JP6764802B2 - 濃縮システム及び濃縮方法 - Google Patents

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Description

本発明は、濃縮システム及び濃縮方法に関するものである。
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の乾燥装置が知られている。この乾燥装置は、被処理物を収容する蒸発器と、蒸発器から移送された水蒸気を圧縮する圧縮機と、圧縮された水蒸気を加熱媒体として通流させ蒸発器内の被処理物と熱交換する熱交換部とを備えている。熱交換部は、蒸発器内に設けられ加熱媒体をさせる伝熱管と、蒸発器の容器側面に設けられ蒸発器の壁面を介して被処理物と熱交換する蒸気ジャケットとを有している。
特開2016-65658号公報
しかしながら、特許文献1の乾燥装置では、蒸発器内に収容された状態の被処理物に対して熱交換部の加熱媒体との熱交換が行われるので、被処理物と加熱媒体との伝熱面積を増大させることにも限界があり、被処理物の加熱効率の向上にも限界がある。この種の乾燥装置(濃縮装置)においては、被処理物の加熱効率を向上させることで、濃縮装置全体として濃縮処理の効率を高めることが望まれる。本発明は、被処理物の濃縮処理の効率を高める濃縮システム及び濃縮方法を提供することを目的とする。
本発明の濃縮システムは、液体である被処理物の溶媒成分を蒸発させて被処理物を濃縮する濃縮システムであって、被処理物が収容される蒸発器と、蒸発器内の被処理物を所定の濃縮度まで濃縮可能な濃縮処理部と、濃縮処理部で濃縮された蒸発器内の被処理物の溶媒成分を更に蒸発させて被処理物の濃縮度を高める乾燥処理部と、を備え、濃縮処理部は、蒸発器内の溶媒成分の蒸気を外部に引き出し圧縮する圧縮手段と、蒸発器の外部に設けられ圧縮手段で圧縮された蒸気が加熱媒体として導入される外部熱交換器と、蒸発器内の被処理物を外部に抜出し外部熱交換器で加熱媒体と熱交換させた後、再び蒸発器内に返送するように循環させる循環経路と、を有し、乾燥処理部は、蒸発器を加熱する加熱部と、圧縮手段とは別に設けられ蒸発器内を減圧する減圧手段と、蒸発器内の被処理物から蒸発し減圧手段に向かう溶媒成分の蒸気の移動経路上で当該蒸気を冷却し凝縮させる凝縮部と、を有する。
この濃縮システムは、被処理物を所定の濃縮度まで濃縮する濃縮処理部と、被処理物の濃縮度を更に高める乾燥処理部と、を備える。濃縮処理部では、蒸発器内の被処理物を外部に抜出し外部熱交換器で加熱媒体と熱交換させた後、再び蒸発器内に返送するように循環させる循環経路が設けられている。外部熱交換器は、蒸発器の外部に抜き出された被処理物と加熱媒体とを熱交換させる。従って、外部熱交換器については、蒸発器の外部に設けられるので、被処理物と加熱媒体との伝熱面積を増大させることの制約が小さく、その結果、伝熱面積を増大させて被処理物の加熱効率を向上させ、濃縮システム全体の濃縮処理の効率を高めることができる。
具体的には、圧縮手段はルーツブロアを有し、減圧手段は真空ポンプを有するようにしてもよい。
本発明の濃縮方法は、上記何れかの濃縮システムを用いて被処理物を濃縮する濃縮方法であって、被処理物の溶質成分が析出する濃縮度よりも低濃縮度まで、濃縮処理部によって蒸発器内の被処理物を濃縮する初期濃縮工程と、初期濃縮工程の後、蒸発器内の被処理物を乾燥処理部によって乾燥する乾燥工程と、を備える。
この濃縮方法によれば、濃縮システムの濃縮処理部の循環経路において被処理物の溶質成分が析出する可能性が抑えられ、初期濃縮工程を円滑に行うことができる。またその後、溶質成分の析出が発生し得る段階では、乾燥処理部により、蒸発器内において被処理物の乾燥が行われる。
また、初期濃縮工程の少なくとも一部の時間帯では、濃縮処理部によって被処理物を濃縮する処理に並行して、乾燥処理部によって被処理物を乾燥する処理が実行されるようにしてもよい。
