JP5784286B2 - ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1−1)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。なお、「水膨潤性」とは、ERT441.2−02で規定するCRC(無加圧下吸水倍率)が通常5[g/g]以上であることをいい、また、「水不溶性」とは、ERT470.2−02で規定するExt(水可溶分)が通常0〜50重量%であることをいう。
本発明における「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、繰り返し単位として、アクリル酸および/またはその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を主成分とする吸水性樹脂を意味する。
本発明における「初期色調」とは、製造直後の吸水性樹脂またはユーザー出荷直後の吸水性樹脂の色調をいい、通常、工場出荷前の色調で管理する。色調の測定方法については、国際公開第2009/005114号に記載される方法(Lab値、YI値、WB値等)を例示することができる。
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)である吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recomeded Test Method)の略称である。なお、本発明においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(以下、「吸水倍率」と称することもある)を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.2gについて、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する30分間の自由膨潤後さらに遠心分離機で水切りした後の吸水倍率(単位;[g/g])である。
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する1時間、2.06kPa(0.3psi)での荷重下膨潤後の吸水倍率(単位;[g/g])である。なお、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更して測定することもある。
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200gに対して、吸水性樹脂1gを500rpmで16時間攪拌した後、溶解したポリマー量をpH滴定で測定した値(単位;重量%)である。
「FSC」は、Free Swell Capacityの略称であり、自由膨潤倍率を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に吸水性樹脂0.20gを30分浸漬した後、遠心分離機で水切りを行わないで測定した吸水倍率(単位;[g/g])である。
「Residual Monomers」とは、吸水性樹脂中に残存するモノマー量を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200cm3に対して、吸水性樹脂1.0gを500rpmで1時間攪拌した後、溶解した残存モノマー量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定した値(単位;ppm)である。
「PSD」とは、Particle Size Disributionの略称であり、ふるい分級により測定される粒度分布を意味する。なお、重量平均粒子径(D50)および粒子径分布幅は欧州公告特許第0349240号明細書7頁25〜43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。
「pH」(ERT400.2−02) : 吸水性樹脂のpH。
「Moisture Content」(ERT430.2−02) : 吸水性樹脂の含水率。
「Flow Rate」(ERT450.2−02) : 吸水性樹脂の流下速度。
「Density」(ERT460.2−02) : 吸水性樹脂の嵩比重。
「Respirable Particles」(ERT480.2−02) : 吸水性樹脂の呼吸域粉塵。
