JP5775877B2 - プロセスオイル含有エラストマーナノ複合材 - Google Patents

プロセスオイル含有エラストマーナノ複合材 Download PDF

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Description

本開示発明は2009年10月26日に出願された米国特許出願番号第12/605,548号の優先権および利益を主張する。
本出願は、「ナノ複合材」としても知られているエラストマー−層状フィラー組成物ならびにその製造方法およびそれを空気タイヤのインナーライナーのような空気保持物品中に取り込む方法に関する。
イソブチレン系ポリマーナノ複合材は、その空気保持特性の故にタイヤインナーライナー用の最適な材料として使用されている。かかるナノ複合材の1の例は、米国特許出願公開第2009−0050251号(特許文献1)に記載された官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーと有機クレー、すなわち「層状クレー」とを含むものである。典型的には、ナノ複合材は、エラストマーとクレーとを高められた温度で溶融混合することによってつくられる。ブチルゴムの疎水性および高分子的性質の故に該クレーの十分な分散または有効な層剥離を達成することは困難である。本願に先行する出願公開がブチルゴム/クレーのナノ複合材をつくる新規な方法を記載しており、それは国際公開第2006−085957(A2)号(特許文献2)である。有機クレーは最初に適当な有機溶媒で処理される。エラストマーおよびクレーは溶媒で処理された後、互いに、そして剥離剤とともに、ブレンドされて、ナノ複合材を形成する。
かかるナノ複合材物質がインナーライナーコンパウンド中に使用されるときは、加工助剤、典型的にはナフテン油が該インナーライナー配合物に添加されて、該コンパウンドの適切な加工特性が確保される。ナノ複合材を形成するための溶液プロセスを利用して、本願発明者らはナノ複合材をつくるプロセスにおいて加工助剤を取り込むための新規で有益な方法を本願発明において発見した。得られたナノ複合材は、ナノ複合材のさらなるコンパウンデイングの際にナフテン油を排除することによって、不透過性のさらなる改善を可能にするだろう。それに加えて、このナノ複合材は維持されたまたは改善されたコンパウンド加工性をも示す。
エラストマーと層剥離されたクレーとのブレンド物を記載している出願公開物には、米国特許出願公開第2004−0132894号(特許文献3)、米国特許出願公開第2004−0194863号(特許文献4)、米国特許出願公開第2005−0027057号(特許文献5)、米国特許出願公開第2006−0235128号(特許文献6)、米国特許出願公開第2007−0015853号(特許文献7)、米国特許出願公開第2007−0219304号(特許文献8)、米国特許出願公開第2009−0005493号(特許文献9)および国際公開第2008−118174号(特許文献10)が含まれる。
米国特許出願公開第2009−0050251号明細書 国際公開第2006−085957号パンフレット 米国特許出願公開第2004−0132894号明細書 米国特許出願公開第2004−0194863号明細書 米国特許出願公開第2005−0027057号明細書 米国特許出願公開第2006−0235128号明細書 米国特許出願公開第2007−0015853号明細書 米国特許出願公開第2007−0219304号明細書 米国特許出願公開第2009−0005493号明細書 国際公開第2008−118174号パンフレット
ある実施形態において開示されるのは、タイヤのインナーライナーを形成する方法であって、官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーと、1以上の層状フィラーと、1または2phrから4または5または6または7または8phrまでの範囲内の1以上の加工助剤と、1以上の溶媒と、を接触させて、ナノ複合材組成物を形成し、該ナノ複合材組成物を沈降させ、そしてタイヤに適したインナーライナーを形成することを含む方法である。
ある実施形態では、官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーが第一の溶媒中に分散されて第一の溶媒混合物を形成し、別途に、1以上の層状フィラーが第二の溶媒中に分散されて第二の溶媒混合物を形成し、引き続いて該2の溶媒混合物を一緒にしてナノ複合材溶媒混合物を形成し、引き続いて1以上の加工助剤が該ナノ複合材混合物と一緒にされてナノ複合材組成物を形成する。
ある実施形態では、(第一の溶媒):(エラストマー)の重量比は1または2または3から5または8または10または20または50までの範囲内にあり、(第二の溶媒):(エラストマー)の重量比は5または10または15または20から50または60または80または100または120または180または200までの範囲内にある。
ある実施形態では、ナノ複合材組成物は剥離剤も含み、好ましくは層状フィラーが剥離剤で処理されて層剥離された層状フィラーが形成される。ある実施形態では、層状フィラーは他の成分、たとえばエラストマーとブレンドされる前に層剥離される。
1の望ましい実施形態では、ナフテン油は、ナノ複合材、インナーライナー組成物および/または本明細書に開示された全ての組成物の中に実質的に存在しない。
望ましくは、本明細書に開示されたナノ複合材と他の添加物とを使用して製造されたインナーライナーの透過係数は、200未満または180未満または160cc・mm/(m−日)未満である。
本明細書に開示された様々な記載された要素および数値範囲は、他の記載された要素および数値範囲と組み合わされて、該組成物、インナーライナー、インナーライナーを含むタイヤおよび本明細書に記載されたこのようなものの製造方法の好ましい実施形態を記載することができる。さらに、1の要素の任意の数値上限は、同じ要素の任意の数値下限と組み合わされて、好ましい実施形態を記載することができる。これに関連して、「XからYまでの範囲内」の語句はその範囲内に「X」および「Y」の値を包含することが意図される。
特に断りのない限り、「ゴム100部当たりの部」または「phr」の値は小数第二位まで有意である。したがって、「1phr」および「60phr」の表現はそれぞれ1.00phrおよび60.00phrと均等である。
特に断りのない限り、ある成分の量が述べられるときに、その成分の2以上の異なる化学種が一緒に存在するならばその量は合計量と理解される。
序論
本開示発明の様々な側面は、空気ブラダー、インナーチューブ、インナーライナーおよび他の望ましい空気保持物品用に適しているナノ複合材組成物に関する。特に、この開示発明はナノ複合材を含む組成物であって、該ナノ複合材が、望ましい弾力性および加工性を維持しながらその空気保持特性が現在知られているものよりもはるかに改善されるようにつくられた組成物に関する。1の特定の側面では、インナーライナーのような空気保持物品は、最初に、望ましいエラストマー、とりわけ官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーと、1以上の層状フィラー、たとえば以下でさらに説明されるクレーと、を接触させ、さらにまた、8phrまでの1以上の加工助剤と、1以上の溶媒と、を接触させて、ナノ複合材組成物を形成することによって形成される。ナノ複合材組成物は次に沈降されて、固形のナノ複合材組成物を形成し、これは乾燥され、さらに他の適当な成分、たとえば硬化剤とブレンドされることができ、このようにしてタイヤまたは他の物品に適したインナーライナーを形成する。
望ましくは、ナノ複合材の製造は段階的に実施されることができ、その場合、以下でさらに説明されるような溶媒中にその成分が別々に溶解される。このようにして、1の実施形態では、官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーが第一の溶媒中に分散されて第一の溶媒混合物を形成し、別途に、1以上の層状フィラーが第二の溶媒中に分散されて第二の溶媒混合物を形成し、引き続いて該2の溶媒混合物が一緒にされてナノ複合材混合物を形成し、引き続いて1以上の加工助剤と該ナノ複合材混合物とが一緒にされてナノ複合材組成物を形成する。「第一」および「第二」の溶媒は、一般的に好適な「溶媒」を説明する際に以下でさらに説明される溶媒である。第一および第二の溶媒は同じまたは異なるものであることができ、好ましくはこれらは互いに溶解性であり、最も好ましくは同じものである。該2の溶媒混合物は、任意の適当な方法によって、およびその中で使用される物品の望ましい特性をもたらすことになる任意の量で一緒にされることができる。
