JP2013092623A - ホログラムシート - Google Patents

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Kenta Sugie
健太 杉江
Kotaro Danjo
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Abstract

【課題】
ホログラムを用いたホログラムシートにおいて、その真正性を高めるために、照明光と同一の波長のホログラム再生像を再生するホログラムとは異なり、照明光とは異なる波長のホログラム再生をする新規なホログラムシートを提供する。
【解決手段】
ホログラム形成層上にフォトクロミック薄膜層を設け、フォトクロミック分子を励起する光で照明して、可視光領域にある、その発色の色調によるホログラム再生像を目視にて判定可能とし、その偽造防止性を高めたホログラムシートとした。
【選択図】 図3

Description

本発明は、新規なホログラムシート、特に、体積ホログラムの背後に、フォトクロミック薄膜層を設けた発色型のホログラムシートに関するものである。
本明細書において、配合を示す「部」は質量基準である。また、「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。「回折格子」には、光干渉縞などの光学的に形成したものや、電子線描画方法などの直接描画方法によって形成したものを含む。
(主なる用途)
本発明のホログラムシートの主なる用途としては、ホログラムそのものを装飾用として用いる美術・工芸品分野や商業用分野があるが、それにとどまらず、偽造防止分野に使用されるホログラムシートであって、具体的には、クレジットカード等の偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録体であり、偽造による損害を防止する目的で、記録体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
また、これら情報記録体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
(背景技術)
従来、情報記録体や上記した種々の物品(総称して、真正性識別対象物と言う。)の偽造を防止する目的で、その構造の精密さから、製造上の困難性を有すると言われるホログラムを真正性の識別可能なものとして適用することが多く行なわれている。しかしながら、ホログラムの製造方法自体は知られており、その方法により精密な加工を施すことができることから、ホログラムが単に目視による判定だけのものであるときは、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別は困難である。
これらの真正性識別対象物、特にラベル形態や転写形態にてホログラム画像を施された物品は、ホログラム画像の目視確認という真正性識別のみでなく、新たな真正性識別方法を用いてその対象物の真正性を識別する必要が生じている。
(先行技術)
これらの要求に応えるため、ホログラムに積層して、入射した光の内、左回り偏光もしくは、右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層を有するホログラムシートが提案された。(例えば、特許文献1参照。)
この光選択反射層として、コレステリック液晶を使用し、偏光版等を用いて確認する方法で偽造防止性を高めている。
しかしながら、特許文献1の記載にあるように、ホログラム形成層上の反射性薄膜層の反射率が高いため、コレステリック液晶層で反射されず透過した光(選択的反射光の補色光)が、この反射性薄膜層で反射し、再びコレステリック液晶層へ戻る(以下戻り光とする)ことにより、この戻り光が、コレステリック液晶を観察する際のノイズ成分となって、選択的反射光に付加・混在し、液晶本来の色調とならず、視認・識別することすら難しくなっていた。
また、特許文献2の記載にあるように、ホログラムとして、その製造に高度な技術を要する体積ホログラムを用い、白色光下においても立体感のあるホログラム再生像を視認することにより、その真偽判定を行う偽造防止技術も提案されている。
このような体積ホログラムは、それ自体が透明性を有するとともに、また、波長域の広い白色光源による照明において所定の波長(単波長に近い。)の光のみを反射して、その反射光によるホログラム再生像を出現させるものである。
しかし、この体積ホログラムも、その波長選択性によって、白色光のような広い波長域に渡って光の強度を有する照明光の中から、非常に狭い波長域の光のみを干渉させ、その光の強度のみでホログラム再生像を出現させるため、そのホログラム再生像の「明るさ」が、照明光の「明るさ」の1/10以下となってしまい、ホログラム再生像を明確に視認した上で真正性判定を行うという目的には不十分であるという欠点を有していた。
さらには、ホログラム形成層をフォトクロミック材料で構成し、そのフォトクロミック層の一方の面にホログラムレリーフと反射性薄膜層を形成することで、そのホログラムレリーフの存在を隠蔽する偽造防止方法が提案されているが、この積層におけるフォトクロミック層は、あくまで「意外な色調変化をする」層としての役目をしているのみであり、ホログラム再生像そのものとの関連性はなく、また、偽造防止効果も不十分であった。(例えば、特許文献3参照。)
特開2007−90538号公報 特開平10−97171号公報 特開平3−248188号公報
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、体積ホログラム形成層の背後にフォトクロミック薄膜層を設け、そのフォトクロミック薄膜層の安定した発色により体積ホログラムを「照明」し、ホログラム再生像を出現させることで、このホログラム再生像による真正性判定を容易、且つ、確実なものとすることができるホログラムシートを提供することである。さらに、このようなホログラムシートはこれまでに存在しないため、新規な装飾性及び、これを応用する偽造防止性を提供することである。
上記の課題を解決するために、
本発明のホログラムシートの第1の態様は、
透明基材の一方の面に、体積ホログラム形成層、及びフォトクロミック薄膜層が設けられているホログラムシートにおいて、
前記体積ホログラム形成層に、透過型ホログラムが記録されていることを特徴とするものである。
上記第1の態様のホログラムシートによれば、
透明基材の一方の面に、体積ホログラム形成層、及びフォトクロミック薄膜層が設けられているホログラムシートにおいて、
前記体積ホログラム形成層に、透過型ホログラムが記録されていることを特徴とするホログラムシートを提供することができ、ホログラム再生像を明確に判定可能な、ホログラムシートを提供する。
本発明のホログラムシートの第2の態様は、
前記体積ホログラム形成層に、反射型ホログラムが多重記録してあることを特徴とするものである。
上記第2の態様のホログラムシートによれば、
前記体積ホログラム形成層に、反射型ホログラムが多重記録してあることを特徴とする第1の態様に記載のホログラムシートを提供することができ、通常照明光の下では、その照明側から通常の反射型ホログラム再生像のみを視認することができ、所定の波長の光を照射することなどにより、さらに透過型ホログラム再生像をも視認可能となる意匠性や偽造防止性に優れる、ホログラムシートを提供することができる。
本発明のホログラムシートの第3の態様は、
前記体積ホログラム形成層層と、前記フォトクロミック薄膜層との間に、透明薄膜層が設けられていることを特徴とするものである。
上記第4の態様のホログラムシートによれば、
前記体積ホログラム形成層層と、前記フォトクロミック薄膜層との間に、透明薄膜層が設けられていることを特徴とする第1または第2の態様に記載のホログラムシートを提供することができ、透過型ホログラム再生像をより鮮明とすることが可能な、ホログラムシートを提供することができる。
本発明のホログラムシートは、透明基材の上に、透過型ホログラムを記録した体積ホログラム形成層及び、フォトクロミック薄膜層を設けたものであり、また、その体積ホログラム形成層に、さらに反射型ホログラムをも重ねて記録したものである。
そして、体積ホログラム形成層の背後に設けたフォトクロミック薄膜層の発色波長と、体積ホログラム形成層に記録した透過型ホログラムの選択する波長とを実質的に同調させておくことにより、フォトクロミック薄膜層を発色させたときに、初めて透過型ホログラム再生像をその観察側に出現させ、且つ、その透過型ホログラム再生像の明るさを向上させるものである。
さらには、その体積ホログラム形成層とフォトクロミック薄膜層との間に、透明薄膜層を設け、この透明薄膜層に入射し透過する光のその透明薄膜層内での多重反射現象による方向選択性を活用して、フォトクロミック薄膜層から発する全方位的な発散光の進行方向を制御し、その上にある体積ホログラム形成層に入射する角度を最適化して、結果として、体積ホログラム形成層に記録してある透過型ホログラムの鮮明度を高めるものである。
体積ホログラム形成層は、フォトポリマーフィルム等の透明なフィルムそのものを、「体積ホログラム形成層」とする方法、又は、透明基材の少なくともその一方の面に、透明な樹脂をコーティングして、「体積ホログラム形成層」を設けた積層体とする方法により得られる。
前者の方法においては、体積ホログラム形成層は、透明な材料又は、透明なフィルムの単一な層で構成されることとなる。
本発明のホログラムシートは、そのハンドリング性や物理的安定性から、後者の方法を用い、その透明基材として、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムシートを製造する際の処理や加工に対する耐磨耗性等が高く、それらの処理や、加工に適した耐溶剤性、耐熱性及び耐摩耗性等を有する、透明基材を用いることが好ましい。
その加工方法にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
本発明に用いられる体積ホログラムは、そのホログラム形成層の層中に、種々の屈折率のパターンとして、そのホログラム画像を形成する(ホログラム記録ともいう。ホログラム形成層は、ホログラム記録用媒体にホログラム画像を形成した際の記録層を意味する。)、いわゆる、位相ホログラムであって、この体積ホログラムが透過型ホログラムである場合には、その体積ホログラム形成層に光をあて、これを透過させるとき、光の位相は、「屈折率のパターン」により変調され、その先においてホログラム再生像を観察することができる。
ホログラム画像として画像化される「物体」(一般的には、3次元物体、もしくは2次元物体が用いられる。もしくは、「物体光」を与え得るものであれば、「光学系」であっても、別途作成したホログラムからの「ホログラム再生像」であってもよい。)は、レーザー等が発振するコヒーレントな光によって照明され、そして感光性の記録用媒体が、この「物体」から反射(発散)された光を受けるように配置される。「物体」上の各点は記録媒体の全体に対して光を反射し、また記録用媒体上の各点は「物体」全体からの光を受け入れる。この反射(発散)された光束は「物体光」といわれている。
同時に、コヒーレントな光の一部は「物体」をバイパスし(「物体」を避けて通るという意味。)、反射鏡等により、記録用媒体に向けられる。この光束は「参照光」といわれている。
記録用媒体上に記録されるものは、媒体上に当たった「参照光」と「物体光」との相互作用で生ずる「干渉パターン」であり、この記録が、ホログラムとなる。
この記録用媒体、すなわち、記録されたホログラムが、照明され、適切に観察されるとき、照明光源からの光は、「物体」から記録用媒体にもともと到達した波面を再生するように、そのホログラムにより回折され、それにより、ホログラムは、観察者に対して、「物体」の虚像を、記録媒体という「窓」を通して、完全な遠近差をもつ3次元の「物体」を見たように、認識させる。
このホログラム記録及び再生の原理を以下に、説明する。
物体がコヒーレント光で照明され,物体から回折された光が記録媒体(フォトポリマー等。)を照明しているとした場合、物体から回折されて記録面に到達した波面を物体波は、
F(x,y)=A(x,y)EXP[φ(x,y)]
であらわされる。ここで、
A(x,y) は物体波の振幅分布とし、
φ(x,y) は位相分布とする。
このとき、記録媒体には、記録媒体に到達する光波の強度分布が記録される。その強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)|2=A2(x,y) (1)
となり、位相分布は記録されない。
ここで,物体波にこれと干渉性のある光波(参照波という)を重ね合わせると,記録される光波の強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)+R(x,y)|2
=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+F(x,y)R*(x,y)+F*(x,y)R(x,y) (2)
となる.(*は複素共役項を表す。)
ただし,参照光が記録面に角度θで入射する平面波であるとすれば、
R(x,y)=r(x,y)EXP(2πiαx) (3)
と書け、
α = SIN(θ)/λ (4)
である。(2)の第1項と第2項はそれぞれ、物体波の強度と参照波の強度でいずれも位相情報は欠落している。第3項と第4項は干渉の項でそれぞれ
F(x,y)R*(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[i [φ(x,y)−2παx] ] (5)
F*(x,y)R(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[−i [φ(x,y)−2παx]] (6)
とあらわされ、物体の位相項 φ(x,y) が残っている。(5)、(6)は互いに複素共役であり、(4.2)の第3項は物体の複素振幅分布を含んでいる。(5)、(6)を(2)に代入すると、
I(x,y)=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+2A(x,y)r(x,y)COS [2παx−φ(x,y)] (7)
となる.物体波と参照波が干渉して干渉縞を形成していることがわかる。
このように、物体波に参照波を重ね合わせて干渉記録し、 物体の位相情報を欠落させずに記録する方法がホログラフィである。(7)を記録したものが「ホログラム」と呼ばれる。ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布 I(x,y)
比例し、
T(x,y)=τI(x,y) (8)
とかけるとする。このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてると、ホログラムを透過もしくは反射してきた波面は、
T(x,y)R(x,y)=τ(|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+τF(x,y)|R(x,y)|2
