以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。図1〜4A、図6は、本発明の実施形態を示す図である。図1は、本実施の形態の電磁石型回転電機において、ロータ及びステータの周方向一部を示す概略断面図である。図2は、図1のA部拡大図である。図3は、本実施の形態において、ロータ巻線に流れる誘導電流により生成される磁束がロータ中に流れる様子を示す模式図であり、ロータ巻線にダイオードを接続して示す模式図である。図4Aは、本実施の形態において、ロータの周方向に隣り合う主突極に巻装した2個のロータ巻線の接続回路の等価回路を示す図である。
図1に示すように、電動機または発電機として機能する電磁石型回転電機(以下、単に「回転電機」という。)10は、図示しないケーシングに固定されたステータ12と、ステータ12と所定の空隙をあけて径方向内側に対向配置され、ステータ12に対し回転可能なロータ14とを備える(なお、単に「径方向」という場合、ロータの回転中心軸に対し直交する放射方向をいう。本明細書全体及び特許請求の範囲で同じである。)。
また、ステータ12は、ステータヨークであるステータコア16と、ステータコア16の周方向箇所に配置されたティース18と、各ティース18に巻線された、すなわち巻かれた複数相(より具体的にはu相、v相、w相の3相)のステータ巻線20u,20v,20wとを含む。すなわち、ステータコア16の内周面には、径方向内側へ(ロータ14へ向けて)突出する複数のティース18がステータ12の周方向に沿って互いに間隔をおいて配列されており、各ティース18間にステータスロット22が形成されている。また、ステータコア16及び複数のティース18は磁性材により、一体に設けられている。
各相のステータ巻線20u,20v,20wは、ステータスロット22を通ってティース18に短節集中巻で巻装されている。このように、ティース18にステータ巻線20u,20v,20wが巻装されることで磁極が構成される。そして、複数相のステータ巻線20u,20v,20wに複数相の交流電流を流すことで、周方向に複数配置されたティース18が磁化し、周方向に回転する回転磁界をステータ12に生成する。すなわち、複数相のステータ巻線20u,20v,20wは、ステータ12に回転磁界を生じさせる。なお、ステータ巻線は、このようにステータ12のティース18に巻線する構成に限定するものではなく、例えばティース18から外れたステータコア16の環状部分の周方向複数個所に複数相のステータ巻線を巻線するトロイダル巻きとし、ステータ12に回転磁界を生じさせることもできる。
ティース18に形成された回転磁界は、その先端面からロータ14に作用する。図1に示す例では、3相(u相、v相、w相)のステータ巻線20u,20v,20wがそれぞれ巻装された3つのティース18により1つの極対が構成されている。
一方、ロータ14は、円筒状のロータヨークであるロータコア24と、ロータコア24の外周面の周方向の等間隔複数個所に、径方向外側に向けて(ステータ12に向けて)突出して配置された突部である、主突極26と、複数のロータ巻線28n、28sとを含む(なお、単に「周方向」という場合、ロータの回転中心軸を中心として描かれる円形に沿う方向をいう。本明細書全体及び特許請求の範囲で同じである)。ロータコア24及び複数の主突極26は、磁性鋼板を複数積層した積層体等の磁性材により、一体に設けられている。より詳しくは、ロータ14の周方向に関して1つおきの主突極26に複数の第1ロータ巻線28nをそれぞれ集中巻きで巻線し、第1ロータ巻線28nを巻線した主突極26と隣り合う別の主突極26であって、周方向1つおきの主突極26に、複数の第2ロータ巻線28sをそれぞれ集中巻きで巻線している。
また、図1から図3に示すように、各第1ロータ巻線28nは、主突極26の先端側(図1から図3の上端側)に巻かれた第1誘導巻線30と、第1誘導巻線30に接続された第1共通巻線32とを含む。第1共通巻線32は、第1誘導巻線30が巻かれる主突極26において、第1誘導巻線30よりも根元側(図1から図3の下端側)に巻かれている。また、各第2ロータ巻線28sは、各第1ロータ巻線28nが巻かれた主突極26と周方向に隣り合う別の主突極26の先端側に巻かれた第2誘導巻線34と、第2誘導巻線34に接続された第2共通巻線36とを含む。第2共通巻線36は、第2誘導巻線34が巻かれる主突極26において、第2誘導巻線34よりも根元側に巻かれている。なお、図1、図2に示す例では、各主突極26の周囲に巻かれる誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36は、それぞれ主突極26の周囲の長さ方向(図1の上下方向)に沿って設けられたソレノイドが、主突極26の周方向(図2の左右方向)に複数層整列した整列巻きで配置されている。なお、各主突極26の先端側に巻かれる誘導巻線30,34は、主突極26の周囲に複数回、すなわち複数ターン分、渦巻状に巻いた構成とすることもできる。また、図1、図2では誘導巻線30,34を黒丸で、共通巻線32,36を白丸で示している(後述する図9、図14、図15で同様である)。
図3に示すように、ロータ14の周方向に隣り合う2個の主突極26を1組として、各組で1個の主突極26に巻かれた第1誘導巻線30の一端と、別の主突極26に巻かれた第2誘導巻線34の一端とを、2個の磁気特性調整部であり整流素子である第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して接続している。すなわち、図4Aは、本実施の形態において、ロータ14(図4A)の周方向に隣り合う主突極26に巻装された2個のロータ巻線28n、28sの接続回路の等価回路を示す図である。図4Aに示すように、第1誘導巻線30及び第2誘導巻線34の一端は、互いに順方向が逆になる第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して、接続点Rで接続されている。
また、図3、図4Aに示すように、各組で1個の主突極26に巻かれた第1共通巻線32の一端は、別の主突極26に巻かれた第2共通巻線36の一端に接続されている。第1共通巻線32及び第2共通巻線36は互いに直列に接続されることで、共通巻線組42を形成している。さらに、第1共通巻線32の他端は接続点Rに接続され、第2共通巻線36の他端は、第1誘導巻線30及び第2誘導巻線34の接続点Rとは反対側の他端に接続されている。また、各ロータ巻線28n、28sの誘導巻線30,34及び共通巻線32,36の巻回中心軸は、ロータ14(図1)の径方向と一致している。なお、各誘導巻線30,34及び共通巻線32,36は、対応する主突極26に、樹脂等により造られる電気絶縁性を有するインシュレータ(図示せず)等を介して巻装することもできる。
このような構成では、後述するように、第1誘導巻線30、第2誘導巻線34、第1共通巻線32及び第2共通巻線36に整流された電流が流れることで主突極26が磁化し、磁極部として機能する。また、図1に戻って、ステータ巻線20u,20v,20wに交流電流を流すことで、ステータ12が回転磁界を生成するが、この回転磁界は、基本波成分の磁界だけでなく、基本波よりも高い次数の高調波成分の磁界を含んでいる。
