JP5781835B2 - 電気回路製造支援装置および電気回路製造支援方法 - Google Patents

電気回路製造支援装置および電気回路製造支援方法 Download PDF

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Description

本発明は、電気回路製造ラインによる電気回路の製造を支援するための装置および方法に関する。
電気回路製造ラインによる電気回路の製造の支援に対しては、従来から、種々の検討がなされており、例えば、製造された電気回路の品質に関する支援を行うシステムとして、下記特許文献に記載されたシステムが存在する。このシステムは、クリームはんだの印刷作業,電気部品の装着作業等の回路基板に対する作業(以下、「対基板作業」と言う場合がある)を行う機器である対基板作業機と、その対基板作業機による作業結果を検査する検査機を備えており、その検査機の検査データに基づいて、不良と認定される基準に達しないまでの品質低下を把握し、それに対処することで、製造される電気回路の品質に対する高い信頼性を維持している。
特開平6−112295号公報
対基板作業が行われる部位は、1つの回路基板に数多くあり、それらすべての部位についての品質低下を監視することが望ましい。しかしながら、すべての作業部位を監視する場合、それらすべての作業部位に対して品質低下を判断するためのデータ処理を行わなければならず、相当の処理時間を必要とする。その一方で、品質不良の発生のほとんどは、対基板作業を行う機器が有する各種のデバイスの交換、回路基板,電気部品,クリームはんだ等の資材についてのロットの変更、作業手順,作業動作についての変更,対基板作業機のオペレータの交替をも含む作業環境の変化等、諸々の作業条件の変動に起因しているという事実が存在している。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、電気回路製造ラインによる電気回路の製造の品質面における支援を効率的に行うことのできる装置および方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の電気回路製造支援装置および支援方法は、
電気回路を構成する回路基板に対する作業である対基板作業を実行する対基板作業機を備えた電気回路製造ラインによる電気回路の製造を支援するための電気回路製造支援装置および支援方法であって、
対基板作業において前記対基板作業機が行った動作と前記対基板作業機に対して行われた処置との少なくとも一方に関する情報を含む作業機関連情報に基づいて、対基板作業における作業条件の変動である作業条件変動を認識し、
その認識された作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある作業部位を特定し、その特定された作業部位の少なくとも1つを、監視対象部位として認定し、
対基板作業機の動作に依拠して取得された動作依拠取得データと、対基板作業機による対基板作業の作業結果を検査する検査機による検査データとの少なくとも一方を含む対照用データの、上記認識された作業条件変動の発生前に対基板作業が実行された回路基板についてのものと、その作業条件変動の発生後に対基板作業が実行された回路基板についてのものとを対照して、監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行うことを前提とし、 第一の発明に係る電気回路製造支援装置および支援方法は、
上記監視対象部位に対する対基板作業とその監視対象部位の作業結果との少なくとも一方についての上記認識された作業条件変動の発生前における安定度と発生後における安定度とを比較して、その監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行うことを特徴とする。
また、第二の発明に係る電気回路製造支援装置および支援方法は、
対象部位品質判断において、監視対象部位の作業品質の低下の程度が設定程度を超えていると判断した場合に、その監視対象部位の作業品質を改善するための改善処置を決定し、
その決定された改善処置を、対基板作業機と電気回路製造ラインのオペレータとの少なくとも一方に通知し、
上記決定された改善処置が対基板作業機に対して施されたにも拘わらず監視対象部位の作業品質の改善が見られないときには、施された改善処置とは別の改善処置を決定し、
その別の改善処置を対基板作業機と電気回路製造ラインのオペレータとの少なくとも一方に通知することを特徴とする。
本発明の電気回路製造支援装置および支援方法によれば、作業条件の変動をトリガとして、品質の変化が監視される。また、発生した作業条件変動による影響を考慮して、品質を監視すべき部位を絞ることが可能である。したがって、電気回路製造ラインによって製造される電気回路の品質低下を効率的に監視することが可能となる。つまり、効率的な品質面での支援が可能となるのである。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。そして、請求可能発明の対象のうちのいくつかのものが請求項に記載の発明となる。
なお、以下の各項において、(1)項および(4)項を合わせたものが請求項1に相当し、(1)項,(6)項および(7)項を合わせたものが請求項2に、(5)項が請求項3にそれぞれ相当する。また、(11)項に、(4)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項4に相当し、(11)項に、(6)項および(7)項にそれぞれ記載の技術的特徴を付加したものが請求項5に相当する。
(1)電気回路を構成する回路基板に対する作業である対基板作業を実行する対基板作業機を備えた電気回路製造ラインによる電気回路の製造を支援するための電気回路製造支援装置であって、
対基板作業において前記対基板作業機が行った動作と前記対基板作業機に対して行われた処置との少なくとも一方に関する情報を含む作業機関連情報に基づいて、対基板作業における作業条件の変動である作業条件変動を認識する条件変動認識部と、
その認識された作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある作業部位を特定し、その特定された作業部位の少なくとも1つを、監視対象部位として認定する監視対象部位認定部と、
前記対基板作業機の動作に依拠して取得された動作依拠取得データと、前記対基板作業機による対基板作業の作業結果を検査する検査機による検査データとの少なくとも一方を含む対照用データの、前記認識された作業条件変動の発生前に対基板作業が実行された回路基板についてのものと、その作業条件変動の発生後に対基板作業が実行された回路基板についてのものとを対照して、前記監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行う対象部位品質判断部と
を備えた電気回路製造支援装置。
本項は、装置のカテゴリに属する請求可能発明の態様、つまり、請求可能発明に係る電気回路製造支援装置(以下、単に、「支援装置」と言う場合がある)の態様である。本項における「対基板作業」は、一般的な電気回路製造において回路基板(以下、単に「基板」と言う場合がある)に対して行われる作業を意味し、例えば、基板の表面にクリーム状はんだを印刷するはんだ印刷作業,はんだが印刷された基板に電気部品(以下、単に「部品」と言う場合がある)を装着する部品装着作業,部品が装着された基板を加熱・冷却してはんだを溶融・凝固することで部品を基板に固定する部品固定作業等、種々の作業が含まれる。また、「対基板作業機」は、それらの対基板作業を行うはんだ印刷機,部品装着機,リフロー炉等の機器が含まれる。「作業部位」は、対基板作業に応じて異なり、一般的には、例えば、はんだ印刷作業では、印刷されるはんだランド(「はんだパッド」と呼ぶこともできる)が、部品装着作業では、装着された電気部品の各々が、部品固定作業では、基板に固定された部品とその部品を固定するために凝固させられたはんだの各々が、それぞれ相当する。なお、作業部位は、任意に設定することもできる。
上記条件変動認識部によって認識される「作業条件変動」について説明すれば、「作業条件」とは、装備される各種デバイス等の対基板作業機の構成や対基板作業機のステータス(状態)、対基板作業において使用される基板,部品,はんだ等の資材、対基板作業における作業手順,作業動作の態様、対基板作業機が動作する若しくは操作される環境等、様々なものが、どのようなものであるかを意味する概念であり、「作業条件変動」とは、それら様々なものが変化する若しくは変更されることを意味する概念である。作業条件変動の具体例は、以下の説明の中で、挙げることとする。
条件変動認識部による認識において依拠される「作業機関連情報」は、対基板作業機が、1つの基板に対して対基板作業を行った際、どのようなデバイスや資材が使用されたか,どのような動作が行われたか,当該作業機の状態がどのような状態にあったか等を表わす情報を広く意味する。作業機関連情報は、上記「対基板作業機が行った作業に関する情報(以下、「作業実績情報」と言う場合がある)」と「対基板作業機に対して行われた処置に関する情報(以下、「処置情報」と言う場合がある)」との少なくとも一方が含まれる。それらの情報の具体例は、以下の説明の中で、挙げることとする。なお、作業機関連情報は、主に、対基板作業機から送られてくる情報であるが、他の機器から送られてくる情報であってもよく、支援装置自らが取得する情報であってもよい。
条件変動認識部において行われる「作業条件変動の認識」とは、作業条件変動が発生したことを確認することだけを意味するのではなく、発生した作業条件変動の内容を特定することも含まれる。なお、作業条件変動の認識は、その作業条件変動を誘因する事象、つまり、作業条件変動事象を認識することをも意味する。
上記監視対象部位認定部によって特定される「作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある作業部位(以下、「影響部位」と言う場合がある)」は、1つの基板のすべての作業部位のうちの一部である場合もあり、全部である場合もある。影響部位は、対基板作業の種類,作業条件変動の内容によって異なる。「監視対象部位」は、影響部位のすべてであってもよく、影響部位の一部であってもよい。監視対象部位を多くすることにより、製造される電気回路の品質の信頼性が高くなるが、逆に、後に説明する対象部位品質判断部によって行われる処理の負担が大きくなる。いくつの影響部位を監視対象部位として認定するか、どの影響部位を監視対象部位として認定するか等は、対基板作業の種類,作業条件変動の内容等を考慮しつつ、上記品質の信頼性と処理の負担とに鑑みて設定すればよい。
上記対象部位品質判断部によって行われる「監視対象部位の作業品質の変化に関する判断」は、例えば、監視対象部位対して行われた対基板作業の品質の水準の変化についての判断を意味する。簡単に言えば、その部位の作業の品質がどの程度向上若しくは低下したかを把握すること意味する。つまり、この作業品質の水準は、不良が発生する可能性の低さを意味し、作業品質の低下は、不良発生の予兆と考えることができる。したがって、作業品質の低下を把握することは、不良発生の未然防止に有効である。なお、作業品質の水準については、例えば、後に説明する安定度を始めとする品質管理の分野で用いられる種々の統計的指標によって示すことができ、作業品質の変化に関する判断は、作業条件変動発生の前後におけるそれらの指標を比較することによって行えばよい。
