JP6303702B2 - スクラッチラベル - Google Patents

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Description

本発明は、シート基材上の秘密情報表示部を隠蔽するためのスクラッチ隠蔽層が設けられたスクラッチラベルであって、シート基材上の秘密情報表示部を覆うようにスクラッチラベルを貼着することで、その秘密情報を隠蔽することができ、そのスクラッチ隠蔽層をスクラッチにより削り取ると、その秘密情報を視認できるようになるスクラッチラベルに関する。
特に、スクラッチ隠蔽層を削り取ると、秘密情報に重なる形で、鮮明なホログラム再生像が現れ、意匠性に優れるものであると同時に、偽造品や変造品に対する真偽判定を容易とし、且つ、その偽造や変造を非常に困難とすることができる、スクラッチラベルに関する。
本発明において、「シート基材」とは、秘密情報表示部を設けられたプリペイドカードそのもの、もしくは、秘密情報を予め記録してある種々のシート状、カード状、その他の形状を有するものを意味し、その素材も、プラスチック材料、金属材料、その他あらゆる材料を用いたものでよく、本発明のスクラッチラベルによって、その秘密情報を隠蔽することができるものであれば、特に限定するものでない。
また、本発明において、「秘密情報」とは、「その秘密情報を知り得る正当な権利者にのみ開示されるべき情報」を意味し、その「秘密情報」をシート基材上に設ける手段は、適宜な印刷方法や、個別情報を形成できるインクジェット方式を用いた方法、さらには、レーザー印字等、その「情報」としての文字、図形、記号、その他の、少なくとも目視認識可能な、あらゆる「情報」を形成可能な方法を用いることができるものである。
もちろん、そのシート基材上の「秘密情報」と、スクラッチラベルが担持する別の「情報」(秘匿されていても開示されていてもよい。)との単なる組み合わせや、それらの「情報」を各種の情報合成手段等(暗号化処理も含まれる。)により合成して、「正当な権利者に開示される情報が形成される」ものであってもよい。
さらに、本発明において、「スクラッチ」とは、コインや爪等によって「対象となる層」を削り取る行為であって、「対象となる層」を部分的、もしくは、全面的に除去する行為を意味する。特に、「対象となる層」の背後にあるものを視認することが目的であるため、「部分的な削り取り」であっても、「削り取った領域」においては、「対象となる層」の全てを、削り残し無く、除去することとなる。(以下、この「スクラッチ」操作を「スクラッチオフ」とも言う。)
シート基材上に「秘密情報」を設けた部分を、「秘密情報」表示部、「秘密情報」印字部、または、「秘密情報」形成部と、適宜、表現する。
本発明において、体積ホログラム形成層には、可干渉光による光干渉法を用いて干渉縞である体積ホログラムを記録することができ、もしくは、単一光ビーム等の単一エネルギービームによる、その干渉縞の直接形成によっても、体積ホログラムを記録することができる。
これは、体積ホログラム形成層が、「光」その他の「エネルギー」の照射によって、そのエネルギー強度分布に対応した屈折率分布を線形的に形成することができる性質を有することによる。
この性質を利用して、体積ホログラム形成層に、上記したような約1μm周期の連続的、且つ、不規則に変化する「干渉縞」ではなく、目視判定可能なサイズの「『所定パターン』を『表示』可能な『形状』」を持つ「領域」、すなわち、「所定パターン表示領域」であって、且つ、その「領域」内を、その「領域」の周辺部分とは異なる「屈折率値」を有する、「一定の均一な『屈折率』を有する領域」へと変化させた、「屈折率変化領域」を形成する。
本発明においては、「屈折率変化領域」そのものが、「所定パターン表示領域」として記録された「領域」であって、「屈折率変化領域」、もしくは、「所定パターン表示領域」と称される「領域」となっている。
この「領域」は、体積ホログラム形成層内の所定の「領域」であって、1.0μm以下の厚さしか持たない、いわば「二次元平面領域」、もしくは、1.0μm〜体積ホログラム形成層の厚さと同等の厚さまで有する、「三次元体積領域」を成しており、これが、「所定パターン表示領域としての屈折率変化領域」となる。
この「領域」を「所定パターン表示領域」と称すのは、観察者が、その体積ホログラム形成層の形成面に垂直上方から、この「領域」を観察したときに、その「領域」が、「所定のパターン」として認識できるという意味であって、その「領域」が、いわば「二次元平面領域」である場合には、その「二次元平面領域」の形状そのものが、「所定のパターン」を表示することとなり(但し、その「二次元平面領域」が体積ホログラム形成層の形成面に対して傾いて記録されているときには、その形成面への投影形状となる。)、その「領域」が、「三次元体積領域」を有する場合には、その「三次元体積領域」を体積ホログラム形成層の形成面と平行な「面」で切断したときの形状が、「所定のパターン」を表示することとなる。
この「領域」は、その「二次元平面領域」、もしくは、「三次元体積領域」である、「所定パターン表示領域としての屈折率変化領域」に対して、「その領域内」で「エネルギー強度を一定」とした「エネルギー照射」を施すことで得られる。
特に、その「『二次元平面領域、もしくは、三次元体積領域』そのものの形状を持つエネルギーの像」を体積ホログラム形成層内に結像させる、「結像光学系」を用いることで、その領域内の隅々までを、その領域の「周辺領域」の屈折率から「変化」させた「均一な屈折率を有する領域」とし、且つ、「屈折率変化領域」とその「周辺領域」の境界における屈折率変化を「急峻」(この境界線において、「周辺領域の屈折率」から、「その領域内の屈折率」へと急激に変化するという意味。)として、その「領域」の視認性を高めることができる。
これらのことにより、例えば、「真」という文字を表示する「二次元平面領域」(「二次元平面領域」の元の像として、適宜な「平面形状の遮蔽物」に設けた、「『真』を形どった『開口部』」(光の平面像となる)などを用いることとなる。)を、観察した際には、その「二次元平面領域」とその周辺領域の屈折率差による、その二つの領域の界面での「光の反射」現象によって、「真」という文字が体積ホログラム形成層内に表示されているように見える。
ここでは、この「真」という文字が、「所定パターン」である。そして、「『真』を表示する領域」が、「屈折率変化領域」、もしくは、「所定パターン表示領域」となる。
従って、「所定パターン」とは、この「所定パターン」を本発明のスクラッチラベルの正規購入者が目視判定する文字等の「情報」であって、この「所定パターン」には、シート基材上に形成する「秘密情報」と同様の種々の「情報」を採用することができる。
さらには、シート基材上に形成した「秘密情報」とこの「所定パターン」が表示する「情報」とを併せたものが、「広義の秘密情報」を構成するように設定することも可能である。
また、本発明において、「光学的な鏡面」とは、ある「層」の表面の平滑性が、実質的に、平均表面粗さRaで、0.01μm〜0.1μmであることを意味する。そして、この「光学的な鏡面」をその表面に有する「ある層」の上に、その表面平滑性を維持した状態(その表面形状に何らの変化を及ぼさないことを意味する。)で、「別の層」を重ねた際に、この「ある層」と「別の層」との界面が、「光学的な鏡面」であるという。
本明細書において、配合を示す「部」は特に断わらない限り質量基準である。また、「ホログラム」は、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
(主なる用途)通信網やコンピュータネットワークの普及に加え、データを送受信するコンピュータ端末の普及及びその携帯化が進むとともに、わが国においても第三次産業の占める割合が急速に伸び、様々な業者、さらには、公的機関によっても、様々なサービスの提供が行われている。
第三次産業とは、情報通信業、運輸業、郵便業、卸売業、小売業、金融業、保険業、不動産業、物品賃貸業、学術研究または専門技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、教育または学習支援業、医療または福祉関連、電気事業、ガス事業、熱供給事業、水道業、公務、理容美容関連、複合サービス業、レジャーサービス、レンタルサービス、アウトソーシングサービス、交通サービス、外食サービス、エネルギー、エンターテインメント、コンサルティング、その他サービス業と位置づけられているが、このような第三次産業に携わる業者や公的機関は、物品の販売のみならず、特定のサービスの提供によっても対価を得ているため、物品を販売する形態とは異なる形態によっても、顧客や消費者へのサービス提供、もしくは、顧客や消費者(以下、顧客等ともいう。)からの料金や対価(以下、料金等ともいう。)の回収を行っていることが多い。
例えば、その料金や対価の回収方法として、顧客等の銀行口座から、利用したサービスに相当する対価を自動的に引き落とす方法や、信販会社に対してクレジット契約を予め締結しておき、信販会社を介して利用料金を決済する方法などは、ごく一般的な料金等の回収の形態であり、電気料金、ガス料金、水道料金などの公共サービスや、種々の情報提供サービスなどにおける料金等の決済の手法として広く利用されている。そして、プリペイドカードの販売という形式により、将来提供されるべきサービスに対して、料金等の回収を先に行ってしまう方法も普及している方法であり、料金や、運賃、その他の対価の回収に広く利用されている。
さらに、販売する「物品」そのものが、データ端末装置、パーソナルコンピュータ、デスクトップパソコン、オンライン対応ゲーム機、電話回線機器、ファクシミリ、モデム等のデータ回線終端装置、ラジオ受信機や、テレビ受像機等の通信機器(情報機器)、特に携帯して利用可能な通信機器である携帯通信機器(端末)や、携帯して利用可能な情報機器である携帯情報機器(端末)、すなわち、携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー、ポータブルDVDプレーヤー、ポケットコンピュータ、スマートブック、タブレットPC、PDA、電卓、携帯ゲーム機、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ラップトップコンピュータ、ノートパソコン、ハンドヘルドパソコン、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム、電子辞書、電子手帳、電子書籍、ポータブルデータターミナル、携帯電話端末、PHS端末、ポケットベル端末、携帯ラジオ、携帯テレビ、ワンセグ、腕時計、懐中時計、補聴器、ハンドヘルドGPS、防犯ブザー、テレビ電話、GPS受信機、カーナビゲーション端末、リモコン端末、電子マネー、デジタルキー、デジタルロックやポイントカード用のICカード等を用いて顧客に届けられるものとなり、音楽、映画、ゲームソフト等の文字、画像、映像、動画、音声、映画の著作物や、Webアニメ等のマルチメディア関連のコンテンツを、これらの「物品」として、ダウンロード販売、クラウドコンピューティング、音楽配信、IP放送、インターネット放送、インターネットテレビ、インターネット放送ネットワーク、インターネットラジオ、ポッドキャスト、ビデオ・オン・デマンド、動画共有サービス等の手段を用いて配信する方法も広く利用されている。
そして、これらの付加価値の対象である「物品」そのものや、上記した様な種々の「サービス」を受けることができる「資格」や「権利」を顧客に付与するもの、すなわち、それらの付加価値の受領、または、利用を要求している者が、正当な「資格」、または、「権利」を保有している者であるか否かを判定する媒体として、各種のカード類が広く一般的に用いられている。
これらカード類は、身分を証明するIDカード、会員カードや、金銭的価値を有するキャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード、定期券、もしくは、回数券等として多くの分野で使用されており、その数は増加の一途をたどっている。この中で、前払い方式でサービスを提供する際の前払証票、いわゆるプリペイドカードは、特に数量的な増加率が高く、一定単位の金額を予め支払い、その金額分の価値情報を利用できるものとして広く普及している。
そして、そのカード上には、価値情報や識別情報が、基材に印字または印刷表示した絵柄や文字情報として記録され、また、基材上に設けられた磁気記録部または光学記録部、場合によってはICチップに機械読み取り情報として記録されており、用途に応じた様々な情報を保持し、様々な場面でそれらの情報を利用可能とするものである。
そのプリペイドカードの代表とも言えるテレホンカードにおいては、価値情報や識別情報がテレホンカードそのものに記録され、電話端末においてテレホンカードを使用する都度、その通話料金をテレホンカードに記録してある価値情報から減額し、その残金を再びテレホンカードに記録しておくものであったが、その後、テレホンカードの偽造や変造に対処する方式として、テレホンカード上にはランダムな「番号」のみを印字しておいて、テレホンカードの発行、登録、販売、利用、減額処理、登録抹消等を管理しているホストコンピュータ上にその「番号」に対応した価値データを持たせ、テレホンカードの使用者が、そのホストコンピュータにアクセスした時に利用金額分の通話を行うことができるという、いわゆる「スクラッチオフ方式のテレホンカード」、すなわち、秘匿性の許可番号(秘密情報。)を交付する形式のテレホンカードを使用する方式が実用化され、そのカード発行数量も多くなってきている。
この方式では、流通段階において許可番号の漏洩が発生すると、その許可番号を不正に入手した者による不正サービス受給や、正規購入者に対して正当な利用を提供できなくなる等のトラブルを招くのみならず、もはや、「実際にその許可番号を利用した行為」が、正規購入者による行為なのか、もしくは、不正入手者による行為なのかを判別する手段も無くなってしまい、不正行為の特定ができず、従って、その損害額の特定、そして、その特定に基づく損害賠償請求も不可能となる。
このため、テレホンカードにその許可番号を印字した後、その許可番号が第三者に簡単に盗まれることを防止する目的で、削り取り(スクラッチ)が可能な隠蔽層でその許可番号を一旦覆って流通させ、テレホンカード購入者(正規購入者)が、その隠蔽層をスクラッチして除去して、その下に隠蔽されている許可番号を読み取り、その許可番号を利用するという方式である、「スクラッチオフ方式」の採用が必須となっている。
例えば国際電話のアクセス方式として、中継基地となる電話会社(中継会社という。)と契約し、料金先払いで所定の金額(例えば、千円。)を支払うことによりその契約者個有のナンバーが記載されたカードが発行され、国際電話を掛ける際にはカードに表示されたアクセスナンバー(フリーダイヤル。これが秘密情報となる。)を入力して中継会社にアクセスし、次いで契約者個人に与えられた個人ナンバーを入力したのち、相手方の電話番号を入力することによって通話ができるシステムが、国際電話を低料金で掛けられ、且つ、中継会社へアクセスした際に所定秒時コマーシャルを流すことによる宣伝媒体としての利用を図ることができる方式として広く普及しつつある。
このシステムに加入すると、個人に与えられた個人ナンバーはスクラッチ加工(スクラッチ可能な隠蔽処理という意味。)により外部からは完全に見えないように処理されており、このスクラッチ加工部分を削るようにして剥すことにより初めて個人ナンバーが現われるようになされている。
また、従来より、イベントくじやゲーム用カード等において、秘密情報である、例えば、「あたり」又は「はずれ」に相当する絵柄や文字や番号などのくじの結果をスクラッチが可能な隠蔽層で一時的に隠蔽した後、このスクラッチが可能な隠蔽層を爪やコインなどで擦ることで、その隠蔽層の下に表示された秘密情報の内容を見ることができるようにしたスクラッチが可能な隠蔽層付き印刷物は知られている。これらの印刷物は、一般的に複数個所にスクラッチが可能な隠蔽層を設けておき、その中から「あたり」と思われる1ヶ所の隠蔽層をコイン等で削り取ることで、下層に表示された秘密情報の表示を目視で確認するもので、もし仮に2ヶ所以上の隠蔽層を削り取った場合は、無効とするなどの規則とする場合が多い。
さらに、スピードくじや、ファーストフード店等においてサービス的に用いられているチケットは、シート基材に数字や文字等(秘密情報)を印刷した後、その上にスクラッチが可能な隠蔽層を印刷して、下地の印刷が見えないように構成され、くじの購入者やチケットを受け取った者が、爪や硬貨を用いてその隠蔽層を擦り取ると、下地に印刷されている数字や文字等が出現する。この出現した数字や文字を、予め決定されている数字や文字等と比較して、合致した場合には当選が決まるシステム(秘密情報がある意味において暗号情報となっており、他の情報との照合、いわば、解読により、「当たり」が決まる仕組み。)となっている
また、抽せんコードの如き機密の個別データをスクラッチが可能な隠蔽層で隠蔽してあるインスタント抽選付ゲームカードやインスタント抽選付商品等においては、機密の個別データを複雑なゲームにも利用できるものとし、その隠蔽層を擦り取ると、「あたり」の文字や懸賞番号等のメッセージが浮かび上がるように構成されている
このように「スクラッチ方式」は、いわば「簡易くじ」としても用いられており、その用途としては、宝くじなどの各種くじ等の他、商品の購入時の景品提供の手段、教習具や、ケームカード等があるが、より具体的には、携帯電話ショップで、スクラッチ枠を11か所設け、その内5か所だけを擦って、自分の携帯電話番号といくつ一致するかでもらえる景品が決まり、裏面には新規契約の方への特別割引クーポン券がついているもの、大手ドラッグストアで、ポイントカード会員獲得のために、ポイント5倍などのスクラッチに使用するもの、会員登録したその日からクーポン券として利用可能で、クーポン券の利用期間を設けるもの、大手鶏卵メーカーで、大手スーパー量販店様への卵パックの中に封入し、当たりが出たら「当たり券」をハガキに貼って裏面記載の係りあてに応募すると、購入先で使用できる商品券がプレゼントされるもの、住宅展示場、ファーストフードショップ、遊園地、観光スポット、スポーツ観戦に使用されるもの等、さらには、食品業界、ファッション業界、美容業界や医療関係等用の、擦った後に削りカスが出にくいもの等、または、被封くじであって、当せんパターンがスクラッチ印刷され、これを削ることにより抽せんを行う、インスタントくじ、スクラッチ宝くじ等、スクラッチ可能な隠蔽層をパターン状に複数設けて、それらの何れかを削って、所定のマークを出すことができた場合に「当たり」とするもの、そのマークを出すまでの削り回数や、削った軌跡で「当たり」のレベル(例えば商品価格)を定めるもの、そのパターンが、縦横マス目状に設けられ、そのマークがそのマス目のどの位置にあるかによって、「当たり」のレベルを定めるもの等がある。
また、抽選用品としてのスクラッチ三角くじやおみくじ用、キャラクター抽選会、おもちゃの抽選会、菓子等食品の抽選会、生活用品の抽選会等の抽選会景品セット用、サイコロを使う景品セット、輪なげや射的景品セット、おもちゃ釣りや千本つり景品セット、穴あけ宝箱景品セット、ガチャガチャやカプセル景品セット、つかみどりやすくいどり景品セット、詰め放題や玉入れ遊び景品セット、季節の抽選セットや景品抽選セット、夏の花火景品セット、夏の縁日景品抽選セット、夏のサマーグッズ抽選セット、クリスマス景品抽選セット、お正月景品抽選セット、年末年始景品抽選セット等のイベント景品セット用として、
さらには、来店促進のためのお買物券や割引券等、店頭でのイベントなどに用いられる名刺サイズやハガキサイズのもの、イベント案内のダイレクトメールにスクラッチを活用するもの、店頭への誘導にハガキだけでなく、V折やZ折などの圧着ハガキDMへスクラッチ印刷したもの等、1日1回で数十回スクラッチすると、その回数に応じて、景品引換券や、家具や洋服等の店頭で販売している商品が手に入るものや、スクラッチカードの四つ角に決まったアイテムが用意され、これを参考にすれば、欲しいアイテムを効率良く集めることができるように構成されているもの等がある。
このような「スクラッチ方式」の普及により、その「秘密情報」として、単純な「あたり」または「はずれ」の文字や、シリアルナンバー等の番号類のみならず、バーコードや二次元バーコード等の機械認識コード類、顧客データ、メッセージ等、あらゆる語句や記号、もしくは特定のマーク等の図形を固定もしくは可変で構成するもの、さらには、これらの「情報」が発色機構や消色機構を利用して浮き出るものや、特定の光源によってのみ、その「秘密情報」を読み取ることができるものなども提案されている。
(先行技術)上記したように、銀行口座からの自動引き落としや、信販会社を介した決済という方法は、非常に堅実な方法ではあるが、事前の手続きが面倒で、また、サービスの利用開始までに時間がかかるという問題があり、公共料金など利用が不可欠なサービスについては、有効な料金回収方法であるとしても、顧客にとって恣意的なサービスについての料金回収方法としては、必ずしも適切ではなく、利用料金の支払いのための手続きが面倒であったり、実際に利用が可能になるまでに何日も待たされたりすれば、顧客はそのサービスの利用に躊躇せざるを得なくなる。
そのため、プリペイドカードを用いた料金回収方法が、非常に手軽な方法であり、サービスによっては非常に有効な方法であることから、すなわち、通常の物品を購入する場合と同じ形態で、サービスに対する対価の支払いを行うことができ、かつ、プリペイドカードを購入した時点からそのサービスを利用できるようになることから、いわゆる「プリペイドカード方式」が拡大したが、その半面、プリペイドカードの偽造や変造という問題が生じるに至り、すなわち、一般的なプリペイドカードは、磁気的に残存対価を記録する方式を採っているため、この磁気的な記録の改竄という方法による不正利用が蔓延する結果となり、従来の磁気記録を利用した「プリペイドカード方式」は、安全性の面で些か問題があるのではないかとの認識が広がった。
このような理由も追い風となり、カードそのものには金額等の記録を保持せず、「認証番号等」のみを「秘密情報」として保持させて、そのカードを購入した者がその「番号等」を「申告する」ことにより種々のサービスを受けることができるという新規な「プリペイドカードサービス」が普及した。この「番号等」は、「秘密情報」として秘匿するために、スクラッチが可能な隠蔽層等により隠蔽されているため、従来の磁気型プリペイドカードに対して、番号型プリペイドカードとも呼ばれる。
この番号型プリペイドカードには、公衆電話用カード、携帯電話用カード、国際電話用カード等の通信系、ゲームソフトや音楽ソフト、その他有料ソフトの決済カード等の決済系、ショッピングカード、ギフトカード、コインカード等の物品購入系等が実用化されている。
本発明のスクラッチラベルは、このような、付加価値のある「秘密情報」が設けられたカード等の「シート基材」、すなわち、そのカード等を構成している「シート基材」であってその上に「秘密情報」が設けられているものに対して、その「秘密情報」を覆うようにスクラッチ隠蔽層を設けて、その「秘密情報」を第三者に対して秘匿し、その「秘密情報」の開示を受けられる正当な権利を有する者のみが、そのスクラッチラベルのスクラッチ隠蔽層をスクラッチして初めて、その「秘密情報」を確認することができるようにするものである。
この目的を達成するための技術として、特許文献1には、カードそのものには金額等の記録を保持せず、「認証番号等」のみを秘密情報として保持させて、そのカードを購入した者がその「番号等」を「申告する」ことにより種々のサービスを受けることができる、これらのプリペイドカードサービスとして、この「番号等」を、秘密情報として秘匿するために、スクラッチが可能な隠蔽層等で隠蔽する技術が開示されている。
また、インスタント抽選券、秘密情報伝達カード、クイズカード等で、一時的に秘密にしたい情報をシート上にプリンター等で印字表示し、それらの秘密情報表示部の上層に引っ掻くことで破壊されるスクラッチ可能な隠蔽層を形成させてなる「スクラッチカード」が既に広く用いられているが、これらのスクラッチ可能な隠蔽層は、比較的容易に入手できる原料から形成することが可能であるため、偽造や変造を行うことも容易である。
例えば、販売前の段階において、販売関係者が宝くじ等のインスタント抽選券のスクラッチ可能な隠蔽層を一旦引っ掻いて剥離し、抽選番号を見て当たりの抽選券と外れの抽選券を事前に確認して判別しておき、再度抽選番号の表示部分上にスクラッチ可能な隠蔽層を再形成することで、見かけ上、元の状態に戻しておき不正行為が行われたことを気づかれないようにカムフラージュし、当たりの抽選券を知り合いに販売することで特定の客に儲けさせる等の不正行為を働くことも物理的に可能であるため、この対策として、スクラッチ可能な隠蔽層に香料を含んだマイクロカプセルを入れ、真偽判定をする方法が提案されている。しかし、この方法では、正当な使用者がスクラッチした際、バラの匂い等、嗅覚に訴える販促的効果は期待できるが、不正者が一度スクラッチをした後、再度同様の匂いの香料を含むスクラッチ可能な隠蔽層を設けても、その後入手した正当な使用者にとって、目視にて容易に判読できる不正の痕跡を残すことは困難であった。(例えば、特許文献2参照。)
以上のごとき、カムフラージュ行為を直接的に阻止する方法として、スクラッチ可能な隠蔽層の上、または、スクラッチ可能な隠蔽層と基材とに跨るように、ホログラム画像を形成したホログラム層を設け、不正を行おうとする者にホログラム画像の存在を認識させて、「ホログラム層」を形成することの困難さを持って不正行為を阻止しようとする技術も開発されている。(例えば、特許文献3または4参照。)
しかし、これらの技術は、ホログラム層の存在や、そのホログラムデザインが第三者にあらかじめ開示されていることから、そのホログラム再生像に類似した光学効果を有するものを十分な時間を掛けて偽造したり、もともと、この構成自体がホログラム層とスクラッチ可能な隠蔽層を同時に削る仕様となっていることから、「ホログラム層もろともスクラッチ可能な隠蔽層を全て削ってしまった」と偽ることにより、ホログラム層が全く存在しない変造品を持参しながら、あたかも正規品であったかの如く振る舞う等の不正を防ぐことができないという欠点を有していた。
特開平10−214320号公報 特開2001−47777号公報 特開平11−34565号公報 特開2005−305844号公報
本発明は、ホログラム層をスクラッチ隠蔽層の背後に設けて、第三者に対してホログラムの存在、及び、そのホログラムデザインを秘匿可能とし、スクラッチ隠蔽層をスクラッチして初めて、そのホログラムの存在を確認できるという高い偽造防止性と、スクラッチ後には、隠蔽した秘密情報とその鮮明なホログラムデザインを重ねて視認できるという高い意匠性、さらには、そのホログラムが存在するか否かを目視によって判定するという真正性判定の簡易性をも併せ持つスクラッチラベルを提供する。
そして、本発明のスクラッチラベルを、上記した、いわば、「スクラッチカード」となるカード等のシート基材上に設けられた「秘密情報」を覆うようにして、そのシート基材に貼着することにより、「本発明のスクラッチラベルが貼着されたカード等」、すなわち、「秘密情報が隠蔽されたスクラッチカード等」とすることを可能とする。
本発明のスクラッチラベルを貼着したスクラッチカード等においては、ホログラムデザインを第三者に開示していないことから、不正者が、例え、本発明のスクラッチラベルを貼着したスクラッチカード等を複数枚入手して、その構造やホログラムの存在を知り得たとしても、そのホログラムデザインが統一された唯一のデザインなのか、複数のデザインを任意に配したものなのか、もしくは、特定の秘密情報に対して特定のホログラムデザインを対応させてあるものかを知ることができないものとしており、この原理によって、入手したスクラッチカード以外の秘密情報を有するスクラッチカード等に対しての「偽造品」を作ることを事実上不可能とした、スクラッチラベルを提供する。
