以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
<第一の実施形態>
まず、図1〜図4を参照しながら第一の実施形態の光偏向器の構成について説明する。図1は、第一の実施形態の光偏向器の分解斜視図である。図2は、図1に示された光偏向器の平面図である。図3は、図1に示された光偏向器のA−A線に沿った接合断面を示している。図4は、図1に示された光偏向器の複合トーションバーの拡大斜視図である。
光偏向器100は、ミラーユニット110と電極基板140を備えている。
ミラーユニット110は、可動部112と一対の複合トーションバー114と一対の固定部116を備えている。可動部112は矩形形状をしている。可動部112の形状は、矩形に限定されるものではなく、円形や楕円など、他の任意の形状であってもよい。一対の固定部116は可動部112の両側に間隔をおいて位置し、可動部112と一対の固定部116の間に一対の複合トーションバー114が位置している。一対の複合トーションバー114は、可動部112の両側に位置している。一対の複合トーションバー114は、可動部112が固定部116に対して回転軸118の周りに回転変位すなわち傾斜し得るように可動部112と固定部116を機械的に接続している。可動部112と複合トーションバー114と固定部116は、たとえばシリコンで一体的に形成され得る。可動部112は、電極基板140に対向する面の反対側の面にミラー面120を有している。ミラー面120は、たとえば可動部112に高反射率の金属薄膜を形成することによって形成され得る。または、ミラー面120は、可動部112の表面に鏡面仕上げを施すことによって形成されてもよい。固定部116は、電極基板140に対向する面に、可動部112と電極基板140の間隔を規定するスペーサー122が設けられている。
電極基板140は、可動部112に対向する面に、可動部112を回転軸118の周りに回転変位すなわち傾斜させるための一対の固定電極142A,142Bが設けられている。つまり、固定電極142A,142Bは、可動部112を駆動するための駆動手段を構成している。この駆動手段は、静電力を用いて可動部112を駆動し得る。続く説明では、固定電極142A,142Bを区別する必要がない場合には両者を総称して単に固定電極142と記す。固定電極142は、これに限らないが、たとえば金で構成されている。
ミラーユニット110と電極基板140は、可動部112と固定電極142が対向するように配置され、スペーサー122が電極基板140に接合されている。その結果、固定電極142は、図2に示すように、可動部112の正面方向から見て、可動部112と重なる位置に配置されており、また、図3に示すように、可動部112の側面方向から見て、可動部112から間隔をおいて配置されている。ここで、可動部112の正面方向とは、無偏向時の可動部112のミラー面120に垂直な方向を意味し、可動部112の側面方向とは、無偏向時の可動部112のミラー面120に平行な方向を意味している。
一対の複合トーションバー114と一対の固定部116は、図2に示すように、平面図において可動部112の中心を通り回転軸118に垂直な直線たとえばA−A線に対して、線対称に配置されている。
このような光偏向器100において、可動部112は次のようにして駆動される。可動部112を接地電位に保ち、電極基板140の一対の固定電極142の一方たとえば固定電極142Aに電圧を印加する。電圧が印加された固定電極142Aと可動部112の間に静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動部112は、電圧が印加されている固定電極142Aに対向している側が電極基板140に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定電極142Bに対向している側が電極基板140から遠ざかる。その結果、複合トーションバー114がねじり変形を起こし、可動部112は、印加電圧の大きさに依存して回転軸118の周りに回転変位すなわち傾斜される。これにより、ミラー面120によって反射される光を一次元的に偏向することができる。
各複合トーションバー114は、図4に示すように、奇数の複数のトーションバー1TB1〜1TB11と複数の連結バー1CB1〜1CB10で構成されている。トーションバー1TB1〜1TB11は、互いに平行に延びている。連結バー1CB1〜1CB10は、それぞれ、隣接する各二つのトーションバー1TB1〜1TB11の一端を互いに連結している。すなわち、連結バー1CBn(nは1以上10以下の自然数)は、二つのトーションバー1TBnと1TBn+1の一端を互いに連結している。最も外側に位置する二つのトーションバー1TB1と1TB11の他端すなわち連結バー1CB1と1CB10と連結されていない一端は、それぞれ、可動部112と固定部116に連結されている。トーションバー1TB1〜1TB11と連結バー1CB1〜1CB10は、たとえばシリコンで一体的に形成され得る。
トーションバー1TB1〜1TB11は、回転軸118に平行に延びており、回転軸118に垂直な方向に整列している。連結バー1CB1〜1CB10は、トーションバー1TB1〜1TB11の整列方向に延びている。ここで、「平行」および「垂直」との用語は、厳密にそのようであることに限定されるものではなく、この分野において常識的な判断によってそのように見なせる範囲を許容する。たとえば、平行は0±3度の範囲内、垂直は90±3度の範囲内であってよい。
トーションバー1TB1〜1TB11は、整列方向に関して、回転軸118を中心にして対称的に配置されている。すなわち、トーションバー1TB1〜1TB5とトーションバー1TB11〜1TB7はそれぞれ、回転軸118上に位置する1TB6を中心にして対称的に配置されている。複数のトーションバー1TB1〜1TB11は、回転軸118に近いものよりも回転軸118から遠いものの方が高いねじり剛性を有している。
トーションバー1TB1〜1TB11と連結バー1CB1〜1CB10はいずれも同じ厚さtを有している。中央部に位置するトーションバー1TB5〜1TB7は1W1の幅を有し、その両側に位置するトーションバー1TB1〜1TB4,1TB8〜1TB11は1W2の幅を有している。連結バー1CB1〜1CB10はいずれも1W3の幅を有している。1W2は1W1よりも大きく、1W3は1W2に等しいか1W2よりも大きい。tは1W2よりも大きい。
各複合トーションバー114は、トーションバー1TB1〜1TB11の幅の違いにしたがって分けられた、トーションバー1TB1〜1TB11の整列方向に並んだ三つの領域を有している。三つの領域は、中央に位置する中央領域または第一の領域と、中央領域の両側に対称的に配置された一対の側方領域または第二および第三の領域からなる。中央領域または第一の領域はトーションバー1TB5〜1TB7を含んでおり、一方の側方領域または第二の領域はトーションバー1TB1〜1TB4を含んでおり、他方の側方領域または第三の領域はトーションバー1TB8〜1TB11を含んでいる。各領域内のトーションバー1TB1〜1TB4,1TB5〜1TB7,1TB8〜1TB11はそれぞれ互いに等しいねじり剛性を有している。第二の領域内のトーションバー1TB1〜1TB4と第三の領域内のトーションバー1TB8〜1TB11はいずれも第一の領域内のトーションバー1TB5〜1TB7よりも高いねじり剛性を有している。言い換えれば、各複合トーションバー114のトーションバー1TB1〜1TB11のねじり剛性は、トーションバー1TB1〜1TB11の整列方向に離散的な分布を有している。
次に、図5〜図7を参照しながらミラーユニット110の作製方法を説明する。図5〜図7は、ミラーユニット110の作製方法の一連の工程を示している。
まず、図5に示すように、スタートウェハーとしてSOIウェハー130を用意する。SOIウェハー130は、シリコン支持層132とシリコン酸化膜層134とシリコン活性層136から構成されている。
次に、図6に示すように、シリコン活性層136側からフォトエッチングをおこなってシリコン活性層136を選択的にエッチングすることによって、可動部112と複合トーションバー114と固定部116を形成する。エッチング装置は、たとえば異方性ドライエッチング装置を用いる。
