本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るアブソリュートエンコーダの構成図である。図2は、実施形態1に係るアブソリュートエンコーダを有する絶対位置検出装置の構成図である。まず、図1を用いて、本実施形態に係るアブソリュートエンコーダの概要を説明する。
アブソリュートエンコーダ1は、モータ等の回転機械に連結されたシャフト29と、ステータ20と、ロータ10と、信号パターンを読み取り可能なセンサ(読取部)30とを有している。
ロータ10は、円板形状の部材である基体11を有している。基体11は例えば、シリコン、ガラス、高分子材料などで形成されている。基体11は、信号パターンを整列した信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3を一方の板面に有している。また、ロータ10には、基体11の取り付けられた板面に対し他方の板面にシャフト29が取り付けられている。
ステータ20はシャフト29及びロータ10とは独立に固定されている。ステータ20は、軸受部21を有している。ステータ20は、軸受部21を介してシャフト29を回転可能に支持する。シャフト29がモータからの回転により回転すると、シャフト29に連動してロータ10が中心Oを軸中心として回転する。センサ30は、ステータ20とハウジングを介して固定されている。ロータ10が回転すると、基体11の信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3上の信号パターンがセンサ30に対して相対的に移動する。
本実施形態では、センサ30は、信号トラックT1を読み取り可能なセンサ(検出素子)31と、信号トラックT2を読み取り可能なセンサ(検出素子)32と、信号トラックT3を読み取り可能なセンサ(検出素子)33とを有している。複数の信号トラックの信号パターンをそれぞれ読み取る複数のセンサを有しており、アブソリュートエンコーダ1は、信号トラック及びセンサをそれぞれn(n=3)個有する。
次に、図2を用いて、本実施形態に係るアブソリュートエンコーダを有する絶対位置検出装置の概要を説明する。図2に示すように、絶対位置検出装置2は、アブソリュートエンコーダ1と、演算装置3と、を備えている。演算装置3は、モータ等の回転機械の制御部5と接続されている。アブソリュートエンコーダ1を有する絶対位置検出装置2は、アブソリュートエンコーダ1のロータ10の位置を検出し、絶対位置の情報をアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)として、モータ等の回転機械の制御部5へ出力する。
演算装置3は、パーソナルコンピュータ(PC)等のコンピュータであり、入力インターフェース4aと、出力インターフェース4bと、CPU4cと、ROM4dと、RAM4eと、内部記憶装置4fと、を含んでいる。入力インターフェース4a、出力インターフェース4b、CPU4c、ROM4d、RAM4e及び内部記憶装置4fは、内部バスで接続されている。
入力インターフェース4aは、アブソリュートエンコーダ1からの入力信号を受け取り、CPU4cに出力する。出力インターフェース4bは、CPU4cからアブソリュートエンコーダ信号を受け取り、制御部5に出力する。
ROM4dには、BIOS等のプログラムが記憶されている。内部記憶装置4fは、例えばHDDやフラッシュメモリ等であり、オペレーティングシステムプログラムやアプリケーションプログラムを記憶している。CPU4cは、RAM4eをワークエリアとして使用しながらROM4dや内部記憶装置4fに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。
内部記憶装置4fは、アブソリュートエンコーダ信号(位置コード)とセンサ出力とを対応付けた位置コードデータベースが記憶されている。
信号パターンは、信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3に個々に形成されている。図3から図10を用いて、アブソリュートエンコーダの信号パターン配置作成方法について説明する。図3は、実施形態1に係るアブソリュートエンコーダの信号パターン配置作成方法を実行する信号パターン配置生成装置の構成図である。図4は、一筆書きグレイコードの生成手順と、一筆書きグレイコードに基づいたアブソリュートエンコーダの信号パターン配置作成方法の手順を説明するフローチャートである。図5は、3進数で1次元空間の格子点を説明する説明図である。図6は、図5の一筆書きの経路の格子座標履歴が変換された一筆書きグレイコードデータベースを説明する説明図である。図7は、3進数で2次元空間の格子点である。図8は、図7の一筆書きの経路の格子座標履歴が変換された一筆書きグレイコードデータベースを説明する説明図である。図9は、3進数で3次元空間の格子点を説明する説明図である。図10は、図9の一筆書きの経路の格子座標履歴が変換された一筆書きグレイコードデータベースを説明する説明図である。
図3を用いて、アブソリュートエンコーダの信号パターン配置作成方法を実行する信号パターン配置生成装置について説明する。図3に示すように、信号パターン配置生成装置100は、入力装置102と、表示装置103と、演算装置104と、外部記憶装置105と、を備えている。
入力装置102は、マウス、キーボード等であり、ユーザである設計者の入力操作、選択操作を受け付け、入力信号を演算装置104に出力する。表示装置103は、CRT、液晶ディスプレイ等の画像を表示する装置である。
演算装置104は、パーソナルコンピュータ(PC)等のコンピュータであり、入力インターフェース104aと、出力インターフェース104bと、CPU104cと、ROM104dと、RAM104eと、内部記憶装置104fと、を含んでいる。入力インターフェース104a、出力インターフェース104b、CPU104c、ROM104d、RAM104e及び内部記憶装置104fは、内部バスで接続されている。
入力インターフェース104aは、入力装置102からの入力信号を受け取り、CPU104cに出力する。出力インターフェース104bは、CPU104cから画像信号を受け取り、表示装置103に出力する。
ROM104dには、BIOS等のプログラムが記憶されている。内部記憶装置104fは、例えばHDDやフラッシュメモリ等であり、オペレーティングシステムプログラムやアプリケーションプログラムを記憶している。CPU104cは、RAM104eをワークエリアとして使用しながらROM104dや内部記憶装置104fに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。
外部記憶装置105は、HDDやサーバ等である。外部記憶装置105がサーバである場合、外部記憶装置105は、LAN等のネットワークを介して演算装置104と接続されている。なお、外部記憶装置105は、演算装置104から離れた場所に設置されていてもよい。また、演算装置104は、内部記憶装置104fのみを有し、外部記憶装置105が接続されていなくても機能する。
RAM104e、内部記憶装置104f又は外部記憶装置105には、一筆書きグレイコードデータベースが記憶されている。
信号パターンは、本実施形態で定義する一筆書きグレイコードに従って設定されている。信号パターン配置生成装置100は、一筆書きグレイコードを以下の手順に従って生成している。また、信号パターン配置生成装置100は、一筆書きグレイコードに基づいたアブソリュートエンコーダの信号パターン配置を以下の手順に従って生成している。
演算装置104は、入力装置102からの入力信号を受け取り一筆書きグレイコード条件の入力を受け付けてRAM104e又は内部記憶装置104fに記憶する(ステップS201)。例えば、K進数(K>2)、n次元空間として、演算装置104は、Kの値及びnの値をRAM104eに記憶保持する。
次に、演算装置104は、CPU104cがKの値及びnの値をRAM104eから読み出して、Kn個の格子点の格子座標を作成する(ステップS202)。次に、演算装置104のCPU104cは、Kn個の格子点間を1つずつ格子点から格子点へ移動させたときの各格子点の座標を一筆書きの経路の格子座標履歴としてRAM104e又は内部記憶装置4fに記憶する(ステップS203)。ここで、一筆書きの経路の格子座標履歴は、次の2条件を満足する必要がある。
第1の条件は、一筆書きの経路の格子座標履歴には、隣接する格子点に移動する履歴のみを含む。第2の条件は、一筆書きの経路の格子座標履歴には、移動して通過した格子点を一度のみ含む。
次に、演算装置104のCPU104cは、一筆書きの経路の格子座標履歴を10進数に対応付けて、K進数の一筆書きグレイコードとして出力する(ステップS204)。演算装置104のCPU104cは、一筆書きグレイコードを一筆書きグレイコードデータベースとしてRAM104e又は内部記憶装置104fに記憶する(ステップS205)。
例えば、図5を用いて、3進数で1次元空間の格子点における一筆書きの経路の格子座標履歴を説明する。また、図6は、図5の一筆書きの経路の格子座標履歴が変換された一筆書きグレイコードデータベースである。
図5に示すように、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点m0(0)から格子点m1(1)へ移動する履歴を含む。また、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点m1(1)から格子点m2(2)への履歴を含むことはできない。図5から分かるように、一筆書きの経路の格子座標履歴には、格子点m0(0)と格子点m2(2)とは隣接していないので、格子点m2(2)から格子点m0(0)の履歴を含めない。また、一筆書きの経路の格子座標履歴には、一度移動して通過した格子点m1(1)を通過せずに、格子点m2(2)から格子点m0(0)へ戻ることはできないため、格子点m1(1)から格子点m2(2)への履歴を含むことはできない。従って、一筆書きの経路の格子座標履歴は、格子点m0(0)から格子点m1(1)へ移動する座標履歴が条件を満たすことになる。図6の一筆書きグレイコードデータベース110は、格子点m0(0)から格子点m1(1)へ移動した座標履歴を、例えば位置コードとなる10進数に対応付けて、3進数の一筆書きグレイコードとして出力されている。なお、位置コードとなるのは10進数とは限らず、例えば2進数でも、3進数でもよい。
