JP5784436B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、吸気バルブの閉時期を可変とする可変動弁機構を備えた内燃機関に適用される制御装置に関する。
特許文献1には、減速燃料カット中は、吸気バルブの閉時期を下死点後90deg付近のバルブタイミングに設定し、燃料カット後の加速時に、吸気バルブの閉時期を進角させて下死点近くに変更する、制御装置が開示されている。
特開2009−215956号公報
ところで、吸気バルブを下死点後に遅閉じすると、有効圧縮比が低くなるために圧縮温度が低くなり、更に、減速燃料カット状態では、新気によって燃焼室(ピストン冠面など)が冷却されるため、減速燃料カット状態で吸気バルブを遅閉じすると、燃焼室が過度に冷却される場合がある。
燃焼室が過度に冷却されると、燃料カット状態から燃料噴射を再開する場合に、燃焼室内(ピストン冠面)に向けて噴射された燃料の蒸発(霧化)が阻害され、十分な混合気形成がなされず、燃焼が不安定となり、排気性状の悪化やトルク変動による運転性の悪化が発生する。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、減速燃料カットに伴って燃焼室が過度に冷却されることを抑制できる、内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
そのため、本願発明では、減速運転における燃料カット状態において、吸気バルブの閉時期を可変とする可変動弁機構を制御して燃料カット開始前よりも吸気バルブの閉時期を下死点に近づけ、前記燃料カット中に運転者の加速意図を検出した場合に、前記燃料カット中に吸気バルブの閉時期を下死点に近づける制御をキャンセルするようにした。
また、本願発明では、減速運転における燃料カット状態において、吸気バルブの閉時期を可変とする可変動弁機構を制御して燃料カット開始前よりも吸気バルブの閉時期を下死点に近づけ、前記燃料カット中に燃料噴射が再開されるリカバリ回転速度よりも高い所定回転速度にまで内燃機関の回転速度が低下したときに、吸気バルブの閉時期を下死点に近づける制御をキャンセルするようにした。
上記発明によると、燃料カット中の圧縮温度が上昇するため、燃焼室(ピストン冠面など)が過度に冷却されることを抑制でき、燃料カット直後の燃焼が安定し、排気性状が改善され、運転性を向上できる。
また、減速から加速への移行に伴う燃料噴射の再開に対して閉時期の戻しが遅れることによって圧縮比が高い状態で燃料噴射が再開されることを抑制でき、以って、ノッキングやトルク変動が発生することを抑制できる。
本願発明の実施形態におけるエンジンのシステム図である。 減速燃料カット時における吸気バルブの閉時期IVCの制御を示すフローチャートである。 吸気バルブの閉時期IVCと圧縮温度との相関の一例を示すグラフである。 エンジン温度に応じた閉時期IVCの進角目標の特性を示すグラフである。 減速から加速に移行するときのアクセル開度、エンジン回転速度、燃料カット、閉時期IVC、ブレーキスイッチの変化を示すタイムチャートである。 減速からそのままアイドルに移行するときのアクセル開度、エンジン回転速度、燃料カット、閉時期IVCの変化を示すタイムチャートである。 本願発明の実施形態におけるエンジンのシステム図である。 減速燃料カット時における吸気バルブの閉時期IVCの制御を示すフローチャートである。 吸気バルブの閉時期IVCと圧縮温度との相関の一例を示すグラフである。
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る制御装置を含む、車両用エンジンのシステム図である。
図1に示すエンジン1は、遅閉じミラーサイクル運転を行う、筒内直接噴射式内燃機関である。
エンジン1は、筒内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁3を備える。
燃料噴射弁3が筒内に噴射した燃料は、吸気通路2、吸気バルブ4を介して燃焼室5内に吸引される空気と混合し、点火プラグ6による火花点火によって着火燃焼する。燃焼室5内の燃焼ガスは、排気バルブ7を介して排気通路8に排出される。
吸気通路2には、スロットルモータ9で開閉される電子制御スロットル10が配され、この電子制御スロットル10の開度によってエンジン1の吸入空気量を調整する。
また、エンジン1は、吸気バルブ4のバルブタイミング(開閉時期)を可変とする可変バルブタイミング機構(VTC)20を備えている。
可変バルブタイミング機構20は、クランクシャフト21に対する吸気カムシャフト22の回転位相を連続的に可変とすることで、吸気バルブ4の作用角(開期間)の中心位相を連続的に可変とする機構である。
燃料噴射弁3による燃料噴射、点火プラグ6による点火、電子制御スロットル10の開度、可変バルブタイミング機構20によるバルブタイミングなどを制御する制御装置として、コンピュータを備えるECM(エンジン・コントロール・モジュール)31を設けてある。
ECM31は、図外のアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)ACCを検出するアクセル開度センサ34、エンジン1の吸入空気流量QAを検出するエアフローセンサ35、エンジン1の回転速度NEを検出する回転センサ36、エンジン1の冷却水温度TW(エンジン温度)を検出する水温センサ37、エンジン排気中の酸素濃度に応じてエンジン1における空燃比を検出する空燃比センサ38などからの検出信号を入力する。
