前記特許文献1に開示のカッター装置は、回転するカッター刃によって路面や床面を切断するが、路面や床面の切断中に音圧レベルが90dB以上の不快かつ大きな切断音が発生し、周辺に騒音をまき散らし、騒音公害の原因になる場合がある。また、カッター刃による路面や床面の切断中に多量の塵埃が巻き上げられ、周辺に塵埃をまき散らし、その塵埃による粉塵公害の原因になる場合もある。このカッター装置は、路面や床面に切目を形成する場合に利用されるが、作業者が装置を持ち上げて作業することはできず、路面や床面以外の建造物の壁面や天井面等に切目を形成することができない。
本発明の目的は、構造物の表面の切断中における不快かつ大きな切断音の発生を防ぐことができ、構造物の表面の切断中における塵埃のまき散らしを防ぐことができるカッター装置を提供することにある。本発明の他の目的は、構造物のあらゆる箇所に切目を形成することができるカッター装置を提供することにある。
前記課題を解決するための本発明の前提は、構造物の表面に一方向へ延びる所定深さの切目を形成するカッター装置である。
前記前提における本発明の特徴は、カッター装置が、頂壁および各側壁とそれら壁に囲繞された所定容積の内部空間とそれら側壁の下端縁に囲繞された開口とを有する5面体のハウジングと、ハウジングの内部空間に設置されたモーターと、ハウジングの内部空間に回転可能に設置されてモーターの回転軸に連結されたカッターブレードと、頂壁およびそれら側壁の内面に固定された防音部材と、それら側壁の下端縁に取り付けられて上下方向へ伸縮可能な蛇腹部材と、ハウジングの内部空間から空気を吸引する吸引手段とを備え、カッター装置では、蛇腹部材を構造物の表面に当接させ、吸引手段によってハウジングの内部空間から空気を吸引しつつ内部空間を負圧にしたときに、蛇腹部材が上下方向へ縮んでカッターブレードのカッター刃がハウジングの開口から下方へ露出し、その状態でハウジングを一方向へ動かすことで構造物の表面に切目を形成することにある。
本発明の一例として、ハウジングの内部空間には、カッターブレードの大部分を包被するケーシングが設置され、ケーシングが頂板および各側板とそれら板に囲繞された所定容積のカッターブレード収容空間とそれら側板の下端縁に囲繞された開口とを有し、カッターブレードのカッター刃がケーシングの開口から下方へ露出している。
本発明の他の一例としては、吸引手段が、頂壁および各側壁のいずれかを貫通してケーシングに連結された吸引ホースと、ハウジングの外側に配置されて吸引ホースに連結された吸引装置とから形成され、吸引ホースを連結するケーシングの連結口がケーシングの開口近傍に形成されている。
本発明の他の一例としては、カッター装置がハウジングの内部空間に空気を給気する給気手段を含み、カッター装置では、吸引手段によってハウジングの内部空間から空気を吸引しつつ、給気手段によってハウジングの内部空間に空気を給気したときに、ハウジングの内部空間が所定の負圧に保持されるように、吸引手段による空気の吸引と給気手段による空気の給気とが調節されている。
本発明の他の一例としては、給気手段が頂壁および各側壁のいずれかに連結された給気ホースとハウジングの外側に位置して給気ホースに連結された給気装置とから形成され、給気装置の風量が1.0〜4.0m 3 /minの範囲にあり、給気装置の給気仕事率が100〜350Wの範囲にある。
本発明の他の一例としては、蛇腹部材がそれら側壁の下端縁に取り付けられて上下方向へ蛇腹折りされた伸縮部と伸縮部の下端縁につながって構造物の表面に当接する所定面積の当接部とを有し、伸縮部と当接部とがハウジングの開口を囲んでいる。
本発明の他の一例として、蛇腹部材の当接部の外面には、摩擦防止用テープが固着されている。
本発明の他の一例としては、防音部材が1〜6cmの厚みを有するフェルト、ロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートのうちのいずれかである。
本発明の他の一例としては、カッター装置が頂壁に取り付けられた第1取っ手とそれら側壁のいずれかに取り付けられて側壁から側方へ延びる第2取っ手とを有する。
本発明の他の一例としては、カッター装置による構造物の表面の切断時に発生する切断音の音圧レベルが50〜70dBの範囲にある。
本発明にかかるカッター装置によれば、構造物の表面に所定深さの切目を形成するときに、吸引手段によってハウジングの内部空間から空気が吸引されて内部空間が負圧になり、蛇腹部材が上下方向へ縮んで構造物の表面に吸い付き、蛇腹部材によってハウジングと構造物の表面との間隙が塞がれるから、カッターブレードによって構造物の表面を所定深さに切断するときに発生する切断音がハウジングの外側に漏れることはなく、構造物の表面の切断中における不快かつ大きな切断音の発生を防ぐことができ、切断音を抑制した静かな状態で構造物の表面に一方向へ延びる切目を形成することができる。また、頂壁およびそれら側壁の内面に防音部材が固定されているから、ハウジングの内部空間に伝播した切断音の音圧レベルを防音部材によって減衰させることができ、構造物の表面の切断中に発生した切断音を確実に小さくすることができる。カッター装置は、吸引手段によってハウジングの内部空間から空気が吸引されることにより、構造物の表面の切断中に発生した塵埃を空気とともに吸引手段に吸引させることができ、構造物の表面の切断中における塵埃のまき散らしを防ぐことができる。さらに、構造物の表面の切断中に発生した塵埃を吸引手段に吸引させることで、ハウジングの内部空間に塵埃が残存することはなく、ハウジングの内部空間に塵埃が残存することによるその塵埃の防音部材への付着を防ぐことができ、防音部材の防音性能の低下を防ぐことができる。
