合うギヤ部85aが設けられ、内周に送りネジ87と噛み合うメネジ穴85bと、送りネジ87の抜け止めとなるストッパナット88の外径よりも大径の筒状穴85cとが連通するように設けられている。
送りネジ87は、一端側にストッパナット88が螺合される小径のオネジ部87aが設けられ、他端側にはネジ・ギヤ機構53の伸縮一端部89であるカシメ用穴92が設けられている。伸縮一端部89は梃子形リンク51の突出部72bの貫通穴72eとカシメピン78によってカシメられ回動自在に連結される。送りネジ87は、一端側がウォームホイール85のメネジ穴85bから筒状穴85cに貫通するように螺合され、オネジ部87aにストッパナット88が螺合・締結される。ストッパナット88は外径が筒状穴85cの内径よりも小径であるため、筒状穴85c内にて移動可能になっている。これにより、送りネジ87は、ウォームホイール85の回転に従ってストッパナット88で規制されない範囲内で直進自在に支持される。
送りネジ87が取り付けられたウォームホイール85は、ギヤ部85aの両側にワッシャー90a、90bが嵌入され、ギヤケース81内でギヤ部85aがウォーム84と噛み合うように収納される。以上により、ウォーム84の回転によってウォームホイール85が回転すると、送りネジ87が一定範囲内で直進する。これにより梃子形リンク51の突出部72bに回動自在に連結された送りネジ87の伸縮一端部89が一定範囲内で直進し、梃子形リンク51が一定角度範囲内で回転して支点リンク52が一定角度範囲内で揺動する。
図2、図3に示すように、中折れ機構駆動装置6(本発明の駆動装置に該当する)は、サイドフレーム連結部材32の中央に固定されたモータ61と、このモータ61のモータ軸の両端に連結されていると共にネジ・ギヤ機構53に連結されたフレキシブルケーブル62とを有する。
モータ61は、一端部にケーブル固定部材63が固定され、他端部にケーブル固定部64を有するモータ固定部材65がビス66により締結固定されている。このモータ固定部材65は、サイドフレーム連結部材32の略中央に固定される。フレキシブルケーブル62は、回転してトルクを伝達する芯材62aと、回転はせずに芯材62aの周囲を覆って保護しガイドする筒状のアウタチューブ62bとを備えた構成になっている。フレキシブルケーブル62は、一端がギヤケースカバー82のケーブル穴82aに挿入されて、該一端側の芯材62aがウォーム84のベアリング84aに嵌入され、他端がモータ固定部材65のケーブル固定部64(63)に挿入されて、該他端側の芯材62aがモータ61のモータ軸61aに嵌入されている。これにより、モータ61の駆動力は、モータ軸61aからフレキシブルケーブル62の芯材62aを介してウォーム84に伝達される。以上により、図2に示すように、中折れ機構駆動装置6のモータ61、ケーブル固定部材63、モータ固定部材65を中心に左右対称にフレキシブルケーブル62と中折れ機構5が配置される。
そして、一体化された中折れ機構駆動装置6および中折れ機構5がサイドフレーム本体部31a、31bおよびアッパークロスメンバ本体部41a、41bに固定される。そのため、まずボルト35、35を左右一対のアッパークロスメンバ本体部41a(41b)の間の中央側から鍔付きブッシュ33の円筒部33a内に挿通し、アッパークロスメンバ本体部41a(41b)の外側面に溶接固定した、ナット37、37(めねじ部)に螺着する。これによりアッパークロスメンバ本体部41a(41b)に鍔付きブッシュ33を押圧して固定し、中折れ機構5のうちアッパークロスメンバ本体部41a(41b)側に配設される梃子形リンク51等をアッパークロスメンバ本体部41a(41b)に組み付ける。
次に、ボルト36、36を左右一対のサイドフレーム本体部31b(31a)の間の中央側から鍔付きブッシュ34の円筒部34a内に挿通し、サイドフレーム本体部31b(31a)外側面に溶接固定した、ナット38、38(めねじ部)に螺着する。これによりサイドフレーム本体部31b(31a)に鍔付きブッシュ34を押圧して固定し、中折れ機構5のうちサイドフレーム本体部31b(31a)側に配設される部材をサイドフレーム本体部31b(31a)に組み付ける。上記によって調整装置100がサイドフレーム本体部31a、31bおよびアッパークロスメンバ本体部41a、41bに簡易に組み付け固定できる。
以上のような構成の車両用シート装置10の動作を説明する。シートバック2の上部シートバック22を前方に傾動させるために、乗員が操作スイッチを操作すると、モータ駆動装置がモータ61を所定方向に回転させる。すると、モータ61の出力は左右のフレキシブルケーブル62を回動させてウォーム84を回転させるので、噛合するウォームホイール85は減速回転する。そして、ウォームホイール85のメネジ穴85cに噛合する送りネジ87が軸方向に移動し、梃子形リンク51を回転させて支点リンク52を揺動させる。これにより、アッパークロスメンバ本体部41a、41bは、前方(図1における反時計回り)に傾動する。反対に上部シートバック22の傾動を元に戻して下部シートバック21に対する前傾を無くすためには乗員が操作スイッチを操作してモータ61を逆回転させる。