次に、図7を用いて、3進数で2次元空間の格子点における一筆書きの経路の格子座標履歴を説明する。また、図8は、図7の一筆書きの経路の格子座標履歴が変換された一筆書きグレイコードデータベースである。
図7に示すように、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点Q0(0,0)から格子点Q1(0,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点Q1(0,1)から格子点Q2(0,2)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点Q2(0,2)から格子点Q3(1,2)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点Q3(1,2)から格子点Q4(1,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点Q4(1,1)から格子点Q5(2,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点Q5(2,1)から格子点Q6(2,0)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点Q6(2,0)から格子点Q7(1,0)へ移動する履歴を含む。
図7から分かるように、一筆書きの経路の格子座標履歴は、格子点Q8(2,2)を通過していない。格子点Q8(2,2)という1つの格子点を通過しないことにより、一筆書きの経路の格子座標履歴は、Q0−Q1−Q2−Q3−Q4−Q5−Q6−Q7と移動した一筆書きの経路の格子座標履歴を持ち、Q0へ戻ることができる。一筆書きの経路の格子座標履歴として通過しない格子点は、Q8に限定されず、例えば、Q0−Q1−Q2−Q3−Q8−Q5−Q6−Q7と移動した一筆書きの経路の格子座標履歴でもよい。この場合、一筆書きの経路の格子座標履歴として通過しない格子点はQ4となる。図8の一筆書きグレイコードデータベース120は、Q0−Q1−Q2−Q3−Q4−Q5−Q6−Q7と移動した一筆書きの経路の格子座標履歴を、例えば位置コードとなる10進数に対応付けて、3進数の一筆書きグレイコードとして出力されている。なお、位置コードとなるのは10進数とは限らず、例えば2進数でも、3進数でもよい。
次に、図9を用いて、3進数で3次元空間の格子点における一筆書きの経路の格子座標履歴を説明する。また、図10は、図9の一筆書きの経路の格子座標履歴が変換された一筆書きグレイコードデータベースである。
図9に示すように、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P0(0,0,0)から格子点P1(0,0,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P1(0,0,1)から格子点P2(0,0,2)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P2(0,0,2)から格子点P3(0,1,2)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P3(0,1,2)から格子点P4(0,2,2)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P4(0,2,2)から格子点P5(0,2,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P5(0,2,1)から格子点P6(0,2,0)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P6(0,2,0)から格子点P7(0,1,0)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P7(0,1,0)から格子点P8(0,1,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P8(0,1,1)から格子点P9(1,1,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P9(1,1,1)から格子点P10(1,0,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P10(1,0,1)から格子点P11(1,0,2)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P11(1,0,2)から格子点P12(1,1,2)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P12(1,1,2)から格子点P13(1,2,2)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P13(1,2,2)から格子点P14(1,2,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P14(1,2,1)から格子点P15(1,2,0)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P15(1,2,0)から格子点P16(1,1,0)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P16(1,1,0)から格子点P17(2,1,0)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P17(2,1,0)から格子点P18(2,2,0)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P18(2,2,0)から格子点P19(2,2,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P19(2,2,1)から格子点P20(2,1,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P20(2,1,1)から格子点P21(2,1,2)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P21(2,1,2)から格子点P22(2,0,2)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P22(2,0,2)から格子点P23(2,0,1)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P23(2,0,1)から格子点P24(2,0,0)へ移動する履歴を含む。次に、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P24(2,0,0)から格子点P25(1,0,0)へ移動する履歴を含む。
図9から分かるように、一筆書きの経路の格子座標履歴は格子点P26(2,2,2)を通過していない。格子点P26(2,2,2)という1つの格子点を通過しないことにより、一筆書きの経路の格子座標履歴は、P0−P1−P2−P3−P4−P5−P6−P7−P8−P9−P10−P11−P12−P13−P14−P15−P16−P17−P18−P19−P20−P21−P22−P23−P24−P25と移動してP0へ戻ることができる。一筆書きの経路の格子座標履歴として通過しない格子点は、P26に限定されない。図10の一筆書きグレイコードデータベース130は、P0−P1−P2−P3−P4−P5−P6−P7−P8−P9−P10−P11−P12−P13−P14−P15−P16−P17−P18−P19−P20−P21−P22−P23−P24−P25と移動した一筆書きの経路の格子座標履歴を、例えば位置コードとなる10進数に対応付けて、3進数の一筆書きグレイコードとして出力される。なお、位置コードとなるのは10進数とは限らず、例えば2進数でも、3進数でもよい。また、上述した一筆書きの経路の格子座標履歴の2条件を満たしていれば、通過しない格子点はいくつあってもよい。3進数で3次元空間の格子点における一筆書きの経路の格子座標履歴の例では、位置コードの数は最大で33−1=26個となる。つまり、位置コードの数は最大でKn−1個となる。また、通過しない格子点の数に応じて、位置コードがKn−1個より少なくなる。また、変形例として、通過しない格子点がなくても上述した一筆書きの経路の格子座標履歴の2条件を満たすKと、nとの組み合わせがあり、最大Kn個の位置コードをとりえる場合もある。例えば、K=4、n≧3の条件で上述した一筆書きの経路の格子座標履歴の2条件を満たすことができる。K=4、n=3では、最大43=64の位置コードをとりえる。変形例では、通過しない格子点の数に応じて、位置コードが43個、つまりKn個より少なくなる。
次に、演算装置104のCPU104cは、信号トラックの数(センサの数)をn、信号パターンの段階をKとして、Kn又はKn−1分割された位置コード及びアブソリュートエンコーダの信号パターン配置を生成出力する(ステップS206)。
