以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの平面図及び断面図である。
図示するように、インクジェット式記録ヘッドIを構成する流路形成基板10は、本実施形態では、シリコン基板(シリコン単結晶基板)からなり、その一方面には酸化シリコンを主成分とする弾性膜50が形成されている。この流路形成基板10には、一方面とは反対側の面となる他方面側から異方性エッチングすることにより、圧力発生室12が形成されている。そして、複数の隔壁によって区画された圧力発生室12が同じ色のインクを吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向と称し、第1の方向に直交する方向を第2の方向と称する。
また、各列の圧力発生室12の第2の方向外側には、後述する保護基板30に設けられるマニホールド部31と連通し、各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成する連通部13が形成されている。また、連通部13は、インク供給路14及び連通路15を介して各圧力発生室12の第2方向の一端部とそれぞれ連通されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15で構成される液体流路が形成されている。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤25を介して接合されている。
ノズルプレート20は、シリコン基板、本実施形態では、シリコン単結晶基板で形成されている。また、ノズル開口21は、インク滴が吐出される液体噴射面20a側に設けられた第1ノズル開口21aと、流路形成基板10との接合面20b側に設けられて第1ノズル開口21aよりも大きな内径を有する第2ノズル開口21bと、を具備する。
また、本実施形態では、ノズルプレート20の接合面20b側の表面及びノズル開口21の内面に亘って酸化膜22が設けられている。本実施形態では、酸化膜22として、酸化シリコン(SiO2)を設けた。
さらに、ノズルプレート20の液体噴射面20a側の表面には、撥液膜(撥インク膜)23が設けられている。撥液膜23としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系高分子を含む金属膜やシロキサン等をプラズマ重合したプラズマ重合膜などを用いることができる。
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、弾性膜50上に、例えば、酸化ジルコニウムを主成分とする絶縁体膜55が形成されている。また、絶縁体膜55上には、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80と、が積層された圧電アクチュエーター300(本実施形態の圧力発生手段)が形成されている。ここで、圧電アクチュエーター300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電アクチュエーター300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、第1電極60を圧電アクチュエーター300の共通電極とし、第2電極80を圧電アクチュエーター300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電アクチュエーター300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
圧電アクチュエーター300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電アクチュエーター300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して複数の圧力発生室12の第1の方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールド100としてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にマニホールド100と各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電アクチュエーター300に対向する領域には、圧電アクチュエーター300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電アクチュエーター保持部32が設けられている。圧電アクチュエーター保持部32は、圧電アクチュエーター300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向(流路形成基板10と保護基板30との積層方向)に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電アクチュエーター300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電アクチュエーター300を駆動するための駆動回路110が固定されている。この駆動回路110としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路110とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線111を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しないインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路110からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法、特にノズルプレートの製造方法について詳細に説明する。なお、図3〜図7は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
