以下に、実施するための形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、少なくとも、分散媒体中、一般式(1)で表される化合物と顔料を含有することを特徴とする分散性に優れた顔料分散体が得られることを見出した。また、得られた顔料分散体を使用したトナー、カラーフィルター用レジスト組成物、インク組成物を提供することを見出し本発明に至った。
一般式(1)中、R1乃至R6は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。
一般式(1)中のR1乃至R6におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、または、エチルヘキシル基等の直鎖、分岐、または、環状の炭素数1乃至20個のアルキル基が挙げられる。
一般式(1)中のR1乃至R6におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、または、ナフチル基等の6乃至14員環の単環式または多環式アリール基が挙げられる。
一般式(1)中のR1乃至R6におけるアラルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジル基、または、フェネチル基等が挙げられる。
一般式(1)中のR1乃至R6は上記したような置換基を表すが、化合物の安定性を著しく阻害するものでなければ、これらは更に置換基を有しても良い。この場合、置換しても良い置換基としては特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メチルアミノ基、プロピルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、または、N−エチル−N−フェニル基等のジ置換アミノ基、カルボン酸またはその塩等が挙げられる。
特に、一般式(1)中、R1とR2、R3とR4、R5とR6の組み合わせが同一の置換基である構造のものが製造の観点から容易であるため好ましい。さらには、少なくともR1、R3、R5がアルキル基である構造が溶剤等への溶解性が向上する観点から好ましい。特に、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルヘキシル基等の分岐した置換基を有する場合、ブトキシプロピル基等のような配位性のヘテロ原子を含んだ構造を有する場合が好ましい。
次に、本発明の前記一般式(1)で表される化合物の製造方法について、一態様を示すが、製造方法がこれに限定されるわけではない。
即ち、化号物Aとアミン、あるいはアミン誘導体とを縮合させて、化合物Bを得ることが出来る。カルボン酸とアミン、あるいはアミン誘導体の縮合反応であるので当該事業者には自明である。また、各化合物の官能基において必要に応じて、公知の保護・脱保護反応、加水分解等の反応を追加することは、当該事業者には適宜選択可能である。
本発明の一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、下記の例に限定されるものではない。
具体的に、化合物(1)、化合物(2)のような環構造を有するアルキル基、化合物(5)のような分岐構造を有するアルキル基、化合物(7)のような配位性のヘテロ原子(酸素原子など)を有するアルキル基が特に効果が著しい。
また、一般式(1)で表される化合物に化合物の安定性を著しく変化させない添加物であれば、どんなものでも加えて一般式(1)で表される化合物の融点や性能に変化を与えて調整しても良い。
<顔料分散体について>
本発明で言う分散媒体とは、水または有機溶剤のことを指す。本発明の顔料分散体は、少なくとも、分散媒体中、一般式(1)で表される化合物と顔料を分散処理することで得られる。
本発明の顔料分散体は、具体的には、例えば以下のようにして得られる。分散媒体中に前記一般式(1)、および必要に応じて樹脂を溶かし込み、撹拌しながらマゼンタ、シアン、あるいは、ブラック顔料粉末を除々に加え十分に分散媒体になじませる。さらにボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の分散機により機械的せん断力を加えることで、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散することができる。
本発明の顔料分散体に用いられるマゼンタ顔料の着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.Pigment Red2、3、5、6、7、23、31、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、123、130、144、146、149、150、166、168、169、177、179、178、181、184、185、190、194、202、206、209、220、221、224、238、254、255、269、282、C.I.Pigment Violet19及びこれらの誘導体として分類されるマゼンタ顔料が挙げられる。特に、透明性が高く、着色力が高いことからC.I.Pigment Red122、C.I.Pigment Red150、C.I.Pigment Red282が好ましい。マゼンタ顔料は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の顔料分散体に用いられるシアン顔料の着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、C.I.Pigment Blue1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、16、Solvent Blue44、48、60、64、67、70、136及びこれらの誘導体として分類されるシアン顔料が挙げられる。特に、色域が広いことからC.I.Pigment Blue15:3、C.I.Pigment Blue15:4が好ましい。シアン顔料は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の顔料分散体に用いられる黒色顔料の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、イエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
本発明で使用できるカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックが好ましい。そのようなカーボンブラック顔料としては、例えば、ラーベン(Raven)7000、ラーベン5750、ラーベン5250、ラーベン5000ウルトラ(ULTRA)II、ラーベン3500、ラーベン2500ウルトラ、ラーベン2000、ラーベン1500、ラーベン1255、ラーベン1250、ラーベン1200、ラーベン1190ウルトラII、ラーベン1170、ラーベン1080ウルトラ、ラーベン1060ウルトラ、ラーベン790ウルトラ、ラーベン780ウルトラ、ラーベン760ウルトラ(以上、コロンビアン・カーボン社製)、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モーグル(Mogul)L、モナーク(Monarch)700、モナーク(Monarch)800、モナーク880、モナーク900、モナーク1000、モナーク1100、モナーク1300、モナーク1400(以上、キャボット社製)、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラック18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.45、No.45L、No.47、No.52、No.900、No.960、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)、などがあげられる。ブラック顔料は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の顔料分散体中の顔料量は、分散媒体100質量部に対して1.0乃至30.0質量部、好ましくは2.0乃至20.0質量部、より好ましくは3.0乃至15.0質量部である。顔料の含有量が少なすぎると着色力が低くなり、含有量が多すぎると粘度が上昇しすぎるため、本発明の粘度の低減効果を得にくくなり、分散性が悪くなる。