続いて、図7に示すように、シリコン支持層132側からフォトエッチングをおこない、固定部116に対応する部分を除いてシリコン支持層132を選択的にエッチングし、さらにシリコン酸化膜層134をエッチングする。ここでもエッチング装置は、たとえば異方性ドライエッチング装置を用いる。
最後に、図示していないが、シリコン活性層136側から蒸着装置を用いて可動部112上に高反射率の金属材料を成膜することによりミラー面120を形成して、ミラーユニット110が完成する。
図8〜図12を用いて、従来型の複合トーションバーを備えた光偏向器と本実施形態にしたがう複合トーションバーを備えた光偏向器を比較する。
図8は、比較に用いる光偏向器の解析モデルを示している。この解析モデルでは、可動部162と複合トーションバー164はいずれもシリコンで構成されている。可動部162は、長さ500μm、幅200μm、厚さ5μmである。固定電極166は、金で構成されており、可動部162から30μmの間隔をおいて配置されている。固定電極166は、長さ150μm、幅200μmである。
図9は、図8に示された複合トーションバー164に適用される従来型の複合トーションバーの拡大図である。複合トーションバー170は、21個のトーションバー172と20個の連結バー174から形成されている。各トーションバー172は、長さ31μm、幅2μm、厚さ5μmである。各連結バー174は、長さ6(2+2+2)μm、幅3μm、厚さ5μmである。複合トーションバー170の全長Lは80μm、全幅Wは40μmである。
可動部162に加重を固定電極166方向に印加したときに複合トーションバー164に加わる応力解析結果を図10に示す。これによると、可動部162が固定電極166方向に移動した場合、回転軸118から遠い複合トーションバー164の部分L1,L3が受ける応力が高く、回転軸118に近い複合トーションバー164の部分L2が受ける応力が小さいことがわかる。すなわち、回転軸118から遠くに位置しているトーションバー172の捩れは大きいのに対して、回転軸118の近くに位置しているトーションバー172の捩れは小さいことを意味している。
図11は、図8に示された複合トーションバー164に適用される本実施形態による複合トーションバーの拡大図である。複合トーションバー180は、21個のトーションバー182A,182Bと20個の連結バー184A,184B,184Cから形成されている。複合トーションバー180は、トーションバー182A,182Bの幅の違いにしたがって、中央領域とその両側の一対の側方領域に分けられ、中央領域内のトーションバー182Aは、長さ31μm、幅1.5μm、厚さ5μmであり、側方領域内のトーションバー182Bは、長さ31μm、幅3μm、厚さ5μmである。また、トーションバー182A同士を連結している連結バー184Aは、長さ5.5(=1.5+2.5+1.5)μm、幅3μm、厚さ5μmであり、トーションバー182Aと182Bを連結している連結バー184Bは、長さ5.5(=1.5+1+3)μm、幅3μm、厚さ5μmであり、トーションバー182B同士を連結している連結バー184Cは、長さ7(3+1+3)μm、幅3μm、厚さ5μmである。なお、連結バー184A,184B,184Cに関して、長さは、トーションバー182A,182Bの整列方向の寸法であり、幅は、トーションバー182A,182Bの延在方向の寸法である。複合トーションバー180の全長Lは82μm、全幅Wは40μmである。
図9に示した複合トーションバー170を適用した光偏向器と図11に示した複合トーションバー180を適用した光偏向器のそれぞれに対して、一例として、可動部162に垂直方向に加重200Gを加えた場合の可動部162の垂直方向の変動量を解析した結果を図12に示す。これより、従来型の複合トーションバー170を適用した光偏向器に比べて、本実施形態による複合トーションバー180を適用した光偏向器の方が、変位量が約40%低下していることがわかる。
なお、図示していないが回転方向に関する駆動電圧に対する偏向角特性すなわち駆動感度はほぼ同一である。
つまり、複合トーションバーに含まれる複数のトーションバーのねじり剛性を、回転軸に近いトーションバーよりも回転軸から遠いトーションバーの方を高くしたことにより、複合トーションバーの可動部回転方向の剛性を低下させることなく、複合トーションバーのミラー面垂直方向の剛性が向上される。
したがって、本実施形態の光偏向器は、駆動感度を損なうことなく、ミラー面垂直方向の加重に対する可動部の耐性が向上されている。
これまでに説明した第一の実施形態の各構成は、各種の変形や変更が可能である。たとえば、可動部と複合トーションバーはシリコンで構成したが、ポリシリコンや酸化シリコンや窒化シリコン膜などで構成してもよい。また、固定電極の材質は金としているが、これに限定されるものではなく、白金、アルミ、銅など導電材料であればよい。さらに、駆動手段として平行平板型静電駆動の例を示しているが、櫛歯形静電駆動、電磁駆動、圧電駆動等、駆動方法によらず同様の効果は得られるため、駆動方法を限定するものではない。この第一の実施形態の作用効果を説明するために用いた図8〜図12に関連して述べた寸法等は簡易的に設定したものであり、この寸法に限定されるものではなく、任意に設定されてよい。この第一の実施形態では、トーションバーの幅を回転軸に近い部分と回転軸から遠い部分とで変えることによってミラー面垂直方向の剛性を向上させているが、トーションバーの厚さを回転軸に近い部分と回転軸から遠い部分とで変えることによっても同様の効果が得られる。ただし、トーションバーの厚さを部分的に変えるには作製方法が複雑になる。また、この第一の実施形態の構成では、トーションバーの厚さを調整するよりもトーションバーの幅を調整する方がねじり剛性を調整しやすい。従って、作製方法がより簡単で、厚さに比べて容易におこなえる幅の調整によってトーションバーのねじり剛性を向上させる方が好ましい。
さらに、この第一の実施形態では、異なる二種類のねじり剛性を持つトーションバーを配置するだけでよいので、剛性設計が簡易である。
平行平板型静電駆動の場合、可動部が固定電極に近づくと静電引力が大きくなり、可動部が垂直方向に大きく移動してしまう。このため、この実施形態は、平行平板型静電駆動型に特に有効であり、可動部の垂直方向の移動が効果的に小さく抑えられる。
また、この第一の実施形態では、ミラー面垂直方向の剛性に着目しているが、ミラー面平行方向の剛性も向上している。
<第一の実施形態の第一の変形例>
図13と図14を参照しながら第一の実施形態の第一の変形例の光偏向器について説明する。図13は、第一の実施形態の第一の変形例の光偏向器の分解斜視図である。図14は、図13に示された光偏向器のB−B線に沿った接合断面を示している。
光偏向器200は、ミラーユニット210と電極基板240を備えている。
ミラーユニット210は、可動部212と一対の複合トーションバー214と可動支持部216と一対の複合トーションバー218と一対の固定部220を備えている。
可動部212は矩形形状をしており、可動支持部216は矩形枠形状をしている。可動部212の形状は、矩形に限定されるものではなく、円形や楕円など、他の任意の形状であってもよい。可動支持部216は、可動部212を取り囲むように間隔をおいて位置し、可動支持部216と可動部212の間に一対の複合トーションバー214が位置している。一対の複合トーションバー214は、可動部212の両側に位置している。一対の複合トーションバー214は、可動部212が可動支持部216に対して回転軸222の周りに回転変位すなわち傾斜し得るように可動支持部216と可動部212を機械的に接続している。
一対の固定部220は可動支持部216の両側に間隔をおいて位置し、一対の固定部220と可動支持部216の間に一対の複合トーションバー218が位置している。一対の複合トーションバー218は、可動支持部216の両外側に位置している。一対の複合トーションバー218は、可動支持部216が固定部220に対して回転軸224の周りに回転変位すなわち傾斜し得るように固定部220と可動支持部216を機械的に接続している。回転軸222と回転軸224は互いに直交している。
