JP5781258B2 - 摩擦撹拌接合法の施工性およびめっき密着性に優れた高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

摩擦撹拌接合法の施工性およびめっき密着性に優れた高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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本発明は、摩擦撹拌接合法の施工性およびめっき密着性に優れた高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板に関し、とくに自動車用鋼板の用途に供して好適な溶融亜鉛めっき鋼板に対して、良好な延性と高強度を付与するだけでなく、該鋼板を摩擦撹拌接合法を適用した場合における施工性およびめっき密着性の有利な向上を図ろうとするものである。
摩擦撹拌接合法として、特許文献1に、加工物より実質的に硬い材質からなるツールを用い、このツールを加工物の接合部に挿入し、該ツールを回転させながら移動させることにより、該ツールと加工物との間に生じる熱と塑性流動により摩擦撹拌領域を形成し、加工物を長手方向に連続して接合する方法が提案されている。この特許文献1に開示の接合法は、摩擦溶接法、摩擦接合法、摩擦撹拌溶接法、摩擦撹拌接合法などと呼称されるが、本明細書ではこれらを総称して摩擦撹拌接合法と呼ぶものとする。
また、特許文献2には、ツールを回転させながら重ねられた被接合物の所定の接合点にツールのピン部を押し付け、摩擦熱でピン周囲の被接合物を加熱、軟化させてピンを挿入し、回転するピンで接合点付近の被接合物を撹拌し、被接合物を接合点で一体化させた後、移動用モータで接合ツールを軸線に沿って引き抜くことによって、被接合物を接合点でスポット接合することを特徴とした接合方法が開示されている。本明細書ではこの接合法を、摩擦撹拌点接合法と呼ぶものとする。この摩擦撹拌点接合法においても、摩擦撹拌接合法と同様に、回転ツールのピン部と被接合物の間で生じる摩擦熱と塑性流動により摩擦撹拌領域を形成して接合を完成するため、接合現象において共通点が多い。
特許文献1に開示の摩擦撹拌接合法は、接合部材を固定した状態で、ツールを回転させながら移動することにより接合することができる。このため、溶接方向に対して実質的に無限に長い部材についてもその長手方向に連続的に固相接合できるという利点がある。また、回転ツールと接合部材との摩擦熱による金属の塑性流動を利用した固相接合であるため、接合部を溶融することなく接合できるという利点がある。さらに、加熱温度が低いため、接合後の変形が少ないだけでなく、接合部が溶融されないため、欠陥が少ないなど、多くの利点がある。
上記した摩擦撹拌接合法や摩擦撹拌点接合法は、アルミニウム合金に代表される低融点金属材料の接合法として、航空機、船舶、鉄道車輌および自動車等の分野で利用が広がってきている。その理由は、これらの低融点金属材料は、従来のアーク溶接法もしくは抵抗スポット溶接法では接合部で満足な特性を得ることがコスト、能率面で難しいのに対し、摩擦撹拌接合法や摩擦撹拌点接合を適用した場合には、生産性が向上すると共に品質の高い接合部を得ることができるためである。
一方、摩擦撹拌接合法や摩擦撹拌点接合法の、建築物、船舶、重機、パイプラインおよび自動車といった構造物の素材として主に適用されている鋼材への適用は、以下の理由により、低融点金属材料と比較して普及が進んでいない。
すなわち、摩擦撹拌接合法や摩擦撹拌点接合法においては、回転ツールの材質が加工物より実質的に硬いことが原則であるが、回転ツールの素材として、低融点金属材料の接合の場合には安価な工具鋼を用いることができるのに対し、鋼材の接合の場合には特許文献3および特許文献4に開示されているように、多結晶硼素窒化物(PCBN)や多結晶ダイヤモンドなどの高耐摩耗性材料を用いているのが現状であり、かかる高耐磨耗性の生産技術およびコストが摩擦撹拌接合法や摩擦撹拌点接合法の普及に対し大きな影響を与えるからである。
さらに、この高耐磨耗性材料を素材とした回転ツールにかかる負荷が過大となるため、接合可能板厚や接合速度など能率にかかわる接合条件が大きく制限され、またツールの損耗、破損による交換作業により施工能率も良好ではない。
接合法としては、接合条件に制約が少ないほど、また施工能率が高いほど実用において好ましく、これらの実用に供し易さを総じて以下施工性と表現するが、摩擦撹拌接合法や摩擦撹拌点接合法の鋼材に対する施工性は、鋼材の接合に広く利用されているアーク溶接もしくは抵抗スポット溶接法に比較すると十分ではないのが現状である。
