JP5793157B2 - 溶液処理装置 - Google Patents
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Description
近年、これらの産業分野が成長するに伴い、高沸点有機溶剤の使用量が増加し、同時に、当該高沸点有機溶剤を含有する水(被処理液)の排出量も増加している。
また、高沸点有機溶剤は、環境汚染の一因になる可能性があることから、環境負荷の低減という観点に基づき、廃棄対象となる液体(被処理液)中の高沸点有機溶剤の含有量は極力低下させたいという要望も存在する。
よって、特許文献1に開示された蒸発器によると、例えば、濃縮液中の高沸点有機溶剤の含有量を多くしようとした場合、留出蒸気中の高沸点有機溶剤の含有量も気液平衡の関係にしたがい多くなってしまうため、留出蒸気中の高沸点有機溶剤の含有量を十分に少なくすることは困難である。一方、留出蒸気中の高沸点有機溶剤の含有量を少なくしようとした場合、濃縮液中の高沸点有機溶剤の含有量も気液平衡の関係にしたがい少なくなってしまうため、濃縮液中の高沸点有機溶剤の含有量を十分に多くすることは困難である。
その結果、特許文献1に開示された技術は、第1蒸発器と、第2蒸発器という2つの蒸発器を設けることにより前記の問題を解消しようとしている。しかし、個々の蒸発器には前記のような制約があるため、根本的な問題の解決には至っていない。
つまり、特許文献1に開示された技術では、設備が大型化および複雑化するにもかかわらず、濃縮液中の高沸点有機溶剤の含有量を十分に多くすると同時に、留出蒸気中の高沸点有機溶剤の含有量を十分に少なくするという点において、改善の余地が存在していた。
なお、当該溶液処理装置から得られた留出液を排水として処理する場合、留出液中の高沸点有機溶剤の含有量が十分に少なくなっていることから、その後の処理装置にかかる負荷を軽減することができる。
なお、当該溶液処理装置から得られた濃縮液をリサイクルする場合、濃縮液中の高沸点有機溶剤の含有量が十分に多くなっていることから、その後に使用する精製装置にかかる負荷を軽減することができる。
また、このような構成によれば、処理塔の内部に供給された被処理液は、まず、第1気液接触手段に供給されるが、この時点での被処理液の高沸点有機溶剤の含有量が10.0wt%以下という十分に少ない状態である。その結果、第1気液接触手段において、高沸点有機溶剤の含有量の非常に少ない留出蒸気を処理塔の塔頂部から確実に留出させることができるため、留出液中の高沸点有機溶剤の含有量の低下という効果を、より確実なものとすることができる。
そして、圧縮手段により圧縮して昇温した留出蒸気を、第1加熱手段および第2加熱手段のうち少なくとも一方の加熱源として用いるため、加熱源に必要となるエネルギーを低減させることができる。
なお、本発明に係る溶液処理装置の処理対象である溶液について、処理塔に供給される前のものと、処理塔内のものとを被処理液L1(気体状のものを被処理蒸気L1)と示し、処理塔の塔底部から缶出した後のものを濃縮液L2(気体状のものを濃縮蒸気L2)と示し、処理塔の塔頂部から留出した後のものを留出液L3(気体状のものを留出蒸気L3)と示す。
≪第1実施形態に係る溶液処理装置の概略≫
第1実施形態に係る溶液処理装置1aは、高沸点有機溶剤を含有する被処理液L1を、高沸点有機溶剤の含有量の多い濃縮液L2と高沸点有機溶剤の含有量の少ない留出液L3とに分離する装置である。
図1に示すように、溶液処理装置1aは、処理塔2と、処理塔2の内部に設置されるとともに被処理液L1と被処理蒸気L1とを接触させる第1気液接触手段3aと、第1気液接触手段3aの上方から処理塔2の内部に被処理液L1を供給する供給手段4と、処理塔2の塔底部の被処理液L1を加熱(詳細には、濃縮液L2を加熱し処理塔2の塔底部に戻すことで被処理液L1の温度を上昇させ、被処理液L1を間接的に加熱)する第1加熱手段6aと、処理塔2の塔頂部から留出する留出蒸気L3に同伴する液滴を分離し処理塔2の内部に戻す気液分離手段7と、処理塔2の塔頂部から留出する留出蒸気L3を圧縮して昇温させる圧縮手段8と、を備える。