一対の複合トーションバー214は回転軸224に対して対称的に配置され、可動支持部216は、回転軸222と回転軸224の両方に対して対称的に配置され、一対の複合トーションバー218と一対の固定部220は、回転軸222に対して対称的に配置されている。可動部212と複合トーションバー214と可動支持部216と複合トーションバー218と固定部220は、たとえばシリコンで一体的に形成され得る。複合トーションバー214,218の詳細な構成は、前述した複合トーションバー114と同様である。
可動部212は、電極基板240に対向する面の反対側の面にミラー面226を有している。ミラー面226は、たとえば可動部212に高反射率の金属薄膜を形成することによって形成され得る。または、ミラー面226は、可動部212の表面に鏡面仕上げを施すことによって形成されてもよい。固定部220は、電極基板240に対向する面に、可動部212と電極基板240の間隔を規定するスペーサー228が設けられている。
電極基板240は、可動部212に対向する面に、可動部212を回転軸222と回転軸224の周りに回転変位すなわち傾斜させるための四つの固定電極242A,242B,242C,242Dが設けられている。つまり、固定電極242A,242B,242C,242Dは、可動部212を駆動するための駆動手段を構成している。この駆動手段は、静電力を用いて可動部212を駆動し得る。続く説明では、固定電極242A,242B,242C,242Dを区別する必要がない場合には、これらを総称して単に固定電極242と記す。固定電極242は、これに限らないが、たとえば金で構成されている。四つの固定電極242は、可動部212に対向しており、電極基板240に投影された回転軸222と回転軸224の二本の直線のおのおのに対して対称的に配置されている。つまり、固定電極242A,242Bと固定電極242C,242Dは回転軸222に対して対称的に配置され、固定電極242A,242Cと固定電極242B,242Dは回転軸224に対して対称的に配置されている。
ミラーユニット210と電極基板240は、可動部212と固定電極242が対向するように配置され、スペーサー228が電極基板240に接合されている。その結果、固定電極242は、可動部212の正面方向から見て、可動部212と重なる位置に配置されており、また、図14に示すように、可動部212の側面方向から見て、可動部212から間隔をおいて配置されている。ここで、可動部212の正面方向とは、無偏向時の可動部212のミラー面226に垂直な方向を意味し、可動部212の側面方向とは、無偏向時の可動部212のミラー面226に平行な方向を意味している。
このような光偏向器200において、可動部212は次のようにして駆動される。
可動部212を回転軸222の周りに回転変位すなわち傾斜させるには、可動部212を接地電位に保ち、回転軸222に対して片方の側に位置する固定電極242たとえば固定電極242A,242Bに電圧を印加する。電圧が印加された固定電極242A,242Bと可動部212の間に静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動部212は、電圧が印加されている固定電極242A,242Bに対向している側が電極基板240に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定電極242C,242Dに対向している側が電極基板240から遠ざかる。その結果、複合トーションバー214がねじり変形を起こし、可動部212が、印加電圧の大きさに依存して回転軸222の周りに回転変位すなわち傾斜される。
可動部212を回転軸224の周りに回転変位すなわち傾斜させるには、可動部212を接地電位に保ち、回転軸224に対して片方の側に位置する固定電極242たとえば固定電極242A,242Cに電圧を印加する。電圧が印加された固定電極242A,242Cと可動部212の間に静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動部212は、電圧が印加されている固定電極242A,242Cに対向している側が電極基板240に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定電極242B,242Dに対向している側が電極基板240から遠ざかる。その結果、複合トーションバー218がねじり変形を起こし、可動部212が、複合トーションバー214と可動支持部216と共に、印加電圧の大きさに依存して回転軸224の周りに回転変位すなわち傾斜される。
この変形例の光偏向器では、電圧を印加する固定電極242の選択と印加する電圧の大きさを制御することによって、可動部212を、互いに直交する二本の回転軸222,224の周りに回転変位すなわち傾斜させることができ、したがって、ミラー面226によって反射された光を二次元的に偏向することができる。
この変形例の光偏向器においても、第一の実施形態の光偏向器と同様な効果が得られる。
また、この変形例で説明した各構成は、第一の実施形態に記載した各種の変形や変更が可能である。
<第一の実施形態の第二の変形例>
図15と図16を参照しながら第一の実施形態の第二の変形例の光偏向器について説明する。図15は、第一の実施形態の第二の変形例の光偏向器の分解斜視図である。図16は、図15に示された光偏向器のC−C線に沿った接合断面を示している。
光偏向器300は、ミラーユニット310と電極基板340を備えている。
ミラーユニット310は、固定部312と一対の複合トーションバー314と可動支持部316と一対の複合トーションバー318と可動部320を備えている。
固定部312は矩形形状をしており、可動支持部316は矩形枠形状をしている。可動支持部316は、固定部312を取り囲むように間隔をおいて位置し、可動支持部316と固定部312の間に一対の複合トーションバー314が位置している。一対の複合トーションバー314は、固定部312の両側に位置している。一対の複合トーションバー314は、可動支持部316が固定部312に対して回転軸322の周りに回転変位すなわち傾斜し得るように可動支持部316と固定部312を機械的に接続している。
可動部320は開口部を有し、この開口部内に可動支持部316を収容するように位置し、可動部320の開口部内に一対の複合トーションバー318が位置している。一対の複合トーションバー318は、可動支持部316の両外側に位置している。一対の複合トーションバー318は、可動部320が可動支持部316に対して回転軸324の周りに回転変位すなわち傾斜し得るように可動部320と可動支持部316を機械的に接続している。回転軸322と回転軸324は互いに直交している。
一対の複合トーションバー314は回転軸324に対して対称的に配置され、可動支持部316は、回転軸322と回転軸324の両方に対して対称的に配置され、一対の複合トーションバー318と可動部320は、回転軸322に対して対称的に配置されている。固定部312と複合トーションバー314と可動支持部316と複合トーションバー318と可動部320は、たとえばシリコンで一体的に形成され得る。複合トーションバー314,318の詳細な構成は、前述した複合トーションバー114と同様である。
可動部320は、電極基板340に対向する面の反対側の面にミラー面326を有している。ミラー面326は、回転軸322に対して対称的に位置する可動部320の二つの端部320a,320bの少なくとも一方に設けられている。たとえば、ミラー面326は、可動部320の一方の端部320aに設けられている。もちろん、ミラー面326は、可動部320全体に設けられていてもよい。ミラー面326は、たとえば可動部320に高反射率の金属薄膜を形成することによって形成され得る。または、ミラー面326は、可動部320の表面に鏡面仕上げを施すことによって形成されてもよい。固定部312は、電極基板340に対向する面に、可動部320と電極基板340の間隔を規定するスペーサー328が設けられている。
