図1は、本発明の第1の実施形態を採用した画像形成装置の概略構成図を示している。同図において、画像形成装置100は複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機であってフルカラーの画像形成を行うことが可能であるが、本発明が適用可能な画像形成装置としては他の画像形成装置、例えばモノクロ機、複写機、プリンタ、ファクシミリの単体、あるいは複写機とプリンタとの複合機等の他の複合機であってもよい。画像形成装置100は、プリンタとして用いられる場合には外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行う。これは、画像形成装置100がファクシミリとして用いられる場合も同様である。画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシート、カードやハガキ等の厚紙、封筒等の何れをもシート状記録媒体としてこれに画像形成を行うことが可能である。また、画像形成装置100は記録媒体である転写紙Sの両面に画像形成可能に構成されている。
画像形成装置100は、イエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの色分解された各色にそれぞれ対応する画像を形成可能な像担持体である感光体ドラム20Y,20M,20C,20BKを水平方向に並設したタンデム方式を採用している。各感光体ドラム20は装置本体99の図示しないフレームにそれぞれ回転自在に支持されており、中間転写体でありトナー像担持体でもある転写ベルト11の移動方向であって図1に示す矢印A1方向の上流側からイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の順に並設されている。各感光体ドラム20は、各色画像を形成する作像装置であるトナー像形成手段としての画像形成ユニット60Y,60M,60C,60BKに設けられており、転写ベルト11の外周面側である作像面側にその回転軸が互いに平行となるように、矢印A1方向に等間隔の所定ピッチで配設されている。
転写ベルト11は各感光体ドラム20に対峙しつつ矢印A1方向に移動可能であり、各感光体ドラム20に形成された可視像であるトナー像は、移動する転写ベルト11の作像面にそれぞれ重畳転写された後に転写紙Sに一括転写される。転写ベルト11はその下側部分が各感光体ドラム20に対向しており、転写ベルト11を介して各感光体ドラム20と対向する位置にはそれぞれ1次転写手段としての1次転写ローラ12Y,12M,12C,12BKが配設されている。転写ベルト11と各1次転写ローラ12との対向部において、各感光体ドラム20上に形成されたトナー像を転写ベルト11に1次転写する1次転写部58が構成されている。転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11が移動する過程において各感光体ドラム20に形成されたトナー像が転写ベルト11上の同じ位置に重ねて転写されるように、A1方向上流側から下流側にかけて各1次転写ローラ12による電圧印加のタイミングをずらすことにより行われる。
画像形成装置100は、4つの画像形成ユニット60、各感光体ドラム20の上方に対向配置され転写ベルト11を有する中間転写ユニットである転写ベルトユニット10、転写ベルト11の右方であって転写ベルト11と対向する位置に配設された2次転写手段としての2次転写装置5、各画像形成ユニット60の下方に対向配置された潜像形成手段としての光走査装置8を装置本体99内に有している。装置本体99内であって光走査装置8の下方には、転写ベルト11と2次転写装置5との間に形成される2次転写部57に向けて給送される転写紙Sを多数枚積載可能なシート給送装置61、シート給送装置61より給送された転写紙Sを各画像形成ユニット60によるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで2次転写部57に向けて給送するレジストローラ対4、転写紙Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサが配設されている。
また装置本体99内には、トナー像が転写された転写紙Sにトナー像を定着させるための定着手段であるローラ定着方式の定着装置6、レジストローラ対4から2次転写部57に向けて給送された転写紙S、すなわち2次転写部57においてトナー像が転写される前の転写紙Sに対して後述する定着液を塗布する塗布手段としての定着液塗布装置41、定着後の転写紙Sを装置本体99の外部に排出する排紙ローラ7、イエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナーが充填され転写ベルトユニット10の上方に配設されたトナーボトル9Y,9M,9C,9BK、排紙ローラ7により排出された転写紙Sを積載すべく装置本体99の上部に設けられた胴内排紙部によって形成された排紙トレイ17が配設されており、装置本体99の右側面には両面画像形成時に使用される両面ユニット51が、装置本体99の上方には原稿を読み取る際にスキャナとして使用される画像読取装置98がそれぞれ配設されている。
さらに装置本体99内には、本体内右側の下方から上方に向けて形成され、その途中に2次転写部57及びレジストローラ対4及び定着装置6及び排紙ローラ7が配設されシート給送装置61から給送された転写紙Sが進入する用紙搬送路81と、レジストローラ対4の転写紙搬送方向上流側位置において両面ユニット51から用紙搬送路81に合流する給紙路82と、定着装置6の転写紙搬送方向下流側位置において用紙搬送路81から両面ユニット51側に分岐する再給紙搬送路83とが設けられている。また装置本体99内には、各感光体ドラム20を回転駆動する図示しない駆動装置、画像形成装置100の動作全般を制御するCPU、記憶部として機能するメモリ等を含む制御手段91(図2参照)、外部電源から給電され画像形成装置100の各構成部に給電を行う図示しない電源ユニット等が設けられている。
転写ベルトユニット10は、上述した転写ベルト11及び各1次転写ローラ12の他、転写ベルト11を張架する駆動ローラ72及びクリーニング対向ローラ74及び張架ローラ33及び張架ローラ34、転写ベルト11に所定の張力を付与するテンションローラ75、クリーニング対向ローラ74と対向配置され転写ベルト11の表面をクリーニングするクリーニング装置13、駆動ローラ72を回転駆動する図示しないベルト駆動装置、各1次転写ローラ12にバイアスを印加する図示しない電源及びバイアス制御手段等を有している。クリーニング対向ローラ74、張架ローラ33,34、テンションローラ75は駆動ローラ72によって走行駆動される転写ベルト11の移動に伴い従動回転する。各1次転写ローラ12は、転写ベルト11をその裏面側から各感光体ドラム20に向けて押圧してそれぞれ1次転写ニップ部を形成する。この1次転写ニップ部は転写ベルト11のクリーニング対向ローラ74と張架ローラ33との間でほぼ水平に張架された部分において形成されており、クリーニング対向ローラ74及び張架ローラ33及びテンションローラ75は1次転写ニップ部を安定化させる機能を有している。各1次転写ニップ部には、1次転写バイアスの影響により各感光体ドラム20と各1次転写ローラ12との間に1次転写電界が形成される。各感光体ドラム20上に形成された各色のトナー像は、1次転写電界及びニップ部圧力の影響によって転写ベルト11上に1次転写される。
駆動ローラ72には、転写ベルト11を介して2次転写装置5が当接されており、この当接部において2次転写部57が形成されている。クリーニング対向ローラ74は、テンションローラ75と共に転写ベルト11に対して転写に適した所定の張力を付与するテンションローラとしての機能をも有している。クリーニング装置13はクリーニング対向ローラ74の下方に配設されており、クリーニング対向ローラ74との対向位置において転写ベルト11に接するそれぞれ図示しないブラシローラ及びクリーニングブレード、その内部にクリーニング部材を収容した図示しないケース、図示しない廃トナーボトル等を有している。クリーニング装置13は、転写ベルト11上に残存した残留トナー等の異物をクリーニング部材により掻き取って除去することにより転写ベルト11をクリーニングし、転写ベルト11より除去された異物は廃トナーボトルに貯容される。廃トナーボトルは画像形成装置100の図示しない前面パネルを開いた状態において図1の紙面手前側に着脱可能に構成されており、貯容された異物が満杯となった際に新たなものと交換される。なお、後述するクリーニング装置71Y,71M,71C,71BKも同様に交換可能な廃トナーボトルを有している。