本開示発明の望ましい側面では、エラストマーとフィラーとを一緒にしてナノ複合材を形成する工程においてのみ、プロセスオイルはエラストマーおよび層状フィラーと一緒にされる。好ましくは、すでに形成されたナノ複合材組成物には、プロセスオイルは添加されない。最も好ましくは、使用されるプロセスオイルはナフテン油を除く。
本明細書で使用される「ナノ複合材」(または「ナノ複合材組成物」)とは、少なくとも1のエラスルマーと少なくとも1の層状フィラーとのブレンドであり、特定の実施形態では、本明細書に記載された剥離剤で処理された、すなわち「層剥離され」た層状フィラーである。本明細書で使用されるナノ複合材はプロセスオイルを含んでいてもよい。硬化剤、フェノール樹脂および他の「添加剤」を含む組成物は「インナーライナー組成物」またはもっと一般的に「物品組成物」と呼ばれる。
ナノ複合材は、従来技術で知られた他の物質(追加の油、硬化剤およびフィラー等)と一緒にされて、インナーライナー組成物を製造することができる。この「グリーン」(未硬化の)組成物は、チューブ、リングまたはシートへと形成され、次に標準的な技術によって硬化されて、仕上げられたタイヤ、インナーチューブまたは他の物品を形成することができる。
エラストマー成分
本明細書に記載されたナノ複合材は、本明細書に記載されかつ特許請求された少なくとも1のエラストマーとともに他の成分も含む。特定の実施形態では、エラストマーはインターポリマーである。インターポリマーは、C4〜Cイソモノオレフィン、たとえばイソブチレンと、パラアルキルスチレンコモノマー、たとえばパラメチルスチレンコモノマーと、のランダムエラストマーコポリマーであることができ、該パラアルキルスチレンコモノマーは少なくとも80重量%、より選択的には少なくとも90重量%のパラ異性体を含有し、また、該インターポリマーは任意的に、スチレンモノマー単位中に存在するアルキル置換基の少なくとも1以上がベンジルハロゲンまたはある他の官能基を含有する官能化インターポリマーを包含する。これらのインターポリマーは官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)(「FIMS」)と呼ばれることができる。他の実施形態では、インターポリマーは、エチレンまたはC〜Cα−オレフィンと、パラアルキルスチレンコモノマー、たとえばパラメチルスチレンコモノマーと、のランダムエラストマーコポリマーであることができ、該パラアルキルスチレンコモノマーは少なくとも80重量%、あるいは少なくとも90重量%のパラ異性体を含有し、また、該インターポリマーは任意的に、スチレンモノマー単位中に存在するアルキル置換基の少なくとも1以上がベンジルハロゲンまたはある他の官能基を含有する官能化インターポリマーを包含する。典型的な物質は、ポリマー鎖に沿ってランダムに間隔を空けて配置された以下の式(1)、(2)のモノマー単位を含有するインターポリマーと特徴付けられることができる。
[式1]
Figure 0005775877

[式2]
Figure 0005775877
これらの式で、RおよびRは、独立に水素、低級アルキル、たとえばC〜Cアルキルまたは1級もしくは2級のハロゲン化アルキルであり、Xは官能基、たとえばハロゲンである。特定の実施形態では、RおよびRはそれぞれ水素である。ある実施形態では、官能化構造体(2)の量は0.1または0.4から1または5モル%までである。
官能基Xは、ハロゲン、またはベンジルハロゲンを他の基、たとえばカルボン酸、カルボキシ塩、カルボキシエステル、アミドおよびイミド、ヒドロキシ、アルコキシド、フェノキシド、チオレート、チオエーテル、キサンテート、シアナイド、シアネート、アミノもしくはこれらの混合物を用いて求核置換することによって取り込まれることができるある他の官能基であってもよい。これらの官能化イソモノオレフィンコポリマー、その製造方法、官能化方法および硬化反応は、米国特許第5,162,445号に、より詳細に開示されており、その内容は参照によって本明細書に取り込まれる。他の実施形態では、該官能基は、それが望ましい組成物のマトリクスポリマー中に存在する官能基、たとえば酸、アミノまたはヒドロキシ官能基と、これらのポリマー成分が高温度で混合されるときに、反応しまたは極性結合を形成することができるように選択される。特定の実施形態では、エラストマーはハロゲン化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)であり、より特定の実施形態では、臭素化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)(「BIMS」)である。
ある実施形態では、官能化物質は、イソブチレンとパラメチルスチレンとのエラストマーランダムインターポリマーであり、0.5〜20モル%のパラメチルスチレンを含有し、ベンジル環上に存在するメチル置換基の60もしくは50もしくは20もしくは10モル%までが臭素または塩素原子、たとえば臭素原子を含有し(パラ(ブロモメチルスチレン))、またこのほかにこれらの、酸またはエステル官能化変性物も含有する。別の言い方をすれば、官能化されたパラメチルスチレンに由来する単位は、エラストマーの4または5または6から9または11または13または15または17重量%までの範囲内を構成する。
ある実施形態では、これらの官能化インターポリマーは、該ポリマーの少なくとも95重量%が該ポリマーの平均パラアルキルスチレン含有量から10%以内のパラアルキルスチレン含有量を有するような実質的に均一の組成分布を有する。典型的なインターポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された、5未満、あるいは2.5未満の狭い分子量分布(Mw/Mn)、200,000〜2,000,000の範囲の典型的な粘度平均分子量および25,000〜750,000の範囲の典型的な数平均分子量によって特性付けられる。ある実施形態では、官能化インターポリマーは50未満または45未満または40未満のムーニー粘度(ML1+4)を有する。
インターポリマーは、典型的には1または複数のハロゲン化炭化水素、たとえば塩素化炭化水素および/もしくはフッ素化炭化水素またはこれらの混合物を含む希釈剤中で、ルイス酸触媒を使用してモノマー混合物をスラリー重合し、引き続いてハロゲンならびにラジカル開始剤、たとえば熱および/または光および/または化学的開始剤の存在下に溶液中でハロゲン化、好ましくは臭素化し、任意的に、引き続いて臭素を別の官能基部分を用いて求電子置換することによって製造されることができる。
本明細書に記載されたナノ複合材および/またはインナーライナー組成物は、1以上の二次エラストマーを含んでいてもよい。二次エラストマーは任意の1以上の天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリ(イソプレン−コ−ブタジエン)ゴム(IBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリスルフィド、ニトリルゴム、プロピレンオキシドポリマー、星状分枝ブチルゴムおよびハロゲン化星状分枝ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星状分枝ポリイソブチレンゴム、星状分枝臭素化ブチル(ポリイソブチレン/イソプレンコポリマー)ゴム、ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレンおよびハロゲン化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン、たとえばイソブチレン由来単位、p−メチルスチレン由来単位およびp−ブロモメチルスチレン由来単位のターポリマー、ならびにこれらの混合物を含むことができる。存在する場合、かかる二次エラストマーまたはエラストマー混合物は2または4または10から20または30または60または80phrまでの範囲内で存在する。
クレー−層状フィラー
ナノ複合材は、上記の少なくとも1のエラストマーゴムと少なくとも1の層状フィラーとを含むことができる。層状フィラーの例は特定のクレー、任意的に、有機分子、とりわけ剥離剤で処理されたまたは前処理されたクレーである。ある実施形態では、層状フィラーは一般に、4Å以下の層間隔で互いに密に結合された8〜12Åの厚さを有する複数のシリケート薄層を含有する粒子を含み、さらに層間面に存在する交換可能なカチオン、たとえばNa、Ca+2、KまたはMg+2を含有する。1以上の層状フィラーはナノ複合材組成物中に存在することができ、該1以上の層状フィラーの量は5または6または7または8から15または18または20または25phrまでの範囲内である。