しかも、そのホログラム層内に、ホログラムとは異なる別の「パターン」が形成されており、さらには、その「パターン」の形成を、そのスクラッチカード形成後に施すことで、個々のスクラッチシートに個々の「パターン」記録を設けることをも可能として、その変造や偽造をさらに困難としたスクラッチラベルを提供する。
また、スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム層の界面を「光学的な鏡面」として、そのホログラム再生像の鮮明度を確保して、これを偽造することを非常に困難とし、さらには、スクラッチ隠蔽層に平均粒径の異なる顔料を配して、不正な目的でカードを湾曲させたりしたときに、その剥離痕を発生させ、もはや、その剥離痕を修復することは不可能となる構造として、その偽造防止性を著しく高めることを可能としたスクラッチラベルを提供する。
上記の目的を達成するために、
本発明のスクラッチラベルの第1の態様は、
シート基材上に設けられた秘密情報を隠蔽するスクラッチラベルであって、平均粒子径1.0μm〜10μmの顔料及び、平均粒径0.01μm〜0.1μmの微粒子顔料を含むスクラッチ隠蔽層、体積ホログラム形成層、及び粘着層がこの順序で構成され、前記体積ホログラム形成層に、屈折率変化領域として記録された所定パターン表示領域が含まれており、且つ、前記スクラッチ隠蔽層をスクラッチにより除去することにより、前記秘密情報、前記屈折率変化領域として記録された前記所定パターン表示領域、及び、前記体積ホログラム形成層から再生される体積ホログラム再生像が視認可能となることを特徴とするものである。
上記第1の態様のスクラッチラベルによれば、
シート基材上に設けられた秘密情報を隠蔽するスクラッチラベルであって、スクラッチ隠蔽層、体積ホログラム形成層、及び粘着層がこの順序で構成され、前記体積ホログラム形成層に、屈折率変化領域として記録された所定パターン表示領域が含まれており、且つ、前記スクラッチ隠蔽層をスクラッチにより除去することにより、前記秘密情報、前記屈折率変化領域として記録された前記所定パターン表示領域、及び、前記体積ホログラム形成層から再生される体積ホログラム再生像が視認可能となることを特徴とするスクラッチラベルを提供することができ、その「秘密情報」の覗き見や、偽造及び変造を困難とし、その偽造防止性を著しく高めたスクラッチラベルを提供することができる。
本発明のスクラッチラベルの第2の態様は、
前記スクラッチ隠蔽層と前記体積ホログラム形成層との界面が、「光学的な鏡面」であることを特徴とするものである。
上記第2の態様のスクラッチラベルによれば、
前記スクラッチ隠蔽層と前記体積ホログラム形成層との界面が、「光学的な鏡面」であることを特徴とする第1の態様のスクラッチラベルを提供することができ、より鮮明なホログラム再生像を出現可能とし、その偽造防止性と意匠性を高めたスクラッチラベルを提供することができる。
本発明のスクラッチラベルの第3の態様は、
前記スクラッチ隠蔽層の前記体積ホログラム形成層が形成されている面とは反対の面に、地紋印刷が施されていることを特徴とするものである。
上記第3の態様のスクラッチラベルによれば、
前記スクラッチ隠蔽層の前記体積ホログラム形成層が形成されている面とは反対の面に、地紋印刷が施されていることを特徴とする第1の態様または第2の態様のスクラッチラベルを提供することができ、より偽造防止性と意匠性を高めたスクラッチラベルを提供することができる。
本発明のスクラッチラベルの第5の態様は、
第1〜第の何れかの態様のスクラッチラベルにおいて、前記体積ホログラム形成層に記録された前記屈折率変化領域が、前記スクラッチラベルを、前記シート基材上に設けられた前記秘密情報を覆うように、前記シート基材上に貼着した後に、結像光学系を用いて設けられることを特徴とするものである。
上記第5の態様のスクラッチラベルによれば、
第1〜第の何れかの態様のスクラッチラベルにおいて、前記体積ホログラム形成層に記録された前記屈折率変化領域が、前記スクラッチラベルを、前記シート基材上に設けられた前記秘密情報を覆うように、前記シート基材上に貼着した後に、結像光学系を用いて設けられることを特徴とするスクラッチラベルを提供することができ、その偽造防止性と意匠性をさらに高めたスクラッチラベルを提供することができる。
本発明のスクラッチラベルに用いられる、体積ホログラムが形成された体積ホログラム形成層は、フォトポリマーフィルム等の透明なフィルムそのものを、体積ホログラムを有する「体積ホログラム形成層」とする方法、または、適宜な透明基材面に、フォトポリマー等の感光材料をコーティングして、体積ホログラムを有する「体積ホログラム形成層」を設けた積層体とし、その積層体の体積ホログラム形成層側をスクラッチ隠蔽層や粘着層に重ねるように積層した後、その適宜な透明基材を剥離して(転写して)形成する方法等により得られる。
本発明のスクラッチラベルが貼着されるシート基材としては、秘密情報表示部を設けることができ、本発明のスクラッチラベルとの貼着性(接着性)を有するものであれば、あらゆる材料、すなわち、プラスチック材料、金属材料、セラミック材料、生体材料、それらの複合材料、さらには、それらを多層構造としたものなどを用いることができる。
また、シート基材の形状も、あらゆる形状、すなわち、シート状、フィルム状、板状、立方体状、直方体状、カード状、はがき状、伝票状、封筒状、円盤状、楕円体状、球体状、棒状、及びこれらの組み合わせや、これらに変形、切断、穴あけ、接着等の加工処理を施したものなどを採用することができる。
その厚さも、秘密情報表示部を支持することができ、且つ、ハンドリング可能であればよく、特に制限はないが、通常、3.0μm〜3.0mmの厚さとする。もちろん、封筒状や、箱状のものであれば、その立体形状の寸法は、それぞれの用途に適したものとするため、この範囲内とする必要はない。
但し、これらのシート基材上に設けた秘密情報を本発明のスクラッチラベルで秘匿することとなるが、そのスクラッチラベルを設けた側面とは反対の側面から、シート基材に対して、強度の大きい可視光線や、赤外線、紫外線、X線等、さらには、電子線等の粒子線(以上を総称して「光線」と称する。)を照射して、その「透過『光線』」や「反射『光線』」、さらには、特性X線等から、その秘密情報そのものを読み取ろうという試みに対抗するため、そのシート基材の性質として、これらの「光線」を「遮蔽」したり、「反射」、もしくは、「散乱」させる性質を保有することが望ましい。
これらシート基材の代表例としては、いわゆる「プリペイドカード」として用いられている基材及び形状や、「プラスチックカード」として用いられている基材及び形状、特に、JIS規格やISO規格で定められているものがある。すなわち、その「埋め込み適正」及び「汎用性」(加工汎用性を含む。)から、「JIS規格やISO規格で定められている『プリペイドカード』として用いられている基材及び形状」が望ましい。
これらは、既に、世の中に大量に頒布され、普及しているため、そのハンドリングや、保持することに抵抗感がなく、また、それらを携帯したり、使用したりする場合の周辺機器や、関連グッズ等も既に普及しているため、これらのものへの適用もスムースであって好適である。
本発明のスクラッチラベルを貼着した「スクラッチカード」(本発明のスクラッチラベルをシート基材に、そのシート基材上の「秘密情報」を覆うように設けたもの。「スクラッチカード等」ともいう。)が秘匿する「秘密情報」としては、暗証番号、個人認証番号、口座番号、その他の個人特有の番号または記号や、抽選番号または記号、管理番号または記号等、もしくは、単なる連続番号や記号であって、登録することによりその有効性を発現するもの、暗号鍵番号である共通鍵番号のように同一の番号、さらには、全くの乱数であってスクラッチカードのシート基材を作製するときに発生させ作製者も含め誰もその番号の内容を知り得ないように工夫した番号等、知ることが許された者(正規な購入者等を意味する。もちろん、スクラッチカードのシステム設計者や、スクラッチカード発行者等が含まれる場合もある。)のみが見ることができ、その他の者は物理的に見ることができないよう設定される番号または記号等がある。
また、そのスクラッチカードの用途により、番号または記号のみならず、文字、図形、マークその他、個人及びそのスクラッチカードの供給者が共通に認識できるもの(この対象は、いわゆる「情報」全てとなる。)であれば何れも用いることができる。そして、その認識方法も、少なくとも目視確認により認識できる情報を有しながら、目視以外の認識方法、例えば、光学読取方法、磁気的読取方法、その他、あらゆる物理的もしくは化学的読取方法を採用することができ、且つ、秘密情報と重ねて視認できる体積ホログラム再生像の中にも、ホログラム再生原理を利用した光学読取方法を含めることができて、いずれも、その偽造防止性を高めるために好適である。
この「秘密情報」をスクラッチカードのシート基材上に設ける方法としては、可変情報を形成する方式として、感熱溶融転写方式、昇華転写方式、光学的もしくは物理的直接描画方式、電子写真方式及び、インクジェット方式等があり、固定情報を形成する方式としては、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、活版印刷方式、凹版印刷方式、スクリーン印刷方式等がある。
また、シート基材そのものを発色材料や消色材料で構成し、その発色原理や消色原理を用いて、可変情報や固定情報を記録する方法を用いてもよい。
すなわち、電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱発色材料からなるシート基材や、基紙となる紙材料やフィルム材料上に、電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱発色層を設けたもの、さらには、それらの基紙上に、カプセル内包の発色剤と顕色剤とからなる感圧発色層を設けたものを、シート基材として用いることができる。
また、発色と消色を繰り返して操作できる、感温材料等を用いたサーマルリライタブル層や、フルギド系やスピロピラン系などのフォトクロミック材料等を用いる光リライタブル層を設けることも、その意外性や偽造防止性が高まり、好ましい。
特に、これらの「リライタブル層」を設けて、「秘密情報」を表示させると、正規購入者が、その「秘密情報」を確認するときのみ「秘密情報」が現れ、それ以外のときには「非表示」とすることで、不要な第三者による「秘密情報」の視認を阻止することができる。
感熱発色材料としては、発色剤、顕色剤、及び、増感剤からなる系を用いることができ、発色剤としては、ベンゾイルロイコメチレンブルー、クリスタルバイオレットラクトン等のフタリド化合物等、顕色剤としては、4−4´ビフェノール、1−ナフトール等の酸など、さらに、増感剤としては、4−ベンジルビフェニル、フルオレン等を用いる。
感熱記録とは,基紙上の層に分散させた発色剤及び顕色剤を熱により溶融させ、接触させることにより発色させる仕組みである。その高感度化のために、低融点の増感剤を添加するが、様々な酸発生方法とこの発色機構を組み合わせることにより、繰り返しの書き込みや消去が可能なリライタブル感熱記録を実現できるものである。例えば、低い熱エネルギーにて発色する赤色感熱記録層と,高い熱エネルギーにて発色する黒色感熱記録層を積層させることにより,その印加エネルギーを使い分けることで赤/黒の2色での記録を可能にする2色発色感熱記録材料を用いてもよい。
これらのロイコ系感熱発色材料や、フォトクロミック系光発色材料は、その発色機構である「紫外領域または赤外領域→可視領域への変化」を、「可視領域→紫外領域または赤外領域への変化」とすべく材料選定をすることにより、消色記録材料として用いることができる。
このような消色機構を用いると、正規購入者が、その「秘密情報」を確認した後、正規購入者の判断により、速やかに、もしくは、適宜なタイミングで、「秘密情報」を消色(消去)することを可能とし、その偽造防止性を高めることを可能とする。
また、シート基材上へ「秘密情報」を設ける位置、もしくは、配置についても、特に制限は無いが、プリペイドカード等のように、薄く強靭な素材を用いた場合には、そのシート基材を容易に湾曲させることができるため、そのシート基材の中央部分に設けることを避け、その右端、もしくは、左端、さらには、上端、もしくは、下端に設けることが望ましい。(湾曲した際に、スクラッチ隠蔽層にその変形圧力が掛からないように配慮するという意味。)もしくは、湾曲した際の比較的曲がっていない部分に、2箇所またはそれ以上の箇所に分散して設けてもよい。
また、磁気カード仕様や、ICカード仕様上のいわゆる「禁止エリア」(磁気部エリアやIC部エリアのように、印刷やエンボス加工等を禁止しているエリアのこと。所定の機能以外のものを設けることを禁止しているエリアを意味する。)を避けて設けたり、さらには、カードに加える様々な加工処理、例えば、エンボッシング処理、磁気記録処理、接触タイプのICチップ加工処理、非接触タイプのICチップやアンテナ類の加工処理、サインパネル加工処理やホログラム加工処理において、不具合が発生しない位置に設ける。
また、「秘密情報」を一つの位置に設けるのみ(一つの情報として読み取ることができるものが一か所に固まっているという意味。)ならず、シート基材上に、分散して複数の位置に設けたり、シート基材の表裏に設けることも、その秘匿性が向上し好適である。もちろん、その場合には、それぞれの位置に、それぞれのスクラッチ隠蔽層を設けることは言うまでもない。
上記した方法、または、方式により、その「秘密情報」をスクラッチカードのシート基材上に形成し、
スクラッチ隠蔽層、体積ホログラム形成層、及び、粘着層からなる本発明のスクラッチラベルを、適宜な配置で、その「秘密情報」を覆うように設けた後、そのスクラッチ隠蔽層をスクラッチにより除去すると、その「秘密情報」が視認可能となると同時に、スクラッチ隠蔽層の背後にある体積ホログラム形成層から再生される体積ホログラム再生像が視認可能となるスクラッチカードを作成することにより、その「秘密情報」を第三者が目視によって判読したり、不正者が盗読することを防ぎ、且つ、正当な使用者がスクラッチ隠蔽層をスクラッチして、その「秘密情報」を判読できるスクラッチカードを提供することができる。
ここで、体積ホログラム形成層の背後、すなわち、体積ホログラム形成層と粘着層との間に黒色層を設けて(もちろん、「秘密情報」形成部の視認性を阻害しないように、「秘密情報」形成部に対応する領域を除いて設けることとなる。さらには、粘着層そのものを黒色層としてもよい。)、体積ホログラム再生像を非常に鮮明なものとすることができ、その偽造防止性を高め、且つ、意匠性を高める効果があり、好適である。
また、スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム形成層との間に地紋印刷を施したり、もちろん、スクラッチ隠蔽層上に(最上層の上に)、地紋印刷を施すことも、その偽造防止性を高めたり、意匠性を高める効果があり、好適である。
本発明に用いられる体積ホログラムは、その体積ホログラム形成層の層中に、種々の屈折率のパターンとして、そのホログラム画像を形成する(ホログラム記録ともいう。体積ホログラム形成層は、ホログラム記録用媒体にホログラム画像を形成した際の記録層を意味する。)、いわゆる、位相ホログラムであって、この体積ホログラムが透過型ホログラムである場合には、その体積ホログラム形成層に光をあて、これを透過させるとき、光の位相は、「屈折率のパターン」により変調され、その先においてホログラム再生像を観察することができる。また、この体積ホログラムが反射型ホログラムである場合には、その体積ホログラム形成層に光をあてると、この体積ホログラム形成層に侵入した光の位相は、「屈折率のパターン」により変調されると同時に反射され、その戻り光においてホログラム再生像を観察することができる。
ホログラム画像として画像化される「物体」(一般的には、3次元物体、もしくは2次元物体が用いられる。もしくは、「物体光」を与え得るものであれば、「光学系」であっても、別途作成したホログラムからの「ホログラム再生像」であってもよい。)は、レーザー等が発振するコヒーレントな光によって照明され、そして感光性の記録用媒体が、この「物体」から反射(発散)された光を受けるように配置される。「物体」上の各点は記録媒体の全体に対して光を反射し、また記録用媒体上の各点は「物体」全体からの光を受け入れる。この反射(発散)された光束は「物体光」といわれている。
同時に、コヒーレントな光の一部は「物体」をバイパスし(「物体」を避けて通るという意味。)、反射鏡等により、記録用媒体に向けられる。この光束は「参照光」といわれている。
記録用媒体上に記録されるものは、媒体上に当たった「参照光」と「物体光」との相互作用で生ずる「干渉パターン」であり、この記録が、ホログラムとなる。
この記録用媒体、すなわち、記録されたホログラムが、照明され、適切に観察されるとき、照明光源からの光は、「物体」から記録用媒体にもともと到達した波面を再生するように、そのホログラムにより回折され(透過、または、反射され)、それにより、ホログラムは、透過側、または、反射側からの観察者に対して、「物体」の虚像を、記録媒体という「窓」を通して、完全な遠近差をもつ3次元の「物体」を見たように、認識させる。
本発明のスクラッチラベルに用いられる体積ホログラム形成層には、その「反射型ホログラム」、または、「透過型ホログラム」のいずれをも記録することができる。
「反射型ホログラム」を記録した場合には、本発明のスクラッチラベルのスクラッチ隠蔽層をスクラッチオフした際、体積ホログラム形成層にて反射されて観察側に戻ってくる「体積ホログラム再生像」を視認することができる。
また、「透過型ホログラム」を記録した場合には、体積ホログラム形成層を透過した光が、体積ホログラム形成層の背後にある、シート基材との界面にて正反射して、もしくは、黒色層との界面にて吸収されなかった光が正反射して、観察側に戻ってくる「体積ホログラム再生像」を視認することとなる。
「透過型ホログラム」は、「参照光」と「物体光」を同一の側から記録用媒体中に入射させ、両者がほぼ同じ方向に進行するようにして形成したホログラムであって、体積ホログラム形成層自体を透明なものとすることにより、その「位相分布」のみを記録として残したものである。
この場合において、記録媒体中の「物体光」と「参照光」との相互作用は、屈折率の変化する材料の屈折率変化という「フリンジ(干渉縞)」を形成するが、このフリンジは、記録用媒体の面に対して、「物体光」と「参照光」とが対称な角度で入射する場合には、ほぼ垂直なフリンジとなる。そして、その「物体光」と「参照光」とが非対称な角度で入射する場合には、そのフリンジは、記録用媒体の面に対して、やや傾いたものとなる。
また、「反射型ホログラム」は、「参照光」と「物体光」を反対の側から記録用媒体中に入射させ、両者がほぼ反対方向に進行するようにして形成したホログラム、いわゆる、「リップマンホログラム」である。(以下、体積ホログラムであって、反射型ホログラムとしたものを「リップマンホログラム」ともいう。)
この場合において、記録媒体中の「物体光」と「参照光」との相互作用は、屈折率の変化する材料の屈折率変化という「フリンジ(干渉縞)」を形成するが、このフリンジは、記録用媒体の面に対して、ほぼ平行な面となる。
このリップマンホログラムを再生するとき、これらの各フリンジは入射光を観察者に向けて反射する「鏡」として作用し、それで、このリップマンホログラムは、「透過」よりもむしろ「反射」で観察される。
このように形成された「ホログラム」は、「波長感度」が甚だ高いため(波長選択性のこと。特定の波長にのみ作用するという意味。)、その再生には、「白色光」を用いることができるものである。
すなわち、ホログラムを記録した際の光源に用いた波長の光をあらかじめ準備してその光で再生しなくとも、容易に得られる、広い波長領域を持つ光(例えば、波長範囲が可視光線波長[400nm〜800nm]をカバーするような太陽光や、ハロゲンランプ光など。)を、その再生光として用いたとしても、その「ホログラム記録に用いた波長」以外の波長の光(「ホログラム記録に用いた波長」以外の波長成分という意味。)は、ほとんど位相変化を受けずそのまま透過し、「ホログラム記録に用いた波長」の光(該当する波長成分という意味。)のみ反射して、その光の像(該当する波長成分により作られる、リップマンホログラム再生像)を、視認することができる。
これらの「反射型ホログラム」、または、「透過型ホログラム」を「体積ホログラム形成層」に記録するには、上記したように、光学系を用いて、直接、「体積ホログラム形成層」にホログラムの干渉縞を記録することもできるが、予め、「反射型ホログラム」、または、「透過型ホログラム」を記録した「マスター版(「未記録感光材料」と「記録済み感光材料」をマッチング液等を介在して積層し、両層にレーザー照射を行う等の、光学的な複製を行うための『複製用マスター』という意味。)」を準備し、その「マスター版」を用いて、「体積ホログラム形成層」に光学的手段によって「複製」することも好適である。もちろん、その併用も望ましい。
そして、それらの「直接的なホログラム記録」または「複製によるホログラム記録」を、シート基材上に貼着してある状態の「体積ホログラム形成層」に、追加記録として施すこともでき、この方法は、多様なホログラムデザインを用いたり、個々のスクラッチカードに個別のホログラム記録を施す場合に好適である。
特に、スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム形成層を積層した状態で、体積ホログラム形成層に、体積ホログラムを記録したり、複製したりする際(形成する際)、体積ホログラム形成層とスクラッチ隠蔽層の界面の状態、すなわち、この界面から反射する光の状態が、そのホログラム記録や複製の、精度や品質(すなわち、体積ホログラム再生像の鮮明度。)に大きな影響を及ぼし、また、ホログラム再生像を観察し、その真正性を判定する際には、観察(判定)するための照明光が、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフして露出した体積ホログラム形成層の露出面(スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム形成層との界面)を通過するため、この界面の状態、すなわち、この界面を通過する光の状態が、その体積ホログラム再生像の鮮明度に大きな影響を及ぼす。
従って、スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム形成層の界面が「光学的な鏡面」であることは非常に重要であって、特に、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフした後の体積ホログラム形成層の露出面の「光学的な鏡面」性の維持は必須要件となる。
但し、その真正性判定の際に現われる体積ホログラム再生像に「ぼかし効果」等の特殊効果を付与する場合には、敢えて、それらの層の界面(スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム形成層との界面。もしくは、体積ホログラム形成層と黒色層との界面、さらには、シート基材の粘着層と接している表面。)を0.1〜5.0μm程度の「粗面」とすることも好適である。
この「粗面」化処理は、例えば、スクラッチ隠蔽層の体積ホログラム形成層と接している面、体積ホログラム形成層の表面や、黒色層、さらには、シート基材の表面に対して施す場合には、例えば、2枚の「表面鏡面仕上げのステンレス板」に、スクラッチ隠蔽層そのものや、スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム形成層の積層体、もしくは、シート基材そのもの等を挟み込んで、適宜な加熱、及び適宜な加圧処理を施す際に、その「表面鏡面仕上げ」を「上記の粗面仕上げを部分的に施し、それ以外の領域た表面鏡面仕上げ、もしくは、全面に粗面仕上げ」としたステンレス板に挟みこむことで、施すことができる。
ホログラムの原理で作製される「ホログラフ鏡」は、「反射型ホログラム」の最も簡単なものである。これは、2つのコヒーレントな平面波を、記録用媒体に対して反対の方向から投射し、記録用媒体中でその2つのコヒーレントな平面波が交差する、ホログラムである。これは単一のレーザー光を分割し記録用媒体の所で両光を合体させるか、あるいは分割しないレーザー光を、記録用媒体を通して、その後ろの「平面鏡」上に投射することにより作ることができる。これにより均一な間隔のフリンジの「一組」が形成され、投射された2つの光間の鈍角の2等分線に対して平行に配列され、三角関数の強度を有することになる。
この鈍角が、「180度」であり、2つの投射した光の波面が媒体の面に対して直角であるならば、各フリンジは媒体の面に対して平行となる。
そして、この鈍角が、「180度以下」であるか、または2つの光が媒体の面に対して直角でないときは、反射性のフリンジは媒体の面に関して鋭角に傾いて形成される。ホログラフ鏡はその反射効率、屈折率変調、および反射光の分光帯域と分光特性などにより特性化される。
「反射ホログラム」を形成する実質的に水平なフリンジは、「透過型ホログラム」を形成する垂直なフリンジよりも、記録することが困雌である。
その第1の理由は、より高い解像性、すなわち、単位長さ当りに、より多数のフリンジが必要であって、フリンジの間隔は非常に小さくなる。「反射型ホログラム」は「透過型ホロクラム」よりも単位長さ当り約3倍〜約6倍多いフリンジを必要とする。
その第2の理由は、記録用媒体の収縮に対する水平なフリンジの敏感性である。露光中の記録用媒体の収縮はフリンジの消失を招き、もし収縮がひどいときはホログラムの形成が妨げられる。これは「透過型ホログラム」の場合とは対照的なものであり、「透過型ホログラム」では収縮はほとんど影響がないか、あるいはフリンジが媒体の面に対して直角ならば影響がなく、フリンジが媒体の面から45度以上傾いているときに、比較的僅かな画像の歪みを生ずるだけである。
従って、透過型ホログラムの再生像を真正性判定に使用することは好ましい。
そのような、体積ホログラムを形成する、体積ホログラム形成層には、各種の透明な材料又は、透明なフィルムが用いられる。
すなわち、銀塩写真乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト、フォトポリマー材料、無機材料からなるフォトリフラクティブ材料、フォトクロミック材料等及び、それらの材料からなるフィルムがある。
銀塩写真乳剤としては、高感度及び、高解像度が求められる。
フォトレジストには、ポジ型フォトレジストと、ネガ型フォトレジストをいずれも用い得る。
フォトポリマー材料としては、架橋型フォトポリマー、ラジカル重合型フォトポリマー、カチオン重合型フォトポリマー、化学増幅型フォトポリマー、ナノ粒子分散系フォトポリマー等を用いることができ、その取り扱い適正は、特に優れる。
フォトクロミック材料は、光や熱等の特定の環境下において、その色調が変化するため、その意匠性はさらに高いものとなる。
重クロム酸ゼラチンは、その屈折率変調の高さ(すなわち、高い回折効率、帯域幅対応性)から、「反射ホログラム」の製作に選ばれる材料である。但し、重クロム酸ゼラチンは保存性に課題があり、「反射ホログラム」形成後に、湿式処理を必要とする。このため、この材料はホログラム記録の直前に新たに調製しなければならず、あるいは、予備硬化させたゼラチンを使用しなければならず、画像の再生効率を低下させる。
湿式処理は、ホログラム形成に際し、付加的工程をもち込むことになり、そして処理中に材料が膨潤し、ついで収縮する際に寸法的な変化を生じやすい。これらの寸法的な変化はフリンジの間隔に影響する。従って、重クロム酸ゼラチンによって高品質の「反射ホログラム」を作製することは、時間がかかり、かつ、困難である。
