JP5776426B2 - ホログラムシート - Google Patents

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Description

本発明は、新規なホログラムシート、特に、透過型体積ホログラムの背後に、エレクトロルミネッセンス素子層を設けた発光型のホログラムシートに関するものである。
さらに、エレクトロルミネッセンス素子層の発光波長は、半値幅として、数nm〜数十nmの広がりを持つため、この範囲(すなわち、発光ピーク強度の1/2以上の強度を有する波長範囲。)を、「エレクトロルミネッセンス素子層の発光波長域」と定義する。
また、「透過型体積ホログラムの再生波長」とは、透過型体積ホログラム再生像を結像する(すなわち、像を再生する)光の波長を意味し、その透過型体積ホログラムに一義的に定まる波長である。実際には、その透過型体積ホログラムを、「物体光」と「参照光」の干渉によって記録する際のその「参照光」の波長と同一となる。
従って、「この発光波長域の中に、透過型体積ホログラムの再生波長が含まれる」とは、上記の「発光波長域」の中に、上記の「再生波長」が存在することを意味する。
また、「透明薄膜層」とは、透過型体積ホログラムを記録したり、再生したりする際の「物体光」や「参照光」に対して十分な透明性を有し、且つ、それらの光がその層内において「多重反射」現象を起こすことが可能な程度の「薄さ」を有する「層」を意味する。
そのため、その「層」の厚さは、それらの光の波長よりも小さいものとなる。
本明細書において、配合を示す「部」は質量基準である。また、「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
(主なる用途)
本発明のホログラムシートの主なる用途としては、ホログラムそのものを装飾用として用いる美術・工芸品分野や商業用分野があるが、それにとどまらず、偽造防止分野に使用されるホログラムシートであって、具体的には、クレジットカード等の偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録体であり、偽造による損害を防止する目的で、記録体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
また、これら情報記録体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
(背景技術)
従来、情報記録体や上記した種々の物品(総称して、真正性識別対象物と言う。)の偽造を防止する目的で、その構造の精密さから、製造上の困難性を有すると言われるホログラムを真正性の識別可能なものとして適用することが多く行なわれている。しかしながら、ホログラムの製造方法自体は知られており、その方法により精密な加工を施すことができることから、ホログラムが単に目視による判定だけのものであるときは、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別は困難である。
これらの真正性識別対象物、特にラベル形態や転写形態にてホログラム画像を施された物品は、ホログラム画像の目視確認という真正性識別のみでなく、新たな真正性識別方法を用いてその対象物の真正性を識別する必要が生じている。
(先行技術)
これらの要求に応えるため、ホログラムに積層して、入射した光の内、左回り偏光もしくは、右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層を有するホログラムシートが提案された。(例えば、特許文献1参照。)
この光選択反射層として、コレステリック液晶を使用し、偏光版等を用いて確認する方法で偽造防止性を高めている。
しかしながら、特許文献1の記載にあるように、ホログラム形成層上の反射性薄膜層の反射率が高いため、コレステリック液晶層で反射されず透過した光(選択的反射光の補色光)が、この反射性薄膜層で反射し、再びコレステリック液晶層へ戻る(以下戻り光とする)ことにより、この戻り光が、コレステリック液晶を観察する際のノイズ成分となって、選択的反射光に付加・混在し、液晶本来の色調とならず、視認・識別することすら難しくなっていた。
また、特許文献2の記載にあるように、ホログラムとして、その製造に高度な技術を要する体積ホログラムを用い、白色光下においても立体感のあるホログラム再生像を視認することにより、その真偽判定を行う偽造防止技術も提案されている。
このような体積ホログラムは、それ自体が透明性を有するとともに、また、波長域の広い白色光源による照明において所定の波長(単波長に近い。)の光のみを反射して、その反射光によるホログラム再生像を出現させるものである。
しかし、この体積ホログラムも、その波長選択性によって、白色光のような広い波長域に渡って光の強度を有する照明光の中から、非常に狭い波長域の光のみを干渉させ、その光の強度のみでホログラム再生像を出現させるため、そのホログラム再生像の「明るさ」が、照明光の「明るさ」の1/10以下となってしまい、ホログラム再生像を明確に視認した上で真正性判定を行うという目的には不十分であるという欠点を有していた。
特開2007−90538号公報 特開平10−97171号公報
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、透過型体積ホログラム形成層の背後にエレクトロルミネッセンス素子層を設け、そのエレクトロルミネッセンス素子層の発光により透過型体積ホログラムを「照明」し、「明るさ」の十分なホログラム再生像を出現させることで、このホログラム再生像による真正性判定を容易、且つ、確実なものとすることができるホログラムシートを提供することである。さらに、このようなホログラムシートはこれまでに存在しないため、新規な装飾性及び、これを応用する偽造防止性を提供することである。
上記の課題を解決するため本発明のホログラムシートの第1の態様は、透明基材の一方の面に、透過型体積ホログラム形成層、及び、エレクトロルミネッセンス素子層がこの順序で設けられているホログラムシートにおいて、前記透過型体積ホログラム形成層には、前記エレクトロルミネッセンス素子層の発光によって再生像が明るくなる第一のホログラムと、前記第一のホログラムとは別のホログラムであって自然光下で鑑賞可能となる第二のホログラムとが多重記録されており、前記第一のホログラムの回折効率を、前記第二のホログラムの回折効率に対して1/10から1/2としたものである。
上記第1の態様のホログラムシートによれば、前記エレクトロルミネッセンス素子層の発光波長域が、前記透過型体積ホログラム形成層に記録された透過型体積ホログラムの再生波長を含むことを特徴とするホログラムシートを提供することができ、通常照明光の下では、視認性が不十分なホログラム再生像を、所定の電界を印加することにより、鮮明、且つ、明るいホログラム再生像を視認可能とする意外性や偽造防止性に優れる、ホログラムシートを提供することができる。
本発明のホログラムシートの第の態様は、上記第1の態様のホログラムシートにおいて、前記透過型体積ホログラム形成層と、前記エレクトロルミネッセンス素子層との間に、透明薄膜層が設けられているものである。
上記第の態様のホログラムシートによれば、所定の電界の印加により、さらに鮮明なホログラム再生像を視認可能とする、偽造防止性に優れる、ホログラムシートを提供することができる。
本発明のホログラムシートは、透明基材の上に、透過型体積ホログラム形成層及びエレクトロルミネッセンス素子層をこの順序で設けたものであり、且つ、その透過型体積ホログラム形成層に、「透過型体積ホログラム」を記録したものである。
この「透過型体積ホログラム」の記録は、所定の光学的な撮影方式を用いて、直接記録することもできるが、その直接記録した透過型体積ホログラムを複製用原版として、密着露光方式により、未記録の透過型体積ホログラム形成層へ複製することにより、記録することもできる。
一般的に「体積型ホログラム」を記録する際には、「ブラッグ条件」と呼ばれる回折の条件が重要となり、この「体積ホログラム」から回折光(すなわち、体積ホログラム再生像)を得るためには、照射する読み出し光(ホログラム再生像の再生用照明光を意味する。)が、その「体積ホログラム」と「ブラッグ条件」を満足していなければならない。
読み出し光として、記録に用いた光とまったく同じ波長・入射角度・ビーム広がり角をもつ光を用いた場合には、その「ブラッグ条件」は自動的に満足される。そのため体積型ホログラムの再生には、記録に用いた「参照光」(体積ホログラムは、「物体光」と「参照光」を記録材料中で干渉させて記録される。)をそのまま用いる必要がある。
すなわち、「その記録(または、撮影ともいう。)の際に用いる『参照光』である『コヒーレントな光源』の波長と、透過型体積ホログラム形成層への入射角度、さらには、その広がり角が、その透過型体積ホログラムを再生する際の、『再生照明光』としての最適な波長、最適な入射角度、そして、最適な広がり角である」ということができ、この「最適」条件を満足することは、透過型体積ホログラムを再生したときの「再生像」が、最も明るく、且つ、最も鮮明であることを意味する。
その記録に用いられるコヒーレント光源光の半値幅は、通常1nm以下であり、この場合には、「光源光の波長」=「光源光の中心波長」と定義することができるが、エレクトロルミネッセンス素子層が発光する際の光の半値幅は、数nm〜数十nmであるから、その中心波長のみの発光でなく、上記のブラッグ条件からはずれる波長の光をも含むこととなる。
このような、エレクトロルミネッセンス素子層の発光する光は、所定の波長を中心とするある程度の幅を持つ光、すなわち、『発光波長「域」を持つ光』と位置付けられる。
この「発光波長『域』を持つ光」によって、透過型体積ホログラムを再生すると、スーパールミネッセントダイオード(「広帯域光源」であって、空間コヒーレンスがよく、かつ広い発振スペクトル幅をもつ光を放出する半導体。)でホログラム再生をするときと類似した効果が生じ、その波長『域』のうち、透過型体積ホログラムの記録に用いられた光源光の波長と異なる部分(異なる波長の光)は、単波長光による再生では再生できない再生像の微細な部分までも再生して、再生像の実在感や明るさをも向上させる。
もちろん、このような効果に寄与しない波長部分は、透過型体積ホログラムの中で回折されず、透過型体積ホログラム形成層をそのまま透過することになる。
さらには、その体積ホログラム形成層とエレクトロルミネッセンス素子層との間に、透明薄膜層を設け、この透明薄膜層に入射し透過する光のその透明薄膜層内での多重反射現象による方向選択性を活用して、エレクトロルミネッセンス素子層から発する全方位的な発散光の進行方向を制御し、その上にある体積ホログラム形成層に入射する角度を最適化して、結果として、体積ホログラム形成層に記録してある透過型ホログラムの鮮明度を高めるものである。
本発明のホログラムシートに用いられる、「透過型体積ホログラムが形成された透過型体積ホログラム形成層」は、フォトポリマーフィルム等の透明なフィルムそのものに、透過型体積ホログラムを記録した後、透明基材/エレクトロルミネッセンス素子層の積層体上にラミネート処理する方法、又は、透明基材/エレクトロルミネッセンス素子層の積層体上に、透明な樹脂をコーティングして、「透過型体積ホログラム形成層」を設けた後、その透過型体積ホログラム形成層に、直接撮影する方法や、原版を密着させた光学的複製方法により透過型体積ホログラムを記録する方法により設ける。
特に、後者の方法においては、透過型体積ホログラムを記録するための「参照光」や「物体光」がエレクトロルミネッセンス素子層を通過するため、エレクトロルミネッセンス素子層の高い透明性が必須となる。
本発明のホログラムシートに用いられる透明基材としては、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムシートを製造する際の処理や加工における、各種加工機の搬送用ガイドロールとの接触に対する耐磨耗性等が高く、それらの処理や、加工に適した耐溶剤性、耐熱性及び耐摩耗性等を有するものであって、封筒に用いる材料との適度な接着性および再剥離性を有する、透明基材を用いることが好ましい。
その加工方法にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
本発明に用いられる透過型体積ホログラムは、その透過型体積ホログラム形成層の層中に、種々の屈折率のパターンとして、そのホログラム画像を形成する(ホログラム記録ともいう。透過型体積ホログラム形成層は、ホログラム記録用媒体にホログラム画像を形成した際の記録層を意味する。)、いわゆる、位相ホログラムであって、その透過型体積透過型体積ホログラム形成層に光をあて、これを透過させるとき、光の位相は、「屈折率のパターン」により変調され、その透過光において透過型体積ホログラム再生像を観察することができる。
ホログラム画像として画像化される「物体」(一般的には、3次元物体、もしくは2次元物体が用いられる。もしくは、「物体光」を与え得るものであれば、「光学系によって創出したもの」、または、「電子的に創出したもの」であっても、別途作成したホログラムからの「ホログラム再生像」であってもよい。)は、最も単純な方法によれば、レーザー等が発振するコヒーレントな光によって照明され、そして感光性の記録用媒体が、この「物体」から反射(発散)された光を受けるように配置される。「物体」上の各点は記録媒体の全体に対して光を反射し、また記録用媒体上の各点は「物体」全体からの光を受け入れる。この反射(発散)された光束は「物体光」といわれている。
同時に、コヒーレントな光の一部は「物体」をバイパスし(「物体」を避けて通るという意味。)、反射鏡等により、記録用媒体に向けられる。この光束は「参照光」といわれている。
記録用媒体上に記録されるものは、媒体上に当たった「参照光」と「物体光」との相互作用で生ずる「干渉パターン」であり、この記録が、ホログラムとなる。
この記録用媒体、すなわち、記録されたホログラムが、照明され、適切に観察されるとき、照明光源からの光は、「物体」から記録用媒体にもともと到達した波面を再生するように、そのホログラムにより回折され、それにより、ホログラムは、観察者に対して、「物体」の虚像を、記録媒体という「窓」を通して、完全な遠近差をもつ3次元の「物体」を見たように、認識させる。
このホログラム記録及び再生の原理を以下に、説明する。
物体がコヒーレント光で照明され,物体から回折された光が記録媒体(フォトポリマー等。)を照明しているとした場合、物体から回折されて記録面に到達した波面を物体波は、
F(x,y)=A(x,y)EXP[φ(x,y)]
であらわされる。ここで、
A(x,y) は物体波の振幅分布とし、
φ(x,y) は位相分布とする。
このとき、記録媒体には、記録媒体に到達する光波の強度分布が記録される。その強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)|2=A2(x,y) (1)
となり、位相分布は記録されない。
ここで,物体波にこれと干渉性のある光波(参照波という)を重ね合わせると,記録される光波の強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)+R(x,y)|2
=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+F(x,y)R*(x,y)+F*(x,y)R(x,y) (2)
となる.(*は複素共役項を表す。)
ただし,参照光が記録面に角度θで入射する平面波であるとすれば、
R(x,y)=r(x,y)EXP(2πiαx) (3)
と書け、
α = SIN(θ)/λ (4)
である。(2)の第1項と第2項はそれぞれ、物体波の強度と参照波の強度でいずれも位相情報は欠落している。第3項と第4項は干渉の項でそれぞれ
F(x,y)R*(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[i [φ(x,y)−2παx] ] (5)