+τF*(x,y)R2(x,y) (9)
とあらわすことが出来る.この第2項は
τF(x,y)|R(x,y)|2
τA(x,y)r2(x,y)EXP[iφ(x,y)]] (10)
第3項は、
τF*(x,y)R2(x,y)=
τA(x,y)r2(x,y)EXP[−iφ(x,y)+2πiα] (11)
とかける。
このことから、(9)の第1項は、照明光と同じ方向にホログラムを突き抜ける光束もしくは正反射する光束であり、第2項は、(10)より、物体光に比例した振幅を持つ光波であることがわかり、第3項は、(11)より、物体波と共役な位相分布を持ち、2θの方向に伝播する光波であることがわかる。
このようにして,ホログラフィの技術を使うと複素振幅分布を記録して再生することが出来る。
本発明に用いられる「透過型ホログラム」は、「参照光」と「物体光」を同一の側から記録用媒体中に入射させ、両者がほぼ同じ方向に進行するようにして形成したホログラムであって、形成層自体を透明なものとすることにより、その「位相分布」のみを記録として残したものである。
この場合において、記録媒体中の「物体光」と「参照光」との相互作用は、屈折率の変化する材料の屈折率変化という「フリンジ(干渉縞)」を形成するが、このフリンジは、記録用媒体の面に対して、「物体光」と「参照光」とが対称な角度で入射する場合には、ほぼ垂直なフリンジとなる。そして、その「物体光」と「参照光」とが非対称な角度で入射する場合には、そのフリンジは、記録用媒体の面に対して、やや傾いたものとなる。
また、本発明に用いられる反射型ホログラムは、「参照光」と「物体光」を反対の側から記録用媒体中に入射させ、両者がほぼ反対方向に進行するようにして形成したホログラム、いわゆる、「リップマンホログラム」である。(以下、体積ホログラムであって、反射型ホログラムとしたものを「リップマンホログラム」ともいう。)
この場合において、記録媒体中の「物体光」と「参照光」との相互作用は、屈折率の変化する材料の屈折率変化という「フリンジ(干渉縞)」を形成するが、このフリンジは、記録用媒体の面に対して、ほぼ平行な面となる。
このリップマンホログラムを再生するとき、これらの各フリンジは入射光を観察者に向けて反射する「鏡」として作用し、それで、このリップマンホログラムは、「透過」よりもむしろ「反射」で観察される。
このように形成された「ホログラム」は、「波長感度」が甚だ高いため(波長選択性のこと。特定の波長にのみ作用するという意味。)、その再生には、「白色光」を用いることができるものである。
すなわち、ホログラムを記録した際の光源に用いた波長の光をあらかじめ準備してその光で再生しなくとも、容易に得られる、広い波長領域を持つ光(例えば、波長範囲が可視光線波長[400nm〜800nm]をカバーするような太陽光や、ハロゲンランプ光など。)を、その再生光として用いたとしても、その「ホログラム記録に用いた波長」以外の波長の光(「ホログラム記録に用いた波長」以外の波長成分という意味。)は、ほとんど位相変化を受けずそのまま透過し、「ホログラム記録に用いた波長」の光(該当する波長成分という意味。)のみ反射して、その光の像(該当する波長成分により作られる、リップマンホログラム再生像)を、視認することができる。
体積ホログラムの記録方法及び、その再生方法は、図1を参照。
図1では、(1)で透過型ホログラムを作成する方法を示し、また、この(1)を反射型ホログラムの第1ステップとして(反射型ホログラム作成においては、この(1)がマスターホログラムとなる。)、(2)による第2ステップにおいて、反射型ホログラムを作成する方法を示している。そして、(3)において、反射型ホログラムすなわち、リップマンホログラムの再生方法を示している。
また、図示していないが、図1中の(1)の記録の際、物体を記録材料に近接して設置し、物体とは反対の方向から記録材料を透過して物体を照明するように参照光を投射すると、1ステップでリップマンホログラムを作成することができる。
ホログラムの原理で作製される「ホログラフ鏡」は、「反射型ホログラム」のもっとも簡単なものである。これは、2つのコヒーレントな平面波を、記録用媒体に対して反対の方向から投射し、記録用媒体中でその2つのコヒーレントな平面波が交差する、ホログラムである。これは単一のレーザー光を分割し記録用媒体の所で両光を合体させるか、あるいは分割しないレーザー光を、記録用媒体を通して、その後ろの「平面鏡」上に投射することにより作ることができる。これにより均一な間隔のフリンジの「一組」が形成され、投射された2つの光間の鈍角の2等分線に対して平行に配列され、三角関数の強度を有することになる。
この鈍角が、「180度」であり、2つの投射した光の波面が媒体の面に対して直角であるならば、各フリンジは媒体の面に対して平行となる。
そして、この鈍角が、「180度以下」であるか、または2つの光が媒体の面に対して直角でないときは、反射性のフリンジは媒体の面に関して鋭角に傾いて形成される。 ホログラフ鏡はその反射効率、屈折率変調、および反射光の分光帯域と分光特性などにより特性化される。
「反射ホログラム」を形成する実質的に水平なフリンジは、「透過型ホログラム」を形成する垂直なフリンジよりも、記録することが困雌である。
その第1の理由は、より高い解像性、すなわち、単位長さ当りに、より多数のフリンジが必要であって、フリンジの間隔は非常に小さくなる。「反射型ホログラム」は「透過型ホロクラム」よりも単位長さ当り約3倍〜約6倍多いフリンジを必要とする。
その第2の理由は、記録用媒体の収縮に対する水平なフリンジの敏感性である。露光中の記録用媒体の収縮はフリンジの消失を招き、もし収縮がひどいときはホログラムの形成が妨げられる。これは「透過型ホログラム」の場合とは対照的なものであり、「透過型ホログラム」では収縮はほとんど影響がないか、あるいはフリンジが媒体の面に対して直角ならば影響がなく、フリンジが媒体の面から45度以上傾いているときに、比較的僅かな画像の歪みを生ずるだけである。
従って、透過型ホログラムの再生像を真正性判定に使用することは好ましい。
そのような、体積ホログラムを形成する、体積ホログラム形成層には、各種の透明な材料又は、透明なフィルムが用いられる。
すなわち、銀塩写真乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト、フォトポリマー材料、無機材料からなるフォトリフラクティブ材料、フォトクロミック材料等及び、それらの材料からなるフィルムがある。
銀塩写真乳剤としては、高感度及び、高解像度が求められる。
フォトレジストには、ポジ型フォトレジストと、ネガ型フォトレジストをいずれも用い得る。
フォトポリマー材料としては、架橋型フォトポリマー、ラジカル重合型フォトポリマー、カチオン重合型フォトポリマー、化学増幅型フォトポリマー、ナノ粒子分散系フォトポリマー等を用いることができ、その取り扱い適正は、特に優れる。
フォトクロミック材料は、光や熱等の特定の環境下において、その色調が変化するため、その意匠性はさらに高いものとなる。
重クロム酸ゼラチンは、その屈折率変調の高さ(すなわち、高い回折効率、帯域幅対応性)から、「反射ホログラム」の製作に選ばれる材料である。但し、重クロム酸ゼラチンは保存性に課題があり、「反射ホログラム」形成後に、湿式処理を必要とする。このため、この材料はホログラム記録の直前に新たに調製しなければならず、あるいは、予備硬化させたゼラチンを使用しなければならず、画像の再生効率を低下させる。
湿式処理は、ホログラム形成に際し、付加的工程をもち込むことになり、そして処理中に材料が膨潤し、ついで収縮する際に寸法的な変化を生じやすい。これらの寸法的な変化はフリンジの間隔に影響する。従って、重クロム酸ゼラチンによって高品質の「反射ホログラム」を作製することは、時間がかかり、かつ、困難である。
いくつかの処理工程を必要とする、銀塩写真乳剤、或いは、重クロム酸ゼラチンに対して、1回処理工程のみを必要とする固体光重合性材料、すなわち、フォトポリマー材料は、好適である。
フォトポリマー材料の例としては、固体の光重合性組成物であって、熱可塑性重合体結合剤、付加重合可能なエチレン系不飽和単量体、及び、不飽和単量体の重合を活性化する光開始剤からなる、屈折率変調を有する光重合性組成物が挙げられる。
熱可塑性重合体結合剤は、溶媒可溶性の熱可塑性重合体であるが、単独で、又は、互に組合せて使用することができ、例えば、アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、ポリビニルエステル、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジェン及びイソプレン重合体及び共重合体、エポキシ化物、ポリアミド等、並びに、それらの混合物を使用できる。
エチレン系不飽和単量体は、単一の単量体として、又は、組合せて使用することができる単量体として、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル等を用いることができる。
光開始剤としは、遊離ラジカル発生付加重合開始剤等を使用することができる。
フォトポリマー材料としては、さらに、フッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤を有する、光重合性組成物を用いることができる。
フッ素含有ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンまたはへキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーとビニルアセテートとから作られたポリマーが挙げられる。
コヒーレント光による露光によって、このモノマーは、未露光域とは異なる屈折率とレオロジー的性質をもつ、高分子量のフォトポリマーを形成するように(光)重合する。この高分子量のフォトポリマーは実質的に固体ではあるが、各成分は電離放射線による一様、且つ、全面に渡る露光、または、高温度で熱処理することで「定着」されるまでは、コヒーレント光による露光中、および、露光後も、内部拡散をする。
このフォトポリマーは、その厚さと屈折率変調とにより決定される、所定の中心波長、及び、波長領域(分散帯域)をもつ光を反射する。そこで、その厚さは、用途、および、光学系の光学的な要請、すなわち使用中にホログラムを照明(再生)するのに用いる光の帯域幅、に対して一致させられる。一般的に狭い帯域幅用の応用には、比較的厚いフォトポリマーが選ばれ、広い帯域幅用の応用には比較的薄いフォトポリマーが選ばれる。
使用されるフッ素含有ポリマーは、フォトポリマーのその他の各成分と両立し得るフッ素含有ポリマーであり、塗布されたときに実質的に固体の透明な皮膜を作るものである。
「実質的に固体」とは塗布された皮膜が、溶剤を除去した後に、一般的に固体材料の有している諸特性(例えば寸法安定性)を有していることを意味している。
フッ素含有ポリマー中のフッ素の存在は、一般に、フォトポリマーの屈折率を低下させ、これによりホログラム画像化後のフォトポリマーにおいて、増加した(「より大きな」という意味。)屈折率変調が達成される。屈折率変調は、フッ素含有量の増加とともに増大するが、フォトポリマーに不透明化を起こさせないためには、そのフッ素の存在量は限定される。
従って、フッ素の含有量は、その効果が、1%のような低レベルにあっても達成されるものの、代表的には、10〜20%の範囲内とされる。フッ素の含有量は、用途に応じた屈折率変調を達成するために調整可能である。
フッ素は、フッ素含有ポリマーを構成する他のモノマーとフッ素含有モノマーとを共重合するか、または、フッ素含有ポリマーとの反応により導入する。例えば、フッ素含有ポリマーが、アルコール、または、酸置換基のような官能基を含むとき、フッ素を導入するためには縮合、アセタール化、ケタール化、またはエステル化反応などが使用できる。
フッ素含有ポリマーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルアセタール/ブチラール、またはプレポリマー類あるいはこれらの混合物と、フッ素化モノマーとのポリマー類等を用いることができる。
以上のフッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤からなる、光重合性組成物は、その透明性を維持しつ、大きな屈折率変調を有するため、高い透明性と、鮮明なホログラムの再生を必要とする、本発明のホログラムシートに好適である。
また、透明な樹脂、すなわち、光重合性組成物としては、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、特定波長の光に感光してラジカル重合性化合物を重合させる光ラジカル重合開始剤系、及び上記特定波長の光に対しては低感光性であり、別の波長の光に感光してカチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料が用いられる。
この光重合性組成物は、光ラジカル重合開始剤系が感光するレーザー光等の光を照射し、次いで光カチオン重合開始剤系が感光する上記レーザー光等の光とは別の波長の光を照射することによりリップマンホログラムが記録される。レーザー光等の光の照射(以下、第1露光)によってラジカル重合性化合物を重合させた後、カチオン重合性化合物は、その次に行う全面露光(以下、後露光)によって組成物中の光カチオン重合開始剤系を分解させて発生するブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合するものである。
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行なわれるように室温液状のものが用いられる。そのようなカチオン重合性化合物としてはジグリセロールポリグリシジルエーテル等が例示される。
ラジカル重合性化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きく、好ましくは0.02以上大きいとよく、小さいと屈折率変調が不十分となり好ましくない。ラジカル重合性化合物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が例示される。
光ラジカル重合開始剤系は、体積ホログラム作製のための第1露光によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させる開始剤系であればよく、また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いてもよい。光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明体積ホログラムとする場合には、シアニン系色素が好ましい。
シアニン系色素は、一般に光によって分解しやすいため、後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することにより、体積ホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムが得られる。