いくつかの処理工程を必要とする、銀塩写真乳剤、或いは、重クロム酸ゼラチンに対して、1回処理工程のみを必要とする固体光重合性材料、すなわち、フォトポリマー材料は、好適である。
フォトポリマー材料の例としては、固体の光重合性組成物であって、熱可塑性重合体結合剤、付加重合可能なエチレン系不飽和単量体、及び、不飽和単量体の重合を活性化する光開始剤からなる、屈折率変調を有する光重合性組成物が挙げられる。
熱可塑性重合体結合剤は、溶媒可溶性の熱可塑性重合体であるが、単独で、又は、互に組合せて使用することができ、例えば、アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、ポリビニルエステル、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジェン及びイソプレン重合体及び共重合体、エポキシ化物、ポリアミド等、並びに、それらの混合物を使用できる。
エチレン系不飽和単量体は、単一の単量体として、又は、組合せて使用することができる単量体として、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル等を用いることができる。
光開始剤としは、遊離ラジカル発生付加重合開始剤等を使用することができる。
フォトポリマー材料としては、さらに、フッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤を有する、光重合性組成物を用いることができる。
フッ素含有ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンまたはへキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーとビニルアセテートとから作られたポリマーが挙げられる。
コヒーレント光による露光によって、このモノマーは、未露光域とは異なる屈折率とレオロジー的性質をもつ、高分子量のフォトポリマーを形成するように(光)重合する。この高分子量のフォトポリマーは実質的に固体ではあるが、各成分は電離放射線による一様、且つ、全面に渡る露光、または、高温度で熱処理することで「定着」されるまでは、コヒーレント光による露光中、および、露光後も、内部拡散をする。
このフォトポリマーは、その厚さと屈折率変調とにより決定される、所定の中心波長、及び、波長領域(分散帯域)をもつ光を反射する。そこで、その厚さは、用途、および、光学系の光学的な要請、すなわち使用中にホログラムを照明(再生)するのに用いる光の帯域幅、に対して一致させられる。一般的に狭い帯域幅用の応用には、比較的厚いフォトポリマーが選ばれ、広い帯域幅用の応用には比較的薄いフォトポリマーが選ばれる。
使用されるフッ素含有ポリマーは、フォトポリマーのその他の各成分と両立し得るフッ素含有ポリマーであり、塗布されたときに実質的に固体の透明な皮膜を作るものである。
「実質的に固体」とは塗布された皮膜が、溶剤を除去した後に、一般的に固体材料の有している諸特性(例えば寸法安定性)を有していることを意味している。
フッ素含有ポリマー中のフッ素の存在は、一般に、フォトポリマーの屈折率を低下させ、これによりホログラム画像化後のフォトポリマーにおいて、増加した(「より大きな」という意味。)屈折率変調が達成される。屈折率変調は、フッ素含有量の増加とともに増大するが、フォトポリマーに不透明化を起こさせないためには、そのフッ素の存在量は限定される。
従って、フッ素の含有量は、その効果が、1%のような低レベルにあっても達成されるものの、代表的には、10〜20%の範囲内とされる。フッ素の含有量は、用途に応じた屈折率変調を達成するために調整可能である。
フッ素は、フッ素含有ポリマーを構成する他のモノマーとフッ素含有モノマーとを共重合するか、または、フッ素含有ポリマーとの反応により導入する。例えば、フッ素含有ポリマーが、アルコール、または、酸置換基のような官能基を含むとき、フッ素を導入するためには縮合、アセタール化、ケタール化、またはエステル化反応などが使用できる。
フッ素含有ポリマーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルアセタール/ブチラール、またはプレポリマー類あるいはこれらの混合物と、フッ素化モノマーとのポリマー類等を用いることができる。
以上のフッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤からなる、光重合性組成物は、その透明性を維持しつ、大きな屈折率変調を有するため、高い透明性と、鮮明なホログラムの再生を必要とする、本発明のスクラッチラベルに好適である。
また、透明な樹脂、すなわち、光重合性組成物としては、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、特定波長の光に感光してラジカル重合性化合物を重合させる光ラジカル重合開始剤系、及び上記特定波長の光に対しては低感光性であり、別の波長の光に感光してカチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料が用いられる。
この光重合性組成物は、光ラジカル重合開始剤系が感光するレーザー光等の光を照射し、次いで光カチオン重合開始剤系が感光する上記レーザー光等の光とは別の波長の光を照射することによりリップマンホログラムが記録される。レーザー光等の光の照射(以下、第1露光)によってラジカル重合性化合物を重合させた後、カチオン重合性化合物は、その次に行う全面露光(以下、後露光)によって組成物中の光カチオン重合開始剤系を分解させて発生するブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合するものである。
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行なわれるように室温液状のものが用いられる。そのようなカチオン重合性化合物としてはジグリセロールポリグリシジルエーテル等が例示される。
ラジカル重合性化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きく、好ましくは0.02以上大きいとよく、小さいと屈折率変調が不十分となり好ましくない。ラジカル重合性化合物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が例示される。
光ラジカル重合開始剤系は、体積ホログラム作製のための第1露光によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させる開始剤系であればよく、また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いてもよい。光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明体積ホログラムとする場合には、シアニン系色素が好ましい。
シアニン系色素は、一般に光によって分解しやすいため、後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することにより、体積ホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムが得られる。
このような無色透明性は、体積ホログラム再生像の鮮明度を向上させるのみならず、体積ホログラム形成層の背後に設けた地紋印刷や、デザイン印刷等を視認する際に好適となる。
光カチオン重合開始剤系は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸、あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系とするとよく、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。
その体積ホログラム形成層の厚さは、5.0μm〜50μmとする。好適には、10μm〜30μmである。もちろん、この厚さは薄い方がコスト面や、透明性を確保するためには有利であるが、5.0μm未満では、十分な光選択性が得られず、また、鮮明なホログラム再生像を得ることが困難である。
しかし、50μmを超えると、コスト面で不利となるだけでなく、「ラベル」としての「総厚さ」が大きくなり、シート基材に貼着した際の、その「突出具合」が、スクラッチカード等のハンドリングに支障をきたすものとなり、不適当である。
以上の方法は、樹脂を担持するための「適宜な透明基材」を介することなく、直接樹脂から形成することができるため、あらかじめそのような透明基材に樹脂をコーティングしておく工程(「適宜な透明基材」上に体積ホログラム形成層を設けた状態で、体積ホログラムを記録後、その「体積ホログラム形成層」のみを、スクラッチ隠蔽層や粘着層へ転写形成する工程とすることを意味する。)を不要とすることも可能で、この場合には、コスト面及び、管理面において優れるものとなる。
体積ホログラム形成層は、光重合性組成物の塗布液(例えば、固形分15〜25%)を、直接、スクラッチ隠蔽層上に設けるか、または、一旦、「適宜な透明基材」(以下、単に「透明基材」とも称す。)上に設けることとなるが、そのスクラッチ隠蔽層や「透明基材」、1枚毎のシート状であればバーコート、スピンコート、または、ディッピング等により塗布形成され、また、それらが、ロール状の長尺の状態で塗布するのであれば、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、または、コンマコート等により塗布する。体積ホログラム形成層は、塗布液に合わせた乾燥、乃至、硬化の手段を用いて固化される。
その光重合性組成物としては、一例として、組成物全体に対してカチオン重合性化合物を10〜50%、ラジカル重合性化合物を40〜70%、光ラジカル重合開始剤系を1〜5%、及び、光カチオン重合開始剤系を1〜5%とするとよく、全量を100%となるように配合する。
光重合性組成物は、必須成分および任意成分をそのまま、もしくは必要に応じてメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセルソルブ等のセルソルブ系溶媒、メタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒と配合し、冷暗所にて、高速撹拌機を使用して混合することにより調製される。
この光重合性組成物は、その透明性を維持しつ、鮮明な体積ホログラムを再生でき、且つ、高い破断強度、小さい破断伸度、さらには、高い鉛筆硬度を有するため、高い透明性と、引張り耐性や耐摩耗性等の強靭な物理特性などの高い信頼性を必要とする偽造防止用途に、好適である。
光重合性組成物そのものからなるシートや、フィルム、さらには、「透明基材」上にコーティングした光重合性組成物、すなわち、体積ホログラム形成層に、上記した方法を用いて体積ホログラムを形成することができる。
体積ホログラムは、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を上記したような、いわゆる、体積ホログラムの原理でホログラムを記録したものであり、例えば、フレネルホログラムなどのレーザー再生ホログラム、イメージホログラム及び白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、ホログラフィックステレオグラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などとすることができる。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
ここで、本発明のスクラッチラベルのスクラッチ隠蔽層をスクラッチオフして、露出した体積ホログラム形成層を観察する者に、この体積ホログラム形成層の全面に、「単なるリップマンホログラム」が設けられていると思わせるためには、自然光下では視認できない透過型ホログラムに加えて、それらの観察者が自然光下で目視にて鑑賞可能な反射型ホログラム、すなわち、リップマンホログラムを、少なくとも1種類は、多重記録しておくことが必須である(隠しホログラムである透過型ホログラムの記録に重ねて、反射型ホログラムを記録するという意味。)。
この際、透過型ホログラムの再生効率(ホログラムとして、回折格子を記録した際の回折効率に相当する。)を反射型ホログラムの再生効率よりも小さくすることが、その透過型ホログラムの隠し効果を高める上で、好適である。
体積ホログラム形成層は、いわゆる「ホログラフィー露光装置」による所定の波長範囲のレーザー光等の光を使用し、ラジカル重合性化合物を重合させてその内部に干渉縞が記録される。この段階で、記録された干渉縞による回折光が得られ、体積ホログラムが形成されるが、体積ホログラム形成層として、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、及び光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料を用いた場合には、未反応のまま残っているカチオン重合性化合物を更に重合させるために、後露光として光カチオン重合開始剤系の感光する光(例えば波長200〜800nm)を全面照射して体積ホログラムを固定化するとよい。なお、後露光の前に体積ホログラム形成層を熱や赤外線で処理することで回折効率、回折光のピーク波長、半値巾などを変化させることもできる。
体積ホログラムを形成した体積ホログラム形成層は、そのホログラムを形成したときに使用したレーザー等の光源波長(これが、上記した「参照光」や、「物体光」となる。)によって、その「層」の中に、フリンジ(干渉縞)を「屈折率の部分的な変化(屈折率変調)」という形で、「3次元的」に記録したもの(フリンジ全体が立体的構造となるという意味。)である。
このフリンジは、上記したホログラム形成時に使用した光源波長で照明したときにのみ、「干渉現象」を発生し、観察者の目に視認可能となる反射再生像(体積ホログラム再生像)を出現させる。
しかしながら、このフリンジを、上記の波長以外の光で照明したときは、上記した「干渉現象」が発生せず、わずかな散乱現象が生じるのみで、その光はそのまま透過することになる。
例えれば、可視光線領域内である、発振波長442nmの固体レーザー(HeCdレーザー。)を用いて体積ホログラムを形成し、体積ホログラム形成層とすると、その体積ホログラム形成層に、470nmや、520nm等の可視光線領域に別の発光波長を有する光源の光を投射しても、体積ホログラム再生像を再生せず、しかも、反射光をも発生しない(層表面と空気との界面でのわずかな界面反射は存在するが、フリンジによる反射光は発生しない。)。
これらの体積ホログラムを形成する際に用いられる光源としては、可視光波長領域にあるコヒーレントな光を発振(発光)するものであれば、いずれも用いることができるが、例えば、ガスレーザーとして、HeNeレーザーLGシリーズ(発振(発光)波長は、594nm、633nm、0.5mW〜30mW)、HeNeレーザーLHシリーズ(同、594nm、604nm、612nm、633nm、0.3mW〜4.0mW)、アルゴンレーザー(同、488nm、40mW)、HeCdレーザーIKシリーズ(同、442nm、20mW〜200mW)、窒素/色素レーザーGL−301、窒素/色素レーザーGL−302(同、360nm〜990nmから選択可能。)等、固体レーザーとして、ルビーレーザー(同、694nm、パルスレーザー)、小型CWレーザー(Nd:YAG、Nd:YLF、Nd:YVO4レーザー)Direct(同、405nm、445nm、447nm、488nm、638nm、643nm、655nm、690nm)、小型CWレーザー(同)Crystal(同、473nm、593nm、657nm、660nm、671nm)、波長変換レーザーOptiシリーズ(同、488nm、589nm)、TOL90色素レーザー(同、420nm〜900nmから選択可能。)等、半導体レーザーとして、SWL−7513H(同、633nm、660nm、8mW〜20mW)、FK LA−100(同、457nm、1W)、LDM(同、405nm、440nm、473nm、635nm、665nm、690nm、10mW〜200mW)等を用いることができる。
本発明のスクラッチラベルは、スクラッチ隠蔽層、体積ホログラム形成層、及び、粘着層、または、そのスクラッチ隠蔽層上や、「スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム形成層との間」に地紋印刷を施したもの、さらには、その体積ホログラム形成層に黒色層を付加したもの(「体積ホログラム形成層と黒色層との間」に地紋印刷を施してもよい。)で構成される。
本発明における「地紋印刷」という表記は、「『地紋印刷という印刷方式』という意味と、『地紋印刷という印刷方式で形成された地紋印刷層』」という意味の両方、もしくは、いずれかを表すものである。
ここで、「黒色層」は、体積ホログラム形成層の領域に対してその領域全面に対応して形成してもよいし(もちろん、「秘密情報」形成部を覆う領域には設けない。)、いわゆる「パターン形状」に形成してもよい。
このことは、「粘着層」の形成位置や形成パターンについても同様として、「粘着層」を形成することができることは言うまでもない。
体積ホログラム形成層は、スクラッチ隠蔽層を溶解したり、変質させたりしない溶剤を用いて、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、凹版印刷方式、インクジェット印刷方式等の印刷方式や、スピンコーティング方式、カーテンコート方式、フォトレジスト処理方式等の形成手段を用いて、乾燥後の厚さとして、5.0μm〜50μm、さらには10μm〜30μmの厚さで、スクラッチ隠蔽層上に形成する。
もしくは、適宜な透明基材に、予め上記の厚さで、体積ホログラム形成層を設けておき、その体積ホログラム形成層(体積ホログラム記録前、もしくは、記録後)の露出面を、スクラッチ隠蔽層面に接するように積層し、さらに、その透明基材を体積ホログラム形成層との界面で剥離して、体積ホログラム形成層を最表面とする手順とすることもできるが、この際も、上記の形成手段を適宜用いることができる。
記録する体積ホログラムのデザインは、単独のホログラムデザインでも、複数のホログラムデザインの集合体でもよい。この「集合体」とは、記録領域が異なるホログラムの集合体、もしくは、記録領域が同一のホログラム多重記録による集合体でもよい。
さらには、リップマンホログラムである反射型ホログラムを通常の観察角度で鮮明に視認される鑑賞用として記録しておき、これに加えて、透過型ホログラムをその観察角度とは、大きく異なる角度(その角度差を30度〜60度とする。)で多重記録して、特殊な観察角度のみで視認可能とすることで、本発明のスクラッチラベルの偽造防止性を高めることも好適である。
本発明のおいては、この体積ホログラム形成層に、さらに、「屈折率変化領域」を「所定パターン表示領域」として記録する。
すなわち、この体積ホログラム形成層に、上記した体積ホログラム記録に加えて、目視判定可能なサイズの「『所定パターン』表示領域」であって、且つ、その「領域」内を「実質的に一定の均一な屈折率を有する領域」へと変化させた、「屈折率変化領域」を形成する。
体積ホログラム形成層内には、「体積ホログラム」を記録したときに発現する屈折率分布(物体光と参照光によって生じる干渉縞の強度に比例して、体積ホログラム形成層内の屈折率が連続的に変化している状態を意味する。)が記録されているが、この「干渉縞」の記録とは異なり、体積ホログラム形成層の屈折率値に対して、所定の屈折率差を有する、ほぼ一様な屈折率差を持つ「領域」を設けることを意味し(従って、その「領域」内は、ほぼ一様な屈折率値を持つ。)、このように、所定の屈折率差を持たせたことから、「屈折率が変化している領域」という意味で、「屈折率変化領域」と定め、この「領域」を観察者が目視すると、「所定パターン」が表示されているように観察されるという意味において、「『所定パターン』表示領域」とした。
スクラッチシートの正規購入者は、スクラッチ隠蔽層のスクラッチオフにより、「秘密情報」及び体積ホログラム形成層により再生される体積ホログラム再生像に加えて、この「屈折率変化領域」によって表示される「所定パターン」を視認することとなる。
「屈折率変化領域」としては、「二次元平面領域」、もしくは、「三次元体積領域」を形成するが、視認(もしくは、表示)される「所定パターン」としては、この体積ホログラム形成層内に設けられた「屈折率変化領域」を、体積ホログラム形成層に対して垂直上方から観察する際に視認される「パターン」とするため、体積ホログラム形成層の形成面に平行に設けられた「二次元平面領域」を形成した場合には、その「『二次元平面領域』の形そのもの」として視認(もしくは、表示)され、また、「三次元体積領域」を形成した場合には、「その『三次元体積領域』をその体積ホログラム形成層の形成面に平行な「面」で切り取った断面形状(厳密には、全ての「断面形状」を重ねあわせた、その最大領域を成す「形状」となる。)」として、視認(もしくは、表示)される。
このような、「屈折率変化領域」を体積ホログラム形成層内に形成する手段としては、体積ホログラム形成層内に仮想的に設けた「二次元平面領域」や、「三次元体積領域」に向かって、「光」その他の「エネルギー」を照射すると同時に集光し(焦点を結ばせるという意味。)、それらの「領域」の隅から隅までを一定の照射時間と一定の走査速度で、スキャン(走査:連続的に記録することを意味する。)することで得られる。
もしくは、体積ホログラム形成層上に、「『所定パターン』の形状を『開口部』の形状とした『遮蔽版』」を重ね、その上から、体積ホログラム形成層面に垂直にエネルギー照射を施して、体積ホログラム形成層の厚さ方向に実質的に一定の均一な屈折率を持ち、且つ、その断面が「所定パターン」となっている「屈折率変化領域」を形成することもできる。
さらには、光学レンズ等を含む結像光学系を用いて、所定の屈折率変化が生じるまで、その「屈折率変化領域」に対応する「光の像」を、所定の時間、「結像したまま」とすることでも得られる。このような結像光学系を用いることは、上記したエネルギー照射を走査するための、走査精度に優れる「走査装置」を準備する必要がなく、「光の像」の元の「像」である「光源の開口部」等の状態がそのまま写し取られ、好適である。もちろん、この結像光学系を用いて、光源光を集光し、その焦点付近の高いエネルギー部分を利用して、走査して、「光の像」を記録することも可能である。
この際、「実質的に一定の均一な屈折率」とは、その「領域内の屈折率分布が、ある屈折率値nに対して、そのnに対する「領域内屈折率差」で表して、「領域内屈折率差」≦0.1、さらに好適には、「領域内屈折率差」≦0.03である」ことを意味する。
いずれにしても、その「領域」の隅から隅まで、一定のエネルギー強度の照射を施して、その「領域」内の屈折率を、その「領域」の周辺領域の屈折率から、一定の値だけ「変化」させる。(その「領域」内に一様なエネルギー強度分布を与えて、「均一な、より高い屈折率」へと「変化」させるという意味。)
そして、「領域内の屈折率」と、その「領域」の「周辺領域の屈折率」との差、すなわち、「領域間屈折率差△n」は、△n≧0.01、さらには、△n≧0.05、より好適には、△n≧0.1とする。
特に、観察者から見て「所定パターン」を表示可能となるような、「『二次元平面領域、もしくは、三次元体積領域』を「エネルギーの像」、例えば、「光の像」(以下、「エネルギーの像」の代表例として「光の像」につき詳述する。)を、レンズ系を含む光学系を用いて、体積ホログラム形成層内に結像させる、「結像光学系」を用いることで、その「領域」内の隅々までを、瞬時に(エネルギーを集中できるという意味。)、且つ、均一に(走査速度を一定とすることで、「領域内屈折率差」を小さくすることができるという意味。)、変化させることができ、簡便に、且つ、再現性良く高い精度で、所望の「屈折率変化領域」を設けることができ、好適である。
上記した「光の像」は、遮蔽版に設けた開口部に均一な照明をして設けたり、反射防止を施した金属板やガラス板に、「所定パターン」の散乱面を形成し、その全体を照明して設けたり、「種々の光源そのものの『像』」を用いたりすることでも、形成することができる。
もちろん、この「光の像」を、体積ホログラム形成層内に、その結像位置を変えて、繰り返し記録してもよいことは言うまでもない。
さらには、そのそれぞれの結像位置において、「光の像」のエネルギー強度を変え、屈折率の異なる「屈折率変化領域」を設けることも(個々の「領域」に、異なる屈折率値nを設定するという意味。)、その偽造防止性を高めることに寄与するため好適である。
そして、この「光の像」のエネルギーをステップバイステップに変化させることも同様に好適である。(一つのステップに対応する「領域」を、一つの「領域」と見做す。)
特に、この「光の像」は、その「光の像」を通して、「秘密情報」を判別可能であるため好適である。
上記したエネルギー強度を照射する手段としては、
熱放射による白熱電球、ハロゲン電球とルミネッセンスによる蛍光ランプ、アーク灯、水銀ランプ、蛍光水銀ランプ、安定器内蔵型水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、低圧ナトリウムランプ、無電極放電灯、低圧放電灯、発光ダイオード、例陰極型蛍光管、外部電極型蛍光管、エレクトロルミネッセンスライト、紫外線ランプ、赤外線ランプ等を用いることができる。
また、エネルギー強度としては、0.1mW〜10Wの光源を用いて、体積ホログラム形成層に対しては、5.0mJ/cm2〜5.0J/cm2の露光量となるように照射する。エネルギー強度が、0.1mW未満であると、エネルギー照射に時間を要し、「屈折率変化領域」の形成精度が低下する。特に、エネルギー強度として、1.0mW〜100mWの光源を用いて、10mj/cm2〜1.0J/cm2の露光量とすることが好ましい。
ここで、エネルギー強度が、10Wを超えると、「屈折率変化領域」の周辺領域まで、屈折率を変化させることとなり、結果として、「屈折率変化領域」の形成精度が低下することとなり、不適当である。
このエネルギー強度を照射する手段によって、「屈折率変化領域」の屈折率を、その周辺領域より、0.01以上、さらには、0.05以上、特には、0.1以上高くすることができる。
そして、この体積ホログラム形成層への、「屈折率変化領域」の記録は、本発明のスクラッチラベルの製造工程中、体積ホログラム形成層への体積ホログラムの記録の際、特に、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の紫外線を照射したり、更に120℃で120分間加熱処理して、体積ホログラムを定着させる処理を施す直前に、行う。
または、本発明のスクラッチラベルの各製造手順において、体積ホログラム形成層をスクラッチ隠蔽層上に形成した際、または、粘着層上に体積ホログラム形成層を形成した際に、いずれも、最表面に体積ホログラムが露出している状態で行う。
さらに、シート基材上に、本発明のスクラッチラベルを貼着した後に、そのスクラッチ隠蔽層で覆われた体積ホログラム形成層に、シート基材の裏面からシート基材内を通して、シート基材の断面(端面)からシート基材内を通して、シート基材のいずれかの反射面で反射させて、さらには、体積ホログラム形成層の断面(端面)を通して、そのエネルギー照射を行い、体積ホログラム形成層内に、「屈折率変化領域」を形成する。この場合には、個々のシート基材に、個別の「光の像」を記録することも可能である。
