以下、本発明の実施の形態に係るシート調整装置について、図1の模式図を参照して説明する。
第1シート部材101及び第2シート部材102は、各端部が図示矢印m方向に相対的に回動自在となるようにヒンジ軸103(連結点Hとする)により連結されている。そして、シート調整装置100は、第1シート部材101と第2シート部材102の間に配置されており、第1リンク部材110、第2リンク部材120及び駆動部130を備えている。駆動部130は、駆動装置131と、この駆動装置131により図示矢印n方向に往復直線運動可能な伸縮機構132とを備えている。このシート調整装置100は、駆動装置131により伸縮機構132を往復直線伸縮運動して、第1リンク部材110及び第2リンク部材120を回動することにより、第1シート部材101を第2シート部材102に対して回動して該回動角度を調整するようになっている。
第1リンク部材110は、右端部がヒンジ軸111により第1シート部材101に回動自在に連結され、左端部がヒンジ軸112により伸縮機構132の後述する一方部材132aに回動自在に連結されている。第2リンク部材120は、下端部がヒンジ軸121により第2シート部材102に回動自在に連結され、上端部がヒンジ軸122により第1リンク部材110の両端部間の部位に回動自在に連結されている。そして、伸縮機構132の後述する他方部材132bは、第2リンク部材120が連結されているヒンジ軸121により第2シート部材102に回動自在に連結されている。伸縮機構132は、一方部材132aと他方部材132bとを駆動装置131により相対的に往復直線伸縮駆動する機構である。
そして、第1リンク部材110と第2リンク部材120との連結点(ヒンジ軸122)をP、第1シート部材101と第1リンク部材110との連結点(ヒンジ軸111)をQ、第2シート部材102と第2リンク部材120との連結点(ヒンジ軸121)をRとする。また、第1リンク部材110と伸縮機構132との連結点(ヒンジ軸112)をSとする。なお、この例では、第2シート部材102と伸縮機構132との連結点(ヒンジ軸121)TはRと同一にしている。そして、連結点Qと連結点Rとを通る直線をL1、連結点Sと連結点R(T)とを通る直線をL2とすると、第1リンク部材110と第2リンク部材120、及び第1リンク部材110と伸縮機構132とは、連結点Pから直線L1に対して直交する距離aと、連結点Pから直線L2に対して直交する距離bとの比a/bが1未満となるように連結されている。また、図2に示すように、連結点Pと連結点Rとの間の距離をLpr、連結点Pと連結点Qとの間の距離をLpqとする。そして、連結点Hを中心とした連結点Qの回転軌跡をr1、連結点Rを中心として距離Lprと距離Lpqとの差Lpr−Lpqを半径とした回転軌跡をr2、連結点Rを中心として距離Lprと距離Lpqとの和Lpr+Lpqを半径とした回転軌跡をr3とすると、連結点R、距離Lpr及び距離Lpqは、回転軌跡r1と回転軌跡r2とが交点v1を持つように、かつ回転軌跡r1と回転軌跡r3とが交点v2を持つように夫々設定されている。
このような構成のシート調整装置100の動作及び作用効果について説明する。図1に示すように、伸縮機構132が伸張すると、連結点Qは時計回りに回動するので、第1シート部材101は連結点Hを中心にシート後方(時計回り)に傾動する。伸縮機構132が収縮すると、連結点Qは反時計回りに回動するので、第1シート部材101は連結点Hを中心にシート前方(反時計回り)に傾動する。例えば第1シート部材101に大荷重が掛かり、第1シート部材101と第1リンク部材110との連結点Qに、第2シート部材102と第2リンク部材120との連結点R方向の荷重Fqが掛かったとする。このとき、第1リンク部材110と第2リンク部材120との連結点Pには、荷重Fqに連結点Pから直線L1までの距離aを乗じたモーメント力Fq*aが発生する。そして、第1リンク部材110と伸縮機構132との連結点Sには、モーメント力Fq*aを連結点Pから直線L2までの距離bで除した荷重Fs=Fq*a/bが掛かることになる。
上述したように、連結点Pから直線L1までの距離aと、連結点Pから直線L2までの距離bとの比a/bは1未満となるように設定されているため、第1リンク部材110と伸縮機構132との連結点Sに掛かる荷重Fsは、第1シート部材101と第1リンク部材110との連結点Qに掛かる荷重Fqよりも小さなものとなる。よって、第1シート部材101に大荷重が掛かっても伸縮機構132には小さな荷重しか掛からないようにすることができるので、伸縮機構132を小荷重に耐え得る簡易な構造として低コスト化及び軽量化を図ることができる。また、伸縮機構132は小さな推力を発生することで第1シート部材101を第2シート部材102に対して回動することができるので、伸縮機構132を小推力の発生が可能な簡易な構造として低コスト化及び軽量化を図ることができる。
また、図2に示すように、連結点Qが連結点Hを中心とした回転軌跡r1上を回転していくと、連結点Pは連結点Qの回転に追従して同方向に連結点Rを中心とした回転軌跡r4上を回転する。ところが、連結点Hと連結点Rは、第2シート部材102において離間して設けられているので、回転軌跡r1と回転軌跡r4は、一旦交差した後は互いに離間していく。よって、回転軌跡r1,r4間の離間距離が連結点Q,P間の距離Lpqよりも短い間は、連結点Q及び連結点Pは回転可能であるが、回転軌跡r1,r4間の離間距離が連結点Q,P間の距離Lpqよりも長くなる位置で、連結点Q及び連結点Pは回転不可能となる。このことは、連結点Q及び連結点Pが上記回転方向とは逆方向に回転したときも起きる。つまり、連結点Qは、連結点Rとの間が最短距離(Lpr−Lpq)となる位置と、連結点Rとの間が最長距離(Lpr+Lpq)となる位置との間で回転可能、即ち回転軌跡r1と連結点Rを中心とした回転軌跡r2との交点(下死点)v1と、回転軌跡r1と回転軌跡r3との交点(上死点)v2との間で回転可能となる。これにより、第1シート部材101の第2シート部材102に対する回動は、連結点Hを中心に一定角度範囲内でのみ可能となり、該角度範囲外では不可能となる。よって、例えば第1シート部材101に大荷重が掛かり、伸縮機構132が破損等を起こして第1シート部材101の第2シート部材102に対する回動調整が不可能になっても、第1シート部材101を所定位置、即ち連結点Qが上死点に位置したときの第1シート部材101の位置、又は連結点Qが下死点に位置したときの第1シート部材101の位置に保持することができる。なお、一方向への規制のみで足る場合には、回転軌跡r1,r2と回転軌跡r1,r3とのうちの一方だけが交点v1,v2を持つようにしても良い。上記両方向または一方向の回動規制の作用効果のみを得る場合は、連結点Pから直線L1までの距離aと、連結点Pから直線L2までの距離bとの比a/bは1未満とする必要はなく任意の比で良い。
