JP5774928B2 - アクリル酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アクリル酸の製造方法に関する。詳しくは、アクリル酸の製造において、アクリル酸を貯蔵する際、アクリル酸を濾過する操作を含むアクリル酸の製造方法に関する。
アクリル酸は、非常に重合し易い物質であり、アクリル酸の製造時の重合防止に関して様々な方法が実施されている。その殆どは、安定剤の添加による重合防止に関するものである。しかし、製造工程において、安定剤を添加することによって、装置の運転上、支障のない程度に重合を防止することはできるが、完全に重合を防止することはできず、その結果アクリル酸中には微量の重合物が存在する。これらの重合物の存在は、安定剤が十分に存在していても、重合を引き起こす要因となる。
従って、アクリル酸の製造においては、この重合物を除去することが重要であり、この重合物の除去方法についてはいくつか開示がある(例えば、特許文献1〜3参照)。例えば、特許文献1では、結晶化工程に供するアクリル酸粗製溶融物をフィルタ材料で濾過することにより、高分子量ではないが粘着性のポリマーを除いている。特許文献2では、アクリル酸の懸濁結晶化を行った母液又は懸濁結晶を、再び結晶化に供する際にフィルタ材料で濾過することにより、粘着性のポリマーを除いている。特許文献3では、蒸留塔、精留塔等の処理塔外の循環経路において、ストレーナ等で濾過を行って固形不純物を除去している。
しかし、特許文献1〜3記載の方法のように、アクリル酸の製造プロセスにおいて重合物を取り除いているのにも関らず、精製したアクリル酸を貯蔵タンクにて保管していると、時間が経つにつれ精製アクリル酸中に重合物の存在量の増大が見られ、精製アクリル酸の純度が低下するという問題が起きていた。また、上記のような精製前に濾過する方法では、精製工程前に、貯蔵タンクにて粗アクリル酸を保管することがあるが、保管中に重合物の量が増え、精製工程前に濾過処理を行った場合には、フィルタが重合物により頻繁に目詰まりを起こすという問題が起きていた。
特表2004−528370号公報 特表2004−528371号公報 特開2001−129388号公報
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、アクリル酸の製造工程において、アクリル酸を貯蔵タンクにて保管している間の重合物の生成を抑えた製造方法を提供することにある。特に、本発明が解決しようとする課題は、蒸留、晶析等の精製工程を経たものであるにも関わらず、アクリル酸の純度が低下するといった問題の少ない、アクリル酸の製造方法を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、アクリル酸溶液を結晶化工程に供する際に濾過処理を行っても、溶解している重合物は除去することができず、その結果、結晶化工程で精製されるにつれ重合物が析出し、さらには、結晶化工程中にも新たに重合物が生成するため、精製アクリル酸中には、わずかではあるが重合物が存在することがわかった。また、蒸留工程で精製する場合でも、通常精製アクリル酸は、蒸留塔の原料供給部より上部(塔頂部側)より得られることが一般的であるが、この場合においても、コンデンサー部等で生成したアクリル酸重合物が精製アクリル酸に混入することがあることがわかった。
このように貯蔵タンクに供給されるアクリル酸中に重合物が存在した場合は、当該重合物がさらなる重合物の生成を助長するものであるところ、本発明者らがさらに鋭意検討した結果、貯蔵タンクに保管する際に粗アクリル酸及び/又は精製アクリル酸を濾過することにより、貯蔵タンクに供給されるアクリル酸中の重合物を除くことができ、さらに、当該濾過を特定温度条件下で行えば、アクリル酸中に溶解している重合物を十分に析出させて十分に除くことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、貯蔵タンクにてアクリル酸を貯蔵する工程を含むアクリル酸の製造方法において、アクリル酸を50質量%以上含むプロセス液を貯蔵タンクに供給する際に、15〜70℃で、少なくとも1回の濾過操作を行うことを特徴とするアクリル酸の製造方法である。当該製造方法は、下記(a)〜(c)の工程を含むことが好ましい。
(a)アクリル酸原料の接触気相酸化反応工程
