JP5783507B2 - 断熱システム - Google Patents
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Description
壁部における断熱構造としては、グラスウールや発泡性断熱材などが開発されている。
窓部は一般的に、ガラス板と、このガラス板の外周を囲う窓枠とで構成されている。
ガラス板の部分の断熱性能を向上させるために、ガラス板を厚さ方向に互いに離間させた状態で複数枚重ねて配置することが行われている。また一方で、窓部の窓枠における断熱性能を高めるために、たとえば、特許文献1に記載した断熱枠が知られている。
室内部材と室外部材とが断熱部材により熱伝導しにくくなることで、断熱性能や防露性能を向上できるという。
本発明の断熱システムは、窓部を有する建造物に組み込み可能な断熱システムであって、前記窓部の窓枠に設けられ、前記建造物の外部空間と内部空間とを連通する連通部を有するとともに前記連通部を通過する空気に熱を伝達する伝熱部材と、前記外部空間に対する前記内部空間の圧力を所定の範囲に調節する圧力調節手段と、を備え、前記所定の範囲は、前記内部空間の温度が前記外部空間の温度よりも高い場合には、前記外部空間の圧力に対して前記内部空間の圧力が低下した範囲のことであり、前記内部空間の温度が前記外部空間の温度よりも低い場合には、前記外部空間の圧力に対して前記内部空間の圧力が上昇した範囲のことであり、前記伝熱部材の前記連通部を前記空気が通過する際に、前記空気が通過する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることを利用した断熱であるダイナミックインシュレーションにより断熱効果を発揮することを特徴としている。
また、上記の断熱システムにおいて、前記圧力調節手段は1つの送風機であることがより好ましい。
また、上記の断熱システムにおいて、外部空間と内部空間は、床部、壁部及び天井部を一体に形成することで分離されると共に、床部、壁部及び天井部は断熱材料を有し、断熱材料同士を連続させてあり、一つの壁部に前記窓部の窓枠が設けてあり、一つの壁部に連なる他の壁部に前記外部空間と前記内部空間とを連通するダクトを設けてあることがより好ましい。
図1に示すように、住宅1は、水平面に略平行に配置された床部2と、床部2上に立設された壁部3、4と、壁部3および壁部4の上端部とにそれぞれ接続された天井部5とを有している。床部2、壁部3、4および天井部5は、不図示の構造材料と断熱材料とを有している。
床部2、壁部3、壁部4および天井部5は一体に形成されることで、住宅1は、一定の強度を有するとともに、外部空間S1と住宅1内の内部空間S2とを分離している。
窓部10は、上枠11a、下枠11b、および不図示の左右の縦枠を四周枠組みした窓枠11と、上框12a、下框12b、および不図示の左右の縦框を四周枠組みしてガラス板の面材13を2枚組み込んだ障子セット14とを有している。
上枠11aには、内側伝熱部材(伝熱部材)15と、外側伝熱部材(伝熱部材)16とが設けられている。内側伝熱部材15は、カバー17内に配置されていて、一方の端面が外部空間S1側における面材13の上縁部に下方を向くように配置されていると同時に、他方の端面が内部空間S2側において鉛直面とほぼ平行となるように配置されている。
外側伝熱部材16もカバー18内に配置されていて、一方の端面が外部空間S1側において鉛直面とほぼ平行となるように配置されていると同時に、他方の端面が内部空間S2側において鉛直面とほぼ平行となるように配置されている。
さらに、面材13の両側方にも、内側伝熱部材15、外側伝熱部材16、およびカバー17、18と同様に、不図示の内側伝熱部材、外側伝熱部材、およびカバーが配置されている。内側伝熱部材は、面材13の周囲に合計で4つ、面材13を4方から囲うように配置されている。それぞれの内側伝熱部材の一方の端面は、対応する面材13の縁部に向くように配置され、全体として、面材13の全ての縁部に対して、いずれかの内側伝熱部材の一方の端面が向くように配置されている。
図2に示すように、外側伝熱部材16は多孔質材料で形成されていて、一端16aから他端16bまで連通する空間である連通部21を有している。外側伝熱部材16を壁部3の開口3aに配置することで、住宅1の外部空間S1と内部空間S2とが微細な空間により連通する。
本実施形態では、外側伝熱部材16は、たとえば、金属等の粒子22を互いに接続させることにより形成されている。粒子22の外径は約20μm以上1000μm以下、外側伝熱部材16の空隙(ポア)率が10%以上90%以下、そして、外側伝熱部材16のポア径が約20μm以上1000μm以下であることが好ましい。
空隙率が10%未満になると、外側伝熱部材16における圧力損失が大きくなり、ダイナミックインシュレーションにより断熱効果を発揮しにくくなる。また、空隙率が90%を越えると、外側伝熱部材16中の水分拡散係数が大きくなり、外側伝熱部材16の内部で結露が生じる危険性が高くなる。
これらの範囲は、外側伝熱部材16の圧力損失、結露発生の有無、断熱性能などにより、適切な範囲に設定される。