2次転写装置5は、駆動ローラ72に対向配置され転写ベルト11に当接する2次転写ローラと、2次転写ローラを転写ベルト11に向けて付勢し2次転写ローラと転写ベルト11との間にニップ部である2次転写部57を形成する付勢手段としてのばねを有している。2次転写ローラには、図示しない電源よりトナーとは逆極性の電圧が印加され、ばねによる転写ベルト11への圧接及び転写バイアスにより転写ベルト11上のトナー像を転写紙Sに2次転写させる。2次転写ローラは、トナー像が転写された転写紙Sを定着装置6へと搬送する機能をも有している。ばねは、2次転写部57に送られた転写紙Sを転写ベルト11に密着させ、転写ベルト11上に担持されているトナー像を、後述する定着液塗布装置41によって定着液を塗布されている側である転写紙Sの一方の面に圧接させるべく設けられている。
光走査装置8は、それぞれ図示しない半導体レーザ等の光源、ポリゴンミラー、fθレンズ、反射ミラー等を有しており、形成すべき画像に対応したデータに基づき制御手段91により光源が発光制御されると共にポリゴンミラーが回転駆動制御されることにより、回転する各感光体ドラム20の表面にレーザ光が照射されてイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した静電潜像が各感光体ドラム20の表面に形成される。
シート給送装置61は、転写紙Sを複数枚重ねた束の状態で収容し、装置本体99の下部であって光走査装置8の下方に配設されている。シート給送装置61は、複数枚の転写紙Sを収容可能な2段の給紙カセット25、給紙カセット25に収容された最上位の転写紙Sに接触してこれを給送する給紙ローラ24、給紙ローラ24によって給送される転写紙Sを1枚のみに分離する図示しない分離ローラ、給紙カセット25が装置本体99に対して着脱されたことを検知する図示しない着脱センサ等を有している。給紙ローラ24が所定のタイミングで図1において反時計回り方向に回転駆動することにより、分離ローラによって分離された給紙カセット25内の最上位の転写紙Sが用紙搬送路81へと給送され、給送された転写紙Sはレジストローラ対4のローラ間にて一時停止される。
両面ユニット51は、外側面側に配設された手差し給紙装置53、手差し給紙装置53から両面ユニット51内を横切るように配設された給紙路82、再給紙搬送路83を経由した転写紙Sを給紙路82に向けて反転搬送する反転搬送路21、反転搬送路21内に配設され転写紙Sを給紙路82に向けて搬送する搬送ローラ23等を有している。手差し給紙装置53は、転写紙Sを積載可能な手差しトレイ27、手差しトレイ27上に積載された最上位の転写紙Sに当接して給送する給紙ローラ28、給紙ローラ28により給送される転写紙Sを1枚ずつに分離する図示しない分離ローラ等を有しており、給紙ローラ28が図1において時計回り方向に回転駆動すると共に図示しない分離ローラが作用することにより手差しトレイ27上の最上位の転写紙Sが給送され、給送された転写紙Sはレジストローラ対4のローラ間にて一時停止される。
定着装置6は、ローラ状の定着部材である定着ローラ65、定着ローラ65に圧接して定着ニップ部62を形成する加圧ローラ63、定着ローラ65の内部に配設され定着ローラ65を加熱して定着ニップ部62を所定の温度に加熱するハロゲンヒータからなるヒータ66、定着ローラ65の周面に近接配置され定着ローラ65の表面温度を検知する非接触型のサーミスタ68等を有している。さらに定着装置6は、図2に示すように、ヒータ66を駆動するPWM駆動回路92b、後述する温度に設定された定着ローラ65の目標制御温度とサーミスタ68により検知された定着ローラ65の温度との間の温度偏差の情報を基にPWM駆動回路92bを通じてヒータ66への印加電力を単位時間当たりの通電時間(DUTY)で制御し定着ローラ65の温度を制御する定着温度コントローラ92aを有している。PWM駆動回路92bと定着温度コントローラ92aとは制御手段91の一部をなしており、制御手段91は定着温度制御手段としても機能する。定着温度制御手段として機能する制御手段91は、定着ローラ65の温度制御を行うことにより、実質的に定着ニップ部62の温度制御を行う。定着装置6は、トナー像を担持した転写紙Sを定着ニップ部62に挟持しつつ搬送し、定着ローラ65が転写紙Sの画像面に接触することにより熱と圧力との作用によってトナーを溶融して圧着させ、転写紙Sの表面に画像を定着させる。なお、定着ニップ部62に送られてくる転写紙Sには、そのトナー像担持面に定着液塗布装置41によって定着液が塗布されているが、図2では定着液の図示を省略している。
各トナーボトル9内に貯容されているイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナーは重合トナーであり、図示しない駆動手段によって各トナーボトル9が回転されることにより所定量のトナーが各トナーボトル9より吐出される。吐出されたトナーは図示しないトナー搬送経路を経て各画像形成ユニット60に設けられた現像装置80Y,80M,80C,80BKに所定量補給される。
画像読取装置98は、それぞれ図示しない原稿を載置するコンタクトガラス、コンタクトガラスに載置された原稿に光を照射する光源及び光源から原稿に照射され反射された光を反射する第1の反射体を備え図1において左右方向に走行する第1走行体、第1の反射体によって反射された光を反射する第2の反射体を備えた第2走行体、第2走行体からの光を結像する結像レンズ、結像レンズを経た光を受け原稿の内容を読み取る読取センサ等を有している。
各画像形成ユニット60はそれぞれ同様に構成されており、感光体ドラム20の周囲であって図1に矢印B1で示す方向に沿い、1次転写ローラ12、クリーニング装置71、図示しない除電装置、AC帯電を行う図示しない帯電ローラを有する帯電装置79、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤により現像を行う現像装置80を電子写真プロセス手段としてそれぞれ有している。これ等は周知の構成であり、例えば各現像装置80は、各感光体ドラム20に対向配置された現像剤担持体である現像ローラ、現像剤を攪拌及び搬送するスクリュ、現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度センサ、トナー濃度センサの出力に応じて各トナーボトル9内のトナーを各現像装置80内に補給するトナー補給装置等を有し、現像ローラは現像装置本体側に固定された磁石とこの磁石の外側に回転自在に支持されたスリーブとを有している。各感光体ドラム20、各クリーニング装置71、各除電装置、各帯電装値79、各現像装置80、及び各感光体ドラム20周りの各構成は一体化されており、それぞれプロセスカートリッジを構成している。各プロセスカートリッジは、図示しない前面パネルを開放した状態で図1において紙面手前側に向けて着脱可能に構成されている。このようにプロセスカートリッジ化することは、交換部品として取り扱うことができるためメンテナンス性が著しく向上する。
上述の画像形成装置100では、図示しないスタートスイッチの押下等により各画像形成ユニット60においてそれぞれ画像形成プロセスが実行されることにより画像形成が行われる。先ず、カラー画像を形成すべき旨の信号が入力されると、画像読取装置98において原稿の読み取りが行われて形成すべき画像に対応したデータが取得され、これが制御手段91に入力される。また、駆動ローラ72が回転駆動され、転写ベルト11、クリーニング対向ローラ74、張架ローラ33,34、テンションローラ75が従動回転すると共に、各感光体ドラム20が矢印B1方向に回転駆動される。
