火力発電所、製鉄所、化学プラント、ゴミ処理場、下水処理場などではベルトコンベアは最も効率のよい大量運搬手段であることから、各種原料、燃料、処理済み材料、廃棄物などを搬送するためにベルトコンベアが多数使用されている。一般にベルトコンベアは駆動プーリと従動プーリとの間に所定幅のゴム製ベルトをエンドレスに巻き付け、駆動プーリを回転させることによりベルトを両プーリ間で周回運動させるものである。通常搬送物はキャリアベルト(搬送側ベルト)に載せて搬送され、駆動プーリ側で払い出されリターンベルト(戻り側ベルト)となり従動プーリへ戻るが、戻り側ベルト表面に付着した搬送物(付着物)が途中で落下し、ベルト下に堆積したりリターンローラやキャリアローラを摩耗させたりする問題があった。
ベルトに搬送物が付着するとリターンベルト表面の付着物が落下し、ベルト下に堆積するが、特にスナッププーリ、テンションプーリ、リターンローラの下に選択的に落下・堆積しやすい。堆積物を放置するとリターンローラや戻りベルトの位置まで成長しこれらを摩耗させる。又、落下物の放置は作業環境の悪化や資源の損失となるため、定期的に落下物の回収作業を実施しているが、ベルトの全長に渡り落下しているので多大の労力と費用がかかっている。又、落鉱回収作業は機械化が困難であり人力に頼る必要があり3K作業の繰り返しとなっている。落下した落下物は回収して再利用する場合もあるが、土砂や小石などとの篩分けが必要となりコスト高となるため、廃棄処分する場合が多く資源の無駄遣いとなっている。このため、出来るだけベルトクリーナを用いて一定の場所で落下物を掻き落として効率的に回収する方法が採用されている。ベルトクリーナとしては、固定された掻き板をベルトに押し付けることにより付着物を掻き板で掻き取るスクレーパ式、ブラシをベルトに接触させるブラシ方式や高圧の流体を吹き付けて付着物を除去する洗浄方式があるが、構造が簡単なことや整備性の優れたスクレーパ方式が多用されている。
コンベアベルトは使用するにつれ徐々に摩耗するが、均一に摩耗するのではなく中央部が選択的に大きく摩耗する。従ってベルトが古くなるとベルト中央部と端部では5〜6mmの厚み差が生じる。又、100m以上の機長の長いベルトになると、コストや作業時間の制約の点からベルトの取り換えを全長に渡り一括してやらない場合もあり、中央部が大きく摩耗している古いベルトと摩耗していない新しいベルトが混在することもある。摩耗状態が不均一なベルトに対するベルトクリーナの押圧調整は摩耗の大きな部分即ちベルト中央部の付着物がきちんと掻き取れるようにするのであるが一枚板のベルトクリーナを中央の凹み部に当接させるのは不可能である。又、ベルトのエンドレス部は経年的に剥離してエンドレス端部が剥がれてくる。この剥がれ部はベルト表面から突出するのでベルトクリーナの撓み限界を超えるとベルトクリーナを破損したり、ベルトクリーナの押圧力が大きいと逆にエンドレスの剥がれ量を助長したりしてベルト切断の要因となる。従って、ベルトクリーナはベルト表面の付着物を掻き取るために必須のアイテムではあるがまかり間違うとベルトを破損させ生産障害を起こす場合もある。又、ベルトクリーナの付着物掻き取り性能を適正に維持するためには、ベルト稼動中に付着物の掻き取り状況を見ながらベルトクリーナとベルトとの接触圧の調整を行うのが最良であるが、安全上の問題で困難であった。このようにベルトクリーナがクリアするべき課題はたくさんあり最大公約数的に全ての課題に対応するのは極めて困難である。今まで様々な形状、機能のベルトクリーナが提案されているが未だメンテナンスフリーで掻き取り効率に優れたベルトクリーナは具現化されていない。