図11は、ロータの基体に形成されたアブソリュートエンコーダの信号パターン配置と位置コードの関係を説明する説明図である。図12は、センサ出力が「2」を出力する信号パターンとセンサとの関係を説明する説明図である。図13は、センサ出力が「1」を出力する信号パターンとセンサとの関係を説明する説明図である。図14は、センサ出力が「0」を出力する信号パターンとセンサとの関係を説明する説明図である。図15は、図11に示す信号パターンを有するロータの回転により、出力されるセンサ出力と位置コードとを説明する説明図である。図16は、実施形態1に係るアブソリュートエンコーダを有する絶対位置検出装置の絶対位置検出の手順を説明するフローチャートである。
図11に示すように、演算装置104のCPU104cは、Kn又はKn−1分割された位置コード及びアブソリュートエンコーダの信号パターン配置を生成出力している。演算装置104のCPU104cは、信号パターンの段階Kを3、センサの数nを3とした、33−1=26分割された信号パターンを生成する。26分割された信号パターンは、ロータ10の基体11上の中心Oを中心に、基体11の周方向に向かって均等に割り付けられている。センサ30である3つのセンサは、位置コード0の場合、図11に図示されたセンサ31、センサ32、センサ33の位置にある。ここで、信号トラックT1の位置コード0が割り当てられた位置と、信号トラックT2の位置コード0が割り当てられた位置と、信号トラックT3の位置コード0が割り当てられた位置との位置関係は任意でよく、センサ31、センサ32、センサ33が基体11に対向する際にセンサ同士が互いに干渉しあわない配置を考慮して、設定されればよい。変形例として、センサ31、センサ32、センサ33を直線上に配置した1つのセンサ30とすれば、信号トラックT1の位置コード0が割り当てられた位置と、信号トラックT2の位置コード0が割り当てられた位置と、信号トラックT3の位置コード0が割り当てられた位置とを基体11の半径方向に並べることもできる。
図11に図示されたセンサ31、センサ32、センサ33の位置は、センサ31、センサ32、センサ33の初期位置の設定値となる。位置コードは、図11に示すように初期位置から反時計回りに360度を26分割されて割り振られる。なお、変形例として、図11とは逆に、位置コードは、初期位置から時計回りに360度を26分割されて割り振られてもよい。
演算装置104のCPU104cは、信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3の各信号パターンと、センサ30の位置コード0の場合のセンサ31、センサ32、センサ33の初期位置情報とを図10の一筆書きグレイコードデータベース130に与える。演算装置104のCPU104cは、図10の一筆書きグレイコードデータベース130から、10進数の値がセンサ31の位置コード、センサ32の位置コード、センサ33の位置コードとなるように割り当てる。
図10の一筆書きグレイコードデータベース130では、前述した一筆書きの経路の格子座標履歴として記憶した格子点の座標を一筆書きグレイコードの座標(x、y、z)とする。例えば、図10の一筆書きグレイコードデータベース130では、図9の一筆書きの経路の格子座標履歴として記憶した格子点P3の座標(0,1,2)を、10進数の位置コード3となるように割り当てている。また、一筆書きグレイコードデータベース130では、格子点P3の座標(0,1,2)を、一筆書きグレイコードの座標(x、y、z)とするので、x=0、y=1、z=2となる。
演算装置104のCPU104cは、図10の一筆書きグレイコードデータベース130の3進数一筆書きグレイコードの座標(x、y、z)のxをセンサ31が読み取る信号トラックT1の信号パターンとなるように演算する。演算装置104のCPU104cは、図10の一筆書きグレイコードデータベース130の3進数一筆書きグレイコードの座標(x、y、z)のyをセンサ32が読み取る信号トラックT2の信号パターンとなるように演算する。演算装置104のCPU104cは、図10の一筆書きグレイコードデータベース130の3進数一筆書きグレイコードの座標(x、y、z)のzをセンサ33が読み取る信号トラックT3の信号パターンとなるように演算する。CPU104cが演算した信号パターンは、図11のように信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3の信号パターンとして基体11に配置される。出力インターフェース104bは、CPU104cから図11のような信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3の信号パターンの画像信号を受け取り、表示装置103に出力する。
実施形態1では、センサ31、センサ32、センサ33は、受光素子を有する光センサである。例えば、受光素子としては、フォトダイオード、フォトトランジスタを用いることができる。センサ31、センサ32、センサ33は、同じ光受光素子を用いるので、センサ31を代表して説明する。図12から図14に示すように、センサ31は、発光素子41と、受光素子42とを有している。発光素子41は、例えば発光ダイオード等である。実施形態1の変形例としては、センサ31は、発光素子41を備えず、発光素子41が別体とされていてもよい。発光素子41は、信号パターンへ光を発光できれば位置は問わない。
図12は、ロータ10の基体11上の信号トラックT1に、センサ出力が「2」を出力する信号パターン51が形成されている場合を示している。信号パターン51は、例えば、Auを基体11の表面に成膜して形成される。発光素子41からの光71は、信号パターン51で反射される。この反射光72を受けた受光素子42は、2段階の閾値で区切られた最高段の3段目の出力を出力する。3段目の出力は、図2に示すようにアブソリュートエンコーダ1から演算装置3に入力されて、演算装置3のCPU4cは、センサ出力「2」をRAM4eに付与して記憶する。
図13は、ロータ10の基体11上の信号トラックT1に、センサ出力が「1」を出力する信号パターン52が形成されている場合を示している。信号パターン52は、例えば、Crを基体11の表面に成膜して形成される。発光素子41からの光71は、信号パターン52で反射される。信号パターン52は、Auに比較して入射する光を反射する強度が半減する、いわばハーフミラーのように作用する。この反射光73を受けた受光素子42は、2段階の閾値のうち1段目の閾値を超え2段目の閾値を超えない2段目の出力を出力する。2段目の出力は、図2に示すようにアブソリュートエンコーダ1から演算装置3に入力されて、演算装置3のCPU4cは、センサ出力「1」をRAM4eに付与して記憶する。
図14は、ロータ10の基体11上の信号トラックT1に、センサ出力が「0」を出力する信号パターン53が形成されている場合を示している。信号パターン53は、例えば、光吸収色素を基体11の表面に成膜して形成される。発光素子41からの光71は、信号パターン53で吸収される。吸収されなかった反射光74を受けて、受光素子42は、2段階の閾値のうち初段の1段目の閾値を超えない1段目の出力を出力する。1段目の出力は、図2に示すようにアブソリュートエンコーダ1から演算装置3に入力されて、演算装置3のCPU4cは、センサ出力「0」をRAM4eに付与して記憶する。なお、信号パターン53は、基体11の表面を代用することも可能である。
図12から図14に説明するように、発光素子41からの光71は、入射する光を反射する強度が3つの段階に分かれている信号パターンによって反射される。反射光72、73、74は、反射の強度を3段階で読み取り可能なセンサ31で検知可能とされている。反射率の異なる3種類の材料で基体の信号パターンを作ることにより、反射光の強度を3段階にすることができる。
図11のロータ10の基体11上、信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3の各信号パターンのうち、「2」を示す部分には、信号パターン51が成膜される。また、信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3の各信号パターンのうち、「1」を示す部分には、信号パターン52が成膜される。信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3の各信号パターンのうち、「0」を示す部分には、信号パターン53が成膜される。図11のロータ10の基体11上では、「2」、「1」、「0」を反射の強度の強い順に、アブソリュートエンコーダ1の信号パターンを配置している。なお、図11のロータ10の基体11上では、「2」、「1」、「0」を反射の強度の弱い順に、アブソリュートエンコーダ1の信号パターンを配置してもよい。図11のロータ10の基体11上、「2」を示す部分、「1」を示す部分、「0」を示す部分は、個々に、信号パターン51、52、53のいずれかに一対一で対応して定義されていればどのような組み合わせでもよい。
演算装置104のCPU104cは、図10の一筆書きグレイコードデータベース130を変換し、位置コードとセンサ出力との関係を例えば図15の位置コードデータベース210として作成し、RAM104e、内部記憶装置104f、外部記憶装置105のいずれかに記憶する。図15の位置コードデータベース210は、絶対位置検出装置2の内部記憶装置4fへデータとして受け渡され、内部記憶装置4fに記憶保持される。
次に、図15及び図16を参照しながら、アブソリュートエンコーダ1を有する絶対位置検出装置2の絶対位置検出の手順を説明する。アブソリュートエンコーダ1は、センサ31、センサ32、センサ33が基体11上、信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3の各信号パターンの反射光を検出する。演算装置3は、入力インターフェース4aで、アブソリュートエンコーダ1からのセンサ30の出力をA/D変換する。演算装置3のCPU4cは、入力インターフェース4aからのセンサ31、センサ32、センサ33の出力信号を所定の3段階の閾値と比較し、センサ出力「0」、センサ出力「1」、センサ出力「2」のいずれかに変換する。