カッターブレードの大部分を包被するケーシングがハウジングの内部空間に設置され、カッターブレードがケーシングのカッターブレード収容空間に収容されたカッター装置は、カッターブレードをケーシングに収容することで、構造物の表面を所定深さに切断するときに発生する切断音がケーシングに閉じ込められ、切断音のハウジングの内部空間への伝播を減少させることができ、構造物の表面の切断中における不快かつ大きな切断音の発生を防ぐことができるとともに、切断音を抑制した静かな状態で構造物の表面に一方向へ延びる切目を形成することができる。
吸引手段の吸引ホースを連結するケーシングの連結口がケーシングの開口近傍に形成されているカッター装置は、ケーシングの開口から露出するカッターブレードのカッター刃の近傍にケーシングの連結口が形成され、その連結口に吸引ホースが連結されるから、構造物の表面の切断直後に発生した塵埃を直ちに吸引ホースに吸引させることができ、塵埃のハウジングの内部空間への拡散を防ぐことができる。カッター装置は、構造物の表面の切断中に発生した塵埃を空気とともに吸引手段に吸引させることができ、構造物の表面の切断中における塵埃のまき散らしを確実に防ぐことができる。また、構造物の表面の切断中に発生した塵埃がハウジングの内部空間へ拡散する前に、塵埃を吸引手段に吸引させることで、ハウジングの内部空間に塵埃が残存することはなく、ハウジングの内部空間に塵埃が残存することによるその塵埃の防音部材への付着を防ぐことができ、防音部材の防音性能の低下を防ぐことができる。
ハウジングの内部空間に空気を給気する給気手段を含むカッター装置は、モーターの回転軸の回転によってカッターブレードを回転させ、カッターブレードのカッター刃によって構造物の表面に切目を形成する際に、構造物の表面の切断を一定時間継続すると、モーターが熱を持ち、モーターがその熱によって故障する場合があるが、給気手段によってハウジングの内部空間に空気を給気することで、内部空間を冷却することができ、それによってモーターを空冷することができるとともに、熱によるモーターの故障を防ぐことができる。カッター装置は、吸引手段によってハウジングの内部空間から空気を吸引しつつ、給気手段によってハウジングの内部空間に空気を給気したときに、ハウジングの内部空間が所定の負圧に保持されるように、吸引手段による空気の吸引と給気手段による空気の給気とが調節されているから、ハウジングの内部空間が陽圧になることはなく、蛇腹部材によってハウジングと構造物の表面との間隙が塞がれ、カッターブレードによって構造物の表面を所定深さに切断するときに発生する切断音がハウジングの外側に漏れることがなく、構造物の表面の切断中における不快かつ大きな切断音の発生を防ぐことができ、切断音を抑制した静かな状態で構造物の表面に一方向へ延びる所定深さの切目を形成することができる。
給気装置の風量が1.0〜4.0m 3 /minの範囲にあるカッター装置は、風量が前記範囲にあるとともに給気仕事率が前記範囲にある給気装置によって空気がハウジングの内部空間に給気されたとしても、吸引装置によってハウジングの内部空間から空気が吸引されて内部空間が負圧に保持されるから、ハウジングの内部空間が陽圧になることはなく、蛇腹部材によってハウジングと構造物の表面との間隙が塞がれ、カッターブレードによって構造物の表面を所定深さに切断するときに発生する切断音がハウジングの外側に漏れることがなく、構造物の表面の切断中における不快かつ大きな切断音の発生を防ぐことができ、切断音を抑制した静かな状態で構造物の表面に一方向へ延びる所定深さの切目を形成することができる。カッター装置は、風量や給気仕事率が前記範囲にある給気装置によってハウジングの内部空間に空気を給気することで、内部空間を冷却することができるから、それによってモーターを空冷することができ、熱によるモーターの故障を防ぐことができる。
蛇腹部材が上下方向へ蛇腹折りされた伸縮部と伸縮部の下端縁につながって構造物の表面に当接する所定面積の当接部とを有し、伸縮部と当接部とがハウジングの開口を囲んでいるカッター装置は、吸引手段によってハウジングの内部空間から空気が吸引されて内部空間が負圧になったときに、蛇腹部材の伸縮部が上下方向へ縮んで蛇腹部材の当接部が構造物の表面に吸い付き、ハウジングの開口を囲む蛇腹部材の当接部によってハウジングと構造物の表面との間隙が塞がれるから、カッターブレードによって構造物の表面を所定深さに切断するときに発生する切断音がハウジングの外側に漏れることがなく、構造物の表面の切断中における不快かつ大きな切断音の発生を防ぐことができ、切断音を抑制した静かな状態で構造物の表面に一方向へ延びる所定深さの切目を形成することができる。
摩擦防止用テープが蛇腹部材の当接部の表面に固着されているカッター装置は、吸引装置によってハウジングの内部空間から空気が吸引されて内部空間が大きな負圧になると、蛇腹部材が構造物の表面に強く吸い付き、蛇腹部材によってカッター装置が構造物の表面に吸着する場合があるが、蛇腹部材の当接部に固着された摩擦防止用テープによって構造物の表面と蛇腹部材の当接部との摩擦が軽減されるから、構造物の表面においてハウジングをスムースに動かすことができ、構造物の表面に一方向へ延びる所定深さの切目を容易に形成することができる。
