JP5781258B2 - 摩擦撹拌接合法の施工性およびめっき密着性に優れた高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents
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「低合金構造用鋼であって、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が200℃以上であることを特徴とする、摩擦撹拌接合用の低合金構造用鋼。」
からなる摩擦撹拌接合における施工性の改善技術を提案した。
これにより、ツールの損耗、破損による交換作業の頻度は抑えられるものの、接合時間が長くなるので直接的に施工能率の改善にはつながらなかった。すなわち、施工性の改善は得られなかった。
「鋼組成が、質量%で
C:0.05〜0.40%、
Si:4.0%以下、
Mn:0.5〜3.0%および
Al:4.0%以下
を含有し、かつ(Si+Al)≧0.5%を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、初析フェライト主相中に第2相として5%以上の残留オーステナイトを有し、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が200℃以上であること」
からなる摩擦撹拌接合法の施工性に優れた高強度高延性熱延鋼板を提案した。
すなわち、本発明は、上掲特願2007−95357号明細書に開示の技術を溶融亜鉛めっき鋼板に適用して、高強度高延性はいうまでもなく、摩擦撹拌接合法を適用した場合における優れた施工性およびめっき密着性を達成したものである。
1.鋼組成が、質量%で
C:0.23〜0.40%、
Si:0.01%以下、
Mn:1.94〜3.0%および
Al:4.0%以下
を含有し、かつ(Si+Al)≧0.5%を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなり、面積率で60%以上を占める初析フェライト主相中に、体積率で28%以上の残留オーステナイトを含む第2相を有し、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が200℃以上であることを特徴とする、摩擦撹拌接合法の施工性およびめっき密着性に優れた高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板。
また、これによりツールの損耗、破損による交換作業の頻度が抑えられ、接合時間が短縮されるので、施工能率が向上する。
さらに、めっき密着性を損なわない合金成分とすることでめっき密着性を向上させ、かつ初析フェライト主相中に第2相として適量の残留オーステナイトを存在させた組織とすることで、TRIP効果を獲得し、自動車用鋼板の用途に好適な延性を有する高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
従来の溶接構造用鋼、例えば低合金溶接構造用鋼は、平衡状態において、730℃付近のA1点でオーステナイト相とフェライト相の2相となり、900℃付近のA3点から1450℃付近のA4点までオーステナイト単相となる。なお、A1、A3、A4点の温度は合金量により幾分変動する。
ここに、判断すべき平衡状態の基底温度を600℃としたのは、鉄鋼を摩擦撹拌接合した時、接合部の温度は概ね600℃以上になるためである。
その理由として、これらのフェライト安定化元素は、Feと各々の元素の状態図において、γループを形成することが挙げられる。
なお、同図に見られるようにAlのようなフェライト安定化元素を添加することにより形成される閉塞したオーステナイト単相領域をγループと呼ぶ。また、Alの他、Siなどのフェライト安定化元素も同様の傾向を持つことが知られている。
得られた結果を図2に示す。
それ故、本発明では、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計について、200℃以上と規定したのである。
その結果、以下に述べる好適成分組成範囲を見出したのである。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.23〜0.40%
Cは、鋼の強化に有効に寄与するだけでなく、残留オーステナイトを得る上でも有効な元素である。一方で、Cは、オーステナイト安定化元素であるため、過度の添加は600℃以上の平衡状態においてオーステナイト単相領域の拡大を招き、フェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を小さくする。ここに、C含有量が0.23%未満では、鋼中に残留オーステナイトを得る上での効果に乏しく、一方0.40%を超えると600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を小さくするため、C量は0.23〜0.40%の範囲に限定した。
Siは、γループを形成するフェライト安定化元素であり、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を大きくするために重要な元素である。また、残留オーステナイトの生成に不可欠な元素でもある。しかしながら、含有量が0.01%を超えると、鋼板の表層に酸化物として濃化し、溶融亜鉛との濡れ性が劣化して亜鉛めっき密着性が阻害されることから、Si量は0.01%以下に限定した。
Mnは、鋼の強化元素として有用なだけでなく、残留オーステナイトを得る上でも有効な元素である。一方で、オーステナイト安定化元素であるため、過度に添加は600℃以上の平衡状態においてオーステナイト単相領域の拡大を招き、フェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を小さくする。ここに、Mn含有量が1.94%未満では鋼中に残留オーステナイトを得る上での効果に乏しく、一方3.0%を超えると600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を小さくするため、Mn量は1.94〜3.0%の範囲に限定した。