その上、このような手順とすることは、体積ホログラム形成層中に、既に記録してある体積ホログラムによる、体積ホログラム再生像の鮮明な再生に影響することなく、「屈折率変化領域」を形成することを可能とする。
「屈折率変化領域」の形成は、体積ホログラム形成層に対して「後露光やポストベーク」(体積ホログラムの記録を安定かさせるための後処理工程を意味する。以下、「後露光等」とも称す。)をする前に記録することで、より大きな屈折率差を発生させることが可能であり、本発明のスクラッチラベルを「後露光等」を施していない状態で、シート基材に貼着し、その貼着後に、「屈折率変化領域」を形成し、その後に、「後露光等」を施すことも好適である。
いずれにしても、この「屈折率変化領域」の存在は、体積ホログラム形成層に記録した体積ホログラムによる体積ホログラム再生像の再生に対して、その鮮明性を阻害したり、再生像を歪ませたりする要因となるため、その「領域」を小さくすることが好ましいが、観察者による視認判定を確実とするためには、その「領域」を大きくする必要がある。
このため、「屈折率変化領域」としては、上記した単純な例としての「直方体」のように、「その直方体の占める領域すべての屈折率を変化させる」(その「直方体」の内側に記録されいた干渉縞が焼失する。)ものとせず、三次元的な「文字等」(個々の文字に厚みがあるという意味。)のその「画線部」(立体形状を成す「文字」の内部を意味する。)のみの屈折率を変化させ、その「画線部」が「屈折率変化領域」となるようにすることで、体積ホログラム再生像の鮮明性と、「屈折率変化領域」の視認性を両立させることができ、好適である。
もちろん、「屈折率変化領域」を記録後に、体積ホログラムを記録したり、体積ホログラムを記録後に、「屈折率変化領域」を記録したりすると、その二つの記録が比較的近い領域にある部分において、その二つの記録が相互に干渉して、あらかじめ想定することが困難な「新規な記録」となり、本発明のスクラッチラベルに、より高い意匠性や、非常に高度な偽造防止性を持たせることとなって好適である。
また、体積ホログラム形成層の表面がスクラッチ隠蔽層で覆われているため、体積ホログラム形成層の露出している断面から、もしくは、シート基材が、〔透明材料層/不透明材料層〕のように2層、もしくは、それ以上の構成を成し、且つ、その体積ホログラム形成層に接している層が透明であった場合には、その透明材料層を通して、「屈折率変化領域」を形成することとなる。
特に、「結像光学系」を用いて、「光の像」を、体積ホログラム形成層の断面に、入射角度30度〜80度で入射させ(入射角度は、体積ホログラム形成層の表面に垂直な角度を0度とし、その角度からの開きを意味する。)、そして、その体積ホログラム形成層の断面を通過させて、その断面の近傍に結像させるか、もしくは、その断面通過後、体積ホログラム形成層と粘着層との界面、または、シート基材との界面で一旦、反射させて(または、多重反射させて)、その後に、体積ホログラム形成層内で結像させる。この時、体積ホログラム形成層の上下の面が「光学的な鏡面」であることが、高い精度で「屈折率変化領域」を設けるためには望ましい。
さらには、シート基材が、少なくとも〔透明材料層/不透明材料層〕の2層以上の構成であった場合には、シート基材の体積ホログラム形成層形成位置より外側から、「光の像」を、その透明材料層に入射させ、その透明材料層と不透明材料層との界面で、反射させて、体積ホログラム形成層内部へと導き、体積ホログラム形成層内で結像させる。この時も、体積ホログラム形成層の上下の面、及び、シート基材の透明材料層と不透明材料層との界面までも「光学的な鏡面」であることが、高い精度で「屈折率変化領域」を設けるためには望ましい。
また、本発明のスクラッチラベルをシート基材へ貼着した後に、そのスクラッチ隠蔽層で覆われた体積ホログラム形成層に、「屈折率変化領域」を形成する場合は、既に、シート基材への個別印刷等(シート基材に固有の番号や、シート基材個別のデザイン印刷、さらには、スクラッチシート保持者に関する個人情報等を意味する。)を施した後に、「屈折率変化領域」を形成する手順とすることができ、「所定パターン」の記録を、これらの個別印刷に対応した、個々のスクラッチシートに固有の「情報」に対応した記録として、もしくは、これらの「情報」の少なくとも一部を含んだ記録として施すことが容易、且つ、好適となり、その変造や偽造をさらに困難としたスクラッチシートとすることができる。
しかも、「結像光学系」を用いた「光の像」の光路中に、「秘密情報」形成部を含めることで、この「秘密情報」そのものを含んだ「所定のパターン」とすることができ、その変造や偽造を、著しく困難なものとすることができる。
体積ホログラム形成層の断面は、縦方向(厚さ方向)の長さが非常に小さい(5.0〜50μm。横方向の長さは十分大きい。)ものであるが、「結像光学系」の設計により、その断面通過時の「光の像」の縦方向及び横方向の長さを制御することで、比較的大きく、目視可能なサイズの「屈折率変化領域」を設けることが可能となる。
また、「所定パターン」としては、上記した「秘密情報」と同様の「情報」を採用することができるが、あくまで、屈折率差を利用した光の反射現象を用いて、「表示」するものであるため、比較的単純で、比較的大きな形状のものを用いることが好ましい。
「二次元平面領域」の表示となる「文字」情報で例えれば、文字画数の20画以下の文字を採用し、そのサイズも5.0mm以上(且つ、体積ホログラム形成層のサイズより小さく。)、もしくは、フォントサイズで、10〜40ポイントの「文字」を採用する。他の情報、及び、「三次元体積領域」の表示もこれに対応したものとする。
いずれにしても、体積ホログラム形成層の中に、通常の体積ホログラム記録方式とは異なる記録方式の「光の像」を重ねて記録してあるため、このような体積ホログラム形成層から、その中に記録された「体積ホログラム」を光学的な複製手段を用いて不正に複製しようとしても、その複製に用いるレーザー光等の照明光がその「光の像」によって乱され(特に「位相」が乱される。)、最早、複製行為そのものが不可能となるため、偽造防止効果に著しく優れるものとなっている。
本発明のスクラッチラベルを構成するスクラッチ隠蔽層用のインキ組成物としては、ゴム系天然樹脂、ジエン系樹脂、アクリル系樹脂や、ビニル系樹脂を樹脂成分とし、隠蔽性とスクラッチ性を得るために、金属系微粉末やそれらの酸化微粉末等の顔料成分を固形分全体の20〜80%の割合で含有するものを用いる。また、スクラッチ隠蔽層の隠蔽性を向上させるために、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の隠蔽性の強い顔料成分を1〜10%含有させてもよい。スクラッチ隠蔽層用インキ組成物を以上の組成物から構成することにより、印刷適性とスクラッチ性との双方を満足することができるようになる。
スクラッチ隠蔽層は、この組成物を適宜な溶剤で希釈したものを、「適宜な剥離性フィルム」上に、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、凹版印刷方式、インクジェット印刷方式等の印刷方式を用い、乾燥後の厚さとして、5μm〜50μm、さらには10μm〜30μmの厚さで形成する。
この厚さが5μm未満では、「秘密情報」が透けて見える可能性があり、50μmを超える厚さではスクラッチラベルの総厚さが大きくなりすぎ、スクラッチカード等の基材上に貼着した際に、基材上の「突出」が大きすぎてスクラッチカード等を重ねる等のハンドリングに支障をきたす。さらにその厚さが、10μm以上あれば秘密情報の隠蔽性は十分であり、30μm以下であれば形成作業性に優れ、スクラッチカード等を1000枚重ねた際の突出量は3cm以内となり、自動搬送処理等にも使用可能な範囲に収まるものとなる。スクラッチ隠蔽層の厚さがこの範囲であれば、コインや、指もしくは爪で容易に粉砕可能である。
但し、この適宜な剥離性フィルム上に設けた、スクラッチ隠蔽層の露出面は、体積ホログラム形成層との界面となり、且つ、スクラッチラベルを構成してシート基材に貼着後にスクラッチ隠蔽層を部分的にスクラッチした際には、そのスクラッチ隠蔽層が除去された領域において、その界面を通して、「秘密情報」、及び、体積ホログラム形成層による体積ホログラム再生像を視認することとなるため、それらの視認性を確実なものとすることを目的として、そのスクラッチ隠蔽層の露出面を、いわゆる「光学的な鏡面」とすることが求められる。
このスクラッチ隠蔽層と体積ホログラム形成層との界面が、「光学的な鏡面」とならず、いわゆる「粗面」となっている場合には、この「粗面状の界面」を「秘密情報」及び体積ホログラム再生像を視認するための照明光が通過したときに、その「光の位相」が乱れ、さらには、「散乱光」となってしまい、「秘密情報」に対しては、いわば「擦りガラス」を通して情報を見ているような状態となり、体積ホログラム再生像にあっては、位相の揃った光の干渉により発生するホログラムの再生そのものを阻害して、体積ホログラム再生像を確認することすらできないものとなってしまう。
このような「光学的な鏡面」とは、ある「層」の表面の平滑性が、実質的に、平均表面粗さRaで、0.01μm〜0.1μmであることを意味する。また、スクラッチ隠蔽層の表面ような「広範囲な三次元曲面」が、「光学的な鏡面である」とは、その曲面が、「理想的な単一平面を成す」ことが理想的であるが、実際には、「『単一平面に近似できる程度の比較的なだらかな曲面』であって、そのような『近似的な平面』から逸脱するような不規則な凹凸(突起やクレーターを意味する。)の無い「滑らかな面」であることを言い、敢えて定義すれば、「その三次元曲面において、微視的領域であってその領域内ではほぼ平面と近似できる小さな面領域(直径で、数百μmから数mmの領域)における平均表面粗さRaの値が、どの微視的領域においても0.01μm〜0.1μmであること」と定義できる。
通常、スクラッチ隠蔽層を上記のような印刷方式を用いて形成すると、その表面は、1.0μm〜30.0μm程度、場合によってはそれ以上の「粗さ」となり、その「粗さ」が、コインや、指もしくは爪で粉砕することを容易なものとし、スクラッチオフ適正という点では望ましいとされている。(スクラッチオフとは、コインや爪によるスクラッチによりスクラッチ隠蔽層を部分的に除去することを意味する。)
しかし、スクラッチ隠蔽層の体積ホログラム形成層と接している面とは反対の面(スクラッチラベルとしての最表面)は、まさにそのスクラッチをする面であってそのような粗さとすることが好ましいものの、その反対面、すなわち、スクラッチ隠蔽層の体積ホログラム形成層と接している面は、本発明の目的より、上記したように「光学的な鏡面」とする必要がある。このため、適宜な剥離性フィルム上に、スクラッチ隠蔽層を形成後、上記した「光学的な鏡面」以上の平滑な表面を有する、「表面平滑化処理を施した金属板」等を用いて、100〜200℃の加熱、及び、107〜109Paでの加圧をする平板プレス処理、もしくは、「表面平滑化処理を施した金属ロール」等を用いてロール幅1cmに対して1.0kg以上の線圧を掛けるロールプレス処理により、スクラッチ隠蔽層の体積ホログラム形成層と接している面を「光学的な鏡面」とする。
または、上記の印刷方式のみならず、ロールコーティング方式や、レジスト処理方式を用いることもこの目的のためには好適である。
さらには、予め、転写用シート基材として、平均表面粗さRaが0.01μm以下の非常に鏡面性の高い「樹脂フィルム」を準備し、この「樹脂フィルム」上に、スクラッチ隠蔽層を仮形成して、スクラッチ隠蔽層のこの「樹脂フィルム」と接している面を「光学的な鏡面」とし、この仮形成したスクラッチ隠蔽層を上記した「適宜な剥離性フィルム」上に転写して、その「適宜な剥離性フィルム」上に、露出面が「光学的な鏡面」となったスクラッチ隠蔽層を設けることができる。
この方式(転写方式)は、スクラッチ隠蔽層を乾燥、さらには、硬化する段階において、スクラッチ隠蔽層に用いるスクラッチ隠蔽層用のインキ組成物の中の顔料成分の移動や、樹脂成分の移動が起こり、比較的容易に「光学的な鏡面」を得ることができ、且つ、その面を、そのまま、スクラッチ隠蔽層の体積ホログラム形成層との界面とすることができるため好適である。
そのスクラッチ隠蔽層の上に、上記したように体積ホログラム形成層を設ける。
さらに、その体積ホログラム形成層の上に、粘着層や黒色層を設けたり、黒色層上にさらに粘着層を設ける手順としてもよいし、体積ホログラム形成層の露出面をも、さらに「光学的な鏡面」とした後に、黒色層や粘着層を形成する手順としてもよい。
もちろん、適宜な剥離性フィルム上に、スクラッチ隠蔽層(「光学的な鏡面」である面を有する。)、その上に、もしくは、その上の一部分に、体積ホログラム形成層を設けたもの、もしくは、その体積ホログラム形成層の上に黒色層を設けたもの、さらには、それらの最上層に粘着層を設けたものを準備し、スクラッチカード等のシート基材上の「秘密情報」形成部が、「そのスクラッチ隠蔽層によって覆われるように配置」して、その剥離性フィルムを有するまま、その適宜な剥離性フィルムごと、シート基材上に貼着するものとしてもよい。
このため、スクラッチ隠蔽層の「平坦な面」、または、体積ホログラム形成層の「平坦な面」の物理特性を、このような体積ホログラム形成層形成段階や、スクラッチ隠蔽層形成段階において、その面を「光学的な鏡面として維持できるレベル」まで向上させる必要がある。
例えば、スクラッチ隠蔽層や体積ホログラム形成層のインキ組成物に2液硬化性樹脂や、熱硬化樹脂を用いた場合には、「平坦な面」形成時に、そのプレス用の「平板」、もしくは、「ロール」そのものを加熱して、「平坦な面」近傍の硬化度を促進し、完結させたり、体積ホログラム形成層のインキ組成物に、電離放射線樹脂を用いた場合には、「平板」や「ロール」処理後、または、スクラッチ隠蔽層や体積ホログラム形成層形成後、さらに、電離放射線を追加照射(ポストキュア。)して、スクラッチ隠蔽層や体積ホログラム形成層全体の架橋度を98%以上とする。

さらには、その「平板」、もしくは、「ロール」を電離放射線透過性の素材を用いて作製し、その「平板」、もしくは、「ロール」を体積ホログラム形成層に押し当てたまま、電離放射線を十分に照射して、「平坦な面」形状を高い精度に保ったまま、その物理特性を上記したレベルまで向上させることも好適である。
そして、いずれの層においても、上記の印刷方式のみならず、ロールコーティング方式や、レジスト処理方式を用いることも以上の目的のためには好適である。
または、スクラッチ隠蔽層を、適宜な剥離性フィルム上に、所定の厚さで形成後、「乾燥、さらには、硬化する段階」において、スクラッチ隠蔽層に用いるスクラッチ隠蔽層用インキ組成物の中の顔料成分の移動や、樹脂成分の移動を十分に起こすために、その「乾燥条件や硬化条件」を通常の処理時間の2倍〜10倍の処理時間とすることも、スクラッチ隠蔽層の固まった界面そのものを「光学的な鏡面」として仕上げることができ好適である(この界面付近に粒径の小さい顔料が集まったり、顔料と顔料の隙間に樹脂成分が十分に充填されることを意味する。)。
もちろん、予め、「『光学的な鏡面』を持つ適宜なフィルム」上に、スクラッチ隠蔽層を仮形成して、スクラッチ隠蔽層のその「光学的な鏡面」と接している面を、実質的に「光学的な鏡面」とし、これを、「適宜な仮転写用フィルム」上に「仮転写(転移)」して、その「光学的な鏡面」を露出させ、これを、ある意味で新たな「平板、もしくは、ロール」と見立てて、体積ホログラム形成層に押し当てて、その適宜な仮転写用フィルムから転写(スクラッチ隠蔽層の転移。)して、スクラッチ隠蔽層の鏡面性を確実に高めた状態で、体積ホログラム形成層とスクラッチ隠蔽層の積層体とすることも、「光学的な鏡面」を高い精度で確実に得ることができる手段として好ましい。
本発明の体積ホログラム形成層の上には、さらに黒色層を設けることができ、その黒色層としては、微粒子カーボンブラック(一次粒子径:0.2〜2.0μm)や、超微粒子カーボンブラック(一次粒子径:0.01〜0.1μm)、その他の炭素系黒色顔料や酸化物系黒色顔料の微粒子や超微粒子、さらには、含金属黒色染料(金属錯塩染料)等のように、観察する光(可視光)の全波長領域に対する吸収性を有する顔料や染料を、熱可塑性樹脂、または、熱硬化性樹脂に分散したもの(顔料や染料の含有率:20〜70質量%)からなるものであって、且つ、観察する光の波長である約0.5μmの5倍〜50倍、すなわち、2.5μm〜25μmの厚さ、さらには、10倍〜40倍、5.0μm〜20μmの厚さを有していることにより、反射型ホログラムを記録した体積ホログラム形成層を透過した光(反射型ホログラム再生像を再生する光を含んでいない。)をほぼ全て吸収して、その体積ホログラム再生像の鮮明度を非常に高いものとする。または、透過型ホログラムを記録した体積ホログラム形成層を透過した光(透過型ホログラム再生像を再生する光を含んでいる。)をパターン状に吸収して、その体積ホログラム形成層のホログラムデザインをより意匠性の高いものとする。
さらには、上記した種々の手段を採用して、この黒色層の表面を「光学的な鏡面」とし、この面で全反射する角度(ブリュスター角より大きい角度を意味する。)に入射する観察光を、「正反射光」として反射し、その偽造防止性の確保に寄与することもできる。
その厚さが、観察光の波長の5倍以下では、光の吸収が不十分であり、50倍以上では、「ラベル」の「総厚さ」が大きくなりすぎ、スクラッチカード等のハンドリングに支障をきたす。
黒色層の表面を「光学的な鏡面」とする場合には、超微粒子黒色顔料を用い、且つ、3本ロールミルや、ニーダー等の、インキに対する顔料の高分散処理が可能な装置を用いてインキ化することが望ましい。
黒色層の形成方法は、上記のインキを用いて、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式等、形成パターンに適宜な方式を用いることができる。さらには、にじみや、インキダレを抑えるため、フレキソ印刷方式を用いることが望ましい。
黒色層を形成する位置は、体積ホログラム形成層の背後、すなわち、体積ホログラム形成層と粘着層(シート基材上の「秘密情報」を視認可能とするため、少なくとも「秘密情報」形成部に対応する部分を除いて形成する。)との間であって、体積ホログラム形成層全面に亘るサイズとして形成してもよいし、複数の領域に適宜なパターンで離散的に形成してもよい。
それぞれ、体積ホログラムデザインとの同調性、各層厚さとのバランス、使用する樹脂層の屈折率差や、接着性を考慮して形成方法、形成パターン形状を定める。
また、以下に詳述する粘着層に、上記の顔料等を追加(添加)して、「黒色粘着層(黒色層と粘着層の機能を一つの層で実現するという意味。)」とすることも好適である。
この体積ホログラム形成層の上に、粘着層を、乾燥後の厚さとして、10μm〜60μmの厚さで形成する。
粘着層用のインキ組成物としては、溶剤系及び水系のいずれの粘着剤をも用いることができ、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体や、天然ゴムなどのゴム系樹脂などを挙げることができる。また、自然にやさしい材料構成とするために、特に、天然ゴムを主成分とするラテックス等の天然素材から作製されたものを用いることが好適である。
粘着層は、10μm未満であると、スクラッチカード等のシート基材、及び、秘密情報記録部との粘着性が不十分となり、60μmを超えると、やはり、スクラッチラベルの総厚さが大きくなりすぎ、スクラッチカード等のシート基材上に貼着した際に、スクラッチカード等を重ねる等のハンドリングに支障をきたすものとなる。
但し、「秘密情報」をインクジェット方式でシート基材上に設けた際に、その「秘密情報」印字部の高さ(印字部の盛り上がりを意味する。)が、5.0μm〜20μmと高くなった場合には、その「秘密情報」の上に本発明のスクラッチラベルを貼着したときに、粘着層が、その「高い」印字部を柔らかく包み込むように適宜な変形を生じ、その「高さ」を吸収して、「秘密情報」印字部の盛り上がりパターンを体積ホログラム形成層や、スクラッチ隠蔽層の盛り上がりに繋がらないようにすることが必須であり、このため、粘着層の厚さを、インクジェット方式で設けた「秘密情報」の盛り上がり高さ(印字部のシート基材面から印字部表面までの距離を意味する。)の2.0倍〜5.0倍とすることが好適である。
この厚さが、その盛り上がり高さの2.0倍未満であると、その吸収性が不十分となり、5.0倍を超えると、不必要な厚さとなり、やはり、スクラッチラベルの総厚さに悪影響を与えることとなる。
粘着層の形成方法としては、グラビアコート、ロールコート、コンマコートなどの方法で、塗布し乾燥して形成することができる。
粘着層の粘着力は、体積ホログラム形成層との界面の剥離強度として、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、1.0〜3.0kg/25mm巾の範囲にすることが望ましい。もちろん、それ以上の剥離強度を有していても、本発明の目的には適合している。特に、シート基材及びシート基材上の「秘密情報」形成部との粘着力は、本発明の目的より、本発明のスクラッチラベルをシート基材及びシート基材上の「秘密情報」形成部から剥がすことが困難となるレベルまで大きいものとする必要があるが、その粘着層とシート基材及びシート基材上の「秘密情報」形成部との界面の剥離強度よりも、粘着層と体積ホログラム形成層との界面の剥離強度を、より大きいものとなるように設計する。
このようにして適宜な剥離性フィルム上に設けた、スクラッチ隠蔽層、体積ホログラム形成層及び粘着層からなるスクラッチラベルを、その剥離性フィルムから剥離すると、本発明のスクラッチラベルとなる。
上記した目的から、この剥離性フィルムの表面を、平均表面粗さRaで、1.0μm〜30μm、もしくはそれ以上の粗さに設定した「粗面」としておくことも、スクラッチ時の破壊性を均一、且つ、容易化することができ、スクラッチオフ適正の向上に寄与する。
また、この構成において、粘着層と体積ホログラム形成層との界面を「反射面」とし、その体積ホログラム形成層に記録した「透過型体積ホログラム」を、この「反射面」を介して観察するようにするためには、粘着層の屈折率と体積ホログラム形成層の屈折率との差は、0.1以上とし、この両層の界面における、反射光の強度を確保して、その「反射光」を「透過再生光」として再生される「透過型体積ホログラム再生像」を鮮明なものとすることが必要である。
この両層の屈折率差が、0.1未満であると、上記した「反射光」の強度が小さくなり、目視ではほとんど「透過型体積ホログラム再生像」を視認することができないものとなる。
また、粘着層は、そもそも反射型であって粘着層の手前で再生像を形作るリップマンホログラム(「反射型体積ホログラム」)を記録した体積ホログラム形成層や、透過型体積ホログラムを記録した体積ホログラム形成層であっても、その透過型体積ホログラム再生像の再生に大きな影響を持つ、上記の「反射面」の背後にあるため、そのリップマンホログラムや、上記の反射光そのものには直接的な影響を及ぼさず、比較的透明性を犠牲にすることが可能であって(「秘密情報」を視認可能なレベルの透明性は必要。)、比較的屈折率の高い透明な樹脂材料に、屈折率の高い顔料(顔料の屈折率が2.0以上、さらには、3.0以上のもの等。屈折率が3.0を超えると、光散乱性や光遮蔽性が発現する。)を30〜70%程度、混入させることで、透明性がやや低下するものの、「高屈折率を有する層」とすることができる。
但し、反射面の背後であっても、着色していたり、白色となって光を散乱する性質が強いものとなると、「秘密情報」の視認性のみならず、体積ホログラム再生像の鮮明度にも悪影響を及ぼすこととなるため、粘着層を、「高屈折率透明樹脂層」、すなわち、「透明性」を確保しながら屈折率nが、1.7〜2.3という高屈折率を示す、透明な樹脂層により構成することで、この両層の屈折率差を、0.3〜1.0、特に0.5〜1.0とすることができ、上記した反射光強度を非常に大きなものとして、より鮮明な透過型体積ホログラム再生像を出現させることを可能とすることができる。
「樹脂材料の光学的透明性を維持した上での高屈折化」については、鋭意、研究が進められているが、ホログラム再生像の観察に悪影響を及ぼさず(「光学的に透明」であることを意味する。)、粘着層を通して、その配下にある「秘密情報」を十分、且つ、確実に視認できる「透明性」を保持しつつ、「《樹脂層》としての屈折率」を高くすることには限界があり、比較的屈折率の高い樹脂の高分子構造の中に、原子屈折率の高い「硫黄原子」や、塩素原子やフッ素原子等の「ハロゲン成分」、さらには、高屈折率構造を持つ「芳香環基」を分子レベルで導入する方法や、TiOxやZrOx等の高屈折率金属酸化物の超微粒子(平均粒径:0.0003μm〜0.03μm)を樹脂材料に高度に分散させる方法、さらには、高分子材料の分子構造の中に、所定の金属塩を取り込ませる方法等によって、屈折率n=1.9を超える材料を見出したものの、それでも、金属化合物微粒子(または薄膜。)の例であるZnSの屈折率n=2.3を超えるような「透明な」樹脂はまだ発見されていない。
従って、「水」の屈折率n=1.33に近い、「樹脂」としては最も低いものを体積ホログラム形成層に用いたとしても、粘着層に用いられる高屈折率透明樹脂層としての樹脂の屈折率は、屈折率n=1.83で屈折率差0.5を実現でき、体積ホログラム形成層として良く用いられるアクリル樹脂(屈折率n=1.47)に対しては、屈折率n=1.97の樹脂をその粘着層に用いられる高屈折率樹脂層として実現可能であるものの、屈折率差で1.0を超える樹脂の組み合わせを実現することは、その樹脂の透明性を犠牲にする以外には方法がなく、本発明のスクラッチラベルの粘着層に求める「透明性」を維持しつつ、これを実現することは相当の困難を伴うこととなる。
さらに、本発明のスクラッチラベルをシート基材に設けてスクラッチカード等を形成する方法に代えて、シート基材上の「秘密情報」を覆うように、直接、体積ホログラム形成層を設け、その体積ホログラム形成層を覆うようにスクラッチ隠蔽層を設けることも可能であり、この場合には、シート基材、「秘密情報」形成部、体積ホログラム形成層、及び、スクラッチ隠蔽層が、一体となった、スクラッチシートを構成することができる。
すなわち、この手順においても、本発明のスクラッチラベルを貼着してスクラッチカード等を構成することと同様の効果をえることができる。
そしてこのスクラッチシートにおいても、シート基材上に「秘密情報」形成部を設ける際、シート基材上の、その「秘密情報」を覆うように、直接、体積ホログラム形成層を設ける際、そして、その体積ホログラム形成層を覆うようにスクラッチ隠蔽層を設ける際、さらには、地紋印刷を施したり、黒色層を設ける際には、上記した材料、方法、及び、手順を用いることができることは言うまでもない。
また、体積ホログラム形成層を「スクラッチシート」のシート基材上の「秘密情報」を覆うように設ける際、そのシート基材(及び、「秘密情報」)と体積ホログラム形成層との間に、接着層を設けることができる。もしくは、シート基材(及び、「秘密情報」)と、「体積ホログラム形成層及びスクラッチ隠蔽層」積層体、または、「黒色層、体積ホログラム形成層及びスクラッチ隠蔽層」積層体との間に、接着層を設けて、「スクラッチシート」とすることができる。
接着層を設けることで、シート基材及び「秘密情報」と、体積ホログラム形成層、スクラッチ隠蔽層(一部分)、または、黒色層との接着力を高めることができ、スクラッチオフの際や、体積ホログラム形成層を不正に剥がそうとする場合に、不要なスクラッチ隠蔽層や、体積ホログラム形成層の剥がれを防止することができ、且つ、「秘密情報」の改ざんや改変を阻止することができる。
接着層は、乾燥後の厚さとして、1.0μm〜30μmの厚さで形成する。
この接着層用のインキ組成物としては、シート基材及び「秘密情報」を部分的に溶解したり、膨潤させたり、変形や変質を生じさせないものを用いる。もちろん、この接着層用インキ組成物を、体積ホログラム形成層、スクラッチ隠蔽層(一部分)、または、黒色層上に設ける手順とする場合には、それらの層を部分的に溶解したり、膨潤させたり、変形や変質を生じさせないものを用いる。