各感光体ドラム20は、その回転に伴い各帯電装置79によりその表面をそれぞれ一様に帯電され、形成すべき画像データに基づいて制御手段91により駆動制御される光走査装置8からのレーザ光の露光により、イエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した静電潜像を形成される。形成された各色の静電潜像は、各現像装置80によりイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナーによって顕像化され、各感光体ドラム20の表面には互いに異なる色の単色画像がそれぞれ形成される。各色の単色画像は、トナーとは逆極性の電圧が印加された各1次転写ローラ12によってA1方向に走行移動する転写ベルト11上の同じ位置に重畳転写され、転写ベルト11上にフルカラーのトナー像が形成される。一方、画像形成信号の入力に伴い各給紙ローラ24、給紙ローラ28の何れかが回転駆動され、給紙カセット25内または手差しトレイ27上より1枚の転写紙Sが分離給送される。分離給送された転写紙Sは、レジストローラ対4のローラ間に突き当てられた状態で一時停止される。また両面画像形成の場合には、定着装置6においてその片面に後述のように画像が定着された転写紙Sが、反転搬送路21を経由して表裏反転された状態でレジストローラ対4に突き当てられた状態で一時停止される。
転写ベルト11上に形成されたフルカラーのトナー像が転写ベルト11の走行に伴い2次転写部57に移動するタイミングに合わせてレジストローラ対4が回転駆動され、レジストローラ対4より給送された転写紙Sは後述する定着液塗布装置41においてトナー像が転写される面に定着液を塗布される。定着液が塗布された転写紙Sは、2次転写部57において転写ベルト11に圧接され、圧力及びバイアス電圧によって転写ベルト11上のフルカラートナー像を転写される。トナー像が転写された転写紙Sは転写ベルト11により搬送されて定着装置6へと送られ、定着ニップ部62を通過する際に熱と圧力との作用及び後述する定着液の作用により、フルカラートナー像が転写紙S上に定着される。
定着装置6を通過した転写紙Sは、排紙ローラにより排紙トレイ17上に排出されてスタックされる。両面画像形成の場合には、片面定着済みの転写紙Sは再給紙搬送路83及び反転搬送路21を経由して再びレジストローラ対4に向けて搬送される。各感光体ドラム20は、転写後に残留した転写残トナーを各クリーニング装置71によって除去された後に除電装置によって除電され、各帯電装置79による次の帯電に備えられる。2次転写を終えた2次転写部57通過後の転写ベルト11は、クリーニング装置13に備えられたクリーニング部材によってその表面をクリーニングされ、次の転写に備えられる。
ここで、上述の画像形成に用いられる定着液について説明する。定着液は、2次転写部57において転写紙Sに転写されるトナー像を構成するトナーを、膨潤及び軟化させて転写紙Sへの定着に適した状態にするための可塑剤と、トナー像を構成しているトナー相互間への定着液の浸透性を向上させるための界面活性剤と、これ等可塑剤及び界面活性剤の希釈液として機能する溶媒とを含んでいる。
可塑剤は、熱を与えられたときに軟化機能を示す固体可塑剤を採用している。ここで熱を与えられたときとは定着装置6による定着の際に加熱されたときであり、画像形成装置100が使用される一般的な環境温度、すなわち常温から50℃程度の温度を超えたときをいう。この環境温度は例えばオフィスの温度であり、また装置本体99内における昇温動作中の定着装置6やその周辺の雰囲気温度を除く温度である。そのため可塑剤は、例えば2次転写部57において転写ベルト11や2次転写ローラに付着する等、定着装置6を除く画像形成装置100の構成部材に付着してもその機能が発現せず、構成部材に付着したことにより機内汚染の不具合が生じることが、防止または抑制されるように構成される。その一方で、定着装置6により加熱して昇温し、上述した環境温度を超える昇温時には、トナーを膨潤及び軟化させて転写紙Sへの定着に適した状態へと変性させる機能が発現する。この機能について、図3を用いて説明する。
図3は、トナーが定着に適した状態となる温度のうちの下限温度、すなわち定着下限温度が可塑剤によって低下することを示す概念図である。同図において貯蔵弾性率とはトナーの硬さを示す値であり、貯蔵弾性率が高ければトナーが硬く、低ければトナーが軟らかいことを意味している。貯蔵弾性率がK以下であればトナーが転写紙Sに固定され定着が行われ得る状態となり、貯蔵弾性率がKのときの温度が定着下限温度となる。図3において固体可塑剤とは画像形成装置100にて使用される定着液に用いられる可塑剤を意味しており、この可塑剤が環境温度において定着液とされる前の単体の状態で固体であるためである。また液体可塑剤とは環境温度において単体の状態で液体のものを示している。
図3に示されているように、固体可塑剤が含まれた定着液がトナーに付与されると、定着下限温度が定着液不使用時における定着下限温度T2よりも低いT1となる。従って、定着ローラ65の目標制御温度を定着液不使用時に比して低く設定することができ、定着装置6及び画像形成装置100の消費電力を低減することができる。また、図3には液体可塑剤がT1より低い温度、例えば環境温度に含まれる常温でトナーを軟化させる能力を有することが示されていると共に、固体可塑剤を含んだ定着液は液体可塑剤がトナーを軟化させる機能を発現する温度では機能せず、液体可塑剤を含んだ定着液とは異なり環境温度では軟化能力をほとんど持たないことが示されている。よって、仮に液体可塑剤を含む定着液を使用したとすれば機内汚染が生じるが、本実施形態では固体可塑剤を含む定着液を用いることにより機内汚染が生じることがない。トナーの貯蔵弾性率を低下させる機能を有する可塑剤が、環境温度下の単体で固体であるか液体であるかがその可塑剤を定着液としたときに機内汚染を生じるか否かの1つの指針となるため、本実施形態では定着液を構成する可塑剤が環境温度下の単体で固体であることを選択の1つの基準としている。
固体可塑剤は、分子鎖中にエチレンオキサイド基−(CH2CH2O)−やプロピレンオキサイド基−(CH(CH3)CH2O)−を含む化合物で、一般にグリコールエーテル類やグリコール脂肪酸エステル類と呼ばれているもののうち、常温では固体であって融点が40℃以上、望ましくは50℃以上である材料である。具体的には、HO−(CH2CH2O)n−OHで表されるポリオキシエチレングリコール類が望ましい。ここで、nは10以上100以下が望ましい。nが10未満では常温で固体とならず、nが100を超えると分子が大きくなりすぎて熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。具体的な材料としては、ポリエチレングリコール#1000、ポリエチレングリコール#1540、ポリエチレングリコール#2000、ポリエチレングリコール#4000、ポリエチレングリコール#6000、ポリエチレングリコール#8000等が挙げられる。
また固体可塑剤としては、HO−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m−OHで表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類も望ましい。ここで、nは10以上200以下、mは5以上50以下が望ましい。nが10未満では常温で固体とならず、nが200を超えると分子が大きくなりすぎて熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。また、mが5未満では常温で固体とならず、mが50を超えると分子が大きくなりすぎて熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。具体的な材料としては、エマルゲン290(花王(株)製)、エパン450、エパン750、エパン785(何れも第一工業製薬社製)等が挙げられる。