演算装置3は、図15に示すように、ロータの回転により出力されるセンサ出力と位置コードのグラフ200を演算する。図15に示すように、位置コード201は、360度を26分割した位置を示している。位置コード201は、26個の位置コードを経ると基体11を一周することを示している。また、位置コード201は、1つの位置コードを移動すると、基体11はセンサ30に対して、360度/26だけ相対移動していることを示している。演算装置3のCPU4cは、位置コード201に対応するセンサ31出力211、位置コード201に対応するセンサ32出力212、位置コード201に対応するセンサ33出力213をRAM4e又は内部記憶装置4fに記憶する(ステップS210)。そして、演算装置3のCPU4cは、センサ30とロータ10の基体11との相対位置をアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)で出力インターフェース4bを通じて、例えばサーボモータシステムの制御部5へ出力する。例えば、演算装置3のCPU4cは、センサ31、センサ32、センサ33の各センサ出力を、位置コードデータベース210へ与え、位置コードの番地情報をえることができる(ステップS211)。演算装置3のCPU4cは、センサ31、センサ32、センサ33の各出力を位置コードで把握できるので、ロータ10と、センサ30との角度が相対的にどのくらい変化したのか、位置コードを変換してロータ10の回転角度を絶対角度情報として演算できる(ステップS212)。
比較として、前述した非特許文献1のK進数グレイコードを2進数よりも大きなK進数(K>2)の出力が可能な信号パターンに適用して、アブソリュートエンコーダの分解能を高めようとする場合について以下説明する。例えば、比較例のアブソリュートエンコーダの各トラックには、受光素子の読み取りにより、「0」、「1」、「2」の3進数の出力が可能な信号パターンがあるとする。比較例のアブソリュートエンコーダの「0」、「1」、「2」の3進数のセンサ出力は、受光素子が信号パターンからの反射光を3段階の閾値で読み取ることにより行われる。非特許文献1のK進数グレイコードは、例えば「2」のセンサ出力から「0」のセンサ出力への遷移を認めている。受光素子が信号パターンからの反射光を「2」の閾値で読み取る状態から、受光素子が信号パターンからの反射光を「0」の閾値で読み取る状態との間に、受光素子が信号パターンからの反射光を中間値「1」の閾値で読み取る状態があるので、受光素子が信号パターンからの反射光を中間値「1」の閾値で読み取る誤読をするおそれがある。従って、比較例のアブソリュートエンコーダは、3進数の出力が可能な信号パターンをアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)へ変換するコードとして、非特許文献1のK進数グレイコードを適用すると、誤ったアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)を出力してしまうおそれがある。比較例のアブソリュートエンコーダは、非特許文献1のK進数グレイコードを適用して、K進数(K>2)の出力が可能な信号パターンをアブソリュートエンコーダ信号へ変換することができないことが分かる。なお、従来のアブソリュートエンコーダにおいて、受光素子の読み取により、「0」、「1」、「2」の3進数の出力が可能な信号パターンに、アブソリュートエンコーダ信号(位置コード)へ変換するコードとして、バイナリコード又はBCDコードを適用すると、例えば「2」のセンサ出力から「0」のセンサ出力への遷移を認めてしまう。従って、信号パターンに、アブソリュートエンコーダ信号(位置コード)へ変換するコードとして、バイナリコード又はBCDコードを適用すると、誤ったアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)を出力してしまうおそれがある。
本実施形態1のアブソリュートエンコーダ1では、信号トラックは、信号パターンと隣接する信号パターンとは、センサ出力の変化が1段階以下である。その結果、センサ出力が2段階以上遷移することはない。また、アブソリュートエンコーダ1を有する絶対位置検出装置2では、複数の信号トラックT1、T2、T3の信号パターンの組み合わせ毎にセンサ31、32、33と基体11との絶対位置を示す位置コードが割り当てられており、任意の絶対位置を示す位置コードを構成する複数の信号トラックの信号パターンの組み合わせは、任意の絶対位置に隣接する絶対位置を示す位置コードを構成する複数の信号トラックの信号パターンの組み合わせに対して、複数の信号トラックの信号パターンのうち1つの信号トラックの信号パターンが異なるセンサ出力の信号パターンであり、他の信号トラックの信号パターンは、同一のセンサ出力の信号パターンである。その結果、アブソリュートエンコーダ1を有する絶対位置検出装置2は、位置コードを1つずつ移動していっても、センサ出力が「2」から「0」へ遷移することはない。従って、本実施形態1のアブソリュートエンコーダ1を有する絶対位置検出装置2は、3進数の出力が可能な信号パターンをアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)へ変換するコードとして、本実施形態1のK進数(K>2)の一筆書きグレイコードを適用し、エラーを生じるおそれを低減しつつ、絶対位置を把握できる。本実施形態1のアブソリュートエンコーダ1は、2進数よりも大きなK進数(K>2)の出力が可能な信号パターンを用いて、アブソリュートエンコーダ1の分解能を高めるので、トラック数の増加を抑制できる。その結果、分解能を高くしても、ロータ10の基体11の寸法増加を抑制できる。
本実施形態1のアブソリュートエンコーダ1を有する絶対位置検出装置2は、変形例として、信号パターンの段階Kを3、センサの数nを4とした場合、34−1=80分割された位置コードを最大で割り当てることができる。他の変形例として、絶対位置検出装置2は、信号パターンの段階Kを4、センサの数nを3とした場合、43=64分割された位置コードを最大で割り当てることができる。また、他の変形例として、絶対位置検出装置2は、信号パターンの段階Kを3、センサの数nを10とした場合、310−1=59048分割された位置コードを最大で割り当てることができる。すなわち、信号パターンの段階Kと、センサの数nとの組み合わせにより、絶対位置検出装置2は、Kn又はKn−1の位置コードを最大で割り当てることができる。
本実施形態1のアブソリュートエンコーダ1は、例えば、停電時から復帰しても絶対位置が把握できるので、停電後に原点復帰が不要なサーボモータシステムに適用できる。
変形例として、本実施形態1のアブソリュートエンコーダ1は、細長い板状のスケールと、スケールに信号パターンを有する信号トラックを形成し、信号パターンを読み取るためのセンサが備えられ、スケール上を移動可能なキャリッジに設置されたスライダとを有するリニアアブソリュートエンコーダに適用してもよい。そして、リニアアブソリュートエンコーダは、信号パターンを読み取り可能なセンサと、センサと相対的に移動可能とされ、センサに読み取られてK(K>2)段階に分かれてセンサ出力される信号パターンを有する信号トラックを含む基体となるスケールとを含む。リニアアブソリュートエンコーダは、2進数を利用したリニアアブソリュートエンコーダと同じ分解能をえる場合、トラック数は少なくて済むので、リニアアブソリュートエンコーダを小型にできる。また、リニアアブソリュートエンコーダは、スケールが信号トラックを複数有し、複数の信号トラックの信号パターンをそれぞれ読み取る複数のセンサを有し、信号トラックは、信号パターンと隣接する信号パターンとは、センサ出力の変化が1段階以下である。リニアアブソリュートエンコーダでは、センサ出力が2段階以上遷移することはない。その結果、リニアアブソリュートエンコーダでは、エラーを生じるおそれを低減できる。
絶対位置検出装置は、リニアアブソリュートエンコーダと、リニアアブソリュートエンコーダでのセンサ出力の検出結果に基づいて、センサとスケールとの絶対位置を算出する演算装置と、を有し、リニアアブソリュートエンコーダは、複数の信号トラックの信号パターンの組み合わせ毎にセンサとスケールとの絶対位置を示す位置コードが割り当てられており、任意の絶対位置を示す位置コードを構成する複数の信号トラックの信号パターンの組み合わせは、任意の絶対位置に隣接する絶対位置を示す位置コードを構成する複数の信号トラックの信号パターンの組み合わせに対して、複数の信号トラックの信号パターンのうち1つの信号トラックの信号パターンが異なるセンサ出力の信号パターンであり、他の信号トラックの信号パターンは、同一のセンサ出力の信号パターンである。リニアアブソリュートエンコーダを有する絶対位置検出装置は、位置コードを1つずつ移動していっても、センサ出力が2段階以上遷移することはない。その結果、絶対位置検出装置は、エラーを生じるおそれを低減しつつ、絶対位置を把握できる。リニアアブソリュートエンコーダは、信号トラック及びセンサをそれぞれn個有し、絶対位置を示す位置コードを構成する複数の信号トラックの信号パターンの組み合わせは、センサ出力の段階数であるKの値と信号トラックの数であるnの値からKn個の格子点をとって、Kn個の格子点間を1つずつ格子点から格子点へ移動させたときの各格子点の座標の履歴である一筆書きの経路の格子座標履歴に対応付けられており、一筆書きの経路の格子座標履歴は、隣接する格子点に移動する履歴のみを含む条件及び移動して通過した格子点を一度のみ含む条件を満たした一筆書きグレイコードである。絶対位置検出装置は、K進数(K>2)の一筆書きグレイコードを適用し、エラーを生じるおそれを低減しつつ、絶対位置を把握できる。
(実施形態2)