防音部材が1〜6cmの厚みを有するフェルト、ロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートのうちのいずれかであるカッター装置は、防音部材が前記厚みを有するマット状のフェルトやロックウール、グラスウールの互いに絡み合う繊維で形成されるから、防音部材を多孔質構造にすることができ、多孔質構造によって作られた繊維間の多数の空間によって切断音の音圧レベルを確実に減衰させることができるとともに、構造物の表面の切断中に発生した切断音を確実に小さくすることができる。また、防音部材が前記厚みを有するゴムシートや塩ビシートで形成されるから、ゴムシートや塩ビシートによって切断音の音圧レベルを確実に減衰させることができ、構造物の表面の切断中に発生した切断音を確実に小さくすることができる。
頂壁に取り付けられた第1取っ手とそれら側壁のいずれかに取り付けられて側壁から側方へ延びる第2取っ手とを有するカッター装置は、それら取っ手を把持することで、カッター装置を持ち上げることができるから、カッター装置を利用して建造物の床面のみならず、壁面や天井面等の建造物のあらゆる箇所に一方向へ延びる所定深さの切目を形成することができる。
構造物の表面の切断中に発生する切断音の音圧レベルが50〜70dBの範囲にあるカッター装置は、吸引装置によってハウジングの内部空間から空気が吸引されて内部空間が負圧になり、蛇腹部材が上下方向へ縮んで構造物の表面に吸い付き、蛇腹部材によってハウジングと構造物の表面との間隙が塞がれるとともに、防音部材によって切断中に発生する切断音の音圧レベルを減衰することで、カッター装置において発生する切断音の音圧レベルを前記範囲にすることができ、切断音の発生を抑制した静かな状態で構造物の表面に一方向へ延びる所定深さの切目を形成することができる。
前側壁19の側から示すカッター装置10Aの斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかるカッター装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、後側壁20の側から示すカッター装置10Aの斜視図であり、図3は、カッター装置10Aの底面図である。図4は、図2の4−4線矢視断面図であり、図5は、蛇腹部材16の斜視図である。図6は、図5の6−6線端面図である。図2〜図4では、吸引装置49の図示を省略している。図1,2では、カッター装置10A(ハウジング11)が床から持ち上げられた状態を示す。図1では、上下方向を矢印A、前後方向を矢印Bで示し、横方向を矢印Cで示す。
カッター装置10Aは、建物(構造物)の床面(床スラブ)や外壁面、内壁面、天井面(天井スラブ)、柱面、梁面等(表面)に一方向へ延びる所定深さの切目50(切り溝)(図7,8参照)を形成する場合に好適に利用されるとともに、道路(構造物)や塀(構造物)等の表面に一方向へ延びる所定深さの切目50を形成する場合に好適に利用される。カッター装置10Aは、5面体のハウジング11および5面体のケーシング12と、モーター13および円盤状のカッターブレード14と、防音部材15(防音マット)および蛇腹部材16と、吸引手段17とから形成されている。
ハウジング11は、前後方向へ長い所定厚みの頂壁18と、前後方向へ延びる所定厚みの前後側壁19,20(各側壁)と、横方向へ延びる所定厚みの左右側壁21,22(各側壁)とから形成されている。頂壁18や前後側壁19,20、左右側壁21,22は、アルミニウムや合金等の軽量な金属または強化プラスチックから作られている。頂壁18や前後側壁19,20、左右側壁21,22は、それら壁18〜22の交差箇所が固定手段(溶接、融着、接着)によって強固に固着されている。ハウジング11には、それら壁18〜22に囲繞された所定容積の内部空間23が画成され、前後側壁19,20および左右側壁21,22の下端縁24に囲繞された前後方向へ長い矩形の開口25が画成されている。
頂壁18の中央には、前後方向へ延びる第1取っ手26が取り付けられている。右側壁21には、横方向(側方)へ延びる円柱状の第2取っ手27が取り付けられている。後側壁20には、モーター13を起動・停止させるON/OFFスイッチ28が取り付けられている。なお、ハウジングには、モーター13の回転速度(カッターブレード14の回転速度)を調整する速度調整機構(図示せず)が設置されている。左右側壁21,22の下端縁24近傍には、開口25を横方向へ延びる所定厚みの固定プレート29が取り付けられている。前後側壁19,20および左右側壁21,22の下端縁24には、前後方向および横方向へ延出して開口25を取り囲むフランジ30が取り付けられている。
第1取っ手26や第2取っ手27、固定プレート29、フランジ30は、アルミニウムや合金等の軽量な金属または強化プラスチックから作られている。固定プレート29は、左右側壁21,22の下端縁24近傍に固定手段(溶接、融着、接着)によって強固に固着されている。フランジ30は、前後側壁19,20および左右側壁21,22の下端縁24に固定手段(溶接、融着、接着)によって強固に固着されている。フランジ30には、ハウジング11の内部空間23におけるカッターブレード14の位置を示す目印線31が表示されている。
ケーシング12は、ハウジング11の内部空間23に設置され、右側壁21の側(右側壁21寄り)に配置されている。ケーシング12は、前後方向へ長い所定厚みの頂板32と、前後方向へ延びる所定厚みの前後側板33,34(各側板)と、横方向へ延びる所定厚みの左右側板35,36(各側板)とから形成されている。頂板32や前後側板33,34、左右側板壁35,36は、アルミニウムや合金等の軽量な金属または強化プラスチックから作られている。頂板32や前後側板33,34、左右側板壁35,36は、それら板32〜36の交差箇所が固定手段(溶接、融着、接着)によって強固に固着されている。