上記対象部位品質判断部の判断に用いられる「対照用データ」には、上記動作依拠取得データ,上記検査データの少なくとも一方が含まれる。詳しく言えば、「動作依拠取得データ」は、対基板作業機が対基板作業を行う上での動作に関するデータ、動作を行っている際若しくは動作後の対基板作業機の状態(ステータス)に関するデータ、動作の対象物の動き,状態に関するデータ等、対基板作業機において検出・測定・認識可能の種々のデータが含まれる。また、対基板作業機の下流側(直ぐの下流側ではなく、他の機器を挟んだ下流側をも意味する)には、一般的に、検査機が配置されることが多く、「検査データ」は、その検査機によって取得されたデータ、詳しくは、各作業部位の作業結果について検査を行った際のその各作業部位の検査データを採用することができる。対照用データ、詳しくは、動作依拠取得データ,検査データの具体例は、以下の説明の中で、挙げることとする。
なお、支援装置は、電気回路製造ライン(以下、単に「製造ライン」という場合がある)の外部に設けられるものであってもよく、製造ラインの一部を構成するものであってもよい。また、支援装置は、上記の条件変動認識部,監視対象部位認定部,対象部位品質判断部を始めとしていくつかの機能部によって構成されるが、それらの機能部のすべてが一体となって単一の機器として実現されるものであってもよく、それら機能部の一部が、対基板作業機,それの作業結果を検査する検査機等の機器に配設され、2以上の機器によって実現されるものであってもよい。
(2)前記対基板作業機が、前記対基板作業として回路基板に電気部品を装着する部品装着作業を実行する部品装着機であり、装着された電気部品の各々が前記作業部位とされた(1)項に記載の電気回路製造支援装置。
(3)前記対基板作業機が、前記対基板作業として回路基板にクリームはんだを印刷するはんだ印刷作業を実行するはんだ印刷機であり、印刷されたはんだランドの各々が前記作業部位とされた(1)項に記載の電気回路製造支援装置。
上記2つの項に係る態様は、それぞれ、対基板作業機および対基板作業の種類と、その対基板作業における作業部位とに限定を付加した態様である。
(4)前記対象部位品質判断部が、前記監視対象部位に対する対基板作業とその監視対象部位の作業結果との少なくとも一方についての前記認識された作業条件変動の発生前における安定度と発生後における安定度とを比較して、その監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行うように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の電気回路製造支援装置。
本項の態様における「対基板作業の安定度」とは、対基板作業機の動作の安定度、その動作の対象物の動き,状態についての安定度等が含まれる。詳しく言えば、例えば、動作の正確性(逆に言えば、動作ミスを起こさない度合)、動作速度,動作力,動作の対象物の位置や状態の正規の速度,力,位置や状態からのズレ等についてのバラつきの小ささの程度等をも意味する。「作業結果の安定度」とは、作業結果のバラつきの小ささの程度を意味し、具体的には、例えば、対基板作業がはんだ印刷作業である場合には、印刷された各はんだランドの正規の印刷位置からの位置ズレ(回転位置つまり方位についてのズレをも含む概念である)、擦れ,はみ出し,突起等の正規の面積,体積からのズレ(増加,減少)等についての安定度を、部品装着作業である場合には、装着された各部品の正規の装着位置からの位置ズレ等についての安定度を意味し、部品固定作業である場合には、固定された部品の正規の固定位置からの位置ズレ、凝固したはんだのはみ出し等の正規の面積からのズレ(増加)等についての安定度を、それぞれ意味する。それら対基板作業の安定度,作業結果の安定度の具体例については、以下の説明の中で列挙する。対基板作業の安定度,作業結果の安定度は、作業部位の品質水準、つまり、作業部位が不良部位となる可能性の高さを予測するのに好適なパラメータであり、その安定度を基に、品質の変化についての判断、具体的には、品質低下の有無についての判断を行うことで、作業条件変動に起因する不良部位の発生を未然に防止あるいは抑制可能である。なお、上記安定度として、動作ミスの回数若しくは確率,上記各種のズレについての基準値からのズレ量の平均,そのズレ量の管理限界値との関係,ズレのバラつき範囲,工程能力指数等、品質管理の分野で使用されている各種の統計的指標を用いることができる。
(5)前記監視対象部位認定部が、作業条件変動の作業品質への影響の現れ易さを考慮して設定された規則に基づき、前記特定された作業部位のいくつかのものを、前記監視対象部位として認定するように構成された(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の電気回路製造支援装置。
上述の影響部位は、対基板作業の種類,作業条件変動の内容等によっては、かなりの数になる場合もある。本項の態様によれば、影響部位が多い場合であっても、電気回路の品質低下を効率的に監視することが可能である。なお、上記「作業条件変動の作業品質への影響の現れ易さを考慮して設定された規則」は、言い換えれば、例えば、作業条件変動によって品質がより低下し易い部位を選出するための規則であり、対基板作業の種類,作業条件変動の内容等に応じて、作業部位の大きさ、作業部位の基板上の位置等に基づいて設定すればよい。
(6)当該電気回路製造支援装置が、さらに、
前記対象部位品質判断部が、前記監視対象部位の作業品質の低下の程度が設定程度を超えていると判断した場合に、その監視対象部位の作業品質を改善するための改善処置を決定する改善処置決定部と、
その改善処置決定部によって決定された改善処置を、前記対基板作業機と前記電気回路製造ラインのオペレータとの少なくとも一方に通知する処置通知部と
を備えた(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の電気回路製造支援装置。
本項の態様によれば、作業条件変動に起因して監視対象部位の品質低下が生じた場合、その作業条件変動に応じた適切な処置が決定され、その処置が通知される。そして、その処置が施されることによって、不良の発生のより確実な未然防止・抑制がなされることになる。その意味において、本項の態様によれば、電気回路の品質面においてより進んだ支援を行うことが可能となる。品質低下と判断された場合の改善処置の決定において、どのような改善処置を決定するかについては、作業条件変動の内容に応じて予め設定しておき、実際の決定は、その設定に従って行えばよい。なお、対基板作業機は、自身への改善処置の通知により、その改善処置を自動的に実行可能に構成されていることが望ましい。
(7)前記改善処置決定部が、前記決定された改善処置が前記対基板作業機に対して施されたにも拘わらず前記監視対象部位の作業品質の改善が見られないときには、施された改善処置とは別の改善処置を決定するように構成され、
前記処置通知部が、その別の改善処置を前記対基板作業機と前記電気回路製造ラインのオペレータとの少なくとも一方に通知するように構成された(6)項に記載の電気回路製造支援装置。
本項の態様によれば、電気回路の品質面に関し、さらに進んだ支援が可能となる。複数の改善処置のうちどの処置を決定するかについては、作業条件変動の内容、改善処置の実施のし易さ,効果の程度等を考慮して、改善処置の優先順位を設定しておき、実際の決定は、その設定に従って行えばよい。
(11)電気回路を構成する回路基板に対する作業である対基板作業を実行する対基板作業機を備えた電気回路製造ラインによる電気回路の製造を支援するための電気回路製造支援方法であって、
対基板作業において前記対基板作業機が行った動作と前記対基板作業機に対して行われた処置との少なくとも一方に関する情報を含む作業機関連情報に基づいて、対基板作業における作業条件の変動である作業条件変動を認識する条件変動認識ステップと、
その認識された作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある作業部位を特定し、その特定された作業部位の少なくとも1つを、監視対象部位として認定する監視対象部位認定ステップと、
前記対基板作業機の動作に依拠して取得された動作依拠取得データと、前記対基板作業機による対基板作業の作業結果を検査する検査機による検査データとの少なくとも一方を含む対照用データの、前記認識された作業条件変動の発生前に対基板作業が実行された回路基板についてのものと、その作業条件変動の発生後に対基板作業が実行された回路基板についてのものとを対照して、前記監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行う対象部位品質判断ステップと
を含む電気回路製造支援方法。
本項は、方法のカテゴリに属する請求可能発明の態様、つまり、請求可能発明に係る電気回路製造支援方法(以下、単に、「支援方法」と言う場合がある)の態様である。本項の態様の技術内容は、先に説明した請求可能発明に係る電気回路製造支援装置の態様の技術内容と同じであるため、ここでの説明は省略する。また、先に掲げた電気回路製造支援装置の態様に関するいくつかの項は、その項において記載されている機能部(具体的に言えば、改善処置決定部,処置通知部等)の「部」を「ステップ」に読み換えて、本項に従属させることで、請求可能発明に係る電気回路製造支援方法のいくつかの態様を示す項となり得る。
実施例の電気回路製造支援装置と、それが支援する電気回路製造ラインを示す斜視図である。 電気回路製造ラインを構成するはんだ印刷機を、外装パネルを外した状態において示す斜視図である。 印刷作業結果検査機による検査を説明するための模式図である。 部品装着機を構成する装着モジュールの内部構造を示す斜視図である。 装着モジュールに取り付け可能な各種作業ヘッドを示す斜視図である。 電気回路製造支援装置において実行される条件変動認識・監視対象部位認定プログラムを示すフローチャートである。 電気回路製造支援装置において実行される品質変化判断・対処プログラムを示すフローチャートである。 安定度指標の一種である工程能力指数CpKの定義式およびそれを説明するためのグラフである。 品質変化判断・対処プログラムにおいて実行される品質改善サブルーチンを示すフローチャートである。 電気回路製造支援装置の機能構成を示すブロック図である。
以下、請求可能発明を実施するための形態として、請求可能発明の実施例である電気回路製造支援装置および電気回路製造支援方法について、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
図1に示すように、実施例の電気回路製造支援装置10(以下、単に「支援装置10」と言う場合がある)は、電気回路製造ライン20が行う電気回路の製造を支援する。以下に、まず、電気回路製造ラインについて説明し、その後に、支援装置10による支援処理の概要,いくつかの支援処理の具体例について説明する。
≪1.電気回路製造ライン≫
i)電気回路製造ラインの全体構成
図1に示すように、電気回路製造ライン20(以下、単に、「製造ライン20」と略す場合がある)は、上流側から順に、基板投入器22,はんだ印刷機24,印刷作業結果検査機26,第1搬送経路切換器28,部品装着機30,第2搬送経路切換器32,装着作業結果検査機34,リフロー炉36,最終検査機38が、並んで配置されており、複数の基板が、それら機器を順次通過して、電気回路の製造が行われる。印刷作業結果検査機26,装着作業結果検査機34,リフロー炉36が、対基板作業機であり、それぞれが行うはんだ印刷作業,部品装着作業,部品固定作業が、対基板作業である。