そして、ECM31は、前述の各種センサの検出信号に基づいて、燃料噴射弁3による燃料噴射量及び噴射タイミング、点火プラグ6による点火時期、電子制御スロットル10の開度、可変バルブタイミング機構20によるバルブタイミングなどを制御する。
ECM31は、燃料噴射弁3による燃料噴射制御において、エンジン1の減速運転時に、燃料噴射弁3による燃料噴射を停止する減速燃料カットを実行する。
減速燃料カットにおいては、エンジン1の減速運転状態であって燃料噴射を停止できる条件(カット条件)が成立すると燃料噴射弁3による燃料噴射を停止させ、燃料噴射を停止させた後は、燃料噴射を再開させる条件(リカバリ条件)が成立すると燃料噴射弁3による燃料噴射を再開させる。
例えば、スロットル10の開度が全閉若しくは全閉付近の低開度で、かつ、エンジン回転速度がカット回転速度を上回っている減速運転状態を判定すると、燃料噴射弁3による燃料噴射を停止させ、その後、エンジン回転速度がリカバリ回転速度(リカバリ回転速度<カット回転速度)まで低下するか、及び/又は、スロットル10が開操作されると、燃料噴射弁3による燃料噴射を再開させる。
尚、カット条件及びリカバリ条件を上記に限定するものではなく、公知のカット条件及びリカバリ条件に応じて燃料カットを行う減速燃料カットを適宜採用できる。また、減速燃料カットを、カット条件の成立から遅延して実行することができる。
また、ECM31は、吸気バルブ4の閉時期IVCを例えば下死点後90degに設定し、また、吸気バルブの4の開時期IVOを上死点後に設定して、エンジン1を所謂遅閉じミラーサイクルで運転させる。
ところで、減速燃料カットを実施すると、燃焼室5(ピストン冠面18など)が新気で冷却されて過度に温度低下する場合があり、燃焼室5の温度が過度に低下した状態で、燃料噴射が再開されると、燃焼室5内(ピストン冠面18)に向けて噴射された燃料の霧化(気化)が阻害される結果、混合気の燃焼安定性が低下し、排気性状の悪化やトルク変動による運転性の悪化などが発生する可能性がある。
そこで、ECM31は、遅閉じミラーサイクル運転での(減速燃料カット前の)閉時期IVCよりも、減速燃料カット中は、閉時期IVCを下死点BDCに近づける制御を行うことで、減速燃料カット中の有効圧縮比(圧縮温度)を燃料カット前よりも高めることで、減速燃料カット中における燃焼室5の温度低下を抑制する制御(以下では、燃料カット時IVC制御という)を行う。
以下では、ECM31による燃料カット時IVC制御の詳細を、図2のフローチャートに従って説明する。
図2のフローチャートに示すルーチンは、設定時間毎にECM31によって割り込み実行され、まず、ステップS101では、エンジン1が冷機状態であるか否かを判断する。
冷機状態であるか否かは、例えば、水温センサ37が検出した冷却水温度TWが設定温度TWSLよりも低いか否かに基づいて判断する。
ステップS101で判断する冷機とは、ミラーサイクル運転での閉時期IVC(IVC=ABDC90deg)のままで減速燃料カットを行った場合に、燃焼室5(ピストン冠面18)が過度に冷却され、燃料噴射を再開したときに、燃料噴射弁3からの燃料噴霧の気化が阻害されて燃焼が不安定となる、エンジン1の低温度域であり、設定温度TWSLとして前記低温度域であるか否かを区別できる温度を設定する。
換言すれば、ステップS101でエンジン1が冷機状態でないと判断した場合には、ミラーサイクル運転での閉時期IVCのまま減速燃料カットを行っても、燃焼室5(ピストン冠面18)が過度に冷却されることがなく、燃料を十分に霧化させて安定した燃焼を行える、エンジン1の高温域であると判断する。
尚、エンジン1が冷機状態であるか否かの判断は、冷却水温度TWに基づき行える他、潤滑油温度、シリンダヘッド温度、シリンダブロック温度などの燃焼室5(ピストン冠面18)の温度に相関する温度に基づいて行える。
また、減速燃料カット中に燃焼室5(ピストン冠面18)が過度に冷却されるか否かは新気の温度に影響され、同じエンジン温度でも新気の温度が低いほど、減速燃料カット中に燃焼室5(ピストン冠面18)が過度に冷却され易くなる。そこで、例えば、外気温度や吸気温度が低いほど、設定温度TWSLをより高く変更することで、新気温度が低いほど、より高いエンジン温度域まで冷機と判断させることができる。
ステップS101でエンジン1が冷機状態であると判断すると、ステップS102へ進み、減速燃料カット中であるか否かを判断する。
そして、冷機状態でエンジン1が減速運転され、減速燃料カットが実行されている場合には、ステップS103へ進む。
ステップS103では、減速燃料カット中に、ブレーキペダルを踏み込んでいる車両の制動状態から、ブレーキペダルの踏み込みが解除されて非制動状態に切り替わったか否かを判断する。
係る判断は、ブレーキスイッチ33の信号に基づいて行われ、ブレーキペダルの踏み込み状態(制動状態)でONとなるブレーキスイッチ33の信号が、減速燃料カット中にONからOFFに切り替わった場合に、制動状態から非制動状態に切り替わったことを判定する。
尚、ブレーキペダルの踏力や、ブレーキ油圧などから、制動状態から非制動状態に切り替わったことを判断することができる。
減速燃料カット中に制動状態から非制動状態に切り替わった場合、換言すれば、ブレーキペダルの踏み込みが解除された場合には、その後にアクセルペダルが踏み込まれて、エンジン1が減速状態から加速状態に移行する可能性がある。換言すれば、制動状態から非制動状態への切り替わりは、運転者の加速意図を示すものである。
前述のように、減速燃料カット時に、遅閉じミラーサイクル運転時での吸気バルブ4の閉時期IVC(例えば、ABDC90deg)よりも進角させ、閉時期IVCを下死点に近づける燃料カット時IVC制御を行う。そして、燃料噴射が再開される場合には、燃料カット時IVC制御をキャンセルして、ミラーサイクル運転での閉時期IVCに戻すが、可変バルブタイミング機構20で制御される閉時期IVCはステップ的に変化せず、遅れを持って徐々に変化する。