上記の問題を解決するものとして、発明者らは先に、特許文献5において、
「低合金構造用鋼であって、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が200℃以上であることを特徴とする、摩擦撹拌接合用の低合金構造用鋼。」
からなる摩擦撹拌接合における施工性の改善技術を提案した。
摩擦撹拌接合とは、前述したとおり、加工物より硬い材質からなる回転ツールを、加工物の接合部に挿入し回転させながら移動させ、該回転ツールとの摩擦熱による軟化とその軟化部を回転ツールが撹拌することにより生じる塑性流動を利用する接合法であるが、この接合法において、回転ツールの耐久性は、接合部の到達温度における回転ツールの硬さ、耐摩耗性と加工物の変形抵抗との相対的な関係により決まる。
摩擦撹拌接合法や摩擦撹拌点接合法により低合金溶接構造用鋼を摩擦撹拌接合する場合、接合部の到達温度は900℃以上となるが、前掲特許文献3,4に開示の高耐磨耗性材料を素材とする回転ツールを用いて接合を行う場合、接合部の到達温度域において、回転ツールの硬さ、耐摩耗性に対して低合金溶接構造用鋼の変形抵抗が過大となり易いため、接合速度や鋼板の厚さなどの接合条件を制限して回転ツールの耐久性を確保する必要があった。
これにより、ツールの損耗、破損による交換作業の頻度は抑えられるものの、接合時間が長くなるので直接的に施工能率の改善にはつながらなかった。すなわち、施工性の改善は得られなかった。
特許文献5に開示の発明は、上記の問題を有利に解決するもので、低合金構造用鋼について、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が200℃以上とすることにより、900℃以上という接合部の到達温度域においても、回転ツールの硬さや耐摩耗性に対する鋼材の変形抵抗を効果的に低減して、摩擦撹拌接合を実施する場合の接合条件を緩和し、もって施工性を格段に向上させることができる。
一方、自動車用鋼板として、加工性に富む高強度熱延鋼板が、従来から種々研究が進められている。例えば、特許文献6〜9には、残留オーステナイトを5%以上含み、残部は初析フェライト主体の組織を有するTransformation Induced Plasticity鋼(以下、TRIP鋼という)が開示されているが、施工性に優れた摩擦撹拌接合用の自動車用鋼板については、ほとんど研究がなされていない。
すなわち、特許文献6〜9には、自動車用鋼板としての用途に好適な延性を有する高強度熱延鋼板が開示されているが、これら特許文献6〜9では、本発明で対象とする摩擦撹拌接合法や摩擦撹拌点接合法への適用に対しては何ら考慮が払われていなかった。
そこで、発明者らは、上記の問題を解決するものとして、特願2007−95357号明細書において
「鋼組成が、質量%で
C:0.05〜0.40%、
Si:4.0%以下、
Mn:0.5〜3.0%および
Al:4.0%以下
を含有し、かつ(Si+Al)≧0.5%を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、初析フェライト主相中に第2相として5%以上の残留オーステナイトを有し、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が200℃以上であること」
からなる摩擦撹拌接合法の施工性に優れた高強度高延性熱延鋼板を提案した。
特表平7−505090号公報 特許第3429475号公報 特表2003−532542号公報 特表2003−532543号公報 特開2008−31494号公報 特開昭63-4017号公報 特許第2559272号公報 特許第3412157号公報 特許第3400351号公報
本発明は、上掲した特願2007−95357号明細書に開示の技術の改良に係るもので、上記した高強度高延性熱延鋼板を溶融亜鉛めっき鋼板の用途に効果的に適合させたものである。
すなわち、本発明は、上掲特願2007−95357号明細書に開示の技術を溶融亜鉛めっき鋼板に適用して、高強度高延性はいうまでもなく、摩擦撹拌接合法を適用した場合における優れた施工性およびめっき密着性を達成したものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.鋼組成が、質量%で
C:0.23〜0.40%、
Si:0.01%以下、
Mn:1.94〜3.0%および
Al:4.0%以下