ケーシング12には、それら板32〜36に囲繞された所定容積のカッターブレード収容空間37が画成され、前後側板33,34および左右側板35,36の下端縁38に囲繞された前後方向へ長い矩形の開口39が画成されている。ケーシング11の開口39近傍の前側壁33(前側壁33の下方)には、後記する吸引装置17の吸引ホースの端部を連結する連結口40が形成されている。
モーター13は、ハウジング11の内部空間23に設置され、その胴部が固定プレート29に固定手段(ボルトおよびナット)によって強固に固定されている。モーター13の回転軸(図示せず)は、その全体がカバー41に包被され、前後方向へ延びている。カバー41は、アルミニウムや合金等の軽量な金属から作られている。カバー41には、固定治具42によってケーシング12が強固に固定されている。モーター13の後部からはモーター13に電気を供給する電線43が延出し、その電線43が後側壁20の外側へ延びている。モーター13は、ON/OFFスイッチ28をONにすることで、電気が供給され、その回転軸が回転し、スイッチ28をOFFにすることで、電気の供給が遮断され、回転軸の回転が停止する。
カッターブレード14は、ケーシング12のカッターブレード収容空間37(ハウジング11の内部空間23)に回転可能に収容され、その大部分がケーシング12(頂板32、前後側板33,34、左右側板壁35,36)に包被されている。カッターブレード14の回転軸は、モーター13の回転軸にギア(図示せず)を介して連結されている。カッターブレード14の周縁部には、カッター刃44が形成されている。カッター刃44は、その一部がケーシング12の開口39から下方へ露出している。カッターブレード14(カッター刃44)は、モーター13の回転軸の回転によって回転する。カッターブレード14には、モーター13のトルクが伝達され、カッター刃44によって建物の床面や外壁面、内壁面、天井面等をその表面から内部に向かって所定深さに切断する。
カッターブレード14には、モルタル用カッターブレードやコンクリート用カッターブレード、タイル用カッターブレード、ブロック用カッターブレード、レンガ用カッターブレード、インターロッキング用カッターブレード、樹脂用カッターブレード、鋼板用カッターブレード、大理石用カッターブレード、御影石用カッターブレード、道路アスファルト用カッターブレード、道路コンクリート用カッターブレード等を使用することができる。
防音部材15は、頂壁18の内面の略全域と前後側壁19,20および左右側壁21,22の内面の略全域とに固定されている。防音マット15は、固定手段(接着剤や両面テープ)によってそれら壁18〜22の内面に強固に固着されている。防音部材15は、マット状のフェルト、ロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシート(防音マット)のうちのいずれかから作られている。フェルトやロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートは、その厚みが1〜6cmの範囲にある。防音部材15は、前記厚みを有するフェルトやロックウール、グラスウールの互いに絡み合う繊維で形成された多孔質構造になっており、多孔質構造によって作られた繊維間の多数の空間が画成されている。防音部材15では、ハウジング11の内部空間23に伝播した切断音の音圧レベルが繊維間の空間において減衰する。また、ゴムシートや塩ビシートによってハウジング11の内部空間23に伝播した切断音の音圧レベルが減衰する。
フェルトやロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートの厚みが1cm未満では、防音部材15における音圧レベルの減衰性能が低下し、ハウジング11の内部空間23に伝播した切断音の音圧レベルを防音部材15によって減衰させることができない場合がある。フェルトやロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートの厚みが6cmを超過すると、防音部材15が嵩張り、ハウジング11の内部空間23にケーシング12やモーター13、カッターブレード14を配置するスペースを確保することが困難になるのみならず、ハウジング11の重量が必要以上に大きくなり、ハウジング11を動かすときの自由度が奪われ、ハウジング11を自由に動かすことが困難になる。
蛇腹部材16は、フランジ30(前後側壁19,20および左右側壁21,22の下端縁24)に取り付けられた伸縮部45と、伸縮部45の下端縁につながる所定面積の当接部46とを有する。伸縮部45は、上下方向へ蛇腹折りされ、その上端部分が固定手段(接着剤、ボルトおよびナット)によってフランジ30の下面に強固に固定されている。伸縮部45と当接部46とは、ハウジング11の開口25全域を取り囲む枠を形成している。
当接部46の外面には、摩擦防止用テープ47(滑り助長テープ)が接着剤によって固着されている。蛇腹部材16は、伸縮部45を介して上下方向へ伸縮する。蛇腹部材16では、建物の床面や外壁面、内壁面、天井面等をその表面から内部に向かって所定深さに切断する際に、当接部46がそれら面(表面)に当接する。なお、当接部46の外面に摩擦防止用テープ47が取り付けられていなくてもよい。
伸縮部45および当接部46には、ナイロン繊維やポリエステル繊維から作られた布、ゴムシート(クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロスルホン化エチレンゴム)の間にナイロン繊維やポリエステル繊維から作られた布を介在させたゴム引布等を使用することができる。摩擦防止用テープ47は、超高分子量ポリエチレンから作られている。