このシート調整装置100は、自動車の前席シートに搭載される車両用シート装置の中折れ機構及び中折れ機構駆動装置に適用することができ、図3〜図5を参照して説明する。なお、以下の説明において使用する「前後、左右(幅)、上下」の方向は車両のそれを基準として記述する。
本実施の形態の車両用シート装置10は、図3に示すように、シートクッション1とシートバック2とを有する。シートバック2はその下端部が、シートクッション1の後端部に前後方向に傾動自在に支持されている。シートバック2は、下部シートバック21と上部シートバック22とヘッドレスト23とを有する。下部シートバック21は、下端部にてシートクッション1の後端部に前後方向に傾動自在に支持されており、シートバック2全体をシートクッション1に接続している。上部シートバック22は、下端部にて下部シートバック21の上端部に前後方向に傾動自在に支持されている。ヘッドレスト23は、上部シートバック22の上端部にて上下方向の間隔を伸縮自在に支持されている。
下部シートバック21と上部シートバック22との間には、中折れ機構5(詳細は図4参照)及び中折れ機構駆動装置6(詳細は図5参照)が配設されている。中折れ機構5は上部シートバック22を下部シートバック21に対して前後方向に傾動させる機構であり、中折れ機構駆動装置6は中折れ機構5を駆動して上部シートバック22を下部シートバック21に対して前後方向に傾動させる手段である。即ち、中折れ機構5は、中折れ機構駆動装置6により駆動されてヘッドレスト23を含む上部シートバック22を前後に揺動させる。
さらに各部の構成を詳述すると、シートバック2における下部シートバック21内にはサイドフレーム3が配設され、上部シートバック22内にはアッパークロスメンバ4が配設されている。
サイドフレーム3は、下部シートバック21の幅方向の両端部に互いに面が対向するように1つずつ設けられた板状体であるサイドフレーム本体部(第2シート部材)31a,31bから構成されている。サイドフレーム本体部31a,31bは、各上端部間がサイドフレーム連結部材32(詳細は図4,5参照)で連結され、各下端部がシートクッション1内に配設されるシートクッションフレーム7の後端部に傾動自在に支持されるリクライニング機構8に固定されている。
アッパークロスメンバ4は、上部シートバック22の幅方向の両端部に互いに面が対向するように1つずつ設けられた板状体であるアッパークロスメンバ本体部(第1シート部材)41a,41bとそれらアッパークロスメンバ本体部41a,41bの上端部の間に跨設され両者の間を連結するパイプフレーム42とから構成されており、パイプフレーム42の上方にはヘッドレスト23を上下方向の間隔を伸縮自在に保持可能なヘッドレスト保持機構(図略)の保持部42a(詳細は図4,5参照)が配設されている。
アッパークロスメンバ本体部41a,41bは、回転ヒンジ44a,44bによりサイドフレーム本体部31a,31bに回動自在に連結されている。サイドフレーム本体部31a,31bとアッパークロスメンバ本体部41a,41bとの間には、アッパークロスメンバ本体部41a,41bをサイドフレーム本体部31a,31bに対して傾動させる機構である同一構造の中折れ機構5が夫々配設されている。サイドフレーム連結部材32には、中折れ機構駆動装置6が配設されている。中折れ機構5は、中折れ機構駆動装置6にて駆動されてアッパークロスメンバ本体部41a,41bをサイドフレーム本体部31a,31bに対し傾動させる。
中折れ機構5は、図4に示すように、サイドフレーム本体部31b(31a)とアッパークロスメンバ本体部41b(41a)との間を連結する梃子形リンク51及び支点リンク52と、各リンク51,52と連結されたネジ・ギヤ機構53とを有する。中折れ機構駆動装置6は、図5に示すように、サイドフレーム連結部材32の中央に固定されたモータ61と、このモータ61のモータ軸の両端に連結されていると共にネジ・ギヤ機構53に連結されたフレキシブルケーブル62とを有する。
なお、図1に示す第1リンク部材110としては梃子形リンク51が相当し、第2リンク部材120としては支点リンク52が相当する。また、伸縮機構131としてはネジ・ギヤ機構53の一部が相当する。即ち、図6に示すギヤケース81、ナット77、ウォームホイール85のメネジ穴85b、送りネジ87、ストッパナット88、L形ブラケット89及び段付スクリュ91等が伸縮機構131に相当する。駆動装置132としてはモータ61、フレキシブルケーブル62、並びにネジ・ギヤ機構53のウォーム84及びウォームホイール85のギヤ部85a等が相当する。
また、伸縮機構132の一方部材132aとしては、送りネジ87、ストッパナット88、L形ブラケット89及び段付スクリュ91等が相当し、他方部材132bとしてはギヤケース81、ナット77、ウォームホイール85のメネジ穴85b等が相当する。
梃子形リンク51は、詳細は後述するが、通常の腕状のリンクではなく略円盤状のリンクに形成されており、該中心から夫々逆向きの径方向に偏心した2箇所の部位がアッパークロスメンバ本体部41の上部取り付け軸43a(43b)及びネジ・ギヤ機構53の送りネジ87と連結可能なように形成されている。支点リンク52は、詳細は後述するが、略腕状のリンクに形成されており、一方の端部は、梃子形リンク51を円周で回転自在に支持可能なリング状に形成され、他方の端部は、サイドフレーム本体部31b(31a)の下部取り付け軸33a(33b)及びネジ・ギヤ機構53のギヤケース71と連結可能なように形成されている。