このような無色透明性は、本発明のホログラムシートに、接着剤層を付加して、ホログラムラベルとしたり、さらに、透明基材と体積ホログラム形成層との間に剥離層を挿入してホログラム転写箔として、被貼着体や被転写体に、貼着または転写した際に、そのホログラムラベルやそのホログラム転写層を通して、被貼着体や被転写体上のデザインや顔写真を確認する際に好適である。
光カチオン重合開始剤系は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸、あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系とするとよく、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。
その体積ホログラム形成層の厚さは、10μm〜100μmとする。好適には、20μm〜50μmである。もちろん、この厚さは薄い方がコスト面や、透明性を確保するためには有利であるが、10μm未満では、十分な光選択性が得られず、また、鮮明なホログラム再生像を得ることが困難である。
しかし、100μmを超えると、コスト面で不利となるだけでなく、その熱変形によるホログラム再生像の歪みが顕著となり、また、その加工適性も劣化する。
以上の方法は、樹脂を担持するための透明基材を介することなく、直接樹脂から形成することができるため、あらかじめ透明基材に樹脂をコーティングしておく工程を不要とすることも可能で、この場合には、コスト面及び、管理面において優れるものとなる。
本発明の方法、すなわち、透明基材の一方の面に、透明な樹脂をコーティングして、体積ホログラムを有する「体積ホログラム形成層」を設けた積層体とする方法においては、体積ホログラム形成層は、光重合性組成物の塗布液(例えば、固形分15〜25%)を、透明基材が、1枚毎のシート状であればバーコート、スピンコート、又はディッピング等により塗布形成され、また、透明基材、がロール状の長尺の状態で塗布するのであれば、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、又はコンマコート等により塗布する。体積ホログラム形成層は塗布液に合わせた乾燥ないし硬化の手段を用いて固化される。
その光重合性組成物としては、一例として、組成物全体に対してカチオン重合性化合物を10〜50%、ラジカル重合性化合物を40〜70%、光ラジカル重合開始剤系を1〜5%、及び、光カチオン重合開始剤系を1〜5%とするとよく、全量を100%となるように配合する。
光重合性組成物は、必須成分および任意成分をそのまま、もしくは必要に応じてメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、メタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒と配合し、冷暗所にて、高速撹拌機を使用して混合することにより調製される。
この光重合性組成物は、その透明性を維持しつ、鮮明な体積ホログラムを再生でき、且つ、高い破断強度、小さい破断伸度、さらには、高い鉛筆硬度を有するため、高い透明性と、引張り耐性や耐摩耗性等の強靭な物理特性などの高い信頼性を必要とする偽造防止用途に、好適である。
光重合性組成物そのものからなるシートや、フィルム、さらには、透明基材上にコーティングした光重合性組成物、すなわち、体積ホログラム形成層に、上記した方法を用いて体積ホログラムを形成することができる。
体積ホログラムは、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を上記したような、いわゆる、体積ホログラムの原理でホログラムを記録したものであり、例えば、フレネルホログラムなどのレーザー再生ホログラム、イメージホログラム及び白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などとすることができる。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
ここで、本発明のホログラムシートを観察する者に、このホログラムシートが通常の単なるリップマンホログラムであると思わせるためには、自然光下では視認できない透過型ホログラムに加えて、それらの観察者が自然光下で目視にて鑑賞可能な反射型ホログラム、すなわち、リップマンホログラムを、少なくとも1種類は、多重記録しておくことが必須である(隠しホログラムである透過型ホログラムの記録に重ねて、反射型ホログラムを記録するという意味。)。
この際、透過型ホログラムの再生効率(ホログラムとして、回折格子を記録した際の回折効率に相当する。)を反射型ホログラムの再生効率よりも小さくすることが、その透過型ホログラムの隠し効果を高める上で、好適である。
体積ホログラム形成層は、いわゆる「ホログラフィー露光装置」による所定の波長範囲のレーザー光等の光を使用し、ラジカル重合性化合物を重合させてその内部に干渉縞が記録される。この段階で、記録された干渉縞による回折光が得られ、体積ホログラムが形成されるが、体積ホログラム形成層として、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、及び光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料を用いた場合には、未反応のまま残っているカチオン重合性化合物を更に重合させるために、後露光として光カチオン重合開始剤系の感光する光(例えば波長200〜800nm)を全面照射して体積ホログラムを固定化するとよい。なお、後露光の前に体積ホログラム形成層を熱や赤外線で処理することで回折効率、回折光のピーク波長、半値巾などを変化させることもできる。
体積ホログラムを形成した体積ホログラム形成層は、そのホログラムを形成したときに使用したレーザー等の光源波長(これが、上記した「参照光」や、「物体光」となる。)によって、その「層」の中に、フリンジ(干渉縞)を「屈折率の部分的な変化(屈折率変調)」という形で、「3次元的」に記録したもの(フリンジ全体が立体的構造となるという意味。)である。
このフリンジは、上記したホログラム形成時に使用した光源波長で照明したときにのみ、「干渉現象」を発生し、観察者の目に視認可能となる反射再生像(体積ホログラム再生像)を出現させる。
しかしながら、このフリンジを、上記の波長以外の光で照明したときは、上記した「干渉現象」が発生せず、わずかな散乱現象が生じるのみで、その光はそのまま透過することになる。
例えれば、可視光線領域内である、発振波長442nmの固体レーザー(HeCdレーザー。)を用いて体積ホログラムを形成し、体積ホログラム形成層とすると、その体積ホログラム形成層に、470nmや、520nm等の可視光線領域に別の発光波長を有する光源の光を投射しても、体積ホログラムを再生せず、しかも、反射光をも発生しない(シートと空気との界面でのわずかな界面反射は存在するが、フリンジによる反射光は発生しない。)。
このことは、体積ホログラム形成層の背後に設けたフォトクロミック薄膜層が発光し、そのフォトクロミック薄膜層によって定まる波長の光がこの体積ホログラム形成層を透過しても、その波長が、上記した442nmと異なる場合には、何らの干渉現象も発生せず、結果として、何らのホログラム再生像も現れないこととなる。
従って、このフォトクロミック薄膜層の発色波長は、透過型体積ホログラムの記録波長と実質的に同一(実際の記録波長に対して、±5%以内を意味する。)、もしくは、この記録波長を含む波長域を有するものとする。
また、体積ホログラムは、照明光の照明角度を最適値(再生時に最適な照明角度は、ホログラム形成時の「参照光」と記録用媒体とが成す角度となる。)とは異なるものとすることでも、上記したフリンジの干渉現象が低下するため、フォトクロミック薄膜層から比較的全方向へ発する「蛍光」の内、この「参照光」と記録媒体とが成す角度と、実質的に同一の角度で入射する「蛍光」が選択的に干渉現象を強く受け、互いに強め合って、ホログラム再生像を再生することとなる。これは、体積ホログラム形成層によって、発色する光の方向をも選択されることを意味する。
さらには、フォトクロミック薄膜層を発光させる所定の波長の光については、そのフォトクロミック薄膜層に入射する角度になんらの制限が無いことから、体積ホログラム形成層側から、その体積ホログラム形成層に対して浅い角度で入射させ、その反射角度が観察者の目の方向に向かないようにすることも可能であるし、フォトクロミック薄膜層の背後からやはり浅い角度でフォトクロミック薄膜層を照明することにより、その照明光源が観察の障害となることを防止することも可能となる。
これらの体積ホログラムを形成する際に用いられる光源としては、可視光波長領域にあるコヒーレントな光を発振(発光)するものであれば、いずれも用いることができるが、例えば、ガスレーザーとして、HeNeレーザーLGシリーズ(発振(発光)波長は、594nm、633nm、0.5mW〜30mW)、HeNeレーザーLHシリーズ(同、594nm、604nm、612nm、633nm、0.3mW〜4.0mW)、アルゴンレーザー(同、488nm、40mW)、HeCdレーザーIKシリーズ(同、442nm、20mW〜200mW)、窒素/色素レーザーGL−301、窒素/色素レーザーGL−302(同、360nm〜990nmから選択可能。)等、
固体レーザーとして、ルビーレーザー(同、694nm、パルスレーザー)、小型CWレーザー(Nd:YAG、Nd:YLF、Nd:YVO4レーザー)Direct(同、405nm、445nm、447nm、488nm、638nm、643nm、655nm、690nm)、小型CWレーザー(同)Crystal(同、473nm、593nm、657nm、660nm、671nm)、波長変換レーザーOptiシリーズ(同、488nm、589nm)、TOL90色素レーザー(同、420nm〜900nmから選択可能。)等、
半導体レーザーとして、SWL−7513H(同、633nm、660nm、8mW〜20mW)、FK LA−100(同、457nm、1W)、LDM(同、405nm、440nm、473nm、635nm、665nm、690nm、10mW〜200mW)等を用いることができる。
さらに、上記の理由から、ホログラム再生像をより鮮明にするためには、発色する放射光に、時間的若しくは空間的なコヒーレンス性に類する特性を付与することが好ましく、例えば、フォトクロミック薄膜層の厚さを薄いものとしたり(光の進行方向において、発光点となるフォトクロミック薄膜層に含まれるフォトクロミック分子の位置を揃えるという意味。)、発色波長の幅を狭くすることが望ましい(干渉現象を生じない波長の光は、そのまま、ホログラム再生像にとってノイズもしくは迷光となるため。)。さらに、フォトクロミック分子(以下、発光体ともいう。)を励起する励起光源の照明領域も小さい形状であることが好ましく、スポット形状等が特に好適である。
また、フォトクロミック分子(発光体)を励起する励起光と、発色波長(発光波長)との波長差は大きい方が望ましく、さらに、観察時、その励起光をフィルタリングして発光光のみを増幅することも有効である。
励起光源として、紫外線、可視光線、電子線、X線等のエネルギー及び場合に応じて、赤外線エネルギーを放射可能な光源を用いて、発色等をさせることができるが、ホログラム観察用さらには、ホログラム認証用に用いるためには、フォトクロミック分子に応じた光源を用いる必要があり、所定の強度、波長、さらには照明スポットのサイズを有する紫外線光源、可視光光源、場合により赤外光源を用いる。
また、フォトクロミック分子の励起には、加熱手段を用いることも可能であり、この場合においても上記と同様の意匠性、及び、偽造防止性を得ることが可能であることはいうまでもないが、本説明においては励起光源を用いる方法につき詳述する。
これらの光源による照明により、体積ホログラム形成層上に設けられたフォトクロミック薄膜層から、さらに言及すれば、そのフォトクロミック薄膜層に含まれるフォトクロミック分子から個々に、照明光源の波長とは異なる波長の発色等が発現する。その発色等が、照明光源とは異なる波長(発色波長。)を有することから、体積ホログラム形成層による正反射(0次回折光)方向や、照明光波長(励起光波長)による回折方向とは異なる方向、すなわち、発色波長による回折方向へホログラム像の再生が行われる。
但し、このフォトクロミック薄膜層の厚さが、不均一に体積ホログラム形成層上に分布している場合には、その厚さ分布に起因する発色強度分布が、場合によっては、ホログラムを再生する光と不要な干渉を生じ、ホログラム再生像を不鮮明にする要因となり得る。
この要因を排除するため、フォトクロミック薄膜層を、体積ホログラム形成層上に均一な厚さで形成して、体積ホログラム形成層上のどの位置からも、同一の強度の発光が生じるようにし、ホログラム再生像の鮮明化を図ることができる。
本発明のホログラムシートの照明光(励起光)として、可視光以外の紫外光や赤外光を使用した場合は、その光は観察者には見えず、あたかも照明光のないところからホログラム再生像が浮き上がっているように観察されるが、このホログラム再生像は、例え、照明光が、時間的・空間的なコヒーレント性を有していても、結果として、発色というプロセスを経て発光するものであるため、その発光光同士の時間的及び空間的なコヒーレント性は小さく、ホログラム再生像は通常のレーザー再生ホログラムの再生像よりその回折効率はやや低く、且つ、やや不鮮明となっている。
もちろん、ビーム形状の回折光を観察するのみであれば、その色調と回折方向を確認することは容易であり、そのままでも真正性の判定に差し支えないが、このため、このやや低回折効率、且つ、やや不鮮明なホログラム再生像を観察者が認識しその存在を正確に判定可能とするために、フォトクロミック分子の発光性能を向上させ、且つ、回折角度を大きくとって波長―回折角依存性を強め、照明光回折角度と発色光回折角度の差を大きくし、さらには、フォトクロミック薄膜層を薄くして、フォトクロミック薄膜層厚さ方向のばらつきを抑え且つ均一なものとすることが必要となる。
さらには、時間的なコヒーレント性を発現するため、ホログラム再生像を観察するための光源(励起光源ではなく、フォトクロミック薄膜層が発色した後に、その安定的に呈色している色調を観察するための照明光源を意味する。)として断続的に照明することが可能なパルスレーザーで照明して、パルスとパルスの時間的間隔をあけて照明することも好適である。これにより、一つの照明パルスによって生じた一つの発色の発光面が、次の照明パルスによって生じた発色面とは、互いに撹乱現象を起こさず、一つのパルスによって発現した一つの発色面によって生じるホログラフィックな干渉現象により、鮮明なホログラム再生像を観察することができるようになる。もちろん、単純に秒単位でON−OFFするストロボ状の光源を使用した場合でも、観察者には、連続して発光しているようにも見えるため、このような簡易な手段であっても目視で確認する場合には、上記した効果を十分得ることができる。
