[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用充電システムを備えた機械式駐車設備の概要を示す概略図である。
(機械式駐車設備の構成)
この機械式駐車設備10は、車両9を積載可能な複数のパレット11と、複数のパレット11を移動可能に支持する支持体12と、それぞれのパレット11を鉛直方向に移動させるリフト13と、リフト13を鉛直方向に移動させる第1の駆動装置131と、リフト13に積載されたパレット11を水平方向に移動させる第2の駆動装置132と、第1及び第2の駆動装置131,132の制御等を行う制御盤14とを備えている。
リフト13、第1及び第2の駆動装置131,132は、本発明の「移動手段」の一例である。また、機械式駐車設備10は、本発明の「駐車設備」の一例である。
支持体12は、複数の柱部121と、複数の梁部122と、屋根部123とを有して構成されている。図1では、1階部分における2箇所の駐車棚12a,12bと、2階部分における2箇所の駐車棚12c,12dとを図示している。なお、梁部122に沿ってさらに駐車棚を追加してもよい。図1では、一部の柱部121と屋根部123を二点鎖線で示し、その向こう側における車両9等を実線で示している。
リフト13は、第1の駆動装置131により、機械式駐車設備10の1階部分の下降端位置1aと、機械式駐車設備10の2階部分の上昇位置1bとの間で上下方向に移動可能である。リフト13は、そのリフト上面13aにパレット11を積載し、積載したパレット11を上下方向に移動させる。
第2の駆動装置132は、リフト13に設けられ、リフト13と一体に上下移動する。第2の駆動装置132は、図略の移動機構によってリフト上面13aに積載されたパレット11を水平方向に移動させる。
制御盤14は、例えば地上に設置され、車両9の使用者等の指示を受け付けるための操作パネル141を備えている。制御盤14は、操作パネル141によって受け付けた指示内容に基づいて、第1及び第2の駆動装置131、132を制御する。より詳細には、制御盤14は、第1の駆動装置131にリフト13を上下方向に移動させるための電力を供給することにより、第1の駆動装置131を制御する。また、制御盤14は、第2の駆動装置132にパレット11を水平方向に移動させる電力を供給することにより、第2の駆動装置132を制御する。
例えば車両9の使用者が入出庫位置である下降端位置1aに車両9を入庫し、操作パネル141を操作すると、制御盤14は、第1及び第2の駆動装置131,132を制御して、車両9が積載されたパレット11を、駐車棚12a〜12dのうち空いている駐車棚に移動させる。
パレット11には、その隅部に支柱部110が立設されている。支柱部110には、後述する切替制御回路2を収容するケース111が固定されている。また、ケース111には、充電ケーブル112の一方の端部が固定され、充電ケーブル112の他方の端部には、充電ガン113が設けられている。図1に示す例では、駐車棚12dに移動しつつあるパレット11に積載された車両9に充電ガン113が接続されている。
また、パレット11には、その下側の面に移動側接点ユニット15が固定されている。移動側接点ユニット15の詳細については後述する。
一方、支持体12には、駐車棚12a〜12dのそれぞれに、固定側接点ユニット16が支持部材124を介して固定されている。この固定側接点ユニット16は、パレット11の駐車棚12a〜12dの何れかへの移動が完了すると、移動側接点ユニット15と向かい合う。
また、パレット11が駐車棚12a〜12dから入出庫位置に移動する際には、パレット11がまず水平方向に移動し、その後、駐車位置が2階部分(駐車棚12c又は駐車棚12d)である場合には、上下方向に移動する。以下、パレット11が支持体12に対する移動を開始する際の移動方向(水平方向)を単に「パレット11の移動方向」という。
(接点ユニットの構成)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る移動側接点ユニット15を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図、(d)は斜視図である。
移動側接点ユニット15は、直方体状の本体部150と、移動側接点151〜154とを有している。移動側接点151〜154は、パレット11の移動方向に対して直交する方向における断面(A−A線断面)が矩形状であり、パレット11の移動方向に平行な断面(B−B線断面)が台形状である。移動側接点151〜154は、本体部150の一つの面に、パレット11の移動方向に対して直交する方向に沿って並んで配置されている。