層状フィラーは天然または合成のフィロシリケート、たとえばモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、フォルコンスコイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、マガダイト、ケニヤアイトおよびスティブンサイト等のようなスメクタイト系クレー、さらにこのほかにバーミキュライト、ハロイサイト、アルミネートオキシド、ハイドロタルサイトならびにこれらの混合物を包含する。ある実施形態では、層状フィラーは30超もしくは40超もしくは50超もしくは60超の、または30もしくは40もしくは50から90もしくは100もしくは120もしくは140までの範囲内の、アスペクト比を有する。
層状フィラーは、有機分子で処理されることによって層間挿入および層剥離されることができ、該有機分子とは、すなわち層状シリケートの層間面に存在するカチオンとイオン交換反応を行う能力のある「剥離剤」であり、本明細書では「剥離剤」と呼ばれる。好適な層状フィラーは、カチオン剥離剤、たとえば脂肪族、芳香族またはアリール脂肪族のアミン、ホスフィンおよびスルフィドのアンモニウム、アルキルアミンもしくはアルキルアンモニウム(1級、2級、3級および4級のもの)、ホスホニウムまたはスルホニウム誘導体を包含する。ある実施形態では、剥離剤は5000未満または2000未満または1000未満または800未満または500未満または400amu(原子質量単位)未満(および200または300から400または500または800または1000または2000または5000amuまでの範囲内)の重量平均分子量を有する。ある実施形態では、剥離剤は、層状フィラー中に剥離剤とクレーとの重量当たり5または10または15または20から40または45または50または55または60重量%までの範囲内で存在する。ゴム100部当たりの部で表すと、剥離剤は層状フィラー中にナノ複合材の1または2から5または6または7または8phrまでの範囲内で存在する。
ある実施形態では、層状フィラーは層剥離されないで、その代わりに交換可能なカチオン、たとえばNa、Ca+2、KまたはMg+2等を存在させてもよい。これらの実施形態では、剥離剤は存在しなくてもよい。さらに他の実施形態では、上記のように特定された量の層状フィラーとともに金属イオンと剥離剤との混合物が存在してもよい。
ある実施形態では、アミン化合物、たとえば牛脂アンモニウム塩が好適な剥離剤であることができる。たとえば、アミン化合物(または対応するアンモニウムイオン)は構造式RN(各「R」は窒素に結合している。)を有するものであり、この式でR、RおよびRは1の実施形態ではC〜C30アルキルまたはアルケン、他の実施形態ではC〜C20アルキルまたはアルケンであり、これらは同じでも異なってもよい。1の実施形態では、剥離剤はいわゆる長鎖3級アミンであり、少なくともRがC14〜C20アルキルまたはアルケンであるものである。
他の実施形態では、ある部類の層状フィラーは層間面に共有結合することができるものを含む。これらのものは構造式−Si(Rを有するポリシランを含み、この式でRは出現ごとに同じまたは異なり、アルキル、アルコキシまたはオキシシランから選択され、Rは複合材のマトリクスポリマーと相容性の有機基である。
他の剥離剤は、2〜30炭素原子を含有するプロトン化アミノ酸およびその塩、たとえば12−アミノドデカン酸、エプシロンカプロラクタムおよび類似の物質を包含する。好適な剥離剤および層状シリケートに層間挿入する方法は米国特許第4,472,538号、米国特許第4,810,734号、米国特許第4,889,885号、さらにこのほかに国際公開第92−02582号に開示されている。
1の実施形態では、層状フィラーまたは添加剤はハロゲン化エラストマーのハロゲン部位と反応して、クレーの層剥離を促進する錯体を形成する能力がある。ある実施形態では、該添加剤は全ての1級、2級および3級アミンならびにホスフィン;アルキルおよびアリールスルフィドおよびチオール;ならびにこれらの多官能性変性物を包含する。望ましい添加剤は長鎖3級アミン、たとえばN,N−ジメチルオクタデシルアミン、N,N−ジオクタデシルメチルアミン、いわゆる脱水素化牛脂アルキルメチルアミン等およびアミン末端ポリテトラヒドロフラン;長鎖チオールおよびチオサルフェート化合物、たとえばヘキサメチレンナトリウムチオサルフェートを包含する。
層状フィラーは、製造の任意の段階で組成物に添加されることができる。たとえば、添加剤がエラストマーに添加され、引き続いて層状フィラーが添加されることができ;または添加剤が少なくとも1のエラストマーと少なくとも1の層状フィラーとの組み合わせに添加されることができ;あるいはさらに他の実施形態では、添加剤は最初に層状フィラーとブレンドされ、引き続いてエラストマーが添加されることができる。
ある実施形態では、エラストマーを上記の剥離剤で処理することは、層を互いに保持するイオン力の低減および4Å超、あるいは9Å超の距離に層間隔を広げる役割をする層間への分子の導入の結果として、層状薄層への層間挿入または「層剥離」をもたらす。この分離は、層状シリケートが重合性モノマー物質およびポリマー物質を層間に、より容易に吸収することを可能にし、層間挿入されたものがマトリクスポリマー物質とせん断混合されると、さらなる層剥離を促進して、ポリマーマトリクス内に剥離された層の均一な分散をもたらす。
ある実施形態では、層状フィラーはアルキルアンモニウムまたは他の剥離剤を予め層間挿入されたクレーであり、本明細書では「剥離層状フィラー」と呼ばれる。市販製品が米国、テキサス州、GonzalezにあるSouthern Clay Products社によって製造されたCloisite群として入手可能である。たとえば、Cloisite Na、Cloisite 30B、Cloisite 10A、Cloisite 25A、Cloisite 93A、Cloisite 20A、Cloisite 15AおよびCloisite 6Aである。市販製品はまた日本国、東京、コープケミカル社によって製造されたSomasif(商標)およびLucentite(商標)クレーとして入手可能である。たとえば、Somasif MAE、Somasif MEE、Somasif MPE、Somasif MTE、Somasif ME−100、Lucentite(商標)SPNおよびLucentite SWNがある。
ある実施形態に従ってナノ複合材中に取り込まれた剥離層状フィラーの量は、ナノ複合材の機械特性またはバリア特性、たとえば引張強さまたは酸素透過性の改善を発現するのに十分なものである。量は一般に、ナノ複合材のポリマー含有量当たり1の実施形態では0.5〜10重量%、他の実施形態では1〜5重量%の範囲である。ゴム100部当たりの部で表すと、剥離層状フィラーはナノ複合材中に5または6または7または8から15または18または20または25phrまでの範囲内で存在する。
ナノ複合材の製造
本明細書に記載されたナノ複合材は溶液プロセスによって製造されることができる。ある実施形態では、溶液プロセスは、ナノ複合材組成物に使用されるエラストマーのその場(in situ)製造を含むことができる。1の実施形態では、同プロセスは、少なくとも1のエラストマーと少なくとも1の層状フィラー、たとえば上記の層状フィラーとを少なくとも1の溶媒を含む溶液中で接触させる工程を含むことができる。このいわゆる「溶媒」または「溶液」方法は米国特許出願公開第2007−0219304号(特許文献8)に記載されている。実験室における製造および大規模生産、たとえばバッチおよび連続プロセスのための方法および装置は、従来技術で周知である。
好適な溶媒は、炭化水素、たとえばアルカン、たとえばC〜C22の直鎖、環式、分枝のアルカン、アルケン、芳香族およびこれらの混合物を含む。これらの例は、プロパン、イソブタン、ペンタン、メチルシクロペンタン、イソヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2−メチルヘプタン、3−エチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、オクタン、ヘプタン、ブタン、エタン、メタン、ノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、1,1−ジメチルシクロペンタン、シス−1,2−ジメチルシクロペンタン、トランス−1,2−ジメチルシクロペンタン、トランス−1,3−ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、オルト−キシレン、パラ−キシレン、メタ−キシレンおよびこれらの混合物を含む。
1の実施形態では、溶液は少なくとも1の炭化水素を含む。もう一つの実施形態では、溶液は少なくとも1の炭化水素から本質的に成る。さらにもう一つの実施形態では、溶液は2以上の炭化水素を含み、または2以上の炭化水素から本質的に成る。他の実施形態では、溶液は少なくとも1のヘキサン、たとえばシクロヘキサンまたは複数のヘキサンの混合物を含んでいてもよい。複数の炭化水素の混合物、たとえば複数のヘキサンの混合物は低グレード市販製品として普通に入手可能である。
