JP2017021283A - ホログラムシート及びホログラム付きカード - Google Patents

ホログラムシート及びホログラム付きカード Download PDF

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英世 吉田
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Abstract

【課題】
ホログラムを用いたホログラムシートにおいて、その真正性を高めるために、通常は視認できないが、電圧を印加する等の処置により、所定の波長の発光を生じさせ、室内等の照明光源とは異なる波長でホログラム再生像を再生するホログラムシートを提供するとともに、そのホログラムシートをカード基材に埋め込んだホログラム付きカードを提供する。
【解決手段】
シート状薄膜光源層上に曲面形状ホログラム形成層を設け、そのシート状薄膜光源層に所定の発光処置をしたときのみ、空間に所定の可視光波長のホログラムが浮き上がり、このことによって、そのホログラムが真正品であると、目視にて判定可能とし、偽造防止性を高めた、ホログラムシート及びホログラム付きカードとした。
【選択図】 図5

Description

本発明は、新規なホログラムシート、特に、シート基材、シート状薄膜光源層、及び、曲面形状ホログラム形成層がこの順序で設けられた、少なくとも、3層構成のホログラムシート(ハンドリング可能であれば、『シート基材』を含まない2層構成であってもよい。)、及び、そのホログラムシートをカード基材に埋め込んだホログラム付きカードに関する。
尚、本発明のホログラムシートに用いられる「シート基材」は、本発明のホログラムシートの用途によっては、「透明基材」、もしくは、「不透明基材」とすることができ、「不透明基材」として、例えば、可視領域の波長を有する照明光に対して、その透過率が30%以下、特には、シート状薄膜光源層の発光する光に対する透過率が30%以下である、「樹脂フィルムシート(樹脂そのものが不透明性を有するか、もしくは、樹脂材料に、二酸化チタン等の無機顔料を添加したもの等。)」や「無機材料シート(ガラス等の透明性を有する無機材料を除く。)」を採用することができるが、以下の説明においては、「透明性を有するもの」として、「透明基材」を主体として、詳述する。
本発明のホログラムシートは、「位相ホログラム」を呈する「曲面形状ホログラム形成層に含まれる、『曲面形状を成すホログラム』」を照明する「光源層」、すなわち、「一点(点状光源)から広がる光波(球面波を成す。)を持つ『透過照明光』を発する、『点状光源』を、少なくとも一つ以上有する光源層」としての「シート状薄膜光源層」を含み、その「シート状薄膜光源層内」に、一つ、乃至は、二以上、点在する「発光点(点状光源)」からの「発光」(所定の条件において発する。所定の波長を有し、球面波状の波面を持つ『光』。)が、その「透過型」、且つ、「位相型」の「曲面形状を成すホログラム」(以下、単に、『曲面形状ホログラム』とも称す。)」に入射して、その「曲面形状を成すホログラム」に基づく、「所定の波長、及び、所定の波面を持つ『光』」による「曲面形状を成すホログラム再生像(以下、単に、『曲面形状ホログラム再生像』とも称す。)」を出現させる、自発光型のホログラムシート、及び、そのホログラムシートを、IDカード等のカード類(『ID』とは、『Identification:身分証明』を意味する。)や、ICカード(『IC』とは、『Integrated circuit:集積回路』を意味し、この『IC』を埋め込んだカードを『ICカード』という。この『ICカード』には、ICタグも含まれる。)の「カード基材」に埋め込んだ「ホログラム付きカード」に関するものである。
ここで、「曲面形状を成すホログラム」とは、「ホログラム」が記録されている「ホログラム記録領域」が、通常は、平面形状(実際には、3次元形状であって、『高さが非常に小さい直方体形状』であるが、便宜的に、2次元的な表現を用いている。以下、同様。)であるところ、その「ホログラム記録領域」が「曲面形状」(実際には、厚さを持ち、その上下の面が『同一の曲面』となっている、三次元形状であるが、便宜的に『曲面形状』という。以下、同様。)を成している「ホログラム」のことをいう。
そして、その「曲面形状を成すホログラム(曲面形状ホログラム)」として、「『レリーフホログラム』タイプのホログラム」、または、「『体積ホログラム』タイプのホログラム」を用いることができる。
前者の場合、すなわち、「曲面形状ホログラム」として、「『レリーフホログラム』タイプのホログラム」を用いる場合には、「曲面形状ホログラム形成層」を、その一方の面が「所定の曲面C1」を有し、他方の面が「平面」を成す「形」とし、その「所定の曲面C1」の表面に、「所定のレリーフホログラム」を成す「所定のホログラムレリーフ」を設ける。
その「所定のホログラムレリーフ」とは、「所定の曲面C1」の大きなうねりに重ねて、光の干渉縞の周期である0.1〜2.0μmの周期の微細な凹凸形状を有する、「曲線」(『ホログラムレリーフ』そのものが、いわば、『2重のうねり曲線』となる。三次元空間においては、『大きなうねりに重ねて微細な凹部や凸部を含む、2重のうねり曲面』となるが、説明の簡略化のため、二次元的な表現を用いている。以下、同様。)である。
そして、それらの「大きなうねり」の一つ一つに、「シート状薄膜光源層」の各々の「点状光源」が対応し、一つの「点状光源」から発する「球面波状」の「照明光」が、その一つの「点状光源」に対応する、一つの「うねり」を照明し、且つ、その「うねり」の表面に設けられている、「ホログラムレリーフ」(その『うねり』の『曲面形状』と、『微細な凹凸形状』を併せ持つ『ホログラムレリーフ』。すなわち、その『うねり』も、『ホログラムレリーフ』の主要な要素ということができる。)を照明する。
そもそも、通常用いられている、いわゆる「一般的なホログラムレリーフ」は、「平面形状を成す感光材料」を用いて、その「平面形状を成す感光材料」に対して、いわゆる「参照光」及び「物体光」を露光して干渉させ、その「干渉縞」を、その「平面形状を成す感光材料」内に記録後、適宜な現像処理を施して、「『平面形状』を成す『一般的なホログラムレリーフ』(一つの平面内に微細な凹凸を含むもの)」を形成するわけであるが、本発明の「ホログラムレリーフ」は、あらかじめ、そのような「うねり」を持って形成されている「感光材料」(『うねりの形を持つ感光材料』)に対して、「参照光」及び「物体光」を露光して干渉させ、その「干渉縞」を、その「うねりの形を持つ感光材料」内に記録後、適宜な現像処理を施して、「『曲面形状』を成す『ホログラムレリーフ』」を形成する。
すなわち、3次元空間に広がる。上記の「干渉縞」を、「極薄い直方体を成す空間(一般的な感光材料の形)」で切り取って記録するのではなく、上記の「干渉縞」を、「極薄く、うねりの形を持つ感光材料の成す3次元空間(本発明の感光材料の形)」で切り取って記録するものである。(このことは、『レリーフホログラム』であっても、『体積ホログラム』であっても同様である。)
そのような「参照光」及び「物体光」として、一つ一つのうねりに対応して、各々異なる「参照光」及び、各々異なる「物体光」を用いて、各々のうねりにおいて、全く異なる「参照光と物体光の組」による、全く異なる「ホログラム」を記録して(設けて)も良い(この場合は、異なる複数の曲面形状ホログラム再生像を結像させる、複数の『曲面形状ホログラム』の集まりが、一つの大きな『曲面形状ホログラム』を成している。)が、同一の「参照光と物体光」を、各々の「うねり」に対応させて、光路を分け、一度に露光するものであっても良い(この場合には、各々の『うねり』から再生される再生像が、一つに『合成』されて、『一つの曲面形状ホログラム再生像(合成ホログラム)』を結像させる。)。
ここで、「所定の曲面C1」の「うねり」の周期は、その一つの「うねり」を、三次元空間で捉えて、「球面(もしくは、楕円体面)をそれと交わる平面(切断面)で切り取った部分」、すなわち、「球冠(もしくは、球冠の変形体)」と見做すとすると、その円形(もしくは、楕円形)の切断面の直径(もしくは、最大直径、さらには、『うねり』と『うねり』が、直接、繋がっておらず、『開いている』場合には、その間隔を、その『直径』に加えたもの。)となり、具体的には、10μm以上、特には、50μm以上とする。
ここで、「曲面形状ホログラム形成層」の一方の面の「所定の曲面C1」の「形状」を「うねり」と表し、その「うねり」を数学的な表現を用いて「球冠」と見做したが、この表現は、「曲面支持層」の一方の面の「所定の曲面C2」の形状、及び、「曲面支持層」の一方の面の「所定の曲面C2」に接して追従するように設けた、「体積ホログラム形成層」の「形」、さらには、「ホログラムレリーフの凹凸形状の包絡線(面)、もしくは、平均線(面)」の「形」についても同様に用いることができる。
また、「曲面形状ホログラム形成層」そのものは、その一方の面が「うねり」を有し、他方の面が平面を成している形状であるため、その「曲面形状ホログラム形成層」の中の
その「うねり」のある部分(領域)のみを捉えた表現として、
「一つの『一部が欠けた球体(もしくは、楕円体)』」と表すことができ、「一部が欠けた球体」、すなわち、「球」を一つの平面で切り取った空間図形である「球欠」と呼ぶこともできる。そして、その「平面」部分が、「球欠」の「切断面」となり、その切断面が、球の中心より上であれば、その切断面より上の空間図形が「お椀型」となり、その切断面より下の空間図形が「壺型」となる。
以上、「一部が欠けた球体」に対して、「球冠」、または、「球欠」との表現を用いたが、このことは、その「うねり」が「一部が欠けた楕円体」である場合には、「球冠の変形体」、または、「球欠の変形体」と表すべきであり、実際の「うねり」は、さらに複雑な立体形状を成すことから、適宜な表現が無く、以下の説明においては、「一部が欠けた球体」、「球冠」、または、「球欠」の用語を代表して用いることとする。
上記した「うねりの周期」が、10μm未満であると、一つの「うねり」に対応する、一つの点状光源から発する「光」が、その「うねり」に隣接する、他の「うねり」を横から照明してしまうこととなり、再生される「曲面形状ホログラム再生像」の鮮明度の劣化を招く。「点状光源」が、単に「一つ」のみ存在する場合には、この「間隔」の定義ができないため、間隔の上限を定めることができないが、「点状光源」を複数設ける場合には、それらの間隔は、10mm以下とする。これは、その間隔が10mmを超えると、再生された「曲面形状ホログラム再生像」が「一つの光の像」として認識し難くなるためである。
一例を挙げると、半径30μmの球体を、その中心から20μm離れた平面で切断した、「一部が欠けた球体の一部(底の浅いお椀型)」、すなわち、曲率半径30μmで、高さ10μmのお椀型(開口部は、円形断面。)の「うねり」とし、その曲率半径の中心点、もしくは、その中心線の後方に、点状光源を配置する。
そして、曲率半径の中心点の位置に、「点状光源」を配置した場合には、その「点状光源」から発する球面波は、その「うねり」の全ての位置に「同時に到着する」こととなる。言い換えれば、その「うねり」を照明する「照明光」が、その「うねり」の全ての位置にある「微細な凹凸形状」を、同時に照明することとなり、その「うねり」から再生される、その「曲面形状ホログラム再生像」の結像性を高め、結果として、その鮮明性を高めることを可能とする。
そして、「うねり」の高さは、「うねり」の「切断面」の「直径」(もしくは、『うねり』の周期で代用してもよい。)に対して、1/10〜30/10とする。
この高さが、1/10未満であると、「うねり」を設けた効果が薄れ、30/10を超えると、「感光材料」を均一に設けたり、ムラのない「光学的な複写」をすることが困難となる。
さらに、「うねり」の形状として、あらゆる「三次元曲面」を適用することが可能であるが、少なくとも、「単調に変化する三次元曲面」であることが好ましい。これは、干渉縞の露光の際や、「点光源」から広がる「球面波」による照明の際に、それぞれの光波が複雑に屈折したり、複雑な反射を生じて、露光精度の低下や、再生像の鮮明性の劣化を招くことを阻止するためである。
もちろん、「ホログラム」の「記録」を、「2光束光学系の干渉露光」によって実施するだけでなく、レーザー光線による「直接描画」や、電子線による「直描」によって実施しても良いことは言いうまでもない。
また、後者の場合、すなわち、「曲面形状ホログラム」として、「『体積ホログラム』タイプのホログラム」を用いる場合には、「曲面形状ホログラム形成層」を、「曲面支持層」と「体積ホログラム形成層」の2層とし、その「曲面支持層」を、その一方の面が所定の曲面C2を有し、他方の面が平面を成す「形」として、さらに、その上に、その所定の曲面C2に接して追従するように、「曲面形状を成すホログラムである体積ホログラム」が記録されている「体積ホログラム形成層」を設ける。
もちろん、すでに、「曲面形状を成すホログラムである体積ホログラム(これも、『曲面形状ホログラム』の一つである。)」が記録されている「体積ホログラム形成層」を、「曲面支持層」の上に、接して追従するように設けても良い。但し、この際には、所定の曲面C2のそれぞれの位置と、その位置に配置すべき「体積ホログラム形成層」の位置が、一致するように設ける必要があることは言うまでもない。
そして、このような「曲面形状を成すホログラムである体積ホログラム(『曲面形状ホログラム』)」の記録方法は、その「曲面支持層」と同様の「形」を持つ「光学的に透明な支持具」を準備して、その曲面(所定の曲面C2と同一の曲面を成す。)上に、体積ホログラム記録用感光材料を均一な厚さで設けて(これが、『体積ホログラム形成層』となる。)、「所定の物体光」、及び、「所定の参照光」を、その支持具側から照射し、その「感光材料」内で干渉させて、「露光」する(さらに、現像処理、もしくは、ポストベークによる硬化処理を施す。)。
または、一旦、「曲面形状ホログラム」を記録した「体積ホログラム形成層」に、同一厚さの未露光の「体積ホログラム記録用感光材料」を重ね、同一波長のレーザー光を適宜な手段により照射して、「曲面形状ホログラム」を、その「体積ホログラム記録用感光材料」へ「(光学的)複製」した後、「曲面支持層」上に、その位置合わせを施して重ね、2層からなる、「曲面形状ホログラム形成層」とする。
このときの「所定の参照光」は、その「曲面」の中の一つ一つの「うねり」の、それぞれの所定の位置、例えば、上記の一例における、「曲率半径の中心点」に、「焦点」を結ぶような、「一旦、『集光』し、その後、『発散』する『光』」を用いる。
そして、そのような「記録」によって、その「うねり」の「曲率半径の中心点」に配置する「点状光源」から発光した「光」を、「照明光」として、その「曲面形状ホログラム形成層」に照射すると、その「曲面形状ホログラム形成層」内の「体積ホログラム形成層」に基づく、「曲面形状ホログラム再生像」が、鮮明に再生される(結像する)。
そのような再生方法によるホログラム再生を実現するため、「曲面形状ホログラム」である「レリーフホログラム」、及び、「曲面形状ホログラム」である「体積ホログラム」の何れもが、少なくとも、一つ以上の「透過型ホログラム」を含むことが必須である。
すなわち、「曲面形状ホログラム」が「レリーフホログラム」である場合には、「透過型レリーフホログラム」を、もしくは、「曲面形状ホログラム」が「体積ホログラム」である場合には、「透過型体積ホログラム」を、それぞれ、一つ以上、記録する。
さらに、偽造防止効果、及び、意匠性を高めるために、それぞれ、「反射型レリーフホログラム」、または、「反射型体積ホログラム」を、上記した「透過型ホログラム」に加えて、多重記録することも好適である。(これらの『透過型ホログラム』、及び、『反射型ホログラム』を作製する一般的な原理や手順、及び、層構成等については、その説明を省略する。)このことによって、その「曲面形状ホログラム形成層」に記録してある、上記の「透過型ホログラム」の存在を秘匿し易くすることができる。
また、「ホログラムシート」を「カード基材」に埋め込む際の、その「ホログラムシート」の「カード基材」と接している面は、その「ホログラムシート」の「シート基材」の他方の面であってもよいし、または、その「ホログラムシート」の「曲面形状ホログラム形成層」の最表面であってもよい(後者の場合は、『カード基材』が透明性を有し、『カード基材』を通して、透過型ホログラムを観察することとなる。)。
さらには、「ホログラムシート」を「カード基材」に埋め込む際に、可能であれば、その「シート基材」を剥離して(除いて)、上記と同様に二つの態様で「カード基材」に埋め込んでもよいが、以下の説明においては、その代表的な構成となる、「『ホログラムシート』の『カード基材』と接している面が、『シート基材』、特には、『透明基材』の他方の面である場合」につき述べる。
そして、本発明における「シート状薄膜光源層」とは、以下の「(1)〜(3)の光源層」の何れか、もしくは、その組み合わせをいう。
(1)「シート状薄膜光源層」に対する所定の光照射による、「光励起に起因する発光現象」(紫外線照射、可視光線照射、もしくは、赤外線照射等の『光照射』によって、蛍光発光、燐光発光、もしくは、蓄光発光する『発光現象』。以下、これらの『発光』を、総称して『蛍光発光』もしくは、『フォトルミネッセンス』ともいう。この『フォトルミネッセンス』には、いわゆる、『半導体』に、その『半導体の禁制帯よりも高いエネルギーを持つ光』を照射すると、その『半導体』が、その『光』を吸光し、熱平衡状態よりも過剰の『電子・正孔対』が形成されて、それらが平衡状態に戻ろうとするときの『再結合過程』において、その『半導体』から『所定波長の光』が放出される現象が含まれることはいうまでもない。)に基づいて、その「光源層内」の「発光中心」(これが、『所定の波長の光を発する点状光源』となる。)を起点(原点)とする「球面波状の波面を持つ発光(以下、単に『球面波』とも略す。)」を、それぞれの発光中心に特有の波長(所定の波長。)を有して放出する、「シート状(比較的広い面積を有する状態を意味する。)」、且つ、「薄膜(数μm程度、もしくは、それ以下であって十nm以上の、『非常に薄く、且つ、均一な厚さ』を有する状態を意味する。)」の「光源層」であって、その「発光中心」が、「一つの領域にのみ存在する」か、または、「二以上の、互いに離間する領域に存在する」ものである、「シート状薄膜蛍光層」。
この「発光中心」そのものの大きさは、「原子レベルの大きさ」であって、そのような「発光中心」が、例えば、所定の結晶構造内に多数存在し、そして、その「多数の発光中心が含まれている、結晶構造の大きさ」、すなわち、「原子レベルの発光中心が集中して存在している空間的範囲」が、「一つの領域」であり、この「一つの領域」を、「所定の波長の光を発する点状光源」と称する。
つまり、原子レベルの一つの「発光中心」では、目視認識可能なレベルの「発光」を発することは出来ないため、このような「発光中心」が、一箇所に集中し、「一つの領域」を形成して存在することにより、その「領域」からの「発光」が、目視認識可能となる。
本発明においては、このような「一つの領域」を、「点状光源」と定義し、その「一つの領域」の大きさ(領域の形状は、円形、楕円形、長方形、星形等、あらゆる形状とすることができるため、その領域内の最大径をいう。)を、0.1μm〜30.0μmとする。好適には、1.0μm〜10.0μmとする。
そして、この「一つの領域」を成す「点状光源」の位置は、その「点状光源」から発する「球面波状の光波」が、対応する「曲面形状を成すホログラム」の「照明光」となるように配置する。
また、この「一つの領域」の厚さは、「シート状薄膜蛍光層」の「厚さ」、もしくは、「それ以下の厚さ」とするが、「シート状薄膜蛍光層」の中の「所定の波長の光を発する点状光源」となる「一つの領域」(もしくは『複数の領域』。以下、『領域』と総称する。)ではない部分は、上記したような「発光」を生じない部分となっている。
特には、その「領域」において、以下に詳述する「多重反射現象」、すなわち、その「シート状薄膜蛍光層」上下の「面」(少なくとも、その『領域』部分の上下の『面』。)が、「光学的な鏡面」を成しつつ、光の波長と同程度の距離を隔てて、平行に対峙することによる、「『励起光』や『発光した光』の、その上下の面の間で起こる『多重反射現象』」によって、やはり以下に詳述する「指向性を帯びた光の波」を発光することとなる、「シート状薄膜蛍光層」。
(2)「シート状薄膜光源層」に対する「所定の直流電圧印加、もしくは、交流電圧印加による、『電子/正孔(ホール)』再結合に起因する発光現象」(エレクトロルミネッセンス。以下、『EL』とも略す。)に基づいて、その「光源層内」の「発光中心」(『電子』と『正孔(ホール)』の再結合点、すなわち、通常は『正孔』の位置であるが、この位置が『発光中心』であり、これが、『所定の波長の光を発する点状光源』となる。)を起点(原点)とする「球面波状の波面を持つ発光(球面波)」を、それぞれの発光中心に特有の波長(所定の波長。)を有して放出する、「シート状(比較的広い面積を有する状態を意味する。)」、且つ、「薄膜(数μm程度、もしくは、それ以下であって数十nm以上の、『非常に薄く、且つ、均一な厚さ』を有する状態を意味する。)」の「光源層」である、であって、その「発光中心」が、「一つの領域にのみ存在する」か、または、「二以上の、互いに離間する領域に存在する」ものである、もしくは、電極の配置や、電極の形状によって、その「所定の直流電圧印加(もしくは、交流電圧印加)」が、「一つの領域にのみに印加するもの」であるか、または、「二以上の、互いに離間する領域に印加するもの」である、「シート状薄膜LED(Light Emitting Diode)層」、「シート状薄膜無機EL層」、「シート状薄膜有機EL層」(この二つを総称して、『シート状薄膜EL層』ともいう。)、「シート状薄膜ディスクレーザー(薄膜面に垂直方向に発光するレーザー。)層」や、「シート状薄膜面発光レーザー(SEL:Surface Emitting Laser)層」。
この「発光中心」そのものの大きさは、「原子レベルの大きさ」であって、そのような「発光中心」が、例えば、所定の結晶構造内に多数存在し、そして、その「多数の発光中心が含まれている、結晶構造の大きさ」、すなわち、「原子レベルの発光中心が集中して存在している空間的範囲」が、「一つの領域」であり、この「一つの領域」を、「所定の波長の光を発する点状光源」と称する。
もしくは、上記の種々の「シート状薄膜光源層」において、その「領域」にのみ「電極」を設けるなど、電極の配置を局在化したり、その「領域」のみ「電極」に面積を持たせ、それ以外は、極く細いリード線とするなど、電極の形状に工夫を施して、「一つの領域」のみに、直流電圧(交流電圧)が印加されるように構成した、その「一つの領域」内に存在する「発光中心」を、総称して、「所定の波長の光を発する点状光源」と称する。
その「大きさ」、及び、「曲面形状を成すホログラム」との位置関係は、「シート状薄膜蛍光層」と同様である。
ここで、「ディスクレーザー層」や「面発光レーザー層」は、それぞれ対向する2つの「反射層(少なくともその一つは、ハーフミラーである。)」の間を、「発光した光」が繰り返し通過することによる「誘導放出」現象により、既に、著しく高い指向性を有しているが(この『誘導放出領域』を、上記した『一つの領域』としてもよい。)、半導体p型層と、半導体n型層の間に挿入した「蛍光発光体を含有する層」や、(1)の「蛍光層」においては、上記の「レーザー層」ほどの繰返し通過を望めないまでも、類似の状態、すなわち、「それらの層が、2つの反射性を有する界面に挟まれる状態」が出現し、その「蛍光発光体を含有する層」内や、「蛍光層」内を、「励起光」、もしくは、「発した光そのもの」が、「光の速度」で繰り返し通過する(多重反射現象を意味する。)ことによって生じる、いわゆる「誘導放出」現象が発生し、それらの「球面波」が変形して、所定の方向へ向かう「指向性を帯びた光の波」、もしくは、「楕円面波状の波面を持つ発光」(いずれも、球面波を、少しずつ方向が異なる微小面積の平面波の集合としたときに、所定の方向に向かう微小面積の平面波が最も大きな強度を有し、その方向とは異なる方向に向かう微小面積の平面波の強度が、その方向からの角度ずれの大きさに応じて小さくなっているもの。)」、さらには、「レーザー光のような平面波状の波面を持つ発光」となっている。以下においては、その代表例である「指向性を帯びた光の波」を主体として説明する。その内容は、「楕円面波」や「平面波」に対しても、容易に適用可能である。
(3)「シート状薄膜光源層」に対する「外力負荷」による「変形応力に起因する発光現象」(いわゆる『応力発光:機械発光の一種である、弾性変形発光』。)に基づいて、
その「光源層内」の「発光中心」(『電子』と『正孔(ホール)』の再結合点であり、通常は、『正孔』の位置となる。この再結合点が『発光中心』であり、『所定の発光点』となる。)を起点(原点)とする「球面波状の波面を持つ発光(球面波)」を、それぞれの発光中心に特有の波長(所定の波長。)を有して放出する、「シート状(比較的広い面積を有する状態を意味する。)」、且つ、「薄膜(数十μm程度、もしくは、それ以下であって数百nm以上の、『非常に薄く、且つ、均一な厚さ』を有する状態を意味する。)」の「光源層」であって、その「発光中心」(これが、『所定の波長の光を発する点状光源』となる。)が、「一つの領域にのみ存在する」か、または、「二以上の、互いに離間する領域に存在する」ものである、「シート状薄膜応力発光層」。
特には、「シート状薄膜応力発光層」に所定の外力を負荷した際の、「シート状薄膜応力発光層」内における「応力集中箇所」(例えば、直方体形状の一方の面に設けられている、楔形の凹部の底部や、円錐形の凸部の頂部など。その底部や頂部の応力集中係数は、10以上、さらには、100以上となっている。ここで、『応力集中係数=外力負荷時の応力集中箇所の応力値/外力負荷時の発光層全体の平均応力値』である。)が、その「一つの領域」や、「互いに離間した、二以上の領域」に該当することとなる。そして、このような「シート状薄膜応力発光層」に所定の外力を負荷すると、その「一つの領域」や、「互いに離間した、二以上の領域」が、他の部分に比較して、非常に強く発光することとなり、この「一つの領域」や、「互いに離間した、二以上の領域」が、本発明における「所定の波長の光を発する点状光源」となる。(より厳密に言えば、その応力集中箇所に存在する『発光中心』が、『所定の波長の光を発する点状光源』である。)
さらには、上記した「多重反射現象」、すなわち、その「シート状薄膜応力発光層」の上下の「面」が、「光学的な鏡面」(『一つの領域』、もしくは、『二以上の、互いに離間する領域』を『鏡面』とする。)を成しつつ、光の波長と同程度の距離を隔てて、平行に対峙することによる、「『発光した光』の、その上下の面の間で起こる『多重反射現象』」によって、やはり以下に詳述する「指向性を帯びた光の波」を発光することとなる、「シート状薄膜応力発光層」。
以上、説明したように、「蛍光層」においては、「蛍光発光体」分子そのものや、「蛍光発光体」を構成するために添加(ドーピング等。)された元素(原子)が、上記した「発光中心」となり、「薄膜LED層」、「薄膜無機EL層」、「ディスクレーザー層」や、「面発光レーザー層」においては、「p型半導体とn型半導体の接合面」(いわゆる『pn接合面』。)における、「電子」と「正孔」が「再結合」を生じた「点」(位置)、または、『発光層を間に挟んだ、ダブルヘテロ構造』、もしくは、「有機薄膜EL層(例えば、『マイナス電極/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/プラス電極』等で構成される。)」においては、その「発光層」内における、「元素(原子)」や「再結合点」、「応力発光層」においては、その「結晶構造」内における、「電子」と「正孔(格子欠陥ともいう。)」が「再結合」を生じた「点」(位置)が、上記した「発光中心」となる。
そして、その「シート状薄膜光源層」が発する光(放射される光。その『波長―強度曲線』において、最も高い強度を有する『中心波長λ0』を持ち、その波長から長波長側、及び短波長側に、ゆるやかに小さくなる強度を持つ。すなわち、数十nm〜数百nmの波長幅を有する光)は、その『シート状薄膜光源層』内の『発光点。(一つの点。発光体や発光分子、さらには、その発光分子の中の発光位置。)』から、『指向性を帯びた光の波』として広がりつつ進み(所定の方向への偏りを持ち、その方向の微小領域内では、位相も比較的揃って進むという意味。)、透過型の「曲面形状ホログラム」が記録されている、「曲面形状ホログラム形成層」を、そのような「光(光波)」が通過することで、その透過型の曲面形状ホログラムの位相差を取り込み、互いにホログラフィックな干渉現象を生じて曲面形状ホログラム再生像(透過型のホログラム再生像である。以下、単に、『曲面形状ホログラム再生像』、もしくは、『ホログラム再生像』とも略す。)を再生しつつ進むこととなる。
このときの曲面形状ホログラム再生像は、上記した「一つの光源」の領域内の「一つの点」の各々から発する「球面波」が、対応する「曲面形状ホログラム形成層」の「一つのうねり」を照明し、その「うねり」の形状をした「ホログラムレリーフ」、もしくは、「うねり」の形状をした「体積ホログラム形成層」を、通過しつつ、いずれも、ホログラフィックな干渉現象を生じて、その各々の点に対応する、各々の「ホログラム再生像」を結像する。
そして、そのような「各々の点」が、「一つの領域」に集約されていることから、各々の点に対応する各々の「ホログラム再生像」が、目視においては、合成された「一つのホログラム再生像」、すなわち、「曲面形状ホログラム再生像」を認識可能とするものである。
本発明のホログラムシートは、もともと、「シート状薄膜光源層」の発する光の波長と、結像するホログラム再生像を構成する光の波長が、「厳密に同一」であるため、例えば、「緑色の背景色」の中に、「緑色の絵」を描いたごとく、その「絵」を目視にて判読することは、容易ではない。
このことは、本発明のホログラムシートに、「シート状薄膜光源層」を用いない場合、すなわち、上記した「『(1)〜(3)の光源層』の何れか、もしくは、その組み合わせ」を、その「光源層」として採用しなかった場合には、上記したような、「指向性を帯びた光の波」ではなく、「不揃いの位相や、不揃いの強度を持つ、あらゆる方向に進む『光』」を発する光源である、「単なる平面状の拡がりをもって発光する光源(層)」による「位相、強度、方向とも、『ランダムな球面波の集まり』(散乱光)」によって「曲面形状ホログラム形成層」を照明することとなり、「明るい背景の色」の中に、全く同一の「色」からなる「非常に不鮮明なホログラム再生像」を、いわば「埋没させた状態」で観察せざるを得ず、しかも、その「照明光」の発光波長域が広くなっていることによる「ホログラム再生像の不鮮明化」までもが加わり、もはや、「ホログラム再生像」の出現をもって、「真正性を判定する」ことの信頼性を確保できなくなる。
そのため、本発明の「シート状薄膜光源層」を用いることで、「ランダムな球面波の集まり」からなる「曲面形状ホログラム形成層」の照明光を、「『指向性を帯びた光の波』からなる『透過照明光』」とし、そのような「指向性を帯びた光の波」によって「曲面形状ホログラム形成層」を照明することによって、その再生方向が重なった「光の像」とし、しかも、このような「多数のホログラム再生像を、『ズレ』なく重なった状態」として、観察者が「いわば『一つ』の鮮明なホログラム再生像」を視認できるものとすることが好適である。
これにより、「シート状薄膜光源層」の発する光の波長と、結像するホログラム再生像を構成する光の波長が、「厳密に同一」であっても、すなわち、「緑色の背景色」の中に、「緑色の絵」を描いたものであっても、その「絵」を目視にて判読することを、容易とし、そのような「真正性判定」の信頼性を向上させることができる。
また、上記した「多重反射現象」、すなわち、「上下の面の間での繰り返し反射現象」によって、「誘導放出現象(レーザー発振動作において発生する現象。位相の揃った、指向性の強い発光が行われる。)」を導出し、「光の増幅」を起こして、「発光した光」の「指向性(レーザー光のような指向性を一部備えるという意味。)」を発現させて、上記した効果を十分に達成させるためには、その「繰り返し反射」を、その反射強度を維持したまま精密に揃った形で、さらに十分に生じさせるため、その「シート状薄膜光源層」の「上の面、及び/または、下の面」を、「ハーフミラー面(所定の波長の光に対して、30〜70%の反射率を有する面)」としたり、追加の「反射面(反射率は50%以上。)」、もしくは、追加の「反射層(同左。)」を、「シート状薄膜光源層」の背面(下の面の背後と言う意味。)に設けることも好適である。
この「誘導放出現象」は、「レーザー発振」においては、「数mmに及ぶ長い活性層」中を、発光した光が精密に往復しなければならず(その高い精度により、位相と方向が揃う。)、いわゆる「光学システム系用光源」として用いる場合には、その光学システム全体の構成精度(幾何学的、もしくは、光学的精度。)に合わせて、その光源の構成精度を非常に高いものとせざるを得ないが、本発明のホログラムシートの「シート状薄膜光源層」における「往復距離」は、僅か、十nm〜数十μmと、その1/100〜1/100000となる、「極めて短い距離」を設定してあり、しかも、その判定も「目視判定」であることから、「(光学システム系用)レーザー光源」程の構成精度を必要としない。
但し、「シート状薄膜光源層」の上下の面や、その他の層間の界面等は、上記した機能を高めるために、「光学的な鏡面」(その『面』の表面平滑性が、実質的に、平均表面粗さRaで、0.01μm〜0.1μmであることを意味する。)となっていることが望ましい。
特に、本発明のホログラムシートにおいて、「『シート状薄膜光源層』の厚さを、0.01μm〜2.0μmとする」ことで、その「往復距離」をさらに短い距離とし、そのような「誘導放出現象」をさらに増すことが好ましい。
このことは、「2つの『界面』が、『非常に短い距離(間隔)』で、しかも、『均一な距離』を保ちつつ、いわば、『平行』に、並べて設けられた状態」を、曲面形状ホログラム形成層面上に設けた構造である、いわゆる「透明型ホログラム」を理論的に解析した学術論文(社団法人日本印刷学会発行 檀上他著“透明型ホログラムの理論的解析”日本印刷学会誌 第25巻第2号(1988)頁75〜88)に記載の、「2.1.3 MODEL 3.2 界面タイプ位相形回折格子 これは多重界面ホログラムの最も単純なモデルと考えられる.・・・したがって、レリーフ面の間隔Hは、レリーフピッチ(2π/b)と同程度、もしくは、それ以下が望ましく、さらに多重反射を効果的にするためには, H<<2π/b・・・(13)とする必要がある(頁77〜78)」との理論に当てはめ、その「2つの界面の距離、すなわち、シート状薄膜光源層の厚さを、1〜2μm程度の(ホログラム)レリーフピッチより、小さくすることで、その2つの面の間に『多重反射』現象が効果的に発生」して、上記した「誘導放出現象」を助長するものとしたものということができる。
そして、本発明において、「カード基材に、ホログラムシートが埋め込まれ、そのホログラムシートの露出面が、そのカード基材の表面と面一、または、前記カード基材の表面から凹んだ位置にある」とは、本発明の「ホログラムシートそのもの」、すなわち、本発明のホログラムシートを構成する「全ての層」が、「カード基材に埋め込まれて」いて、偽造や変造を意図して、そのホログラムシート全体、もしくは、その一部の層を剥がそうとしても、その断面に爪を入れることができず、結局、それらの層を削り出す他に手段は無く、一旦、削り出してしまうと、もはや、その凹部に、それらの層を復元することが非常に困難であって、それらの貼り替えなどの変造や、偽造を物理的に不可能とするホログラム付きカードを示し、そこで、「本発明のホログラムシートを構成する『全ての層』が、『カード基材に埋め込まれて』いるとは、最終的に、「本発明のホログラムシートの最表面、すなわち、の「最表面(露出面)」が、「カード基材表面と面一、または、カード基材の表面より凹んだ位置になっている」ことをいう。
また、本発明において、「そのカード基材が、IC駆動用電池を内臓している電池内臓型ICカード基材であり、且つ、そのIC駆動用電池が、ホログラムシートを発光する発光用電源をも兼ねている、ホログラム付きカード」(以下、「本発明のホログラム付きICカード」、もしくは、単に「ホログラム付きICカード」ともいう。)とは、少なくとも、いわゆる「ICカード用セキュアマイクロコンピュータ(略して、セキュアマイコンと称す。)」(このセキュアマイコンを内蔵するカードが、「接触式ICカード」と呼ばれる。)、もしくは、「非接触式ICチップ(TypeB、もしくは、FeliCa〈フェリカ:ソニー(株)の登録商標〉タイプ素子)」(このICチップを内蔵するカードが、『非接触式ICカード』と呼ばれる。以下の説明においては、このICチップを内蔵する『ICタグ』もこの『非接触式ICカード』に便宜的に含めることとする。)、及び、それら「セキュアマイコン」や「非接触式ICチップ」を駆動するための電源(すなわち、IC駆動用電池。)として、且つ、ホログラムシートを発光させるための電源として、一次電池、または、二次電池を、そのカード基材の中に「内蔵」することをいう。
ここでは、当然に、本発明の「ホログラムシート」に用いられる「シート状薄膜光源層」とは、このような内蔵した電池により駆動し、そして、発光するタイプの「光源層」を用いることを想定している。但し、それ以外のタイプの「光源層」を併設することを排除するものでない。(以下、同様。)
これらの「電池」は、「セキュアマイコンまたは非接触式ICチップ等を制御する『制御部』」や、「液晶ディスプレイなどの『表示部』」をさらに含む場合には、それらの「『制御部』」や『表示部』」を駆動するための電源として用いられることは言うまでもない。
さらに、これら「内蔵」する「電池」に加えて、「太陽電池と、その太陽電池で生成された電気エネルギーを蓄電するコンデンサにより構成される(補助)電源」を、そのカード基材に含めることも「IC駆動用電池を内臓する」ということの意味に含める。
このことにより、本発明のホログラム付きICカードを使用する者が、このホログラム付きICカードを「外部」に取り出すだけで(太陽の光に晒すという意味。)、太陽電池に光が照射して生成された電気エネルギーがコンデンサに蓄電され、これを安定した(補助)電源として用いることが可能になる。