F*(x,y)R(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[−i [φ(x,y)−2παx]] (6)
とあらわされ、物体の位相項 φ(x,y) が残っている。(5)、(6)は互いに複素共役であり、(4.2)の第3項は物体の複素振幅分布を含んでいる。(5)、(6)を(2)に代入すると、
I(x,y)=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+2A(x,y)r(x,y)COS [2παx−φ(x,y)] (7)
となる.物体波と参照波が干渉して干渉縞を形成していることがわかる。
このように、物体波に参照波を重ね合わせて干渉記録し、物体の位相情報を欠落させずに記録する方法がホログラフィである。(7)を記録したものが「ホログラム」と呼ばれる。ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布I(x,y)に比例し、
T(x,y)=τI(x,y) (8)
と書けるとする。このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてると、ホログラムを透過もしくは反射してきた波面は、
T(x,y)R(x,y)=τ(|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+τF(x,y)|R(x,y)|2
+τF*(x,y)R2(x,y) (9)
と表すことが出来る.この第2項は
τF(x,y)|R(x,y)|2
τA(x,y)r2(x,y)EXP[iφ(x,y)]] (10)
第3項は、
τF*(x,y)R2(x,y)=
τA(x,y)r2(x,y)EXP[−iφ(x,y)+2πiα] (11)
と書ける。
このことから、(9)の第1項は、照明光と同じ方向にホログラムを突き抜ける光束もしくは正反射する光束であり、第2項は、(10)より、物体光に比例した振幅を持つ光波であることがわかり、第3項は、(11)より、物体波と共役な位相分布を持ち、2θの方向に伝播する光波であることがわかる。
このようにして,ホログラフィの技術を使うと複素振幅分布を記録して再生することが出来る。
本発明に用いられる透過型体積ホログラムは、「参照光」と「物体光」を同一の側から記録用媒体中に入射させ、両者がクロスしながら同一方向に進行するようにして形成したホログラムであって、形成層自体を透明なものとすることにより、その「位相分布」のみを記録として残したものである。
この場合において、記録媒体中の「物体光」と「参照光」との相互作用は、屈折率の変化する材料の屈折率変化という「フリンジ(干渉縞)」を形成するが、このフリンジは、記録用媒体の面に対して、垂直もしくはやや傾いた面となる。
この透過型体積ホログラムを再生するとき、これらの各フリンジは入射光を観察者に向けて浅い角度で反射させて透過させる「鏡」として作用し、それで、この透過型体積ホログラムは、「反射」よりもむしろ「透過」で観察される。
このように形成された「ホログラム」は、「波長感度」が甚だ高いため(波長選択性のこと。特定の波長にのみ作用するという意味。)、その再生には、「白色光」を用いることができるものである。
すなわち、ホログラムを記録した際の光源に用いた波長の光をあらかじめ準備してその光で再生しなくとも、容易に得られる、広い波長領域を持つ光(例えば、波長範囲が可視光線波長[400nm〜800nm]をカバーするような太陽光や、ハロゲンランプ光など。)を、その再生光として用いたとしても、その「ホログラム記録に用いた波長」以外の波長の光(「ホログラム記録に用いた波長」以外の波長成分という意味。)は、ほとんど位相変化を受けずそのまま透過し、「ホログラム記録に用いた波長」の光(該当する波長成分という意味。)のみ所定の角度に回折して、その光の像(該当する波長成分により作られる、透過型体積ホログラム再生像)を、視認することができる。
透過型体積ホログラムの記録方法及び、その再生方法は、図1を参照。
図1では、(1)を透過型体積ホログラムを作成する方法(その1)を示し、(2)には、透過型体積ホログラムを作成する方法(その2)を示している。そして、(3)において、透過型体積ホログラムの再生方法を示している。
透過型体積ホログラムを形成する、透過型体積ホログラム形成層には、各種の透明な材料又は、透明なフィルムが用いられる。
すなわち、銀塩写真乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト、フォトポリマー材料、無機材料からなるフォトリフラクティブ材料、フォトクロミック材料等及び、それらの材料からなるフィルムがある。
銀塩写真乳剤としては、高感度及び、高解像度が求められる。
フォトレジストには、ポジ型フォトレジストと、ネガ型フォトレジストをいずれも用い得る。
フォトポリマー材料としては、架橋型フォトポリマー、ラジカル重合型フォトポリマー、カチオン重合型フォトポリマー、化学増幅型フォトポリマー、ナノ粒子分散系フォトポリマー等を用いることができ、その取り扱い適正は、特に優れる。
フォトクロミック材料は、光や熱等の特定の環境下において、その色調が変化するため、その意匠性はさらに高いものとなる。
重クロム酸ゼラチンは、その屈折率変調の高さ(すなわち、高い回折効率、帯域幅対応性)から、「反射ホログラム」の製作に選ばれる材料である。但し、重クロム酸ゼラチンは保存性に課題があり、「反射ホログラム」形成後に、湿式処理を必要とする。このため、この材料はホログラム記録の直前に新たに調製しなければならず、あるいは、予備硬化させたゼラチンを使用しなければならず、画像の再生効率を低下させる。
湿式処理は、ホログラム形成に際し、付加的工程をもち込むことになり、そして処理中に材料が膨潤し、ついで収縮する際に寸法的な変化を生じやすい。これらの寸法的な変化はフリンジの間隔に影響する。従って、重クロム酸ゼラチンによって高品質の「反射ホログラム」を作製することは、時間がかかり、かつ、困難である。
いくつかの処理工程を必要とする、銀塩写真乳剤、或いは、重クロム酸ゼラチンに対して、1回処理工程のみを必要とする固体光重合性材料、すなわち、フォトポリマー材料は、好適である。
フォトポリマー材料の例としては、固体の光重合性組成物であって、熱可塑性重合体結合剤、付加重合可能なエチレン系不飽和単量体、及び、不飽和単量体の重合を活性化する光開始剤からなる、屈折率変調を有する光重合性組成物が挙げられる。
熱可塑性重合体結合剤は、溶媒可溶性の熱可塑性重合体であるが、単独で、又は、互に組合せて使用することができ、例えば、アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、ポリビニルエステル、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジェン及びイソプレン重合体及び共重合体、エポキシ化物、ポリアミド等、並びに、それらの混合物を使用できる。
エチレン系不飽和単量体は、単一の単量体として、又は、組合せて使用することができる単量体として、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル等を用いることができる。
光開始剤としは、遊離ラジカル発生付加重合開始剤等を使用することができる。
フォトポリマー材料としては、さらに、フッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤を有する、光重合性組成物を用いることができる。
フッ素含有ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンまたはへキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーとビニルアセテートとから作られたポリマーが挙げられる。
コヒーレント光による露光によって、このモノマーは、未露光域とは異なる屈折率とレオロジー的性質をもつ、高分子量のフォトポリマーを形成するように(光)重合する。この高分子量のフォトポリマーは実質的に固体ではあるが、各成分は電離放射線による一様、且つ、全面に渡る露光、または、高温度で熱処理することで「定着」されるまでは、コヒーレント光による露光中、および、露光後も、内部拡散をする。
このフォトポリマーは、その厚さと屈折率変調とにより決定される、所定の中心波長、及び、波長領域(分散帯域)をもつ光を反射する。そこで、その厚さは、用途、および、光学系の光学的な要請、すなわち使用中にホログラムを照明(再生)するのに用いる光の帯域幅、に対して一致させられる。一般的に狭い帯域幅用の応用には、比較的厚いフォトポリマーが選ばれ、広い帯域幅用の応用には比較的薄いフォトポリマーが選ばれる。
使用されるフッ素含有ポリマーは、フォトポリマーのその他の各成分と両立し得るフッ素含有ポリマーであり、塗布されたときに実質的に固体の透明な皮膜を作るものである。
「実質的に固体」とは塗布された皮膜が、溶剤を除去した後に、一般的に固体材料の有している諸特性(例えば寸法安定性)を有していることを意味している。
フッ素含有ポリマー中のフッ素の存在は、一般に、フォトポリマーの屈折率を低下させ、これによりホログラム画像化後のフォトポリマーにおいて、増加した(「より大きな」という意味。)屈折率変調が達成される。屈折率変調は、フッ素含有量の増加とともに増大するが、フォトポリマーに不透明化を起こさせないためには、そのフッ素の存在量は限定される。
従って、フッ素の含有量は、その効果が、1%のような低レベルにあっても達成されるものの、代表的には、10〜20%の範囲内とされる。フッ素の含有量は、用途に応じた屈折率変調を達成するために調整可能である。
フッ素は、フッ素含有ポリマーを構成する他のモノマーとフッ素含有モノマーとを共重合するか、または、フッ素含有ポリマーとの反応により導入する。例えば、フッ素含有ポリマーが、アルコール、または、酸置換基のような官能基を含むとき、フッ素を導入するためには縮合、アセタール化、ケタール化、またはエステル化反応などが使用できる。
フッ素含有ポリマーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルアセタール/ブチラール、またはプレポリマー類あるいはこれらの混合物と、フッ素化モノマーとのポリマー類等を用いることができる。
以上のフッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤からなる、光重合性組成物は、その透明性を維持しつ、大きな屈折率変調を有するため、高い透明性と、鮮明なホログラムの再生を必要とする、本発明のホログラムシートに好適である。
また、透明な樹脂、すなわち、光重合性組成物としては、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、特定波長の光に感光してラジカル重合性化合物を重合させる光ラジカル重合開始剤系、及び上記特定波長の光に対しては低感光性であり、別の波長の光に感光してカチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料が用いられる。
この光重合性組成物は、光ラジカル重合開始剤系が感光するレーザー光等の光を照射し、次いで光カチオン重合開始剤系が感光する上記レーザー光等の光とは別の波長の光を照射することにより透過型体積ホログラムが記録される。レーザー光等の光の照射(以下、第1露光)によってラジカル重合性化合物を重合させた後、カチオン重合性化合物は、その次に行う全面露光(以下、後露光)によって組成物中の光カチオン重合開始剤系を分解させて発生するブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合するものである。
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行なわれるように室温液状のものが用いられる。そのようなカチオン重合性化合物としてはジグリセロールポリグリシジルエーテル等が例示される。
ラジカル重合性化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きく、好ましくは0.02以上大きいとよく、小さいと屈折率変調が不十分となり好ましくない。ラジカル重合性化合物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が例示される。
光ラジカル重合開始剤系は、透過型体積ホログラム作製のための第1露光によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させる開始剤系であればよく、また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いてもよい。光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明透過型体積ホログラムとする場合には、シアニン系色素が好ましい。
シアニン系色素は、一般に光によって分解しやすいため、後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することにより、透過型体積ホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な透過型体積ホログラムが得られる。
このような無色透明性は、本発明のホログラムシートに、接着剤層を付加して、ホログラムラベルとしたり、さらに、透明基材と、透過型体積ホログラム形成層との間に剥離層を挿入してホログラム転写箔として、被貼着体や被転写体に、貼着または転写した際に、そのホログラムラベルやそのホログラム転写層を通して、被貼着体や被転写体上のデザインや顔写真を確認する際に好適である。
光カチオン重合開始剤系は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸、あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系とするとよく、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。
その透過型体積ホログラム形成層の厚さは、10μm〜100μmとする。好適には、20μm〜50μmである。もちろん、この厚さは薄い方がコスト面や、透明性を確保するためには有利であるが、10μm未満では、十分な光選択性が得られず、また、鮮明なホログラム再生像を得ることが困難である。
しかし、100μmを超えると、コスト面で不利となるだけでなく、その熱変形によるホログラム再生像の歪みが顕著となり、また、その加工適性も劣化する。
以上の方法は、樹脂を担持するための透明基材を介することなく、直接樹脂から形成することができるため、あらかじめ透明基材に樹脂をコーティングしておく工程を不要とすることも可能で、この場合には、コスト面及び、管理面において優れるものとなる。
本発明の方法、すなわち、透明基材上に、透明な樹脂をコーティングして、透過型体積ホログラムを有する「透過型体積ホログラム形成層」を設けた積層体とする方法においては、透過型体積ホログラム形成層は、光重合性組成物の塗布液(例えば、固形分15〜25%)を、透明基材が、1枚毎のシート状であればバーコート、スピンコート、又はディッピング等により塗布形成され、また、透明基材がロール状の長尺の状態で塗布するのであれば、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、又はコンマコート等により塗布する。透過型体積ホログラム形成層は塗布液に合わせた乾燥ないし硬化の手段を用いて固化される。
その光重合性組成物としては、一例として、組成物全体に対してカチオン重合性化合物を10〜50%、ラジカル重合性化合物を40〜70%、光ラジカル重合開始剤系を1〜5%、及び、光カチオン重合開始剤系を1〜5%とするとよく、全量を100%となるように配合する。
