JP5782764B2 - 変性ポリイミド樹脂の製造方法 - Google Patents
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特許文献1では、具体的には、ジオール化合物の種類によって2段階に反応を分けて行うなどの製造方法が採用されているが、2段階で反応するのは経済的ではなく、さらに改良の余地があった。
変性ポリイミド樹脂溶液の溶液粘度(重合度)が制御できないと、その変性ポリイミド樹脂を用いた樹脂組成物の物性や取扱い性に大きな影響があるため、溶液粘度(重合度)が容易に制御でき且つ簡便で経済的な変性ポリイミド樹脂の製造法が望まれていた。
(1) 溶媒中、(A)ジイソシアネート化合物と、(B)(b1)下記化学式(1)で示される2官能性水酸基末端ポリカーボネートを含む一種類以上のジオール化合物、及び(C)下記化学式(2)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーとを反応して変性ポリイミド樹脂を得る製造方法において、
ジイソシアネート化合物に対するジオール化合物のモル比[(B)+(C)]/(A)を1.01〜1.09の範囲で反応し、次いで反応混合液の溶液粘度が所定粘度まで上昇した段階で(D)1官能性活性水素化合物を添加することを特徴とする変性ポリイミド樹脂の製造方法。
本発明で使用される(A)ジイソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネ−ト基を2個有するものであればどのようなものでもよい。例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族のジイソシアネ−ト、好ましくはイソシアネート基を除いて炭素数が2〜30の脂肪族、脂環族又は芳香族のジイソシアネ−トであり、具体的には1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,5−ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−へキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト(イソホロンジイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、トリジンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト等を好適に例示することができる。
(b1)2官能性水酸基末端ポリカーボネートは、前記化学式(1)で示される2官能性水酸基末端ポリカーボネートであり、変性ポリイミド樹脂に柔軟性を付与する作用を持つので、限定するものではないが、前記化学式(1)のR1が2価の脂肪族炭化水素基である2官能性水酸基末端ポリカーボネートが好ましい。(b1)2官能性水酸基末端ポリカーボネートは、数平均分子量が好ましくは500〜10000、より好ましくは1000〜5000のものが好適である。
本発明で使用される(b1)2官能性水酸基末端ポリカーボネートは、具体的には宇部興産株式会社製のUH−CARB、UN−CARB、UD−CARB、UC−CARB、ダイセル化学工業株式会社製のPLACCEL CD−PL、PLACCEL CD−H、クラレ株式会社製のクラレポリオールCシリーズなどを好適に例示することができる。これらのポリカーボネートジオールは、単独で、または二種類以上を組合せて用いられる。
本発明においては、(B)ジオール化合物は、さらに(b2)反応性極性基含有ジオール化合物を含有することが好適であり、特に(b1)数平均分子量が500〜10000の2官能性水酸基末端ポリカーボネートと、(b2)反応性極性基含有ジオール化合物とを組合せて用いるのが好ましい。
テトラカルボン酸成分は、ジアミンと反応させることが容易なテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
したがって、本発明の製造方法においては、好ましくは固形分濃度が前記濃度になるような濃度で反応が行われ、好ましくは得られる変性ポリイミド樹脂溶液の溶液粘度が前記粘度になるように、(D)1官能性活性水素化合物が添加される。
例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムなどのアミド類溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホルムアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホンなどの硫黄原子を含有する溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライムなどのジグライム類溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類溶媒、イソホロン、シクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンなどのケトン類溶媒、ピリジン、エチレングリコール、ジオキサン、テトラメチル尿素などの其の他の溶媒、また必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は単独でもいくつかの溶媒の混合物であっても構わない。これらの溶媒の中でも、ジグライム類溶媒、ラクトン類溶媒、ケトン類溶媒が好適に用いられる。
なお、本発明の変性ポリイミド樹脂の製造方法で用いる溶媒は、好ましくは反応混合液の水分量が100〜800ppmになるように、溶媒の水分量も制御されることが好ましい。
ジイソシアネート化合物に対するジオール化合物のモル比[(B)+(C)]/(A)が1.01未満では、反応混合液の溶液粘度の増大速度が大きくなって、溶液粘度(重合度)が容易に制御でき難くなる。またジイソシアネート化合物に対するジオール化合物のモル比[(B)+(C)]/(A)が1.09を超えると、十分な分子量を持った変性ポリイミド樹脂を得るために長時間の反応が必要になったり、或いは十分な分子量を持った変性ポリイミド樹脂を得ることが難しくなったりするので好適ではない。
本発明の変性ポリイミド樹脂の製造方法では、これら(A)、(B)及び(C)の反応は、一段反応で好適に行うことができる。