移動側接点151〜154には、平坦な長方形状の接触面151a〜154aがそれぞれ形成されている。移動側接点ユニット15は、接触面151a〜154aの長手方向がパレット11の移動方向に対して平行となるように、パレット11に固定されている。本実施の形態では、パレット11の移動方向における移動側接点151〜153の接触面151a〜153aの長さが互いに同じである。移動側接点154は、その接触面154aのパレット11の移動方向における長さが、移動側接点151〜153の接触面151a〜153aのパレット11の移動方向における長さよりも短く形成されている。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る固定側接点ユニット16を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(a)のD−D線断面図、(d)は斜視図である。
固定側接点ユニット16は、直方体状の本体部160と、固定側接点161〜166とを有している。固定側接点161〜166は、パレット11の移動方向に対して直交する方向における断面(C−C線断面)が矩形状であり、パレット11の移動方向に平行な断面(D−D線断面)が三角形状である。固定側接点161〜163は、本体部160の一つの面に、パレット11の移動方向に対して直交する方向に沿って並んで配置されている。固定側接点164〜166は、本体部160における固定側接点161〜163が配置された面と同一の面に、パレット11の移動方向に沿って並んで配置されている。固定側接点164〜166は、固定側接点165が中央部に、固定側接点164,166がその両側に間隔を空けて位置している。
固定側接点161〜166は、パレット11の移動方向に平行な断面における三角形状の頂点が、移動側接点151〜154の接触面151a〜154aの何れかに接触する接触点161a〜166aとして形成されている。より具体的には、固定側接点161の接触点161aは移動側接点151の接触面151aに、固定側接点162の接触点162aは移動側接点152の接触面152aに、固定側接点163の接触点163aは移動側接点153の接触面153aに、それぞれ接触する。また、固定側接点164〜166は、パレット11の移動に伴う固定側接点ユニット16と移動側接点ユニット15との相対移動に伴って、固定側接点164〜166の接触点164a〜166aの何れか1つが移動側接点154の接触面154aに接触する。
移動側接点154の接触面154aは、パレット11の移動方向における長さが移動側接点151〜153の接触面151a〜153aのパレット11の移動方向における長さよりも短いので、移動側接点154と固定側接点164〜166とのパレット11の移動方向における接触長さ(接触状態を維持した状態で相対移動可能な距離)は、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163とのパレット11の移動方向における接触長さよりも短い。
また、本実施の形態では、移動側接点ユニット15の移動側接点151〜154がバネ等の弾性体によって本体部150から固定側接点ユニット16に向かって突出するように付勢され、固定側接点161〜166に弾性的に接触するように構成されている。なお、固定側接点161〜166がバネ等の弾性体によって移動側接点ユニット15に向かって突出するように付勢されていてもよい。
移動側接点151〜154は、パレット11に固定された後述の配線115により、ケース111内の切替制御回路2に接続されている。また、固定側接点161〜166は、支持体12に固定された図略の配線により、制御盤14に接続されている。
移動側接点151〜153及び固定側接点161〜163は、充電電流供給用の接点である。このうち、このうち、移動側接点151及び固定側接点161は単相AC200VのL相の接点であり、移動側接点152及び固定側接点162は単相AC200VのN相の接点である。移動側接点153及び固定側接点163はGNDの接点である。
移動側接点151〜153と固定側接点161〜163とは、パレット11が充電可能位置にあるときに互いに接触する。換言すれば、パレット11の充電可能位置とは、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163とが互いに接触する位置である。前述のように、接触面151a〜154aは、その長手方向がパレット11の移動方向に対して平行であるので、充電可能位置はパレット11の移動方向における所定の範囲に亘っている。また、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163とが非接触となるパレット11の位置は、車両9の充電を行うことができない充電不能位置である。
移動側接点154及び固定側接点164,166は、パレット11の移動(充電可能位置から充電不能位置への移動)を検知するための移動検知用の接点であり、パレット11が充電可能位置から充電不能位置に向かって移動する際において、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163とが非接触となる前に、すなわちパレット11の充電不能位置への移動が完了する前に、互いの接触状態が変化する先行動作接点である。また、固定側接点165は、車両9と充電ガン113の嵌合を制御盤14で検知するための嵌合検知用接点である。
(充電状態における車両9の構成)