このため、全閉であったスロットル10が開かれ、燃料噴射を再開する時点(減速から加速に移行した時点)から、閉時期IVCを遅角させてミラーサイクル運転での閉時期IVCに戻す制御を行うと、燃料噴射の再開時点から閉時期IVCが実際にミラーサイクル運転での閉時期IVCに遅角するまでの応答遅れの間、ミラーサイクル運転時よりも閉時期IVCが下死点に近い状態で運転されることになる。
そして、閉時期IVCがミラーサイクル運転における設定時期よりも下死点に近いと、圧縮比が過度に高くなることで、ノッキングや大きなトルク変動などが発生する可能性がある。
そこで、減速から加速への移行(加速に伴う燃料噴射の再開)を、制動状態から非制動状態への切り替わりに基づいて事前に予測し、実際に加速に移行する前、換言すれば、加速に伴って燃料噴射が再開される前から、閉時期IVCを遅角させる制御を開始させる。これにより、燃料噴射の再開されたときに、閉時期IVCが、ミラーサイクル運転での閉時期IVCにまで変化しているか、若しくは、ミラーサイクル運転での閉時期IVCに十分に近い時期まで遅角されていて、圧縮比が過大であることによるノッキングやトルク変動の発生を抑制できるようにしてある。
即ち、制動状態から非制動状態への移行を、加速へ移行するための前段階として検出し、制動状態から非制動状態へ移行したときに、その後の加速への移行(燃料噴射の再開)を予測して、閉時期IVCを、ミラーサイクル運転での閉時期IVC(燃料噴射状態に適合する閉時期IVC)に戻す制御を予め開始させるようにしてある。
そして、冷機状態での減速燃料カット中であって、制動状態から非制動状態へ移行がない場合には、ステップS104へ進む。
ステップS104では、エンジン回転速度NEが、減速燃料カットの開始条件であるカット回転速度NCUTよりも低く、かつ、燃料噴射の再開条件であるリカバリ回転速度NREよりも高い、カット時制御解除回転速度NCAN(NRE<NCAN<NCUT)よりも高いか否かを判断する。
減速燃料カットは、加速への移行に伴ってキャンセルされる他、エンジン回転速度NEがリカバリ回転速度NREにまで低下した場合もキャンセルされて、燃料噴射が再開される。
そして、エンジン回転速度NEの低下に伴って噴射が再開される場合も、エンジン回転速度NEがリカバリ回転速度NREに達して燃料噴射が再開される時点から、閉時期IVCをミラーサイクル運転での閉時期IVCに戻す制御を開始させると、閉時期IVC変化の応答遅れによって、燃料噴射の再開直後の閉時期IVCが下死点に近くなり、これによって圧縮比が過剰に高くなることで、ノッキングや大きなトルク変動が発生する可能性がある。
そこで、エンジン回転速度NEの低下に伴って燃料噴射が再開される場合においても、実際に燃料噴射が再開される前から、閉時期IVCをミラーサイクル運転での閉時期IVCに戻す制御を予め開始させ、燃料噴射の再開時には、閉時期IVCが、ミラーサイクル運転での閉時期IVCにまで変化しているか、若しくは、ミラーサイクル運転での閉時期IVCに十分に近い時期まで遅角されていて、圧縮比が過大であることによるノッキングやトルク変動などの発生を抑制できるようにする。
そのため、リカバリ回転速度NREよりも高いカット時制御解除回転速度NCANまでエンジン回転速度NEが低下した時点で、燃料カット時IVC制御をキャンセルし、閉時期IVCをミラーサイクル運転での閉時期IVCにまで遅角させる制御を開始させるようにしてある。
換言すれば、カット時制御解除回転速度NCANまでエンジン回転速度NEが低下するまでの間で、燃料カット時IVC制御を実施して、吸気バルブ4の閉時期IVCを下死点に近づける。そして、エンジン回転速度NEがカット時制御解除回転速度NCANからリカバリ回転速度の間であるときに、実際の閉時期IVCがミラーサイクル運転での閉時期IVC付近にまで戻るようにする。
従って、カット時制御解除回転速度NCANは、可変バルブタイミング機構20による閉時期IVCの遅角制御の応答遅れを考慮し、カット時制御解除回転速度NCANにまでエンジン回転速度NEが低下して時点で燃料カット時IVC制御を解除すれば、エンジン回転速度NEがリカバリ回転速度NREになるまでに、換言すれば、燃料噴射が再開されるまでに、閉時期IVCがミラーサイクル運転での閉時期IVC付近にまで遅角し、燃料噴射再開時点でノッキングやトルク変動の発生を抑制できる圧縮比まで低下するように設定してある。
ステップS104でエンジン回転速度NEがカット時制御解除回転速度NCANよりも高い(NE>NCAN)と判断すると、ステップS105へ進む。
ステップS105では、可変バルブタイミング機構20を制御して、吸気バルブ4の作用角の中心位相を、燃料カット前(ミラーサイクル運転時)よりも進角させて、吸気バルブ4の閉時期IVCを下死点に近づける、燃料カット時IVC制御を実施する。
例えば、遅閉じミラーサイクル運転での閉時期IVCが、例えば、燃料カット前において下死点後(ABDC)90degであったとすると、燃料カット時IVC制御では、下死点後(ABDC)90degとしたときの圧縮温度よりも高くなるように、閉時期IVCをミラーサイクル運転時よりも下死点BDCに近づける。吸気バルブ4の閉時期IVCを下死点BDCに近づけると、有効圧縮比が増加し、その結果、圧縮温度が上昇する。
一方、減速燃料カット中は、燃料の燃焼が行われず、シリンダ内に吸い込んだ新気によって燃焼室5(ピストン冠面18)が冷却されることになるが、有効圧縮比の増加によって圧縮温度が高くなれば、それだけ燃焼室5の温度低下を抑制できることになる。