まず、図3(a)に示すように、ノズルプレート20となるシリコン基板120を熱酸化することによってシリコン基板120の表面に酸化シリコン(SiO2)からなるマスク膜121を形成する。
次に、図3(b)に示すように、シリコン基板120の後に接合面20bとなる第1面120bのマスク膜121をエッチングすることによってパターニングする。ここで、マスク膜121のパターニングは、ノズル開口21の形状に合わせて行われる。本実施形態では、ノズル開口21が第1ノズル開口21aと第2ノズル開口21b(図2参照)とを有するため、第1ノズル開口21aと第2ノズル開口21bとに合わせた形状で開口部122を形成する。具体的には、開口部122は、ノズル開口21の第1ノズル開口21aとなる部分を貫通させて、第2ノズル開口21bとなる部分をハーフエッチングすることにより形成する。このような開口面積の異なるパターニングは、開口形状の異なるレジストを2回用いることで形成することができる。また、マスク膜121のエッチングは、フッ酸水溶液等を用いたウェットエッチングにより行うことができる。
また、マスク膜121のパターニングは、シリコン基板120を分割してノズルプレート20とするための溝部に合わせて行われる。本実施形態の溝部は、ノズルプレート20となる外周に沿って形成されるため、この溝部が形成される領域のマスク膜121を貫通させた開口部123を形成する。
次に、図3(c)に示すように、シリコン基板120をマスク膜121を介して第1面120b側から異方性エッチング(ドライエッチング)することで、第1ノズル開口21aと溝部124の一部とを形成する。
次に、図3(d)に示すように、マスク膜121の第2ノズル開口21bとなる部分のみを除去する。本実施形態では、フッ酸水溶液等を用いたウェットエッチング(ハーフエッチング)によって除去した。これにより、開口部122は、第2ノズル開口21bと同じ開口面積で開口する。また、溝部124を形成するための開口部123は、ハーフエッチングしても変わらず同じ開口面積となる。
次に、図4(a)に示すように、シリコン基板120をマスク膜121を介して異方性エッチング(ドライエッチング)することで、第1ノズル開口21aと第2ノズル開口21bとで構成されるノズル開口21と、溝部124とを形成する。なお、溝部124は、第1ノズル開口21aと同じ深さで形成される。この第1ノズル開口21aと溝部124とは、シリコン基板120を厚さ方向に貫通することなく形成される。したがって、溝部124を形成しただけでは、シリコン基板120はノズルプレート20毎に分割されない。
次に、図4(b)に示すように、シリコン基板120のマスク膜121を除去した後、シリコン基板120の表面に亘って酸化シリコンからなる酸化膜22を形成する。本実施形態では、酸化膜22は、シリコン基板120のノズル開口21及び溝部124が開口する第1面120b及び反対面の両面と、ノズル開口21及び溝部124の内面とに亘って形成される。なお、マスク膜121は、フッ酸水溶液を用いて除去することができる。また、酸化膜22は、シリコン基板120を加熱することで、その表面に亘って熱酸化した酸化シリコンからなる酸化膜22を形成することができる。もちろん、酸化膜22は、スパッタリング法やMOD法等によって形成してもよい。
次に、図4(c)に示すように、シリコン基板120の第1面120b(接合面20b)に第1支持基板130を接合する。第1支持基板130としては、ガラスやシリコン基板を用いることができる。また、第1支持基板130は、接着層131を介してシリコン基板120に接合される。第1支持基板130をシリコン基板120に接合する接着層131としては、詳しくは後述するが、例えば、紫外線又は熱などの刺激で接着力が低下する自己剥離層を有する両面テープや、塗布型の接着剤などを用いることができる。なお、第1支持基板130をシリコン基板120に接合する接着層131は、詳しくは後述する第2支持基板150の接着層151とは異なる剥離条件を有するものである。
次に、図5(a)に示すように、シリコン基板120を第1支持基板130に接合された第1面120bとは反対側の第2面120a側から所定の厚さに薄くして、第1ノズル開口21aの先端及び溝部の先端を開口させる。これにより、シリコン基板120を複数のノズルプレート20単位に切り分けることができる(分割工程)。
本実施形態では、シリコン基板120の第1支持基板130に接合された第1面120bとは反対側の第2面120a側を研削することで薄くした。また、シリコン基板120を研削した後、研削面をポリッシャー又はCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)装置によって研磨する。このようにシリコン基板120を研磨した面(第2面120a側)がインク滴が吐出される液体噴射面20aとなる。
次に、図5(b)に示すように、シリコン基板120の研磨した第2面120aに撥液膜(撥インク膜)23を形成する。撥液膜23としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系高分子を含む金属膜やシロキサン等をプラズマ重合したプラズマ重合膜などを用いることができる。なお、撥液膜23は、本実施形態では、例えば、ノズル開口21の第2面120a側の内面にも入り込んで形成される。