本発明の顔料分散体中における一般式(1)で表される化合物の含有量は、前記顔料100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部である。
本発明の顔料分散体における分散媒体としては、目的用途に応じて水または有機溶剤を用いて分散させることが出来る。
本発明の顔料分散体は乳化剤を用いて水に分散させることが出来る。
本発明の顔料分散体における乳化剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を用いて水に分散させることが出来る。
本発明で用いられる乳化剤として用いられるカチオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
本発明の顔料分散体の分散媒体に使用し得る有機溶剤としては顔料の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、変成エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の硫黄・窒素含有有機化合物類が挙げられる。
また本発明で用いる有機溶剤としては、重合性単量体を用いることもできる。重合性単量体は、付加重合性あるいは縮重合性単量体であり、好ましくは、付加重合性単量体である。具体的にはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン化合物を挙げることができる。これらは使用用途に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の顔料分散体を重合トナー用途に用いる場合は、上記重合性単量体の中でも、スチレン、または、スチレン系単量体を単独もしくは、他の重合性単量体と混合して使用することが好ましい。特に扱い易さから、スチレンが好ましい。
顔料分散体にはさらに樹脂を加えてもよい。顔料分散体に使用し得る樹脂としては目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的には、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルメチルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。その他ポリウレタン樹脂やポリペプチド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上混合して用いることができる。
本発明の顔料分散体を塗料や重合トナー用の重合性単量体組成物に利用する際に好ましい粘度は、測定温度25℃では、100乃至2000mPa・sの範囲内であることが好ましく、200乃至1500mPa・sの範囲内であることがより好ましく、300乃至1300mPa・sの範囲内であることが特に好ましい。顔料分散体の粘度が低すぎると、顔料が十分に微分散されていない場合がある。顔料分散体の粘度が高すぎると、分散効率が悪くなる場合や、分散処理後の移送が困難になる場合がある。
<トナーについて>
本発明の顔料分散体は、少なくとも結着樹脂、着色剤およびワックス成分等を含有するトナー母粒子を含むトナーの着色剤としても使用可能である。本発明の顔料分散体を着色剤として用いることにより、分散媒体中で分散粘度の増加を抑制できるため、トナー製造工程上のハンドリングが容易になるとともに、着色剤の分散性が良好に保たれるため、高着色力を有するトナー、および該トナーの製造方法が提供される。
本発明のトナーを構成するトナー粒子に用いられる結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリル酸エステル系単量体、ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独または、一般的にはポリマーハンドブック第2版III−139乃至192ページ(John Wiley & Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40乃至75℃を示すように単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方、75℃を超える場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において、画像の透明性が低下する。
本発明においては、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等の極性樹脂を用いることができる。例えば、懸濁重合法等により直接トナーを製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂を添加すると、トナー母粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー母粒子の表面に薄層を形成したり、トナー母粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在したりするように制御することができる。この時、本発明に係る着色剤としての顔料分散体や荷電制御剤と相互作用を有するような極性樹脂を用いることによって、トナー中への該着色剤の存在状態を望ましい形態にすることが可能である。
本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、トナー分子の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることもできる。
本発明のトナーに用いられる架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、二官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、および上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
多官能の架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレートおよびそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤は、前記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部、さらには0.1乃至5質量部用いることがより好ましい。
本発明のトナーを構成するトナー粒子に用いられる着色剤としては、少なくとも本発明の顔料分散体を用いるが、本発明の顔料分散体の分散性を阻害しない限りは、該顔料分散体と他の着色剤を併用することできる。併用できる着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物等、様々なものが挙げられる。
本発明において使用し得るワックス成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックスおよびそれらの誘導体等が挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪族あるいはその化合物、酸アミド、エステル、ケトン、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、もしくは併せて用いることができる。