そして、減速燃料カット中における燃焼室5の温度低下(過冷却)を抑制できれば、燃料噴射を再開させたときに、燃焼室5内(ピストン冠面18)に向けて噴射された燃料の霧化(気化)が阻害されることを抑制できるので、燃焼安定性を維持できる混合気形成を行わせることができ、排気性状の悪化や、トルク変動による運転性の悪化を抑制できる。
尚、エンジン1が、ピストンの裏側に対して冷却用の潤滑油を噴射する潤滑油供給装置を備える場合には、燃料カット時IVC制御の実施中に、ピストン裏側に対する潤滑油の噴射を停止させるか、又は、潤滑油の噴射を継続させるものの噴射圧、噴射量を低下させ、潤滑油の噴射によってピストン温度が過渡に低下することを抑制することができる。
図3は、減速運転時における、吸気バルブ4の閉時期IVCと圧縮温度との相関の一例を示す。
図3に示すグラフの横軸は、閉時期IVCの下死点からの遅角角度(ABDC)であり、横軸の右側ほど下死点から遅角された位置で吸気バルブ4が閉じられる状態を示し、縦軸は閉時期IVC毎の圧縮温度を示す。また、圧縮温度を求めた条件は、吸気圧が−67kPa(−500mmHg)の減速運転であり、エンジン回転速度NEが2000rpmの場合と1200rpmの場合における圧縮温度の傾向を示す。
遅閉じミラーサイクル運転で閉時期IVCをABDC90deg付近とする場合に比べて、閉時期IVCを進角させて下死点に近づけることで、圧縮温度は徐々に上昇するが、図3に示す例では、閉時期IVCがABDC50degを過ぎて更に下死点に近づくと、圧縮温度は低下する傾向を示し、閉時期IVCをABDC50degとしたときに、圧縮温度がピーク値(最大値)を示す。
有効圧縮比は、閉時期IVCのみに着目した場合、閉時期IVCを下死点BDC付近とすることで最大値を示すようになるものの、閉時期IVCを下死点に近づけるために、吸気バルブ4の作用角の中心位相を進角制御すると、同時に開時期IVOも進角してバルブオーバーラップが大きくなり、低回転域でバルブオーバーが大きくなると充填効率が低下し、実質的な圧縮比が低下してしまう。
図3の例では、閉時期IVCがABDC50deg付近であるときに、排気バルブ7の閉時期EVCと吸気バルブ4の開時期IVOとが略同時期となり、閉時期IVCをABDC50degよりも進角させるほど、バルブオーバーラップが拡大し、逆に、閉時期IVCをABDC50degよりも遅角させるほど、排気バルブ7の閉時期EVCから吸気バルブ4の開時期IVOまでの間隔が広がり、バルブオーバーラップを拡大させない範囲で閉時期IVCをなるべく進角させたABDC50degの位置で圧縮温度がピーク値を示す。
従って、燃料カット時IVC制御においては、閉時期IVCを下死点に近づけるほど圧縮温度を上げられるものではなく、同時に進角変化する開時期IVOによるバルブオーバーラップの影響を考慮して、閉時期IVCの目標を設定する。即ち、作用角の中心位相を、吸気バルブ4の開時期IVOが排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期となるまで進角したときの閉時期IVCを、燃料カット時IVC制御における閉時期IVCの目標とすれば、圧縮温度を可及的に高くすることができる。
具体的には、例えば、吸気バルブ4の作用角が220deg〜260degである場合、開時期IVOが上死点TDC付近であるときに、排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期になるとすると、燃料カット時IVC制御における目標の閉時期IVCは、ABDC40deg〜ABDC80degとすればよいことになる。
尚、可変動弁機構として、例えば、可変バルブタイミング機構20と、作用角及び最大リフト量を可変とする可変リフト機構とを備えるエンジン1では、吸気バルブ4の開時期IVOと閉時期IVCとをそれぞれに独立して制御できるので、燃料カット時IVC制御において、吸気バルブ4の開時期IVOを排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期とし、かつ、吸気バルブ4の閉時期IVCを下死点BDCに制御して、より高い圧縮温度を得ることが可能である。
また、燃料カット時IVC制御における目標の閉時期IVC(閉時期IVCの進角量目標)を、エンジン1の温度に応じて可変に設定することができる。
即ち、エンジン1の温度が低いほど、燃料カット中に、燃焼室5(ピストン冠面18)の温度が、燃料の霧化が阻害される温度にまで低下し易いので、エンジン1の温度が低いほど、圧縮温度を高くすることが要求される。
一方、エンジン1の温度が比較的高い場合には、圧縮温度をそれほど高くしなくても、燃料カット中に燃料の霧化が阻害される温度にまで燃焼室5の温度が低下することを抑制でき、かつ、ミラーサイクル運転での閉時期IVCからの進角量を抑制できれば、燃料カット時IVC制御をキャンセルするときに、速やかに閉時期IVCをミラーサイクル運転での閉時期IVCに戻すことができ、燃料噴射再開時におけるエンジン1の運転性を改善できる。
そこで、エンジン温度に応じて燃料カット時IVC制御における目標の閉時期IVCを可変とする場合には、図4に示すように、エンジン温度が低いほど、ミラーサイクル運転での閉時期IVCからの進角量を大きくして、閉時期IVCをより下死点に近づけ、圧縮温度がより高くなるようにする。
例えば、閉時期IVCをABDC50degとしたときに圧縮温度がピーク値となる場合には、進角限界をABDC50degとして、遅閉じミラーサイクルでの閉時期IVC(ABDC90deg)からABDC50degまでの間で、エンジン温度が低いほど下死点に近い側の閉時期IVCを目標とすることで、過剰な進角制御を抑制できる。