また、本発明のホログラムシートを発光させたり、消光させるためのON/OFF切り替えスイッチをも内蔵することができる。
本明細書において、配合を示す「部」は質量基準である。また、「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
(主なる用途)
本発明のホログラムシート、もしくは、ホログラム付きカードの主なる用途としては、ホログラムそのものを装飾用として用いる美術・工芸品分野や商業用分野があるが、それにとどまらず、偽造防止分野に使用されるホログラムシート、もしくは、ホログラム付きカードであって、具体的には、クレジットカード等の偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録体であり、偽造による損害を防止する目的で、記録体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
また、これら情報記録体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
(背景技術)
従来、情報記録体や上記した種々の物品(総称して、真正性識別対象物と言う。)の偽造を防止する目的で、その構造の精密さから、製造上の困難性を有すると言われるホログラムを真正性の識別可能なものとして適用することが多く行なわれている。しかしながら、ホログラムの製造方法自体は知られており、その方法により精密な加工を施すことができることから、ホログラムが単に目視による判定だけのものであるときは、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別は困難である。
これらの真正性識別対象物、特にラベル形態や転写形態にてホログラム画像を施された物品は、ホログラム画像の目視確認という真正性識別のみでなく、新たな真正性識別方法を用いてその対象物の真正性を識別する必要が生じている。
(先行技術)
これらの要求に応えるため、ホログラムに積層して、入射した光の内、左回り偏光もしくは、右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層を有するホログラムシートが提案された。(例えば、特許文献1参照。)
この光選択反射層として、コレステリック液晶を使用し、偏光版等を用いて確認する方法で偽造防止性を高めている。
しかしながら、特許文献1の記載にあるように、体積ホログラム形成層上の反射性薄膜層の反射率が高いため、コレステリック液晶層で反射されず透過した光(選択的反射光の補色光)が、この反射性薄膜層で反射し、再びコレステリック液晶層へ戻る(以下戻り光とする)ことにより、この戻り光が、コレステリック液晶を観察する際のノイズ成分となって、選択的反射光に付加・混在し、液晶本来の色調とならず、視認・識別することすら難しくなっていた。
また、コレステリック液晶材料そのものが高価であり、その液晶性能を引き出すためには液晶層に接して、配向膜の形成が不可欠であって煩雑であり、さらには、コレステリック液晶の光散乱性により、ホログラム画像を再生する光がその液晶層を通過するときに画像にボケ・歪みを生じる等の問題があった。
このため、コレステリック液晶層の光散乱性を抑えたり、コレステリック液晶層そのものを薄くする等の工夫が考えられたが、コレステリック液晶層の光散乱性を抑えるために屈折率差を小さくしたり、コレステリック液晶層を薄くしたりすると、上記した光選択反射層としての機能が低下してしまい、ホログラム画像の鮮明性と偽造防止性能を確保する最適な条件を得ることが難しいという欠点を有していた。
特開2007−90538号公報
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、シート基材の一方の面に、「所定の波長の光を発する点状光源を有するシート状薄膜光源層」、及び、「その点状光源が発する、所定の波長の光を照明光とする、曲面形状を成すホログラムが記録されている曲面形状ホログラム形成層」が、この順序で設けられて、「シート状薄膜光源層」の中の点状光源が所定の波長で発光したとき、その所定の波長で光るホログラムを視認することができるホログラムシート及びこのホログラムシートをカード基材に埋め込んだホログラム付きカードを提供することである。
さらには、その曲面形状ホログラム形成層として、その一方の面に、「所定の曲面C1となる『うねり』を持ちつつ、微細な凹凸形状をも併せ持つホログラムレリーフ」を設けたものとし、または、その曲面形状ホログラム形成層を「一方の面が所定の曲面C2となっている曲面支持層と、その所定の曲面C2に接して追従するように設けた体積ホログラム形成層の2層構成」として、その「体積ホログラム形成層」に、「曲面形状を成すホログラムである体積ホログラム」を記録し、その意匠性及び偽造防止性を高めたホログラムシート及びこのホログラムシートをカード基材に埋め込んだホログラム付きカードを提供することである。
そして、「シート状薄膜光源層」で発光した光そのものが、「指向性を帯びた光」となって「曲面形状ホログラム形成層」を通過し、再生する透過型の曲面形状ホログラム再生像がより鮮明となるホログラムシートを提供して、新規な装飾性及び、これを応用する偽造防止性を提供することである。
特には、カード基材として、電池内臓型ICカード基材を用い、しかも、そのIC駆動用電池が、前記ホログラムシートの発光用電源をも兼ねることで、その意匠性や偽造防止性を一層高めたホログラム付きカードを提供する。
上記の課題を解決するために、
本発明のホログラムシートの第1の態様は、
シート基材の一方の面に、シート状薄膜光源層、曲面形状ホログラム形成層がこの順序で設けられているホログラムシートであって、シート状薄膜光源層が、所定の波長の光を発する点状光源を有し、且つ、前記曲面形状ホログラム形成層は、前記点状光源が発する前記所定の波長の光を照明光とする、曲面形状を成すホログラムが記録されていることを特徴とするものである。
上記第1の態様のホログラムシートによれば、
シート基材の一方の面に、シート状薄膜光源層、曲面形状ホログラム形成層がこの順序で設けられているホログラムシートであって、シート状薄膜光源層が、所定の波長の光を発する点状光源を有し、且つ、前記曲面形状ホログラム形成層は、前記点状光源が発する前記所定の波長の光を照明光とする、曲面形状を成すホログラムが記録されていることを特徴とするホログラムシートを提供することができ、その意匠性と偽造防止性に優れるホログラムシートを提供することを可能とする。
本発明のホログラムシートの第2の態様は、
第1の態様のホログラムシートにおいて、
前記曲面形状ホログラム形成層は、その一方の面が所定の曲面C1を有し、他方の面が平面を成しており、前記所定の曲面C1の表面に、前記曲面形状を成すホログラムであるレリーフホログラムのホログラムレリーフが設けられていることを特徴とするものである。
上記第2の態様のホログラムシートによれば、
第1の態様のホログラムシートにおいて、
前記曲面形状ホログラム形成層は、その一方の面が所定の曲面C1を有し、他方の面が平面を成しており、前記所定の曲面C1の表面に、前記曲面形状を成すホログラムであるレリーフホログラムのホログラムレリーフが設けられていることを特徴とするホログラムシートを提供することができ、意匠性及び偽造防止性をより高めたホログラムシートを提供することができる。
本発明のホログラムシートの第3の態様は、
第1の態様のホログラムシートにおいて、
前記曲面形状ホログラム形成層は、曲面支持層と体積ホログラム形成層の2層からなり、前記曲面支持層は、その一方の面が所定の曲面C2を有し、他方の面が平面を成しており、且つ、前記所定の曲面C2に接して追従するように、前記体積ホログラム形成層が設けられており、前記体積ホログラム形成層に、前記曲面形状を成すホログラムである体積ホログラムが記録されていることを特徴とするものである。
上記第3の態様のホログラムシートによれば、
第1の態様のホログラムシートにおいて、
前記曲面形状ホログラム形成層は、曲面支持層と体積ホログラム形成層の2層からなり、前記曲面支持層は、その一方の面が所定の曲面C2を有し、他方の面が平面を成しており、且つ、前記所定の曲面C2に接して追従するように、前記体積ホログラム形成層が設けられており、前記体積ホログラム形成層に、前記曲面形状を成すホログラムである体積ホログラムが記録されていることを特徴とするホログラムシートを提供することができ、意匠性及び偽造防止性をより高めたホログラムシートを提供することができる。
本発明のホログラムシートの第4の態様は、
第1から第3の態様の何れかの態様のホログラムシートにおいて、前記シート状薄膜光源層の厚さは、0.01μm〜2.0μmであることを特徴とするものである。
上記第4の態様のホログラムシートによれば、
第1から第3の態様の何れかの態様のホログラムシートにおいて、前記シート状薄膜光源層の厚さは、0.01μm〜2.0μmであることを特徴とするホログラムシートを提供することができ、さらに鮮明な曲面形状ホログラム再生像を再生することを可能とするホログラムシートを提供することができる。
本発明の第5の態様のホログラム付きカードは、
カード基材に、第1から第4の態様の何れかの態様のホログラムシートが埋め込まれ、前記ホログラムシートの露出面が、前記カード基材の表面と面一、または、前記カード基材の表面から凹んだ位置にあることを特徴とするものである。
上記第5の態様のホログラム付きカードによれば、
カード基材に、第1から第4の態様の何れかの態様のホログラムシートが埋め込まれ、前記ホログラムシートの露出面が、前記カード基材の表面と面一、または、前記カード基材の表面から凹んだ位置にあることを特徴とするホログラム付きカードを提供することができ、その意匠性と偽造防止性に優れるホログラム付きカードを提供することを可能とする。
本発明の第6の態様のホログラム付きカードは、
第5の態様のホログラム付きカードにおいて、前記カード基材が、IC駆動用電池を内臓している電池内臓型ICカード基材であり、且つ、前記IC駆動用電池が、前記ホログラムシートの発光用電源をも兼ねていることを特徴とするものである。
上記第6の態様のホログラム付きカードによれば、
第5の態様のホログラム付きカードにおいて、前記カード基材が、IC駆動用電池を内臓している電池内臓型ICカード基材であり、且つ、前記IC駆動用電池が、前記ホログラムシートの発光用電源をも兼ねていることを特徴とするホログラム付きカードを提供することができ、その意匠性と偽造防止性に著しく優れるホログラム付きカードを提供することを可能とする。
本発明のホログラムシートは、シート基材の一方の面に、「所定の波長の光を発する点状光源を有するシート状薄膜光源層」、及び、「その点状光源が発する、所定の波長の光を照明光とする、曲面形状を成すホログラムが記録されている曲面形状ホログラム形成層」が、この順序で設けられており、「シート状薄膜光源層」の中の点状光源が所定の波長で発光したとき、その光(光波)により、その「曲面形状を成すホログラム」を照明することとなり、「曲面形状を成すホログラム」に基づく、「曲面形状ホログラム再生像」を出現させる。
最適には、その「光波」による照明が、その「曲面形状を成すホログラム」露光時(もしくは、直描等による形成時)の「参照光に合致するもの(波長、波形、進行方向等の波としての全特性の合致。)」とすることで、最も鮮明、且つ、最も明るく、歪みの無い、曲面形状ホログラム再生像を再生させることができる。
本発明のホログラムシートの「曲面形状を成すホログラム(曲面形状ホログラム)」として、「『レリーフホログラム』タイプのホログラム」、または、「『体積ホログラム』タイプのホログラム」の何れかを用いるが、もちろん、それらを積層した、「複合ホログラム」としても良いことは言うまでもない。
前者は、「曲面形状ホログラム形成層」そのものを、その一方の面が「所定の曲面C1」を有し、他方の面が「平面」を成す「形」とし、その「所定の曲面C1」の表面に沿って、その「所定の曲面C1」を成す「うねり(比較的周期の大きい凹凸形状)」と、いわゆる「干渉縞特有の微細な凹凸形状(周期が0.1〜2.0μm。)」からなる、外観上は、あたかも「2種類の異なる周期の凹凸形状からなる」ものと見做せるものの、実際には、大きな周期の凹凸形状と、小さな周期の凹凸形状は、互いに、相関しており、厳密には、「大きな周期と、小さな周期の両成分からなる、一つの凹凸形状」である、「所定のレリーフホログラム」を成す「所定のホログラムレリーフ」を設けたものである。
すなわち、互いに相関する、「大きな周期」と「小さな周期」からなる、新規な「ホログラムレリーフ」を形成しているため、その偽造や変造が特段に困難であるとともに、特異な意匠性を発揮する。
本発明の「ホログラムレリーフ」は、あらかじめ、その「所定の曲面C1」を持って形成されている「感光材料」、例えば、「うねりの形を持つ感光材料」(その『うねり』に応じて厚さが変動する感光材料。)、または、「その『うねり』を持つ透明なシート状材料の上に、その『うねり』に沿って均一な厚さで設けた感光材料」(この構成は、『体積ホログラム』にも適用できる。)に対して、「参照光」及び「物体光」を露光して干渉させ、その「干渉縞」を、それらの「感光材料」層内に記録後、適宜な現像処理を施して、「『曲面形状』を成す『ホログラムレリーフ』」とする。
すなわち、3次元空間に広がる。上記の「干渉縞」を、「『うねりの形を持つ感光材料』の表面の極く薄い領域」、もしくは、「極薄く、『うねり』の形を持つ感光材料の成す3次元空間」で切り取って記録するものである。(後者は、『レリーフホログラム』であっても、『体積ホログラム』であっても同様である。)
その「所定の曲面C1」の「うねり」の周期は、10μm以上、特には、50μm以上とし、10mm以下とする。但し、「シート状薄膜光源層」内に、所定の波長の光を発する点状光源が一つのみ存在する場合には、この限りでない。
また、「一つのうねり」につき、所定の配置関係となる位置に、「一つの点状光源」を配置する。(照明する側の『点状光源』と、照明を受ける側の『うねり』の、予め定めた配置関係を意味する。そのような配置関係となるように、『曲面形状ホログラム形成層』と、『シート状薄膜光源層』を、位置合わせをしつつ、積層するという意味。)
後者は、「曲面形状ホログラム形成層」を、「曲面支持層」と「体積ホログラム形成層」の2層構成とし、その「曲面支持層」を、その一方の面が所定の曲面C2を有し、他方の面が平面を成す「形」とした上で、さらに、その所定の曲面C2に接して追従するように、「体積ホログラム形成層」を設ける。この際、その「体積ホログラム形成層」には、「曲面形状を成すホログラムである体積ホログラム」が記録されている。
この「曲面形状を成すホログラムである体積ホログラム(『曲面形状ホログラム』)」の記録方法は、その一例を挙げると、
透明性を有する「曲面支持層」を準備して、その所定の曲面C2の上に、体積ホログラム記録用感光材料を均一な厚さで設けて(これが、『体積ホログラム形成層』となる。)、「所定の物体光」、及び、「所定の参照光」を、その「曲面支持層」側から照射し、その「感光材料層」内で干渉させて、「露光」し、さらに、現像処理、もしくは、ポストベークによる硬化処理を施す。
その「露光」の際の「所定の参照光」は、その「所定の曲面C2」の中の一つ一つの「うねり」の、それぞれの所定の位置、例えば、「曲率半径の中心点」に、「焦点」を結んで、その「焦点」から、再び、広がっていくような、一旦、「集光」し、その後、「発散」する「光」を用いる。
そのために、例えば、適宜な焦点距離を持つ、凸レンズを、一つ、乃至は、二つ以上、含む光学系を用い、この凸レンズの「焦点」から広がる「光波」を、「点状光源」から広がる「光波」に、「合致する光波」、もしくは、「類似する光波」とする。
以上の説明においては、「うねり」を、上記した「球冠(もしくは、球欠)」と見做していたが、例えば、その「うねり」が、「半円柱状」であった場合には、上記の凸レンズに替えて、「シリンドリカルレンズ」を用いることとなる。
本発明のホログラムシートは、上記のごとく、新規な「ホログラム記録」を施しており、その「うねり」の「曲率半径の中心点」に配置する「点状光源」を発光させると、その発光した「光」が、好適な「照明光」となり、その「曲面形状ホログラム形成層」を照明して、「曲面形状ホログラム形成層」を透過し、その透過光が、その「曲面形状ホログラム形成層」内の「曲面形状ホログラム」に基づく、鮮明な「曲面形状ホログラム再生像」となって結像する。
そのような再生方法によるホログラム再生を実現するため、「曲面形状ホログラム」である「レリーフホログラム」、及び、「曲面形状ホログラム」である「体積ホログラム」の何れにも、少なくとも、一つ以上の「透過型ホログラム」を含むませる。
すなわち、「曲面形状ホログラム」が「レリーフホログラム」である場合には、「透過型レリーフホログラム」を、もしくは、「曲面形状ホログラム」が「体積ホログラム」である場合には、「透過型体積ホログラム」を、それぞれ、一つ以上、記録する。
本発明のホログラムシートは、上記したように、新規な構成を持ち、さらには、新規なホログラム記録方法を用いるため、同一のものを偽造することは実質的に不可能である。
また、「曲面形状ホログラム形成層」を、適宜な「透明な樹脂」で覆うことにより(適宜な厚さの保護層を、適宜な方法で設けるという意味。)、
その「うねり」の形、すなわち、「所定の曲面C1」や、「所定の曲面C2」の「三次元的な曲面形状」を、外観からはもちろん、再生したホログラム再生像を解析しても、判読することを実質的に不可能とすることができ、好適である。(ホログラムシートを『破壊』して分析しても、その解明は困難である。)
本発明のホログラムシートに用いる、「シート状薄膜光源層」は、その「曲面形状ホログラム形成層」の形成領域の全面に対応するように設けてもよいし、「曲面形状ホログラム形成層」の形成領域の一部のみに対応するように設けてもよい。
但し、「シート状薄膜光源層」の中に設けた「点状光源」の数や、配置を秘匿しやすくするために、好ましくは、その全面に設ける。
また、「点状光源」は、「曲面形状ホログラム形成層」の全ての「うねり」に、一対一に対応して設けることが原則であるが、敢えて、対応する点状光源の無い「うねり」を設けたり、一つの「うねり」に複数の点状光源を対応させて、その意匠性や、偽造防止性を高めることも好適である。
但し、一つの「点状光源」が、複数の「うねり」に対応するように構成することは、上記した目的から、不適当である。
また、本発明のホログラムシートにおいては、非常に近接した、その背面から、シート状薄膜光源層の中の点状光源の発光による照明を受けることができることから、「一般的な照明」(数十cmから数m程度の距離を持って『ホログラム形成層』を照明することになるため、その『照明強度』が距離の二乗に反比例して減衰して、『ホログラム形成層』面上では、著しく弱い照明となっている。)とは異なり、照明強度がほとんど減衰することなく、直接的に、「曲面形状ホログラム形成層」を照明できることから、「ホログラムレリーフ」界面を形成する2つの「層(空気層も含む。)」の「屈折率差(△n)」や、「体積ホログラムの記録」として発生する層内の「屈折率差(△n)」は、非常に僅かな差でよく、その屈折率差(△n)は、0.001〜0.05、特には、0.001〜0.01であれば十分であり(その照明時の曲面形状ホログラム再生像の鮮明性が十分となるという意味。)、その△nが小さいことから、通常照明光下で「ホログラム」の存在を秘匿し易くしたり、「体積ホログラム」としては実用化に不向きであるとされている体積ホログラム用材料、例えば、ニオブ酸リチウム系等のフォトリフラクティブ結晶等を、真正性判定用に用いることも可能とする。
このような「透過型」の「曲面形状ホログラム」は、ホログラムシートに対する通常の照明である、太陽光や、室内蛍光灯による、「観察者側からの照明」(ホログラムシートに対して、『観察する側』と、『同じ側』からの照明と言う意味。)だけでは、その曲面形状ホログラム形成層に基づく透過型の曲面形状ホログラム再生像は、ほとんど視認できず、ホログラムの存在を秘匿可能となり好適である。(敢えて、反射型レリーフホログラムや、反射型体積ホログラム、いわゆる、リップマンホログラムを記録していた場合には、そのリップマンホログラムのみを視認することとなる。)
さらには、その「体積ホログラム形成層」のその一方の表面を「鏡面仕上げ」(いわゆる、『光学的な鏡面』にするという意味。)して、その表面が、一般的な「室内照明光」である「蛍光灯」などの照明光(体積ホログラムの再生を目的としない照明光と言う意味。)を「鏡面反射」して、その背後にある「曲面形状ホログラム」を秘匿することを助長するものとしてもよい(このような『鏡面反射光』をその『鏡面反射角度方向』にて観察すると、その照明光を直視したごとく『眩しい光』を観察することとなる。室内照明光が複数存在すると、このような鏡面反射光が多数存在することとなる。)。
また、「曲面形状ホログラム」である「透過型」の「体積ホログラム」の、この秘匿効果をさらに高めるため、その「体積ホログラム形成層」の最表面を、「平坦化」ではなく、「粗面(平均表面粗さRaで、0.1〜3.0μm。)」とすることも好適である。
この場合の「体積ホログラム再生像」は、この「粗面」を設けた「表面」の「手前の空間領域(実際には、『層』の内部。)」における「干渉現象」によって出現しているものであるため(体積ホログラム再生像を結像するための『干渉』が、既に『完結』しているという意味。)、このような「粗面」、すなわち、その「粗面による散乱現象」は、体積ホログラム再生像の鮮明性に対して、あまり影響しない。
また、本発明の「ホログラム付きカード」は、「カード基材」に、本発明の「ホログラムシート」が埋め込まれ、その「ホログラムシート」の露出面が、その「カード基材」の表面と面一、または、その「カード基材」の表面から凹んだ位置にある。
一例としては、「厚さ12μmの『シート基材』、厚さ5μmの『シート状薄膜光源層』、『うねり』を含めた厚さ13μmの『曲面形状ホログラム形成層』(最大厚さが13μmと言う意味。)からなる、総厚さ30μmのホログラムシート(積層体)」(『シート基材』側を、カード基材の表面に接するように配置する。)であって、総厚さ30μm、幅10mm、長さ30mmの「ストリップ」(『小片』という意味。幅10mm×長さ30mm×高さ30μmの非常に薄い略直方体形状をなす。)を、クレジットカードサイズで、厚さ760μmの軟質塩化ビニルシート等からなる「カード基材」の表面の中央部に置き、この「カード基材」を、常温→150度→常温の加熱サイクル(1サイクル30分〜90分。)により、且つ、「二枚の表面鏡面仕上げステンレス板」に挟んだ平板加圧状態で、1.0MPa(メガパスカル。N/平方ミリメートル)の圧力を掛けつづけて、そのストリップの全厚さを、その760μmの軟質塩化ビニルシート内に埋め込むことをいう。
また、「シート状薄膜光源層」に対して、必要に応じ、「陽極」及び「陰極」のそれぞれに電圧を付加するための陽極端子〈リード部分をいう。以下同様。〉及び陰極端子〈リード部分をいう。以下同様。〉を、カード基材表面に露出するように配置しておくこと、及び、埋め込みによって、「シート状薄膜光源層」の「陽極」及び「陰極」と、外部電極、もしくは、内部電極からの陽極端子及び陰極端子が導通するように、その「陽極」及び「陰極」にもそれぞれリード部分を設けた上、それらが接合するように、適宜、処理する場合があるが、それらの詳細については、省略する。また、このホログラムシートの裏面、すなわち、「シート基材」の露出面に、厚さ1μmの接着層を設けておいてもよい。さらには、「シート基材」のみを剥離した「ホログラムシート」を、「カード基材」に埋め込んでも良く、その際、適宜な接着層を付加してもよい。
ここで、その「埋め込み」後のカード基材表面を、触針式表面粗さ計を用いて、埋め込んだ部分の境界領域を測定し、その境界における段差が、1.0μm以下である状態が「面一」となっている状態である。
また、本発明のホログラムシートの最表面の「うねり」の形を維持するため、適宜な仮保護層、すなわち、一方の面が平坦な面であって、他方の面が「うねり」の「逆曲面」となっている(微細凹凸を含む『うねり』と、『逆曲面』が『鏡像』関係となっているという意味。重ねると『一体』となる。)と、同時に、「剥離性」を持つ「仮接着性」の「層」を、一旦、ホログラムシートの最表面にラミネートしておき、上記の「平板加圧」後に、剥離する工程として、その仮保護層の厚さだけ、凹ませてもよい。
具体的には、上記のストリップに、さらに、一方の面を「うねり」の逆曲面(レリーフ複製技術を適用して作成する。)とし、剥離性を有する、最小厚さが、10μm厚さである「シリコン樹脂層」(これが、仮保護層である。)を積層した、「4層積層体」とし、上記と同様にして、カード基材内に埋め込んだ後、その「シリコン樹脂層」を剥離することで、そのストリップの最表面が、カード基材表面より、10μmの深さだけ、「凹んだ」状態とすることができる。
すなわち、上記した触針式表面粗さ計を用いて、凹んだ部分の段差を測定し、その段差が、10μmである状態が、「カード基材表面から10μm凹んだ」状態である。
この「凹み」は、クレジットカード形状の「カード基材」においては、1.0μm〜30μmとすることが望ましい。この凹みが1.0μm未満であると、凹ませた効果が無くなり、30μmを超えると、この段差の引っ掛かりが、ホログラム付きカードのハンドリングに支障をきたす。
この凹みは、カード基材厚さに対して、1/10以下とし、望ましくは、1/20以下とする。また、凹みのサイズよりもストリップのサイズが小さい場合には、凹みとストリップの間に「隙間」が生じるが、この「隙間の幅」は、その偽造防止性を考慮して、「爪先」や「金属へら」を挿入し難い大きさ、すなわち、5.0mm幅以下、望ましくは、1.0mm以下とする。
さらに、上記のストリップをそのカード基材内に埋め込むために、予め、カード基材表面に、深さ33μm、幅11mm、長さ31mmの凹みを設けておき(プラスチック等であれは、その成形加工時に「凹み」を設けても良いし、カード基材表面を切削加工などにより削り込んで、凹みを設けてもよい。)、その凹みに、上記したストリップを入れて固定することも、その製造安定性から好適である。この場合には、上記したような、高温加熱や、高圧プレスの必要がないため、上記のストリップ内の「シート基材」、「シート状薄膜光源層」、「曲面形状ホログラム形成層」に対する変形や歪みが発生し難く、陽極端子や陰極端子としてのリード部分の破断(断線を意味する。)等の不具合を発生させることなく、確実に設けることができるという利点がある。(その凹みの深さ調整により、面一とすることも可能である。)
但し、偽造や変造を防止する観点からは、加熱及び加圧により「カード基材」に埋め込む方式が望ましい。
また、カード基材の形状も、あらゆる形状、すなわち、シート状、フィルム状、板状、立方体状、直方体状、カード状、タグ状(ラベル形状も含む。)、はがき状、伝票状、封筒状、円盤状、楕円体状、球体状、棒状、及びこれらの組み合わせや、これらに変形、切断、穴あけ、接着等の加工処理を施したものなどを採用することができる。
その厚さも、ハンドリング可能であればよく、特に制限はないが、通常、3.0μm〜3.0mmの厚さとする。もちろん、封筒状や、箱状のものであれば、その立体形状の寸法は、それぞれの用途に適したものとするため、この範囲内とする必要はない。
これらカード基材の代表例としては、いわゆる「プリペイドカード」として用いられているカード基材及び形状や、「プラスチックカード」として用いられているカード基材及び形状、特に、JIS規格やISO規格で定められているものがある。すなわち、その「埋め込み適正」及び「汎用性」(加工汎用性を含む。)から、「JIS規格やISO規格で定められている『プラスチックカード』として用いられているカード基材及び形状」が最も望ましい。
これらは、既に、全世界に大量に頒布され、普及しているため、そのハンドリングや、保持することに抵抗感がなく、また、それらを携帯したり、使用したりする場合の周辺機器や、関連グッズ等も既に普及しているため、これらのものへの適用もスムースであって好適である。
そして、本発明のホログラム付きICカードは、「IC駆動用電池を内臓している電池内臓型ICカード基材」を用い、且つ、その場合には、そのIC駆動用電池が、本発明のホログラムシートを発光する発光用電源をも兼ねる。
すなわち、その「カード基材」には、少なくとも「セキュアマイコン」を内蔵する「接触式ICカード」、もしくは、少なくとも「非接触式ICチップ」を内蔵する「非接触式ICカード」を用いる。
それらの「カード基材」には、接触式ICカードについては、ISO/IEC 7816や、JIS X 6300に準拠したものを用いることができ、また、非接触式ICカードについては、ISO/IEC 14443(通信距離に応じて「密着型」、「近接型」、「近傍型」、または、「遠隔型」の4種類に区別され、さらに近接型は「Type A」、または、「Type B」に分類される。)やJIS X 6321〜6323に準拠したものを用いることができる。これらの「カード基材」は、上記したと同様の理由により好適である。
そして、本発明のホログラム付きICカードは、これらの「カード基材」を用いた上で、さらに、それらの「セキュアマイコン」や「非接触式ICチップ」を駆動する、一次電池、または、二次電池からなる「IC駆動用電池」をも内蔵していて、さらに、その「IC駆動用電池」が、そのICカード基材に埋め込まれた「ホログラムシート」(電源を要するタイプの『シート状薄膜発光層』を用いた場合。)を発光させる発光用電源を兼ねるものである。
また、本発明のホログラム付きICカードは、「セキュアマイコンまたは非接触式ICチップ等を制御する『制御部』」や、「液晶ディスプレイなどの『表示部』」をさらに含むことができ、その場合には、これらの「電池」は、その「『制御部』」や『表示部』」を駆動するための電源として用いられることとなる。
さらに、本発明のホログラム付きICカードには、これら「内蔵」する「電池」に加えて、「太陽電池と、その太陽電池で生成された電気エネルギーを蓄電するコンデンサとにより構成される(補助)電源」を、その「カード基材」に含めることもできる。
また、「ON/OFF切り替えスイッチ」をも内蔵することができ、この場合には、この「スイッチ」により、本発明のホログラムシートを発光させたり、消光させたりすることが可能となる。
以下の説明においては、「本発明の『ホログラムシート』に用いられる『シート状薄膜光源層』」として、「シート状薄膜EL(エレクトロルミネッセンス)層」を例にとり、且つ、「本発明の『ホログラムシート』に用いられる『曲面形状ホログラム形成層』、及び、『曲面形状ホログラム』」として、「曲面支持層と体積ホログラム形成層の2層からなる、曲面形状ホログラム形成層」、及び、「曲面形状を成すホログラムである体積ホログラム」を例にとり、説明する。また、「シート基材」も、「透明基材」を例にとり説明する。
以下の説明は、「シート状薄膜光源層」の他の例である、「シート状薄膜蛍光層」、「シート状薄膜LED層」、「シート状薄膜ディスクレーザー層」、「シート状薄膜面発光レーザー層」や、「シート状薄膜応力発光層」においても、同様に適用できることは言うまでもない(もちろん、『発光』させる原理や構造は、異なったものとなる。)。
もちろん、
「本発明の『ホログラムシート』に用いられる『曲面形状ホログラム形成層』、及び、『曲面形状ホログラム』」として、「その一方の面が所定の曲面C1を有し、他方の面が平面を成しており、その所定の曲面C1の表面に、曲面形状を成すホログラムであるレリーフホログラムのホログラムレリーフが設けられている、曲面形状ホログラム形成層」、及び、「曲面形状を成すホログラムであるレリーフホログラム」とする場合においても、同様に適用できる(この際、『曲面形状ホログラム形成層』の構成や作製方法は、異なったものとなる。)。
上記した「曲面支持層」には、透明性を有する、アクリル樹脂やポリカーネート樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、さらには、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂、その他の電離放射線硬化性樹脂を用いることができ、その形成方法も、射出成型方法等の種々の成形方法、フォトポリマー法等のレリーフ複製方法、さらには、乾式及び湿式エッチング方法等を用いることができ、その一方の面を「所定の曲面C2」とすることができる。
同様に、「曲面形状を成すホログラムであるレリーフホログラムのホログラムレリーフが設けられている、曲面形状ホログラム形成層」にも、同様の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、さらには、電離放射線硬化性樹脂を用いて、「所定の曲面C1」を得ることができる。
この際、「所定の曲面C1」と、「光の干渉縞レベルの微細な凹凸形状」を、時間差を設けて、個別に設けるのでなく、「所定の曲面C1のうねり成分と、光の干渉れ別の微細な凹凸形状成分の両成分を有する、凹凸」を、所定の樹脂材料に複製して、その「曲面形状ホログラム形成層」とする。
そもそも、「エレクトロルミネッセンス」とは、電場のエネルギーによって、蛍光物質等が発光する現象であって、面光源を得ることが可能であり、大別して、有機エレクトロルミネッセンスと、無機エレクトロルミネッセンスとがある。
有機エレクトロルミネッセンスは、電流を流すと発光する性質を有する有機物質を用いた発光現象のことであり、ベースとなる層に有機物質を挟み込んだ構造をしている。
その層間に電流を流すことで、その有機物質の分子が励起され発光する仕組みとなっている。
代表的な層構成は、/陽極(透明導電層)/ホール輸送層/有機物質層/電子輸送層/陰極(導電性反射層)からなり、陽極側から発光した光が出る。
すなわち、薄膜で形成された有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極(陰極層)から電子輸送層を経て有機物質層に到達した電子と、陽極からホール輸送層を経て有機物質層に到達した正孔とを再結合させることにより生じた励起子(エキシトン)によって発光する。
つまり、その再結合の際に発生するエネルギーにより有機物質の分子等を励起し、励起状態から、再び、基底状態へ戻るときに、蛍光(燐光を含む。)発光等が起こる。
蛍光発光の原理は、図1に示すジャブロンスキー図にあるように、その有機物質(複数の物質の複合系を含む。)の分子等の基底状態(S0:一重項状態)からエネルギー吸収によって第一(S1)、第二(S2)、第三励起状態(S3)・・・のどれかの振動状態に励起された有機物質の分子等が、無放射過程で非常に速やかに緩和してS1の電子励起状態に移るか、あるいは項間交差によって三重項状態(T1、T2)へ移る。
S1の最低振動状態になった蛍光体は、無放射過程によるか蛍光を発して基底状態に戻り、三重項状態になった分子は、無放射過程によるか、燐光を発して基底状態に戻る。
励起しても光に上手く利用できないエネルギーは無放射失活(熱失活)する。
一重項同士の遷移は瞬間的に起こるため、蛍光の半減期は10-4sec以下と短いものである。遷移に要する時間は、10-15secで励起が起こり、その後10-9〜10-7secで蛍光発光が起こるとされている。
一方、三重項から一重項への遷移はスピン変化禁止により禁制遷移となり自発的放出が起こりにくいので、燐光の半減期は大きく、秒単位のものもある。もちろん、蓄光タイプのものは、それ以上の時間、発光を維持している。
基底状態に戻る際に光を発するか否か、光の強度が強いか弱いか、蛍光寿命が長いか短いかは、その有機物質の分子等の分子構造や分子等の置かれた環境に大きく依存する。
有機物質の分子等の放出光の波長分布を発光スペクトルといい、発光スペクトルは発光の波長に対し相対的な発光強度をプロットして作成される。発光スペクトルに示される波長(エネルギー)は一次励起状態の最低振動エネルギー準位から基底状態の優先的な振動エネルギー準位までのエネルギー差と等しくなる。
無機エレクトロルミネッセンスとは、物質に電界を印加したときに発光する物理現象であり、その機構は、固体である無機化合物の蛍光体(発光層)に電圧を印加するとその固体内にあらかじめ存在する電子、あるいは電極から注入された電子が高電界によって加速され、発光中心に衝突してこれを励起し、そのとき生じた電子と正孔が再結合することによって発光するというものである。外部から電流によって注入された電子と正孔の再結合によって発光する有機ELとは、励起の点で異なる。
すなわち、薄膜で形成された無機エレクトロルミネッセンス素子は、二重絶縁構造を有しており、この構造に電界を印加することにより発光が起こる。
発光層の構成形態から「分散型」と「薄膜型」の2種類に分けられ、分散型は、強誘電体粉末を有機バインダーに分散させた絶縁層と蛍光体粉末を有機バインダーに分散させた発光層とを積層させて、透明電極と背面電極で挟んだ構造であり、その代表的な構成は、/透明電極/絶縁層/発光層/背面電極/、若しくは、/透明電極/絶縁層/発光層/絶縁層/背面電極/である。
薄膜型は、薄膜電極付き基板上に薄膜蛍光体からなる発光層と絶縁層を積層させ、電極を付けた構造であって、スパッタリング法や真空蒸着法等の薄膜形成方法を用いて層を形成する。その代表的な構成は、分散型と同様である。
いずれも、透明電極側から、発光した光が出る。
本発明は、従来のホログラムの再生方法、すなわち、ホログラムに対して、その上方、数十cm〜数mに離間して配置した照明光源からの照明光を当て(その離間距離が大きければ大きいほど、その照明光が、いわゆる『理想的な照明光である平行光』に近づく。)、例えば、ホログラムレリーフ形成層面での反射光の干渉現象によって、その照明光の波長のレリーフホログラムを再生するものなどとは異なり、電圧を印加する等によって、エレクトロルミネッセンス素子等が発光し、その発光した光が、「点状光源」からの「球面波」、さらには、「指向性を帯びた光の波」となって、上記した「曲面形状」の「体積ホログラム形成層」を照明し、且つ、通過した結果、干渉現象を生じて、その発光した光の波長における「球面形状ホログラム再生像」である「体積ホログラム再生像」を再生するものである。