電極基板340は、可動部320に対向する面に、可動部320を回転軸322と回転軸324の周りに回転変位すなわち傾斜させるための四つの固定電極342A,342B,342C,342Dが設けられている。つまり、固定電極342A,342B,342C,342Dは、可動部320を駆動するための駆動手段を構成している。この駆動手段は、静電力を用いて可動部320を駆動し得る。続く説明では、固定電極342A,342B,342C,342Dを区別する必要がない場合には、これらを総称して単に固定電極342と記す。固定電極342は、これに限らないが、たとえば金で構成されている。固定電極342A,342Bは可動部320の一方の端部320aに対向し、固定電極342C,342Dは可動部320の他方の端部320bに対向している。固定電極342A,342Bと固定電極342C,342Dは、電極基板340に投影された回転軸322の直線に対して対称的に配置されている。固定電極342A,342Cと固定電極342B,342Dは、電極基板340に投影された回転軸324の直線に対して対称的に配置されている。
ミラーユニット310と電極基板340は、固定電極342が可動部320の端部320a,320bに対向するように配置され、スペーサー328が電極基板340に接合されている。その結果、固定電極342は、可動部320の正面方向から見て、可動部320と重なる位置に配置されており、また、図16に示すように、可動部320の側面方向から見て、可動部320から間隔をおいて配置されている。ここで、可動部320の正面方向とは、無偏向時の可動部320のミラー面326に垂直な方向を意味し、可動部320の側面方向とは、無偏向時の可動部320のミラー面326に平行な方向を意味している。
このような光偏向器300において、可動部320は次のようにして駆動される。
可動部320を回転軸322の周りに回転変位すなわち傾斜させるには、可動部320を接地電位に保ち、回転軸322に対して片方の側に位置する固定電極342たとえば固定電極342A,342Bに電圧を印加する。電圧が印加された固定電極342A,342Bと可動部320の間に静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動部320は、電圧が印加されている固定電極342A,342Bに対向している側が電極基板340に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定電極342C,342Dに対向している側が電極基板340から遠ざかる。その結果、複合トーションバー314がねじり変形を起こし、可動部320が、印加電圧の大きさに依存して回転軸322の周りに回転変位すなわち傾斜される。
可動部320を回転軸324の周りに回転変位すなわち傾斜させるには、可動部320を接地電位に保ち、回転軸324に対して片方の側に位置する固定電極342A,342Cに電圧を印加する。電圧が印加された固定電極342A,342Cと可動部320の間に静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動部320は、電圧が印加されている固定電極342A,342Cに対向している側が電極基板340に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定電極342B,342Dに対向している側が電極基板340から遠ざかる。その結果、複合トーションバー318がねじり変形を起こし、可動部320が、複合トーションバー314と可動支持部316と共に、印加電圧の大きさに依存して回転軸324の周りに回転変位すなわち傾斜される。
この変形例の光偏向器では、電圧を印加する固定電極342の選択と印加する電圧の大きさを制御することによって、可動部320を、互いに直交する二本の回転軸322,324の周りに回転変位すなわち傾斜させることができ、したがって、ミラー面326によって反射される光を二次元的に偏向することができる。
この変形例の光偏向器においても、第一の実施形態の光偏向器と同様な効果が得られる。
また、この変形例で説明した各構成は、第一の実施形態に記載した各種の変形や変更が可能である。
<第一の実施形態の第三の変形例>
図17を参照しながら第一の実施形態の第三の変形例の光偏向器について説明する。図17は、第一の実施形態の第三の変形例の光偏向器の斜視図である。
光偏向器400はミラーユニット410と電極基板440を備えている。
ミラーユニット410は、可動部412と一対の複合トーションバー414と一対の固定部416を備えている。可動部412は矩形形状をしている。可動部412の形状は、矩形に限定されるものではなく、円形や楕円など、他の任意の形状であってもよい。一対の固定部416は可動部412の両側に間隔をおいて位置し、可動部412と一対の固定部416の間に一対の複合トーションバー414が位置している。一対の複合トーションバー414は、可動部412の両側に位置している。一対の複合トーションバー414は、可動部412が固定部416に対して回転軸418の周りに回転変位、すなわち傾斜し得るように可動部412と固定部416を機械的に接続している。可動部412は両端に、回転軸418対して対称に一対の可動櫛歯444A,444Bを有している。可動部412と複合トーションバー414と可動櫛歯444A,444Bと固定部416は、たとえばシリコンで一体的に形成され得る。可動部412は、電極基板440に対向する面の反対側の面にミラー面420を有している。ミラー面420は、たとえば可動部412に高反射率の金属薄膜を形成することによって形成され得る。または、ミラー面420は、可動部412の表面に鏡面仕上げをすることによって形成されてもよい。固定部416は電極基板440に対向する面に、可動部412と電極基板440の間隔を規定するスペーサー422が設けられている。
電極基板440は、可動部412に対向する面に、一対の可動櫛歯444A,444Bと共働して可動部412を回転軸418の周りに回転変位すなわち傾斜させるための一対の固定櫛歯442A,442Bが設けられている。つまり、固定櫛歯442A,442Bと可動櫛歯444A,444Bは、可動部412を駆動するための駆動手段を構成している。この駆動手段は、静電力を用いて可動部412を駆動し得る。固定櫛歯442A,442Bは、これに限らないが、たとえばシリコンで構成されている。複合トーションバー414の詳細な構成は、前述した複合トーションバー114と同様である。
ミラーユニット410と電極基板440は、固定櫛歯442A,442Bと可動櫛歯444A,444Bが対向するように配置され、スペーサー422が電極基板440に接合されている。その結果、固定櫛歯442A,442Bは、可動部412の正面方向から見て、可動部412と重ならない位置に配置されている。ここで、可動部412の正面方向とは、無偏向時の可動部412のミラー面420に垂直な方向を意味している。
このような光偏向器400において、可動部412は次のようにして駆動される。可動櫛歯444A,444Bを接地電位に保ち、電極基板440の一対の固定櫛歯442A,442Bの一方たとえば固定櫛歯442Aに電圧を印加する。電圧が印加された固定櫛歯442Aと可動櫛歯444Aに静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動部412は、電圧が印加されている固定櫛歯442Aに対向している側が電極基板440に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定櫛歯442Bに対向している側が電極基板440から遠ざかる。その結果、複合トーションバー414がねじり変形を起こし、可動部412は印加電圧の大きさに依存して回転軸418の周りに回転変位すなわち傾斜される。これにより、ミラー面420によって反射される光を一次元的に偏向することができる。
第一の実施の形態では、可動部112と固定電極142の間隔は可動部112の最大回転角、すなわち可動部112の端部の変位量で決まる。静電引力はこの間隔が狭いほど強い力を発生できるが、第一の実施の形態では、可動端部の変位量以下にはできず、高い印加電圧が必要となる。しかし、本変形例では可動端部の変位量に依らず、可動櫛歯444A,444Bと固定櫛歯442A,442Bの間隔を狭くすることが可能であるため、低電圧化が可能となる。
またこの変形例で説明した各構成は第一の実施形態に記載した各種の変形や変更が可能である。
<第一の実施形態の第四の変形例>