尚、ステップS101の冷機時であるか否かの判断を省略する代わりに、燃料カット時IVC制御における目標の閉時期IVCの設定において、エンジン温度が設定温度よりも高い場合に進角量を零に設定して、高温域で実質的に閉時期IVCの進角制御が行われない(ミラーサイクル運転での閉時期IVCを保持させる)ようにすることができる。
また、エンジン温度が設定温度よりも高い場合に進角量を零に設定することで、閉時期IVCの進角制御をキャンセルする一方、エンジン温度が設定温度よりも低い場合に進角量を一定値(>0)に設定して、閉時期IVCを下死点に近づける進角制御を行わせることができる。
上記のようにして、燃料カット時IVC制御を行っている途中で、制動状態から非制動状態に切り替われば、その後の加速への移行を予測して、予め燃料カット時IVC制御をキャンセルし、吸気バルブ4の閉時期IVCをミラーサイクル運転時の閉時期IVCに向けて遅角させる(下死点から遠ざける)処理を開始させる。
図5は、ステップS103での処理で燃料カット時IVC制御がキャンセルされる場合における、アクセル開度(スロットル開度)、エンジン回転速度、燃料カット、閉時期IVC、ブレーキの変化を示すタイムチャートである。
図5において、アクセルペダルからブレーキペダルに踏み替えられることで、時点t1では、アクセルが略全閉で、かつ、制動状態になっている。そして、時点t1から、カット遅延時間TDLが経過した時点t2から減速燃料カットが開始される。
そして、減速燃料カットが開始されることで、燃料カット時IVC制御が開始され、吸気バルブ4の閉時期IVCが燃料カット開始前の遅閉じミラーサイクル運転での閉時期IVCから進角されて下死点に近づけられ、閉時期IVCを下死点に近づけ有効圧縮比を高くすることで、圧縮温度が上がり、燃料カット中における燃焼室5(ピストン冠面18)の温度低下を抑制する。
減速燃料カット中の時点t3で、ブレーキペダルから足が離され、制動状態から非制動状態に切り替わると、減速燃料カットは継続しているものの、その後の燃料噴射の再開に備えて燃料カット時IVC制御をキャンセルし、遅閉じミラーサイクル運転での閉時期IVCにまで遅角させる制御を開始させる。
ここで、実際の閉時期IVCは、時点t3から徐々に遅角してミラーサイクル運転での閉時期IVCに近づくことになる。
そして、時点t3後の時点t4において、アクセルペダルが踏み込まれてアクセル開度が増大すると、減速燃料カットが停止され、燃料噴射が再開されるが、閉時期IVCを事前に遅閉じミラーサイクル運転での目標に戻す処理が開始されているので、燃料噴射の再開時点t4では、実際の閉時期IVCが遅閉じミラーサイクル運転での目標に十分に近づいている。
これにより、減速から加速への移行に伴って減速燃料カット状態から燃料噴射が再開される場合に、燃料噴射の再開直後から閉時期IVCをミラーサイクル運転時での時期に十分に近い時期とすることができ、可変バルブタイミング機構20の応答遅れがあっても、圧縮比が過剰に高い状態のまま燃料噴射が再開されて、大きなトルク変動やノッキングなどが発生することを抑制できる。
また、燃料カット時IVC制御を行っている途中でリカバリ回転速度NRE直前の回転速度NCANまでエンジン回転速度NEが低下すると、その後の燃料噴射の再開を予測して、予め燃料カット時IVC制御をキャンセルし、吸気バルブ4の閉時期IVCをミラーサイクル運転時の閉時期IVCに向けて遅角させる(下死点から遠ざける)処理を開始させる。
図6は、ステップS104での処理で燃料カット時IVC制御がキャンセルされる場合における、アクセル開度(スロットル開度)、エンジン回転速度、燃料カット、閉時期IVCの変化を示すタイムチャートである。
図6において、アクセルが略全閉になった時点t1から、カット遅延時間TDLが経過した時点t2から減速燃料カットが開始される。そして、減速燃料カットが開始されることで、燃料カット時IVC制御が開始され、吸気バルブ4の閉時期が燃料カット開始前の遅閉じミラーサイクル運転での閉時期IVCから進角されて下死点に近づけられ、閉時期IVCを下死点に近づけ有効圧縮比を高くすることで、圧縮温度が上がり、燃料カット中における燃焼室5(ピストン冠面18)の温度低下を抑制する。
燃料カット中にエンジン回転速度NEが低下し、時点t3において、リカバリ回転速度NRE直前のカット時制御解除回転速度NCANに達すると、減速燃料カットは継続しているものの、燃料カット時IVC制御をキャンセルして、遅閉じミラーサイクル運転での閉時期IVCにまで遅角させる制御を開始させる。
ここで、実際の閉時期IVCは、時点t3から徐々にミラーサイクル運転での閉時期IVCにまで遅角変化することになる。
そして、エンジン回転速度NEがリカバリ回転速度NREにまで低下した時点t4において、減速燃料カットが停止され、燃料噴射が再開され、そのままアイドルに移行するが、事前に遅閉じミラーサイクル運転での目標に戻す処理が開始されているので、燃料噴射の再開時点t4では、実際の閉時期IVCが遅閉じミラーサイクル運転での目標に十分に近づいている。
これにより、エンジン回転速度NEの低下に伴って減速燃料カット状態から燃料噴射が再開される場合に、燃料噴射の再開直後からミラーサイクル運転時の閉時期IVCに十分に近い閉時期IVCとすることができ、可変バルブタイミング機構20の応答遅れがあっても、圧縮比が過剰に高い状態のまま燃料噴射が再開されて、ノッキングや大きなトルク変動が発生することを抑制できる。