そのインキ組成物としては、上記した粘着層と同様の材料を用いることができるが、その乾燥後や、硬化後の性質が「粘着性(常温で粘性『タック』がある。)」でなく、「固化(常温で粘性『タック』がない。)」するものを選定する。
すなわち、上記の粘着層に用いるものより、ガラス転移点(Tg)が高いものや、2液硬化剤の添加量の多いものを選定する。
接着層の接着力は、スクラッチカードのシート基材、及び、「秘密情報」形成部との接着力、また、スクラッチ隠蔽層との界面の剥離強度として、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、2.0〜4.0kg/25mm巾の範囲にすることが望ましい。もちろん、それ以上の剥離強度を有していても、本発明の目的には適合している。
特に、シート基材及びシート基材上の「秘密情報」形成部との接着力は、本発明の目的より、体積ホログラム形成層やスクラッチ隠蔽層(一部分)をシート基材及びシート基材上の「秘密情報」形成部から物理的に剥がすことは、ほぼ不可能となるレベルまで大きいものとする必要がある。
このようにして、スクラッチカード等のシート基材、その上に設けた「秘密情報」、その「秘密情報」を覆うようにして設けた、体積ホログラム形成層、さらにそれらの層を覆うように設けられたスクラッチ隠蔽層からなるスクラッチカード等(「スクラッチシート
」)を得てもよい。
または、スクラッチカードのシート基材、その上に設けた「秘密情報」、その「秘密情報」を覆うようにして設けた、接着層、体積ホログラム形成層(さらに黒色層が設けられている場合もある。)及びスクラッチ隠蔽層からなるスクラッチシートを得ることもできる。
また、スクラッチ隠蔽層を、一旦、適宜な剥離性フィルムに設ける手順とする場合に、その剥離性フィルムの表面の一部(「正規購入者のみが知り得る「秘密情報」形成部の位置」を表示するような「パターン」状として設けたり、バーコード状、網点状、市松模様状に設ける。)を、平均表面粗さRaで、1.0μm〜30μm、もしくはそれ以上の粗さに設定した「粗い粗面」としておくことも、スクラッチ時の破壊性を均一、且つ、容易化することができ、スクラッチオフ適正の向上に寄与する。
もちろん、本発明のスクラッチラベルを形成後、そのスクラッチ隠蔽層の最表面上に、さらに、上記したごとく「粗い粗面」を有する「平板やロール」を用いて、加熱、且つ、加圧処理を施して、スクラッチ隠蔽層の最表面を所定の「粗い粗面」とすることも好適である。
さらには、このような「粗い粗面」部分の導入を、スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム形成層の界面に実施しても、そのスクラッチ適正の向上や、意匠性の向上に好適である。
また、スクラッチ隠蔽層の体積ホログラム形成層が形成されている面とは反対の面に、または、スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム形成層との界面に、地紋印刷を施して、その「地紋」が存在することによる偽造防止性の向上のみならず、不正にスクラッチした際にその「地紋」も同時に削れてしまうことによって、偽造や変造を防止する効果を高めることができる。
この地紋印刷は、主要なデザイン模様の背景となる淡色系のパターンや彩文の印刷のことであり、単色の印刷用インキを使用してもよいが、より偽造防止性を高めるため、多色の印刷用インキを使用することも好ましい。この多色の地紋印刷には、オフセット印刷や、グラビア印刷も使われるが、オルロフ印刷やシムルタン印刷などの特殊な印刷方式もその高い偽造防止性から好適である。
オルロフ印刷とは、凸版多色集合印刷のことであり、それぞれの色のインキに対応する部分版(パターンローラ)に転移したそれぞれの色のインキを中間のローラに集合し、その集合ローラから一つの凸版版面にそれらのインキを同時に着肉する。凸版版面から直接印刷する場合(オルロフ印刷)とゴム胴(ブランケット胴)にインキを転移してから印刷する方法(オフセット・ザンメル)とがある。版面は一つであるが、一つの画線の途中から色を何色かに変化させることが出来るものである。
また、シムルタン印刷とは、複数の版面(平版や樹脂版、もしくは金属版などの凸版版面)を一つのゴム胴(ブラン胴)の周りに配置して、各版面からのインキをゴム胴に集合してから印刷する。印刷位置精度は版胴への版面の取り付け精度でほとんど決まり、シート基材の伸縮などの影響が少ないため、高い見当合わせが安定して可能となるものである。
この地紋印刷のデザインとしては、装飾的効果をあげるための図形であって、規則正しく繰り返される「文様」や、紋章的な感じを含む図文である「紋様」、その他染織等に用いられる「型」として繰り返される意匠等を用いることができる。
特に、スクラッチによって、容易にそのデザインが破壊されることを目的として、それらの画線の幅を非常に細く、30〜100μm程度とした「細線」、もしくは、「細紋」とすることも好適である。
地紋印刷における「地紋」の形成厚さは、1.0〜10.0μmとする。
ここで、スクラッチ隠蔽層の表面は「粗い」面であるため、この凹凸に追従して印刷可能なインクジェット方式や、この凹凸に影響され難い感熱転写方式、もしくは、昇華転写方式を用いて地紋印刷を行ってもよい。さらに、このような転写方式を用いて、スクラッチ隠蔽層の凹凸の凸部のみに印刷を行い、不正なスクラッチにより非常に容易に地紋印刷が破壊されるようにすることも好適である。
特に、昇華転写方式は、スクラッチ隠蔽層を構成する樹脂層にのみ浸透し、独特の風合いを醸し出すとともに、同一のものを偽造することが困難であるため好ましい。
また、この地紋印刷のデザイン及び、形成位置を、スクラッチ隠蔽層の上下で同一とすることも、その意外性や偽造防止性を高めるため好適である。
そして、本発明のスクラッチラベルのスクラッチ隠蔽層を、平均粒子径1.0μm〜10μmの顔料及び、平均粒径0.01μm〜0.1μmの微粒子顔料の両方を含んでいるものとすると、スクラッチカードを不正な目的で曲げたり、湾曲させたりした際に、さらには、そのスクラッチ隠蔽層部分そのものを剥がそうとした際に、スクラッチ隠蔽層に対して、いわゆる「剥離痕」を残すことが可能となり、その偽造防止性を著しく高めることが可能となる。しかも、この「剥離痕」は、一旦、発生すると、もはや、その「剥離痕」を修復する手段はないため、その偽造防止性を著しく高めることとなる。
スクラッチ隠蔽層用のインキ組成物に含める顔料成分としては、上記したごとく、金属系微粉末やそれらの酸化微粉末等(もちろん、窒化物やその他の化合物微粉末でもよい。)の顔料成分を20〜80%含有するものを用いるが、この顔料成分として、平均粒子径1.0μm〜10μmの比較的粒子径の大きい顔料、または、顔料群(「群」とは、複数の顔料を混合することも含める意味。以下、「顔料、または、顔料群」を略して、「顔料(群)」ともいう。)と、平均粒径0.01μm〜0.1μmの微粒子顔料、または、顔料群を準備し、これらの混合系を用いることで、粒子径の大きい顔料(群)の隙間に微粒子顔料(群)が入り込む構造とし、スクラッチ隠蔽層が極度の変形を受けた際に、微粒子顔料(群)が粒子径の大きい顔料間の滑り剤の役目を果たして、粒子径の大きい顔料の層内移動を容易かつ不可逆なものとする(塑性変形を生じることを意味する。)。さらに、この「滑り」効果を助長するためにシリコーンオイルやタルク等の滑り性付与剤を1%〜5%添加することも好適である。
スクラッチカードを不正な目的で、90度から180度の「折れ曲がり変形」させると、スクラッチ隠蔽層自体も同様の変形を受け、スクラッチ隠蔽層の一方の面は、シート基材と固着してズレ変形を生じ難い状態となっていることから、スクラッチ隠蔽層の他方の面にその変形圧力が集中し、上記の塑性変形を大きくして、そのスクラッチ隠蔽層の他方の面に不規則な凹凸や、不規則な裂け目を発生させ、この不規則な凹凸や、不規則な裂け目が、「剥離痕」として視認されることとなる。
このような「剥離痕」をより確実に発生させるためには、粒子径の大きい顔料(群)と、微粒子顔料(群)の比率を、10対1〜10対30、特には、10対5〜10対10とすることが好ましい。
「粒子径の大きい顔料(群)」10に対して、「微粒子顔料(群)」の比率が1未満であると、スクラッチ隠蔽層に「剥離痕」が発生し難くなり、「微粒子顔料(群)」の比率が30を超えても、やはり「剥離痕」が発生し難くなる。
さらには、スクラッチ隠蔽層用インキ組成物に用いる樹脂として、凝集破壊し易い脆弱性の樹脂を用いることもこの「剥離痕」の発生を確実なものとするが、この場合には、スクラッチオフ(コインや爪によるスクラッチによりスクラッチ隠蔽層を部分的に除去することを意味する。)を容易とする効果も発現するため好適である。
また、そのインキ組成物に、粒子径の大きい顔料(群)と、微粒子顔料(群)の比率を、10対1〜10対5として配合することで、スクラッチ隠蔽層の塑性変形をし易くすることは、スクラッチ隠蔽層の最表面に上記したような平圧(平板)プレスやロールプレス処理を施すことにより「光学的な鏡面」とする際にも望ましいものとなる。
さらに、スクラッチ隠蔽層の体積ホログラム形成層が積層されている領域以外の領域において(スクラッチ隠蔽層のサイズが、体積ホログラム形成層のサイズより大きく設定してあることを意味する。スクラッチ隠蔽層の体積ホログラム形成層よりはみ出した部分は、粘着剤と、直接、接することとなる。)、スクラッチ隠蔽層とシート基材との接着強度に「所定パターン」状の変化(例えば、粘着層の材料を代えて、「粘着の強い部分」と「粘着の弱い部分」を設け、その強度比を、2/1〜5/1とすることを意味する。)を持たせたり、または、スクラッチ隠蔽層の「秘密情報」形成部以外の領域において、スクラッチ隠蔽層を部分的に、例えば、文字状にスクラッチし難い層として、すなわち、「不正」や「開示」等の文字状にスクラッチ隠蔽層を体積ホログラム形成層上や、シート基材上に固着させて、むやみにスクラッチ隠蔽層を隅から隅までスクラッチオフしようとする行為に対する牽制とすることも好ましい。
この場合には、例えば、スクラッチ隠蔽層を、上層と下層の2層構成とし、スクラッチ隠蔽層の下層を設ける際に、
予め、体積ホログラム形成層面やシート基材面に固着し、且つ、爪等によっては剥がすことができない強度(硬度)を有する樹脂層を用いて、「文字パターン」の印刷を行っておき、このパターン部分を除いて、通常のスクラッチ隠蔽層の下層を設け、それらを全て覆うように、スクラッチ隠蔽層の上層を設ける等の工夫が必要となる。
このようにして得られた、本発明のスクラッチラベルを貼着したスクラッチカード等を、その外観から観察した場合には、スクラッチ隠蔽層(及び体積ホログラム形成層)に覆われた「秘密情報」を視認することはできなかったが、そのスクラッチカード等のスクラッチ隠蔽層をコインで一部削り取ることにより、その削りとった領域から、「秘密情報」、屈折率変化領域による所定パターン表示、及び、体積ホログラム形成層からの体積ホログラム再生像を同時に視認することができた。
また、スクラッチ隠蔽層が、平均粒子径1.0μm〜10μmの顔料及び、平均粒径0.01μm〜0.1μmの微粒子顔料を含んでいる本発明のスクラッチラベルを貼着したスクラッチカード等のシート基材を湾曲させて、スクラッチ隠蔽層の断面を露出(より見えやすくするという意味も含む。)させようとすると、スクラッチ隠蔽層の表面に「剥離痕」が発生し、不正を働こうとした痕跡を残さずスクラッチ隠蔽層を元の状態に戻すことはもとより、スクラッチカード等に何らかの変造を加えようとすることは困難と思われた。
さらには、本発明のスクラッチラベルを貼着したスクラッチカード等のスクラッチ隠蔽層を、その下にある「秘密情報」形成部の位置を知らずに一部スクラッチオフしたところ、その領域には「秘密情報」が現れず、結局、やみくもに全てのスクラッチ隠蔽層を剥がすこととなり、正規購入者によるスクラッチオフでないことが一目瞭然となった。このことは、スクラッチカードの正規購入者でない者が、「秘密情報」を覗き見する等の不正を働くことに対する牽制効果を有すると思われた。
本発明によれば、シート基材上の「秘密情報」、及び、体積ホログラム形成層をスクラッチ隠蔽層で隠蔽したスクラッチラベルを提供することができ、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフして、初めて、体積ホログラムの存在、及び、「秘密情報」と同時に、「屈折率変化領域」の「パターン」表示と、体積ホログラム再生像を視認可能となる、その意外性や偽造防止性に優れるスクラッチラベルを提供することができる。
すなわち、ホログラムデザインを第三者に開示していないことから、不正者が、例え、本発明のスクラッチラベルを複数枚入手して、その構造やホログラムの存在を知り得たとしても、そのホログラムデザインが統一された唯一のデザインなのか、複数のデザインを任意に配したものなのか、もしくは、特定の秘密情報に対して特定のホログラムデザインを対応させてあるものかを知ることができないものとしており、この原理によって、入手したスクラッチカード以外の秘密情報を有するスクラッチカードに対しての「偽造品」を作ることを事実上不可能とした、スクラッチカードを提供することができる。
しかも、本発明によれば、その体積ホログラム層内に、ホログラムとは別の「パターン」が形成されており、そして、その「パターン」の形成を、そのスクラッチシートに貼着後に施すことで、個々のスクラッチシートに個々の「パターン」記録を設けることをも可能として、その変造や偽造を著しく困難としたスクラッチシートを提供できるスクラッチラベルを提供することができる。
また、本発明によれば、スクラッチ隠蔽層と体積ホログラム層の界面を「光学的な鏡面」として、その体積ホログラム再生像の鮮明度を確保して、これを偽造することを非常に困難とし、さらには、スクラッチ隠蔽層に平均粒径の異なる顔料を配して、不正な目的でカードを湾曲させたりしたときに、その剥離痕を発生させ、もはや、その剥離痕を修復することは不可能となる構造として、その偽造防止性を著しく高めることを可能としたスクラッチラベルを提供することができる。
従って、本発明のスクラッチラベルは、偽造や変造を著しく困難とした新規なスクラッチカード等(すなわち、「スクラッチシート」。)を提供することを可能とし、第三次産業においてそのカード保持者が正当な権利を有する者であるとの証明や、「スクラッチくじ」などの用途のみならず、高額商品や高額サービスを提供するシステムにおいて、いわゆる「鍵」の役割を担う用途に有用である。
本発明の一実施例を示すスクラッチラベルH1の断面図である。(体積ホログ ラム形成層2の中に、屈折率変化領域N1が設けられている。屈折率変化領域 N1として『三次元体積領域』の一例である「直方体」を例示しており、その 断面形状を表示している。「屈折率変化領域N1」が表示することとなる「所 定のパターン」は、示していない。) 本発明の他の実施例を示すスクラッチラベルH2の断面図である。(体積ホロ グラム形成層2と粘着層3の間に、黒色層4が設けられている。) 本発明のスクラッチラベルH1、または、H2を貼着したスクラッチシートS S1の、そのシート基材S1の所定の位置に、そのシート基材S1の上に設け られている「秘密情報」S2を覆うように、本発明のスクラッチラベルH1、 または、H2を貼着した図である。ここで、(a)は、スクラッチシートSS 1を上から見た図であり、(b)は、そのA−A断面図である。(地紋印刷5 は表示していない。) スクラッチシートSS1のシート基材S1の上に「秘密情報:1234567 8」S2を印字した図。(「秘密情報」S2を囲む枠は、便宜上、記載してあ るのみ。) シート基材S1の所定の位置に、「秘密情報」S2を覆うように、貼着した本 発明のスクラッチラベルH1、または、H2(図中では「長方形」で示してあ る。)の、そのスクラッチ隠蔽層1の上(最上層)に、さらに、地紋印刷5を 設けた図である。(図中、地紋印刷5のみを強調して図示している。)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
(シート基材、及び、「秘密情報」形成部)
本発明のスクラッチラベルH1、または、H2を貼着して構成されるスクラッチシートSS1に用いられるシート基材S1としては、「秘密情報」S2表示部を設けることができ、本発明のスクラッチラベルH1、または、H2を貼着できるものであれば、あらゆる材料、すなわち、プラスチック材料、金属材料、セラミック材料、生体材料、それらの複合材料、さらには、それらを多層構造としたり、さらに複雑に組み合わせたりしたものなどを用いることができる。
且つ、その表面や裏面に、本発明のスクラッチシートSS1の用途に応じた印刷等の手段による適宜な表示を設けたものであってもよい。(図3〜図5参照。図3〜図5では、シート基材S1の表面に「☆スクラッチカード☆」などの印刷を施しているが、この「印刷デザイン」を、スクラッチ隠蔽層1の上に設けてもよいし、また、この「印刷デザイン」を体積ホログラム形成層2に記録する「ホログラムデザイン」として、体積ホログラム形成層2に記録しておいてもよい。)
その形状も、あらゆる形状、すなわち、シート状、フィルム状、板状、立方体状、直方体状、カード形状(磁気カード、ICカード、非接触ICカード、ポストカード、グリーティングカード、名刺、ポイントカード、ライセンスカード、遊戯用カード等の形形状)、はがき形状、リーフ形状、帳票形状、伝票形状、Sメール形状、ラベル形状、シール形状、証券類形状、通帳形状、パスポート形状、郵便物形状、配送物形状、封筒状、袋状、箱状、ケース状、円盤状、ディスク状、楕円体状、球体状、曲面形状、棒状、及びこれらの組み合わせや、これらに変形、切断、穴あけ、接着等の加工処理を施したものなどを採用することができる。さらには、電子端末や、携帯用端末等、あらゆる工業製品やあらゆる商品をもシート基材S1として採用することができる。
また、スクラッチシートSS1の他の構成(図示していない。)として、シート基材S1、「秘密情報」S2表示部、体積ホログラム形成層2、及び、スクラッチ隠蔽層1の構成とする場合には、体積ホログラム形成層2や、スクラッチ隠蔽層等との接着性を考慮してシート基材S1を選定する。
その厚さも、「秘密情報」S2表示部を支持することができ、且つ、ハンドリング可能であればよく、特に制限はないが、通常、3.0μm〜3.0mmの厚さとする。もちろん、封筒状や、箱状のものであれば、その立体形状の寸法は、それぞれの用途に適したものとするため、この範囲内とする必要はない。
但し、これらのシート基材S1上に設けた「秘密情報」S2を、本発明のスクラッチラベルH1、または、H2の貼着により、そのスクラッチ隠蔽層1で秘匿することとなるが、そのスクラッチ隠蔽層1を設けた側、もしくは、その反対側から、シート基材S1に対して、1000ルクスを超える強度の大きい可視光線照射や、0.5W/平方センチメートル以上の赤外線照射、0.1W/平方センチメートル以上の紫外線照射、1ギール/分以上のX線照射等、さらには、100kV以上の電子線等の粒子線(以上を総称して「光線」と称する。)を照射して、その「透過『光線』」や「反射『光線』」、さらには、特性X線等から、その「秘密情報」や「体積ホログラム形成層2の位置や形状」を読み取ろうという試みに対抗するため、そのシート基材S1の性質として、これらの「光線」を「遮蔽」したり、「反射」、もしくは、「散乱」させる性質を保有するものを採用することができる。
すなわち、可視光線照射に対しては、可視光線を遮蔽したり散乱させたりする隠蔽性の高い顔料や、鱗片状の金属材料、さらには、金属板そのもの等をシート基材S1中に混入させたり、シート基材S1に用いる基紙にコーティングしたり、ラミネートしたり、複合化したりする(以上を総合して、「混在させる」と称する。)。(図示せず。)
赤外線照射に対しては、さらに赤外線吸収剤等を、紫外線照射に対しては、さらに紫外線吸収剤等を、X線照射に対しては、金属板の中でも鉛材料等を、電子線等の粒子線照射に対しては、それらの粒子線を吸収する素材を混在させることで、その効果を増すことができる。
また、これらシート基材S1の代表例として、いわゆる「プリペイドカード」として用いられている材料及び形状や、「プラスチックカード」として用いられている材料及び形状、特に、JIS規格(「プリペイドカード JIS X 6310シリーズ」や、JIS X 6301、JIS X 6300シリーズ、JIS X 6320シリーズ、JIS X 6330シリーズ等。)やISO規格(ISO/IEC7810シリーズ、ISO/IEC7816シリーズ、ISO/IEC14443シリーズ、ISO/IEC15457シリーズ等。)で定められているものがある。(図示せず。)
その中でも、その「汎用性」(加工汎用性を含む。この「加工汎用性」とは、カード基材を積層体とする等の製造ラインや製造条件が確立していることを意味する。)から、「JIS規格やISO規格で定められている『プリペイドカード』として用いられているカード基材及び形状」が望ましい。
これらは、既に、世の中に大量に頒布され、普及しているため、それらをハンドリングしたり、保持することに抵抗感がなく、また、それらを携帯したり、使用したりする場合の周辺機器(入退室用ゲート端末、駅務ゲート端末、その他のカード利用機器を意味する。)や、関連グッズ(カードを携帯するためのカード入れや、カード用装飾品等を意味する。)等も既に普及しているため、これらのものに対する適用もスムースであって好適である。
特に、不透明性を有するフィルム状もしくはシート状のプラスチックがその加工適正やコスト面で好ましく、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や耐溶剤性および耐熱性をも有するものが用いられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の各種のプラスチックフィルム材料があげられる。そして、これらのプラスチックそのものが透明性を有する場合には、不透明化処理のために、二酸化チタンや炭酸カルシウム等の不透明性付与のための顔料等を適宜練り込むなど、不透明性付与材料を混在させた、フィルム状もしくはシート状のプラスチックを例示することができる。
さらに、これらの材料に、フッ素系樹脂パウダーや、シリコン系樹脂パウダー等を混入したプラスチックフィルムは、耐擦傷性が著しく高く好適である。
これらのフィルム状もしくはシート状のプラスチック材料からなるシート基材S1の厚さは、通常、3.0μm〜1.0mmであるが、スクラッチシートSS1としての加工適正や取り扱い適正から50〜300μmとすることが望ましい。
この厚さが、3.0μm未満であると、本発明のスクラッチラベルH1、または、H2を貼着したり、スクラッチシートSS1としてのハンドリング適正に劣るものとなり、この厚さが1.0mmを超えると、シート処理や巻き取り処理における取扱いに困難を生じるため好ましくない。(図3〜図5参照。)
具体的には、50μm〜1000μmの厚さの乳白ポリエチレンテレフタレートが好適である。
スクラッチシートSS1が秘匿する「秘密情報」S2としては、文字、図形、記号、模様、マーク、形状、立体、もしくは、これらの結合、または、これらと色彩との結合その他、さらには、識別コード、識別番号、識別文字等のあらゆる識別情報、その他何らかの手段によって識別することが可能なものであれば、特に制限はなく、採用することができる。(図3〜図5参照。)
この識別手段としては、目視識別、携帯カメラ認識やバーコード認識等の光学的識別、機械識別、その他の物理的識別手段等をいう。
識別可能であれば、全てが同一のものであっても、全てが個別のものであってもよく、また、個人や企業、さらには、特定の業界特有のものであってもよい。
また、「意匠」のごとく、物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもの、または、これと類似のものであってもよく、「商標」のごとく、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であって、業として商品を生産し、証明し若しくは譲渡する者がその商品について使用するもの、または業として役務を提供し若しくは証明する者がその役務について使用するもの、または、これと類似のものであってもよい。その他、「称号」や、「商号」、さらには、種々の場面において照合の対象となるものでもよい。
そして、「文字」には、楷書体、隷書体等のあらゆる書体の文字が含まれ、「記号」には、特殊文字記号、顔文字記号、電気文字記号、地図記号等も含まれ、HTML記号等の限られた業種の限られた場面においてのみ用いられる記号もその特殊性から好ましい。
また、英文字、ギリシャ文字その他各国で使用されている文字や、シンボル、数学記号等も、不正者が瞬間的に覗き見した程度では暗記できないものとなり、好ましい。
さらには、これらの情報の中に、目視等の単なる情報読取手段では判別できない隠し情報や、暗号情報を含ませて、スクラッチシートSS1の運用を管理する者のみが所定の情報処理手段によって、それらの隠し情報や、暗号情報を判読することができるものとすることも好適である。
このような特殊性を有するものは、正規購入者によってもその登録や照合等の場面で、誤記や誤入力の原因となるため、携帯カメラ認識等の自動認識手段を併用することが好ましい。
以下、これらのものを総称して、「番号等」という。
さらに「秘密情報」S2には、暗証番号等、個人認証番号等、口座番号等、その他の個人特有の番号等や、何らかの個別番号等、抽選番号等、管理番号等、もしくは、単なる連続番号等であって、登録することによりその有効性を発現するもの、暗号鍵番号である共通鍵番号のように同一の番号等、さらには、全くの乱数であってスクラッチシートSS1のシート基材S1を作製するときに発生させ作製者含め誰もその番号等の内容を知らないよう工夫した番号等、知ることが許された者(正規な購入者等を意味する。もちろん、スクラッチシートSS1のシステム設計者や、スクラッチシートSS1の発行者等が含まれる場合もある。)のみが見ることができ、その他の者は物理的に見ることができないよう設定される番号等を含めることができる。
また、そのスクラッチシートSS1の用途により、上記した番号等のみならず、文字、図形、マークその他、個人及びそのスクラッチシートSS1の供給者が共通に認識できるもの(この対象は、いわゆる「情報」全てとなる。)であれば何れも用いることができる。
そして、その認識方法も、少なくとも目視確認により認識できる情報を有しながら、目視以外の認識方法、例えば、光学読取方法、磁気的読取方法、その他、あらゆる物理的もしくは化学的読取方法を採用することができ、且つ、秘密情報と重ねて視認できる体積ホログラム再生像の中にも、マシンリーダブルホログラム等の、ホログラム再生原理を利用した光学読取方法を含めることもその偽造防止性を高めるために好適である。(認識方法や手段は図示せず。)
これらの「秘密情報」S2をスクラッチシートSS1のシート基材S1上に設ける方法としては、可変情報を形成する方式として、感熱溶融転写方式、昇華転写方式、光学的もしくは物理的直接描画方式、電子写真方式及び、インクジェット方式等があり、固定情報を形成する方式としては、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、活版印刷方式、凹版印刷方式、スクリーン印刷方式等がある。(図3〜図5参照。)
もちろん、電子端末のディスプレー上に「秘密情報」S2を表示するものであってもよい。
また、シート基材S1そのものを発色材料や消色材料で構成し、その発色原理や消色原理を用いて、可変情報や固定情報を記録する方法を用いてもよい。