他の実施形態では、好適な溶媒は1以上のニトロ化アルカン、たとえばC〜C22のニトロ化直鎖、環式または分枝アルカンアルカンを含む。ニトロ化アルカンは、以下のものに限定されることなく、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロペンタン、ニトロヘキサン、ニトロヘプタン、ニトロオクタン、ニトロデカン、ニトロノナン、ニトロドデカン、ニトロウンデカン、ニトロシクロメタン、ニトロシクロエタン、ニトロベンゼンおよび上記のもののジニトロ−およびトリニトロ−変性物ならびにこれらの混合物を含む。アセトニトリルは、単独でまたは他のものと組み合わされて使用される別の使用可能性のある溶媒である。
全ての上記のアルカンのハロゲン化変性物、たとえば塩素化炭化水素も使用されることができ、たとえば塩素メチル、塩素メチレン、塩素エチル、塩素プロピル、塩素ブチル、クロロホルムおよびこれらの混合物がある。とりわけ、ハイドロフルオロカーボンも溶媒として使用されることができ、たとえばフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、フルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,2−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,2−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン、1−フルオロプロパン、2−フルオロプロパン、1,1−ジフルオロプロパン、1,2−ジフルオロプロパン、1,3−ジフルオロプロパン、2,2−ジフルオロプロパン、1,1,1−トリフルオロプロパン、1,1,2−トリフルオロプロパン、1,1,3−トリフルオロプロパン、1,2,2−トリフルオロプロパン、1,2,3−トリフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよびこれらの混合物ならびにこれらの溶媒の従来技術で知られた変性物がある。ある実施形態では、不飽和ハイドロフルオロカーボンも使用されることができる。
他の実施形態では、好適な溶媒は少なくとも1の含酸素化合物を含み、たとえばC〜CまたはC〜C12またはC〜C22のアルコール、ケトン、エーテル、カルボン酸、エステルおよびこれらの混合物を含む。これらの例はエタノール、プロペノール、アセトン、グリセロール、メチルエチルケトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、酢酸、ギ酸、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびエタン酸エチルを含む。
さらに他の実施形態では、ナノ複合材は、少なくとも1の溶媒中で少なくとも1のエラストマーと少なくとも1の層状フィラーと接触させる工程、そして該接触生成物から溶媒を除いてナノ複合材を形成する工程を含むプロセスによって製造される。任意の数の溶媒および/またはこれらの組み合わせが使用されることができる。これに代えてまたはこれに加えて、エラストマーと(剥離剤を含むまたは含まない)層状フィラーとを接触させることによって形成されたナノ複合材は、望ましい溶媒、とりわけ極性溶媒、たとえばアルコールの添加によって沈降されることができる。
ある実施形態では、ナノ複合材は、炭化水素を含む溶媒と少なくとも1の層状フィラーとを含む溶液Aと、溶媒と少なくとも1のエラストマーとを含む溶液Bと、を接触させる工程;そして溶液Aと溶液Bとの接触生成物から溶媒を除いてナノ複合材を形成する工程;を含むプロセスによって製造される。このおよび他の実施形態では、層状フィラーは、本明細書に記載された剥離剤で処理された層状フィラーであることができる。
別の言い方をすると、ある実施形態では、エラストマーは第一の溶媒と接触され、該第一の溶媒は本明細書に記載された任意の溶媒であることができ、そして別途に、フィラーが第二の溶媒と接触され、該第二の溶媒は第一の溶媒と同じまたは異なることができ、好ましくは第一の溶媒と同じまたは第一の溶媒に少なくとも実質的に可溶性のものである。エラストマーおよびフィラーは独立に、溶媒中に任意の望ましい量によって希釈されることができる。エラストマーは完全に溶解される必要はなくて、ある実施形態では、それが完全に溶解される量の第一の溶媒とともに存在する。層状フィラーおよび第二の溶媒は懸濁物を形成する量で一緒にされる。ある実施形態では、(第一の溶媒):(エラストマー)の重量比は1または2または3から5または8または10または20または50までの範囲内である。ある実施形態では、(第二の溶媒):(フィラー)の重量比は5または10または15または20から50または60または80または100または120または180または200までの範囲内である。
ある実施形態では、ナノ複合材組成物の製造においてこれらの溶媒は合計で、該組成物の総重量当たり30〜99重量%、あるいは40〜99重量%、あるいは50〜99重量%、あるいは60〜99重量%、あるいは70〜99重量%、あるいは80〜99重量%、あるいは90〜99重量%、あるいは95〜99重量%存在することができる。
さらに、ある実施形態では、ナノ複合材組成物の製造において2以上の溶媒が用意されるときは、存在する全溶媒の合計体積を100体積%として、各溶媒は0.1〜99.9体積%、あるいは1〜99体積%、あるいは5〜99体積%、あるいは10〜90体積%を構成することができる。さらにその上、使用される溶媒の任意の1以上中に水が存在してもよいが、存在しないことが好ましく、つまり水は添加されることはなく、溶媒中に微量物質としてのみ存在する。
混合の仕方にかかわらず、ナノ複合材のコンパウンドは、100部のポリマーとX部のクレーとを含むポリマー/クレーのナノ複合材マスターバッチ(10X phr MB)を使用して製造されることができる。たとえば、8部のクレーを有するナノ複合材は、以下にさらに説明される添加剤を含むコンパウンド用配合物中に108phrとして使用されることになる。特性評価のための有用な(「phr」単位の)配合物の例は以下のとおりである。
Figure 0005775877
エラストマー、層状フィラーおよび溶媒を一緒にする手段が何であれ、それによっていったんナノ複合材組成物が形成されると、さらにそれはインナーライナーを形成する前に少なくとも65℃または少なくとも75℃または少なくとも85℃の温度で乾燥される。溶媒を追い出すために真空下に、加熱下にまたはその双方下に、これは達成されることができる。これらは従来技術で知られた任意の適当な手段によって達成されることができる。
添加剤
インナーライナーおよび/またはタイヤ用の本明細書に開示されたナノ複合材および組成物は、典型的にはゴム混合物に慣用される他の添加剤、たとえば有効量の加工助剤、顔料、促進剤、架橋剤および硬化剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤を含む。一般的な部類の促進剤は、アミン、ジアミン、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、スルフェンイミド、チオカルバメートおよびキサンテート等を含む。架橋剤および硬化剤は、イオウ、酸化亜鉛および脂肪酸を含む。パーオキシド硬化剤系も使用されることができる。
本明細書に記載されたインナーライナーおよびタイヤの成分は、剥離クレー以外のフィラーを含むことができる。エラストマーに添加されてナノ複合材を形成するクレーに加えて、1以上のこのフィラーは、従来技術で知られたフィラーであることができ、たとえば炭酸カルシウム、シリカ、剥離されていてもいなくてもよいクレーおよび他のシリケート、タルク、二酸化チタンならびにカーボンブラックである。シリカとは、任意のタイプもしくは粒子サイズのシリカもしくは他のケイ酸誘導体またはケイ酸であって、溶液法、焼成法もしくは同様な方法で処理され表面積を有するもの、たとえば未処理の沈降シリカ、結晶性シリカ、コロイドシリカ、アルミニウムもしくはカルシウムシリケートおよびヒュームドシリカ等のことをいうことが意図される。特定の実施形態では、フィラーは20または30または40または50から70または80または90phrまでの範囲内で存在する。