尚、吸気バルブの閉時期を可変とする可変動弁機構は、クランクシャフト21に対する吸気カムシャフト22の回転位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構20に限定されず、例えば、複数種のカムの切り替えを行う機構、カムプロフィールが軸方向に変化する三次元カムを軸方向に変位させてバルブ駆動を行わせる機構などを用いることができ、更には、可変バルブタイミング機構20と、作用角及び最大リフト量を可変とする可変リフト機構との組み合わせや、電磁駆動バルブを用いることができる。
電磁力を用いて吸気バルブ4を開閉する電磁駆動バルブなどの、吸気バルブ4の閉時期を応答よく変化させることが可能な機構を採用した場合や、噴射再開時に閉時期BDCが下死点近くに進角していても、ノッキングの発生が十分に抑制されるエンジン1においては、図2のフローチャートにおけるステップS103及びステップS104の処理を省略し、冷機時の減速燃料カット状態において燃料カット時IVC制御を実施させることができる。
また、早閉じミラーサイクル運転が行われるエンジン1においても、燃料カット時IVC制御を実施することで、減速燃料カット中に燃焼室5(ピストン冠面18)が過冷却されることを抑制できる。
但し、吸気バルブ4を下死点BDC後に閉じる遅閉じミラーサイクルでは、減速燃料カット中に有効圧縮比を高めるために、閉時期IVCを進角させて下死点BDCに近づけることになるが、吸気バルブ4を下死点BDC前に閉じる早閉じミラーサイクルでは、減速燃料カット中に有効圧縮比を高めるために、閉時期IVCを遅角させて下死点BDCに近づけることになる。
以下では、早閉じミラーサイクル運転を行うエンジン1であって、図7に示すように、可変バルブタイミング機構20と共に、吸気バルブ4の作用角及び最大リフト量を可変にする可変リフト機構23を備えたエンジン1における、燃料カット時IVC制御を、図8のフローチャートに従って説明する。
尚、図7において、図1と同一要素には同一符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
図8のフローチャートに示すルーチンは、ECM31によって設定時間毎に割り込み実行され、ステップS201〜ステップS204では、図2のフローチャートのステップS101〜104と同様な処理を行い、ステップS201〜ステップS204の各条件が成立していることを前提に、ステップS205の燃料カット時IVC制御を実施する。
即ち、エンジン1が冷機状態であって、かつ、減速燃料カット状態であって、かつ、制動状態から非制動状態への切り替わりがなく、かつ、エンジン回転速度NEがカット時制御解除回転速度NCANよりも高い場合に、ステップS205へ進む。
ステップS205では、可変バルブタイミング機構20を制御することにより吸気バルブ4の作用角の中心位相を遅角させ、かつ、可変リフト機構23を制御することにより吸気バルブ4の作用角を増大させることで、吸気バルブ4の閉時期IVCを、早閉じミラーサイクルでの閉時期IVC(例えば下死点前60deg)から下死点に向けて遅角させる、燃料カット時IVC制御を行う。
ここで、可変動弁機構として、可変バルブタイミング機構20と可変リフト機構23とを備えるエンジン1の場合には、排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期の開時期IVOと、下死点の閉時期IVCとを同時に実現できる作用角及び中心位相に制御することができ、これによって圧縮温度を最も高くすることができる。
そこで、ステップS205の燃料カット時IVC制御においては、排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期に設定した開時期IVOから下死点BDCまでのクランク角度を、可変リフト機構23による作用角の増大目標値に設定し、また、排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期に設定した開時期IVOと下死点BDCとの中間点を、可変バルブタイミング機構20による中心位相の遅角制御の目標値に設定することで、減速燃料カット中に、吸気バルブ4が、排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期に開弁し、かつ、下死点BDC付近で閉じるようにする。
上記のようにして、減速燃料カット中の吸気バルブ4の閉時期IVCを、早閉じミラーサイクルでの閉時期IVC(減速燃料カット開始前)から遅角させて下死点付近に設定し、かつ、バルブオーバーラップの拡大による実質的な圧縮比の低下を抑制できるような開時期IVOに設定すれば、減速燃料カット中に燃焼室5(ピストン冠面18)の温度が過渡に低下することを、高い圧縮温度で抑制でき、燃料噴射再開時における排気性状の悪化やトルク変動による運転性の悪化を抑制できる。
また、図2のフローチャートに従って燃料カット時IVC制御が行われる場合と同様に、可変バルブタイミング機構20や可変リフト機構23に応答遅れがあっても、早閉じミラーサイクル運転の閉時期IVCに十分に近い状態で、燃料噴射を再開させることができ、燃料噴射の再開時に、ノッキングやトルク変動が発生することを抑制できる。
図9は、可変バルブタイミング機構20と可変リフト機構23とを備え、早閉じミラーサイクル運転が行われるエンジン1における、吸気バルブ4の閉時期IVCと圧縮温度との相関を示す。
例えば、吸気バルブ4の開時期IVOを、排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期の上死点TDC付近とし、閉時期IVCを下死点前60deg程度とする早閉じミラーサイクル運転から、減速燃料カットに入ったときに、開時期IVOをミラーサイクル運転時と同等に保持する一方、閉時期IVCを下死点前から下死点に近づける遅角制御を行った場合、閉時期IVCが下死点に近いほど有効圧縮比がより高くなることで、圧縮温度はより高くなる。