梃子形リンク51の回転中心点が支点リンク52との連結点Pとなり、回転中心点から偏心した一方の偏心点(図4においてシート後方側)がアッパークロスメンバ本体部41b(41a)との連結点Q、他方の偏心点(図4においてシート前方側)がネジ機構53との連結点Sとなる。そして、支点リンク52の他方の端部がサイドフレーム本体部31b(31a)との連結点Rとなる。なお、この例では連結点Rはネジ・ギヤ機構53との連結点Tでもある。
梃子形リンク51の連結点Q,Sは、以下のようにして設定される。連結点Rを通る直線のうち、連結点Pからシート後方側に向かって径方向に距離aだけ離間した直線をL1とし、連結点Pからシート前方側に向かって径方向に距離b(>a)だけ離間した直線をL2とする。そして、連結点Pを通るシート前方側からシート後方側に向かう直線をL3としたとき、直線L1と直線L3との交点が連結点Q、直線L2と直線L3との交点が連結点Sとなる。これにより、連結点Pから直線L1までの距離aと、連結点Pから直線L2までの距離bとの比a/bは1未満となるように設定されているため、モーメントを考慮すると連結点Qに掛かる荷重Fqが大荷重であっても連結点Sに掛かる荷重Fsは小荷重となる。
このように、距離bに対する距離aを小さくすればするほど、連結点Sに掛かる荷重Fsも小さくなる。ここで、梃子形リンク51を通常の腕状のリンクに形成すると、梃子形リンク51と支点リンク52とをヒンジにより連結しなければならない。このため、距離bに対する距離aを小さくしていくと該ヒンジが梃子形リンク51とアッパークロスメンバ本体部41b(41a)との連結部に干渉するので、距離bに対する距離aを小さくすることに限界が生じる。ところが、梃子形リンク51は略円盤状のリンクに形成されて支点リンク52の一方の端部に回転自在に支持されているため、梃子形リンク51と支点リンク52とをヒンジにより連結する必要はない。よって、通常の腕状のリンクに形成した梃子形リンク51よりも略円盤状のリンクに形成した梃子形リンク51の方が距離bに対する距離aを小さくすることができ、連結点Sに掛かる荷重Fsもさらに小さくすることができる。
また、中折れ機構駆動装置6はサイドフレーム連結部材32の中央に配置されており、中折れ機構5とは可撓性のフレキシブルケーブル62により連結されているので、モータ61を上部シートバック22から突出させることなく、中折れ機構5を上部シートバック22の側面後方に配置することができる。これにより、距離aに対する距離bをさらに大きくすることができるので、連結点Qに掛かる荷重Fqが大荷重であっても連結点Sに掛かる荷重Fsをさらに小荷重とすることができる。
また、梃子形リンク51は、アッパークロスメンバ本体部41b(41a)と、上部取り付け軸43a(43b)を中心に回動自在に連結されている。支点リンク52は、サイドフレーム本体部31b(31a)と、梃子形リンク51の回動に従って下部取り付け軸33a(33b)を中心に回動自在に連結されている。アッパークロスメンバ本体部41b(41a)は、サイドフレーム本体部31b(31a)と、回転ヒンジ44b(44a)を中心に回動自在に連結されている。そして、この中折れ機構5においても、図2を参照して説明したように、連結点Pと連結点Rとの間の距離をLpr、連結点Pと連結点Qとの間の距離をLpq、回転ヒンジ44b(44a)(連結点H)を中心とした連結点Qの回転軌跡をr1、連結点Rを中心として距離Lprと距離Lpqとの差を半径とした回転軌跡をr2、連結点Rを中心として距離Lprと距離Lpqとの和を半径とした回転軌跡をr3とすると、連結点R、距離Lpr及び距離Lpqは、回転軌跡r1と回転軌跡r2とが交点(下死点)v1を持つように、かつ回転軌跡r1と回転軌跡r3とが交点(上死点)v2を持つように夫々設定されている。
このような構成において、梃子形リンク51及び支点リンク52の回動により、アッパークロスメンバ本体部41b(41a)はサイドフレーム本体部31b(31a)に対して傾動する。このときの梃子形リンク51及び支点リンク52の回動範囲、即ち上部取り付け軸43a(43b)の回動範囲は、詳細は後述するが、支点リンク52において略最下点に位置した状態から略最上点に位置した状態までの略180°に規制される。よって、仮にネジ・ギヤ機構53が破損等を起こして上部シートバック22の傾動調整が不可能になっても、上部シートバック22の傾動範囲は規制されることになり、上部シートバック22を所定位置に保持することができる。
さらに中折れ機構5及び中折れ機構駆動装置6の構成を図6及び図7を参照して詳述する。梃子形リンク51は、溶接により一体化される偏心リング71とアーム部材72とを有している。偏心リング71は、正心部71aとつば部71bを有する円盤状に形成されている。正心部71aは、後述する支点リンク52の大径取付穴52aに嵌入されたブッシュ73の内径と略同径に形成されており、正心部71aの外周71aa(第1軸受部)が大径取付穴52aが形成された環状部52aaを回動自在に支持するようになっている。この正心部71aには、正心部71aの回転中心点から径方向に偏心した位置に偏心穴71c(第2軸受部)が穿設されている。つば部71bは、正心部71aの一端面側の外周に突設されている。