図4は、充電状態における車両9の概略構成図である。車両9は、パレット11に積載された状態で、支柱部110に固定されたケース111に収容された切替制御回路2を介して充電電流の供給を受ける。切替制御回路2は、車両9への充電電流の供給ラインを遮断状態(車両9に充電電流を供給しない状態)及び接続状態(車両9に充電電流を供給可能な状態)に切替可能である。
車両9は、充電ガン113と嵌合する車両側コネクタ91と、車両側コネクタ91の接続端子に接続された充電制御回路92と、充電制御回路92を制御する制御装置93と、走行用の電力を蓄える蓄電池94と、蓄電池94に蓄えられた電力をPWM(Pulse Width Modulation)制御によってスイッチングされた駆動電流として出力するインバータ95と、インバータ95から駆動電流の供給を受ける電動機96と、電動機96の出力を変速して前輪98に伝達する変速機97とが車体90に搭載されている。
電動機96は、車両9の走行用の駆動源であり、例えばIPM(Interior Permanent Magnet Motor:埋込磁石式モータ)である。蓄電池94は、例えばリチウムイオン電池又はニッケル水素電池である。
なお、車両9は、電動機96に加え、ガソリンなどの揮発油を燃料とする内燃機関(エンジン)を駆動源として備えた、いわゆるプラグインハイブリット車であってもよい。また、変速機97の出力を後輪99に伝達する後輪駆動車であってもよい。
(充電ガンの構成)
図5は、充電ガン113を示し、(a)は全体図、(b)はコネクタ部の接続端子の配置を示す模式図である。
充電ガン113は、本体部113aと、車両9と係合する係合突起113bと、充電ガン113を車両9から離脱させるためのリリースボタン113cと、コネクタ部113dとを有している。係合突起113bは、車両側コネクタ91とコネクタ部113dとの嵌合によって車両9に設けられた図略の係合凹部に係合し、車両側コネクタ91とコネクタ部113dとの離脱を抑止する。
また、係合突起113bは、リリースボタン113cを本体部113aに向かって押し込むリリースボタン113cの押し込み操作に連動して係合凹部との係合が解除される。コネクタ部113dの各端子は、本体部113a内において充電ケーブル112に接続されている。
コネクタ部113dは、ハウジング113eと、車両9に充電電流を出力する一対の充電電流出力端子であるL端子113f及びN端子113gと、電気的に接地されたGND端子113hと、充電制御端子としてのC端子113iと、車両側コネクタ91との嵌合を検知するための嵌合検知端子としてのP端子113jとを有している。
(車両用充電システムおよび車両の回路構成)
図6は、本実施の形態に係る車両用充電システム1、及び車両9における充電制御回路92等の回路構成例を示す図である。車両用充電システム1は、切替制御回路2及び制御盤14の充電制御回路3で構成される。以下、それぞれの構成について説明する。
切替制御回路2は、制御部20と、リレー回路21と、通信用抵抗器Rcとを有している。制御部20は、例えば予め記憶されたプログラムに基づいて動作するCPU(Central Processing Unit)、及びその周辺回路からなる。
制御部20は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されたパルス信号により、充電電流の許容電流値等の情報を車両9に送信する通信機能を有している。制御部20からの送信信号は、通信用抵抗器Rcを介して充電ガンのC端子113iから車両9に出力される。また、制御部20は、通信用抵抗器RcのC端子113i側の電圧をモニタすることが可能である。
この通信用抵抗器Rcは、充電装置側と車両側の通信仕様などを定めた国際規格であるSAEJ1772に準拠した車両との通信を行うためのものである。制御部20は、この通信に基づいてリレー回路21をオン状態(通電状態)又はオフ状態(遮断状態)とする。なお、図6では、この通信のための車両9側の構成の図示を省略している。
リレー回路21は、第1接点21aと、第2接点21bと、第1接点21a及び第2接点21bを動作させるためのコイル21cとを有し、コイル21cに制御部20から電流が供給されたとき、第1接点21a及び第2接点21bがオン状態(通電状態)となり、コイル21cに電流が供給されないときには、第1接点21a及び第2接点21bが、オフ状態(遮断状態)となる。
第1接点21aがオン状態となると、移動側接点ユニット15の移動側接点151と充電ガン113のL端子113fとが導通する。第2接点21bがオン状態となると、移動側接点ユニット15の移動側接点152と充電ガン113のN端子113gとが導通する。また、移動側接点ユニット15の移動側接点153と充電ガン113のGND端子113h、及び移動側接点154と充電ガン113のP端子113jは、切替制御回路2内の配線により常時導通している。
充電制御回路3は、制御部30と、リレー回路31と、抵抗器R31,R32を有している。
制御部30は、機械式駐車設備10の動作状態に応じてコイル31cに通電して、第1接点31a及び第2接点31bのオン状態、オフ状態を切替える。