吸引手段17は、吸引ホース48(蛇腹ホース)と吸引装置49とから形成され、ハウジング11の内部空間23から空気を吸引(排気)し、建物の床面や外壁面、内壁面、天井面等に切目50(切り溝)を形成する際(切断開示時から切断継続中を含む切断中)にハウジング11の内部空間23を負圧にする。吸引ホース48は、吸引装置49からハウジング11に向かって延び、後側壁20および防音部材15を貫通してハウジング11の内部空間23に達している。吸引ホース48は、一方の端部が吸引装置49の連結口に連結され、他方の端部がケーシング12の開口39近傍の前側板33(前側板33の下方)に形成された連結口40に連結されている。
吸引装置49としては、吸引ポンプまたは吸引ファンおよび集塵機能を備えた装置、または、所定の集塵容積(集塵方式:2ウェイ方式(紙パック/布袋)、紙パック方式、布フィルター方式、特殊フィルター方式等)の集塵機能を有する業務用掃除機を使用することができる。吸引装置49には、それを起動・停止させるON/OFFスイッチ(図示せず)が設置されているとともに、その吸引風量(吸引仕事率)を調整する風量調整機構(図示せず)が設置されている。
吸引装置49は、その風量が2.0〜4.5m 3 /minの範囲にあり、その吸引仕事率が150〜400W(好ましくは、170〜250W)の範囲にある。風量が2.0m 3 /min未満であって吸引仕事率が150W未満では、吸引装置49(吸引手段17)によってハウジング11の内部空間23を十分な負圧にすることができず、蛇腹部材16(当接部46)によって床面や外壁面、内壁面、天井面等とハウジング11(フランジ30)との間隙を塞ぐことができない。その結果、床面や外壁面、内壁面、天井面等をカッターブレード14によって所定深さに切断するときに発生する切断音のハウジング11の外側への漏れを防ぐことができず、それら面の切断中に発生する塵埃(切り屑)を吸引装置49に十分に吸引させることができない。風量が4.5m 3 /minを超過するとともに吸引仕事率が400Wを超過すると、蛇腹部材16(当接部49)が床面や外壁面、内壁面、天井面等に強く吸着し、ハウジング11を自由に動かすことが困難になる。
吸引装置49の風量が前記範囲にあり、吸引装置49の吸引仕事率が前記範囲にあるから、装置49によってハウジング11の内部空間23から空気が十分に吸引されて内部空間23を確実に負圧にすることができ、蛇腹部材16(当接部46)によって床面や外壁面、内壁面、天井面等とハウジング11との間隙を塞ぐことができる。さらに、床面や外壁面、内壁面、天井面等の切断中に発生する塵埃を吸引装置49に吸引させることができ、それら面の切断中に発生する塵埃のまき散らしを防ぐことができる。
図7は、カッター装置10Aを使用して内壁面51に切目50を形成する手順の一例を説明する図であり、図8は、内壁面51の切断中におけるカッター装置10Aの断面図である。図7,8では、吸引装置49の図示を省略している。カッター装置10Aを使用して建物の内壁面51(表面)に切目50を形成する手順の一例を説明すると、以下のとおりである。
吸引装置49の風量調節機構によって装置49の吸引風量を設定した後、吸引装置49のスイッチをONにして装置49(吸引手段)を起動させる。吸引装置49を起動させると、ハウジング11の内部空間23から設定風量の空気が吸引ホース48を介して装置49に吸引される。カッター装置10Aの回転速度調節機構によってモーター13の回転速度を設定した後、カッター装置10Aのスイッチ28をONにしてモーター13を起動させる。モーター13を起動させると、モーター13の回転軸が設定速度で回転するとともにカッターブレード14が回転する。
次に、第1および第2取っ手26,27を手で持ってハウジング11を持ち上げ、内壁面51に形成する切目50にフランジ30の目印線31を合わせ、蛇腹部材16の当接部46を内壁面51に当接させる。当接部46を内壁面51に当接させると、吸引装置49によってハウジング11の内部空間23の空気が吸引されることで内部空間23が負圧になり、蛇腹部材16の伸縮部45が上下方向へ縮んで当接部46が内壁面51に吸い付くとともに、回転するカッターブレード14のカッター刃44がハウジング11の開口25から下方へ露出し、内壁面51がその表面から内部に向かって所定深さに切断される。その状態でハウジング11を図7,8に矢印L1で示す上方(一方向)へ動かすことで内壁面51に上方へ直状に延びる所定深さの切目50を形成する。蛇腹部材16の当接部46の外面に固着された摩擦防止用テープ47によって蛇腹部材16と内壁面51との摩擦が軽減され、ハウジング11を上方へスムーズに移動させることができる。
カッターブレード14のカッター刃44による内壁面51の切断中では、図7,8に矢印L2で示すように、吸引装置49によってハウジング11の内部空間23から空気が吸引されて内部空間23が負圧になり、蛇腹部材16の伸縮部45が上下方向へ縮んで当接部46が内壁面51に吸い付き、当接部46によってハウジング11(フランジ30)と内壁面51との間隙が塞がれ、カッターブレード14によって内壁面51を切断するときに発生する切断音がハウジング11の外側に漏れることがない。また、頂壁18およびそれら側壁19〜22の内面に固定された防音部材15によってハウジング11の内部空間23に伝播した切断音の音圧レベルが減衰する。その結果、内壁面51の切断中にカッター装置10Aから切断音が発生したとしても、その音圧レベルは50〜70dBに抑えられる。吸引装置49によってハウジング11の内部空間23から空気が吸引されることにより、内壁面51の切断中に発生した塵埃が空気とともに吸引装置49(吸引装置49の集塵機能)に吸引され、塵埃がハウジング11の内部空間23に残存することはない。