また固体可塑剤としては、R−O−(CH2CH2O)n−OHで表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル類も望ましい。ここで、nは10以上100以下が望ましい。nが10未満では常温で固体とならず、nが100を超えると分子が大きくなりすぎて熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。Rは直鎖のアルキル基または分岐型のアルキル基であり、炭素数は10以上22以下が望ましい。炭素数が10未満であると固体として軟らかく、また皮膚や眼を刺激する等の安全性の問題があり、炭素数が22を超えると熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。具体的な材料としては、エマルゲン350、エマルゲン420、エマルゲン4085(何れも花王(株)製)、EMALEX611、EMALEX620、EMALEX710、EMALEX720(何れも日本エマルジョン(株)製)等が挙げられる。
また固体可塑剤としては、R−COO−(CH2CH2O)n−OHまたはR−COO−(CH2CH2O)n−COO−R’で表されるポリオキシエチレン脂肪酸エステル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル類も望ましい。ここで、nは10以上100以下が望ましい。nが10未満では常温で固体とならず、nが100を超えると分子が大きくなりすぎて熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。R及びR’はノルマル型のアルキル基または分岐型のアルキル基であり、炭素数は10以上22以下が望ましい。炭素数が10未満であると固体として軟らかく、また皮膚や眼を刺激する等の安全性の問題があり、炭素数が22を超えると熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。具体的な材料としては、エマノーン3199V、エマノーン3299RV(何れも花王(株)製)、EMALEX820、EMALEX830(何れも日本エマルジョン(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤はトナー像に対する定着液の浸透性を向上させるために使用され、この界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤が適している。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類やアセチレン系界面活性剤が望ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル類としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(12−14)エーテル(12E.O.)やポリオキシエチレンアルキル(12−14)エーテルでBT−12(日光ケミカルズ社製)等、アセチレン系界面活性剤としてはアセチレングリコールが優れ、オルフィン1010、オルフィン4051F(何れも日信化学工業(株)製)等が挙げられる。
上述した各材料の溶媒である希釈液には水が適している。しかし、市水にはカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の不純物が多く含まれるため、これ等の金属イオンをある程度除去した水が望ましい。ただし蒸留水である必要はなく、イオン交換膜にて不純物イオンを除去した水、いわゆるイオン交換水が適している。
次に、上述の固体可塑剤を含んだ定着液が塗布された転写紙Sに対してトナー像を定着させるための加熱温度、すなわち定着ローラ65の目標制御温度について説明する。この定着液を使用するため上述したように定着下限温度が低下するが、一般に定着下限温度は所定のスミア性を確保する温度に設定される。スミア性とは、加熱定着後の記録媒体を擦った際のトナー汚れに関する指標であり、トナー汚れの濃度を表す数値が低いほどトナー汚れの濃度が低く、すなわちトナー汚れが少なく定着性が良好であることを示し、後述のように得られるスミアIDが0.40以下であれば実使用上許容されるものとされている。従って、貯蔵弾性率がK以下となりスミアIDが0.40以下となる定着ローラ65の温度が目標制御温度とされる。
図4に示すように、画像形成装置100では、定着液を使用せず熱定着のみの定着構成を有する画像形成装置に比して、同じ温度条件下におけるスミア性が向上している。同図は、トナー像転写前に予め転写紙Sに定着液を塗布した画像形成装置100と熱定着のみの画像形成装置とで、摩擦試験であるスミア試験を行った際の試験結果の比較を示している。定着液は、固体可塑剤としてポリエチレングリコール#2000を用いると共に界面活性剤としてオルフィン4051Fを用い、これ等を溶媒であるイオン交換水で希釈してそれぞれ25wt%、0.5wt%としたものである。
スミア試験は、スミア試験機(摩擦試験機I型、JIS L0823、摩擦子径15mm)を用いて行った。摩擦子に25×25mm程度の白綿布(JIS L0803 綿3号)を繊維方向が摩擦子の可動方向と平行となるように両面テープで貼り付け、評価画像を5往復連続動作にて擦った。評価画像は画像面積率55%のハーフトーン画像と画像面積率100%の全ベタ画像である。擦った後に白綿布を剥がし、画像が付着している摩擦子跡における任意の3箇所の画像濃度を分光計(X−Rite社製、938スペクトロデンシトメータ)を用いて測定し、その平均値をスミアIDとした。上述のようにスミアIDが低いほど定着画像を擦ったときのトナーによる汚れが少なく、0.40以下であれば実使用上許容される。図4より、画像形成装置100では定着ローラ65の目標制御温度である設定温度が121℃でスミア性が確保されるのに対し、熱定着のみの画像形成装置では設定温度を139℃としなければスミア性が確保されないことが判る。
画像形成装置100では、上述の試験結果を踏まえ定着温度設定を121℃としている。この温度は熱定着のみの画像形成装置における定着下限温度よりも18℃低いことから、画像形成装置100は従来の画像形成装置に比して省電力であり低環境負荷の画像形成装置であるといえる。なお、本実施形態では固体可塑剤としてポリエチレングリコール#2000を25wt%、界面活性剤としてオルフィン4051Fを0.5wt%含んだ定着液を採用しているが、可塑剤の濃度を調整することによりスミア性を確保可能な温度は変更可能であり、定着設定温度はこの限りではない。
本実施形態に示す画像形成装置100において、スミア性が向上し定着設定温度を従来よりも非常に低い温度とすることができ、またこのように低い定着設定温度であってもスミア性を確保しつつ良好な定着及び画像形成が可能であるのは、単に上述した固体可塑剤を含む定着液を用いているからではなく、この定着液をトナー像転写前の転写紙Sに予め塗布しておき、転写紙Sの定着液が塗布された側の面に転写ベルト11上のトナー像を2次転写装置5によって当接させつつ転写させ、その上で定着装置6により加熱及び加圧によって定着を行っているためである。以下にこの理由を説明する。
定着液が塗布された転写紙Sに転写ベルト11上のトナー像を当接させながら転写すると、図5に示すように、予め転写紙Sに塗布されている定着液が転写紙S上に転写されたトナー像を構成する多数のトナーの相互間に毛細管現象によって染み込み、転写ベルト11に接触しているトナー像表面付近まで各トナーの表面が定着液に覆われ、特に転写紙Sの表面に近い側にあるトナーには多くの定着液が付着する。この毛細管現象は転写ベルト11上のトナー像を転写紙Sに接触させながら転写することにより強まるため、単に静電的な飛翔により転写ベルト11から転写紙Sに転写するよりもトナー相互間への定着液の染み込みが促進される。毛細管現象は、本実施形態のように転写紙Sを転写ベルト11に圧接させながら転写することにより特に強まり、上述の染み込みが良好に生じる。