「Dust」(ERT490.2−02) : 吸水性樹脂中に含まれる粉塵。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上、Y以下」であることを意味する。また、重量の単位である「t(トン)」は、「Metric ton(メトリック トン)」であることを意味し、さらに、特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」または「質量ppm」を意味する。
(2−1)単量体水溶液調整工程
(a)単量体(架橋剤を除く)
本発明の単量体は、上記のアクリル酸またはその塩を主成分としており、吸水特性や残存モノマーの低減の点から重合体の酸基が中和されていることが好ましく、中和率は10〜100モル%、さらには30〜95モル%、特に50〜90モル%、60〜80モル%である。中和は重合後の重合体(含水ゲル)に行ってもよく、単量体に行ってもよいが、好ましくは、生産性やAAP向上の面等から、単量体を中和することが好ましい。従って、本発明で好ましい単量体は、アクリル酸の部分中和塩である。なお、本発明の「単量体」は、1種類の単量体および複数の単量体の混合物、あるいは単量体組成物のいずれをも意味する。
本発明では、単量体として、吸水特性の観点から架橋剤(別称;内部架橋剤)を使用することが特に好ましい。架橋剤は物性面から、架橋剤を除く上記単量体に対して0.001〜5モル%、好ましくは0.005〜2モル%、さらには0.01〜1モル%、特に0.03〜0.5モル%で使用される。
本発明では、酢酸およびプロピオン酸の合計含有量が600ppm以上のアクリル酸を使用することを特徴とする。ここで、購入先や購入時期、アクリル酸メーカーやその製造方法などが異なる複数のアクリル酸を用いてもよく、その場合、混合後のアクリル酸としての酢酸およびプロピオン酸の合計量で規定される。
アクリル酸中に酢酸や酢酸やプロピオン酸がごく少量含まれることは周知であり、上記特許文献7(米国特許第6444744号)の実施例1〜4では酢酸100ppmやプロピオン酸100ppmのアクリル酸を製造したうえで、該アクリル酸で吸水性樹脂を製造している。
本願では、臭気(酸臭)の問題から残存する酢酸およびプロピオン酸は吸水性樹脂では1重量%以下に低減させた方が好ましく、後述の加熱処理、特に加熱乾燥、さらには共沸脱水で揮発ないし除去させることが好ましい。臭気の観点から得られる吸水性樹脂中のプロピオン酸量、さらには酢酸およびプロピオン酸の合計量は、0.5重量%以下、さらには0.3重量%以下、0.1重量%以下にされる。かかる揮発工程の負荷低減のみならず、プロピオン酸(沸点141℃)に比べてより低沸点の酢酸(沸点118℃)は、臭気の観点から原料中でも少ないことが好ましく、よって、単量体は、プロピオン酸より少ない酢酸を含むか、またはND(検出不能)であることが好ましい。
本発明で使用するアクリル酸中に、アクリル酸ダイマーが含まれていてもよい。アクリル酸ダイマーを問題とする特許文献2、3とは異なり、特定の重合および乾燥を行うことによって、アクリル酸ダイマーの含有量が100ppm以上、さらには300ppm以上、600ppm以上、1000ppm以上となっても問題が生じない。かかるアクリル酸ダイマー量のアクリル酸を使用することで、精製後のアクリル酸からも経時的に増加するアクリル酸ダイマーを除去・再精製する必要もなく、安価に高収率で吸水性樹脂を製造できる。ただし、多量のアクリル酸ダイマーは吸水倍率(CRC)を低下させるおそれがある。よって、アクリル酸中のアクリル酸ダイマー含有量の上限は5重量%以下、さらには1重量%以下である。
重合時に好ましくは重合禁止剤を含む。重合禁止剤としては国際公開第2008/096713号に例示のN−オキシキシル化合物、マンガン化合物、置換フェノール化合物が挙げられ、好ましくは置換フェノール類、特にメトキシフェノール類が挙げられる。
本願での単量体は好ましくは鉄を含む/ないし鉄がゼロである。鉄量(Fe)は単量体に対して2ppm以下、さらには1.5ppm以下、特に1.0pm以下、0.5ppm以下、さらには0.3ppm以下である。鉄が多いと重合率の低下によって残存モノマーが増加し、臭気の問題が発生するのみならず、得られる吸水性樹脂の着色や劣化の問題が発生するので好ましくない。なお、鉄は主に中和に用いる塩基、特に苛性ソーダ、炭酸(水素)ナトリウム中の微量成分として主に含有されるため、苛性ソーダ等の純度を制御することで制御できる。Feの下限は塩基(特に苛性ソーダ)の精製コストから0.001ppm、さらには0.01ppmで十分である。
本発明でアクリル酸の製造方法は特に問わず、例えば、原料としてプロピレンやプロパン等の化石原料を気相酸化してもよく、また、グリセリン等の非化石原料、特に天然物を酸化してもよい。かかる酸化はアクロレインを経由ないし単離してもよく、直接、アクリル酸を得てもよい。