ワックス成分の添加量としては、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5乃至15.0質量部の範囲であることが好ましく、さらには3.0乃至10.0質量部の範囲であることがより好ましい。ワックス成分の添加量が2.5質量部より少ないとオイルレス定着が困難となり、15.0質量部を超えるとトナー粒子中でのワックス成分の量が多すぎるため、余剰のワックス成分がトナー粒子表面に多く存在して、所望の帯電特性を阻害する可能性があるために好ましくない。
本発明のトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー母粒子と混合して用いることも可能である。これにより、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤は、例えば、トナーを負荷電性に制御するものとして、スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体、サリチル酸誘導体およびその金属錯体、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸や、その金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。また、トナーを正荷電性に制御するものとしては、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩およびこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類、樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。これらを単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
本発明のトナーは、流動化剤として無機微粉体が外部添加されていてもよい。無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物や、これらを表面処理したもの等の微粉体が使用できる。
本発明のトナーを構成するトナー粒子の製造方法としては、従来使用されている、粉砕法、懸濁重合法、懸濁造粒法、乳化重合法などが挙げられる。製造時の環境負荷および粒径の制御性の観点から、これらの製造方法のうち、特に懸濁重合法、懸濁造粒法等、水系媒体中で造粒する製造法によって得ることが好ましい。また、液体現像法に用いられる現像剤(以下液体現像剤と呼ぶ)に用いることが出来る。
前記懸濁重合法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。
まず、本発明にかかる顔料分散体を含む着色剤、重合性単量体、ワックス成分および重合開始剤等を混合して重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を造粒する。そして、水系媒体中にて重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させてトナー粒子を得る。
前記工程における重合性単量体組成物は、前記着色剤を第1の重合性単量体に分散させた分散液を、第2の重合性単量体と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、本発明の顔料組成物を含む着色剤を第1の重合性単量体により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の重合性単量体と混合することにより、顔料がより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できるものとなる。
前記懸濁重合法に用いられる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げることができ、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光重合開始剤などが挙げられる。より具体的には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素−第1鉄系、BPO−ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩−アルコール系等のレドックス開始剤などが挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系等が挙げられる。これらの方法は、単独または2つ以上組み合わせて使用することができる。
前記重合開始剤の濃度は、重合性単量体100質量部に対して0.1乃至20質量部の範囲である場合が好ましく、より好ましくは0.1乃至10質量部の範囲である場合である。前記重合性開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減温度を参考に、単独または混合して使用される。
前記懸濁重合法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系および有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が挙げられる。また、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。
前記分散安定化剤のうち、本発明においては、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いることが好ましい。また、本発明においては、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100質量部に対して0.2乃至2.0質量部の範囲となるような割合で使用することが該重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3,000質量部の範囲の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
本発明において、前記の難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定化剤をそのまま用いて分散させてもよいが、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、水中にて高速撹拌下に、前記難水溶性無機分散安定化剤を生成させて調製することが好ましい。例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定化剤を得ることができる。
本発明のトナー粒子は、懸濁造粒法により製造された場合においても好適なトナー粒子を得ることができる。懸濁造粒法の製造工程では加熱工程を有さないため、低融点ワックスを用いた場合に起こる樹脂とワックス成分の相溶化を抑制し、相溶化に起因するトナーのガラス転移温度の低下を防止することができる。また、懸濁造粒法は、結着樹脂となるトナー材料の選択肢が広く、一般的に定着性に有利とされるポリエステル樹脂を主成分にすることが容易である。そのため、懸濁重合法を適用できない樹脂組成のトナーを製造する場合に有利な製造方法である。
前記懸濁造粒法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。
まず、本発明に係る顔料分散体を含む着色剤、結着樹脂、ワックス成分等を、溶剤中で混合して溶剤組成物を調製する。次に、該溶剤組成物を水系媒体中に分散して溶剤組成物の粒子を造粒してトナー粒子懸濁液を得る。そして、得られた懸濁液を加熱、または減圧によって溶剤を除去することでトナー粒子を得ることができる。
前記工程における溶剤組成物は、前記着色剤を第1の溶剤に分散させた分散液を、第2の溶剤と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、本発明の顔料組成物を含む着色剤を第1の溶剤により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の溶剤と混合することにより、顔料がより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できるものとなる。