初期濃縮工程と並行して実行され被処理物の濃縮度を検知する濃縮度検知工程を更に備え、濃縮度検知工程で検知された濃縮度が所定の濃縮度に到達したときに、初期濃縮工程が停止され初期濃縮工程から乾燥工程に切り替えられるようにしてもよい。
この構成によれば、被処理物の濃縮度が過剰に高い状態で初期濃縮工程が行われる可能性を抑えることができ、濃縮処理部の循環経路において被処理物の溶質成分が析出する可能性が抑えられる。
本発明によれば、被処理物の濃縮処理の効率を高める濃縮システム及び濃縮方法を提供することができる。
実施形態に係る濃縮システムを示す図である。 蒸発器及び撹拌装置を示す断面図である。
以下、図面を参照しつつ本発明に係る濃縮システム及び濃縮方法の実施形態について詳細に説明する。
図1に示される濃縮システム1は、溶液(液体)である被処理物Aの溶媒成分を蒸発させて当該被処理物Aを濃縮するシステムである。以下の実施形態において「濃縮」とは、単に被処理物Aの溶媒を除去し濃度を高める処理ばかりでなく、被処理物A中の溶質成分が一部析出した後に更に溶媒成分の除去を継続する処理や、被処理物Aのほぼすべての溶媒成分を除去する「乾燥」の処理を含む概念である。濃縮システム1による濃縮処理の被処理物Aとしては、例えば、廃棄物処分場の浸出水、建設工事で発生する泥水・濁水、下水処理場の下水汚泥や発酵廃液、化石燃料採掘で発生する随伴水、水溶性切削油、VOC汚染水、VOC汚染土等がある。このうち、廃棄物処分場の浸出水、泥水・濁水、下水汚泥、随伴水、水溶性切削油の溶媒成分は水であり、発酵廃液の溶媒成分は水あるいはアンモニア水であり、VOC汚染水、VOC汚染土の溶媒成分はVOCである。濃縮システム1は、最終的には、被処理物A中のほぼすべての溶媒成分を除去して被処理物Aを乾燥状態になるまで濃縮してもよく、例えば、被処理物Aが最終的に粉末状になるように濃縮してもよい。
濃縮システム1は、被処理物Aを所定の濃縮度に濃縮する濃縮処理部Q1と、濃縮処理部Q1で濃縮された被処理物Aを更に濃縮して乾燥状態とする乾燥処理部Q3と、を備えている。
(濃縮処理部Q1)
濃縮処理部Q1は、蒸発器3と、蒸発器3の外部に設けられた熱交換器5(外部熱交換器)と、循環ポンプ7と、圧縮手段9と、を備えている。蒸発器3には被処理物Aが収容される。蒸発器3の底部近傍には被処理物Aをその液面下から外部に抜き出すための抜出口3bが設けられている。抜出口3bは、蒸発器3の底部よりもやや高い位置に位置している。蒸発器3の上部には外部に抜き出された被処理物Aをその液面上方の位置で返送するための返送口3aが設けられている。また、蒸発器3の上部には、蒸発器3内の蒸気を外部に抜き出すための蒸気出口3cが設けられている。
蒸発器3の抜出口3bはラインL1を介して循環ポンプ7の入口に接続されている。循環ポンプ7の出口はラインL2を介して熱交換器5の入口に接続されている。熱交換器5の出口はラインL3を介して蒸発器3の返送口3aに接続されている。蒸発器3の蒸気出口3cはラインL4及びラインL5を介して圧縮手段9の入口に接続されている。圧縮手段9の出口はラインL6を介して熱交換器5の加熱媒体入口に接続されている。熱交換器5の加熱媒体出口はラインL7を介してラインL8に接続されている。ラインL4をラインL5と後述のラインL14とに分岐させる分岐点には、例えば切替バルブV4が設けられており、ラインL4をラインL5又はラインL14に対して選択的に連通させることができる。
また、循環ポンプ7の駆動によって蒸発器3内の被処理物Aが抜出口3bから外部に抜き出され、ラインL1及びラインL2を通じて熱交換器5に導入される。その後、熱交換器5においては、被処理物Aと高温の加熱媒体との熱交換によって、被処理物Aが加熱される。熱交換器5で加熱された被処理物Aは、ラインL3を通じて再び蒸発器3に返送される。このように、濃縮処理部Q1では、蒸発器3、ラインL1、循環ポンプ7、ラインL2、熱交換器5、及びラインL3によって被処理物Aの循環経路11が形成されている。そして、循環経路11においては、当該循環経路11上に設けられた循環ポンプ7により被処理物Aが圧送されることで、上記のような被処理物Aの循環流動が発生する。循環ポンプ7は、被処理物Aの流量をインバータ制御又は台数制御してもよい。