より詳しくは、ステータ12に回転磁界を発生させる起磁力の分布は、各相のステータ巻線20u,20v,20wの配置や、ティース18及びステータスロット22によるステータコア16の形状に起因して、(基本波のみの)正弦波分布にはならず、高調波成分を含むものとなる。特に、集中巻においては、各相のステータ巻線20u,20v,20wが互いに重なり合わないため、ステータ12の起磁力分布に生じる高調波成分の振幅レベルが増大する。例えばステータ巻線20u,20v,20wが3相集中巻の場合は、高調波成分として、入力電気周波数の時間的3次成分であり、空間的な2次成分の振幅レベルが増大する。このようにステータ巻線20u,20v,20wの配置やステータコア16の形状に起因して起磁力に生じる高調波成分は空間高調波と呼ばれている。
ステータ12からロータ14に、この空間強調波成分を含む回転磁界が作用すると、空間高調波の磁束変動により、ロータ14の主突極26間の空間に漏れ出す漏れ磁束の変動が発生し、これにより図3に示す各誘導巻線30,34の少なくともいずれかの誘導巻線30,34に誘導起電力が発生する。また、ステータ12から近い、主突極26の先端側の誘導巻線30,34は、主に誘導電流を発生させる機能を有し、ステータ12から遠い、共通巻線32,36は、主に主突極26を磁化する機能を有する、すなわち電磁石として機能する。また、図4Aの等価回路から理解されるように、隣り合う主突極26(図1〜図3)に巻装された誘導巻線30,34を流れる電流の合計が共通巻線32,36にそれぞれ流れる電流となる。また、隣り合う共通巻線32、36同士を直列に接続しているので、両方で巻き数を増加させたのと同じ効果を得られ、各主突極26に流れる磁束を同じとしたままで各共通巻線32,36に流す電流を低減できる。
そして、各誘導巻線30,34に誘導起電力が発生すると、第1誘導巻線30、第2誘導巻線34、第1共通巻線32及び第2共通巻線36にダイオード38,40の整流方向に応じた直流電流が流れ、ロータ巻線28n、28sが巻装された主突極26が磁化することで、この主突極26が磁極の固定された磁石である磁極部として機能する。図3に示す、周方向に隣り合う第1ロータ巻線28nと第2ロータ巻線28sとで巻き方向が逆になっており、周方向に隣り合う主突極26同士で磁化方向が逆になる。図示の例では、第1ロータ巻線28nが巻装された主突極26の先端にN極が生成され、第2ロータ巻線28sが巻装された主突極26の先端にS極が生成されるようにしている。このため、ロータ14の周方向においてN極とS極とが交互に配置される。また、各ダイオード38,40(図3)は、各主突極26に巻かれた複数のロータ巻線28n、28sに発生する誘導起電力によって複数の主突極26に生じる磁気特性を、周方向に交互に異ならせている。
また、各ダイオード38,40は、対応する誘導巻線30,34に接続され、ステータ12で生成される空間高調波を含む回転磁界による誘導起電力の発生により、対応する誘導巻線30,34に流れる電流を整流することで、ロータ14の周方向に隣り合う誘導巻線30,34に流れる電流の位相を、A相とB相とに交互に異ならせている。A相は、対応する主突極26の先端側にN極を生成するものであり、B相は、対応する主突極26の先端側にS極を生成するものである。
また、図1に示すように、ロータ14の周方向に関する各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の幅θは、ロータ14の電気角で180°に相当する幅よりも短く設定し、各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36は、それぞれ主突極26に短節巻きで巻装されている。より好ましくは、ロータ14の周方向に関する各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の幅θは、ロータ14の電気角で90°に相当する幅に等しく、あるいはほぼ等しくしている。ここでの各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の幅θについては、各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の断面積を考慮して、各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の断面の中心幅で表すことができる。すなわち、各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の内周面の幅と外周面の幅との平均値で各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の幅θを表すことができる。なお、ロータ14の電気角は、ロータ14の機械角にロータ14の極対数pを乗じた値で表される(電気角=機械角×p)。このため、周方向に関する各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の幅θは、ロータ14の回転中心軸から各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36までの距離をrとすると、以下の(1)式を満たす。
θ<π×r/p (1)
このように幅θを規制している理由は、後で詳しく説明する。
特に、本実施の形態では、ロータ14は、周方向の複数個所に配置された主突極26の周方向の両側面から突出する補助突極44を含んでいる。補助突極44は、主突極26の周方向両側面に、第1誘導巻線30と第1共通巻線32との間、及び、第2誘導巻線34と第2共通巻線36との間のそれぞれから、主突極26の軸方向(図1、図2の表裏方向)のほぼ全長にわたり、周方向に対し傾斜した方向に突出する、板状の磁性体である。また、ロータ14の周方向に隣り合う主突極26の間に形成されたロータスロット46(図1、図2)内で周方向に隣り合う補助突極44は、ロータスロット46内で先端部同士が結合部78で連結され、一体的に形成されている。補助突極44は、結合部78も含めて磁性を有する。すなわち補助突極44は、主突極26に磁気的に接続されている。例えば、図示の例では、補助突極44は、各主突極26の周方向両側面の径方向(図2の上下方向)外側寄りに根元部が結合され、先端部である周方向に隣り合う別の補助突極44に対する結合部78に向かうほど、ロータ14の径方向外側になるように周方向に対し傾斜した方向に突出している。このため、各補助突極44の隣り合う別の補助突極44に対する結合部78は、補助突極44の根元よりもロータ14の径方向外側に位置している。また、各補助突極44の幅は、根元部で大きくし、中間部から先端部にわたり根元部の幅よりも小さい、ほぼ同じ大きさとしている。また、各誘導巻線30,34は、対応するロータスロット46内で補助突極44によって径方向外側及び内側に仕切られた空間のうち、径方向外側の空間に配置され、各共通巻線32,36は、対応するロータスロット46内で補助突極44によって径方向外側及び内側に仕切られた空間のうち、径方向内側の空間に配置されている。
さらに、ロータ14において、各主突極26の本体部分の先端側の周方向の断面幅、すなわち周方向に切断した場合の断面の周方向の幅W1(図2)は、各主突極26の根元側の周方向の断面幅W2よりも大きくしている(W1>W2)。より詳しくは、各主突極26のうち、補助突極44が接続される部分よりも先端側の周方向の断面幅W1は、各主突極26のうち、補助突極44が接続される部分よりも根元側の周方向の断面幅W2よりも大きくしている。図2ではN極となる主突極26を示しているが、S極となる主突極26でも、本体部分の先端側の周方向の断面幅は、根元側の周方向の断面幅よりも大きくしている。