アーム部材72は、本体部72aと突出部72bを有する略円盤状に形成されている。本体部72aは、偏心リング71の正心部71aの外径より若干大径に形成されている。この本体部72aには、本体部72aが正心部71aと一体化されたときに偏心穴71cに貫通する位置に偏心穴71cと略同径の軸穴72c(第2軸受部)が穿設され、この軸穴72cの近傍2箇所に溶接用穴72dが穿設されている。突出部72bは、軸穴72cの中心点C1(連結点Q)から本体部72aの回転中心点C2(連結点P)を通って本体部72aの外周から外側に抜ける直線L3の方向に突出するように本体部72aの外周に一体形成されており、直線L3上に中心点C3(連結点S)があるメネジ穴72e(第3軸受部)が穿設されている。正心部71aの外周71aa(第1軸受部)と偏心穴71c(第2軸受部)及び軸穴72c(第2軸受部)とは、軸線方向から見て重なるように形成されている。これにより、軸穴72cの中心点C1(連結点Q)と本体部72aの回転中心点C2(連結点P)との間の距離を短く設定することが可能となり、ネジ・ギヤ機構53が破損等を生じた際におけるアッパークロスメンバ本体部41b(41a)の急激な位置変動を、より好適に抑止可能となる。なお、本例の梃子形リンク51は円盤状に形成したが、クランク状に形成して第1軸受部と第2軸受部とを軸線方向から見て重なるようにしても良い。
支点リンク52は、一方の端部に大径取付穴52aが形成され、他方の端部に小径取付穴52bが形成されている。大径取付穴52a及び小径取付穴52bには、つば付きの環状のブッシュ73,74が嵌挿される。ブッシュ73,74は、低摩擦材でコーティングされた薄板で大径取付穴52a及び小径取付穴52bの径より若干大径の円管状に形成され、円周の1箇所が軸方向に切断されている。ブッシュ73,74は、円周方向のばね力に抗して縮径されて大径取付穴52a内及び小径取付穴52b内に貫入され、ばね力により拡径して大径取付穴52a及び小径取付穴52bに嵌着される。そして、ブッシュ73,74の挿入端がつば状に広げ加工されて抜け止めされる。
さらに、ブッシュ73が嵌入された大径取付穴52aには、偏心リング71の正心部71aが挿入される。偏心リング71の正心部71aとアーム部材72の本体部72aとは、偏心穴71cと軸穴72cとが同軸になるように合わされ、溶接用穴72d内が埋まるようにアーク溶接されて固定される。軸穴72c及び偏心穴71c(以下、単に軸穴72cという)には、つば付きの環状のブッシュ75が嵌挿される。ブッシュ75は、低摩擦材でコーティングされた薄板で軸穴72cの径より若干大径の円管状に形成され、円周の1箇所が軸方向に切断されている。ブッシュ75は、円周方向のばね力に抗して縮径されて軸穴72c内に貫入され、ばね力により拡径して軸穴62cに嵌着される。そして、ブッシュ75の挿入端がつば状に広げ加工されて抜け止めされる。以上により、梃子形リンク51は、支点リンク52に回動自在に連結される。
アッパークロスメンバ本体部41a(41b)の内側面には、上部取り付け軸43a(43b)が突設され、サイドフレーム本体部31a(31b)の内側面には、下部取り付け軸33a(33b)が突設されている。上部取り付け軸43a(43b)は、先端部に梃子形リンク51の軸穴72cの径より若干小径の雄ネジ43aa(43ba)が螺設されている。この上部取り付け軸43a(43b)には、梃子形リンク51の軸穴72cが貫入される。そして、雄ネジ43aa(43ba)にナット76が螺合されて締結される。
下部取り付け軸33a(33b)は、先端部に後述する円筒状のギヤケース81に穿設された軸穴81aの径より若干小径の雄ネジ33aa(33ba)が螺設されている。この下部取り付け軸33a(33b)には、支点リンク52の小径取付穴52b及びギヤケース81の軸穴81aが貫入される。そして、雄ネジ33aa(33ba)にナット77が螺合されて締結される。以上により、図7(A)(図4のA−A線断面図)に示すように、梃子形リンク51は、上部取り付け軸43a(43b)を中心に回動自在に連結され、支点リンク52は、梃子形リンク51の回動に従って下部取り付け軸33a(33b)を中心に回動自在に連結される。
ネジ・ギヤ機構53は、ギヤケース81とギヤケースカバー82により形成される空間に、ウォーム84及びウォーム84と捩れ位置にあるウォームホイール85等が収納されている。ギヤケース81には、上述したように下部取り付け軸33a(33b)に貫入可能な軸穴81a(連結点T)が穿設されている。ギヤケースカバー82には、フレキシブルケーブル62の一端が挿入可能なケーブル穴82aが設けられている。ギヤケース81とギヤケースカバー82とは、ビス83により締結固定される。
ウォーム84には、一端側にフレキシブルケーブル62の一端が嵌入されるベアリング84aが組み付けられている。このウォーム84は、一端側のベアリング84aがギヤケースカバー82のケーブル穴82aに圧入され、他端側がギヤケース81に圧入されている筒状のブッシュ86に挿入されている。これにより、ウォーム84は、ギヤケース81とギヤケースカバー82により形成される空間内で回転自在に支持される。ウォームホイール85には、外周にウォーム84と噛み合うギヤ部85aが設けられ、内周に送りネジ87と噛み合うメネジ穴85bと、送りネジ87の抜け止めとなるストッパナット88の外径よりも大径の筒状穴85cとが連通するように設けられている。
送りネジ87は、一端側にストッパナット88が螺合される小径のオネジ部87aが設けられ、他端側はL形ブラケット89の一面に穿設された穴89aに挿入され溶接固定されている。送りネジ87は、一端側がウォームホイール85のメネジ穴85bから筒状穴85cに貫通するように螺合され、オネジ部87aにストッパナット88が螺合・締結される。ストッパナット88は外径が筒状穴85cの内径よりも大径であるため、筒状穴85c内にて移動可能になっている。これにより、送りネジ87は、ウォームホイール85の回転に従ってストッパナット88で規制される範囲内で直進自在に支持される。
送りネジ87が取り付けられたウォームホイール85は、ギヤ部85aの両側にワッシャー90a,90bが嵌入され、ギヤケース81内にギヤ部85aがウォーム84と噛み合うように収納される。これにより、図7(B)(図4のB−B線断面図)に示すように、ウォームホイール85は、ギヤケース81とギヤケースカバー82により形成される空間内で回転自在に支持される。そして、段付スクリュ91が、L形ブラケット89の他面に穿設された穴89bに挿入され、さらにアーム部材72の突出部72bに穿設されたメネジ穴72eに螺合されて締結される。これにより、図7(C)(図4のC−C線断面図)に示すように、送りネジ87の他端側に固定されたL形ブラケット89は、上部取り付け軸43a(43b)に貫入されたアーム部材72の突出部72bに固定される。以上により、ウォーム84の回転によりウォームホイール85が回転すると、送りネジ87が一定範囲内で直進するので、梃子形リンク51が一定角度範囲内で回転して支点リンク52が一定角度範囲内で揺動する。