上記のように、被処理物Aが循環経路11を周回することで加熱され、当該被処理物Aの温度が上昇する。被処理物Aの温度上昇によって、蒸発器3内では、被処理物Aの溶媒成分が蒸発し溶媒成分の蒸気が発生する。蒸発器3内の蒸気は、圧縮手段9の駆動により蒸気出口3cを通じて外部に引き出される。このようにして、被処理物Aが循環経路11の周回を繰り返すことにより、被処理物Aの溶媒成分が徐々に除去され、被処理物Aが濃縮される。
蒸発器3から引き出された蒸気は、ラインL4及びラインL5を通じて圧縮手段9に導入され、圧縮手段9によって昇圧・昇温された後、ラインL6を通じて熱交換器5の加熱媒体入口に導入される。ここで、圧縮手段9は、入口から吸引した流体を圧縮し出口から排出する装置であり、圧縮手段には、ブロワ、圧縮機、真空ポンプ等も含まれる。熱交換器5に導入された蒸気は、前述したように被処理物Aとの熱交換を行う加熱媒体として利用される。熱交換器5内では加熱媒体である蒸気の一部が凝縮し、熱交換器5の加熱媒体出口からは、凝縮液と余剰の蒸気とが排出される。これらは、ラインL7を通じてラインL8に合流し、濃縮システム1の系外に排出される。
更に、濃縮処理部Q1は、濃縮システム1の起動時等において、蒸気を生成しラインL9及びラインL6を通じて熱交換器5に供給する蒸気ボイラ13を備えている。蒸気ボイラ13で生成される蒸気は、水蒸気であってもよく、被処理物Aの溶媒と同じ成分の蒸気であってもよい。蒸気ボイラ13から熱エネルギーが導入されることにより、特に濃縮システム1の起動時において、熱交換器5の加熱媒体が温度上昇するので、循環経路11の被処理物Aが効率良く加熱される。これにより、蒸発器3内で溶媒成分の蒸気が発生し、当該蒸気が熱交換器5の加熱媒体として機能し、循環経路11において被処理物Aが加熱される、といったサイクルが早期に立ち上がる。また、蒸気ボイラ13から熱交換器5への蒸気の導入は、濃縮システム1の起動時に限られず、定常運転時に何らかの理由により上記のサイクルのための熱エネルギーが不足する場合にも実行することができる。
濃縮システム1の濃縮処理部Q1において、圧縮手段9としては、ルーツブロアを採用することが好ましい。一般的にルーツブロアは容量(仕事率[W])を大きくすることができるので、圧縮手段9としてルーツブロアを使用することにより、熱交換器5に対して単位時間当たりに供給可能な熱量を大きくすることができる。これにより、熱交換器5による被処理物Aの加熱効率が高くなり、濃縮処理部Q1による処理が高速化され、ひいては、濃縮システム1による濃縮処理の効率が向上する。ルーツブロアを採用した場合、被処理物Aの溶媒成分が水である場合においては、ルーツブロアの定格容量を例えば60〜70kWとし、稼働出力を50〜60kWとしてもよい。また、ルーツブロアの出力が60kWである場合に、濃縮処理部Q1による被処理物Aの処理能力が0.8〜1.0m/hであってもよい。
また、熱交換器5としては、プレート式熱交換器を採用することが好ましい。プレート式熱交換器は、高温流体の流路と低温流体の流路とが伝熱プレートを挟んで交互に積層された構造を成すので、加熱媒体と被処理物Aとの間の伝熱面積を大きくすることができる。また、プレート式熱交換器では、比較的自由に伝熱面積を増強することもできる。よって、熱交換器5による被処理物Aの加熱効率が高くなり、濃縮システム1による濃縮処理の効率が向上する。被処理物Aの溶媒成分が水である場合においては、上記のルーツブロアの定格容量を例えば60〜70kWとし、稼働出力を50〜60kWとした場合に、熱交換器5をなすプレート式熱交換器の伝熱面積は、例えば約40mとしてもよい。また、万一、熱交換器5内で被処理物Aの溶質成分の析出が発生した場合にも、プレート式熱交換器であれば、その構造上、流路内の清掃が容易であるので、熱交換器5のメンテナンス性を向上させる観点からもプレート式熱交換器を採用することが好ましい。
(乾燥処理部Q3)