ここでは、閉時期IVCの遅角制御に伴って開時期IVOが変化せず、開時期IVOは、排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期の上死点TDC付近を保持するので、バルブオーバーラップの変化による充填効率の変化がなく、圧縮温度は、閉時期IVCが遅角するほど高くなるが、下死点BDCを過ぎると、逆に有効圧縮比が低下するため圧縮温度は低下傾向となり、結果、圧縮温度は閉時期IVC=下死点BDCとしたときに、ピーク値を示すことになる。
従って、ステップS205の燃料カット時IVC制御における閉時期IVCの目標を下死点BDCに設定することで、圧縮温度を最も高くして、燃焼室5の温度低下を効果的に抑制することができる。
前述した、可変リフト機構23を備えず、可変バルブタイミング機構20を備えるエンジンでは、作用角が一定であることから、排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期の開時期IVOに設定した場合、閉時期IVCを下死点BDCに設定することができない。
これに対し、可変バルブタイミング機構20と可変リフト機構23とを備えたエンジンでは、作用角及び作用角の中心位相を可変にできるから、排気バルブ7の閉時期EVCと略同時期の開時期IVOに設定しつつ、閉時期IVCを下死点BDCに設定することができ、より高い有効圧縮比(圧縮温度)を得られる。
尚、ステップS205における燃料カット時IVC制御においても、閉時期IVCの目標を、そのときのエンジン温度が低いほど下死点BDCにより近い位置に設定することができ、この場合、ミラーサイクル運転での閉時期IVC(例えば、下死点前60deg)から下死点BDCまでの角度範囲内で、エンジン温度に応じて閉時期IVCの目標を可変に設定することになる。
また、早閉じミラーサイクル運転を行うエンジンにおいても、吸気バルブ4として電磁駆動弁を備えることができ、この場合、閉時期IVCを応答よく変化させることができるので、ステップS203,204の処理を省略することができる。
以上、好ましい実施形態を具体的に説明したが、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
前述した燃料カット時IVC制御では、エンジン回転速度NEがカット時制御解除回転速度NCANにまで低下した時点で、燃料カット時IVC制御をキャンセルしたが、エンジン回転速度NEがリカバリ回転速度NREに近づくにつれて、遅閉じミラーサイクル運転時の閉時期IVC又は早閉じミラーサイクル運転時の閉時期IVCに向けて閉時期IVCの目標を徐々に近づけることができる。
また、減速燃料カット中に、制動状態から非制動状態に切り替わった場合に、燃料カット時IVC制御をキャンセルせずに、遅閉じミラーサイクル運転時の閉時期IVC又は早閉じミラーサイクル運転時の閉時期IVCと、燃料カット時IVC制御における閉時期IVCとの中間値にまで変化させたり、制動状態から非制動状態に切り替わった時点からの時間経過に応じて、遅閉じミラーサイクル運転時の閉時期IVC又は早閉じミラーサイクル運転時の閉時期IVCに向けて徐々に戻したりできる。
また、燃料カット時IVC制御を、吸気ポート噴射式内燃機関に適用することが可能である。吸気ポート噴射式内燃機関の場合、燃料カット中における燃焼室5の温度低下を抑制できることで、燃料カットがキャンセルされ、吸気行程噴射が再開される場合に、燃焼室5内での燃料の気化性能を改善でき、燃焼安定性を向上させることができる。
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)吸気バルブの閉時期を可変とする可変動弁機構を備えた内燃機関に適用される制御装置であって、
減速運転における燃料カット状態において、前記可変動弁機構を制御して燃料カット開始前よりも吸気バルブの閉時期を下死点に近づけ、前記燃料カット中に制動状態から非制動状態に切り替わった場合に前記吸気バルブの閉時期を下死点に近づける制御をキャンセルする、内燃機関の制御装置。
上記発明によると、減速から加速に移行する場合、一般的に、ブレーキペダルからアクペダルへの踏み替えが行われるから、ブレーキペダルから足を離して制動状態から非制動状態に切り替わった場合には、その後の加速を予測でき、係る加速予測に基づき、閉時期を戻す制御が開始される。従って、減速から加速への移行に伴う燃料噴射の再開に対して、閉時期の戻しが遅れることによって、圧縮比が高い状態で燃料噴射が再開され、ノッキングやトルク変動が発生することを抑制できる。
)請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関が、遅閉じミラーサイクル運転が行われる内燃機関であり、
燃料カット時に、遅閉じミラーサイクル運転での閉時期よりも進角させて下死点に近づける、内燃機関の制御装置。
上記発明によると、閉時期を下死点後とする遅閉じミラーサイクル運転が行われる内燃機関では、減速燃料カット時に、閉時期を進角させて下死点に近づけることで、有効圧縮比(圧縮温度)を増大させて、減速燃料カット中での燃焼室(ピストン冠面)温度の低下を抑制する。
)請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関が、早閉じミラーサイクル運転が行われる内燃機関であり、
燃料カット時に、早閉じミラーサイクル運転での閉時期よりも遅角させて下死点に近づける、内燃機関の制御装置。