例えば、透明でほとんど何も見えない空間に(『透過型体積ホログラム』は、反射光に対しては、『ホログラム』を再生しない。)、電圧印加等によって初めて、例えば「『緑色』のホログラム」(発光した所定波長が『緑色』に該当し、且つ、体積ホログラムの再生波長も『緑色』に該当する場合。)を視認することができるため、観察者の目には、あたかも、通常のホログラム再生に用いられる「緑色の照明光源」の無いところに、ホログラムシートの一部(点状光源が配置されている箇所。)が強く発光すると同時に、その光によるホログラム再生像が強く光輝き、そのホログラム再生像は、空中に浮いているように見え、意外性(偽造防止性)のみならず、意匠性にも優れるものとなる。
そして、本発明は、このような原理によって、ホログラム再生像を再生(結像)させるものであるから、本発明のホログラムシートにおける、「体積ホログラム形成層」に記録するホログラム画像は、「透過参照光によって再生(結像)されるホログラム画像」、すなわち、「体積ホログラム形成層が、透過型ホログラム再生像を再生するもの」となるようにする(具体的には、ホログラム記録時の参照光と物体光の配置や、いわゆる『CGH』における『干渉縞』の設計、そして、その記録により、一義的に決まる。このことによっても、体積ホログラム形成層による、『反射型』の『ホログラム再生像』が出現し難く設計されている。)。
これは、この体積ホログラム形成層の照明光として「この体積ホログラム形成層を透過する光(その照明光をホログラムシートを通して観察するという意味。)」を受けると鮮明なホログラム再生像<透過型ホログラム再生像>を出現するが、照明光によって「この体積ホログラム形成層から反射する光」を受けるようにしても(その照明光側から観察し、照明光がホログラムシートで反射された、その『反射光』を観察するという意味。)、何らのホログラム再生像<反射型ホログラム再生像>を出現しないことを意味する。
さらに、ホログラムを再生可能な電源端子(陽極端子と、陰極端子。複数設けてもよいし、ダミー端子を設けることで、その偽造防止性を高めることが出来る。)がどの部分に形成されているか判別しにくくして、その構造を知りうる者のみがホログラム再生を果たすことができるよう設けて、真正性判定用に有用なものとすることができる。もしくは、発光した光の波長を知りうる者のみがホログラム再生像の色調を予測でき、その再生波長に調整した、別に準備した「バンドパスフィルター」を通して覗いて、その「バンドパスフィルター」を通過できるホログラムのみ(そのホログラム再生像が、このフィルターを通過可能な波長を有しているという意味。)が、真正であると判定することもできる。
また、この「バンドパスフィルター」を通過する角度(回折角度。このフィルターに向かう方向という意味。)も、その発光波長に依存し、やはり、その「値」を知りうる者のみが、その所定の角度で判定を行うことができる。
さらに、薄膜で形成されたエレクトロルミネッセンス素子を複数含めることにより(発光波長の異なる素子を複数含めるという意味。)、この再生像は複数の角度に異なる色調で現れることになり、意匠性の面でも、真正性判定の面でもより優れたものとすることができる。
もちろん、エレクトロルミネッセンス素子は、その印加する電圧によっても、発光スペクトルが大きく異なり(印加電圧依存性があるという意味。)、また個々の素子独特の発光特性を有するため、真正性判定に使用する印加電圧(電圧強度や、周波数等。)を知りえない偽造者が、真正品と全く同一のホログラムシートを作製しようとしても、物理的に不可能と言える。
有機エレクトロルミネッセンス素子の構造は、具体的には、発光層となる有機薄膜を陰極と陽極で挟んだ単層構造のものや、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有する構造のもの、陰極と発光層との間に電子輸送層を有するもの、発光層部分を電子輸送層、発光層、正孔輸送層の3層構造とするもの、さらには必要に応じて多層化した構造のもの等を用いることができる。
これらの陽極と陰極で挟んだ層は、すべて有機薄膜(固体)で構成されており、各層の厚さは、10〜100nmである。
10nm未満では、各層の機能を十分発揮できず、また、100nmあれば、各層の機能を達成するためには十分であり、それより厚くすることによる不要な表面の平面性劣化を避けるため、100nm以下とする。
発光層は、主材料(ホスト材料)と不純物材料(ドーパント材料:発光強度向上等の機能向上のために添加される。)との2成分系であり、発光する不純物材料は、0.1〜30%添加で主材料中に均一に分散されている。
0.1%以下では、発光性が不十分であり、30%を超えると、その不純物性(特異点としての存在性)が薄れ、かえって発光性が低下し始める。
陽極には、透明導電性薄膜と称される、透明性と導電性をあわせもつITO薄膜(インジウム・スズ酸化物薄膜)、錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛などの金属酸化物、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造、ポリアニリン、ポリピロールなどの共役系高分子などが挙げられる。
形成方法は、薄膜形成方法、すなわち、スパッタリング法や、真空蒸着法等を用いて、厚さ50〜500nmで形成する。以上の配慮から、透明導電性薄膜の表面抵抗値は、0.001Ω/□〜0.1Ω/□とする。
形成方法として、印刷法等も用いることが可能であるが、体積ホログラム再生像に不要なムラを生じないためには、この層の膜厚さが、薄く、且つ、高い精度で均一である必要があり(さらには、その表面を『光学的な鏡面』とするため。)、上記した薄膜形成方法が望ましい。
以上を配慮して、その膜厚さは、50nm〜500nmとする。
陰極には、アルミニウム、金、銀、白金、銅、鉄、銀・マグネシウム合金等の金属薄膜や、グラファイトなどを厚さ、50〜500nmで形成する。
50nm未満では、その導電性が不十分であり、500nmを超えると、やはり、その表面(界面)に不要なムラを生じ易くなる。
さらに、その薄膜形成時の加熱負荷により、透明基材の劣化を生じて、その結果として、体積ホログラム再生像に不要なムラを生じ易くなる。
金属薄膜はその反射性が高いことから、エレクトロルミネッセンス発光の効率を向上する効果を持つ。もちろん、この金属薄膜に網点状等の穴を設け、透明性を付加することもできるし、金属薄膜の代わりに、透明導電性薄膜を陽極と同様に形成してもよい。
発光層である有機薄膜には、低分子系と高分子系とを用いることができる。
低分子系には、正孔輸送材料として、TPAC(1,1−ビス[4-[N,N―ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン)、TPD(N,N´―ジフェニル−N,N´―ジ(m―トリル)ベンジジン)、CuPc(フタロシアニン銅)、α―NPD(4,4´―ビス[フェニル(1−ナフチル)アミノ]−1,1´ビフェニール等、
電子輸送材料として、BND(2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4− オキサジアゾール)、PBD(2−(ターシャリー−ブチルフェニル)―5― (4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、Butyl−PBD(2−ビフェニル−5−(パラ−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、TAZ(1−フェニル−2−ビフェニル−5−パラ−tert−ブチルフェニル−1,3,4−トリアゾール)、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、Beq2(ビス(8−ヒドロキシ−キノリノ)ベリリウム)、Zn(BOZ)2(亜鉛−ビス−ベンゾキサゾール)、Zn(BTZ)2(亜鉛−ビス−ベンゾチアゾール)、Eu(DBM)3(Phen)(トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオノ)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)等、発光層材料として、ZnPBO(ビス[2−(2−ベンゾキサゾリル)フェノラト]亜鉛)等、ドーピング色素材料として、Coumarin6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)コーマリン、QN−(N,N´−ジメチルキナクリドン)、ナイルレッド、ベリレンラブレン、TBP(1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン)キナクリドン等、その他、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(4−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、4,4'−ビス(9−カルバゾリル)ビフェニル等を用いることができる。
これらの低分子系材料は、真空蒸着法、CVD法(化学蒸着法)等の薄膜形成法により設けることができる。
高分子系には、発光層材料として、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)系、PAT(ポリチオフェン)系、PF(ポリフルオレン)系、PPP系(ポリパラフェニレン)等、
正孔層材料として、PEDOT(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン)+PSS(ポリスチレンスルホン酸:ドーパント)共重合体、PEDOT+PVS(ポリビニルスルホン酸)共重合体、ポリアニリン+PSS共重合体、ポリピロール+PSS共重合体等、を用いることができる。
これらの高分子系材料は、各種のコーティング法や、印刷法により設けることができる。印加直流電圧は、1〜10Vである。
無機エレクトロルミネッセンス素子の構造は、基本構造として、透明電極、絶縁層、発光層、背面電極を積層したものであり、発光は、発光層である蛍光体膜から出る。蛍光体は、薄膜型の場合、誘電性のある母体材料に、発光中心となる微量の添加不純物を混ぜたもので、エネルギーを受けることで、その発光中心物質の外殻軌道または高い順位に移動(励起)した、発光中心物質の持つ電子が、元の順位に戻る(遷移)ときに、発光を生じる。
発光層である蛍光体の膜を、絶縁層である誘電体で挟み込み、その両端に電極を配した構造は、コンデンサを3個直列に接続した回路と考えることができ、ここに、交流電圧をかけると、誘電体と蛍光体の中で分極が生じ、印加電圧を上げ、蛍光体の膜にかかる電界が、100MV/m以上となると、発光中心が電界で加速された電子等の衝突のエネルギーを受け取り、励起されるようになる。
発光層としては、母体にZnSや、SrSなどのII族硫化物を用い、発光中心にMnや希土類を添加したもの、母体にBaAL24(バリウム・アルミニウム複合硫化物)を用い、発光中心にEuを添加したもの、等が用いられる。
発光層には、周期表の第2族元素と第16族元素とから成る群から選ばれる少なくとも1種の元素及び/又は周期表の第13族元素と第15族元素とから成る群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む半導体を好ましく用いることができる。
そのキャリア密度は、1017/cm3以下であることが好ましい。
発光層を形成する物質の具体例をさらに挙げると、CdS,CdSe,CdTe,ZnSe,ZnTe,CaS,MgS,GaP,GaAs,GaN,InP,InAs及びそれらの混晶などが挙げられるが、ZnSe,CaSなどを好ましく用いることができる。
さらに、BaAl24、CaGa24、Ga23、Zn2SiO4、Zn2GaO4、ZnGa24,ZnGeO3,ZnGeO4,ZnAl24,CaGa24,CaGeO3,Ca2Ge27,CaO,Ga23,GeO2,SrAl24,SrGa24,SrP27,MgGa24,Mg2GeO4,MgGeO3,BaAl24,Ga2Ge27,BeGa24,Y2SiO5,Y2GeO5,Y2Ge27,Y4GeO8,Y23、Y22S,SnO2及びそれらの混晶などを好ましく用いることができる。
キャリア密度等は、一般に用いられるホール効果測定法などで求めることができる。
絶縁層である誘電体膜としては、金属酸化物、窒化物が用いられる。BaTiO3などのペロブスカイト系酸化物は高い誘電率を持ち好適である。
酸化物に含むことができる元素としては、周期表の第2族、3族、9族、12族(旧2B族(旧IIb族))、13族(旧3B族(旧III族))、14族(旧4B族(旧IV族))、第15族、第16族の元素が好ましく、第12族、第13族及び第14族の元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことがより好ましい。具体的にはGa、In、Sn、Zn、Al、Sc、Y、La、Si、Ge、Mg、Ca、Sr、Rh、Ir等を挙げることができ、より好ましくは、Ga,In,Sn,Zn,Si,Ge等である。またこれらの元素以外に透明半導体が、S、Se、Te等のカルコゲナイドやCu、Ag等を好ましく含むことができる。
絶縁層と発光層の層厚さは、0.1μm〜2μmとする。もちろん、2μmを超えて10μm程度の厚さとすることで、発光の性能をより向上させることができるが、表面(界面)の不要なムラや、体積ホログラム再生像に不要なムラを生じさせないためには、2μmが限界である。
透明電極、背面電極は、有機エレクトロルミネッセンス素子と同様に、ITOや、金属薄膜が好適に用いられる。
異なる発光色の蛍光体膜を交互に並置して、多色とすることもできるが、輝度の高い1色の発光体膜の上に、色変換材料(クマリン系:クマリン6、ローダミン系:ローダミン6G、ローダミンB等の蛍光色素の混合物や、2種以上のベンゾ−α−ビロン骨格を持つ蛍光色素の混合物等、波長350nm〜600nmの光を吸収して、波長600nm以上の可視領域に発光極大を有する光を放出する等。)を重ねて多色とすることも好適である。
印加電圧としては、100V・50〜1000Hzの交流電源等を用いることができる。
そして、これらの「エレクトロルミネッセンス素子」を構成する、陽極、陰極、及び、発光層その他、その「発光に機能する層」の、少なくとも、「一層」に対して、「部分形成手段」を用いて、「パターニング処理」を施し、「シート状薄膜光源層」の中に「点状光源」を構成する。
例えば、「陰極」の一例である「金属薄膜層」に対して、金属薄膜全面形成後に、フォトレジストを用いた湿式エッチング法により、線幅2μmで、縦方向及び横方向の間隔が50μmのメッシュ状(格子線)部分と、そのメッシュの格子点(縦線と横線が交差する位置。)に、直径10μmの円形部分を有する、「パターニング金属薄膜層」となる「陰極」を設け、その他の構成層は全面形成して「エレクトロルミネッセンス素子」とすることで、その「(全面形成)陽極」と「(部分形成パターニング)陰極」に所定の電圧を印加した際、「エレクトロルミネッセンス素子」の中の、その直径10μmの円形部分に対応する領域のみが「発光」し、それ以外の領域は発光しない「エレクトロルミネッセンス素子」とすることができる。(実際には、格子線の領域も発光するが、線幅が非常に狭いため、目視認識には至らない。)
すなわち、この「直径10μmの円形部分に対応する領域」、言い換えれば、「その領域に該当するエレクトロルミネッセンス素子構成部分」が、本発明の「ホログラムシート」の「シート状薄膜光源層」における「点状光源」となり、このような「エレクトロルミネッセンス素子」が、本発明の「ホログラムシート」における「所定の波長の光を発する点状光源を有するシート状薄膜光源層」となって、その個々の「点状光源」から発する「球面波」状の光波が、「曲面形状ホログラム形成層」の各々の「点状光源」に対応する「うねり」に向かって拡がり、その「うねり」に記録されている「曲面形状ホログラム」を照明することとなる。
上記した「部分形成手段」としては、薄膜形成手段における「マスキング方法(マスキング蒸着法など。)」や、薄膜全面形成後のドライエッチング方法、及び、湿式エッチング方法など、または、発光層等形成手段である、コーティング手段等における、パターニング方法(スクリーン印刷方法や転写形成方法など。)を用いることができる。
もちろん、その「点状光源」の配置は、「曲面形状ホログラム形成層」の個々の「うねり」に対応した配置とするが、具体的には、10μm〜300μm周期の、一次元格子状配置、二次元格子状配置(周期的配置。メッシュ形状が、三角形〜八角形等の多角形、同心円形など。)であったり、敢えて、ランダムな不規則配置とする。
そして、上記したような「電極の部分形成」の場合には、「点状光源」間の「導通(電気的接続状態)」が必須となるが、「電極」以外の「層」、例えば、「発光層」等は、互いに離間して部分形成してよい。(部分形成領域間の接続等の『連続性』は不要という意味。)
次に、ホログラフィの原理について説明する。
物体がコヒーレント光で照明され,物体から回折された光が記録媒体(フォトポリマー等。)を照明しているとした場合、物体から回折されて記録面に到達した波面を物体波は、
F(x,y)=A(x,y)EXP[φ(x,y)]
であらわされる。ここで、
A(x,y) は物体波の振幅分布とし、
φ(x,y) は位相分布とする。
このとき、記録媒体には、記録媒体に到達する光波の強度分布が記録される。その強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)|2=A2(x,y) (1)
となり、位相分布は記録されない。
ここで,物体波にこれと干渉性のある光波(参照波という)を重ね合わせると,記録される光波の強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)+R(x,y)|2
=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+F(x,y)R*(x,y)+F*(x,y)R(x,y) (2)
となる.(*は複素共役項を表す。)
ただし,参照光が記録面に角度θで入射する平面波であるとすれば、
R(x,y)=r(x,y)EXP(2πiαx) (3)
と書け、
α = SIN(θ)/λ (4)
である。(2)の第1項と第2項はそれぞれ、物体波の強度と参照波の強度でいずれも位相情報は欠落している。第3項と第4項は干渉の項でそれぞれ
F(x,y)R*(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[i [φ(x,y)−2παx] ] (5)
F*(x,y)R(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[−i [φ(x,y)−2παx]] (6)
とあらわされ、物体の位相項 φ(x,y) が残っている。
(5)、(6)は互いに複素共役であり、(4.2)の第3項は物体の複素振幅分布を含んでいる。
(5)、(6)を(2)に代入すると、
I(x,y)=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+2A(x,y)r(x,y)COS [2παx−φ(x,y)] (7)
となる.物体波と参照波が干渉して干渉縞を形成していることがわかる。
このように、物体波に参照波を重ね合わせて干渉記録し、 物体の位相情報を欠落させずに記録する方法がホログラフィである。(7)を記録したものが「ホログラム」と呼ばれる。ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布 I(x,y)
比例し、
T(x,y)=τI(x,y) (8)
とかけるとする。このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてると、ホログラムを透過もしくは反射してきた波面は、
T(x,y)R(x,y)=τ(|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+τF(x,y)|R(x,y)|2
+τF*(x,y)R2(x,y) (9)
とあらわすことが出来る.この第2項は
τF(x,y)|R(x,y)|2
τA(x,y)r2(x,y)EXP[iφ(x,y)]] (10)
第3項は、
τF*(x,y)R2(x,y)=
τA(x,y)r2(x,y)EXP[−iφ(x,y)+2πiα] (11)
とかける。
このことから、(9)の第1項は、照明光と同じ方向にホログラムを突き抜ける光束もしくは正反射する光束であり、第2項は、(10)より、物体光に比例した振幅を持つ光波であることがわかり、第3項は、(11)より、物体波と共役な位相分布を持ち、2θの方向に伝播する光波であることがわかる。
このようにして,ホログラフィの技術を使うと複素振幅分布を記録して再生することが出来る。
本発明の場合は、ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布に比例し、(8)の式で表されてはいるものの、このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてるのではなく、「シート状薄膜光源層」からの「光」が、その「参照波」の「役割」を果たすこととなる(参照波とは、『同一』とならない場合においても、その『位置づけ』は同じという意味。)。
そして、この「光」に、(8)の T(x,y)を掛けたものが、ホログラム再生像となる。すなわち、(9)のR(x,y)が、この「光」に置き換わり、それに従った(10)や(11)が出現する。
従って、「参照光」にホログラムに記録された位相項を付与するという従来のホログラム再生の原理による場合が最も良好であるが、例え、その原理によらずとも、その「光」に、既にホログラムに記録されている位相項が付与されて進むものである。
従来のホログラム再生原理を、透過タイプについて、単純化して説明すると、参照光としての平行光をホログラムにあてた際、遮蔽部分では、平行光が遮蔽され、透過部分からのみその平行光を透過し、透過部分と遮蔽部分との境界において回折が起こり、物体の持つ位相項を受け取り、ホログラムを透過した成分全体が重ね合わさり、それがホログラム再生光となって観察者の目に届くものである。
本発明の場合は、上記した参照光としての平行光が存在せず、体積ホログラム形成層の極めて近傍(数μm〜数十μm。)に設けられた、「シート状薄膜光源層」からの、いわば(微小領域ではあるが)「平面発光面」での発光が、その極めて近傍にある「体積ホログラム形成層」を照明し、通過することで、その透過光が物体の位相項を保持して、その通過光同士の干渉現象により、ホログラム再生がなされるものである。
時間的且つ空間的コヒーレンス性を完全には持たない放射光(もしくは、通過光)同士の干渉効果は、レーザー光のような十分な干渉を生じないが、少なくとも、離間した距離からの低コヒーレント光でホログラムを照明した際と同様のレベルでホログラム再生が行われる。
また、「蛍光発光」のような「インコヒーレント光」を用いていても、その「発光」が「単波長」であって、且つ、その「光波」を「ピンホール」を通して「点光源化」することで「コヒーレンス性(干渉し易さを表す性質)」を得ることできることは、既に広く知られており、このことから、本発明の「ホログラムシート」の「シート状薄膜光源」においても、「単波長光(比較的半値幅の小さい発光とする。)」を「点状光源(点状とする領域を比較的小さくする。)」から発するように工夫することで、部分的に「コヒーレンス性」を獲得し、より鮮明なホログラム再生像の再生を可能とするものである。
以上のような原理による再生であるため、ホログラム撮影時の参照光は平行光であることが好ましく(複雑な参照光を再現し難いため。)、もしくは、「回折格子により表現されたホログラム」(回折格子は、物体光、参照光とも平行光である。)であることが好ましく、回折格子は、計算機ホログラム(CGH)等により形成したものが精密であり、好適である。
さらに、上記の理由から、ホログラム再生像をより鮮明にするためには、放射光に対して、時間的若しくは空間的なコヒーレンス性に関する特性を付与(付加)することが好ましく、例えば、発光体の発光する部分の厚さ(放射方向の距離)を薄いものとして、発光点の厚さ方向における「ばらつき」を小さいものとしたり、発光層その他の層を均一(層厚さを均一にしたり、均一分散や、均一組成とするなど、層内のムラをなくすこと。)にして、発光スペクトルの「ばらつき」や、発光スペクトルの「幅」を小さいものとすることが望ましい。
また、ホログラムを光学的に記録する際に使用する光の「主波長(参照光の波長。)」や、回折格子等を形成する際に想定する回折光の「主波長(照明光として想定した波長。)」と、エレクトロルミネッセンス素子からの発光波長を同一、乃至は、ほぼ同一(その差を数nm〜10nmとする。)とすることで、より鮮明なホログラム再生像を得ることができる。
もちろん、偽造防止性を高めるために、敢えて、発光する波長をホログラム記録時の波長と異ならせることも好適である。その場合は、再生波長が異なることによる、ホログラム再生像の変形や、回折角度の変化を理論的に予想し、あらかじめ確認しておくことが必須となる。
さらに、エレクトロルミネッセンス素子形成領域の部分的なばらつき、すなわち、形成場所による発光波長や、発光強度のばらつきは、ホログラム再生像の品質を劣化させるため、発光層の均一性は重要となる。
少なくとも、発光波長のピーク値の部分的なばらつき(ある点状光源領域と、それに隣接する点状光源領域との差など。)や半値幅のばらつきは、30nm以内、発光強度ばらつきは10%以内であることが好適である。発光波長のピーク値や、半値幅のバラツキが30nmを超えると、ホログラム再生像の再生位置のばらつきが発生し、ホログラム再生像がボケて不鮮明となる。また、発光強度のばらつきが10%を超えると、光の干渉にもばらつきが発生し、結果的に不鮮明な再生となる。
本発明のホログラムシートは、室内照明光や、自然光照明下では、ホログラム再生像があまり認識できず、電圧を印加した時のみ(『シート状薄膜光源層』を発光させた時のみ。)、突然、ホログラム再生像が出現し、まったく照明光のないところに、ホログラム再生像が浮き上がっているように観察される。
但し、陰極の金属層が高い反射性を有しているため(あくまで、『例示の一つとして』考慮した場合という意味。)、この層の反射により、鏡のような反射光が視認できることになる。そこで、陰極にも透明性を付与して、室内照明光や、自然光照明下では、ホログラムの存在を全く認識できないようにすることも、偽造防止性の向上や、意外性という意味での意匠性の向上に寄与する。
本発明のホログラムシートのホログラム再生像は、空間的なホログラムの位相を含んでいるとはいえ、その発光した光同士の時間的及び空間的なコヒーレント性は小さく、このホログラム再生像は、「レーザー光」で再生した体積ホログラムの再生像より光の強度が微弱(結像が弱いという意味。)であって、且つ、より不鮮明(同左。)となっている。
もちろん、いわゆる「ビーム形状」の回折光を観察するのみ(適宜な受光素子で受光する等。)であれば、その色調と回折方向を確認することは容易であり、そのままでも真正性の判定に差し支えないものの、この微弱、且つ、不鮮明なホログラム再生像を観察者が認識しその存在を正確に判定可能とするために、発光体の発光性能を向上させ、且つ、回折角度を大きくとって波長―回折角依存性を強め、0次回折光の角度と発光の回折角度の差を大きくし、さらには、発光層を薄くして、発光層厚さ方向のばらつきを抑え且つ均一なものとすることも好適である。
さらには、時間的なコヒーレント性をより強く発現するため、電圧の印加をパルス状とし、パルスとパルスの時間的間隔を蛍光等の発光時間である10-7sec以上あけて照明することも好適である。これにより、一つの印加パルスによって生じた一つの蛍光の発光面が、次の印加パルスによって生じた蛍光の発光面とは、互いに撹乱現象を起こさず、一つのパルスによって発現した一つの蛍光発光面によって生じるホログラフィックな干渉現象により、鮮明なホログラム再生像を観察することができるようになる。もちろん、単純に秒単位でON−OFFする電圧印加手法(手動でも可能なレベル。)を使用した場合でも、観察者には、連続して発光しているようにも見えるため、このような簡易な手段であっても目視で確認する場合には、上記した効果を十分得ることができる。
本発明のホログラムシートにおいては、「シート状薄膜発光層」の表面から体積ホログラム形成層の体積ホログラム形成層面までの距離を極力大きくすることで、「シート状薄膜発光層」の中の一つの発光点から発する「光波」を、より「指向性を帯びた光の波」とすることができる。
以上のことから、シート状薄膜EL層の厚さは、すなわち、素子全体の厚さは、薄く形成することが好適であり、体積ホログラム形成層の干渉縞の周期、または、ホログラムレリーフの凹凸の深さや、ピッチの大きさに対して、同じレベルとすることが望ましく、0.01μm〜2.0μmであることが好ましい。
この厚さが、0.01μm、すなわち、10nm未満であれば、素子としての性能が不十分であり、2.0μmを超えると、鮮明なホログラム再生像を得難くなる。
本発明のホログラムシートによれば、
シート基材の一方の面に、「所定の波長の光を発する点状光源を有するシート状薄膜光源層」、及び、「その点状光源が発する、所定の波長の光を照明光とする、曲面形状を成すホログラムが記録されている曲面形状ホログラム形成層」が、この順序で設けられて、「シート状薄膜光源層」の中の点状光源が所定の波長で発光したとき、その所定の波長で光るホログラムを視認することができるホログラムシート及びこのホログラムシートをカード基材に埋め込んだホログラム付きカードを提供することができる。
さらには、その曲面形状ホログラム形成層として、その一方の面に、「所定の曲面C1となる『うねり』を持ちつつ、微細な凹凸形状をも併せ持つホログラムレリーフ」を設けたものとし、または、その曲面形状ホログラム形成層を「一方の面が所定の曲面C2となっている曲面支持層と、その所定の曲面C2に接して追従するように設けた体積ホログラム形成層の2層構成」として、その「体積ホログラム形成層」に、「曲面形状を成すホログラムである体積ホログラム」を記録し、その意匠性及び偽造防止性を高めたホログラムシート及びこのホログラムシートをカード基材に埋め込んだホログラム付きカードを提供することができる。
そして、「シート状薄膜光源層」で発光した光そのものが、「指向性を帯びた光」となって「曲面形状ホログラム形成層」を通過し、再生する透過型の曲面形状ホログラム再生像がより鮮明となるホログラムシートを提供して、新規な装飾性及び、これを応用する偽造防止性を提供することができる。
特には、カード基材として、電池内臓型ICカード基材を用い、しかも、そのIC駆動用電池が、前記ホログラムシートの発光用電源をも兼ねることで、その意匠性や偽造防止性を一層高めたホログラム付きカードを提供することができる。
は、ジャブロンスキー図である。 は、本発明の一実施例を示すホログラムシートAの断面図である。
(『シート状薄膜光源層』の代表例である『シート状薄膜EL層3(1層で表わ している。)』が、『シート基材』としての『透明基材1』上に、『平板状』 に設けられ、その『シート状薄膜EL層3』の上に、その一方の面が『所定の 曲面C1』となっている『曲面形状ホログラム形成層2』が設けられている例 である。ここで、『所定の曲面C1』の表示、及び、その『所定の曲面C1』 の上に設けられている『ホログラムレリーフの凹凸形状』は、省略している。 )
は、本発明の他の一実施例を示すホログラムシートA´の断面図である。
(図2の構成に、さらに、その一方の面が『所定の曲面C2』となっている『曲 面支持層CSL』が設けられ、さらに、その『所定の曲面C2』に接して追従 するように、『体積ホログラム形成層VH』が設けられている例である。ここ で、『曲面支持層CSL』と『体積ホログラム形成層VH』の2層からなる『 曲面形状ホログラム形成層2』の表示、及び、『所定の曲面C2』の表示は省 略している。)
は、本発明の他の一実施例A´を判定するプロセスである。
(観察状態を示した図。照明光4は、室内照明光等の可視光線。照明光4の照明 による『ホログラム再生像5』は、視認できない。所定の電極から所定の『電 圧を印加した状態6』とすると、『緑色の(透過型体積)ホログラム再生像7 (発光による再生像)』が出現する。)
は、本発明のホログラムシートAをカード基材C0に埋め込み、ホログラムシー トAの露出面が、カード基材C0の表面と面一とした、ホログラム付きカードCA 1の図である。ここで、ホログラムシートA(『ホログラムシートA』そのもの の表示はせず、『ホログラムシートA』を構成する層を個々に表示してある。) を、カード基材C0の所定の位置に、カード基材C0の表面とホログラムシート Aの最表面(『曲面形状ホログラム形成層2』の露出面)の最も高い位置が、「 面一」となるように埋め込んでいる。 は、本発明のホログラムシートAをカード基材IC0(電池内臓型ICカード基 材。)に埋め込んである、ホログラム付きカードCA2の図である。ここで、カー ド基材IC0は、接触式ICカードであって、その構成を詳細に図示している。 また、ホログラムシートAは、そのカード基材IC0に埋め込まれると同時に、 セキュアマイコンIC1駆動用の内蔵電池IC2(IC駆動用電池。『ホログラ ムシート発光用電源』をも兼ねている。)から、発光用の電力を供給されており (リード線を表示。)、且つ、ホログラムシートAの露出面(最も高い位置)が 、カード基材IC0の表面と「面一」となっている(この『面一』の状態は図示 せず。)。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
以下の説明においても、「シート状薄膜光源層」として、「シート状薄膜EL層3(『エレクトロルミネッセンス層』とも称す。)」を主として説明するが、他の「光源層」においても同様に適用できるものである。また、「シート基材」として、「透明基材1」につき、詳述する。
本発明の「ホログラムシートA」に用いられる「曲面形状ホログラム形成層2」及び、「曲面形状C1」の実施形態は、図2の通りであり、「透明基材1」、「シート状薄膜EL層3」、及び、「曲面形状ホログラム形成層2」が、この順序で設けられている。(図2参照。図2において、『曲面形状ホログラム形成層2』の一方の面の『所定の曲面C1』を模式的に示してある。)この「ホログラムシートA」の作製方法、及び、使用する材料等は、上記した通り。
以下においては、本発明の「ホログラムシートA´」に用いられる「曲面形状ホログラム形成層2」、及び、「曲面形状ホログラム」として、「曲面支持層CSLと体積ホログラム形成層VHの2層からなる、曲面形状ホログラム形成層2」、及び、「曲面形状を成すホログラムである体積ホログラム」を例にとり、説明する。
(透明基材)
本発明で使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムシートA、もしくはA´を製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。(図2、及び、図3参照。)
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
その中でも、紫外線等の励起光に対する耐性を有するもの、例えば、紫外線吸収剤を含むものであってもよい。紫外線吸収剤を含むものは、自然光等の中に含まれる紫外線により微かではあるが、予定外のホログラム再生を防ぐ効果も有する。
透明基材1の厚さは、通常5〜100μmであるが、表面の「光学的鏡面性」を配慮する場合(『光学的鏡面性』を有する『透明基材1』とするという意味。)や、結果として、ホログラム再生像の視認性を向上させるために、5〜50μm、特に5〜25μmとすることが望ましい。
(曲面支持層CSL、及び、体積ホログラム形成層)
本発明のホログラムシートA´の透明基材1の一方の表面(一部、もしくは、全面)に、シート状薄膜EL層3を設け、そのシート状薄膜EL層3の上(一部、もしくは、全面)に、その一方の面が「所定の曲面C2」となっている「曲面支持層CSL」を設け、その「所定の曲面C2」に接して追従するように「体積ホログラム形成層VH」を設けて、本発明のホログラムシートA´とする、さらには、ホログラムシートA、または、A´を、カード基材C0、もしくは、カード基材IC0に埋め込んで、ホログラム付きカードCA1、もしくは、CA2とする。(図2、3、5、6参照。図2においては、『所定の曲面C2』として、3つの『凸レンズ形状』の例を模式的に示している。)
この際、体積ホログラム形成層VHを、透明基材1、シート状薄膜EL層3、及び曲面支持層CSLを重ねて形成し、その曲面支持層CSLの上に設けた後、透過型体積ホログラムを記録する手順(この記録には、ホログラムマスター版からの光学的な複製を含む。)、体積ホログラム形成層VHに予め透過型体積ホログラムを記録した後に、曲面支持層CSLの上にラミネートする手順、さらには、シート状薄膜EL層3、曲面支持層CSL及び体積ホログラム形成層VHの積層体を、透明基材1上にラミネートする手順、もしくは、曲面支持層CSL及び体積ホログラム形成層VHの積層体を、透明基材1とシート状薄膜EL層3の積層体の上にラミネートする手順等により設けることができる。(手順は図示せず。)
体積ホログラム形成層VHには、各種の透明な材料、または、透明なフィルムが用いられる。
すなわち、銀塩写真乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト、フォトポリマー材料、無機材料からなるフォトリフラクティブ材料、フォトクロミック材料等及び、それらの材料からなるフィルムを用い得る。
銀塩写真乳剤としては、高感度、高解像度が求められ、超微粒子銀塩や、金―カルコゲン増感や、還元増感を施した材料等が用い得る。
フォトレジストとしては、ポジ型フォトレジストとして、ノボラック−DNQ系、又は、化学増幅型フォトレジスト、ネガ型フォトレジストとして、光架橋型フォトレジスト、又は、光重合型フォトレジスト等を用いることができる。
銀塩写真乳剤、或いは、重クロム酸ゼラチンは、処理工程が多く煩雑であるが、固体光重合性材料、すなわち、フォトポリマー材料は、処理工程が1回のみであるため、好適である。