乾燥処理部Q3は、濃縮処理部Q1で濃縮された蒸発器3内の被処理物Aの溶媒成分を更に蒸発させて被処理物Aの濃縮度を高める。乾燥処理部Q3は、蒸発器3の下部周囲に設けられた蒸気ジャケット4と、凝縮器15(凝縮部)と、減圧手段17と、冷却塔19とを備えている。
蒸気ジャケット4にはラインL12を通じて蒸気ボイラ14から蒸気が供給される。蒸気ボイラ14から供給された蒸気が蒸気ジャケット4内で凝縮すると、蒸気の凝縮熱が蒸発器3に付与され蒸発器3が加熱される。蒸気ジャケット4内において蒸気の凝縮で発生した凝縮液は、蒸気ジャケット4の底部から抜き出されラインL13を通じて蒸気ボイラ14に返送され、蒸気源として再利用されてもよいし、ラインL13は省略してもよい。また、蒸気ジャケット4内の余剰の凝縮液はラインL8を通じて濃縮システム1の系外に排出される。なお、蒸気ボイラ14は、蒸気ボイラ13と共通化されてもよい。
凝縮器15の上部は、ラインL14及びラインL4を介して蒸発器3の蒸気出口3cに接続されている。更に凝縮器15の上部には、ラインL15を介して減圧手段17が接続されている。減圧手段17は、凝縮器15と当該凝縮器15に連通された蒸発器3とを真空引きして減圧することができる。ここで、減圧手段17は、入口から吸引した流体を圧縮し出口から排出する装置であり、減圧手段17には、ブロワ、圧縮機、真空ポンプ等も含まれる。本実施形態においては、減圧手段17として真空ポンプが採用されているものとする。また、凝縮器15の内部には冷却水管15aが設けられている。冷却水管15aには冷却塔19から供給される冷却水が流通している。
上記の構成の乾燥処理部Q3において、蒸気ジャケット4と、減圧手段17と、冷却塔19が駆動すると、蒸発器3内の被処理物Aは、蒸気ジャケット4により加熱されるとともに、減圧手段17によって減圧される。被処理物Aの加熱・減圧によって、被処理物Aの溶媒成分の蒸発が促進される。蒸発器3内の被処理物Aから蒸発した溶媒成分の蒸気はラインL4、ラインL14、凝縮器15及びラインL15で構成される移動経路で減圧手段17に向けて移動する。このとき、上記移動経路上にある凝縮器15では、溶媒成分の蒸気が冷却水管15aに接触して冷却される。この冷却によって当該蒸気が凝縮し、液体となった溶媒成分が凝縮器15内で貯留される。凝縮器15内に貯留された液体の溶媒成分は、凝縮器15の底部から濃縮システム1の系外に排出される。以上の動作により、蒸発器3内の被処理物Aから溶媒成分が除去されていき、被処理物Aの濃縮が進行する。
なお、切替バルブV4は、開状態又は閉状態の2段階の切替えのみならず、開度が調整可能であってもよい。これにより、ラインL5に送られる蒸気量とラインL14に送られる蒸気量とを所望の割合に制御することが可能である。
(撹拌装置)
乾燥処理部Q3による乾燥処理工程を更に効率的にすべく、蒸発器3内には当該蒸発器3内の被処理物Aを撹拌する撹拌装置が設けられてもよい。図2は、撹拌装置20を含む蒸発器3の一例を示す断面図である。この例の蒸発器3は、図2の紙面に直交する方向に延びる円筒形をなしている。蒸発器3の内部には、蒸発器3の円筒軸線Cを中心として回転する撹拌装置20が設けられている。撹拌装置20は、円筒軸線C上に延在するシャフト21と、シャフト21に直交する姿勢で当該シャフト21に取付けられ略八角形をなす仕切板23と、を有している。
仕切板23は、図2の紙面直交方向に所定間隔で複数配列され、蒸発器3の内部空間を円筒軸線C方向に複数の空間に仕切っている。仕切板23はシャフト21と一緒に回転する。また撹拌装置20は、各仕切板23を貫通して円筒軸線C方向に延在する複数の伝熱管25(加熱部)を有している。伝熱管25は各仕切板23の周縁部近傍に設置されており、伝熱管25の中空部には蒸気ボイラ14から供給される高温の蒸気が流通する。なお、蒸気ボイラ14から伝熱管25に供給され伝熱管25を通過した蒸気は、その後に、蒸気ジャケット4に導入されるようにしてもよく、ラインL8に合流してもよく、濃縮システム1の系外に排出されるようにしてもよい。更に、撹拌装置20は、シャフト21と一緒に回転する撹拌羽根27を有している。撹拌羽根27は、蒸発器3の内壁面上を摺動しながらシャフト21と一緒に回転する。