を含有し、かつ(Si+Al)≧0.5%を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなり、面積率で60%以上を占める初析フェライト主相中に、体積率で28%以上の残留オーステナイトを含む第2相を有し、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が200℃以上であることを特徴とする、摩擦撹拌接合法の施工性およびめっき密着性に優れた高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板。
本発明に従い、接合部の到達温度付近における、フェライト単相域およびオーステナイト−フェライト2相域を拡大することにより、摩擦撹拌接合における鋼材の変形抵抗が大幅に低減し、その結果、回転ツールの耐久性が向上し、接合速度などの接合条件の制限が緩和される。
また、これによりツールの損耗、破損による交換作業の頻度が抑えられ、接合時間が短縮されるので、施工能率が向上する。
さらに、めっき密着性を損なわない合金成分とすることでめっき密着性を向上させ、かつ初析フェライト主相中に第2相として適量の残留オーステナイトを存在させた組織とすることで、TRIP効果を獲得し、自動車用鋼板の用途に好適な延性を有する高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
従来の溶接構造用鋼、例えば低合金溶接構造用鋼は、平衡状態において、730℃付近のA1点でオーステナイト相とフェライト相の2相となり、900℃付近のA3点から1450℃付近のA4点までオーステナイト単相となる。なお、A1、A3、A4点の温度は合金量により幾分変動する。
さて、オーステナイト相は結晶構造が面心立方格子であり、転位のすべり方向<110>、すべり面{111}の組み合わせから12のすべり系が存在する。これに対し、体心立方格子のフェライト相は、すべり方向<111>、すべり面{110},{112},{123}より48のすべり系が存在する。よって、フェライト相はオーステナイト相と比較してすべり系が多い分、塑性変形時に転位がすべる過程において転位同士の干渉が少ない。すなわち、加工硬化が少ないため、摩擦撹拌接合時における変形抵抗が低くなる。
従って、接合部の到達温度付近におけるオーステナイト相に対するフェライト相の比率が高いほど摩擦撹拌接合時における変形抵抗を低くすることができ、特に600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が大きくなるように成分調整を行うことにより、目標とする鋼材が得られることが判明した。特に、フェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が200℃以上でその効果は顕著であった。
ここに、判断すべき平衡状態の基底温度を600℃としたのは、鉄鋼を摩擦撹拌接合した時、接合部の温度は概ね600℃以上になるためである。
さて、600℃以上の平衡状態において、フェライト単相となる温度域幅とオーステナイト−フェライト2相となる温度域幅を拡張するには、Si,Alなどのフェライト安定化元素を添加することが有効であると考えられる。
その理由として、これらのフェライト安定化元素は、Feと各々の元素の状態図において、γループを形成することが挙げられる。
例えば、図1は、質量%でC:0.1%、Mn:1.5%を含有する系のFe−Al平衡状態図であるが、Al量が増加するに従ってオーステナイト(図中γで示す)単相領域が縮小していき、Al量が1.2%以上になるとオーステナイト単相領域は認められなくなる。
なお、同図に見られるようにAlのようなフェライト安定化元素を添加することにより形成される閉塞したオーステナイト単相領域をγループと呼ぶ。また、Alの他、Siなどのフェライト安定化元素も同様の傾向を持つことが知られている。
そこで、発明者らは、質量%で、Fe−0.11%C−1.5%Mn−0.013%P−0.002%Sを基本組成とし、上記した各種フェライト安定化元素を種々の割合で含有させた場合における、フェライト単相およびオーステナイト−フェライト2相となる温度域幅の合計温度域幅について調査すると共に、この合計温度域幅の大きさと上記鋼材の900℃における引張強度について調査した。
得られた結果を図2に示す。
同図に示したとおり、フェライト単相となる温度域幅とオーステナイト−フェライト2相となる温度域幅の合計温度域幅が上昇するに従って鋼材の引張強度は低下する。この傾向は、フェライト単相となる温度域幅とオーステナイト−フェライト2相となる温度域幅の合計温度域幅が200℃以上になると顕著である。