1以上の架橋剤、たとえばカップリング剤も使用されることができ、とりわけシリカもまた組成物中に存在するときに使用されることができる。カップリング剤は2官能性オルガノシラン架橋剤であることができる。「オルガノシラン架橋剤」とは、当業者に知られた任意の、シランと結合したフィラーおよび/または架橋活性化剤および/またはシラン強化剤であり、以下のものに限定されることなく、ビニルトリエトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビニルトリス(ベータ−メトキシエトキシ)シラン、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン(Witco社によってA1100として市販されている。)、ガンマ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Witco社によるA189)およびこれらの混合物を含む。
1の実施形態では、追加のフィラーはカーボンブラックまたは変性カーボンブラックおよびこれらの任意の組み合わせである。他の実施形態では、フィラーはカーボンブラックとシリカとのブレンドであってもよい。特定の実施形態では、タイヤおよびインナーライナーの成分に使用されるフィラーは、該ブレンドの10〜100phr、他の実施形態では、より好ましくは30〜80phr、さらに他の実施形態では50〜80phrのレベルで存在する強化グレードカーボンブラックである。カーボンブラックの有用なグレードは、従来技術で周知のようにN110〜N990の範囲にわたっている。より望ましくは、たとえばタイヤトレッドに有用なカーボンブラックの実施形態はASTM(D3037、D1510およびD3765)に規定されるN229、N351、N339、N220、N234およびN110である。たとえばタイヤサイドウォールに有用なカーボンブラックの実施形態はN330、N351、N550、N650、N660およびN762である。インナーライナーおよび他の空気バリア物に適したカーボンブラックはN550、N660、N650、N762、N990およびRegal 85を含む。
一般に、ポリマーブレンド、たとえばタイヤを製造するのに使用されるものは架橋されまたは「硬化」されている。加硫ゴムコンパウンドの物理的性質、性能特性および耐久性は、加硫反応の間に形成された架橋結合の数(架橋密度)およびタイプに直接関係することが知られている。一般に、ポリマーブレンドは硬化性分子、たとえばイオウ、金属酸化物、有機金属化合物、ラジカル開始剤等を添加し、引き続いて加熱することによって架橋されることができる。特に、以下の金属酸化物、すなわちZnO、CaO、MgO、Al、CrO、FeO、FeおよびNiOが有用であることができる普通の硬化剤である。これらの金属酸化物は、単独で、または対応する金属脂肪酸錯体(たとえば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等)と併せて、または単独で添加された有機脂肪酸、たとえばステアリン酸および任意的に他の硬化剤、たとえばイオウもしくはイオウ化合物、アルキルパーオキシド化合物、ジアミンもしくはこれらの誘導体(たとえば、DuPont社によって販売されるDiak(商標)製品)と併せて使用されることができる。このエラストマー硬化方法は促進されることができ、エラストマーブレンドの加硫用にしばしば使用される。金属酸化物およびイオウのような成分は、それぞれ0.1または0.2から1または2または3phrまでの範囲内で存在することができる。
硬化プロセスの促進は、ある実施形態では組成物にある量の促進剤を添加することによって達成される。天然ゴムの促進された加硫の機構は、硬化剤、促進剤、活性化剤およびポリマーの間の複合的な相互作用を含む。理想的には、全ての硬化剤は、2のポリマー鎖を結合しポリマーマトリクスの全体としての強さを高める有効な架橋結合の形成に消費される。多数の促進剤が従来技術で知られており、以下のものに限定されることなく、ステアリン酸、ジフェニルグアニジン(DPG)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、4,4’−ジチオジモルホリン(DTDM)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物(Flexsys社によってDuralink(商標)HTSとして市販されている。)、2−(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール(MBSまたはMOR)、MOR90%とMBTS10%とのブレンド(MOR90)、N−3級ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)およびN−オキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシジエチレンスルホンアミド(OTOS)、2−エチルヘキサン酸亜鉛(ZEH)ならびに「チオ尿素」を含む。促進剤は0.1または0.2から1または2または3phrまでの範囲内で存在することができる。
合計すると、促進剤、金属酸化物、イオウおよび他の「硬化剤」のような薬剤は、本明細書に記載された組成物中に0.1または0.2から1または2または3または4または5phrまでの範囲内で存在することができる。
他の実施形態では、望ましいエラストマーの不透過性は、少なくとも1の多官能性硬化剤の存在によって達成される。かかる多官能性硬化剤の実施形態は式Z−R−Z’によって記述され、この式で、Rは置換または非置換の、C〜C15アルキル、C〜C15アルケニルおよびC〜C12環式芳香族部分のうちの1であり、ZおよびZ’は同じでも異なってもよく、チオサルフェート基、メルカプト基、アルデヒド基、カルボン酸基、パーオキシド基、アルケニル基または不飽和基のような反応性基を有するポリマー鎖の1以上を分子内もしくは分子間で架橋する能力のある他の同様な基のうちの1である。いわゆるビスチオサルフェート化合物は、上記の式に包含される多官能性化合物の1の部類の例である。かかる多官能性硬化剤の非限定的な例は、ヘキサメチレンビス(ナトリウムチオサルフェート)およびヘキサメチレンビス(シンナムアルデヒド)ならびにゴムコンパウンドの技術分野で周知の他のものである。これらのおよび他の好適な硬化剤は従来技術で周知である。多官能性硬化剤は、存在する場合、ナノ複合材中に1の実施形態では0.1〜8phr、さらに他の実施形態では0.2〜5phr存在することができる。
フェノールホルムアルデヒド樹脂(または「フェノール樹脂」)は、ある実施形態では硬化剤として使用される。1の実施形態では1のタイプのフェノールホルムアルデヒド樹脂のみが使用され、他の実施形態では2以上のタイプのフェノールホルムアルデヒド樹脂の混合物が使用される。1の実施形態では、フェノールホルムアルデヒド樹脂は構造式(3)のものから成る群から選択される。
[式3]
Figure 0005775877
この式で、mは1〜50、より好ましくは2〜10の範囲にあり、Rは1の実施形態では水素およびC〜C20アルキルから成る群から選択され、特定の実施形態ではC〜C14分枝アルキルから成る群から選択され、Qは−CH−および−CH−O−CH−から成る群から選択された2価の基である。
ある実施形態では、フェノールホルムアルデヒド樹脂はハロゲン化され、さらに他の実施形態では、ハロゲン化および非ハロゲン化フェノールホルムアルデヒド樹脂の混合物が使用される。また、フェノールホルムアルデヒド樹脂は、任意の形態、たとえば固体、液体、溶液または懸濁物であることができる。好適な溶媒または希釈剤は液状アルカン(たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン)、トルエンおよび他の芳香族溶媒、パラフィン油、ポリオレフィン油、鉱物油もしくはシリコン油ならびにこれらのブレンドを含む。ある実施形態では、本明細書に記載された組成物、インナーライナーおよび/またはタイヤは、1または2または3から6または8または10または12phrまでの範囲内の少なくとも1のフェノール樹脂を含むことができる。
加工助剤または「油」も含められることができる。加工助剤は、以下のものに限定されることなく、可塑剤、増量油、化学的コンディショナー、均質剤およびしゃく解剤、たとえばメルカプタン、石油および加硫植物油、鉱物油、パラフィン油、ポリブテンポリマー、ナフテン油、芳香族油、ワックス、樹脂ならびにロジン等を含む。加工助剤は、ある実施形態では8phr未満もしくは7phr未満もしくは6phr未満もしくは5phr未満もしくは4phr未満で存在し、または他の実施形態では0.1もしくは0.5もしくは1もしくは2もしくは3もしくは4から6もしくは8phrまでの範囲内で存在する。
加工助剤のいくつかの市販品例は、ナフテン系加工助剤であるSundex(商標)(Sun Chemicals社)、800〜5000amuの数平均分子量を有するポリブテン加工助剤およびパラフィン系石油であるFlexon(商標)である。1の実施形態では、パラフィン油、ナフテン油および芳香族油は実質的に存在しない、つまりこれらのものは、空気バリア物をつくるのに使用される組成物に意図的には添加されておらず、あるいは存在するとしても、空気バリア物をつくるのに使用される組成物の0.2重量%までのみ存在する。組成物の他の実施形態では、ナフテン油および芳香族油は実質的に存在しない。これらの加工助剤の市販品例は、たとえばFlexon油(これはいくらかの芳香族部分を含有する。)およびCalsol(商標)油(ナフテン油)を含む。