所定の動力源によりシャフト21が回転すると、上述の仕切板23、伝熱管25、及び撹拌羽根27が蒸発器3内で一体となって回転する。蒸発器3内に収容されている被処理物Aは、伝熱管25及び撹拌羽根27によって液面よりも上方に掻き上げられ撹拌されながら、蒸気ジャケット4と伝熱管25とで加熱されるので、効率良く濃縮されていく。被処理物Aの濃縮度が高くなると、被処理物Aがその粘性によって蒸発器3の内壁面に付着する場合もあるが、付着した被処理物Aは内壁面を介して蒸気ジャケット4により効率よく加熱される。また、蒸発器3の内壁面に付着した被処理物Aは撹拌羽根27によって掻き落される。また、被処理物Aがある程度固形化した段階では、被処理物Aは内壁面と伝熱管25との間の隙間に入り込んで揉まれることによっても効率良く加熱される。被処理物Aが蒸発器3内で所定の濃縮度まで濃縮されたところで、濃縮処理済みの被処理物Aを最終的な濃縮処理物として蒸発器3内から回収する。
このように、蒸発器3内における被処理物Aの加熱、減圧に加えて、撹拌装置20による撹拌を行うことにより、被処理物Aは効率良く濃縮される。また、被処理物中のほぼすべての溶媒成分を除去して被処理物を乾燥状態になるまで濃縮することが可能になり、例えば、被処理物が最終的に粉末状になるまで濃縮(乾燥)することも可能になる。なお、撹拌装置20においては、伝熱管25が省略されてもよい。
(濃縮システム1による被処理物Aの濃縮方法)
続いて、図1を参照しながら濃縮システム1による被処理物Aの濃縮方法について説明する。本実施形態の濃縮方法は、被処理物Aの溶質成分が析出する濃縮度よりも低濃縮度まで、濃縮処理部Q1によって蒸発器3内の被処理物Aを濃縮する初期濃縮工程と、初期濃縮工程の後、蒸発器3内の被処理物Aを乾燥処理部Q3によって乾燥する乾燥工程と、を備える。
(起動、立上げ)
初期濃縮工程の開始時は、濃縮処理部Q1全体の温度を100℃近傍まで上げる必要がある。このため、例えば、蒸気ボイラ14からの蒸気が蒸気ジャケット4に送り込まれ蒸発器3が加熱される。蒸発器3内が一定の温度に達したときに、蒸気ジャケット4への蒸気供給は停止されてもよい。
(初期濃縮工程)
濃縮処理部Q1によって実行される被処理物Aの初期濃縮工程は、被処理物Aが収容される蒸発器3内の溶媒成分の蒸気を圧縮手段9によって外部に引き出し圧縮する圧縮工程と、圧縮工程で圧縮された蒸気を熱交換器5に加熱媒体として導入する工程と、蒸発器3内の被処理物Aを外部に抜出し熱交換器5で加熱媒体と熱交換させた後、再び蒸発器3内に返送するように循環経路11を循環させる工程と、を備える。
具体的な初期濃縮工程は次の通りである。初期濃縮工程では、切替バルブV4によってラインL4がラインL5に連通される。蒸発器3内に被処理物Aが収容され、被処理物Aは、循環ポンプ7により圧送され循環経路11を循環する。すなわち、被処理物AはラインL1及びラインL2を通じて蒸発器3の外部に抜き出され、熱交換器5に送り込まれる。被処理物Aは熱交換器5で加熱媒体との熱交換を行い加熱され、その後ラインL3を通じて蒸発器3に返送される。被処理物Aの溶媒成分が水である場合、初期濃縮工程中における蒸発器3内の被処理物Aの温度は、ほぼ100℃である。
被処理物Aは循環経路11の循環で熱交換器5を通過することにより加熱され、加熱された被処理物Aの溶媒成分が蒸発し、蒸発器3内には溶媒成分の蒸気が発生する。この蒸気は、圧縮手段9によりラインL4及びラインL5を通じて蒸発器3の外部に引き出され圧縮される。圧縮された蒸気はラインL6を通じて熱交換器5に導入され、前述の加熱媒体として機能する。加熱媒体としての蒸気は熱交換器5でその一部が凝縮し、凝縮液と余剰の蒸気とがラインL7及びラインL8を通じて濃縮システム1の系外に排出される。以上のようにして、被処理物Aの溶媒成分が徐々に除去され、被処理物Aが濃縮される。
(乾燥工程)