非化石原料からかかるアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法は、例えば、国際公開第2006/092271号、同第2006/092272号、同第2006/136336号、同第2008/023039号、同第2008/023040号、同第2007/109128号等に例示されている。これら6件の特許文献はなんら本願吸水性樹脂の製造方法を示唆しない。
ヒドロキシプロピオン酸から脱水でアクリル酸を得る方法は、例えば、国際公開第2002/090312号、同第2003/08795号、同第2005/095320号、同第2007/106099号、米国特許出願公開第2007/219391号、国際公開第2008/1042958号等に例示されている。脱水される未中和ヒドロキシプロピオン酸は酸ないしその塩(特に一価塩、さらにはナトリウム塩やアンモニム塩)が使用され、その際、溶媒は使用してもよく未使用でもよい。得られたアクリル酸は晶析や蒸留等で精製すればよく、アクリル酸の晶析法は層状または分散型で連続または回分で行われ、例えば、国際公開第2008/023039号等に示されている。なお、ヒドロキシプロピオン酸アンモニム塩からの脱水にはアクリルアミドの副生に注意する必要がある。
これら単量体は、通常水溶液で重合される。水溶液中の単量体濃度はアクリル酸塩の種類によって決定されるが、通常15〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは30〜45重量%である。また、単量体を水溶液で重合するときには、澱粉、ポリビニルアルコール等の高分子化合物、各種キレート剤、各種添加剤を0〜30重量%(対単量体)添加して、併用してもよい。
プロピオン酸および酢酸の除去には、特定の逆相懸濁重合に加えて、疎水性有機溶媒中での共沸脱水も好ましいことも見いだされた。好ましい除去方法として、逆相懸濁重合の乾燥に用いられる共沸脱水が適用できる。さらに、本発明は逆相懸濁重合にも好適に適用できる。すなわち、本発明では吸水性樹脂の製造方法において、前記水溶性不飽和単量体が所定量のプロピオン酸を含有し、かつ共沸脱水でプロピオン酸を除去することを特徴とする、吸水性樹脂の製造方法を提供し、その際の重合方法として逆相懸濁重合を採用する。
単量体水溶液として15〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは30〜45重量%を用いて上記逆相懸濁重合して得られた含水ゲル状重合体は重合前とほぼ同じか若干上昇した固形分(+5〜10重量%)であり、さらに、乾燥される。乾燥工程では必須に該共沸脱水され、かかる共沸脱水を経て効率的に酢酸およびプロピオン酸が除去される。共沸脱水は固形分60〜95重量%、さらには75〜93重量%まで行われ、さらに、共沸脱水後に疎水性有機溶媒を除去する第2の乾燥が行われる。
表面架橋は上記乾燥工程の終了後あるいはその途中(好ましくは含水率60〜95重量%、さらには75〜93重量%)の時点で行われる。表面架橋は上記重合や乾燥に用いた重合釜や乾燥釜中の吸水性樹脂の疎水性溶媒分散体(分散状態の吸水性樹脂)に表面架橋剤を添加してもよく、また、重合釜や乾燥釜から溶媒をろ過ないし蒸発させた吸水性樹脂の粉末(非分散状態の吸水性樹脂)に適用してもよいが、工程や装置の簡便さから好ましくは疎水性溶媒分散体(分散状態の吸水性樹脂)に表面架橋剤が添加され、該溶媒中で加熱されて表面架橋される。
粒度は重合(特に逆相懸濁重合)、粉砕、分級、造粒、微粉回収などで適宜調整できる。以下、粒度は標準篩(JIS Z8801−1(2000))で規定される粒度とする。
(a)キレート剤(好ましくは水溶性有機キレート剤)
本発明のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、例えば、さらに色安定性(ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を、高温高湿条件下で、長期間保存する場合の色安定性)の向上や耐尿性(ゲル劣化防止)の向上を目的とする場合は、好ましくは上記使用量のキレート剤が用いられる。
さらには、色安定性効果や耐尿性のために、米国特許出願公開第2006/88115号に例示の還元性無機塩を上記使用量で使用してもよい。