次に、図5(c)に示すように、シリコン基板120の撥液膜23が形成された第2面120a側に保護テープ140を貼付する。保護テープ140は、本実施形態では、溝部124によって分割されたシリコン基板の第2面120aの面積よりも小さい面積を有し、シリコン基板120の複数のノズル開口21が形成された領域を覆い、シリコン基板120の周縁部(溝部124側)を露出するようにシリコン基板120の第2面120aに貼付する。
なお、保護テープ140は、その剥離条件が少なくとも第1支持基板130の剥離条件とは異なるものを用いる必要がある。ここで、保護テープ140の剥離条件が第1支持基板130の剥離条件とは異なるとは、第1支持基板130をシリコン基板120から剥離する際に、保護テープ140が剥離しない条件であることを言う。すなわち、後の工程で第1支持基板130をシリコン基板120から剥離する際に保護テープ140がシリコン基板120から剥離してしまうと、後述する第2支持基板がシリコン基板120から剥離してしまうことになり、シリコン基板120の分割されたノズルプレート20毎に第2面を処理する第2処理工程を行わなくてはならないからである。後の工程で、第1支持基板130をシリコン基板120から剥離する際に保護テープ140がシリコン基板120から剥離しないようにすることで、シリコン基板120に保護テープ140が貼付された状態、すなわち、後述する第2支持基板150で分割されたノズルプレート20単位のシリコン基板120を保持した状態で複数のシリコン基板120の第2面の処理を同時に行うことができる。
また、保護テープ140の剥離条件が、詳しくは後述する第2支持基板150の剥離条件とも異なることが好ましい。これによれば、第2支持基板150を保護テープ140から剥離する際に、同時に保護テープ140がシリコン基板120から剥離するのを抑制することができる。
このような保護テープ140としては、本実施形態では、感圧式で接着するテープ、例えば、耐熱性表面保護接着テープ(製品名:E-MASK TP300、日東電工株式会社製)を用いることができる。
次に、図6(a)に示すように、シリコン基板120の第2面120aの保護テープ140で保護されていない領域の撥液膜23を除去する。本実施形態では、シリコン基板120の第2面120aをアルゴンガスを用いたプラズマ処理を行うことで、第2面120aの保護テープ140が貼付された領域以外の領域の撥液膜23を除去している。このようにシリコン基板120の撥液膜23が除去された部分には、特に図示していないが、ノズルプレート20を覆うと共にノズル開口21が露出する露出開口が設けられたカバーヘッド等の他部材が接合される。すなわち、ノズルプレート20の液体噴射面20aに他部材を接合する際に、接合領域に撥液膜23が存在すると接合不良が発生するため、接合領域となる領域の撥液膜23を除去する際にノズル開口21周囲の撥液膜23を保護する目的で保護テープ140を設けている。勿論、ノズルプレート20の液体噴射面20aの全面に亘って撥液膜23が設けられてもよい場合には、保護テープ140を接合しなくてもよく、後述する第2支持基板150は、シリコン基板120に直接接合されてもよい。
このように、シリコン基板120の第2面120aに撥液膜23を形成する工程、保護テープ140を接合する工程、保護テープ140によって覆われていない領域の撥液膜23を除去する工程が、本実施形態のシリコン基板120の第2面120aの処理を行う第1処理工程となる。
次に、図6(b)に示すように、保護テープ140のシリコン基板120とは反対側に反応性の自己剥離層を有する第2支持基板150を接合する(接合工程)。第2支持基板150としては、ガラスやシリコン基板等を用いることができる。また、第2支持基板150は、接着層151を介してシリコン基板120(保護テープ140)に接合される。この第2支持基板150をシリコン基板120(保護テープ140)に接合する接着層151は、第1支持基板130をシリコン基板120に接合する接着層131とは異なる剥離条件を有するものである。ちなみに、第2支持基板150(接着層151)の剥離条件が第1支持基板130(接着層131)の剥離条件とは異なるとは、第1支持基板130をシリコン基板120から接着層131の接着力に反して剥離する際に、第2支持基板150がシリコン基板120(保護テープ140)から剥離しない条件であることを言う。すなわち、後の工程で第1支持基板130をシリコン基板120から剥離する際に第2支持基板150がシリコン基板120(保護テープ140)から剥離してしまうと、第1支持基板130が接合された第1面120bの処理を行うことができないからである。
また、第2支持基板150をシリコン基板120(保護テープ140)に接合する接着層151は、反応性(外部からの刺激によって反応する)の自己剥離層を有するものであり、例えば、紫外線又は熱などの刺激で接着力が低下する自己剥離層を有する両面テープなどを用いることができる。
ここで、例えば、第1支持基板130をシリコン基板120に接合する接着層131として、熱などの刺激で接着力が低下する自己剥離層を有する両面テープを用いた場合、第2支持基板150をシリコン基板120(保護テープ140)に接合する接着層151として、剥離条件の異なる両面テープ、例えば、紫外線の刺激で接着力が低下する自己剥離層を有する両面テープを用いるようにすればよい。もちろん、接着層131に紫外線によって剥離する両面テープを用いて、接着層151に熱により剥離する両面テープを用いるようにしてもよい。