それ故、本発明では、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計について、200℃以上と規定したのである。
以上、述べたとおり、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を200℃以上とすることによって、鋼材の引張強度すなわち変形抵抗が低下する。
一方、自動車用鋼板として良好な延性と高強度を確保するには、第2相として、適量の残留オーステナイトを存在させてTRIP効果を獲得することが有効であると考えられる。
そこで、次に、上述したような諸要件を達成できる成分組成について検討した。
その結果、以下に述べる好適成分組成範囲を見出したのである。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.23〜0.40%
Cは、鋼の強化に有効に寄与するだけでなく、残留オーステナイトを得る上でも有効な元素である。一方で、Cは、オーステナイト安定化元素であるため、過度の添加は600℃以上の平衡状態においてオーステナイト単相領域の拡大を招き、フェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を小さくする。ここに、C含有量が0.23%未満では、鋼中に残留オーステナイトを得る上での効果に乏しく、一方0.40%を超えると600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を小さくするため、C量は0.23〜0.40%の範囲に限定した。
Si:0.01%以下
Siは、γループを形成するフェライト安定化元素であり、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を大きくするために重要な元素である。また、残留オーステナイトの生成に不可欠な元素でもある。しかしながら、含有量が0.01%を超えると、鋼板の表層に酸化物として濃化し、溶融亜鉛との濡れ性が劣化して亜鉛めっき密着性が阻害されることから、Si量は0.01%以下に限定した。
Mn:1.94〜3.0%
Mnは、鋼の強化元素として有用なだけでなく、残留オーステナイトを得る上でも有効な元素である。一方で、オーステナイト安定化元素であるため、過度に添加は600℃以上の平衡状態においてオーステナイト単相領域の拡大を招き、フェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を小さくする。ここに、Mn含有量が1.94%未満では鋼中に残留オーステナイトを得る上での効果に乏しく、一方3.0%を超えると600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を小さくするため、Mn量は1.94〜3.0%の範囲に限定した。
Al:4.0%以下
Alは、Siと同じく、γループを形成するフェライト安定化元素であり、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を大きくするために重要な元素であり、残留オーステナイトの生成に不可欠な元素でもある。しかしながら、含有量が4.0%を超えると上記の効果が飽和する上、延性の低下を招くので、Al量は4.0%以下に限定した。
(Si+Al):0.5%以上
上記のとおり、Si,Alはいずれも、γループを形成するフェライト安定化元素であり、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計を大きくするために重要な元素である。また、残留オーステナイトの生成にも不可欠な元素でもある。しかしながら、SiとAlの合計量が0.5%未満では上記した2つの効果への寄与が乏しいため、SiとAlは合計で0.5%以上含有させるものとした。
なお、特に好ましい範囲は、(Si+Al):1.0〜3.0%の範囲である。
なお、残部はFeと不可避的不純物である。不可避的不純物として代表的なものにPやSが挙げられる。これらPやSはいずれも、中心偏析を助長する元素であるので、極力低減することが望まれる。好ましくは、Pは0.050%以下、Sは0.0050%以下に限定されるべきである。
以上、本発明の好適成分組成範囲について説明したが、本発明は、成分組成を上記の範囲に調整しただけでは不十分で、鋼組織を以下の範囲に調整することが重要である。
すなわち、初析フェライト主相中に、第2相として、体積率で28%以上の残留オーステナイトを存在させることである。