これは、1工程で、固体の光重合性フィルムから、安定な高解像度のホログラムを作成することができ、ホログラフ情報をもつコヒーレントな光源に対する1回の露光により、「屈折率変調を固定化した画像」が得られることを意味する。このようにして形成されたホログラムは、光に対するその後の均一な露光によっても破壊されることなく、むしろ定着されまたは強化される。
フォトポリマー材料は、熱可塑性重合体結合剤、付加重合可能なエチレン系不飽和単量体、及び、不飽和単量体の重合を活性化する光開始剤からなる、屈折率変調を有する光重合性組成物を用いる。
熱可塑性重合体結合剤は、溶媒可溶性の熱可塑性重合体であり、単独で、又は、組合せて使用する。具体的には、
〔アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、例えば、ポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、〕、〔ポリビニルエステル、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル;エチレン/酢酸ビニル共重合体〕、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジェン及びイソプレン重合体及び共重合体、エポキシ化物、例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物、〔ポリアミド、例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアシツクアミド〕、〔セルロースエステル、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート〕、〔セルロースエーテル、例えば、メチルセルロース、並びにエチルセルロース〕、ポリカーボネート等、並びに、〔ポリビニルアセタール、例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール〕等。
特に好適には、セルロースアセテートラクテート重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸及びメタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体を含むアクリル系重合体及びプレポリマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸又はメタクリル酸(C2〜C4)アルキル/アクリル酸又はメタクリル酸の3元重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等、並びに、それらの混合物である。
さらに、ポリスチレン、ポリ(スチレン/アクリロニトリル)、ポリ(スチレン/メタクリル酸メチル)、並びに、ポリビニルペンデル、及び、それらの混合物を含むこともできる。
エチレン系不飽和単量体は、単一の単量体として、又は、組合せて使用することができる単量体として、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、又はジメタクリレート、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ポリオキシエチル−2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノール−Aジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ヒスフェノール−Aジアクリレート、ビスフェノール−A−ジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−A−ジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−A−ジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−A−ジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−A−ジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−A−ジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、ジフェノール酸−ジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、1,4−ベンゼン・フォールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、ベンゾキノンモノメタクリレート、並びにアクリル酸2−〔β−(N−カルバジル)プロピオニロキシ〕エチル等、を用いることができる。
この単量体が、置換又は非置換フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフトキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素、臭素、よりなる群から選択される、1つ又はそれ以上の部分を含有する場合には、これらを含む光重合性組成物は、いわば「単量体配向型系」と称することができる。
この単量体配向型系に好適な単量体は、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、ビスフェノール−A−ジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ヒスフェノール−Aジアクリレート、並びにアクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、である。
そして、エチレン系不飽和カルバゾール単量体;アクリル酸2−ナフチル;アクリル酸インタクロロフエ=ル;ビスフェノール−Aジアクリレート;アクリル酸2−(2−ブチロキシ)エチル; 並びに、N−フェニルマレイミドのような第2の固体単量体と混合して使用してもよい。
また、予め形成された重合体材料(プレポリマーを意味する。)が、置換又は非置換フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフトキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素、臭素、よりなる群から選択される、1つ又はそれ以上の部分を含有する場合には、これらを含む光重合性組成物は、いわば「結合剤配向型系」と称することができる。
この系に使用される単量体には、フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフチロキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素及び臭素よりなる群からとられる部分を含まないものを使用する。
「結合剤配向型系」に好適な単量体は、付加重合することができ、100℃より高い沸点を有する液体、エチレン系不飽和化合物である。単一の単量体としてか又は他の単量体と組合せて使用することができるこの型の適当な単量体は、次のものを含む。
すなわち、アクリル酸一ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソーホルニル、1,5−ベンタンジオールジアクリレート、N、N´−エチルアミノエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールノアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、1,3−プロノぐンジオール・クアクリレート、デカメチレングリコールジアクリレー)、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパンジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロ−ルプロJRントリメタクリレート、1,5−ベンタンジオールジメタクリレート、フマル酸ジアリル、アクリル酸パーフロロオクチル、メタクリル酸フロロオクチル、並びに1−ビニル−2−ピロリジノン等。
上記のエチレン系不飽和単量体の外、少なくとも300の分子量を有する、1種又はそれ以上の遊離ラジカル開始型、連鎖生長性、付加重合可能、エチレン系不飽和化合物も含有することができる。
また、単量体は、2〜15の炭素原子のアルキレングリコール又は1〜10のエーテル結合のポリアルキレンエーテルグリコールから製造されるアルキレン又はポリアルキレングリコールジアクリレート、並びに、末端結合として存在する時、複数の付加重合可能なエチレン結合を有するものであってもよい。
さらに、デカンジオールジアクリレート、アクリル酸イソ−ボルニル、トリエチレングリフールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸エトキシエトキシエチル、エトキシル化トリメチロールプロノンのトリアクリレートエステル、等である。また、同じ型の第2の固体単量体、例えば、N−ビニルカプロラクタムと混合して使用してよい。
光開始剤として適当な、遊離ラジカル発生付加重合開始剤は、共役炭素環状環系中、2つの環内炭素原子を有する化合物である置換又は非置換多核キノン、例えば、9,10−アンスラキノン、1−クロロアンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、2−メチルアンスラキノン、2−エチルアンスラキノン、2−三級−ブチルアンスラキノン、オクタメチルアンスラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンスレンキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、2,3−ベンズアンスラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,4−ジメチルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、2−フェニルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、アンスラキノンアルファースルホン酸のナトリウム塩、3−クロロ−2−メチルアンスラキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセンキノン、を含む。
また、ベンゾイン、ピパロイン、アシロインエーテル、例えば、ベンゾインメチル及びエチルエーテル;α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、及び、α−フェニルベンゾインを含む、α−炭化水素置換芳香族アシロインを含んでもよい。
さらに好適な光開始剤には、2−(0−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体;1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ヒス(0−クロロフェニル)−4,4’、5,5’−テトラフェニルー:並びに、1H−イミダゾール、2,5−ビス(0−クロロフェニル)−4−3,4−・ジメトキシフェニル−2量体(そのおのおのは、典型的には水素ドナー、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾールと共に使用される)を挙げることができる。
フォトポリマー材料としては、さらに、フッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤からなり、画像化(光記録)されたとき、0.001よりも大きな屈折率変調を有する、光重合性組成物を用いることができる。これには、さらに、可塑剤を含めてもよい。
フッ素含有ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンまたはへキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーとビニルアセテートとから作られたポリマーを用いることができ、他のモノマーを含むこともできる。例えば、10〜20%のフッ素を含有しているものを使用する。
使用されるフッ素含有ポリマーは、フォトポリマーのその他の各成分と両立し得るフッ素含有ポリマーであり、塗布されたときに実質的に固体の透明な皮膜を作るものである。
フッ素は、フッ素含有ポリマーを構成する他のモノマーとフッ素含有モノマーとを共重合するか、または、フッ素含有ポリマーとの反応により導入し、フッ素含有ポリマーが、アルコール、または、酸置換基のような官能基を含むとき、フッ素を導入するためには縮合、アセタール化、ケタール化、またはエステル化反応などを使用する。
フォトポリマー材料にこのようななフッ素含有ポリマーを含めることは、体積ホログラム形成層VHの耐熱性等の物理特性を向上させ、また、露出した体積ホログラム形成層VHの表面が「光学的な鏡面」を維持し易くなるため好適である。
フッ素含有ポリマーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルアセタール/ブチラール、またはプレポリマー類あるいはこれらの混合物と、フッ素化モノマーとのポリマー類を含む。例えば、フッ素含有ポリマーは、ビニルアセテートとフッ素化モノマーとのポリマーとすることができ、必要に応じ、このポリマーのアセテート置換基は、加水分解によりとり除き、フッ素化したポリ(ビニルアルコール)誘導体を得ることもできる。このフッ素化ポリ(ビニルアルコール)は、例えば、ブチルアルデヒドと縮合させ、フッ素化したポリ(ビニルブチラール)誘導体にすることができる。
フッ素化したポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)など、または、これらの混合物も同じ方法で作ることができる。フッ素化モノマーは、テトラフルオロエチレン、および/または、へキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーが好適であるが、ビニルフロライドまたはビニリデンフロライドのような、その他のモノマーも特定の用途のために選定することができる。
必要に応じ、他のモノマー類も存在させることができる。例えば、フォトポリマーの溶解性、接着性、柔軟性、または硬さなどのような、化学的、もしくは、物理的諸性質を調整するために、モノマー混合物中にエチルビニルエーテルを混在させることができる。このようなフォトポリマーは通常のフリーラジカル重合法を用いて製造される。
フッ素化したフッ素含有ポリマーは、また適切に置換されているポリマーと、フッ素化された化合物との反応により作ることもできる。ヒドロキシルまたはカルボキシル基のような、潜在的な反応位置をもったポリマーは、フッ素化された化合物との反応によりフッ素化されたフッ素含有ポリマーに変換することができる。例えば、フッ素化されたポリ(ビニルブチラール)は、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアルデヒドと、ポリ(ビニルアルコール)の縮合により調製することができる。カルボキシル酸を含むポリマー類はフッ素化したアルコール類でエステル化することができ;ポリ(ビニルアルコール)、部分ケン化されたポリ(ビニルアセテート)、またはフッ素化されたモノマーとビニルアセテートとのポリマー類の部分ケン化またはケン化されたものなどのような、ヒドロキシル基含有のポリマー類は、フッ素化されたカルボキシル酸によりエステル化することができる。
フルオロオレフィン類は標準的なグラフト化技術を用いて、適切に置換されているポリマー上にグラフト化することができる。ビニルエステル、少なくとも、1つのフッ素化されたモノマー、および、得られるポリマーの物理的性質を調整するための任意の他のモノマーとのポリマーが好ましい。
一般に、フッ素含有量が低下するとその効果も減少するから、フッ素含有ポリマーは少なくとも10%のフッ素を含有するようにされる。しかしながら、フッ素含有量が余りにも高すぎると、得られるフォトポリマーは不透明となる傾向があり、体積ホログラム形成層の調製のためには有用でない。さらには、窓用フィルムとして用いる場合に、再接着用の糊との接着性が著しく低下する。従って、好ましいフッ素含有ポリマーは、10〜20%のフッ素含有量を有している。
フッ素含有ポリマーのビニルエステル成分としては、ビニルアセテートが特に好ましいが、他のビニルエステルおよび類似の結果を与える構造的に関連した化合物も、これに加えて、またはビニルアセテートの代りに選定することができる。例えば、ビニルピバレート、ビニルプロピオネート、ビニルステアレート、ビニルアルコール、または、n−ブチルビニルエーテルなどを選ぶことができる。テトラフルオロエチレン、または、へキサフルオロプロピレンのような過フッ素化モノマー類は、フッ素化モノマー成分として特に有用であると認められているが、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、フルオロオレフィン類、フロロアルキルアクレリートおよびメタアクリレートなどのようなその他の化合物も、特定の用途のためには選ぶことができる。
フッ素化されていない対応物よりも、フッ素化されているフッ素含有ポリマーを選ぶことは屈折率変調を劇的に増加させ、それでホログラムの回折効率も増加させる。
例えば、他のすべての成分を同じにして、ポリビニルアセテートによって達成されるのは約0.025〜0、031の範囲の値であるのに反して、ビニルアセテート/過フッ素化物モノマーのフォトポリマーの使用では0.040を超え、0.076の高い屈折率変調の値が達成される。
フッ素化フッ素含有ポリマーは、全フッ素含有ポリマーの1部分だけに選択することができる。この場合、フッ素含有ポリマーのフッ素化されていない対応物は、2つのフッ素含有ポリマーが互いに両立し、そして塗布用溶剤および他のフォトポリマー成分とも両立し、そしてフォトポリマーの透明性、機械的諸性質などを不当に犠牲としないならば、その他の成分として選択することができる。
フォトポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含み、これはフリーラジカルで開始される重合し得るもので、100℃以上の沸点を有し、塗布溶剤および選ばれたフッ素含有ポリマーと両立し得るものである。このモノマーは通常末端位置に不飽和性基を含んでいる。一般に液体のモノマーが選定されるが、固体のモノマーが実質的に固体のフォトポリマー組成物中で内部拡散し得るならば、固体のモノマーも1個または数個の液体モノマーと組み合わせて用いることができる。
モノマーは、付加重合をすることができかつ100℃以上の沸点をもつ液体の、エチレン性不飽和化合物であり、これは3個までの芳香環;塩素;および臭素を含む、置換または未置換のフェニル、ビフェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフチルオキシ、およびヘテロ芳香基、よりなる群から選ばれた1個または数個の部分を含んでいる。モノマーはこのような部分を少なくとも1つ含み、またモノマーが液体でとどまるならば、同一または異なるこのような部分を2個またはそれ以上含むことができる。低級アルキル、アルキオキシ、ヒドロキシ、フェニル、フェノキシ、カルボキシ、カルボニルイミド、シアノ、クロロ、ブロモまたはこれらの組み合わせのような置換基を、モノマーが液体モノマーにとどまり、かつ光重合性層中で拡散し得るならば存在させることができる。
代表的な液体モノマーには、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2− (p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレ−1−、2− (1−ブチルオキシ)エチルアクリレート、0−ビフェニルメタアクリレート、0−フェニルアクリレート、およびこれらの混合物などが含まれる。
モノマーは、通常、液体であるが、エチレン性不飽和カルバゾールモノマーのような、1個または数個のエチレン性不飽和固体モノマーと混合して使用することもできる。
カルバゾール部分の窒素原子に結合したビニル基を含んだ、エチレン性不飽和カルバゾールモノマーは代表的に固体である。このタイプの好適なモノマーには、N−ビニルカルバゾールと3、6−ジプロモー9−ビニルカルバゾールとが含まれる。特に好ましいエチレン性不飽和モノマーの混合物は、N−ビニルカルバゾールと液体モノマーの1個または数個、特に2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレート、またはこれらの混合物などとの組み合わせからなるものである。
フォトポリマーを架橋化(光重合)するときは、組成物中に2個または数個の末端エチレン性不飽和基を含む、多官能性モノマーの少なくとも1つを5%まで加えることができる。この多官能性モノマーは、組成物の他の成分と両立し得るものでなければならず、また好ましくは液体である。多官能性モノマーには、ビスフェノール−Aのジ(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、およびその他が含まれる。エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレートは、特に好ましい。
光開始剤系は、電離放射線により活性化されたときに、フリーラジカルを直接に与える1個または数個の化合物からなるものである。「電離放射線」は、モノマー材料の重合を開始するのに必要な、フリーラジカルを生成させるような活性な放射線を意味している。
この系はまた複数の化合物から構成されることもでき、その1つは別の化合物、または増感剤が放射線により活性化された後に、フリーラジカルを生ずるものである。
有用な開始剤系は、種々の増感剤を含んでいてもよく、多数のフリーラジカル生成化合物を利用できる。特に色素を含むレドックス系、例えばローズベンガル/2−ジブチルアミノエタノールを用いることもできる。光還元性色素および還元剤、オギサジン、およびキノン系の各色素、色素−オウ酸塩コンブレックス、色素増感されたアジニウム塩、およびトリクロロメチルトリアジンなどを、光重合を開始させるために用いることができる。
好ましい光開始剤系は、可視光線用増感剤で増感され、連鎖移転剤または水素供与剤、およびこれらの混合物をもった、2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーである。 これには、2−(0−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−イミダゾールダイマー;1,1’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(0−クロロフェニル’)−4,4’5,5’−テトラフェニル;およびIH−イミダゾール、2,5−ビス(0−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル〕−タイマーなどが含まれ、それぞれ代表的に水素供与体とともに用いられる。
増感剤には、ビス(p−ジアルキルアミノベンジリジン)ケトン類、および、アリーリチンアリールケトン類が含まれる。
水素供与体の適当なものには、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−1−リアゾール−3−チオール、およびその他が含まれる。
N−ビニルカルバゾールモノマーを含む組成物に対して好ましい、この他の水素供与体は、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール;2−メルカプトベンゾチアゾール、 IH−1,2、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、1−ドデカンチオール、およびこれらの混合物などである。
その他の成分として、フォトポリマー組成物に一般に添加されるその他の各成分はフォトポリマーの物理的特性を変えるだめのものである。このような成分には可塑剤、熱安定剤、光学的増白剤、紫外線安定剤、接着性変更剤、塗布助剤、および剥離剤などが含まれる。
可塑剤は、フォトポリマーの接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の物理的緒特性を変えるために存在させられる。可塑剤には、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセパケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、イソゾロビルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ポリ(プロピレングリコール)、トリ酪酸グリセリル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、スペリン酸・ノブチル、燐酸トリブチル、燐酸トリス(2−エチルヘキシル)、などが含まれる。
有用な熱安定剤には、ハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、ベータナフトール、塩化第一銅、2,6−ジーt−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、レジン酸銅、ナフチルアミン、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、フロラニール、およびクロルアニールなどが含まれる。ジニトロソダイマー類もまた有用である。
塗布助剤として、非イオン性界面活性剤を光重合性組成物に加えることができる。好ましい塗布助剤は、フッ素化された非イオン性活性剤である。
有用な光学増白剤は、7−(4’−クロロ−6′−ジエチルアミノ−1’,3’,5’−トリアジン−4′イル)アミノ3−フェニルクマリンである。さらに、紫外線吸収材料を適宜用いることができる。
また、透明な樹脂、すなわち、光重合性組成物としては、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、及び、カチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料が用いられる。
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が終始比較的低粘度の組成物中で行なわれるように室温液状のものが用いられる。そのようなカチオン重合性化合物としてはジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等が用いられる。
ラジカル重合性化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きく、好ましくは0.02以上大きいとよく、小さいと屈折率変調が不十分となり好ましくない。ラジカル重合性化合物としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等が用いられる。
光ラジカル重合開始剤系は、体積ホログラム作製のための第1露光によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させる開始剤系であればよく、また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いる。
光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明な体積ホログラムとする場合にはシアニン系色素が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することにより体積ホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムが得られる。
シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3'−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2'チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3',9−ジエチル−2,2’チアカルボシアニンベタイン、3,3',9−トリエチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3'−カルボキシメチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩等が例示される。
シアニン系色素と組み合わせて用いてもよい活性ラジカル発生化合物としては、ジアリールヨードニウム類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム類としては、ジフェニルヨードニウム、4,4'−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメトキシジフェニルヨードニウム等が例示される。また、2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が例示される。
光カチオン重合開始剤系は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸、あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系とするとよく、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類あるいは鉄アレン錯体類等を挙げることができる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては、光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウム類のテトラフルオロボレート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩およびヘキサフルオロアンチモネート塩等が挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
光重合性組成物には、必要に応じてバインダー樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色剤などを併用してよい。バインダー樹脂は、体積ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。バインダー樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性組成物と相溶性のよいものであれば良く、その具体例としては塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。バインダー樹脂は、その側鎖または主鎖にカチオン重合性基などの反応性を有していても良い。
その体積ホログラム形成層VHの厚さは、5.0μm〜50μmとする。好適には、10μm〜30μmとする。
透明基材1、その上に設けたシート状薄膜EL層3、及び、その上に設けた曲面支持層CSLの上に、その曲面支持層CSLの表面の「所定の曲面C1」に、接して追従するように、透明な樹脂をコーティングして、体積ホログラム形成層VHを設ける。
この場合には、体積ホログラム形成層VHは、光重合性組成物の塗布液を、バーコート、スピンコート、又はディッピング等、または、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、または、コンマコート等により塗布し、形成する。
特に、「所定の曲面C1」の「突出高さ(球欠の底面からの高さを意味する。)」が、比較的大きい場合には、体積ホログラム形成層VHの厚さを高い精度で均一とするため、予め、「適宜な剥離紙」上に、光重合性組成物の塗布液を塗布して、「均一な厚さの膜」としておき、その曲面支持層CSLの上に、その「均一な厚さの膜」をラミネートした後、その「適宜な剥離紙」を剥離して、「体積ホログラム形成層VH」を転写形成するか、
二つの離型性付与済みの樹脂フィルムに、均一な厚さの未露光の「体積ホログラム形成用フォトポリマー」を挟み込み、その一方の樹脂フィルムを剥離しつつ、その「体積ホログラム形成用フォトポリマー」をラミネートした後、他方の樹脂フィルムを剥離して、「体積ホログラム形成層VH」を転写形成する。
その体積ホログラム形成層VHは、乾燥ないし硬化手段を用いて固化される。
その光重合性組成物としては、組成物全体に対してカチオン重合性化合物を10〜50%、ラジカル重合性化合物を40〜70%、光ラジカル重合開始剤系を1〜5%、及び、光カチオン重合開始剤系を1〜5%とし、全量を100%となるように配合する。
光重合性組成物は、必要に応じて、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族系溶媒、セロソルブ系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒等と配合し、冷暗所にて、高速撹拌機で混合し調製する。
また、上記の樹脂材料を用い、キャスティング法や、ダイコート法等を用いて、体積ホログラム形成層VHを曲面支持層CSL上に設けることもできる。
これらの「体積ホログラム形成層VH」に、所定の光学系を用いて、「曲面形状ホログラム」としての「透過型体積ホログラム」を記録する。または、反射型体積ホログラムを、その透過型体積ホログラムに加えて多重記録する。(図示せず。)
以下に、その方法を説明する。
まず、ホログラム画像として画像化される「物体」を準備する。
「物体」としては、彫刻や模型等の実在する、3次元物体(高名な作者のものであれば、その意匠性は非常に高いものとなる。)、もしくは、絵画やブランドデザイン等の2次元物体が用いられる。もしくは、「物体光」を与え得るものであって、空間光変調器:SLM等のような電子的にセル変換が可能な光学素子を用いた光学系によって、記録用媒体面に投影されるような「光の像」であってもよい。
もちろん、あらかじめ作成した「ホログラム」からの「ホログラム再生像」(立体的な光の像となる。)を用いることもできる。
この「物体」を、所定の波長を選択した、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザー、各種色素レーザー等のコヒーレント光を用いて照明し、所定の光学系を準備し(図示せず。)、透過型体積ホログラムを記録する。
もしくは、適宜なホログラム記録用のフォトポリマーに、同様な光学系を準備し、マスターホログラムを記録し、定着処理する。
次いで、このマスターホログラムを所定の光学系を用いて、「物体」の体積ホログラムを、上記で使用した光源を再度用いて、体積ホログラム形成層VHに、「透過型体積ホログラム」として記録する。
透過型体積ホログラムに上記の光学系で用いた参照光と同一の照明を行うと、その参照光が透過した方向からの観察により、体積ホログラム形成層VHを通して、その向こう側に「物体」の像、すなわち、透過型体積ホログラム再生像を視認することができる。この「物体」の像から観察者の目の方向へ向かう角度が、「再生角度(結像方向)」である。(図示せず。)
この際、曲面支持層CSLに積層した状態で、体積ホログラムを記録するか、もしくは、「所定の曲面C2」を有する、「適宜な支持体」上に積層したフォトポリマー(フォトポリマー層が、所定の曲面C2に沿って、変形して、『曲面形状』を成している。)に、上記の記録をした後、「曲面支持層CSL」に転写(転移)形成してもよい。
さらには、その「適宜な支持体/フォトポリマー層」の上に、電離放射線硬化性樹脂を重ねて、「適宜な支持体/フォトポリマー層/電離放射線硬化性樹脂(一方の面が所定の曲面C2、他方の面が平坦。)」の三層構成とした後、「適宜な支持体」を剥離して、「(フォトポリマー層→)体積ホログラム形成層VH/(電離放射線硬化性樹脂→)曲面支持層CSL」とすることも好適である。(その手順等は、図示せず。)
そもそも、体積ホログラムは、「所定の参照光」を用いずとも、その波長選択性及び角度選択性により、「一般的な照明光」の中から、所定の波長で、所定の方向に進む光を選び出し、その光によってのみ再生された「物体」の像、すなわち体積ホログラム再生像を視認することができるものであるが。その選び出す過程によって、その鮮明性や明るさは、所定の参照光を用いた場合に比べ、かなり低下してしまうため、本発明のごとく、シート状薄膜EL層3や、その発光する光波の指向性向上が必須となる。
また、上記した「物体」を2つ準備し、2つの光源(第1の波長、及び第2の波長を有する2つのレーザー光源)を用いて、それぞれ体積ホログラム形成層VHに、各々、角度を変えて記録して、2つの透過型体積ホログラムを多重記録することができる。
もちろん、上記した透過型体積ホログラムに、反射型体積ホログラムを同一の体積ホログラム形成層VHに記録し、「透過型体積ホログラムと反射型体積ホログラムを多重記録」することも可能である。
このときに用いる体積ホログラム形成層VHは、例えば、2つの光源に感度を持つように、2種類の増感剤を含めたものとする。
また、体積ホログラム形成層VHを単層として、その一つの層に多重記録するのみならず、体積ホログラム形成層VHを多層として、それぞれの層に、それぞれのフォトポリマーを用い、それぞれの体積ホログラムを記録することも、個々のホログラム再生像の鮮明度を高めるため好適である。
2つの体積ホログラムを多重記録した場合には、2つの観察方向に、各々の「物体」像を見ることができる。(図示せず。)
ホログラムとしては、レーザー再生ホログラム、白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子、複合回折格子で構成されるホログラムなどを、適宜、記録することができる。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し、何らかの「セキュリティ情報」として、真偽判定を行うものであってもよい。(図示せず。)