また、この反応は、反応温度が30℃〜150℃好ましくは30℃〜130℃で、0.1〜50時間、好ましくは0.5〜40時間反応することによって好適に行うことができる。圧力は限定されないが通常は常圧であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気で好適に行うことができる。
ここで、所定粘度とは、同じ装置や原料やスケールで同様の反応を行った結果に基づいて経験的に決定されるべき溶液粘度であって、通常は目的の溶液粘度の90〜130%好ましくは95〜125%の値である。
なお、反応混合液の溶液粘度と撹拌装置の負荷電流との関係は、予め決定した製造時に採用される反応条件(反応容器、濃度、温度、撹拌速度など)において、溶液粘度と負荷電流の値を測定して確認される。
〔溶液粘度〕
東機産業株式会社製粘度計TV−22を用い、温度25℃で、回転数1rpmにて測定した。
〔GPC〕
東ソー株式会社製HLC−8220GPC(カラム TSKgel SuperHZ1000+TSKgel SuperHZ3000)を用い、THFを溶媒として測定を行い、ポリスチレン標準試料を用い、数平均分子量を求めた。
〔固形分濃度〕
変性ポリイミド樹脂溶液約1gを精秤してγ―ブチロラクトン約3gで希釈し、これを150℃で4時間加熱し、加熱前の試料質量(w1、但し希釈用γ―ブチロラクトンは含まず)と加熱後の試料質量(w2)から、次式により固形分濃度を測定した。
固形分濃度(%)=〔w2/w1〕×100
〔撹拌装置〕
新東科学株式会社製スリーワンモータBL300を用いた。
〔粘度と撹拌負荷電流との相関関係〕
撹拌装置、温度計及び窒素導入管を備えた容量500ミリリットルのガラス製セパラブルフラスコに、粘度が既知の変性ポリイミド樹脂500gを入れ、80℃および90℃、100rpmで撹拌し、その時の負荷電流値を記録した。変性ポリイミド樹脂の粘度を変えて同様の操作を繰り返し行うことにより、粘度と撹拌負荷電流との相関関係を求めた。
窒素導入管、ディーンスタークレシバー、冷却管を備えた容量500ミリリットルのガラス製セパラブルフラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 117.6g(0.40モル)、イソホロンジアミン 34.0g(0.20モル)、3−アミノプロパノール 30.0g(0.40モル)、及びジメチルアセトアミド 400ミリリットルを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で1時間撹拌した。次いで、トルエン100ミリリットルを加え、180℃4時間加熱し、イミド化反応により生じた水をトルエンと共沸により除いた。反応溶液を水2リットルに投入して、生じた沈殿を濾取し、水洗後減圧乾燥し、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーの粉末157.6gを得た。
この2官能性水酸基末端イミドオリゴマーは、1H−NMRスペクトルから、プロパノールの2位メチレンプロトン(1.65〜1.85ppm)とビフェニルテトラカルボン酸イミドのフェニレンプロトン(7.50〜8.20ppm)の積分強度比から、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーは化学式(2)のm(平均値)が1の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーであることが確認できた。
溶液粘度が130〜150Pa・sの変性ポリイミド樹脂溶液を得ることを目標にして以下製造を試みた。
撹拌装置、温度計及び窒素導入管を備えた容量500ミリリットルのガラス製セパラブルフラスコに、2官能性水酸基末端ポリカーボネートジオールとしてUH−CARB200(宇部興産(株)製,分子量 約2000) 106g(0.053mol)、反応性極性基含有ジオール化合物として2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(Perstorp製) 7.07g(0.053mol)、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーとして参考例1の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーのγ―ブチロラクトン溶液 93.0g(固形分濃度52.3重量%、0.058mol)、溶媒としてγ―ブチロラクトン(三菱化学(株)製) 256gを仕込み、50℃で1時間撹拌した。ジイソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製) 38.2g(0.153mol)を添加し、60℃で3時間反応させた。反応温度を80℃に上げ、撹拌機の負荷電流が60mA(at100rpm)となった時点で1官能性活性水素化合物として1−プロパノール(和光純薬工業(株)製) 3.65g(0.0607mol)を添加し、更に80℃にて3時間反応を行った。
得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、ほぼ目標とした、固形分濃度40重量%、溶液粘度136Pa・sの溶液であった。GPCから求めた数平均分子量は12,700であった。
溶液粘度が70〜90Pa・sの変性ポリイミド樹脂溶液を得ることを目標にして以下製造を試みた。
撹拌装置、温度計及び窒素導入管を備えた容量500ミリリットルのガラス製セパラブルフラスコに、2官能性水酸基末端ポリカーボネートジオールとしてUH−CARB200(宇部興産(株)製,分子量 約2000) 110g(0.055mol)、反応性極性基含有ジオール化合物として2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(Perstorp製) 7.31g(0.055mol)、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーとして参考例1の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーのγ―ブチロラクトン溶液 87.1g(固形分濃度52.3重量%、0.055mol)、溶媒としてγ―ブチロラクトン(三菱化学(株)製)263gを仕込み、50℃で1時間撹拌した。ジイソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製) 39.9g(0.160mol)を添加し、60℃で1時間反応させた。反応温度を80℃に上げ、撹拌機の負荷電流が54mA(at100rpm)となった時点でメチルエチルケトオキシム(宇部興産(株)製)5.51g(=0.0632mol)を添加し、更に80℃にて1.5時間反応を行った。