すなわち、電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱発色材料からなるシート基材S1や、そのシート基材S1を構成する基紙となる紙材料やフィルム材料上に、電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱発色層を設けたもの、さらには、それらの基紙上に、カプセル内包の発色剤と顕色剤とからなる感圧発色層を設けたものを、シート基材S1として用いることができる。
また、発色と消色を繰り返して操作できる、感温材料等を用いたサーマルリライタブル層や、フルギド系やスピロピラン系などのフォトクロミック材料等を用いる光リライタブル層を同様の目的で、さらには、別の位置に単なる情報表示の目的で設けることも、その意外性や偽造防止性が高まり、好ましい。
特に、これらの「リライタブル層」を設けて、「秘密情報」S2を表示させると、正規購入者が、その「秘密情報」S2を確認するときのみ「秘密情報」S2が現れ、それ以外のときには「非表示」とすることで、不要な第三者による「秘密情報」S2の視認を阻止することができる。(シート基材S1の種々の構成は図示せず。)
感熱発色材料としては、発色剤、顕色剤、及び、増感剤からなる系を用いることができ、発色剤としては、ベンゾイルロイコメチレンブルー、クリスタルバイオレットラクトン等のフタリド化合物等、顕色剤としては、4−4´ビフェノール、1−ナフトール等の酸など、さらに、増感剤としては、4−ベンジルビフェニル、フルオレン等を用いる。
感熱記録とは,基紙上の層に分散させた発色剤及び顕色剤を熱により溶融させ、接触させることにより発色させる仕組みである。その高感度化のために、低融点の増感剤を添加するが、様々な酸発生方法とこの発色機構を組み合わせることにより、繰り返しの書き込みや消去が可能なリライタブル感熱記録を実現できるものである。例えば、低い熱エネルギーにて発色する赤色感熱記録層と,高い熱エネルギーにて発色する黒色感熱記録層を積層させることにより,その印加エネルギーを使い分けることで赤/黒の2色での記録を可能にする2色発色感熱記録材料を用いてもよい。
これらのロイコ系感熱発色材料や、フォトクロミック系光発色材料は、その発色機構である「紫外領域または赤外領域→可視領域への変化」を、「可視領域→紫外領域または赤外領域への変化」とすべく材料選定をすることにより、消色記録材料として用いることができる。
このような消色機構を用いると、正規購入者が、その「秘密情報」S2を確認した後、正規購入者の判断により、速やかに、もしくは、適宜なタイミングで、「秘密情報」S2を消色(消去)することを可能とし、その偽造防止性を高めることを可能とする。
このようにしてシート基材S1上に「秘密情報」S2形成部を設け、その「秘密情報」S2形成部を覆うように、本発明のスクラッチラベルH1、または、H2を貼着する。(図1〜図5参照。)
(スクラッチ隠蔽層、及び地紋印刷)
本発明のスクラッチラベルH1、または、H2のスクラッチ隠蔽層1に用いるインキ組成物としては、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、エチルセルロース、硝酸セルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のスチレン樹脂、あるいはスチレン共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの単独あるいは共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等のビニル共重合体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、重合ロジン等のロジンエステル樹脂、クマロン樹脂、ビニルトルエン樹脂、ポリアミドや、ポリイミド等を挙げることができる。また、スクラッチオフ性を満足する範囲でこれらの樹脂に硬化剤等を混合して、擦れ等によるスクラッチ隠蔽層1の表面の不要な剥離や、剥がれを防止してもよい。(図1、または、図2参照。)
また、熱硬化性樹脂としては、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂等をあげることができ、シリコン樹脂として、シリコンゴム(シロキサン結合が5000〜10000の直鎖構造分子。)や、ケイ素樹脂、ゴム系天然樹脂として、天然ゴム、塩酸ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等を用いることができる。
さらには、スクラッチオフするという行為における環境影響を考慮して、スクラッチ隠蔽層1に用いるインキ組成物として、生分解性プラスチックを用いることも好適である。
生分解プラスチックとしては、化学合成系として、εーカプロラクトン等のラクトン系樹脂、ポリブチレンサクシネート−アジペート等のポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリ乳酸等、低分子量脂肪族ジカルボン酸と低分子量脂肪族ジオールより合成したポリエステル樹脂等、変性ポリビニルアルコールと脂肪族ポリエステル樹脂と澱粉の混合物等、または、低分子量脂肪族ポリエステルに脂肪族イソシアネートを添加して重合させたものなどが、また、天然物系として、ゼラチンなどの動物性天然物質、セルロースなどの植物性天然物質など、または、ポリヒドロキシブチレート等の微生物生産系物質などが好適である。
スクラッチ隠蔽層1に用いるインキ組成物としては、これらの樹脂成分を含む固形分全体に対して、隠蔽性とスクラッチ性を付与するために、金属系微粉末(アルミニウム粉末、黄銅微粉末、銅微粉末等)やそれらの酸化微粉末、窒化微粉末、その他の化合物微粉末等の顔料成分を20〜80%含有するものを用いる。
また、スクラッチ隠蔽層1の隠蔽性をさらに向上させるために、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の隠蔽性の強い顔料成分を1〜10%含有させてもよい。スクラッチ隠蔽層1用インキ組成物を以上の組成物から構成することにより、印刷適性とスクラッチ性との双方を満足することができるようになる。
スクラッチ隠蔽層1は、この組成物を適宜な溶剤で希釈したものを、適宜な剥離性フィルム(本発明のスクラッチラベルH1、または、H2を、このフィルム上で形成した後、このフィルムから剥離することで、本発明のスクラッチラベルH1、または、H2を得ることができる。この「適宜な剥離性フィルム」は図示せず。)上に、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、凹版印刷方式、インクジェット印刷方式等の印刷方式を用い、乾燥後の厚さとして、5μm〜50μm、さらには10μm〜30μmの厚さで形成する。(図1、または、図2参照。)
さらに、スクラッチ隠蔽層1用インキ組成物として、金属ペースト、樹脂材料及び助剤を、水と低級アルコールに分散せしめて水性エマルジョンインキとしたものも使用でき、特に、体積ホログラム形成層2の上にスクラッチ隠蔽層1を設ける際に、その体積ホログラム形成層2の表面に不要な変形や変質を与えないため好適である。
その金属ペーストの金属としては、銅と亜鉛の合金であるブロンズパウダーや、アルミニウムパウダーを用いる。また、アルミニウムを微粉末化して、脂肪酸等で表面を処理したものを沸点の高い炭化水素溶剤( ミネラルスピリットなど)でペースト状にしたアルミニウムペーストとしてもよい。
これに、一般の印刷インキに使用する黄、マゼンタ、シアンまたは墨用の着色顔料、チタン白等体質顔料を、適宜、含めて着色タイプとしてもよい。
その樹脂材料としては、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂や、ポリアクリル酸系樹脂等を用いることができ、このこれら樹脂材料のエマルジョンをインキ組成物の25 〜50%としてアルミニウムペーストや、着色顔料などに、10〜35%の水と5%未満のイソプロピルアルコールを加えて攪拌して水性のエマルジョンインキとするものである。これに消泡剤や界面活性剤、もしくは防腐剤等の助剤を0.1〜3%添加することもできる。
この水性エマルジョンインキ組成物を用いたスクラッチ隠蔽層1の形成は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法あるいはアニロックスローラーを介して印刷するフレキソ印刷法などが全面印刷あるいは部分印刷に好適な方法として適用され得る。
また、スクラッチ隠蔽層1用インキ組成物として、層内にて凝集破壊し易い脆弱性の樹脂を溶剤に溶かしたものに、隠蔽性の顔料としてアルミニウム粉末(銀色)、真鍮粉末(金色)、銅粉末(赤色)など金属粉末、あるいはタルク、カオリンなどの白色の体質顔料を混合したもの、あるいは、これに適宜色の着色顔料や染料を混合して着色したものを使用できる。
その凝集破壊し易い樹脂としては、異種の樹脂を適宜な配合比率でブレンドしたブレンド樹脂が使用でき、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン系重合体、スチレン−ブタジエンゴム、各種ワックス、ロジン、テルペン系樹脂、テルペン系重合体などの樹脂のうちのいずれか2種以上を適宜比率にて配合したブレンド樹脂が使用できる。
この樹脂を溶解する溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、シクロヘキサノール、酢酸イソブチル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサノン、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコール誘導体など、又はこれらの混合溶剤が使用できる。
スクラッチ隠蔽層1用インキ組成物に用いられる顔料としては、さらに、有機顔料として、キナクリドン系レッド・マゼンタ、アンスラキノン系レッド・イエロー、ポリアゾ系イエロー、ベンズイミダゾロン系イエロー・オレンジ、フタロシアニン系顔料として、銅フタロシアニンブルー(α型、β型)、銅フタロシアニングリーン、異種金属フタロシアニンブルー、スレン系ブルー、アゾ系顔料として、溶性アゾ顔料(カーミン6B、パーマネントレッド2B他)、不溶性アゾ顔料(ジスアゾ系、モノアゾ系他)、不溶性多環式顔料(赤:キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、橙:ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、黄:キノフタロン、イソインドリノン、緑:フタロシアニン、青:フタロシアニン、インダンスレン、紫:ジオキサジン他)、不溶性レーキ顔料(赤:レーキレッドC、ウォチュングレッド他)等がある。
無機顔料としては、複合酸化物系顔料、微粒子複合酸化物系顔料、紺青、ハイブリッド型顔料等があるが、さらに、弁柄、モリブデンレッド、カドミウムレッド、鉛丹(以上、赤色。)、黄鉛(赤口)、モリブデンオレンジ(橙色)、カドミウムオレンジ(橙色)、群青(ウルトラマリンブルー)、紺青(プルシアンブルー)、コバルトブルー、セルリアン、マンガン青(以上、青色。)、アンバー(茶色。)、黄鉛、カドミウムイエロー、チタン黄、黄色酸化鉄(以上、黄色。)、酸化クロム、コバルトグリーン、ビリジアン、ピーコック(以上、緑色。)、マルス紫、コバルトバイオレット、マンガンバイオレット(以上、紫色。)その他、体質顔料や、金属粉顔料等が用いられる。
これらの顔料の粒径を、平均粒子径1.0μm〜10μmの顔料(群)、もしくは、平均粒径0.01μm〜0.1μmの微粒子顔料(群)として仕上げる。特に、微粒子顔料(群)は、二次凝集しやすく、再分散処理等を施す必要がある。
適宜な剥離性フィルム上に、スクラッチ隠蔽層1を設ける前に、本発明のスクラッチラベルの用途に応じたデザインにより、オフセット印刷や、グラビア印刷等を用いて、1.0〜10.0μmの厚さで地紋印刷5を施した後、その地紋印刷5を覆うようにスクラッチ隠蔽層1を設ける手順とすると、本発明の地紋印刷5が最表面となるスクラッチラベルを得ることができる。(図示せず。図5において、その地紋印刷5を強調した図を示している。)
もちろん、スクラッチラベルH1、または、H2を形成した後の、そのスクラッチ隠蔽層1上に改めて、同様の印刷方式を用いて地紋印刷5を設けてもよい。
この地紋印刷5以外の通常デザイン(主要なデザイン模様等)の印刷を施し、その意匠性を高めることができることは言うまでもない。
さらに、スクラッチ隠蔽層1の上に、または、スクラッチ隠蔽層1及び地紋印刷5の上に、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、これらの共重合体さらには電離放射線硬化樹脂等の保護層を、感熱溶融転写方式、昇華転写方式、インクジェット方式で、1〜3μm厚さに形成して、「秘密情報」S2の隠蔽をさらに強化してもよい。(図示せず。)
また、本発明のスクラッチラベルH1、または、H2において、スクラッチ隠蔽層1の体積ホログラム形成層2から「はみ出す部分」がある場合には(図示せず。)、その「はみ出す部分」については、特にスクラッチオフ適正を持たせる必要がないため、シート基材S1の上に強固に粘着させて、スクラッチ隠蔽層1のスクラッチオフの際に、シート基材S1上に残る部分として設計してよい。
そして、その固着して残る部分を、「所定のパターン状」、すなわち、「不正」、「覗き見」、「削り済み」や「開示」等の「既に削られたことを示す文字や情報を表すパターン状」とすることで、その偽造防止性を高めることができる。
この目的でのスクラッチ隠蔽層1の形成は、上記と同様の印刷方式等を用いることができる。
但し、上記した「所定のパターン状」での固着部分を設けるため、スクラッチ隠蔽層1の形成を2段階に分け、その第一段階として、その「所定のパターン状」にあらかじめ、2液硬化型の樹脂材料における硬化剤等を所定の割合の2倍〜5倍程度添加したスクラッチ隠蔽層1用インキ組成物で、一旦、目的の厚さより薄く設けておき(例えば、目的の厚さの1/5〜3/5等。この部分は、スクラッチ適性が無い。)、第二段階において、その「所定のパターン状」部分を覆うように(他の部分を埋めるように。)、残りの厚さだけ、スクラッチ隠蔽層1用インキ組成物を上乗せする方法を用いてもよい。
(体積ホログラム形成層、屈折率変化領域、及び、黒色層)
適宜な剥離性フィルム上に設けた、または、適宜な剥離性フィルム上に設けてある地紋印刷5の上に設けた、スクラッチ隠蔽層1のその全面、もしくは、その一部に、体積ホログラム形成層2を設ける。(図1、または、図2参照。図1、または、図2には、スクラッチ隠蔽層1の全面に、体積ホログラム形成層2を設けた例を図示している。適宜な剥離性フィルムは図示していない。)
本発明のスクラッチラベルH1、または、H2の体積ホログラム形成層2には、各種の透明な材料又は、透明なフィルムが用いられる。
すなわち、銀塩写真乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト、フォトポリマー材料、無機材料からなるフォトリフラクティブ材料、フォトクロミック材料等及び、それらの材料からなるフィルムを用い得る。
銀塩写真乳剤としては、高感度、高解像度が求められ、超微粒子銀塩や、金―カルコゲン増感や、還元増感を施した材料等が用い得る。
フォトレジストとしては、ポジ型フォトレジストとして、ノボラック−DNQ系、又は、化学増幅型フォトレジスト、ネガ型フォトレジストとして、光架橋型フォトレジスト、又は、光重合型フォトレジスト等を用いることができる。
銀塩写真乳剤、或いは、重クロム酸ゼラチンは、処理工程が多く煩雑であるが、固体光重合性材料、すなわち、フォトポリマー材料は、処理工程が1回のみであるため、好適である。
これは、1工程で、固体の光重合性フィルムから、安定な高解像度のホログラムを作成することができ、ホログラフ情報をもつコヒーレントな光源に対する1回の露光により、「屈折率変調を固定化した画像」が得られることを意味する。このようにして形成されたホログラムは、光に対するその後の均一な露光によっても破壊されることなく、むしろ定着されまたは強化される。
フォトポリマー材料は、熱可塑性重合体結合剤、付加重合可能なエチレン系不飽和単量体、及び、不飽和単量体の重合を活性化する光開始剤からなる、屈折率変調を有する光重合性組成物を用いる。
熱可塑性重合体結合剤は、溶媒可溶性の熱可塑性重合体であり、単独で、又は、組合せて使用する。具体的には、
〔アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、例えば、ポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、〕、〔ポリビニルエステル、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル;エチレン/酢酸ビニル共重合体〕、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジェン及びイソプレン重合体及び共重合体、エポキシ化物、例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物、〔ポリアミド、例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアシツクアミド〕、〔セルロースエステル、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート〕、〔セルロースエーテル、例えば、メチルセルロース、並びにエチルセルロース〕、ポリカーボネート等、並びに、〔ポリビニルアセタール、例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール〕等。
特に好適には、セルロースアセテートラクテート重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸及びメタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体を含むアクリル系重合体及びプレポリマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸又はメタクリル酸(C2〜C4)アルキル/アクリル酸又はメタクリル酸の3元重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等、並びに、それらの混合物である。
さらに、ポリスチレン、ポリ(スチレン/アクリロニトリル)、ポリ(スチレン/メタクリル酸メチル)、並びに、ポリビニルペンデル、及び、それらの混合物を含むこともできる。
エチレン系不飽和単量体は、単一の単量体として、又は、組合せて使用することができる単量体として、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、又はジメタクリレート、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ポリオキシエチル−2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノール−Aジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ヒスフェノール−Aジアクリレート、ビスフェノール−A−ジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−A−ジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−A−ジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−A−ジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−A−ジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−A−ジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、ジフェノール酸−ジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、1,4−ベンゼン・フォールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、ベンゾキノンモノメタクリレート、並びにアクリル酸2−〔β−(N−カルバジル)プロピオニロキシ〕エチル等、を用いることができる。
この単量体が、置換又は非置換フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフトキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素、臭素、よりなる群から選択される、1つ又はそれ以上の部分を含有する場合には、これらを含む光重合性組成物は、いわば「単量体配向型系」と称することができる。
この単量体配向型系に好適な単量体は、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、ビスフェノール−A−ジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ヒスフェノール−Aジアクリレート、並びにアクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、である。
そして、エチレン系不飽和カルバゾール単量体;アクリル酸2−ナフチル;アクリル酸インタクロロフエ=ル;ビスフェノール−Aジアクリレート;アクリル酸2−(2−ブチロキシ)エチル; 並びに、N−フェニルマレイミドのような第2の固体単量体と混合して使用してもよい。
また、予め形成された重合体材料(プレポリマーを意味する。)が、置換又は非置換フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフトキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素、臭素、よりなる群から選択される、1つ又はそれ以上の部分を含有する場合には、これらを含む光重合性組成物は、いわば「結合剤配向型系」と称することができる。
この系に使用される単量体には、フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフチロキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素及び臭素よりなる群からとられる部分を含まないものを使用する。
「結合剤配向型系」に好適な単量体は、付加重合することができ、100℃より高い沸点を有する液体、エチレン系不飽和化合物である。単一の単量体としてか又は他の単量体と組合せて使用することができるこの型の適当な単量体は、次のものを含む。
すなわち、アクリル酸一ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソーホルニル、1,5−ベンタンジオールジアクリレート、N、N´−エチルアミノエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオール・ジアクリレート、デカメチレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパンジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロJRントリメタクリレート、1,5−ベンタンジオールジメタクリレート、フマル酸ジアリル、アクリル酸パーフロロオクチル、メタクリル酸フロロオクチル、並びに1−ビニル−2−ピロリジノン等。
上記のエチレン系不飽和単量体の外、少なくとも300の分子量を有する、1種又はそれ以上の遊離ラジカル開始型、連鎖生長性、付加重合可能、エチレン系不飽和化合物も含有することができる。
また、単量体は、2〜15の炭素原子のアルキレングリコール又は1〜10のエーテル結合のポリアルキレンエーテルグリコールから製造されるアルキレン又はポリアルキレングリコールジアクリレート、並びに、末端結合として存在する時、複数の付加重合可能なエチレン結合を有するものであってもよい。
さらに、デカンジオールジアクリレート、アクリル酸イソ−ボルニル、トリエチレングリフールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸エトキシエトキシエチル、エトキシル化トリメチロールプロノンのトリアクリレートエステル、等である。また、同じ型の第2の固体単量体、例えば、N−ビニルカプロラクタムと混合して使用してよい。
光開始剤として適当な、遊離ラジカル発生付加重合開始剤は、共役炭素環状環系中、2つの環内炭素原子を有する化合物である置換又は非置換多核キノン、例えば、9,10−アンスラキノン、1−クロロアンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、2−メチルアンスラキノン、2−エチルアンスラキノン、2−三級−ブチルアンスラキノン、オクタメチルアンスラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンスレンキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、2,3−ベンズアンスラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,4−ジメチルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、2−フェニルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、アンスラキノンアルファースルホン酸のナトリウム塩、3−クロロ−2−メチルアンスラキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセンキノン、を含む。
また、ベンゾイン、ピパロイン、アシロインエーテル、例えば、ベンゾインメチル及びエチルエーテル;α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、及び、α−フェニルベンゾインを含む、α−炭化水素置換芳香族アシロインを含んでもよい。
さらに好適な光開始剤には、2−(0−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体;1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ヒス(0−クロロフェニル)−4,4’、5,5’−テトラフェニルー:並びに、1H−イミダゾール、2,5−ビス(0−クロロフェニル)−4−3,4−・ジメトキシフェニル−2量体(そのおのおのは、典型的には水素ドナー、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾールと共に使用される)を挙げることができる。
フォトポリマー材料としては、さらに、フッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤からなり、画像化(光記録)されたとき、0.001よりも大きな屈折率変調を有する、光重合性組成物を用いることができる。これには、さらに、可塑剤を含めてもよい。
フッ素含有ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンまたはへキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーとビニルアセテートとから作られたポリマーを用いることができ、他のモノマーを含むこともできる。例えば、10〜20%のフッ素を含有しているものを使用する。