モータ61は、一端部にケーブル固定部材63が固定され、他端部にケーブル固定部64を有するモータ固定部材65がビス66により締結固定されている。このモータ固定部材65は、サイドフレーム連結部材32の中央に固定される。フレキシブルケーブル62は、回転してトルクを伝達する芯材62aと、回転はせずに芯材62aの周囲を覆って保護しガイドする筒状のアウタチューブ62bとを備えた構成になっている。フレキシブルケーブル62は、一端がギヤケースカバー82のケーブル穴82aに挿入されて、該一端側の芯材62aがウォーム84のベアリング84aに嵌入され、他端がモータ固定部材65のケーブル固定部64(63)に挿入されて、該他端側の芯材62aがモータ61のモータ軸61aに嵌入されている。これにより、モータ61の駆動力は、モータ軸61aからフレキシブルケーブル62の芯材62aを介してウォーム84に伝達される。以上により、図5に示すように、中折れ機構駆動装置6のモータ61、ケーブル固定部材63、モータ固定部材65を中心に左右対称にフレキシブルケーブル62と中折れ機構5が配置される。
以上のような構成の車両用シート装置10の動作を説明する。シートバック2の上部シートバック22を前方に傾動させるために、乗員が操作スイッチを操作すると、モータ駆動装置がモータ61を所定方向に回転させる。すると、モータ61の出力は左右のフレキシブルケーブル62を回動させてウォーム84を回転させるので、噛合するウォームホイール85は減速回転する。そして、ウォームホイール85のメネジ穴85cに噛合する送りネジ87が軸方向に移動し、梃子形リンク51を回転させて支点リンク52を揺動させる。これにより、アッパークロスメンバ本体部41a,41bは、前方(図4における反時計回り)に傾動する。よって、上部シートバック22は、アッパークロスメンバ本体部41a,41bの傾動に従い図4に示す位置から図8に示す位置まで移動する。反対に上部シートバック22の傾動を元に戻して下部シートバック21に対する前傾を無くすためには乗員が操作スイッチを操作してモータ61を逆回転させる。
以上のように、本実施形態の中折れ機構5及び中折れ機構駆動装置6を備えた車両用シート装置10によれば、車両衝突等により上部シートバック22を介してアッパークロスメンバ本体部41b(41a)と梃子形リンク51との連結点Qに大きな荷重Fqが掛かっても、ネジ・ギヤ機構53とサイドフレーム本体部31b(31a)との連結点Rに掛かる荷重Fsは小さくなる。よって、ネジ・ギヤ機構53は小さな荷重Fsに耐えうる構造であれば必要以上に強固な構造とすることはなく、中折れ機構5及び中折れ機構駆動装置6の低コスト化及び軽量化を図ることができる。
また、ネジ・ギヤ機構53は小さな推力を発生できれば梃子形リンク51とアッパークロスメンバ本体部41b(41a)との連結点Qに大きな力を作用させて上部シートバック22を傾動させることができる。よって、ネジ・ギヤ機構53に大減速が可能な減速歯車機構を付設する必要はなく、中折れ機構5及び中折れ機構駆動装置6の低コスト化及び軽量化を図ることができる。また、梃子形リンク51、支点リンク52及び中折れ機構5を上部シートバック22から突出させることなくサイドフレーム31の内側側方に配置でき、シートサイド幅を薄くすることができる。さらに、上部シートバック22の傾動角度に対するネジ・ギヤ機構53の駆動量が増加するので、上部シートバック22の微妙な傾動調整が可能になる。さらに、ネジ・ギヤ機構53の駆動時のガタ量を上部シートバック22の傾動時に小さくすることができるので、ガタ感の少ない高品質な中折れ機構5及び中折れ機構駆動装置6とすることができる。また、中折れ機構駆動装置6を上部シートバック22から突出させることなく、梃子形リンク51、支点リンク52及び中折れ機構5を上部シートバック22の側面後方に配置することができるので、距離aに対する距離bをさらに大きくすることができ、連結点Qに掛かる荷重Fqが大荷重であっても連結点Sに掛かる荷重Fsをさらに小荷重とすることができる。
また、この中折れ機構5においても、図2を参照して説明したように、梃子形リンク51とアッパークロスメンバ本体部41a,41bとの連結点Qが回転ヒンジ44a,44b(連結点H)を中心とした回転軌跡r1上を回転していくと、梃子形リンク51と支点リンク52との連結点Pは連結点Qの回転に追従して同方向に連結点Rを中心とした回転軌跡r4上を回転する。ところが、回転ヒンジ44a,44b(連結点H)と連結点Rは、サイドフレーム本体部31a,31bにおいて離間して設けられているので、回転軌跡r1と回転軌跡r4は、一旦交差した後は互いに離間していく。よって、回転軌跡r1,r4間の離間距離が連結点Q,P間の距離Lpqよりも短い間は、連結点Q及び連結点Pは回転可能であるが、回転軌跡r1,r4間の離間距離が連結点Q,P間の距離Lpqよりも長くなる位置で、連結点Q及び連結点Pは回転不可能となる。このことは、連結点Q及び連結点Pが上記回転方向とは逆方向に回転したときも起きる。つまり、連結点Qは、連結点Rとの間が最短距離(Lpr−Lpq)となる位置と、連結点Rとの間が最長距離(Lpr+Lpq)となる位置との間で回転可能、即ち回転軌跡r1と連結点Rを中心とした回転軌跡r2との交点(下死点)v1と、回転軌跡r1と回転軌跡r3との交点(上死点)v2との間で回転可能となる。これにより、アッパークロスメンバ本体部41a,41bのサイドフレーム本体部31a,31bに対する回動は、回転ヒンジ44a,44b(連結点H)を中心に一定角度範囲内でのみ可能となり、該角度範囲外では不可能となる。よって、例えば上部シートバック22に大荷重が掛かり、ネジ・ギヤ機構53が破損等を起こして上部シートバック22の傾動調整が不可能になっても、上部シートバック22を所定位置、即ち上部取り付け軸43a,43bが上死点に位置したときの上部シートバック22の位置、又は上部取り付け軸43a,43bが下死点に位置したときの上部シートバック22の位置に保持することができる。なお、一方向への規制のみで足る場合には、回転軌跡r1,r2と回転軌跡r1,r3とのうちの一方だけが交点v1,v2を持つようにしても良い。上記両方向または一方向の回動規制の作用効果のみを得る場合は、連結点Pから直線L1までの距離aと、連結点Pから直線L2までの距離bとの比a/bは1未満とする必要はなく任意の比で良い。