内壁面51に上方へ延びる切目50を形成した後、ハウジング11を内壁面51から離間させ、次に切目50を形成する内壁面51の箇所にハウジング11を移動させた後、既述の手順で内壁面51に次の切目50を形成する。なお、同様の手順によって内壁面51のみならず、建物の床面や外壁面、天井面等のあらゆる面に切目50を作ることができる。なお、カッターブレード14を専用のそれに交換することで、建物の床面や外壁面、内壁面、天井面がモルタルやコンクリート、タイル、ブロック、レンガ、インターロッキング、樹脂、鋼板、大理石、御影石等で作られている場合であっても、それら面に切目50を形成することができる。
カッター装置10Aは、建物(構造物)の床面や外壁面、内壁面、天井面等(表面)に所定深さの切目50を形成するときに、吸引装置49(吸引手段17)によってハウジング11の内部空間23から空気が吸引されて内部空間23が負圧になり、蛇腹部材16の伸縮部45が上下方向へ縮んで蛇腹部材16の当接部46が床面や外壁面、内壁面、天井面等に吸い付き、当接部46によってハウジング11とそれら面との間隙が塞がれるから、カッターブレード14のカッター刃44によってそれら面を所定深さに切断するときに発生する切断音がハウジング11の外側に漏れることはなく、切断中における不快かつ大きな切断音の発生を防ぐことができ、切断音を抑制した静かな状態(カッター装置10Bにおいて発生する切断音の音圧レベル:50〜70dB)で床面や外壁面、内壁面、天井面等に一方向へ延びる切目50を形成することができる。また、カッターブレード14の大部分をケーシング12に収容することで、床面や外壁面、内壁面、天井面等を切断するときに発生する切断音がケーシング12に閉じ込められ、切断音のハウジング11の内部空間23への伝播を減少させることができる。
カッター装置10Aは、頂壁18およびそれら側壁19〜22の内面の全域に1〜6cmの厚みを有する防音部材15(フェルト、ロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシート)が固定されているから、ハウジング11の内部空間23に伝播した切断音の音圧レベルを防音部材15に形成された空間で減衰させることができ、床面や外壁面、内壁面、天井面等の切断中に発生した切断音を確実に小さくすることができる。カッター装置10Aは、吸引装置49(吸引手段17)によってハウジング11の内部空間23から空気が吸引されることにより、床面や外壁面、内壁面、天井面等の切断直後に発生した塵埃を空気とともに吸引装置49(集塵機構)に直ちに吸引させることができ、それら面の切断中における塵埃のまき散らしを防ぐことができる。さらに、床面や外壁面、内壁面、天井面等の切断中に発生した塵埃を吸引装置49に吸引させることで、ハウジング11の内部空間23に塵埃が残存することはなく、ハウジング11の内部空間23に塵埃が残存することによるその塵埃の防音部材15への付着を防ぐことができ、防音部材15の防音性能の低下を防ぐことができる。
図9は、前側壁19の側から示す他の一例のカッター装置10Bの斜視図であり、図10は、後側壁20の側から示すカッター装置10Bの斜視図である。図11は、カッター装置10Bの底面図であり、図12は、図9の12−12線矢視断面図である。図10〜図12では、吸引装置49の図示を省略している。図9,10では、カッター装置10B(ハウジング11)が床から持ち上げられた状態を示す。図9では、上下方向を矢印A、前後方向を矢印Bで示し、横方向を矢印Cで示す。
カッター装置10Bが図1のそれと異なるところは、給気手段52が設置されている点にあり、このカッター装置10Bにおけるその他の構成は図1のカッター装置10Aのそれらと同一であるから、その他の構成については図1のカッター装置10Aと同一の符号を付すとともに、カッター装置10Aにおけるその他の構成の説明を援用することで、このカッター装置10Bにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。
カッター装置10Bは、5面体のハウジング11および5面体のケーシング12と、モーター13および円盤状のカッターブレード14と、防音部材15および蛇腹部材16と、吸引手段17と、給気手段52とから形成されている。ハウジング11は、前後方向へ長い所定厚みの頂壁18と、前後方向へ延びる所定厚みの前後側壁19,20(各側壁)と、横方向へ延びる所定厚みの左右側壁21,22(各側壁)とから形成され、所定容積の内部空間23と前後方向へ長い矩形の開口25とを有する。
左右側壁21,22の下端縁24近傍には、開口25を横方向へ延びる所定厚みの固定プレート29が取り付けられ、前後側壁19,20および左右側壁21,22の下端縁24には、前後方向および横方向へ延出して開口25を取り囲むフランジ30が取り付けられている。フランジ30には、ハウジング11の内部空間23におけるカッターブレード14の位置を示す目印線31が表示されている。
ケーシング12は、前後方向へ長い所定厚みの頂板32と、前後方向へ延びる所定厚みの前後側板33,34(各側板)と、横方向へ延びる所定厚みの左右側板35,36(各側板)とから形成され、所定容積のカッターブレード収容空間37と前後方向へ長い矩形の開口39とを有する。ケーシング11の開口39近傍の前側壁33には、吸引装置17の吸引ホースの端部を連結する連結口40が形成されている。