使用されるフッ素含有ポリマーは、フォトポリマーのその他の各成分と両立し得るフッ素含有ポリマーであり、塗布されたときに実質的に固体の透明な皮膜を作るものである。
フッ素は、フッ素含有ポリマーを構成する他のモノマーとフッ素含有モノマーとを共重合するか、または、フッ素含有ポリマーとの反応により導入し、フッ素含有ポリマーが、アルコール、または、酸置換基のような官能基を含むとき、フッ素を導入するためには縮合、アセタール化、ケタール化、またはエステル化反応などを使用する。
フォトポリマー材料にこのようななフッ素含有ポリマーを含めることは、スクラッチ隠蔽層1と体積ホログラム形成層2の界面におけるスクラッチオフ適正が向上し、また、露出した体積ホログラム形成層2の表面が「光学的な鏡面」を維持し易くなるため好適である。
フッ素含有ポリマーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルアセタール/ブチラール、またはプレポリマー類あるいはこれらの混合物と、フッ素化モノマーとのポリマー類を含む。例えば、フッ素含有ポリマーは、ビニルアセテートとフッ素化モノマーとのポリマーとすることができ、必要に応じ、このポリマーのアセテート置換基は、加水分解によりとり除き、フッ素化したポリ(ビニルアルコール)誘導体を得ることもできる。このフッ素化ポリ(ビニルアルコール)は、例えば、ブチルアルデヒドと縮合させ、フッ素化したポリ(ビニルブチラール)誘導体にすることができる。
フッ素化したポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)など、または、これらの混合物も同じ方法で作ることができる。フッ素化モノマーは、テトラフルオロエチレン、および/または、へキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーが好適であるが、ビニルフロライドまたはビニリデンフロライドのような、その他のモノマーも特定の用途のために選定することができる。
必要に応じ、他のモノマー類も存在させることができる。例えば、フォトポリマーの溶解性、接着性、柔軟性、または硬さなどのような、化学的、もしくは、物理的諸性質を調整するために、モノマー混合物中にエチルビニルエーテルを混在させることができる。このようなフォトポリマーは通常のフリーラジカル重合法を用いて製造される。
フッ素化したフッ素含有ポリマーは、また適切に置換されているポリマーと、フッ素化された化合物との反応により作ることもできる。ヒドロキシルまたはカルボキシル基のような、潜在的な反応位置をもったポリマーは、フッ素化された化合物との反応によりフッ素化されたフッ素含有ポリマーに変換することができる。例えば、フッ素化されたポリ(ビニルブチラール)は、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアルデヒドと、ポリ(ビニルアルコール)の縮合により調製することができる。カルボキシル酸を含むポリマー類はフッ素化したアルコール類でエステル化することができ;ポリ(ビニルアルコール)、部分ケン化されたポリ(ビニルアセテート)、またはフッ素化されたモノマーとビニルアセテートとのポリマー類の部分ケン化またはケン化されたものなどのような、ヒドロキシル基含有のポリマー類は、フッ素化されたカルボキシル酸によりエステル化することができる。
フルオロオレフィン類は標準的なグラフト化技術を用いて、適切に置換されているポリマー上にグラフト化することができる。ビニルエステル、少なくとも、1つのフッ素化されたモノマー、および、得られるポリマーの物理的性質を調整するための任意の他のモノマーとのポリマーが好ましい。
一般に、フッ素含有量が低下するとその効果も減少するから、フッ素含有ポリマーは少なくとも10%のフッ素を含有するようにされる。しかしながら、フッ素含有量が余りにも高すぎると、得られるフォトポリマーは不透明となる傾向があり、体積ホログラム形成層の調製のためには有用でない。さらには、窓用フィルムとして用いる場合に、再接着用の糊との接着性が著しく低下する。従って、好ましいフッ素含有ポリマーは、10〜20%のフッ素含有量を有している。
フッ素含有ポリマーのビニルエステル成分としては、ビニルアセテートが特に好ましいが、他のビニルエステルおよび類似の結果を与える構造的に関連した化合物も、これに加えて、またはビニルアセテートの代りに選定することができる。例えば、ビニルピバレート、ビニルプロピオネート、ビニルステアレート、ビニルアルコール、または、n−ブチルビニルエーテルなどを選ぶことができる。テトラフルオロエチレン、または、へキサフルオロプロピレンのような過フッ素化モノマー類は、フッ素化モノマー成分として特に有用であると認められているが、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、フルオロオレフィン類、フロロアルキルアクレリートおよびメタアクリレートなどのようなその他の化合物も、特定の用途のためには選ぶことができる。
フッ素化されていない対応物よりも、フッ素化されているフッ素含有ポリマーを選ぶことは屈折率変調を劇的に増加させ、それでホログラムの回折効率も増加させる。
例えば、他のすべての成分を同じにして、ポリビニルアセテートによって達成されるのは約0.025〜0、031の範囲の値であるのに反して、ビニルアセテート/過フッ素化物モノマーのフォトポリマーの使用では0.040を超え、0.076の高い屈折率変調の値が達成される。
フッ素化フッ素含有ポリマーは、全フッ素含有ポリマーの1部分だけに選択することができる。この場合、フッ素含有ポリマーのフッ素化されていない対応物は、2つのフッ素含有ポリマーが互いに両立し、そして塗布用溶剤および他のフォトポリマー成分とも両立し、そしてフォトポリマーの透明性、機械的諸性質などを不当に犠牲としないならば、その他の成分として選択することができる。
フォトポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含み、これはフリーラジカルで開始される重合し得るもので、100℃以上の沸点を有し、塗布溶剤および選ばれたフッ素含有ポリマーと両立し得るものである。このモノマーは通常末端位置に不飽和性基を含んでいる。一般に液体のモノマーが選定されるが、固体のモノマーが実質的に固体のフォトポリマー組成物中で内部拡散し得るならば、固体のモノマーも1個または数個の液体モノマーと組み合わせて用いることができる。
モノマーは、付加重合をすることができかつ100℃以上の沸点をもつ液体の、エチレン性不飽和化合物であり、これは3個までの芳香環;塩素;および臭素を含む、置換または未置換のフェニル、ビフェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフチルオキシ、およびヘテロ芳香基、よりなる群から選ばれた1個または数個の部分を含んでいる。モノマーはこのような部分を少なくとも1つ含み、またモノマーが液体でとどまるならば、同一または異なるこのような部分を2個またはそれ以上含むことができる。低級アルキル、アルキオキシ、ヒドロキシ、フェニル、フェノキシ、カルボキシ、カルボニルイミド、シアノ、クロロ、ブロモまたはこれらの組み合わせのような置換基を、モノマーが液体モノマーにとどまり、かつ光重合性層中で拡散し得るならば存在させることができる。
代表的な液体モノマーには、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2− (p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレ−1−、2− (1−ブチルオキシ)エチルアクリレート、0−ビフェニルメタアクリレート、0−フェニルアクリレート、およびこれらの混合物などが含まれる。
モノマーは、通常、液体であるが、エチレン性不飽和カルバゾールモノマーのような、1個または数個のエチレン性不飽和固体モノマーと混合して使用することもできる。
カルバゾール部分の窒素原子に結合したビニル基を含んだ、エチレン性不飽和カルバゾールモノマーは代表的に固体である。このタイプの好適なモノマーには、N−ビニルカルバゾールと3、6−ジプロモー9−ビニルカルバゾールとが含まれる。特に好ましいエチレン性不飽和モノマーの混合物は、N−ビニルカルバゾールと液体モノマーの1個または数個、特に2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレート、またはこれらの混合物などとの組み合わせからなるものである。
フォトポリマーを架橋化(光重合)するときは、組成物中に2個または数個の末端エチレン性不飽和基を含む、多官能性モノマーの少なくとも1つを5%まで加えることができる。この多官能性モノマーは、組成物の他の成分と両立し得るものでなければならず、また好ましくは液体である。多官能性モノマーには、ビスフェノール−Aのジ(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、およびその他が含まれる。エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレートは、特に好ましい。
光開始剤系は、電離放射線により活性化されたときに、フリーラジカルを直接に与える1個または数個の化合物からなるものである。「電離放射線」は、モノマー材料の重合を開始するのに必要な、フリーラジカルを生成させるような活性な放射線を意味している。
この系はまた複数の化合物から構成されることもでき、その1つは別の化合物、または増感剤が放射線により活性化された後に、フリーラジカルを生ずるものである。
有用な開始剤系は、種々の増感剤を含んでいてもよく、多数のフリーラジカル生成化合物を利用できる。特に色素を含むレドックス系、例えばローズベンガル/2−ジブチルアミノエタノールを用いることもできる。光還元性色素および還元剤、オギサジン、およびキノン系の各色素、色素−オウ酸塩コンブレックス、色素増感されたアジニウム塩、およびトリクロロメチルトリアジンなどを、光重合を開始させるために用いることができる。
好ましい光開始剤系は、可視光線用増感剤で増感され、連鎖移転剤または水素供与剤、およびこれらの混合物をもった、2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーである。 これには、2−(0−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−イミダゾールダイマー;1,1’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(0−クロロフェニル’)−4,4’5,5’−テトラフェニル;およびIH−イミダゾール、2,5−ビス(0−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル〕−タイマーなどが含まれ、それぞれ代表的に水素供与体とともに用いられる。
増感剤には、ビス(p−ジアルキルアミノベンジリジン)ケトン類、および、アリーリチンアリールケトン類が含まれる。
水素供与体の適当なものには、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−1−リアゾール−3−チオール、およびその他が含まれる。
N−ビニルカルバゾールモノマーを含む組成物に対して好ましい、この他の水素供与体は、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール;2−メルカプトベンゾチアゾール、 IH−1,2、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、1−ドデカンチオール、およびこれらの混合物などである。
その他の成分として、フォトポリマー組成物に一般に添加されるその他の各成分はフォトポリマーの物理的特性を変えるだめのものである。このような成分には可塑剤、熱安定剤、光学的増白剤、紫外線安定剤、接着性変更剤、塗布助剤、および剥離剤などが含まれる。
可塑剤は、フォトポリマーの接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の物理的緒特性を変えるために存在させられる。可塑剤には、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセパケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、イソゾロビルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ポリ(プロピレングリコール)、トリ酪酸グリセリル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、スペリン酸・ノブチル、燐酸トリブチル、燐酸トリス(2−エチルヘキシル)、などが含まれる。
有用な熱安定剤には、ハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、ベータナフトール、塩化第一銅、2,6−ジーt−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、レジン酸銅、ナフチルアミン、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、フロラニール、およびクロルアニールなどが含まれる。ジニトロソダイマー類もまた有用である。
塗布助剤として、非イオン性界面活性剤を光重合性組成物に加えることができる。好ましい塗布助剤は、フッ素化された非イオン性活性剤である。
有用な光学増白剤は、7−(4’−クロロ−6′−ジエチルアミノ−1’,3’,5’−トリアジン−4′イル)アミノ3−フェニルクマリンである。さらに、紫外線吸収材料を適宜用いることができる。
また、透明な樹脂、すなわち、光重合性組成物としては、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、及び、カチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料が用いられる。
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が終始比較的低粘度の組成物中で行なわれるように室温液状のものが用いられる。そのようなカチオン重合性化合物としてはジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等が用いられる。
ラジカル重合性化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きく、好ましくは0.02以上大きいとよく、小さいと屈折率変調が不十分となり好ましくない。ラジカル重合性化合物としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等が用いられる。
光ラジカル重合開始剤系は、体積ホログラム作製のための第1露光によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させる開始剤系であればよく、また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いる。
光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明な体積ホログラムとする場合にはシアニン系色素が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することにより体積ホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムが得られる。
シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3'−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2'チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3',9−ジエチル−2,2’チアカルボシアニンベタイン、3,3',9−トリエチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3'−カルボキシメチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩等が例示される。
シアニン系色素と組み合わせて用いてもよい活性ラジカル発生化合物としては、ジアリールヨードニウム類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム類としては、ジフェニルヨードニウム、4,4'−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメトキシジフェニルヨードニウム等が例示される。また、2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が例示される。
光カチオン重合開始剤系は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸、あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系とするとよく、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類あるいは鉄アレン錯体類等を挙げることができる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては、光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウム類のテトラフルオロボレート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩およびヘキサフルオロアンチモネート塩等が挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
光重合性組成物には、必要に応じてバインダー樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色剤などを併用してよい。バインダー樹脂は、体積ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。バインダー樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性組成物と相溶性のよいものであれば良く、その具体例としては塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。バインダー樹脂は、その側鎖または主鎖にカチオン重合性基などの反応性を有していても良い。
その体積ホログラム形成層2の厚さは、5.0μm〜50μmとする。好適には、10μm〜30μmとする。
上記した光重合性組成物の塗布液を、バーコート、スピンコート、もしくは、ディッピング等、または、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、もしくは、コンマコート等により、スクラッチ隠蔽層1の上に塗布し、体積ホログラム形成層2を形成する。体積ホログラム形成層2は、乾燥ないし硬化手段を用いて固化される。
その光重合性組成物としては、組成物全体に対してカチオン重合性化合物を10〜50%、ラジカル重合性化合物を40〜70%、光ラジカル重合開始剤系を1〜5%、及び、光カチオン重合開始剤系を1〜5%とし、全量を100%となるように配合する。
光重合性組成物は、必要に応じて、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族系溶媒、セルソルブ系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒等と配合し、冷暗所にて、高速撹拌機で混合し調製する。
または、上記の樹脂材料を用い、キャスティング法や、ダイコート法等を用いて、体積ホログラム形成層2を、スクラッチ隠蔽層1上に設けることもできる。
これらの体積ホログラム形成層2に、適宜な光学系を用いて、体積ホログラムである、透過型ホログラムや、反射型ホログラムを記録する。または、その両方を多重記録する。(図示せず。)
以下に、その方法を説明する。
まず、ホログラム画像として画像化される「物体」を準備する。
「物体」としては、彫刻や模型等の実在する、3次元物体(高名な作者のものであれば、その意匠性は非常に高いものとなる。)、もしくは、絵画やブランドデザイン等の2次元物体が用いられる。もしくは、「物体光」を与え得るものであって、空間変調器等のような電子的にセル変換が可能な光学素子を用いた光学系によって、記録用媒体面に投影されるような「光の像」であってもよい。
もちろん、あらかじめ作成した「ホログラム」からの「ホログラム再生像」(立体的な光の像となる。)を用いることもできる。
この「物体」を、所定の波長を選択した、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザー、各種色素レーザー等のコヒーレント光を用いて照明し、所定の光学系を準備し(図示せず。)、透過型ホログラムを記録する。
もしくは、適宜なホログラム記録用のフォトレジストに、同様な光学系を準備し、マスターホログラムを記録し、現像処理する。
次いで、このマスターホログラムを所定の光学系を用いて、「物体」の体積ホログラムを、上記で使用した光源を再度用いて、体積ホログラム形成層2に、「反射型ホログラム」として記録する。
透過型ホログラムに上記の光学系で用いた参照光と同一の照明を行うと、その参照光が透過した方向からの観察により、体積ホログラム形成層2を通して、その向こう側に「物体」の像、すなわち、透過型ホログラム再生像を視認することができる。この「物体」の像から観察者の目の方向へ向かう角度が、「再生角度」である。(図示せず。)
また反射型ホログラムの場合には、参照光を用いずとも、その波長選択性により、所定の波長でのみ再生された「物体」の像、すなわち反射型ホログラム再生像を視認することができる。この場合の「再生角度」も同様である。
以上の方法を用いる際、「物体」を2つ準備し、2つの光源(第1の波長、及び第2の波長を有する2つのレーザー光源)を用いて、それぞれ体積ホログラム形成に各々、角度を変えて記録して、2つの体積ホログラムを多重記録することができる。
もちろん、上記した透過型ホログラムと反射型ホログラムを同一の体積ホログラム形成層2に記録し、「透過型ホログラムと反射型ホログラムを多重記録」することも可能である。
このときに用いる体積ホログラム形成層2は、例えば、2つの光源に感度を持つように、2種類の増感剤を含めたものとする。
また、体積ホログラム形成層2を単層として、その一つの層に多重記録するのみならず、体積ホログラム形成層2を多層として、それぞれの層に、それぞれのフォトポリマーを用い、それぞれの体積ホログラムを記録することも、個々のホログラム再生像の鮮明度を高めるため好適である。
2つの体積ホログラムを多重記録した場合には、2つの観察方向に、各々の「物体」像を見ることができる。(図示せず。)
ホログラムとしては、レーザー再生ホログラム、白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子、複合回折格子で構成されるホログラムなどを、適宜、記録することができる。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し、「秘密情報」S2として、もしくは、「秘密情報」S2の一部構成情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。(図示せず。)
体積ホログラムは、「上記のようにして記録した体積ホログラム形成層2(単独の層。)」上に、「まだ体積ホログラムを記録していない体積ホログラム形成層2と、スクラッチ隠蔽層1、さらには、適宜な剥離性フィルムの積層体」のその体積ホログラム形成層2面上に、「単独の層である記録済み体積ホログラム形成層2」を密着させて重ねたものに(インデックスマッチング液等をその間に挿入してもよい。)、その「記録済み体積ホログラム形成層2」側から、適宜なレーザー光を照射する方法により、大量に複製することができる。(図示せず。)
この体積ホログラム形成層2内に、上記した手段を用いて、「所定パターン表示領域」として、上記した「所定パターン」を表示可能なように、「屈折率変化領域N1」を記録する。(図1、または、図2参照。図1、及び、図2において、「所定パターン」そのものは、表示していない。また、「結像光学系」も図示していない。)
このとき、その「屈折率変化領域N1」、すなわち、「『所定パターン』表示領域」として記録された「屈折率変化領域N1」を、体積ホログラム形成層2の形成面に垂直上方から観察した際に、視認できる「パターン」が「所定パターン」表示となる。


本発明のスクラッチラベルH2の体積ホログラム形成層2の背面に、すなわち、体積ホログラム形成層2と粘着層3の間(「秘密情報」S2形成部に対応する位置を除く。逆に、本発明のスクラッチラベルH2を、シート基材S1上に貼着する際には、この『黒色層4を設けていない位置』に、そのシート基材S1上の「秘密情報」S2を併せるように貼着する必要がある。)の所定の位置に、黒色層4を設ける。(図2参照。図2においては、便宜的に、黒色層4を体積ホログラム形成層2の全面に設けた図を示している。)
ここで、黒色層4は、部分的、且つ、離散的に複数形成してもよい。そして、この黒色層4のパターンによって、何らかのデザインを表すものとしてもよい。(図示せず。)
黒色層4は、微粒子カーボンブラックや、超微粒子カーボンブラック、その他の炭素系黒色顔料や酸化物系黒色顔料の微粒子や超微粒子、さらには、含金属黒色染料(金属錯塩染料)等を、含有率で20〜70質量%として、透明樹脂、例えば、熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等に2次凝集を少なくするように、ガラスビーズやスチールビーズを用いたボールミル、ニーダー、ロールミル等による混練りを十分行い、溶剤等で粘度調整をして、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、カーテンコート方式、ノズルコート方式、インクジェット方式さらには、フレキソ印刷方式を適宜用いて均一な厚さに形成することができる。(図示せず。)
この場合、体積ホログラム形成層2との密着性の高いものを選定する。
もちろん、黒色層4として、上記の顔料や染料を同様の割合含んだ「プラスチックフィルム」を用いることも好適である。
この場合には、予め、その「プラスチックフィルム」の表面を「光学的な鏡面」として仕上げておくことができ、且つ、屈折率を調整し易く、さらには、その厚さムラも高い精度で制御することが可能となる。
黒色層4の厚さは、2.5μm〜25μmとし、好適には、5.0μm〜20μmとする。
この黒色層4と体積ホログラム形成層2の間に、さらには、体積ホログラム形成層2とスクラッチ隠蔽層1の間にも、スクラッチシートSS1の用途に応じた印刷デザインや、ホログラムデザインにより、オフセット印刷や、グラビア印刷等を用いて、1.0〜10.0μmの厚さで地紋印刷5を施すことができる。(図示せず。)
また、スクラッチ隠蔽層1、及び/または、体積ホログラム形成層2の上に、さらには、黒色層4の上に、この地紋印刷5以外の通常デザイン(主要なデザイン模様等)の印刷を施し、その意匠性を高めることができることは言うまでもない。