リレー回路31の第1接点31aは、商用電源から固定側接点ユニットの16の固定側接点161にL相電流を供給するL相のラインに、第2接点31bは、商用電源から固定側接点ユニットの16の固定側接点162にN相電流を供給するN相のラインに、それぞれ設けられている。
抵抗器R31は、一端が固定側接点165に接続され、他端が充電制御回路3の基準電位(接地電位)に接続されている。また、抵抗器R32は、一端が固定側接点164及び固定側接点166に接続され、他端が充電制御回路3の基準電位(接地電位)に接続されている。本実施の形態では、抵抗器R31の抵抗値が150Ωであり、R32の抵抗値が480Ωである。
抵抗器R32、固定側接点164,166、及び移動側接点154は、本実施の形態の電流低減手段を構成する。制御部20、リレー回路21、制御部30、リレー回路31、固定側接点161〜163、及び移動側接点151〜153は、本実施の形態の充電手段を構成する。
車両側コネクタ91は、第1端子911、第2端子912、第3端子913、第4端子914、及び第5端子915を有している。第3の端子913と第5の端子915の間には、抵抗器R91が接続されている。車両側コネクタ91に充電ガン113を嵌合すると、第1の端子911がL端子113fに、第2の端子912がN端子113gに、第3の端子913がGND端子113hに、第4の端子914がC端子113iに、第5の端子915がP端子113jにそれぞれ接続される。
充電制御回路92は、整流回路部921と、電流制御部922と、直流電源923と、抵抗器R92とを有している。
整流回路部921は、車両側コネクタ91の第1端子911及び第2端子912に接続されている。整流回路部921は、第1端子911及び第2端子912から入力される交流電流を整流して電流制御部922に出力する。整流回路部921は、例えばダイオードブリッジからなる。なお、整流回路部921と電流制御部922との間に、充電開始時における突入電流を制限する突入電流制限回路や、平滑回路等をさらに設けてもよい。
電流制御部922は、制御装置93からの制御信号に応じて、蓄電池94に出力する充電電流を調整する。この電流制御部922は、整流回路部921と蓄電池94と実質的に短絡させる無抵抗状態から、蓄電池94への充電電流を例えば1A以下に低減させる高抵抗状態まで、電気抵抗を複数段階あるいは無段階に変化させることができる。
抵抗器R92の抵抗値は、例えば330Ωである。直流電源923は、その出力電圧が例えば5Vである。直流電源923の出力電圧は、抵抗器R92に印加される。
抵抗器R92は、抵抗器R91に直列に接続されている。抵抗器R91の一端は、充電制御回路92の基準電位(接地電位)に接続されている。抵抗器R92と抵抗器R91との間の節点には、第5の端子915が接続されている。
また、制御装置93は、抵抗器R92と抵抗器R91との間の電位を測定可能な電圧計を内蔵しており、この電位によって抵抗器R92に流れる電流I1を検出することができる。電流I1は、車両側コネクタ91と充電ガン113のコネクタ部113dとの嵌合状態を検知するための嵌合検知用の電流である。
(規格に則った充電ガン及び車両の構成)
ここで、比較のために、SAEJ1772の規格に則った充電ガン113Aの回路構成について説明する。本実施の形態における充電ガン113は、このSAEJ1772の規格における回路構成を変形したものである。
図7は、SAEJ1772の規格に則った充電ガン113Aの回路構成を車両9における充電制御回路92等の回路構成と共に示す回路図である。
この充電ガン113Aは、L端子113f、N端子113g、GND端子113h、C端子113i、及びP端子113jに加え、スイッチ113k、抵抗器113m、及び抵抗器113nを備えている。スイッチ113k、抵抗器113m、及び抵抗器113n以外の構成は、充電ガン113と同様である。抵抗器113m及び抵抗器113nは、GND端子113hとP端子113jとの間に直列に接続され、このうちGND端子113h側の抵抗器113mには、スイッチ113kが並列に接続されている。SAEJ1772の規格では、抵抗器113mの抵抗値が330Ω、抵抗器113nの抵抗値が150Ωと定められている。
スイッチ113kは、リリースボタン113cが押し込み操作されていないときに一対の接点が短絡し、リリースボタン113cが押し込み操作されると、これら一対の接点間の導通が遮断される。すなわち、GND端子113hとP端子113jとの間の抵抗値は、抵抗器R91を考慮しない場合、リリースボタン113cが押し込み操作されていないときには150Ω(抵抗器113nの抵抗値)であり、リリースボタン113cが押し込み操作されると、480Ω(抵抗器113nの抵抗値と抵抗器113mの抵抗値の加算値)となる。これに抵抗器R91を考慮すると、GND端子113hとP端子113jとの間の抵抗値は、リリースボタン113cが押し込み操作されていないときは約142Ωであり、リリースボタン113cが押し込み操作されると約408Ωとなる。また、充電ガン113Aが車両側コネクタ91に接続されていない場合は、この抵抗値が2700Ω(抵抗器R91の抵抗値)である。