モーター13は、ハウジング11の内部空間23に設置され、その胴部が固定プレート29に固定手段(ボルトおよびナット)によって強固に固定されている。カッターブレード14は、ケーシング12のカッターブレード収容空間37(ハウジング11の内部空間23)に回転可能に収容され、その大部分がケーシング12に包被されている。カッターブレード14は、そのカッター刃44によって建物の床面や外壁面、内壁面、天井面等をその表面から内部に向かって所定深さに切断する。
防音部材15は、1〜6cmの厚みを有するフェルト、ロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシート(防音マット)のうちのいずれかから作られ、頂壁18の内面の略全域と前後側壁19,20および左右側壁21,22の内面の略全域とに固定されている。防音部材15では、ハウジング11の内部空間23に伝播した切断音の音圧レベルが繊維間の空間において減衰する。フェルトやロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートの厚みを前記範囲にする理由は、図1のカッター装置10Aのそれと同一である。
蛇腹部材16は、フランジ30(前後側壁19,20および左右側壁21,22の下端縁24)に取り付けられて上下方向へ蛇腹折りされた伸縮部45と、伸縮部45の下端縁につながる所定面積の当接部46とを有する(図5,6参照)。伸縮部45と当接部46とは、ハウジング11の開口25全域を取り囲む枠を形成している。当接部46の外面には、摩擦防止用テープ47(滑り助長テープ)が固着されている。
吸引手段17は、吸引ホース48(蛇腹ホース)と吸引装置49とから形成され、ハウジング11の内部空間23から空気を吸引(排気)し、建物の床面や外壁面、内壁面、天井面等に切目50(切り溝)を形成する際にハウジング11の内部空間23を負圧にする。吸引ホース48は、一方の端部が吸引装置49の連結口に連結され、他方の端部がケーシング12の開口39近傍の前側板33(前側板33の下方)に形成された連結口40に連結されている。カッター装置10Bおける吸引装置49の風量は、2.0〜4.5m 3 /minの範囲にあり、吸引仕事率は、150〜400W(好ましくは、170〜250W)の範囲にある。風量や吸引仕事率をその範囲にする理由は、図1のカッター装置10Aのそれと同一である。
給気手段52は、給気ホース53(蛇腹ホース)と給気装置54とから形成され、建物の床面や外壁面、内壁面、天井面等に切目50(切り溝)を形成する際(切断開示時から切断継続中を含む切断中)にハウジング11の内部空間23に空気を給気する。給気ホース53は、給気装置54からハウジング11に向かって延び、後側壁20および防音部材15を貫通してハウジング11の内部空間23に達している。給気ホース53は、一方の端部が給気装置54の連結口に連結され、他方の端部がハウジング11の後側壁20に連結されている。
給気装置53としては、給気ポンプまたは給気ファンおよびフィルタ機能を備えた装置を使用することができる。給気装置53には、それを起動・停止させるON/OFFスイッチ(図示せず)が設置されているとともに、その給気風量(給気仕事率)を調整する風量調整機構(図示せず)が設置されている。給気装置53は、その風量が1.0〜4.0m 3 /min(好ましくは、1.25〜2.5m 3 /minの範囲)の範囲にあり、その給気仕事率が100〜350Wの範囲にある。
給気装置53の風量が1.0m 3 /min未満では、給気装置53(給気手段52)によってハウジング11の内部空間23に十分な空気を給気することができず、内部空間23を冷却することができない。その結果、モーターを空冷することができない。給気装置53の風量が4.0m 3 /minを超過すると、ハウジング11の内部空間23に対して空気の供給過多となり、吸引装置49によって内部空間23から空気を吸引しても内部空間23を負圧に保持することができない場合がある。給気装置53の風量が前記範囲にあり、給気装置53の給気仕事率が前記範囲にあるから、ハウジング11の内部空間23に十分な空気を給気することができ、モーターを確実に空冷することができる。また、内部空間23に対して空気の供給過多となることはなく、吸引装置49によって内部空間23から空気を吸引した場合、それによって内部空間23を負圧に保持することができる。
図13は、内壁面51の切断中におけるカッター装置10Bの断面図である。図13では、吸引装置49や給気装置54の図示を省略している。カッター装置10Bを使用して建物の内壁面51(表面)に切目50を形成する手順の一例を説明すると、以下のとおりである。吸引装置49の風量調節機構によって装置49の吸引風量を設定した後、吸引装置49のスイッチをONにして装置49(吸引手段)を起動させ、給気装置54の風量調節機構によって装置54の給気風量を設定した後、給気装置54のスイッチをONにして装置54(給気手段)を起動させる。吸引装置49を起動させると、ハウジング11の内部空間23から設定風量の空気が吸引ホース48を介して装置49に吸引され、給気装置54を起動させると、給気ホース53を介してハウジング11の内部空間23に設定風量の空気が給気される。
なお、吸引装置49(吸引手段17)によってハウジング11の内部空間23から空気を吸引しつつ、給気装置54(給気手段52)によってハウジング11の内部空間23に空気を給気したときに、ハウジング11の内部空間23が所定の負圧に保持されるように、吸引装置49による空気の吸引(吸引風量)と給気装置54による空気の給気(給気風量)とが調節されている。カッター装置10Bの回転速度調節機構によってモーター13の回転速度を設定した後、カッター装置10Bのスイッチ28をONにしてモーター13を起動させる。モーター13を起動させると、モーター13の回転軸が設定速度で回転するとともにカッターブレード14が回転する。