スクレーパ式のベルトクリーナに必要な要件は以下でありこの条件を全てクリアしないとベルトコンベアの多様な付着物に追随できない。(1)確実に、長時間にわたり付着物を掻き取ることができる。(2)ベルトに対するベルトクリーナの押し付け力調整をベルトコンベア稼働中に実施できる。(3)チップの交換が容易である。(4)掻き取り部の変形能力が大きく強靭であり、ベルト逆転にも対応可能である。(3)掻き取り部のチップの寿命が長く調整周期や取り換え周期が長い。(5)ベルトクリーナ本体への付着物の付着がないかもしくは付着物の量が極めて少ない。(6)付着物がベルトに強固に付着している場合やベルトのエンドレス部(接続部)に剥がれが生じている場合、チップがベルトの搬送方向に大きく撓むことによりこれらをやり過ごすことによりベルトクリーナの破損を回避できる。(7)ベルトクリーナの構造がシンプルでコンパクトでありヘッドプーリの下部にも取り付け可能である。(8)ベルトクリーナの取り付け取り外しが容易である。以上の特性を満足しようとして従来多種多様のベルトクリーナが提案されているがそれぞれ問題あり根本的な方法は具現化されていない。
特開2002−46851号広報において、スクレーパブレードを弾性体に取り付けてベルトに押圧する方法が提案されている。この方法の問題点は以下である。(1)1枚のスクレーパブレードの幅が広いので、ベルト中央部に向けて摩耗が大きくなるようなベルトの凹凸に柔軟に追随できないので掻き取り残しが生じる。(2)スクレーパブレードの幅が広いために大きな押圧力が必要であり、その分ブレードの剛性が高くなるため、強固な付着物やエンドレスの剥がれによる衝撃を瞬間的に回避できないので大きな衝撃をまともに受けることになりベルトクリーナやベルトを破損する危険性がある。(3)超硬合金製掻き刃チップは鋼鈑製ブレードにろう付されており、チップが摩耗した場合は掻き刃チップとブレード本体を一体で交換する必要があり取り換えのためのコストが高くなる。
特開平11−292250号広報において、コンベヤベルトの下面に近接して荒削クリーナ、メインクリーナ及び虹形仕上げクリーナを走行方向に沿って順次配置したコンベヤベルト用クリーナ装置において、荒削クリーナをウレタン樹脂で長方形の板状に形成し、又、メインクリーナを長方形のウレタン樹脂で形成し、その上縁に設けたチップの上半部を走行方向と逆方向に向けて傾斜し、さらに虹形仕上げクリーナをウレタン樹脂で形成すると共に、その弦方向に設けた軸を中心として回動可能に軸着することを特徴とするコンベヤベルト用クリーナ装置が提案されている。この方法においては以下の問題があった。(1)荒削りクリーナと虹型仕上げクリーナは一枚のウレタン樹脂であり、ベルトとの接触部が摩耗しやすい。又、一枚の板がベルトに均一に当接するのは不可能であり掻き取り残しが生じる。(2)メインクリーナは小分割のウレタンの板の先端に鋼製のチップを取り付けたものであるが、一枚当たりのウレタン板の幅が大きいのでベルトに均一に当接するのは不可能である。又、ウレタン板のつなぎ目は隙間がありこの部分は掻き取り残しが発生する。(3)ウレタン樹脂製からなるメインクリーナに超硬のチップをネジ止めしているが、チップはベルトの進行方向に対して逆向きに取り付けられており、エンドレスの剥がれ部や強固な付着に対して回避不可能である。(4)チップが摩耗した場合は新しいチップと交換する必要があった。即ち、チップの形状がネジ穴に対して点対称ではないので、チップを天地して再使用することは不可能であった。(5)一枚のクリーナの形状が大きく、高速で進行する前記エンドレスの剥がれ部や強固な付着物と衝突した場合は、慣性モーメントが大きいためウレタンが瞬時に撓んで衝撃を軽減することができない問題がある。(6)架台が丸パイプのため丸パイプ取付けボルトを緩めるとクリーナはベルトから受ける水平力で回転してしまうので、ベルト稼動中にベルトクリーナの押し付け力を調整することは不可能であった。
特開2000−7135号広報において、各チップは鋼板で形成された矩形の基板に帯板状の超硬合金がロウ付けされている。この方法においては、チップは板に取り付けられており、板の幅が広い為ベルトに均一に当接できず掻き取り残しが発生する問題がある。チップを小分割して板に取り付けたとしても、チップは幅広のチップ取り付け板にろう付で一体化しておりベルトに均一に当接することは不可能である。又、チップが摩耗した場合はチップ取り付け板全体を交換する必要があり、コスト高となっている。