また、各主突極26のうち、誘導巻線30,34が巻かれた部分の周方向の断面幅W1は、各主突極26のうち、共通巻線32,36が巻かれた部分である、根元側の周方向の断面幅W2よりも大きくしている。
また、図1に示すように、隣り合う主突極26の互いに対向する周方向側面から補助突極44が突出している。補助突極44は、ロータコア24及び主突極26と同じ磁性材料により形成することができる。例えば、ロータコア24、各主突極26、及び各補助突極44を、軸方向に複数枚の磁性鋼板を積層することにより構成される積層体により一体に形成することができる。
また、同じ主突極26に巻かれる誘導巻線30,34と共通巻線32,36とは、ロータコア24の軸方向端面よりも外側に設けられる図示しない片側または両側のコイルエンド側等、補助突極44から外れた部分で互いに接続されている。なお、各誘導巻線30,34と各共通巻線32,36とは互いに異なる材料により形成することもできる。例えば、各共通巻線32,36は銅線等の導電性材料により形成し、各誘導巻線30,34は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の、共通巻線を構成する導電性材料よりも軽量な別の導電性材料により形成することもできる。
なお、図5に示す主突極26の別例のように、各主突極26の先端部に周方向両側に突出する鍔部48を形成して、誘導巻線30、34(34は図1等参照)の抜け止めを図ることもできる。このように鍔部48を主突極26に設ける場合、各主突極26の本体部分である、各主突極26の鍔部48を除く部分において、先端側の周方向の断面幅W1は、根元側の周方向の断面幅W2よりも大きくする(W1>W2)。
このような回転電機10は、図6の回転電機駆動システム50により駆動する。図6は、図1の回転電機10を駆動する回転電機駆動システム50の概略構成を示す図である。回転電機駆動システム50は、回転電機10と、回転電機10を駆動する駆動部であるインバータ52と、インバータ52を制御する制御装置54と、電源部である蓄電装置56とを備え、回転電機10を駆動する。
蓄電装置56は、直流電源として設けられ、充放電可能であり、例えば二次電池により構成する。インバータ52は、U相、V相、W相の3相のアームAu,Av,Awを備え、各相アームAu,Av,Awは、それぞれ2のスイッチング素子Swを直列に接続している。スイッチング素子Swは、トランジスタ、IGBT等である。各スイッチング素子Swに逆並列にダイオードDiを接続している。各アームAu,Av,Awの中点は、回転電機10を構成する対応する相のステータ巻線20u,20v,20wの一端側に接続されている。ステータ巻線20u,20v,20wにおいて、同じ相のステータ巻線同士は互いに直列に接続され、異なる相のステータ巻線20u,20v,20wが中性点で接続されている。
また、蓄電装置56の正極側及び負極側は、インバータ52の正極側と負極側とにそれぞれ接続されており、蓄電装置56とインバータ52との間にコンデンサ58が、インバータ52に対し並列に接続されている。制御装置54は、例えば車両のアクセルペダルセンサ(図示せず)等から入力される加速指令信号に応じて回転電機10のトルク目標を算出し、トルク目標等に応じた電流指令値に応じて各スイッチング素子Swのスイッチング動作を制御する。制御装置54には、3相のうち、少なくとも2相のステータ巻線(例えば20u、20v)側に設けられた電流センサ60で検出された電流値を表す信号と、レゾルバ等の回転角度検出部(図示せず)で検出された回転電機10のロータ14(図1)の回転角度を表す信号とがそれぞれ入力される。制御装置54は、CPU,メモリ等を有するマイクロコンピュータを含むもので、インバータ52のスイッチング素子Swのスイッチングを制御することにより、回転電機10のトルクを制御する。制御装置54は、機能ごとに分割された複数の制御装置により構成することもできる。
このような制御装置54は、インバータ52を構成する各スイッチング素子Swのスイッチング動作により蓄電装置56からの直流電力を、u相、v相、w相の3相の交流電力に変換して、ステータ巻線20u,20v,20wの各相に対応する相の電力を供給することを可能とする。回転電機駆動システム50は、例えば、車両用走行動力発生装置として、エンジンと走行用モータとを駆動源として備えるハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車等に搭載して使用される。なお、蓄電装置56とインバータ52との間に電圧変換部であるDC/DCコンバータを接続して、蓄電装置56の電圧を昇圧してインバータ52に供給可能とすることもできる。
上記の回転電機10では、3相のステータ巻線20u,20v,20wに3相の交流電流を流すことでティース18に形成された回転磁界(基本波成分)がロータ14に作用し、これに応じて、ロータ14の磁気抵抗が小さくなるように、主突極26がティース18の回転磁界に吸引される。これによって、ロータ14にトルク(リラクタンストルク)が作用する。
さらに、ティース18に形成された空間高調波成分を含む回転磁界がロータ14の各ロータ巻線28n、28sの誘導巻線30,34に鎖交すると、各誘導巻線30,34には、空間高調波成分に起因するロータ14の回転周波数(回転磁界の基本波成分)と異なる周波数の磁束変動によって、各ロータ巻線28n、28sに誘導起電力が発生する。この誘導起電力の発生に伴って各ロータ巻線28n、28sに流れる電流は、各ダイオード38、40により整流されることで一方向(直流)となる。そして、各ダイオード38,40で整流された直流電流が各ロータ巻線28n、28sに流れるのに応じて各主突極26が磁化することで、各主突極26が、磁極が(N極かS極のいずれか一方に)固定された磁石として機能する。
例えば、図1、図2に示すようにステータ12の各相のステータ巻線20u、20v、20wを巻装したティース18のいずれもが、ロータ巻線28n、28sを巻装した主突極26に径方向に完全には(全部が)対向していないで、少なくとも1個のティース18(図1のP位置のティース18)がロータ14の周方向に関して隣り合う2個の主突極26の間の中央位置に対向する場合を考える。また、この状態で、図2の矢印Qで示すように、ステータ12のU相のティース18からロータ14に、ステータ12の起磁力として、空間的2次の空間高調波の磁束であるq軸磁束(誘導磁束)が流れる場合を考える。誘導磁束Qは、U相のティース18から、図2の右側の補助突極44を介して図2の右側の図示しない主突極にも流れる。この場合、補助突極44があることで空間高調波をステータ12の(図2ではU相の)ティース18から補助突極44を介して、主突極26へ多く誘導し、主突極26から別の(図2ではV相、及び図2で図示しないW相の)ティース18へ誘導して、誘導巻線30,34に多くの磁束を鎖交させることができる。図2は、1つのティース18からq軸磁束の最大の磁束が流れる位相角に対応する状態を示しており、電気的1周期の中でq軸磁束の向き及び大きさが変化する。