(b)工程(a)で得られたアクリル酸含有ガスの溶剤への捕集及び/又は凝縮工程
(c)上記(b)工程に続く、蒸留及び/又は結晶化工程
また、上記アクリル酸を50質量%以上含むプロセス液が、捕集塔の塔底流及び/又は精製アクリル酸であることが本発明の好ましい態様であり、当該精製アクリル酸は、捕集塔、凝縮塔及び/又は蒸留塔の、塔底流及び/又は塔側流として得られたアクリル酸を蒸留及び/又は結晶化工程で精製して得られるアクリル酸であることが好ましい。
本発明によれば、アクリル酸の製造工程において、アクリル酸を貯蔵タンクにて保管する際の重合物の生成を抑えることができる。精製工程前にアクリル酸を貯蔵タンクに供する際に濾過する場合では、貯蔵中の重合物の生成を抑えることができ、それにより例えば、精製工程前濾過に使用されるフィルタの交換頻度を下げることができる。あるいは、精製工程に混入する重合物の量を減らすことができ、生産効率を向上させることができる。また、精製工程後のアクリル酸を貯蔵タンクに供する際に濾過する場合では、最終製品となるアクリル酸を長時間安定に保管することができる。よって、純度の低下が起こりにくい、すなわち安定性の高いアクリル酸を製品として提供することができる。
本発明は、貯蔵タンクにてアクリル酸を貯蔵する工程を含むアクリル酸の製造方法において、アクリル酸を50質量%以上含むプロセス液を貯蔵タンクに供給する際に、15〜70℃、好ましくは15〜50℃で、少なくとも1回の濾過操作を行うことを特徴とするアクリル酸の製造方法である。
アクリル酸の製造おいて、精製工程に供する粗アクリル酸を貯蔵タンクにおいて保管したり、精製後のアクリル酸を、出荷に備え、又は移送のために貯蔵タンクにおいて保管することがある。本発明は、そのような、貯蔵タンクにてアクリル酸を貯蔵する工程を含むアクリル酸の製造方法を対象としている。
アクリル酸を50質量%以上含むプロセス液は、アクリル酸の製造工程におけるプロセス液であって、アクリル酸を50質量%以上含むものであれば特に制限はない。当該プロセス液の含むアクリル酸量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。アクリル酸の含有量が50質量%未満と低濃度であるプロセス液は、貯蔵タンク保管中の重合物の生成量がごくわずかであり、重合物の生成が問題となることは殆どなく、アクリル酸を50質量%以上含むプロセス液に対して本発明の効果が十分に発揮される。
当該プロセス液の例としては、接触気相酸化反応で得られたアクリル酸含有ガスを凝縮して得られるアクリル酸溶液、接触気相酸化反応で得られたアクリル酸含有ガスを溶剤〔例、水、有機酸含有水、高沸点の不活性疎水性有機液体(例、ジフェニルエーテル、ジフェニル等)〕で捕集して得られるアクリル酸溶液、精製工程を完了した精製アクリル酸等が挙げられる。より具体的には、捕集塔、凝縮塔、蒸留塔等の、塔底流又は塔側流など、さらにこれら塔底流又は塔側流を蒸留及び/又は結晶化工程で精製して得られるアクリル酸などである。当該プロセス液としては好ましくは、精製アクリル酸であり、その好ましい具体例としては、捕集塔、凝縮塔及び/又は蒸留塔の、塔底流及び/又は塔側流として得られたアクリル酸を蒸留及び/又は結晶化工程で精製して得られるアクリル酸である。
プロセス液中のアクリル酸以外の成分としては、接触気相酸化反応により副生する成分(例、水、酢酸、マレイン酸、アルデヒド類、アクリル酸重合物等)、上記のアクリル酸含有ガスを捕集するための溶剤等が挙げられる。
本発明の方法は、結晶化により精製する場合には、結晶化工程に供されるアクリル酸中に、水が0.5質量%以上、さらには1質量%以上、さらにまた1.5質量%以上含まれる場合、あるいは、水の含有量が0.3質量%以下、さらには0.2質量%以下、さらにまた0.1質量%以下の精製アクリル酸を得る場合に特に有用である。アクリル酸重合物は、水への溶解度が高く、結晶化工程前に濾過しても溶解している重合物は除去することができず、結晶化工程で水が分離され水濃度が低下すると、精製アクリル酸中に析出してくるからである。
プロセス液は、重合禁止剤、安定剤等を含んでいてもよい。アクリル酸重合物は、重合禁止剤、安定剤等を含んでいてもなお生成するものである。
本発明の製造方法は、貯蔵タンクでプロセス液を貯蔵する工程を含んでいればよく、その他のアクリル酸の製造工程の種類は問わないが、以下の工程(a)〜(c)を含むことが好ましい。