Alは、Siと同じく、γループを形成するフェライト安定化元素であり、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を大きくするために重要な元素であり、残留オーステナイトの生成に不可欠な元素でもある。しかしながら、含有量が4.0%を超えると上記の効果が飽和する上、延性の低下を招くので、Al量は4.0%以下に限定した。
上記のとおり、Si,Alはいずれも、γループを形成するフェライト安定化元素であり、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を大きくするために重要な元素である。また、残留オーステナイトの生成にも不可欠な元素でもある。しかしながら、SiとAlの合計量が0.5%未満では上記した2つの効果への寄与が乏しいため、SiとAlは合計で0.5%以上含有させるものとした。
なお、特に好ましい範囲は、(Si+Al):1.0〜3.0%の範囲である。
すなわち、初析フェライト主相中に、第2相として、体積率で28%以上の残留オーステナイトを存在させることである。
ここに、主相とは、鋼組織全体の面積率で60%以上の初析フェライトを意味する。また、第2相とは、針状フェライト、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイト等からなるものであるが、本発明では、鋼全体の体積率で、28%以上の残留オーステナイトを存在させることが重要である。
本発明において、鋼板の延性を向上させるためには、残留オーステナイトを生じさせることが必要で、そのためにはオーステナイトがCの濃化等により、安定化されることが望まれる。
そして、仕上げ圧延を980〜750℃の温度域で行うことにより、組織を微細化し、延性の向上に有利なフェライトを生成させ、かつオーステナイト中へCの濃化を促進させ、オーステナイトの残留に寄与せしめる。このとき、仕上げ圧延温度が980℃を超えると組織が粗大となり、フェライト変態の遅延に起因して延性を阻害される。一方、750℃より低い温度では、フェライトの加工組織が残存し、延性が害される。従って、仕上げ圧延は980〜750℃の温度範囲で終了する必要がある。
上記した800〜600℃の温度域は、フェライト変態が最も迅速に進行する温度範囲なので、1〜40秒間の等温保持処理または除冷処理を施すことはフェライトの生成を助長すると共に、未変態のオーステナイト中にCを濃化させ、オーステナイトの安定化を図る上で効果的である。
その後、仕上げ焼鈍を施すが、この焼鈍条件についても特に制限はなく、従来から公知の条件で行えば良い。好ましくは、700〜850℃、30〜180秒である。
すなわち、好ましくは連続溶融亜鉛めっきラインにて仕上げ焼鈍を施した後、450〜480℃に保持した溶融亜鉛めっき浴に導いて、溶融亜鉛めっき鋼板とする。その後、さらに合金化処理を施して、いわゆる合金化溶融亜鉛めっき鋼板としてもよいのはいうまでもない。
表1に示す種々の成分組成になる鋼スラブを、1200℃に加熱後、仕上げ温度:600℃の条件で熱間圧延して板厚:3.2mmの熱延板とし、ついで酸洗後、冷間圧延により板厚:1.6mmの冷延板とした。その後、連続溶融亜鉛めっきラインにて825℃,1分間の加熱保持後、10℃/sの冷却速度で460℃の溶融亜鉛めっき浴に導いてめっき鋼板としたのち、調質圧延を施して、目付量(片面):60 g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。なお、一部については、さらに500℃,30秒間の合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした。
また、同じく鋼板の幅方向1/4位置よりJIS 5号引張試験片を採取し、ひずみ速度:2×10-2/sの条件で引張試験を行い、機械的性質を調査した。
さらに、めっき密着性を評価するために、ドロービード試験を行い、めっき剥離量を測定した。なお、このめっき剥離量が5g/m2以下であればめっき密着性に優れているといえる。
得られた結果をまとめて表2に示す。
接合条件を表3に示す。 表3に示すツール前進角度は、図3に示すとおりである。
図5に、前記X,Y,Z荷重の方向を図示する。
表4に各鋼板の接合時に得られた荷重値を示す。
なお、表5に示すTRIP効果については、所定量の残留オーステナイトを含み、TS×Elが17000MPa・%以上の場合を良好(○)、一方、残留オーステナイトが所定量を満足しないか、TS×Elが17000MPa・%に満たない場合は不良(×)とした。
また、めっき密着性については、ドロービード試験でのめっき剥離量が5g/m2以下であれば良好(○)、一方5g/m2超であれば不良(×)とした。
さらに、FSW施工性については、X荷重が2.8 kN以下、Y荷重が1.1 kN以下、Z荷重が20.0 kN以下の場合を良好(○)、X荷重が2.8 kN、Y荷重が1.1 kN、Z荷重が20.0 kNのいずれかを超えた場合を不良(×)とした。
これに対し、表1に示すスラブの成分組成が本発明の要件を満たさない比較例はいずれも、TRIP効果、めっき密着性およびFSW施工性の少なくともいずれかが不良であった。
Claims (1)
- 鋼組成が、質量%で
C:0.23〜0.40%、
Si:0.01%以下、
Mn:1.94〜3.0%および
Al:4.0%以下
を含有し、かつ(Si+Al)≧0.5%を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなり、面積率で60%以上を占める初析フェライト主相中に、体積率で28%以上の残留オーステナイトを含む第2相を有し、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が200℃以上であることを特徴とする、摩擦撹拌接合法の施工性およびめっき密着性に優れた高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板。
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