この場合、図2で図示しないS極となる主突極26に巻かれた第2誘導巻線34に第2ダイオード40(図3)が接続され、第2ダイオード40は、対応する主突極26をS極とする方向に電流を流す。このため、S極側の主突極26に巻かれた第2誘導巻線34にq軸磁束によりS極をN極とする方向に磁束が流れようとし、これを妨げる方向に第2誘導巻線34に誘導電流が流れようとし、その流れは第2ダイオード40で妨げられない。この結果、図2の矢印Mで示すように、主突極26に誘導電流による磁束である主磁束が流れる。また、ステータ12のティース18からN極の主突極26を介して補助突極44にq軸磁束が流れようとする場合もあり、N極の主突極26をS極とする方向に磁束が流れようとするときに、これを妨げる方向にN極の主突極26に巻かれた第1誘導巻線30に誘導電流が流れようとする。この場合、第1誘導巻線30に接続された第1ダイオード38(図3)が、対応する主突極26をN極とする方向に電流を流す。この場合も、図2の矢印Mで示すように、主突極26に誘導電流による磁束が流れる。このため、各主突極26がN極またはS極に磁化する。上記のように各主突極26の両側面から補助突極44が突出しているので、補助突極44がない、すなわち各スロット46内で周方向に隣り合う主突極26同士の間に空間しかない場合に比べて、各誘導巻線30,34に鎖交する磁束の振幅の最大値を大きくできるので、鎖交磁束の変化を大きくできる。
そして、各主突極26(磁極が固定された磁石)の磁界がステータ12により生成される回転磁界(基本波成分)と相互作用して、吸引及び反発作用が生じる。このステータ12により生成される回転磁界(基本波成分)と主突極26(磁石)の磁界との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)によっても、ロータ14にトルク(磁石トルクに相当するトルク)を作用させることができ、ロータ14がステータ12で生成される回転磁界(基本波成分)に同期して回転駆動する。このように回転電機10は、ステータ巻線20u,20v,20wへの供給電力を利用してロータ14に動力(機械的動力)を発生させる電動機として機能させることができる。
また、第1誘導巻線30に流れる誘導電流と、第2誘導巻線34に流れる誘導電流との位相はずれるので、第1誘導巻線30と第2誘導巻線34とに、それぞれ位相がずれた半波整流が生成される。これに対して、第1共通巻線32と第2共通巻線36とには、第1誘導巻線30と第2誘導巻線34とに流れる電流の和の大きさの電流が流れるので、例えば連続して大きな直流電流が流れるようになる。このため、各主突極26に磁極が形成されやすくなり、ロータ14のトルクを増大できる。
しかも、本実施の形態の回転電機10によれば、ロータ14の各主突極26の本体部分の先端側の周方向の断面幅W1(図2)は、各主突極26の根元側の周方向の断面幅W2(図2)よりも大きい(W1>W2)。このため、ロータ14とステータ12との間のギャップ部G(図2)で、ロータ14の主突極26とステータ12のティース18とが径方向に対向する部分のうち、通過する磁束量が多い場合に実質的に磁気抵抗に影響する部分の対向断面積が増える。この対向断面積は、図2の矢印Sで周方向の幅が規定される、主突極26とティース18との対向面積と同じである。したがって、ギャップ部Gにおける磁気抵抗が低下する。
これについて、図7を用いて詳しく説明する。図7は、図2のティース18及び主突極26の間のギャップ部Gにおける磁気抵抗を説明するための模式図である。図7に示すように、ギャップ部Gの磁気抵抗をRmとし、ギャップ長をgとし、ギャップ部Gでの対向断面積である、矢印Sで周方向の幅が規定される対向面積をSaとすると、磁気抵抗Rmは次式で表される。
Rm=μ0×g/Sa (2)
ここで、μ0は、定数である真空の透磁率である。また、図7の矢印Qは磁束線を表している。
このため、(2)式から明らかなように、主突極26の先端側の周方向の断面幅W1(図2)が大きくなり、ギャップ部Gの対向断面積の周方向の幅Sが大きくなり、対向断面積Saが大きくなることで、磁気抵抗Rmを減少できる。この結果、ロータ14からステータ12に、またはステータ12からロータ14に作用する主磁束の磁束量が増加して、回転電機10(図1)のトルクの向上を図れる。しかも、ロータ14の各主突極26の根元側の周方向の断面幅W2(図2)を小さくできるので、この根元側の周囲に巻回するロータ巻線である共通巻線32,36(図1)の断面積を増大でき、銅損を低減できるので、回転電機10のさらなるトルクの向上を図れる。
これに対して、図9は、比較例の回転電機10を示す、図1に対応する図である。図9に示す比較例では、上記の図1〜4、図6に示した実施形態と同様の構成において、各主突極26の先端部に、図5の構成と同様に鍔部48を形成しており、各主突極26のうち、鍔部48を除く本体部分の周方向の断面幅は全長にわたって同じとしている。このため、各主突極26の本体部分の先端側の断面幅W1は、根元側の断面幅W2と同じである。このような比較例では、ロータ14とステータ12との間のギャップ部で、ロータ14の主突極26とステータ12のティース18とが径方向に対向する部分のうち、通過する磁束量が多い場合に実質的に磁気抵抗に影響する部分の対向断面積である、主突極26の本体部分とティース18の先端とが径方向に重畳する部分の周方向の断面積が減少する。この対向断面積は、図9の矢印Sで周方向の幅が規定されるが、断面幅W1が小さいので、対向断面積の周方向の幅Sも小さくなり、対向断面積が小さくなる。このため、上記の(2)式から明らかなように、ギャップ部の磁気抵抗Rmが増大する。この結果、比較例の回転電機10ではトルクが低下する可能性がある。
これに対して、図9の比較例で、断面幅W1、W2を互いに同じとしたままで主突極26の周方向の幅を全体で大きくし、断面幅W1,W2をそれぞれ大きくすることも考えられるが、この場合には、共通巻線32,36の配置空間が小さくなり、共通巻線32,36の断面積が小さくなるので、銅損が増加して、回転電機10のトルクが低下する可能性がある。上記の実施形態によれば、このような不都合を解消でき、回転電機10のトルクの向上を図れる。
また、図5に示す実施形態のように、主突極26の先端部に鍔部48を設けている場合、主突極26の本体部分の先端側の断面幅W1を大きくしているので、ギャップ部Gを通過する磁束量が多いと、実質的に磁気抵抗に影響する部分の対向断面積であり、鍔部48を除く部分の図5の矢印Sで周方向の幅が規定される断面積が増える。したがって、ギャップ部Gにおける磁気抵抗が低下して、回転電機10のトルクの向上を図れる。この場合、片側(図5の左側)の鍔部48もティース18に対向するが、磁束量が多い場合には鍔部48で磁束飽和が生じて、鍔部48がトルクの増大に影響しない。ただし、ギャップ部Gを通過する磁束量が比較的少ないと、鍔部48がトルクの増大に寄与して、さらなるトルクの向上を図れる。しかも、主突極26の先端側で、鍔部48よりも径方向内側(図5の下側)の断面幅W1を有する部分の周囲に断面積の大きい誘導巻線30を配置できるので、損失低減を図れるという効果も得られる。
さらに、上記の実施形態では、各主突極26のうち、誘導巻線30,34が巻かれた部分の周方向の断面幅W1は、各主突極26の根元側の周方向の断面幅W2よりも大きい。このため、主突極26の誘導巻線30,34が巻かれた部分とティース18の先端との間の距離La(図2)が短くなるので、磁気抵抗が小さくなり、ステータ12から誘導巻線30,34に作用し、誘導巻線30,34に鎖交する磁束である誘導磁束が増加して、回転電機10のトルクをより向上できる。