なお、多孔質材料は一定の強度を有するので、外側伝熱部材16を開口3aに取付けたときに、壁部3の強度を高めることができる。
2枚の面材13は、互いに一定距離離間して間に空気の層を形成することで、面材13の厚さ方向に対する断熱性能を向上させている。
以上説明した伝熱部材15、15A、16、16A、および送風機24で、本実施形態の断熱システム25を構成する。
室内側ユニット28は、内部空間S2の空気と熱交換を行う熱交換器30と、熱交換器30に空気を送る室内側送風機31と、熱交換器30および室内側送風機31が取付けられたケーシング32とを有している。熱交換器30はケーシング32内に配置されていて、室内側送風機31を運転すると、内部空間S2の空気がケーシング32に形成された吸気口32aから吸い込まれ、熱交換器30との間で所定量の熱を交換した後で、ケーシング32に形成された噴出し口32bから噴き出される。
熱交換器30、35、配管37、減圧器、切替え弁および圧縮機38内には冷媒が所定の圧力で封入されていて、これらの要素で冷媒回路を構成している。
なお、減圧器は冷媒の圧力を低下させるものであり、切替え弁は冷媒回路を流れる冷媒の向きを切り替えるものである。
まず、切替え弁により冷媒回路を暖房用に設定し、送風機24、室内側送風機31、室外側送風機36および圧縮機38を運転させる。このとき、送風機24を第3種機械換気方式で運転させ、ダクト23を通して内部空間S2から外部空間S1に空気を排出させることで外部空間S1に対して内部空間S2の圧力を低下させる。
冷媒は、配管37内を方向D1に流れ、熱交換器30の温度が上昇すると同時に熱交換器35の温度が低下する。内部空間S2の空気は熱交換器30により加熱され、外部空間S1の空気は熱交換器35により冷却される。
外部空間S1の空気Aの温度は内部空間S2の空気の温度に対して低いので、空気Aは連通部21を通過するときに外側伝熱部材16から熱を伝達される。このため、空気Aが流入する外部空間S1から内部空間S2に向かう方向とは逆方向である内部空間S2から外部空間S1に向かう方向の熱輸送が妨げられ、本実施形態の断熱システムがダイナミックインシュレーションによる断熱効果を発揮して、内部空間S2が暖かく保たれる。
さらに、一般的に、冬季において外部空間S1の湿度は低下しているので、内部空間S2に外部空間S1の空気を導入することで内部空間S2の湿度を下げ、窓部10の内部空間S2側の面が結露するのを防止することができる。
また、外側伝熱部材16は多孔質材料で形成されているので、空気に熱を効果的に伝達させることができる。
さらに、内側伝熱部材15、15Aを備えているので、面材13の縁部の断熱性能を高めることができる。
このように、外側伝熱部材16は、壁部3において、面材13の上方の部分の断熱を行い、内側伝熱部材15は、面材13の上部の縁部近傍の断熱を行っている。なお、本実施形態では、内側伝熱部材15および外側伝熱部材16を分離することなく一体に形成してもよい。
シミュレーションの対象となる形状および空間を単純化するために、図4および図5に示すように、障子セット14を、厚さ(X軸方向)が100mm、長さと幅がそれぞれ1000mmの板状とした。外側伝熱部材16、16Aの厚さを100mm、高さを20mmとし、障子セット14の天面および底面にそれぞれ配置した。また、障子セット14の両側面(図4におけるZ軸方向)にも、厚さ100mm、幅20mmの外側伝熱部材16B、16Cをそれぞれ配置し、4つの外側伝熱部材16、16A、16B、16C(以下、「外側伝熱部材16など」と称する。)が障子セット14をX軸回りに一周囲むように配置した。そして、障子セット14および外側伝熱部材16などに対して、X軸方向の一方側に厚さ500mmの外部空間S1を配置し、X軸方向の他方側に厚さ500mmの内部空間S2を配置した。
なお、このシミュレーションでは、ヒートポンプ27は考慮していない。
障子セット14は熱伝導が生じない断熱体であるとした。
多孔質材料の圧力損失特性は、(1)式のErgun方程式で近似し、流入口S11での圧力が10Paの時に熱貫流率が0W/m2になるように、外側伝熱部材16などの連通部21を流れる空気の平均速度Uを0.002m/sと仮定した。
今回のシミュレーションでは、ポーラス粒子直径DPを0.00033m、空隙率εを0.5、φCを1.0、分子粘性係数μを1.81×10-5kg/(m・s)とした。
この結果から、流入口S11での圧力によらず、外部空間S1から内部空間S2に流入する空気が、外側伝熱部材16内を通過するにしたがって温められていることが分かった。
また、流入口S11での圧力が1Paから10Paへと高くなるにしたがって、外側伝熱部材16の外部空間S1側の面における温度勾配が小さくなることが分かった。これは、流入口S11での圧力が高くなり外部空間S1から流入する空気が増加するしたがって、外側伝熱部材16から外部空間S1への熱輸送が妨げられたためである。
ダクト23の中間部には外部空間S1に連通する不図示の開口が形成されていて、ダクト23にはこの開口を開閉可能とするダンパーが取り付けられている。夏季には、ダンパーを動作させて開口が開いた状態にしておく。なお、この開口は、冬季にはダンパーにより閉じた状態になっている。