図18を参照しながら第一の実施形態の第四の変形例の光偏向器について説明する。図18は、第一の実施形態の第四の変形例の光偏向器の斜視図である。
光偏向器500は、ミラーユニット510と電極基板540を備えている。
ミラーユニット510は可動部512と一対の複合トーションバー514と可動支持部516と一対の複合トーションバー518と固定部520を備えている。
可動部512は矩形形状をしており、可動支持部516は矩形枠形状をしている。可動部512の形状は、矩形に限定されるものではなく、円形や楕円など、他の任意の形状であってもよい。可動支持部516は、可動部512を取り囲むように間隔をおいて位置し、可動支持部516と可動部512の間に一対の複合トーションバー514が位置している。一対の複合トーションバー514は、可動部512の両側に位置している。一対の複合トーションバー514は可動部512が可動支持部516に対して回転軸522の周りに回転変位すなわち傾斜しうるように可動支持部516と可動部512を機械的に接続している。
一対の固定部520は可動支持部516の両側に間隔をおいて位置し、一対の固定部520と可動支持部516の間に一対の複合トーションバー518が位置している。一対の複合トーションバー518は可動支持部516の両側に位置している。一対の複合トーションバー518は可動支持部516が固定部520に対して回転軸524の周りに回転変位すなわち傾斜し得るように固定部520と可動支持部516を機械的に接続している。回転軸522と回転軸524は互いに直交している。
一対の複合トーションバー514は回転軸524に対して対称的に配置され、可動支持部516は回転軸522と回転軸524の両方に対して対称的に配置され、一対の複合トーションバー518と一対の固定部520は回転軸522対して対称的に配置されている。可動部512は両端に、回転軸522対して対称に一対の可動櫛歯548A,548Bを有している。可動支持部516は回転軸524対して対称に一対の可動櫛歯544A,544Bを有している。可動部512と複合トーションバー514と可動支持部516と複合トーションバー518と固定部520と可動櫛歯544A,544B,548A,548Bは、たとえばシリコンで一体的に形成され得る。複合トーションバー514,518の詳細な構成は、前述した複合トーションバー114と同様である。
可動部512は電極基板540に対抗する面の反対側の面にミラー面526を有している。ミラー面526は、たとえば可動部512に高反射率の金属薄膜を形成することによって形成され得る。または、ミラー面526は、可動部512の表面に鏡面仕上げを施すことによって形成されてもよい。固定部520は、電極基板540に対向する面に、可動部512と電極基板540の間隔を規定するスペーサー528が設けられている。
電極基板540は、可動部512に対向する面に可動部512を回転軸522の周りに回転変位すなわち傾斜させるための固定櫛歯546A,546Bが設けられている。また可動部512を回転軸524の周りに回転変位すなわち傾斜させるための固定櫛歯542A,542Bが設けられている。つまり、固定櫛歯542A,542B,546A,546Bは可動部512を駆動するための駆動手段を構成している。この駆動手段は、静電力を用いて可動部512を駆動し得る。固定櫛歯542A,542B,546A,546Bは、これに限らないが、たとえばシリコンで構成されている。二つの固定櫛歯542A,542Bは可動櫛歯544A,544Bに対向しており、電極基板540に投影された回転軸524の直線に対して対称的に配置されている。また二つの固定櫛歯546A,546Bは可動櫛歯548A,548Bに対向しており、電極基板540に投影された回転軸522の直線に対して対照的に配置されている。
ミラーユニット510と電極基板540は、可動櫛歯544A,544Bと固定櫛歯542A,542Bが対向するように配置され、さらに可動櫛歯548A,548Bと固定櫛歯546A,546Bが対向するように配置され、スペーサー528が電極基板540に接合されている。その結果、可動部512の正面方向から見て、固定櫛歯542A,542Bは可動支持部516と重ならない位置に配置され、固定櫛歯546A,546Bは可動部512と重ならない位置に配置されている。ここで、可動部512の正面方向とは、無偏向時の可動部512のミラー面526に垂直な方向を意味している。
このような光偏向器500において、可動部512は次のようにして駆動される。
可動部512を回転軸522の周りに回転変位すなわち傾斜させるには、可動櫛歯548A,548Bを接地電位に保ち、回転軸522に対して片方の側に位置する固定櫛歯、たとえば固定櫛歯546Aに電圧を印加する。電圧が印加された固定櫛歯546Aと可動櫛歯548Aの間に静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動部512は、電圧が印加されている固定櫛歯546Aに対向している側が電極基板540に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定櫛歯546Bに対向している側が電極基板540から遠ざかる。その結果、複合トーションバー514がねじり変形を起こし、可動部512が印加電圧の大きさに依存して回転軸522の周りに回転変位すなわち傾斜される。
可動部512を回転軸524の周りに回転変位すなわち傾斜させるには、可動櫛歯544A,544Bを接地電位に保ち、回転軸524に対して片方の側に位置する固定櫛歯、たとえば固定櫛歯542Aに電圧を印加する。電圧が印加された固定櫛歯542Aと可動櫛歯544Aの間に静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動支持部516は電圧が印加されている固定櫛歯542Aに対向している側が電極基板540に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定櫛歯542Bに対向している側が電極基板540から遠ざかる。可動支持部516と固定部520を連結している複合トーションバー518はねじり変形を起こし、可動支持部516は印加電圧の大きさに依存して回転軸524の周りに回転変位すなわち傾斜される。その結果、可動部512は可動支持部516と複合トーションバー514と共に回転軸524の周りに回転変位すなわち傾斜される。
この変形例の光偏向器では、電圧を印加する固定櫛歯542A,542B,546A,546Bの選択と印加する大きさを制御することによって、可動部512を互いに直交する二本の回転軸522、524の周りに回転変位すなわち傾斜させることができ、従ってミラー面526によって反射された光を二次元的に偏向することができる。
この変形例の光偏向器において、第三の変形例と同様な効果が得られる。
またこの変形例で説明した各構成は第一の変形例に記載した各種の変形や変更が可能である。
<第一の実施形態の第五の変形例>
図19を参照しながら第一の実施形態の第五の変形例の光偏向器について説明する。図19は、第一の実施形態の第五の変形例の光偏向器の斜視図である。
光偏向器600は、ミラーユニット610と電極基板640を備えている。
ミラーユニット610は固定部612と一対の複合トーションバー614と可動支持部616と一対の複合トーションバー618と可動部620を備えている。
固定部612は矩形形状をしており、可動支持部616は矩形枠形状をしている。可動支持部616は、固定部612を取り囲むように間隔をおいて位置し、可動支持部616と固定部612の間に一対の複合トーションバー614が位置している。一対の複合トーションバー614は、固定部612の両端に位置している。一対の複合トーションバー614は、可動支持部616が固定部612に対して回転軸622の周りに回転変位すなわち傾斜し得るように可動支持部616と固定部612を機械的に接続している。
可動部620は内側に開口を有し、この開口部内に可動支持部616を収容するように位置し可動部620の開口内部に一対の複合トーションバー618が位置している。一対の複合トーションバー618は、可動支持部616の両側に位置している。一対の複合トーションバー618は、可動部620が可動支持部616に対して回転軸624の周りに回転変位すなわち傾斜し得るように可動部620と可動支持部616を機械的に接続している。回転軸622と回転軸624は互いに直交している。