吸水性樹脂の形状は通液性の観点から、また、酢酸およびプロピオン酸の除去の観点からも、球状またはその造粒物好ましく、かかる吸水性樹脂は例えば蔗糖脂肪酸エステルを界面活性剤して上記逆相懸濁で得られる。造粒には水不溶性無機微粒子(好ましくはシリカ微粒子、例えば、アエロジル200商品名)を逆相懸濁重合中の含水ゲル状架橋重合体に添加したり、単量体水溶液を逐次的に疎水性有機溶媒中に添加する逆相懸濁重合で得られる。好ましい形態は図1にも示す、球状の造粒粒子である。なお、添付の図1は球状の造粒粒子である吸水性樹脂の電子顕微鏡写真である。
衛生材料、特に紙オムツを目的とする場合、上記重合や表面架橋によって、下記(4−1)〜(4−10)の少なくとも1つ、さらにはAAPを含め2つ以上、特に3つ以上を制御することが好ましい。下記を満たさない場合、後述の高濃度オムツでは十分な性能を発揮しないことがある。なお、好適な粒度や14C割合(非化石原料の割合)は前記のとおりである。
かかる吸水性樹脂は初期着色に優れ、例えば、ハンターLab表面色系において、L値(Lightness)が好ましくは85以上、より好ましくは87以上、さらに好ましくは89以上である。b値は−5から10が好ましく、より好ましくは−5〜5、さらに好ましくは−4〜4であり、また、a値は−2〜2が好ましく、より好ましくは−1〜1、さらに好ましくは−0.5〜1、最も好ましくは0〜1である。YIは10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。WBは70以上が好ましく、75以上がより好ましく、77以上が更に好ましい。さらに、かかる吸水性樹脂は経時着色にも優れ、長期保存の促進試験(モデル)である高温高湿でも十分な白色度を示す。
紙オムツでのモレを防止するため、上記重合を達成手段の一例として、1.9kPaの加圧下さらには4.8kPaの加圧下での0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液に対する吸水倍率(AAP)が好ましくは20[g/g]以上、よりに好ましくは22[g/g]以上、さらに好ましくは24[g/g]以上に制御する。上限は他の物性とのバランスから40[g/g]程度である。
紙オムツでのモレを防止するため、上記重合を達成手段の一例として、加圧下での通液特性である0.69重量%塩化ナトリウム水溶液流れ誘導性SFCは1[×10−7・cm3・s・g−1]以上、好ましくは10[×10−7・cm3・s・g−1]以上、より好ましくは50[×10−7・cm3・s・g−1]以上、さらに好ましくは70[×10−7・cm3・s・g−1]以上、特に好ましくは100[×10−7・cm3・s・g−1]以上に制御する。
無加圧下吸収倍率(CRC)は好ましくは10[g/g]以上であり、より好ましくは20[g/g]以上、さらに好ましくは25[g/g]以上、特に好ましくは30[g/g]以上に制御する。CRCは高いほど好ましく上限値は特に限定されないが、他の物性とのバランスから、好ましくは50[g/g]以下、より好ましくは45[g/g]以下、さらに好ましくは40[g/g]以下である。
水可溶分量は、好ましくは0〜35重量%以下、より好ましくは25重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。また、劣化可溶分も上記の範囲であることが好ましく、そのためには、金属キレートおよび/または還元性無機塩が含有されることが好ましい。
上記重合を達成手段の一例として、残存モノマー(残存単量体)量は通常500ppm以下、好ましくは0〜400ppm、より好ましくは0〜300ppm、特に好ましくは0〜200ppm、0〜100ppmとする。
吸水速度や耐衝撃性からも含水率(180℃で3時間の乾燥減量で規定)を5〜15重量%、さらには6〜14重量%、特に7〜13重量%とする。
600ppm以下、さらには300ppm以下とされる。
劣化および着色の観点から上記範囲である。
最終製品として重量平均粒子径は200〜600μm、さらには300〜600μmの球状またはその造粒粒子(図1を参照)であり、850μm以上および150μm以下の微粉末の含有量は少ないほど、具体的には各々10質量%以下、さらには5質量%以下が好ましい。
本発明の吸水性樹脂の用途は特に限定されないが、好ましくは、紙オムツ、生理ナプキン、失禁パット等の吸収性物品に使用され得る。特に、従来、原料由来の臭気、着色等が問題になっていた高濃度オムツ(1枚のオムツに多量の吸水性樹脂を使用したもの)に使用され、特に前記吸収性物品中の吸収体上層部に使用された場合に、特に優れた性能が発揮される。
[測定例1]初期色調