上記機器の各々について、簡単に説明すれば、基板投入器22は、複数の基板をスタックして収納しており、順次、基板を1枚ずつ、当該製造ライン20に、詳しく言えば、はんだ印刷機24に投入する。はんだ印刷機24は、投入された基板の表面にクリームはんだをスクリーン印刷する作業(はんだ印刷作業)を行う。印刷作業結果検査機26は、はんだ印刷機24によるはんだ印刷作業の結果を検査する。後に詳しく説明するが、部品装着機30は、2レーンで作業を行うことが可能とされており、第1搬送経路切換器28は、印刷作業結果検査機26から搬出された基板を、部品装着機30の2レーンに振り分ける機能を有している。部品装着機30は、1つのベース40と、ベース40に並んで配置されてそれぞれが部品装着装置として機能する6つの装着モジュール42と、それら装着モジュール42を統括して制御する統括制御装置としてのモジュール統括コントローラ44とから構成されており、はんだが印刷された基板が、6つの装着モジュール42を順次通過して搬送される間に、各装着モジュール42によって部品を装着する作業(部品装着作業)が行われて、当該基板への部品装着作業が完了するように構成されている。第2搬送経路切換器32は、部品装着機30において2レーンで搬送されてきた基板の搬送経路を1つの経路に集める機能を有している。装着作業結果検査機34は、部品装着機30による部品装着作業の結果を検査する。リフロー炉36は、部品が装着された基板を加熱することによってクリームはんだを溶融させた後、冷却することでそのはんだを凝固させて、部品の基板への固定作業(部品固定作業)を行う。最終検査機38は、当該製造ライン20の末尾に配置され、各機器によって対基板作業が行われて製造された電気回路の最終検査を行う。なお、本製造ライン20は、各機器24,26,30,34,36,38を統括して制御するラインコントローラ46を備えている。このラインコントローラ46は、それらの各機器とLAN48を介して接続されている。また、支援装置10も、LAN48に接続されており、LAN48を介して、各機器24,26,30,34,36,38およびラインコントローラ46と接続されている。以下に、主要な機器について、個別に詳しく説明する。
ii)はんだ印刷機
はんだ印刷機24は、図2に示すように、角パイプを主体に構成されたベースフレーム50を有しており、そのベースフレーム50に支持されて配設された基板コンベア装置52,基板保持・昇降装置54(図では、スクリーン56に隠れて一部しか現われていない),スクリーン保持装置58,スキージ装置60,クリーニング装置62等によって構成されている。
基板コンベア装置52は、基板を上流側から下流側に搬送するとともに、スクリーン56の下方における所定の作業位置に停止させる機能を有している。基板保持・昇降装置54は、作業位置に停止している基板を保持して上昇・下降させる。スクリーン保持装置58は、スクリーン56を保持する保持枠64と、スクリーン56の位置を調整すべく保持枠64の位置調整を行う4つの保持枠位置調整機構66とを有している。スキージ装置60は、1対のスキージ68と、それら1対のスキージ68の各々を上下させるスキージ上下機構70とを有するスキージユニット72と、1対のスキージ68を前後に動かすべくスキージユニット72を前後に移動させるユニット移動機構74とを含んで構成されている。
基板コンベア装置52によって、上流側から搬入された基板は、上記作業位置で停止させられ、その停止させられた基板は、基板保持・昇降装置54によって保持され、その後上昇させられ、スクリーン56の下面に押し当てられる。スクリーン56には、はんだランド(「はんだパッド」とも呼ばれる)を形成するための開口(透孔)が設けられる一方、スクリーン56の上面には、クリームはんだが供給されている。1対のスキージ68の一方のみがスクリーンの56の上面に押し当てられた状態で、スキージユニット72が、ユニット移動機構74によって、前後の一方に移動させられることで、スクリーン56の上面に供給されているクリームはんだが、スクリーン56の開口を通って、押し当てられた基板の上面に付着させられる。それによって、はんだランドが、開口によって規定される特定のランドパターンで基板の上面に形成される。このようにして、基板表面へのはんだ印刷が完了する。印刷が完了した基板は、基板保持・昇降装置54に下降させられた後、保持が解除され、基板コンベア装置52によって、下流側に搬出される。はんだ印刷機では、このようにして、1つの基板に対するはんだ印刷作業が行われる。
なお、はんだ印刷の際、スクリーン56と基板保持・昇降装置54によって保持された基板との位置合わせが行われる。図には省略しているが、はんだ印刷機24は、スクリーン56と、上昇させられる前の状態の基板との間を移動してスクリーン56の下面と基板の上面との両者を撮像可能な撮像装置を有している。この撮像装置によって、基板の表面に付された基板基準マークと、スクリーン56の下面に付されたスクリーン基準マークとが撮像され、それらの撮像によって得られた撮像データを基に、基板とスクリーンとの相対位置ズレ量が把握される。その把握された相対位置ズレ量に基づいて、保持枠位置調整機構66によってスクリーン56の位置が調整され、その後に、基板保持・昇降装置54によって基板が上昇させられ、はんだ印刷が行われる。
上記クリーニング装置62は、はんだランドの擦れ,はみ出しといった面積・体積の過少若しくは過多が発生した場合等に、スクリーン56の下面を清浄する装置である。クリーニング装置62は、1対のローラに捲回されてそれらの間に渡された不織布76と、洗浄液であるアルコールを不織布76に含浸させるためのノズル78とを有するクリーニングユニット80を有しており、そのクリーニングユニット80が、図では隠れているユニット移動機構によって、前後に移動させられるように構成されている。不織布76がスクリーン56の下面に接触する状態で、ユニット移動機構によって、クリーニングユニット80が移動させられることで、スクリーン56の下面が、その不織布76によって拭かれるようにして清浄される。なお、不織布76の下方には、その不織布76をバックアップするバックアップ部材82が設けられており、不織布76はそのバックアップ部材82にバックアップされた状態で、スクリーン56の下面に接触させられる。クリーニングユニット80には、図示しないバキューム吸引器が設けられており、その吸引器によって、バックアップ部材82に設けられたスロットおよび不織布76を介して、スクリーン56に付着している付着物を吸引することが可能となっている。クリーニング装置62によるクリーニングは、アルコールの不織布76への含浸および吸引器による吸引を伴わずに行われるドライクリーニング,アルコールの含浸を伴って行われるウェットクリーニング,アルコールの含浸および吸引を伴って行われるバキュームクリーニングの3つのモードで実施可能とされており、それらのモードのいずれかが選択されて、その選択されたモードで、スクリーン56の下面が清浄される。なお、クリーニング装置62は、定期的に自動で、外部からの信号に基づいて自動で、あるいは、オペレータの操作によって手動で、クリーニングを行うようにされている。
はんだ印刷機24は、コンピュータを主体とした制御装置であるコントローラ84を備えており、当該はんだ印刷機24を構成する上述の各装置,各機構の作動は、そのコントローラ84によって行われる。ちなみに、コントローラ84は、オペレータの操作パネルの操作によって入力されたはんだIDを基に、現在供給されているクリームはんだを把握、管理している。なお、はんだ印刷機24は、スクリーン56の上面に供給されているクリームはんだの粘度調整等のため、当該はんだ印刷機24の内部の温度を調整するエアコンディショナ86をも備えている。
iii)印刷作業結果検査機
印刷作業結果検査機26は、内部構造の図示は省略するが、基板コンベア装置と、検査ヘッドと、その検査ヘッドを移動させるヘッド移動装置とを含んで構成されている。基板コンベア装置は、はんだが印刷された基板を上流側から搬入して下流側に搬出するとともに、所定の検査位置に定置させる機能を有している。検査ヘッドは、検査位置に定置させられた基板の表面の情報を得るための作業ヘッドである。ヘッド移動装置は、いわゆるXY型の移動装置であり、検査ヘッドを基板搬送方向に平行な方向(X方向)に移動させるX方向移動機構と、その機構自体をX方向に直角な方向(Y方向)に移動させるY方向移動機構とを含んで構成されており、基板の上方において、検査ヘッドを、基板の表面に平行な一平面に沿って移動させる。
はんだ印刷作業の結果、基板の表面には、それぞれが作業部位となる複数のはんだランド(「はんだパッド」と呼ぶこともできる)が形成されている。詳しい説明は省略するが、図3に模式的に示すように、検査ヘッドは、はんだ印刷作業の結果を検査するための印刷結果検査ヘッド90であり、この印刷結果検査ヘッド90は、基板の表面に格子が形成されるよう4方向から斜めにスリット光を照射する光源と、基板の表面に形成された光の格子を2方向から斜めに撮像する撮像装置としてのカメラとを含んで構成されている。照射されたスリット光によってできる格子を構成する光の線92は、基板上のはんだランド94、つまり、はんだが印刷された箇所に形成された部分が、はんだランド94が形成されていない基板自体の表面に形成された部分からシフトすることになる。このシフトの量は、はんだランドの厚み(高さ)によって異なる。このような原理を利用し、カメラによって得られた撮像データを処理することにより、印刷作業結果検査機26は、はんだランド94の、X方向およびY方向の位置ズレ量,回転方向の位置ズレ量(回転角度若しくは方位におけるズレ量),面積および体積を取得する。なお、上記カメラは、複数のはんだランド94を一視野に収めて撮像可能であり、印刷作業結果検査機26では、一度に複数のはんだランド94の検査が可能とされている。
印刷作業結果検査機26は、あるはんだランド94についての上記ズレ量,面積の正規の面積からの変動量である面積変動量,体積の正規体積からの変動量である体積変動量が、そのはんだランド94について規定された限界値(不良判定用限界値)を超えている場合に、そのはんだランド94が、不良部位であると認定し、操作パネルのディスプレイ等を介して、オペレータに、その不良となった作業部位,その不良の内容等の印刷不良情報を報知する。オペレータは、上記報知された情報に基づいて、はんだ印刷機24によるはんだ印刷作業の条件の変更(プログラムの変更,温度の変更,はんだの追加供給,クリーニング装置62によるスクリーン56のクリーニング等が含まれる)を行う。
iv)部品装着機
部品装着機30は、基板に部品を装着するための作業機であり、先に説明したように、ベース40と、6つの装着モジュール42と、モジュール統括コントローラ44とを含んで構成されている。図4は外装パネルを外した状態の装着モジュール42を示しており、この図を参照しつつ説明すれば、装着モジュール42は、モジュールベース100と、モジュールベース100に上架されたビーム102と、モジュールベース100に配設された基板コンベア装置104と、当該モジュール42の正面側においてモジュールベース100に交換可能に取り付けられてそれぞれが部品供給装置として機能する複数の部品フィーダ106と、基板コンベア装置104と複数の部品フィーダ106との間においてモジュールベース100に固定されたベース固定式の部品カメラ108と、複数の部品フィーダ106のいずれかから供給される部品を保持してその部品を基板Sに装着するために離脱させる装着ヘッド110(「作業ヘッド」の一種である)と、ビーム102に配設されて装着ヘッド110を移動させるヘッド移動装置112とを含んで構成されている。