次に、第1および第2取っ手26,27を手で持ってハウジング11を持ち上げ、内壁面51に形成する切目50にフランジ30の目印線31を合わせ、蛇腹部材16の当接部46を内壁面51に当接させる。当接部46を内壁面51に当接させると、吸引装置49によってハウジング11の内部空間23の空気が吸引されることで内部空間23が負圧になり、蛇腹部材16の伸縮部45が上下方向へ縮んで当接部46が内壁面51に吸い付くとともに、回転するカッターブレード14のカッター刃44がハウジング11の開口25から下方へ露出し、内壁面51がその表面から内部に向かって所定深さに切断される。
その状態でハウジング11を図13に矢印L1で示す上方(一方向)へ動かすことで内壁面51に上方へ直状に延びる所定深さの切目50を形成する。蛇腹部材16の当接部46の外面に固着された摩擦防止用テープ47によって蛇腹部材16と内壁面51との摩擦が軽減され、ハウジング11を上方へスムーズに移動させることができる。カッターブレード14のカッター刃44によって内壁面51に切目を形成する際に、内壁面51の切断を一定時間継続すると、モーター13が熱を持ち、その熱によってハウジング11の内部空間23が加熱されるが、給気装置54によってハウジング11の内部空間23に空気が給気され、その空気によって内部空間23が冷却され、その結果、モーターが空冷される。
カッターブレード14のカッター刃44による内壁面51の切断中では、図13に矢印L2で示すように、吸引装置49によってハウジング11の内部空間23から空気が吸引されて内部空間23が負圧になり、蛇腹部材16の伸縮部45が上下方向へ縮んで当接部46が内壁面51に吸い付き、当接部46によってハウジング11(フランジ30)と内壁面51との間隙が塞がれ、カッターブレード14によって内壁面51を切断するときに発生する切断音がハウジング11の外側に漏れることがない。また、頂壁18およびそれら側壁19〜22の内面に固定された防音部材15によってハウジング11の内部空間23に伝播した切断音の音圧レベルが減衰する。その結果、内壁面51の切断中にカッター装置10Bから切断音が発生したとしても、その音圧レベルは50〜70dBに抑えられる。吸引装置49によってハウジング11の内部空間23から空気が吸引されることにより、内壁面51の切断中に発生した塵埃が空気とともに吸引装置49(吸引装置49の集塵機能)に吸引され、塵埃がハウジング11の内部空間23に残存することはない。
カッター装置10Bは、建物(構造物)の床面や外壁面、内壁面、天井面等(表面)に所定深さの切目50を形成するときに、吸引装置49(吸引手段17)によってハウジング11の内部空間23から空気が吸引しつつ、給気装置54(給気手段52)によって内部空間23に空気を給気したときに、内部空間23が所定の負圧に保持されるように、吸引装置49による空気の吸引と給気装置54による空気の給気とが調節されているから、内部空間23が陽圧になることはなく、蛇腹部材16の伸縮部45が上下方向へ縮んで蛇腹部材16の当接部46が床面や外壁面、内壁面、天井面等に吸い付き、当接部46によってハウジング11とそれら面との間隙が塞がれるから、カッターブレード14のカッター刃44によってそれら面を所定深さに切断するときに発生する切断音がハウジング11の外側に漏れることはなく、切断中における不快かつ大きな切断音の発生を防ぐことができ、切断音を抑制した静かな状態(カッター装置10Bにおいて発生する切断音の音圧レベル:50〜70dB)で床面や外壁面、内壁面、天井面等に一方向へ延びる切目50を形成することができる。また、カッターブレード14の大部分をケーシング12に収容することで、床面や外壁面、内壁面、天井面等を切断するときに発生する切断音がケーシング12に閉じ込められ、切断音のハウジング11の内部空間23への伝播を減少させることができる。
カッター装置10Bは、頂壁18およびそれら側壁19〜22の内面の全域に1〜5cmの厚みを有する防音部材15(フェルト、ロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシート)が固定されているから、ハウジング11の内部空間23に伝播した切断音の音圧レベルを防音部材15に形成された空間で減衰させることができ、床面や外壁面、内壁面、天井面等の切断中に発生した切断音を確実に小さくすることができる。カッター装置10Bは、吸引装置49(吸引手段17)によってハウジング11の内部空間23から空気が吸引されることにより、床面や外壁面、内壁面、天井面等の切断直後に発生した塵埃を空気とともに吸引装置49(集塵機構)に直ちに吸引させることができ、それら面の切断中における塵埃のまき散らしを防ぐことができる。さらに、床面や外壁面、内壁面、天井面等の切断中に発生した塵埃を吸引装置49に吸引させることで、ハウジング11の内部空間23に塵埃が残存することはなく、ハウジング11の内部空間23に塵埃が残存することによるその塵埃の防音部材15への付着を防ぐことができ、防音部材15の防音性能の低下を防ぐことができる。
カッター装置10Bは、モーター13の回転軸の回転によってカッターブレード14を回転させ、カッターブレード14のカッター刃44による床面や外壁面、内壁面、天井面等の切断中にモーター13が熱も持ったとしても、給気装置54によってハウジング11の内部空間23に空気を給気することで、内部空間23を冷却することができ、それによってモーター13を空冷することができるとともに、熱によるモーター13の故障を防ぐことができる。