なお、溶液処理装置1aは、各機器間に液体または気体を流すため、配管t1〜t20を備えるとともに、液体または気体を所定方向に流すため、ポンプP1、P2、P3を備える。
<処理塔>
処理塔2とは、被処理液L1を濃縮液L2と留出蒸気L3とに分離するものである。
処理塔2は、全体として筒状を呈するとともに、内部には後記する第1気液接触手段3aを備え、第1気液接触手段3aよりも上方に気液分離器5を備える。さらに、処理塔2は、第1気液接触手段3aと、気液分離器5との間に、後記する供給手段4を備える。
第1気液接触手段3aとは、被処理液L1が分離した蒸気と液とを気液接触させる手段である。
なお、この棚段の段数(トレイの枚数)や充填物の層高については、所望する濃縮液L2の高沸点有機溶剤の含有量や物性値等に基づき決定すればよい。
供給手段4とは、被処理液L1を処理塔2の内部に供給する手段である。
供給手段4は、第1気液接触手段3aの上方に設けられ、被処理液L1が流れるように管状を呈する。
なお、図1では、供給手段4は、処理塔2の内壁から内側に向けて突出するように設けられているが、第1気液接触手段3aの上方に被処理液L1を供給できる手段であれば、特に限定されず、例えば、第1気液接触手段3aの上部全面に被処理液L1を供給できるように、散布ノズルであってもよい。
<第1加熱手段>
第1加熱手段6aとは、処理塔2の塔底部に供給される被処理液L1を加熱する手段である。
第1加熱手段6aは、処理塔2の塔底部の出口から、配管t14、ポンプP2、配管t15を介して供給される濃縮液L2を、加熱源(熱媒体)と熱交換することにより加熱する加熱器であり、当該加熱器で加熱された濃縮液L2は、配管t18を介して、処理塔2の内部に液体または気体の状態で供給される。なお、加熱器の加熱源としては、圧縮手段8により圧縮され昇温した留出蒸気L3が用いられる。
そして、加熱器の加熱源(熱媒体)としては、圧縮手段8により昇温した留出蒸気L3のほか、圧縮手段8以外の手段により昇温したスチーム、電気ヒーターといった公知の加熱源を用いることができる。
気液分離手段7とは、処理塔2の塔頂部から留出する留出蒸気L3に同伴する液滴を分離し処理塔2の内部に戻す手段である。
気液分離手段7は、サイクロン型気液分離装置を用いることができる。このサイクロン型気液分離装置は、配管と、当該配管の内部に留出蒸気L3の流れ方向(水平方向)に沿った軸を中心として傾斜した複数枚の羽根と、を備えるものである。そして、サイクロン型気液分離装置は、傾斜した羽根が留出蒸気L3に旋回流を与え、気体状の留出蒸気L3は旋回しながら直進するとともに、同伴した液滴は内壁面に押し付けられることとなる。その結果、サイクロン型気液分離装置は、同伴する液滴を留出蒸気L3から分離することができる。
そして、気液分離手段7により分離した液滴を排出する排出口は、配管t5を介して処理塔2の塔頂部付近(第1気液接触手段3aよりも上方)の塔側面に設けられた供給口に接続している。
ただし、これらの気液分離手段7の中でも、圧力損失を抑制することができるサイクロン型気液分離装置を用いるのが好ましい。
圧縮手段8とは、処理塔2の塔頂部から留出する留出蒸気L3を圧縮して昇温させる手段である。
そして、圧縮手段8は、処理塔2の塔頂部から留出する留出蒸気L3を、処理塔2の塔底部の被処理液L1よりも、温度が2℃以上高くなるように、圧縮して昇温する。これにより、第1加熱手段6aの加熱源として用いる留出蒸気L3が、加熱対象である処理塔2の塔底部の被処理液L1よりも2℃以上高温となることにより、留出蒸気L3が加熱源として好適なものとなる。
(気液分離器)
気液分離器5は、処理塔2の塔頂部に設けられるとともに、留出蒸気L3の飛沫同伴を防止するメッシュ状の構造物であり、例えば、ミストエリミネーターである。
なお、溶液処理装置1aは、図1のように、飛沫同伴を確実に防止するため、気液分離器5と気液分離手段7とを両方備える構成であってもよいが、いずれか一方のみを備える構成であってもよい。
第1加熱補助手段9、濃縮液熱交換器10、留出液熱交換器11は、公知の熱交換器を用い、熱媒体としては、各々、スチームS、濃縮液L2、留出液L3を用いる。
