JP5774945B2 - メカニカルシール - Google Patents
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Description
図4に示すように、上記メカニカルシールにおいて、分割型の静止密封環100は、ケーシング(図示省略)に固定されたスプリングリテーナ101に固定されており、その一端面100aが回転密封環102のシール面102aに摺動可能に接触している。また、静止密封環100は、外周面100bがケーシング側に向かって漸次拡径するテーパ面とされている。
押さえ板104は、静止密封環100の外周面100bに当接した当接面104aを有している。当接面104aは、ケーシング側に向かって漸次拡径するテーパ面とされている静止密封環100の外周面100bに当接しているので、押さえ板104がリテーナ本体103に近づくように軸線方向に締め付けられることで、静止密封環100には、縮径される方向の力が作用するとともに、フランジ部103aに押し付けられる方向の力が作用する。
これによって、静止密封環100は、フランジ部103aに押し付けられるとともに、各分割体が突き合わされている突き合わせ面が互いに押圧された状態で、リテーナ本体103と押さえ板104との間で挟持される(例えば、特許文献1参照)。
また、押さえ板104の締め付けが不十分であると、静止密封環100に作用する縮径される方向の力が弱くなるので、上記同様に各分割体の突き合わせ面にすき間が生じ、密封性を低下させることがあった。
さらに、押さえ部材の締め付けによって互いに押圧し合う、前記フランジ部に形成されたテーパ面と、静止密封環の背面に形成されたテーパ面との間には、これらの間を密封する環状のシール部材が配置されているので、仮に、隣接する分割体の間で軸方向に位置ずれが生じて、静止密封環のテーパ面に段差が生じたとしても、前記段差に起因して静止密封環の背面側にすき間が生じるのを、弾性材料からなるシール部材によって防止することができる。また、フランジ部のテーパ面と、静止密封環のテーパ面とは、静止密封環を付勢したときに回転密封環から静止密封環に作用する反力によっても互いに押圧し合うので、経時変化によって、押さえ部材の締め付けが低下したとしても、静止密封環を付勢したときの反力によって、シール部材を両面間で押圧保持することができ、当該シール部材の密封性が低下するのを防止できる。
以上のように、本発明のメカニカルシールによれば、分割型の静止密封環において、各分割体の間にすき間が生じるのを確実に防止するとともに、静止密封環の背面とリテーナとの間にすき間が生じるのを確実に防止することができるので、長期に亘って高い密封性を維持することができる。
この場合、静止密封環を軸方向に反転させ、背面側を静止側シール面として使用することができる。このため、何らかの原因により静止側シール面が使用できなくなったとしても、背面側を静止側シール面として使用するといった応急的対応が可能になる。
図1中、メカニカルシール1は、上下水道等の水処理施設に用いられるポンプに装着されており、当該ポンプのポンプケースCと、ポンプケースCの開口c1を貫通して配置されているポンプ軸Sとの間のすき間を密封している。
上記メカニカルシール1は、回転軸としてのポンプ軸Sに一体回転可能に固定された回転密封環2と、回転密封環2のシール面2aが摺動可能に密接した静止密封環3と、この静止密封環3を保持しているスプリングリテーナ4とを備えている。
回転密封環2は、ストッパリング5の軸方向ポンプケースC側に配置されている。回転密封環2のストッパリング5側の端面には、ストッパリング5の端面に突設されたストッパピン7が挿入された孔部2bが形成されている。回転密封環2は、このストッパピン7によってストッパリング5と一体回転可能に連結され、ポンプ軸Sに対して一体回転可能とされている。
回転密封環2の内周側には、当該回転密封環2の内周面とポンプ軸Sの外周面との間をシールするOリング8が配置されている。
また、回転密封環2のシール面2aは、静止密封環3よりも硬質な素材、例えばアルミナ等のセラミックスを溶射等によって回転密封環2の端面に形成した環状の硬質層9を端面側に露出させることによって構成されている。
スプリングリテーナ4は、リテーナ本体11と、環状の押さえ板12とを備えている。リテーナ本体11は、ポンプ軸Sの外周側に配置されるとともにポンプケースCの開口c1に挿入された筒状部11aと、この筒状部11aのポンプケースCの軸方向外側に位置する端部から径外方向に延び、押さえ板12との間で静止密封環3を保持している環状のフランジ部11bとを有している。
リテーナ本体11の筒状部11aは、上記スリーブ13を介在して開口c1において軸方向移動可能に挿入されている。また、筒状部11aの外周面側には、筒状部11aの外周面とスリーブ13の内周面とを密封するためのOリング16が配置されている。
図2は、静止密封環3を軸方向正面から見たときの外観図である。図2に示すように、静止密封環3は、2つの円弧状の分割体3bを環状に組み合わせて構成されている。