(a)アクリル酸原料の接触気相酸化反応工程
(b)工程(a)で得られたアクリル酸含有ガスの溶剤への捕集及び/又は凝縮工程
(c)上記(b)工程に続く、蒸留及び/又は結晶化工程
これらの工程(a)〜(c)はすべて周知であり、公知方法(例、特開平09−227445号公報、特開2005−15478号公報等)により実施すればよい。
貯蔵タンクとは、液体を所定期間収容することができる容器のことをいい、例としては、ポリタンク、ドラム缶、コンテナ、タンク状建造物、タンクローリー、タンカー等が挙げられる。
貯蔵タンクでプロセス液を貯蔵する工程の例としては、精製工程前にアクリル酸溶液を貯蔵タンクにて貯蔵する工程、精製工程後のアクリル酸を貯蔵タンクにて貯蔵する工程等が挙げられる。
これらの工程において貯蔵タンクは、工程的な位置として、例えば、捕集塔、凝縮塔及び/又は蒸留塔と、精留塔及び/又は晶析塔との間、あるいは、精留等及び/又は晶析塔の後ろに設置される。
プロセス液の貯蔵タンクでの滞留時間は、貯蔵時のプロセス液の温度にもよるが、0.5時間以上、好ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上である場合に本発明は特に有用である。
本発明は、貯蔵タンクに供給する際にプロセス液の濾過操作を行う。従来方法では、このような濾過は行われていなかった。精製工程前にプロセス液を貯蔵タンクに供する際に濾過する場合では、貯蔵中の重合物の生成を抑えることができ、それにより例えば、精製工程前濾過に使用されるフィルタの交換頻度を下げることができる。あるいは、精製工程に混入する重合物の量を減らすことができ、生産効率を向上させることができる。また、精製工程後のプロセス液を貯蔵タンクに供する際に濾過する場合では、プロセス液を長時間安定に保存することができる。特に、この精製工程後のプロセス液は、最終製品となるアクリル酸であるため、長時間安定に保管できることは極めて重要である。
「貯蔵タンクに供給する際にプロセス液の濾過操作を行う」とは、「プロセス液を貯蔵タンクに実質的に直接送液する際に濾過操作を行う」ことをいう。つまり、本発明では、濾過のためのフィルタ材と、貯蔵タンクの間には、捕集塔、蒸留塔等の設備が介されておらず、当該フィルタ材が、貯蔵タンクに直接つながる送液設備(例、送液ライン等)上に設置された状態でプロセス液の濾過操作が行われる。
濾過操作は、15〜70℃で行われる。濾過に供するプロセス液を70℃以下とするのは、70℃以下の温度ではアクリル酸重合物のプロセス液への溶解度が低くなり、重合物が析出する温度であるためである。また、アクリル酸は重合反応性が高いため、重合物の新たな生成を抑えるためである。一方、アクリル酸の融点は約13℃であるため、アクリル酸の結晶析出による濾過効率の低下を防ぐ観点から15℃以上で行う。濾過操作の好ましい温度としては、15〜60℃であり、より好ましい温度としては、15〜50℃である。なお、貯蔵タンクに供するプロセス液の温度が70℃より高い場合には、熱交換器等で冷却すればよい。
濾過操作において、プロセス液の線速度は、5m/s以下が好ましく、0.0005〜2m/Sがより好ましく、0.001〜1.0m/sが最も好ましい。線速度が5m/sを超えると、析出した重合物がフィルタ材を通過してしまうおそれがある。なお、本発明において線速度は、フィルタ材を通過する溶液量を、フィルタ材の濾過面積で除することにより求めることができる。
フィルタ材としては、特に制限はなく、通常使用されるフィルタ材を用いることができ、例としては、ガラス繊維、金属繊維、ポリエステル、フルオロカーボン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、不織布、織布、濾紙、セラミック等の材質のフィルタが挙げられる。これらのうち、強度、耐酸性、耐アルカリ性等の観点から、ステンレス製の金属繊維、セラミック、ポリプロピレン製のフィルタが好ましい。
フィルタ材のフィルタ径としては、析出するアクリル酸重合物を濾別できるサイズであればよく、0.01〜1000μmの範囲、好ましくは0.1〜500μm、更に好ましくは0.1〜100μmとする。