一対の複合トーションバー614は回転軸624に対して対称的に配置され、可動支持部616は回転軸622と回転軸624に対して対称に配置され、一対の複合トーションバー618と可動部620は、回転軸622に対して対照的に配置されている。可動部620は開口内部の両端に、回転軸624に対して対称に一対の可動櫛歯644A,644Bを有している。可動支持部616は開口内部の両端に回転軸622対して対称に一対の可動櫛歯648A,648Bを有している。固定部612と複合トーションバー614と可動支持部616と複合トーションバー618と可動部620と可動櫛歯644A,644B,648A,648Bはたとえばシリコンで一体的に形成され得る。複合トーションバー614,618の詳細な構成は、前述した複合トーションバー114と同様である。
可動部620は、電極基板640に対向する面の反対側の面にミラー面626を有している。ミラー面626は回転軸622に対して対称的に位置する可動部620の二つの端部620a,620bの少なくとも一方に設けられている。もちろん、ミラー面626は可動部620全体に設けられていてもよい。ミラー面626は、たとえば可動部の端部620bに高反射率の金属薄膜を形成することによって形成され得る。またはミラー面626は、可動部620の表面に鏡面仕上げを施すことによって形成されてもよい。固定部612は、電極基板640に対向する面に、可動部620と電極基板640の間隔を規定するスペーサー628が設けられている。
電極基板640は、可動部620に対向する面に、可動部620を回転軸624の周りに回転変位すなわち傾斜させるための二つの固定櫛歯642A,642Bが設けられている。また、可動部620を回転軸622の周りに回転変位すなわち傾斜させるための二つの固定櫛歯646A,646Bが設けられている。固定櫛歯642A,642B,646A,646Bはこれに限らないが、たとえばシリコンで構成されている。固定櫛歯642A,642Bは可動櫛歯644A,644Bに対向し、固定櫛歯646A,646Bは可動櫛歯648A,648Bに対向している。固定櫛歯642A,642Bは電極基板640に投影された回転軸624の直線に対して対称に配置されている。固定櫛歯646A,646Bは電極基板640に投影された回転軸622の直線に対して対称に配置されている。
ミラーユニット610と電極基板640は、固定櫛歯642A,642Bが可動櫛歯644A,644Bに対向するように配置され、さらに固定櫛歯646A,646Bが可動櫛歯648A,648Bに対向するように配置され、スペーサー628が電極基板640に接合されている。その結果、可動部620の正面方向から見て、固定櫛歯642A,642Bは可動部620と重ならない位置に配置され、固定櫛歯646A,646Bは可動支持部616と重ならない位置に配置されている。ここで、可動部620の正面方向とは、無偏向時の可動部620のミラー面626に垂直な方向を意味している。
このような光偏向器600において、可動部620は次のようにして駆動される。
可動部620を回転軸624の周りに回転変位すなわち傾斜させるには、可動櫛歯644A,644Bを接地電位に保ち、回転軸624に対して片方の側に位置する固定櫛歯、たとえば固定櫛歯642Aに電圧を印加する。電圧が印加された固定櫛歯642Aと可動櫛歯644Aの間に静電引力が発生する。発生する力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動部620は電圧が印加されている固定櫛歯642Aに対向している側が電極基板640に引き寄せられ、電圧が印加されて印加されていない固定櫛歯642Bに対向している側が電極基板640から遠ざかる。その結果、複合トーションバー618がねじり変形を起こし、可動部620が印加電圧の大きさに依存して回転軸624の周りに回転変位すなわち傾斜される。
可動部620を回転軸622の周りに回転変位すなわち傾斜させるには、可動櫛歯648A,648Bを接地電位に保ち、回転軸622に対して片方の側に位置する固定櫛歯646Aに電圧を印加する。電圧が印加された固定櫛歯646Aと可動櫛歯648Aの間に静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動支持部616は電圧が印加されている固定櫛歯646Aに対向している側が電極基板640に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定櫛歯646Bに対向している側が電極基板640から遠ざかる。可動支持部616と固定部612を連結している複合トーションバー614はねじり変形を起こし、可動支持部616は印加電圧の大きさに依存して回転軸622の周りに回転変位すなわち傾斜される。その結果、可動支持部616と複合トーションバー618で連結されている可動部620も可動支持部616と複合トーションバー618と共に回転軸622の周りに回転変位すなわち傾斜される。
この変形例の光偏向器では、電圧を印加する固定櫛歯642A,642B,646A,646Bの選択と印加する電圧の大きさを制御することによって、可動部620を互いに直交する二本の回転軸622、624の周りに回転変位すなわち傾斜させることができ、従って、ミラー面626によって反射される光を二次元的に変更することができる。
この変形例の光偏向器においても、第三の変形例と同様な効果が得られる。
また、この変形例で説明した各構成は、第二の変形例に記載した各種の変形や変更が可能である。
<第一の実施形態の第六の変形例>
図20を参照しながら第一の実施形態の第六の変形例の光偏向器について説明する。図20は、第一の実施形態の第六の変形例の光偏向器の斜視図である。
光偏向器700は、ミラーユニット510’と電極基板540’を備えている。
ミラーユニット510’は、第一の実施形態の第四の変形例のミラーユニット510に類似しており、ミラーユニット510から可動櫛歯548A,548Bを省いた構成となっている。
電極基板540’は、第一の実施形態の第四の変形例の電極基板540に類似しており、電極基板540の固定櫛歯546A,546Bに代えて固定電極746A,746Bを備えた構成となっている。
したがって、可動部512、複合トーションバー514、可動支持部516、複合トーションバー518、固定部520、ミラー面526、可動櫛歯544A,544B、固定櫛歯542A,542Bの構成は、第一の実施形態の第四の変形例と同様である。
電極基板540’は、可動部512に対向する面に、可動部512を回転軸522の周りに回転変位すなわち傾斜させるための二つの固定電極746A,746Bが設けられている。固定電極746A,746Bは、これに限らないが、例えば金で構成されている。二つの固定電極746A,746Bは可動部512に対向しており、電極基板540’に投影された回転軸522の直線に対して対称的に配置されている。
ミラーユニット510’と電極基板540’は、固定電極746A,746Bが可動部512に対向するように配置され、さらに可動櫛歯544A,544Bと固定櫛歯542A,542Bが対向するように配置され、スペーサー528が電極基板540’に接合されている。その結果、固定電極746A,746Bは、可動部512の正面方向から見て、可動部512と重なる位置に配置され、可動部512の側面方向から見て、可動部512から間隔をおいて配置されている。また、固定櫛歯542A,542Bは、可動部512の正面方向から見て、可動支持部516と重ならない位置に配置されている。
このような光偏向器700において、可動部512は次のように駆動される。
可動部512を回転軸522の周りに回転変位すなわち傾斜させるには、可動部512を接地電位に保ち、回転軸522に対して片方の側に位置する固定電極、例えば固定電極746Aに電圧を印加する。電圧が印加された固定電極746Aと可動部512の間に静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動部512は電圧が印加されている固定電極746Aに対向している側が電極基板540’に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定電極746Bに対向している側が電極基板540’から遠ざかる。その結果、複合トーションバー514がねじり変形を起こし、可動部512が印加電圧の大きさに依存して回転軸522の周りに回転変位すなわち傾斜される。