なお、第1加熱補助手段9の熱媒体は、電気ヒーターであってもよい。
冷却器13は、留出蒸気L3が系外(図示しない真空ポンプ)に漏れ出さないように当該留出蒸気L3を冷却して留出液L3とする機器である。
そして、保持缶12は、第1加熱手段6aにより液体状となった留出液L3と、冷却器13により液体状となった留出液L3を底側で保持するものである。
保持缶12の留出液L3の入口は、配管t8を介して第1加熱手段6aの出口に接続し、保持缶12の留出液L3の出口は、配管11、ポンプP3、配管t12を介して留出液熱交換器11の入口に接続している。
溶液処理装置1aは、還流手段を有さない。言い換えると、溶液処理装置1aは、還流手段を用いる精留ではなく、還流手段を用いない蒸発(単蒸留)に関する装置である。
ここで、還流手段とは、処理塔2の塔頂部から留出する留出蒸気L3を凝縮して留出液L3とし当該留出液L3を処理塔2の内部に戻す手段である。
ただし、エネルギーの消費量について制限されていないとともに、留出液L3の高沸点有機溶剤の含有量を更に低減しなければならないといった場合は、溶液処理装置1aに還流手段を設けてもよい。
≪被処理液≫
被処理液L1とは、高沸点有機溶剤と、水と、を含む溶液であり、詳細には、各種産業分野において、洗浄工程や製造工程で使用された高沸点有機溶剤を含有する水(溶液)である。
そして、高沸点有機溶剤は、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、プロピレングリコール(PG)、ブチルジグリコール(BDG)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、モノエタノールアミン(MEA)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGME)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)よりなる群から選ばれた1種または2種以上の溶剤であるのが好ましい。
これらの高沸点有機溶剤は、再利用する価値の高い溶剤であることから、本発明に係る溶液処理装置により、濃縮液L2中の高沸点有機溶剤を十分に濃縮することで、リサイクルに資するという効果をより確実なものとすることができる。
濃縮液L2とは、被処理液L1の高沸点有機溶剤の含有量と比較して、高沸点有機溶剤の含有量の多い溶液であり、本発明に係る溶液処理装置により被処理液L1を処理して得られる溶液である。
下記表1から、溶液中のNMPの含有量(NMP液組成)について、0.0〜60.0wt%の間での温度差は僅か4.5℃であるが、0.0〜80.0wt%の間での温度差は11.7℃であることがわかる。ここで、圧縮手段8の入口側(配管t6側)と出口側(配管t7側)とにおける留出蒸気3の温度差が大きくなると、圧縮手段8に必要となる動力(エネルギー)も大きくなる。
つまり、濃縮液L2として、NMPの含有量が80.0wt%のものを得ようとする場合は、60.0wt%のものを得ようとする場合と比較し、濃縮液L2を加熱するために圧縮手段8により留出蒸気L3の温度差を2.5倍以上とする必要があるため、圧縮手段8に必要となるエネルギーが大幅に増加してしまう。
したがって、本発明に係る溶液処理装置によると、使用する圧縮手段8の性能や圧縮手段8に必要となるエネルギー等を考慮する必要はあるが、濃縮液L2の高沸点有機溶剤の含有量を60.0wt%以上、80.0wt%以上とすることが可能であることがわかる。
留出液L3とは、被処理液L1の高沸点有機溶剤の含有量と比較して、高沸点有機溶剤の含有量の少ない溶液であり、本発明に係る溶液処理装置により被処理液L1を処理して得られる溶液である。また、留出液L3は、処理塔2から留出した留出蒸気L3が、圧縮手段8により昇圧・昇温し、第1加熱手段6a通過することで熱回収され凝縮したものである。
下記表2から、溶液中のNMPの含有量(NMP液組成)が5.0wt%の場合、蒸気中のNMPの含有量(NMP蒸気組成)が0.2wt%となり、溶液中のNMPの含有量(NMP液組成)が10.0wt%の場合、蒸気中のNMPの含有量(NMP蒸気組成)が0.5wt%となることがわかる。