静止密封環3は、上記二つの分割体3bを環状に組み合わせた状態で、スプリングリテーナ4に保持され、回転密封環2に密接した状態で、当該回転密封環2に向けて付勢されている。
これら外側テーパ面3c及び内側テーパ面3dは、両側で共にほぼ同一の寸法で形成されている。このため、静止密封環3は、軸方向に沿う断面(長手方向の切断面)における輪郭形状が、当該静止密封環3を軸方向に二分する中心線に対してほぼ線対称となる形状に形成されている。
静止密封環3における、シール面3a側の外側テーパ面3cと内側テーパ面3dとが繋がる先端部は、当該静止密封環3を形成した時点では、先鋭な状態であり、シール面2aに対して面接触しうるシール面3aは形成されていない。静止密封環3は、メカニカルシールとして使用される前に、メカニカルシール1に組み込まれた状態で、回転密封環2のシール面2aに対して、通常付勢される所定圧力よりも高い圧力で押し付けて当たりを付け(焼付け工程を実施し)、シール面3aを形成する。これによって、静止密封環3を構成している分割体3b同士の突き合わせ部分に段差等が生じていたとしても、焼付け後には段差の無い平坦なシール面3aが形成される。但し、焼付け後も、外側テーパ面3c及び内側テーパ面3dの内、シール面3a以外の焼付けられていない他の部分には、段差が残存していることがある。
一方、静止密封環3における、シール面3aと軸方向反対側の背面に形成された外側テーパ面3cには、フランジ部11bのテーパ面11b2が当接している。
テーパ面11b2は、回転密封環2に向かって漸次拡径するように傾斜してフランジ部11bに形成されている。
静止密封環3の背面側の外側テーパ面3cは、フランジ部11bのテーパ面11b2に一致して当接可能に形成されている。
このOリング30は、ブチルゴム等の弾性材料を用いて形成されており、背面側の外側テーパ面3cに形成された環状溝31に配置されている。環状溝31は、シール面3aと径方向においてほぼ一致する位置に設けられている。よって、この環状溝31に配置されるOリング30も、同様の位置に配置されている。
以上のように、本実施形態のメカニカルシール1によれば、分割型の静止密封環3において、各分割体3bの間に生じるすき間を確実に防止でき、高い密封性を長期に亘って維持することができる。
また、上記実施形態の静止密封環3は、軸方向に沿う断面における輪郭形状が、当該静止密封環3を軸方向に二分する中心線に対してほぼ線対称となる形状に形成した場合を例示したが、これに限定されるものではなく、静止密封環3のシール面3a側の形状は、背面側の形状に関わらず設定することができる。
2 回転密封環
2a シール面
3 静止密封環
3a シール面
3b 分割体
3c 外側テーパ面
3d 内側テーパ面
4 スプリングリテーナ
10 スプリング
11 リテーナ本体
11a 筒状部
11b フランジ部
11b1 孔部
11b2 テーパ面
12 押さえ板(押さえ部材)
30 Oリング
C ポンプケース(ケーシング)
S ポンプ軸(回転軸)
Claims (3)
- 回転軸に一体回転可能に固定された回転密封環と、
前記回転密封環と同心に配置され、当該回転密封環の回転側シール面が摺動可能に密接した静止側シール面を有するとともに、複数の円弧状の分割体を環状に組み合わせてなる静止密封環と、
前記静止密封環を保持するとともに前記静止密封環を前記回転密封環に向けて付勢するための弾性部材を保持し、前記静止密封環とともに前記回転密封環に向けて付勢されている環状のリテーナと、を備え、
前記リテーナは、ケーシングに固定されるとともに前記静止密封環が当接しているフランジ部を有するリテーナ本体と、前記静止側シール面側から前記静止密封環を前記フランジ部に向けて締め付け挟持することで当該静止密封環を保持している環状の押さえ部材と、を備え、
前記静止密封環は、前記静止側シール面に対して軸方向反対側の背面が前記フランジ部に当接しており、
前記回転軸と、前記ケーシングとのすき間を密封するメカニカルシールにおいて、
前記フランジ部には、前記静止密封環が当接するとともに、前記回転密封環に向かって漸次拡径するように傾斜するテーパ面が形成されており、
前記静止密封環の前記背面には、前記フランジ部のテーパ面に一致して当接可能なテーパ面が形成されており、
前記フランジ部に形成されたテーパ面と、前記背面に形成されたテーパ面との間には、これらの間を密封する弾性材料からなる環状のシール部材が配置されていることを特徴とするメカニカルシール。 - 前記静止密封環は、その軸方向に沿う断面が、当該静止密封環を軸方向に二分する中心線に対して線対称となる形状に形成されている請求項1に記載のメカニカルシール。
- 前記シール部材は、前記静止側シール面と径方向においてほぼ一致する位置に設けられている請求項1に記載のメカニカルシール。
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