この抵抗値の変化は、抵抗器R92を流れる電流I1の変化として制御装置93で検知される。つまり、制御装置93は、抵抗器R91と抵抗器R92の間の電位を測定することで、車両側コネクタ91に充電ガン113Aが嵌合されているか否か、また充電ガン113Aが嵌合されている場合には、リリースボタン113cが押し込み操作されているか否かを検知することが可能である。
車両9の制御装置93は、リリースボタン113cが押し込み操作されると、充電電流を低減するように、すなわち車両9が引き込む充電電流の電流値である充電電流の引き込み量を低減するように、電流制御部922を制御する。これは、リリースボタン113cが押し込み操作された場合は、その直後に充電ガン113Aが車両側コネクタ91から引き抜かれる可能性が高く、充電電流の通電中に充電ガン113Aが車両側コネクタ91から引き抜かれると、L端子113fと第1端子911との間、及びN端子113gと第2端子912との間に火花が発生してこれらの端子が損傷するおそれがあるので、これを回避するためである。
本実施の形態では、車両9を積載したパレット11が駐車棚12a〜12dの何れかにあるときは、充電ガン113が車両側コネクタ91から実際に引き抜かれることはなく、パレット11が駐車棚12a〜12dの何れから移動したときには、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163との離間によって既に充電電流の供給が停止されていることに鑑みて、パレット11の移動に伴う移動側接点ユニット15の移動側接点154と固定側接点ユニット16の固定側接点164〜166との接触状態の変化により、あたかもリリースボタン113cが押し込み操作されたように車両9の電流制御部922に認識させ、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163の接続が遮断される前に車両9に充電電流を低減させる。以下、このための車両用充電システム1の動作について具体的に説明する。
(車両用充電システムの動作)
図8は、移動側接点154と固定側接点164〜166の接触動作について示した模式図であり、(a)はパレット11の駐車棚12a〜12dへの移動が完了する前の状態、(b)は、パレット11の移動が完了した状態、(c)はパレット11が移動を開始して移動側接点ユニット15が固定側接点ユニットの16に対して移動した状態、(d)は(c)と反対方向へパレット11が移動して移動側接点ユニット15が固定側接点ユニットの16に対して逆方向に移動した状態をそれぞれ示す。
パレット11の駐車棚12a〜12dの何れかへの移動が完了する前の状態では、移動側接点ユニット15は、パレット11の水平移動に追従して固定側接点ユニット16と平行に移動する。図8(a)では、例として図の左側から右側に移動側接点ユニット15が移動する場合を示している。この状態では、移動側接点154は、固定側接点164,165,166の外側に位置し、固定側接点164〜166の何れの接点とも接触していない。このとき、パレット11は、移動側接点151〜153及び固定側接点161〜163を介した車両9の充電ができない充電不能位置にある。
パレット11の駐車棚12a〜12dへの移動が完了すると、移動側接点154は、図8(b)に示すように、固定側接点164,166の間に位置する固定側接点165と接触する。この状態では、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163とが接触し、車両9への充電電流の供給が可能となる。すなわち、パレット11は充電可能位置にある。
パレット11が駐車棚12a〜12dから移動を開始すると、移動側接点154は、固定側接点165の両側に位置する固定側接点164又は固定側接点166の何れかと接触する。例えば、パレット11が図8の左側に移動する場合は、移動側接点154が、図8(c)に示すように、固定側接点165と離間した後に固定側接点164と接触する。移動側接点154と固定側接点164とが接触した時点では、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163との接触が維持されている。すなわち、パレット11が充電可能位置にある状態が継続している。その後、パレット11がさらに移動すると、移動側接点154と固定側接点165との接触、及び移動側接点151〜153と固定側接点161〜163との接触が共に遮断される。
一方、パレット11が図8の右側に移動する場合には、図8(d)に示すように、移動側接点154と固定側接点165との接続が遮断された後に移動側接点154が固定側接点166に接触する。この時点では、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163との接触が維持され、パレット11は充電可能位置にある。