特開2013−142027号広報において、チップのベルト幅方向の幅を最大30mm以下とし、チップにアンカー部を設け、ゴムからなる前記弾性体の自由端部にアンカー部を埋め込んでチップスティックを形成し、チップスティックを戻り側ベルトの幅方向に配設した架台に複数並べ、チップスティックの隣り合う側面を互いに摺動可能にして弾性体の固定端を固定したベルトクリーナが提案されている。この方法においては、(1)チップの大きさを弾性体の断面形状と同一にする必要から、チップ形状を大きくせざるを得ず高価な素材を無駄にし、コスト高の問題がある。(2)チップがベルトと接触する部分には大きな水平力が付加されるため、チップと弾性体との取付け部には大きな回転モーメントが発生しチップ外れの危険性があった。
特願2012−187374号広報において、コンベアベルトの戻り側ベルトの下部に配設して前記戻り側ベルトに付着した付着物を弾性体の先端に取り付けたチップで掻き取るベルトクリーナにおいて、前記弾性体は金属製の板バネとし、且つ該板バネと前記チップのベルト幅方向の幅は略同一とし、且つ30mm以下とし、前記板バネの厚みは5mm以下とし、前記チップと前記板バネを接合してなる複数のチップスティックを、前記ベルトの幅方向に並べ、前記チップスティックの下部を、前記ベルトの幅方向に配設した架台に固定したことを特徴とするベルトクリーナが提案されている。この方法においては、板バネが捩じり剛性に弱い為、チップに偏荷重が付加された場合捩じられてしまい掻き取り残しが生じる問題があった。
本発明の実施形態を請求項と図1〜図7に基づいて説明する。
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、チップ21を戻り側ベルト31に接触せしめて付着物を掻き取るベルトクリーナ10において、四角形棒状ゴム製の弾性体22にチップ21を取り付けてチップスティック20を形成し、該チップスティック20の隣り合う側面を互いに摺動可能に接触させて、前記戻り側ベルト31の幅方向に配設した架台40に取り付けた長溝40aに挿入支持して配列したベルトクリーナ10において、前記チップ21に貫通孔21bを設け、該貫通孔21bにネジ23を挿入し、前記チップ21を前記四角形棒状ゴム製の弾性体22の前記戻り側ベルト31の進行方向と逆向きの端末前面22aにネジ23止めし、前記チップ21の掻取り面側21aは保護板24で被覆されており、前記保護板24は戻り側ベルト31から受ける摩擦力により前記チップ21よりも優先的に摩耗せしめて、常に前記チップ21の掻き取り部21cが露出するようにしたベルトクリーナ10である。
チップ21の材質はセラミックスや超硬合金やサーメットを使用できる。セラミックスには例えばアルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア、炭化ケイ素などを使用できる。超硬合金には例えばWC−Co系合金、WC−TiC−Co系合金、WC−TaC−TaC−Co系合金などを使用できる。サーメットはTiCやTiN、NbCを主成分とし、Co、Ni、Mo等の金属との複合材料が使用できる。
弾性体22はチップ21をベルト30に押圧するための押圧力が必要であるとともにベルト30の微妙な凹凸に柔軟に追随する必要があるためにゴムを使用する。ゴムには例えば天然ゴムやアクリルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが使用できる。
弾性体22の横断面は図1から図5に示すように四角形となる。弾性体22は四角形棒状であるが正方形もしくは正方形に近い棒状が望ましい。正方形にすることによりチップ21が偏荷重を受けた際に捩じれにくいからである。弾性体22の捩じれを防止することにより隣り合うチップスティック20の摺動性が円滑になり、チップスティック20間に隙間が生じることがないのでダストが侵入してチップスティック20同士が互いに固着することがない。