また、各主突極26のうち、誘導巻線30,34が巻かれた部分の周方向の断面幅W1は、各主突極26のうち、共通巻線32,36が巻かれた部分の周方向の断面幅W2よりも大きい。このため、主突極26のうち、共通巻線32,36が巻かれた部分の周方向の断面幅W2を小さくできる。また、共通巻線32,36は、誘導巻線30,34よりもトルクに対する銅損の影響度が大きい。このため、主突極26の周囲の共通巻線32,36の断面積を大きくできることで、銅損を低減でき、トルクのさらなる向上を図れる。
また、ロータ14は、各主突極26の周方向側面から突出し、磁性を有する補助突極44を含み、各主突極26のうち、補助突極44が接続される部分よりも先端側の周方向の断面幅W1は、補助突極44が接続される部分よりも根元側の周方向の断面幅W2よりも大きい。このため、例えば、本実施の形態のように、補助突極の先端部を根元部よりも径方向外側に位置させることにより、ステータ12で生成される回転磁界に含まれ、ロータ巻線28n、28sに鎖交する高調波成分、例えば、時間3次であり、空間2次の高調波成分を、補助突極44により有効に増大させることができる。このため、ロータ巻線28n、28sに鎖交する磁束の磁束密度の変化を大きくし、ロータ巻線28n、28sに誘導される誘導電流を大きくできる。例えば、ステータ12で生成される起磁力分布の高調波成分の多くの磁束をステータ12のティース18から補助突極44を介して主突極26へ誘導して、ロータ巻線28n、28sに多くの磁束を鎖交させることができる。また、高調波成分の多くの磁束をティース18から主突極26を介して補助突極44へ誘導して、ロータ巻線28n、28sに多くの磁束を鎖交させることもできる。しかも、補助突極44の長さLb(図2)が短くなるので補助突極44の磁気抵抗が低下し、補助突極44から主突極26に誘導される誘導磁束が増加してさらに誘導電流を大きくでき、回転電機10のさらなるトルクの向上を図れる。また、補助突極44の根元部の幅を大きくでき、しかも、補助突極44の長さLbを短くできるので、補助突極44の根元部の強度向上を図れる。このため、補助突極44を強度を確保しつつ、細くすることもできる。
また、ロータ巻線28n、28sは、主突極26の先端側に巻かれた誘導巻線30,34と、主突極26の根元側に巻かれ、誘導巻線30,34に接続された共通巻線32,36とを含み、誘導巻線30,34は、ロータスロット46内で補助突極44に仕切られた空間の径方向外側空間に配置され、共通巻線32,36は、ロータスロット46内で補助突極44に仕切られた空間の径方向内側空間に配置される。このため、誘導巻線30,34及び共通巻線32,36のうち、誘導巻線30,34のみに変動磁束の多くが鎖交するようになり、誘導巻線30,34に生じる誘導電流を増加できる。したがって、誘導巻線30,34の巻き数を減らしつつ、誘導巻線30,34に主に誘導電流を発生させる機能を有効に発揮させることができるとともに、共通巻線32,36の巻き数を多くして、共通巻線32,36に主に主突極26を磁化する機能を有効に発揮させることができる。すなわち、誘導巻線30,34の巻き数を減らしても、所望の誘導電流を得るために必要な巻き数を確保でき、その巻き数を減らした分、共通巻線32,36の巻き数を多くできる。この結果、主突極26に電磁石を形成しやすくなり、ロータ磁力を増加させ、回転電機10を大型化することなく、回転電機10のトルクの向上を図れる。また、共通巻線32,36に多くの磁束が鎖交するのを抑制できるので、損失を低減できる。また、ステータ巻線20u、20v、20wに流すステータ電流を小さくしても所望のトルクを得られるので、銅損を低減でき、効率向上を図れる。この結果、回転電機10のトルク及び効率を向上させることができる。
また、ロータ14の周方向に隣り合う主突極26の間に配置されたロータスロット46内で周方向に隣り合う補助突極44は、ロータスロット46内で連結されている。また、補助突極44よりも径方向内側に共通巻線32、36が配置されている。このため、ロータ14回転時の、共通巻線32,36の遠心力に対する保持強度を向上できる。すなわち、本実施の形態と異なり、周方向に隣り合う補助突極がロータスロット46内で分離している場合には、補助突極の強度が小さいと、ロータ14の回転時の遠心力の作用により各共通巻線32,36が補助突極を径方向外側に押し出して径方向外側に変位する可能性がないとはいえない。これに対して、本実施の形態では補助突極44が連結されているので、このような不都合をなくして、ロータ巻線28n、28sの保持強度の向上を図れる。また、補助突極44とは別の部分に共通巻線32,36の固定部を設ける必要がなくなる。
また、各補助突極44の先端部である結合部78は、補助突極44の根元よりもロータ14の径方向外側に位置するので、各補助突極44の結合部78の位置に応じて、空間高調波の必要な磁束成分を効率よく各補助突極44から各主突極26に誘導して、ロータ巻線28n、28sに効率よく多くの磁束を鎖交させ、回転電機10のトルク及び効率をより有効に向上させることができる。
また、本実施の形態では、各ロータ巻線28n、28sにおいて、ロータ14の周方向に関する幅θを上記の(1)式で述べたように規制している。このため、ロータ巻線28n、28sに発生する、回転磁界の空間高調波による誘導起電力を大きくすることができる。すなわち、空間高調波によるロータ巻線28n、28sへの鎖交磁束の振幅(変動幅)は、周方向に関するロータ巻線28n、28sの幅θにより影響を受ける。ここで、周方向に関するロータ巻線28n、28sの幅θを変化させながら、ロータ巻線28n、28sへの鎖交磁束の振幅(変動幅)を計算した結果を図8に示している。図8では、コイル幅θを電気角に換算して示している。図8に示すように、コイル幅θが180°から減少するにつれてロータ巻線28n、28sへの鎖交磁束の変動幅が増大しているため、コイル幅θを180°よりも小さくする、すなわちロータ巻線28n、28sを短節巻とすることで、全節巻と比較して、空間高調波による鎖交磁束の振幅を増大させることができる。
したがって、回転電機10(図1)では、周方向に関する各主突極26の幅を電気角で180°に相当する幅よりも小さくし、ロータ巻線28n、28sを各主突極26に短節巻で巻装することで、ロータ巻線28n、28sに発生する空間高調波による誘導起電力を効率よく増大させることができる。この結果、ロータ14に作用するトルクを効率よく増大させることができる。
さらに、図8に示すように、コイル幅θが90°の場合に、空間高調波による鎖交磁束の振幅が最大となる。したがって、空間高調波によるロータ巻線28n、28sへの鎖交磁束の振幅をより増大させるためには、周方向に関する各ロータ巻線28n、28sの幅θがロータ14の電気角で90°に相当する幅に等しい(あるいはほぼ等しい)ことが好ましい。このため、ロータ14の極対数をpとし、ロータ14の回転中心軸からロータ巻線28n、28sまでの距離をrとした場合に、周方向に関する各ロータ巻線28n、28sの幅θは、以下の(3)式を満たす(あるいはほぼ満たす)ことが好ましい。
θ=π×r/(2×p) (3)