日本電色工業株式会社製の分光式色差計SZ−Σ80COLOR MEASURING SYSTEMを用いて行った。測定の設定条件は、反射測定が選択され、内径30mmで且つ高さ12mmである付属の粉末・ペースト用容器が用いられ、標準として粉末・ペースト用標準丸白板No.2が用いられ、30Φ投光パイプが用いられた。備え付けの粉末・ペースト用容器に約5gの吸水性樹脂を充填した。
吸水性樹脂を高温高湿下(70℃、75%RH)に10日間放置したのち、上記(a)の手法で色を測定した。
上記EDANAのERT、ないし、米国特許出願公開第2006/204755号に準じて、0.9重量%生理食塩水でのCRC(無加圧下吸水倍率)、pH可溶分、残存アクリル酸,SFC(生理食塩水流れ誘導性)を測定した。
ゲル臭気は容量100mlの蓋つき円筒容器(商品名パックエース)に50gの0.9重量%生理食塩水を入れ、吸水性樹脂2gで膨潤ゲル化後に蓋をした。所定時間放置後、蓋を開けてゲルの臭いを10人のパネラーが嗅いで5段階(数字が小さいほど良好;1は無臭、2はほぼ無臭・・・5は強い悪臭)で評価し、その平均点で臭いとした。
国際公開第2005/092956号に従い、尿中のゲル劣化成分であるL−アスコルビン酸の存在下で吸水性樹脂の可溶分を測定した。
吸水性樹脂の飽和膨潤ゲルをマヨネーズに入れて蓋をして、姫路市にて太陽光下に放置してゲルの劣化を観察した。
吸水性樹脂1gを直径・約30mmのアルミカップに入れて、180℃の無風オーブン中で3時間乾燥し、その乾燥減量を含水率[重量%]とした。
国際公開第2006/087084号に準じて、非化石原料由来のアクリル酸を得た。すなわち、天然油脂由来のグリセリンを強酸固体触媒下で脱水反応させ、プロパナール等の副生物を含有するアクロレインを得、次いで、該アクロレインを接触気相酸化することでガス状のアクリル酸とし、さらに水で捕集してアクリル酸水溶液にし、これを蒸留することで、不純物としてプロピオン酸3重量%を含む非化石原料由来のアクリル酸を得た。
上記製造例1で得られたアクリル酸について、さらに蒸留操作を2回行ったものの、アクリル酸と沸点が近いプロピオン酸含有量は、ほとんど変化しなかった。
上記製造例1で得られたアクリル酸について、晶析法で精製することで、不純物としてプロピオン酸1.2重量%を含む非化石原料由来のアクリル酸を得た。
上記特許文献12(米国特許出願公開第2009/0035855号)の製造例1に準じて、アクリル酸を得た。
上記特許文献12(米国特許出願公開第2009/0035855号)の製造例2に準じて、アクリル酸を得た。
Feイオンを0.34ppm含有する48重量%苛性ソーダおよび純水を、上記製造例3で得られた非化石原料由来のアクリル酸(プロピオン酸1.2重量%、酢酸500pm、p−メトキシフェノール60ppm含有)に加えて中和した。
実施例1において、同じ単量体を用いて重合方法を逆相懸濁重合から水溶液重合(非沸騰重合、重合開始温度30℃、ピーク温度90℃)、乾燥方法を共沸脱水(シロクヘキサンの沸点81℃で還流)から熱風乾燥(170℃×20分)に変更した。
実施例1において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、単量体濃度を35重量%から45重量%に変更し、さらに、重合方法を逆相懸濁重合から水溶液重合(沸騰水溶液重合、重合開始温度90℃、ピーク温度120℃)、乾燥方法を共沸脱水(シロクヘキサンの沸点81℃で還流)から熱風乾燥(170℃×20分)に変更した。
比較例2(170℃×20分の熱風乾燥)において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、比較含水ゲル状架橋重合体(2)の乾燥温度をあげて、乾燥を熱風乾燥(200℃×20分)に変更した。結果を表1に示す。
比較例3(200℃×20分の熱風乾燥)において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、比較含水ゲル状架橋重合体(2)の乾燥時間を長くして、乾燥を熱風乾燥(200℃×40分)に変更した。結果を表1に示す。
比較例2(170℃×20分の熱風乾燥)において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、比較含水ゲル状架橋重合体(2)の乾燥温度を高くして、乾燥を熱風乾燥(180℃×20分)に変更した。結果を表1に示す。
比較例5(180℃×20分の熱風乾燥)において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、比較含水ゲル状架橋重合体(2)の乾燥時間を長くして、乾燥を熱風乾燥(180℃×180分)に変更した。結果を表1に示す。