その後、被処理物Aが所定の濃縮度に到達したときに、循環ポンプ7が停止され初期濃縮工程から乾燥工程に移行する。乾燥工程では、切替バルブV4によってラインL4がラインL14に連通される。乾燥処理部Q3において、蒸気ジャケット4と、減圧手段17と、冷却塔19が駆動され、蒸発器3内の被処理物Aは、蒸気ジャケット4により加熱されるとともに、減圧手段17によって減圧される。更に、撹拌装置20(図2参照)が駆動され、被処理物Aが蒸発器3内で撹拌されてもよい。被処理物Aの加熱・減圧によって、被処理物Aの溶媒成分の蒸発が促進され、蒸発器3内の被処理物Aから蒸発した溶媒成分の蒸気は、ラインL4、ラインL14、凝縮器15及びラインL15で構成される移動経路で減圧手段17に向けて移動する。このとき、上記移動経路上にある凝縮器15では、溶媒成分の蒸気が冷却水管15aに接触して冷却される。この冷却によって当該蒸気が凝縮し、液体となった溶媒成分が凝縮器15内で貯留される。凝縮器15内に貯留された液体の溶媒成分は、凝縮器15の底部から濃縮システム1の系外に排出される。以上の動作により、蒸発器3内の被処理物Aから溶媒成分が除去されていき、被処理物Aの濃縮が進行する。
乾燥工程では、蒸発器3内の温度を例えば40〜70℃とする。インバータ制御によって蒸発器3内の温度を制御してもよい。蒸発器3内の温度を上記のような比較的低温にすることにより、被処理物Aが蒸発器3の内壁面に強く付着したり被処理物Aが高温により変性(例えば炭化)したりすることを抑制することができる。また、蒸発器3内が減圧手段17で減圧されているので、上記のような比較低定温であっても、被処理物Aの溶媒成分が十分に蒸発する。乾燥工程では、例えば、被処理物A中のほぼすべての溶媒成分を除去して被処理物Aを乾燥状態になるまで濃縮してもよく、例えば、被処理物Aが最終的に粉末状になるように濃縮してもよい。
(初期濃縮工程と乾燥工程との切替え)
濃縮処理部Q1による初期濃縮工程は、被処理物Aを蒸発器3の外部の熱交換器5内に流通させて加熱するものである。従って、被処理物Aは液体であり被処理物A中の溶質成分は完全に溶解していることが必要である。また、被処理物Aの濃縮度が高すぎると、被処理物Aの溶質成分が循環経路11内(例えば、熱交換器5の流路内)で析出し、経路を閉塞させるおそれがある。従って、濃縮処理部Q1による初期濃縮工程では、被処理物Aの濃縮度をモニタし、被処理物Aが規定の濃縮度に到達したときに停止する必要がある。そして、少なくとも、上記の規定の濃縮度は、被処理物Aの溶質成分が析出する濃縮度よりも低濃縮度である必要がある。上記の規定の濃縮度は、安全率を勘案して事前に設定される。濃縮システム1においては、被処理物Aの濃縮度が規定濃縮度に到達するまで、濃縮処理部Q1による初期濃縮工程を実行し、その後、初期濃縮工程を停止して乾燥処理部Q3による乾燥工程を実行することとしている。
このため、本実施形態の濃縮方法は、初期濃縮工程と並行して実行され被処理物Aの濃縮度を検知する濃縮度検知工程を備えており、検知された濃縮度が規定の濃縮度に到達したときに、初期濃縮工程が停止され初期濃縮工程から乾燥工程に切り替えられる。被処理物Aの濃縮度を検知する手段としては、循環経路11上に比重計を設け、被処理物Aの濃縮度の指標である比重を検知してもよい。この場合、当該比重が所定値以上になったときに循環ポンプ7を停止し、初期濃縮工程を停止する。また、例えば、蒸発器3に導入された被処理物Aの原水の量とラインL8から回収された凝縮液の量とを計量し、それらの量に基づいて被処理物Aの濃縮度を検知してもよい。
なお、初期濃縮工程の少なくとも一部の時間帯では、濃縮処理部Q1によって被処理物Aを濃縮する処理に並行して、乾燥処理部Q3によって被処理物Aを乾燥する処理が実行されるようにしてもよい。この場合、切替バルブV4の操作により、ラインL4がラインL5とラインL14との双方に連通するように設定されればよい。また、上記の時間帯は、初期濃縮工程のうち、乾燥工程に切替えられる直前の時間帯であってもよい。
(抜取り機構)