このようにすることで、ロータ巻線28n、28sに発生する空間高調波による誘導起電力を最大にすることができ、誘導電流により各主突極26に発生する磁束を最も効率よく増大させることができる。この結果、ロータ14に作用するトルクをより効率よく増大させることができる。すなわち、幅θが90°に相当する幅を大きく超えると、互いに打ち消し合う方向の起磁力がロータ巻線28n、28sに鎖交しやすくなるが、90°に相当する幅よりも小さくなるのにしたがって、その可能性が低くなる。ただし、幅θが90°に相当する幅よりも大きく減少すると、ロータ巻線28n、28sに鎖交する起磁力の大きさが大きく低下する。このため、幅θを約90°に相当する幅とすることでそのような不都合を防止できる。このため、周方向に関する各ロータ巻線28n、28sの幅θは、電気角で90°に相当する幅に略等しくすることが好ましい。
また、回転電機10では、ステータ巻線20u,20v,20wに流す交流電流の位相である、ロータ位置に対する電流進角を制御することで、ロータ14のトルクを制御することもできる。さらに、ステータ巻線20u,20v,20wに流す交流電流の振幅を制御することによって、ロータ14のトルクを制御することもできる。また、ロータ14の回転数を変化させてもロータ14のトルクが変化するため、ロータ14の回転数を制御することによって、ロータ14のトルクを制御することもできる。
なお、上記の実施形態では、各補助突極44を略直線状に形成しているが、各補助突極44は、1または複数の曲線部を有する形状とすることもできる。このため、各補助突極44は、主突極26の周方向側面から曲線状に突出した形状とすることもできる。
なお、上記の図3、図4Aに示した構成では、ロータ14の周方向に隣り合う2個の主突極26を1組として、各組で1個の主突極26に巻かれた第1誘導巻線30の一端と、別の主突極26に巻かれた第2誘導巻線34の一端とを、2個の整流素子である第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して接続する場合を説明した。ただし、本実施形態では、図4Bのように構成することもできる。図4Bは、ロータ巻線に接続するダイオードの数を少なくした別例を示す、図4Aに対応する図である。図4Bに示す別例では、本実施形態において、ロータのN極となる周方向1つおきの主突極26(図1参照)の先端側に巻装した複数の第1誘導巻線30同士を直列に接続することで第1誘導巻線組90を形成し、ロータのS極となる周方向1つおきの主突極26の先端側に巻装した複数の第2誘導巻線34同士を直列に接続することで第2誘導巻線組92を形成している。第1誘導巻線組90及び第2誘導巻線組92の一端は、互いに順方向が逆になる第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して、接続点Rで接続されている。
また、図4Bに示すように、ロータの周方向に隣り合うN極及びS極の2つの主突極26(図1参照)を1組とした場合に、各組において第1共通巻線32及び第2共通巻線36同士を直列に接続することで共通巻線組42を形成するとともに、全部の主突極26に関する全部の共通巻線組42同士を直列接続している。さらに、直列接続した複数の共通巻線組42のうち、一端となる1つの共通巻線組42の第1共通巻線32の一端を接続点Rに接続し、他端となる別の共通巻線組42の第2共通巻線36の一端を、第1誘導巻線組90及び第2誘導巻線組92の接続点Rとは反対側の他端に接続している。このような構成では、上記の図3、図4Aに示した構成と異なり、ロータに設けるダイオードの総数を第1ダイオード38及び第2ダイオード40の2つに減らすことができる。この場合でも各主突極26の側面に補助突極44(図1参照)を形成し、補助突極44で仕切られた径方向外側と径方向内側との空間にそれぞれ誘導巻線30,34及び共通巻線32,36を配置することができる。
なお、上記の実施形態において、補助突極は種々の形状を有するものを使用できる。図10は、補助突極44の別例の第1例を示す、図2に対応する図である。図10に示す構成では、各補助突極44は、各主突極26の周方向両側面から周方向に突出して、周方向に隣り合う補助突極44同士で連結部80で連結されている。また、ロータ14は、連結部80から径方向外側に突出し、磁性を有する径方向突極82を備える。
このような図10に示す構成では、図1から図5に示した構成の場合と異なり、補助突極44の径方向外側に配置する誘導巻線30(34)の総断面積を大きくできる。このため、ロータ14の径方向に関して補助突極44よりも外側に多くのロータ巻線28n(28s)を配置しやすくなる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4A、図4Bに示した実施形態、または図5に示した実施形態と同様である。
次に、図11は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、補助突極44の別例の第2例を示す、図2の右側部分に対応する図である。図11に示す構成では、上記の図1から図4に示した実施形態において、各補助突極44の先端部に先端に向かうほど周方向に関する幅が大きくなる幅広先端部62が設けられている。すなわち、各補助突極44は幅広先端部62を有し、幅広先端部62は、ロータ14の径方向外側に向かうほど周方向に関する幅が大きくなっている。また、周方向に隣り合う補助突極44を、幅広先端部62の先端部で結合している。幅広先端部62のステータ12に対向する先端面Hは、ステータ12とロータ14との間の環状のギャップ空間64の周方向に沿う曲面またはこの曲面に接する平坦面としている。このような構成によれば、各補助突極44の長さ方向の全体で周方向に関する幅を大きくすることなく、ステータ12から空間高調波の必要な磁束成分、例えば空間2次の高調波成分を補助突極44から主突極26に効率よく誘導できる。このため、ロータ巻線28n(28s)の配置空間を過度に小さくすることなく、ステータ12から空間高調波の必要な磁束成分を補助突極44または主突極26を通じて主突極26または補助突極44に効率よく誘導して、ロータ巻線28n(28s)に効率よく多くの磁束を鎖交させることができる。この結果、回転電機10のトルク及び効率を有効に向上させることができる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4A、図4Bに示した実施形態と同様である。
また、図12は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、補助突極44の別例の第3例を示す、図2の右側部分に対応する図である。図12に示す構成では、補助突極44の先端部だけでなく、中間部も周方向の幅を大きくしている。すなわち、補助突極の周方向に関する幅は、根元部から先端に向かうに従って徐々に大きくしている。また、補助突極44の先端部に、ロータ14の径方向外側に向かうほど周方向に関する幅が大きくなる幅広先端部66が設けられている。このような構成の場合も、上記の図11に示した構成と同様に、ロータ巻線28n(28s)の配置空間を過度に小さくすることなく、ステータ12から空間高調波の必要な磁束成分を補助突極44または主突極26を通じて主突極26または補助突極44に効率よく誘導して、回転電機10のトルク及び効率を有効に向上させることができる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4A、図4Bに示した実施形態または上記の図11に示した構成と同様である。