本実施の形態では、充電ガン113が図7に示すスイッチ113k、抵抗器113m、及び抵抗器113nに相当する回路部品を備えておらず、これらに替えて、充電制御回路3が抵抗器R31,R32を有している。抵抗器R31には、移動側接点154が固定側接点165に接触しているときに車両9の直流電源923からの電流(嵌合検知用の電流)が流れ、抵抗器R32には、移動側接点154が固定側接点164又は固定側接点166に接触しているときに車両9の直流電源923からの電流が流れる。
パレット11の移動が完了し、移動側接点154と固定側接点165が接触すると、移動側接点154は抵抗器R31の一端に電気的に接続される。このときに充電ガン113が車両9と嵌合していると、P端子113jと移動側接点154は導通しているため、車両側コネクタ91の第5端子915から出力された電流が抵抗器R31を流れる。この場合、車両側コネクタ91の第5端子915と充電制御回路3の基準電位との間の抵抗値は、150Ω(抵抗器113nの抵抗値と同値)となる。
一方、パレット11が駐車棚12a〜12dから移動を開始し、移動側接点154と固定側接点164又は固定側接点166とが接触すると、移動側接点154は、抵抗器R32の一端に電気的に接続され、車両側コネクタ91の第5端子915から出力される電流が抵抗器R32を流れる。この場合、車両側コネクタ91の第5端子915と充電制御回路3の基準電位との間の抵抗値は、480Ω(抵抗器113mの抵抗値と抵抗器113nの抵抗値の加算値と同値)となる。
このように、移動側接点154と固定側接点164〜166の接触状態によって車両側コネクタ91の第5端子915から出力される電流の経路が切り替わり、基準電位との間の抵抗値が変わる。これにより、パレット11が支持体12に対して移動を開始した際、車両9の抵抗器R92を流れる電流I1が変化する。
この電流I1の変化量は、SAEJ1772の規格に準拠した充電ガン113Aにおいてリリースボタン113cが押し込み操作された場合の電流I1の変化量と同等である。したがって、移動側接点154と固定側接点164〜166の接触状態の変化によって、車両9の制御装置93に充電ガン113のリリースボタン113cが押し込み操作されたと認識させることができる。
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、パレット11の移動開始時に、移動側接点154と固定側接点164〜166の接触状態の変化によって、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163との接続が遮断される前に、車両側コネクタ91の第5端子915から出力される電流の抵抗値が変化する。これにより車両9に充電電流を低減させることができる。したがって、接点間における火花の発生が抑制されると共に、蓄電池の損傷を抑制できる。また、整流回路部921、電流制御部922、及び制御装置93の損傷も抑制することができる。特に、電流制御部922には、充電電流を遮断可能なリレーが内蔵されており、このリレーの接点の損傷を抑制することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について図9及び図10を参照して説明する。図9は、本実施の形態に係る車両用充電システム1A、及び車両9における充電制御回路92等の回路構成例を示す図である。図10は、本実施の形態に係る固定側接点ユニット16Aを示す斜視図である。図9及び図10において、第1の実施の形態について説明したものと共通する機能を有する要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
車両用充電システム1Aは、第1の実施の形態に係る切替制御回路2に替えて切替制御回路2Aを、充電制御回路3に替えて充電制御回路3Aを備えて構成される。すなわち、車両用充電システム1Aは、切替制御回路2Aと、制御盤14の充電制御回路3Aで構成される。
第1の実施の形態では、切替制御回路2が、車両側コネクタ91の第5端子915を充電ガン113のP端子113jを介して移動側接点ユニット15の移動側接点154に短絡させていたが、本実施の形態における切替制御回路2Aは、切替回路22及び抵抗器R21,R22を有し、切替回路22が、充電制御回路3Aの信号源32からの信号に基づいて、第5端子915から流れる電流の経路を切り替える点が、第1の実施の形態と異なる。
切替回路22、信号源32、及び抵抗器R21,R22は、本実施の形態における充電電流低減手段を構成する。また、抵抗器R22の抵抗値は、図7に示す抵抗器113nの抵抗値(150Ω)と同じである。R21の抵抗値は、抵抗器113mの抵抗値(330Ω)と同じである。
またさらに、第1の実施の形態では、固定側接点ユニット16が、固定側接点161〜166を有していたが、本実施の形態に係る固定側接点ユニット16Aは、図10に示すように、第1の実施の形態に係る固定側接点ユニット16の固定側接点165を有さず、固定側接点161〜164及び固定側接点166を有している。固定側接点164と固定側接点166とは、パレット11の移動方向に離間して配置されている。以下これらの構成について、より詳細に説明する。