さらに、体積ホログラム形成層2やスクラッチ隠蔽層1の表面の一部が、上記したように、意図して「粗い粗面」を設けた部分である場合には、この大きな凹凸に追従して印刷可能なインクジェット方式や、この凹凸に影響され難い感熱転写方式、もしくは、昇華転写方式を用いて地紋印刷5を行ってもよい。さらに、このような感熱転写方式、もしくは、昇華転写方式を用いて、その大きな凹凸の凸部のみに印刷を行い、不正なスクラッチにより非常に容易に地紋印刷5が破壊されるようにすることもできる。
特に、昇華転写方式は、体積ホログラム形成層2を構成する樹脂層に浸透し、独特の風合いを醸し出すことができる。
地紋印刷5を形成する位置は、体積ホログラム形成層2上や、スクラッチ隠蔽層1上の全面に均一に設けてもよいし(図5参照。図5では、スクラッチ隠蔽層1上に地紋印刷5をその全面に形成している例を示している。)、部分的に設けてもよく、さらには、複数の領域に分散して設けてもよい。(図示せず。)
そして、この地紋印刷5を、スクラッチ隠蔽層1上、及び、スクラッチ隠蔽層1と体積ホログラム形成層2との間、の両方に設け、且つ、そのデザイン及び、形成位置をスクラッチ隠蔽層1の上下で、位置を異ならせたり、同一としたりすることも、その意外性や偽造防止性を高めるため好適である。(図示せず。)
(粘着層)
本発明のスクラッチラベルH1、または、H2において、体積ホログラム形成層2の上に、または、黒色層4の上に、粘着層3を設ける。(図1、または、図2参照。)
ここで、粘着層3としては、従来公知の溶剤系及び水系のいずれの接着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴムなどのゴム系樹脂などが挙げられる。自然にやさしい材料構成とするために、特に、天然ゴムを主成分とするラテックス、それを変性したもの、特に天然ゴムにスチレン特にメタクリルさんメチルとをグラフト重合させて得た天然ゴムラテックス等の天然素材から作製されたものを用いても良い。
粘着層3に用いられる溶剤としては、溶剤類、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン、ジイソブチルケトン、等。)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール等、さらにはその水溶液。)、芳香族類(ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベッソNo.100、ソルベッソNo.150、カクタスP−180等。)、環状炭化水素類(シクロヘキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セルソルブ、エチルー3−エトキシプロピオネート等。)、エーテル類(テトラヒドロフラン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、t−ブチルセルソルブ等。)等を用いることができる。
粘着層3の形成厚さは、10μm〜60μmとする。
粘着層3の形成方法としては、グラビアコート、ロールコート、コンマコートなどの方法で、体積ホログラム形成層2の上、もしくは、黒色層4の上に、塗布し乾燥して形成することができる。また、より精密な印刷を要する場合には、ステンレススクリーン印刷方法や、活版印刷方式、オフセット印刷方式、フォトレジスト処理方式等を用いることができる。(図1、または、図2参照。)
粘着層3の粘着力は、体積ホログラム形成層2、もしくは、黒色層4と粘着層3との界面の剥離強度として、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、1.0〜3.0kg/25mm巾の範囲にすることが望ましい。もちろん、それ以上の剥離強度を有していても、本発明の目的には適合している。
特に、シート基材S1、及び、シート基材S1上の「秘密情報」S2形成部との粘着力は、本発明の目的より、本発明のスクラッチラベルH1、または、H2を、シート基材S1、及び、シート基材S1上の「秘密情報」S2形成部から剥がすことが困難となるレベルまで大きいものとする必要があるが、その粘着層3とシート基材S1、及び、シート基材S1上の「秘密情報」S2形成部との界面の剥離強度よりも、粘着層3と体積ホログラム形成層2、または、黒色層4との界面の剥離強度を、より大きいものとなるように設計する。
また、粘着層3を、「高屈折率透明樹脂層」とし、粘着層3の屈折率と、体積ホログラム形成層2の屈折率の差を0.3以上とすることにより、体積ホログラム形成層2と、粘着層3の界面からの「反射光」をより大きくし、この「反射光」により出現する透過型体積ホログラム再生像を、より鮮明なものとすることができる。(図示せず。)
この場合、粘着層3である「高屈折率樹脂層」の屈折率を、体積ホログラム形成層2の屈折率よりも、0.3以上、大きくなるように設計する。さらには、その屈折率差が0.5〜1.0となるようにするとより好適である。
粘着層3を「高屈折率透明樹脂層」とする場合には、体積ホログラム形成層2に用いられる樹脂の中から、適宜選択して用いることができ、その屈折率を大きくする目的で、微粒子透明顔料や、超微粒子顔料を添加する。
その微粒子透明顔料や超微粒子顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、カオリン、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、珪藻土、石膏、タルク、珪石粉等の体質顔料を細かく粉砕したものや、マイクロシリカ等の無機微粒子、シリコン樹脂やフッ素樹脂粉末等の微粒子樹脂紛体、その他、平均粒径で、0.1μm〜0.01μmとした微粒子顔料や、0.01μm以下とした超微粒子顔料を使用する。
具体的には、天然に産する方解石、氷州席、アラゴナイト、石灰岩、大理石、貝殻、チョーク、重晶石、石膏、ギブス石などを微粉砕したものや、その合成物において平均粒径を調整したもの、さらには、一般的に用いられる無機顔料、や有機顔料においても、超微粒子酸化チタンや超微粒子酸化ジルコニウム等、その平均粒径を、0.01μm以下としたもの等は、適宜な樹脂材料との混合において、透明となるため、好適である。特に、顔料そのものの屈折率が2.0〜3.0であるものが好ましい。この屈折率が3.0を超えるものは、金属光沢が発現し始めるため、その透明性に欠けるものとなるため好ましくない。
具体例としては、超微粒子酸化チタン(石原産業株式会社製TTO−55N:屈折率n=2.4)を適宜な樹脂に分散した場合に、高屈折率樹脂層としての屈折率は、1.9〜2.0であり、また、超微粒子酸化ジルコニウム(動的光散乱法における平均粒径0.0001μm〜0.05μm)を適宜な樹脂に分散した場合に、高屈折率樹脂層としての屈折率は、1.7〜1.9である。
但し、この粒径のものは、二次凝集しやすく、ニーダー等の適宜な分散処理機に繰り返し通すなどの再分散処理等を施す必要がある。添加量は、屈折率の向上度合いと透明性とのバランスで決められるが、通常1%〜20%添加が好適であり、体積ホログラム形成層2に配慮した、適宜な溶剤または水に溶かして、選定した樹脂に分散して用いる。
その形成方法、及び、厚さは、上記した方法、及び、厚さとする。
また、高屈折率樹脂層に使用される樹脂は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
用いる樹脂の屈折率は、例えば、熱可塑性樹脂としては、アクリル酸エステル樹脂(屈折率n=1.47)、アクリルアミド樹脂(n=1.50)、ニトロセルロース樹脂(n=1.54)、酢酸ビニル樹脂(n=1.47)、もしくは、ポリスチレン樹脂(n=1.60)等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂(n=1.64)、ウレタン樹脂(n=1.60)、エポキシ変性アクリル樹脂(n=1.55)、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂(n=1.64)、アルキッド樹脂(n=1.54)、もしくはフェノール樹脂(n=1.60)等である。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート(n=1.55)、ウレタンアクリレート(n=1.54)、アクリル変性ポリエステル(n=1.64)等である。
さらに、環境に配慮して、高屈折率樹脂層に、上記したような生分解性プラスチックを用いることも好適である。
このようにして形成した本発明のスクラッチラベルH1、または、H2を、シート基材S1の上に、且つ、そのシート基材S1上に設けてある「秘密情報」S2を覆うように、所定の位置に、貼着し、スクラッチシートSS1とした。(図3、または、図4参照。)
このとき、シート基材S1上の所定の位置に、「秘密情報」S2として、連続数字1〜8が印字されており(図4参照。図4には、その所定の位置を示す枠が便宜上表示されている。)、その「秘密情報」S2を覆うように、粘着層3、体積ホログラム形成層2、もしくは、黒色層4と体積ホログラム形成層2、及び、スクラッチ隠蔽層1からなる、本発明のスクラッチラベルH1、または、H2が貼着している。
このスクラッチシートSS1を、通常の照明光下で、観察したところ、「単なるスクラッチカード」であると判断できたが、そのスクラッチ隠蔽層1の下に隠されていると推定される「秘密情報」S2は、全く視認できず、もちろん、体積ホログラム形成層2については、その存在すら想像できないものであった。
また、スクラッチラベルH1、または、H2を貼着したスクラッチシートSS1の、そのスクラッチ隠蔽層1の上に、幾何学模様からなる地紋印刷5を施した。(図5参照。)
いずれの場合も、目視では、スクラッチ隠蔽層1で覆われた「秘密情報」S2、さらには、体積ホログラム形成層2を、視認することはできず、これらの層を、爪等で破断なくきれいに剥がすことは、到底、不可能であると思われた。
そして、スクラッチシートSS1に貼着している本発明のスクラッチラベルH1、または、H2のスクラッチ隠蔽層1、もしくは、地紋印刷5とスクラッチ隠蔽層1を、コインを用いて部分的に削り取ると、その削り取った領域から、その下に隠れていた「秘密情報」S2が視認可能となり、同時に、「屈折率変化領域N1」による「所定パターン」表示と、体積ホログラム形成層2による体積ホログラム再生像が観察可能となって、このような本発明のスクラッチラベルH1、または、H2、さらには、スクラッチシートSS1を偽造することは非常に困難であると思われた。(図示せず。)
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
(実施例1)
スクラッチシートSS1用のシート基材S1として、厚さ188μmの乳白ポリエチレンテレフタレートシート(カードサイズ)に、所定のデザインをオフセット印刷にて施し、インクジェットプリンターにて、シート基材S1の所定の領域に、「秘密情報」S2として、「12345678」の番号(各「数字」文字の高さ4mm、幅2mm、文字間隔1mm。)を印字した。(図4参照。)
これとは別に、表面をフッ素樹脂にて離形処理し、且つ、粗面化処理を施した38μm厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシート(表面粗さを3μm〜10μmとした「剥離性フィルム」。)上に、下記組成のスクラッチ隠蔽層1用インキ組成物を、ステンレススクリーン印刷方式にて形成し、乾燥後の厚さとして、スクラッチ隠蔽層1を30μmの厚さで形成した。(図1参照。「剥離性フィルム」は図示せず。)
<スクラッチ隠蔽層1用インキ組成物>
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体 20部
アクリル樹脂 5部
顔料ノンリーフィングアルミペースト アルミニウム微粉末 40部
顔料リーフィングアルミペースト アルミニウム微粉末 10部
イソシアネート系硬化剤 1部
トルエン 10部
酢酸エチル 5部
エチルセルソルブ 9部
次いで、このスクラッチ隠蔽層1上に、表面平滑性の比較的高い(平均表面粗さRaが0.5μm。)ステンレス金属ロール板を用いて、100℃の加熱、100kg/cmの線圧にてカレンダー処理を施して、スクラッチ隠蔽層1の表面を平滑とした。(図1参照。「剥離性フィルム」は図示せず。)
ここで、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、膜厚20μmのフォトポリマー(「体積ホログラム形成層2」となる層。)が積層され、その上に保護フィルムとして、厚さ23μmポリエチレンテレフタレートフイルムが積層されたフォトポリマーフィルム(デュポン社製「HRF705」)を用い、反射型体積ホログラムとして、クリプトンレーザー(発光波長647nm)を光源とし、所定の反射型体積ホログラム撮影光学系(図示せず。)を用いて、10mm×25mmサイズの「絵画モチーフ」を反射型体積ホログラムとして、その結像位置を、記録面から2mmの位置として撮影した。
この時、10mm×25mmサイズの「絵画モチーフ」の右下の部分に、開口部として「真正」の文字情報の逆像(フォントサイズ20ポイント)を設けた厚さ、1mmのステンレス遮蔽板を、そのステンレス遮蔽板と上記保護フィルムとが接する様に重ねた後、ステンレス遮蔽板の後方から、20Wハロゲンランプを用いて、体積ホログラム形成層2に対する露光量100mJ/cm2で光照射し、「真正」の文字情報の逆像として、「屈折率変化領域N1」の「所定パターン」表示を記録した。
その後、このステンレス遮蔽板を除去し、改めて、露光強度2.0mWにて、記録角度(参照光の角度。「物体」である「絵画モチーフ」は、そのシート面の垂線方向に対しその参照光と対称の方向にある。)を体積ホログラム形成層2に対して、(そのシート面の垂線方向に対し)20度とし、50mJ/cm2の露光量となるように照射した後、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、更に120℃で120分間加熱処理し、上記保護フィルムを剥離して、「『絵画モチーフ』が記録された体積ホログラム形成層2が積層されている、厚さが70μmの積層シートを作製した。このときの回折効率は、50%とした。
次に、この厚さ70μmの積層シートの体積ホログラム形成層2の露出面と、38μm厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシート(「剥離性フィルム」。)上のスクラッチ隠蔽層1の表面が接するようにラミネートした後、その「厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフイルム」を剥離して、「剥離性フィルム、スクラッチ隠蔽層1、及び体積ホログラム形成層2」の積層体1を得た。(図1参照。剥離性フィルムは図示せず。)
そして、その積層体1の体積ホログラム形成層2の上に、下記組成の粘着層3用粘着剤組成物をステンレススクリーン印刷方式にて、形成し、乾燥後の厚さとして、粘着層3を30μmの厚さで形成した。(図1参照。剥離性フィルムは図示せず。)
<粘着層3用粘着剤組成物>
酢酸ビニル−アクリル共重合体 30質量部
イソホロンジイソシアネート 0.1質量部
トルエン 10質量部
イソプロピルアルコール 20質量部
酢酸ビニル 30質量部
エチルセルソルブ 10質量部
この「剥離性フィルム、スクラッチ隠蔽層1、体積ホログラム形成層2、及び粘着層3」の積層体2を、「絵画モチーフ」に沿って、タテ15mm×横30mmのサイズにカットし、剥離性フィルムから剥離して、本発明の第1実施例のスクラッチラベルH1を得た。(図1参照。)
このスクラッチラベルH1を、最初に準備してあった、スクラッチシートSS1用のシート基材S1の上の所定の位置に(図4の枠の位置。)、そのシート基材S1の上に印字してある「秘密情報」S2形成部を覆うように、貼着して、スクラッチシートSS1とした。(図3参照。図3において、「H1、H2」は、「H1」と、そして、「2〜3、4」は、「2〜3」となる。)
このスクラッチシートSS1を観察したところ、シート基材S1上にて、「銀色のラベル」を観察できるのみであり、その下、及び、その中に形成されている、「秘密情報」S2や、ホログラムの存在を窺い知ることはできなかった。
次いで、このスクラッチシートSS1の上の「銀色のラベル」をコインで引っ掻くと、スクラッチ隠蔽層1が部分的に削れ、その削れた部分から、「秘密情報」S2の一部を視認でき、同時に、体積ホログラム形成層2による、反射型体積ホログラム再生像「絵画モチーフ」が出現し、しかも、その「銀色のラベル」の左下部分をスクラッチオフすると、「屈折率変化領域N1」の「所定パターン」表示である「真正」の文字情報をも併せて視認できるようになり、この「銀色のラベル」、すなわち、スクラッチラベルH1、さらには、スクラッチラベルH1を貼着したスクラッチシートSS1を偽造することは、困難と思われた。(図示せず。)
(実施例2)
実施例1において、適宜な剥離性フィルム(厚さ38μの表面離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に、一旦、スクラッチ隠蔽層1を形成し、その露出面と、その剥離性フィルムを、厚さ3mmのステンレス板2枚(その表面に適宜な樹脂コートを施して、平均表面粗さRaで、0.1μmとし、「光学的な鏡面」に仕上げたもの。)の間に挟み込み、その両側から、200℃、109Paでの加熱及び加圧をする平板プレス処理を施して、スクラッチ隠蔽層1の露出面を「光学的な鏡面」とし、この露出面を、実施例1と同様にして、体積ホログラム形成層2の表面に接するようにラミネートし、粘着層3を設けて、その「適宜な剥離性フィルム」を剥離し、同様にカットして、スクラッチ隠蔽層1、体積ホログラム形成層2、及び粘着層3からなる、本発明の実施例2のスクラッチラベルH1を得た。
この時、スクラッチ隠蔽層1と体積ホログラム形成層2との界面が、「光学的な鏡面」となっている。(図1参照。図1において、スクラッチ隠蔽層1と体積ホログラム形成層2の界面が、「光学的な鏡面」となっている状態は図示していない。)
そして、このスクラッチラベルH1を、実施例1と同様にして準備した、実施例2のスクラッチシートSS1用のシート基材S1の上の所定の位置に、そのシート基材S1の上に印字してある「秘密情報」S2形成部を覆うように、貼着して、実施例2のスクラッチシートSS1とした。(図3参照。)
このスクラッチシートSS1を、実施例1と同様に評価したところ、体積ホログラム形成層2による反射型体積ホログラム再生像「絵画モチーフ」がより鮮明に観察でき(図示せず。)、スクラッチラベルH1、さらには、スクラッチラベルH1を貼着したスクラッチシートSS1を偽造することは、より困難と思われたこと以外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。(図示せず。)
(実施例3)
実施例1のスクラッチ隠蔽層1の体積ホログラム形成層2と接している面とは反対の面(スクラッチ隠蔽層1の露出している面)上に、昇華転写プリンターにて幾何学模様からなる黄色の地紋印刷5を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例3のスクラッチラベルH1、及び、そのスクラッチラベルH1を貼着した実施例3のスクラッチシートSS1を得た。(図1及び図3〜図5参照。図1及び図3において、地紋印刷5は図示していない。図3において、「秘密情報」S2を覆う層は、「『2〜3、4』と『1』」でなく、「『2〜3』と『1、5』」となる。)このとき、昇華転写プリンターの印字部分、すなわち、地紋印刷5の部分はスクラッチ隠蔽層1に浸透しており、スクラッチ隠蔽層1の最表面と、地紋印刷5の表面は同一面を形成している。
このスクラッチシートSS1を、実施例1と同様に評価したところ、地紋印刷5が独特の風合いを呈して金色に観察されたこと、及び、コインでスクラッチしたところ、地紋印刷5とスクラッチ隠蔽層1が同時に削れ、このスクラッチラベルH1、及び、このスクラッチラベルH1を貼着したスクラッチシートSS1の偽造が、さらに困難と思われたこと以外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。(図示せず。)
(実施例4)
実施例1において、黒色層4として、下記組成の黒色層4用インキ組成物を用いて、体積ホログラム形成層2上に、スクリーン印刷方式を用いて、乾燥後の厚さ10μmでその全面に形成し(但し、シート基材S1に貼着する際に、「秘密情報」S2形成部の位置に当たる領域は、除いて形成した。すなわち、各「数字」文字のサイズ「高さ4mm、幅2mm」とその「位置間隔」に合わせた「開口部」を設けた。)、さらに、その上に、粘着層3を実施例1と同様にして設け、「スクラッチ隠蔽層1、体積ホログラム形成層2、黒色層4(一部「開口部」あり。)、及び粘着層3」の積層体3を形成して、本発明の実施例4のスクラッチラベルH2を作製したこと、及び、そのスクラッチラベルH2を、シート基材S1に貼着する際に、「秘密情報」S2形成部の各「数字」文字の位置と、黒色層4の「開口部」の位置が、同一となるように、位置合わせして、実施例4のスクラッチシートSS1を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例4のスクラッチラベルH2、及び、そのスクラッチラベルH2を貼着したスクラッチシートSS1を得た。(図2、及び、図3参照。図3において、「H1、H2」は、「H2」となる。)
<黒色層4用インキ組成物>
ウレタン樹脂 25部
カーボンブラック 20部
トルエン 15部
イソプロピルアルコール 15部
ブチルセルソルブ 25部
この実施例4のスクラッチラベルH2、及び、実施例4のスクラッチシートSS1を、実施例1と同様に評価したところ、体積ホログラム形成層2による反射型体積ホログラム再生像「絵画モチーフ」が非常に鮮明に観察でき、このスクラッチラベルH2、及び、スクラッチラベルH2を貼着したスクラッチシートSS1を偽造することは、非常に困難と思われたこと以外は実施例1と同様の良好な結果を得た。(図示せず。)
(実施例5)
実施例1において、下記組成のスクラッチ隠蔽層1用インキ組成物を用いて、同様の方式、同様の厚さで、スクラッチ隠蔽層1を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のスクラッチラベルH1、及び、そのスクラッチラベルH1を貼着した実施例5のスクラッチシートSS1を得た。(図1及び図3参照。図3において、「H1、H2」は、「H1」と、そして、「2〜3、4」は、「2〜3」となる。)
<スクラッチ隠蔽層1用インキ組成物>
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体 20部
アクリル樹脂 5部
顔料アルミペースト アルミニウム微粉末(平均粒径8μm) 30部
微粒子酸化ジルコニウム(平均粒径:0.01μm) 20部
シリコーンオイル 5部
トルエン 10部
酢酸エチル 5部
エチルセルソルブ 5部
このスクラッチラベルH1、及び、スクラッチシートSS1を、実施例1と同様に評価し、さらに、その「銀色のラベル」を不正に剥がす試みとして、シート基材S1を90度近く湾曲させたところ、スクラッチ隠蔽層1のスクラッチオフしていない部分に「剥離痕」状のシワが発生し、そのシワがシート基材S1を再び平らな状態に戻しても消えず(さらに、シワが発生した部分に、一部、裂け目まで発生。)、固定化してしまったことから、このスクラッチラベルH1、及び、スクラッチシートSS1の偽造が、非常に困難であると思われたこと以外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。(図示せず。)
(実施例6)
実施例1において、体積ホログラム形成層2には、あらかじめ「屈折率変化領域N1」を記録せず、且つ、体積ホログラム形成層2の厚さを50μmとして、本発明の実施例1のスクラッチラベルH1を作製し、実施例1のシート基材S1上の所定の位置に貼着して、実施例1のスクラッチシートSS1を作製した(体積ホログラム形成層2には、「屈折率変化領域N1」は記録されていない。)。
このシート基材S1上の体積ホログラム形成層2の端面付近に、レンズを含む結像光学系を組み、体積ホログラム形成層2の端面(断面)を通して、「縦2mm×横10mmの2次元平面領域」の「光の像」を入射させ(結像点が、その形状の領域を走査するようにするという意味。)、体積ホログラム形成層2と粘着層3との界面で反射させて、体積ホログラム形成層2の中央(厚さ方向の中央。)で結像させて、「屈折率変化領域N1」を記録し、本発明の実施例6のスクラッチラベルH1、及び、そのスクラッチラベルH1を貼着した実施例6のスクラッチシートSS1を得た。(図1及び図3参照。)
このスクラッチラベルH1、及び、スクラッチシートSS1を、実施例1と同様に評価したところ、スクラッチ隠蔽層1をスクラッチオフした際には、「屈折率変化領域N1」の「所定パターン」表示である、「『縦2mm×横10mmの2次元平面領域』の一部」が併せて視認できたこと、以外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。
(比較例)
実施例1において、体積ホログラム形成層2を設けず、スクラッチラベル、及び、スクラッチシートを形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例のスクラッチラベル、及び、スクラッチシートを得た。
このスクラッチラベル、及び、スクラッチシートを実施例1と同様に評価したところ、スクラッチオフにより、「秘密情報」S2を視認することはできたが、ホログラム(再生像)が発現せず、このスクラッチラベル、及び、スクラッチシートの偽造や変造が容易と推定された。
H1、H2 スクラッチラベル
SS1 スクラッチシート
S1 シート基材
S2 「秘密情報」
N1 屈折率変化領域
1 スクラッチ隠蔽層
2 体積ホログラム形成層
3 粘着層
4 黒色層
5 地紋印刷

Claims (4)

  1. シート基材上に設けられた秘密情報を隠蔽するスクラッチラベルであって、
    平均粒子径1.0μm〜10μmの顔料及び、平均粒径0.01μm〜0.1μmの微粒子顔料を含むスクラッチ隠蔽層、体積ホログラム形成層、及び粘着層がこの順序で構成され、
    前記体積ホログラム形成層に、屈折率変化領域として記録された所定パターン表示領域が含まれており、
    且つ、前記スクラッチ隠蔽層をスクラッチにより除去することにより、前記秘密情報、前記屈折率変化領域として記録された前記所定パターン表示領域、及び、前記体積ホログラム形成層から再生される体積ホログラム再生像が視認可能となることを特徴とするスクラッチラベル。
  2. 前記スクラッチ隠蔽層と前記体積ホログラム形成層との界面が、「光学的な鏡面」であることを特徴とする請求項1に記載のスクラッチラベル。
  3. 前記スクラッチ隠蔽層の前記体積ホログラム形成層が形成されている面とは反対の面に、地紋印刷が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスクラッチラベル。
  4. 請求項1〜の何れかに記載のスクラッチラベルにおいて、前記体積ホログラム形成層に記録された前記屈折率変化領域が、
    前記スクラッチラベルを、前記シート基材上に設けられた前記秘密情報を覆うように、前記シート基材上に貼着した後に、結像光学系を用いて設けられることを特徴とするスクラッチラベル。
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