比較例2(170℃×20分の熱風乾燥)において、酢酸およびプロピオン酸をより除去するために、比較含水ゲル状架橋重合体(2)をまず熟成(140℃×60分)して、さらに、比較例2と同様に170℃×20分の熱風乾燥を行った。結果を表1に示す。
比較例2(中和率70%、濃度45%の沸騰水溶液重合)において、単量体の中和率を80モル%に変更する以外は同様に、沸騰水溶液重合および熱風乾燥(170℃×20分)を行った。結果を表1に示す。
比較例2(中和率70%、濃度45%の沸騰水溶液重合)において、単量体の中和率を50モル%に変更する以外は同様に、沸騰水溶液重合および熱風乾燥(170℃×20分)を行った。結果を表1に示す。
実施例1での特定の逆相懸濁重合、共沸脱水(シクロヘキサンの沸点81℃)および第2乾燥では、酢酸(沸点118℃)およびプロピオン酸(沸点143℃)がその沸点以下の重合温度および乾燥温度でも75%除去できて酸臭がしない。それに対して、比較例1〜7では乾燥温度、重合温度率などを種々変更した水溶性重合および熱風乾燥(140〜200℃)では、酢酸およびプロピオン酸が40%程度にすぎず、吸水性樹脂に酸臭が残る。比較例8,9でも中和率を変更するが、いずれも除去率は実施例に遥かに及ばず、酸臭が残存する。
実施例1において、アクリル酸の調整方法5で得られたアクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を使用した。収率やコストを犠牲にしてアクリル酸を精製しても、特定の逆相懸濁重合および共沸脱水、さらには第2乾燥を行うことで、酸臭の点で実施例1と変わりなく、コスト的に不利である。
実施例1において、純度の異なる48重量%苛性ソーダ(Feが3.4ppm)を用いて単量体(Feが対単量体固形分で2.35ppm)を調整して、実施例1と同様に重合を行った。得られた比較吸水性樹脂は着色および劣化安定性で実施例1より劣っていた。
実施例1において、単量体水溶液中のp−メトキシフェノールを単量体水溶液の固形分に対し300ppmとする以外は同様に重合を行った。得られた比較吸水性樹脂は着色で実施例1より劣っていた。
実施例1において、単量体水溶液中のp−メトキシフェノールを0ppmとする以外は同様に操作したが、重合の安定性に劣っていた。さらに、得られた比較吸水性樹脂は実施例1で得られた吸水性樹脂(p−メトキシフェノールが50ppm)と比較して、p−メトキシフェノールが0ppmではゲル劣化(流動化)が早く、耐光性も劣っていた。
実施例1において、共沸脱水後にろ過した吸水性樹脂について、180℃で60分乾燥することで、固形分を1%にした。得られた比較吸水性樹脂は残存モノマーが増加して、結果、酸臭でも劣っていた。実施例1の吸水性樹脂の残存モノマーが100ppmであったのに対して、固形分1%まで乾燥して得られた比較吸水性樹脂(6)は残存モノマーが1000ppm以上に増加して、結果、酸臭でも劣っていた。
実施例1において、単量体の中和率を80モル%とする以外は同様に逆相懸濁重合および共沸脱水を行った。得られた球状の吸水性樹脂(2)の性状を表2に示す。
実施例1において、単量体の中和率を50モル%とする以外は同様に逆相懸濁重合および共沸脱水を行った。得られた球状の吸水性樹脂(3)の性状を表2に示す。
実施例1で得られた吸水性樹脂に対して、さらにキレート剤(ジエチレントリアミンペンタ5酢酸)を100ppm添加した。ゲル劣化および経時着色は実施例1より向上し、まったく見られなかった。得られた球状の吸水性樹脂(4)の性状を表2に示す。
実施例1で得られた吸水性樹脂に対して、さらにキレート剤(ジエチレントリアミンペンタ5酢酸)を100ppm添加した。ゲル劣化および経時着色は実施例1より向上し、まったく見られなかった。得られた球状の吸水性樹脂(5)の性状を表2に示す。
上記特許文献11の比較例1において、特許文献11に開示のないFe量を0.24ppm、p−メトキシフェノールを60ppmとし、さらに、共沸脱水後の乾燥を減圧乾燥から熱風乾燥100℃で30分に変更することで、含水率8%とした。
上記実施例1のアクリル酸(酢酸およびプロピオン酸が1.2重量%)について、特許文献10(特開2004−210924号)の製造例1に準じた逆相懸濁重合および共沸脱水を行った。さらに、特許文献11に開示のない第2の乾燥として、熱風乾燥100℃で30分を行った。
実施例1において、アクリル酸中の酢酸およびプロピオン酸の合計量を2000ppmとする以外は同様に行った。得られた球状の吸水性樹脂(9)の性状を表2に示す。