フィルタは複数段設置してもよく、設置するフィルタ材は、同種でも異種であってもよい。また濾過部の寿命を延命する観点から、目の粗いフィルタから目の細かいフィルタの順に直列に複数種のフィルタを設置してもよい。例えば1段目は100〜1000μm、より好ましくは120〜1000μm、2段目以降は0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜100μm、一層好ましくは1〜80μmとする。さらに、フィルタ交換等に備えてバイパスを設ける場合は、バイパスにおけるフィルタ配置・構成・素材をメインパスのそれと同一にすることが好ましい。
フィルタ材は、使用するにつれ、アクリル酸重合物を捕捉することにより目詰まりを起こしてくるが、当該アクリル酸重合物は、逆洗浄および/または水洗浄、アルカリ洗浄を順次行うことにより、容易に除去することができ、さらに水で洗浄することでフィルタ材を再生することができる。なお、最初の水洗浄時の水洗浄液は、アクリル酸を含んでいるため、アクリル酸の製造工程(例えば捕集工程など)に循環し、アクリル酸を回収してもよい。
プロセス液を貯蔵タンクに供給する際の濾過操作は、製造工程において複数の貯蔵タンクに貯蔵する工程がある場合には、全貯蔵工程において濾過操作を行うことが好ましい。
貯蔵タンク内の液を均一な状態にするためにポンプ等で貯蔵タンク内の液を循環する場合は、循環経路においても濾過操作を行ってもよい。
また、精製工程後のプロセス液を貯蔵タンクから別の貯蔵タンクに移す際(例えば、タンク状建造物からタンクローリー、タンカー等に移す際)は、この際にも上記の方法と同様にして濾過を行ってもよい。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
参考例1(アクリル酸溶液の調製)
特開2005―15478号の実施例1と同様の方法によるプロピレンの接触気相酸化反応によって得られた反応ガスを捕集用水溶液と接触させ、捕集塔の塔底より、アクリル酸90.0質量%、水3.2質量%、酢酸1.9質量%、マレイン酸0.6質量%、アクリル酸二量体1.5質量%、アルデヒド類0.4質量%、ハイドロキノン0.1質量%、その他の不純物2.3質量%の組成をもつアクリル酸溶液を得た。なお、この時の捕集塔底温度、すなわち捕集塔より取り出されるアクリル酸溶液の温度は91℃であった。
実施例1
参考例1で得られたアクリル酸溶液を、熱交換器を用いて70℃に冷却した後、孔径50μmのポリプロピレン製のカートリッジフィルタ(このフィルタをフィルタAとする。)が設置されたラインを通して貯蔵タンクに供給した。
該貯蔵タンクよりアクリル酸溶液を、該貯蔵タンクでのアクリル酸溶液の滞留時間が1時間になるように連続的に抜き出した(精製工程に供給される)。なお、この時、フィルタA部でのアクリル酸溶液の線速度は、0.1m/sであった。
該貯蔵タンクよりアクリル酸溶液が抜き出されるラインに、孔径50μmのポリプロピレン製のカートリッジフィルタ(このフィルタをフィルタBとする。)を設置し、1ヶ月間連続稼動を行ったが、フィルタBでの圧力損失上昇は見られず、また取り出したフィルタB表面にもポリマーなどの付着物は見られなかった。なお、フィルタAでも圧力損失上昇は見られなかったが、取り出したフィルタA表面にはポリマーが付着していた。
比較例1
フィルタAを設置しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。3日間の連続稼動を行った後、フィルタBでの圧力損失が上昇し、貯蔵タンクからのアクリル酸溶液の抜き出しが困難となった。取り出したフィルタB表面にはポリマーが付着し、大部分が閉塞していた。
比較例2
捕集塔より取り出されるアクリル酸溶液を、熱交換器を用いて80℃に冷却した以外は、実施例1と同様の操作を行った。4日間の連続稼動を行った後、フィルタBでの圧力損失が上昇し、貯蔵タンクからのアクリル酸溶液の抜き出しが困難となった。取り出したフィルタB表面にはポリマーが付着し、大部分が閉塞していた。また、フィルタAでは圧力損失上昇は見られなかった。
実施例2
参考例1の方法と同様にしてアクリル酸溶液を得、貯蔵タンクを経由することなく直接晶析装置に供給し、4回の動的結晶化工程により精製した。動的結晶化は、特公昭53−41637号公報に記載される晶析装置に準じた晶析精製装置で行った。すなわち、下部に貯蔵器を備えた、長さ6m、内径70mmの金属管で、循環ポンプにより貯蔵器中の液体を管上部へ移送し、液体を管内壁面に落下皮膜(falling film)状に流すことができるようになっている装置である。管の表面は二重のジャケットから構成され、このジャケットは、サーモスタットである一定の温度になるように制御されている。1回の動的結晶化は以下の手順で行った。