最も好ましくは、ナフテン油はナノ複合材および/またはインナーライナー(物品)組成物中に実質的に存在しない、つまりナフテン油がそもそも存在するとしても、該組成物の0.5重量%未満または0.1重量%未満までのみ存在する。油は、そのパラフィン炭素含有量がその油の60重量%未満であれば「ナフテン」油である。
他の実施形態では、他の添加剤、たとえば粘着付与剤ならびにポリマー、たとえばプラストマーおよび熱可塑性物が存在することができる。有用なプラストマーはエチレン由来単位および10重量%〜30重量%のC〜C10α−オレフィン由来単位を含む。他の実施形態では、プラストマーはエチレン由来単位ならびに1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテン由来単位から選択された10重量%〜30重量%の単位を含む。さらに他の実施形態では、プラストマーはエチレン由来単位および10重量%〜30重量%のオクテン由来単位を含む。1の実施形態ではプラストマーは0.1〜20dg/分の、他の実施形態では0.1〜10dg/分のメルトインデックスを有する。商業的に入手可能なプラストマーの例は、0.895g/cmの密度および3.5dg/分のメルトインデックス(2.16/190)を有する、エチレンと1−ヘキセンとのコポリマーであるExact(商標)4150(米国、テキサス州、Houston、ExxonMobil Chemical社)ならびに0.882g/cmの密度および1.0dg/分のメルトインデックス(2.16/190)を有する、エチレンと1−オクテンとのコポリマーであるExact8201である。
ある実施形態では、当該技術分野で炭化水素樹脂とも呼ばれることがある粘着付与剤が、インナーライナーおよび/またはタイヤの成分中に存在してもよく、これは合成または天然モノマーに由来する低分子量の非晶質熱可塑性ポリマーを含む。これらのモノマーは石油樹脂に由来するもの、たとえばトランスピペリレン、芳香族化合物、たとえばスチレン、2−メチル−2−ブテン;テルペン樹脂に由来するもの、たとえばリモネンおよびβ−ピネン;ロジンに由来するもの、たとえばアビエチン酸;ならびに各種のシクロジエンを含む。該樹脂は水素化されてもよい。粘着付与剤の市販品例はStruktol(商標)炭化水素樹脂(Struktol Company of America社)である。ある実施形態では、粘着付与剤またはプラストマーはインナーライナー組成物中に2もしくは3もしくは4もしくは5から8もしくは10もしくは12もしくは15phrまでの範囲内で存在する。
インナーライナーおよび空気タイヤの製造
本明細書に記載された組成物およびかかる組成物を使用して形成された層状構造物は空気タイヤ用途;タイヤ硬化ブラダー:エアスリーブ、たとえばエアショックアブゾーバー、ダイヤフラム;ならびにホース用途、たとえばガスおよび流体輸送ホースに使用されることができる。組成物およびかかる組成物を含むタイ層は、空気タイヤに特に有用であり、タイヤの内部表面へのタイヤインナーライナーの接着および空気保持特性を促進する。とりわけ有用な構成物は、タイヤインナーライナー層がタイヤの最内側表面を形成し、空気保持室を形成する表面とは反対側のインナーライナー層表面がタイ層に接触しているものである。あるいは、インナーライナー層とタイ層との間に接着層が使用されることができる。インナーライナー(または接着層)に接触している表面とは反対側のタイ層の表面は、カーカスと呼ばれるタイヤ層に接触している。言い換えれば、タイヤ層は典型的には強化タイヤコードを含んでいる。インナーライナー層が低い透過特性を示すことが有利であり、好ましくはこれはナノ複合材を含む。
さらにその上、インナーライナーの特有の組成物の結果として、とりわけその低い空気透過特性は、主に高ジエンゴムを含有する組成物に比較して薄いインナーライナーの使用を可能にする。かかるインナーライナーに基づいて得られた全体構成物は、重量の低減されたタイヤ構成物(さらにこのほかにも空気または流体保持層とタイ層とを含む他の構成物)を可能にする。当然ながら、タイ層中のハロゲン化エラストマーの濃度およびタイプの調整、インナーライナー層内の組成調整ならびにこれらの層のそれぞれの厚さの選択をすることにより、異なる重量削減をもたらすことができる。典型的には、空気保持(またはタイヤ以外の用途の場合には流体保持)特性はかかる変数の選択を決定し、コンパウンド業者および/または設計者によってかかる決定を支援するために行われる実験作業を限定したものにすることができる。しかしながら、典型的には2%〜16%の重量削減、あるいは4%〜13%の重量削減が実現されることができる。かかる改善は空気タイヤのような用途において特に有意義である。
タイヤインナーライナー組成物(すなわち、ナノ複合材および追加の成分)は、慣用の混合技術、たとえばニーディング、ローラーミリング、押出機混合および内部混合(たとえば、Brabender(商標)またはBanbury(商標)ミキサーを用いるもの)等を使用して製造されることができる。用いられる混合の順序および温度は当該分野のゴムコンパウンド業者に周知のものであり、その目的はポリマーマトリクス中にフィラー、活性化剤および硬化剤をナノ複合材の性質に依存して様々である温度条件を調整しながら分散することである。あるいは、ゴムとカーボンブラックの一部(たとえば、1/3〜2/3)とが短時間(たとえば、1〜3分間)混合され、引き続いてカーボンブラックの残部と油とが添加、混合される。混合は5〜10分間高ローター速度で続けられ、その間に混合された成分は160℃の温度に達する。冷却後、該成分は第二の工程で、たとえばゴムミルでまたはBanburyミキサー中で混合され、その間に硬化剤系、たとえば硬化剤および任意的な促進剤が比較的低温度、たとえば90〜105℃で十分かつ均一に分散されて、組成物の時期尚早の硬化、すなわち「スコーチング」を回避する。混合における変更態様は当業者には容易に明らかであり、本開示発明は何らかの特定の混合方法に限定されない。混合は組成物の全ての成分を十分かつ均一に分散するように実施される。
コンパウンドされたゴム組成物を0.5mm〜2mmの厚さを有するシート物質へとカレンダー加工または押出し、特定のサイズまたはタイプのタイヤにインナーライナーとして用いるために適当な幅および長さの細片に該シート物質を切断することによって、インナーライナー層または「ストック」が次に製造される。インナーライナーはこうして、空気タイヤ構成物中の1の要素として使用される準備が整う。空気タイヤは典型的には多層積層物から構成され、該多層積層物は、トレッド要素およびサイドウォール要素を含む外表面、ゴムマトリクス中に埋め込まれたタイヤ強化繊維(たとえば、レーヨン、ポリエステル、ナイロンまたは金属の繊維)を含有する多数の層を含む中間カーカス層、本明細書で説明されたタイ層、任意的な接着層、およびインナーライナー層を含む。タイヤは通常、上記の各層を使用してタイヤ形成ドラム上で製造される。未硬化のタイヤはドラム上で製造された後、取り出され加熱されたモールド中に入れられる。
モールドは、タイヤ成形用空気膨張ブラダーを収納しており、これは未硬化タイヤの内周面内に置かれる。モールドが閉じられた後、ブラダーが膨張され、硬化工程の早い段階の間にブラダーは閉じられたモールドの内表面にタイヤを押し付けることによってタイヤを成形する。ブラダーおよびモールド内の熱はタイヤの温度を加硫温度まで上げる。加硫温度は典型的には100℃〜250℃、好ましくは150℃〜200℃である。硬化時間は本明細書に記載されたタイヤの場合、8分間から数時間まで様々であることができる。硬化時間および温度は従来技術で周知の多くの変数、たとえばタイヤ組成物の組成、たとえば層のそれぞれの中の硬化剤系、タイヤ全体のサイズおよび厚さ等に依存する。
加硫のパラメータは、様々な周知の実験室試験方法、たとえばASTM D2084−01に記載された試験方法(振動ディスク硬化測定器を用いるゴム特性−加硫の標準試験方法)、またこのほかに応力−ひずみ試験、接着試験および屈曲試験等を活用して確立されることができる。組み上げられたタイヤの加硫は、タイヤ組み上げ品の全ての要素または層、すなわちインナーライナー層、カーカス層ならびに外側トレッドおよびサイドウォール層の完全なまたは実質的に完全な加硫(または「架橋」、「硬化」)をもたらす。各層および全体構成物の所望の強さ特性を発現することに加えて、加硫はこれらの要素間の接着を高めて、分離した複数の層の状態のものから硬化された単一のタイヤをもたらす。