また、図13は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、補助突極44の別例の第4例を示す、図2の右側部分に対応する図である。図13に示す構成では、周方向に隣り合う補助突極44の先端部同士を、板状の非磁性結合部84を介して結合している。非磁性結合部84は、チタン合金等の非磁性材料または略非磁性材料により形成されている。非磁性結合部84は、補助突極44の先端部の軸方向(図13の表裏方向)に沿って設けられている。このため、ロータスロット46内で周方向に隣り合う補助突極44は、非磁性結合部84を介して結合されている。このような構成によれば、各主突極26にトルクに寄与しない磁束が流れるのを抑制し、より有効にトルクの向上を図れる。すなわち、上記の図1から図4A、図4Bに示した実施の形態では、隣り合う磁性を有する補助突極44同士を直接に一体に連結しているが、この場合、主突極26から外れたロータコア24(図1参照)から、N極となる主突極26、この主突極26に結合された補助突極44、この補助突極44に結合された別の補助突極44、この別の補助突極44が結合されたS極となる主突極26、及びロータコア24に順に磁束が流れてループする磁気回路が形成される可能性がある。この場合、このループする磁気回路はトルクに寄与しない。また、このループする磁気回路に磁束が流れる分、主突極26の磁束飽和が生じやすくなり、トルクに寄与する磁束の減少を有効に防止する面から改良の余地がある。図13の構成によれば、このような点を改良できて、より有効にトルクの向上を図れる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4A、図4Bに示した実施形態と同様である。
図14は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、ロータ14及びステータ12の周方向一部を示す概略断面図である。本実施の形態では、上記の図1から図4A、図4Bに示した実施形態において、各主突極26に両側面から突出する補助突極44(図1参照)を設けていない。ロータ14の周方向複数個所に設けられた主突極26は、根元部から長さ方向中間部にわたり設けられた小幅部86と、先端部に設けられ、周方向の断面幅W1が小幅部86の周方向の断面幅W2よりも大きい大幅部88とを含んでいる。また、各主突極26の先端部の周方向両側面に周方向に突出する鍔部48が設けられている。このため、各主突極26のうち、鍔部48を除く部分である本体部分の先端側の周方向の断面幅W1は、各主突極26の根元側の周方向の断面幅W2よりも大きくなっている(W1>W2)。小幅部86と大幅部88との周方向側面同士は、テーパ面や段差部、または断面円弧形の曲面部で連続している。大幅部88の周囲に誘導巻線30,34が巻かれており、小幅部86の周囲に共通巻線32,36が巻かれている。なお、図1から図4A、図4Bに示した実施形態のように、各主突極26の先端部に設けられた鍔部48は省略することもできる。
このような図14に示した構成の場合も、上記の各実施形態と同様に、各主突極26の本体部分の先端側の周方向の断面幅W1は、各主突極26の根元側の周方向の断面幅W2よりも大きい(W1>W2)。このため、ロータ14とステータ12との間のギャップ部Gで、ロータ14の主突極26とステータ12のティース18とが径方向に対向する部分のうち、通過する磁束量が多い場合に実質的に磁気抵抗に影響する部分の対向断面積が増える。このため、ギャップ部Gにおける磁気抵抗が低下する。この結果、ロータ14からステータ12に、またはステータ12からロータ14に作用する主磁束の磁束量が増加して、回転電機10のトルクの向上を図れる。しかも、ロータ14の各主突極26の根元側の周方向の断面幅W2を小さくできるので、この根元側の周囲に巻回するロータ巻線である共通巻線32,36の断面積を増大でき、銅損を低減できるので、回転電機10のさらなるトルクの向上を図れる。また、主突極26の誘導巻線30,34が巻かれた部分とティース18の先端との距離Laが短くなるので、磁気抵抗が小さくなり、ステータ12から誘導巻線30,34に作用し、誘導巻線30,34に鎖交する磁束である誘導磁束が増加して、回転電機10のトルクをより向上できる。
これに対して、図15は、比較例の第2例の回転電機を示す、図14に対応する図である。図14に示す比較例は、上記の図14に示した実施形態と同様の構成において、各主突極26のうち、鍔部48を除く本体部分の周方向の断面幅は全長にわたって同じとしている。このため、各主突極26の本体部分の先端側の断面幅は、根元側の断面幅と同じである。このような比較例では、ロータ14とステータ12との間のギャップ部で、ロータ14の主突極26とステータ12のティース18とが径方向に対向する部分のうち、通過する磁束量が多い場合に実質的に磁気抵抗に影響する部分の対向断面積である、主突極26の本体部分とティース18の先端とが径方向に重畳する部分の断面積が減少し、ギャップ部の磁気抵抗Rmが増大する。また、主突極26の誘導巻線30,34を巻いた部分とティース18の先端との距離が増大して、誘導磁束が減少する。このため、比較例の回転電機10ではトルクが低下する可能性がある。
これに対して、図15の比較例で本体部分の断面幅を全長にわたって同じとしたままで主突極26の周方向の幅を全体で大きくし、断面幅を大きくすることも考えられるが、この場合には、共通巻線32,36の配置空間が小さくなり、共通巻線32,36の断面積が小さくなる。このため、銅損が増加して、回転電機10のトルクが低下する可能性がある。上記の実施形態によれば、このような不都合を解消でき、回転電機10のトルクの向上を図れる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4A、図4Bに示した実施形態または図5に示した実施形態と同様である。
図16は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、ロータ14及びステータ12の周方向一部を示す概略断面図である。図17は、図16のB部拡大図である。図16、図17に示す構成では、上記の図1から図4に示した構成において、図5の構成と同様に、各主突極26の先端部に鍔部48が設けられている。なお、この鍔部48は省略することもできる。また、周方向に隣り合う主突極26の互いに対向する周方向側面に結合され、周方向に対向する、各ロータスロット46ごとに2つずつの補助突極44同士は、ロータスロット46内で結合されていない。互いに対向する補助突極44の先端部は互いに離れている。この構成によれば、主突極26にトルクに寄与しない磁束が流れるのを有効に抑制できる。すなわち、周方向に隣り合う主突極26と、主突極26から外れたロータコア24と、補助突極44とを含む部分により、ループする磁気回路が形成されるのを有効に抑制し、回転電機10のトルクの向上を有効に図れる。また、ロータ14の径方向に関して補助突極44よりも内側の空間に共通巻線32,36を容易に配置できる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4A、図4Bに示した実施形態または図5に示した実施形態と同様である。