前記懸濁造粒法に用いることができる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等の含ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンジルアルコールエチルエーテル、ベンジルアルコールイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。これらを単独または2種類以上混合して用いることができる。これらのうち、前記トナー粒子懸濁液中の溶剤を容易に除去するため、沸点が低く、且つ前記結着樹脂を十分に溶解できる溶剤を用いることが好ましい。
前記溶剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、50乃至5,000質量部の範囲である場合が好ましく、120乃至1,000質量部の範囲である場合がより好ましい。
前記懸濁造粒法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系および有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられる。
前記分散剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲である場合が、該溶剤組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。
本発明のトナーは、重量平均粒径D4が4.0乃至8.0μmであり、重量平均粒径D4と個数平均粒径D1の比(以下、重量平均粒径D4/個数平均粒径D1またはD4/D1ともいう)が1.35以下であることが好ましい。さらには、重量平均粒径D4が4.9乃至7.5μmであり、重量平均粒径D4/個数平均粒径D1が1.30以下であることがより好ましい。重量平均粒径D4が4.0μm未満の場合は、電子写真現像システムに適用したときに帯電安定化が達成しづらくなり、多数枚の連続現像動作(耐久動作)において、カブリや転写性が低下しやすくなる。重量平均粒径D4が8.0μmを超える場合は、ハーフトーン部の再現性が大きく低下し、得られた画像はガサついた画像になってしまい好ましくない。特に10.0μm以上の粗粉が増加するとより傾向が顕著に現れてしまう。重量平均粒径D4/個数平均粒径D1が1.35を超える場合は、カブリや転写性が低下してしまうとともに、高解像度が得られにくくなる。
なお、本発明のトナーの重量平均粒径D4と個数平均粒径D1は、トナー母粒子の製造方法によってその調整方法は異なる。例えば、懸濁重合法の場合は、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、または反応撹拌時間等をコントロールすることによって調整することができる。
本発明のトナーは、フロー式粒子像分析装置で測定される該トナーの平均円形度が0.950乃至0.995であり、より好ましくは0.960乃至0.990であることが、トナーの転写性が大幅に改善される点から好ましい。
本発明のトナーは、磁性トナーまたは非磁性トナーどちらでも良い。磁性トナーとして用いる場合には、本発明のトナーを構成するトナー粒子は、磁性材料を混合して用いても良い。このような磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、または他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金およびこれらの混合物等が挙げられる。
<液体現像剤の製造方法>
本発明の液体現像剤を得るには、電気絶縁性担体液に着色剤、一般式(1)で表される化合物、分散剤として用いられる分散剤樹脂、必要に応じて、電荷制御剤,ワックス等の助剤とを分散または溶解させて製造する。また、先に、濃縮トナーを作り、さらに電気絶縁性担体液で希釈して現像剤を調製するというような、二段法で調製してもよい。
本発明で用いる分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
本発明で用いられる着色剤は単独、または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いられる樹脂及びワックスは前記と同様である。
本発明で用いられる電荷制御剤としては、静電荷現像用液体現像剤に用いられているものであれば、特に制限されることはないが、例えば、ナフテン酸コバルト,ナフテン酸銅,オレイン酸銅,オレイン酸コバルト,オクチル酸ジルコニウム,オクチル酸コバルト,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ドデシルべンゼンスルホン酸カルシウム,大豆レシチン,アルミニウムオクトエート等が挙げられる。
本発明で用いられる電気絶縁性担体液としては、特に制限はないが、例えば109Ω・cm以上の高い電気抵抗と3以下の低い誘電率を有する有機溶剤を使用することが好ましい。
具体的な例として、ヘキサン、ペンタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンのような脂肪族炭化水素溶剤、アイソパーH,G,K,L,M(エクソン化学(株)製)、リニアレンダイマーA−20、A−20H(出光興産(株)製)等、沸点が68乃至250℃の温度範囲のものが好ましい。これらは、系の粘度が高くならない範囲で単独、または、2種以上を併用して用いてもよい。
<カラーフィルター用レジスト組成物について>
本発明の顔料分散体は、鮮やかな色調を有し、その分光特性により色材、好ましくは、カラーフィルター用着色剤として用いることが出来る。
本発明のレジスト組成物は、少なくともバインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、溶剤、本発明の顔料分散体を1種以上含有してなる。
また、基板上に異なる分光特性を持つ二種以上の画素が隣接して配列されてなるカラーフィルターにおいて、その複数の画素(例えば、赤、緑、青)のうち、少なくとも1つに本発明の顔料分散体を用いることによって、高透明で高色純度な画素を得ることができるが、更に、染料を混合することで分光特性を改善することもできるため、本発明の顔料分散体と染料との混合物を用いてもよい。染料は要望の色相を得るために2種類以上を混合して用いても構わない。
本発明の顔料分散体の顔料の含有量としては、下記バインダー樹脂の質量に対して、0.1乃至400質量%が好ましく、1乃至200質量%がより好ましい。
本発明のカラーフィルター用のレジスト組成物に使用できるバインダー樹脂としては、光照射部、あるいは、遮光部が有機溶剤、アルカリ水溶液、水、または市販の現像液によって溶解可能なものであればよく、特に限定されるものではない。更に、作業性、廃棄物処理などの観点からは水あるいはアルカリ現像可能な組成を有すものがより望ましい。
このような樹脂としては、一般にアクリル酸やメタクリル酸、2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、N−ビニルピロリドンやアンモニウム塩を有するモノマーなどに代表されるような親水性のモノマーとアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、N−ビニルカルバゾールなどに代表されるような親油性のモノマーとを適度な混合比で既知の手法で共重合したバインダー樹脂が知られている。これらのバインダー樹脂はエチレン性の不飽和基を有するラジカル重合性のモノマーやオキシラン環、あるいは、オキセタン環を有するカチオン重合性のモノマー、ラジカル発生剤或いは酸発生剤や塩基発生剤との組み合わせによってネガ型、即ち遮光部分が現像によって除去されるタイプのレジストとして用いることができる。
また、ポリヒドロキシスチレンのtert−ブチル炭酸エステル、tert−ブチルエステル、テトラヒドロキシピラニルエステル、あるいは、テトラヒドロキシピラニルエーテルなどに代表されるバインダー樹脂を使用することもできる。この種のバインダー樹脂は、酸発生剤との組み合わせによってポジ型、即ち光照射部分が現像によって除去されるタイプのレジストとして用いることができる。