ある実施形態では、本明細書に記載されたナノ複合材組成物および該ナノ複合材組成物を使用してつくられたインナーライナーならびにこれからつくられたタイヤは、40℃において200未満もしくは180未満もしくは160未満もしくは140未満もしくは100mm・cm/[m・日]未満の透過係数、または他の実施形態では、40℃において100から140もしくは160もしくは180もしくは200mm・cm/[m・日]までの範囲内の透過係数を有する。
実施例
これらの実験において、また各表に記載された「ナノ1」は、臭素化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマー(該エラストマーの重量およびモル当たり、10重量%のパラメチルスチレンおよび0.8モル%の臭素)および10phrのCloicite(商標)20Aならびに5phrのcastor油を含む。このエラストマーは従来技術で知られた技術によってつくられ、たとえば米国特許第5,162,445号に開示されている。「ナノ2」は5phrのポリブテン油(約2500amu)を含むこと以外は上記と同じである。「ナノ3」も上記と同じであるが、加工助剤は添加されていない。
実施例1
臭素化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマー(150g)がヘキサン(900mL)中に溶解され、Cloisite20Aクレー(15g)がヘキサン(700mL)中に分散された。これらのポリマー溶液およびクレースラリーが一緒にされ、castor油(7.5g)が添加された。この混合物がSilverson High−Shearミキサー中環境温度で30分間さらに混合された。ナノ複合材がイソプロパノールの添加によって沈降した。この生成物はろ過され真空オーブン中85℃で18時間乾燥された。最終組成物は10phrのCloisiteおよび5phrのcastor油を含んでいた。
実施例2

臭素化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマー(150g)がヘキサン(900mL)中に溶解され、Cloisite20Aクレー(15g)がヘキサン(700mL)中に分散された。これらのポリマー溶液およびクレースラリーが一緒にされ、ポリブテン油(7.5g)が添加された。この混合物がSilverson High−Shearミキサー中環境温度で30分間さらに混合された。ナノ複合材がイソプロパノールの添加によって沈降した。この生成物はろ過され真空オーブン中85℃で18時間乾燥された。最終組成物は10phrのCloisiteおよび5phrのポリブテン油を含んでいた。
上記の実施例1および2で形成されたナノ複合材(ナノ1およびナノ2)がそれぞれ、表1に列挙された他の成分をブレンドすることによってナノ複合材組成物をつくるのに使用された。比較例2はブロモブチルゴム(「BIIR」)であるExxonMobilブロモブチル2222(ExxonMobil Chemical社)を使用してつくられ、その成分はBrabender(商標)ミキサー中慣用様式でブレンドされた。該ナノ複合材(または「ナノ複合材組成物」)は他の添加剤をブレンドされてインナーライナー組成物を形成した。「フェノール樹脂」はSchenectady International社から入手した。全ての場合に、ナノ複合材およびブロモブチルゴムは追加の成分をBrabenderミキサー中慣用様式でブレンドされた。他の成分は当該分野で知られた従来の供給業者から入手した。表1の組成物からつくられたサンプルの試験が実施され、結果が表2および3に示されている。「ゲージ」はサンプルの厚さの別の呼び方である。
透過性
透過性試験は以下の記載に従って進められた。全てのサンプルはゆっくりした冷却とともに圧縮成形されて欠陥のないパッドが得られた。圧縮・硬化プレスがゴムサンプルに使用された。Arborプレスを使用して圧縮成形されたパッドの典型的な厚さは約0.38〜0.47mmであり、次に透過性試験用に2インチ直径の円盤が、成形されたパッドから打ち抜かれた。酸素透過性測定は、J.POLY.SCI.:PART.A−2、467(1970年)中のR.A.Pasternakらの原理の下でMocon OX−TRAN 2/61透過性試験機を使用して40℃で行われた。このように調製された円盤がテンプレート上に取り付けられ真空グリースで封止された。10mL/分の酸素の定常流が円盤の片側に維持され、他方、10mL/分の窒素の定常流が円盤の反対側に維持された。窒素側の酸素検出器を使用して、時間経過による窒素側の酸素濃度の増加を監視することができた。一定量の酸素が円盤を透過するのに要する時間または窒素側の酸素濃度が一定値に到達するのに要する時間が記録され、酸素ガス透過性を測定するのに使用された。
ムーニー応力緩和
本明細書でムーニー粘度および緩和の値を測定するのに使用された方法は、使用された測定器、Alpha Technologies社MV−2000ムーニー粘度計操作マニュアルおよびASTM D3182「ゴム標準取扱法−物質、装置および標準コンパウンドを混合し標準加硫シートを調製する手順」およびASTM D1646「ゴム標準試験法−粘度、応力緩和および加硫前特性(ムーニー粘度計)」の使用に基づいている。較正は頻度の較正(較正チェックは14日に1回、かつ較正条件からはずれたときに実施された。)および受入れ限界(自重較正におけるムーニー単位値は100MU±0.5MUと読むべきである。)を含み、温度は100±0.3℃であった。対照ポリマーはExxonMobilブチル268であった。対照試験は対照サンプル(ブチル268)を30分間条件調整に置くことによって行われた。次に、MVカッターを使用して、2のサンプルがそれぞれ約11.5gの重さになるように既知の厚さに切り出された。最初のサンプルが試験される前に対照ポリマーが各日に試験された。サンプルのサイズは23±3.0グラムであり、Mylar(商標)シートとともに試験された。対照試験は1分間の予備加熱および8分間の試験から成っていた。これは大ローターを使用して行われた。試験温度は125±0.3℃であった。チャートパラメータは1+8分間におけるムーニー値である。
ムーニー値の測定では、サンプルは必要により90±5℃に設定されたミルで乾燥状態まで混練することによって調製されたが、「デンスベール」のエラストマーサンプルは混練を必要としなかった。一体化(massing)はポリマーに応じて適当なゲージで10回通しすることで行った。サンプルがミルで一体化された場合は試験サンプルは室温まで30分間放置冷却され、または冷却チャンバー中で積極的に冷却された。この冷却工程は折り畳みの前後に行われることができる。次に、混練されたサンプルは約半インチ(12.7mm)の厚さまで折り畳まれ、これにより捕捉された空気は含まれないはずである。ムーニーカッターを使用して2片のサンプルを切り出した。一体化していない試料の場合は、約半インチの厚さにスライスし、ムーニーカッターを使用してサンプル片の中心に孔が開けられるように、試験される2片のサンプルを直接切り出した。これらの試料は次に秤量される。2の試験片の合計体積は25±3cmであった。1.1未満の比重を有する物質の場合、2片の質量は27±3gであった。1.1超の比重を有する物質の場合には以下の式、目標重量=SG/1.1×27gに従って質量を増加した。この式で、「SG」は物質の比重である。
Figure 0005775877

Figure 0005775877

Figure 0005775877
ナノ複合材およびインナーライナー(または物品)組成物の様々な特徴を記載してきたが、番号を付けた実施形態でこれから記載するのは以下のものである。
1. タイヤ用のインナーライナーを形成する方法であって、
官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーと、1以上の層状フィラーと、1または2phrから4または5または6または7または8phrまでの範囲内の1以上の加工助剤と、1以上の溶媒と、を接触させて、ナノ複合材組成物を形成する工程、
該ナノ複合材組成物を沈降させる工程、および
タイヤに適したインナーライナーを形成する工程
を含む方法。
2. 官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーが第一の溶媒中に分散されて第一の溶媒混合物を形成し、別途に、1以上の層状フィラーが第二の溶媒中に分散されて第二の溶媒混合物を形成し、引き続いて該2の溶媒混合物を一緒にしてナノ複合材溶媒混合物を形成し、引き続いて1以上の加工助剤と該ナノ複合材混合物とを一緒にしてナノ複合材組成物を形成する、実施形態番号1に記載の方法。
3. (第一の溶媒):(エラストマー)の重量比が、1または2または3から5または8または10または20または50までの範囲内にあり、(第二の溶媒):(エラストマー)の重量比が、5または10または15または20から50または60または80または100または120または180または200までの範囲内にある、実施形態番号2に記載の方法。