実施形態2では、センサ31、センサ32、センサ33は、磁気を受感する磁気センサである。なお、前述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図17は、センサ出力が「2」を出力する信号パターンとセンサとの関係を説明する説明図である。図18は、センサ出力が「1」を出力する信号パターンとセンサとの関係を説明する説明図である。図19は、センサ出力が「0」を出力する信号パターンとセンサとの関係を説明する説明図である。例えば、磁気センサとしては、ホール素子が用いられる。センサ31、センサ32、センサ33は、同じ磁気センサを用いるので、センサ31を代表して説明する。図17から図19に示すように、センサ31は、磁気センサ素子43を有している。
図17は、ロータ10の基体11上の信号トラックT1に、センサ出力が「2」を出力する信号パターン61が形成されている場合を示している。信号パターン61は、基体11の表面に強磁性体金属を転写して形成される。信号パターン61の強磁性体金属は、磁気センサ素子43側がS極となるように着磁されている。信号パターン61は、磁界を形成する。磁気センサ素子43は、信号パターン61の磁界を受けてS極の磁界出力を出力する。S極の磁界出力は、図2に示すようにアブソリュートエンコーダ1から演算装置3に入力されて、演算装置3のCPU4cは、センサ出力「2」を付与してRAM4eに記憶する。
図18は、ロータ10の基体11上の信号トラックT1に、センサ出力が「1」を出力する信号パターン62が形成されている場合を示している。信号パターン62は、例えば、基体11の表面に強磁性体金属を転写して形成される。ただし、信号パターン62は、着磁をしていないので磁界を発生しない。磁気センサ素子43は、強磁性体金属の非着磁の磁界出力を出力する。強磁性体金属の非着磁の磁界出力は、図2に示すようにアブソリュートエンコーダ1から演算装置3に入力されて、演算装置3のCPU4cは、センサ出力「1」を付与してRAM4eに記憶する。信号パターン62は、基体11の非磁性表面を代用することも可能である。
図19は、ロータ10の基体11上の信号トラックT1に、センサ出力が「0」を出力する信号パターン63が形成されている場合を示している。信号パターン63は、基体11の表面に強磁性体金属を転写して形成される。信号パターン63の強磁性体金属は、磁気センサ素子43側がN極となるように着磁されている。信号パターン63は、磁界を形成する。磁気センサ素子43は、信号パターン63の磁界を受けてN極の磁界出力を出力する。N極の磁界出力は、図2に示すようにアブソリュートエンコーダ1から演算装置3に入力されて、演算装置3のCPU4cは、センサ出力「0」を付与してRAM4eに記憶する。
図17から図19に説明するように、磁界強度が3段階の段階に分かれている信号パターンを作ることにより、磁気センサの出力する電流量を異ならせることができる。磁気センサは、磁界強度を3段階で読み取り可能なセンサ31で検知可能とされている。
実施形態2では、図11のロータ10の基体11上、信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3の各信号パターンのうち、「2」を示す部分には、信号パターン61が転写され着磁される。また、信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3の各信号パターン「1」には、信号パターン62が転写される。信号トラックT1、信号トラックT2、信号トラックT3の各信号パターン「0」には、信号パターン63が転写され着磁される。なお、図11のロータ10の基体11上、「2」を示す部分、「1」を示す部分、「0」を示す部分は、個々に、信号パターン61、62、63のいずれかに一対一で対応して定義されていればどのような組み合わせでもよい。
本実施形態2のアブソリュートエンコーダ1を有する絶対位置検出装置2は、3進数の出力が可能な信号パターンをアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)へ変換するコードとして、本実施形態1で説明したK進数(K>2)の一筆書きグレイコードを適用し、エラーを生じるおそれを低減しつつ、絶対位置を把握できる。本実施形態2のアブソリュートエンコーダ1は、2進数よりも大きなK進数(K>2)の出力が可能な信号パターンを用いて、アブソリュートエンコーダ1の分解能を高めるので、トラック数の増加を抑制できる。その結果、分解能を高くしても、ロータ10の基体11の寸法増加を抑制できる。変形例として、本実施形態2のアブソリュートエンコーダ1は、細長い板状のスケールと、スケールに信号パターンを有する信号トラックを形成し、信号パターンを読み取るためのセンサが備えられ、スケール上を移動可能なキャリッジに設置されたスライダとを有するリニアアブソリュートエンコーダに適用してもよい。
(実施形態3)
図20は、実施形態3に係る信号パターンの製造方法を説明するフローチャートである。図21−1から図21−6は、信号パターンの製造方法を説明する説明図である。図22は、ハーフミラー層のパターニング用マスクの一例を示す模式図である。図23は、反射ミラー層のパターニング用マスクの一例を示す模式図である。なお、前述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。信号パターン51A、52A、53Aは、ハーフミラー層52aと、反射ミラー層51aとを積層して形成する。以下、図20に示すフローチャートに沿って信号パターンの製造方法を説明する。
製造装置は、図21−1に示す基体11となる基板を用意する基板準備の手順を行う(ステップS301)。基体11は、例えば、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド等の材料を用いて形成することができる。
次に、製造装置は、図21−2に示すように、基体11上にハーフミラー層52aを成膜する手順を行う(ステップS302)。ハーフミラー層52aは、例えば、30nm以上40nm以下の膜厚で基体11上にスパッタリング、蒸着、メッキ等により成膜される。例えば、Crで形成されたハーフミラー層52aは、Crの膜厚によって、光の反射率が変化する。このため、ハーフミラー層52aの膜厚は、後述する反射ミラー層51aの反射率の60%以上70%以下となるように設定されることが好ましい。ハーフミラー層52aは、例えば、Cr、NiCr、Ni、Ti等の単体金属のいずれか1以上で形成してもよい。または、ハーフミラー層52aは、例えば、基体11上に密着層としてCr、NiCr、Ni、Ti、Al、SiO2、SiNのいずれか1以上を成膜した後、密着層上にAu、Al、Cu、Si、Pt等の金属のいずれか1以上を形成することで作製してもよい。あるいは、ハーフミラー層52aとして、Au、Al、Pt、Cu等の反射率の高い金属のいずれか1以上を使用する場合は、Au、Al、Pt、Cu等の反射率の高い金属の上に、反射率を抑える材料、例えば、レジスト、エマルジョンフィルム、ブラックレジスト、ポリイミド等をコーティングして、反射率を低減することができる。なお、反射率を抑える材料のコーティングとパターニングは、後述する反射ミラー層51a及びハーフミラー層52aのパターンを規定することもできる。
次に、製造装置は、図21−2に示すように、ハーフミラー層52a上に反射ミラー層51aを成膜する手順を行う(ステップS303)。反射ミラー層51aは、例えば、Auで形成される。反射ミラー層51aは、100nm以上300nm以下の膜厚でハーフミラー層52a上にスパッタリング、蒸着、メッキ等により成膜される。反射ミラー層51aは、例えば、Au、Al、Pt、Cu等の反射率の高い金属のいずれか1以上で形成することが好ましい。反射ミラー層51aは、上述したハーフミラー層52aと同様の材料を用いることもできる。この場合、反射ミラー層51aと、ハーフミラー層52aとは、反射ミラー層51aの膜厚をハーフミラー層52aの膜厚よりも厚くする、又はハーフミラー層52aにレジスト、エマルジョンフィルム、ブラックレジスト、ポリイミド等をコーティングして、反射率を低減する材料を用いて反射率に差をつけることができる。
次に、製造装置は、反射ミラー層51a上にレジストを塗布し、図22に示すハーフミラー層のパターニング用マスクを用いて露光する。その後、製造装置は、レジストを現像し、図21−3に示すレジスト55aがパターニングされる第1のレジストパターニングの手順を行う(ステップS304)。
次に、製造装置は、レジスト55aに覆われていない反射ミラー層51a及びハーフミラー層52aを除去する第1のエッチングの手順を行う(ステップS305)。製造装置は、その後、レジスト55aを除去し、図21−4に示す反射ミラー層51a及びハーフミラー層52aのパターンを形成する。
次に、製造装置は、反射ミラー層51a上にレジストを塗布し、図23に示す反射ミラー層のパターニング用マスクを用いて露光する。その後、製造装置は、レジストを現像し、図21−5に示すレジスト55bがパターニングされる第2のレジストパターニングの手順を行う(ステップS306)。
次に、製造装置は、レジスト55bに覆われていない反射ミラー層51aを選択して除去する第2のエッチングの手順を行う(ステップS307)。この場合、ハーフミラー層52aはエッチングされない。製造装置は、その後、レジスト55bを除去し、図21−6に示す反射ミラー層51a及びハーフミラー層52aのパターンを形成する。
以上説明した製造方法により、信号パターン側照射スケール12が製造される。信号パターン側照射スケール12は、入射する光を反射する強度が3つの段階に分かれている信号パターン51A、52A、53Aを有している。信号パターン53Aは、反射ミラー層51a及びハーフミラー層52aの未形成領域である。そして、信号パターン側照射スケール12は、反射の強度を3段階で読み取り可能な上述したセンサ31で検知可能とされている。信号パターン側照射スケール12は、反射率の異なる3種類の材料で基体の信号パターンを作ることにより、反射光の強度を3段階にすることができる。