充電制御回路3Aは、リレー回路31に加え、固定側接点164及び固定側接点166に接続された信号源32を有している。信号源32は、例えばDC5Vを出力する電圧源であり、移動側接点154と固定側接点164又は166とが接触しているときに、制御部20に直流電圧を出力する。
移動側接点ユニット15の移動側接点154は、パレット11の駐車棚12a〜12dへの移動が完了している状態では、固定側接点164、166の間に位置し、固定側接点ユニット16の何れの接点とも接触しない。一方、移動側接点154は、パレット11が支持体に対して移動を開始した際、固定側接点164又は固定側接点166と接触する。
移動側接点154は、制御部20と接続されている。制御部20は、移動側接点154と固定側接点164又は固定側接点166とが接触している場合に、信号源32から出力された信号を受信する。制御部20は、信号源32から出力された信号を受信すると、切替回路22のコイル22dに通電する。これにより、車両側コネクタ91の第5端子915から出力される電流I1が流れる経路が切替えられる。
切替制御回路2Aの切替回路22は、第1接点22a、第2接点22b、第3接点22c、及びコイル22dを有している。コイル22dは、制御部20に接続されている。制御部20は、コイル22dの通電又は非通電により、第1接点22aと第2接点22b又は第3接点22cとの接続状態を切替える。コイル22dが非導通の場合は、第1接点22aと第2接点22bとが接続され、コイル22dに通電されると、第1接点22aと第3接点22cとが接続される。第1接点22aは、P端子113jに接続されている。第2接点22bは、抵抗器R22を介して切替制御回路2Aの基準電位(接地電位)に接続されている。第3接点22cは、抵抗器R21及び抵抗器R22を介して切替制御回路2Aの基準電位(接地電位)に接続されている。
このように、制御部20は、移動側接点154と固定側接点164又は固定側接点166との接触状態が変化したとき、コイル22dに通電し、第1接点22aと第3接点22cとを接続させる。これにより、車両9の抵抗器R92を流れる電流I1が変化する。この電流I1の変化量は、充電ガン113Aにおいてリリースボタン113cが押し込み操作された場合の電流I1の変化量と同等である。したがって、移動側接点154と固定側接点164,166との接触状態の変化によって、車両9の制御装置93に充電ガン113のリリースボタン113cが押し込み操作されたと認識させることができる。
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した作用及び効果と同様の効果が得られる。また、第1の実施の形態に加え以下の効果を得ることができる。
(1)車両9の第5端子915から出力される電流I1の経路が第1の実施の形態の場合に比較して短くなるので、大規模な機械式駐車設備であっても、配線の引き回しによる電圧降下や、信号線周辺の電磁障害等による信号の劣化が抑えられ、確実に車両9が引き込む充電電流を低減させることが可能となる。
(2)第1の実施の形態では、車両側コネクタ91の第5端子915と抵抗器R31又は抵抗器R32は、移動側接点154及び固定側接点164〜166を経由して接続されるため、移動側接点154と固定側接点164〜166との接触抵抗による電圧降下が生じ、接点の接触状態によっては、確実に車両9に充電電流を低減させることができない場合があり得るが、第2の実施の形態においては、移動側接点154と固定側接点164〜166とを経由せずに、車両側コネクタ91の第5端子915に抵抗器R21及び抵抗器R22が接続されているために、接点の接触抵抗による電圧低下が抑えられ、より確実に車両9に充電電流を低減させることが可能になる。
(3)信号源32の電圧や電流は、SAEJ1772の規格などに制限されることはなく、直流電源923の電圧よりも高い電圧(例えば12Vや24Vあるいは100V)とすることができるので、例えば、切替制御回路2Aと充電制御回路3Aとの距離が長い場合等に、電圧降下によって信号が減衰しても、制御部20は、この信号を受け付けることができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について図11及び図12を参照して説明する。図11は、本実施の形態に係る車両用充電システム1B、及び車両9における充電制御回路92等の回路構成例を示す図である。図12は、本実施の形態に係る固定側接点ユニット16Bを示す斜視図である。図11及び図12において、第1の実施の形態又は第2の実施の形態について説明したものと共通する機能を有する要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
車両用充電システム1Bは、第2の実施の形態に係る切替制御回路2Aに替えて切替制御回路2Bを、充電制御回路3Aに替えて充電制御回路3Bを備えて構成される。