体積ホログラムは、「上記のようにして記録した体積ホログラム形成層VH(単独の層。)」上に、「まだ体積ホログラムを記録していない透明基材1、シート状薄膜EL層3と、体積ホログラム形成層VHの積層体」のその体積ホログラム形成層VH面上に、「単独の層である記録済み体積ホログラム形成層VH」を密着させて重ねたものに(インデックスマッチング液等をその間に挿入してもよい。)、その「記録済み体積ホログラム形成層VH」側から、適宜なレーザー光を照射する方法により、大量に複製することができる。(図示せず。『所定の曲面C2』は、その積層過程において、転移される。)
また、曲面支持層CSLは、透明性を有する、熱可塑性樹脂、例えば、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸ビニル樹脂、もしくは、ポリスチレン樹脂等が、また、透明性を有する熱硬化性樹脂、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等を用いることができる。
さらに、透明性を有する電離放射線硬化性樹脂では、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を用いることができる。
また、環境に配慮して、生分解性プラスチックを用いることもできる。
そして、透明性を維持できる範囲において、耐熱性や、変形し難さを付与するため、微粒子状の体質顔料や、無機顔料、さらには、シリコン樹脂等を、1〜20%添加してもよい。
その形成方法も、射出成型方法、エクストリュージョン成形法等の種々の成形方法、フォトポリマー法(2P法)等のレリーフ複製方法、平圧プレスやロールプレスによるエンボス成形法、さらには、ドライエッチング法や、ウエットエッチング法等を用いることができ、その一方の面を「所定の曲面C2」とすることができる。
特には、この「所定の曲面C2」の「曲面形状」が高い精度で維持されることが求められることから、その「曲面形状」の転移性、及び、硬化後の強靭性に優れる、「フォトポリマー」、もしくは、「電離放射線樹脂」を用いることが好ましい。
そして、その「曲面支持層CSL」の厚さは、その一方の面の所定の曲面C2の最も高い点(頂点)と、他方の面(平坦な面)までの「距離」で表して、1.0μm〜500μm、好適には、10.0μm〜50.0μmとする。
この厚さが、1.0μm未満であると、「所定の曲面C2」を形成し難くなり、その厚さが500μmを超えると、ホログラムシート全体の厚さが厚くなり、ハンドリング適性に劣るものとなる。
(『シート状薄膜光源層』の代表例としての『シート状薄膜EL層』、及び、その他の『シート状薄膜光源層』)
シート状薄膜EL層3は、透明基材1の上に、構成する層を順次設けていくことで、形成される。(図2及び図3参照。)
図2及び図3において、シート状薄膜EL層3の詳細構成は表示していない。特に、その「シート状薄膜EL層3」に含まれる「点状光源」も表示していない。
あくまで、模式図ではあるが、図2及び図3のごとく、「所定の曲面C1」や、「所定の曲面C2」が、いわゆる「球冠」を3か所含む「曲面」である場合には、それらの「球冠」の曲率半径の中心点に、それぞれ、一箇所ずつ、「点状光源」が設けられている。(図示せず。)
この表現を用いれば、図2における、本発明の「ホログラムシートA」の「曲面形状ホログラム形成層2」は、直方体形状部分の上に、3つの「球欠(球体を平面で切り取った立体形状。)」を重ねた形となっている(その『球欠』の表面が『球冠』である。)。
さらに、図3における曲面支持層CSLも、同様に、直方体形状部分の上に、3つの「球欠(球体を平面で切り取った立体形状。)」を重ねた形をしており、その一方の面に沿って、体積ホログラム形成層VHが設けられて、その2層からなる、本発明の「ホログラムシートA´」の「曲面形状ホログラム形成層2」を成している。
以下に、「シート状薄膜EL層3」の構成、及び、その作製手順につき説明するが、この構成を全て設けた領域が、「EL発光する領域」、すなわち、「点状光源(領域)」となり、その構成の少なくとも一部を欠いた領域が、「EL発光しない領域」となる。(個々の構成についての、『点状光源』形成のための『部分形成手段等』の詳細は省略する。)
このシート状薄膜EL層3として、有機エレクトロルミネッセンス素子、または、無機エレクトロルミネッセンス素子のいずれを用いる場合にも、まず「電極」である、陽極若しくは陰極から形成する。以下では、陽極から形成する例について説明する。この方法と同様にして陰極から設けていくことは容易に推察できる。
陽極の材料としては、例えば、ITO薄膜(インジウム・スズ酸化物薄膜)、酸化インジウム、錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛等の透明導電性材料、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体等の導電性高分子等、を使用して形成することができる。
陽極の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着法(CVD法)、スピンコート法、キャスト法を用いたゾルゲル法、スプレイパイロリシス法、イオンプレーティング法等の方法、さらには、所望の組成の塗布液を塗布して形成する方法等を採用することができる。
特に、電子ビーム加熱真空蒸着法や、高周波マグネトロンスパッタリング法を採ることが好ましい。具体的には、真空度1×10-7〜1×10-3Pa、成膜速度0.1〜50nm/秒、基材温度−10〜100℃の条件で成膜する。
陽極の代表的なものは、透明導電性薄膜である、ITO薄膜であり、透明基材1上に、電子線加熱真空蒸着法により、例えば300nm程度形成する。
透明導電性薄膜の導電性は、その表面抵抗値で管理しており、0.1Ω/□以下となるよう、インジウムと錫の加熱速度や、導入する酸素ガスの量を制御する。
透明基材1の表面に対して、この薄膜形成による加熱や、金属粒子の衝突等の衝撃によって、その平面性に変化を生じないよう、透明基材1を十分冷却し、高速で処理する。従って、膜厚さを薄く形成する。
透明導電性薄膜の膜厚さ制御を十分行い、膜厚さばらつきが、数%以内にとどめ(300nmの数%→10nmレベル)、透明導電性薄膜の表面(透明基材1と接着している面とは反対の面)が、透明基材1の表面とほぼ同一の形となるようにする。
透明基材1へのダメージをさらに軽減するために、CVD法(化学蒸着法)等を用いることもできる。CVD法の場合は、透明基材1へのダメージはほとんど無いが、薄膜形成後の加熱処理等付加的な処理を要し、薄膜の表面性もやや粗いものとなる。
次に、形成する層は、無機エレクトロルミネッセンス素子の場合には、最も単純な構成としては、この透明導電性薄膜上に、絶縁層を設ける。
絶縁層として用いられる材料は、具体的には、Y23、Al23、Ta25、SiO2、Si34等の非晶質酸化物、BaTiO3、PbTiO3等の強誘電体、SiNx、SiOF、SiOC、Pb(Zr,Ti)O3、(Pb、La)(Zr,Ti)O3、Bi4Ti3O12、さらにはぺロブスカイト型強誘電体、タングステン・ブロンズ型強誘電体、ビスマス層状構造強誘電体等を挙げることができる。
さらに、π電子系の酸−塩基二成分型有機物を利用した有機強誘電体、例えば、クロラニク酸、ブロマニル酸等のような強い酸性度(H+(プロトン)の供与能)の水酸基を有するジヒドロキシ−p−ベンゾキノン類、あるいは、クロラニル酸を酸として、ベンゼン環にプロトン受容基の窒素原子を組み入れたフェナジン(Phz)を塩基として作用させ、1:1の分子化合物としたもの等、さらに、分子間で水素結合を形成して一次元のネットワークを形成したこれらの集合構造分子も使用することもできる。
その形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着法(CVD法)、スピンコート法、キャスト法を用いたゾルゲル法、スプレイパイロリシス法、イオンプレーティング法等の方法、さらには、所望の組成の塗布液を塗布して形成する方法等を採用することができる。
絶縁層である誘電体膜として、代表的には、BaTiO3薄膜を、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、例えば500nmの厚さで形成する。この場合には、透明基材1上に、既に、金属酸化物薄膜が形成されているため、その透明基材1の表面の耐熱性は比較的高く、比較的容易に薄膜形成を行うことができる。
この層は、絶縁性を確保するためには、厚い方が望ましい(〜2μm)が、透明基材1の表面へのダメージを考慮して、また、均一厚さ、及び、その表面性の滑らかさを確保する必要があるため、100nm〜500nmとすることが好適である。
ここで、絶縁層を透明導電性薄膜上の隅々まで形成すると、陽極端子を設けることができないため、マスキング法により、透明導電性薄膜上の一部を、その後に設けるホログラムの大きさとのバランスを考慮して、例えば、50mm×40mmサイズのホログラムの場合には、2mm×4mmサイズのマスキングを施して、絶縁層を形成する。
さらにその上に、無機エレクトロルミネッセンス素子用の発光層を設ける。
発光層は、所望の発光色の発光蛍光体を用いて形成されたものであり、例えば、赤色発光蛍光体として、ZnS、Mn/CdSSe等、緑色発光蛍光体として、ZnS:TbOF、ZnS:Tb等、青色発光蛍光体としては、SrS:Ce、(SrS:Ce/ZnS)n、CaGa24:Ce、Sr2Ga25:Ceを挙げることができる。また、白色発光蛍光体として、SrS:Ce/ZnS:Mn等が挙げられ、これらの蛍光体を適宜選択して、用いることができる。
発光層としては、代表的には、母体にZnSを用い、発光中心にMnを添加したものを、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、例えば1μm厚さで形成する。
この発光層も、上記した各層の厚さの均一性、界面の滑らかさを確保できる成膜方法を採用する。
発光層形成時にも、上記した位置に同様のマスキング処理を施す。
この上に設ける陰極は、アルミニウム、金、銀、白金、銅、鉄、銀・マグネシウム合金等の金属薄膜や、グラファイトなどを厚さ、50〜500nmで形成する。代表的には、アルミニウム薄膜でよく、真空蒸着法で安定的に、例えば、300nm厚さで形成することができる。
陰極形成時にも、上記した位置に同様のマスキング処理を施す。
以上の様にして、透明基材1上に、無機エレクトロルミネッセンス素子からなる、シート状薄膜EL層3を、その透明基材1の平面性を維持しつつ、設けることができる。そして、このシート状薄膜EL層3を陰極側から観察した場合、アルミニウム金属面の一部に、陽極である透明導電性薄膜層が露出して見える。
この陽極と、陰極の間に、電圧100V100〜1000Hzの交流電圧を印加すると(『電圧を印加した状態6』となる。)、エレクトロルミネッセンス層(シート状薄膜EL層3)において、陽極側より発光が生じ、エレクトロルミネッセンス層(シート状薄膜EL層3)の上に設ける体積ホログラム形成層VHを通して、所定波長の発光に応じた「色」の透過型体積ホログラム再生像、例えば、「緑色の(透過型体積)ホログラム再生像7」を視認することができる。(図4参照。)
次に、有機エレクトロルミネッセンス素子について説明すると、上記した、透明導電性薄膜層の上に、発光層となる有機薄膜を形成し、陰極で挟んだものが最も単純な有機エレクトロルミネッセンス素子からなるエレクトロルミネッセンス層(シート状薄膜EL層3)となる。
発光層は、主材料(ホスト材料)と不純物材料(ドーパント材料)との2成分系であり、発光する不純物材料は、0.1〜1%添加で主材料中に均一に分散されている。
有機薄膜の電子移動度は、高速応答を目的とするものではないため、比較的小さいものでも用いることができ、1×10-6cm2 /V・s以上の値とするのが好ましい。
発光層である有機薄膜に、低分子系を用いる場合には、発光層材料として、ZnPBO(ビス[2−(2−ベンゾキサゾリル)フェノラト]亜鉛)と、ドーピング色素材料として、Coumarin6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)コーマリンを用いて、CVD法を用いて、50nm厚さに形成する。
発光層である有機薄膜に、高分子系を用いる場合には、発光層材料として、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)系、正孔層材料として、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)+PSS(ポリスチレンスルホン酸:ドーパント)共重合体を、コーティング方式により、固形分を0.5%として、乾燥後の厚さ100nmとする。
また、有機薄膜に、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤や、スチリルベンゼン系化合物、8−キノリノール誘導体を配位子とする金属錯体を併用することも好ましい。また、ジスチリルアリーレン骨格、例えば4,4’一ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等をホストとし、それに青色から赤色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系あるいはホストと同様の蛍光色素をドープしたものを併用することも好適である。
形成方法としては、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(ラングミュア・ブロジェット)法、スパッタリング法等の方法を採用することができる。例えば、真空蒸着法により形成する場合は、真空度1×10-7〜1×10-3Pa、成膜速度0.1〜50nm/秒、基板温度−10〜100℃の条件を採ることが好ましい。
また、結着剤として機能する適宜な樹脂と有機薄膜用の材料とを所定の溶剤に溶かして溶液状態とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、有機薄膜を形成することができる。なお、有機薄膜は、形成方法や形成条件を適宜選択し、気相状態の材料化合物から沈着されて形成された薄膜や、溶液状態又は液相状態の材料化合物から固体化されて形成された膜である分子堆積膜とすることが好ましい。
これらの上に、陰極層として、金属、合金、それらの酸化物、電気電導性化合物又はこれらの混合物を使用する。具体的には、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、リチウム、ナトリウム、セシウム、銀、錫等の一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
代表的には、陰極層として、アルミニウム薄膜層を上記同様に設け、有機エレクトロルミネッセンス素子からなるシート状薄膜EL層3を得る。
有機エレクトロルミネッセンス素子においても、無機エレクトロルミネッセンス素子と同様に、陽極端子を露出させる方法を取る。
この陽極と、陰極の間に、電圧10Vの直流電圧を印加すると(その『電圧を印加した状態6』となっている。)、エレクトロルミネッセンス層(シート状薄膜EL層3)において発光が生じ、陽極側よりその光が放出され、エレクトロルミネッセンス層(シート状薄膜EL層3)の上に設ける体積ホログラム形成層VHを通して、所定波長の発光に応じた「色」の透過型体積ホログラム再生像、例えば、「緑色の(透過型体積)ホログラム再生像7」を視認することができる。(図4参照。)
また、「シート状薄膜EL層3」以外の「シート状薄膜光源層」(図示せず。)としては、以下のものを採用することができる。
まず、「シート状薄膜蛍光層」には、蛍光体を透明な樹脂に均一に分散した樹脂分散型の蛍光インキや、水または溶剤に蛍光体を分散した溶媒分散型の蛍光インキを作製し、それらを用いて、印刷方式や、コーティング方式さらには、インクジェット方式等の種々の形成方法を用いて、透明基材1の上に、均一な厚さで、その全面に、または、部分的に形成することができる。
樹脂分散型の蛍光インキは、上記した蛍光体を、透明樹脂、例えば、熱可塑性樹脂とし
てはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポ
リスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル
ウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アル
キッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等に2次凝集を少なくするように、ガラスビーズや
スチールビーズを用いたボールミル、ニーダー、ロールミル等による混練りを十分行い、
溶剤等で粘度調整をして、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、カー
テンコート方式、ノズルコート方式、さらには、インクジェット方式を適宜用いて均一な
厚さ、0.01μm〜10.0μmに形成することができる。
特に、シート状薄膜蛍光層の厚さを、0.003μm以上1.0μm以下、さらには、0.01μm以上0.5μm以下とするためには、樹脂分散型インキの固形分を1〜10%とし、溶剤若しくは水を溶媒とした塗布膜が、例えば、10μmであったときに、溶媒を蒸発させた後の厚さ(蛍光層の厚さ)がその1/10乃至は1/100となるようにし、1.0μm〜0.1μmとする。
溶媒分散型の蛍光インキは、樹脂成分を含まず、蛍光体と溶媒のみであるため、樹脂
分散型よりシート状薄膜蛍光層の厚さを薄くすることができる。
溶媒としては、水やアルコール系溶剤、もしくは、セルソルブ系、パラフィン系溶剤を
用いて、粒子系の小さい蛍光体を分散保持させ、攪拌しながらカーテンコート、ノズルコ
ート等により透明基材1の上に設けることができる。
さらには、遅い揮発性の溶剤を数μm塗布し(アクリル・塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂や、ポリエステル樹脂等に対するケトン系溶剤、例えばシクロヘキサノン等。この溶剤を非溶解性の溶剤で希釈して使用し、残留する成分を0.1μm以下にすることも可能である。)、透明基材1の最表面のみを溶解して、その最表面に粘着性を付与し、その上に、蛍光体を粉体のまま吹きかけて、その粘着性の面に接する蛍光体粒子のみが透明基材1面上に残るようにするシート状薄膜蛍光層の形成方法も好適である。
この方法によると、シート状薄膜蛍光層がほぼ1粒子膜となり、透明基材1面上に均一に形成され、透明基材1側から励起光を当てた場合の蛍光発光面が、透明基材1の平坦な面と同一となる。
いずれにしても、「シート状薄膜蛍光層」を均一厚さで、且つその中の蛍光体が均一な密度となるように(部分形成の場合には形成してある部分同士が均一に)形成するためには、蛍光体の粒径は小さい方が好ましく、ナノ蛍光体は特に好適である。
ナノ蛍光体とすることで、「シート状薄膜蛍光層」を励起する「励起光」が、その層内で多重反射現象を生じやすくなり、且つ、「シート状薄膜蛍光層」内で発生した「所定波長の光」が、やはり層内で多重反射現象、さらには、誘導放出現象を発生して、その発光強度や指向性を高めることとなる。
特に、その「誘導放出現象」を増幅させるため、「シート状薄膜蛍光層」の上の界面、すなわち、「『シート状薄膜蛍光層』と『体積ホログラム形成層VH』との界面」や、「空気ととの界面」の、その「所定波長の光」に対する「透過率/反射率」の比率を、90/10〜40/60とする。好適には、80/20〜60/40とする。(この比率は、上記した『界面』の一つの性能としてもよいし、上記した『界面』全体の性能としてもよい。)
そして、「シート状薄膜蛍光層」の上の界面、すなわち、「透明基材1とシート状薄膜蛍光層」や、「透明基材1と空気との界面」のその「所定波長の光」に対する「透過率/反射率」の比率を、0/100〜50/50とすることが、好適である。そのために、透明基材1の上、または、下の面に、アルミニウムや銀等の「金属反射層」を適宜な厚さで設けてもよい。
もちろん、この反射性を持つ「上下の界面」の間の距離は、上記した学術論文に記載のごとく、「所定波長の『長さ』」と同等の長さ、もしくは、それより著しく「短く」することで、その「上下の界面」間に生じる、多重反射現象、及び、誘導放出現象を増幅することができることは言うまでもない。
以上の「多重反射現象」及び「誘導放出現象」は、本発明の「ホログラムシートA」に用いられる、他の「シート状薄膜光源層」にも同様に発生し、各々適宜な「界面」につき、上記の「透過率/反射率」の設定を施すこととなるが、その詳細な説明は省略する。
蛍光体は、紫外線、電子線、X線などのエネルギーを吸収して可視光線として放出する物質であり、例えば、母体となるセラミックス結晶にEu やCe などの発光を担う金属イオンが微量添加した材料等がある。この場合、発光に寄与するは金属イオンであり、外から加えられたエネルギー(紫外線、電子線、X線などや、もちろん可視光線、赤外線等のエネルギー。)を吸収して励起され、その後基底状態に戻る時に発光する。ホスト結晶の格子は金属イオンを取り囲むことによりイオンを化学的に安定化させたり、結晶場や配位環境を整えることにより発光色や発光強度を制御する働きをする。
本発明は、これらの蛍光発光の内、ストークスシフト(Stokes shift)によって可視光領域の発光を起こす蛍光体材料を用いる。もちろん、赤外線の励起による可視光領域の発光を起こすものも用いることができる
蛍光体は、一般的に、蛍光体原料を焼成する固相反応法により、製造される。この固相反応法では原料混合物を高い温度で焼成するため、得られる焼成ケーキは、蛍光体粒子が硬く凝集したものとなることが多い。そのため、通常は、蛍光体の製造の際には例えばボールミル、乳鉢等による粉砕工程を行うが、このときの蛍光体粒子の表面の損傷を抑制する方法として、流動式反応器装置を用いて、実質的に単分散の蛍光体−前駆体粒子を、流動する気体中に浮遊させて焼成することにより、凝集していない実質的に単分散の蛍光性粒子を製造する。この方法によれば、1μm未満の大きさの蛍光性粒子を製造することができる。
また、例えば、ZnGa24:Mn蛍光体を製造するに際し、焼成を行なう前の蛍光体原料を湿式沈殿法により調製することにより、低温での焼成が可能となり、蛍光体粒子の凝集を抑制することができる。
さらに、例えば、アルカリ土類アルミン酸塩系、またはアルカリ土類珪酸塩系の母体結晶を有する蛍光体の製造方法に関し、Srを含む蛍光体原料として硝酸ストロンチウムを用い、原料混合液又は懸濁液を所望の粒径となるよう液滴化し、これを焼成する方法がある。これにより、極めて脆い性質を有する蛍光体が得られ、容易に微小なサイズへ粉砕することができる。
蛍光体原料としては、製造しようとする蛍光体を構成する元素(以下、「蛍光体構成元素」ともいう。)を含有する化合物を用いることができる。その例を挙げると、蛍光体構成元素を含有する、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物、窒化物等が挙げられる。蛍光体原料の選択に際しては、得られる蛍光体への反応性等を考慮して選択することが好ましい。さらに、蛍光体を構成する各蛍光体構成元素に対応し、蛍光体原料は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、蛍光体の各蛍光体原料中に含まれる不純物としては、蛍光体の特性に悪影響を与えない限りにおいて、特に限定されない。
各蛍光体原料の重量メジアン径としては、通常0.01μm以上、0.5μm以下である。このために、蛍光体原料の種類によっては予めジェットミル等の乾式粉砕機で粉砕を行っても良い。これにより、各蛍光体原料の原料混合物中での均一分散化を図り、かつ、蛍光体原料の表面積増大による原料混合物の固相反応性を高めることができ、不純物相の生成を抑えることが可能となる。
例えば、Baを含む蛍光体原料の具体例としては、BaO、Ba(OH)2・8H2O、
BaCO2、Ba(NO32、BaSO4、Ba(C24)・2H2O、Ba(OCOCH3)2、BaCl2等が挙げられる。
その他、Ca、Sr、Zn、Mg、Si、Eu、Sm、Tm、Yb、Mn、Cr、Tb、Pr、Ce、Lu、La、Gd、Ge、Ga、P、Bを含む蛍光体原料等が挙げられる。
蛍光体原料を混合して原料混合物を調製してから、原料混合物を所定温度、雰囲気下で焼成する。この際、混合は十分に行うことが好ましい。
上記混合手法としては、特に限定はされないが、具体的には、下記(A)及び(B)として挙げた手法を用いることができる。また、これらの各種条件については、例えば、ボールミルにおいて2種の粒径の異なるボールを混合して用いる等の条件を選択可能である。
(A)例えばハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、前述の蛍光体原料を粉砕混合する乾式混合法。
(B)前述の蛍光体原料に例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒又は水などの溶媒又は分散媒を加え、例えば粉砕機、乳鉢と乳棒、又は蒸発皿と撹拌棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる湿式混合法。
蛍光体原料の混合は、蛍光体原料の物性に応じて、湿式又は乾式のいずれかを選択することができる。
また、ハロゲン化物、窒化物等の酸化・吸湿し易い原料を用いる場合には、例えばアルゴンガス、窒素ガス等の不活性気体を充填し、水分管理されたグローブボックス内でミキサー混合する。
また、混合・粉砕時に、粒径を揃える等の目的で、蛍光体原料を篩いにかけても良い。この場合、各種市販の篩いを用いることが可能であるが、金属メッシュのものよりもナイロンメッシュ等の樹脂製のものを用いる方が、不純物混入防止の点で好ましい。
特に、ナノ蛍光体、すなわち、Siナノ蛍光体、ZnSナノ蛍光体、YAG:Ceナノ蛍光体、LaPO4:Lnナノ蛍光体、色素ドープシリカナノ蛍光体、半導体ナノ粒子、CdSe−ZnS量子ドット等は、その粒径が著しく小さいため、平坦な面上へ均一に形成でき、かつ、形成厚さも制御しやすいことから特に好適である。半導体薄膜の極微細加工により形成する場合は、高精度且つ、極薄膜で形成可能であり、発光する「光」の波形や、強度を制御して、その干渉性を向上させることができる。
蛍光性半導体量子ドットにおいては、中心核(コア)は、例えば、セレン化カドミウム(CdSe)でできており、その外側を硫化亜鉛(ZnS)の被覆層(シェル)が覆っている構造をしている。この金属化合物の直径を変えることで、発する蛍光波長が変わる特徴を持つ。この量子ドットの周囲に生体高分子を配置したものは、生体高分子特有の反応基を有するため、この反応基を利用して蛍光体を特異的に配置させることが可能である。
紫外線発光蛍光体としては、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻る時に発する蛍光スペクトルのピークが、青、緑、赤等の波長域にあるものである。そして、このような紫外線発光蛍光体としては、例えばCa259 Cl:Eu2+,CaWO4 ,ZnO:Zn,Zn2 SiO4 :Mn、Y22 S:Eu,ZnS:Ag,YVO4 :Eu、Y23 :Eu,Gd22 S:Tb,La22S:Tb,Y3 Al5 O12:Ce等があり、これらを単体として使用するか、またはこれらを数種、適当な割合で混合して使用する。
これらは、蛍光スペクトルのピークを、青、赤、緑の波長領域以外に有するものである。また、インキ中の紫外線蛍光発光体の重量率は、読み取りヘッドの受光素子による蛍光の検知が可能であればよい。
一方、赤外線発光蛍光体としては、波長λ1の励起光を受けて、波長λ2の可視光を発光する特性を有し、λ1=λ2かつλ1>λ2なる性質を有するものがある。そして、このような赤外線発光蛍光体としては、例えば組成が YF3:Yb,Er,ZnS:CuCO等がある。
具体的例として、BASF社製ルモゲンFVヴァイオレット570(ナフタルイミド:374nm→413nm)、ルモゲンFイエロー083(ペリレン:励起波長476nm→発光波長490nm:以下同じ。)、ルモゲンFオレンジ(ペリレン:525nm→539nm)、ルモゲンFレッド305(ペリレン:578nm→613nm)等、
デイグロ社製蛍光顔料:グロプリルT/GTシリーズ、ACTシリーズ、Z/ZQシリーズ、GPLシリーズ、LHYシリーズ、蛍光染料:ダイブライトD−818ロアノークイエロー、D−784アルパータイエロー、D−208アパツチイエロー、D−288チェロキーレツド、D−688コロラドレツド、D−298コロンビアブルー等、
シンロイヒ社製蛍光顔料:シンロイヒカラーFZ−2000シリーズ(FZ−2001RED等)、FZ-2800シリーズ(FZ−2808Blue等)、SX−100シリーズ(SX−104Orange等)、SX−1000シリーズ(SX−1004Orange、SX−1005Lemon Yellow、SX−1007Pink、SX−1037Magenta:平均粒径1.0μm以下)、SW−10シリーズ(SW−11Red Orange、SW−12NGreen、SW−13Red、SW−14NOrange、SW−15N Lemon Yellow、SW−16N Orange Yellow、SW−07Cerise、SW−17Pink、SW−27Rose、SW−37Rubine、SW−47Violet、SW−28Blue:平均粒径1.0μm以下)、SPシリーズ、SF−3000シリーズ(超微粒子タイプ)、SF−5000シリーズ(超微粒子タイプ)、SF−8000シリーズ(超微粒子タイプ)、ルミライトナノRY202(粒径30nm、365〜370nm→619nm)等。
モリテックス社製:蛍光粒子(グリーン:468nm→508nm)G25(粒径0.03μm)、G40(粒径0.04μm)、G50(粒径0.05μm)、G75(粒径0.07μm)、G85(粒径0.09μm)、G100(粒径0.10μm)、G140(粒径0.14μm)、G200(粒径0.20μm)、G250(粒径0.25μm)、G300(粒径0.30μm)、G400(粒径0.40μm)、G450(粒径0.45μm)、G500(粒径0.50μm)、蛍光粒子(グリーン:360nm→530nm)34−1(平均粒径3.0μm)、蛍光粒子(ブルー:365nm→447nm)B50(粒径0.05μm)、B100(粒径0.10μm)、B150(粒径0.14μm)、B200(粒径0.20μm)、B300(粒径0.30μm)、B400(粒径0.40μm)、B500(粒径0.50μm)、蛍光粒子(レッド:542nm→612nm)B50(粒径0.05μm)、B60(粒径0.05μm)、B100(粒径0.10μm)、B160(粒径0.16μm)、B200(粒径0.20μm)、B300(粒径0.30μm)、B400(粒径0.40μm)、B500(粒径0.50μm)等、
テールナビ社製 紫外線励起蛍光顔料UVP−1(発光波長421nm)、UVB−1(発光波長453nm)、UVG−2(発光波長517nm)、UVR−2(発光波長626nm)、可視光励起蛍光顔料LMS−570(450〜520nm→570nm)、LMS−560(450〜467nm→560nm)、LMS−550(450〜465nm→550nm)、LMS−540(450〜465nm→540nm)等、イントロジェン社製Qdot525ナノクリスタル(350〜488nm→525nm)、Qdot565ナノクリスタル(350〜488nm→565nm)、Qdot585ナノクリスタル(350〜488nm→585nm)、Qdot605ナノクリスタル(350〜488nm→605nm)、Qdot625ナノクリスタル(350〜488nm→625nm)、Qdot655ナノクリスタル(350〜488nm→655nm)、Qdot705ナノクリスタル(350〜488nm→705nm)、Qdot800ナノクリスタル(350〜488nm→800nm)等、 エヴィデントテクノロジーズ社製エヴィドット:CdSe/ZnSコアシェルエヴィドット(平均粒径7.2〜9.6nmで発光波長490nm〜620nm)等、 日本カンタムデザイン社製量子ドット:カルボキシル基タイプ、アミノ基タイプ:直径3.0nm〜直径8.3nmで発光波長530nm〜620nm等を好適に用いることができる。
また、「シート状薄膜応力発光層」は、以下に記載する「応力発光材料層」で構成される。
その「応力発光材料層」は、「応力発光材料そのもの」で構成される、いわゆる「セラミック板、もしくは、セラミックの薄膜層(以下、『セラミック板等』と総称する。)」とすることができる。その場合、「応力発光材料層の組成」は、その100%が「応力発光材料」となる。
そして、その「応力発光材料層の表面に、所定の部位として、以下に詳述する「応力集中係数αが2以上となる、『所定の形状の切欠け部、及び/または、凹部』を設けてもよい。
もしくは、「応力発光材料層」は、「応力発光材料を組成とする微粒子を、所定の透明な樹脂に分散してなる」ものとしてもよい。
すなわち、「セラミック材料である応力発光材料」を、「粉砕手段、及び、分級手段」を用いて、「所定の形状を有する微粒子」とするか、または、「成形用、または、焼成用の『型』」に「応力発光材料」を入れて、成形(焼成)することにより「所定の形状を有する微粒子」とした、「応力発光材料を組成とする微粒子」を、「分散化手段」を用いて、「所定の透明な樹脂」に「分散」したものであり、その「微粒子の組成」は、その100%が「応力発光材料」で構成されている。
そして、その「応力発光材料」からなる「微粒子」の「形状」は、その表面に多数の「凹凸形状」を有し、その「凹凸形状」の特には、「凹みの底の部位」が、「所定の部位」となり、且つ、その「所定の部位」の「応力集中係数α」が2以上となっている。
そして、その「『応力発光材料を構成する構造』に特有の波長の光」が、「所定波長の光」であって、通常は、「可視光」の波長範囲、すなわち、光の波長で、400nm〜800nmの範囲にあり、一つの種類の「応力発光材料」に対応して、一つの波長の光が発光する。従って、この発光した「所定波長の光」に基ずく、透過型体積ホログラム再生像を観察者が目視にて視認できることとなる。但し、この「所定波長の光」の強度は、「目視にて視認可能である」とするためには、その「発光輝度」(「光の強度」の一つの指標。)として、少なくとも1.0mcd/cm2(ミリカンデラ/平方センチメートル)の大きさが必要である。
上記した「応力発光材料」とは、いわゆる「熱弾性マルテンサイト変態」近傍において、「物理的な変形」を伴って、その材料に「応力」を負荷すると「双晶擬弾性変形」を生じやすい材料である、「Eu添加SrAl24(「SAOE」とも称される。)」等に代表される、「『物理的な変形』を伴って、その材料に『応力』を負荷した際に、所定の波長の光を発光し、且つ、その負荷した『応力』に応じてその発光強度が増加する」材料を、焼成し、焼結させて、所定の形状(平板状。)としたものである。
ここで、「物理的な変形」と表現した意味は、もちろん、「化学的な組成変化」ではないことを表すが、さらに、「材料内部の一部の結晶構造のみがその格子構造を変化させること」に留まらず、「材料全体の外形の変化」に至る「変形」であることを示している。(このように、「『外観上認識できる外形の変形』を伴う変形」を、「物理的な変形」と称した。すなわち、格子構造の変形が、微視的な領域のみで発生している状態ではなく、格子構造の変形が材料内で伝搬し、視認できるほどの大きな領域に渡って発生している状態を意味する。)
従って、「応力発光材料層」に用いる「応力発光材料」の「発光」を促進するために、「材料全体の外形」が「変化」し得る「領域」(動き得る領域として「可動域」とも表現される。)を確保することが求められる。
次に、上記した「応力集中係数α」につき説明する。
そもそも、「応力集中」とは、ある材料の「形状」の「不連続性」により、その材料に外力を負荷して、その材料内部に、その外力に応じた「応力」を発生させたとき、その「不連続箇所」の近傍に、他の領域に発生する「応力」に比較して、「大きな応力」が発生することをいう。
そして、この「応力集中」の要因となるものとして、その「材料」に存在する「段差(断面の急激な変化)」、「凹み」、「凹凸」、「貫通孔」、「切欠き」、さらには、その材料内の「材料組成の急激な変化」(燒結境界面や、溶接などによる接合面)などがある。
この「応力集中」の状態を数値で表したものが、「応力集中係数α」であって、α=σmax/σ0(式中、σ0は、材料全体に発生する「『応力』の平均値」であり、σmaxは、その応力集中箇所に生じる「『応力』の最大値」である。)と表される。
単純な例として、円柱形状の材料(上面と下面が同一の円となっている棒状のもの。)に対して、その上面と下面(各面の面積を、S平方ミリメートルとする。)を挟んで垂直方向に外力F(N:ニュートン)を負荷したとき、その円柱形状の中間位置に、断面積がその上面(下面)の1/2となる箇所(この箇所の断面積は、S/2平方ミリメートルとなる。)を設けてあるとすると、σ0は、[(比例定数k)×F/S](N/mm2)となり、σmaxは、[(比例定数k)×2F/S](N/mm2)となって、応力集中係数α=σmax/σ0=2.0となる。
この例は、上記したような「物理的な変形」を伴わない応力発生例であるが、説明の単純化のために敢えて用いた。
そして、「応力発光材料層」に用いる「応力発光材料」の「応力集中係数α」を、2以上とするためには、「層状」の外形をした「応力発光材料」の一部に、その「応力発光材料層」の厚さの1/10〜1/5の深さの「凹み」や「切欠き」を設けることで得られる。
この「凹み」の形を、「底の浅い形。例えば、[(開口部幅/深さ)の比]が1/20〜1/10」としたもの、もしくは、「底の深い形。例えば、[(開口部幅/深さ)の比]が1/5〜1/1」としたものは、この「凹み」の「底部」周辺に「応力集中」が起こり、その「応力集中係数α」は、2以上となる。
同様に、「段差」、「凹凸」や、「材料組成の急激な変化」を設けることで、「応力集中係数α」の値を調節することができる。