図9は、図1のシート調整装置100の変形例を示す模式図であり、図1のシート調整装置100と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。このシート調整装置200は、図1のシート調整装置100を上下逆に配置した構成となっている。即ち、第1リンク部材110は、一方の端部が第2シート部材102にヒンジ軸111(連結点Q)により回動自在に連結され、他方の端部が伸縮機構132の先端部にヒンジ軸112(連結点S)により回動自在に連結されている。第2リンク部材120は、一方の端部が第1シート部材102にヒンジ軸121(連結点R,T)により回動自在に連結され、他方の端部が第1リンク部材110の両端部間の部位にヒンジ軸122(連結点P)により回動自在に連結されている。そして、駆動装置131は、第2シート部材102に第2リンク部材120と同一のヒンジ軸121により回動自在に連結されている。このような構成のシート調整装置200も、図1のシート調整装置100と同様の効果を奏する。
図10は、図9のシート調整装置200を車両用シート装置の中折れ機構及び中折れ機構駆動装置に適用した場合を示す概略図であり、図4の車両用シート装置10と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この場合、アッパークロスメンバ本体部41a(41b)の上部取り付け軸43a(43b)(連結点R)には、支点リンク52の小径取付穴52bが貫入され、サイドフレーム本体部31a(31b)の下部取り付け軸33a(33b)(連結点Q)には、梃子形リンク51の軸穴72c及びギヤケース71の軸穴71aが貫入される。そして、中折れ機構駆動装置6のモータ61は、新たに設けたアッパークロスメンバ本体部41a,41bを連結するアッパークロスメンバ連結部材に配置固定される。このように、中折れ機構5を上下逆に配置しても図4の車両用シート装置10と同様の効果を奏する。
図11は、図1のシート調整装置100の別の変形例を示す模式図であり、図1のシート調整装置100と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。このシート調整装置300は、図1のシート調整装置100の第1リンク部材110と第2リンク部材120との連結点P(ヒンジ軸122)と、第1リンク部材110と第1シート部材101との連結点Q(ヒンジ軸111)との配置を逆配置、つまり連結点Pをシート後方側に配置変更し、連結点Qをシート前方側に配置変更した構成となっている。即ち、第1リンク部材110は、一方の端部に第2リンク部材120の一方の端部がヒンジ軸122(連結点P)により回動自在に連結され、両端部間の部位に第1シート部材101がヒンジ軸111(連結点Q)により回動自在に連結され、他方の端部が伸縮機構132の先端部にヒンジ軸112(連結点S)により回動自在に連結されている。第2リンク部材120は、一方の端部が第2シート部材102にヒンジ軸121(連結点R,T)により回動自在に連結されている。そして、駆動装置131は、第2シート部材102に第2リンク部材120と同一のヒンジ軸121(連結点R,T)により回動自在に連結されている。このシート調整装置300の動作は、図1のシート調整装置100の動作とは逆に、伸縮機構132が伸張すると、連結点Qは反時計回りに回動するので、第1シート部材101は連結点Hを中心にシート前方(反時計回り)に傾動する。伸縮機構132が収縮すると、連結点Qは時計回りに回動するので、第1シート部材101は連結点Hを中心にシート後方(時計回り)に傾動する。このような構成のシート調整装置300も、図1のシート調整装置100と同様の効果を奏する。
図12は、図11のシート調整装置300を車両用シート装置の中折れ機構及び中折れ機構駆動装置に適用した場合を示す概略図であり、図4の車両用シート装置10と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この場合、梃子形リンク51と支点リンク52との連結点Pよりもシート前方側に梃子形リンク51とアッパークロスメンバ本体部41b(41a)との連結点Qを配置し、さらにシート前方側に梃子形リンク51とネジ機構53との連結点Sを配置した構成となっている。このような構成としても図4の車両用シート装置10と同様の効果を奏する。
図13は、図1のシート調整装置100のさらに別の変形例を示す模式図であり、図1のシート調整装置100と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。このシート調整装置400は、図1のシート調整装置100の駆動装置131の連結点R,Tを分離した構成となっている。即ち、駆動装置131は、第2シート部材102にヒンジ軸133(連結点T)により回動自在に連結されている。このような構成のシート調整装置400も、図1のシート調整装置100と同様の効果を奏する。