4. ナノ複合材組成物が、インナーライナーを形成する前に、少なくとも65または少なくとも75または少なくとも85℃の温度でさらに乾燥される、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
5. 官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーが、50未満または45未満または40未満のムーニー粘度(ML1+4)を有する、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
6. 官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーが、該エラストマーの重量の4または5または6から9または11または13または15または17重量%までの範囲内のp−メチルスチレンに由来する単位の含有量を有する、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
7. 1以上の層状フィラーの量が、5または6または7または8から15または18または20または25phrまでの範囲内にある、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
8. ナノ複合材組成物が剥離剤も含む、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
9. 剥離剤が、5000未満または2000未満または1000未満または800未満または500未満または400amu(原子質量単位)未満(および200または300から400または500または800または1000または2000または5000amuまでの範囲内)の重量平均分子量を有する、実施形態番号8に記載の方法。
10. 剥離剤が、剥離剤とエラストマーとの重量当たり5または10または15または20から40または45または50または55または60重量%までの範囲内で存在する、実施形態番号8または9に記載の方法。
11. 層状フィラーが、30超もしくは40超もしくは50超もしくは60超の、または30もしくは40もしくは50から90もしくは100もしくは120もしくは140までの範囲内の、アスペクト比を有する、実施形態番号8〜10のいずれか1に記載の方法。
12. ナノ複合材組成物から、該ナノ複合材と1以上のプロセスオイルと硬化剤組成物とを一緒にする前に、溶媒が除かれる、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
13. インナーライナーの透過係数が200未満または180未満または160cc・mm/(m−日)未満である、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
14. ナフテン油が実質的に存在しない、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
15. 1または2または3から6または8または10または12phrまでの1以上のフェノール樹脂をさらに含む、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
16. 2または3または4または5から8または10または12または15phrまでの炭化水素粘着付与剤をさらに含む、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
17. 20または30または40または50から70または80または90phrまでの範囲内のカーボンブラックをさらに含む、上記の実施形態番号のいずれか1に記載の方法。
18. 上記の実施形態番号のいずれか1に記載のインナーライナーを含むタイヤを製造する方法。
19. エラストマーナノ複合材を含むインナーライナーであって、該エラストマーナノ複合材が官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーと、1以上の層状フィラーと、1または2から4または5または6または7または8phrまでの範囲内の1以上の加工助剤と、を含むインナーライナー。
20. 成分が溶媒中に溶解/スラリー化されている、実施形態番号19に記載のインナーライナー。
21. エラストマーナノ複合材が固形組成物である、実施形態番号19または20に記載のインナーライナー。
22. ナフテン油が実質的に存在しない、実施形態番号21に記載のインナーライナー。
23. 1または2または3から6または8または10または12phrまでの1以上のフェノール樹脂をさらに含む、実施形態番号21に記載のインナーライナー。
24. 2または3または4または5から8または10または12または15phrまでの炭化水素粘着付与剤をさらに含む、実施形態番号21に記載のインナーライナー。
25. 20または30または40または50から70または80または90phrまでの範囲内のカーボンブラックをさらに含む、実施形態番号21に記載のインナーライナー。
同様に開示されているのは、ナノ複合材を空気タイヤ用のインナーライナーに使用する方法であって、該インナーライナーが、官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーと、1以上の層状フィラーと、1または2から4または5または6または7または8phrまでの範囲内の1以上の加工助剤と、1以上の溶媒と、を接触させて、ナノ複合材組成物を形成する工程、該ナノ複合材組成物を沈降させる工程、およびタイヤに適したインナーライナーを形成する工程を含むプロセスによってつくられ、その際に、該官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーが第一の溶媒中に分散されて第一の溶媒混合物を形成し、別途に、1以上の層状フィラーが第二の溶媒中に分散されて第二の溶媒混合物を形成し、引き続いて該2の溶媒混合物を一緒にしてナノ複合材溶媒混合物を形成し、引き続いて1以上の加工助剤と該ナノ複合材混合物とを一緒にしてナノ複合材組成物を形成する、方法である。

Claims (10)

  1. タイヤ用のインナーライナーを形成する方法であって、
    官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーと、1以上の層状フィラーと、1〜8phrの範囲内の1以上のプロセスオイルとを、1以上の溶媒の存在下に接触させて、ナノ複合材組成物を形成する工程、
    該ナノ複合材組成物を沈降させる工程、および
    該沈降したナノ複合材組成物を含んでいるインナーライナーを形成する工程
    を含む方法。
  2. 官能化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)エラストマーが第一の溶媒中に分散されて第一の溶媒混合物を形成し、別途に、1以上の層状フィラーが第二の溶媒中に分散されて第二の溶媒混合物を形成し、引き続いて該2の溶媒混合物を一緒にしてナノ複合材溶媒混合物を形成し、引き続いて1以上のプロセスオイルと該ナノ複合材混合物とを一緒にしてナノ複合材組成物を形成する、請求項1に記載の方法。
  3. (第一の溶媒):(エラストマー)の重量比が1〜50の範囲内にあり、(第二の溶媒):(エラストマー)の重量比が5〜200の範囲内にある、請求項2に記載の方法。
  4. ナノ複合材組成物が、インナーライナーを形成する前に、少なくとも65℃の温度でさらに乾燥される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 1以上の層状フィラーの量が、5〜25phrまでの範囲内にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. ナノ複合材組成物が、5000amu(原子質量単位)未満の重量平均分子量を有する剥離剤も含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 層状フィラーが30超のアスペクト比を有する、請求項1に記載の方法。
  8. インナーライナーの酸素透過係数が40℃において200cc・mm/(m−日)未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のインナーライナーを含むタイヤを製造する方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項の記載に従ってつくられたインナーライナー。
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