フォトクロミック薄膜層が、その色調を変化させる様子を、フォトクロミック分子ポテンシャル曲線(図2参照。)を用いて、以下に説明する。
フォトクロミック分子Aは、ある波長λの光照射によってエネルギーを得て、励起状態の分子A*になる。(STEP1)
このとき、励起状態となったフォトクロミック分子A*は分子内反応、例えば、cis−trance異性化反応や、閉環・開環反応、酸化・還元反応、水素移動による互変異性等を起こして、その分子の幾何構造や、電子構造を変化させる。
この変化によって、フォトクロミック分子A*は、フォトクロミック分子Aとは違った波長の光λ′を吸収するフォトクロミック分子B へと変化する。
そして、フォトクロミック分子B は、その吸収波長λ′の光の吸収(STEP2)、もしくは、熱エネルギーを吸収(STEP3)して、再び、フォトクロミック分子A へと戻る。
そしてこのSTEP1〜STEP3を繰り返すことが可能である。
このとき、フォトクロミック分子B からフォトクロミック分子A への熱戻りのしやすさは、その基底状態ポテンシャルエネルギー△E(図1:STEP3)の大きさに依存する
ことになる。
熱戻りがしにくい、つまり△Eが極端に大きければ暗所に保存しておけばそのまま着色体
を維持し続けることになる。(このようなフォトクロミック分子は、これを光のみに依存するという意味でP 型という。)
逆に、光が当たらなくなって、すみやかに脱色、もしくは、元の色調に戻る場合には、△Eは比較的小さい。(このようなフォトクロミック分子は熱依存性があるという意味で、T 型という。)
すなわち、フォトクロミック薄膜層は、あるときはフォトクロミック分子Aで構成され、あるときは、フォトクロミック分子Bで構成されていることになる。
フォトクロミック分子Aもしくは、Bはそれぞれ特徴のある光吸収曲線を有しており、フォトクロミック分子Aは波長λにおいて、フォトクロミック分子Bは波長λ´において大きな吸収(曲線)部分を持つ。
一例として、フォトクロミック分子Aにおける波長λが、紫外線領域にある場合、フォトクロミック分子Aは、無色透明であって、励起状態A*を経て、フォトクロミック分子Bに変化して初めて、可視光領域にある特定の波長(これが波長λ´の場合もある。)を中心とする光の吸収により、特定の色調を呈するようになる。
この「色調を呈する」状況は、フォトクロミック分子Bが、可視光領域において所定の光吸収曲線を有しており、このフォトクロミック分子Bに白色光を当てた際に、特定の波長を含む所定の波長領域の光を吸収し、吸収されなかった波長領域の光が発散光として、フォトクロミック分子Bからなるホロクロミック薄膜層から発することになる。
この例によるホログラムシートにおいては、フォトクロミック分子Bから発する発散光が、上記した透過型ホログラムの参照光の役割を担うことになる。
従って、フォトクロミック薄膜層がフォトクロミック分子Aで構成されているときには、このフォトクロミック薄膜層が無色透明であって、その位置にホログラムがあるとは認識できず、そのフォトクロミック薄膜層の背景にあるものが見えているが、波長λの照明光をフォトクロミック薄膜層に当てることにより、フォトクロミック薄膜層が上記した波長領域の光を発散し、その発散光の干渉により、その発散光の「色調」によるホログラムが空中に浮かんで見えることになる。
この発散光の「色調」によるホログラム再生像は、フォトクロミック薄膜層が、「安定した」色調を呈することにより、すなわち、一定の強度を有し、且つ、一定の発光波長の光を放出することにより、非常に安定したものとなるため、その真正性の証明を確実、且つ、容易に実施することができる。

そして、そのフォトクロミック薄膜層が、上記したP型である場合には、その「色調」をしばらく維持し、徐々に消色し、また、フォトクロミック薄膜層が、上記したT型である場合には、比較的すみやかに「色調」が消色し、再び、無色透明となる。
また、フォトクロミック分子A、Bがいずれも可視領域の色調を呈する場合には、ホログラム再生像の色調が変わる現象が現れることになる。
本発明のホログラムシートのこのような効果を意匠性ととらえて、鑑賞用途に採用してもよい。
また、T型の中でも、その消色の速さを非常に早いものとして、波長λの励起光をはずすと同時に消色するように設計し、ホログラム真正性判定者が、ホログラムシート(もしくはホログラムシート貼着物)保持者から、そのホログラムシート(もしくはホログラムシート貼着物)を預かり、素早く波長λの照明を僅かな時間照射し、その瞬間に、上記した発色光によるホログラム再生像を視認して、真正であることを確認し、その後、すみやかに、そのホログラムシート(もしくはホログラムシート貼着物)を、その保持者に返却するなど、その真正性判定を、その保持者に気づかれずにに行うことを可能とすることもできる。
この場合には、消色の速さを、発色強度(発色濃度)の半減期で表現して、その半減期が、0.1秒〜数秒となるように設計する必要がある。こうすることで、波長λの光を照射すると、速やかに上記した変化が生じ、フォトクロミック分子Bの「色調」のホログラム再生像が現れ、波長λの光の照射を止めると、速やかに無色透明となる、真正性判定に優れるホログラムシートを提供することができる。
もちろん、波長λの光を照射後、発色を確認し、速やかに波長λ´の光を照射して消色するような判定システムを用いることも好適である。
本発明のホログラムシートは、透明基材、体積ホログラム形成層、及びフォトクロミック薄膜層の3層構成からなり、この透明基材側から自然光や蛍光灯の一般的な照明光をあててた場合、上記した体積ホログラムの波長選択性により、そのホログラム再生像は、その選択された、非常に狭い波長域の光でしか再生されないため(もちろん、その光の干渉効果により「光の強度」が強められる部分を生じるが。)、そのホログラム再生像の明るさは不十分であるが、フォトクロミック薄膜層に適する波長(紫外線等。)の励起光を、透明基材側、もしくは、フォトクロミック薄膜層側からあてることで、フォトクロミック薄膜層から所定の波長(域)の光が発生し、この光が体積ホログラムの照明光となって、明るいホログラム再生像を再生するものである。
従って、体積ホログラム形成層には、透過型ホログラムや、反射型ホログラムを記録して用いることができるが、発色の進行方向に沿って干渉現象を生じ、その先にホログラム再生像を出現させる、透過型ホログラムを記録する方が設計しやすく、この場合には、さらに、透明基材側からの自然光等の照明において、透明基材側からは何らのホログラム再生像を視認することができないため、単なる透明シートとしか観察されず(所望の印刷等を施しておれば、単なる印刷シートと観察される。)、偽造防止性の高いものとなる。
また、体積ホログラム形成層に上記した透過型ホログラムを記録した上で、さらに、反射型ホログラムを多重記録しておくと、透明基材側からの観察において、反射型ホログラムの再生像を視認可能となり、観察者に、単なるリップマンホログラムシートと認識させ、透過型ホログラムの存在をより隠ぺいすることが可能となる。
もちろん、このホログラムシートのフォトクロミック薄膜層を発光させると、その反射型ホログラムの再生像とは、異なる方向に透過型ホログラムの再生像が現れるため、意匠性と偽造防止性をさらに高めることができるものである。
この目的のために、反射型ホログラムの再生波長と、透過型ホログラムの再生波長を異なるものとするとともに、その再生角度も異なるものとする。この際の波長差は、50nm以上とし、好適には、100nm以上とする。再生波長を異なるものとすることは、上記したフリンジの周期を異なるものとすることを意味し、体積ホログラム形成層内におけるそれぞれのフリンジ間の不要な干渉を低減することができる。
そして、再生角度差は、10度〜40度とする。この差が40度を超えると、一方の観察角度がホログラムシート面に近いものとなるため、観察するのに不便となる。
さらに、体積ホログラム形成層と、フォトクロミック薄膜層との間に、透明薄膜層を設けることで、フォトクロミック薄膜層から発する光の進行方向を所定の方向に制御し、且つ、その方向を体積ホログラム形成層に記録してある透過型ホログラムの参照光の方向と実質的に同一とすることで、発色による透過型ホログラムの再生像の明るさを増すことができ、その再生像の確認をより確実なものとすることができる。
この透明薄膜層は、「屈折率の異なる透明な層」に挟まれた「均一な厚さの透明な層」とみることができ、この透明薄膜層に入射する光は、この透明薄膜層内において、多重反射現象を生じる。
この多重反射現象を、最も単純な構成で説明するため、屈折率n1の領域(例えば、真空領域n1=1。)中に、厚さd1、屈折率n2の透明薄膜層が挟まれている(浮いている)状態を想定する(屈折率n1の領域と屈折率n2の領域とがなす、2つの界面は、平面界面とする。)。
この透明薄膜層に、屈折率n1領域側から入射する光は、屈折率n1領域と透明薄膜層との界面(第1界面とする。)において、一部反射され、残りの光がこの界面において屈折し、その進行方向をフレネルの公式に従った方向へ変えて、その透明薄膜層内を進み、今度は、透明薄膜層の内部から、屈折率n1領域へ飛び出す際に、その界面(第2界面とする。)において、同様に、一部反射し、残りが屈折を生じることとなる。
この第1界面と第2界面(上記の2つの界面を意味する。)は、平行な平面であって、その平面間距離が上記したd1となっている。
そして、その第2界面に、内側から向かって反射された光は、再び、第1界面に向かい、第1界面において、さらに、一部反射され、残りが、その第1界面を透過し、且つ、屈折する光となる。
このように、最初に第1界面において反射される光(一次反射光。)、薄膜層内の第2界面において、内側から向かって、最初に反射された後、第1界面を透過する光(二次反射光。)、さらに第1界面において反射され、再び、第2界面において反射された後、第1界面を透過する光(三次反射光。)、さらに同様の高次反射光が、その薄膜層を飛び出した領域において干渉現象を起こし、薄膜層の屈折率n2、厚さd1と、入射光の波長λ、及びその入射角度θによってその「強度」が定まる、「反射光」となる。
例えば、この薄膜層に垂直に入射する(θ=0°)光においては、n1×d1=m×λ/4(mは整数。)の式が成り立ち、その反射率Rは、R=(n22−n122/(n22+n122となって、その値は、所定の入射角度において、最大値をとることとなる。
しかも、この多重反射現象は、透過光においても同様に成り立つものである。
すなわち、透明薄膜層は、所定の波長の光を、所定の角度で透過する際に、その透過率に、最大値や、最小値をとらせることとなる。
従って、フォトクロミック薄膜層の上に(フォトクロミック薄膜層と体積ホログラム形成層との間に。)、透明薄膜層を設ける際に、フォトクロミック薄膜層の発色する光の波長に合わせて、その屈折率及び、その厚さを設定することで、例えば、透明薄膜層を垂直な方向に進む光を「選択的に強く」することができる。
これは、フォトクロミック薄膜層内で発光した光が、透明薄膜層内をあらゆる方向に進もうとする際に、その透明薄膜層を垂直に進み、且つ、その透明薄膜層内を垂直に飛び出る光(垂直透過光を意味する。)のみを「選択的に強く」することができることを意味する。
このことを利用して、本発明のホログラムシートを発色させ、且つ、その透明基材側から観察する、発色の波長により再生されるホログラム再生像を、著しく鮮明、且つ、輝度の大きいものとすることが可能となる。
本発明のホログラムシートにおいては、透明基材上に、体積ホログラム形成層を設け、その上に所定の均一な厚さの透明薄膜層を設け、さらに、その上にフォトクロミック薄膜層を設ける。
透明薄膜層としては、発色波長をλ(nm)として、透明性を有する、厚さがλ/10〜λ(nm)の均一な薄膜であって、上記の条件を満たすものであればいずれも使用できるが、特に、金属化合物薄膜を蒸着等の真空薄膜法等により設けたものが、その物理特性や、光学特性に優れるため好適である。
このようにして形成したホログラムシートは、そのフォトクロミック薄膜層上に適宜な粘着層もしくは、接着層を設けて、「ラベル」とし、適宜な被貼着体に貼付して用いることもできる。
また、透明基材と体積ホログラム形成層との間に適宜な剥離層を設け、さらに、フォトクロミック薄膜層上に接着層を設けて「転写箔」とし、適宜な被転写体に転写して用いることも好適である。
さらには、本発明のホログラムシートの各層に適宜、所望のデザインの印刷等を施し、その意匠性や偽造防止性を高めることも好適である。
本発明のホログラムシートによれば、
透明基材の一方の面に、透過型ホログラムが記録された体積ホログラム形成層、及びフォトクロミック薄膜層が設けられていることを特徴とするホログラムシートが提供され、そのフォトクロミック薄膜層の発色により体積ホログラムを「照明」し、「明るさ」の十分なホログラム再生像を出現させることで、このホログラム再生像による真正性判定を容易、且つ、確実なものとすることができるホログラムシートを提供できる。さらに、このようなホログラムシートはこれまでに存在しないため、新規な装飾性及び、これを応用する偽造防止性を提供することができる。
は、体積ホログラムの記録方法及び、再生方法を示す図である。 は、フォトクロミック分子ポテンシャル曲線を説明する図である。 は、本発明の一実施例を示すホログラムシートAの断面図である。 は、本発明の別の実施例を示すホログラムシートA´の断面図である。 は、本発明の一実施例を判定するプロセスである。 は、本発明の別の実施例を判定するプロセスである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
(透明基材)本発明で使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムシートAまたはA´を製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。(図3及び図4参照。)
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
その中でも、紫外線等の励起光に対する耐性を有するもの、例えば、紫外線吸収剤を含むものであってもよい。紫外線吸収剤を含むものは、自然光等の中に含まれる紫外線により微かではあるが、予定外のホログラム再生を防ぐ効果も有する。
透明基材1の厚さは、通常5〜100μmであるが、ホログラム再生像の視認性を配慮する場合には、5〜50μm、特に5〜25μmとすることが望ましい。
(体積ホログラム形成層)上記した透明基材1の上に体積ホログラム形成層2を設ける。(図3及び図4参照。)
体積ホログラム形成層2には、各種の透明な材料又は、透明なフィルムが用いられる。
すなわち、銀塩写真乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト、フォトポリマー材料、無機材料からなるフォトリフラクティブ材料、フォトクロミック材料等及び、それらの材料からなるフィルムを用い得る。