可動部512を回転軸524の周りに回転変位すなわち傾斜させる方法は第一の実施形態の第四の変形例と同様である。
この変形例の光偏向器では電圧を印加する固定櫛歯542A,542B、固定電極746A,746Bの選択と印加する大きさを制御することによって、可動部512を互いに直交する二本の回転軸522、524の周りに回転変位すなわち傾斜させることができ、従ってミラー面526によって反射された光を二次元的に変更することができる。
この変形例の光偏向器において、第三の変形例と同様な効果が得られる。
またこの変形例で説明した各構成は第一の変形例に記載した各種の変形や変更が可能である。
<第一の実施形態の第七の変形例>
図21を参照しながら第一の実施形態の第七の変形例の光偏向器について説明する。図21は、第一の実施形態の第七の変形例の光偏向器の斜視図である。
光偏向器800は、ミラーユニット610’と電極基板640’を備えている。
ミラーユニット610’は、第一の実施形態の第五の変形例のミラーユニット610に類似しており、ミラーユニット610から可動櫛歯644A,644Bを省いた構成となっている。
電極基板640’は、第一の実施形態の第五の変形例の電極基板640に類似しており、電極基板640の固定櫛歯642A,642Bに代えて固定電極842A,842B,842C,842Dを備えた構成となっている。
したがって、固定部612、複合トーションバー614、可動支持部616、複合トーションバー618、可動部620、ミラー面626、可動櫛歯648A,648B、固定櫛歯646A,646Bの構成は、第一の実施形態の第五の変形例と同様である。
電極基板640’は、可動部620に対向する面に、可動部620を回転軸624の周りに回転変位すなわち傾斜させるための四つの固定電極842A,842B,842C,842Dが設けられている。固定電極842A,842B,842C,842Dは、これに限らないが、例えば金で構成されている。固定電極842A,842Bは可動部620の一方の端部620aに対向し、固定電極842C,842Dは可動部620の他方の端部620bに対向している。固定電極842A,842Bと固定電極842C,842Dは電極基板640’に投影された回転軸622の直線に対して対称に配置されている。固定電極842A,842Cと固定電極842B,842Dは電極基板640’に投影された回転軸624の直線に対して対称に配置されている。
ミラーユニット610’と電極基板640’は、固定電極842A,842Bが可動部620の端部620aに対向し、固定電極842C,842Dが可動部620の端部620bに対向するように配置され、さらに可動櫛歯648A,648Bと固定櫛歯646A,646Bが対向するように配置され、スペーサー628が電極基板640’に接合されている。その結果、固定電極842A,842B,842C,842Dは、可動部620の正面方向から見て、可動部620と重なる位置に配置され、可動部620の側面方向から見て、可動部620から間隔をおいて配置されている。また、固定櫛歯646A,646Bは、可動部620の正面方向から見て、可動支持部616と重ならない位置に配置されている。
このような光偏向器800において、可動部620は次のようにして駆動される。
可動部620を回転軸622の周りに回転変位すなわち傾斜させる方法は、第一の実施形態の第五の変形例と同様である。
可動部620を回転軸624の周りに回転変位すなわち傾斜させるには、可動部620を接地電位に保ち、回転軸624に対して片方の側に位置する固定電極842A,842Cに同一電圧を印加する。電圧が印加された固定電極842A,842Cと可動部620の間に静電引力が発生する。発生する静電引力の大きさは、印加電圧の大きさに依存する。可動部620は電圧が印加されている固定電極842A,842Cに対向している側が電極基板640’に引き寄せられ、電圧が印加されていない固定電極842B,842Dに対向している側が電極基板640’から遠ざかる。その結果、複合トーションバー618がねじり変形を起こし、可動部620が回転軸624の周りに回転変位すなわち傾斜される。
この変形例の光偏向器では、電圧を印加する固定電極842A,842B,842C,842D、固定櫛歯646A,646Bの選択と印加する電圧の大きさを制御することによって、可動部620を、互いに直交する二本の回転軸622、624の周りに回転変位すなわち傾斜させることができ、従ってミラー面626によって反射される光を二次元的に偏向することができる。
この変形例の光偏向器において、第三の変形例と同様な効果が得られる。
また、この変形例で説明した各構成は、第二の変形例に記載した各種の変形や変更が可能である。
<第二の実施形態>
次に図22を参照しながら第二の実施形態について説明する。この第二の実施形態は、第一の実施形態の複合トーションバーに代えて適用可能な別の複合トーションバーに向けられている。図22は、第二の実施形態による一つの複合トーションバーの平面図である。
図22に示すように、複合トーションバーは、奇数の複数のトーションバー2TB1〜2TB11と複数の連結バー2CB1〜2CB10で構成されている。トーションバー2TB1〜2TB11は、互いに平行に延びている。連結バー2CB1〜2CB10は、それぞれ、隣接する各二つのトーションバー2TB1〜2TB11の一端を互いに連結している。すなわち、連結バー2CBn(nは1以上10以下の自然数)は、二つのトーションバー2TBnと2TBn+1の一端を互いに連結している。最も外側に位置する二つのトーションバー2TB1と2TB11の他端すなわち連結バー2CB1と2CB10と連結されていない一端は、それぞれ、可動部112と固定部116に連結されている。トーションバー2TB1〜2TB11と連結バー2CB1〜2CB10は、たとえばシリコンで一体的に形成され得る。
トーションバー2TB1〜2TB11は、整列方向に関して、回転軸118を中心にして対称的に配置されている。すなわち、トーションバー2TB1〜2TB5とトーションバー2TB11〜2TB7はそれぞれ、回転軸118上に位置する2TB6を中心にして対称的に配置されている。複数のトーションバー2TB1〜2TB11は、回転軸118に近いものよりも回転軸118から遠いものの方が高いねじり剛性を有している。
トーションバー2TB1〜2TB11は、回転軸118に平行に延びており、回転軸118に垂直な方向に整列している。連結バー2CB1〜2CB10は、トーションバー2TB1〜2TB11の整列方向に延びている。ここで、「平行」および「垂直」との用語は、厳密にそのようであることに限定されるものではなく、この分野において常識的な判断によってそのように見なせる範囲を許容する。たとえば、平行は0±3度の範囲内、垂直は90±3度の範囲内であってよい。
トーションバー2TB1〜2TB11と連結バー2CB1〜2CB10はいずれも同じ厚さtを有している。中央すなわち回転軸118上に位置するトーションバー2TB6は2W1の幅を有し、その両側に位置するトーションバー2TB5と2TB7は2W2の幅を有し、その外側に位置するトーションバー2TB4と2TB8は2W3の幅を有し、その外側に位置するトーションバー2TB3と2TB9は2W4の幅を有し、その外側に位置するトーションバー2TB2と2TB10は2W5の幅を有し、その外側に位置するトーションバー2TB1と2TB11は2W6の幅を有し、2W1<2W2<2W3<2W4<2W5<2W6である。すなわち、トーションバー2TB1〜2TB11は、回転軸118から遠いものほど高いねじり剛性を有している。
第一の実施形態の光偏向器では、可動部112の回転変位すなわち傾斜が極端に大きくなった場合に、細いトーションバーの領域と太いトーションバーの領域の境界に応力が集中して破損する可能性がある。図10に示したように、従来型の複合トーションバーを使用した解析結果からわかるように、可動部112が固定電極方向に移動した場合の応力分布は、回転軸118から離れるに従って大きくなっている。この実施形態では、トーションバー2TB1〜2TB11は、この応力分布に合わせて回転軸118から離れるに従って段階的に太くなるように、たとえば幅が広くなるように形成されている。この構成により、応力集中が起こり難くなり、破損し難い光偏向器が提供される。