なお、図16、図17に示した構成において、各補助突極44を、主突極26の周方向側面から周方向に突出させ、中間部で径方向外側に向かうように曲げられる形状に形成したり、図11、図12に示したように、各補助突極44を、径方向外側に向かうほど周方向に関する幅が大きくなる先端部を有する形状に形成することもできる。
図18は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、ロータ14及びステータ12の周方向一部を示す概略断面図である。上記の図1〜図4に示した実施形態では、各主突極26に誘導巻線30,34及び共通巻線32,36を巻装する場合を説明した。ただし、図18に示す構成のように、各主突極26に巻装するロータ巻線68n、68sを、隣り合う別の主突極26に巻装される別のロータ巻線68s、68nに対して分断されるようにすることもできる。すなわち、ロータ14は、周方向に関して1つおきの主突極26に複数の第1ロータ巻線68nをそれぞれ集中巻きで巻線し、第1ロータ巻線68nを巻線した主突極26と隣り合う主突極26であって、周方向1つおきの主突極26に、複数の第2ロータ巻線68sをそれぞれ集中巻きで巻線している。
また、複数の第1ロータ巻線68nを直列接続した第1ロータ巻線回路70に1つの第1ダイオード38を接続し、複数の第2ロータ巻線68sを直列接続した第2ロータ巻線回路72に1つの第2ダイオード40を接続している。すなわち、ロータ14の周方向に1つおきに配置された複数の第1ロータ巻線68nは、電気的に直列に接続され、かつ無端状に接続されるとともに、その間の一部に第1ダイオード38が各第1ロータ巻線68nと直列に接続され、第1ロータ巻線回路70が構成されている。各第1ロータ巻線68nは、同じ磁極(N極)として機能する主突極26に巻装されている。
また、複数の第2ロータ巻線68sは、電気的に直列に接続され、かつ無端状に接続されるとともに、その間の一部に第2ダイオード40が各第2ロータ巻線68sと直列に接続され、第2ロータ巻線回路72が構成されている。各第2ロータ巻線68sは、同じ磁極(S極)として機能する主突極26に巻装されている。また、周方向に隣り合う(異なる磁極の磁石が形成される)主突極26に巻装されたロータ巻線68n、68sは、互いに電気的に分断されている。
また、ロータ14の周方向に隣り合う主突極26同士で、異なる磁極の磁石が形成されるように、各ダイオード38,40によるロータ巻線68n、68sの電流の整流方向を互いに逆にしている。すなわち、周方向において隣り合うように配置された第1ロータ巻線68nと第2ロータ巻線68sとで流れる電流の向き(ダイオード38,40による整流方向)、すなわち順方向が互いに逆になるようにダイオード38,40がロータ巻線68n、68sに接続されている。ダイオード38,40は、互いに逆向きでロータ巻線68n、68sに接続されている。
また、各ロータ巻線68n、68sの巻回中心軸は径方向と一致している。そして各ダイオード38,40は、ステータ12で生成される空間高調波を含む回転磁界による誘導起電力の発生により、対応するロータ巻線68n、68sに流れる電流を整流することで、ロータ14の周方向に隣り合うロータ巻線68n、68sに流れる電流の位相を、A相とB相とに交互に異ならせている。また、ダイオード38,40は、誘導起電力の発生により、対応するロータ巻線68n、68sに流れる電流を独立して整流し、各ロータ巻線68n、68sに流れる電流により生成される周方向複数個所の主突極26の磁気特性を周方向に交互に異ならせている。この構成では、ダイオード38,40の数を全体で2つに減らすことができ、ロータ14の巻線構造を簡略化することができる。
さらに、各主突極26の周方向両側面に補助突極44を突出させ、各主突極26に巻かれたロータ巻線68n、68sを補助突極44で先端側と根元側とに分けているが、ロータ巻線68n、68sの先端側及び根元側同士は直列に接続されている。また、補助突極44で先端側と根元側とに分けられたロータ巻線68n、68sのうち、根元側の断面積を先端側の断面積よりも大きくすることもできる。なお、図示の例では、補助突極44は、主突極26の周方向側面に周方向に対し傾斜する方向に突出形成しているが、補助突極44を周方向両側面に周方向に突出させ、中間部で径方向に曲げるように形成することもできる。また、図11,12に示した構成のように、補助突極44の先端部の周方向の幅を大きくすることもできる。図18に示した構成の場合も、ステータ12で生成される回転磁界に含まれる空間高調波をロータ巻線68n、68sに多く鎖交させて、回転電機10のトルク及び効率を向上することができる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4Aに示した構成と同様である。なお、図18に示した構成において、図1から図4Aの構成と同様に、ロータスロット46内で周方向に隣り合う補助突極44同士を連結することもできる。
また、図19に示すように、各主突極26に巻装されたロータ巻線68n、68sごとにそれぞれ1つずつ第1ダイオード38または第2ダイオード40を短絡するように接続することもできる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4Aに示した構成、または上記の図18に示した構成と同様である。
なお、図示は省略するが、上記の図6に示した回転電機駆動システム50において、回転電機10のq軸電流またはd軸電流にパルス電流を周期的に重畳させることにより、回転電機10のさらなるトルク増大を図ることもできる。q軸電流にパルス電流を重畳させる場合、パルス状に減少してから増大する減少パルス電流を重畳させることが、インバータ52の小型化等を図る面から好ましい。d軸電流にパルス電流を重畳させる場合、パルス状に増大してから減少する増加パルス電流を重畳させることが、トルク増大の面から好ましい。d軸電流に増加パルス電流を重畳させるのと同時にq軸電流に減少パルス電流を重畳させることもできる。なお、d軸とは、回転電機10の周方向に関してロータ巻線28n、28s(または68n、68s)の巻回中心軸方向である磁極方向をいい、q軸とはd軸に対し電気角で90度進んだ方向をいう。例えば、上記の図1、図14、図16、図18に示すようにロータ14の回転方向が規定される場合、d軸方向、q軸方向は、図1、図14、図16、図18にそれぞれ矢印で示したような関係で規定される。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、上記では、ステータの径方向内側にロータが対向配置された場合を説明したが、ステータの径方向外側にロータが対向配置された構成でも本発明を実施できる。また、ステータ巻線はステータに集中巻きで巻線する場合を説明したが、例えばステータで空間高調波を含む回転磁界を生成できるのであればステータにステータ巻線を分布巻きで巻線する構成でも本発明を実施できる。また、上記の各実施形態では、磁気特性調整部をダイオードとした場合を説明したが、ロータ巻線に発生する誘導起電力によって前記複数の主突極に生じる磁気特性を周方向で異ならせる機能を有するものであれば、他の構成を採用することもできる。また、本発明では、例えばアキシャルギャップ型の回転電機等の構成を採用することもできる。