銀塩写真乳剤としては、高感度、高解像度が求められ、超微粒子銀塩や、金―カルコゲン増感や、還元増感を施した材料等が用い得る。
フォトレジストとしては、ポジ型フォトレジストとして、ノボラック−DNQ系、又は、化学増幅型フォトレジスト、ネガ型フォトレジストとして、光架橋型フォトレジスト、又は、光重合型フォトレジスト等を用いることができる。
銀塩写真乳剤、或いは、重クロム酸ゼラチンは、処理工程が多く煩雑であるが、固体光重合性材料、すなわち、フォトポリマー材料は、処理工程が1回のみであるため、好適である。
これは、1工程で、固体の光重合性フィルムから、安定な高解像度のホログラムを作成することができ、ホログラフ情報をもつコヒーレントな光源に対する1回の露光により、「屈折率変調を固定化した画像」が得られることを意味する。このようにして形成されたホログラムは、光に対するその後の均一な露光によっても破壊されることなく、むしろ定着されまたは強化される。
フォトポリマー材料は、熱可塑性重合体結合剤、付加重合可能なエチレン系不飽和単量体、及び、不飽和単量体の重合を活性化する光開始剤からなる、屈折率変調を有する光重合性組成物を用いる。
熱可塑性重合体結合剤は、溶媒可溶性の熱可塑性重合体であり、単独で、又は、組合せて使用する。具体的には、
;アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、例えば、ポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、
;ポリビニルエステル、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル;エチレン/酢酸ビニル共重合体、
;飽和及び不飽和ポリウレタン、
;ブタジェン及びイソプレン重合体及び共重合体、
;エポキシ化物、例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物、
;ポリアミド、例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアシツクアミド、
;セルロースエステル、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート、
;セルロースエーテル、例えば、メチルセルロース、並びにエチルセルロース;ポリカーボネート等、
並びに、
;ポリビニルアセタール、例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール等。
特に好適には、セルロースアセテートラクテート重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸及びメタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体を含むアクリル系重合体及びプレポリマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸又はメタクリル酸(C2〜C4)アルキル/アクリル酸又はメタクリル酸の3元重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等、並びに、それらの混合物である。
さらに、ポリスチレン、ポリ(スチレン/アクリロニトリル)、ポリ(スチレン/メタクリル酸メチル)、並びに、ポリビニルペンデル、及び、それらの混合物を含むこともできる。
エチレン系不飽和単量体は、単一の単量体として、又は、組合せて使用することができる単量体として、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、又はジメタクリレート、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ポリオキシエチル−2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノール−Aジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ヒスフェノール−Aジアクリレート、ビスフェノール−A−ジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−A−ジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−A−ジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−A−ジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−A−ジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−A−ジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、ジフェノール酸−ジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、1,4−ベンゼン・フォールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、ベンゾキノンモノメタクリレート、並びにアクリル酸2−〔β−(N−カルバジル)プロピオニロキシ〕エチル等、を用いることができる。
この単量体が、置換又は非置換フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフトキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素、臭素、よりなる群から選択される、1つ又はそれ以上の部分を含有する場合には、これらを含む光重合性組成物は、いわば「単量体配向型系」と称することができる。
この単量体配向型系に好適な単量体は、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、ビスフェノール−A−ジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ヒスフェノール−Aジアクリレート、並びにアクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、である。
そして、エチレン系不飽和カルバゾール単量体;アクリル酸2−ナフチル;アクリル酸インタクロロフエ=ル;ビスフェノール−Aジアクリレート;アクリル酸2−(2−ブチロキシ)エチル; 並びに、N−フェニルマレイミドのような第2の固体単量体と混合して使用してもよい。
また、予め形成された重合体材料(プレポリマーを意味する。)が、置換又は非置換フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフトキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素、臭素、よりなる群から選択される、1つ又はそれ以上の部分を含有する場合には、これらを含む光重合性組成物は、いわば「結合剤配向型系」と称することができる。
この系に使用される単量体には、フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフチロキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素及び臭素よりなる群からとられる部分を含まないものを使用する。
「結合剤配向型系」に好適な単量体は、付加重合することができ、100℃より高い沸点を有する液体、エチレン系不飽和化合物である。単一の単量体としてか又は他の単量体と組合せて使用することができるこの型の適当な単量体は、次のものを含む。
すなわち、アクリル酸一ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソーホルニル、1,5−ベンタンジオールジアクリレート、N、N´−エチルアミノエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールノアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、1,3−プロノぐンジオール・クアクリレート、デカメチレングリコールジアクリレー)、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパンジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロ−−ルプロJRントリメタクリレート、1,5−ベンタンジオールジメタクリレート、フマル酸ジアリル、アクリル酸パーフロロオクチル、メタクリル酸フロロオクチル、並びに1−ビニル−2−ピロリジノン等。
上記のエチレン系不飽和単量体の外、少なくとも300の分子量を有する、1種又はそれ以上の遊離ラジカル開始型、連鎖生長性、付加重合可能、エチレン系不飽和化合物も含有することができる。
また、単量体は、2〜15の炭素原子のアルキレングリコール又は1〜10のエーテル結合のポリアルキレンエーテルグリコールから製造されるアルキレン又はポリアルキレングリコールジアクリレート、並びに、末端結合として存在する時、複数の付加重合可能なエチレン結合を有するものであってもよい。
さらに、デカンジオールジアクリレート、アクリル酸イソ−ボルニル、トリエチレングリフールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸エトキシエトキシエチル、エトキシル化トリメチロールプロノンのトリアクリレートエステル、等である。また、同じ型の第2の固体単量体、例えば、N−ビニルカプロラクタムと混合して使用してよい。
光開始剤として適当な、遊離ラジカル発生付加重合開始剤は、共役炭素環状環系中2つの環内炭素原子を有する化合物である置換又は非置換多核キノン、例えば、9,10−アンスラキノン、1−クロロアンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、2−メチルアンスラキノン、2−エチルアンスラキノン、2−三級−ブチルアンスラキノン、オクタメチルアンスラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンスレンキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、2,3−ベンズアンスラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,4−ジメチルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、2−フェニルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、アンスラキノンアルファースルホン酸のナトリウム塩、3−クロロ−2−メチルアンスラキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセンキノン、を含む。
また、ベンゾイン、ピパロイン、アシロインエーテル、例えば、ベンゾインメチル及びエチルエーテル;α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、及び、α−フェニルベンゾインを含む、α−炭化水素置換芳香族アシロインを含んでもよい。
さらに好適な光開始剤には、2−(0−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体;1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ヒス(0−クロロフェニル)−4,4’、5,5’−テトラフェニルー:並びに、1H−イミダゾール、2,5−ビス(0−クロロフェニル)−4−3,4−・ジメトキシフェニル−2量体(そのおのおのは、典型的には水素ドナー、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾールと共に使用される)を挙げることができる。
フォトポリマー材料としては、さらに、フッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤からなり、画像化(光記録)されたとき、0.001よりも大きな屈折率変調を有する、光重合性組成物を用いることができる。これには、さらに、可塑剤を含めてもよい。
フッ素含有ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンまたはへキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーとビニルアセテートとから作られたポリマーを用いることができ、他のモノマーを含むこともできる。例えば、10〜20%のフッ素を含有しているものを使用する。
使用されるフッ素含有ポリマーは、フォトポリマーのその他の各成分と両立し得るフッ素含有ポリマーであり、塗布されたときに実質的に固体の透明な皮膜を作るものである。
フッ素は、フッ素含有ポリマーを構成する他のモノマーとフッ素含有モノマーとを共重合するか、または、フッ素含有ポリマーとの反応により導入し、フッ素含有ポリマーが、アルコール、または、酸置換基のような官能基を含むとき、フッ素を導入するためには縮合、アセタール化、ケタール化、またはエステル化反応などを使用する。
フッ素含有ポリマーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルアセタール/ブチラール、またはプレポリマー類あるいはこれらの混合物と、フッ素化モノマーとのポリマー類を含む。例えば、フッ素含有ポリマーは、ビニルアセテートとフッ素化モノマーとのポリマーとすることができ、必要に応じ、このポリマーのアセテート置換基は、加水分解によりとり除き、フッ素化したポリ(ビニルアルコール)誘導体を得ることもできる。このフッ素化ポリ(ビニルアルコール)は、例えば、ブチルアルデヒドと縮合させ、フッ素化したポリ(ビニルブチラール)誘導体にすることができる。
フッ素化したポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)など、または、これらの混合物も同じ方法で作ることができる。フッ素化モノマーは、テトラフルオロエチレン、および/または、へキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーが好適であるが、ビニルフロライドまたはビニリデンフロライドのような、その他のモノマーも特定の用途のために選定することができる。
必要に応じ、他のモノマー類も存在させることができる。例えば、フォトポリマーの溶解性、接着性、柔軟性、または硬さなどのような、化学的、もしくは、物理的諸性質を調整するために、モノマー混合物中にエチルビニルエーテルを混在させることができる。このようなフォトポリマーは通常のフリーラジカル重合法を用いて製造される。