1)結晶化:貯蔵器にアクリル酸を供給し、循環ポンプにより管壁面に落下皮膜状に流し、ジャケットの温度を凝固点以下に下降させ、約60〜90質量%を壁面に結晶化させた。
2)発汗:循環ポンプを停止させ、ジャケットの温度を凝固点付近まで上昇させ、約2〜20%を発汗させた。発汗後、残留溶融液をポンプで汲み出した。
3)融解:ジャケットの温度を凝固点以上に上昇させ、結晶を融解し、ポンプで汲み出した。
以上の操作において、温度、および凝固点は実施されるそれぞれの工程に依存させた。
これにより、99.93質量%の純度を有する精製アクリル酸を得た。この時の精製アクリル酸のその他の成分の組成は、水100質量ppm、酢酸475質量ppm、マレイン酸2質量ppm、アクリル酸二量体30質量ppm、アルデヒド類0.4質量ppmであった。
該精製アクリル酸に、安定剤としてメトキノンを200質量ppmとなるように添加し、熱交換器を用いて25℃に調整した後、孔径1μmのポリプロピレン製のカートリッジフィルタ(このフィルタをフィルタCとする。)が設置されたラインを通して貯蔵タンクに供給した。該貯蔵タンクより精製アクリル酸を、該貯蔵タンクでの精製アクリル酸の滞留時間が3時間になるように連続的に抜き出した(製品タンクに供給される)。なお、この時、フィルタC部での精製アクリル酸の線速度は、0.01m/sであった。
該貯蔵タンクより精製アクリル酸が抜き出されるラインに、孔径1μmのポリプロピレン製のカートリッジフィルタ(このフィルタをフィルタDとする。)を設置し、1ヶ月間連続稼動を行ったが、フィルタDでの圧力損失上昇は見られず、また取り出したフィルタD表面にもポリマーなどの付着物は見られなかった。なお、フィルタCでも圧力損失上昇は見られなかったが、取り出したフィルタC表面にはポリマーが付着していた。
このポリマーは、水で洗浄後、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄することにより除去することができた。
比較例3
フィルタCを設置しなかった以外は、実施例2と同様の操作を行った。4日間の連続稼動を行った後、フィルタDでの圧力損失が上昇し、貯蔵タンクからの精製アクリル酸の抜き出しが困難となった。取り出したフィルタD表面にはポリマーが付着し、大部分が閉塞していた。
比較例4
アクリル酸溶液を晶析装置に供給するラインに孔径1μmのフィルタEを設置し、かつフィルタCを設置しなかった以外は、実施例2と同様の操作を行った。7日間の連続稼動を行った後、フィルタDでの圧力損失が上昇し、貯蔵タンクからの精製アクリル酸の抜き出しが困難となった。取り出したフィルタD表面にはポリマーが付着し、大部分が閉塞していた。
参考例2(粗アクリル酸の調整)
特開2001−199931号の例1と同様の方法(プロピレンの接触気相酸化反応、捕集溶剤として水を用いた反応ガスの捕集、得られたアクリル酸水溶液の放散処理、および共沸溶剤としてトルエンを用いた共沸蒸留)により、共沸蒸留塔の塔底より、アクリル酸96.9質量%、酢酸0.06質量%、水0.03質量%、アルデヒド類0.4質量%を含む共沸蒸留物を得た。
次いで、この共沸蒸留物を蒸留塔に供給した。該蒸留塔は、段数50段、段間隔147mmのシーブトレーを備え、さらに塔頂上部には留出管および還流管を備え、塔側部には原料供給管、塔底部には塔底液抜き出し管を備えたものである。蒸留は、塔頂圧35hPa、還流比1.0、塔底温度92℃の条件で行った。なお、蒸留に際しては、還流液に安定剤を添加し、かつ塔底液中に酸素を吹き込みながら蒸留を行った。これにより、塔頂部から、アクリル酸99.70質量%、酢酸0.06質量%、水0.03質量%、アルデヒド類0.1質量%を含む粗アクリル酸を得た。
実施例3
参考例2で得られた粗アクリル酸にアルデヒド処理剤として、粗アクリル酸に対して400質量ppmのヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)を添加し、貯蔵タンクを経由せずに直接精留塔の塔底部に供給した。該精留塔は、段数5段、段間隔147mmのシーブトレーを備え、さらに塔頂上部には留出管および還流管を備え、塔底部には、原料供給管および塔底液抜き出し管を備えたものである。蒸留は、塔頂圧55hPa、還流比0.5の条件で連続的に行った。