次に、トナー相互間に定着液が染み込みトナー表面が定着液に覆われたトナー像を担持した転写紙Sを定着ニップ部62において加熱すると、定着液中の可塑剤がトナーと共に昇温し図6に示すようにトナー中のトナー樹脂に浸透して、トナーを膨潤及び軟化させる機能を発現する。定着ニップ部62においては圧力も加えられるためトナー像への定着液の染み込みが一層促進され、また軟化したトナーに転写紙Sへのアンカー効果が効率的に発生してトナーが転写紙Sに固定される。本実施形態のようにトナー像の表面側から加熱を行う場合、トナー像の表面に比して転写紙Sとトナー像との界面付近には熱が伝わりにくいが、上述のように定着液は転写紙Sの表面に近いトナーによく付着しているので、可塑剤が上述の機能を発揮する温度に達するとこの機能が発揮され、定着が高効率で行われる。特に本実施形態ではトナー像側からの加熱を行うため、転写紙Sの裏面側からのみの加熱に比して転写紙Sによる吸熱量が少なく、加熱を要する可塑剤の昇温効率が高くなっていることから可塑剤の機能が速やかに発揮される。なお、転写紙Sの裏面側からの加熱も行うべく加圧ローラ63を加熱する手段を並設してもよいが、この場合には省電力化が達成される範囲で裏面側からの加熱を行うことが好ましい。
このように画像形成装置100では従来の定着設定温度よりも低い温度で機能を発現する定着液が転写紙Sに予め塗布されており、トナー像の転写時において接触転写により特に転写紙S表面側のトナーに予め転写紙Sに塗布されている定着液が効率よく付着するため、従来よりも低い温度かつ少ない熱量で特に転写紙S表面側のトナーが定着に適した軟化状態となって定着が良好に行われる。トナー像の転写時において接触転写により特に転写紙S表面側のトナーに予め転写紙Sに塗布されている定着液が効率よく付着することは、トナー像の表面側から定着液を供給する場合よりも定着液の供給量を少なくし、定着液を乾燥するための加熱に要する電力及び時間を低減することにも寄与する。接触転写を行うことにより毛細管現象を利用するため、トナーを転写紙Sに対して飛翔及び着弾させて転写を行う場合よりも予め転写紙Sに付着させておくべき定着液の量が少なく済み、これも定着液を乾燥するための加熱に要する電力及び時間を低減することに寄与する。
また、定着液の塗布をトナー像の転写前に行うので、定着液塗布の際にトナー像を乱すことがなく良好な画像を得ることができる。さらに、定着液の機能が定着のための昇温時に発現するので、仮に定着液が転写ベルト11等の画像形成装置100の構成部材に付着しても悪影響を与えることがない。また、この技術が液体現像への適用に限定されることもない。
なお、定着液をフォーム状とせず液状としたことにより、空隙による転写性の悪化が回避されている。各感光体ドラム20や転写ベルト11、さらにはこれ等に当接している他の部材に定着液が付着することによる機内汚染は、定着液が昇温により機能を発現することによるもののみならず、付着自体によっても例えば構成部材の機能低下や構成部材への残留トナーあるいは飛散トナーの固着といった態様でも生じるが、このような機能低下についても各感光体ドラム20あるいは転写ベルト11上のトナー像に対して定着液を供給する構成とはなっていないことにより、抑制ないし防止される。
次に、定着液塗布装置41について説明する。定着液塗布装置41の構成としては、図7に示すものと図8に示すもの(定着液塗布装置40)とが挙げられる。
図7に示す定着液塗布装置41は、用紙搬送路81中を搬送されている転写紙Sに定着液を吐出して付着させるピエゾ方式のインクジェットヘッドであるヘッド42、用紙搬送路81を介してヘッド42に対向配置された対向ローラ43、ヘッド42の図示しないドライバ等を有している。ヘッド42は、用紙搬送路81の2次転写部57において転写紙Sにトナー像が転写される側に配設されており、転写紙Sのトナー像が転写される側の面に定着液を吐出して塗布する。ヘッド42は定着液を吐出する図示しないノズルを多数備えており、各ノズルは転写紙Sの搬送方向に直交する方向である図7の紙面方向に並設されノズル列を構成していると共に、転写紙Sの搬送方向においてはこのノズル列が千鳥状に複数列配設されている。ノズル列の配列数は、ノズルの大きさに対する吐出される定着液の液滴径によって決定され、比較的小さな液滴を吐出する場合には配列数を増やす必要がある。
ヘッド42は、図示しないドライバを介して制御手段91により駆動される。この点で制御手段91は、定着液塗布装置41による転写紙Sへの定着液の塗布を制御する定着液塗布制御手段として機能すると共に、ヘッド42による転写紙Sへの定着液の吐出を制御する定着液吐出制御手段としても機能する。定着液塗布制御手段として機能する制御手段91は、レジストローラ対4から2次転写部57に向けて送り出された転写紙Sがヘッド42と対向ローラ43との間を通過するとき、制御手段91に入力された形成すべき画像に対応したデータに基づき、2次転写部57においてトナー像が転写される転写紙Sの領域に定着液が塗布されるべくヘッド42を駆動する。そのため定着液塗布制御手段として機能する制御手段91は、上述のデータに基づき定着液を塗布すべき部分であるか否かを判断してヘッド42の駆動制御に関する信号を駆動部である図示しないドライバに送り、ドライバは送られた信号に基づいてヘッド42からの定着液の塗布をオン/オフする。これにより、常に転写紙Sの全面に定着液を塗布する場合に比して定着液の消費量が低減されると共に定着液による装置本体99側の汚染が低減され、また転写紙Sの搬送性の確保等がなされる。なお、ヘッド42により転写紙Sに定着液を塗布する部分は最低限トナーが転写される部分を網羅する必要があるが、より大きな区分で選択塗布を行ってもよい。この場合も全面に塗布する場合に比して上述と同様の利点がある。また、トナー像転写前の転写紙Sに定着液を塗布するので、定着液の塗布によるトナーの飛散が生じないことから飛散したトナーが定着液の吐出口であるノズルに付着することがなく、トナーが定着液により膨潤及び溶解してノズルが詰まるといった不具合が発生しない。
画像形成装置100において、転写紙SとしてA4サイズの普通紙((株)リコー製 RICOPY PPC用紙 TYPE6200)を用いた場合、ベタ画像形成時において1枚当たり例えば170mgの定着液が面積当たりの塗布量が均一となるように塗布される。この量は、記録媒体特性検知手段50によって検知された転写紙Sの表面の平滑度に応じて、転写紙Sへの定着液の浸透を考慮して次に述べるように上述したアンカー効果が十分に確保される量に決定される。このアンカー効果が十分に確保される量とは、例えば図9に示すように、転写紙Sの平滑度とこの平滑度においてアンカー効果を十分に確保するのに必要な定着液の塗布量すなわち必要塗布量との関係に基づいて求められる。図9は、転写紙SがA4サイズの普通紙である場合を示している。なお、トナー像が転写される領域に定着液を塗布する場合、面積当たりの塗布量すなわち当該領域に対応した各ノズルからの定着液の吐出量は一定であるため、必要塗布量はその領域の大きさに応じて減少する。
制御手段91は、転写紙Sの種類毎に図9に相当する転写紙Sの表面の平滑度に応じた必要塗布量、すなわちヘッド42から吐出すべき定着液の量、具体的には各ノズルから吐出すべき定着液の量を内部のメモリに記憶しており、記録媒体特性検知手段50によって検知された転写紙Sの記録面の平滑度の判定結果に応じて必要塗布量を設定する。この点において制御手段91は、定着液塗布量記憶手段及び定着液塗布量設定手段として機能する。なお、設定される量は定着ニップ部62における加熱を考慮して乾燥を必要としない量に設定されており、定着液の乾燥機構を必要としない点においても優れている。制御手段91は、設定された量の定着液を吐出させるようにドライバの印加電圧を上下させ、転写紙Sに塗布される定着液の量を制御する。この点において制御手段91は、定着液塗布制御手段及び定着液吐出制御手段及び定着液塗布量制御手段として機能する。ヘッド42には、本実施形態で示すようにピエゾ方式のヘッドが適しているが、サーマル方式のインクジェットヘッドを使用してもよい。ただしサーマル方式のインクジェットヘッドを使用する場合にはヘッドの温度によって定着液が反応を開始し得るため、定着液が軟化機能を発現する温度以上の温度とならないようにする必要がある。