つまり、被処理液L1としてNMPの含有量が10.0wt%のものを使用した場合、本発明に係る溶液処理装置によると、当該気液平衡関係に基づき、第1気液接触手段3aにおいて、NMPの含有量が0.5wt%の留出蒸気L3を処理塔2から留出させることができる。
したがって、本発明に係る溶液処理装置によると、留出液L3の高沸点有機溶剤の含有量を0.5wt%以下とすることが可能であることがわかる。
≪第1実施形態に係る溶液処理装置による被処理液の処理方法≫
まず、ポンプP1が作動すると、被処理液L1が配管t1を通って、濃縮液熱交換器10に供給される。この濃縮液熱交換器10では、供給された被処理液L1と濃縮液L2との間において熱交換が行われ、被処理液L1が昇温し、濃縮液L2が降温する。
そして、留出液熱交換器11において昇温した被処理液L1が、配管t3、供給手段4を通って、処理塔2内に供給される。
処理塔2の塔頂部側に上昇した被処理蒸気L1は、気液分離器5を通過し、塔頂部の出口(留出口)から配管t4を通って、留出蒸気L3として気液分離手段7に供給される。なお、供給手段4から供給された被処理液L1が液体状のまま留出液L3として留出しないよう(つまり、飛沫同伴しないよう)、気液分離器5により、被処理液L1がトラップされ、第1気液接触手段3aに供給される。
さらに、気液分離手段7に供給された留出蒸気L3に同伴した液滴は、気液分離手段7によって留出蒸気L3から分離され、分離された液滴は、配管t5を通り、処理塔2内に戻される。
そして、圧縮手段8において昇温した留出蒸気L3が、配管t7を通り、第1加熱手段6aに供給される。この第1加熱手段6aでは、供給された留出蒸気L3と濃縮液L2との間において熱交換が行われ、留出蒸気L3が凝縮し、濃縮液L2が留出蒸気L3の蒸発潜熱を回収することで昇温し、一部が蒸気化する。
なお、留出蒸気L3が、配管t8、保持缶12、配管t9、配管t10を通り、系外(図示しない真空ポンプ)に漏れ出さないように、配管t9および配管t10の間に設けられた冷却器13で冷却水Wにより冷却される。そして、降温し凝縮した留出液L3が冷却器13内を流下し、配管t9を通り、保持缶12の底側に貯まることとなる。
なお、図示しない真空ポンプにより、配管t10、冷却器13、保持缶12等を介して、溶液処理装置1aを吸引(Vacuum)することにより、溶液処理装置1aの圧力を所望の減圧状態とする。
最終的に、留出液熱交換器11において降温した留出液L3は、配管t13を通り、溶液処理装置1aの系外に流出する。
一方、第1気液接触手段3aにおいて、高沸点有機溶剤の含有量の多い被処理液L1は、第1気液接触手段3a内を流下し、処理塔2の塔底部に供給される。そして、処理塔2の塔底部に供給された被処理液L1は、濃縮液L2として、作動するポンプP2により、一部が配管t14、配管t15を通り、第1加熱手段6aに供給され、一部が配管t14、配管t16を通り、濃縮液熱交換器10に供給される。さらに、処理塔2の塔底部に供給された被処理液L1の一部は、濃縮液L2として、配管t17を通り、第1加熱補助手段9に供給される。
最終的に、濃縮液熱交換器10において降温した濃縮液L2は、配管t20を通り、溶液処理装置1aの系外に流出する。
なお、第2実施形態を説明するに際して、第1実施形態と共通する構成については説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。
第2実施形態に係る溶液処理装置1bは、第1実施形態に係る溶液処理装置1aと同様、高沸点有機溶剤を含有する被処理液L1を、高沸点有機溶剤の含有量の多い濃縮液L2と高沸点有機溶剤の含有量の少ない留出液L3とに分離する装置である。
そして、溶液処理装置1bは、図1に示した溶液処理装置1aの構成に加え、調節弁15と、凝縮器16と、を備える。
なお、溶液処理装置1bは、各機器間に液体または気体を流すため、配管t1〜t30を備えるとともに、液体または気体を所定方向に流すため、ポンプP1〜P4を備える。
<第2気液接触手段>
第2気液接触手段3bとは、被処理液L1が分離した蒸気と液とを気液接触させる手段である。