基板コンベア装置104は、基板を搬送するトラック(レーン)を2つ有しており、各トラックに基板を上流側から搬入し、各トラックから下流側に搬出する。基板コンベア装置104は、各トラックの下部に昇降可能な支持テーブルを有しており、所定の位置にまで搬入された基板Sは、上昇した支持テーブルによって支持され、その位置において固定される。つまり、基板コンベア装置104は、部品装着作業において基板Sを所定の作業位置に固定する基板固定装置として機能する。基板コンベア装置104は、各装着モジュール42に配設されているため、当該部品装着機30は、2レーンで部品装着作業を実施可能とされている。ちなみに、基板コンベア装置104による基板の搬送方向である基板搬送方向は、図に示すX方向(Y方向,Z方向とともに矢印で図示)である。
ヘッド移動装置112は、いわゆるXY型移動装置であり、装着ヘッド110が脱着可能に取り付けられるヘッド取付体114と、そのヘッド取付体114をX方向に移動させるX方向移動機構と、ビーム102に支持され、そのX方向移動機構を、装着ヘッド110を部品フィーダ106と基板Sとにわたって移動させるべく移動させるY方向移動機構とを含んで構成されている。なお、ヘッド取付体114の下部には、基板Sの表面を撮像するための基板カメラ116が固定されている。
装着ヘッド110は、いわゆるインデックス型の装着ヘッドであり。図5(a)に示すように、それぞれが、部品保持デバイスとして機能して負圧の供給(「圧力が大気圧よりも低下させられること」を意味する)によって部品を下端部において吸着保持する8つの吸着ノズル118を有しており、それらは、リボルバ120に保持されている。リボルバ120は、間欠回転し、特定位置に位置する1の吸着ノズル118が、ノズル昇降機構によって、昇降可能、つまり、上下方向(Z方向)に移動可能とされている。特定位置に位置する吸着ノズル118は、下降した際に、負圧が供給されることによって、部品を保持し、また、負圧の供給が断たれることで、吸着保持している部品を離脱させる。ちなみに、8つの吸着ノズル118の各々は、ノズル回転機構によって、自身の軸線(以下、「ノズル軸線」という場合がある)回りに、つまり、ノズル軸線を中心に回転させられるようになっており、当該装着ヘッド110は、各吸着ノズル118によって保持されている部品の回転位置(「回転姿勢」,「方位」と言うこともできる)を、変更・調整することが可能とされている。
複数の部品フィーダ106の各々には、部品保持テープ(複数の部品がテープに保持されたものであり、「部品テーピング」とも呼ばれる)が捲回されたリールが、セットされており、複数の部品フィーダ106の各々は、その部品保持テープを間欠的に送り出すことによって、所定の部品供給部位において、順次、部品を1つずつ供給する。部品の補給は、リールを交換しつつ、部品テーピングを繋ぎ合わせるようにして行ってもよく(スプライシング)また、部品フィーダ106ごとリールを交換して行ってもよい。なお、装着モジュール42は、複数の部品フィーダ106に代えて、いわゆるトレイ型の部品供給装置をも取付可能とされている。なお、部品は部品IDにて管理されており、各装着モジュール42は、自身のコントローラによって、自身においてどんな部品が供給されているかを把握している。
1の装着モジュール42による部品装着作業について説明すれば、まず、基板コンベア装置104によって、作業に供される基板Sが、上流側から搬入され、所定の作業位置にて固定される。次いで、基板カメラ116がヘッド移動装置112によって移動させられ、基板Sの上面に付された基準マークが撮像される。その撮像によって得られた撮像データに基づき、装着位置の基準となる座標系が決定される。次に、ヘッド移動装置112によって、装着ヘッド110が複数の部品フィーダ106の上方に位置させられ、8つの吸着ノズル118の各々において部品が順次保持される。装着ヘッド110が基板Sの上方に移動させられる際中に、部品カメラ108の上方を通過し、吸着ノズル118の各々に保持された部品が、部品カメラ108によって撮像される。その撮像データに基づき、各部品のノズル軸線に対する位置ズレ量(回転位置ズレをも含む概念である)が把握される。続いて、装着ヘッド42は、基板Sの上方に移動させられ、上記位置ズレ量に基づく補正を行いつつ、各部品が、順次、装着プログラムによって定められた設定位置に装着される。装着プログラムによって定められた回数部品フィーダ106と基板Sとの間を装着ヘッド42が往復させられ、装着ヘッド42による部品の保持・装着が、上記のように繰り返されて、1つの装着モジュール42による部品装着作業が完了する。1つの基板Sが、6つの装着モジュール42を通過する際、1つの基板Sに対する各装着モジュール42による上述の部品装着作業が順次行われ、部品装着機30による1つの基板に対する装着作業が完了する。なお、部品装着作業において、吸着ノズル118が複数の部品フィーダ106からの部品を吸着保持する際に、ミスをする(吸着保持できない)場合がある。この吸着保持ミスが発生した場合は、再度、同じ吸着ノズル118で同じ部品フィーダ106からの部品を吸着保持することでリカバリされる。ちなみに、この吸着保持ミスは、部品ごと、吸着ノズル118ごとに、カウントされる。
装着モジュール42は、装着ヘッド110に代えて、他の作業ヘッドを取り付け可能である。例えば、図5(b)に示す装着ヘッド122を取り付けることができる。この装着ヘッド122は、いわゆるシングルノズル型の装着ヘッドである。この装着ヘッド122は、部品保持デバイスとしての吸着ノズル124が1つだけ設けられている。一度に1つの部品しか吸着保持することができないが、比較的大きな部品をも吸着保持可能とされている。この装着ヘッド122も、ノズル昇降機構,ノズル回転機構を備えており、吸着ノズル124は、部品の保持・離脱の際に昇降させられ、かつ、部品の回転位置の変更・調整のためにノズル軸線回りに回転させられる。ちなみに、装着ヘッド110が有する8つの吸着ノズル118,装着ヘッド122が有する吸着ノズル124は、自動的に交換可能となっており、交換用の吸着ノズル118,124は、基板コンベア装置104と複数の部品フィーダ106との間に配置されたノズルストッカ126に収容されている。なお、X方向においてノズルストッカ126とで部品カメラ108を挟んだ位置には、ノズルクリーナ128が配設されている。このノズルクリーナ128は、ブラシを主要構成要素とするものであり、吸着ノズル118,124の下端をそのブラシに接触させるようにして装着ヘッド110,122がヘッド移動装置112によって移動させられることで、吸着ノズル118,124に付着している異物等を除去する機能を有している。また、吸着ノズル118,124、装着ヘッド110,122には、ノズルID,ヘッドIDが付されるとともに、各装着モジュール42は、そのノズルID,ヘッドIDを認識する機能を有しており、自身の現在の部品装着作業において使用されている吸着ノズル,作業ヘッドを把握している。
装着モジュール42は、さらに、装着ヘッド110に代えて、例えば、図5(c)に示す検査ヘッド130を取り付け可能である。この検査ヘッド128は、基板Sの表面を撮像可能な撮像装置として、基板カメラ132を備えている。この基板カメラ132は、比較的大きな視野を有し、基板Sに装着された複数の部品を一視野に収めて撮像可能であり、また、比較的解像度の高いカメラである。したがって、基板カメラ132は、装着された部品の装着位置のズレ等に関する検査に適したカメラである(その意味で、以下、「検査用カメラ130」と言う場合がある)。検査ヘッド130を取り付けた装着モジュール42は、部品装着機30の下流側に配置された装着作業結果検査機34と同等の機能を有することとなる。つまり、検査モジュールとして機能することとなる。例えば、検査対象となる部品、つまり、作業部位が多い場合には、この検査機34だけでは、装着結果の検査作業に時間がかかり過ぎることになる。そのような場合に、例えば、6つの装着モジュール42の最下流側に位置するものに検査ヘッド130を取り付け、装着作業結果検査機34に加えてそのモジュール42をも装着作業結果検査機として機能させることで、検査長時間化による当該電気回路製造ラインの生産性の低下を、抑制することが可能となる。なお、それらの作業ヘッド110,122,130の相互の交換は、レバー操作によって、ワンタッチにて行うことができるようになっている。
なお、装着モジュール42の各々は、モジュールIDによって識別され、モジュール統括コントローラ44は、そのモジュールIDを把握することで、どの装着モジュール42がベース40上のどの位置に配置されているかを認識している。
v)装着作業結果検査機
装着作業結果検査機34は、内部構造の図示は省略するが、印刷作業結果検査機26と同様、基板コンベア装置と、検査ヘッドと、その検査ヘッドを移動させるヘッド移動装置とを含んで構成されている。基板コンベア装置は、部品が装着された基板を上流側から搬入して下流側搬出するとともに、所定の検査位置に定置させる機能を有している。基板コンベア装置およびヘッド移動装置は、印刷作業結果検査機26のものと同様の構成となっているが、検査ヘッドは、印刷作業結果検査機26のものとは異なる構成となっている。装着検査結果検査機34が備える検査ヘッド、つまり、装着検査ヘッドは、基板表面と基板に装着された部品の上面とを上方から撮像する撮像装置としての基板カメラを主要構成要素として構成されたものであり、その基板カメラによって、二次元的な撮像データが取得される。
部品装着作業によって、数多くの部品が基板の表面に装着され、それらの部品のそれぞれが作業部位となる。装着作業結果検査機34は、装着検査ヘッドの基板カメラによって取得された撮像データに基づいて、装着位置についての部品のX方向およびY方向の位置ズレ量,回転方向のズレ量(回転角度若しくは方位におけるズレ量)を取得し、部品の欠品,部品立ち(いわゆる「チップ立ち」)の発生を確認する。部品の欠品,部品立ちの発生を確認した場合は、その発生の事実をもってその作業部位が作業不良であると認定、つまり、その作業部位が不良部位であると認定する。一方、装着位置の位置ズレに関しては、ある部品の上記ズレ量が、その部品について規定された限界値(不良判定用限界値)を超えている場合に、その部品、つまり、その作業部位が不良部位であると認定する。作業不良を認定した場合に、その不良部位と作業不良の内容等の装着不良情報を、操作パネルのディスプレイ等を介して、オペレータに報知する。オペレータは、上記報知された情報に基づいて、部品装着機30による部品装着作業の条件の変更(位置ズレ補正量等に関するプログラムの変更)や、吸着ノズル,供給される部品の交換等を行う。ちなみに、装着作業結果検査機34の装着検査ヘッドが有する基板カメラは、印刷作業結果検査機26の印刷検査ヘッド90の有するカメラ、部品装着機30に取付られる検査ヘッド122の検査用基板カメラ132と同様、一視野に複数の作業部位(装着された部品)を収めることができ、当該装着作業結果検査機34は、一度に複数の部品についての作業の結果を検査することが可能となっている。
vi)リフロー炉
リフロー炉36は、装着作業結果検査機34から搬入された基板、つまり、部品が装着された基板を搬出口まで搬送するコンベア装置と、コンベア装置によって搬送される基板を加熱するための熱風式,赤外線式等のヒータとを含んで構成されている。部品が装着された基板が、コンベア装置で搬送される最中に、ヒータによって加熱されることで、クリームはんだが溶融し、搬出口付近で冷却(自然冷却)されることによって、そのはんだが凝固して、部品が固定される。コンベア装置による基板の搬送速度、炉内の温度プロファイル(基板が炉内を搬送される際の搬送位置変化に対する基板加熱温度の変化の様子)等は、製造される基板の大きさ,部品数,クリームはんだの種類等に応じて、任意に設定可能とされている。
vii)最終検査機