得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、ほぼ目標とした、固形分濃度40重量%、溶液粘度79Pa・sの溶液であった。GPCから求めた数平均分子量は8,200であった。
溶液粘度が130〜150Pa・sの変性ポリイミド樹脂溶液を得ることを目標にして以下製造を試みた。
撹拌装置、温度計及び窒素導入管を備えた容量500ミリリットルのガラス製セパラブルフラスコに、2官能性水酸基末端ポリカーボネートジオールとしてUH−CARB200(宇部興産(株)製,分子量 約2000) 91.2g(0.046mol)、反応性極性基含有ジオール化合物として2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(Perstorp製) 10.9g(0.081mol)、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーとして参考例1の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーのγ―ブチロラクトン溶液 79.8g(固形分濃度48.5重量%、0.046mol)、溶媒としてγ―ブチロラクトン(三菱化学(株)製) 238gを仕込み、80℃に昇温した。ジイソシアネート化合物として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)製) 45.0g(0.17mol)を添加し、80℃で0.3時間、100℃で1時間、更に130℃で14時間反応させた。反応温度を90℃に下げ、撹拌機の負荷電流が53mA(at100rpm)となった時点で1官能性活性水素化合物として1−ペンタノール(東洋合成工業(株)製) 5.58g(0.0633mol)を添加し、更に90℃にて16時間反応を行った。
得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、ほぼ目標とした、固形分濃度40重量%、溶液粘度137Pa・sの溶液であった。GPCから求めた数平均分子量は6,900であった。
溶液粘度が130〜150Pa・sの変性ポリイミド樹脂溶液を得ることを目標にして以下製造を試みた。
撹拌装置、温度計及び窒素導入管を備えた容量500ミリリットルのガラス製セパラブルフラスコに、2官能性水酸基末端ポリカーボネートジオールとしてUH−CARB200(宇部興産(株)製,分子量 約2000) 106g(0.053mol)、反応性極性基含有ジオール化合物として2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(Perstorp製) 7.07g(0.053mol)、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーとして参考例1の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーのγ―ブチロラクトン溶液 93.0g(固形分濃度52.3重量%、0.058mol)、溶媒としてγ―ブチロラクトン(三菱化学(株)製)256gを仕込み、50℃で1時間撹拌した。ジイソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製) 38.2g(=0.153mol)を添加し、60℃で3時間反応したが溶液粘度は目標値を大幅に下回ったので、更に80℃にて14時間反応を行った。
得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、目標とした溶液粘度から外れ、ポリマー固形分濃度40重量%、溶液粘度238Pa・sの溶液であった。GPCから求めた数平均分子量は14,900であった。
Claims (5)
- 溶媒中、(A)ジイソシアネート化合物と、(B)(b1)下記化学式(1)で示される2官能性水酸基末端ポリカーボネートを含む一種類以上のジオール化合物、及び(C)下記化学式(2)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーとを反応して変性ポリイミド樹脂を得る製造方法において、
ジイソシアネート化合物に対するジオール化合物のモル比[(B)+(C)]/(A)を1.01〜1.09の範囲で反応し、次いで反応混合液の溶液粘度が、25℃における溶液粘度が70〜90Pa・s又は130〜150Pa・sの、目的の溶液粘度の90%〜130%まで上昇した段階で(D)1官能性活性水素化合物を添加することを特徴とする変性ポリイミド樹脂の製造方法。
- (B)のジオール化合物が、さらに(b2)カルボキシル基又は/及びフェノール性水酸基を持ったジオール化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の変性ポリイミド樹脂の製造方法。
- (D)の1官能性活性水素化合物が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、メチルエチルケトオキシム、及びピラゾールから選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の変性ポリイミド樹脂の製造方法。
- 反応混合液の水分量が100〜800ppmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の変性ポリイミド樹脂の製造方法。
- 反応混合液の溶液粘度と撹拌装置の負荷電流との関係が確認された撹拌装置を用いて、反応混合液を撹拌し、反応混合液の溶液粘度が所定粘度まで上昇した段階であることを、撹拌装置の負荷電流の値で決定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の変性ポリイミド樹脂の製造方法。
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