チップ21と弾性体22を合体したものがチップスティック20である。図2、図4、図5において2点鎖線で囲っている部分がチップスティック20である。チップ21の厚みT1は弾性体22の厚みT2よりも薄くする。T1はT2の半分以下が望ましい。弾性体22の残存厚み(T2−T1)が薄くなると、チップ21がベルト30から受ける反力を支持できなくなるからである。チップ21が戻り側ベルト31から受ける水平方向の摩擦力により脱落しないようにするためチップ21を弾性体22に強固に取り付ける必要がある。
図4の断面拡大図で示すように、チップ21には縮径の貫通孔21bを設けてネジ23を挿入し、弾性体22の端末側面22aに天地自在にネジ止めする。チップ21を天地自在にネジ止めすることにより、チップ21の掻き取り部21cが摩耗して掻き取り性能が低下した際に掻き取り部21dと容易に振り返ることができる。即ちチップ21を天地することにより簡単にチップ21の掻き取り性能を回復できる。貫通孔21bはネジ23によってチップ21を弾性体22に固定するためのものである。貫通孔21bは段付きやテーパ状が望ましい。ネジ23がチップ21の掻取り面21aに飛び出さないようにするためである。ネジ23がチップ21の掻取り面21aから突き出ると掻き取った付着物が付着したり摩耗したりしてネジ23が脱落する危険性がある。ネジ23の材質は炭素鋼、SUS、チタンなどの金属を使用できる。更に、ネジ23の摩耗を防止するためにはセラミックス、超硬、サーメットなどが使用できる。弾性体22は四角形棒状であり、厚みを厚くできるのでネジ23止めが可能になった。チップ21はネジ23止めしてさらに接着剤で接合することにより接合強度がアップすると同時にネジ部に水分の浸入を防止できる。弾性体22にインサート(図示せず)を取り付ければネジ23を繰り返し脱着してもネジ部損傷を防止できる。端末前面(チップ21の取付け面)22aは図4に示すように弾性体の前面22bと段違いにしてもよい。端末前面22aと弾性体の前面22bを段違いにすることによりチップ21が戻り側ベルト31から受ける力や振動で回転するのを防止できる。又、チップ21の掻取り面21aは弾性体の前面22bより突き出してもよい。掻取り面21aが弾性体22の前面22bより突き出ることにより、弾性体22に掻き取った後のダストが付着しにくいからである。
チップ21と弾性体22は戻り側ベルト31の幅方向に対して、お互いの幅Wが飛び出さないようにして平滑に接合しなければならない。隣り合うチップスティック20同士に隙間が発生するとダストを噛みこんで正常な摺動ができなくなりベルト30の凹凸に対してチップ21の追随性が低下するからである。
チップ21は常にベルト30に接触し付着物を掻き取るので激しく摩耗するため、チップ21が摩耗して掻き取り性能が低下したベルトクリーナ10は、従来クリーナ10全体を交換せざるを得なかった。チップ21は弾性体22に天地自在にネジ止めしている。チップ21の掻き取り部21cが摩耗した場合は、ネジ23を取り外すかもしくは緩めることにより、チップ21を天地して新しい掻き取り部21dで掻き取るようにする。即ち、1枚のチップ21を2回使用することができるので取り換え費用、取り換え時間の短縮が可能となる。チップ21を天地して再利用できるようにするためには、チップ21は正方形もしくは長方形にして、掻き取り部21cと掻き取り部21dをネジ23に対して点対象の形状にしておけばよい。
弾性体22の横断面は正方形もしくは長方形である。正方形の場合の長辺と短辺の比は1:1であるが、長方形の場合は1:(1〜2)の範囲が適正である。辺の比が2倍以上になると弾性体22が棒状になっているため捩じれやすくなり、隣り合う側面20aの摺動性が低下する。