図8に示す定着液塗布装置40は、用紙搬送路81中を搬送されている転写紙Sに定着液を塗布して付着させる塗布ローラ44、用紙搬送路81を介して塗布ローラ44に対向配置された対向ローラ45、塗布ローラ44を回転駆動するモータ46、定着液を収容した液室47、液室47に収容された定着液に浸漬され塗布ローラ44に従動回転して表面に定着液を担持すると共に担持した定着液を塗布ローラ44に供給する供給ローラ48等を有している。また定着液塗布装置40は、塗布ローラ44による転写紙Sへの定着液の塗布量を変化させるために塗布ローラ44と供給ローラ48との間の圧力を変化させ供給ローラ48から塗布ローラ44への定着液の供給量を変化させるアクチュエータ部49、モータ46及びアクチュエータ部49それぞれの図示しないドライバを有している。
塗布ローラ44は、用紙搬送路81の2次転写部57において転写紙Sにトナー像が転写される側に配設されており、転写紙Sのトナー像が転写される側の面に定着液を塗布する。対向ローラ45は、塗布ローラ44の回転に従動して回転するかまたは塗布ローラ44との間を塗布ローラ44の回転力により搬送される転写紙Sの移動に従動して回転する。対向ローラ45は直径25mmであり、ステンレスの芯金にクロロプレンゴムが巻き付けられ、その表面に直径100μmのガラスビーズがエポキシ系接着剤で固定されたガラスビーズローラである。塗布ローラ44及び供給ローラ48は共に直径25mmであり、ステンレスの芯金にクロロプレンゴムが巻き付けられたローラを採用している。各ローラ44,45,48の硬度はそれぞれJIS−Aで35度であり、塗布ローラ44及び供給ローラ48の軸44a,48aの長手方向はそれぞれ図8における紙面方向である。
塗布ローラ44と対向ローラ45とは、その中心が互いに同じ高さとなるようにそれぞれ配設されており、供給ローラ48はその中心が塗布ローラ44の中心よりも10mm低くなる位置に配設されている。供給ローラ48は、液室47に収容されている定着液に5mmの深さで浸漬されている。塗布ローラ44の中心と供給ローラ48の中心とがオフセットしていることにより、転写紙Sが塗布ローラ44と対向ローラ45とのニップ部に入った際に、塗布ローラ44と対向ローラ45との間の加圧力への影響を低減している。塗布ローラ44は、モータ46がドライバを介して制御手段91により回転駆動される。この点において制御手段91は、定着液塗布装置40による転写紙Sへの定着液の塗布を制御する定着液塗布制御手段として機能すると共に、塗布ローラ44による転写紙Sへの定着液の塗布を制御する定着液塗布部材駆動制御手段としても機能する。
定着液塗布部材駆動制御手段として機能する制御手段91は、レジストローラ対4から2次転写部57へと給送された転写紙Sが塗布ローラ44と対向ローラ45との間を通過するタイミングで、転写紙Sに定着液が塗布されるようにモータ46を駆動して塗布ローラ44を回転駆動する。そのため、定着液塗布部材駆動制御手段として機能する制御手段91は、このタイミングをレジストローラ対4の駆動タイミングに基づいて測り、モータ46の駆動制御に関する信号をドライバに送り、信号を受けたドライバは送られた信号に基づいてモータ46の駆動をオン/オフし、これにより塗布ローラ44による転写紙Sへの定着液の塗布をオン/オフする。
アクチュエータ部49は、軸44a,48aそれぞれの両端部を互いに近接あるいは離間させ、塗布ローラ44と供給ローラ48との間の圧力を変化させる加圧機構であり、軸44a,48aの両端部の間にそれぞれ配設された図示しないばねと、このばねの付勢力を変化させる図示しないアクチュエータとを有している。図示しないアクチュエータは、制御手段91によってその駆動を制御される。
画像形成装置100において、転写紙SとしてA4サイズの普通紙((株)リコー製 RICOPY PPC用紙 TYPE6200)を用いた場合、定着液塗布部材駆動制御手段として機能する制御手段91によるアクチュエータ部49の制御により、ベタ画像形成時において1枚当たり例えば170mgの定着液が面積当たりの塗布量が均一となるように塗布される。この量は、記録媒体特性検知手段50によって検知された転写紙Sの表面の平滑度に応じて、転写紙Sへの定着液の浸透を考慮して次に述べるように上述したアンカー効果が十分に確保される量に設定される。
アンカー効果が十分に確保される量は、図7に示した例と同様に、記録媒体特性検知手段50によって検知された転写紙Sの平滑度の判定結果に応じ、定着液塗布量記憶手段として機能する制御手段91に記憶されているデータに基づいて、定着液塗布量設定手段として機能する制御手段91によって設定される。また図10に示すように、図示しないばねの付勢力、換言すると塗布ローラ44と供給ローラ48との当接圧と塗布ローラ44による転写紙Sへの定着液の塗布量との間には相関関係がある。ここで、制御手段91はメモリ内にこの相関関係を記憶しており、定着液塗布量設定手段として機能する制御手段91によって設定された塗布量に基づいてこの圧力を設定してアクチュエータを駆動する。この点において、制御手段91は図7に示した例と同様に定着液塗布量制御手段としても機能する。
上述の構成により、吐出によって生じる定着液の飛散が低減されると共に、定着液による装置本体99側の汚染が削減され、また転写紙Sの搬送性の確保等がなされる。なお、アクチュエータ部49及びこれに伴う制御、すなわち定着液の塗布量制御は省略してもよく、この場合には図7に示した定着装置41において定着液の塗布量制御を省略した場合よりも簡易な制御で転写紙Sに定着液が塗布される。また、トナー像転写前の転写紙Sに定着液を塗布するため、塗布ローラ44による定着液の塗布によりトナー像の乱れ及び塗布ローラ44へのトナー付着が生じないことから、塗布ローラ44に付着したトナーが再度転写紙Sに付着することによる画像不良が発生しない。
上述の構成において、用紙搬送路81を転写紙Sの搬送をガイドするガイド板等の案内部材によって形成する場合には、転写紙Sの搬送方向において定着液塗布装置41よりも下流側の、特に定着液が乾燥する定着装置6よりも上流側の範囲には転写紙Sの裏面側にのみ案内部材を設け、転写紙Sの定着液塗布面すなわちトナー像を担持した画像面側には案内部材を設けず、案内部材が定着液やトナー画像に当接することによる定着液の塗布状態の乱れやトナー画像の乱れが生じないように構成する。
制御手段91は、上述した定着装置40,41、2次転写手段5、及び定着装置6を用いる定着方法、画像形成を実行するための定着プログラム、及び画像形成プログラムを内部に設けられたメモリ内に記憶している。この点において、制御手段91及びメモリは定着プログラム記憶手段、画像形成プログラム記憶手段としても機能している。この定着プログラム及び画像形成プログラムは、制御手段91に備えられたメモリのみならず、半導体媒体(例えばROM、不揮発性メモリ等)、光媒体(例えばDVD、MO、MD、CD−R等)、磁気媒体(例えばハードディスク、磁気テープ、フレキシブルディスク等)、その他の記憶媒体に記憶可能であり、これ等のメモリや他の記憶媒体は上述の定着プログラム及び画像形成プログラムを記憶した場合に、定着プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体、画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体を構成する。
本発明が適用可能な画像形成装置は、タンデム型であっても上述した間接転写方式の他に図11に示す直接転写方式を採用可能である。図11に示す画像形成装置70において、上述した画像形成装置100と同様の構成には同じ符号を付し、個々の詳細な説明は省略する。
図11に示す直接転写方式、具体的には4連タンデム直接転写方式を採用した画像形成装置70において、転写紙Sに転写されるトナー像を担持した像担持体は感光体ドラム20Y,20M,20C,20BKであり、転写ベルト11に代えて記録媒体搬送体であるシート搬送ベルト15を有し、シート搬送ベルト15によって搬送されている過程の定着液塗布装置39によって定着液を塗布された転写紙Sに対し、画像形成ユニット60BK,60C,60M,60Yで形成した各色トナー像を転写手段である1次転写ローラ12Y,12M,12C,12BKによって重畳転写した後、定着装置6によって定着を行う。