信号パターン側照射スケール12は、3階調レベル「2」、「1」、「0」のうち、「2」のレベルに相当する光反射の強度を有する信号パターン51Aを有している。信号パターン側照射スケール12は、3階調レベル「2」、「1」、「0」のうち、「1」のレベルに相当する光反射の強度を有する信号パターン52Aを有している。信号パターン側照射スケール12は、3階調レベル「2」、「1」、「0」のうち、「0」のレベルに相当する光反射の強度を有する信号パターン53Aを有している。
以上説明した製造方法は、入射光に対する反射率が異なるハーフミラー層52aと反射ミラー層51aとを形成するアブソリュートエンコーダの信号パターンの製造方法であって、ハーフミラー層52aの上に反射ミラー層51aの順となるように基体11上に積層する工程と、基体上から見たハーフミラー層52aと、反射ミラー層51aと、ハーフミラー層52a及び反射ミラー層51aの未形成領域と、が信号パターン52A、51A、53Aとなるようにエッチングする工程と、を含む。つまり、ハーフミラー層52aと反射ミラー層51aとを積層し、レジストパターニングと、エッチングとを行うことにより、短い工程で信号パターン側照射スケール12を形成できる。また、製造方法では、入射光の反射率がK(K>2)段階に分かれた信号パターンを容易に形成することができる。これにより、トラック数を増やさなくても高分解能なアブソリュートエンコーダとする信号パターンを製造できる。また、ハーフミラー層52aであるCrは、Crに積層される反射ミラー層51aであるAuの密着を高めることができる。
図24は、8トラックロータリースケールの信号パターンの一例を示す部分拡大図である。8トラックロータリースケールは、8つの信号トラックを円板形状の部材である基体11に形成している。8つの信号トラックの個々の信号トラックには、上述した信号パターン側照射スケール12の信号パターン51A、52A、53Aが形成されている。絶対位置検出装置2は、信号パターンの段階Kを3、信号トラックの数と同じセンサの数nを8とした場合、38−1=6560分割された位置コードを最大で割り当てることができる。
(実施形態4)
図25は、実施形態4に係る信号パターンの製造方法を説明するフローチャートである。図26−1から図26−7は、信号パターンの製造方法を説明する説明図である。なお、前述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。以下、図25に示すフローチャートに沿って信号パターンの製造方法を説明する。
製造装置は、図26−1に示す基体11を用意する基板準備の手順を行う(ステップS311)。基体11は、光を透過する基板であって、例えば、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド等の材料を用いて形成することができる。
次に、製造装置は、図26−2に示すように、基体11上に密着層52cを成膜する手順を行う(ステップS312)。ハーフミラー層52bは、例えば、20nm以上30nm以下の膜厚で基体11上にスパッタリング、蒸着、メッキ等により成膜される。例えば、Crで形成された密着層52cは、Crの膜厚によって、光の反射率が変化する。このため、密着層52cの膜厚は、1nm以上5nm以下となることが好ましい。なお、密着層52cは、例えば、Cr、NiCr、Ni、Ti、Al、SiO2、SiNのいずれか1以上で形成することが好ましい。
次に、製造装置は、図26−2に示すように、密着層52c上に反射ミラー層51bを成膜する手順を行う(ステップS313)。反射ミラー層51bは、例えば、Auで形成される。反射ミラー層51bは、100nm以上300nm以下の膜厚で密着層52c上にスパッタリング、蒸着、メッキ等により成膜される。なお、反射ミラー層51bは、例えば、Au、Al、Pt、Cu等の反射率の高い金属のいずれか1以上で形成されることが好ましい。反射ミラー層51bは、後述するハーフミラー層52bと同様の材料を用いることもできる。この場合、反射ミラー層51bと、ハーフミラー層52bとは、反射ミラー層51bの膜厚をハーフミラー層52bの膜厚よりも厚くすることで反射率に差をつけることができる。または、ハーフミラー層52bを成膜する前にレジスト、エマルジョンフィルム、ブラックレジスト、ポリイミド等の反射率低減層を形成した後、ハーフミラー層52bを形成することでハーフミラー層52bの反射率を低減し、反射ミラー層51bと、ハーフミラー層52bとは反射率に差をつけることができる。ここで、反射率低減層のパターニングは、後述する反射ミラー層51b及びハーフミラー層52bのパターンを規定することもできる。
次に、製造装置は、反射ミラー層51b上にレジストを塗布し、図23に示す反射ミラー層のパターニング用マスクを用いて露光する。その後、製造装置は、レジストを現像し、図26−3に示すレジスト55cがパターニングされる第1のレジストパターニングの手順を行う(ステップS314)。
次に、製造装置は、レジスト55cに覆われていない反射ミラー層51b及び密着層52cを除去する第1のエッチングの手順を行う(ステップS315)。製造装置は、その後、レジスト55cを除去し、図26−4に示す反射ミラー層51b及び密着層52cのパターンを形成する。
次に、製造装置は、図26−5に示すように、基体11上にハーフミラー層52bを成膜する手順を行う(ステップS316)。ハーフミラー層52bは、例えば、20nm以上30nm以下の膜厚で基体11上にスパッタリング、蒸着、メッキ等により成膜される。例えば、Crで形成されたハーフミラー層52bは、Crの膜厚によって、光の反射率が変化する。このため、ハーフミラー層52bの膜厚は、反射ミラー層51bの反射率の40%以上60%以下となるように設定されることが好ましい。また、ハーフミラー層52bの膜厚は、反射ミラー層51bの反射率の45%以上55%以下となるように設定されることがより好ましい。なお、ハーフミラー層52bは、例えば、Cr、NiCr、Ni、Ti等の金属のいずれか1以上で形成してもよい。また、ハーフミラー層52bは、密着層52cと同じ材料で形成してもよく、異なる材料で形成してもよい。例えば、密着層52cがCr、NiCr、Ni、Ti、Al、SiO2、SiNのいずれか1以上で成膜された後、ハーフミラー層52bは、密着層52c上にAu、Al、Cu、Si、Pt等の金属のいずれか1以上を形成することで作製してもよい。
次に、製造装置は、ハーフミラー層52b上にレジストを塗布し、図22に示すハーフミラー層のパターニング用マスクを用いて露光する。その後、製造装置は、レジストを現像し、図26−6に示すレジスト55dがパターニングされる第2のレジストパターニングの手順を行う(ステップS317)。
次に、製造装置は、レジスト55dに覆われていないハーフミラー層52bを選択して除去する第2のエッチングの手順を行う(ステップS318)。この場合、反射ミラー層51bはエッチングされない。製造装置は、その後、レジスト55dを除去し、図21−7に示す反射ミラー層51b及びハーフミラー層52bのパターンを形成する。
以上説明した製造方法により、基板裏面側照射スケール13が製造される。基板裏面側照射スケール13は、基体11の基板裏面11aから入射する光を反射する強度が3つの段階に分かれている信号パターン51B、52B、53Bを有している。信号パターン53Bは、反射ミラー層51b及びハーフミラー層52bの未形成領域である。そして、基板裏面側照射スケール13は、反射の強度を3段階で読み取り可能な上述したセンサ31で検知可能とされている。基板裏面側照射スケール13は、反射率の異なる3種類の材料で基体の信号パターンを作ることにより、反射光の強度を3段階にすることができる。
基板裏面側照射スケール13は、3階調レベル「2」、「1」、「0」のうち、「2」のレベルに相当する光反射の強度を有する信号パターン51Bを有している。基板裏面側照射スケール13は、3階調レベル「2」、「1」、「0」のうち、「1」のレベルに相当する光反射の強度を有する信号パターン52Bを有している。基板裏面側照射スケール13は、3階調レベル「2」、「1」、「0」のうち、「0」のレベルに相当する光反射の強度を有する信号パターン53Bを有している。
以上説明した製造方法は、入射光に対する反射率が異なるハーフミラー層51bと反射ミラー層52bとを形成するアブソリュートエンコーダの信号パターンの製造方法であって、反射ミラー層51bの上にハーフミラー層52bの順となるように基体11上に積層する工程と、基体11の裏面から見たハーフミラー層52bと、反射ミラー層51bと、ハーフミラー層52b及び反射ミラー層51bの未形成領域と、が信号パターン52B、51B、53Bとなるようにエッチングする工程と、を含む。つまり、反射ミラー層51bとハーフミラー層52bとを積層し、レジストパターニングと、エッチングとを行うことにより、短い工程で基板裏面側照射スケール13を形成できる。また、製造方法では、入射光の反射率がK(K>2)段階に分かれた信号パターンを容易に形成することができる。これにより、トラック数を増やさなくても高分解能なアブソリュートエンコーダとする信号パターンを製造できる。
(実施形態5)
図27は、実施形態5に係るリニアアブソリュートエンコーダの構成を説明する説明図である。図28は、4トラックリニアスケールの信号パターンの一例を示す部分拡大図である。図29は、受光素子と、発光素子との関係の一例を説明する説明図である。図30は、一筆書きグレイコードデータベースを説明する説明図である。なお、前述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
リニアアブソリュートエンコーダ8は、細長い板状のリニアスケール11Aと、リニアスケール11Aに形成された信号パターンを有する信号トラックT11、T12、T13、T14と、信号パターンを読み取るためのセンサ36とを備えている。信号トラックT11、T12、T13、T14は、信号パターンが直線上に形成されている。リニアスケール11Aと、センサ36とは相対的に移動可能とされている。センサ36は、発光素子41Aと、受光素子42A、42B、42C、42Dとをセンサ基板35上に有している。