光重合性組成物は、必須成分および任意成分をそのまま、もしくは必要に応じてメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、メタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒と配合し、冷暗所にて、高速撹拌機を使用して混合することにより調製される。
この光重合性組成物は、その透明性を維持しつ、鮮明な透過型体積ホログラムを再生でき、且つ、高い破断強度、小さい破断伸度、さらには、高い鉛筆硬度を有するため、高い透明性と、引張り耐性や耐摩耗性等の強靭な物理特性などの高い信頼性を必要とする偽造防止用途に、好適である。
光重合性組成物そのものからなるシートや、フィルム、さらには、透明基材/エレクトロルミネッセンス素子層の積層体上にコーティングした光重合性組成物、すなわち、透過型体積ホログラム形成層に、上記した方法を用いて透過型体積ホログラムを形成することができる。
透過型体積ホログラムは、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を上記したような、いわゆる、透過型体積ホログラムの原理でホログラムを記録したものであり、例えば、フレネルホログラムなどのレーザー再生ホログラム、イメージホログラム及び白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などとすることができる。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
ここで、本発明のホログラムシートを観察する者に、このホログラムシートが通常の「単なる体積ホログラム」であると思わせるためには、エレクトロルミネッセンス素子層の発光により再生像が明るく鮮明になる透過型体積ホログラム(第一のホログラム)に加えて、観察者が自然光下で目視にて鑑賞可能な反射型体積ホログラム(第二のホログラム(リップマンホログラム))を多重記録しておくである(エレクトロルミネッセンス素子層の発光によって、その再生像の明るさや鮮明さが著しく向上する透過型体積ホログラムの記録に重ねて、エレクトロルミネッセンス素子層の発光によっても、何らの変化も示さないか、もしくは、かえって相対的に再生像の明るさや鮮明さが低下する別の体積ホログラムを多重記録しておくという意味。以下、カムフラージュ用の体積ホログラムともいう。)。
この際、エレクトロルミネッセンス素子層の発光によってその再生像が明るく鮮明になる透過型体積ホログラムの再生効率(ホログラムとして、回折格子を記録した際の回折効率に相当する。)をそのカムフラージュ用の体積ホログラムの再生効率よりも小さく抑えておき(回折効率にして1/2以下、さらには、1/3以下とし、少なくとも1/10以上とする。)、一見しては、リップマンホログラムのみか、別の透過型体積ホログラムのみであるように観察されるようにすることも、その本発明のホログラムシートの偽造防止効果を高める上で、より好適である。
1/2以下とすると、別途設けた別の透過型体積ホログラムの再生像によって、その存在を十分隠すことができ、1/10以上あれば、エレクトロルミネッセンス素子層の発光によって、カムフラージュ用の体積ホログラムの再生像が阻害とならず、本来の透過型体積ホログラムの再生像を視認することが可能となる。もちろん、この際、それらの体積ホログラムの再生像の再生方向を異なる方向とすることが通常であるが、この方向を敢えて同一方向とすることもその偽造防止性を高める上でさらに好適である。
透過型体積ホログラム形成層は、いわゆる「ホログラフィー露光装置」による所定の波長範囲のレーザー光等の光を使用し、ラジカル重合性化合物を重合させてその内部に干渉縞が記録される。この段階で、記録された干渉縞による回折光が得られ、透過型体積ホログラムが形成されるが、透過型体積ホログラム形成層として、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、及び光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料を用いた場合には、未反応のまま残っているカチオン重合性化合物を更に重合させるために、後露光として光カチオン重合開始剤系の感光する光(例えば波長200〜800nm)を全面照射して透過型体積ホログラムを固定化するとよい。なお、後露光の前に透過型体積ホログラム形成層を熱や赤外線で処理することで回折効率、回折光のピーク波長、半値巾などを変化させることもできる。
透過型体積ホログラムを形成した透過型体積ホログラム形成層は、そのホログラムを形成したときに使用したレーザー等の光源波長(これが、上記した「参照光」や、「物体光」となる。)によって、その「層」の中に、フリンジ(干渉縞)を「屈折率の部分的な変化(屈折率変調)」という形で、「3次元的」に記録したもの(フリンジ全体が立体的構造となるという意味。)である。
このフリンジは、上記したホログラム形成時に使用した光源波長で照明したときにのみ、「干渉現象」を発生し、観察者の目に視認可能となる透過再生像(透過型体積ホログラム再生像)を出現させる。
すなわち、このフリンジを、上記の波長以外の光で照明したときは、上記した「干渉現象」が発生せず、わずかな散乱現象が生じるのみで、その光はそのまま透過することになる。
例えれば、可視光線領域内である、発振波長442nmの固体レーザー(HeCdレーザー。)を用いて透過型体積ホログラムを形成し、透過型体積ホログラム形成層とすると、その透過型体積ホログラム形成層に、470nmや、520nm等の可視光線領域に別の発光波長を有する光源の光を投射しても、透過型体積ホログラムを再生せず、しかも、反射光をも発生しない(シートと空気との界面でのわずかな界面反射は存在するが、フリンジによる反射光は発生しない。)。
このことは、「体積ホログラム形成層」の背後に設けたエレクトロルミネッセンス素子層が発光し、そのエレクトロルミネッセンス素子層によって定まる波長の光がこの「体積ホログラム形成層」を透過しても、その波長が、上記した442nmと異なる場合には、「広帯域光源」効果を除き、何らの干渉現象も発生せず、結果として、何らのホログラム再生像も現れないこととなる。
従って、このエレクトロルミネッセンス素子層の発光波長は、透過型体積ホログラムの記録波長と実質的に同一、もしくは、この記録波長を含む発光波長域を有するものとする。
また、「体積ホログラム」は、照明光の照明角度を最適値(再生時に最適な照明角度は、ホログラム形成時の「参照光」と記録用媒体とが成す角度となる。)とは異なるものとすることでも、上記したフリンジの干渉現象が低下するため、エレクトロルミネッセンス素子層から比較的全方向へ発する「発光」の内、この「参照光」と記録媒体とが成す角度と、実質的に同一の角度で入射する「発光」が選択的に干渉現象を強く受け、互いに強め合って、ホログラム再生像を再生することとなる。これは、「体積ホログラム形成層」によって、発光する光の方向をも選択されることを意味する。
さらには、エレクトロルミネッセンス素子層の発光においては、蛍光材料を発光させるための紫外線光源等の、観察者の目に対して悪影響を及ぼす可能性のある光源を使用する必要がなく、また、観察環境を暗くすることで、その発光により再生するホログラムをより鮮明に観察することができる。
これらの透過型体積ホログラムを形成する際に用いられる光源としては、可視光波長領域にあるコヒーレントな光を発振(発光)するものであれば、いずれも用いることができるが、例えば、ガスレーザーとして、HeNeレーザーLGシリーズ(発振(発光)波長は、594nm、633nm、0.5mW〜30mW)、HeNeレーザーLHシリーズ(同、594nm、604nm、612nm、633nm、0.3mW〜4.0mW)、アルゴンレーザー(同、488nm、40mW)、HeCdレーザーIKシリーズ(同、442nm、20mW〜200mW)、窒素/色素レーザーGL−301、窒素/色素レーザーGL−302(同、360nm〜990nmから選択可能。)等、
固体レーザーとして、ルビーレーザー(同、694nm、パルスレーザー)、小型CWレーザー(Nd:YAG、Nd:YLF、Nd:YVO4レーザー)Direct(同、405nm、445nm、447nm、488nm、638nm、643nm、655nm、690nm)、小型CWレーザー(同)Crystal(同、473nm、523nm、532nm、555nm、561nm、593nm、657nm、660nm、671nm)、波長変換レーザーOptiシリーズ(同、488nm、589nm)、TOL90色素レーザー(同、420nm〜900nmから選択可能。)等、
半導体レーザーとして、SWL−7513H(同、633nm、660nm、8mW〜20mW)、FK LA−100(同、457nm、1W)、LDM(同、405nm、440nm、473nm、532nm、635nm、658nm、665nm、690nm、10mW〜200mW)等を用いることができる。
さらに、上記の理由から、エレクトロルミネッセンス素子層の発光により再生されるホログラム再生像をより鮮明にするためには、発光する放射光に、時間的若しくは空間的なコヒーレンス性に類する特性を付与することが好ましく、例えば、エレクトロルミネッセンス素子層の厚さを比較的薄いものとしたり(光の進行方向において、発光点となるエレクトロルミネッセンス素子層に含まれる蛍光体の位置を揃えるという意味。)、発光波長の幅を狭くすることが望ましい(干渉現象を生じない波長の光は、「広帯域光源」効果を除き、そのまま、ホログラム再生像にとってノイズもしくは迷光となるため。)。
エレクトロルミネッセンス素子層は、その電極の一方に金属薄膜層を設けると強い反射性を有するものとなるが、その電極をいずれも透明なものとすると、透明性を有するものとなる。もしくは、蛍光体表面の光散乱性により、「白色」と視認されることがあるため、通常の照明光の下では、単なる鏡面シート、透明なシート、もしくは、白色シートとして視認されることとなる。
そもそも、エレクトロルミネッセンスとは、電場のエネルギーによって、蛍光物質等が発光する現象であって、面光源を得ることが可能であり、大別して、有機エレクトロルミネッセンスと、無機エレクトロルミネッセンスとがある。
有機エレクトロルミネッセンスは、電流を流すと発光する性質を有する有機物質を用いた発光現象のことであり、ベースとなる層に有機物質を挟み込んだ構造をしている。
その層間に電流を流すことで、その有機物質の分子が励起され発光する仕組みとなっている。
代表的な層構成は、/陽極(透明導電層)/ホール輸送層/有機物質層/電子輸送層/陰極(導電性反射層)からなり、陽極側から発する光(発光)が出る。
すなわち、薄膜で形成された有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極(陰極層)から電子輸送層を経て有機物質層に到達した電子と、陽極からホール輸送層を経て有機物質層に到達した正孔とを再結合させることにより生じた励起子(エキシトン)によって発光する。
つまり、その再結合の際に発生するエネルギーにより有機物質の分子等を励起し、励起状態から、再び、基底状態へ戻るときに、蛍光(燐光を含む。)発光等が起こる。
蛍光発光の原理は、図2に示すジャブロンスキー図にあるように、その有機物質(複数の物質の複合系を含む。)の分子等の基底状態(S0:一重項状態)からエネルギー吸収によって第一(S1)、第二(S2)、第三励起状態(S3)・・・のどれかの振動状態に励起された有機物質の分子等が、無放射過程で非常に速やかに緩和してS1の電子励起状態に移るか、あるいは項間交差によって三重項状態(T1、T2)へ移る。
S1の最低振動状態になった蛍光体は、無放射過程によるか蛍光を発して基底状態に戻り、三重項状態になった分子は、無放射過程によるか、燐光を発して基底状態に戻る。
励起しても光に上手く利用できないエネルギーは無放射失活(熱失活)する。
一重項同士の遷移は瞬間的に起こるため、蛍光の半減期は10-4sec以下と短いものである。遷移に要する時間は、10-15secで励起が起こり、その後10-9〜10-7secで蛍光発光が起こるとされている。
一方、三重項から一重項への遷移はスピン変化禁止により禁制遷移となり自発的放出が起こりにくいので、燐光の半減期は大きく、秒単位のものもある。
基底状態に戻る際に光を発するか否か、光の強度が強いか弱いか、蛍光寿命が長いか短いかは、その有機物質の分子等の分子構造や分子等の置かれた環境に大きく依存する。
有機物質の分子等の放出光の波長分布を発光スペクトルといい、発光スペクトルは発光の波長に対し相対的な発光強度をプロットして作成される。発光スペクトルに示される波長(エネルギー)は一次励起状態の最低振動エネルギー準位から基底状態の優先的な振動エネルギー準位までのエネルギー差と等しくなる。
無機エレクトロルミネッセンスとは、物質に電界を印加したときに発光する物理現象であり、その機構は、固体である無機化合物の蛍光体(発光層)に電圧を印加するとその固体内にあらかじめ存在する電子、あるいは電極から注入された電子が高電界によって加速され、発光中心に衝突してこれを励起し、そのとき生じた電子と正孔が再結合することによって発光するというものである。外部から電流によって注入された電子と正孔の再結合によって発光する有機エレクトロルミネッセンスとは、励起の点で異なる。
すなわち、薄膜で形成された無機エレクトロルミネッセンス素子は、二重絶縁構造を有しており、この構造に電界を印加することにより発光が起こる。
発光層の構成形態から「分散型」と「薄膜型」の2種類に分けられ、分散型は、強誘電体粉末を有機バインダーに分散させた絶縁層と蛍光体粉末を有機バインダーに分散させた発光層とを積層させて、透明電極と背面電極で挟んだ構造であり、その代表的な構成は、/透明電極/絶縁層/発光層/背面電極/、若しくは、/透明電極/絶縁層/発光層/絶縁層/背面電極/である。
この層構成において、薄膜型は、薄膜電極付き基板上に薄膜蛍光体からなる発光層と絶縁層を積層させ、電極を付けた構造であって、スパッタリング法や真空蒸着法等の薄膜形成方法を用いて層を形成する。その代表的な構成は、分散型と同様である。
いずれも、透明電極側から、発する光(発光)が出る。
もちろん、エレクトロルミネッセンス素子は、その印加する電圧により、発光スペクトルが大きく異なり、また個々の素子独特の発光特性を有するため、真正性判定に使用する印加電圧(電圧強度や、周波数等。)を知りえない偽造者が、真正品と全く同一のホログラムシートを作製しようとしても、物理的に不可能と言える。
有機エレクトロルミネッセンス素子の構造は、具体的には、発光層となる有機薄膜を陰極と陽極で挟んだ単層構造のものや、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有する構造のもの、陰極と発光層との間に電子輸送層を有するもの、発光層部分を電子輸送層、発光層、正孔輸送層の3層構造とするもの、さらには必要に応じて多層化した構造のもの等を用いることができる。
これらの陽極と陰極で挟んだ層は、すべて有機薄膜(固体)で構成されており、各層の厚さは、50〜500nmである。
50nm未満では、各層の機能を十分発揮できず、また、500nmあれば、各層の機能を達成するためには十分であり、それより厚くすることによる不要な不透明性や変色の発生を避けるため、500nm以下とする。
発光層は、主材料(ホスト材料)と不純物材料(ドーパント材料:発光強度向上等の機能向上のために添加される。)との2成分系であり、発光する不純物材料は、0.1〜30%添加で主材料中に均一に分散されている。
0.1%以下では、発光性が不十分であり、30%を超えると、その不純物性(特異点としての存在性)が薄れ、かえって発光性が低下し始める。