また、図14は、図11のシート調整装置300の変形例を示す模式図であり、図11のシート調整装置300と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。このシート調整装置500も、図1のシート調整装置100の第1リンク部材110と第2リンク部材120との連結点P(ヒンジ軸122)と、第1リンク部材110と第1シート部材101との連結点Q(ヒンジ軸111)との配置を逆配置、つまり連結点Pをシート後方側に配置変更し、連結点Qをシート前方側に配置変更し、さらに図11のシート調整装置300の駆動装置131の連結点R,Tを分離した構成となっている。即ち、第1リンク部材110は、一方の端部に第2リンク部材120の一方の端部がヒンジ軸122(連結点P)により回動自在に連結され、両端部間の部位に第1シート部材101がヒンジ軸111(連結点Q)により回動自在に連結され、他方の端部が伸縮機構132の先端部にヒンジ軸112(連結点S)により回動自在に連結されている。第2リンク部材120は、一方の端部が第2シート部材102にヒンジ軸121(連結点R,T)により回動自在に連結されている。そして、駆動装置131は、第2シート部材102にヒンジ軸133(T)により回動自在に連結されている。このシート調整装置500の動作も、図1のシート調整装置100の動作とは逆に、伸縮機構132が伸張すると、連結点Qは反時計回りに回動するので、第1シート部材101は連結点Hを中心にシート前方(反時計回り)に傾動する。伸縮機構132が収縮すると、連結点Qは時計回りに回動するので、第1シート部材101は連結点Hを中心にシート後方(時計回り)に傾動する。このような構成のシート調整装置500も、図11のシート調整装置300と同様の効果を奏する。
図15は、図13のシート調整装置400を車両用シート装置の中折れ機構及び中折れ機構駆動装置に適用した場合を示す概略図であり、図4の車両用シート装置10と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この場合、支点リンク52とサイドフレーム本体部31b(31a)との連結点Rと、ネジ・ギヤ機構53とサイドフレーム本体部31b(31a)との連結点Tとを別の位置とした構成となっている。このような構成としても図4の車両用シート装置10と同様の効果を奏する。なお、図14のシート調整装置500を車両用シート装置の中折れ機構及び中折れ機構駆動装置に適用する場合も同様である。
図3に示す中折れ機構5及び中折れ機構駆動装置6は、自動車の前席シートに搭載される車両用シート装置10のリフタ機構及びリフタ機構駆動装置に適用することができ、図3に対応させて示す図16及び図17〜図19を参照して説明する。なお、リフタ機構及びリフタ機構駆動装置において中折れ機構5及び中折れ機構駆動装置6と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。
シートクッション1と車両のフロア9との間には、リフタ機構15及びリフタ機構駆動装置16並びにスライド機構(フロア側部材)17が配設されている。リフタ機構15はシートクッション1を車両のフロア9に対して上下方向に移動させる機構であり、リフタ機構駆動装置16はリフタ機構15を駆動してシートクッション1を車両のフロア9に対して上下方向に移動させる手段である。即ち、リフタ機構15は、リフタ機構駆動装置16により駆動されてシートバック2を含むシートクッション1を上下に移動させる。スライド機構17は、シートクッション1を車両のフロア9に対して前後方向に移動させる機構である。
さらに各部の構成を詳述すると、図17に示すように、シートクッション1内には、シートクッションフレーム7が配設されている。シートクッションフレーム7は、シートクッション1の幅方向の両端部に互いに面が対向するように1つずつ設けられた板状体であるロアアーム(第1シート部材)171b(171a)から構成されている。各ロアアーム171b(171a)の下方には、スライド機構17のロアレール172b(172a)及びアッパーレール(第2シート部材)173b(173a)が配置されている。ロアレール172b(172a)は、車両のフロア9に前後方向に向けてロアアーム171b(171a)の間隔をあけて固着されている。アッパーレール173b(173a)は、ロアレール172b(172a)に図略のボール又はローラを介して係合され長手方向(前後方向)に摺動自在に支持されている。
そして、ロアアーム171b(171a)の前端部は、アッパーレール173b(173a)の前端部と、前部リンク(第1シート部材)174b(174a)を介して回動自在に支持されている。即ち、前部リンク174b(174a)の一端部は、ロアアーム171b(171a)の前端部と回転ヒンジ176b(176a)で連結され、他端部は、アッパーレール173b(173a)の前端部と回転ヒンジ177b(177a)で連結されている。ロアアーム171b(171a)の後端部は、アッパーレール173b(173a)の後端部と、ベルクランクリンク(第1シート部材)175b(175a)を介して回動自在に支持されている。即ち、ベルクランクリンク175b(175a)の一端部は、ロアアーム171b(171a)の後端部と回転ヒンジ178b(178a)で連結され、他端部は、梃子形リンク51の軸穴72cと回転ヒンジ179b(179a)で連結され、両端部間が、アッパーレール173b(173a)の後端部と回転ヒンジ180b(180a)で連結されている。なお、アッパーレール173b(173a)及びロアレール172b(172a)を設けずに、車両のフロア9に対して前部リンク174b(174a)及びベルクランクリンク175b(175a)を介してロアアーム171b(171a)を取り付けるように構成しても良い。
ロアアーム171b(171a)とアッパーレール173b(173a)との間には、ロアアーム171b(171a)をアッパーレール173b(173a)に対して上下に移動させる機構である同一構造のリフタ機構15が夫々配設されている。アッパーレール173b(173a)間を連結する図略のアッパーレール連結部材には、リフタ機構駆動装置16が配設されている。リフタ機構15は、ロアアーム171b(171a)、アッパーレール173b(173a)、前部リンク174b(174a)及びベルクランクリンク175b(175a)による4節リンク機構を利用している。即ち、リフタ機構15は、リフタ機構駆動装置16に駆動されてベルクランクリンク175b(175a)を回動することにより、ロアアーム171b(171a)をアッパーレール173b(173a)に対して斜め左上方及び斜め右下方に移動する。これにより、シートバック2を含むシートクッション1を上下方向に移動させることができる。