実施例1において、アクリル酸を室温で7日間放置して、アクリル酸中のアクリル酸ダイマー量を2000ppm増加させる以外は同様に行った。得られた球状の吸水性樹脂(9)の残存モノマーは実施例1の吸水性樹脂と同じく100ppmであり、本発明の製造方法では、経時的に増加するアクリル酸ダイマー量の影響やクリル酸の保存時間の影響を受けないことが判る。
実施例1と比較例10との対比から、従来、酸臭で悪影響を及ぼすとされた酢酸およびプロピオン酸は吸水性樹脂の吸水倍率を向上させることが判明した。所定量の酢酸およびプロピオン酸を特定の重合および乾燥に用いることで、吸水倍率の吸水倍率も向上し、さらに、アクリル酸を過度に精製せずとも酸臭のない吸水性樹脂が得られる。また、実施例1および実施例9との対比、実施例1と比較例14の対比から、本発明の製造方法ではアクリル酸ダイマーの影響を受けず、過度のアクリル酸の精製を必要としない。
Claims (13)
- 酢酸およびプロピオン酸の合計含有量が600ppm以上のアクリル酸を用いて単量体水溶液を調整する工程と、該単量体水溶液の重合工程と、得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、含水ゲル状架橋重合体またはその乾燥物の表面架橋工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、
上記単量体は、プロピオン酸より少ない含有量の酢酸と、10〜200ppmのp−メトキシフェノールを含み、
上記単量体水溶液中の固形分量に対するFe含有量が2ppm以下であり、
上記重合工程が、p−メトキシフェノールおよび界面活性剤の存在下、過硫酸塩を重合開始剤とする、炭素数6〜8の疎水性有機溶媒中での逆相懸濁重合であり、
上記乾燥工程が、疎水性有機溶媒中における含水ゲル状架橋重合体中の固形分が60〜95重量%になるまで共沸脱水を行う第一乾燥工程と、共沸脱水後に攪拌または流動乾燥を行う第二乾燥工程とからなり、
上記第二乾燥工程が表面架橋後に行われ、含水率を5〜15重量%に調整することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。 - 上記アクリル酸中のアクリル酸ダイマー含有量が100ppm以上である、請求項1に記載の製造方法。
- 上記アクリル酸中のプロピオン酸および酢酸の合計含有量が2重量%以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
- 上記アクリル酸中の酢酸の量が1000ppm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルであり、得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の形状が球状またはその造粒物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記疎水性有機溶媒がn−ヘプタンまたはシクロヘキサンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記重合工程が単量体水溶液を逐次的に疎水性有機溶媒中に添加する逆相懸濁重合である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記疎水性有機溶媒を蒸留し、回収・再利用する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記含水ゲル状架橋重合体に水不溶性無機微粒子を添加する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記含水ゲル状架橋重合体に還元性無機塩を添加する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記アクリル酸が非化石原料由来のアクリル酸である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記アクリル酸が非化石原料由来のアクリル酸と化石原料由来のアクリル酸との混合物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記第一乾燥工程における乾燥温度が60〜140℃である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
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