陽極には、透明導電性薄膜と称される、透明性と導電性をあわせもつITO薄膜(インジウム・スズ酸化物薄膜)、錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛などの金属酸化物、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造、ポリアニリン、ポリピロールなどの共役系高分子などが挙げられる。
形成方法は、薄膜形成方法、すなわち、スパッタリング法や、真空蒸着法等を用いて、厚さ50〜500nmで形成する。以上の配慮から、透明導電性薄膜の表面抵抗値は、0.0001Ω/□〜0.1Ω/□とする。
形成方法として、印刷法等も用いることが可能であるが、精度よく破断させるためには、この層の膜厚さが、薄く且つ均一である必要があり、上記した薄膜形成方法が望ましい。
以上を配慮して、その膜厚さは、50nm未満では、その導電性が不十分であり、500nmを超えると、その加熱負荷により、透明基材/透過型体積ホログラム形成層の積層体の劣化、すなわち、透明基材/透過型体積ホログラム形成層の積層体の変形(劣化)を起こし易くなり、そして、この透明基材の変形(劣化)は、結果として、透過型体積ホログラム再生像の明るさや鮮明度の低下や、何らかの「偽造防止を目的とする層」(すなわち、エレクトロルミネッセンス素子層を意味する。)の存在を、不正をしようとする者に知らしめることとなる。
陰極は、陽極と同様の材料を使用し、同様の方法を用いて、厚さ、50〜500nmで形成する。もしくは、アルミニウム、金、銀、白金、銅、鉄、銀・マグネシウム合金等の金属薄膜や、グラファイトなどを厚さ、50〜500nmで形成する。
50nm未満では、その導電性が不十分であり、500nmを超えると、やはり、不要な透明性の低下や、透明基材/透過型体積ホログラム形成層の積層体の劣化を起こし易くなる。
発光層である有機薄膜には、低分子系と高分子系とを用いることができる。
低分子系には、正孔輸送材料として、TPAC(1,1−ビス[4-[N,N―ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン)、TPD(N,N´―ジフェニル−N,N´―ジ(m―トリル)ベンジジン)、CuPc(フタロシアニン銅)、α―NPD(4,4´―ビス[フェニル(1−ナフチル)アミノ]−1,1´ビフェニール等、
電子輸送材料として、BND(2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4− オキサジアゾール)、PBD(2−(ターシャリー−ブチルフェニル)―5― (4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、Butyl−PBD(2−ビフェニル−5−(パラ−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、TAZ(1−フェニル−2−ビフェニル−5−パラ−tert−ブチルフェニル−1,3,4−トリアゾール)、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、Beq2(ビス(8−ヒドロキシ−キノリノ)ベリリウム)、Zn(BOZ)2(亜鉛−ビス−ベンゾキサゾール)、Zn(BTZ)2(亜鉛−ビス−ベンゾチアゾール)、Eu(DBM)3(Phen)(トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオノ)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III))等、
発光層材料として、ZnPBO(ビス[2−(2−ベンゾキサゾリル)フェノラト]亜鉛)等、
ドーピング色素材料として、Coumarin6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)コーマリン、QN−(N,N´−ジメチルキナクリドン)、ナイルレッド、ベリレンラブレン、TBP(1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン)キナクリドン等、その他、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(4−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、4,4'−ビス(9−カルバゾリル)ビフェニル等を用いることができる。
これらの低分子系材料は、真空蒸着法、CVD法(化学蒸着法)等の薄膜形成法により設けることができる。
高分子系には、
発光層材料として、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)系、PAT(ポリチオフェン)系、PF(ポリフルオレン)系、PPP系(ポリパラフェニレン)等、
正孔層材料として、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)+PSS(ポリスチレンスルホン酸:ドーパント)共重合体、PEDOT+PVS(ポリビニルスルホン酸)共重合体、ポリアニリン+PSS共重合体、ポリピロール+PSS共重合体等、を用いることができる。
これらの高分子系材料は、各種のコーティング法、印刷法により設けることことができる。印加直流電圧は、1〜10Vである。
無機エレクトロルミネッセンス素子の構造は、基本構造として、透明電極、絶縁層、発光層、背面電極を積層したものであり、発光は、発光層である蛍光体膜から出る。蛍光体は、薄膜型の場合、誘電性のある母体材料に、発光中心となる微量の添加不純物を混ぜたもので、エネルギーを受けることで、その発光中心物質の外殻軌道または高い順位に移動(励起)した、発光中心物質の持つ電子が、元の順位に戻る(遷移)ときに、発光を生じる。
発光層である蛍光体の膜を、絶縁層である誘電体で挟み込み、その両端に電極を配した構造は、コンデンサを3個直列に接続した回路と考えることができ、ここに、交流電圧をかけると、誘電体と蛍光体の中で分極が生じ、印加電圧を上げ、蛍光体の膜にかかる電界が、100MV/m以上となると、発光中心が電界で加速された電子等の衝突のエネルギーを受け取り、励起されるようになる。
発光層としては、母体にZnSや、SrSなどのII族硫化物を用い、発光中心にMnや希土類を添加したもの、母体にBaAL24(バリウム・アルミニウム複合硫化物)を用い、発光中心にEuを添加したもの、等が用いられる。
発光層には、周期表の第2族元素と第16族元素とから成る群から選ばれる少なくとも1種の元素及び/又は周期表の第13族元素と第15族元素とから成る群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む半導体を好ましく用いることができる。
そのキャリア密度は、1017/cm3以下であることが好ましい。
発光層を形成する物質の具体例をさらに挙げると、CdS,CdSe,CdTe,ZnSe,ZnTe,CaS,MgS,GaP,GaAs,GaN,InP,InAs及びそれらの混晶などが挙げられるが、ZnSe,CaSなどを好ましく用いることができる。
さらに、BaAl24、CaGa24、Ga23、Zn2SiO4、Zn2GaO4、ZnGa24,ZnGeO3,ZnGeO4,ZnAl24,CaGa24,CaGeO3,Ca2Ge27,CaO,Ga23,GeO2,SrAl24,SrGa24,SrP27,MgGa24,Mg2GeO4,MgGeO3,BaAl24,Ga2Ge27,BeGa24,Y2SiO5,Y2GeO5,Y2Ge27,Y4GeO8,Y23、Y22S,SnO2及びそれらの混晶などを好ましく用いることができる。
キャリア密度等は、一般に用いられるホール効果測定法などで求めることができる。
絶縁層である誘電体膜としては、金属酸化物、窒化物が用いられる。BaTiO3などのペロブスカイト系酸化物は高い誘電率を持ち好適である。
酸化物に含むことができる元素としては、周期表の第2族、3族、9族、12族(旧2B族(旧IIb族))、13族(旧3B族(旧III族))、14族(旧4B族(旧IV族))、第15族、第16族の元素が好ましく、第12族、第13族及び第14族の元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことがより好ましい。具体的にはGa、In、Sn、Zn、Al、Sc、Y、La、Si、Ge、Mg、Ca、Sr、Rh、Ir等を挙げることができ、より好ましくは、Ga,In,Sn,Zn,Si,Ge等である。またこれらの元素以外に透明半導体が、S、Se、Te等のカルコゲナイドやCu、Ag等を好ましく含むことができる。
絶縁層と発光層の層厚さは、0.1μm〜2μmとする。もちろん、2μmを超えて10μm程度の厚さとすることで、発光性性能をより向上させることができるが、透明基材への負荷や、透明性の面で、2μmが限界である。
透明電極、背面電極は、有機エレクトロルミネッセンス素子と同様に、ITO薄膜が好適に用いられる。
異なる発光色の蛍光体膜を交互に並置して、多色とすることもできるが、輝度の高い1色の発光体膜の上に、色変換材料(クマリン系:クマリン6、ローダミン系:ローダミン6G、ローダミンB等の蛍光色素の混合物や、2種以上のベンゾ−α−ビロン骨格を持つ蛍光色素の混合物等、波長350nm〜600nmの光を吸収して、波長600nm以上の可視領域に発光極大を有する光を放出する等。)を重ねて多色とすることも好適である。
印加電圧としては、100V・50〜1000Hzの交流電源等を用いることができる。
エレクトロルミネッセンス素子層を多色発色とした場合には、それらの発光波長に対応した透過型体積ホログラムを設けておき、これらの透過型体積ホログラムを同時に再生することも好適であるが、エレクトロルミネッセンス素子層そのものを複数積層し、個々の発光により、個々の透過型体積ホログラムを再生するものとしてもさらに好適である。
この際の発光波長間の差は、50nm以上とし、好適には、100nm以上とする。再生波長を異なるものとすることは、上記したフリンジの周期を異なるものとすることを意味し、透過型体積ホログラム形成層内におけるそれぞれのフリンジ間の不要な干渉を低減することができる。
そして、再生角度差は、10度〜40度とする。この差が40度を超えると、一方の観察角度がホログラムシート面に近いものとなるため、観察するのに不便となる。
さらに、透過型体積ホログラム形成層とエレクトロルミネッセンス素子層との間に、透明薄膜層を設けることで、エレクトロルミネッセンス素子層から発する光の進行方向を「所定の方向」に制御でき、さらに、その「制御された方向」を透過型体積ホログラム形成層に記録してある透過型体積ホログラムの「参照光」の方向と実質的に同一とすることで(角度差として、±5%以内を意味する。)、蛍光発光による透過型ホログラムの再生像の明るさを増すことができ、その再生像の確認をより確実なものとすることができる。
この透明薄膜層は、「屈折率の異なる透明な層」に挟まれた「均一な厚さの透明な層」とみることができ、この透明薄膜層に入射する光は、この透明薄膜層内において、「多重反射現象」を生じる。
この多重反射現象を、最も単純な構成で説明するため、屈折率n1の領域(例えば、真空領域n1=1。)中に、厚さd1、屈折率n2の透明薄膜層が挟まれている(浮いている)状態を想定する(屈折率n1の領域と屈折率n2の領域とがなす、2つの界面は、平面界面とする。)。
この透明薄膜層に、屈折率n1領域側から入射する光は、屈折率n1領域と透明薄膜層との界面(第1界面とする。)において、一部反射され、残りの光がこの界面において屈折し、その進行方向をフレネルの公式に従った方向へ変えて、その透明薄膜層内を進み、今度は、透明薄膜層の内部から、屈折率n1領域へ飛び出す際に、その界面(第2界面とする。)において、同様に、一部反射し、残りが屈折を生じることとなる。
この第1界面と第2界面(上記の2つの界面を意味する。)は、平行な平面であって、その平面間距離が上記したd1となっている。
そして、その第2界面に、内側から向かって反射された光は、再び、第1界面に向かい、第1界面において、さらに、一部反射され、残りが、その第1界面を透過し、且つ、屈折する光となる。
このように、最初に第1界面において反射される光(一次反射光。)、薄膜層内の第2界面において、内側から向かって、最初に反射された後、第1界面を透過する光(二次反射光。)、さらに第1界面において反射され、再び、第2界面において反射された後、第1界面を透過する光(三次反射光。)、さらに同様の高次反射光が、その薄膜層を飛び出した領域において干渉現象を起こし、薄膜層の屈折率n2、厚さd1と、入射光の波長λ、及びその入射角度θによってその「強度」が定まる、「反射光」となる。
例えば、この薄膜層に垂直に入射する(θ=0°)光においては、n1×d1=m×λ/4(mは整数。)の式が成り立ち、その反射率Rは、R=(n22−n122/(n22+n122となって、その値は、所定の入射角度において、最大値をとることとなる。
しかも、この多重反射現象は、透過光においても同様に成り立つものである。
すなわち、透明薄膜層は、所定の波長の光を、所定の角度で透過する際に、その透過率に、最大値や、最小値をとらせることとなる。
従って、透過型体積ホログラム形成層の下に(透過型体積ホログラム形成層とエレクトロルミネッセンス素子層との間で、エレクトロルミネッセンス素子層の上に。)、透明薄膜層を設ける際に、エレクトロルミネッセンス素子層の発光する光の波長に合わせて、その屈折率及び、その厚さを設定することで、例えば、透明薄膜層を「垂直な方向」に進む光(通過する光)を「選択的に強く」することができる。
これは、エレクトロルミネッセンス素子層内で発光した光が、上記したようにホイヘンスの2次波のごとく、透明薄膜層内をあらゆる方向に進もうとする際に、その透明薄膜層を「垂直に」進み、且つ、その透明薄膜層内を「垂直に」飛び出る光(垂直透過光を意味する。)のみを「選択的に強く」することができることを意味する。
このことを利用して、本発明のホログラムシートを発光させ、且つ、その透明基材側から観察する、その発光波長により再生されるホログラム再生像を、著しく鮮明、且つ、輝度の大きいものとすることが可能となる。
ここで、エレクトロルミネッセンス素子層の発光は、上記した、エレクトロルミネッセンス素子層から下の透過型体積ホログラム形成層側へ所定の角度で向かう光とは別の角度にも、ほぼ全方位的に進む光も生じるが、これらの光は、単なる発散光であって、何らの波長選択も、何らの方向制御も受けないため、速やかに発散し、その距離の二乗に反比例して減衰し、観察者の目に届くときには、微弱な光となっている。
逆に、これらの光が、本発明のホログラムシートを観察する距離、すなわち、ホログラムシートの表面から30cm〜50cm程度離れた地点において、十分減衰している程度に、エレクトロルミネッセンス素子層の発光強度を設定することが重要である。
従って、1〜500cd(カンデラ)/m2とすることが好ましく、さらには、10〜200cd/m2とすることが最適である。
本発明のホログラムシートにおいては、透明基材上に、透過型体積ホログラム形成層を設け、その上にエレクトロルミネッセンス素子層を設けるか、または、さらに、透過型体積ホログラム形成層とエレクトロルミネッセンス素子層との間に所定の均一な厚さの透明薄膜層を設ける。
透明薄膜層としては、発光波長をλ(nm)として、透明性を有する、厚さがλ/10〜λ(nm)の均一な薄膜であって、上記の条件を満たすものであればいずれも使用できるが、特に、金属化合物薄膜を蒸着等の真空薄膜法等により設けたものが、その物理特性や、光学特性に優れるため好適である。
このようにして形成したホログラムシートは、そのエレクトロルミネッセンス素子層上に適宜な粘着層もしくは、接着層を設けて、「ラベル」とし、適宜な被貼着体に貼付して用いることもできる。
また、透明基材と透過型体積ホログラム形成層との間に適宜な剥離層を設け、さらに、エレクトロルミネッセンス素子層上に接着層を設けて「転写箔」とし、適宜な被転写体に転写して用いることも好適である。
さらには、本発明のホログラムシートの各層に適宜、所望のデザインの印刷等を施し、その意匠性や偽造防止性を高めることも好適である。