リニアスケール11Aは、例えば、図28に示す信号トラックT11、T12、T13、T14を含む4トラックリニアスケールである。信号トラックT11、T12、T13、T14は、センサ36の受光素子42A、42B、42C、42Dに読み取られてK(K>2)段階に分かれてセンサ出力される信号パターンを有する。
例えばK=3の場合、図27に示す発光素子41Aからの光71Aは、入射する光を反射する強度が3つの段階に分かれている信号パターンを含む信号トラックT11、T12、T13、T14によって反射される。例えば、信号トラックT11、T12、T13、T14は、上述した信号パターン51B、52B、53Bのいずれか1以上を含んでいる。図29に示す発光素子41Aは、面発光レーザ光源、又はLED(Light Emitting Diode)である。発光素子41Aは、信号トラックT11、T12、T13、T14へ光71Aを発光する。信号トラックT11、T12、T13、T14からの光71Aの反射光75A、75B、75C、75Dは、反射の強度を3段階で読み取り可能なセンサである受光素子42A、42B、42C、42Dで検知する。
信号パターン51Bは、受光素子42A、42B、42C、42Dで検知され、3階調レベル「2」、「1」、「0」のうち、「2」のレベルに相当する光反射の強度を有する。信号パターン52Bは、受光素子42A、42B、42C、42Dで検知され、3階調レベル「2」、「1」、「0」のうち、「1」のレベルに相当する光反射の強度を有する。信号パターン53Bは、受光素子42A、42B、42C、42Dで検知され、3階調レベル「2」、「1」、「0」のうち、「0」のレベルに相当する光反射の強度を有する。
図30に示す一筆書きグレイコードデータベース140は、一筆書きの経路の格子座標履歴を、例えば位置コードとなる10進数に対応付けて、3進数の一筆書きグレイコードとして出力する。上述した演算装置104のCPU104cは、信号トラックの数(センサの数)をn=4、信号パターンの段階をK=3として、34−1=80分割された位置コード及びリニアアブソリュートエンコーダの信号パターン配置を生成出力する。つまり、位置コードの数は最大で34−1=80個となる。
図31に図示された受光素子42A、42B、42C、42Dの位置は、発光素子41Aの発光中心から等距離の同心円上に配置されている。また、隣り合う受光素子42A、42B、42C、42Dは、隣り合う間隔が発光素子41Aの発光中心から等距離の同心円上で等間隔となるように配置されている。また、信号トラックT11、信号トラックT12、信号トラックT13、信号トラックT14の延長方向は、受光素子42A、発光素子41A、受光素子42Dの各中心を結ぶ直線に対して、角度Dだけ傾斜している。
また、位置コード検出領域U11、U12、U13、U14が信号トラックT11、信号トラックT12、信号トラックT13、信号トラックT14上に設けられる。位置コード検出領域U11、U12、U13、U14は、発光素子41Aの発光中心から信号トラックT11、信号トラックT12、信号トラックT13、信号トラックT14への各入射角が等しく、かつ信号トラックT11、信号トラックT12、信号トラックT13、信号トラックT14から受光素子42A、42B、42C、42Dへの各反射角がほぼ等しい。
また、位置コード検出領域U11、U12、U13、U14は、発光素子41Aの発光中心から入射するほぼ等距離の入射光を反射する。また、位置コード検出領域U11、U12、U13、U14は、それぞれの受光素子42A、42B、42C、42Dへほぼ等距離の反射光を反射する。
これにより、受光素子42A、42B、42C、42Dが検出する反射光75A、75B、75C、75Dの光強度のむらが抑制される。また、信号トラックT11、信号トラックT12、信号トラックT13、信号トラックT14は、各信号パターンを等ピッチで配置することができる。
演算装置104のCPU104cは、信号トラックT11、信号トラックT12、信号トラックT13、信号トラックT14の各位置コード検出領域U11、U12、U13、U14と、センサ36の受光素子42A、42B、42C、42Dの初期位置情報とを図30の一筆書きグレイコードデータベース140に与える。その結果、演算装置104のCPU104cは、図30の一筆書きグレイコードデータベース140から、10進数の値が位置コードとなるように割り当てる。
例えば、CPU104cは、図30の一筆書きグレイコード「0001」の1桁目の「1」を図31に示す位置コード検出領域U11に割り当てる。また、CPU104cは、図30の一筆書きグレイコード「0001」の2桁目の「0」を図31に示す位置コード検出領域U12に割り当てる。CPU104cは、図30の一筆書きグレイコード「0001」の3桁目の「0」を図31に示す位置コード検出領域U13に割り当てる。CPU104cは、図30の一筆書きグレイコード「0001」の4桁目の「0」を図31に示す位置コード検出領域U14に割り当てる。
ここで、受光素子の数(センサ数)をN、傾斜定数M=N−1とした場合、受光素子の配置について以下説明する。図32から図36は、受光素子の配置の一例を説明する説明図である。図32では、受光素子の数は4である。図33では、受光素子の数は5である。図34では、受光素子の数は6である。図35では、受光素子の数は7である。図36では、受光素子の数は8である。図32から図36では、座標(0,0)に発光素子が配置されている。図32から図36では、座標(0,0)から同心円上の黒丸の位置に、受光素子を配置するものとし、傾斜した直線(傾斜直線)は、信号トラックを示す。
受光素子の位置は、(xi,yi)とする。ここでiは、i=−M、−M+2、−M+4、・・・、M−2、Mとする。この場合、iは2つ飛びの値をとる。また、x軸を基準として、信号トラックの傾斜角度(信号トラックの延長する方向とx軸とのなす角)の値をθとする場合、信号トラックの傾斜角度がtanθ=Mとなるようにする。つまり、傾斜定数Mは、x軸を基準とする信号トラックの直線の傾きを示している。また、各受光素子は、同心円上に存在するので、光源である発光素子と受光素子間の距離を規格化して表現すると、xi2+yi2=1となる。また、スケールが略等間隔な傾斜直線上に配置されるために、yiは、yi=tanθ×(xi−i/M)=M×xi−iとなるようにする。
以上の条件から、受光素子の位置(xi,yi)を示すxiとyiとは、
xi(±)={−M×i±[M2−i2+1]1/2}/(M2+1)
yi(±)=M×xi(±)−i
となる。センサ数が偶数の場合、下記の表1にxiとyiとの値を示す。なお、indexは、上式の±の正符号(+)又は負符号(−)の選択を表すための指標であり、符号選択指標である。
隣り合う受光素子の位置(xi,yi)は、indexの値である正符号(+)と、負符号(−)とを交互に配置することが望ましい。具体的には、i番目の受光素子の配置を(xi(+),yi(+))のようにインデックスの値を正符号(+)でとった場合、その隣の信号トラックの信号パターンを解読するi+1番目の受光素子の位置は、(xi+1(−),yi+1(−))のようにインデックスの値を負符号(−)にとる。これにより、受光素子を円周上に略均等に配置することができる。
次に、センサ数が奇数の場合、下記表2にxiとyiとの値を示す。
また、センサ数と、信号トラック数に対応する直線の数は同じとなり、直線の傾きがtanθ=Mとなるので、センサ数、直線の傾き(傾斜定数M)、直線の数は下記表3の関係となる。
ここで、上述した角度Dは、センサ数4、信号トラック数に対応する直線の数4であり、直線の傾きがtanθ=4−1=3の関係を満たすθである。これにより、角度D=θ=arctan3=71.56°である。
上述したように、本実施形態のリニアアブソリュートエンコーダは、発光素子と、前記発光素子の発光中心から等距離に配置された複数の受光素子と、を含むセンサと、前記発光素子から入射する入射光を反射し、それぞれの前記受光素子へ反射光を反射する複数の信号パターンがそれぞれ直線上に配列された信号トラックを含み、前記センサと前記信号トラックとが相対的に移動可能とされる基体と、を含む。これにより、1光源で複数個の受光素子を含むセンサとなり、センサが小型となる。また、発光素子から入射する入射光と、それぞれの受光素子へ反射する反射光との光路長がほぼ等しくなり、光受光素子毎が受光する光強度のむらが抑制される。
ここで、本実施形態のリニアアブソリュートエンコーダは、前記発光素子の位置を(0,0)とし、前記受光素子の数をNとし、傾斜定数Mを、M=N−1、前記受光素子の位置は、(xi,yi)とした場合、i=−M、−M+2、−M+4、・・・、M−2、Mととし、
xi(±)={−M×i±[M2−i2+1]1/2}/(M2+1)
yi(±)=M×xi(±)−i
を満たすことが好ましい。これにより、発光素子の発光中心からほぼ等距離に配置された複数の受光素子とすることができる。
ここで、本実施形態のリニアアブソリュートエンコーダは、x軸を基準として、前記信号トラックの傾斜角度である値をθとした場合、tanθ=Mを満たすことが好ましい。これにより、発光素子から入射する入射光と、それぞれの受光素子へ反射する反射光との光路長がほぼ等しくなる信号トラックとすることができる。
上述した信号パターンは、入射光の反射率が2段階に分かれており前記段階に応じて、前記センサ出力が異っていても受光素子毎が受光する光強度のむらが抑制される。また、信号パターンは、入射光の反射率がK=3(K>2)段階に分かれており、前記段階に応じて、前記センサ出力が異なるようにしてもよい。これにより、光強度のむらが小さいので、前記段階の閾値が近くてもエラーとなるおそれを低減できる。