また、循環経路11内での溶質成分の析出を防止する観点からは、初期濃縮工程が停止された後に循環経路11の流路内に被処理物Aが残留していることも好ましくない。すなわち、循環経路11の各管路内に充填された被処理物Aが温度低下すると、溶質成分の溶解度が低下して管路内で析出することも考えられる。従って、循環経路11上には、当該循環経路11から被処理物Aを抜取るための抜取り機構が設けられている。具体的には、循環ポンプ7を迂回してラインL1とラインL2とを接続するバイパスが設けられており、当該バイパス上に開閉バルブV1が設けられている。また、ラインL1上に開閉バルブV2が設けられている。
濃縮処理部Q1による初期濃縮工程の実行中には、循環ポンプ7が駆動し、開閉バルブV1が閉じ、開閉バルブV2が開いている。その後、初期濃縮工程を停止する場合には、循環ポンプ7を停止し、開閉バルブV1と開閉バルブV2とを開けることで、循環経路11内の被処理物Aがバイパスを通じて抜出口3bに向けて逆流する。ここで、熱交換器5の入口の位置が、蒸発器3における被処理物Aの液面よりも高い位置にあれば、少なくとも熱交換器5内の被処理物Aは自重によって排出される。また、乾燥工程中に被処理物Aの液面が抜出口3bよりも低くなったときに、循環経路11内の被処理物Aが蒸発器3内に戻ることになる。
その後、開閉バルブV2を閉じることにより、蒸発器3内の被処理物Aは循環経路11に移動しなくなる。なお、開閉バルブV2は開けたままでもよい。または、ラインL1上の開閉バルブV2を省略してもよい。この場合、乾燥工程中に被処理物Aの液面が下がってくるに従って、循環経路11内に残留した被処理物Aが蒸発器3に逆流していくことになる。なお、上記の機能を有する抜取り機構としては、上記の構成に限られず、開閉バルブ、切替バルブ等の汎用の要素を用いて適宜構築することができる。また、上記のようなバイパスを設ける方式に代えて、循環ポンプ7に正逆転ポンプを採用し、循環ポンプ7の逆回転によって循環経路11内の被処理物Aを蒸発器3に逆流させて排出してもよい。
以上の濃縮システム1において、各々のラインL1〜L15等は、各々の気体や液体等の搬送対象物を搬送するために例えば管体で形成される搬送路である。各ラインにおいては、その目的に応じて管体の仕様(例えば、材料、肉厚、断熱特性、内空の断面積等)を決定すればよい。また、各ラインには、必要に応じて、開閉バルブや切替バルブ等のバルブ類、及びポンプ類が設けられる。このようなバルブ類やポンプ類の動作を適切に制御することにより、ラインの分岐部等において搬送対象物を何れのラインに進行させるかを制御することができる。また、各ライン及び蒸発器3、熱交換器5等の機器には、必要に応じて、センサ類(温度計、流量計、圧力計等)が設けられる。濃縮システム1の上述したような各機能を実現するためには、各部に設けられた上記のバルブ類、ポンプ類、及びセンサ類等を適宜動作させればよい。
続いて、濃縮システム1及び濃縮方法による作用効果について説明する。
濃縮システム1は、被処理物Aを所定の濃縮度まで濃縮する濃縮処理部Q1と、被処理物Aの濃縮度を更に高める乾燥処理部Q3と、を備える。濃縮処理部Q1では、蒸発器3内の被処理物Aを外部に抜出し熱交換器5で加熱媒体と熱交換させた後、再び蒸発器3内に返送するように循環させる循環経路11が設けられている。熱交換器5は、蒸発器3の外部に抜き出された被処理物Aと加熱媒体とを熱交換させる。従って、熱交換器5については、蒸発器3の外部に設けられるので、被処理物Aと加熱媒体との伝熱面積を増大させることの制約が小さく、その結果、伝熱面積を増大させて被処理物Aの加熱効率を向上させ、濃縮システム1全体の濃縮処理の効率を高めることができる。そして、濃縮処理のエネルギー効率が高められることにより、蒸気ボイラ13,14等から供給されるべき熱エネルギーを低減することができ、省エネルギー化を図ることができる。