チップスティック20は付着物を確実に掻き取れるように、戻り側ベルト31を数ミリから十数ミリ程度押圧するように高さ調整する。そのため、図2に示すように、チップスティック20は戻り側ベルト31の水平力により戻り側ベルト31の進行方向に撓んだ状態になり、チップ21が傾くことにより、チップ21の掻き取り部21cが戻り側ベルト31表面に接するので付着物を強力に削り取る(掻き取る)ことができる。大きな付着物やベルト30のエンドレスの剥がれや強固に付着した付着物に対しては、チップスティック20が大きく撓むことにより付着物を回避できるようにしている。チップスティック20の撓み量はチップスティック20の弾性体22の弾性力やチップスティック20の幅Wやチップスティック20の長さLによって決定できる。
ベルト30の表面状態はベルト30の幅方向に対して均一ではなく一般的には中央部の摩耗が最大になる。即ち、ベルト30は幅方向で摩耗量に差があるためベルト30の厚みが均一ではないうえに、線状の掻き疵や材料の落下疵あるいは高温材料による焼き疵などにより部分的なくぼみが生じている。又、ベルト30の中央近辺は搬送物の積載圧力が大きくなるので摩耗が大きくなり、付着物が付着しやすくしかも強固に付着する傾向がある。又、ベルト30は原材料を搬送する際にトラフ角を形成するので、戻り側ベルト31は中央部が凸上に変形する。又、強固な付着物やエンドレス部(ベルト繋ぎ部)のめくれなどの突起が生じている。従って、図1に示すチップ21の幅Wが大きすぎるとチップが戻り側ベルト31表面に適正に当接できなくなり、チップ21の全体の押圧力が不均一になり掻き取り斑が生じる。従来のベルトクリーナ10は戻り側ベルト31の幅方向にチップ21を分割しているタイプのものもあるが、チップ21や弾性体22の剛性を高めるために100〜500mm程度の幅の板にチップ21を取り付けた掻き取り板で構成されている。この様な構造のクリーナ10においては、チップ21の幅Wが広すぎて、チップ21の全面がベルト30を均一に押圧することは不可能であり必然的に掻き取り斑が生じていた。又、掻き取り斑を解消するためにクリーナ10を戻り側ベルト31に無理に接触させようとすると押圧力が大きくなるので、ベルト30を摩耗させたり、エンドレス部の剥がれを助長したりしていた。この問題を解決するにはチップ21の幅Wをできるだけ小さくしてチップ21が均一に戻り側ベルト31を押圧するようすることが重要である。
四角形棒状である弾性体22の撓み量は、片持ち梁モデルにおいて弾性体22の長さLの3乗に比例し、弾性体22の幅W(四角形の1辺の長さに相当)の4乗に反比例することから、L=5W〜10Wがよい。Lが5Wより小さいと弾性体22の撓みが小さくなり強固な付着物を回避できずベルトを損傷する。Lが10Wより大きいと撓み量が大きくなり掻き取り力が低下する。
本発明では、弾性体22を四角形棒状即ち四角形棒状にすることで弾性体22の断面寸法(チップ21の幅W)が小さくなっても弾性体22の剛性を確保することができる。即ち、弾性体形状を四角形棒状とすることでチップ21の幅Wを小さくしてかつ戻り側ベルト31の摩耗状態に応じて柔軟に当接可能にすることを具現化した。そのためのチップ21の幅Wは特開2013−142027号広報に示すように、30mm以下でなければならない。30mmより大きいとベルト幅方向の摩耗や付着物の状況変化に追随できず掻き取り残しが生じる。ベルト30のくぼみや線状疵の幅は通常30mm以下であることから、チップの幅Wは30mm以下でなければならない。チップ21の幅Wが30mm以下であれば戻り側ベルト31の変化に柔軟に追随可能である。又、前述したように、弾性体22の撓みは幅Wの4乗に反比例するので、弾性体が30mm以上になると急速に撓み量が小さくなってしまう。このことからも弾性体22やチップ21もしくはチップスティック20の幅は30mm以下でなければならない。チップスティック20の幅を小さくすることでチップスティック20の1本当たりの押圧力も小さく設定できるので戻り側ベルト31の摩耗やエンドレスの剥離を助長することもない。又、高速で衝突する強固な付着物やエンドレス部のめくれなどの障害物は衝突の瞬間にチップ21に大きな衝撃を与えるので、チップ21を破損したり、逆にエンドレス部のめくれや疵を大きくしたりする危険性がある。この対策として、チップスティック20の慣性モーメントをできるだけ小さくして、障害物が衝突した瞬間に大きく撓んで衝撃力を回避することが極めて重要である。従来のベルトクリーナ10においては、本発明のチップスティック20に相当する部分の慣性モーメントを小さくするという概念がなかった。このことからもチップの幅Wは30mm以下でなければならず望ましくは10〜20mmの範囲にするのがよい。