上記発明によると、閉時期を下死点前とする早閉じミラーサイクル運転が行われる内燃機関では、減速燃料カット時に、閉時期を遅角させて下死点に近づけることで、有効圧縮比(圧縮温度)を増大させて、減速燃料カット中での燃焼室(ピストン冠面)温度の低下を抑制する。
)請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置において、
燃料カット開始前よりも吸気バルブの閉時期を下死点に近づける制御において、前記吸気バルブの開時期を、排気バルブの閉時期と略同時期に設定しつつ、閉時期を可及的に下死点に近づける、内燃機関の制御装置。
上記発明によると、バルブオーバーラップが大きいと充填効率の低下によって、実質的な圧縮比が低下し、圧縮温度が低下してしまうので、吸気バルブの開時期を排気バルブの閉時期と略同時期に維持させつつ、吸気バルブの閉時期をなるべく下死点に近づけることで、より高い圧縮温度が得られるようにする。
)請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関が、前記可変動弁機構として、クランクシャフトに対する吸気カムシャフトの回転位相を可変とする可変バルブタイミング機構と、吸気バルブの作用角を可変にする可変リフト機構とを備え、早閉じミラーサイクル運転が行われ、
燃料カット開始前よりも吸気バルブの閉時期を下死点に近づける制御において、開時期が、排気バルブの閉時期と略同時期になり、かつ、閉時期が下死点になるように、前記回転位相及び作用角を制御する、内燃機関の制御装置。
上記発明によると、排気バルブの閉時期と略同時期の開時期と下死点との角度間隔から、作用角の目標値が定まり、また、排気バルブの閉時期と略同時期の開時期と下死点との中点が回転位相の目標値となり、排気バルブの閉時期と略同時期の開時期と、下死点の閉時期との双方を実現して、可及的に高い圧縮温度が得られる。
)請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関が、前記可変動弁機構として、クランクシャフトに対する吸気カムシャフトの回転位相を可変とする可変バルブタイミング機構を備え、遅閉じミラーサイクル運転が行われ、
燃料カット開始前よりも吸気バルブの閉時期を下死点に近づける制御において、
前記吸気バルブの開時期を、排気バルブの閉時期と略同時期になるように、吸気カムシャフトの回転位相を進角変化させることで、前記吸気バルブの閉時期を遅閉じミラーサイクル運転での閉時期よりも下死点に近づける、内燃機関の制御装置。
上記発明によると、吸気バルブの開時期が、排気バルブの閉時期と略同時期になるように、吸気カムシャフトの回転位相を進角変化させると、開時期の変換角度だけ閉時期が進角して下死点に近づき、有効圧縮比が高くなって圧縮温度が上昇する。ここで、吸気バルブの開時期を、排気バルブの閉時期と略同時期よりも進角させると、吸気バルブの閉時期はより下死点に近づくことになるが、バルブオーバーラップの拡大によって充填効率が低下し、かえって圧縮温度を低下させることになるので、吸気バルブの開時期を、排気バルブの閉時期と略同時期としたときの閉時期で、圧縮温度がピーク値となり、燃焼室(ピストン冠面)温度の低下を効果的に抑制できる。
)請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関が、前記可変動弁機構として、クランクシャフトに対する吸気カムシャフトの回転位相を可変とする可変バルブタイミング機構を備え、遅閉じミラーサイクル運転が行われ、
燃料カット開始前よりも吸気バルブの閉時期を下死点に近づける制御において、
前記吸気バルブの開時期が、略吸気上死点になるように、吸気カムシャフトの回転位相を進角変化させることで、前記吸気バルブの閉時期を遅閉じミラーサイクル運転での閉時期よりも下死点に近づける、内燃機関の制御装置。
上記発明によると、吸気バルブの開時期が略吸気上死点になるように、吸気カムシャフトの回転位相を進角変化させると、開時期の変換角度だけ閉時期が進角して下死点に近づき、有効圧縮比が高くなって圧縮温度が上昇する。ここで、吸気バルブの開時期が略吸気上死点とすれば、バルブオーバーラップ量を十分に小さくして充填効率の低下を抑制できるので、ピーク値に近い圧縮温度を得て、燃焼室(ピストン冠面)温度の低下を効果的に抑制できる。
1…エンジン(内燃機関)、2…吸気通路、3…燃料噴射弁、4…吸気バルブ、5…燃焼室、7…排気バルブ、18…ピストン冠面、20…可変バルブタイミング機構、31…ECM(エンジン・コントロール・モジュール)、33…ブレーキスイッチ

Claims (2)

  1. 吸気バルブの閉時期を可変とする可変動弁機構を備えた内燃機関に適用される制御装置であって、
    減速運転における燃料カット状態において、前記可変動弁機構を制御して燃料カット開始前よりも吸気バルブの閉時期を下死点に近づけ、前記燃料カット中に運転者の加速意図を検出した場合に、前記燃料カット中に前記吸気バルブの閉時期を下死点に近づける制御をキャンセルする、内燃機関の制御装置。
  2. 吸気バルブの閉時期を可変とする可変動弁機構を備えた内燃機関に適用される制御装置であって、
    減速運転における燃料カット状態において、前記可変動弁機構を制御して燃料カット開始前よりも吸気バルブの閉時期を下死点に近づけ、前記燃料カット中に燃料噴射が再開されるリカバリ回転速度よりも高い所定回転速度にまで前記内燃機関の回転速度が低下したときに、前記吸気バルブの閉時期を下死点に近づける制御をキャンセルする、内燃機関の制御装置。
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