この「応力発光材料層」に用いる「応力発光材料」は、発生した「応力の大きさ」に応じて、さらには、ほぼ比例して、その発光強度が大きくなるため、「応力集中係数α」が大きいほど、その発光強度が増大し、視認性を向上させることができる。
その「応力集中係数α」は、大きいほど望ましく、2以上とする。さらには、10以上、より好適には、100以上とすることで、その部分の発光強度を「高輝度」として、より視認しやすくすることができる。
但し、「応力集中係数α」が大きければ大きいほど、「応力発光材料」の「形状」の「不連続性」が、いわゆる「急激」なものとなり、「応力発光材料」を「発光」させるための「変形」を繰り返すと、容易に「破壊」され、もはや、「発光」しなくなるため、不適当である。(このことは、真正性判定の信頼性を確保するため、『少なくとも100回以上の安定した発光』が必要であるが、その信頼性を確保できないことを意味する。)
また、「応力発光材料層」は、「応力発光材料」を組成とする微粒子を、所定の透明な樹脂に分散して形成することもできる。
すなわち、「応力発光材料(複数の応力発光材料から成る、『応力発光材料の複合体』を含む。)」を、最大直径で、0.1μm〜50μm、好適には、5.0μm〜20μmの「微粒子」とし、もしくは、平均粒径D50で、0.05μm〜20μm、好適には、0.5μm〜10μmの「微粒子」として準備し、これを、熱可塑性樹脂、及び/または、熱硬化性樹脂の中から、下記する「透過率」を有する「樹脂」を選定して、「透明な樹脂」とした、その「透明な樹脂」中に、その「微粒子」の2次凝集化を抑制しつつ「分散」させ、「『応力発光材料』の『微粒子』を『透明な樹脂』に『含ませた』、すなわち、『混在』させた『応力発光材料層』」とすることを意味する。
特に、「応力発光材料」の「微粒子」は、「応力発光材料の平板」や、「応力発光材料の塊」を、物理的に粉砕して「微粒子」とするが(これが、『微粒子化』である。)、その粉砕の際、例えば、衝撃式粉砕機を用いて、「微粒子」が比較的不規則な形状となるように制御し、且つ、粉砕した微粒子間の衝突を抑制しつつ、「分級装置」にて、所望の粒径の所望の形状を有する「微粒子」を作製する。
さらには、「焼成前の『応力発光材料』用組成物」(所定の『焼成』手順によって、目的とする『応力発光材料』となる、所定の各元素を所定の割合で含む、水酸化物、水和物、酸化物、複合酸化物、硝酸塩、塩酸塩、炭酸塩、酢酸塩、硫酸塩等の原材料及びその混合物を意味する。『前駆体』ともいう。また、発光中心元素を、ドーピング手段等により別途添加することもできる。これらの混合物、さらには、粉末混合物、もしくは、粉体混合物を、直接、『焼成』する。)を、セルロース系樹脂やエチルセルロース系樹脂等の「焼成によって分解しやすい樹脂」(いわゆる、『セラミックス』製造用の樹脂。焼成によって、その樹脂の成分が、炭酸ガスや水となって、ほぼ完全に焼失するもの。焼成時の『煤』や『残渣』が比較的少ないという特徴を持つ。)に分散させ、個々の「焼成前の応力発光材料」が、いわば「個々の粒子として、独立して、分散している状態」(この樹脂によって、互いに離間させられている状態という意味。)とし、所定の焼成を行うことで、「応力発光材料」を、「個々の粒子として、独立して、分散している状態」のまま焼成し、燒結させることも、焼成後の個々の形状をより複雑なものとすることを可能とし、よって、応力集中係数αの大きい「形状」を実現し易くすることができ、好適である。
さらには、噴霧熱分解法、ゾルーゲル法、及び、フラックスフィーダー法などを用いることもできる。
もちろん、応力集中係数αの大きい「形状」を得るために、所望の「形」とするため、その所望の「形」をその内部形状として持つ「成形型(金属製、もしくは、セラミックス製)」に、上記した「焼成前の『応力発光材料』用組成物」を充填して(もしくは、その成形型で成形と同時に充填して。)、焼成後、その成形型から取り出す製法も採用することができる。
この「微粒子」の「形状」が不規則であればある程、さらには、「微粒子」の表面が粗面であればある程、「応力集中係数α≧2」となる「部位」を広範囲に有するとともに、αが非常に大きい(α≧500)形状を持つこととなる。
ここで、「透明な樹脂」とは、「可視光透過率が高い樹脂」であって、具体的には、ナトリウム原子のD線(590nm)における透過率が、50%以上、好ましくは、80%以上のものをいう。
このような「応力発光材料」は、「材料」そのもの、すなわち、「材料の組成」、もしくは、「材料の構造」に、「潜在的な発光構造」を持たせ、比較的小さい応力を負荷するのみで、その「材料」を発光させ得る、新規な「発光」メカニズムを持つ(独立行政法人)産業技術総合研究所の徐氏他が開発した新規な「発光材料」であって、「力学エネルギー」の比較的小さい「弾性変形領域」で「応力発光を示す材料」である。
そもそも、「応力発光」とは、「発光」の励起源として「機械的な力」を用いるものであり、「外部から加えられた『機械的な力(力学エネルギー)』によって、材料が『発光』する現象」のことと定義されている。
従来の「応力発光」現象は、「破壊発光」と「変形発光」とに分けることができ、このうち、「破壊発光」は、材料を破断させたり、粉砕したりすることによって「光」が放出される現象であって、「方解石」を割った時などに観察されていた現象である。一方、「変形発光」は、このような「破壊」を伴わないものであって、ある材料に外力負荷を徐々に掛けていったときに現われる、いわゆる「応力―ひずみ曲線」において、その「曲線」が「直線」として示される(「応力」が「ひずみ」に比例するという意味。)「弾性変形領域」での発光と、この「直線」が、「材料の降伏点」において途絶えて(その比例関係が終わるという意味。)、材料内部において少しずつではあるが「構造破壊」の段階に入っている「塑性変形領域」での発光に分けられる。「破壊発光」現象は、非常に多くの材料系で観察されており、無機物質の約半分は「破壊発光」の性質を持つと言われている。
これに対して、「変形発光」については、放射線照射したアルカリハライドやある種の高分子で数例の報告例はあるものの、これは、「塑性変形領域」での微弱な発光であると判明している。
(独立行政法人)産業技術総合研究所の徐氏他が開発した「応力発光材料」は、これとは異なり、この「変形発光」の中で、しかも、「弾性変形領域」での「応力発光」を示す材料である。
これらはいずれも、高度に構造を制御した無機結晶骨格の中に、発光中心となる元素を添加した材料(セラミクス)であり、無機材料や発光中心の種類を選択することにより、紫外〜可視〜赤外の様々な波長で発光する材料が得られている。
代表的なものとしては、発光中心として、ユウロピウムを添加したアルミン酸ストロンチウム(SrAl24:Eu:緑色発光)、マンガンを発光中心として添加した硫化亜鉛(ZnS:Mn、黄橙色発光)等がある。
本発明の「ホログラムシートA」の「シート状薄膜光源層」に用いられる「応力発光材料」は、その「組成」を含めた「立体構造」、さらには、この「構造」の中に位置する「電子密度の高い格子位置の元素」や「電子密度の低い格子位置の元素(『格子欠陥:元素が無い状態』となっているものも含む。)」によって、その電子状態の「遷移幅」が決まり、この「遷移幅」に相当するエネルギーを持つ「光」を発する。
すなわち、外力によって発生した内部応力(「機械的なエネルギー」)を受けて、「エネルギーE=プランク定数×光の振動数」&「光の波長=光速度/光の振動数」の式に基づく、所定の波長の光を放出するが、この内部応力の大きさをいかに大きくしても、また、この内部応力を与える速度をいかに大きくしても(すなわち、ひずみ速度をいかに大きくしても。)、「所定の波長」そのものは変化せず、「一定」である(材料に「固有」という意味。)。
この新規な「応力発光材料」の発光メカニズムは、(独立行政法人)産業技術総合研究所山田氏、及び、新日本製鐵株式会社松尾氏により、いずれも、代表的な「応力発光材料」である、SrAl24:Eu系につき、詳細に発表されているため、以下に、その概略のみを記す。(「(独)産業技術総合研究所 生産計測技術研究センター 応力発光技術チーム長 徐超男(編集代表)、上野直広、寺崎正、山田浩志(編集委員)他著、“応力発光による構造体診断技術 Mechanoluminescence and Novel Structural Health Diagnosis”、株式会社エヌ・ティー・エス、2012年8月発刊」参照。)
前者は、母体結晶が、スタッフド・トリジマイト構造であって、且つ、AlO4四面体が「頂点共有」して形作られるハニカム構造となっており、その中の大きな空孔に、Sr2+イオンが配置している構造を持つ。
そして、その母体結晶の中に、発光中心として、Eu2+イオンが添加されて、上記したSr2+イオンの2つの種類のサイトに置換されているとし、このEu2+イオンの「4f−5d電子軌道遷移」(このときの電子軌道エネルギーの差が上記のエネルギーEとなる。)に伴う輻射遷移によって発光が起こるものとしている。
後者は、燒結体作成時に、SrAl24のβ相からα相への熱弾性マルテンサイト変態が起こって、結晶内に「双晶界面」が形成され、その界面近傍の電子密度に勾配が生じ、紫外線照射などでEuから励起されたキャリアが、空孔などにトラップされた状態にある「応力発光材料」に、「応力」を負荷すると、「双晶擬弾性変形」が起こり、その変形に伴って「双晶界面」が移動することより、電子密度分布が変化して、トラップされたキャリアが解放され、発光中心のEu2+と再結合して発光が起こるとしている。
そして、この応力を除荷した際、「双晶界面」が元の位置に戻り、その際に、Eu2+からキャリアが励起され、空孔などにトラップされて、元の状態に戻り、この現象が繰り返されるとしている。
これらの発光メカニズムから、「応力発光材料」は、「機械的エネルギーによる『励起』」を必要とせず、「トリボルミネセンス」とは異なる現象と推察される。
いずれにしても、母体構造そのものの「変形」、従って、「応力発光材料」としての「物理的な変形(具体的に巨視的なスケールで、曲がったり、ねじれたりして、その『形』を変えるという意味。)」が必須であって、「応力発光材料」に対して、このような「変形」を可能とするためには、「応力発光材料」の「動き易さ」、及び、実際に「動く領域(「動ける空間」という意味。)を併せ持つ、「ホログラムシートA、またはA´、さらには、ホログラム付きカードCA1、または、CA2」の構成設計が必要となる。
そして、この「応力発光材料を構成する『構造』に固有の波長の光」が、上記した「所定波長の光」であって、通常は、「可視光」の波長範囲、すなわち、光の波長で、400nm〜800nmの範囲にあり、一つの種類の「応力発光材料」に対応して、一つの波長の光が発光する。但し、この「所定波長の光」の強度を、出現する体積ホログラム再生像が視認可能なレベルとするために、その「発光輝度」を、少なくとも1.0mcd/cm2の大きさとする。
特に、より鮮明化するために、10mcd/cm2以上、さらに、「高輝度」と認識させ、且つ、その「体積ホログラム再生像」を真偽判定に利用する場合における、その判定の信頼性をより高くするため、100mcd/cm2以上の「発光輝度」を持たせることが好ましい。
もちろん、一つの「応力発光材料」に、「複数の構造(結晶構造や、発光中心元素の異なるものなど。)」を含ませたり、「応力発光材料層」に、複数の種類の「応力発光材料」を含ませたりして、複数の波長領域を持つ光を発光するものとしてもよいし、さらには、可視光以外の波長領域において、「応力発光」させ(紫外光や赤外光の応力発光をする材料を用いる。)、その発光した光で、あらかじめ、本発明の「ホログラムシートA」に、適宜、含ませておいた「蛍光体層(適宜な蛍光材料を含む層。)」や「蛍光体パターン層(パターン状に形成した蛍光体層)」を「励起」して、可視光領域にて発光させて、結果として、可視光を視認するものとしてもよい。(図示せず。)
また、「応力発光材料」に、その応力発光材料の「耐水性」を向上するための、「所定の表面処理」を施してもよい。
すなわち、「応力発光材料」の個々の表面に対して、もしくは、「応力発光材料層」の表面に対して、「シリル化処理」による「耐水性の向上」を目的とする「所定の表面処理」を施して、「水分」による「応力発光材料」の結晶構造の崩壊や、発光性の喪失を防ぐ。さらには、その「シリル化処理面」を覆うように、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂の「被膜」を形成する「所定の表面処理」を施すことも好ましい。
「応力発光材料」には、上記したように、「熱弾性マルテンサイト変態」近傍において、「物理的な変形」を伴って、その材料に「応力」を負荷すると「双晶擬弾性変形」を生じやすい材料である、「Eu添加SrAl24(SAOE)」等に代表される、「『物理的な変形』を伴って、その材料に『応力』を負荷した際に、所定の波長の光を発光し、且つ、その負荷した『応力』に応じてその発光強度が増加する」材料を焼成し、焼結させて、所定の形状(層状。)としたものを用いる。
ここで、「『物理的な変形』を伴って、その材料に『応力』を負荷する」とは、
「ホログラムシートAに対する所定の外力負荷」によって、その「外力負荷」が、「『応力発光材料』に対する外力負荷」へと伝わったときに、「応力発光材料」内に「応力ひずみ」が発生し、「応力発光材料」そのものが、「物理的な『変形』」=「応力ひずみ」を生じることを意味する。
すなわち、「応力発光材料」は、外力負荷を与えると、いわゆる「応力―ひずみ線図」において、その「弾性域内(応力―ひずみ線図において、直線状に変化する領域。従って、外力負荷を除去すると元の状態に戻ろうとする。)」における挙動を指す。(この挙動が、いわゆる「弾性変形」である。)
「応力発光材料」の「応力発光」は、この「弾性変形」領域で発生する現象を利用するものであって、その発光現象を、数百回から数万回程度、安定して起こすことができ、この「発光」を視認することで、その真正性を判定する目的、すなわち、この「発光」と「判定」を繰り返し行う用途に適している。
このように、「『物理的な変形』を伴って、その材料に『応力』を負荷する」と、材料外形に対して、目視できるほど大きな「物理的な変形」を生じさせることができ、その材料内部の結晶構造そのもの(格子形状など。)や、晶壁(結晶と結晶の壁。)に対しての変形や移動を促進し、その「変形や移動」に基づく「発光」を増大させることができる。
この「応力発光材料層」に用いる「応力発光材料」には、多面体構造の複数の分子によって形成される母体構造の空間に、アルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンが、挿入された基本構造を有し、その一部が、希土類金属イオン、や遷移金属イオンの中の、少なくとも1種の金属イオンによって置換されている応力発光材料、AlO様構造、及び、SiO様構造の四面体構造を有する複数の分子によって形成された3次元構造と、非対称性のフレキシブルなフレーム構造とを有する基本構造に、発光中心が挿入された構成である応力発光材料、歪エネルギーの形成によって、圧電効果、格子欠陥、および変形による発熱等の機構により発光する応力発光材料や、複数の結晶構造を混在してなる混和とした応力発光材料など、さらには、これらの応力発光材料の発光輝度を、数百倍以上高めた、高発光輝度応力発光材料、可視光領域以外の発光を生じる紫外光(赤外光)発光応力発光材料、もしくは、超微粒子化して透明な樹脂に分散せて「透明な材料」とした応力発光材料などを用いることができる。
また、「応力集中係数α」の大きい「応力発光材料」を用いることで、「応力発光材料」に負荷する「応力」の「大きさ」は、例えば、JIS X 6305(2010:ISO/IEC 10373−1)の「識別カードの試験方法―第1部:一般特性」に提示されている、「カードの右側 3mm 以内の領域全体に0.7Nの荷重(F)を1分間かける。」というような「大きな応力負荷。(10MPa程度と試算される。)」でなく、観察者の「手」で軽く曲げる程度の「大きさ」で、十分な発光を得ることができるものとなり、そのような応力負荷を、5kPa〜1MPa、好ましくは、5kPa〜100kPaに設定することができる。
但し、「応力集中係数α」が大きければ大きいほど、「応力発光材料」の「形状」の「不連続性」が、いわゆる「急激」なものとなり、「応力発光材料」を「発光」させるための「変形」を繰り返すと、容易に「破壊」され、もはや、「発光」しなくなるため、「応力集中係数α」が1000を超えるものとすることは、不適当である。
「応力集中係数α」の計算は、上述した「円柱形」のような、単純な形状においては容易であるが、より複雑な形状を持つ「応力発光材料」に対する、しかも、「応力発光材料」の中で、「所定の部位」に「応力が集中」し、その「『応力発光材料』の中で『応力集中係数αが2以上』となる所定の部位」の、その『応力集中係数α』の値を求めるためには、「有限要素法」を用いた「構造解析ソフト(応力分布解析ソフト)」を適用して求める必要がある。
そのような「応力発光材料」としては、以下のものを用いることができる。
(1)多面体構造の複数の分子によって形成される母体結晶の空間に、アルカリ金属イオン、及び/または、アルカリ土類金属イオンが、挿入された基本構造を有し、その空間に挿入された、アルカリ金属イオン、及び/または、アルカリ土類金属イオンの、一部が、希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、および、IV族の金属イオンからなる群より選択される、少なくとも1種の金属イオンによって置換されている応力発光材料。
この応力発光材料は、その基本構造である母体結晶として、
P−1空間群に属する三斜晶構造、特には、アノーサイト様構造、及び、3次元構造の空間にアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンを挿入できる範囲で、アノーサイト構造に類似する構造(類似の組成物)も包含するもの、
P−42m空間群に属する正方晶構造、特には、オケルマナイト(akermanite、オケルマン石)様構造、及び、母体結晶の空間に、アルカリ金属イオンお主びアルカリ土類金属イオンを挿入できる範囲で、オケルマナイト構造に類似する構造(類似の組成物)も包含するもの、
R−3空間群に属する三方晶構造、特には、アルミノケイ酸塩の組成を持つ長石(フェルドスパー)構造、及び、四面体構造のSiO分子およびAlO分子が最小単位であり、これらの分子が全ての頂点を共有して複数結合した、3次元構造体、さらに、その3次元構造体に形成された空間(隙間)に、アルカリ金属、または。アルカリ土類金属が挿入されているもの、
準長石(feldspathoid、フェルドスパソイド)構造、例えば、白榴石(leucite、リューサイト)KAlSiO、かすみ石(nepheline、ネフェリン)NaAlSiO、およびこれらの組成物に結晶構造が類似する組成物等、
そして、この基本構造が、下記一般式(1)〜一般式(6)のいずれか1つで示されるものを用いる。
すなわち、MxN1−xAl2Si28・・・(1) / XxY1−xAlSi38・・・(2) /(XxM1−x)(SixAl1−x)AlSi28・・・(3) /XxMyCa1−x−yAl2−xSi2+xO8・・・(4) /MxN2−xMgSi27・・・(5) /MxN3−x(PO42・・・(6)(ただし、式中、MおよびNは、2価の金属イオンであって、少なくとも1つは、Ca、Sr、Ba、MgまたはMnであり、XおよびYは、1価の金属イオンであって、少なくとも1つは、Li,Na,またはKであり、0≦x,y≦0.8である。)。
中でも、紫外線発光を示す(1)の応力発光材料の母体結晶は、一般式 M1−x−yNxQyAl2Si28 ・・・(7)(ただし、式中のMおよびNはそれぞれ、アノーサイト構造ではCa、Sr、Mg、またはBaであり、長石構造では、Li、NaまたはKであり、Qは、希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、もしくは、IV族の金属イオンであり、0≦X≦0.8、及び、0.001≦y≦0.1を満たす数である。)の化合物であるもの、
さらに、その応力発光材料の母体結晶において、アルカリ土類金属イオンとしてCaを選択し、かつ、そのCaサイトの一部を、希土類金属イオンとしてCeで置換したもの、すなわち、一般式(8)、Ca1−yQyAl2Si28・・・(8)(式中、Qは、Euまたは他の発光中心イオンであり、yは0.001≦y≦0.1を満たす数である。)また、この一般式(8)は、Ca1−mCemAl2Si28(式中、mは、0.001≦m≦0.1を満たす数である。)と表すことができるものを用いることができる。
そして、この応力発光材料の発光中心として、
希土類金属のイオンとして、ユウロピウム(Eu)、ジプシロシウム(Dy)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd) 、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ネオジウム(Nd)、テルビウム(Tb)、プラセオジム(Pr)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、スカンジウム(Sc)、プロメチウム(Pm)、ホルミウム(Ho)、ルテチウム(Lu)等のイオン、
また、遷移金属のイオンとして、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アンチモン(Sb)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオビウム(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)等のイオンが例示される。さらに、III族の金属イオンとして、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等のイオンを用いることができる。
加えて、IV族の金属イオンとして、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)等のイオン、さらには、これら希土類金属のイオン、遷移金属のイオン、III族の金属イオン、およびIV族の金属イオンの中から、少なくとも1つのイオンを選択したもの、そして、その希土類金属イオン、および、遷移金属イオンの含有量、言い換えれば、発光中心の含有量を、0.1mol%以上20mol%以下の範囲内としたもの、好ましくは、0.2mol%以上10mol%以下の範囲内としたもの、特に好ましくは、0.5mol%以上5mol%以下の範囲内としたものを用いることができる。
ここで、その含有量が、0.lmol%未満の場合、効率的な発光が得られず、20mol%を越えると母体結晶が乱れ、発光効率が低下する。
(2)少なくともAlO様構造、および、SiO様構造の四面体構造を有する複数の分子が、その四面体構造の頂点の原子を共有して結合することにより形成された母体結晶の空間に、アルカリ金属イオン、および、アルカリ土類金属イオンの少なくとも一方が挿入された基本構造を有し、その母体結晶は、さらに、非対称性のフレームワーク構造を有していて、その空間に挿入されたアルカリ金属イオン、および、アルカリ土類金属イオンの少なくとも一方の一部が、希土類金属イオン、および、遷移金属イオンの少なくとも1種の金属イオンに置換されている応力発光材料であって、特に、少なくともAlO様構造およびSiO様構造の四面体構造を有する複数の分子によって形成された3次元構造(3次元フレーム構造)と、非対称性のフレキシブルなフレーム構造とを有する基本構造に、発光中心が挿入された構成を持つことで、この応力発光材料を含む、本発明の「ホログラムシートA」が、手で軽く変形させるだけで発光することができるものとなるもの。
この応力発光材料は、フレキシブルな3次元フレーム構造と、非対称性のフレキシブルなフレームワーク構造とを、同時に備えることで、3次元フレーム構造に加えて、「自発ひずみ」、または、「弾性異方性」を示す構造を有しており、このような母体結晶は、歪やすく、しかも、その歪エネルギーを、効率よく、フレームの中心にある発光中心の電子構造の変化へと変換しやすいものとなっている。
また、この母体結晶を、さらに、歪みやすくするために、母体結晶の空間に挿入されたアルカリ金属、または、アルカリ土類金属の一部が、他のイオン(例えば、希土類金属イオン、または、遷移金属イオン)で置換されていてもよい。
このときの置換するイオンは、母体結晶の結晶構造(非対称性のフレキシブルな3次元フレーム構造)を維持できれば、特に限定されるものではない。この置換するイオンには、例えば、その母体結晶に形成された空間に挿入されているアルカリ金属イオン、および、アルカリ土類金属イオンとはイオン半径の異なる、希土類金属イオン、または、遷移金属イオンが好適である。これにより、母体結晶を歪みやすくすることが可能となり、より強い発光を示す応力発光材料を提供できる。なお、ここでの希土類金属イオンまたは遷移金属イオンは、母体結晶を歪みやすくするためのものであって、後述する発光中心として機能しないものであってもよい。
この母体結晶として、アルミノケイ酸塩の組成を持つ長石(フェルドスパー)構造、とりわけ、アノーサイト様構造とする。このような基本構造は、例えば上記した一般式(1)〜(4)のいずれかで示されるアルミノケイ酸塩であることがより好ましい。
その発光中心としては、発光中心の希土類金属イオンとして、Euを用いることによって、好適に青色発光を示す発光体とすることができる。また、発光中心は、一種類に限定されるものではなく、複数種類の混合物を用いてもよい。例えば、EuとDyの混合物を用いることもできる。
より詳細には、特に強い青色発光を示す応力発光材料は、次の M1−x−yNxQyAl2Si28 ・・・(9)、及び、X1−x−yYxQyAl2−xSi2+xO8 ・・・(10)(ただし、式中のMおよびNはそれぞれ、2価の金属イオンであり、少なくとも1種類は、Ca,Sr,MgまたはMnであり、XおよびYは、1価の金属イオンであり、少なくとも1種類は、Li,Na,またはKであり、Qは希土類金属イオンもしくは遷移金属イオンであり、0≦X≦0.8、0.001≦y≦0.1を満たす数である。)で示される発光体であることが好ましい。
ただし、(9)式のように、アルカリ土類金属の場合、AlおよびSiは、それぞれ2のままで、式のXにより変化はしない。一方、(10)式のように、アルカリ金属の場合、電荷バランスをとるために、1価のアルカリ金属の数Xが増えた分、4価のSiの数が増え(2+X)に、また3価のAlが減り(2−X)となっている。
さらに、応力発光材料において、アルカリ土類金属として、Caを選択し、かつ、そのCaサイトの一部を、少なくとも一種類の発光中心で置換した応力発光材料がより好ましい。すなわち、Ca1−yQyAl2Si28・・・(11)(ただし、式中のQはEu、および、他の発光中心の少なくとも一種類、yは0.001≦y≦0.1を満たす数である。)とする。
なお、式(11)は、発光中心が、Euのみの場合、Ca1−m−nEumAl2Si2O8と表すこともできる。(ただし、式中のmおよびnは、0.001≦m≦0.1を満たす数である。)この場合、mは、0より大きく0.1以下の範囲であり、発光中心が、EUとその他の発光中心イオンの混合物である場合、混合物の発光中心としての含有量(m)は、0より大きく0.2以下の範囲であればよい。
このような応力発光材料は、青色の発光を、特に強く示すことができ、式(11)では、発光中心(Q)が、少なくともEuを含んでいることが好ましい。さらには、式(11)において、発光中心の希土類金属イオンとして、少なくともEuを含んでいることが好ましく、例えば、発光中心が、Euのみ、または、EuとDyの混合物であることがより好ましい。このように、発光中心として、Euを含んでいれば、青色発光を特に強く示す応力発光材料とすることができる。
(3)歪エネルギーにより発光する条件を満たしている応力発光材料、すなわち、歪エネルギーの形成によって、圧電効果、格子欠陥、および変形による発熱等の機構により発光する応力発光材料。
この応力発光材料を用いることで、この応力発光材料を含む、本発明の「ホログラムシートA」を、手で軽く変形させるだけで、発光させ得る。
この圧電効果による発光は、歪形成力が加えられることで、「材料」に歪エネルギーが生じ、その歪エネルギーに伴う圧電効果により電気が発生し、これにより、「電場発光」が起こるものである。
このために、結晶構造に対称中心が存在せず、自発分極が発生する構造とする。このような、圧電効果により強く発光する「材料」の一例として、α−SrAl2O4相の結晶材料を好適に用いることができる。
格子欠陥による発光は、材料に格子欠陥が存在すると、歪エネルギーにより格子欠陥にトラップされている電子と正孔(ホール)とが再結合することが可能となるため、これにより「発光」が生じるものである。
応力発光材料において、格子欠陥に由来する発光機構を実現するためには、その応力発光材料に含有される母体材料に、少なくとも1種、好ましくは、2種以上の金属イオンを、欠陥中心の中心イオンとして添加すればよいことになる。
このような応力発光材料では、後述するように、α−SrAl2O4相の結晶材料において、SrサイトやAlサイトを金属イオンが置換するように、各種「金属元素」を添加する。
発熱による発光は、歪形成により材料が変形すると、この変形に伴い熱が発生し、発熱(温度上昇)に伴い、サーモルミネセンス(熱発光)が生じ、「発光」するものである。ここでも、この母体材料として、α−SrAl24を挙げることができる。
(4)複数の結晶構造が混在(混和)してなる「混相」を含んでいる応力発光材料。すなわち、複数の結晶構造が混在してなる「混相」とすることにより、単独の結晶構造では実現出来なかった、目視できる高効率な(高輝度な)赤色応力発光が可能な発光材料とするもの。
その混相は、ウルツ鉱型構造の酸化亜鉛と、立方晶、または、ウルツ鉱型構造の硫化亜鉛と、立方晶の酸化マンガンとの結晶構造の中から、少なくとも、2種類以上の結晶構造を有する複合結晶体であることが好ましい。この構成により、酸化亜鉛、硫化亜鉛、および、酸化マンガンのうち、単独、あるいは、これらの2つからなるものでは実現出来なかった、赤色発光体とすることが可能になる。
すなわち、一般式、(xZnO+yZnS+zMnO)で表される混相とすることにより、赤色発光材料を実現することができる。
その混晶を構成する金属イオンの一部は、他の金属イオンに置換されたものであってもよい。この場合、混晶を構成している金属イオンとは別の他の金属イオンは、Teイオンであることが好ましい。これにより、の応力発光材料の赤色発光の強度を大きく向上させることが可能となる。(「高輝度赤色応力発光材料」となる。)
このTeイオンは、混晶を構成する金属イオン100molに対し、0.1mol以上5mol以下の範囲内となるようにすることが好ましい。
さらに、この応力発光材料は、その混晶が、正方晶構造のチタン酸バリウム、斜方晶構造のチタン酸カルシウム、菱面体晶構造のチタン酸マグネシウム、および、立方晶構造のチタン酸ストロンチウムの中から、少なくとも、2種類以上を含むものであってもよく、この場合、混晶を構成する金属イオンの一部が、他の金属イオンに置換されているものであってもよい。
また、この応力発光材料は、一般式(Ca1−xA′x)yBa1−yTiO3、(Mg1−xA′x)yBa1−yTiO3、及び、(Sr1−xA′x)yBa1−yTiO3(ここで、0.0001≦x≦0.05、0.005≦y≦0.995、A′は、Dy,La,Gd,Ce,Sm,Y,Nd,Tb,Pr,Erからなる群より選ばれる希土類元素。)からなるものであってもよい。
この構成により、応力や電場を加えることにより光を発する発光性と、圧電性とを兼ね備えた発光材料とすることができる。
また、A′として示している希土類元素としては、プラセオジム(Pr)が最も好ましく用いられる。さらに、強誘電性正方晶のBa1−xCaxTiO3:Pr固溶体(0<x<0.23)と、常誘電性の斜方晶のBayCa1−yTiO3:Pr固溶体(0.9<y<1)とからなる、「混相」であってもよい。
そのCaの比率が、40%以上80%以下の範囲内、あるいは、1%以上35%以下の範囲内であることが好ましい。また、そのCaの比率が、55%以上65%以下の範囲内、あるいは、25%以上35%以下の範囲内であることがより好ましい。
以上の応力発光材料は、機械的な外力、例えば、応力、せん断力、衝撃力、圧力等を加えることによって発光し、発光強度は、一般的に加える外力が大きいほど高くなる。
さらに、本発明の「ホログラムシートA」に用い得る「応力発光材料」として、
(5)母体結晶として、周期表2A、3A、4A、および、3B族に属する、少なくとも1種の金属の酸化物、または、複合酸化物、特には、MgO、SrO、CaO、ZrO2、CeO2、HfO2、Y23、Al23、Cr23、および、Ti23の中から選ばれた金属酸化物、または、その複合酸化物、中でも、スピネル構造、ホタル石構造、イットリア構造、コランダム構造、または、β‐アルミナ構造を有するもの、特には、ZrO2、CeO2、HfO2、Y23、Cr23、および、Ti23の中から選ばれた金属酸化物からなり、ホタル石構造、イットリア構造、および、コランダム構造の中から選ばれた結晶構造を有するものであって、
その発光中心を、不安定な3d、4d、5d、または、4f電子殻を有し、この電子殻内で輻射転移を生起しうる希土類金属イオン、および、遷移金属イオン、特には、第一イオン化エネルギーが、8eV以下の希土類金属イオン、および、遷移金属イオンの中から選ばれた、少なくとも1種の金属イオン、特には、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、および、Lu、特には、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、および、Dyの中から選ばれた希土類金属イオン、または、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、特には、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、および、Wの中から選ばれた遷移金属イオンとするもの。
(6)母体結晶に、FeS2構造の酸化物、硫化物、炭化物、および、窒化物の1種類以上、特には、FeS2構造のSr3Al26、または、Ca3Al26を用いるものであって、その発光中心を、上記(5)と同様とするもの。
(7)母体結晶に、スピネル構造のMgAl24、および、CaAl24、コランダム構造のAl23、および、β‐アルミナ構造のSrMgAl10O17の中から選ばれた、少なくとも、1種の金属酸化物、または、複合酸化物を用いるものであって、その発光中心を、上記(5)と同様とするもの。
(8)母体結晶に、Y、Ba、および、Mgの中から選ばれた、少なくとも1種の金属の酸化物と、Siの酸化物の複合体を、少なくとも主成分とする母体材料、特には、Y2SiO5、BaSi25、および、Ba3MgSi28の中から選ばれた、少なくとも1種の複合酸化物を用いるものであって、その発光中心を、上記(5)と同様とするもの。
特には、機械的エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る場合に発光する希土類、または、遷移金属の1種類以上からなる発光中心を添加したもの。
(9)母体結晶に、メリライト型構造のCaYAl37 、Ca2 Al2 SiO7 、Ca2(Mg,Fe)Si27 、Ca22 SiO7 、CaNaAlSi27 、Ca2 MgSi27 、(Ca,Na)2 (Al,Mg)(Si,Al)27 、および、Ca2 (Mg,Al)(Al,Si)SiO7 の酸化物のうちの1種類以上からなる母体材料を用いるものであって、その発光中心を、上記(5)と同様とするもの。
(10)母体結晶に、MN24で表される化合物(M、および、Nは、Mg,Sr,Ba,Znの群、および、Ga,Alの群からそれぞれ選ばれた、少なくとも1つ以上の金属元素)で構成される酸化物、且つ、Mで表わされ金属元素に対する発光中心元素のモル%を0.001〜20%としたものを用いるもの、特には、MgGa24、ZnGa24、ZnAl24、SnZn24、BaAl24、MgAl24で表される酸化物、さらには、母体材料が、スピネル構造を有する化合物で構成されるものにおいて、擬スピネルまたは逆スピネル構造を含む酸化物であって、その発光中心を、上記(5)と同様とするもの。
(11)MN2O4で表される化合物(MおよびNは、Mg,Sr,Ba,Znの群、および、Ga,Alの群からそれぞれ選ばれた、少なくとも1つ以上の金属元素)で構成される酸化物を母体材料とし、M、または、Nに対して、0.0001〜20モル%の格子欠陥を有するもの。
(12)母体結晶に、(A)一般式xM1O・yAl23・zSiO2(式中のM1はCa、Ba、または、Srであって、その一部がNa、K、および、Mgの中の少なくと一種で置き換えられていてもよく、x、y、および、zは1以上の数である)で示されるアルミノケイ酸塩、(B)一般式xM2O・yAl23(式中のM2は、Ca、または、Baであって、その一部が、Mg、および、Laの少なくとも一方に置き換えられていてもよい。x、および、yは、前記同様。)で示されるアルミン酸塩、(C)一般式xM3O・ySiO2(式中のM3は、Ca、または、Srであって、その一部が、Na、Mg、Zn、Be、Mn、Zr、Ce、および、Nbの中から選ばれた少なくとも一種で置き換えられていてもよい。x、および、yは前記同様。)、または、Ba2MgSiO7で示されるケイ酸塩、(D)一般式xM4O・yM5O11(式中のM4は、Ca、Ba、または、Sr、M5は、Ta、および、Nbの中の少なくとも1種であり、x、および、yは前記と同じ意味をもつ)で示されるタンタル酸、または、ニオブ酸塩、(E)一般式xM5O・yGa23(式中のM5は、Ca、Ba、または、Srであって、その一部は、Laにより置き換えられていてもよい。x、および、yは前記同様。)で示されるガリウム酸塩、および、ZrO2の中から選ばれた、少なくとも一種の酸化物、特には、一般式xSrO ・y A l 23 ・z S i O 2( 式中のSrの一部が、N a 、K 、および、M g の中の少なくとも一種で置き換えられていてもよい。x 、y 、および、z は1 以上の数である。)、一般式xSrO・ySiO 2( 式中のSrの一部が、N a 、M g 、Z n 、B e 、M n 、Z r 、C e 、および、N b の中から選ばれた、少なくとも一種で置き換えられていてもよい。x 、および、y は上記同様。)、または、一般式 xSrO・yM4 O11( 式中のMは、Ta 、および、Nb の中の少なくとも一種であり、x、および、yは上記同様。)で表される組成をもつストロンチウム複合酸化物からなる母体材料、さらには、xSrO・yAl23・zSiO2として、(Sr,K2,N a2 ) Al4 Si1436、( Sr,Na ) ( Mg,Fe,Al,Ti) (Si,Al)26、(Sr,Na)2(Al,Mg,Fe)(Si,Al)27、Sr2 (Mg,Al)(Al,Si)SiO7、Sr2Al2SiO7、SrNa2Al4Si416などを挙げることができ、かっこ内の元素は互いに置き換えることができるもの。