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、光の照射によって付加重合するエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとして、エチレン性不飽和二重結合を1個以上有する光重合性モノマーを含有する。前記光重合性モノマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物が挙げられる。例えば、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、フェノキシエチルアクリレートフェノキシエチルメタクリレート等の単官能アクリレートや、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリアクリレート、グリセリントリメタクリレートなどの多官能アクリレートおよびメタクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリンなどの多官能アルコールにエチレンオキシドにプロピレンオキシドを付加した後アクリレート化またはメタクリレート化したものなどの多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
さらに、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸またはメタクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類などの多官能アクリレートやメタクリレートも挙げられる。上記の中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレートが好ましい。
エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する光重合成モノマーは、単独で用いても2種類以上を混合して用いても良い。前記重合性化合物の含有量としては、着色感光性組成物の質量(全固形分)の5乃至50質量%が一般的であり、特に10乃至40質量%が好ましい。前記含有量が、5%未満であると、光感度や画素の強度が低下することがあり、50質量%を超えると、感光性樹脂層の粘着性が過剰になることがあり好ましくない。
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、紫外線硬化性である場合には、光重合開始剤を含有して構成される。該光重合開始剤としては、ビシナールポリケトアルドニル化合物、α−カルボニル化合物、アシオインエーテル、多岐キノン化合物、トリアリルイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組み合わせ、トリオキサジアゾール化合物などが挙げられ、好ましくは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(商品名:イルガキュア369、BASF社製)が挙げられる。なお、本発明の着色レジストによる画素の形成に際し、電子線を用いる場合には、上記光重合開始剤は必須ではない。
本発明のカラーフィルター用のレジスト組成物は上記バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、着色剤などを溶解若しくは分散させるための溶剤を含有する。使用できる溶剤としては、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤などが挙げられる。これらは単独若しくは混合して用いることができる。
以上のように、本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、着色剤として本発明の顔料分散体を含有して構成されるので、形成される画素の色相が良好で透明性、透光性を向上させることができる。
<インクについて>
本発明の顔料分散体をインクとして利用可能である。特に好ましくは、媒体が水系の場合である。また、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒を使用しても良い。この際に使用する水溶性有機溶剤は、水溶性を示すものであれば制限はなく、例えば、アルコール、多価アルコール、ポリエチレングリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶剤、含硫黄極性溶剤などが挙げられる。
本発明の顔料分散体を含有するインクを製造する場合に、インクのpHは特に限定されるものではないが、安全性の面を考慮すると、pH4.0乃至11.0の範囲内のものが好ましい。また、インクジェット用のインクを作成する場合には、インクの保持性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパンなどの保湿性固形分もインクの成分として用いても良い。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等、保湿性固形分のインク中の含有量は、一般的には、インクに対して0.1質量%以上20.0質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは、3.0質量%以上10.0質量%以下の範囲である。
更に、インクとする場合には、前記成分以外にも、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させてもよい。
以上説明したようにして、本発明の顔料分散体を含有するインクは、熱エネルギーの作用により液滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方式にとりわけ好適に用いられる。本発明の顔料分散体を含有するインクは、他のインクジェット記録方法に適用するインクや、一般の筆記用具等の材料としても使用できることはいうまでもない。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
得られた反応生成物の同定は、下記に挙げる装置を用いた複数の分析方法によって行った。即ち、使用した分析装置は、1H及び13C核磁気共鳴分光分析(ECA−400、日本電子(株)製)、LC/TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)を用いた。
[一般式(1)で表される化合物の製造]
以下に記載する方法で本発明の一般式(1)で表される化合物を製造した。
化合物(1)は商品名「リカクリア PC1」(新日本理化株式会社製)で容易に入手することも可能である。
〈製造例1:化合物(4)の製造例〉
クレゾール13.0g(120mmol)、1,2,3−プロパントリカルボン酸7.0g(40mmol)、三酸化二ホウ素1.0g(14.4mmol)のキシレン150mL溶液にn−ドデシルアミン44.5g(240mmol)を添加し、6時間加熱還流させ脱水させた。反応終了後、減圧下濃縮した後、アセトニトリル150mLで、50℃で1時間攪拌させ懸濁洗浄を行った。固体をろ過し、化合物(4)10.0g(収率37%)を得た。
[化合物(4)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、DMSO−d6、室温):δ[ppm]=0.85(t、9H、J=6.64Hz)、1.17(m、60H)、2.50(t、11H、J=1.83Hz)、7.64(s、1H)、8.03(s、1H)、10.8(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=676.6414(M−H)-
〈製造例2及び3:化合物(5)及び(7)の製造例〉