最終検査機38は、装着作業結果検査機34と略同様の構成とされている。検査ヘッドが有する基板カメラによって取得された撮像データに基づいて、部品固定位置についての部品のX方向およびY方向の位置ズレ量,回転方向のズレ量(回転角度若しくは方位におけるズレ量)を取得し、部品の欠品,部品立ち(いわゆる「チップ立ち」)の発生を確認する。部品の欠品,部品立ちの発生を確認した場合は、その発生の事実をもってその作業部位が作業不良であると認定、つまり、その作業部位が不良部位であると認定する。一方、部品固定位置の位置ズレに関しては、ある部品の上記ズレ量が、その部品について規定された限界値(不良判定用限界値)を超えている場合に、その部品、つまり、その作業部位が不良部位であると認定する。本最終検査機38は、それらに加え、凝固したはんだについての検査をも実行する。具体的に言えば、上記撮像データに基づいて、各部品が載置されているはんだランドの各々の外形寸法の正規の外形寸法に対する差(外形寸法変動量)、簡単に言えば、はんだランドの形状不良を確認する。例えば、はんだがダレてはんだランドの面積が過多となった場合には、隣接するはんだランドと繋がり、電気回路がショート等してしまうことになり、はんだランドの外形は、そのような観点から検査され、はんだランドどうしが互いに接触している場合に、それらのはんだランドが不良部位であると認定する。その不良部位と作業不良の内容等の不良情報を、操作パネルのディスプレイ等を介して、オペレータに報知する。オペレータは、上記報知された情報に基づいて、リフロー炉36の搬送速度,温度プロファイルを調整する。なお、部品の固定位置についての不良は、リフロー炉36による部品固定作業の不良だけではなく、部品装着機30による部品装着作業の作業品質の低下によっても引き起こされる。したがって、その意味において、最終検査機38は、リフロー炉36による部品固定作業の作業結果のみならず、部品装着装置30による装着作業の結果を検査する検査機としても機能するものとなっている。つまり、最終検査機38は、装着作業結果検査機としても、また、固定作業結果検査機としても機能するものとなっている。
viii)ラインコントローラ
ラインコントローラ46は、製造ライン20を統括して制御する機能を主機能とする制御装置であり、現時点において各機器によって作業されている基板の把握、基板が製造ライン20による電気回路の製造予定数および製造実績数,製造ライン20の製造タクト等の管理、各機器について共通した設定項目についてのオペレータの入力操作による設定処理等を行う。なお、各機器は、現在自身が作業を行っている基板の基板IDを認識する機能を有している。各機器は、自身が対基板作業を行う基板の基板IDを把握しており、ラインコントローラ46は、各機器からの基板ID情報を基に、製造ライン20を追加する基板を管理している。なお、ラインコントローラ46は、そのような機能の他に、オペレータを管理する機能をも有し、オペレータ自身によって入力されたオペレータIDに基づいて、誰が現在製造ライン20のオペレータであるかを把握している。
≪2.電気回路製造支援装置による支援処理の概要≫
電気回路製造支援装置10は、汎用コンピュータが所定のプログラムを実行することによって実現され、製造ライン20によって製造される電気回路の品質面における支援を行う。詳しく言えば、先に説明したように、それぞれが対基板作業機であるはんだ印刷機24,部品装着機30,リフロー炉36による対基板作業の作業不良については、印刷作業結果検査機26,装着作業結果検査機34,最終検査機38によって検出されるため、本支援装置10は、製造される電気回路の品質に対する高い信頼性を維持すべく、不良と認定される基準に達しないまでの品質低下を把握するための支援処理を行う。そしてその支援処理を効率的に行うため、対基板作業機において作業条件の変動が発生した場合に、その作業条件変動に関係する作業部位の品質低下を監視するようにされている。そのため、本支援装置10の支援処理は、大きくは、作業条件変動を認識し、監視する対象となる作業部位を認定するための条件変動認識・監視対象部位認定処理と、認定された作業部位についての作業品質の変化に関する判断を行い、品質低下があった場合にそれに対処するための品質変化判断・対処処理との2つの処理と、品質変化判断・対処処理のなかで行われる品質改善処理とを含んでいる。以下に、それら3つの処理に用いられる情報,データを説明した上で、それら3つの処理を、順次、説明し、その後で、本支援装置10の機能構成について説明する。
[A]支援処理で用いられる情報・データ
支援処理において用いられる情報・データは、大きくは、2つに類別することができる。その1つは、作業条件変動を認識するための情報である「作業機関連情報」であり、もう1つは、品質低下を判断するために対照される「品質低下判断時対照用データ(以下、単に、「対照用データ」と言う場合がある)」である。ちなみに、それらの情報・データは、支援処理にあたって、支援装置10が有する情報・データ格納部に格納される。以下に、それぞれについて、順次説明する。
i)作業機関連情報
作業機関連情報は、簡単に言えば、対基板作業機が1つの基板に対して対基板作業を行った際、どのようなデバイスや資材が使用されたか,どのような動作が行われたか,当該作業機の状態がどのような状態であったか等を表す情報であり、さらに2つに類別することができる。その1つは、対基板作業機が実際に行った作業に関する情報(作業実績情報)であり、もう1つは、対基板作業機に対して実際に行われた処置に関する情報(処置情報)である。作業機関連情報は、主に、各対基板作業機が1つの基板に対して対基板作業を完了した都度、その対基板作業機から支援装置に送信される。なお、先に説明したオペレータに関する情報も作業機関連情報の一種であり、そのような情報は、ラインコントローラ46から送信される。
作業実績情報の具体例について以下に列挙すれば、はんだ印刷機24に関しては、例えば、はんだIDから認識可能な現在供給されているクリームはんだの種別,ロット番号,供給元(ベンダ)、はんだ印刷機24が把握しているスクリーンID,スキージID等の各デバイスのID、スキージのスクリーンへの加圧力(印圧),スキージの速度等はんだ印刷の際のスキージの動作についての情報、スクリーン56の基板からの離脱速度、機内の温度,湿度等が、作業実績情報に含まれる。また、撮像装置による基板基準マークの撮像データから得られる情報等も、広い意味で、作業実績情報に含まれる。部品装着機30に関しては、例えば、部品IDから認識可能な現在供給されている部品の種別,ロット番号,供給元、部品装着機30が把握している部品フィーダID,トレイID,ノズルID,ヘッドID,モジュールID等の各種デバイスのID、装着動作におけるノズルの下降速度等の種々のデバイスの動作速度、装着プログラムにおいて設定されていた各部品の装着位置等が、作業実績情報に含まれる。また、基板カメラ116による基板基準マークの撮像データから得られる情報、吸着ノズル118,124に吸着保持された部品の部品カメラ108による撮像データから得られる情報(ノズル軸線に対する部品の位置ズレ,部品若しくは吸着ノズル毎の吸着ミスの回数等)等も、広い意味で、作業実績情報に含まれる。リフロー炉36に関しては、例えば、設定されていた基板の搬送速度、設定されていた温度プロフィール等が、作業実績情報に含まれる。作業実績情報は、端的には、1の基板に対する対基板作業についてのものと、他の1つの基板に対する対基板作業についてのものを比較することによって、作業条件が変動したこを把握可能な情報であると言える。
処置情報の具体例について以下に列挙すれば、はんだ印刷機24に関しては、例えば、クリームはんだが追加供給された,各種のデバイスが交換された,はんだ印刷機の動作プログラムが変更された等の処置を行った事実、スクリーン56に対してクリーニングが行われた事実およびその行われたクリーニングのモード等に関する情報が、処置情報に含まれる。部品装着機30に関しては、部品が追加補給された,各種デバイス(ノズル,ヘッド,モジュール等)が交換された,装着プログラム(装着位置等)が変更されたといった事実等に関する情報が、処置情報に含まれる。リフロー炉36に関しては、例えば、基板の搬送速度,温度プロフィールが変更された事実に関する情報が、処置情報に含まれる。処置情報は、端的には、作業条件変動を引き起こす処置が実際に行われたことを直接的に表す情報であると言える。
ii)品質低下判断時対照用データ
対照用データには、動作依拠取得データと検査データとの少なくとも一方が含まれる。動作依拠取得データは、先に説明したように、対基板作業機が対基板作業を行う上での動作に関するデータ、動作を行っている際若しくは動作後の対基板作業機の状態(ステータス)に関するデータ、動作の対象物の動き,状態に関するデータ等、対基板作業機において検出・測定・認識可能の種々のデータが含まれる。先に説明した作業実績情報の多くは、この動作依拠取得データとして扱うことができる。具体的に例示すれば、はんだ印刷機24に関しては、スキージのスクリーンへの加圧力(印圧),撮像装置による基板基準マークの撮像データから得られる当該マークのズレに関するデータ等、種々のデータが、動作依拠取得データとなり得る。また、部品装着機30に関しては、吸着ノズル118,124に吸着保持された部品の部品カメラ108による撮像データから得られるデータ(ノズル軸線に対する部品の位置ズレ等に関するデータ等)、部品ごとの或いは吸着ノズルごとの吸着ミスの回数,確率、基板カメラ116による基板基準マークの撮像データから得られる当該マークのズレに関するデータ等が、動作依拠取得データとなり得る。リフロー炉36に関しては、基板の搬送速度,炉内の温度プロファイルが、動作依拠取得データとなり得る。 それらの動作依拠取得データは、例えば、それら対基板作業機が対基板作業を行った都度、それら対基板作業機から支援装置10に送られる。
検査データは、対基板作業が行われた作業部位についてのその対基板作業の作業結果を検査する検査機、具体的には、印刷作業結果検査機26,装着作業結果検査機34,最終検査機38による検査データが、場合によっては検査モジュールとされた装着モジュール42による検査データが含まれる。検査データは、それらの検査機が1の基板に対する検査を行った都度、それら検査機から支援装置10に送信される。対照用データは、作業部位の作業品質の低下を判断するために対照されるデータであることから、相当数の基板の各々についてのデータであることが望ましく、本支援装置10の情報・データ格納部には、連続して製造される若しくは製造された相当数の基板についての対照用データが、格納されるようになっている。検査データの具体例について以下に列挙すれば、印刷作業結果検査機26に関して言えば、例えば、上述の各はんだランドの印刷位置ズレ量,面積変動量,体積変動量等が、検査データに含まれる。また、装着作業結果検査機34に関して言えば、例えば、上述の各部品の装着位置ズレ量等が、最終検査機38に関して言えば、例えば、上述の各部品の固定位置ズレ量,はんだランドの外形寸法変動量等が、それぞれ、検査データに含まれる。
[B]条件変動認識・監視対象部位認定処理
条件変動認識・監視対象部位認定処理は、図6にフローチャートを示す条件変動認識・監視対象認定プログラムが実行されることによって行われる。このプログラムは、いずれかの対基板作業機が、1の基板に対して対基板作業を完了したことをトリガとして開始される。その対基板作業機が、はんだ印刷機24,部品装着機30,リフロー炉36のいずれであっても、当該プログラムの実行によって、その対基板作業機に応じた処理がなされる。