チップスティック20は図1や図2に示すように架台40に設けた長溝40aに挿入されている。長溝40aは押し側板41と受け側板42及び底板43で構成されている。押し側板41にはナット44が取り付けられ、押し付けボルト45が転動自在に取り付けてあり、押え板46を押し付けることによりチップスティック20を受け側板42に押し付けて固定している。
図1に示すように、架台40の両側にはフランジ47が取り付けられ、フランジ47に角型の支持軸48が取り付けられている。戻り側ベルト31の幅方向の両端には支持金具50が配設されており、前記角型支持軸48は前記支持金具50に高さ調節可能に取り付けられた溝型受け具60に挿入されており、該溝型受け具60には前記架台40の高さを調整するためのアジャストボルト61と前記架台40を固定するための側面固定ボルト63が取り付けられている。
チップスティック20は戻り側ベルト31との摩擦により戻り側ベルト31の進行方向に撓みながら付着物を掻き取る。付着力が強くて掻き取れない付着物やエンドレスの剥離部分は凸量が大きくなりチップスティック20に大きな反力を与えるので、チップスティック20は大きく撓んで過負荷をやり過ごすことが必要である。このような場合、チップスティック20は隣り合うチップスティック20に関係なく単独に撓めるほうが、大きく撓めると同時に瞬時に撓めるので大きな付着物やベルト30の剥がれを柔軟にやり過ごすことができる。このような障害物をまともに受けると大きな過負荷を受けるのでベルトクリーナ10やベルト30そのものの損傷に繋がる。又、それぞれのチップスティック20は隣り合う他のチップスティック20の動きに左右されることなく独立して正常な掻き取りを継続することができる。このため、隣り合うチップスティック20は互いに摺動する必要がある。チップスティック20の隣り合う側面(摺動面)20aは摺動面20aとなっている。隣り合う側面20a即ち摺動面20aの隙間は略ゼロがよくお互いが円滑に摺動できる程度に軽く接触している程度が望ましい。隣り合う側面(摺動面)20aの隙間が大きくなるとこの隙間にダストが侵入し固着するのでチップスティック20の撓み運動ができなくなる。又、隣り合うチップスティック20同士でベルト幅方向への倒れを支えあう役割も有していることから、隙間が大きいと支えとしての機能を果たせなくなる。このため、チップスティック20の隣り合う側面(摺動面)20aの隙間は略ゼロとして、チップスティック20同士が軽く接触してしかも円滑に摺動できるようにする。このような調整は実際に組み立てる際に摺動状況を確認しながら調整するのがよい。隙間をゼロとすることで、たとえダストが入り込んでもチップスティック20の微振動や撓みによる摺動運動によりダストは隙間から清掃され排出される。又、摺動運動による清掃効果で摺動面20aは常に清浄に保持できる。隣り合う側面(摺動面)20aはお互いの摩擦力を低減するためにフッ素樹脂コーティングしてもよい。又、チップスティック20全体にフッ素樹脂コーティングすることにより掻き取った後のダストがチップスティック20に付着するのを低減できる。ベルト30に付着物が強固にへばりつく場合は、ベルトクリーナ10を複数配設してもよい。