図37は、実施形態5に係るリニアアブソリュートエンコーダの構成の一例を示す構成図である。リニアアブソリュートエンコーダ8は、モータ等の回転機械82に連結されたシャフト83と、ステータ38と、ロータ85と、信号パターンを読み取り可能なセンサ(読取部)36とを有している。ステータ38と回転機械82とは、位置決め部材81により相対位置が規制されている。ロータ85は、シャフト87を介してロボットアーム等の被駆動体88を支持している。
ロータ85は、円筒形状の部材である基体である。ロータ85は例えば、鉄、アルミニウムなどで形成されている。ロータ85は、上述したリニアスケール11Aを円筒の外周面に形成している。リニアスケール11Aはロータ85の外周面に形成するため、基体11が可撓性を有するフレキシブル基板であることが好ましい。これにより、フレキシブル基板をリニアアブソリュートエンコーダの信号パターンを含むリニアスケール11Aとするとともに、回転体であるロータ85にリニアスケール11Aを取り付けて、ロータ85の絶対位置を検出するリニアアブソリュートエンコーダ8が製造できる。図38及び図39は、リニアスケールの構成の一例を示す構成図である。
図38に示すリニアスケール11Aは、上述した信号パターン側照射スケール12で形成されている。信号パターン側照射スケール12の基体11の信号パターン(反射ミラー層51a又はハーフミラー層52a)が形成されていない面には接着層15が形成されている。図37に示すリニアスケール11Aは、図38に示す信号パターン側照射スケール12の信号パターン51A、52A、53Aが外周側になるように、接着層15がロータ85の外周面に接着されている。これにより、ロータ85は、リニアスケール11Aを円筒の外周面に固定される。接着層15は、例えば粘着樹脂等である。接着層15を設けず、リニアスケール11Aがロータ85にねじ等で固定されてもよい。信号パターン53Aの反射率を抑えるため、基体11、ロータ85のいずれか1つ以上は、黒色塗料を塗る処理、黒色のテープを貼る処理、黒色に着色したレジスト又は、樹脂等でコーティングする処理いずれか1以上の処理(コントラスト処理)を施すことがより好ましい。
図39に示すリニアスケール11Aは、上述した基板裏面側照射スケール13の信号パターン側(反射ミラー層51b又はハーフミラー層52bが形成されている側)の面に接着層15を有する。接着層15を平坦化するために、リニアスケール11Aは、上述した基板裏面側照射スケール13の信号パターン側であって、接着層15との間に平坦化層16を有していてもよい。図37に示すリニアスケール11Aは、図39に示す基板裏面側照射スケール13の信号パターン51B、52B、53Bが基体11より内側になるように、接着層15がロータ85の外周面に接着されている。接着層15は、例えば、粘着樹脂層等である。接着層15を設けず、リニアスケール11Aがロータ85にねじ等で固定されてもよい。信号パターン53Bの反射率を抑えるため、接着層15、平坦化層16、ロータ85のいずれか1つ以上は、黒色塗料を塗る処理、黒色のテープを貼る処理、黒色に着色したレジスト又は樹脂等でコーティングする処理のうち、いずれか1以上の処理(コントラスト処理)を施すことがより好ましい。
ステータ38は、シャフト83及びロータ85とは独立に固定されている。ステータ38は、例えば、紫外線硬化樹脂、ねじ等で上述したセンサ36を支持している。シャフト83が回転機械82(モータ)からの回転Rにより回転すると、シャフト83に連動してロータ85が回転する。ロータ85が回転すると、シャフト87に連動して被駆動体88が動作方向Vに駆動する。
ロータ85が回転すると、リニアスケール11Aの信号トラックT11、信号トラックT12、信号トラックT13、信号トラックT14上の信号パターンがセンサ36に対して相対的に移動する。図40は、信号パターン側から光を照射する例を示す説明図である。図41は、信号パターンの基板裏面側から光を照射する例を示す説明図である。
図40に示すように、センサ36の発光素子41Aは、信号パターン側照射スケール12の信号パターン51A、52A、53Aへ直接、光71Aを照射する。図41に示すように、センサ36の発光素子41Aは、光71Aを基体11透過させて、基板裏面側照射スケール13の信号パターン51B、52B、53Bへ照射する。
図2と同様に、本実施形態の絶対位置検出装置2は、アブソリュートエンコーダ1の代わりにリニアアブソリュートエンコーダ8と、演算装置3と、を備えている。演算装置3は、モータ等の回転機械82の制御部5と接続されている。リニアアブソリュートエンコーダ8を有する絶対位置検出装置2は、リニアアブソリュートエンコーダ8のロータ85の位置を検出し、絶対位置の情報をアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)として、モータ等の回転機械82の制御部5へ出力する。絶対位置検出装置2は、回転体であるロータ85の絶対位置、例えば絶対角度を演算することができる。
図42は、信号パターン側から光を照射する場合に受光素子で検知された光強度の例を示す説明図である。図43は、信号パターンの基板裏面側から光を照射する場合に受光素子で検知された光強度の例を示す説明図である。図42及び図43は、リニアスケール11Aの移動位置を横軸にとり、受光素子で検知された光強度を縦軸にとっている。
リニアスケール11Aが、信号パターン側照射スケール12である場合、及び基板裏面側照射スケール13である場合のいずれの場合であっても、受光素子42A、42B、42C、42Dは、3階調で光強度を区別できる。
図42では、リニアスケール11Aが信号パターン側照射スケール12であり、信号パターンが切り替わる場合、突起状の信号であるスパイク信号が検出されやすい。このスパイク信号は、信号パターン51A、52A、53Aの境界部分に段差が生じていることに起因すると考えられる。例えばこの段差は、光の干渉、回折、拡散のいずれか1以上の現象を引き起こしていると考えられる。
図43では、リニアスケール11Aが基板裏面側照射スケール13であり、信号パターンが切り替わる場合、突起状の信号であるスパイク信号が低減できている。これは、信号パターン51B、52B、53Bが基体11表面と同一平面に形成されているためと考えられる。
ここで、表4は、受光素子42A、42B、42C、42Dのセンサ出力が「1」を出力する1レベルと、センサ出力が「0」を出力する0レベルとのスレッシュホルド(閾値)を信号パターン側照射と基板裏面側照射との場合に分けて示している。また、表4は、受光素子42A、42B、42C、42Dのセンサ出力が「2」を出力する2レベルと、センサ出力が「1」を出力する1レベルとのスレッシュホルド(閾値)を信号パターン側照射と基板裏面側照射との場合に分けて示している。
絶対位置検出装置2は、受光素子42A、42B、42C、42Dのセンサ出力が表4に示すスレッシュホルド(閾値)により決定される。このため、スパイク信号の誤認識が低減された。その結果、絶対位置検出装置2は、リニアアブソリュートエンコーダ8のロータ85の位置を検出し、絶対位置の情報をアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)として、モータ等の回転機械82の制御部5へ出力することができる。絶対位置検出装置2は、センサ36とリニアスケール11Aとの距離の変動の許容範囲が1mm以上と大きくできる。
また、3進数の出力が可能な信号パターンをアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)へ変換するコードとして、上述した実施形態のK進数(K>2)の一筆書きグレイコードを適用し、信号トラックT11、T12、T13、T14の幅を広くとることができる。これにより、絶対位置検出装置2は、垂直方向、水平方向の少なくとも1以上に実装でのロバスト性能が向上できる。
本実施形態5のリニアアブソリュートエンコーダ8では、信号トラックは、信号パターンと隣接する信号パターンとは、センサ出力の変化が1段階以下である。その結果、センサ出力が2段階以上遷移することはない。
また、リニアアブソリュートエンコーダ8を有する絶対位置検出装置2では、複数の信号トラックT11、T12、T13、T14の信号パターンの組み合わせ毎に受光素子42A、42B、42C、42Dとリニアスケール11Aとの絶対位置を示す位置コードが割り当てられている。
その結果、任意の絶対位置を示す位置コードを構成する複数の信号トラックの信号パターンの組み合わせは、任意の絶対位置に隣接する絶対位置を示す位置コードを構成する複数の信号トラックの信号パターンの組み合わせに対して、複数の信号トラックの信号パターンのうち1つの信号トラックの信号パターンが異なるセンサ出力の信号パターンであり、他の信号トラックの信号パターンは、同一のセンサ出力の信号パターンである。
また、リニアアブソリュートエンコーダ8を有する絶対位置検出装置2は、位置コードを1つずつ移動していっても、センサ出力が「2」から「0」へ遷移することはない。従って、本実施形態5のリニアアブソリュートエンコーダ8を有する絶対位置検出装置2は、3進数の出力が可能な信号パターンをアブソリュートエンコーダ信号(位置コード)へ変換するコードとして、上述した実施形態のK進数(K>2)の一筆書きグレイコードを適用し、エラーを生じるおそれを低減しつつ、絶対位置を把握できる。
本実施形態5のリニアアブソリュートエンコーダ8は、2進数よりも大きなK進数(K>2)の出力が可能な信号パターンを用いて、リニアアブソリュートエンコーダ8の分解能を高めるので、トラック数の増加を抑制できる。その結果、分解能を高くしても、ロータ85のリニアスケール11Aの寸法増加を抑制できる。
以上のように、本発明に係るアブソリュートエンコーダ及び絶対位置検出装置、並びにアブソリュートエンコーダの信号パターン配置作成方法は、アブソリュートエンコーダの分解能を高めかつアブソリュートエンコーダを小型にすることに有用である。