フッ素化したフッ素含有ポリマーは、また適切に置換されているポリマーと、フッ素化された化合物との反応により作ることもできる。ヒドロキシルまたはカルボキシル基のような、潜在的な反応位置をもったポリマーは、フッ素化された化合物との反応によりフッ素化されたフッ素含有ポリマーに変換することができる。例えば、フッ素化されたポリ(ビニルブチラール)は、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアルデヒドと、ポリ(ビニルアルコール)の縮合により調製することができる。カルボキシル酸を含むポリマー類はフッ素化したアルコール類でエステル化することができ;ポリ(ビニルアルコール)、部分ケン化されたポリ(ビニルアセテート)、またはフッ素化されたモノマーとビニルアセテートとのポリマー類の部分ケン化またはケン化されたものなどのような、ヒドロキシル基含有のポリマー類は、フッ素化されたカルボキシル酸によりエステル化することができる。
フルオロオレフィン類は標準的なグラフト化技術を用いて、適切に置換されているポリマー上にグラフト化することができる。ビニルエステル、少なくとも、1つのフッ素化されたモノマー、および、得られるポリマーの物理的性質を調整するための任意の他のモノマーとのポリマーが好ましい。
一般に、フッ素含有量が低下するとその効果も減少するから、フッ素含有ポリマーは少なくとも10%のフッ素を含有するようにされる。しかしながら、フッ素含有量が余りにも高すぎると、得られるフォトポリマーは不透明となる傾向があり、体積ホログラム形成層の調製のためには有用でない。さらには、窓用フィルムとして用いる場合に、再接着用の糊との接着性が著しく低下する。従って、好ましいフッ素含有ポリマーは、10〜20%のフッ素含有量を有している。
フッ素含有ポリマーのビニルエステル成分としては、ビニルアセテートが特に好ましいが、他のビニルエステルおよび類似の結果を与える構造的に関連した化合物も、これに加えて、またはビニルアセテートの代りに選定することができる。例えば、ビニルピバレート、ビニルプロピオネート、ビニルステアレート、ビニルアルコール、または、n−ブチルビニルエーテルなどを選ぶことができる。テトラフルオロエチレン、または、へキサフルオロプロピレンのような過フッ素化モノマー類は、フッ素化モノマー成分として特に有用であると認められているが、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、フルオロオレフィン類、フロロアルキルアクレリートおよびメタアクリレートなどのようなその他の化合物も、特定の用途のためには選ぶことができる。
フッ素化されていない対応物よりも、フッ素化されているフッ素含有ポリマーを選ぶことは屈折率変調を劇的に増加させ、それでホログラムの回折効率も増加させる。
例えば、他のすべての成分を同じにして、ポリビニルアセテートによって達成されるのは約0.025〜0、031の範囲の値であるのに反して、ビニルアセテート/過フッ素化物モノマーのフォトポリマーの使用では0.040を超え、0.076の高い屈折率変調の値が達成される。
フッ素化フッ素含有ポリマーは、全フッ素含有ポリマーの1部分だけに選択することができる。この場合、フッ素含有ポリマーのフッ素化されていない対応物は、2つのフッ素含有ポリマーが互いに両立し、そして塗布用溶剤および他のフォトポリマー成分とも両立し、そしてフォトポリマーの透明性、機械的諸性質などを不当に犠牲としないならば、その他の成分として選択することができる。
フォトポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含み、これはフリーラジカルで開始される重合し得るもので、100℃以上の沸点を有し、塗布溶剤および選ばれたフッ素含有ポリマーと両立し得るものである。このモノマーは通常末端位置に不飽和性基を含んでいる。一般に液体のモノマーが選定されるが、固体のモノマーが実質的に固体のフォトポリマー組成物中で内部拡散し得るならば、固体のモノマーも1個または数個の液体モノマーと組み合わせて用いることができる。
モノマーは、付加重合をすることができかつ100℃以上の沸点をもつ液体の、エチレン性不飽和化合物であり、これは3個までの芳香環;塩素;および臭素を含む、置換または未置換のフェニル、ビフェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフチルオキシ、およびヘテロ芳香基、よりなる群から選ばれた1個または数個の部分を含んでいる。モノマーはこのような部分を少なくとも1つ含み、またモノマーが液体でとどまるならば、同一または異なるこのような部分を2個またはそれ以上含むことができる。低級アルキル、アルキオキシ、ヒドロキシ、フェニル、フェノキシ、カルボキシ、カルボニルイミド、シアノ、クロロ、ブロモまたはこれらの組み合わせのような置換基を、モノマーが液体モノマーにとどまり、かつ光重合性層中で拡散し得るならば存在させることができる。
代表的な液体モノマーには、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2− (p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレ−1−、2− (1−ブチルオキシ)エチルアクリレート、0−ビフェニルメタアクリレート、0−フェニルアクリレート、およびこれらの混合物などが含まれる。
モノマーは、通常、液体であるが、エチレン性不飽和カルバゾールモノマーのような、1個または数個のエチレン性不飽和固体モノマーと混合して使用することもできる。
カルバゾール部分の窒素原子に結合したビニル基を含んだ、エチレン性不飽和カルバゾールモノマーは代表的に固体である。このタイプの好適なモノマーには、N−ビニルカルバゾールと3、6−ジプロモー9−ビニルカルバゾールとが含まれる。特に好ましいエチレン性不飽和モノマーの混合物は、N−ビニルカルバゾールと液体モノマーの1個または数個、特に2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレート、またはこれらの混合物などとの組み合わせからなるものである。
フォトポリマーを架橋化(光重合)するときは、組成物中に2個または数個の末端エチレン性不飽和基を含む、多官能性モノマーの少なくとも1つを5%まで加えることができる。この多官能性モノマーは、組成物の他の成分と両立し得るものでなければならず、また好ましくは液体である。多官能性モノマーには、ビスフェノール−Aのジ(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、およびその他が含まれる。エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレートは、特に好ましい。
光開始剤系は、電離放射線により活性化されたときに、フリーラジカルを直接に与える1個または数個の化合物からなるものである。「電離放射線」は、モノマー材料の重合を開始するのに必要な、フリーラジカルを生成させるような活性な放射線を意味している。
この系はまた複数の化合物から構成されることもでき、その1つは別の化合物、または増感剤が放射線により活性化された後に、フリーラジカルを生ずるものである。
有用な開始剤系は、種々の増感剤を含んでいてもよく、多数のフリーラジカル生成化合物を利用できる。特に色素を含むレドックス系、例えばローズベンガル/2−ジブチルアミノエタノールを用いることもできる。光還元性色素および還元剤、オギサジン、およびキノン系の各色素、色素−オウ酸塩コンブレックス、色素増感されたアジニウム塩、およびトリクロロメチルトリアジンなどを、光重合を開始させるために用いることができる。
好ましい光開始剤系は、可視光線用増感剤で増感され、連鎖移転剤または水素供与剤、およびこれらの混合物をもった、2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーである。 これには、2−(0−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−イミダゾールダイマー;1,1’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(0−クロロフェニル’)−4,4’5,5’−テトラフェニル;およびIH−イミダゾール、2,5−ビス(0−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル〕−タイマーなどが含まれ、それぞれ代表的に水素供与体とともに用いられる。
増感剤には、ビス(p−ジアルキルアミノベンジリジン)ケトン類、および、アリーリチンアリールケトン類が含まれる。
水素供与体の適当なものには、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−1−リアゾール−3−チオール、およびその他が含まれる。
N−ビニルカルバゾールモノマーを含む組成物に対して好ましい、この他の水素供与体は、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール;2−メルカプトベンゾチアゾール、 IH−1,2、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、1−ドデカンチオール、およびこれらの混合物などである。
その他の成分として、フォトポリマー組成物に一般に添加されるその他の各成分はフォトポリマーの物理的特性を変えるだめのものである。このような成分には可塑剤、熱安定剤、光学的増白剤、紫外線安定剤、接着性変更剤、塗布助剤、および剥離剤などが含まれる。
可塑剤は、フォトポリマーの接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の物理的緒特性を変えるために存在させられる。可塑剤には、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセパケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、イソゾロビルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ポリ(プロピレングリコール)、トリ酪酸グリセリル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、スペリン酸・ノブチル、燐酸トリブチル、燐酸トリス(2−エチルヘキシル)、などが含まれる。
有用な熱安定剤には、ハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、ベータナフトール、塩化第一銅、2,6−ジーt−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、レジン酸銅、ナフチルアミン、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、フロラニール、およびクロルアニールなどが含まれる。ジニトロソダイマー類もまた有用である。
塗布助剤として、非イオン性界面活性剤を光重合性組成物に加えることができる。好ましい塗布助剤は、フッ素化された非イオン性活性剤である。
有用な光学増白剤は、7−(4’−クロロ−6′−ジエチルアミノ−1’,3’,5’−トリアジン−4′イル)アミノ3−フェニルクマリンである。さらに、紫外線吸収材料を適宜用いることができる。
また、透明な樹脂、すなわち、光重合性組成物としては、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、及び、カチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料が用いられる。
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が終始比較的低粘度の組成物中で行なわれるように室温液状のものが用いられる。そのようなカチオン重合性化合物としてはジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等が用いられる。
ラジカル重合性化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きく、好ましくは0.02以上大きいとよく、小さいと屈折率変調が不十分となり好ましくない。ラジカル重合性化合物としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等が用いられる。
光ラジカル重合開始剤系は、体積ホログラム作製のための第1露光によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させる開始剤系であればよく、また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いる。
光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明な体積ホログラムとする場合にはシアニン系色素が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することにより体積ホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムが得られる。
シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3'−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2'チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3',9−ジエチル−2,2’チアカルボシアニンベタイン、3,3',9−トリエチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3'−カルボキシメチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩等が例示される。
シアニン系色素と組み合わせて用いてもよい活性ラジカル発生化合物としては、ジアリールヨードニウム類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム類としては、ジフェニルヨードニウム、4,4'−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメトキシジフェニルヨードニウム等が例示される。また、2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が例示される。