また濃縮システム1による濃縮方法では、初期濃縮工程において被処理物Aの濃縮度が検知され、被処理物の溶質成分が析出する濃縮度よりも低濃縮度の段階まで初期濃縮工程が実行され、その後乾燥工程が実行される。この濃縮方法によれば、濃縮システム1の濃縮処理部Q1の循環経路11において被処理物Aの溶質成分が析出する可能性が抑えられ、初期濃縮工程を円滑に行うことができる。またその後、溶質成分の析出が発生し得る段階では、乾燥処理部Q3により、蒸発器3内において被処理物Aの乾燥が行われる。すなわち、被処理物Aの濃縮度が比較的低い段階では、溶質成分の析出の可能性が低いので、循環経路11を循環させながら被処理物Aを高い効率で加熱することができ、被処理物Aの濃縮度が比較的高くなった段階で、蒸発器3内で溶質成分を析出させながら被処理物Aの更なる濃縮を行うことができる。
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。例えば、実施形態では、圧縮手段9として、ルーツブロアを採用する例を説明しているが、これには限定されず、種々の圧縮手段を採用することができる。また、減圧手段17として、真空ポンプを採用する例を説明しているが、これには限定されず、種々の減圧手段を採用することができる。すなわち、圧縮手段9及び減圧手段17には、例えば、ルーツブロア、揺動式圧縮機、ターボ式圧縮機等を含め、種々の圧縮手段、減圧手段を適宜採用することができる。また、実施形態では、熱交換器5として、プレート式熱交換器を採用する例を説明しているが、これには限定されず、種々の熱交換器を採用することができる。
1…濃縮システム、3…蒸発器、4…蒸気ジャケット(加熱部)、5…熱交換器(外部熱交換器)、9…圧縮手段、11…循環経路、15…凝縮器(凝縮部)、17…減圧手段、25…伝熱管(加熱部)、A…被処理物、Q1…濃縮処理部、Q3…乾燥処理部。

Claims (5)

  1. 液体である被処理物の溶媒成分を蒸発させて前記被処理物を濃縮する濃縮システムであって、
    前記被処理物が収容される蒸発器と、
    前記蒸発器内の前記被処理物を所定の濃縮度まで濃縮可能な濃縮処理部と、
    前記濃縮処理部で濃縮された前記蒸発器内の前記被処理物の前記溶媒成分を更に蒸発させて前記被処理物の濃縮度を高める乾燥処理部と、を備え、
    前記濃縮処理部は、
    前記蒸発器内の前記溶媒成分の蒸気を外部に引き出し圧縮する圧縮手段と、
    前記蒸発器の外部に設けられ前記圧縮手段で圧縮された前記蒸気が加熱媒体として導入される外部熱交換器と、
    前記蒸発器内の前記被処理物を外部に抜出し前記外部熱交換器で前記加熱媒体と熱交換させた後、再び前記蒸発器内に返送するように循環させる循環経路と、を有し、
    前記乾燥処理部は、
    前記蒸発器を加熱する加熱部と、
    前記圧縮手段とは別に設けられ前記蒸発器内を減圧する減圧手段と、
    前記蒸発器内の前記被処理物から蒸発し前記減圧手段に向かう前記溶媒成分の蒸気の移動経路上で当該蒸気を冷却し凝縮させる凝縮部と、を有する、濃縮システム。
  2. 前記圧縮手段はルーツブロアを有し、
    前記減圧手段は真空ポンプを有する、請求項1に記載の濃縮システム。
  3. 請求項1又は2に記載の濃縮システムを用いて前記被処理物を濃縮する濃縮方法であって、
    前記被処理物の溶質成分が析出する濃縮度よりも低濃縮度まで、前記濃縮処理部によって前記蒸発器内の前記被処理物を濃縮する初期濃縮工程と、
    前記初期濃縮工程の後、前記蒸発器内の前記被処理物を前記乾燥処理部によって乾燥する乾燥工程と、を備える濃縮方法。
  4. 前記初期濃縮工程の少なくとも一部の時間帯では、
    前記濃縮処理部によって前記被処理物を濃縮する処理に並行して、前記乾燥処理部によって前記被処理物を乾燥する処理が実行される、請求項3に記載の濃縮方法。
  5. 前記初期濃縮工程と並行して実行され前記被処理物の濃縮度を検知する濃縮度検知工程を更に備え、
    前記濃縮度検知工程で検知された前記濃縮度が所定の濃縮度に到達したときに、前記初期濃縮工程が停止され前記初期濃縮工程から前記乾燥工程に切り替えられる、請求項3又は4に記載の濃縮方法。
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