ここに、主相とは、鋼組織全体の面積率で60%以上の初析フェライトを意味する。また、第2相とは、針状フェライト、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイト等からなるものであるが、本発明では、鋼全体の体積率で、28%以上の残留オーステナイトを存在させることが重要である。
というのは、鋼全体における残留オーステナイト量が体積率で28%に満たないと十分なTRIP効果を獲得できず、高強度と高延性を両立できないからである。一方、残留オーステナイト量があまりに多くなると、変形中に残留オーステナイトがマルテンサイト変態しにくくなるため、TRIP効果が得にくくなり、高強度と高延性を両立できないという問題が生じるので、残留オーステナイト量は鋼全体の30%以下程度とすることが望ましい。
次に、本発明の製造方法について具体的に説明する。
本発明において、鋼板の延性を向上させるためには、残留オーステナイトを生じさせることが必要で、そのためにはオーステナイトがCの濃化等により、安定化されることが望まれる。
そして、仕上げ圧延を980〜750℃の温度域で行うことにより、組織を微細化し、延性の向上に有利なフェライトを生成させ、かつオーステナイト中へCの濃化を促進させ、オーステナイトの残留に寄与せしめる。このとき、仕上げ圧延温度が980℃を超えると組織が粗大となり、フェライト変態の遅延に起因して延性を阻害される。一方、750℃より低い温度では、フェライトの加工組織が残存し、延性が害される。従って、仕上げ圧延は980〜750℃の温度範囲で終了する必要がある。
上記の仕上げ圧延後、500〜300℃の巻き取り温度までの冷却速度は、オーステナイトの残留に不利となるパーライトの生成を避け、かつ組織の微細化を助長するという点から、20℃/s以上とする。
また、上記の仕上げ圧延後、20℃/s以上の冷却速度で、一旦 800〜600℃の温度域まで冷却し、1〜40秒間の等温保持処理または20℃/s以下の冷却速度での除冷処理を施したのち、500〜300℃の巻き取り温度まで20℃/s以上の冷却速度で冷却する処理としてもよい。
上記した800〜600℃の温度域は、フェライト変態が最も迅速に進行する温度範囲なので、1〜40秒間の等温保持処理または除冷処理を施すことはフェライトの生成を助長すると共に、未変態のオーステナイト中にCを濃化させ、オーステナイトの安定化を図る上で効果的である。
また、巻き取り温度が500℃超では、巻取り後にベイナイトが過度に進行するだけでなく、パーライトが生成し、5%以上の残留オーステナイトが得られなくなる。一方、300℃未満では、マルテンサイト変態が必要以上に進行し、所要の残留オーステナイトが得られなくなる。従って、巻き取り温度は500〜300℃の範囲に限定した。
ついで、酸洗後、冷間圧延を施して冷延板とする。冷延条件については特に制限はなく、従来から公知の条件で行えば良い。なお、本発明における冷延板の好適厚みは0.8〜2.6mmである。
その後、仕上げ焼鈍を施すが、この焼鈍条件についても特に制限はなく、従来から公知の条件で行えば良い。好ましくは、700〜850℃、30〜180秒である。
ついで、上記のようにして得た高強度高延性冷延鋼板に対して溶融亜鉛めっき処理を行うが、この溶融亜鉛めっき処理についても特に制限はなく、従来から公知の方法で行えば良い。
すなわち、好ましくは連続溶融亜鉛めっきラインにて仕上げ焼鈍を施した後、450〜480℃に保持した溶融亜鉛めっき浴に導いて、溶融亜鉛めっき鋼板とする。その後、さらに合金化処理を施して、いわゆる合金化溶融亜鉛めっき鋼板としてもよいのはいうまでもない。
実施例1
表1に示す種々の成分組成になる鋼スラブを、1200℃に加熱後、仕上げ温度:600℃の条件で熱間圧延して板厚:3.2mmの熱延板とし、ついで酸洗後、冷間圧延により板厚:1.6mmの冷延板とした。その後、連続溶融亜鉛めっきラインにて825℃,1分間の加熱保持後、10℃/sの冷却速度で460℃の溶融亜鉛めっき浴に導いてめっき鋼板としたのち、調質圧延を施して、目付量(片面):60 g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。なお、一部については、さらに500℃,30秒間の合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした。
かくして得られた溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む。以下、同じ。)の幅方向1/4位置より組織検査用の試験片を採取し、この試験片の厚み方向1/4位置の面でX線試験により残留オーステナイト量を測定した。