第2の実施の形態では、固定側接点ユニット16Aが先行動作接点として固定側接点164,166を有し、移動側接点ユニット15の移動側接点154が固定側接点164又は固定側接点166に接触した場合に、制御部20が信号源32から出力された信号を受信する。そして、制御部20は、信号源32から出力された信号を受信すると、切替回路22のコイル22dに通電するように構成されていた。しかし、本実施の形態では、図12に示すように、固定側接点ユニット16Bが先行動作接点として1つの固定側接点165を有し、移動側接点ユニット15の移動側接点154が固定側接点165に接触した場合に、制御部20が信号源32から出力された信号を受信する。そして、制御部20は、信号源32から出力された信号を受信すると切替回路22のコイル22dを非通電とし、信号源32から出力された信号を受信しないときに切替回路22のコイル22dに通電する。
固定側接点ユニット16Bは、固定側接点165の接触点165aが、固定側接点161〜163の接触点161a〜163aのパレット11の移動方向に直交する方向にあたる位置に配置されている。つまり、固定側接点ユニット16Bの固定側接点165と移動側接点ユニット15の移動側接点154とは、車両9への充電電流の供給が可能な状態であるときに互いに接触するように配置されている。
移動側接点154と固定側接点165とのパレット11の移動方向における接触長さは、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163とのパレット11の移動方向における接触長さよりも短いので、パレット11が充電可能位置から充電不能位置に移動する際、移動側接点151〜153と固定側接点161〜163とが非接触となる前に、移動側接点154と固定側接点165とが非接触となる。移動側接点154と固定側接点165とが非接触となると、制御部20は、信号源32から出力された信号を受信しなくなるので、切替回路22のコイル22dに通電し、第1接点22aと第3接点22cとを接続させる。これにより、車両9の抵抗器R92を流れる電流I1が変化する。この電流I1の変化量は、充電ガン113Aにおいてリリースボタン113cが押し込み操作された場合の電流I1の変化量と同等であるので、車両9の制御装置93に充電ガン113のリリースボタン113cが押し込み操作されたと認識させ、充電電流を低減させることができる。
この第3の実施の形態によっても、第2の実施の形態について述べた効果と同様の効果が得られる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記第1及び第2の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の対応において実施することが可能である。例えば機械式駐車設備10は、図1に例示したものに限らず、複数のパレットが同時に回転するロータリー式などの様々な構成のものを用いることができる。
上記第2の実施の形態では、信号源32の出力は、電圧であるとして説明したが、電流であってもよいし、直流、交流であっても、又は超音波、電磁波であってもよい。
また、上記第2の実施の形態では、切替回路22が切替制御回路2Aに設置されているものとして説明したが、配線の引き回しや、接点の接触抵抗による電圧降下が小さく、動作に影響がない場合には、切替回路22と同様の回路を充電制御回路3Aに設けてもよい。
また、上記第2の実施の形態では、固定側接点ユニット16は、先行動作接点として、固定側接点164及び固定側接点166を有するものとして説明したが、固定側接点ユニット16は、先行動作接点として、固定側接点165のみを有するものとし、制御部20は、信号源32からの信号が途切れたときに切替回路22のコイル22dに通電し、車両9にリリースボタン113cが押し込み操作されたと認識させる構成としてもよい。
また、上記第2の実施の形態では、固定側接点ユニット16が複数(2つ)の先行動作接点(固定側接点164,166)を有し、移動側接点ユニット15が1つの先行動作接点(移動側接点154)を有する場合について説明したが、移動側接点ユニット154が2つの先行動作接点を有すると共に固定側接点ユニット16が1つのパレット移動検知用接点を有するように構成してもよい。この場合、車両9の充電中は、移動側接点ユニット15の2つの先行動作接点の間に固定側接点ユニット16の1つの先行動作接点が位置し、パレット11が移動を開始すると、固定側接点ユニット16の1つの先行動作接点が移動側接点ユニット15の2つの先行動作接点のうち何れか一方の接点と接触する。この先行動作接点同士の接触により、信号源32の信号が制御部20に受信され、制御部20が切替回路22のコイル22dに通電して接点の接続状態が切り替わる。
また、制御盤14から車両9の充電電流を供給して蓄電池94を充電しているときは、機械式駐車設備10の電力が切迫するために、パレット11の移動は、充電停止まで低速、低消費電力の動作でもよい。
また、パレット11の移動検知に用いる移動側接点154と固定側接点164又は固定側接点166との接触持続時間は、例えば数100ミリ秒あればよい。