また、xSrO・ySiO2として、Sr(Zn,Mn,Fe,Mg)Si26、Sr 2(Mg,Fe)Si27、Sr22SiO7、Sr2BeSi27、Sr2MgSi27、Sr2Na4CeFeNb2Si828、Sr3Si27、SrFeSi26、SrMgSi26など、もしくは、xSrO・yM411として、Sr(Ta,Nb)411であるもの、
特にに発光強度の大きいものは、Sr(Ta,Nb)411、Sr(Zn,Mn,Fe,Mg)Si26、Sr2(Mg,Al)(Al,Si)SiO7、Sr2Al2SiO7、Sr2MgSi27、Sr2Na4CeFeNb2828、および、SrMgSi26としたもの、さらには、SrGa1219、SrLaGa37であるもの。
そして、これらの酸化物が、結晶構造的には点群(簡約化表現の指標において、)1、-1、2、2/m、6/m、m3m、(−4)2m、622で表される結晶分類に属しているもので構成されるものにおいて、その発光中心を、不安定な3d、4d、5d、または、4f電子殻を有し、この電子殻内で輻射転移を生起しうる希土類金属イオン、および、遷移金属イオン、特には、第一イオン化エネルギーが、8eV以下の希土類金属イオン、および、遷移金属イオンの中から選ばれた、少なくとも一種の金属イオン、特には、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、および、Lu、特には、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、および、Dyの中から選ばれた希土類金属イオン、または、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、特には、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、および、Wの中から選ばれた遷移金属イオンとするもの。
さらに、組成式、SrMgAl6O11、SrLaAl37、または、SrYAl37で示されるストロンチウム、および、アルミニウム含有複合金属酸化物を母体材料とし、ユーロピウムを発光中心としたもの。
(13)発光中心に、少なくとも、ユーロピウム(Eu)を含み、組成式( 1 )(Eu1−xA’x)yB’1−yAl24、または、組成式(2)(Eu1−xA’x)B’1−yMgAl1017{式中、A’は、希土類金属、B’は、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、または、カルシウム(Ca)のいずれかのアルカリ土類金属を示し、0 ≦ x ≦0.99 、0.001≦y≦0.550である}で表される発光体であるもの。
(14)母体結晶に、一般式xBaO・yAl23・zSiO2(式中のBaは、その一部が、Na、K、および、Mgの中の少なくとも一種で置き換えられていてもよく、x、y、および、zは1以上の数である)、xBaO・yAl23(式中のBaはその一部が、Mgで置き換えられていてもよく、x、および、yは前記同様。)、または、xBaO・ySiO2(式中のBaはその一部が、Mg、Fe、Mn、Zn、および、Beの中の少なくとも一種で置き換えられていてもよく、x、および、yは前記同様。)で表わされる組成をもつバリウムの複合酸化物の中から選ばれた、少なくとも一種の酸化物であって、ここで、xBaO・yAl23・zSiO2で表わされるものとしては、例えば、Ba2(Mg,Al)(Al,Si)SiO7、Ba2Al2SiO7、BaAl2Si28、BaNaAlSi27
xBaO・yAl23で表わされるものとしては、例えば、BaAl8O13、BaMgAl6O11、
xBaO・ySiO2で表わされるものとしては、例えば、Ba(Zn,Mn,Fe,Mg)Si26、Ba2(Mg,Fe)Si27、Ba2BeSi27、Ba2MgSi27、Ba2MgSiO7、などがあり、
特に発光強度の大きいものは、Ba2Al2SiO7、Ba2MgSi27、BaAl2Si28、BaAl8O13であるもの。
そして、これらの酸化物は、結晶構造的には点群(簡約化表現の指標において、) 1、-1、2、2/m、6/m、m3m、(−4)2m、622で表される結晶分類に属しているものを用い、その発光中心を、不安定な3d、4d、5d、または、4f電子殻を有し、この電子殻内で輻射転移を生起しうる希土類金属イオン、および、遷移金属イオン、特には、第一イオン化エネルギーが8eV以下の希土類金属イオン、および、遷移金属イオンの中から選ばれた少なくとも一種の金属イオン、特には、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、および、Lu、特には、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、および、Dyの中から選ばれた希土類金属イオン、または、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、特には、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、および、Wの中から選ばれた遷移金属イオンとするもの。
(14)(Ca1−pPrp)qBa1−qTiO3(0.0001≦p≦0.05,0.005≦q≦0.995)からなる発光材料、さらに、正方晶構造のチタン酸バリウムの結晶相および斜方晶構造のチタン酸カルシウムの結晶相が混在してなる混相を含み、その混相を構成する金属イオンの一部が、Prイオンに置換されている発光材料、特に、サイズの異なる複数の結晶相を有し、チタン酸バリウムの結晶相は大きい粒子サイズであり、チタン酸カルシウムの結晶相は小さい粒子サイズで構成されているとともに、小さい粒子サイズの結晶相は大きい粒子サイズの結晶相の粒子間に均一に分散している発光材料、また、強誘電性正方晶のBa1−xCaxTiO3:Pr固溶体(0<x<0.25)と、常誘電性の斜方晶のBa1−yCayTiO3:Pr固溶体(0.9<y<1)とからなる混相である発光材料、及び、[(1−x)BaTiO3−xCaTiO3]:Pr (xが、0.01≦x≦0.9)、特には、(xが、0.4≦x≦0.8)、もしくは、(xが、0.01≦x≦0.35)の発光材料を用いることができる。
もしくは、以上の発光材料が、赤色発光を示す発光材料であるもの、及び、発光強度がその発光材料に負荷する機械的な外力の大きさに比例するものである、発光材料を用いることができる。
(15)少なくともAlO4様構造、および、SiO4様構造の四面体構造を有する複数の分子が、その四面体構造の頂点の原子を共有して結合することにより形成された母体構造の空間に、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの少なくとも一方が挿入された基本構造を有し、母体構造は、さらに、非対称性のフレームワーク構造を有しており、その空間に挿入されたアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの少なくとも、一方の一部が、希土類金属イオンおよび遷移金属イオンの少なくとも一種の金属イオンに置換されていて、且つ、その基本構造は、MxN1−xAl2Si2O8(ただし、式中MおよびNは、2価の金属イオンであり、少なくとも一種類は、Ca,Sr,Ba,Mg,またはMnであり、0≦x≦0.8である。)で示され、Ca0.985Eu0.01Dy0.005Al2Si28、Ca0.995Dy0.005Al2Si28、Ca0.97Eu0.01Nd0.02Al2Si28、Ca0.93Eu0.02Dy0.05Al2Si28、Sr0.97Eu0.01Dy0.02Al2Si28、Ba0.97Eu0.01Dy0.02Al2Si28、Ca0.8Sr0.17Eu0.01Ho0.02Al2Si28、Sr0.17Ba0.80Eu0.01Ho0.02Al2Si28、Sr0.17Ba0.80Eu0.01Dy0.02Al2Si28、Mg0.2Sr0.77Eu0.01Dy0.02Al2Si28、または、Ba0.2Sr0.77Eu0.01Dy0.02Al2Si28で示される組成を有する応力発光材料。
(16)一般式CaM1Al37で表される正方相構造の酸化物(M1は、Y、La、または、Gdを表す。)と、Eu2+とを含み、その酸化物の原料から形成される不純物相をさらに含んでいる応力発光材料、特には、そのM1で表される原子が欠損している格子欠陥構造である酸化物の結晶をさらに含む応力発光材料。
そして、Eu2+を、その酸化物100モルに対し、0.01モル〜20モル含む、さらには、不純物相を形成する物質が、その酸化物100モルに対し0.1モル〜80モルである応力発光材料。特には、その酸化物がCaYAl37であり、その不純物相は、Y23、Y3Al5O12、もしくは、Y4Al29の少なくとも1つを含む、応力発光材料。
(17)母体結晶に、金属酸化物、金属窒化物、および、金属硫化物からなる群より選択される、少なくとも1つの化合物を含み、特には、その金属酸化物が、アルミン酸、および、アルミノケイ酸からなる群より選択される、少なくとも1つの化合物を用い、その発光中心を、遷移金属(ただし希土類金属を除く)、Si、および、Snのうち、少なくとも一つの元素をさらに含み、その元素の少なくとも一部が、母体材料に非固溶状態で含有されてなり、さらには、その元素が、粒子状で、且つ、母体材料(母体結晶)の表面に存在して、その元素の含有量が、0.1〜90モル%、特には、10〜90モル%、もしくは、0.1〜10モル%であって、その元素が、Zr、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Hf、Nb、Mo、Ta、および、Wからなる群より選択される少なくとも1つの金属としたもの。
(18)(ZnO)0.6(MnS)0.4−x(MnTe)x(0.001≦x≦0.05)、特には、ウルツ鉱型構造の酸化亜鉛の結晶相、立方晶、または、ウルツ鉱型構造の硫化亜鉛の結晶相、および、立方晶の酸化マンガンの結晶相の中から選択される少なくとも2種類以上の結晶相が混在してなる混相を含み、その混相を構成する金属イオンの一部が、Teイオンに置換されている応力発光材料。さらには、サイズの異なる複数の結晶相を有し、酸化マンガンの結晶相は大きい粒子サイズであり、硫化亜鉛の結晶相、および、酸化亜鉛の結晶相は、小さい粒子サイズで構成されているとともに、小さい粒子サイズの結晶相は、大きい粒子サイズの結晶相の粒子間に均一に分散していて、中でも、赤色発光を示し、且つ、発光強度が負荷さ有れる機械的な外力の大きさに比例する、応力発光材料。
(19)単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を含有する応力発光材料。特には、六方晶のLiSrPO4:Eu2+を更に含有する発光体、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+からなる発光体、または、斜方晶のLiBaPO4からなる母体構造に形成された空間に、発光中心としてユウロピウム(Eu)のイオンが挿入されたLiBaPO4:Eu2+であって、その発光中心の含有量が2.0〜3.5モル%であるLiBaPO4:Eu2+からなる発光体。
さらに、高輝度な発光を可能とする「応力発光材料」(以下、「高輝度応力発光材料」とも称す。)として、以下のものを用いることが好適である。
(20)アルカリ土類金属酸化物とアルミニウム酸化物とから構成され、かつこの中のアルカリ土類金属イオンの組成比を欠損させたアルカリ土類金属欠損型であって、式MxAl23+x、MxQAl1016+x、Mx1Qx2Al23+x1+x2、または、Mx1Qx2LAl1016+x1+x2[式中のM、Q、および、Lは、それぞれMg、Ca、Sr、または、Baであり、xは0.8≦x≦0.99、x1、および、x2は0.8≦(x1+x2)≦0.99を満たす数である]で表わされる化合物を主成分とする非化学量論的組成を有するアルミン酸塩の少なくとも一種からなり、かつ機械的エネルギーによって励起されたキャリアーが基底状態に戻る際に発光する格子欠陥をもつ物質、または、この母体物質中に希土類金属イオン、および、遷移金属イオンの中から選ばれた少なくとも一種の金属イオンを発光中心の中心イオンとして含む物質からなる高輝度応力発光材料。特には、格子欠陥をもつアルミン酸塩からなる物質が、化学量論的組成比から、アルカリ土類金属イオンが1〜20モル%少なく、かつこの物質中に、希土類金属イオン、および、遷移金属イオンの中から選ばれた少なくとも一種の金属イオン0.01〜10モル%を、発光中心の中心イオンとして含む高輝度応力発光材料。
(21)一般式xM1Al・(1−x)M2A2(式中のM1、および、M2は、Zn、Mn、Cd、Cu、Eu、Fe、Co、Ni、Mg、および、Caの中から選ばれる少なくとも一種の原子であり、A1、および、A2は、カルコーゲンの中から選ばれる少なくとも一種の原子であって、M1A1とM2A2とは異なったものであり、xは、0よりも大きく1よりも小さい数である。)で表わされる複合半導体結晶、特には、その複合半導体結晶が、ウルツ鉱型構造とせん亜鉛鉱型構造との共存構造を有する高輝度応力発光材料。
さらには、そのM1がMn、または、Euであり、A1とA2が同一のカルコーゲンであって、または、そのM2がZnとCd、もしくは、ZnとCuで構成されている高輝度応力発光材料、中でも、一般式xMA・(1−x)MnA(式中のMは、Zn、または、Cuにより部分的に置き換えられたZn、Aはカルコーゲン、xは、0よりも大きく1よりも小さい数である。)で表わされ、結晶粒子径が20nm以下の複合半導体結晶からなる高輝度応力発光材料。特には、AがS、または、Teである高輝度応力発光材料。
(22)結晶構造が単斜晶である第1のアルミン酸塩を含有している応力発光材料であって、第1のアルミン酸塩の母体材料が、α−SrAl24 であり、3種類以上の金属イオンが欠陥中心の中心イオンとしてその母体材料に添加されており、添加された中心イオンが、少なくともα−SrAl2O4のSrサイトを置換しており、中心イオンとしては、Srよりもイオン径が小さいものおよび大きいものの両方が添加されており、Srよりもイオン径が小さい金属イオンが、Euである高輝度応力発光材料、特には、結晶構造が単結晶ではない第2のアルミン酸塩を含有せず、中心イオンの添加により、母体材料の自発分極性を有する結晶構造中に、格子欠陥が形成され、さらには、結晶構造中にトンネル構造を有していて、そのトンネル中に配置する元素がイオン結合で配置されている高輝度応力発光材料、さらに、Srよりもイオン径が小さい金属イオンとして、Mg、Na、Zn、Cu、Eu、Tm、Ho、Dy、Sn、Mn、Nd、Pr、Caからなる群より選択される少なくとも一種が用いられ、Srよりもイオン径が大きい金属イオンとして、Ba、および/または、Kが用いられる高輝度応力発光材料、および、α−SrAl24のSrサイトを置換している金属イオンは、Srを基準として、0.1〜40モル%で添加されていること、全金属イオンの添加量が化学量論よりも少ないこと、中心イオンが、α−SrAl24のAlサイトを置換していること、中心イオンとして添加される金属イオンが、Alよりもイオン径が小さいものであって、Si、Bが用いられること、中心イオンとして添加される金属イオンが、Alよりもイオン径が大きいものであって、Ga、Inが用いられること、 中心イオンとして添加され、α−SrAl24のAlサイトを置換している金属イオンは、Alを基準として0.1〜20モル%で添加されること、中心イオンとして添加される金属イオンとして、価数の異なる金属イオンを少なくとも2種以上添加すること、材料の歪エネルギー密度に比例して発光することなどをその特徴として持つ、高輝度応力発光材料。
また、紫外線領域(光の波長として200nm〜400nm)の発光を可能とする「応力発光材料」として、以下のものを用いることもできる。
(23)MN(PO3)4(式中、Mは1価の金属イオンであり、Nは3価の金属イオンである。)で表される構造を母体構造とし、上記のMまたはNの一部が、希土類イオンまたはIII族金属イオンの少なくとも一方によって置換されている応力発光材料。
特には、Na1−xQxLa(PO)4(式中、QはCeイオン、またはTlイオンであり、0.01≦x≦0.2)である応力発光材料。
(24)多面体構造の複数の分子によって形成される母体構造の空間に、アルカリ土類金属イオンが挿入された基本構造を有し、その空間に挿入された、アルカリ土類金属イオンの一部が、Ceイオンによって置換されている応力発光材料であって、その基本構造が、自発歪を有し、その多面体構造の分子が、四面体構造の、AlO4、およびSiO4のうちの少なくとも1つを含んでおり、その基本構造が、一般式 MxN1−xAl2Si28 で示され(ただし、式中、MおよびNは、2価の金属イオンであって、少なくとも1つは、CaまたはSrであり、0≦xである。)、その応力発光材料は、Ca2.2Sr2.77Ce2.225Dy2.22Al2Si28、Ca2.2Sr2.79Ce2.225Tb2.225Al2Si28、Ca2.995Ce2.225Al2Si28Ca2.97Ce2.23Al2Si28、Ca2.2Sr2.77Ce2.23Al2Si28、または、Ca2.8Sr2.7Ce2.23Al2Si28で示される組成を有する応力発光材料。
(25)一般式MN(PO34(式中、Mは、Naイオンであり、Nは、Laイオンである。)で表される構造を母体構造とし、そのMの一部が、希土類イオン、または、III族金属イオンの少なくとも一方によって置換されており、そのMの一部と置換される希土類イオンは、Eu、Dy、Ce、およびTbからなる群より選択される希土類のイオンであり、そのMの一部と置換されるIII族金属イオンは、Tlイオンである応力発光材料。
「応力発光材料」は、上記した組成に対応した材料を準備し、すなわち、各々の母体結晶用材料に対して、対応する発光中心となる元素を含む酸化物等を、その金属原子換算における所定の割合で、混合し、(一般的には、母体結晶用材料100molに対して、0.1〜100molの範囲の所定の値とする。)、窒素ガス等の不活性雰囲気中で、900〜1100℃の範囲の温度まで徐々に昇温させたのち、水素含有アルゴンガス等の還元雰囲気中、1200〜1500℃の範囲の温度で焼成することで、得ることができる。
ここで、「応力発光材料」を、所定の形状とするためには、あらかじめ、所望の形を有する「成形型(上記の高温において、比較的変形の少ないセラミクス材料からなるものを選定する。)」に、上記材料を入れ、所定の焼成をした後、その「成形型」から取り出す手法を用いることができる。
但し、「応力発光材料」の表面を滑らか、且つ、「平坦な面」にするために、敢えて、溶融温度の高い金属材料(セラミクス材料よりも、金属材料の方が、表面平滑性が高く、「焼成」後には、それらの表面が、「応力発光材料」の表面、さらには、「応力発光材料層」の表面になるという意味。)をその成形型として用いてもよい。
また、上記した高温においては、完全に焼失して、焼成物への付着も少ない、セルロース系樹脂材料や、アセチルセルロース系樹脂材料等の樹脂材料を用いて、十分な耐熱性を持つ平坦な「セラミクス板」上に、適宜な厚さで樹脂塗膜を形成し、且つ、その際、その樹脂塗膜の表面に、所望の形状(「応力発光材料」とする形状)に対応する凹部(微細な凹部となる。)を設けて、その凹部に、上記のごとく準備した材料を入れて、上記と同様に焼成し、樹脂塗膜を焼失させると同時に、その「セラミクス板」上に、所望の形状を持つ「応力発光材料」さらには、「応力発光材料層」を残す方法を採用することも好適である。このような「応力発光材料層」は、「透明基材1」の上に設けずとも、「応力発光材料層」単層で、「(透明基材1を伴わない)シート状薄膜光源層」として機能させることもできる。
また、「応力発光材料」は、上記した組成に対応した材料を準備し、すなわち、各々の母体結晶用材料となる元素、及び、その母体結晶用材料に対して、対応する発光中心となる元素を含む、酸化物、硝酸塩、塩酸塩等を、その金属原子換算における所定の割合で、混合して(母体結晶用材料100molに対して、発光中心材料を、0.1〜100molの範囲の所定の値に設定する。)、「焼成前の『応力発光材料』用組成物」とし、あらかじめ準備した「応力集中係数αが2以上となる部位を有する形状」を持つ「空洞」を設けてある「焼成用型」の「空洞」内に、充填し、真空状態で、もしくは、窒素ガス、アルゴンガスや、二酸化炭素等の不活性ガス雰囲気中で、900〜1100℃の範囲の温度まで徐々に昇温させたのち(このときの、いわゆる『昇温曲線』は、個々の『応力発光材料』用組成物に対応してそれぞれ設定する。)、水素含有アルゴンガス等の「還元雰囲気」中にて、1200〜1500℃の範囲の温度まで上昇させて「焼成(酸素供給を制限した還元焼成である。)」、及び/または、燒結(『焼成』後の引き締めとも呼ばれる。)後、自然冷却させ、及び/または、所定の強制冷却を施し(このときの、いわゆる『冷却曲線』は、個々の『応力発光材料』用組成物、もしくは、『応力発光材料』に対応してそれぞれ設定する。)、常温付近まで近づいたところで、その「焼成用型」から、その「焼成した目的物(所望の『形状』をした『応力発光材料』。)」を取り出し、(これが、『焼成』手順である。)、さらには、得られた「応力発光材料」の「平板状、または、塊状」のものを、所定の粉砕手段等により「微粒子化」して、得ることができる。
その「空洞」の形状が、「応力集中係数αが2以上となる部位を有する形状」そのものとなっているか、もしくは、「焼成」や「燒結」による「形状変化(主に、収縮。)」を想定して設けた形状となっている。
より具体的には、この「空洞」の中に、上記した「所定の焼成」によって、「応力発光材料層」に含まれる『応力発光材料』となる、「『所定の酸化物等』を所定の溶剤(水系溶媒を含む。)で希釈し流動性を持たせた、焼成前の『応力発光材料』用組成物」として、所定の圧力で流し込み、その「酸化物等」が、「所定の焼成環境」の中で、「焼成温度」まで昇温されて、その溶剤成分(水成分)や、有機材料成分を放出したり、低融点成分が軟化したりすることによる、それらの組成変化や、構造変化を経て、「応力発光材料層」に含まれる「応力発光材料」となる。
そして、この「所定の酸化物等」には、目的とする「応力発光材料」の結晶母体、発光中心、その他の添加物に現われる「主元素の単体や複合体」の水酸化物、水和物、無水化合物、酸化物、複合酸化物、硝酸塩、塩酸塩、炭酸塩、酢酸塩、硫酸塩等、さらには、その「主元素に有機材料をキレート化結合したもの(有機金属化合物など。)」、既に「応力発光材料」としたものの微粉末や、紛体、それらに、各種の粘結助剤(オレフィン系樹脂、特には、プロピレン系共重合体や、スチレン系エラストマーを混合した焼成用粘結助剤、メタクリル酸エステル系焼成用粘結助剤、セルロース系樹脂、特には、メチルセルロースにケイ酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどを加えた焼成用粘結助剤)を加えたもの、さらには、低融点セラミックス(軟化点が、200〜700度のセラミックス。ガラスフリットとも呼ばれる。)などを加えたもの、及び、プロピレン系の焼成用成形助剤などを加えたものが用いられる。
また、上記した「焼成」や「燒結」には、電気炉(マッフル炉)やガス炉を用いることができる。この電気炉には、その構造や原理から、抵抗加熱炉、誘導加熱炉、アーク加熱炉など、発熱体として、金属発熱体、炭化ケイ素、モリブデン、ランタンクロマイト、カーボングラファイトを用いるものなど、大気炉(酸化雰囲気炉)、ガス雰囲気炉、真空ガス置換炉、低真空炉、高真空炉など、さらには、箱型炉、管状炉、連続炉、目的物を回転させながら焼成するロータリーキルンなどがある。
ここで、「応力発光材料」を、所定の形状とするためには、上述した種々の手段を用いて、あらかじめ、所望の形を有する「成形型(上記の高温において、比較的変形の少ないセラミックス材料からなるものを選定する。)」に、上記材料を入れ、所定の焼成をした後、その「成形型」から取り出す手法を用いることができる。
但し、「応力発光材料」の形状を鋭利に、且つ、その表面を滑らかにするために、敢えて、溶融温度の高い金属材料(セラミックス材料よりも、金属材料の方が、表面平滑性が高く、「焼成」後には、それらの表面が、「応力発光材料」の表面になるという意味。)をその成形型として用いてもよい。
また、上記した高温においては、完全に焼失して、焼成物への煤などの付着も少ない、セルロース系樹脂材料や、アセチルセルロース系樹脂材料等の樹脂材料を用いて、十分な耐熱性を持つ平坦な「セラミックス板」上に、適宜な厚さで樹脂塗膜を形成し、且つ、その際、その樹脂塗膜の表面に、所望の形状(「応力発光材料」とする形状)に対応する凹部(微細な凹部となる。)を設けて、その凹部に、上記のごとく準備した材料を入れて、上記と同様に焼成し、樹脂塗膜を焼失させると同時に、その「セラミックス板」上に、所望の形状を持つ「応力発光材料」を残す方法を採用することも好適である。
また、「応力発光材料層」に含まれる「応力発光材料」である、「微粒子」は、そもそも、「応力発光材料」用組成物を、所定の条件にて焼成して、厚さ10μm〜3.0mmの「平板状(シート状の板という意味。)」や、粉砕を目的として立体状とした、例えば、最大長0.5mm〜100mmのタブレット状、ペレット状、円柱状、直方体、立方体などの「塊状」などとした「応力発光材料」を、所定の粉砕手段を用いて、粉砕して微粒子化し、その微粒子を所定の分級手段等を用いて、選別して、「微粒子」としたもの、もしくは、その「単に微粒子化した段階の微粒子」を、下記する「『所定の透明な樹脂』に用いられる樹脂から選定した『透明樹脂』」に分散してペレット状などとしたものを、再び、粉砕し、そして、分級して「微粒子化」し、「微粒子」としたものの何れかであって、さらに、それらの処理中、微粒子間の衝突を抑制して処理すると、それらの「微粒子」の形状そのものが、複雑な形状を成し、さらに、その「微粒子」の表面も非常にランダムな凹凸形状を維持したものとすることができる。
ここで、「『所定の透明な樹脂』に用いられる樹脂から選定した『透明樹脂』」とは、『所定の透明な樹脂』と同様の透明性を有する『樹脂』をいい、特には、その『透明樹脂』の体積弾性率を、その微粒子の体積弾性率より大きいものとして、その樹脂に負荷された『変形』がそのまま『微粒子』に伝わるように配慮したものが、好適。その「透明樹脂」と「応力発光材料」の組成比は、10/1〜1/10とする。
そして、粉砕手段としての粉砕機には、ボールミル、ロッドミル、自生粉砕ミル、SAG(準自生粉砕)ミル、高圧粉砕ロール、縦軸インパクタ(VSI)ミルなどを用いる。
また、一旦、「応力発光材料」を、「微粒子化」、さらには、「超微粒子化(平均粒径が、0.01〜1.0μm、特には、0.01〜0.1μmである『微粒子』を『超微粒子』と称する。これより大きいものが『微粒子』である。)したものを、造粒機等の「造粒」手段を用いて、「『超微粒子』間結合を強固にした2次凝集物」としたものを、「微粒子」としてもよい。
そのような粉砕手段で「微粒子化」した「応力発光材料」(『応力発光材料』で100%組成されているもの、複数の応力発光材料から成る『応力発光材料の複合体』、及び、『応力発光材料と透明な樹脂』で組成されたものを含む。)を、分級手段を用いて、選別し、または、さらに、造粒手段を用いて造粒した後、分級手段を用いて選別し、最大直径で、0.1μm〜50μm、好適には、5.0μm〜20μmの「微粒子」とし、もしくは、平均粒径D50で、0.05μm〜20μm、好適には、0.5μm〜10μmの「微粒子」とする。
この「応力発光材料」からなる「微粒子」を、 上記した「透明な樹脂」に分散して、「応力発光材料層」として、透明基材1の上に形成する。その「透明な樹脂」には、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いる。
その熱可塑性樹脂としては、アクリル酸エステル樹脂、すなわち、ポリメチルメタクリレート(屈折率n=1.49)、ポリメチルアクリレート(n=1.47)、ポリベンジルメタクリレート(n=1.57)、ポリブチルアクリレート(n=1.44)、ポリイソブチルアクリレート(n=1.48)等、セルロース系樹脂、すなわち、硝酸セルロース(n=1.54)、メチルセルロース(n=1.50)、セルロース・アセテートプロピオネート(n=1.47)等、ビニル系樹脂、すなわち、ポリ酢酸ビニル(n=1.47)、ポリ塩化ビニル・酢酸ビニル(n=1.54)等、アクリルアミド樹脂(n=1.50)、もしくはポリスチレン樹脂(n=1.60)等を、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂(n=1.64)、アクリルウレタン樹脂(n=1.60)、エポキシ変性アクリル樹脂(n=1.55)、メラミン樹脂(n=1.56)、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂(n=1.64)、アルキッド樹脂(n=1.54)、フェノール樹脂(n=1.60)、シリコン樹脂(n=1.41〜1.60)、もしくは、フッ素化樹脂(n=1.35〜1.38)等を用いる。
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用でき、さらに、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
また、上記の熱可塑性樹脂、もしくは熱硬化性樹脂に、シリコン樹脂やフッ素含有樹脂、さらには、シリコンオイルを混合したもの、または、熱可塑性樹脂、もしくは熱硬化性樹脂とシリコン樹脂やフッ素含有樹脂を共重合させたものや、熱可塑性樹脂、もしくは熱硬化性樹脂の分子内にシロキサン結合〔―Si(R1)(R2)−O―〕やフッ素原子〔−F〕を導入したものを用いることができる。
さらには、上記の熱可塑性樹脂、もしくは熱硬化性樹脂に、シリコンパウダー微粒子やフッ素パウダー微粒子を分散させたものを用いることもできる。
フッ素化樹脂には、完全フッ素化樹脂として、四フッ素化樹脂、部分フッ素化樹脂として、三フッ素化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、フッ素化樹脂共重合体として、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂。四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体などを用いることができる。
さらに、「透明な樹脂」の屈折率と、「微粒子」の屈折率(『微粒子』の屈折率nは、1.7〜2.5である。)の「屈折率差」を、0.3以下、さらには、0.1以下とする。
こうすることで、その「透明な樹脂」と「微粒子」の「界面」における反射率が小さくなり、「多重反射現象」を増すことができると共に、「微粒子」の「発光」した「光」を効率よく観察者へ伝えることができる。
特には、「透明な樹脂」の屈折率と、「微粒子」の中に含まれる「透明樹脂」の屈折率の「屈折率差」を、0.1以下、さらには、0.03以下とする。
このことによって、それらの「樹脂」の界面での界面反射率をほぼ「0」とすることができ、「微粒子」の「発光」した「光」をさらに、効率よく観察者へ伝えることができる。
そして、「透明な樹脂」と「微粒子」との含有比率は、5/95〜100/5、特には、5/30〜100/30とする。
この混合比率が、5/95より小さいものとすると、「応力発光材料層」の強靭性が低下し、偽造防止目的の用途においては、信頼性に欠けるものとなり、100/5を超えるものとすると、発光強度が不十分となる。
さらに、この「『透明な樹脂』と『微粒子』の混合物」に対する溶剤の割合は、上記したコーティング等の各種方式によって個々適性範囲があるが、総じて、100/5〜1/20とする。
そして、「微粒子」を「透明な樹脂」中に「分散」するため、その「透明な樹脂」を、溶剤類、例えば、環状炭化水素類(シクロヘキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール等、さらにはその水溶液。)、エーテル類(テトラヒドロフラン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、t−ブチルセルソルブ等。)、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコール誘導体、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン、ジイソブチルケトン、等。)、芳香族類(ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベッソNo.100、ソルベッソNo.150、カクタスP−180等。)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セルソルブ、エチルー3−エトキシプロピオネート等。)等に溶解した溶液中、または、その「透明な樹脂」に「水溶性樹脂(水系樹脂)」を用いた場合には、「水」、及び/または、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール等の「低級アルコール」、グリコール類、セルソルブ類などに溶解した溶液中に、「微粒子」を混入させ、デゾルバ、ミキサーなどの攪拌機や、ニーダー、ロールミル等の混練機などを用いて、「透明な樹脂」中に「微粒子」を均一に含ませた後、その混合溶液を、グラビアコーティング方式、カーテンコーティング方式、ブレードコーティング方式、ロールコーティング方式、スピンコーティング方式、オフセット印刷方式、活版印刷方式、スクリーン印刷方式、凹版印刷方式、インクジェット印刷方式、キャスティング方式、ダイコーティング方式などを用いて、樹脂フィルム等の「適宜な基材」上に、所定の厚さで設け、所定の条件にて、乾燥(自然乾燥、40度〜80度の接触加熱乾燥、40度〜200度の熱風乾燥、真空乾燥など。紫外線照射や、電子線照射による硬化反応を利用する乾燥等を単独で用いても、併用してもよい。)して、その「適宜な基材」から剥離して、所定の厚さの「応力発光材料層」を得る。
さらに、「シート状薄膜LED層」には、ガリウムリン(GaP)や、ガリウムひ素リン(GaAsP)などの金属間化合物半導体からなる、P形半導体と、N形半導体を接合して「ダイオード」を構成し、各々に「+電極」及び、「−電極」を配して、順方向に電流を流すと、「P形半導体とN形半導体の接合面」から、所定波長の光を発するものを用いる。
具体的には、「p−電極層、p−窒化ガリウム層等、発光層(GaInNなど)、n−窒化ガリウム層等、n−電極層」等の構成となるが、いずれにしても、透明基材1の上に、所定の厚さ0.01〜10.0μm、特には、0.01〜0.5μmで形成できるものを使用する。
また、「シート状薄膜ディスクレーザー層」には、赤外LD(レーザーダイオード)励起固体レーザーの一種であり、透明基材1の上に、「全反射性金属薄膜層(冷却層を兼ねる。)/薄膜ディスク状の固体レーザー媒質層(レーザー結晶。)/反射防止性薄膜層」からなる「シート状薄膜ディスクレーザー層」を設け、その前面側、すなわち、「体積ホログラム形成層VH」を設けている側から、励起用LD光を照射して、「所定波長の光」を発振させるものを用いる。
その厚さは、通常100μm程度の厚さとして「レーザー構造」とするが、本発明の「ホログラムシートA、またはA´」においては、いわゆる「レーザー発振」までの、「高いコヒーレンス性を有し、非常に高出力となる『発光』」を必要としていないため、その厚さを1.0〜30μmとしたものを用いる。
さらに、「シート状薄膜面発光レーザー層」には、VISEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザー)とも呼ばれる半導体レーザー の一種であり、「InGaAs/GaAs面発光レーザー構造」や、「p側多層薄膜ミラー&p側電極/n−InP/p−GaInAsP(活性層)/n−InP/n側多層薄膜ミラー&n側電極構造」のものなどを用いることができるが、本発明の「ホログラムシートA、または、A´」においては、いわゆる「レーザー発振」までの、「高いコヒーレンス性を有し、非常に高出力となる『発光』」を必要としていないため、その厚さを1.0〜30μmとしたものを用いる。
(カード基材)
本発明のホログラム付きカードCA1に用いられるカード基材C0としては、もしくは、カード基材IC0に採用可能な材料としては、少なくとも本発明のホログラムシートA、またはA´を、そのカード基材C0や、IC0(カード基材IC0については、さらに、以下に詳述するセキュアマイコン等の電子部品を内蔵可能であることが要求される。)内に埋め込むことができるものであれば、あらゆる材料、すなわち、プラスチック材料、金属材料、セラミック材料、生体材料、それらの複合材料、さらには、それらを多層構造としたり、さらに複雑に組み合わせたりしたものなどを用いることができる。且つ、その表面や裏面に、本発明のホログラム付きカードCA1の用途に応じた印刷等の手段による適宜な表示を設けたものであってもよい。(図5、及び、図6参照。図5には、カード基材C0の表面と、ホログラムシートAの最表面(『球冠』の頂点。)が「面一」となっている場合を例示している。その他の場合は図示していない。)