定着液塗布装置39は定着液塗布装置40とほぼ同様の構成であり、塗布ローラ44と対向ローラ45とが鉛直方向に並設されている。供給ローラ48は塗布ローラ44の中心よりも10mm低い位置にその中心を有し、液室47に収容された定着液に5mmの深さで浸漬されている。塗布ローラ44の中心と供給ローラ48の中心とがオフセットしていることにより、転写紙Sが塗布ローラ44と対向ローラ45とのニップ部に入った際に、塗布ローラ44と対向ローラ45との間の加圧力への影響を低減している。なお、定着液塗布装置39に代えて定着液塗布装置41を用いてもよい。
また、本発明が適用可能な画像形成装置は、4連タンデム中間転写方式を採用した上で中間転写体である転写ベルト11を備えている場合であっても、転写ベルト11は各感光体ドラム20ではなくトナー担持体に担持されたトナーを転写されることによりトナー像をその表面に直接形成される構成でもよい。このような画像形成装置を図12に示す。図12に示す画像形成装置80において、上述した画像形成装置100と同様の構成には同じ符号を付し、個々の詳細な説明は省略する。
画像形成装置80は、トナージェット、ダイレクトトーニング、トナープロジェクション等と称される、トナーを転写ベルト11に対して飛翔及び着弾させることにより、転写ベルト11上に画像を直接記録する方式を採用したものであり、画像形成ユニット60Y,60M,60C,60BKがイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナーを担持したトナー担持体93Y,93M,93C,93BKをそれぞれ備え、各トナー担持体93に担持されているトナーを転写ベルト11に飛翔させるトナー噴射手段94Y,94M,94C,94BK、各トナー噴射手段94にトナーを飛翔させて転写ベルト11上に画像を形成する、各トナー噴射手段94から飛翔したトナーを通過させる図示しないトナー通過孔を備えたトナー制御手段95Y,95M,95C,95BKを有している。画像形成装置80において、定着液塗布装置41に代えて定着液塗布装置39,40を用いてもよい。
ここで、本発明の第1の実施形態について説明する。この第1の実施形態は上述した各画像形成装置70,80,100に適用可能であり、図2に示すように制御手段91に接続された切替手段90を設け、切替手段90の切り替えにより各定着液塗布装置39,40,41によって転写紙Sに対する定着液の塗布を行うか否かを切り替えている。具体的には、各画像形成装置70,80,100の図示しない操作パネルに切替手段90としてのセレクトスイッチを配置し、装置操作者によって手動にて切り替えを行う。この構成により、例えば試し印刷等の高度な画像品質を要求しない画像形成物に対しては定着液の塗布を行うことなく画像形成動作を行うことができ、消費電力を適正化しつつ定着液の無駄な使用を防止することによりコストダウンを図ることができる。
上述した第1の実施形態において、切替手段90による切り替えと連動して、定着条件を変更してもよい。定着条件としては、定着温度目標値、定着部線速、定着加圧力に伴う定着ニップ部幅等が挙げられる。ここで、塗布時に比して非塗布時の定着目標温度を高く、定着線速を遅く、定着ニップ部幅を広くするように各条件を変更することにより、塗布時と非塗布時とにおいて同等の定着能力を得ることができる。この構成により、消費電力を適正化しつつ定着不良の発生を防止することができる。
次に第2の実施形態として、画像形成時に使用するトナーの色数に応じて、切替手段90により定着液の塗布または非塗布を切り替える構成とする。具体的には、各画像形成装置70,80,100の画像読取装置(画像形成装置100では画像読取装置98)から送られる画像信号に基づいて制御手段91が使用されるトナーの色数を決定するか、または各画像形成装置70,80,100の図示しない操作パネルから装置操作者が手動にて使用するトナーの色数を入力する。そして指定された色数が単色の場合には塗布を行い、2色以上の場合には塗布を行わないように制御手段91が各定着液塗布装置39,40,41の作動を制御する。この構成により、白黒やカラー等の色モードに関わりなく確実に定着を行うことができ、さらに消費電力を適正化しつつ定着液の無駄な消費を防止してコストダウンを図ることができる。また、この変形例として、転写紙Sに対するトナー付着量が少ない場合や定着液の濃度が高い場合等には、使用するトナーが単色または2色の場合には塗布を行い、3色以上の場合には塗布を行わないようにすることにより、上述した第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
次に、第3の実施形態を説明する。上述した実施形態では、定着液塗布装置39,40,41から転写紙Sのトナー像が転写される領域に定着液を塗布する場合、面積当たりの塗布量すなわち当該領域に対応した各ノズルからの定着液の吐出量は一定であるため、必要塗布量はその領域の大きさに応じて減少する。本実施形態では、圧電方式において駆動電圧や駆動波形を変化させて液滴量の制御を行う方法(例えば特許第4079406号公報、特開2001−219584号公報参照)や、径の異なる複数のノズルを使い分ける方法(例えば特開2007−223146号公報参照)等の方法を用いてノズルからの定着液の吐出量を変化させ、これにより転写紙Sへの定着液塗布量の制御を行う。
図13は、転写紙Sの平滑度とスミア定着度評価による定着液の非塗布時と塗布時における実用下限定着温度の差の関係の一例を示している。同図より、平滑度の低下と共に温度差が小さくなることが判る。そこで、定着液のコスト、定着時消費電力等から定着液使用の限度を例えば温度差5℃とした場合、平滑度35s以下では定着液の塗布を行わずに定着温度を5℃高めて定着を行うように制御手段91によって制御する。この場合には、制御手段91が切替手段として機能する。この構成により、転写紙Sの特性に応じて定着液を使用せずとも良好な定着を行うことができるので、定着液の無駄な使用を防止してコストダウンを図ることができる。
また第3の実施形態において、制御手段91による切り替えと連動して定着温度以外の定着条件を変更してもよい。定着条件としては、定着部線速、定着加圧力に伴う定着ニップ部幅等が挙げられる。ここで、塗布時に比して非塗布時の定着線速を遅く、定着ニップ部幅を広くするように各条件を変更することにより、塗布時と非塗布時とにおいて同等の定着能力を得ることができる。この構成により、消費電力を適正化しつつ定着不良の発生を防止することができる。
図14は、本発明の第4の実施形態を適用可能な画像形成装置を示している。同図において画像形成装置30は、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の画像を形成するためのトナー像形成手段である4つの画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kを備えている。なお、各色の順序は図1に示すものには限られず、他の並び順であってもよい。各画像形成装置ユニット1は、それぞれ像担持体としての感光体ドラム2Y,2C,2M,2K、帯電手段、現像手段、クリーニング手段を備えており、それぞれの配置は各感光体ドラム2の回転軸が平行となるようにかつ転写紙移動方向に所定のピッチで配列するように並設されている。各画像形成ユニット1には、各画像形成ユニット60と同様の現像装置、帯電装置、除電装置、クリーニング装置等が配設されている。
各画像形成ユニット1の下方には、光源、ポリゴンミラー、fθレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体ドラム2の表面にレーザ光を走査しながら照射する光書き込みユニット3が、上方には各画像形成ユニット1のトナー像を重ね合わせて転写するように搬送する転写搬送ベルト14を有する1次転写ユニット16が配設されている。転写搬送ベルト14の外周面には、ブラシローラとクリーニングブレードとから構成されたクリーニング装置18が、転写搬送ベルト14と接触する態様で配設されている。このクリーニング装置18により転写搬送ベルト14上に付着したトナー等の異物が除去される。