本発明のホログラムシートによれば、エレクトロルミネッセンス素子層の発光によって再生像が明るくなる第一のホログラムと、前記第一のホログラムとは別のホログラムであって自然光下で鑑賞可能となる第二のホログラムとが多重記録されているので、そのエレクトロルミネッセンス素子層の発光により透過型体積ホログラムを「照明」することによって前記第一のホログラムが「明るさ」の十分なホログラム再生像を出現させることになる。
これにより、ホログラムシートの真正性判定を容易、且つ、確実なものとすることができる。
は、透過型体積ホログラムの記録方法及び、再生方法を示す図である。 は、ジャブロンスキー図である。 は、本発明の一実施例を示すホログラムシートAの断面図である。 は、本発明の一実施例を示すホログラムシートAの詳細断面図である。 は、本発明の別の実施例を示すホログラムシートA´の断面図である。 は、本発明の一実施例を判定するプロセスである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
(透明基材)本発明で使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムシートAまたはA´を製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。(図3〜図5参照。)
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
その中でも、エレクトロルミネッセンス素子層3形成時の熱処理に対する耐性や、エレクトロルミネッセンス素子層3の発光時の発熱や電界等に対する耐性を有するものが望ましい。さらには、発光層5に含まれる蛍光体(発光体)の紫外線劣化を防止する紫外線吸収剤を含むものも好適である。
透明基材1の厚さは、通常5〜100μmであるが、ホログラム再生像の視認性を配慮する場合には、5〜50μm、特に5〜25μmとすることが望ましい。
(透過型体積ホログラム形成層)上記した透明基材1の上に透過型体積ホログラム形成層2を設ける。(図3〜図5参照。)
透過型体積ホログラム形成層2には、各種の透明な材料又は、透明なフィルムが用いられる。
すなわち、銀塩写真乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト、フォトポリマー材料、無機材料からなるフォトリフラクティブ材料、フォトクロミック材料等及び、それらの材料からなるフィルムを用い得る。
銀塩写真乳剤としては、高感度、高解像度が求められ、超微粒子銀塩や、金―カルコゲン増感や、還元増感を施した材料等が用い得る。
フォトレジストとしては、ポジ型フォトレジストとして、ノボラック−DNQ系、又は、化学増幅型フォトレジスト、ネガ型フォトレジストとして、光架橋型フォトレジスト、又は、光重合型フォトレジスト等を用いることができる。
銀塩写真乳剤、或いは、重クロム酸ゼラチンは、処理工程が多く煩雑であるが、固体光重合性材料、すなわち、フォトポリマー材料は、処理工程が1回のみであるため、好適である。
これは、1工程で、固体の光重合性フィルムから、安定な高解像度のホログラムを作成することができ、ホログラフ情報をもつコヒーレントな光源に対する1回の露光により、「屈折率変調を固定化した画像」が得られることを意味する。このようにして形成されたホログラムは、光に対するその後の均一な露光によっても破壊されることなく、むしろ定着されまたは強化される。
フォトポリマー材料は、熱可塑性重合体結合剤、付加重合可能なエチレン系不飽和単量体、及び、不飽和単量体の重合を活性化する光開始剤からなる、屈折率変調を有する光重合性組成物を用いる。
熱可塑性重合体結合剤は、溶媒可溶性の熱可塑性重合体であり、単独で、又は、組合せて使用する。具体的には、
;アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、例えば、ポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、
;ポリビニルエステル、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル;エチレン/酢酸ビニル共重合体、
;飽和及び不飽和ポリウレタン、
;ブタジェン及びイソプレン重合体及び共重合体、
;エポキシ化物、例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物、
;ポリアミド、例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアシツクアミド、
;セルロースエステル、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート、
;セルロースエーテル、例えば、メチルセルロース、並びにエチルセルロース;ポリカーボネート等、
並びに、
;ポリビニルアセタール、例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール等。
特に好適には、セルロースアセテートラクテート重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸及びメタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体を含むアクリル系重合体及びプレポリマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸又はメタクリル酸(C2〜C4)アルキル/アクリル酸又はメタクリル酸の3元重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等、並びに、それらの混合物である。
さらに、ポリスチレン、ポリ(スチレン/アクリロニトリル)、ポリ(スチレン/メタクリル酸メチル)、並びに、ポリビニルペンデル、及び、それらの混合物を含むこともできる。
エチレン系不飽和単量体は、単一の単量体として、又は、組合せて使用することができる単量体として、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、又はジメタクリレート、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ポリオキシエチル−2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノール−Aジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ヒスフェノール−Aジアクリレート、ビスフェノール−A−ジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−A−ジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−A−ジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−A−ジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−A−ジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−A−ジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、ジフェノール酸−ジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、1,4−ベンゼン・フォールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、ベンゾキノンモノメタクリレート、並びにアクリル酸2−〔β−(N−カルバジル)プロピオニロキシ〕エチル等、を用いることができる。
この単量体が、置換又は非置換フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフトキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素、臭素、よりなる群から選択される、1つ又はそれ以上の部分を含有する場合には、これらを含む光重合性組成物は、いわば「単量体配向型系」と称することができる。
この単量体配向型系に好適な単量体は、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、ビスフェノール−A−ジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ヒスフェノール−Aジアクリレート、並びにアクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、である。
そして、エチレン系不飽和カルバゾール単量体;アクリル酸2−ナフチル;アクリル酸インタクロロフエ=ル;ビスフェノール−Aジアクリレート;アクリル酸2−(2−ブチロキシ)エチル; 並びに、N−フェニルマレイミドのような第2の固体単量体と混合して使用してもよい。
また、予め形成された重合体材料(プレポリマーを意味する。)が、置換又は非置換フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフトキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素、臭素、よりなる群から選択される、1つ又はそれ以上の部分を含有する場合には、これらを含む光重合性組成物は、いわば「結合剤配向型系」と称することができる。
この系に使用される単量体には、フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフチロキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素及び臭素よりなる群からとられる部分を含まないものを使用する。
「結合剤配向型系」に好適な単量体は、付加重合することができ、100℃より高い沸点を有する液体、エチレン系不飽和化合物である。単一の単量体としてか又は他の単量体と組合せて使用することができるこの型の適当な単量体は、次のものを含む。
すなわち、アクリル酸一ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソーホルニル、1,5−ベンタンジオールジアクリレート、N、N´−エチルアミノエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールノアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、1,3−プロノぐンジオール・クアクリレート、デカメチレングリコールジアクリレー)、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパンジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロ−−ルプロJRントリメタクリレート、1,5−ベンタンジオールジメタクリレート、フマル酸ジアリル、アクリル酸パーフロロオクチル、メタクリル酸フロロオクチル、並びに1−ビニル−2−ピロリジノン等。
上記のエチレン系不飽和単量体の外、少なくとも300の分子量を有する、1種又はそれ以上の遊離ラジカル開始型、連鎖生長性、付加重合可能、エチレン系不飽和化合物も含有することができる。
また、単量体は、2〜15の炭素原子のアルキレングリコール又は1〜10のエーテル結合のポリアルキレンエーテルグリコールから製造されるアルキレン又はポリアルキレングリコールジアクリレート、並びに、末端結合として存在する時、複数の付加重合可能なエチレン結合を有するものであってもよい。
さらに、デカンジオールジアクリレート、アクリル酸イソ−ボルニル、トリエチレングリフールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸エトキシエトキシエチル、エトキシル化トリメチロールプロノンのトリアクリレートエステル、等である。また、同じ型の第2の固体単量体、例えば、N−ビニルカプロラクタムと混合して使用してよい。
光開始剤として適当な、遊離ラジカル発生付加重合開始剤は、共役炭素環状環系中2つの環内炭素原子を有する化合物である置換又は非置換多核キノン、例えば、9,10−アンスラキノン、1−クロロアンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、2−メチルアンスラキノン、2−エチルアンスラキノン、2−三級−ブチルアンスラキノン、オクタメチルアンスラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンスレンキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、2,3−ベンズアンスラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,4−ジメチルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、2−フェニルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、アンスラキノンアルファースルホン酸のナトリウム塩、3−クロロ−2−メチルアンスラキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセンキノン、を含む。
また、ベンゾイン、ピパロイン、アシロインエーテル、例えば、ベンゾインメチル及びエチルエーテル;α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、及び、α−フェニルベンゾインを含む、α−炭化水素置換芳香族アシロインを含んでもよい。
さらに好適な光開始剤には、2−(0−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体;1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ヒス(0−クロロフェニル)−4,4’、5,5’−テトラフェニルー:並びに、1H−イミダゾール、2,5−ビス(0−クロロフェニル)−4−3,4−・ジメトキシフェニル−2量体(そのおのおのは、典型的には水素ドナー、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾールと共に使用される)を挙げることができる。
フォトポリマー材料としては、さらに、フッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤からなり、画像化(光記録)されたとき、0.001よりも大きな屈折率変調を有する、光重合性組成物を用いることができる。これには、さらに、可塑剤を含めてもよい。
フッ素含有ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンまたはへキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーとビニルアセテートとから作られたポリマーを用いることができ、他のモノマーを含むこともできる。例えば、10〜20%のフッ素を含有しているものを使用する。
使用されるフッ素含有ポリマーは、フォトポリマーのその他の各成分と両立し得るフッ素含有ポリマーであり、塗布されたときに実質的に固体の透明な皮膜を作るものである。
フッ素は、フッ素含有ポリマーを構成する他のモノマーとフッ素含有モノマーとを共重合するか、または、フッ素含有ポリマーとの反応により導入し、フッ素含有ポリマーが、アルコール、または、酸置換基のような官能基を含むとき、フッ素を導入するためには縮合、アセタール化、ケタール化、またはエステル化反応などを使用する。