図4に示すように、チップ21の掻取り面21aを保護板24で被覆する。チップ21の掻取り面21aには強固な付着物やエンドレスのめくれなどの突起物あるいはベルト接続用金具などが高速で衝突する。セラミックスや超硬からなるチップ21は、硬度は高いが靱性が低い欠点があるのでこれらの衝撃力を繰り返し受けることにより破損する危険性がある。保護板24はこれらの衝撃力をチップ21より先に受け止めるのでチップ21の受ける衝撃力を緩和できることから割損の危険性を回避できる。又、チップ21をネジ23で弾性体22にネジ止めする際には、貫通孔21b周辺に応力が集中するのでチップ21が割損する危険性がある。保護板24は貫通孔21bにかかる集中応力をチップ21全体に分散するワッシャ―の役割を果たすことにより割損の危険性を回避できる。保護板24はチップ21よりも若干短くしてチップ21の掻き取り部21cが露出するようにしておくのがよい。
保護板24はSUS、炭素鋼、チタン、アルミニウムなどの金属や樹脂、ゴムなどを使用できる。保護板24の厚みはチップと略同等あるいは薄い方がよい。保護板24はチップ21よりも先に摩耗する必要があり、チップ21の掻き取り部21cが常に露出している状態を形成する必要がある。即ち、保護板24の特性としては、チップ21より硬度が低く靱性が高いものが望ましい。保護板24を優先的に摩耗させることにより、常に掻き取り部21cが露出した状態になることから掻き取り性能が維持されるからである。
図3(a1)、(a2)はチップ21と弾性体22の横断面図である。図3(b1)、(b2)はチップ21と弾性体22の縦断面図である。
図3(a1)、(b1)はチップ21を端末前面22aに1枚取り付けた場合の図である。チップ21の掻き取り部21cの掻き取り性能が低下したら、チップ21を天地して掻き取り部21dを使用することにより掻き取り性能を復活できる。掻き取り部21cと掻き取り部21dを天地して使用可能にするためにはチップ21をネジ23の中心点に対して点対称に製作しておけばよい。
図3(a2)、(b2)はチップ21を弾性体22の端末前面22aと端末後面22cに2枚取り付けた場合の図である。チップ21が弾性体22の端末前面22aと端末後面22cについているので正逆運転も可能である。端末前面22aに取り付けたチップ21の掻き取り部21cの掻き取り性能が低下したら、チップスティック20を裏返すことにより端末後面22cに取り付けたチップ21の掻き取り部21eを使用できるので迅速に掻き取り性能を復帰できる。又、チップ21を天地することにより掻き取り部21dや21fも使用可能である。
1本の弾性体22に複数のチップ21を取り付けられるので、チップ21が摩耗した場合、弾性体22の端末前面22aと端末後面22cを裏返して入れ替えることにより簡単にチップ21の交換ができる。又、弾性体22の端末前面22aと端末後面22cにチップ21が付いているので正逆運転のベルト30にも適用できる。チップ21の1つの掻き取り部21cが摩耗して掻き取り性能が低下した場合でもチップ21を天地したり、チップスティック20の端末前面22aと端末後面22cを入れ替えたりすることにより容易に新しい掻き取り部21d、21e、21fと入れ替えることができるのですぐに掻き取り性能を回復できる。チップ21交換時のベルト停止時間を短縮できるので生産性を大幅に向上できる。
図5に示すように、弾性体の端末上面22eにチップ基材70をネジ71で固定して、弾性体22の端末前面22aを延長した側面70bにチップ21を取り付けたものである。即ち、弾性体22の端末前面22aの強度を補完するために硬度の高いチップ基材70を取り付けて、チップ基材70の側面70bを弾性体22の端末前面22aの代替えとしているのである。チップ基材70の材質は炭素鋼、SUS、チタン、アルミニウムなどの金属や弾性体22を構成しているゴムよりも硬度の高いゴムや樹脂を使用できる。貫通孔70aは弾性体22の端末22eに近い側の径が小さくなっているのでネジ71でチップ基材70を弾性体22に固定できる。チップ21の掻き取り部21cが摩耗して掻き取り性能が低下した場合は、ネジ23を外して掻き取り部21cと掻き取り部21dを天地して入れ替えればよい。チップ21は掻き取り状況を見ながら逐次取り換える必要があり、ネジ23の使用回数が多くなるとゴム製の弾性体22に設けたネジ穴22d(図4に記載)は次第に損傷しネジ23の締め付け力が低下してしまう。これを防止するために、金属や硬いゴムや樹脂などのチップ基材70を弾性体22の端末22eに取り付けることにより強度の高いネジ穴を使用できるので複数回のネジ23の取付け取り外しに際して損傷することはない。又、チップ基材70をアルミニウムなどの軟らかい金属を使用することにより、チップ基材70がチップ21よりも先に摩耗するので常に硬いチップ21の掻き取り部21cが露出することになり掻き取り性能を長期に渡り持続できる。