光カチオン重合開始剤系は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸、あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系とするとよく、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類あるいは鉄アレン錯体類等を挙げることができる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては、光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウム類のテトラフルオロボレート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩およびヘキサフルオロアンチモネート塩等が挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
光重合性組成物には、必要に応じてバインダー樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色剤などを併用してよい。バインダー樹脂は、体積ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。バインダー樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性組成物と相溶性のよいものであれば良く、その具体例としては塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。バインダー樹脂は、その側鎖または主鎖にカチオン重合性基などの反応性を有していても良い。
その体積ホログラム形成層2の厚さは、10μm〜100μmとする。好適には、20μm〜50μmとする。
透明基材1に、透明な樹脂をコーティングして、体積ホログラム形成層2を設ける場合には、体積ホログラム形成層2は、光重合性組成物の塗布液を、バーコート、スピンコート、又はディッピング等、または、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、又はコンマコート等により塗布し、形成する。体積ホログラム形成層2は、乾燥ないし硬化手段を用いて固化される。
その光重合性組成物としては、組成物全体に対してカチオン重合性化合物を10〜50%、ラジカル重合性化合物を40〜70%、光ラジカル重合開始剤系を1〜5%、及び、光カチオン重合開始剤系を1〜5%とし、全量を100%となるように配合する。
光重合性組成物は、必要に応じて、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族系溶媒、セロソルブ系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒等と配合し、冷暗所にて、高速撹拌機で混合し調製する。
上記の樹脂材料を用い、キャスティング法や、ダイコート法等を用いて、体積ホログラム形成層2を透明基材1上に設けることもできる。
これらの体積ホログラム形成層2に、適宜な光学系を用いて、体積ホログラムである、透過型ホログラムや、反射型ホログラムを記録する。(図1参照。)または、その両方を多重記録する。(図示せず。)
以下に、その方法を説明する。
まず、ホログラム画像として画像化される「物体」を準備する。
「物体」としては、彫刻や模型等の実在する、3次元物体(高名な作者のものであれば、その意匠性は非常に高いものとなる。)、もしくは、絵画やブランドデザイン等の2次元物体が用いられる。もしくは、「物体光」を与え得るものであって、空間変調器等のような電子的にセル変換が可能な光学素子を用いた光学系によって、記録用媒体面に投影されるような「光の像」であってもよい。
もちろん、あらかじめ作成した「ホログラム」からの「ホログラム再生像」(立体的な光の像となる。)を用いることもできる。
この「物体」を、所定の波長を選択した、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザー、各種色素レーザー等のコヒーレント光を用いて照明し、図1中の(1)のような光学系を準備し、透過型ホログラムを記録する。
もしくは、適宜なホログラム記録用のフォトレジストに、同様な光学系を準備し、マスターホログラムを記録し、現像処理する。
次いで、このマスターホログラムを図1中の(2)のような光学系を用いて、「物体」の体積ホログラムを、上記で使用した光源を再度用いて、体積ホログラム形成層2に反射型ホログラムを記録する。
透過型ホログラムに図1中の(1)で用いた参照光と同一の照明を行うと、その参照光が透過した方向からの観察により、体積ホログラム形成層2を通して、その向こう側に「物体」の像、すなわち、透過型ホログラム再生像を視認することができる。この「物体」の像から観察者の目の方向へ向かう角度が、「再生角度」である。(図示せず。)
また反射型ホログラムの場合には、図1中の(3)のように、参照光を用いずとも、その波長選択性により、所定の波長でのみ再生された「物体」の像、すなわち反射型ホログラム再生像を視認することができる。(図1参照。)この場合の「再生角度」も同様である。
以上の方法を用いる際、「物体」を2つ準備し、2つの光源(第1の波長、及び第2の波長を有する2つのレーザー光源)を用いて、それぞれ体積ホログラム形成に各々、角度を変えて記録して、2つの体積ホログラムを多重記録することができる。
もちろん、図1中の(1)と(2)を同一の体積ホログラム形成層2に記録し、透過型ホログラムと反射型ホログラムを多重記録することも可能である。
このときに用いる体積ホログラム形成層2は、例えば、2つの光源に感度を持つように、2種類の増感剤を含めたものとする。
また、体積ホログラム形成層2を単層として、その一つの層に多重記録するのみならず、体積ホログラム形成層2を多層として、それぞれの層に、それぞれのフォトポリマーを用い、それぞれの体積ホログラムを記録することも、個々のホログラム再生像の鮮明度を高めるため好適である。
2つの体積ホログラムを多重記録した場合には、2つの観察方向に、各々の「物体」像を見ることができる。(図示せず。)
ホログラムとしては、レーザー再生ホログラム、白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子、複合回折格子で構成されるホログラムや、マシンリーダブルホログラムなどを 適宜、記録することができる。
体積ホログラムは、上記のようにして記録した透明基材1と体積ホログラム形成層2の積層体の体積ホログラム形成層2上に、まだ体積ホログラムを記録していない透明基材1と体積ホログラム形成層2の積層体の体積ホログラム形成層2面を密着させて重ねたものに(インデックスマッチング液等をその間に挿入してもよい。)、適宜なレーザー光を照射する方法により、大量に複製することができる。(図示せず。)
(フォトクロミック薄膜層)上記した体積ホログラム形成層2上に、フォトクロミック薄膜層3を形成して、本発明のホログラムシートAとするか、もしくは、体積ホログラム形成層2上に、透明薄膜層4を設けた後、フォトクロミック薄膜層3を設けて、ホログラムシートA´とする。(図3及び4参照。)
このフォトクロミック薄膜層4に用いられる、フォトクロミック分子(フォトクロミック材料)としては、有機化合物系と、無機化合物系があり、
有機化合物系としては、
アゾベンゼン類(cis−trance異性):ジメチルアミノアゾベンゼン類等、
スピロピラン類(分子内開環―閉環):スピロベンゾチオピラン,スピロセレナゾリノベンゾピラン,スピロベンゾセレナゾリノナフトオキサジン等、より具体的には、1,3,3−トリメチルインドリノ−6’−ニトロベンゾピリロスピラン、1’,3’−ジヒドロ−8−メトキシ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2’,2’−(2H)−インドール]、1,3,3−トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6’−ブロモベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−8’−メトキシベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリロスピラン等、
スピロオキサジン類(分子内開環―閉環):スピロキノオキサジン類、スピロナフトオキサジン類、スピロフェナントロオキサジン類、スピロビピリドオキサジン類等、分子内に窒素原子を含む複素環構造を有する化合物等(赤紫〜青色。「着色」が速やかに消色。)、
スピロペリミジン類:2,3−ジヒドロ−2−スピロ−4‘−[8’−アミノナフタレン−1‘(4’H)-オン]ペリミジン、2,3−ジヒドロ−2−スピロ−7‘−[8’−イミノ−7,8−ジヒドロナフタレン−1‘−アミン]ペリミジン等、
アリールエテン類:対称型ジアリールエテン、非対称型2,3−ジアリールマレイン酸無水物、非対称ジアリールペルフルオロシクロペンテン等、
1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1−シクロペンテン、1,2−ビス[2−メチルベンゾ[b]チオフェン−3−イル]−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1−シクロペンテン、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイン酸無水物、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイミド、cis−1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル) エテン等、より具体的には、発色波長:425nm、469nm、526nm、534nm、550nm、562nm、578nm、583nm、611nm、620nm、628nm、665nm、680nm、828nm等(構造により、青色、緑色、黄色、赤色等に発色。)、
フルギド類:ジフェニルフルギド、トリフェニルフルギド等、
クロメン類:6−モルホリノ−3,3−ビス(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−ピペリジノ−3−メチル−3−(2−ナフチル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−ピペリジノ−3−メチル−3−フェニル−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−ヘキサメチレンイミノ−3−メチル−3−(4−メトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(2−フリル)−3−メチル−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(2−チエニル)−3−メチル−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(2−ベンゾフリル)−3−メチル−3H−ベンゾ(f)クロメン等(橙色〜黄色に発色。)、
シクロファン類:アントラセノファン、アントラセノナフタレノファン、アントラセノパラシクロファン等のアントラセン含有シクロファンやメタシクロファン等、
カルコン(1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オン)―フラビリウム系等、
フルギミド化合物類:N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(4’−メトキシフェニル)−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−6,7−ジヒドロ−4−メチルルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕フランジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕フランジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−6,7−ジヒドロ−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−2−(4’−メトキシフェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−(3’−シアノフェニル)−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−(4’−メトキシフェニル)スピロベンゾチオフェンカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(橙色〜青色に発色。)、
チオインジゴ類(cis−trance異性)、サリチリデンアニリン類(分子内水素移動:結晶タイプ。)、ニトロベンジルピリジン類(分子内水素移動:結晶タイプ。)、テトラクロル−α−ケトジヒドロナフタリン類、ビス(トリフェニルイミダゾリル)類、テトラフェニルヒドラジン類、ビアンスロン類、ピリジルシドノン類、アントラセン誘導体(光二量化)、メチレンブルー(光酸化還元)、トリフェニルメタン類(イオン解離)、ヘキサフェニルビイミダゾル(ラジカル解離)、多環芳香族化合物(酸素付加)等、
を用いることができる。
特に、ジアリールエテン類を透明樹脂に分散させたもの、ジアリールエテン類の結晶化物は、物理特性、耐候性に優れる。
また、無機化合物系としては、
AgBr、AgCl、AgI、CuBr2、CuCl2、CuCl、CuI2、CuI、Ag単体、Cu単体等の中から選択した三成分系化合物等、
銀ナノ粒子-酸化チタン系等、
を用いることができる。
さらに、これらのフォトクロミック分子(材料)の中で、フォトクロミック分子Bとしての発光強度曲線(波長を横軸として。)が、可視領域において、一つのみのピークを持つものが好適であり、さらには、そのピークの半値幅が、10〜50nmであるものが、より鮮明なホログラム再生像を与えるため好適である。
このフォトクロミック薄膜層3は、フォトクロミック分子を透明な樹脂に均一に分散した樹脂分散型の発色インキや、水又は溶剤にフォトクロミック分子を分散した溶媒分散型の発色インキを作製し、それらを用いて、印刷方式や、コーティング方式さらには、インクジェット方式等の種々の形成方法を用いて、体積ホログラム形成層2上、または、透明薄膜層4上に形成することができる。
樹脂分散型の発色インキは、上記したフォトクロミック分子を、透明樹脂、例えば、熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等に2次凝集を少なくするように、ガラスビーズやスチールビーズを用いたボールミル、ニーダー、ロールミル等による混練りを十分行い、溶剤等で粘度調整をして、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、カーテンコート方式、ノズルコート方式、さらには、インクジェット方式を適宜用いて均一な厚さに形成することができる。