フッ素含有ポリマーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルアセタール/ブチラール、またはプレポリマー類あるいはこれらの混合物と、フッ素化モノマーとのポリマー類を含む。例えば、フッ素含有ポリマーは、ビニルアセテートとフッ素化モノマーとのポリマーとすることができ、必要に応じ、このポリマーのアセテート置換基は、加水分解によりとり除き、フッ素化したポリ(ビニルアルコール)誘導体を得ることもできる。このフッ素化ポリ(ビニルアルコール)は、例えば、ブチルアルデヒドと縮合させ、フッ素化したポリ(ビニルブチラール)誘導体にすることができる。
フッ素化したポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)など、または、これらの混合物も同じ方法で作ることができる。フッ素化モノマーは、テトラフルオロエチレン、および/または、へキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーが好適であるが、ビニルフロライドまたはビニリデンフロライドのような、その他のモノマーも特定の用途のために選定することができる。
必要に応じ、他のモノマー類も存在させることができる。例えば、フォトポリマーの溶解性、接着性、柔軟性、または硬さなどのような、化学的、もしくは、物理的諸性質を調整するために、モノマー混合物中にエチルビニルエーテルを混在させることができる。このようなフォトポリマーは通常のフリーラジカル重合法を用いて製造される。
フッ素化したフッ素含有ポリマーは、また適切に置換されているポリマーと、フッ素化された化合物との反応により作ることもできる。ヒドロキシルまたはカルボキシル基のような、潜在的な反応位置をもったポリマーは、フッ素化された化合物との反応によりフッ素化されたフッ素含有ポリマーに変換することができる。例えば、フッ素化されたポリ(ビニルブチラール)は、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアルデヒドと、ポリ(ビニルアルコール)の縮合により調製することができる。カルボキシル酸を含むポリマー類はフッ素化したアルコール類でエステル化することができ;ポリ(ビニルアルコール)、部分ケン化されたポリ(ビニルアセテート)、またはフッ素化されたモノマーとビニルアセテートとのポリマー類の部分ケン化またはケン化されたものなどのような、ヒドロキシル基含有のポリマー類は、フッ素化されたカルボキシル酸によりエステル化することができる。
フルオロオレフィン類は標準的なグラフト化技術を用いて、適切に置換されているポリマー上にグラフト化することができる。ビニルエステル、少なくとも、1つのフッ素化されたモノマー、および、得られるポリマーの物理的性質を調整するための任意の他のモノマーとのポリマーが好ましい。
一般に、フッ素含有量が低下するとその効果も減少するから、フッ素含有ポリマーは少なくとも10%のフッ素を含有するようにされる。しかしながら、フッ素含有量が余りにも高すぎると、得られるフォトポリマーは不透明となる傾向があり、体積ホログラム形成層の調製のためには有用でない。さらには、窓用フィルムとして用いる場合に、再接着用の糊との接着性が著しく低下する。従って、好ましいフッ素含有ポリマーは、10〜20%のフッ素含有量を有している。
フッ素含有ポリマーのビニルエステル成分としては、ビニルアセテートが特に好ましいが、他のビニルエステルおよび類似の結果を与える構造的に関連した化合物も、これに加えて、またはビニルアセテートの代りに選定することができる。例えば、ビニルピバレート、ビニルプロピオネート、ビニルステアレート、ビニルアルコール、または、n−ブチルビニルエーテルなどを選ぶことができる。テトラフルオロエチレン、または、へキサフルオロプロピレンのような過フッ素化モノマー類は、フッ素化モノマー成分として特に有用であると認められているが、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、フルオロオレフィン類、フロロアルキルアクレリートおよびメタアクリレートなどのようなその他の化合物も、特定の用途のためには選ぶことができる。
フッ素化されていない対応物よりも、フッ素化されているフッ素含有ポリマーを選ぶことは屈折率変調を劇的に増加させ、それでホログラムの回折効率も増加させる。
例えば、他のすべての成分を同じにして、ポリビニルアセテートによって達成されるのは約0.025〜0、031の範囲の値であるのに反して、ビニルアセテート/過フッ素化物モノマーのフォトポリマーの使用では0.040を超え、0.076の高い屈折率変調の値が達成される。
フッ素化フッ素含有ポリマーは、全フッ素含有ポリマーの1部分だけに選択することができる。この場合、フッ素含有ポリマーのフッ素化されていない対応物は、2つのフッ素含有ポリマーが互いに両立し、そして塗布用溶剤および他のフォトポリマー成分とも両立し、そしてフォトポリマーの透明性、機械的諸性質などを不当に犠牲としないならば、その他の成分として選択することができる。
フォトポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含み、これはフリーラジカルで開始される重合し得るもので、100℃以上の沸点を有し、塗布溶剤および選ばれたフッ素含有ポリマーと両立し得るものである。このモノマーは通常末端位置に不飽和性基を含んでいる。一般に液体のモノマーが選定されるが、固体のモノマーが実質的に固体のフォトポリマー組成物中で内部拡散し得るならば、固体のモノマーも1個または数個の液体モノマーと組み合わせて用いることができる。
モノマーは、付加重合をすることができかつ100℃以上の沸点をもつ液体の、エチレン性不飽和化合物であり、これは3個までの芳香環;塩素;および臭素を含む、置換または未置換のフェニル、ビフェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフチルオキシ、およびヘテロ芳香基、よりなる群から選ばれた1個または数個の部分を含んでいる。モノマーはこのような部分を少なくとも1つ含み、またモノマーが液体でとどまるならば、同一または異なるこのような部分を2個またはそれ以上含むことができる。低級アルキル、アルキオキシ、ヒドロキシ、フェニル、フェノキシ、カルボキシ、カルボニルイミド、シアノ、クロロ、ブロモまたはこれらの組み合わせのような置換基を、モノマーが液体モノマーにとどまり、かつ光重合性層中で拡散し得るならば存在させることができる。
代表的な液体モノマーには、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2− (p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレ−1−、2− (1−ブチルオキシ)エチルアクリレート、0−ビフェニルメタアクリレート、0−フェニルアクリレート、およびこれらの混合物などが含まれる。
モノマーは、通常、液体であるが、エチレン性不飽和カルバゾールモノマーのような、1個または数個のエチレン性不飽和固体モノマーと混合して使用することもできる。
カルバゾール部分の窒素原子に結合したビニル基を含んだ、エチレン性不飽和カルバゾールモノマーは代表的に固体である。このタイプの好適なモノマーには、N−ビニルカルバゾールと3、6−ジプロモー9−ビニルカルバゾールとが含まれる。特に好ましいエチレン性不飽和モノマーの混合物は、N−ビニルカルバゾールと液体モノマーの1個または数個、特に2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレート、またはこれらの混合物などとの組み合わせからなるものである。
フォトポリマーを架橋化(光重合)するときは、組成物中に2個または数個の末端エチレン性不飽和基を含む、多官能性モノマーの少なくとも1つを5%まで加えることができる。この多官能性モノマーは、組成物の他の成分と両立し得るものでなければならず、また好ましくは液体である。多官能性モノマーには、ビスフェノール−Aのジ(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、およびその他が含まれる。エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレートは、特に好ましい。
光開始剤系は、電離放射線により活性化されたときに、フリーラジカルを直接に与える1個または数個の化合物からなるものである。「電離放射線」は、モノマー材料の重合を開始するのに必要な、フリーラジカルを生成させるような活性な放射線を意味している。
この系はまた複数の化合物から構成されることもでき、その1つは別の化合物、または増感剤が放射線により活性化された後に、フリーラジカルを生ずるものである。
有用な開始剤系は、種々の増感剤を含んでいてもよく、多数のフリーラジカル生成化合物を利用できる。特に色素を含むレドックス系、例えばローズベンガル/2−ジブチルアミノエタノールを用いることもできる。光還元性色素および還元剤、オギサジン、およびキノン系の各色素、色素−オウ酸塩コンブレックス、色素増感されたアジニウム塩、およびトリクロロメチルトリアジンなどを、光重合を開始させるために用いることができる。
好ましい光開始剤系は、可視光線用増感剤で増感され、連鎖移転剤または水素供与剤、およびこれらの混合物をもった、2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーである。 これには、2−(0−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−イミダゾールダイマー;1,1’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(0−クロロフェニル’)−4,4’5,5’−テトラフェニル;およびIH−イミダゾール、2,5−ビス(0−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル〕−タイマーなどが含まれ、それぞれ代表的に水素供与体とともに用いられる。
増感剤には、ビス(p−ジアルキルアミノベンジリジン)ケトン類、および、アリーリチンアリールケトン類が含まれる。
水素供与体の適当なものには、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−1−リアゾール−3−チオール、およびその他が含まれる。
N−ビニルカルバゾールモノマーを含む組成物に対して好ましい、この他の水素供与体は、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール;2−メルカプトベンゾチアゾール、 IH−1,2、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、1−ドデカンチオール、およびこれらの混合物などである。
その他の成分として、フォトポリマー組成物に一般に添加されるその他の各成分はフォトポリマーの物理的特性を変えるだめのものである。このような成分には可塑剤、熱安定剤、光学的増白剤、紫外線安定剤、接着性変更剤、塗布助剤、および剥離剤などが含まれる。
可塑剤は、フォトポリマーの接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の物理的緒特性を変えるために存在させられる。可塑剤には、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセパケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、イソゾロビルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ポリ(プロピレングリコール)、トリ酪酸グリセリル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、スペリン酸・ノブチル、燐酸トリブチル、燐酸トリス(2−エチルヘキシル)、などが含まれる。
有用な熱安定剤には、ハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、ベータナフトール、塩化第一銅、2,6−ジーt−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、レジン酸銅、ナフチルアミン、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、フロラニール、およびクロルアニールなどが含まれる。ジニトロソダイマー類もまた有用である。
塗布助剤として、非イオン性界面活性剤を光重合性組成物に加えることができる。好ましい塗布助剤は、フッ素化された非イオン性活性剤である。
有用な光学増白剤は、7−(4’−クロロ−6′−ジエチルアミノ−1’,3’,5’−トリアジン−4′イル)アミノ3−フェニルクマリンである。さらに、紫外線吸収材料を適宜用いることができる。
また、透明な樹脂、すなわち、光重合性組成物としては、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、及び、カチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料が用いられる。
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が終始比較的低粘度の組成物中で行なわれるように室温液状のものが用いられる。そのようなカチオン重合性化合物としてはジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等が用いられる。
ラジカル重合性化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きく、好ましくは0.02以上大きいとよく、小さいと屈折率変調が不十分となり好ましくない。ラジカル重合性化合物としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等が用いられる。
光ラジカル重合開始剤系は、体積ホログラム作製のための第1露光によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させる開始剤系であればよく、また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いる。
光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明な体積ホログラムとする場合にはシアニン系色素が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することにより体積ホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムが得られる。
シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3'−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2'チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3',9−ジエチル−2,2’チアカルボシアニンベタイン、3,3',9−トリエチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3'−カルボキシメチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩等が例示される。