第2気液接触手段3bは、処理塔2の内部であるとともに、第1気液接触手段3aの下方に設けられる。なお、第2気液接触手段3bは、第1気液接触手段3aと同様、棚段、規則充填物、不規則充填物といった公知の気液接触手段を用いることができる。
そして、第1気液接触手段3aと第2気液接触手段3bとは、同種の組み合わせ(例えば、棚段と棚段)でもよく、異種の組み合わせ(例えば、棚段と規則充填物)であってもよい。
保持手段14とは、第1気液接触手段3aから供給される被処理液L1を所定量保持し、当該所定量を超える被処理液L2を第2気液接触手段3bに供給する手段である。
保持手段14は、処理塔2の内部であって第1気液接触手段3aと第2気液接触手段3bとの間に設置される。そして、保持手段14は、チムニートレイ14aと、チムニートレイ14aに保持された被処理液L1を第2気液接触手段3bに供給する配管t26と、を用いることができる。
なお、保持手段14としては、液体を保持できる手段であれば特に限定されず、チムニートレイ以外の液コレクターを用いてもよい。
第2加熱手段6bとは、保持手段14に保持された被処理液L1を加熱する手段である。
第2加熱手段6bは、第1加熱手段6aと同様の加熱器を用いることができる。この加熱器は、処理塔2の保持手段14から、配管t21、ポンプP2、配管t22を介して供給される被処理液L1を、加熱源(熱媒体)と熱交換することにより加熱するものであり、加熱器で加熱された被処理液L1は、配管t23を介して、処理塔2の内部(保持手段14の上方)に液体または気体の状態で供給される。なお、加熱器の加熱源としては、圧縮手段8により圧縮され昇温した留出蒸気L3が用いられる。
なお、図2では、溶液処理装置1bは、第2加熱手段6bに対応する圧縮手段8を備える構成となっているが、第1加熱手段6aに対応する圧縮手段(圧縮手段8よりも圧縮率の高い圧縮手段)をさらに備える構成としてもよい。
(調節弁、凝縮器)
調節弁15は、配管t6と配管t24との間に設けられ、開閉することにより配管t24側に流れる留出蒸気L3の流量を調整するものである。
そして、凝縮器16は、留出蒸気L3を冷却水Wで冷却することで凝縮させ留出液L3とする公知の熱交換器である。
なお、第2実施形態を説明するに際して、第1実施形態と共通する部分については説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
<保持手段と第2気液接触手段について>
第1気液接触手段3aにおいて、高沸点有機溶剤の含有量の多い液体状の被処理液L1は、第1気液接触手段3a内を流下し、保持手段14に供給される。そして、保持手段14に供給された被処理液L1の一部が、作動するポンプP2により、配管t21、配管t22を通り、第2加熱手段6bに供給される。この第2加熱手段6bでは、供給された被処理液L1と留出蒸気L3との間において熱交換が行われ、被処理液L1が一部蒸発し、留出蒸気L3が凝縮する。そして、第2加熱手段6bにより昇温・一部蒸発した被処理液L1が、配管t23を通り、処理塔2の内部に戻されることで、加熱されることにより気体状となった被処理蒸気L1が処理塔2の塔頂部側(第1気液接触手段3a側)に上昇し、液体状のままの被処理液L1は、保持手段14に供給され保持されることとなる。
第2気液接触手段3bに供給された被処理液L1は、処理塔2の塔底部側から上昇してくる被処理蒸気L1と接触する。その結果、高沸点有機溶剤の含有量の少ない被処理蒸気L1は、保持手段14を通過して、処理塔2の塔頂部側に上昇する。一方、高沸点有機溶剤の含有量の多い被処理液L1は、第2気液接触手段3b内を流下し、処理塔2の塔底部に供給される。
つまり、第2実施形態に係る溶液処理装置1bによると、処理塔2内に2つの気液接触手段を設けていることから、第1実施形態に係る溶液処理装置1aと比較して、濃縮液L2内の高沸点有機溶剤の含有量を更に多くすることが可能となる。
気液分離手段7において液滴が排除された留出蒸気L3は、一部が調節弁15、配管t24を通り、凝縮器16に供給される。