製造例1における化合物(1)のn−ドデシルアミンを、2−エチルヘキシルアミン、3−ブトキシプロピルアミンに変更した以外は製造例1と同様に製造し、化合物(5)7.3g(収率36%)、化合物(7)4.8g(収率23%)を得た。なお、図1に化合物(7)の1H NMRスペクトルを示した。
[化合物(5)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、DMSO−d6、室温):δ[ppm]=0.80(td、9H、J=7.44、3.51Hz)、0.86(t、9H、J=6.87Hz)、1.2(t、24H、8.47Hz)、1.32(dd、3H、J=11.7、5.72Hz)、2.10(dd、2H、J=14.7、6.87Hz)、2.32(dd、2H、J=14.9、8.01Hz)、2.50(t、1H、J=1.83Hz)、2.96(dtd、6H、J=39.1、13.1、6.41Hz)、7.60(t、1H、6.00Hz)、7.68(t、2H、6.00Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=508.4524(M−H)-
[化合物(7)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、DMSO−d6、室温):δ[ppm]=0.92−0.82(m、9H)、1.3(td、6H、J=14.9、7.48Hz)、1.46(dt、6H、J=15.7、5.95Hz)、1.57(td、6H、J=13.3、6.4Hz)、2.07(dd、2H、J=14.7、6.41Hz)、2.28(dd、2H、J=14.7、7.79Hz)、2.5(t、1H、J=1.60Hz)、2.99(tt、7H、J=22.4、7.56Hz)、3.36−3.30(m、12H)、7.72(dt、3H、J=29.5、5.61Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=514.3906(M−H)-
[顔料分散体の製造]
以下に記載する方法で本発明の顔料分散体及び比較顔料分散体を製造した。
<実施例1>
C.I.Pigment Red122(クラリアント社製、商品名「Toner Magenta E」)6部と化合物(1)0.06部の混合物にポリエステル樹脂48部と酢酸エチル120部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により3時間分散させて本発明の顔料分散体(1)を得た。
<実施例2及び3>
実施例1において、酢酸エチルを各々トルエン、エチルメチルケトンに変更した以外は、実施例1と同様な操作で、顔料分散体(2)及び(3)を得た。
<実施例4>
C.I.Pigment Red122(クラリアント社製、商品名「Toner Magenta E」)12部と化合物(1)0.12部の混合物にスチレン120部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により3時間分散させて本発明の顔料分散体(4)を得た。
<実施例5乃至7>
実施例4において、化合物(1)の用いる質量部を、0.36部、0.60部、1.2部に変更した以外は実施例4と同様な操作で、顔料分散体(5)乃至(7)を得た。
<実施例8>
実施例4において、スチレンをシクロヘキサノンに変更した以外は、実施例4と同様な操作で、顔料分散体(8)を得た。
<実施例9>
実施例1において、C.I.Pigment Red122を用いる代わりに、C.I.Pigment Yellow150を用い、酢酸エチルをトルエンに変更した以外は、実施例1と同様な操作で、顔料分散体(9)を得た。
<実施例10乃至12>
実施例4において、化合物(1)を用いる代わりに、各々化合物(4)、化合物(5)、化合物(7)に変更した以外は実施例4と同様な操作で、顔料分散体(10)乃至(12)を得た。
<実施例13>
C.I.Pigment Red122 6部、化合物(1)0.06部、ドデシル硫酸ナトリウム1.2部の混合物に水60部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により3時間分散させて本発明の顔料分散体(13)を得た。
<実施例14及び15>
実施例4において、スチレンを用いる代わりに酢酸エチル/トルエン(60部/60部)混合物、スチレン/キシレン(60部/60部)混合物に変更した以外は、実施例4と同様な操作で、顔料分散体(14)及び(15)を得た。
<比較例1乃至3>
実施例1乃至3の比較例
実施例1乃至3において、化合物(1)を入れないこと以外は実施例1と同様な操作で、比較用顔料分散体(16)乃至(18)を得た。
<比較例4>
実施例4乃至7、10乃至12の比較例
実施例4において、化合物(1)を入れないこと以外は実施例4と同様な操作で、比較用顔料分散体(19)を得た。
<比較例5>
実施例8の比較例
実施例8において、化合物(1)を入れないこと以外は実施例8と同様な操作で、比較用顔料分散体(20)を得た。
<比較例6>
実施例9の比較例
実施例9において、化合物(1)を入れないこと以外は実施例9と同様な操作で、比較用顔料分散体(21)を得た。
<比較例7>
実施例13の比較例
実施例13において、化合物(1)を入れないこと以外は実施例13と同様な操作で、比較用顔料分散体(22)を得た。
<比較例8>
実施例14及び15の比較例
実施例14及び15において、化合物(1)を入れないこと以外は実施例14及び15と同様な操作で、比較用顔料分散体(23)及び(24)を得た。
<評価>
[分散性]
顔料分散体の分散性の評価を以下のように行った。粒度測定器(グラインドメーター)(テスター産業株式会社)を用い、顔料の粒の大きさを測定することによって決定した。
マゼンタ顔料とシアン顔料に関しての評価
A:2.5μm未満(分散性が非常に良い)
B:2.5μm以上4.5μm未満(分散性が良い)
C:4.5μm以上(分散性が悪い)
ブラック顔料に関しての評価
A:4.5μm未満(分散性が非常に良い)
B:4.5μm以上7.5μm未満(分散性が良い)
C:7.5μm以上(分散性が悪い)
また、前記顔料分散体をアルミ基板上に展開し、溶媒を自然乾燥によって除去したサンプルを走査電子顕微鏡 S−4800(日立製作所社製)によって、マゼンタ顔料およびシアン顔料については拡大率100,000倍にて観察して分散性を確認した。また、ブラック顔料については拡大率50,000倍にて観察して分散性を確認した。
上記顔料分散体の製造例、及び、顔料分散体の比較製造例の評価結果を表1にまとめた。表1中、顔料のPR122は、C.I.Pigment Red122を表す。また、添加率は、顔料に対する一般式(1)化合物の添加割合を表す。
<実施例16乃至30、比較例10乃至18>
実施例1乃至15、比較例1乃至9において、C.I.Pigment Red122を用いる代わりにC.I.Pigment Blue15:3、C.I.Pigment Red150を用いる代わりにC.I.Pigment Blue15:4に変更した以外は、実施例1乃至15、比較例1乃至9と同様な操作で、顔料分散体(25)乃至(48)を得た。評価は前記と同様に行った。
上記顔料分散体の製造例、及び、顔料分散体の比較製造例の評価結果を表2にまとめた。表2中、顔料のPR15:3は、C.I.Pigment Blue15:3を、PR15:4は、C.I.Pigment Blue15:4を表す。
<実施例31、比較例10乃至18>
実施例1乃至8、10乃至15、比較例1乃至5、7乃至9において、C.I.Pigment Red122、または、C.I.Pigment Red150を用いる代わりにプリンテックス(Printex)35(テグッサ社製)に変更した以外は、実施例1乃至8、10乃至15、比較例1乃至5、7乃至9と同様な操作で、顔料分散体(49)乃至(70)を得た。評価は前記と同様に行った。
上記顔料分散体の製造例、及び、顔料分散体の比較製造例の評価結果を表3にまとめた。表3中、顔料のカーボンBは、プリンテックス(Printex)35を表す。