シアニン系色素と組み合わせて用いてもよい活性ラジカル発生化合物としては、ジアリールヨードニウム類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム類としては、ジフェニルヨードニウム、4,4'−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメトキシジフェニルヨードニウム等が例示される。また、2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が例示される。
光カチオン重合開始剤系は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸、あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系とするとよく、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類あるいは鉄アレン錯体類等を挙げることができる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては、光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウム類のテトラフルオロボレート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩およびヘキサフルオロアンチモネート塩等が挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
光重合性組成物には、必要に応じてバインダー樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色剤などを併用してよい。バインダー樹脂は、体積ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。バインダー樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性組成物と相溶性のよいものであれば良く、その具体例としては塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。バインダー樹脂は、その側鎖または主鎖にカチオン重合性基などの反応性を有していても良い。
その透過型体積ホログラム形成層2の厚さは、10μm〜100μmとする。好適には、20μm〜50μmとする。
透明基材1の上に、透明な樹脂をコーティングして、透過型体積ホログラム形成層2を設ける場合には、透過型体積ホログラム形成層2は、光重合性組成物の塗布液を、バーコート、スピンコート、又はディッピング等、または、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、又はコンマコート等により塗布し、形成する。透過型体積ホログラム形成層2は、乾燥ないし硬化手段を用いて固化される。
その光重合性組成物としては、組成物全体に対してカチオン重合性化合物を10〜50%、ラジカル重合性化合物を40〜70%、光ラジカル重合開始剤系を1〜5%、及び、光カチオン重合開始剤系を1〜5%とし、全量を100%となるように配合する。
光重合性組成物は、必要に応じて、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族系溶媒、セロソルブ系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒等と配合し、冷暗所にて、高速撹拌機で混合し調製する。
上記の樹脂材料を用い、キャスティング法や、ダイコート法等を用いて、透過型体積ホログラム形成層2を透明基材1上に設けることもできる。
これらの透過型体積ホログラム形成層2に、適宜な光学系を用いて、透過型体積ホログラムを記録する。(図1参照。)または、多重記録する。(図示せず。)
以下に、その方法を説明する。
まず、ホログラム画像として画像化される「物体」を準備する。
「物体」としては、彫刻や模型等の実在する、3次元物体(高名な作者のものであれば、その意匠性は非常に高いものとなる。)、もしくは、絵画やブランドデザイン等の2次元物体が用いられる。もしくは、「物体光」を与え得るものであって、空間変調器等のような電子的にセル変換が可能な光学素子を用いた光学系によって、記録用媒体面に投影されるような「光の像」であってもよい。
もちろん、あらかじめ作成した「ホログラム」からの「ホログラム再生像」(立体的な光の像となる。)を用いることもできる。
この「物体」を、所定の波長を選択した、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザー、各種色素レーザー等のコヒーレント光を用いて照明し、図1中の(1)のような光学系を準備し、透過型体積ホログラムを記録する。
もしくは、適宜なホログラム記録用のフォトレジストに、同様な光学系を準備し、透過型体積ホログラムを記録し、現像処理する。
また、この透過型体積ホログラムを図1中の(2)のような光学系を用いて、「物体」のホログラムを、上記で使用した光源を再度用いて、透過型体積ホログラム形成層2に透過型体積ホログラムとして記録することもできる。
透過型体積ホログラムに図1中の(1)または(2)で用いた参照光と同一の照明を行うと、その参照光が透過した方向からの観察により、透過型体積ホログラム形成層2を通して、その向こう側に「物体」の像、すなわち、ホログラム再生像を視認することができる。この「物体」の像から観察者の目の方向へ向かう角度が、「再生角度」である。(図示せず。)
以上の方法を用いる際、「物体」を2つ準備し、2つの光源(第1の波長、及び第2の波長を有する2つのレーザー光源)を用いて、それぞれ体積ホログラム形成に各々、角度を変えて記録して、2つの透過型体積ホログラムを多重記録することができる。
このときに用いる透過型体積ホログラム形成層2は、例えば、2つの光源に感度を持つように、2種類の増感剤を含めたものとする。
また、透過型体積ホログラム形成層2を単層として、その一つの層に多重記録するのみならず、透過型体積ホログラム形成層2を多層として、それぞれの層に、それぞれのフォトポリマーを用い、それぞれの透過型体積ホログラムを記録することも、個々のホログラム再生像の鮮明度を高めるため好適である。
2つの体積ホログラムを多重記録した場合には、2つの観察方向に、各々の「物体」像を見ることができる。(図示せず。)
ホログラムとしては、レーザー再生ホログラム、白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子、複合回折格子で構成されるホログラムや、マシンリーダブルホログラムなどを 適宜、記録することができる。
透過型体積ホログラムは、上記のようにして記録した透明基材1/透過型体積ホログラム形成層2の積層体の透過型体積ホログラム形成層2上に、まだ透過型体積ホログラムを記録していない同様の積層体の透過型体積ホログラム形成層2面を密着させて重ねたものに(インデックスマッチング液等をその間に挿入してもよい。)、適宜なレーザー光を照射する方法により、大量に複製することができる。(図示せず。)
(エレクトロルミネッセンス素子層)エレクトロルミネッセンス素子層3は、上記した透明基材1/透過型体積ホログラム形成層2の積層体の透過型体積ホログラム形成層2上に、構成する層を順次設けていくことで、形成される。(図2〜図4参照。図3及び図5においては、エレクトロルミネッセンス素子層3を一つの「一体となった層」として表し、図4においては、エレクトロルミネッセンス素子層3を構成する各層(個々の層)として、3層構成の例について図示している。)
有機エレクトロルミネッセンス素子、又は無機エレクトロルミネッセンス素子のいずれにしても、まず電極である、陽極4若しくは陰極6から形成する。以下では、陽極4から形成する例について説明する。この方法と同様にして陰極から設けていくことは容易に推察できる。
陽極4の材料としては、例えば、ITO薄膜(インジウム・スズ酸化物薄膜)、酸化インジウム、錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛等の透明導電性材料、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体等の導電性高分子等、を使用して形成することができる。
陽極4の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着法(CVD法)、スピンコート法、キャスト法を用いたゾルゲル法、スプレイパイロリシス法、イオンプレーティング法等の方法、さらには、所望の組成の塗布液を塗布して形成する方法等を採用することができる。
特に、電子ビーム加熱真空蒸着法や、高周波マグネトロンスパッタリング法を採ることが好ましい。具体的には、真空度1×10-7〜1×10-3Pa、成膜速度0.1〜50nm/秒、基材温度−10〜100℃の条件で成膜する。
陽極4の代表的なものは、透明導電性薄膜である、ITO薄膜であり、透過型体積ホログラム形成層2上に、電子線加熱真空蒸着法により、例えば400nm程度形成する。
透明導電性薄膜の導電性は、その表面抵抗値で管理しており、0.01Ω/□以下となるよう、インジウムと錫の加熱速度や、導入する酸素がスの量を制御する。
透明基材1や透過型体積ホログラム形成層2に用いられる透明な樹脂材料は、この薄膜形成による加熱や、金属粒子の衝突等の衝撃によって、変形や劣化を生じやすいため、透明基材1を十分冷却し、高速で処理する。従って、「膜厚さ」を薄く形成する。
透明導電性薄膜の膜厚さ制御を十分行い、膜厚さばらつきが、数%以内にとどめ(400nmの数%→10nmレベル)、透明導電性薄膜の面が、「鏡面」となるようにする。
さらに、透明基材1や透過型体積ホログラム形成層2へのダメージをさらに軽減するために、CVD法(化学蒸着法)等を用いることもできる。CVD法の場合は、透明基材1や透過型体積ホログラム形成層2へのダメージはほとんど無いが、薄膜形成後の加熱処理等付加的な処理を要し、薄膜の表面性もやや粗いものとなる。
この陽極4は、透過型体積ホログラム形成層2の全面を覆うように設けてもよく、または、所望の発光形状の形に設けてもよいが、所望の発光形状の形に設けた場合には、ホログラムシートAまたはA´に対して外部から電界を与えるための「陽極4端子」部分を定め、且つ、その「陽極4端子」部分から「発光形状」に該当する部分までの「電気的導通」を得るため、「引き出し線」部分を設けておく必要がある。引き出し線の幅は、0.5mm〜2.0mmとする。(図示せず。)
次に形成する層は、無機エレクトロルミネッセンス素子の場合には、最も単純な構成としては、この透明導電性薄膜上に、絶縁層を設ける。(図示せず。)
絶縁層として用いられる材料は、具体的には、Y23、Al23、Ta2O5、SiO2、Si34等の非晶質酸化物、BaTiO3、PbTiO3等の強誘電体、SiNx、SiOF、SiOC、Pb(Zr,Ti)O3、(Pb、La)(Zr,Ti)O3、Bi4Ti3O12、さらにはぺロブスカイト型強誘電体、タングステン・ブロンズ型強誘電体、ビスマス層状構造強誘電体等を挙げることができる。
さらに、π電子系の酸−塩基二成分型有機物を利用した有機強誘電体、例えば、クロラニク酸、ブロマニル酸等のような強い酸性度(H+(プロトン)の供与能)の水酸基を有するジヒドロキシ−p−ベンゾキノン類、あるいは、クロラニル酸を酸として、ベンゼン環にプロトン受容基の窒素原子を組み入れたフェナジン(Phz)を塩基として作用させ、1:1の分子化合物としたもの等、さらに、分子間で水素結合を形成して一次元のネットワークを形成したこれらの集合構造分子も使用することもできる。
その形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着法(CVD法)、スピンコート法、キャスト法を用いたゾルゲル法、スプレイパイロリシス法、イオンプレーティング法等の方法、さらには、所望の組成の塗布液を塗布して形成する方法等を採用することができる。
絶縁層である誘電体膜として、代表的には、BaTiO3薄膜を、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、例えば500nmの厚さで形成する。この場合には、や透過型体積ホログラム形成層2上に、既に、金属酸化物薄膜が形成されているため、その耐熱性は比較的高く、比較的容易に薄膜形成を行うことができる。
この層は、絶縁性を確保するためには、厚い方が望ましい(〜2μm)が、透明基材1への負荷を低減するため、及び、その表面性の滑らかさを確保する必要があるため、100nm〜500nmとすることが好適である。
ここで、絶縁層を透明導電性薄膜上の隅々まで形成すると、陽極4端子を設けることができないため、マスキング法により、透明導電性薄膜上の一部を、例えば、2mm×4mmサイズのマスキングを施して、絶縁層を形成する。
さらにその上に、無機エレクトロルミネッセンス素子用の発光層5を設ける。(図4参照。)
発光層5は、所望の発光色の発光蛍光体を用いて形成されたものであり、例えば、赤色発光蛍光体として、ZnS、Mn/CdSSe等、緑色発光蛍光体として、ZnS:TbOF、ZnS:Tb等、青色発光蛍光体としては、SrS:Ce、(SrS:Ce/ZnS)n、CaGa24:Ce、Sr2Ga25:Ceを挙げることができる。また、白色発光蛍光体として、SrS:Ce/ZnS:Mn等が挙げられ、これらの蛍光体を適宜選択して、用いることができる。
発光層5としては、代表的には、母体にZnSを用い、発光中心にMnを添加したものを、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、例えば1μm厚さで形成する。
この発光層5の形成には、厚さの均一性、界面の滑らかさを確保できる成膜方法を採用する。
発光層5形成時にも、上記した位置に同様のマスキング処理を施す。
この上に設ける陰極6は、陽極4と同様の材料を使用し、同様の方法を用いて形成することができる。代表的には、透明導電性薄膜でよく、真空蒸着法で安定的に、例えば、400nm厚さで形成することができる。(図4参照。)
陰極6形成時にも、上記した位置に同様のマスキング処理を施す。
以上の様にして、透過型体積ホログラム形成層2上に、無機エレクトロルミネッセンス素子からなる、エレクトロルミネッセンス素子層3を設けることができ、且つ、陰極6側から観察した場合、陽極4である透明導電性薄膜層が露出して見える。(各端子は図示せず。)
この陽極4と、陰極6の間に、電圧100V、周波数100〜1000Hzの交流電圧を印加すると、エレクトロルミネッセンス素子層3(すなわち、発光層5)において発光が生じ、所定の発光形状を視認することができる。(発光形状は図示せず。)
次に、有機エレクトロルミネッセンス素子について説明すると、上記した、透明導電性薄膜層(陽極4)の上に、発光層5となる有機薄膜を形成し、陰極6で挟んだものが最も単純な有機エレクトロルミネッセンス素子からなるエレクトロルミネッセンス素子2となる。
発光層5は、主材料(ホスト材料)と不純物材料(ドーパント材料)との2成分系であり、発光する不純物材料は、0.1〜1%添加で主材料中に均一に分散されている。
有機薄膜の電子移動度は、高速応答を目的とするものではないため、比較的小さいものでも用いることができ、1×10-6cm2 /V・s以上の値とするのが好ましい。
発光層5である有機薄膜に、低分子系を用いる場合には、
発光層5材料として、ZnPBO(ビス[2−(2−ベンゾキサゾリル)フェノラト]亜鉛)と、ドーピング色素材料として、Coumarin6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)コーマリンを用いて、CVD法を用いて、200nm厚さに形成する。
発光層5である有機薄膜に、高分子系を用いる場合には、