この場合、体積ホログラム形成層2、または、透明薄膜層4との密着性の高いものを選定する。
フォトクロミック薄膜層の厚さは、0.5μm〜20.0μmとし、好適には、1.0μm〜5.0μmとする。
そして、その厚さの精度は、所定の厚さに対して±10%以内、好ましくは、±5%以内とする。
厚さのばらつきが、±10%を超えると、フォトクロミック薄膜層3の発色によって再生されるホログラム再生像の明るさにムラが生じ、ホログラム再生像そのものが不鮮明となる。
溶媒分散型の発色インキは、樹脂成分を含まず、フォトクロミック分子と溶媒のみであるため、樹脂分散型よりフォトクロミック分子を高密度に充填することができ、結果として、フォトクロミック薄膜層3の厚さを効率的に薄くすることができる。
溶媒としては、水やアルコール系溶剤、若しくは、セルソルブ系、パラフィン系溶剤を用いて、粒子系の小さいフォトクロミック分子を分散保持させ、攪拌しながらカーテンコート、ノズルコート等によりホログラム形成層2上または、透明薄膜層4上に設けることができる。
(透明薄膜層)体積ホログラム形成層2上に、透明薄膜層4を設ける。(図4参照。)
この透明薄膜層4は、入射した光を多重反射する必要があるため、体積ホログラム形成層2よりも高い屈折率を有する透明な薄膜であれば、特に限定されない。
透明薄膜層4としては、真空薄膜法などにより形成される非常に薄く透明性が発現した金属薄膜層、または、金属化合物薄膜層のいずれでもよいが、その透明性により、「ラベル」や「転写箔」として貼着もしくは転写後にその「ラベル」や「転写層」に覆われた被貼着体や被転写体上の画像などがホログラムを通して観察できるので好ましい。
具体的には、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率が体積ホログラム形成層2のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、その界面での反射率の高いものを用いることができる。
さらに、その多重反射性を高めるためには、透明薄膜層4のもう一つの界面と接しているフォトクロミック薄膜層3の屈折率との差も大きい方が好ましい。
具体的には、屈折率の高い薄膜として、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITOなどがある。
好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Auなどの酸化物もしくは窒化物他、または、それらを2種以上を混合したものなど(透明金属化合物)が例示できる。
透明金属化合物層は、金属化合物の蒸発温度が、金属よりも高いことから、高温加熱を要するものの、その厚さは、ホログラム形成層2に記録した透過型ホログラムの再生波長をλ(nm)とすると、λ/10〜λ(nm)、すなわち、40〜800nm、好ましくは100〜300nmの厚さになるように、電子線加熱方式の蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などを用いて設けることができる。この厚さが、40nm未満であったり、1000nmを超えたりすると、上記した多重反射性が低下する。
また、透明薄膜層4の上下の界面の平滑性が高い程、透明薄膜層4内の多重反射性が高まるため、形成する厚さを薄くして、その熱的ダメージを少なくすることが好適であり、また、高周波スパッタリング法等の平滑性を高めることが可能な方法を用いることが好適である。
本発明のホログラムシートA、または、A´に、この透明基材1側から自然光や蛍光灯の一般的な照明光(可視光線5)をあててた場合、透過型ホログラムが記録されたホログラム形成層2からは、なんらのホログラム再生像が現れない(図5の「6」の状態。)が、フォトクロミック薄膜層3に適する波長(そのフォトクロミック分子を励起可能な紫外線等。)の紫外線(励起光)7を、透明基材1側、もしくは、フォトクロミック薄膜層3側からあてることで、フォトクロミック薄膜層3が呈色し、この呈色したフォトクロミック薄膜層3を自然光や蛍光灯の一般的な照明光(可視光線7)をあてたときに、フォトクロミック薄膜層3から所定の波長(域)の光が発生し、この光が体積ホログラムの参照光となって、明るいホログラム再生像8を再生するものである。(図5参照。)
すなわち、本発明の透過型ホログラムが記録されたホログラム形成層2を有するホログラムシートAの透明基材1側から自然光や蛍光灯等の一般的な照明光(可視光線5)をあててた場合、透明基材1側には何らの再生像も現れない(図5の6の状態。)が、このこのホログラムシートAに、フォトクロミック薄膜層3に適する波長(そのフォトクロミック分子を励起可能な紫外線等。)の光、例えば、紫外線(励起光)7を、透明基材1側からあてることで(もしくは、フォトクロミック薄膜層3側からあてても同様。)、フォトクロミック薄膜層3が呈色し、この呈色したフォトクロミック薄膜層3を上記と同様に自然光や蛍光灯の一般的な照明光(可視光線。図5中には示していない。)で照明したときに、フォトクロミック薄膜層3から所定の波長(域)の光が発生し、この光が体積ホログラムの参照光となって、明るいホログラム再生像(「発色」)8を再生するものである。(図5参照。)
もしくは、このホログラムシートAに透過型ホログラムに加えて、反射型ホログラムを多重に記録した場合には、この透明基材1側から自然光や蛍光灯の一般的な照明光(可視光線9)をあててた場合、透明基材1側には反射型ホログラムの再生像(「ホロ」)10が現れ、あたかも、通常のリップマンホログラムシートのように視認される。(図6参照。)
そして、このホログラムシートAに、フォトクロミック薄膜層3に適する波長(紫外線等。)の紫外線(励起光)11を、透明基材1側からあてると、フォトクロミック薄膜層3から所定の波長(域)の光が発生し、この光が透過型体積ホログラムのみの参照光となって、明るいホログラム再生像(「発色」)13を再生し、反射型ホログラムの再生像(「ホロ」)12と併せて観察可能とするものである。(図6参照。)
本発明のホログラムシートA´についても同様であるが、本発明のホログラムシートA´には、透明薄膜層4が設けてあり、上記のフォトクロミック薄膜層3に適する波長(紫外線等。)の紫外線7または、11をあてた際、フォトクロミック薄膜層3から全方位的に発する光が、その透明薄膜層4を通過する際、多重反射による干渉を生じ、その上にある透過型ホログラムの「参照光」角度と実質的に同一の角度(実際の参照光の入射角度に対して、±10%以内を意味する。)にて透過型ホログラムを照明し、結果として、より一層明るく鮮明なホログラム再生像を発現する。(図5及び図6と同様となる。)
(実施例1)
透明基材1として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、膜厚20μmのフォトポリマー(体積ホログラム形成層2)が積層され、その上に保護フィルムとして、厚さ23μmポリエチレンテレフタレートフイルムが積層されたフォトポリマー(デュポン社製「HRF705」)を用い、
透過型ホログラムとして、クリプトンレーザー(発光波長647nm)を光源とし、図1中の(1)のような光学系を用いて、30mm×70mmサイズの「絵画モチーフ」を透過型ホログラムとし、その結像位置を、記録面から2mmの位置として撮影した。
この時、露光強度2.0mWにて、記録角度(図1(1)の参照光の角度。「物体」である「絵画モチーフ」は、そのシート面の垂線方向に対しその参照光と対称の方向にある。)を体積ホログラム形成層2に対して、(そのシート面の垂線方向に対し)20度とし、50mJ/cm2の露光量となるように照射した後、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、更に120℃で120分間加熱処理し、その後、上記保護フィルムを剥離して、透明基材1と、体積ホログラム形成層2が積層されている、厚さ70μmのシートを作製した。(図3参照。)回折効率は、50%とした。
この透過型ホログラムが記録してある体積ホログラム形成層2上に、下記組成の樹脂分散型のフォトクロミック分子含有インキをグラビアコーティング方式により、コーティングし乾燥して、フォトクロミック薄膜層3を、3.0μm厚さで形成し、
・<インキ組成物>
1,2−ビス[2−メチルベンゾ[b]チオフェンー3−イル]−
3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1−シクロペンテン
東京化成工業株式会社製結晶性材料B2629 1質量部
塩ビ樹脂 10質量部
メチルエチルケトン 19質量部
酢酸エチル 20質量部
トルエン 50質量部
本発明のホログラムシートAを作製した。(図3参照。)
このホログラムシートAを蛍光灯(可視光線5)の下で観察したところ、ホログラム再生像は観察されなかった(図5の「6」の状態。)。
そして、このホログラムシートAを、365nm波長の光源(浜松ホトニクス製UV-LEDモジュール LC―L2)を用いて照明(紫外線7)したところ、フォトクロミック薄膜層3が青色に発色し(図示せず。)、図5に示すように、この紫外線7は目視では見えず、青色のホログラム再生像「発色」8を確認することができ、青色の再生像のみが空間に浮いているように見え、意匠性に優れるものであった。
このホログラムシートを3cm角に切り出し、パスポートに貼付して、ブラックライト発光管40W照明(紫外線7。)したところ、青色のホログラム再生像8を認識することができ、ブラックライト照明をはずすと、速やかにその像が消え、パスポート保持者に気づかれずに、真正性判定をすることが十分に可能と思われた。(図示せず。)
(実施例2)
クリプトンレーザー(発光波長647nm)を光源とし、2ステップ法を用いて、30mm×70mmサイズの「第1の絵画モチーフ」を第1のホログラム:透過型ホログラムとし、その結像位置を、記録面から2mmの位置として撮影したことに加え、アルゴンレーザー(発光波長488nm)を光源とし、2ステップ法を用いて、30mm×70mmサイズの「第2の絵画モチーフ」を第2のホログラム:反射型ホログラムとし、その結像位置を、記録面から4mmの位置として、さらに、露光強度2.0mWにて、記録角度を、そのシート面の垂線方向に対して、10度とし、10mJ/cm2の露光量となるように照射して、回折効率50とし、多重記録(二重記録)したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のホログラムシートAを作製した。(図3参照。)
実施例2のホログラムシートAを、実施例1と同様に評価したところ、このホログラムシートAを透明基材1側から室内蛍光灯(可視光線)9をあてて観察したとき、緑色の反射型ホログラム再生像(「ホロ」)10を視認でき、単なるリップマンホログラムシートと判断した。(図6参照。)
さらに、このホログラムシートAを365nm波長の光源(紫外線11。浜松ホトニクス製UV−LEDモジュール LC−L2)を用いて照明したところ、この紫外線11は目視では見えず、緑色の反射型ホログラム再生像(「ホロ」)12に加えて、青色のホログラム再生像(「発色」)13を確認することができ、意匠性、及び偽造防止性に優れるものであった。(図6参照。)
このホログラムシートAを3cm角に切り出し、パスポートに貼付して、ブラックライト発色管40W照明(紫外線11)したところ、同様に、緑色と青色のホログラム再生像(12と13)を認識することができた。(図示せず。)
(実施例3)
実施例1の体積ホログラム形成層2上に、アルバック社製電子線加熱真空蒸着機にて、180nm厚さのTiO2薄膜からなる透明反射性薄膜層4を形成し、その上に、フォトクロミック薄膜層3を形成したこと以外は、実施例1と同様として、実施例3のホログラムシートA´(図4参照。)を作製した。
実施例1と同様に評価したところ、青色のホログラム再生像8「発色」がより明るく鮮明に再生され、その再生像をより確実に確認することができ、意匠性及び偽造防止性がより優れると思われたこと以外は、実施例1と同様であった。(図5参照。)
(実施例4)
フォトクロミック分子として、2,3−ジヒドロ−2−スピロ−4‘−[8’−アミノナフタレン−1‘(4H)−オン]ペリミジン東京化成工業株式会社製D3618を用いたこと以外は、実施例1と同様として、実施例4のホログラムシートAを作製した。
そして、励起光(紫外線7)として、オムロン社製UV−LEDを用いたこと以外は、実施例1と同様にして観察した。
まず最初に、図5と同様に、ホログラムシートAを蛍光灯(可視光線5に相当する。)照明光下で、観察したところ、黄色のホログラム再生像6が視認できた。(図示せず。)
そしてまた、図5と同様の配置で、オムロン社製UV−LED(紫外線7に相当する。)でフォトクロミック薄膜層3を励起させたところ、フォトクロミック薄膜層2が黄色から青色へ色調変化し(図示せず。)、青色のホログラム再生像(図5の「8」に相当する。)を確認することができたこと意外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。
(比較例)
フォトクロミック薄膜層を形成せず、その他は実施例1と同様にホログラムシートを形成し、比較例とした。
実施例1と同様に観察したところ、励起光を照射しても何らの変化もなく、目視にて認識できるホログラム再生像を確認することはできなかった。
このことより、このホログラムシートが真正なものでなく、このパスポートが偽物であると判断できた。
A、A´ ホログラムシート
1 透明基材
2 体積ホログラム形成層
3 フォトクロミック薄膜層
4 透明薄膜層
5 観察状態の例示:可視光線(照明光)
6 同上 :再生像なし
7 同上 :紫外線(励起光)
8 同上 :青色の透過型ホログラムの再生像
9 観察状態の例示:可視光線(照明光)
10 同上 :緑色の反射型ホログラムの再生像
11 同上 :紫外線(励起光)
12 同上 :緑色の反射型ホログラムの再生像
13 同上 :青色の透過型ホログラムの再生像

Claims (3)

  1. 透明基材の一方の面に、体積ホログラム形成層、及びフォトクロミック薄膜層が設けられているホログラムシートにおいて、
    前記体積ホログラム形成層に、透過型ホログラムが記録されていることを特徴とするホログラムシート。
  2. 前記体積ホログラム形成層に、反射型ホログラムが多重記録してあることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシート。
  3. 前記体積ホログラム形成層と、前記フォトクロミック薄膜層との間に、透明薄膜層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のホログラムシート。
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