上述の説明から明らかなように、本実施形態においては車両用シート装置10のサイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバの各連結部材(アッパークロスメンバ本体部41a、41b)の間にシート調整装置100が配設される。このとき各サイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bと連結されるシート調整装置100の両端では梃子形リンク51(第1リンク部材)の一端部が鍔付きブッシュ33(アッパークロスメンバ側鍔付きブッシュ)の円筒部33aに回動自在に連結される。また支点リンク52(第2リンク部材)の一端部である小径取付穴52bおよびネジ・ギヤ機構53(伸縮機構)の伸縮他端部90が鍔付きブッシュ34(サイドフレーム側鍔付きブッシュ)の円筒部34aに回動自在に連結されている。そして2個のボルト35、36をそれぞれ鍔付きブッシュ33および鍔付きブッシュ34の内径部に、各サイドフレーム本体部31b(31a)の間の中央側から挿入して貫通させ、各サイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bに設けた溶接されたナット(めねじ部)と螺着させる。これにより鍔付きブッシュ33および34を各サイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bに押圧して固定し、延いてはシート調整装置100を各サイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bサイドフレームに固定している。このような構成であるのでシート調整装置100は変形させずとも各サイドフレーム本体部31b(31a)間およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bの間に容易に配置し各ボルトによって簡易に締め付け、固定ができるので組み付け工数の低減が図れる。
また本実施形態においては、シート調整装置100の可動部である鍔付きブッシュ33の円筒部33aおよび鍔部33bと梃子形リンク51(第1リンク部材)の一端部との間、および支点リンク52(第2リンク部材)の一端部と鍔付きブッシュ34および伸縮機構の伸縮他端部90との間にそれぞれ摺動抵抗を低減する摺動プレート(ブッシュ75、ブッシュ74)を左右一対で有している。これにより各部の良好な摺動が得られるとともに鍔付きブッシュ33および鍔付きブッシュ34の各円筒部軸線方向のガタを吸収することができるのでスムーズなシート調整装置100の作動を得ることができる。
また本実施形態においては、シート調整装置100をサイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bに固定する際のシート調整装置100の左右の軸ずれを、軸方向第1隙間部54、および軸方向第2隙間部55によって吸収する。軸方向第1隙間部54は鍔付きブッシュ33の円筒部33aと梃子形リンク51(第1リンク部材)の一端部との間に設けられる摺動プレートであるブッシュ75の円筒部75aの幅を梃子形リンク51(第1リンク部材)の幅より短くして形成する。これにより梃子形リンク51(第1リンク部材)は軸方向第1隙間部54が許容する分だけ鍔付きブッシュ33の軸線方向に対して傾動可能となり、左右の軸ずれを吸収することができる。
軸方向第2隙間部55はネジ・ギヤ機構53(伸縮機構)の伸縮他端部90の内径部入口に挿入側端面からテーパ面81bを設けることによって形成する。これにより、ネジ・ギヤ機構53および支点リンク52は軸方向第2隙間部55が許容する分だけ傾動可能となり、左右の軸ずれを吸収することができる。このように構成するのでシート調整装置100の左右の軸ずれは良好に吸収され、スムーズな作動を得ることができる。
また本実施形態においては、左右一対の2個のめねじ部は、2個のナット37、38がサイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bの外側面にそれぞれ左右一対で固定される。これにより簡易にめねじ部が形成でき、低コストに対応できる。また、めねじ部へのボルトの螺着時においては、ナット37、38をレンチ等によって抑える必要がないのでボルトの締め付け操作のみで螺着ができ組付けが容易である。
なお、本実施形態においては、めねじ部を形成するため2個のナット37、38をサイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bの外側面にそれぞれ左右一対で溶着して固定した。しかしこの態様に限らず、サイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bにバーリングをそれぞれ外方に向かって立て、該バーリングの内径部にめねじを加工することによって、めねじ部を形成してもよい。
また、本実施形態においては、2個のナット37、38をサイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bの外側面にそれぞれ左右一対で溶着して固定し形成した。しかし、これに限らずナット37、38をサイドフレーム本体部31b(31a)およびアッパークロスメンバ本体部41a、41bに固定することなくシート調整装置100を固定してもよい。この場合においても、シート調整装置100を屈曲させる必要がない分だけ簡易に取り付けはでき、相応の効果は得られる。
また、本実施形態においては、シート調整装置100の可動部である鍔付きブッシュ33の円筒部33aおよび鍔部33bと梃子形リンク51(第1リンク部材)の一端部との間、および支点リンク52(第2リンク部材)の一端部と鍔付きブッシュ34および伸縮機構の伸縮他端部90との間にそれぞれ摺動抵抗を低減するため摺動プレート(ブッシュ75、ブッシュ74)を左右一対で有している。しかし、この態様に限らず鍔付きブッシュ33の円筒部33aおよび鍔部33bと梃子形リンク51の一端部、また支点リンク52(第2リンク部材)の一端部と鍔付きブッシュ34等に直接、フッ素樹脂やモリブデン等の低摩擦材をコーティングしてもよい。これによっても相応に良好な摺動性は得られる。