送風機24を第2種機械換気方式で運転させ、前述の開口を通して外部空間S1から内部空間S2に空気を流入させることで外部空間S1に対して内部空間S2の圧力を上昇させる。
一般的に、夏季において外部空間S1の湿度は高いので、内部空間S2の圧力を上昇させ、外側伝熱部材16を通して内部空間S2から外部空間S1に空気を流出させることで、結露が発生するのを抑えることができる。
内部空間S2の空気の温度は外部空間S1の空気の温度に対して低いので、空気は連通部21を通過するときに外側伝熱部材16から熱を伝達される。このため、空気が流出する方向とは逆方向である外部空間S1から内部空間S2に向かう方向の熱輸送が妨げられ、この場合においても、本実施形態の断熱システム25がダイナミックインシュレーションによる断熱効果を発揮して、内部空間S2が涼しく保たれる。
たとえば、前記実施形態では、外側伝熱部材16などは多孔質材料で形成されているとした。しかし、伝熱部材はこれに限ることなく、たとえば図7に示すように、伝熱部材45が一対の櫛歯状部材46、47を有するように構成してもよい。櫛歯状部材46のベース部46aと櫛歯状部材47のベース部47aとは互いに対向する位置に配置されていて、ベース部46aに設けられ板状に形成された複数の歯部46bとベース部47aに設けられ板状に形成された複数の歯部47bとが、互いに接触することなく互い違いとなるように配置されている。本変形例の場合でも、空気は、歯部46bと歯部47bとの間に形成された連通部48を通過するときに伝熱部材45から熱を伝達される。
ベース部46aおよび歯部46bは、ベース部47aおよび歯部47bは、それぞれアルミニウムなどの材料により、たとえば押出し成形により一体に形成される。
伝熱部材45が櫛歯状部材46、47を有するように構成することで、伝熱部材45により空気に熱を効果的に伝達させることができるとともに、伝熱部材45をより安価に製造することができる。さらに、櫛歯状部材は一定の強度を有するので、伝熱部材45を開口3aに取付けたときに壁部3の強度を高めることができる。
また、上記実施形態では、住宅1にヒートポンプ27が備えられていた。しかし、たとえば冬季において、外部空間S1と内部空間S2との温度差が小さく、内部空間S2から外部空間S1に排出される空気の熱が小さい場合などには、ヒートポンプ27は備えられなくてもよい。
また、上記実施形態では、4つの伝熱部材15、15A、16、16Aを備えたが、断熱システムは、少なくとも1つの伝熱部材を備えていればよい。
10 窓部
11 窓枠
15、15A 内側伝熱部材(伝熱部材)
16、16A、16B、16C 外側伝熱部材(伝熱部材)
21、48 連通部
24 送風機(圧力調節手段)
25 断熱システム
27 ヒートポンプ
45 伝熱部材
46、47 櫛歯状部材
A 空気
S1 外部空間
S2 内部空間
Claims (6)
- 窓部を有する建造物に組み込み可能な断熱システムであって、
前記窓部の窓枠に設けられ、前記建造物の外部空間と内部空間とを連通する連通部を有するとともに前記連通部を通過する空気に熱を伝達する伝熱部材と、
前記外部空間に対する前記内部空間の圧力を所定の範囲に調節する圧力調節手段と、
を備え、
前記所定の範囲は、
前記内部空間の温度が前記外部空間の温度よりも高い場合には、前記外部空間の圧力に対して前記内部空間の圧力が低下した範囲のことであり、
前記内部空間の温度が前記外部空間の温度よりも低い場合には、前記外部空間の圧力に対して前記内部空間の圧力が上昇した範囲のことであり、
前記伝熱部材の前記連通部を前記空気が通過する際に、前記空気が通過する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることを利用した断熱であるダイナミックインシュレーションにより断熱効果を発揮することを特徴とする断熱システム。 - 前記内部空間から前記外部空間に排出される空気から熱を回収して前記内部空間の空気を加熱するヒートポンプをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の断熱システム。
- 前記伝熱部材は多孔質材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱システム。
- 前記伝熱部材は、互いに対向する位置に配置された一対の櫛歯状部材であることを特徴とする請求項1に記載の断熱システム。
- 前記圧力調節手段は1つの送風機であることを特徴とする請求項1に記載の断熱システム。
- 外部空間と内部空間は、床部、壁部及び天井部を一体に形成することで分離されると共に、
床部、壁部及び天井部は断熱材料を有し、断熱材料同士を連続させてあり、
一つの壁部に前記窓部の窓枠が設けてあり、
一つの壁部に連なる他の壁部に前記外部空間と前記内部空間とを連通するダクトを設けてある
ことを特徴とする請求項1に記載の断熱システム。
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