以下にフローチャートに沿って、当該処理の内容を説明する。当該処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)において、条件変動認識フラグFvが、“0”にリセットされる。このフラグFvは、支援装置10が、作業条件変動を認識した場合に、“1”にセットされるフラグである。続くS2において、今回対基板作業が行われた基板(今回作業基板)の作業機関連情報が参照される。作業機関連情報は、対基板作業機等から送られて、情報・データ格納部の作業機関連情報バッファに格納される。次のS3において、今回作業基板の作業機関連情報の中に、詳しく言えば、上述の処置情報の中に、認識すべき作業条件変動(要認識作業条件変動)を引き起こす処置が実際に行われた旨の情報が含まれている場合には、S4において、第1条件変動認識処理として、条件変動認識フラグFvが“1”にセットされ、含まれていない場合には、1条件変動認識処理がスキップされて、S5に移行する。
S5では、今回作業基板の作業機関連情報と、上記作業機関連情報バッファに既に格納されている前回対基板作業が行われた基板(前回作業基板)の作業機関連情報とが比較される。詳しく言えば、今回作業基板と前回作業基板との作業実績情報どうしが比較される。ついでS6において、それらの情報に差異があるか否かが判断され、差異があると判断された場合には、S7において、その差異が要認識作業条件変動に相当するか否かが判断され、相当すると判断された場合には、S8において、第2条件変動認識処理として、条件変動認識フラグFvが“1”にセットされる。差異が認められないと判断された場合、差異が認められてもその差異が要認識作業条件変動に相当するものではないと判断された場合には、第2条件変動認識処理はスキップされる。なお、要認識作業条件変動に相当するか否かの判断は、比較される作業実績情報の種類,差異の程度等によって判断すればよく、また、その際に、作業機関連情報に含まれるオペレータに関する情報、詳しくは、オペレータの資質,能力,熟練度等を基準に判断することも可能である。本支援装置10では、このように、2種の作業機関連情報に基づいて、今回作業基板についての対基板作業に、認識すべき、つまり、対処すべき作業条件変動の有無が判断される。
S9において、条件変動認識フラグFvに基づき、最終的に、今回作業基板の対基板作業において、要認識作業条件変動が発生したか否かの判断がなされ、要認識作業条件変動が発生したと判断された場合には、S10以降の処理が行われる。S10では、ある種の作業条件変動によってどの作業部位が影響を受けるかを示した表形式のデータである条件変動・部位関係付けテーブルを参照して、作業機関連情報に基づき、作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある作業部位、つまり、影響部位が特定される。このテーブルは、予め設定されており、情報・データ格納部に格納されている。続くS11では、予め設定された認定規則に従って、影響部位の中から、1以上の監視対象部位が認定される。この規則は、情報・データ格納部に格納されている。影響部位のすべてが監視対象部位として認定される場合もあるが、絞り込みを行う場合には、上記設定規則として、作業条件変動の作業品質への影響の現れ易さを考慮して設定された規則を採用し、その規則に従って監視対象部位の認定が行われればよい。監視対象部位が認定された後、S12において、この作業条件変動が、今回作業基板の基板IDおよび認定された監視対象部位についてのデータ等のその作業条件変動に関連するデータ(条件変動関連データ)等を伴って、情報・データ格納部の特定の領域に設定されている作業条件変動監視リストに登録される。後に説明する品質変化判断・対処処理は、作業条件変動ごとに、その作業条件変動に関連する処理を、1の処理対象として行うため、作業条件変動監視リストは、その処理の対象となる作業条件変動を特定するために設けられており、1つの対象となる作業条件変動とそれに付随する条件変動関連データは、1つ処理対象のセットデータとして、対象となる作業条件変動ごとに格納される。登録された作業条件変動は、原則として、ある作業条件変動による品質低下が発生しなかったと判断されるまで、若しくは、発生しても改善処置によって品質が改善されるまで、当該リストからは、抹消されない。S12を終了して、対基板作業が行われた1つの基板についての当該プログラムによる1連の処理が終了する。上記S9において、今回作業基板の対基板作業において、要認識作業条件変動が発生していないと判断がなされた場合には、S10以降はスキップされて、当該プログラムによる1連の処理が終了する。
[C]品質変化判断・対処処理
品質変化判断・対処処理は、図7にフローチャートを示す品質変化判断・対処プログラムが実行されることによって行われる。このプログラムは、上記作業条件変動監視リストに登録された作業条件変動が影響を与える可能性のある基板についての検査が、その作業条件変動が発生した対基板作業の結果を検査する検査機によって実行された都度、詳しく言えば、上記処理対象とされた基板1つ1つの検査の終了の都度行われる。ちなみに、処理の対象となる基板は、条件変動関連データとして格納されている基板IDを基に判断され、その基板IDの基板以降に連続して対基板作業が行われたいくつかの基板が対象とされる。
以下にフローチャートに沿って、品質変化判断・対処処理の内容を説明する。当該処理では、まず、S21において、品質低下認定フラグFqの値が判断される。このフラグFqは、上記条件変動関連データの1つとして、初期値が“0”にセットされて、リストに登録され、その処理対象となる作業条件変動に起因して監視対象部位の作業品質が低下したと認定された場合に、“1”にセットされる。品質低下認定フラグFqが“1”である場合には、既に、品質低下が発生しているため、後に説明するS22の品質改善処理が実行される。品質低下が発生したか否かの判断は、作業条件変動が発生した時点から、所定数の基板に対して対基板作業が行われたことを条件として行うため、作業条件変動後に対基板作業が行われた基板数をカウントするための条件変動後作業基板数カウンタCnが、作業変動関連データの1つとして格納されており、このカウンタCnは、S21の判断において品質低下が認定されていないと判断された場合に、S23において、カウントアップされる。そして、S24において、その基板数が、設定数Cn0(後に説明する安定度の評価に有効な数に設定されている)に達していない場合には、当該プログラムによる1連の処理は終了し、設定数Cn0に到達した場合には、S25以下の処理が実行される。
S25では、情報・データ格納部に格納されている作業条件変動発生前の監視対象部位の対照用データが抽出される。具体的には、作業条件変動が発生した基板の前の基板から遡った設定数Cn0の基板についての対照用データが抽出される。続くS26では、抽出された対照用データを用い、作業条件変動発生前の各監視対象部位の作業結果の安定度指標の指標値PsB(以下、安定度指標の指標値を、「安定度指標値」と略することがある)が算出される。より詳しく言えば、対基板作業およびその作業結果における1以上の対照項目についての安定度指標値PsAが算出され、算出された安定度指標値PsBは、S27において、条件変動関連データの1つとして、情報・データ格納部に格納される。安定度指標は、対照項目の正規の値からのズレについての安定度を示すようなものを採用できる。具体的には、例えば、工程能力指数CpKを採用することが可能である。この工程能力指数CpKは、品質管理の分野で常用されている安定度指標であり、図8に示すような式で定義されるものである(規格上限LU,規格下限LLは、検査機に不良の判定のために規定された前述の不良判定用限界値より相当に小さく設定されている)。ちなみに、工程能力指数CpKは、その値が大きいほど安定していることを示す安定度指標である。なお、安定度指標は、工程能力指数CpKの他、対照項目である各種のズレについての基準値からのズレ量の平均,そのズレ量の管理限界値との関係,ズレのバラつき範囲、作業ミスの回数,確率(逆に言えば、作業成功の回数,確率)等、種々のものを採用することができる。
次いで、S28において、情報・データ格納部に格納されている作業条件変動発生後の監視対象部位の対照用データが抽出される。具体的には、作業条件変動が発生した基板以後の設定数Cn0の基板についての対照用データが抽出される。続くS29において、抽出された対照用データを用い、作業条件変動発生後の各監視対象部位の作業結果の安定度指標の指標値PsAが算出される。そしてS30において、各監視対象部位について、作業条件変動発生前安定度指標値PsBと、作業条件変動発生後安定度指標値PsAとが比較され、安定度指標値Psが、設定閾値ΔPsを超えて低下している場合に、監視対象部位の作業品質の低下の程度が設定程度を超えていると判断される。設定程度を超えて作業品質が低下していると判断された場合は、S31において、先に説明した品質低下認定フラグFqが“1”にセットされ、S32において、処置テーブルを参照して、改善処置が決定される。この処置テーブルは、作業条件変動と、その作業条件変動に起因する品質低下を改善するための改善処置とが関連付けられた表形式のデータであり、予め設定されて、情報・データ格納部に格納されている。決定された改善処置は、S33において、品質低下が発生している旨の情報ともに、当該作業時条件変動が発生した対基板作業機およびラインコントローラに通知される。それにより、それらの対基板作業機およびラインコントローラの操作パネルを介して、オペレータに報知される。その改善処置が対基板作業機によって自動的に実施できるものである場合には、その通知を受け対基板作業機は自動で、その処置を実施する。一方で、S30において、監視対象部位の作業品質が設定程度を超えて低下していないと判断された場合には、作業条件変動に起因する作業品質の低下は無かったものとして、S34において、その旨が対基板作業機およびラインコントローラに通知され、S35において、登録されている作業条件変動およびそれに関連する条件変動関連データが、上記作業条件変動監視リストから抹消され、処理の対象から外される。S33、もしくは、S35の処理の終了により、当該プログラムによる1連の処理は終了する。
[D]品質改善処理
品質改善処理は、先の品質変化判断・対処処理において、品質低下が認定され、改善処置が一旦通知されたを条件に、S22において実行される処理であり、図9にフローチャートを示す品質改善サブルーチンが実行されることによって行われる処理である。ちなみに本サブルーチンによる処理の終了により、品質変化判断・対処も終了する。
以下にフローチャートに沿って、品質改善処理の内容を説明する。品質改善処理は、改善処置が実施されていることを前提として行われるため、まず、S41において、改善処置実施フラグFiに基づく判断が行われる。このフラグFiは、上記条件変動関連データの1つとして情報・データ格納部に格納されており、改善処置が実施されていない場合に“0”に、実施されている場合に“1”にセットされる。なお、改善処置の実施されたか否かは、対基板作業機からの情報と今回処理を行っている基板の基板IDとに基づいて判断される。また、改善処置が実施されてから対基板作業が行われた基板の数をカウントするための改善処置後作業基板数カウンタCn’が、採用され、条件変動関連データの1つとして情報・データ格納部に格納されている。まずS41において、改善処置実施フラグFiに基づく判断がなされ、未だ改善処理が実施されていなかった場合には、S42において、今回の基板が、新たに改善処置が実施された基板であるか否かが判断され、改善処置が実施されていない場合には、当該サブルーチンによる一連の処理は終了する。新たに改善処置が実施された場合には、S43において、改善処置実施フラグFiが“1”にセットされ、S44において、改善処置後作業基板数カウンタCn’がリセットされた後、S45において、そのカウンタCn’がカウントアップされる。一方、S41において、既に、改善処置が実施されていると判断された場合は、S42〜S44はスキップされて、S45において、カウンタCn’がカウントアップされる。