詳細には、溶液処理装置1b内部の圧力が高くなったとの信号を受けた調節弁15が、配管t6と配管t24とを連通状態とすることにより、処理塔2内において余剰となった留出蒸気L3が、図示しない真空ポンプにより、配管t10、冷却器13、保持缶12、配管t25、凝縮器16、配管t24を介して吸引(Vacuum)される。さらに、凝縮器16に供給された留出蒸気L3は、冷却水Wにより凝縮し留出液L3となり、配管t25を通り、保持缶12の底側に貯まる。これにより、第1加熱手段6aと第2加熱手段6bとを備えることで、装置内の圧力が高くなる傾向のある溶液処理装置1bの全体の圧力を所望の減圧状態とする。
≪第1実施形態に対応する実施例1≫
第1実施形態に対応する実施例1について、図1を用いて説明する。
被処理液L1としては、NMPの含有量が5wt%である排水を使用した。この排水を100kg/hで溶液処理装置1a(詳細には、濃縮液熱交換器10)に供給した。
なお、処理塔2の内部(塔頂部、塔底部)の圧力および温度を上記値に保つため、圧縮手段8としては、吸引圧力53.3kPa(83℃)で吐出圧力93.9kPa(98℃)のルーツブロアーを使用した。そして、このルーツブロアーの軸動力は8.1kWであった。さらに、第1加熱補助手段9に供給したスチームSは定常状態において5kg/hであった。
なお、高性能規則充填物の層高については、水とNMPの気液平衡関係からシミュレーションすると、理論段1段で5wt%のNMPを60wt%まで濃縮し、さらに留出した留出液の濃度は、0.5wt%とのシミュレーション結果が得られたことから、理論段1段相当の充填高さとして、層高を600mmにした。
なお、その他の諸条件については、第1実施形態として説明した構成および処理方法のとおりである。
回収した留出液L3の量(詳細には、留出液熱交換器11から流出した量)は92.13kg/hで、NMPの含有量は0.3wt%であった。また、回収した濃縮液L2の量(詳細には、濃縮液熱交換器10から流出した量)は7.87kg/hで、NMPの含有量は60wt%であった。
ここで、還流比0.2で運転される1塔式通常蒸留塔により、上記結果と同様の結果を得ようとすると、スチームは113kg/h(≒92.13(kg/h)×1.2×551/539)必要となる。なお、上記式中の「551」とは、83℃における被処理液の蒸発潜熱(kcal/kg)の値であり、「539」とは、100℃におけるスチームの蒸発潜熱(kcal/kg)の値である。
したがって、本発明に係る溶液処理装置1aによると、必要となるスチーム(エネルギー)を、還流比0.2で運転される1塔式通常蒸留塔と比較し、約4.4%(≒5(kg/h)/113(kg/h)×100)まで削減できることがわかった。
第2実施形態に対応する実施例2について、図2を用いて説明する。
<諸条件>
第1実施形態に対応する実施例1と異なる諸条件は、以下のとおりである。
処理塔2の保持手段14付近の圧力は、53.5kPaに保ち、温度は88℃であった。また、処理塔2の塔底部の圧力は、53.7kPaに保ち、温度は95℃であった。
なお、第1加熱手段6aに供給したスチームSは定常状態において10kg/hであった。
なお、高性能規則充填物の層高については、実施例1と同様理由により決定した。
そして、第2加熱手段6bは、竪型套管流下式熱交換器(伝熱面積7.8m2)を使用した。
なお、その他の諸条件については、第2実施形態として説明した構成および処理方法のとおりである。
回収した留出液L3の量(詳細には、留出液熱交換器11から流出した量)は94.10kg/hで、NMPの含有量は0.3wt%であった。また、回収した濃縮液L2の量(詳細には、濃縮液熱交換器10から流出した量)は5.90kg/hで、NMPの含有量は80wt%であった。
したがって、本発明の溶液処理装置1bによると、必要となるスチーム(エネルギー)を、還流比0.2で運転される1塔式通常蒸留塔と比較し、約8.7%(≒10(kg/h)/115(kg/h)×100)まで削減できることがわかった。
1b 第2実施形態に係る溶液処理装置(溶液処理装置)
2 処理塔
3a 第1気液接触手段
3b 第2気液接触手段
4 供給手段
5 気液分離器
6a 第1加熱手段
6b 第2加熱手段
7 気液分離手段
8 圧縮手段
9 第1加熱補助手段