表1乃至3より明らかなように、本発明で得られる顔料分散体は、対応する比較用顔料分散体と比較して分散媒体中での着色剤の分散性に非常に優れている。なお、顔料分散体(4)、(28)、(52)のSEM写真に基づく図を図4(100,000倍)、図5(100,000倍)、図6(50,000倍)に示した。
[トナーの製造]
以下に記載する方法で本発明のマゼンタトナー及び比較マゼンタトナーを製造した。
<実施例45>
高速撹拌装置T.K.ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を備えた2L用四つ口フラスコ中にイオン交換水710部と0.1mol/l−リン酸三ナトリウム水溶液450部を添加し回転数を12000rpmに調製し、60℃に加温した。ここに1.0mol/l−塩化カルシウム水溶液68部を徐々に添加し微小な難水溶性分散安定剤リン酸カルシウムを含む水系分散媒体を調製した。
・顔料分散体(4) 133.2部
・スチレン単量体 46.0部
・n−ブチルアクリレート単量体 34.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物 2.0部
(オリエント化学工業株式会社製 ボントロンE−88)
・極性樹脂 10.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、Tg=65℃、Mw=10,000、Mn=6,000)
・エステルワックス 25.0部
(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度=70℃、Mn=704)
・ジビニルベンゼン単量体 0.10部
上記処方を60℃に加温し、T.K.ホモミキサーを用いて5,000rpmにて均一に溶解・分散した。これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、回転数12,000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、液温を60℃で重合を5時間継続させた後、液温を80℃に昇温させ8時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃/減圧下で残存単量体を留去した後、液温を30℃まで冷却し、重合体微粒子分散体を得た。
次に、重合体微粒子分散体を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加してpH1.5に調整し、2時間撹拌させた。濾過器で固液分離を行い、重合体微粒子を得た。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とを、リン酸カルシウムを含むリン酸とカルシウムの化合物を十分に除去されるまで、繰り返し行った。その後に、最終的に固液分離した重合体微粒子を、乾燥機で十分に乾燥してマゼンタトナー母粒子(1)を得た。
得られたマゼンタトナー母粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体(数平均一次粒子径7nm)1.00部、ルチル型酸化チタン微粉体(数平均一次粒子径45nm)0.15部、ルチル型酸化チタン微粉体(数平均一次粒子径200nm)0.50部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で5分間乾式混合して、本発明のマゼンタトナー(1)を得た。
<実施例46>
実施例45において、顔料分散体(4)を、顔料分散体(10)に変更した以外は実施例45と同様にして本発明のマゼンタトナー(2)を得た。
<実施例47>
実施例45において、顔料分散体(4)を、顔料分散体(11)に変更した以外は実施例45と同様にして本発明のマゼンタトナー(3)を得た。
<実施例48>
実施例45において、顔料分散体(4)を、顔料分散体(12)に変更した以外は実施例45と同様にして本発明のマゼンタトナー(4)を得た。
<比較例27>
実施例45において、顔料分散体(4)を、顔料分散体(19)に変更した以外は実施例45と同様にして本発明のマゼンタトナー(5)を得た。
<実施例49>
実施例45において、顔料分散体(4)を、顔料分散体(28)に変更した以外は実施例45と同様にして本発明のシアントナー(6)を得た。
<実施例50>
実施例45において、顔料分散体(4)を、顔料分散体(34)に変更した以外は実施例45と同様にして本発明のシアンタトナー(7)を得た。
<実施例51>
実施例45において、顔料分散体(4)を、顔料分散体(35)に変更した以外は実施例45と同様にして本発明のシアントナー(8)を得た。
<実施例52>
実施例45において、顔料分散体(4)を、顔料分散体(36)に変更した以外は実施例45と同様にして本発明のシアントナー(9)を得た。
<比較例28>
実施例45において、顔料分散体(4)を、顔料分散体(43)に変更した以外は実施例45と同様にして本発明のシアントナー(10)を得た。
上記マゼンタトナー及びシアントナーの評価を以下のように行った。
(1)トナーの重量平均粒径D4、及び個数平均粒径D1の測定
上記トナー粒子の個数平均粒径(D1)及び重量平均粒径(D4)はコールター法による粒度分布解析にて測定する。測定装置として、コールターカウンターTA−IIあるいはコールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター株式会社製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い測定する。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%塩化ナトリウム水溶液を調製する。例えば、ISOTON−II(コールターサイエンティフィックジャパン株式会社製)が使用できる。具体的な測定方法としては、前記電解水溶液100乃至150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を、0.1乃至5ml加え、更に測定試料(トナー粒子)を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行う。得られた分散処理液を、アパーチャーとして100μmアパーチャーを装着した前記測定装置により、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定してトナーの体積分布と個数分布とを算出する。それから、トナー粒子の個数分布から求めた個数平均粒径(D1)と、トナー粒子の体積分布から求めたトナー粒子の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)及びD4/D1を求めた。
上記チャンネルとしては、2.00乃至2.52μm、2.52乃至3.17μm、3.17乃至4.00μm、4.00乃至5.04μm、5.04乃至6.35μm、6.35乃至8.00μm、8.00乃至10.08μm、10.08乃至12.70μm、12.70乃至16.00μm、16.00乃至20.20μm、20.20乃至25.40μm、25.40乃至32.00μm、32.00乃至40.30μmの13チャンネルを用いる。
(2)トナーの平均円形度の測定
フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス株式会社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出した。
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。円形度は粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合には1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
[画像サンプル評価]