また、例えば、接着層131と接着層151との両方に紫外線の刺激で接着力が低下する両面テープを用いる場合、接着層131と接着層151とで接着力が低下する波長が異なる両面テープを用いるようにすればよい。
もちろん、例えば、接着層131と接着層151との両方に熱の刺激で接着力が低下する両面テープを用いる場合、接着層131と接着層151とで反応温度が異なる両面テープを用いるようにすればよい。ただし、先に剥離する第1支持基板130を接合する接着層131の反応温度は、後で剥離する第2支持基板150を接合する接着層151の反応温度よりも低い温度のものを用いるのが好適である。
なお、熱によって剥離することが可能なテープとしては、例えば、熱剥離シート「リバアルファ」(製品名、日東電工株式会社製)が挙げられる。なお、リバアルファには、90℃、120℃、150℃、170℃で反応するものが存在する。
また、紫外線によって剥離することが可能なテープとしては、UV発泡タイプ「セルファ」(製品名、積水化学工業株式会社製)が挙げられる。
さらに、第1支持基板130(接着層131)及び第2支持基板150(接着層151)の剥離条件としては、熱や紫外線に限定されず、例えば、紫外線によって硬化した後、温水(80〜90℃)に浸漬することで、フィルム化して剥離するUV反応型仮固定用接着剤(製品名:TEMPLOC、株式会社電気化学工業製)を用いることができる。
次に、図6(c)に示すように、第1支持基板130をシリコン基板120から剥離する。本実施形態では、上述のように、第1支持基板130をシリコン基板120に接合する接着層131の剥離条件は、第2支持基板150をシリコン基板120(保護テープ140)に接合する接着層151の剥離条件と異なるため、第1支持基板130を剥離する剥離条件で処理を行うことで、第2支持基板150を剥離することなく、第1支持基板130のみをシリコン基板120から剥離することができる。
本実施形態では、第1支持基板130を自己剥離層を有する接着層131によってシリコン基板120に接着しているため、自己剥離層に外部から刺激を与えて反応させることで、接着層131の接着力を低下させて第1支持基板130を感応式に比べて弱い力で剥離することができる。このため、第1支持基板130を剥離する際にシリコン基板120に無理な応力が印加されてシリコン基板120の破壊やシリコン基板120に形成された膜(例えば酸化膜22や撥液膜23等)が剥離するのを抑制することができる。
また、このように第1支持基板130をシリコン基板120から剥離しても、各ノズルプレート20単位で分割したシリコン基板120は第2支持基板150によって共通して保持されているため、シリコン基板120がばらばらになる(個片化する)ことがない。
次に、図7(a)に示すように、シリコン基板120の第2面120a側からノズル開口21内に形成された撥液膜23を除去する。本実施形態では、シリコン基板120の第1面120b側からアルゴンガスを用いたプラズマ処理を行うことで、ノズル開口21内の撥液膜23を除去した。
また、ノズル開口21内の撥液膜23を除去した後は、シリコン基板120の第1面120bをプライマー処理する。なお、シリコン基板120のプライマー処理は、少なくともノズルプレート20の流路形成基板10に接合される領域に施せばよく、本実施形態では、第2支持基板150が接合されたシリコン基板120をプライマー液に浸漬することで、シリコン基板120の第1面120bとノズル開口21の内面とに亘ってプライマー処理を行った。
ちなみに、本実施形態では、ノズル開口21内の撥液膜23を除去する工程及びシリコン基板120の第1面120bのプライマー処理を行う工程を第2処理工程としている。もちろん、第2処理工程は、撥液膜23を除去する工程及びプライマー処理を行う工程の何れか一方だけであってもよく、また、他の処理工程であってもよい。
次に、図7(b)に示すように、シリコン基板120から第2支持基板150を剥離することで、ノズルプレート20単位にチップ化されたシリコン基板120とする(剥離工程)。具体的には、シリコン基板120(ノズルプレート20)のプライマー処理が施された第1面120bを真空ピンセット200によって保持して第2支持基板150からピックアップする。このとき、第2支持基板150とシリコン基板120とは、反応性の自己剥離層を有する接着層151を介して接着されているため、ノズルプレート20単位にチップ化されたシリコン基板120のピックアップは、接着層151の反応性の自己剥離層を熱や紫外線などによって反応させて接着力を低下させてから行う。
このように、シリコン基板120と第2支持基板150とを接着する反応性の自己剥離層を反応させて接着力を低下させることで、シリコン基板120を真空ピンセット200によってピックアップして第2支持基板150から剥離することができる。
すなわち、第2支持基板150を感応性の接着層でシリコン基板120に接着した場合、第2支持基板150から感応性の接着層の接着力に抗してシリコン基板120を引き剥がす必要がある。このようにシリコン基板120を引き剥がす感応性の接着層の接着力に抗する力としては比較的大きな力が必要になることから、真空ピンセット200によってシリコン基板120を保持しただけではシリコン基板120を第2支持基板150から引き剥がすことはできない。特に、1つの第2支持基板150が複数のノズルプレート20毎にチップ化(個片化)されたシリコン基板120に共通して接合されているため、第2支持基板150に感応性の接着層で接着されたシリコン基板120の個片化したノズルプレート20を引き剥がすのは困難である。