その形状も、あらゆる形状、すなわち、シート状、フィルム状、板状、立方体状、直方体状、カード形状(磁気カード、ICカード、非接触ICカード、ポストカード、グリーティングカード、名刺、ポイントカード、ライセンスカード、遊戯用カード等の形形状)、はがき形状、リーフ形状、帳票形状、伝票形状、Sメール形状、ラベル形状、シール形状、証券類形状、通帳形状、パスポート形状、郵便物形状、配送物形状、封筒状、袋状、箱状、ケース状、円盤状、ディスク状、楕円体状、球体状、曲面形状、棒状、及びこれらの組み合わせや、これらに変形、切断、穴あけ、接着等の加工処理を施したものなどを採用することができる。さらには、電子端末や、携帯用端末等、あらゆる工業製品やあらゆる商品をもカード基材C0や、IC0として採用することができる。
その厚さも、ハンドリング可能であればよく、特に制限はないが、通常、30μm〜3.0mmの厚さとする。もちろん、封筒状や、箱状のものであれば、その立体形状の寸法は、それぞれの用途に適したものとするため、この範囲内とする必要はない。
また、これらカード基材C0や、IC0の代表例として、いわゆる「プラスチックカード」として用いられている材料及び形状や、「プリペイドカード」として用いられている材料及び形状、特に、ISO規格(ISO/IEC7810シリーズ、ISO/IEC7816シリーズ、ISO/IEC14443シリーズ、ISO/IEC15457シリーズ等。)やJIS規格(「プリペイドカード JIS X 6310シリーズ」や、JIS X 6301、JIS X 6300シリーズ、JIS X 6320シリーズ、JIS X 6330シリーズ等。)で定められているものがある。(図示せず。)
その中でも、その「埋め込み適正」(ホログラムシートA、または、A´をそのカード基材C0や、IC0内に安定して埋め込むことができると共に、そのホログラムシートA、またはA´の最表面と、カード基材C0、または、IC0の表面とを再現性良く「面一」とすることができる性質をいう。)及び「汎用性」(加工汎用性を含む。この「加工汎用性」とは、「保護層/磁気層/接着層」からなる磁気ストライプをカード基材に埋め込んだり、必要な電子部品等を内蔵させたりする、製造ラインや製造条件が確立していることを意味する。)から、「JIS規格やISO規格で定められている『プラスチックカード』や、『ICカード』として用いられているカード基材及び形状」が望ましい。
これらは、既に、全世界に大量に頒布され、普及しているため、それらをハンドリングしたり、保持することに抵抗感がなく、また、それらを携帯したり、使用したりする場合の周辺機器(入退室用ゲート端末、駅務ゲート端末、クレジットカード端末、ICカード端末、その他のカード利用機器を意味する。)や、関連グッズ(カードを携帯するためのカード入れや、カード用装飾品等を意味する。)等も既に普及しているため、これらのものに対する適用もスムースであって好適である。
特に、不透明性を有するフィルム状もしくはシート状のプラスチックがその加工適正やコスト面で好ましく、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や耐溶剤性および耐熱性をも有するものが用いられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の各種のプラスチックフィルム材料があげられる。そして、これらのプラスチックそのものが透明性を有する場合には、不透明化処理のために、二酸化チタンや炭酸カルシウム等の不透明性付与のための顔料等を適宜練り込むなど、不透明性付与材料を混在させた、フィルム状もしくはシート状のプラスチックを例示することができる。
さらに、これらの材料に、フッ素系樹脂パウダーや、シリコン系樹脂パウダー等を混入したプラスチックフィルムは、耐擦傷性が著しく高く好適である。
以下、ホログラムシートAと、カード基材C0をその代表例として説明する。(ホログラムシートA´や、カード基材IC0を用いる場合も、以下の説明とほぼ同様の説明となる。)
ホログラムシートAをそのカード基材C0内に、加熱温度60℃〜200℃、好適には、80℃〜150℃、且つ、プレス圧力104Pa〜1010Pa(N/平方メートル)、好適には、106Pa〜108Paの条件下で、「面一」に埋め込むことが可能なものが用いられる。
これらのフィルム状もしくはシート状のプラスチック材料からなるカード基材C0の厚さは、通常、30μm〜1.0mmであるが、「種々の目的のカード」としての加工適正や取り扱い適正から200〜840μmとすることが望ましい。
この厚さが、30μm未満であると、このカード基材C0上にホログラムシートAを設けたり、埋め込んだりする際の加工適正に劣るものとなり、この厚さが1.0mmを超えると、シート処理や巻き取り処理における取扱いに困難を生じるため好ましくない。(図5及び図6参照。)
具体的には、50μm〜1000μmの厚さの軟質塩化ビニルシートや硬質塩化ビニルシート、もしくは、その組み合わせ(積層体という意味。)が好適である。
カード基材C0として、100μmの軟質塩化ビニルシートを用いて、総厚さ32μmのホログラムシートA(積層体)(幅10mmの帯状。カード基材C0の厚さの約1/3の厚さを有する。)を、150℃の加温、及び106Paの加圧にて、1mm厚さの表面鏡面仕上げのステンレス板で挟み込み、「常温→加温→150℃→冷却→常温」の加熱&冷却サイクル(1サイクル30分〜90分。)を通した場合には、その積層体が全て、カード基材C0内に埋め込まれ、ホログラムシートAの最表面とカード基材C0の表面が面一となった。
同様の条件下においては、カード基材C0の厚さ100μmに対して、5μm〜50μmまでの積層体を「面一」とすることができるが、50μmを超える厚さの積層体に対しては、その境界における段差が、1.0μmを超えるものとなり、「面一」とするためには、より高温、且つ、高圧の条件とする必要が生じる。
しかしながら、上記の条件をより過酷な条件に設定することは、カード基材C0の大きな変形や、変質を招き、本発明のホログラム付きカードCA1としての用途には不向きであり、カード基材C0の厚さに対する埋め込み深さは、「カード基材C0の厚さの1/20〜1/2」とする。
また、「面一」の状態とは、上記したように、その境界における段差が、1.0μm以下となった状態を意味するが、「埋め込む小片(上記したストライプ等を意味する。)」のサイズによって、「小片」全体が均一に埋め込まれる場合(「小片」を含むカード基材C0の厚さが、「小片」のある個所や、その他の箇所で同一となっている状態。)や、「小片」の埋め込み量に偏りがある場合(「小片」の端部(境界に近い部分)に対して「小片」の中央部の埋め込み量が少なくなっている状態。)、さらには、カード基材C0の材料が「小片」の断面を覆い隠すように流動した場合等を含むものとし、結果として「小片」が面一に埋め込まれた状態となることを指す。
さらには、「面一」の状態から「凹んだ状態」とするためには、上記した総厚さ32μm積層体の代わりに「耐熱性を有する剥離性フィルム(10μm。一方の表面が所定の曲面C1の形をしている。)を加え、他の層の合計を10μmだけ薄くした、結果として、同一の総厚さを有する「積層体」を、同一条件下でカード基材C0に埋め込み、その剥離性フィルムを剥離することで、ホログラムシートAの最表面が、カード基材C0の表面より、10μm凹んだ状態とすることができる。
すなわち、この積層体における「剥離性フィルム」の厚さだけ、カード基材C0の表面より凹ませることができることとなる。
この「凹み」は、カード基材C0の厚さに対して、1/10以下とし、望ましくは、1/20以下とする。
また、このような「剥離性フィルム」は、ホログラムシートAの保護層の代用となるため、製造工程中や、流通過程においては残しておき、ホログラム付きカードCA1の正規購入者がホログラム付きカードCA1を使用する直前に剥離するものとすることで、ホログラムシートAの最表面(露出面)の汚れや傷の発生を防止できる。さらに、「剥離性フィルム」は、一旦、剥離すると、もはや、元に戻すことが困難であるため、不正者が接着剤等を塗布して元の状態に戻そうとすると、「剥離性フィルム」の剥離性が損なわれるだけでなく、「段差」が1.0μmを超えてしまい、不正が行われたことを示唆する機能を持つため、「剥離性フィルム」を付加したホログラム付きカードCA1とすることも好適である。(凹んだ状態や、「剥離性フィルム」を付加した状態は、図示せず。)
ここで、本発明のホログラム付きカードCA2について説明を加える。
本発明のホログラム付きカードCA2は、いわゆる「ホログラム付きICカード」であって、そのカード基材IC0として、「IC駆動用電池を内臓している電池内臓型ICカード基材」を用いており、「接触式ICカード(セキュアマイコンIC1を搭載している。)」を、その基本構成とし、IC駆動用電池IC2(薄型3V系フィルム電池等。)、 ON/OFFスイッチIC3(表示切替用スイッチ等。)、表示パネル制御部IC4(液晶ディスプレー用ドライバ等。)、表示パネルIC5(フィルム液晶等。)、 補助電池IC6(3V出力太陽電池フィルム等。)などを搭載、もしくは、内蔵したものである。(図6参照。図6のホログラム付きカードCA2は、カード基材IC0に、もしくは、カード基材IC0として、これらの電子部品を全て搭載した例を示している。)
また、本発明のホログラム付きカードCA2は、「非接触式ICカード(非接触式ICチップを内蔵している。)」を、その基本構成とし、「インターフェイス用IC(電波→デジタル変換機能を持つ。)」駆動用電池(これも、一種のIC駆動用電池であって、薄型3V系フィルム電池等。)を内蔵しており、さらに、ON/OFFスイッチIC3(表示切替用スイッチ等。)、表示パネル制御部IC4(液晶ディスプレー用ドライバ等。)、表示パネルIC5(フィルム液晶等。)、補助電池IC6(3V出力太陽電池フィルム等。)などを搭載、もしくは、内蔵したものを用いることができる。(図示していない。)
そして、これらのIC用駆動電池IC2が、ホログラムシートAの発光用電源を兼ねている。
このセキュアマイコンIC1や、「非接触式ICチップ」を駆動するための「電源」(IC駆動用電池IC2)として、且つ、本発明のホログラムシートA、もしくはを発光させるための「電源」として、一次電池、または、二次電池を、そのカード基材IC0の中に「内蔵」している。
これらの「電池」は、「セキュアマイコンIC1または非接触式ICチップ等を制御する『制御部』(表示パネル制御部IC4等。)」や、「液晶ディスプレイなどの『表示部』(表示パネルIC5等。」をさらに含む場合には、それらの「『制御部』」や『表示部』」を駆動するための電源として用いられる。
さらに、これら「内蔵」する「電池」に加えて、「太陽電池と、その太陽電池で生成された電気エネルギーを蓄電するコンデンサとにより構成される補助電源(補助電池IC6等)」を、そのカード基材IC0に含めることも「IC駆動用電池を内臓する」ということの意味に含める。
このことにより、本発明のホログラム付きICカードCA2を使用する者が、このホログラム付きICカードCA2を、「外部」に取り出すだけで(屋外で自然光にかざしたり、室内において、室内蛍光灯の照明下にさらすことを意味する。)、太陽電池に光が照射して生成された電気エネルギーがコンデンサに蓄電され、これを安定した補助電源として用いることが可能になる。
また、本発明のホログラムシートAを発光させたり、消光させるためのON/OFF切り替えスイッチ(図示していない。)をも、搭載すると、その利便性を大幅に向上させたり、真偽判定性を著しく容易なものとすることができる。
(実施例1)
透明基材1として、12μmのPETフィルムの表面に、陰極として、アルミニウム薄膜を真空蒸着法により500nm厚さで全面形成した。
次いで、その「全面形成したアルミニウム薄膜」を、以下の「パターニング形状」となるように、レジストエッチング処理により「パターニング」処理した。
その「パターニング形状」は、「幅2.0μmの細い線を、100μm周期とした格子線状とし、且つ、その格子線の交差する位置(格子点)に、半径3μmの円形領域を設けたもの、但し、陰極端子として、右端下に3mm×3mmの領域を残したもの」とした。
その上に、発光層として、母体にZnSを用い、発光中心にMnを添加したものを、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、1μm厚さで形成した。ターゲットには、硫化マンガン(MnS)を0.5mol%添加した硫化亜鉛(ZnS)を用い、ターゲットガスには、高純度のアルゴンガスを用いた。この時、陰極端子を残すため、右端下に3mm×3mmの領域で、マスキング処理を行った。
この発光層上に、絶縁層である誘電体膜として、BaTiO3を、同様の位置のマスキング処理を施して、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、1μmの厚さで形成した。
さらに、その絶縁層上に、ITO薄膜を、同様の位置のマスキング処理を施して、電子線加熱真空蒸着法により、厚さ300nmで形成した。ITO薄膜の表面抵抗値は、0.1Ω/□であった。
以上により、透明基材1上に、陰極層、発光層、絶縁層及びITO薄膜の4層構成からなる、無機エレクトロルミネッセンス素子からなるシート状薄膜EL層3(発光波長=所定波長:λ0=550nm)を形成した。(図2参照。但し、図2において、このシート状薄膜EL層3を「一つの層」として表示している。ITO薄膜は、『点状光源』用に、格子状の細線、100μm周期で設けられた半径3μm領域、及び、陰極用端子領域を残して、他の部分はエッチング除去してあるが、これも図示していない。従って、『点状光源』も図示していない。)
これとは別に、以下の形状のレリーフホログラム用感光材料(以下、『フォトレジスト』という。)、及び、ホログラムレリーフ複製用原版(1)(Niで構成する。以下、『Ni原版(1)』という。)を準備した。
まず、「フォトレジスト」の「形」を、「厚さ3.0μmの『直方体』の上に、下記『お椀型』の突出部を周期的配置で設けた形」とする。
すなわち、半径30μmの球体を、その中心から26μm離れた平面で切断した、「一部が欠けた球体の一部(底の浅いお椀型)」、すなわち、「曲率半径30μmで、高さ4.0μmのお椀型(開口部は、半径15μmの円形断面。)」(『球欠』ともいう。その一つの『球欠』の表面が、一つの『うねり』であり、『球冠』とも表現される。)を、その「お椀型」の中心間距離が、100μm間隔で、縦方向及び横方向に碁盤の目のように配置して、「厚さ3.0μmの『直方体』」の上に設けたものとする。
そのようにして設けた「フォトレジスト」の一断面形状は、模式的には、図2における「曲面形状ホログラム形成層2」の形に類似している。(『フォトレジスト』の『形』は、図示せず。)
この「フォトレジスト」の突出部側の面に対して、所定のレーザ光学系を用いて、「意匠性の高いホログラム」を撮影して「曲面形状を成すホログラムであるレリーフホログラム」を記録し、現像して「曲面形状を成すホログラムであるレリーフホログラムのホログラムレリーフ」を形成した。
ここで、所定のレーザ光学系には、「参照光」側の光路上にのみ、100μm周期の二次元配置でレンズを設けてある「マイクロレンズ」を介し、「物体光」と、「マイクロレンズ」により、個々に焦点を結んだ後、その個々の焦点から広がる、個々の「光波」を、「個々の参照光」とした光学系を用いた。
(この個々の焦点と、個々の『点状光源』は、各々、下記する『延長線上』にある。また、この『ホログラムレリーフ』は、光学干渉による微細な凹凸形状と、上記の『うねり』からなる大きな周期の凹凸形状の、大小、2種類の凹凸形状を併せ持ち、いわば、『微細な凹凸形状が大きくうねっているような形』を成していた。)
次いで、この「フォトレジスト」をもとに、ホログラムレリーフ複製用のNi原版(1)を作製した。(このNi原版(1)のレリーフ面が、『微細な凹凸形状が大きくうねっているような形』となっている。)
次いで、上記した「透明基材1/シート状薄膜EL層3」の積層体の上に、下記組成の曲面形状ホログラム形成層2用インキ組成物を、ステンレススクリーン印刷方式にて印刷し、乾燥後の厚さとして、曲面形状ホログラム形成層2を、30.0μmの厚さで形成した。
<曲面形状ホログラム形成層2用インキ組成物>
メラミン樹脂 30部
トルエン 10部
メチルアルコール 10部
イソプロピルアルコール 20部
エチルセルソルブ 20部
ブチルセルソルブ 10部
その曲面形状ホログラム形成層2の露出面に、準備した、Ni原版のレリーフ面を合わせて、回転式レリーフホログラム形成装置(原版シリンダー径1.0m、原版面温度100℃、加圧シリンダー径0.3m、水冷式、圧力5000kg/m、複製速度2m/分)にて、「曲面形状のレリーフホログラムのホログラムレリーフ(Ni原版のレリーフ形状:大きなうねりと微細な凹凸を併せ持つ。)」を「曲面形状ホログラム形成層2」に転写して、「透明基材1/シート状薄膜EL層3/曲面形状ホログラム形成層2」の3層積層体、且つ、その「」の露出面(一方の面。)が、「所定の曲面C1」となっている、本発明の実施例1の「ホログラムシートA」を得た。(図2参照。微細な凹凸形状は図示していない。『曲面形状ホログラム形成層2』の他方の面は、平面を成していた。)
ここで、「シート状薄膜EL層3」に設けてある「点状光源」の位置(具体的には、100μm周期で残してある、半径3μmのアルミニウム薄膜。円形領域であって陰極となる。)を、「曲面形状ホログラム形成層2」の「お椀型」の「『球冠』の中心点と、『球冠』の曲率半径の中心点を結ぶ線の『延長線』上」に配置するように位置合わせを行った。
この実施例1の「ホログラムシートA」を、室内の照明光4の下で観察したところ、透明基材1側からは、3mm×3mmの「鏡面」領域(右端下の陰極端子)が観察されるのみであり、また、「曲面形状ホログラム形成層2」側からも、何らのホログラム再生像(照明光4の照明による『ホログラム再生像5』を意味する。)も視認できなかった。
そして、この「ホログラムシートA」の陰極端子部分と、陽極端子部分との間に、100Vで100Hzの交流電圧を印加して、「電圧を印加した状態6」としたところ、「所定波長『緑色』の発光」が生じた(各『点状光源』が発光し、100μm周期の強い発光が生じるが、目視では、シート面全体が『発光』しているように見えた。)。
この「発光」を、「曲面形状ホログラム形成層2」側から観察すると、「ホログラムシートA」の全体に渡る比較的強度の小さい「発光」を背景として、所定の方向に、比較的強度の大きい発光としての、緑色の「意匠性の高いホログラム」が、「緑色の透過型(レリーフ)ホログラム再生像7」として視認できた。(図4参照。図4においては、「発光」の文字画像を再生している図を例示している。)
この「ホログラムシートA」への電圧印加を止めると、印加前の状態に戻った。
以上のことから、この「ホログラムシートA」は、真正品であることが判明した。
(実施例2)
実施例1と同様にして、「透明基材1/シート状薄膜EL層3」からなる2層積層体を作製した。(図3参照。)
次いで、実施例1の「フォトレジスト」に対して、「ホログラム記録」を行わず処理したこと以外は、実施例1と同様にして、Ni原版(2)を得た。
このNi原版(2)は、「お椀型」の「大きな凹凸形状(『うねり』)」のみを有していた。
さらに、実施例1の「透明基材1/シート状薄膜EL層3」の積層体に替えて、光学的透明性を有する1mm厚さの「ガラス基板」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、そのガラス基板の上に、実施例1で用いた「インキ組成物」を、ステンレススクリーン印刷方式にて30.0μmの厚さで形成し、上記したNi原版(2)を用いて、実施例1と同様にして、Ni原版(2)のレリーフを複製し、「ガラス基板/曲面支持層CSL」からなる2層積層体を得た。(図示せず。)
このとき、「曲面支持層CSL」の露出面は、Ni原版(2)の凹凸形状が転写されており、「所定の曲面C2」となっていた。(図示せず。『曲面支持層CSL』の『形』は、図3参照。『所定の曲面C2』の表示は、省略している。)
ここで、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、膜厚20μmのフォトポリマー(「体積ホログラム形成層VH」となる層。)が積層され、その上に保護フィルムとして、厚さ23μmポリエチレンテレフタレートフイルムが積層されたフォトポリマー(デュポン社製「HRF705」)を用い、その保護フィルムを剥離しつつ、上記の「ガラス基板/曲面支持層CSL」からなる2層積層体の「所定の曲面C2」にラミネートし、「50μmのポリエチレンテレフタレートフイルム」を剥離して、「ガラス基板/曲面支持層CSL/体積ホログラム形成層VH」の3層積層体を得た。
このとき、「体積ホログラム形成層VH」は、曲面支持層CSLの表面である「所定の曲面C2」接して追従するように設けられていた。
そして、その3層積層体の「ガラス基板側」から、透過型の体積ホログラムとして、アルゴンレーザー(発光波長488nm)を光源とし、「参照光」側に、実施例1と同様の「マイクロレンズ」を介した、所定の透過型体積ホログラム撮影光学系(図示せず。)を用いて、30mm×70mmサイズの「絵画モチーフ」を透過型の体積ホログラムとして、その結像位置を、記録面から2mmの位置として撮影した。
この時、露光強度2.0mWにて、記録角度(参照光の角度。『物体』である『絵画モチーフ』は、そのシート面の垂線方向に対し30度の方向にある。)を体積ホログラム形成層VHに対して、(そのシート面の垂線方向に対し)「0度」とし、50mJ/cm2の露光量となるように照射した後、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、更に120℃で120分間加熱処理した。このときの回折効率は、50%とした。(これが、『曲面形状を成すホログラムである体積ホログラム』である。)
次に、「ガラス基板/曲面支持層CSL/体積ホログラム形成層VH」の3層積層体から、「ガラス基板」を剥離し、上記の「透明基材1/シート状薄膜EL層3」の2層積層体にラミネートし、「透明基材1/シート状薄膜EL層3/曲面支持層CSL/体積ホログラム形成層VH」の4層積層体である、本発明の実施例2の「ホログラムシートA´」を得た。(図3及び図4参照。図3において、『曲面支持層CSL/体積ホログラム形成層VH』の2層積層体が、『曲面形状ホログラム形成層2』を構成するが、その表示は省略している。また、『体積ホログラム形成層VH』には、透過型の体積ホログラムを記録してあり、緑色の透過型の(体積)ホログラム再生像7を再生する。図4においては、「発光」の文字画像を再生している図を例示している。)
この際、シート状薄膜EL層3の陰極端子、及び、陽極端子を、それぞれ露出させた(詳細説明は省略する。図3及び図4では、両端子の表示を省略している。)。
また、透明基材1、曲面支持層CSL、及び、体積ホログラム形成層VHの絶縁破壊強さは、それぞれ50MV/m、40MV/m、及び、20MV/mであった。
この実施例2の「ホログラムシートA´」を、室内の照明光4の下で観察したところ、透明基材1側からは、3mm×3mmの「鏡面」領域(右端下の陰極端子)が観察されるのみであり、また、「体積ホログラム形成層VH」側からも、何らのホログラム再生像(照明光4の照明による『ホログラム再生像5』を意味する。)も視認できなかった。
そして、この「ホログラムシートA´」の陰極端子部分と、陽極端子部分との間に、100Vで100Hzの交流電圧を印加して、「電圧を印加した状態6」としたところ、「所定波長『緑色』の発光」が生じた(各『点状光源』が発光し、100μm周期の強い発光が生じるが、目視では、シート面全体が『発光』しているように見えた。)。
この「発光」を、「曲面形状ホログラム形成層2」側から観察すると、所定の方向に発光した光としての緑色の「絵画モチーフ」が「緑色の(透過型体積)ホログラム再生像7」として視認できた。(図4参照。図4においては、「発光」の文字画像を再生している図を例示している。)
この「ホログラムシートA´」への電圧印加を止めると、印加前の状態に戻った。
以上のことから、この「ホログラムシートA´」は、真正品であることが判明した。
(実施例3)
陰極として、ITO薄膜を電子線加熱真空蒸着法による、厚さ300nmの層とした以外は、実施例1と同様にして本発明の実施例3の「ホログラムシートA」を作製した。(図2参照。)
実施例1と同様に評価したところ、電圧印加前における観察では、「ホログラムシートA」は、「透明なシート」として観察され、その両面からやや不明瞭なホログラム再生像(照明光4の照明による『ホログラム再生像5』などを意味する。)の存在を見て取れたが、鮮明なホログラム再生像を視認することは出来なかった。
しかし、所定の電圧を印加して「電圧を印加した状態6」としたところ、鮮明な「緑色の(レリーフ)ホログラム再生像7(『意匠性の高いホログラム』)」が、空間に浮き上がり、意匠性にも優れていた。そして、電圧印加を止めると、元の状態に戻ることを確認した。(図4参照。)
また、電圧印加を、1秒単位でON/OFFの繰り返しパターンとしたところ、その「緑色の(レリーフ)ホログラム再生像7」がより鮮明に視認できた。(図示せず。)
(実施例4)
透明基材1の上の陰極を、100nm厚さで形成し、その上の発光層を、500nm厚さで形成し、その上の絶縁層を、300nmの厚さで形成し、さらに、その上のITO薄膜を、厚さ100nmで形成した以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例4の「ホログラムシートA」を得た。(図2参照。『シート状薄膜EL層3』の厚さが、1.0μmとなっている。)
実施例1と同様に評価したところ、発光時の「緑色の(レリーフ)ホログラム再生像7」の鮮明度が向上し、「意匠性の高いホログラム」がより明確に判断でき、真性正の判定がより確実にできると思われた。(図4参照。)
(実施例5)
透明基材1の上に、陽極として、ITO薄膜を、電子線加熱真空蒸着法により、100nm厚さで形成した。
その上に、正孔輸送材料として、TPAC(1,1−ビス[4-[N,N―ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン)を厚さ60nmで、発光層材料として、ZnPBO(ビス[2−(2−ベンゾキサゾリル)フェノラト]亜鉛)及びドーピング色素材料として、Coumarin6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)コーマリン)を3%混入させ、厚さ100nmで、そして、電子輸送材料として、BND(2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール)を厚さ50nmで、真空蒸着法により、実施例1と同様のマスキング処理を施して、形成した。
さらに、その上に、ITO薄膜を、同様の位置のマスキング処理を施して、電子線加熱真空蒸着法により、厚さ100nmで形成した。
以上のごとく、透明基材1上に、陽極層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び陰極層からなる有機エレクトロルミネッセンス素子からなるシート状薄膜EL層3を形成したこと以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例5の「ホログラムシートA」を作製した。(図2参照。)
このホログラムシートAを室内の照明光4の下で観察したところ、透明基材1側から、及び、曲面形状ホログラム形成層2側からも、照明光4によるホログラム再生像5を明確には視認できなかった。
この「ホログラムシートA」の陽極端子部分と、陰極端子部分との間に、6Vの直流電圧を印加して「電圧を印加した状態6」としたところ、発光が生じ、透明な空間上に、さらに鮮明な「緑色の(レリーフ)ホログラム再生像7」を視認することができた。(図4参照。)
この「ホログラムシートA」への電圧印加を止めると、印加前の状態に戻った。
以上のことから、この「ホログラムシートA」は、真正品であることを、容易に、且つ、確実に判断することができた。
(実施例6)
実施例1の「ホログラムシートA」の「曲面形状ホログラム形成層2」と、「シート状薄膜EL層3」の間に、「所定波長:λ0=488nm」の「光」を、「60%透過」し、且つ、「40%反射」する、「誘電体多層蒸着膜(『ハーフミラー構造』を成す。熱吸収は無視した。)」を追加して、実施例6の「ホログラムシートA」としたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例6の「ホログラムシートA」を得た(図示せず。)。
この実施例6の「ホログラムシートA」を、実施例1と同様に評価したところ、「緑色の(レリーフ)ホログラム再生像7」がより鮮明に観察された(図4参照。)こと以外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。
(実施例7)
本発明のホログラム付きカードCA1用のカード基材C0として、厚さ560μmの硬質塩化ビニルシートを、厚さ100μmの軟質塩化ビニルシート2枚で挟み込み、総厚さ760μmの3層積層塩化ビニルシート(クレジットカードサイズ)を用いる。
所定のデザイン印刷は、その硬質塩化ビニルシート上にオフセット印刷にて施した後、所定のラミネート条件にて、3層積層体とした。(図5参照。カード基材C0の積層状況は図示せず。図5は、既に本発明の『ホログラムシートA』を埋め込んだ図となっている。)
このカード基材C0の表面の中央部分に、実施例1の「ホログラムシートA」(但し、陽極端子及び陰極端子を、その位置をずらせて『ホログラムシートA』の透明基材1側に露出するように配置し、幅10mm×長さ30mmのストリップ状に切り取ったもの)をそのカード基材C0の表面と、「ホログラムシートA」のシート状薄膜EL層3の陰極層が接するようにして配置したものを、表面を鏡面仕上げしたステンレス板に挟みこみ、120℃、106Pa、及び60分の加熱、加圧、及び冷却処理を施して、「ホログラムシートA」のの最表面とカード基材C0の表面を「面一」として、本発明の実施例7のホログラム付きカードCA1を得た。(図5参照。)
この実施例7のホログラム付きカードCA1を、通常の室内蛍光灯(照明光4)の下で観察したところ、ホログラム付きカードCA1上にて、「埋め込まれたストリップ」を観察できるのみであり、そのストリップから再生される「照明光4の照明による『ホログラム再生像5』」の存在を、明確には窺い知ることはできなかった。(ホログラム付きカードCA1上に埋め込まれている『ストリップ』の見え方は、図4参照。本実施例7の『ストリップ』は、『長方形』であるが、図4では、楕円形の例示となっている。)
次いで、この実施例7のホログラム付きカードCA1に埋め込まれた「ホログラムシートA」の、陽極端子及び陰極端子に、実施例1と同様に電圧を印加して、「電圧を印加した状態6」としたところ、実施例1と同様の「緑色の(レリーフ)ホログラム再生像7」を視認することができた。
また、このホログラム付きカードCA1から、「ホログラムシートA」のみを剥がして取り出そうとしたが、「ホログラムシートA」の断面を捉えることができず、このホログラム付きカードCA1の偽造や変造は不可能と思われた。(図示せず。)
それ以外については、実施例1と同様の良好な結果を得た。
(実施例8)
本発明のホログラム付きカードCA2用のカード基材IC0として、厚さ600μmの硬質塩化ビニルシートを、厚さ100μmの軟質塩化ビニルシート2枚で挟み込み、総厚さ800μmの3層積層塩化ビニルシート(クレジットカードサイズ)のICカード基材であり、且つ、「IC駆動用電池IC2を内臓している電池内臓型ICカード基材IC0」である、図6の構成の「接触式ICカード(セキュアマイコンIC1を搭載している。)」を用いた。
このカード基材IC0は、図6のごとく、「接触式ICカード」を、その基本構成とし、薄型3V系フィルム電池(IC駆動用電池IC2)、表示切替用スイッチ(ON/OFFスイッチIC3)、液晶ディスプレー用ドライバ(表示パネル制御部IC4)、フィルム液晶(表示パネルIC5)、3V出力太陽電池フィルム(補助電池IC6)を搭載、もしくは、内蔵している。(図6は、既に、本発明の『ホログラムシートA』を埋め込んだ図となっている。)
このカード基材IC0の表面の中央部分(各電子部品と重ならない位置。)に、実施例1の「ホログラムシートA」(但し、幅10mm×長さ30mmのストリップ状に切り取り、さらに、陽極端子及び陰極端子にリード端子を接続し、内蔵する薄型3V系フィルム電池(IC駆動用電池IC2)の陽極及び陰極端子に繋げた。)を、そのリード端子を断線させないように配慮して配置し、表面を鏡面仕上げしたステンレス板に挟みこみ、120℃、106Pa、及び60分の加熱、加圧、及び冷却処理を施して、ホログラムシートAの透明基材1の最表面とカード基材IC0の表面を「面一」として、本発明の実施例8のホログラム付きカードCA2を得た。(図6参照。)
この実施例8のホログラム付きカードCA2を、通常の室内蛍光灯(照明光4)の下で観察したところ、ホログラム付きカードCA2上にて、「埋め込まれたストリップ」を観察できるのみであり、そのストリップから再生されるホログラム再生像(照明光4の照明による『ホログラム再生像5』を意味する。)の存在を、明確には窺い知ることはできなかった。
次いで、この実施例8のホログラム付きカードCA2に埋め込まれたホログラムシートAの陽極端子及び陰極端子に、薄型3V系フィルム電池(IC駆動用電池IC2)からの電圧を供給して、「電圧を印加した状態6」としたところ、(図6の中には表示していない「スイッチ」〈表示切替用スイッチ:ON/OFFスイッチIC3〉と同様のもの。〉による操作である。この「スイッチ」は、その存在が秘匿されていることが望ましい。)、実施例1と同様の「緑色の(透過型体積)ホログラム再生像7」を視認することができた。(ホログラム付きカードCA2上に埋め込まれている『ストリップ』の観察状態は、図4参照。ここで、実施例8の『ストリップ』は、『長方形』であるが、図4では、楕円形の例示となっている。)
また、このホログラム付きカードCA2から、「ホログラムシートA」のみを剥がして取り出そうとしたが、「ホログラムシートA」の断面を捉えることができず、また、そのような行為が上記したリード端子の断線を引き起こすものと想定され、このホログラム付きカードCA2の偽造や変造は非常に困難と思われたこと以外については、実施例1と同様の良好な結果を得た。(図示せず。)
(比較例1)
実施例1において、反射型レリーフホログラムを記録した「レリーフホログラム形成層」としたこと、及び、陰極層2.0μm、発光層5.0μm、絶縁層5.0μm及びITO薄膜3.0μmの4層構成(全ての層の厚さを、2.0μm以上とした。)からなる、無機エレクトロルミネッセンス素子からなるシート状薄膜EL層としたこと以外は、実施例1と同様に比較例1のホログラムシートを形成し、比較例とした。
実施例1と同様に観察したところ、通常の室内蛍光灯(照明光4)で、目視にて、照明光4の照明によるホログラム再生像5が明確に視認できてしまい、且つ、電圧印加後(電圧を印加した状態6)も、シート全体が緑色に発色して、その「緑色」の背景の中に、少しぼんやりした「光の像」が浮かんでいるのみであって、それを「意匠性の高いホログラム」の、緑色の「(レリーフ)ホログラム再生像7」として明確には判定するには至らなかった。
このことより、この比較例1のホログラムシートが真正なものでないと判断できた。
A、A´ ホログラムシート
1 透明基材
2 曲面形状ホログラム形成層
3 シート状薄膜EL層
VH 体積ホログラム形成層
CSL 曲面支持層
4 照明光
5 照明光4によるホログラム再生像
6 電圧を印加した状態
7 緑色のホログラム再生像
C0、IC0 カード基材
CA1、CA2 ホログラム付きカード
IC1 セキュアマイコン
IC2 IC駆動用電池
IC3 ON/OFFスイッチ
IC4 表示パネル制御部
IC5 表示パネル
IC6 補助電池

Claims (6)

  1. シート基材の一方の面に、シート状薄膜光源層、曲面形状ホログラム形成層がこの順序で設けられているホログラムシートであって、シート状薄膜光源層が、所定の波長の光を発する点状光源を有し、且つ、前記曲面形状ホログラム形成層は、前記点状光源が発する前記所定の波長の光を照明光とする、曲面形状を成すホログラムが記録されていることを特徴とするホログラムシート。
  2. 請求項1に記載のホログラムシートにおいて、
    前記曲面形状ホログラム形成層は、その一方の面が所定の曲面C1を有し、他方の面が平面を成しており、前記所定の曲面C1の表面に、前記曲面形状を成すホログラムであるレリーフホログラムのホログラムレリーフが設けられていることを特徴とするホログラムシート。
  3. 請求項1に記載のホログラムシートにおいて、
    前記曲面形状ホログラム形成層は、曲面支持層と体積ホログラム形成層の2層からなり、前記曲面支持層は、その一方の面が所定の曲面C2を有し、他方の面が平面を成しており、且つ、前記所定の曲面C2に接して追従するように、前記体積ホログラム形成層が設けられており、前記体積ホログラム形成層に、前記曲面形状を成すホログラムである体積ホログラムが記録されていることを特徴とするホログラムシート。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載のホログラムシートにおいて、前記シート状薄膜光源層の厚さは、0.01μm〜2.0μmであることを特徴とするホログラムシート。
  5. カード基材に、請求項1〜4の何れかに記載のホログラムシートが埋め込まれ、前記ホログラムシートの露出面が、前記カード基材の表面と面一、または、前記カード基材の表面から凹んだ位置にあることを特徴とするホログラム付きカード。
  6. 請求項5に記載のホログラム付きカードにおいて、前記カード基材が、IC駆動用電池を内臓している電池内臓型ICカード基材であり、且つ、前記IC駆動用電池が、前記ホログラムシートの発光用電源をも兼ねていることを特徴とするホログラム付きカード。
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