これまでに説明した第二の実施形態の各構成は、各種の変形や変更が可能である。たとえば、可動部と複合トーションバーはシリコンで構成したが、ポリシリコンや酸化シリコンや窒化シリコン膜などで構成してもよい。この第二の実施形態では、トーションバーの幅を回転軸に近い部分と回転軸から遠い部分とで変えることによってミラー面垂直方向の剛性を向上させているが、トーションバーの厚さを回転軸に近い部分と回転軸から遠い部分とで変えることによっても同様の効果が得られる。ただし、トーションバーの厚さを部分的に変えるには作製方法が複雑になる。また、この第二の実施形態の構成では、トーションバーの厚さを調整するよりもトーションバーの幅を調整する方がねじり剛性を調整しやすい。従って、作製方法がより簡単で、厚さに比べて容易におこなえる幅の調整によってトーションバーのねじり剛性を向上させる方が好ましい。
平行平板型静電駆動の場合、可動部が固定電極に近づくと静電引力が大きくなり、可動部が垂直方向に大きく移動してしまう。このため、この実施形態は、平行平板型静電駆動型に特に有効であり、可動部の垂直方向の移動が効果的に小さく抑えられる。
また、この第二の実施形態では、ミラー面垂直方向の剛性に着目しているが、ミラー面平行方向の剛性も向上している。
<第三の実施形態>
次に図23を参照しながら第三の実施形態について説明する。この第三の実施形態は、第一の実施形態の複合トーションバーに代えて適用可能な別のトーションバーに向けられている。図23は、第三の実施形態による一つの複合トーションバーの平面図である。
図23に示すように、複合トーションバーは、奇数の複数のトーションバー3TB1〜3TB11と複数の連結バー3CB1〜3CB10で構成されている。トーションバー3TB1〜3TB11は、互いに平行に延びている。連結バー3CB1〜3CB10は、それぞれ、隣接する各二つのトーションバー3TB1〜3TB11の一端を互いに連結している。すなわち、連結バー3CBn(nは1以上10以下の自然数)は、二つのトーションバー3TBnと3TBn+1の一端を互いに連結している。最も外側に位置する二つのトーションバー3TB1と3TB11の他端すなわち連結バー3CB1と3CB10と連結されていない一端は、それぞれ、可動部112と固定部116に連結されている。トーションバー3TB1〜3TB11と連結バー3CB1〜3CB10は、たとえばシリコンで一体的に形成され得る。
トーションバー3TB1〜3TB11は、整列方向に関して、回転軸118を中心にして対称的に配置されている。すなわち、トーションバー3TB1〜3TB5とトーションバー3TB11〜3TB7はそれぞれ、回転軸118上に位置する3TB6を中心にして対称的に配置されている。複数のトーションバー3TB1〜3TB11は、回転軸118に近いものよりも回転軸118から遠いものの方が高いねじり剛性を有している。
トーションバー3TB1〜3TB11は、回転軸118に平行に延びており、回転軸118に垂直な方向に整列している。連結バー3CB1〜3CB10は、トーションバー3TB1〜3TB11の整列方向に延びている。ここで、「平行」および「垂直」との用語は、厳密にそのようであることに限定されるものではなく、この分野において常識的な判断によってそのように見なせる範囲を許容する。たとえば、平行は0±3度の範囲内、垂直は90±3度の範囲内であってよい。
トーションバー3TB1〜3TB11と連結バー3CB1〜3CB10はいずれも同じ厚さtを有している。中央部に位置するトーションバー3TB5〜3TB7は3W1の幅を有し、その両側に位置するトーションバー3TB3,3TB4と3TB8,3TB9は3W2の幅を有し、その外側に位置するトーションバー3TB1,3TB2と3TB10,3TB11は3W3の幅を有し、3W1<3W2<3W3である。
各複合トーションバーは、トーションバー3TB1〜3TB11の幅の違いにしたがって分けられた、トーションバー3TB1〜3TB11の整列方向に並んだ五つの領域を有している。五つの領域は、中央に位置する中央領域または第一の領域と、中央領域の両側に対称的に配置された一対の第一の側方領域または第二および第三の領域と、第一の側方領域の外側に対称的に配置された一対の第二の側方領域または第四および第五の領域とからなる。中央領域または第一の領域はトーションバー3TB5〜3TB7を含んでおり、一方の第一の側方領域または第二の領域はトーションバー3TB3,3TB4を含んでおり、他方の第一の側方領域または第三の領域はトーションバー3TB8,3TB9を含んでおり、一方の第二の側方領域または第四の領域はトーションバー3TB1,3TB2を含んでおり、他方の第二の側方領域または第五の領域はトーションバー3TB10,3TB11を含んでいる。各領域内のトーションバー3TB1,3TB2・3TB3,3TB4・3TB5〜3TB7・3TB8,3TB9・3TB10,3TB11はそれぞれ互いに等しいねじり剛性を有している。中央領域内のトーションバー3TB5〜3TB7が最も低いねじり剛性を有し、中央領域から遠い領域内のトーションバー3TB1,3TB2・3TB3,3TB4・3TB8,3TB9・3TB10,3TB11ほど高いねじり剛性を有している。言い換えれば、各複合トーションバーのトーションバー3TB1〜3TB11のねじり剛性は、トーションバー3TB1〜3TB11の整列方向に離散的な分布を有している。
この第三の実施形態では、複合トーションバーが五つの領域を有し、中央領域の両側の四つの領域内のトーションバーの太さ、たとえば幅が領域ごとに段階的に低減されている。これは、第一の実施形態の複合トーションバーにおける第二および第三の領域内にトーションバーの幅を細くしたことに相当する。このため、この第三の実施形態による複合トーションバーは、第一の実施形態の複合トーションバーと比較して全長を短く構成し得る。従って、光偏向器において複合トーションバーが占める領域が低減され、光偏向器の小型化に貢献する。
これまでに説明した第三の実施形態の各構成は、各種の変形や変更が可能である。たとえば、可動部と複合トーションバーはシリコンで構成したが、ポリシリコンや酸化シリコンや窒化シリコン膜などで構成してもよい。この第三の実施形態では、トーションバーの幅を回転軸に近い部分と回転軸から遠い部分とで変えることによって、ミラー面垂直方向の剛性を向上させているが、トーションバーの厚さを回転軸に近い部分と回転軸から遠い部分とで変えることによっても同様の効果が得られる。ただし、トーションバーの厚さを部分的に変えるには作製方法が複雑になる。また、この第三の実施形態の構成では、トーションバーの厚さを調整するよりもトーションバーの幅を調整する方がねじり剛性を調整しやすい。従って、作製方法がより簡単で、厚さに比べて容易におこなえる幅の調整によってトーションバーのねじり剛性を向上させる方が好ましい。
平行平板型静電駆動の場合、可動部が固定電極に近づくと静電引力が大きくなり、可動部が垂直方向に大きく移動してしまう。このため、この実施形態は、平行平板型静電駆動型に特に有効であり、可動部の垂直方向の移動が効果的に小さく抑えられる。
また、この第三の実施形態では、ミラー面垂直方向の剛性に着目しているが、ミラー面平行方向の剛性も向上している。
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。
複合トーションバーは、第一の実施形態では三つの領域を有し、第三の実施形態では五つの領域を有しているが、これらの領域に限定されるものではなく、さらに多くの奇数の領域を有していてもよい。すなわち、複合トーションバーは、複数のトーションバーの整列方向に並んだ奇数の複数の領域を有し、奇数の複数の領域は、中央に位置する中央領域と、中央領域の両側に対称的に配置された複数対の側方領域からなり、各領域内のトーションバーはそれぞれ互いに等しいねじり剛性を有し、中央領域内のトーションバーが最も低いねじり剛性を有し、中央領域から遠い領域内のトーションバーほど高いねじり剛性を有していればよい。