リフタ機構15及びリフタ機構駆動装置16は、基本的に中折れ機構5及び中折れ機構駆動装置6と同一構成である。梃子形リンク51の軸穴72cは、ベルクランクリンク175b(175a)の一端部と回転ヒンジ179b(179a)で連結される。支点リンク52の小径取付穴52bには、アッパーレール173b(173a)の略中央から突出する取り付け軸181b(181a)が貫入されて連結される。
以上のような構成の車両用シート装置10の動作を説明する。シートクッション1を車両のフロア9に対して上方向に移動させるために、乗員が操作スイッチを操作すると、モータ駆動装置がモータ61を所定方向に回転させる。すると、送りネジ87が軸方向に移動し、梃子形リンク51を回転させて支点リンク52を揺動させる。これにより、ベルクランクリンク175a,175bが図17で反時計回り方向に回動してロアアーム171a,171bが斜め左上方に移動する。よって、シートバック2を含むシートクッション1は、ロアアーム171a,171bの移動に従い図17に示す位置から図18に示す位置まで移動する。反対にシートクッション1を車両のフロア9に対して下方向に移動させるためには乗員が操作スイッチを操作してモータ61を逆回転させる。
以上のように、本実施形態のリフタ機構15及びリフタ機構駆動装置16を備えた車両用シート装置10によれば、車両衝突等によりシートクッション1を介してベルクランクリンク175a,175bと梃子形リンク51との連結点である回転ヒンジ179a,179bに大きな荷重が掛かっても、ネジ・ギヤ機構53と梃子形リンク51との連結点である回転ヒンジ182a,182bに掛かる荷重は小さくなる。よって、ネジ・ギヤ機構53は小さな荷重に耐えうる構造であれば必要以上に強固な構造とすることはなく、リフタ機構15及びリフタ機構駆動装置16の低コスト化及び軽量化を図ることができる。
また、ネジ・ギヤ機構53は小さな推力を発生できれば梃子形リンク51とベルクランクリンク175a,175bとの連結点である回転ヒンジ179a,179bに大きな力を作用させてシートクッション1を移動させることができる。よって、ネジ・ギヤ機構53に大減速が可能な減速歯車機構を付設する必要はなく、リフト機構15及びリフト機構駆動装置16の低コスト化及び軽量化を図ることができる。さらに、シートクッション1の移動量に対するネジ・ギヤ機構53の駆動量が増加するので、シートクッション1の微妙な移動調整が可能になる。さらに、ネジ・ギヤ機構53の駆動時のガタ量をシートクッション1の移動時に小さくすることができるので、ガタ感の少ない高品質なリフト機構15及びリフト機構駆動装置16とすることができる。
また、このリフタ機構15においても、図2を参照して説明したように、梃子形リンク51とベルクランクリンク175a,175bとの連結点Qが回転ヒンジ180a,180b(連結点H)を中心とした回転軌跡r1上を回転していくと、梃子形リンク51と支点リンク52との連結点Pは連結点Qの回転に追従して同方向に連結点Rを中心とした回転軌跡r4上を回転する。ところが、回転ヒンジ180a,180b(連結点H)と連結点Rは、アッパーレール173a,173bにおいて離間して設けられているので、回転軌跡r1と回転軌跡r4は、一旦交差した後は互いに離間していく。よって、回転軌跡r1,r4間の離間距離が連結点Q,P間の距離Lpqよりも短い間は、連結点Q及び連結点Pは回転可能であるが、回転軌跡r1,r4間の離間距離が連結点Q,P間の距離Lpqよりも長くなる位置で、連結点Q及び連結点Pは回転不可能となる。このことは、連結点Q及び連結点Pが上記回転方向とは逆方向に回動したときも起きる。つまり、連結点Qは、連結点Rとの間が最短距離(Lpr−Lpq)となる位置と、連結点Rとの間が最長距離(Lpr+Lpq)となる位置との間で回転可能、即ち回転軌跡r1と連結点Rを中心とした回転軌跡r2との交点(下死点)v1と、回転軌跡r1と回転軌跡r3との交点(上死点)v2との間で回転可能となる。これにより、ベルクランクリンク175a,175bのアッパーレール173a,173bに対する回動は、回転ヒンジ180a,180b(連結点H)を中心に一定角度範囲内でのみ可能となり、該角度範囲外では不可能となる。よって、例えばシートクッション1に大荷重が掛かり、ネジ・ギヤ機構53が破損等を起こしてシートクッション1の上下動調整が不可能になっても、シートクッション1を所定位置、例えば図19に示す最上昇位置にてシートクッション1を保持することができる。なお、一方向への規制のみで足る場合には、回転軌跡r1,r2と回転軌跡r1,r3とのうちの一方だけが交点v1,v2を持つようにしても良い。上記両方向または一方向の回動規制の作用効果のみを得る場合は、中折れ機構5のときと同様にa/b(図4参照)は1未満とする必要はなく任意の比で良い。
なお、上述した実施形態では、シート調整装置100〜400を車両用シート装置10の上部シートバック22を下部シートバック21に対して傾動させる中折れ機構5及び中折れ機構駆動装置6、シートクッション1を車両のフロア9に対して上下方向に移動させるリフタ機構15及びリフタ機構駆動装置16に適用した場合を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば車両用シート装置10のシートクッション1内に配設されるリクライニング機構8、シートクッション1の前後のスライド機構17、シートクッション1の長さ調整機構、オットマン機構等に適用可能である。また、車両用シート装置10に限定されるものではなく、例えばステアリング装置のチルト調整機構、ロック機構等にも適用可能である。