次に上述のトナー10種を用いて、画像サンプルを出力し後述する画像特性を比較評価した。尚、画像特性の比較に際し画像形成装置(以下LBPと略)としてLBP−5300(キヤノン社製)の改造機を使用した通紙耐久を行った。改造内容としてはプロセスカートリッジ(以下CRGとする)内の現像ブレードを厚み8[μm]のSUSブレードに交換した。その上でトナー担持体である現像ローラーに印加する現像バイアスに対して−200[V]のブレードバイアスを印加できるようにした。
評価に際しては各トナーを個別に充填したCRGを評価項目毎に用意した。そして各々のトナーを充填したCRGごとにLBPにセッティングし、下記に記載した評価項目毎に評価した。
評価項目として、画像カブリ、現像スジ、鮮鋭性の3つの比較を行った。
尚、評価環境として
1)常温常湿環境(N/N(23℃、55%Rh)):(以下N/N環境と略)
2)低温低湿環境(L/L(15℃、10%Rh)):(以下L/L環境と略)
3)高温高湿環境(H/H(30℃、80%Rh)):(以下H/H環境と略)
の3環境の内、鮮鋭性についてはN/N環境のみで評価を行った。残りの2項目については3環境での評価を実施した。
結果はすべて後述する表5に示す通り、比較例のトナーに対して本発明のトナーを用いた場合には上記各画像評価項目とも比較例に対して良好な結果を得ることができた。
以下に各評価項目における具体的な評価方法を示す。
<画像カブリ>
画像カブリとは本来トナーの載るべきでない箇所(以下白地部分と略)にトナーが載る現象を示している。従って白地部分の濃度が低いほど良好な画像となる。
特に微粉の割合が多いトナーを用いた場合、CRG内の現像ブレードの表面上へトナー融着を起こしやすくなる。その結果十分な帯電量を付与されないトナーが増加することで非画像領域に画像カブリが発生してしまう。
そこで画像カブリを検証するため、まず15,000枚の通紙耐久後のCRGを用いて、白地部分を有する画像出力を行った。その後「デジタル白色光度計 TC−6D」(東京電色社製)により先程画像出力を行った白地部分の白色度(反射率Ds[%])を測定する。また合わせて画像出力を行っていない下記記載の評価用紙における同じ製造ロットの平均白色度(平均反射率Dr[%])の測定も実施する。そして両者の差からカブリ濃度[%](=Dr[%]−Ds[%])を算出し、耐久評価時の画像カブリを定量化した。
評価時の条件としてはブルーフィルターを用いて評価を行った。また評価用紙としては(用紙銘柄名)イメージコートグロス128(A4サイズ)(キヤノンマーケティングジャパン社販売品)を用いた。
以上の条件を用いたカブリ評価結果について後述ランクに基づき評価を行った。
本発明における顔料分散体を用いたトナーではA,B,Cは実使用上問題ないレベルである。D,Eレベルでは白地部分が赤みもしくは青みを帯びていると判別できるレベルになるため、Cランク以上を好ましいレベルと判断した。
A:1.0[%]未満
B:1.0[%]以上2.0[%]未満
C:2.0[%]以上3.0[%]未満
D:3.0[%]以上4.0[%]未満
E:4.0[%]以上
<現像スジ>
現像スジとは前述した現像ブレードの表面上にトナーが部分的に融着することにより、現像ローラー上のトナーコートが乱され、画像上にスジ状のむらが発生する現象である。
従って先程の画像カブリと同様、微粉の割合が増加することで生じやすくなる。
現像スジの発生を確認するために、15,000枚の連続通紙耐久時1,000枚出力毎に出力用紙上に均一なトナー像が形成されている画像(以下ベタ画像とハーフトーン画像と記載)を用いた。評価用紙としては(用紙銘柄名)CS−814(A4サイズ)(キヤノンマーケティングジャパン社販売品)を用いた。
また現像スジの有無の判断はベタ画像とハーフトーン画像を目視することにより検証を行った。評価ランクとしては下記記載の判断基準を用いた。尚、現像スジは目視で確認できる状態であるため、今回用いたLBPにおいて実使用上の耐用枚数に対し十分にマージンを確保できる12,000枚まで未発生のものを好ましいレベルと判断した。
A:15,000枚まで現像スジ未発生
B:14,001枚乃至15,000枚で、現像スジ発生
C:12,001枚乃至14,000枚で、現像スジ発生
D:10,001枚乃至12,000枚で、現像スジ発生
E:10,000枚以前で、現像スジ発生
<鮮鋭性>
鮮鋭性を具体的に示すと細線(例えば画像解像度600dpiの画像での1dot分の線)などの細かい部分の再現性を示す指標である。従ってトナー粒径において微粉および粗粉の混合比率が大きい程、再現性が悪い傾向になってしまう。
そこで鮮鋭性の評価方法としてまず図2)に示すような1dot幅の細線部と1dot分の空白部(以下1dot‐1space画像と略)が交互に繰り返されている画像パターンについてLBPで出力を行う。
尚、出力に用いたのは、前述の現像スジの評価用紙と同じCS−814(A4サイズ)である。また同時に同じ出力用紙に少なくとも5[cm]角を持つ均一なトナー画像出力も行う。その後出力した画像を高解像度スキャナーNexscan F4200(ハイデルベルグ社製)を用い、解像度5080dpiで1024×1024pixelの条件下で画像取り込みを行う。
取り込んだスキャナー画像から1dot‐1space画像にある彩度の振幅(以下彩度差(A)と略)と出力用紙の白部と全面均一なトナー画像部の彩度差(以下彩度差(B)と略)を算出する。尚ここでいう彩度(C*)とはCIE 1976 L*a*b*の色度値で表記されるa*およびb*を用いて
の式で定義されるものとする。以上の彩度差を用いて鮮鋭性として下記式を定義する。
鮮鋭性=彩度差(A)/彩度差(B)
鮮鋭性の値は1に近い程彩度差が少なくなるため鮮鋭性が高いといえる。
そこで評価値を下記指標で評価した。
A、B、Cレベルでは文字の画数が15画の3ptの抜き文字(図3)に示すように文字を構成する線の部分(以下文字領域と略)を非画像領域にし、文字領域を除いた部分をトナー画像領域にする)において、最も視認性が劣化する場合でも文字領域の一部がトナーで埋められる程度であったため好ましいレベルと判断した。
A:0.25以上
B:0.20以上0.25未満
C:0.15以上0.20未満
D:0.10以上0.15未満
E:0.10未満
表4及び5より明らかなように、本発明の条件を満たす顔料分散体を用いて製造したトナーは粗紛の生成が抑制され、画像カブリ、現像スジ、鮮鋭性のいずれも良好であった。
<カラーフィルター用レジスト組成物の調製>
<実施例53>
アクリル共重合組成物6.7部、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート1.3部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光重合開始剤)0.4部のシクロヘキサノン96部の溶液に、実施例8で得られた顔料分散体(8)22部をゆっくり加え室温で3時間攪拌した。これを1.5μmフィルターで濾過することで、レジスト組成物を得た。
上記で得られたレジスト組成物を、ガラス上にスピンコートし、その後これを90℃で3分間乾燥させ全面露光し、180℃でポストキュアすることで塗布サンプルを作成した。得られた塗布サンプルは光透過性、色調共に良好なものであった。
<実施例54>
実施例53において、顔料分散体(8)を用いる代わりに実施例23の顔料分散体(32)に変更した以外は、実施例53と同様にして本発明のレジスト組成物を得た。上記で得られたレジスト組成物を、ガラス上にスピンコートし、その後これを90℃で3分間乾燥させ全面露光し、180℃でポストキュアすることで塗布サンプルを作成した。得られた塗布サンプルは光透過性、色調共に良好なものであった。
<インク組成物の調製>
<実施例55>
実施例13で得られた顔料分散体(13)74部にアセチレノールEH(川研ファインケミカル(株)製)1部、エチレングリコール7.5部、グリセリン7.5部、及び尿素7.5部を加え、十分に撹拌させてインク組成物を作製した。上記で得られたインク組成物サンプルは、色調、保存安定性共に良好なものであった。
<実施例56>
実施例56において、顔料分散体(13)を用いる代わりに実施例28の顔料分散体(37)に変更した以外は、実施例55と同様にしてインク組成物を作製した。上記で得られたインク組成物サンプルは、色調、保存安定性共に良好なものであった。