1次転写ユニット16の右方には転写紙にトナー像を転写する2次転写ユニット19が配設されており、その上方にはベルト定着方式の定着ユニット22が、下方には塗布手段である定着液塗布装置38がそれぞれ配設されている。定着液塗布装置38には、上述した各定着液塗布装置39.40.41と同様の定着液が収容されている。
画像形成装置30の下部には、転写媒体である転写紙Sが載置された給紙カセット26a,26bが配設されている。また、画像形成装置側面から手差しで給紙を行う手差しトレイ26cが装置本体の右側面に設けられている。この他、1次転写ユニット16の上方には各色トナーを収容したトナー補給容器29Y,29C,29M,29Kが配設され、図示しない廃トナーボトル、電源ユニット等も設けられている。
上述の画像形成装置30において、図示しないスタート信号が送られると図示しない帯電ローラに図示しない電源より所定の電圧が印加されて感光体ドラム2が帯電される。所定の電位に帯電された感光体ドラム2の表面には、続いて光書き込みユニット3から画像データに基づくレーザ光が走査されて静電潜像が形成される。静電潜像を担持した感光体ドラム2が現像装置に到達すると、図示しない現像ローラより感光体ドラム2の表面にトナーが供給され、静電潜像が顕像化されてトナー像が形成される。
上述の動作が各画像形成ユニット1において同様に所定のタイミングで行われ、各感光体ドラム2の表面にはそれぞれ異なる色のトナー像が形成される。そして、各画像形成ユニット1の画像形成動作タイミングで転写搬送ベルト14上に各感光体ドラム2上のトナー像を順次転写する。このトナー像の転写は、転写搬送ベルト14を挟んで各感光体ドラム2と対向配置されている1次転写ローラ31Y,31C,31M,31Kに図示しない電源より各感光体ドラム2上のトナーとは逆極性の電圧が印加されることにより行われる。転写紙Sは、給紙カセット26a,26bまたは手差しトレイ26cの何れかから給送され、レジストローラ対32に到達して一時停止される。そして、上述の画像形成動作タイミングに合わせて、転写紙Sはレジストローラ対32より定着液塗布装置38へと送られる。
定着液塗布装置38は、第1の実施形態で示した定着液塗布装置41と同様に構成されており、レジストローラ対32から送られた転写紙Sは定着液塗布装置38の図示しないヘッドと対向ローラとの間を通り、2次転写ユニット19へと搬送される。ヘッドと対向ローラとの間を転写紙Sが通過するとき、ヘッドから転写紙Sの所望の領域に定着液が吐出される。なお、ヘッドは2次転写の際に転写紙Sに対してトナー像が転写される側に配置されており、定着液はトナー像が転写する転写紙Sの画像面側に予め塗布される。
2次転写ユニット19には転写搬送ベルト14に接する態様で2次転写ローラが設けられており、転写搬送ベルト14上に重畳転写された4色のフルカラートナー像は2次転写ローラとのニップ部において転写紙Sに2次転写される。この2次転写は、2次転写ローラに図示しない電源から転写搬送ベルト14上のトナー像とは逆極性の電圧が印加されることにより行われる。トナー像が転写紙Sに接触転写される際、そのニップ部において転写紙Sに予め塗布された定着液が転写紙Sからトナー像に染み込む。これにより定着液の及んだトナーがトナー像の転写紙S側に生じ、トナー像が転写紙Sに接触しつつ転写されることにより非接触転写に比して毛細管現象が強まり、上記実施形態と同様に定着液の染み込みが促進される(図5参照)。
定着ユニット22には、定着ローラと加圧ローラとが設けられている。トナー像が転写された転写紙Sは、定着ローラと加圧ローラとのニップ部において熱と圧力とにより画像を定着される。この際に、ニップ部の中では転写紙Sに染み込んだ定着液が熱を受けることにより、定着液中の可塑剤がトナー樹脂を軟化させる機能を有する。可塑剤は、転写紙Sとの界面付近のトナー像に染み込んでおり、熱の付与をきっかけにトナー樹脂に浸透して軟化させる(図6参照)。つまり、定着ローラと加圧ローラとのニップ部において、トナー像は熱のみではなく軟化機能を発現した可塑剤によって転写紙Sに固定される。本実施形態では、可塑剤が熱の伝わりにくい転写紙Sとの界面付近のトナーを軟化させる構成であるため、熱定着のみの定着装置に比して定着ローラの制御温度は低い温度に設定されている。この具体的な温度は、上記実施形態と同様である。定着ユニット22において画像を定着された転写紙Sは、各搬送ローラによって機外に排出される。
本実施形態では、定着液塗布装置38のヘッドのドライバに制御手段91が信号を送り、ドライバの個々について制御手段91がそのオンまたはオフを制御し、転写紙Sのトナー像が転写される部分以外には定着液を塗布しないように制御を行っている。この点において制御手段91は、塗布制御手段として機能している。
転写紙Sに定着液を塗布する際に、後工程でトナーが転写される部分を選択して塗布することは、転写紙Sの全面に定着液を塗布する場合に比して、使用される定着液の削減、装置本体への汚染の削減、転写紙Sの搬送性の確保等に効果がある。ここで定着液が塗布される部分とはトナーが転写される部分内とし、トナーが転写されない部分は含まない。これは、トナーが転写されない部分に定着液が塗布されてしまうと、その定着液はトナー担持体である転写搬送ベルト14から転写紙Sにトナーが転写される際に転写搬送ベルト14の非画像部に直接付着し、トナーとは逆に転写紙Sから転写搬送ベルト14へと転移してしまい装置本体の汚染の原因となるからである。
このような定着液の塗布を実現するためには、吐出位置の微細なコントロールが可能である点からもインクジェットヘッドを用いることが好ましい。画像形成装置30により形成されるトナー像の最小ドットよりも小さな着弾径となる量の定着液を吐出可能であれば、各画像ドットに対し画像信号と同じように吐出することによりトナーが付着しない部分への定着液の付着を回避することができる。定着液の液滴の量と着弾径とを測定した結果を図15に示す。同図より形成する画像の最小ドット径が80μm程度であれば12pl以下の液滴でトナー像と同じ位置に吐出すればよいことが判る。
また、より確実にトナーが転写されない部分に定着液が塗布されることを回避するのであれば、画像ドット径の80%程度の着弾径とすればよい。図16(A)に画像ドット径に対する着弾径の関係の模式図を示す。同図において、画像ドットの円相当径の80%を示したものが黒い線であり、この範囲内に定着液を塗布する。また、より大面積の画像をターゲットとして定着性の改善を行う場合には、液滴の量は着弾径がある程度大きいものを使用することができる。例えば、所定幅以上の画像に対して画像の縁部分を残すように定着液を塗布することも有効である(図16(B)参照)。図16(A),(B)に示すように、画像の縁部分に定着液が塗布されない場合でも同様の定着温度低減効果が確認された。これは、トナーの厚みが大きい中央部分に定着液が塗布されることにより、加熱時において熱の伝わりにくい部分に定着液が作用するためであると考えられる。
上記各実施形態において、画像形成装置30,70,80,100としてタンデム方式の画像形成装置を示したが、本発明は1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成し、各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得る、いわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも同様に適用可能である。また、画像形成装置は近年において市場からの要求に伴いカラー複写機やカラープリンタ等のカラー機が増加しているが、モノクロ画像のみを形成可能な画像形成装置にも本発明は適用可能である。また、画像形成装置に使用される現像剤は2成分現像剤であっても1成分現像剤であってもよい。
さらに、本発明が適用可能な画像形成装置に備えられる定着装置は、上述したローラ定着方式に代えて、定着部材として無端ベルト状の定着ベルトを有するベルト定着方式であってもよい。ローラ定着方式では比較的簡易な構成で均一な加熱を実現できるという利点があり、ベルト定着方式では消費電力が少ないという利点がある。
本発明が適用可能な画像形成装置は、複写紙、プリンタ、ファクシミリの複合機の他にこれらの単体であってもよく、その他、複写機とプリンタとの複合機等、他の組み合わせの複合機であってもよい。