前記弾性体22の前面22bもしくは後面22fに板バネ80を張り付けてもよい。
板バネ80は金属製や樹脂、ゴム製の板バネを使用する。金属製板バネ80の材料は構造用普通鋼、構造用合金鋼、高炭素鋼、ピアノ線用鋼、SUS、チタンなどが使用できる。図6に示すように板バネ80はネジ81で固定してもよいし接着剤で固定してもよい。板バネ80はベルト30の進行方向即ち、前面22bもしくは後面22fに取り付けるのがよい。
ゴム製の弾性体22は長期間使用するとクリープし復元力が低下するのでベルト30の変形に対する追随性が悪くなる。これを補助するために板バネ80を張り付ける。板バネ80は弾性限度内で使用する限り長期間変形させてもクリープは小さいので負荷を取り除けば元の状態にきちんと復元できる。弾性体22を板バネ80とゴムのハイブリッドにすることにより長期間にわたって弾性体22の復元力を維持できるのでベルトクリーナ10としての掻き取り性能を長期間に渡り維持できる。又、ゴム製の弾性体22に直接チップ21を取り付けた場合よりも、剛性の高い板バネ80を介してチップ21を取り付けた方がチップ21を強固に取り付けることができる。
前記戻り側ベルト31の幅方向の両端には支持金具50が配設されており、前記架台40の両端は断面が四角形の支持軸48に接合され、該支持軸48は前記支持金具50に高さ調節可能に取り付けられた溝型受け具60に載置されており、該溝型受け具60には前記架台40の高さを調整するためのアジャストボルト61と前記支持軸48を固定するための側面固定ボルト63が取り付けられている。
図1、図7に示すように、架台40の両端にはフランジ47を介して四角の支持軸48が取り付けられている。支持軸48はベルト30の両側において、ベルトコンベアのフレーム(図示せず)に固定した支持金具50及び溝型受け具60で支持されている。支持金具50は通常ベルトコンベアフレームに取り付けられている。溝型受け具60は内側板60a、外側板60b、底板60cを溶接して構成されており溝60dを形成している。支持金具50には溝型受け具60の高さ位置調整用の切欠き溝50aが設けられている。又、溝型受け具60の内側板61aには貫通穴60eが空けられている。溝型受け具60は貫通穴60eにボルト51を通し、切欠き溝50aを貫通せしめて支持金具50にナット52で固定されている。溝型受け具60の底板60cにはナット62と高さ調整用のアジャストボルト61が取り付けられ、アジャストボルト61を締め込むことにより支持軸48の高さ調節を可能にしている。溝型受け具60の外側板60bには側面固定ボルト63とナット64が取り付けられ、側面固定ボルト63を締めつけることにより支持軸48を溝型受け具60に押し付け固定してガタ防止をすることができる。支持軸48の高さ方向の位置決めをする場合は、まずボルト51で溝型受け具60の位置決めをした後、ナット52を締めつけて溝型受け具60を支持金具50に固定する。その後、アジャストボルト61で架台40の高さの微調整をした後、側面固定ボルト63で支持軸48を内側板60aに押し付け溝型受け具60に固定する。
溝型受け具60に角パイプの支持軸48を載置しアジャストボルト61、側面固定ボルト63で四角の支持軸48を固定する構造であることから、側面固定ボルト63を緩めても支持軸48が戻りベルト31の水平力で回転することはないので、ベルト稼動中でもアジャストボルト61で高さ調整が可能である。又、長溝40aを構成している架台40の両端をフランジ47で四角形の支持軸48に連結固定しているのでチップ21の先端からから架台40の下端までの高さが低くなり狭い場所に取り付け可能である。