発光層5材料として、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)系、正孔層材料として、PEDOT(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン)+PSS(ポリスチレンスルホン酸:ドーパント)共重合体を、コーティング方式により、固形分を0.5%として、乾燥後の厚さ200nmとする。
また、有機薄膜に、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤や、スチリルベンゼン系化合物、8−キノリノール誘導体を配位子とする金属錯体を併用することも好ましい。また、ジスチリルアリーレン骨格、例えば4,4’一ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等をホストとし、それに青色から赤色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系あるいはホストと同様の蛍光色素をドープしたものを併用することも好適である。
形成方法としては、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(ラングミュア・ブロジェット)法、スパッタリング法等の方法を採用することができる。例えば、真空蒸着法により形成する場合は、真空度1×10-7〜1×10-3Pa、成膜速度0.1〜50nm/秒、基板温度−10〜100℃の条件を採ることが好ましい。
また、結着剤として機能する適宜な樹脂と有機薄膜用の材料とを所定の溶剤に溶かして溶液状態とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、有機薄膜を形成することができる。なお、有機薄膜は、形成方法や形成条件を適宜選択し、気相状態の材料化合物から沈着されて形成された薄膜や、溶液状態又は液相状態の材料化合物から固体化されて形成された膜である分子堆積膜とすることが好ましい。
これらの上に、陰極6として、金属や合金、または、それらの酸化物等、電気電導性化合物、さらには、これらの混合物を使用する。具体的には、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、リチウム、ナトリウム、セシウム、銀、錫等の一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用したり、これらの組み合わせからなる酸化物等することもできる。
陽極4の代表的なものは
代表的には、陰極6として、透明導電性薄膜であるITO薄膜を、上記同様に、例えば400nm程度設け、有機エレクトロルミネッセンス素子からなるエレクトロルミネッセンス素子層3を得る。
有機エレクトロルミネッセンス素子においても、無機エレクトロルミネッセンス素子と同様に、陽極4端子を露出させる方法を取る。
この陽極4と、陰極6の間に、電圧10Vの直流電圧を印加すると、エレクトロルミネッセンス素子層3(すなわち、発光層5)において発光が生じ、所定の発光形状を視認することができる。
(透明薄膜層)透過型体積ホログラム形成層2上に、すなわち、透過型体積ホログラム形成層2とエレクトロルミネッセンス素子層3との間に、透明薄膜層7を設ける。(図5参照。)
この際も、上記したように、エレクトロルミネッセンス素子層3の陽極4端子を露出させ、また、同様にして、陰極6端子も露出させる。(図示せず。)但し、透明薄膜層7が高い導電性を有する場合には、透明薄膜層7の何れかの箇所を陰極と位置付けることも好適である。
この透明薄膜層7は、入射した光を多重反射する必要があるため、透過型体積ホログラム形成層2や、エレクトロルミネッセンス素子層2(特に、陽極4)よりも高い屈折率を有する透明な薄膜であれば、特に限定されない。
透明薄膜層7としては、真空薄膜法などにより形成される金属化合物薄膜層であって、高い透明性を有するものとする。
具体的には、その多重反射性を高めるために、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率が、透過型体積ホログラム形成層2やエレクトロルミネッセンス素子層2のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、その界面での反射率の高いものを用いることができる。
具体的には、屈折率の高い薄膜として、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITOなどがある。
好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Auなどの酸化物もしくは窒化物他、または、それらを2種以上を混合したものなど(透明金属化合物)が例示できる。
透明金属化合物層は、金属化合物の蒸発温度が、金属よりも高いことから、高温加熱を要するものの、その厚さは、透過型体積ホログラム形成層2に記録した透過型体積ホログラムの再生波長をλ(nm)とすると、λ/10〜λ(nm)、すなわち、40〜800nm、好ましくは100〜300nmの厚さになるように、電子線加熱方式の蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などを用いて設けることができる。この厚さが、40nm未満であったり、1000nmを超えたりすると、上記した多重反射性が低下する。
また、透明薄膜層7の上下の界面の平滑性が高い程、透明薄膜層7内の多重反射性が高まるため、形成する厚さを薄くして、その熱的ダメージを少なくすることが好適であり、また、高周波スパッタリング法等の平滑性を高めることが可能な方法を用いることが好適である。
本発明のホログラムシートA、または、A´に、この透明基材1側から自然光や蛍光灯の一般的な照明光として可視光線8をあてた場合、体積ホログラムの波長選択性により、その透過型体積ホログラム再生像9は、その選択された、非常に狭い波長域の光でしか再生されないため(もちろん、その光の干渉効果により「光の強度」が強められる部分を生じるが。)、その透過型体積ホログラム再生像9の明るさは不十分なものとなる。(図6参照。)
しかし、本発明のホログラムシートA、すなわち、その中のエレクトロルミネッセンス素子層3に所定の電界を印加10して、エレクトロルミネッセンス素子層3を発光させることにより、エレクトロルミネッセンス素子層3から所定の波長(域)の光が発生し、この光が透過型体積ホログラム形成層2の参照光となって、明るい透過型体積ホログラム再生像11を非常に明るく、且つ、鮮明に再生するものである。(図6参照。)
本発明のホログラムシートA´についても同様であるが、本発明のホログラムシートA´には、透明薄膜層7が設けてあり、上記のエレクトロルミネッセンス素子層3からの発光、すなわち、所定の発光波長域を有する光(この発光波長域の中に、透過型体積ホログラムの再生波長が含まれている。)が、その下にある透明薄膜層7に入り、この透明薄膜層7内において多重反射し、所定の角度で透過する光の強度を増大させ(その所定の角度が、透過型体積ホログラムの再生角度と実質的に同一となっている。)、それ以外の角度で透過する光の強度を弱めて(すなわち、光の進む方向を選択して)、さらにその下にある透過型体積ホログラム形成層2に入り、その透過型体積ホログラム形成層2に記録されている透過型体積ホログラムを効率よく再生させて、より一層、明るく、鮮明な透過型体積ホログラム再生像を出現させる。(図示せず。)
(実施例1)
膜厚20μmのフォトポリマー(透過型体積ホログラム形成層2となる。)が積層され、その上に保護フィルムとして、厚さ23μmポリエチレンテレフタレートフイルムが積層されたフォトポリマー(デュポン社製「HRF705」)を用い、透過型体積ホログラムとして、アルゴンレーザー(発光波長488nm)を光源とし、図1(1)の光学系を用いて、30mm×50mmサイズの「絵画モチーフ」を透過型体積ホログラムとし、その結像位置を、記録面から2mmの位置として撮影した。
この時、露光強度4.0mWにて、記録角度(図1(1)の参照光の角度。)を透過型体積ホログラム形成層2に対して、(シート状である透過型体積ホログラム形成層2の面の垂線方向に対し)20度とし、70mJ/cm2の露光量となるように照射した後、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、更に120℃で120分間加熱処理し、その透過型体積ホログラム形成層2側を、厚さ50μmで、40mm×60mmの大きさのポリエチレンテレフタレートフイルムシートである、透明基材1に貼り合わせ、その後、上記保護フィルムを剥離して、透明基材1/透過型体積ホログラム形成層2の積層体を作製した。(図3または図4参照。)
回折効率は、25%とした。
その透過型体積ホログラム形成層2の上に、陽極4として、ITO薄膜を電子線加熱真空蒸着法により、400nm厚さで形成した。(図4参照。)ITO薄膜の表面抵抗値は、0.01Ω/□であった。
その上に、絶縁層である誘電体膜として、BaTiO3を、陽極端子を残すため、透明基材1の右下の3mm×3mmの領域に、マスキング処理を施して、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、1.0μmの厚さで形成した。(この3mm×3mm領域が陽極端子となる。図示せず。)
その上に、発光層5として、母体にZnSを用い、発光中心にMnを添加したものを、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、2μm厚さで形成した。(図4参照。)
ターゲットには、硫化マンガン(MnS)を0.5mol%添加した硫化亜鉛(ZnS)を用い、ターゲットガスには、高純度のアルゴンガスを用いた。この時、陽極端子を残すため、上記の3mm×3mmの領域で、マスキング処理を行った。
この発光層5上に、陰極6としてのITO薄膜を、上記のマスキング処理を行って、電子線加熱真空蒸着法により、厚さ500nmで形成し、実施例1のホログラムシートAを作製した。(図4参照。)
この陽極4、絶縁層、発光層5、及び陰極6の4層により、エレクトロルミネッセンス素子層3(無機エレクトロルミネッセンス素子層)が構成されている。(図4参照。)
このホログラムシートAを、室内蛍光灯による可視光線8下で観察すると、「絵画モチーフ」の透過型体積ホログラム(透過型体積ホログラム)の再生像9を視認することができたものの、その明るさや鮮明さはやや不十分であった。(図6参照。図6において、ホログラム再生像は模式的に「H」と表している。)
そして、ホログラムシートAの陽極端子部分と陰極端子部分との間に、100V・100Hzの交流電圧を印加10したところ、緑色の発光(中心発光波長585nm)が生じ、明るく、鮮明な「絵画モチーフ」の透過型体積ホログラム(透過型体積ホログラム)の再生像11を視認することができた。(図6参照。)
これにより、本発明のホログラムシートAは、意匠性の高いホログラムを鑑賞することが可能となるだけでなく、高い偽造防止性を有することを確認できた。
(実施例2)
アルゴンレーザーの発振波長を514.5nmとして、透過型体積ホログラムを透過型体積ホログラム形成層2に記録した。
さらに、陽極4として、ITO薄膜を、電子線加熱真空蒸着法により、300nm厚さで形成し、その上に、正孔輸送材料として、TPAC(1,1−ビス[4-[N,N―ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン)を厚さ100nmで、発光層5として、発光材料であるZnPBO(ビス[2−(2−ベンゾキサゾリル)フェノラト]亜鉛)及びドーピング色素材料として、Coumarin6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)コーマリン)を3%混入させ、厚さ200nmで、そして、電子輸送材料として、BND(2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール)を厚さ100nmで、真空蒸着法により、実施例1と同様のマスキング処理を施して、形成した。
その上に、陰極6として、ITO薄膜を、同様の位置のマスキング処理を施して、電子線加熱真空蒸着法により、厚さ300nmで形成した。
以上により、陽極4、正孔輸送層、発光層5、電子輸送層、及び陰極6からなるエレクトロルミネッセンス素子層3(有機エレクトロルミネッセンス素子層)、及び、透過型体積ホログラム形成層2を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のホログラムシートAを作製した。(図4参照。)
このホログラムシートAを、このホログラムシートAの陽極端子部分と、陰極端子部分との間に、6Vの直流電圧を印加10して発光(中心発光波長520nm)させたこと以外は、実施例1と同様に評価したところ、透明な空間上に緑色の、非常に鮮明な発光による、さらに明るく、且つ、さらに鮮明な透過型体積ホログラム再生像11を視認することができ、意匠性及び偽造防止性により優れると思われたこと以外は、実施例1と同様の結果を得た。(図6参照。)
(実施例3)
透過型体積ホログラム形成層2の上に、透明薄膜層7として、屈折率n=2.1のZnS薄膜を、真空蒸着方式を用いて、240nmの厚さで均一に形成し、この上に、エレクトロルミネッセンス素子層3を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のホログラムシートA´を得た。(図5参照。)
このとき、透明薄膜層7において、高い多重反射性を得るため、透明薄膜層7の上下の層の屈折率、すなわち、上の層である透過型体積ホログラム形成層2の屈折率n=1.50と、下の層である陽極4の屈折率n=1.80、及び、「参照光」入射角度20度、さらに、エレクトロルミネッセンス素子層3の発光波長585nmから、最適な透明薄膜層7の厚さ240nmを算出した。
このホログラムシートA´を実施例1と同様に評価したところ、実施例1より鮮明な透過型体積ホログラム再生像11を視認することができたこと以外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。
(比較例)
エレクトロルミネッセンス素子層を形成せず、ホログラムシートを形成し、比較例とした。
実施例1と同様に観察したところ、目視にてホログラム再生像を確認することができたが、所定の電界を印加しても、何らの変化もなく、このホログラムシートが偽物であると判断することができた。
A、A´ ホログラムシート
1 透明基材
2 透過型体積ホログラム形成層
3 エレクトロルミネッセンス素子層
4 陽極(エレクトロルミネッセンス素子層3を構成する電極層)
5 発光層(エレクトロルミネッセンス素子層3を構成する発光層)
6 陰極(エレクトロルミネッセンス素子層3を構成する電極層)
7 透明薄膜層
8 観察状態の例示:可視光線(照明光)
9 同上 :視認できないか、暗い再生像“H”
10 同上 :所定の電圧の印加
11 同上 :非常に明るく鮮明な再生像“H”

Claims (2)

  1. 透明基材の一方の面に、透過型体積ホログラム形成層、及び、エレクトロルミネッセンス素子層がこの順序で設けられているホログラムシートにおいて、
    前記透過型体積ホログラム形成層には、前記エレクトロルミネッセンス素子層の発光によって再生像が明るくなる第一のホログラムと、
    前記第一のホログラムとは別のホログラムであって自然光下で鑑賞可能となる第二のホログラムとが多重記録されており、
    前記第一のホログラムの回折効率を、前記第二のホログラムの回折効率に対して1/10から1/2としたことを特徴とするホログラムシート。
  2. 前記透過型体積ホログラム形成層と、前記エレクトロルミネッセンス素子層との間に、透明薄膜層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシート。
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