続くS46において、改善処置後作業基板数カウンタCn’についての判断がなされ、そのカウンタCn’の値が、設定数Cn0’(Cn0と同じ値)に達していないと判断された場合には、当該サブルーチンによる一連の処理は終了する。設定数Cn0’に達したと判断された場合には、S47において、先に説明した要領と同じ要領で、情報・データ格納部に格納されている改善処置実施後の監視対象部位の対照用データが抽出される。具体的には、改善処置が実施された基板以後の設定数Cn0’の基板についての対照用データが抽出される。続くS48において、先に説明した要領と同じ要領で、抽出された対照用データを用い、改善処置実施後の各監視対象部位の作業結果の安定度指標の指標値PsA’算出される。そして、S49において、各監視対象部位について、作業条件変動発生前安定度指標値PsBと、改善処置実施後安定度指標値PsA’とが比較され、安定度指標値Psが、設定閾値ΔPsを超えて低下している場合に、監視対象部位の作業品質の低下の程度が設定程度を超えている、つまり、改善処置による作業品質の改善が見られなかったと判断される。
S49において作業品質に改善が見られたと判断された場合には、S50において、品質が改善された旨の通知が、対基板作業機およびラインコントローラ46に発せられる。続く、S51において、登録されている当該作業条件変動およびそれに関連する条件変動関連データが、上記作業条件変動監視リストから抹消され、処理の対象から外され、その後に、当該サブルーチンによる一連の処理は終了する。一方、S49において改善処置による作業品質の改善が見られなかったと判断された場合には、S52において、処置テーブルに次の改善処置が設定されているか否かの判断がなされる。処置テーブルには、優先順位付けがされた複数の改善処置がリストアップ可能であり、複数の改善処置がリストアップされているときには、その優先順位に従って、改善処置が決定されるようになっている。次の順位の改善処置がある場合には、S53において、そのテーブルを参照して、次の順位の改善処置が決定される。つまり、処置テーブルに複数の改善処置が設定されている場合は、品質の改善が見られるまで、繰り返し、改善処置が設定されている範囲において、別の改善処置が決定されるのである。そして、S54において、品質低下が継続している旨および次順位の改善処置が、作業時条件変動が発生した対基板作業機およびラインコントローラ46に通知される。S52において次の改善処置が設定されていないと判断された場合には、S55において、品質低下が未だ継続している旨および改善処置を通知できなかった旨が、上記対基板作業機およびラインコントローラ46に通知される。そして、S56において、登録されている当該作業条件変動およびそれに関連する条件変動関連データが、上記作業条件変動監視リストから抹消され、処理の対象から外され、その後に、当該サブルーチンによる一連の処理は終了する。
[E]電気回路製造支援装置の機能構成
電気回路製造支援装置10は、上記のような条件変動認識・監視対象部位認定処理,品質変化判断・対処処理,品質改善処理を行うことから、図10に示すような機能構成を有していると考えることができる。具体的に言えば、支援装置10は、それぞれが仮想的な内部バス150によって互いに繋がる複数の機能部である情報・データ入手部152,条件変動認識部154,監視対象部位認定部156,対象部位品質判断部158,改善処置決定部160,情報・処置通知部162,情報・データ格納部164を有している。そして、支援装置10は、LAN48を介して、それぞれが対基板作業機であるはんだ印刷機24,部品装着機30,リフロー炉36と、また、印刷作業結果検査機26,装着作業結果検査機34,最終検査機38と繋がっている。
各機能部について説明すれば、情報・データ入手部152は、対基板作業機および検査機から、作業実績情報,処置情報等の上記作業機関連情報、動作依拠取得データ,検査データ等の対照用データ等を入手する機能を有する。また、条件変動認識部154は、上記作業機関連情報に基づいて作業条件変動を認識する機能を、監視対象部位認定部156は、上記影響部位を特定するとともにそれら影響部位の中から監視対象部位を認定する機能を、対象部位品質判断部158は、作業条件変動の前後における対照用データから監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行う機能を、改善処置決定部160は、作業条件変動に起因する監視対象部位の作業品質を改善するための改善処置を決定する機能を、情報・処置通知部162は、その決定されら改善処置を対基板作業機,オペレータに通知する機能を、それぞれ有している。そして、情報・データ格納部164は、上記作業機関連情報,上記対照用データを始め、先に説明した各種の情報,データ,テーブル,リスト,規則等を格納する機能を有している。
条件変動認識・監視対象部位認定処理,品質変化判断・対処処理,品質改善処理との関係において、さらに詳しく説明すれば、条件変動認識部154は、S1〜S9の処理によって実現される機能を、監視対象部位認定部156は、S10〜S12の処理によって実現される機能を、対象部位品質判断部158は、S23〜S30の処理によって実現される機能を、改善処置決定部160は、S32,S52,S53の処理によって実現される機能を、情報・データ格納部164は、S33,S34,S50,S54,S55等の処理によって実現される機能を、それぞれ有している。なお、支援装置10が実行する支援処理は、電気回路製造支援方法に該当し、条件変動認識部154,監視対象部位認定部156,対象部位品質判断部158,改善処置決定部160,情報・処置通知部162の各々の機能を実現させるための処理は、それぞれ、電気回路製造支援方法における条件変動認識ステップ,監視対象部位認定ステップ,対象部位品質判断ステップ,改善処置決定ステップ,処置通知ステップに該当する。
≪3.電気回路製造支援装置による支援処理の具体例≫
次に、支援装置10によって行う支援処理の具体例として、いくつかの作業条件変動に対する処理の具体例について説明する。
i)部品装着機における吸着ノズルの交換
部品装着機30における吸着ノズル118,124の交換は、部品保持デバイスの交換であり、部品装着作業の作業品質、詳しくは、装着される部品の装着精度に影響を与える作業条件変動の一例である。吸着ノズル118,124の交換は、作業機関連情報である上記作業実績情報、具体的には、ノズルIDが、前回作業基板と今回作業基板とで異なることによって認識される。吸着ノズル118,124の交換が認識された場合、交換された吸着ノズル118,124によって装着された部品が、影響部位として特定される。そして、監視対象部位として、その吸着ノズル118,124によって装着された部品のうち、最も大きい部品、最も小さい部品,1つの部品についての端子数が最も多い部品が認定される。装着作業結果検査機34からの検査データのうち、吸着ノズル118,124の交換前に部品装着作業が行われた基板における監視対象部位についての装着位置の位置ズレ量および交換後に部品装着作業が行われた基板における監視対象部位についての装着位置の位置ズレ量が対照用データとして用いられ、監視対象部位の各々についての吸着ノズル118,124の交換前後におけるそれらの位置ズレ量に対する工程能力指数CpKが安定度指標値としてそれぞれ算出され、それら工程能力指数CpKが比較されて、監視対象部位の各々に対する品質低下の有無が判断される。また、部品装着機30からの動作依拠取得データのうち、監視対象部位となる部品の部品カメラ108による撮像データに基づいて取得されたその部品の吸着ノズル118,124の軸線に対するズレ、つまり、吸着ノズル118,124によるその部品の吸着保持位置のズレ量も、対照用データとして用いられ、監視対象部位の各々についての吸着ノズル118,124の交換前後におけるそれらの位置ズレ量に対する工程能力指数CpKが安定度指標値としてそれぞれ算出され、それら工程能力指数CpKが比較されて、監視対象部位の各々に対する品質低下の有無が判断される。さらに、動作依拠取得データのうち、監視対象部位となる部品が部品フィーダ106から吸着ノズル118,124によって取り出される際の吸着保持ミスの回数も対照用データとして用いられ、監視対象部位の各々についての吸着ノズル118,124の交換前後における吸着保持ミス率(厳密には、吸着保持成功率である)が安定度指標値としてそれぞれ算出され、それら吸着保持ミス率が比較されて、監視対象部位の各々に対する品質低下の有無が判断される。いずれかの監視対象部位において品質の低下が発生していると判断された場合、第1順位の改善処置として、ノズルクリーナ128を利用した吸着ノズル118,124の自動クリーングが、第2順位の改善処置として、オペレータによるノズルの曲がりの修正が、第3順位の改善処置として、吸着ノズル118,124の再交換が、決定される。
ii)部品装着機における部品ロットの変更
部品装着機30においてスプライシング若しくは部品フィーダ106の交換等によって部品を補給した場合、ロットの変更が発生する。部品ロットの変更は、部品装着作業の作業品質、詳しくは、その部品の装着精度に影響を与える作業条件変動である。部品のロットの変更があった場合、作業機関連情報である上記作業実績情報として、部品IDが採用され、その部品IDが、前回作業基板と今回作業基板とで異なることによって認識される。部品のロットの変更が認識された場合、変更されたロットの部品が、影響部位として特定される。そして、監視対象部位として、影響部位として特定された部品のすべてが認定される。装着作業結果検査機34からの検査データのうち、部品ロットの変更前に部品装着作業が行われた基板における監視対象部位についての装着位置の位置ズレ量および変更後に部品装着作業が行われた基板における監視対象部位についての装着位置の位置ズレ量が対照用データとして用いられ、監視対象部位の各々についての部品ロット変更前後におけるそれらの位置ズレ量に対する工程能力指数CpKが安定度指標値としてそれぞれ算出され、それら工程能力指数CpKが比較されて、監視対象部位の各々に対する品質低下の有無が判断される。また、部品装着機30からの動作依拠取得データのうち、監視対象部位となる部品の部品カメラ108による撮像データに基づいて取得されたその部品の吸着ノズル118,124の軸線に対するズレ、つまり、吸着ノズル118,124によるその部品の吸着保持位置のズレ量も、対照用データとして用いられ、監視対象部位の各々についての部品ロット変更前後におけるそれらの位置ズレ量に対する工程能力指数CpKが安定度指標値としてそれぞれ算出され、それら工程能力指数CpKが比較されて、監視対象部位の各々に対する品質低下の有無が判断される。さらに、動作依拠取得データのうち、監視対象部位となる部品が部品フィーダ106から吸着ノズル118,124によって取り出される際の吸着保持ミスの回数も対照用データとして用いられ、監視対象部位の各々についての部品ロット変更前後における吸着保持ミス率(厳密には、吸着保持成功率である)が安定度指標値としてそれぞれ算出され、それら吸着保持ミス率が比較されて、監視対象部位の各々に対する品質低下の有無が判断される。また、いずれかの監視対象部位において品質の低下が発生していると判断された場合、部品フィーダ106ごと部品を交換したことによって部品のロットが変更されたときには、まず、部品フィーダ106だけを、さらに別の部品フィーダ106に交換する処置が、その処置でも改善が見られないときには、続いて、部品をさらに別のロットの部品に交換する処置が、順次、改善処置として決定され、通知される。一方、スプライシング等によって部品だけを交換したことによって部品のロットが変更されたときには、部品をさらに別のロットの部品に交換する処置が、唯一の改善処置として決定され、通知される。