なお、粗アクリル酸に対して250質量ppmのメトキノンを重合防止剤として還流液に添加し、かつ塔底液中に酸素を吹き込みながら蒸留を行った。これにより、精留塔塔頂部から99.89質量%の純度を有する精製アクリル酸を得た。この時の精製アクリル酸のその他の成分組成は、水400ppm、酢酸620質量ppm、アルデヒド類0.04質量ppm、メトキノン70質量ppmであった。
該精製アクリル酸を熱交換器を用いて30℃に調整した後、孔径1μmのポリプロピレン製のカートリッジフィルタ(このフィルタをフィルタEとする。)が設置されたラインを通して貯蔵タンクに供給した。該貯蔵タンクより精製アクリル酸を、該貯蔵タンクでの精製アクリル酸の滞留時間が5時間になるように連続的に抜き出した(製品タンクに供給される)。なお、この時、フィルタE部での精製アクリル酸の線速度は、0.01m/sであった。
該貯蔵タンクより精製アクリル酸が抜き出されるラインに、孔径1μmのポリプロピレン製のカートリッジフィルタ(このフィルタをフィルタFとする。)を設置し、1ヶ月間連続稼動を行ったが、フィルタFでの圧力損失上昇は見られず、また取り出したフィルタF表面にもポリマーなどの付着物は見られなかった。なお、フィルタEでも圧力損失上昇は見られなかったが、取り出したフィルタE表面にはポリマーが付着していた。このポリマーは、水で洗浄後、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄することにより除去することができた。
比較例5
フィルタEを設置しなかった以外は、実施例3と同様の操作を行った。2週間の連続稼動を行った後、フィルタFでの圧力損失が上昇し、貯蔵タンクからの精製アクリル酸の抜き出しが困難となった。取り出したフィルタF表面にはポリマーが付着し、大部分が閉塞していた。
本発明は、既存の設備にフィルタ材を設置することにより実施可能であり、現行のアクリル酸の製造方法に容易に適用できる。

Claims (7)

  1. アクリル酸の製造方法において、
    結晶化による精製を行う結晶化工程、および、貯蔵タンクにてアクリル酸を貯蔵する工程を含み、
    上記結晶化工程で得られ、アクリル酸を90質量%以上含む精製アクリル酸、結晶化による精製装置から貯蔵タンクに供給する際に、上記精製アクリル酸の温度を15〜50℃、線速度を5m/s以下として、フィルタ径が0.1〜100μmのフィルタ材を用いて少なくとも1回の濾過操作を行うことを特徴とするアクリル酸の製造方法。
  2. 上記アクリル酸の製造方法が、下記(a)〜(b)の工程を含む、請求項1記載のアクリル酸の製造方法。
    (a)アクリル酸原料の接触気相酸化反応工程
    (b)工程(a)で得られたアクリル酸含有ガスの溶剤への捕集及び/又は凝縮工程
  3. さらに、結晶化による精製の前にアクリル酸を貯蔵タンクに供する際、または、アクリル酸を結晶化工程に供する際に濾過操作を行う、請求項1または2に記載のアクリル酸の製造方法。
  4. 上記濾過操作の温度を15〜50℃とする、請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル酸の製造方法。
  5. 結晶化工程に供するアクリル酸中の水含有量が0.5質量%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル酸の製造方法。
  6. 結晶化工程を経たアクリル酸の水含有量が0.3質量%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のアクリル酸の製造方法。
  7. 結晶化による精製を行う結晶化工程、および、貯蔵タンクにてアクリル酸を貯蔵する工程を含むアクリル酸の製造において、
    上記結晶化工程で得られ、アクリル酸を90質量%以上含む精製アクリル酸、結晶化による精製装置から貯蔵タンクに供給する際に、上記精製アクリル酸の温度を15〜50℃、線速度を5m/s以下として、フィルタ径が0.1〜100μmのフィルタ材を用いて少なくとも1回の濾過操作を行うことを特徴とするアクリル酸貯蔵中の重合物の生成抑制方法。
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