また、同じく鋼板の幅方向1/4位置よりJIS 5号引張試験片を採取し、ひずみ速度:2×10-2/sの条件で引張試験を行い、機械的性質を調査した。
さらに、めっき密着性を評価するために、ドロービード試験を行い、めっき剥離量を測定した。なお、このめっき剥離量が5g/m2以下であればめっき密着性に優れているといえる。
得られた結果をまとめて表2に示す。
Figure 0005781258
Figure 0005781258
表2に示したとおり、発明例1は、高強度・高延性と共に、良好なめっき密着性が得られている。
次に、各溶融亜鉛めっき鋼板を、同一の接合条件で摩擦撹拌接合に供した。継手突合せ面は角度をつけないいわゆるI型開先でフライス加工程度の表面状態により片面1パスで接合を行った。なお、回転ツールとしては炭化タングステン(WC)を素材としたツールを用い、接合時にはアルゴンガスにより接合部をシールドし表面の酸化を防止した。
接合条件を表3に示す。 表3に示すツール前進角度は、図3に示すとおりである。
Figure 0005781258
図4に、使用した回転ツールの形状を示す。接合時はツールにかかる荷重を測定した。回転ツールに対して接合方向と同一方向にかかる荷重をX荷重、接合方向と直角方向にかかる荷重をY荷重、ツールの軸方向と同一方向にかかる荷重をZ荷重とした。
図5に、前記X,Y,Z荷重の方向を図示する。
表4に各鋼板の接合時に得られた荷重値を示す。
Figure 0005781258
表4に示したとおり、発明例1は、X荷重が2.8 kN以下、Y荷重が1.1 kN以下、Z荷重が20.0 kN以下と低く、回転ツールにかかる荷重すなわち変形抵抗が低減されたことが分かる。
次に、表5に、摩擦撹拌接合後のTRIP効果、めっき密着性および摩擦撹拌接合時の施工性(FSW施工性)について調査した結果を示す。
なお、表5に示すTRIP効果については、所定量の残留オーステナイトを含み、TS×Elが17000MPa・%以上の場合を良好(○)、一方、残留オーステナイトが所定量を満足しないか、TS×Elが17000MPa・%に満たない場合は不良(×)とした。
また、めっき密着性については、ドロービード試験でのめっき剥離量が5g/m2以下であれば良好(○)、一方5g/m2超であれば不良(×)とした。
さらに、FSW施工性については、X荷重が2.8 kN以下、Y荷重が1.1 kN以下、Z荷重が20.0 kN以下の場合を良好(○)、X荷重が2.8 kN、Y荷重が1.1 kN、Z荷重が20.0 kNのいずれかを超えた場合を不良(×)とした。
Figure 0005781258
表5に示したように、同一接合条件で摩擦撹拌接合を行ったところ、発明例1は、TRIP効果、めっき密着性およびFSW施工性とも良好であった。
これに対し、表1に示すスラブの成分組成が本発明の要件を満たさない比較例はいずれも、TRIP効果、めっき密着性およびFSW施工性の少なくともいずれかが不良であった。
C:0.1%およびMn:1.5%を含有する系のFe−Al平衡状態図である。 フェライト単相およびオーステナイト−フェライト2相となる温度域幅の合計温度域幅と900℃における引張強度の関係を示すグラフである。 実施例における具体的な摩擦撹拌接合要領を示す模式図である。 実施例における回転ツールの寸法・形状を示す図である。 実施例における摩擦撹拌接合時に、回転ツールにかかるX,Y,Z荷重の方向を示す図である。

Claims (1)

  1. 鋼組成が、質量%で
    C:0.23〜0.40%、
    Si:0.01%以下、
    Mn:1.94〜3.0%および
    Al:4.0%以下
    を含有し、かつ(Si+Al)≧0.5%を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなり、面積率で60%以上を占める初析フェライト主相中に、体積率で28%以上の残留オーステナイトを含む第2相を有し、600℃以上の平衡状態においてフェライト単相となる温度域幅とオーステナイト相とフェライト相の2相となる温度域幅の合計が200℃以上であることを特徴とする、摩擦撹拌接合法の施工性およびめっき密着性に優れた高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板。
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