iii)はんだ印刷機におけるスクリーンのクリーニング
はんだ印刷機24におけるスクリーン56は、はんだランドの擦れ,はみ出し,突起等を防止するための有効な手段であり、はんだ印刷機24では、定期的に自動でドライクリーニングが行われる。この定期的なドライクリーニングは、はんだ印刷作業における作業条件変動となる。定期的なドライクリーニングが実施された場合、作業機関連情報である上記処置情報として、そのクリーニングが実施された事実がはんだ印刷機24から支援装置10に送られ、支援装置10は、そのクリーニングの実施を、作業条件変動と認識する。ドライクリーニングの場合、印刷されるすべてのはんだランドが影響部位として特定され、監視対象部位として、最も面積の小さなはんだランド,最も面積の大きなはんだランド,最も近接した2つのはんだランド,X方向Y方向のそれぞれにおける基板の両端の各々に最も近いはんだランド,基板の最も中央に位置するはんだランドが、認定される。監視対象部位の各々におけるドライクリーニング前の面積変動量,体積変動量のそれぞれについての工程能力指数CpKおよびドライクリーニング前の面積変動量,体積変動量についての工程能力指数CpKが安定度指標値として算出され、各監視対象部位についてのそれらが比較されて、作業品質の低下が判断される。品質の低下があった場合には、第1順位の改善処置として、ウェットクリーニングが、第2順位の改善処置として、バキュームクリーニングが決定される。
iv)その他の作業条件変動
上記3つの具体例以外に、種々の作業条件変動が存在している。そのいくつかについて列挙すれば、はんだ印刷機24に関しては、例えば、基板のロット変更,スキージの交換,クリームはんだの追加供給,スキージの移動速度の変更,機内の設定温度の変更等が、部品装着機30に関しては、例えば、装着ヘッド110,122の交換,装着モジュール46の交換,基板のロットの変更,装着位置等に関する装着プログラムの変更等が、また、リフロー炉に関しては、例えば、炉内の温度プロファイルの変更,基板搬送速度の変更等が、それぞれ、作業条件変動に該当する。本装着装置10は、用いる基板関連情報を適切に選択することにより、種々の作業条件変動を認定可能とされている。対照用データも、作業条件変動に応じた適切なものを選択可能であり、また、影響部位の特定,監視対象部位の認定の規則,安定度指標値,対処処置等も、任意に設定可能とされている。すなわち、本装着装置10は、幅広い種類の作業条件変動に容易に対処可能とされているのである。
10:電気回路製造支援装置 20:電気回路製造ライン 24:はんだ印刷機 26:印刷作業結果検査機 30:部品装着機 34:装着作業結果検査機 36:リフロー炉 38:最終検査機 42:装着モジュール 46:ラインコントローラ 56:スクリーン 60:スキージ装置 62:クリーニング装置 106:部品フィーダ 〔部品供給装置〕 110:装着ヘッド 118:吸着ノズル〔部品保持デバイス〕 122:装着ヘッド 124:吸着ノズル〔部品保持デバイス〕 126:ノズルストッカ 128:ノズルクリーナ 152:情報・データ入手部 154:条件変動認識部 156:監視対象部位認定部 158:対象部位品質判断部 160:改善処置決定部 162:情報・処置通知部 164:情報・データ格納部

Claims (5)

  1. 電気回路を構成する回路基板に対する作業である対基板作業を実行する対基板作業機を備えた電気回路製造ラインによる電気回路の製造を支援するための電気回路製造支援装置であって、
    対基板作業において前記対基板作業機が行った動作と前記対基板作業機に対して行われた処置との少なくとも一方に関する情報を含む作業機関連情報に基づいて、対基板作業における作業条件の変動である作業条件変動を認識する条件変動認識部と、
    その認識された作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある作業部位を特定し、その特定された作業部位の少なくとも1つを、監視対象部位として認定する監視対象部位認定部と、
    前記対基板作業機の動作に依拠して取得された動作依拠取得データと、前記対基板作業機による対基板作業の作業結果を検査する検査機による検査データとの少なくとも一方を含む対照用データの、前記認識された作業条件変動の発生前に対基板作業が実行された回路基板についてのものと、その作業条件変動の発生後に対基板作業が実行された回路基板についてのものとを対照して、前記監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行う対象部位品質判断部と
    を備え
    前記対象部位品質判断部が、前記監視対象部位に対する対基板作業とその監視対象部位の作業結果との少なくとも一方についての前記認識された作業条件変動の発生前における安定度と発生後における安定度とを比較して、その監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行うように構成された電気回路製造支援装置。
  2. 電気回路を構成する回路基板に対する作業である対基板作業を実行する対基板作業機を備えた電気回路製造ラインによる電気回路の製造を支援するための電気回路製造支援装置であって、
    対基板作業において前記対基板作業機が行った動作と前記対基板作業機に対して行われた処置との少なくとも一方に関する情報を含む作業機関連情報に基づいて、対基板作業における作業条件の変動である作業条件変動を認識する条件変動認識部と、
    その認識された作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある作業部位を特定し、その特定された作業部位の少なくとも1つを、監視対象部位として認定する監視対象部位認定部と、
    前記対基板作業機の動作に依拠して取得された動作依拠取得データと、前記対基板作業機による対基板作業の作業結果を検査する検査機による検査データとの少なくとも一方を含む対照用データの、前記認識された作業条件変動の発生前に対基板作業が実行された回路基板についてのものと、その作業条件変動の発生後に対基板作業が実行された回路基板についてのものとを対照して、前記監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行う対象部位品質判断部と、
    その対象部位品質判断部が、前記監視対象部位の作業品質の低下の程度が設定程度を超えていると判断した場合に、その監視対象部位の作業品質を改善するための改善処置を決定する改善処置決定部と、
    その改善処置決定部によって決定された改善処置を、前記対基板作業機と前記電気回路製造ラインのオペレータとの少なくとも一方に通知する処置通知部と
    を備え、
    前記改善処置決定部が、前記決定された改善処置が前記対基板作業機に対して施されたにも拘わらず前記監視対象部位の作業品質の改善が見られないときには、施された改善処置とは別の改善処置を決定するように構成され、
    前記処置通知部が、その別の改善処置を前記対基板作業機と前記電気回路製造ラインのオペレータとの少なくとも一方に通知するように構成された電気回路製造支援装置。
  3. 前記監視対象部位認定部が、作業条件変動の作業品質への影響の現れ易さを考慮して設定された規則に基づき、前記特定された作業部位のいくつかのものを、前記監視対象部位として認定するように構成された請求項1または請求項2に記載の電気回路製造支援装置。
  4. 電気回路を構成する回路基板に対する作業である対基板作業を実行する対基板作業機を備えた電気回路製造ラインによる電気回路の製造を支援するための電気回路製造支援方法であって、
    対基板作業において前記対基板作業機が行った動作と前記対基板作業機に対して行われた処置との少なくとも一方に関する情報を含む作業機関連情報に基づいて、対基板作業における作業条件の変動である作業条件変動を認識する条件変動認識ステップと、
    その認識された作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある作業部位を特定し、その特定された作業部位の少なくとも1つを、監視対象部位として認定する監視対象部位認定ステップと、
    前記対基板作業機の動作に依拠して取得された動作依拠取得データと、前記対基板作業機による対基板作業の作業結果を検査する検査機による検査データとの少なくとも一方を含む対照用データの、前記認識された作業条件変動の発生前に対基板作業が実行された回路基板についてのものと、その作業条件変動の発生後に対基板作業が実行された回路基板についてのものとを対照して、前記監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行う対象部位品質判断ステップと
    を含み、
    前記対象部位品質判断ステップにおいて、前記監視対象部位に対する対基板作業とその監視対象部位の作業結果との少なくとも一方についての前記認識された作業条件変動の発生前における安定度と発生後における安定度とを比較して、その監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行う電気回路製造支援方法。
  5. 電気回路を構成する回路基板に対する作業である対基板作業を実行する対基板作業機を備えた電気回路製造ラインによる電気回路の製造を支援するための電気回路製造支援方法であって、
    対基板作業において前記対基板作業機が行った動作と前記対基板作業機に対して行われた処置との少なくとも一方に関する情報を含む作業機関連情報に基づいて、対基板作業における作業条件の変動である作業条件変動を認識する条件変動認識ステップと、
    その認識された作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある作業部位を特定し、その特定された作業部位の少なくとも1つを、監視対象部位として認定する監視対象部位認定ステップと、
    前記対基板作業機の動作に依拠して取得された動作依拠取得データと、前記対基板作業機による対基板作業の作業結果を検査する検査機による検査データとの少なくとも一方を含む対照用データの、前記認識された作業条件変動の発生前に対基板作業が実行された回路基板についてのものと、その作業条件変動の発生後に対基板作業が実行された回路基板についてのものとを対照して、前記監視対象部位の作業品質の変化に関する判断を行う対象部位品質判断ステップと、
    その対象部位品質判断ステップにおいて、前記監視対象部位の作業品質の低下の程度が設定程度を超えていると判断した場合に、その監視対象部位の作業品質を改善するための改善処置を決定する改善処置決定ステップと、
    その改善処置決定ステップにおいて決定された改善処置を、前記対基板作業機と前記電気回路製造ラインのオペレータとの少なくとも一方に通知する処置通知ステップと
    を含み、
    前記改善処置決定ステップにおいて、前記決定された改善処置が前記対基板作業機に対して施されたにも拘わらず前記監視対象部位の作業品質の改善が見られないときには、施された改善処置とは別の改善処置を決定し、
    前記処置通知ステップにおいて、その別の改善処置を前記対基板作業機と前記電気回路製造ラインのオペレータとの少なくとも一方に通知する電気回路製造支援方法。
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