10 濃縮液熱交換器
11 留出液熱交換器
12 保持缶
13 冷却器
14 保持手段
14a チムニートレイ
15 調節弁
16 凝縮器
L1 被処理液、被処理蒸気
L2 濃縮液
L3 留出液、留出蒸気
t1〜t30 配管
P1〜P4 ポンプ
Claims (7)
- 高沸点有機溶剤を含有する被処理液を、高沸点有機溶剤の含有量の多い濃縮液と高沸点有機溶剤の含有量の少ない留出液とに分離する溶液処理装置であって、
被処理液を濃縮液と留出液となる留出蒸気とに分離し、塔頂部から留出蒸気を留出させ、塔底部から濃縮液を缶出させる処理塔と、
前記処理塔の塔底部に供給される被処理液を加熱する第1加熱手段と、
前記処理塔の内部に設置されるとともに、被処理液と加熱されることにより気体状となった被処理蒸気とを接触させる第1気液接触手段と、
前記第1気液接触手段の上方から前記処理塔の内部に被処理液を供給する供給手段と、
を備え、
前記第1気液接触手段から上昇する被処理蒸気を気液接触させる気液接触手段を備えず、
前記供給手段から供給される被処理液は、高沸点有機溶剤を含有する水溶液であって、高沸点有機溶剤の含有量が10.0wt%以下であり、
前記供給手段から供給される被処理液の高沸点有機溶剤は、水より沸点が高く、水と完全に溶解し、水と共沸しない溶剤であり、N−メチルピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール、1,4−ブタンジオール、モノエタノールアミン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンよりなる群から選ばれた1種または2種以上の溶剤であることを特徴とする溶液処理装置。 - 前記処理塔の塔頂部から留出する留出蒸気を凝縮して留出液とし当該留出液を前記処理塔の内部に戻す還流手段を有さないことを特徴とする請求項1に記載の溶液処理装置。
- 前記処理塔の塔頂部から留出する留出蒸気に同伴する液滴を分離し前記処理塔の内部に戻す気液分離手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶液処理装置。
- 前記処理塔の塔頂部から留出する留出蒸気を圧縮して昇温させる圧縮手段を備え、
前記圧縮手段により圧縮されて昇温した留出蒸気を、前記第1加熱手段の加熱源として用いることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶液処理装置。 - 前記圧縮手段は、前記処理塔の塔頂部から留出する留出蒸気を、前記処理塔の塔底部の被処理液よりも、温度が2℃以上高くなるように、圧縮して昇温させることを特徴とする請求項4に記載の溶液処理装置。
- 前記処理塔の内部であって前記第1気液接触手段の下方に設置されるとともに、被処理液と加熱されることにより気体状となった被処理蒸気とを接触させる第2気液接触手段と、
前記処理塔の内部であって前記第1気液接触手段と前記第2気液接触手段との間に設置されるとともに、前記第1気液接触手段から供給される被処理液を所定量保持し、当該所定量を超える被処理液を前記第2気液接触手段に供給する保持手段と、
前記処理塔の塔頂部から留出する留出蒸気を圧縮して昇温させる圧縮手段と、
前記保持手段に保持された被処理液を加熱する第2加熱手段と、
を備え、
前記圧縮手段により圧縮されて昇温した留出蒸気を、前記第1加熱手段および前記第2加熱手段のうち少なくとも一方の加熱源として用いることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶液処理装置。 - 前記供給手段から供給する被処理液の高沸点有機溶剤は、N−メチルピロリドンであり、
前記処理塔の塔頂部から留出する留出蒸気は、高沸点有機溶剤の含有量が0.5wt%以下であり、
前記処理塔の塔底部から缶出する濃縮液は、高沸点有機溶剤の含有量が60.0wt%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の溶液処理装置。
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