したがって、シリコン基板120に感応性の接着層151を用いて第2支持基板150を接着した場合、シリコン基板120の第1面120bの全面を吸着保持するなどの保持領域を広げると共に保持力を増大させる必要があり、このように保持領域を広げると共に保持力を増大させることで、ノズルプレート20に異物が付着することが多くなると共に、ノズルプレート20の第1面120bに傷が生じたり、酸化膜22やプライマー処理した面に傷が付き、ノズルプレート20の破壊や耐久性の低下などが生じる。本実施形態では、第2支持基板150とシリコン基板120とを反応性の自己剥離層を有する接着層151で接合することで、反応性の接着層151を外部の刺激によって反応させて接着力を低下させて第2支持基板150からシリコン基板120をピックアップする際に、保持面が狭く且つ保持力が比較的低い真空ピンセット200を用いることができる。したがって、ノズルプレート20に異物が付着するのを抑制すると共に、ノズルプレート20の酸化膜22やプライマー処理した面に傷が付くのを抑制して、ノズルプレート20の破壊や耐久性の低下などを抑制することができる。
ちなみに、第2支持基板150を剥離する条件が、保護テープ140をシリコン基板120から剥離する条件と異なる接着層151を用いることで、保護テープ140を剥がすことなく、第2支持基板150のみを保護テープ140から剥離することができる。
次に、図7(c)に示すように、シリコン基板120から保護テープ140を剥離することで、ノズルプレート20とする。具体的には、ノズルプレート20単位に個片化したシリコン基板120から保護テープ140を剥離する。このとき、シリコン基板120の保護テープ140が貼付された第2面120aを鉛直上向きとし、シリコン基板120の保護テープ140が貼付されていない露出された周縁部を保持治具201で保持する。保持治具201は、シリコン基板120の周縁部の第2面120a側及び第1面120b側を挟持する分割された2部材からなる。そして、保持治具201によって保持したシリコン基板120から保護テープ140を剥離する。保護テープ140は、シリコン基板120に感圧式で接着されているため、保護テープ140のシリコン基板120とは反対面側の一端部側に粘着テープ202を貼付し、粘着テープ202の粘着力によって保護テープ140の一端部を保持させて、粘着テープ202を第2面120aの面方向に移動させることで、保護テープ140をその一端部側から反らせながらシリコン基板120から剥離することができる。すなわち、保護テープ140が感圧式であっても、本実施形態のように、個片化したノズルプレート20であれば、その周縁部を強固に保持して保護テープ140を剥離することができ、異物の発生や傷が生じるのを抑制することができる。例えば、複数の個片化したノズルプレート20に共通して保護テープ140が貼付されている場合、ノズルプレート20の周縁部を保持することができず、ノズルプレート20の第1面120b側を吸着保持等で保持しなくてはならないため、ノズルプレート20に異物の付着や傷が生じてしまう。
そして、このように製造されたノズルプレート20は、第1面120b(接合面20b)を流路形成基板10の圧力発生室12が開口する面に接着剤25を介して接着する。
このとき、ノズルプレート20の接合面20bの流路形成基板10に接合される領域は、プライマー処理が施されているため、流路形成基板10とノズルプレート20とは強固に接合することができ、流路形成基板10からのノズルプレート20の剥離等の破壊や接合部分からのインクの漏出などを抑制することができる。
このように本実施形態では、第1支持基板130を接合してノズルプレート20単位に分割したシリコン基板120に第2支持基板150を接合し、複数に分割されたシリコン基板120の第1支持基板130が接合されていた第1面120b側を同時に第2処理することができる。したがって、製造工程を減少させてコストを低減することができる。また、複数に分割されたシリコン基板120を同時に第2処理することができるため、シリコン基板120をハンドリングする回数が増大するのを抑制して、ハンドリングする回数の増大による異物の発生やノズルプレート20の破壊などを抑制し、歩留まりを向上することができる。ちなみに、第2支持基板150を接合することなく、第1面120bを処理しようとすると、ノズルプレート20単位に分割したシリコン基板120から第1支持基板130を剥離しなくてはならず、シリコン基板120がばらばらになって、シリコン基板120のハンドリング回数が増大し、ハンドリングによる異物の発生やノズルプレート20(シリコン基板120)の破壊が発生してしまう。本実施形態では、ノズルプレート20単位に分割したシリコン基板120は、保護テープ140を剥離するときだけ、ばらばら(小片)の状態になるので、ノズルプレート20のハンドリング回数を低減することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、薄膜型の圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルから液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
また、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般の製造方法を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の製造方法にも適用することができる。もちろん、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに用いられるノズルプレートに限定されず、他のデバイスに用いられるノズルプレートの製造方法にも適用することができる。